(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163036
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】航空機内の配管を接続するためのフランジ継手システム、および水素システム
(51)【国際特許分類】
F16L 23/036 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
F16L23/036
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024069175
(22)【出願日】2024-04-22
(31)【優先権主張番号】23172631
(32)【優先日】2023-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】311014956
【氏名又は名称】エアバス オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Airbus Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Kreetslag 10,21129 Hamburg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーガント,シュテフェン
【テーマコード(参考)】
3H016
【Fターム(参考)】
3H016AC04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】航空機内の配管を接続するためのフランジ継手システムであって、設置スペースが少なくて済み、重量が軽減されたフランジ継手システムを提供する。
【解決手段】航空機内の配管を接続するためのフランジ継手システムは、第1フランジ要素11と第2フランジ要素12とを備え、各フランジ要素は、液体または気体媒体を輸送するための開口部を取り囲むフランジリング13、15を備える。各フランジリング13、15は、両フランジ要素11、12を相互に接続するためのシール表面を備える。各フランジ要素は、両フランジ要素のシール表面が封止面21において互いに押し付けられるように、両フランジ要素11、12を相互に固定するために構成された1つ以上の固定部材18、19を備える。両フランジ要素の固定部材は、両フランジ要素11、12が封止面21から離れた位置にある固定面22において互いに固定されるように配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機内の配管を接続するためのフランジ継手システムであって、
第1フランジリング(13)を含む第1フランジ要素(11)と、
第2フランジリング(15)を含む第2フランジ要素(12)と、を備え、
前記第1フランジリング(13)と前記第2フランジリング(15)の各々は、液体または気体媒体を移送するための開口部(14、16)を取り囲んでおり、
前記第1フランジリング(13)と前記第2フランジリング(15)の各々は、前記第1フランジ要素(11)と前記第2フランジ要素(12)を相互に接続のためのシール表面(17)を備え、
前記第1フランジリング(13)と前記第2フランジリング(15)の各々は、前記第1フランジ要素(11)と前記第2フランジ要素(12)の前記シール表面(17)が封止面(21)において互いに押し付けられるように、前記第1フランジ要素(11)と前記第2フランジ要素(12)を相互に固定するために構成された1つ以上の固定部材(18、19)を備え、
前記第1フランジ要素(11)と前記第2フランジ要素(12)の前記固定部材(18、19)は、前記封止面(21)から離れて配置された固定面(22)において前記第1フランジ要素(11)と前記第2フランジ要素(12)が互いに固定されるように配置されている、
フランジ継手システム。
【請求項2】
前記第1フランジ要素(11)と前記第2フランジ要素(12)は、前記第1フランジリング(13)と前記第2フランジリング(15)の半径方向における拡張部分よりも小さい、前記第1フランジリング(13)と前記第2フランジリング(15)の中心軸からの半径方向における距離に配置された締結要素(26)によって互いに固定されていることを特徴とする、
請求項1に記載のフランジ継手システム。
【請求項3】
前記第1フランジ要素(11)の前記固定部材(18)は、前記第1フランジリング(13)と前記第2フランジリング(15)の中心軸の方向における前記第1フランジリング(13)と前記第2フランジリング(15)の投影内で、前記第2フランジ要素(12)の前記固定部材(19)に固定されるように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のフランジ継手システム。
【請求項4】
前記第1フランジ要素(11)の前記固定部材(18)は、前記第1フランジリング(13)の中心軸の方向における前記第1フランジリング(13)の投影内の位置で前記第1フランジ要素(11)に取り付けられていることを特徴とする、
請求項1~3のいずれか1項に記載のフランジ継手システム。
【請求項5】
前記第1フランジ要素(11)の前記固定部材(18)は、前記封止面(21)から離れる方を向いている前記第1フランジリング(13)の側から、前記第1フランジリング(13)および前記第2フランジリング(15)を越えて、前記第2フランジリング(15)の後方に達するように延び、前記封止面(21)から離れる方を向いている前記第2フランジリング(15)の側で前記第2フランジ要素(12)の前記固定部材(19)に固定されるように構成されていることを特徴とする、
請求項1~4のいずれか1項に記載のフランジ継手システム。
【請求項6】
前記第1フランジ要素(11)の前記固定部材(18)は、前記第1フランジリング(13)の接線方向の軸を中心に回動可能であることを特徴とする、
請求項1~5のいずれか1項に記載のフランジ継手システム。
【請求項7】
前記締結要素(26)は、前記固定面(22)において、前記第2フランジ要素(12)の前記固定部材(19)を前記第1フランジ要素(11)の前記固定部材(18)に締結するように構成されており、
前記締結要素(26)は、前記第1フランジリング(13)から、前記第1フランジリングの中心軸の方向に見たとき、前記第2フランジリング(15)の後方に配置されていることを特徴とする、
請求項1~6のいずれか1項に記載のフランジ継手システム。
【請求項8】
前記第2フランジ要素(12)の前記固定部材(19)は、
前記封止面(21)とは反対側で前記第2フランジリング(15)から距離を開けて配置され、
前記第1フランジ要素(11)の前記固定部材(18)の前端(25)が前記第2フランジリング(15)と前記第2フランジ要素(12)の前記固定部材(19)との間に配置されたときに、前記前端(25)に固定されるように構成されていることを特徴とする、
請求項1~7のいずれか1項に記載のフランジ継手システム。
【請求項9】
前記第1フランジ要素(11)の前記固定部材(18)は、前記第1フランジ要素の中心軸の方向に移動可能に前記第1フランジ要素(11)に取り付けられていることを特徴とする、
請求項1~8のいずれか1項に記載のフランジ継手システム。
【請求項10】
前記第1フランジ要素(11)の前記フランジリング(13)は、前記第1フランジ要素(11)と前記第2フランジ要素(12)が連結されているときに、前記第1フランジ要素(11)の前記固定部材(18)によって設けられた突起(35)を受け入れて前記固定部材(18)を所定位置に保持するために、前記第1フランジ要素(11)の前記シール表面(17)とは反対側に形成された溝(36)を備えることを特徴とする、
請求項1~9のいずれか1項に記載のフランジ継手システム。
【請求項11】
前記第1フランジ要素(11)は、前記固定部材(18)を取り付けるための取付手段(33)を備え、
前記固定部材(18)は、少なくともフランジリング(13)を横切って荷重を伝達するように構成され、
前記取付手段(33)は、荷重の伝達なしに固定部材(18)を所定の位置に保持するように構成されていることを特徴とする、
請求項1~10のいずれか1項に記載のフランジ継手システム。
【請求項12】
二重壁配管システム内の配管セグメントを接続するために構成されていることを特徴とする、
請求項1~11のいずれか1項に記載のフランジ継手システム。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のフランジ継手システムが備えつけられた水素システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機内の配管を接続するためのフランジ継手システムに関する。さらに、本発明は、フランジ継手システムを備える航空機に関する。
【0002】
特に、本発明は航空機への水素システムの搭載をサポートする。本発明は、他の媒体を輸送するパイプやラインシステムにも使用できる。さらに、本発明は、航空機内の通気システムおよび/またはガス分配システムに適している。本発明は、特に二重壁配管システム内の単一の配管セグメントの接続に適用できる。
【0003】
図3は、従来技術によるフランジ接続部100の一例を示す。フランジ接続部100は、ボルト103で互いに接続された2つのフランジ101、102を備える。フランジは、フランジ101とフランジ102との間においてシールリング(sealing ring )105が設けられたシールおよびクランプ面104で互いに押し付けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来のフランジ接続部は、直径が比較的大きく、大きな設置スペースを必要とする。特に、航空機に必要な二重壁配管アセンブリでは、内側のラインまたはパイプの直径の点から巨大な継手となり、二重壁配管アセンブリの外側のラインの直径が大きくなる。
【0005】
このような従来の継手には大きな設置スペースが必要である。さらに、重量は増加し、航空機の燃料消費量の増加につながる。
【0006】
本発明の目的は、航空機内の配管を接続するためのフランジ継手であって、設置スペースが少なくて済み、重量が軽減されたフランジ継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様によれば、本発明は、航空機内の配管を接続するためのフランジ継手システム(flange coupling system)を提供し、フランジ継手システムは、第1フランジリングを備える第1フランジ要素と第2フランジリングを備える第2フランジ要素と、備え、各フランジリングは、液体または気体媒体を輸送するための開口部を取り囲んでおり、各フランジリングは、両フランジ要素の相互接続のためのシール表面(sealing surface)を備えており、各フランジ要素は、両フランジ要素のシール表面が封止面(sealing plane)において互いに押し付けられるように、両フランジ要素の相互固定のために構成された1つ以上の固定部材を備えており、両フランジ要素の固定部材は、両フランジ要素が封止面から離れた連結面において互いに固定されるように配置されている。
【0008】
特に、フランジ要素は、フランジリングの中心軸から、フランジリングの半径方向の拡大部分よりも小さい半径方向の距離に配置された締結要素によって互いに固定される。
【0009】
つまり、特に、締結要素がフランジリングの中心軸の方向におけるフランジリングの投影(プロジェクション:projection)内に配置されていることを意味する。
【0010】
好ましくは、第1フランジ要素の固定部材は、フランジリングの中心軸の方向におけるフランジリングの投影内で第2フランジ要素の固定部材に固定されるように構成される。
【0011】
つまり、特に、第1フランジ要素の固定部材は、フランジリングの中心軸から、フランジリングの半径方向における拡大(extension)よりも小さい半径方向の距離で、第2フランジ要素の固定部材に固定されるように構成されている。
【0012】
特に、中心軸の方向は連結方向としても理解される。
【0013】
好ましくは、第1フランジ要素の固定部材は、特に取付手段によって、第1フランジリングの中心軸の方向における第1フランジリングの投影内の位置で、第1フランジ要素に取り付けられる。
【0014】
つまり、特に、取付手段は、第1フランジリングの中心軸から、フランジリングの半径方向の拡大よりも小さい半径方向の距離に配置される。
【0015】
好ましくは、第1フランジ要素の固定部材は、封止面から離れる方を向いている第1フランジリングの側(第1フランジの封止面とは反対側)から、両フランジリングを越えて、第2フランジリングの後方に達して延びるように構成される。
【0016】
好ましくは、第1フランジ要素の固定部材は、第2フランジリングの後方、つまり、封止面から離れる方を向いている第2フランジリングの側(第2フランジの封止面とは反対側)で、第2フランジ要素の固定部材に固定されるように構成される。
【0017】
好ましくは、第1フランジ要素の固定部材は、第2フランジ要素の固定部材を封止面に面する側に引っ張り、第2フランジ要素を第1フランジ要素に押し付けるように構成される。
【0018】
好ましくは、第1フランジ要素の固定部材は、そのフランジリングの接線方向の軸を中心に回動可能である。
【0019】
好ましくは、締結要素は、固定面において、第2フランジ要素の固定部材を第1フランジ要素の固定部材に締結するように構成され、締結要素は、第1フランジリングからその中心軸の方向に見たとき、第2フランジリングの後方、すなわち、封止面から離れる方を向いている第2フランジリングの側(第2フランジの封止面とは反対側)に配置される。
【0020】
好ましくは、第2フランジ要素の固定部材は、シール表面の反対側で第2フランジリングから距離をおいて配置される。
【0021】
好ましくは、第2フランジ要素の固定部材は、第1フランジ要素の固定部材の前端が第2フランジリングとテンションリングとの間に配置されたときに、前端に固定されるように構成される。
【0022】
好ましくは、第1フランジ要素の固定部材は、その中心軸の方向に移動可能に第1フランジ要素に取り付けられる。
【0023】
このようにして、これら固定部材の前端は、フランジ要素が相互に接続されたときに、第2フランジリングと第2フランジ要素の固定部材との間に配置することができる。
【0024】
好ましくは、第1フランジ要素のフランジリングは、そのシール表面の反対側に形成された溝を備え、両フランジ要素が連結されているときに、第1フランジ要素の固定部材によって設けられた突起を受け入れて、固定部材を所定の位置に保持する。
【0025】
好ましくは、第1フランジ要素は、固定部材を取り付けるための爪取付手段を備え、固定部材は、少なくともフランジリングをこえて荷重を伝達するように構成され、取付手段は、好ましくは、荷重の伝達なしに固定部材を所定の位置に保持するように構成される。
【0026】
好ましくは、フランジ継手システムは、二重壁配管システム内の配管セグメントを接続するために構成される。
【0027】
第2の態様によれば、本発明は、本発明によるフランジ継手システムを含む航空機を提供する。
【0028】
本発明は、フランジ継手のコンパクト化と軽量化を実現する。特に、フランジ接続のよりコンパクトな設計のため、継手の直径が大幅に縮小されている。
【0029】
これは特に、一つの面から2つの別の面への、シールと連結という2つの機能の分離によって達成される。
【0030】
特に、縮径された外側のラインまたはパイプを有する二重壁の配管アセンブリは、その内側のラインまたはパイプを本発明によるフランジ継手システムで連結することによって提供することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明により、二重壁配管システムの外側のラインの縮径が達成されるため、相互に接続されたフランジの円形接触領域に作用する圧力による力が低減される。その結果、軽量化が実現し、さらにフランジ継手システムの形状が小さくなったため、さらなる軽量化が実現する。このように、本発明によって軽量化の2つの手段が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるフランジ継手システムの斜視図である。
【
図2】そのフランジ要素が連結されたときのフランジ継手システムの側面図である。
【
図3】従来技術によるフランジの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施形態について、添付図面を参照してより詳細に説明する。
【0034】
図1および
図2は、本発明の実施形態によるフランジ継手システム(flange coupling system)10を示す。フランジ継手システム10は、互いに接続するように構成された第1フランジ要素11と第2フランジ要素12と、を備える。第1フランジ要素11は、液体または気体媒体を移送するための開口部14を囲む円盤形状のフランジリング13を備える。同様に、第2フランジ要素12は、液体または気体媒体を輸送するための開口部16を取り囲む第2の円盤形状のフランジリング15を備える。各々のフランジリング13、15は、両フランジ要素11、12を相互に接続するためのシール表面(sealing surface)17を備える。
【0035】
各フランジ要素11、12は、両フランジ要素11、12を相互に固定するように構成された、1つ以上の固定部材18、19を含み、両フランジ要素11、12のシール表面(sealing surface)17が、封止面(sealing plane)21(
図2参照)において互いに押し付けられる。封止面21は、両フランジ要素11、12の互いに接続されたシール表面17によって形成される。
【0036】
両フランジ要素11、12の固定部材18、19は、両フランジ要素11、12が、封止面21から離れた位置にある連結(coupling)面または固定(fixation)面22において、ボルトとして形成された締結要素26によって互いに固定されるように配置されている(
図2参照)。
【0037】
図1に描かれているように、第2フランジ要素12のシール表面17には、シールリング23として形成されたシーリング(sealing)が設けられている。また、シーリングは、第1フランジ要素11のシール表面17に設けてもよいし、両方のフランジ要素11、12のシール表面17に設けてもよい。この実施形態では、シーリング23またはガスケットはO形状の断面を有する。しかし、シーリング23またはガスケットは、例えばC形状の断面のような別の断面を持ってもよい。特に、シーリング23は、それぞれのフランジ要素11および/または12のシール表面17に形成されたリング形状の溝内に配置される。
【0038】
両シール表面17は、両フランジ要素11、12が、それらのシール表面17で相互接続されたときに、封止面21を提供する円形領域を形成する。
【0039】
第1フランジ要素11の複数の固定部材18は、シール表面17の周囲に分布して配置され、両フランジ要素11、12が相互に接続されたときに、第1フランジ要素11から、そのフランジリング13を越え、第2フランジ要素12のフランジリング15を越えて延びる多数の爪18として設計されるか、またはこれら多数の爪18を備える。
【0040】
より正確には、
図1に詳細に示すように、爪18は、両フランジ要素11、12が互いに接続されているとき、封止面21から離れる方を向いている第1フランジリング13の裏側から、両フランジリング13、15を横切って、第2フランジリング15の背後、すなわち、封止面の反対側で封止面から離れる方を向いている第2フランジリング15の裏側まで延びている。
【0041】
複数の爪18は、第1フランジ要素11の外側24に円周方向に配置されている。有利なことに、複数の爪18は、両フランジ要素11、12のシール表面17を互いに押し付ける力を均等に提供するために、等間隔に配置されている。
【0042】
各爪18は、固定面22において第1フランジ要素11のそれぞれの爪18の前端25に第2フランジ要素12の固定部材19を固定するために設けられたボルト26を締結するための締結具として構成された前端25を備える。
【0043】
この目的のために、各爪18の前端25には、締結要素またはボルト26のねじ状の前部を受け入れるために角ナット27が配置されている。しかしながら、前端25内にねじ山や他のタイプの締結要素を設けることも可能である。
【0044】
第2フランジ要素12の固定部材19は、第2フランジ要素12の外側28、より具体的には第2フランジ要素12の管部(pipe section)37に配置されるテンションリングとして形成される。
【0045】
固定部材またはテンションリング19は、第2フランジ要素12を取り囲み、その前側にシール表面17を設けた第2フランジ要素12のフランジリング15から距離Dをあけて配置される。
【0046】
つまり、テンションリング19は、そのシール表面17に封止面21を設けるフランジリング15から離間している。
【0047】
テンションリング19は、第1フランジ要素11の爪18に固定されるように構成されている。この目的のために、多数の貫通孔29が、締結要素またはボルト26が爪18の前端25に設けられたナット27またはねじ山にねじ込まれたときに締結要素またはボルト26を保持するためにテンションリング19に設けられており、ボルト26の締め付けによって両フランジ要素11、12が互いに連結されているときに、爪18がテンションリング19に引っ張られるようになっている。
【0048】
爪18は、両フランジ要素11、12が互いに連結されているときに、第2フランジ要素12のフランジリング15の後方に達し、テンションリング19に向かって引っ張られるように形成されている。
【0049】
有利には、爪18は、両フランジ要素11、12の相互接続のための接触面17を提供するフランジリング13、15を横切って平坦に延びる直線状のアーム30を備えるか、または直線状のアーム30として形成される。
【0050】
各アーム30は、前端25を形成する角度のついた端部を備え、各爪18は、その前端25が第2フランジ要素12のフランジリング15の後方に達するようになっている。
【0051】
このようにして、爪18の角度のついた前端25は、両フランジ要素11,12が連結されたとき、第2フランジ要素12のフランジリング15と第2フランジ要素12のテンションリング19との間、すなわち、連結されたフランジリング13、15の軸方向において第2フランジリング15の後方に配置される。次に、ボルト26をナット27にねじ込むことによって、両フランジ要素11、12は互いに固定される。
【0052】
ボルトまたはネジ26が締め付けられると、爪18はテンションリング19の方に引っ張られ、一方、ボルト26のボルトヘッド31はテンションリング19の裏側32に押し付けられ、このようにして、両フランジ要素11、12が連結されたときのクランプ(clamping)または連結(coupling)面(plane)22が形成される。
【0053】
図1および
図2に詳細に示すように、爪18の前端25が距離D(
図2参照)だけ離間したフランジリング15とテンションリング19(
図1参照)との間に配置されたときに、ボルト26は、テンションリング19を貫通して爪18の前端25に入るように、または前端25を貫通して延びる。
【0054】
このようにして、締結要素またはボルト26は、フランジリング13、15がシール表面17で互いに接続されているときに、第2フランジ要素12のテンションリング19を第1フランジ要素11の爪18に締結する。
【0055】
ボルト26は、第1フランジリング13から第2フランジリング15に向かってその中心軸の方向、すなわち連結方向に見たとき、互いに接続されたフランジリング13、15の後方に位置する。つまり、ボルト26はフランジリング13、15の投影(projection)内、すなわちフランジリング13、15の半径内に配置される。
【0056】
言い換えれば、締結要素またはボルト26は、フランジリング13、15の中心軸から、フランジリング13、15の半径方向の拡張よりも小さい、半径方向距離に配置される。
【0057】
このようにして、フランジ継手システム10の半径方向の拡大が大幅に減少される。
【0058】
ボルト26の締め付けによって両フランジ要素11、12が互いに締結されると、第2フランジ要素12の後方、すなわちそのフランジ要素12とテンションリング19との間に配置された爪18の前端25が、テンションリング19の方に引っ張られる。これにより、両フランジ要素11、12が封止面21で互いに押し付けられる。
【0059】
各爪18は、第1フランジ要素11の外側24に周方向に設けられた複数の取付手段33に移動可能に取り付けられている。より具体的には、複数の取付手段33は、第1フランジ要素11の管部34の外側24に周方向に設けられている。
【0060】
爪18は、接触面またはシール表面17で第2フランジ要素12を第1フランジ要素11に取り付けるために開くことができ、前端25をテンションリング19に保持されたボルト26に固定するために閉じることができるように、取付手段33に回動可能に取り付けられている。
【0061】
図1および
図2からわかるように、各爪18は、その後端に、爪18の対向する両側面に2つのピンとして形成された突起を備えている。この突起により、各爪18は、取付手段33の側壁に形成された互いに対向する開口部に回動可能に吊られている(サスペンド(suspend)されている)。
【0062】
このようにして、第1フランジ要素11の固定部材または爪18は、取付手段33によって第1フランジ要素11に回動可能に取り付けられる。
【0063】
従って、爪18の配置は開くことができ、すなわち爪18は、フランジリング13、15を相互に接触させることができる開放位置へと径方向外側に回動させることができる。爪18は閉じることもでき、すなわち、爪18は、フランジリング13、15を分離できる閉位置へと径方向内側に回動させることができる。
【0064】
これにより、爪取付手段33によって第1フランジ要素11に取り付けられている爪18の前端25は、両方のフランジ要素11、12が互いに連結されているときに、第2フランジ要素12の固定部材またはテンションリング19とフランジリング15との間に配置される。
【0065】
爪が吊られて支持されている取付手段33は、各固定部材または爪18が、第1フランジリング13の接線方向に延びる軸を中心として回動し、したがって、それぞれの爪18をその回動軸を中心として径方向外側および径方向内側に回動させることができるように構成されている。
【0066】
取付手段33の側壁に設けられた対向する2つの開口部は、それぞれの爪18の後端において両側に配置されたピンを保持するように構成され、その爪18の枢軸を定める(
図1参照)。
【0067】
フランジリング13は幾何学的に円柱と表現できる。接線方向とは、フランジリング13の接線の方向を意味する。したがって、第1フランジ要素11の固定部材18は、固定部材18が第1フランジリング13の接線に平行に延びる軸を中心に回動することができるように、第1フランジ要素11に取り付けられている。
【0068】
取付手段33の側壁に設けられた対向する開口部(opening)または懸垂孔(suspension holes)は、そこに吊られた爪18の枢軸を定め、第1フランジリング13の裏側、すなわちフランジリング13の中心軸からの半径方向の距離がフランジリング13の半径方向の拡張(radial extension)よりも小さい位置に配置されている(
図1参照)。
【0069】
従って、各爪18の枢軸は、封止面21から離れる方を向いた第1フランジリング13の裏側の位置であって、フランジリング13の中心軸から、フランジリング13の半径方向の拡張よりも小さい半径方向の距離に位置する(
図1参照)。
【0070】
さらに、フランジリング13は円筒形状を有するので、枢軸(ピボット軸)または回転軸もフランジリング13の中心軸または長手軸に垂直である。
【0071】
爪18が吊られている各取付手段33の側壁は互いに向かい合っている。取付手段33は、爪18が取り付けられる部分において管として形成されたフランジ要素11の外側24に取り付けられ、爪取付部を形成するその部分の外側24から半径方向外側に延びている。
【0072】
爪18が取り付けられている部分のフランジ要素11の外側24は、フランジ要素11の前端のフランジリング13よりも直径が小さい。さらに、外側24に取り付けられた爪取付手段33の半径方向の拡張は、フランジリング13の半径よりも小さい。従って、爪取付手段33は、連結方向においてフランジリング13の完全に後方にあり、すなわち半径方向においてフランジリング13を越えて延びていないため、フランジ要素11の直径が大幅に縮小される。
【0073】
さらに、各爪18の、前端25と後端との間に位置するアーム30の平坦な中央部分のみが、フランジ要素11、12が互いに接続されたときに両フランジリング13、15を越えて延びるように、その半径方向においてフランジリング13を越えてその厚さだけ少し突出している。
【0074】
これにより、フランジ要素11およびフランジ継手システム10全体の直径がさらに小さくなる。アーム30の中央部分の厚みは比較的小さく保つことができる。角度のついた前端25と後端は、封止面21の両側で封止面21の後方に配置されるため、比較的厚くすることができる。
【0075】
従って、継手システム10の半径は、連結されたフランジリング13、15の半径に、両方のフランジリング13、15を越えて延びる爪18のアーム30の厚さを加えたものに制限される。
【0076】
さらに、取付手段33は、それぞれの爪18のフランジリング13側への移動を可能にするように構成されている。この移動により、爪18の突起35がフランジリング13の裏側に設けられた溝36に係合する。これは爪18を所定の位置に保持する機能を持つ。
【0077】
したがって、第1フランジ要素11の固定部材または爪18は、枢動可能に吊られているだけでなく、シール表面17に向かって、すなわちフランジリング13の軸方向またはその中心軸方向に移動可能である。
【0078】
この移動のために、相互に接続されたフランジ要素11、12は、それらの固定部材18、19を相互に締め付けることによって、相互に引っ張り合うことができる。
【0079】
フランジ要素11に対する爪18の軸方向移動は、爪18が吊られている取付手段33の側壁の開口部が、軸方向、すなわち第1フランジ要素11の中心軸方向に延びる長穴として形成されていることによる。
【0080】
上述したように、クランプ力は封止面21には直接かからない。代わりに、クランプ力は、封止面21から離れた位置にあるテンションリング19にかかる。締結要素またはボルト26が締め付けられると、荷重は、ボルト26および爪18を介してテンションリング19の裏側32から、爪取付手段33を備えるフランジ要素11に伝達される。
【0081】
爪18は、爪18の突起35とフランジリング13の溝36によって実現される実矧ぎの原理を用いて、その前端25から両フランジリング15、13を横切ってフランジリング13の後方に荷重を伝達する。取付手段33は、主たる荷重移動の目的を持たない。むしろ、取付手段33の機能は、爪18を所定の位置に保持し、組み立てを容易にすることである。
【0082】
特に、フランジ継手システム10は、二重壁配管システム内の配管セグメント(pipe segment)を接続するために構成されている。有利なことに、二重壁配管システム内の内側配管セグメントは、フランジ継手システム10によって接続される。
【0083】
フランジ継手システム10は、特に航空機、好ましくは航空機の水素システムに使用される。
【0084】
他の実施例
上述した好ましい実施形態および本発明によるフランジ継手システムのさらなる実施例は、好ましくは、以下の特徴の1つ以上を示す。
【0085】
第1フランジ要素の固定部材は、シール表面の周囲に分布され、両方のフランジ要素(11、12)が相互に接続されているときに、第1フランジ要素から、第1フランジ要素(11)のフランジリング(13)を超え、第2フランジ要素(12)のフランジリング(15)を超えて延びる爪を含んでいてもよい。
【0086】
第1フランジ要素(11)の各固定部材(18)は、固定面(22)において、第2フランジ要素(12)の固定部材(19)を第1フランジ要素(11)の固定部材(18)に固定するために設けられたボルト(26)のための締結具として構成された前端(25)を含んでいてもよい。
【0087】
第2フランジ要素(12)の固定部材(19)は、封止面(21)を提供する、そのフランジリング(15)から間隔を空けて配置されたテンションリングを備えるか、またはテンションリングとして形成されることができ、テンションリングは、第1フランジ要素(11)の固定部材(18)に固定されるように構成される。
【0088】
第1フランジ要素(11)の固定部材(18)は、両方のフランジ要素(11、12)が互いに連結されているときに、第2フランジ要素(12)のフランジリング(15)の後方に達し、テンションリング(19)の方へ引っ張られるように形成されてもよい。
【0089】
第2フランジ要素(12)の固定部材(19)は、ボルト(26)が第1フランジ要素(11)の固定部材(18)の端(25)に固定される際に、ボルト(26)を保持するための多数の貫通孔(29)を備えていてもよい。
【0090】
第1フランジ要素(11)の固定部材(18)は、ボルト(26)を締め付けるためのナット(27)を備えていてもよい。
【0091】
第1フランジ要素(11)の固定部材(18)は、そのフランジリング(13)に対して接線方向の軸を中心に回動可能であり、および/または、そのシール表面(17)に向かって移動可能であってもよい。
【0092】
第1フランジ要素(11)のフランジリング(13)は、そのシール表面(17)の反対側に形成され、両フランジ要素(11、12)が連結されているときに固定部材(18)を所定の位置に保持するために第1フランジ要素(11)の固定部材(18)によって設けられた突起(35)を受け入れるリング溝(36)を備えていてもよい。
【0093】
第1フランジ要素(11)は、固定部材(18)のための爪取付手段(33)を備えていてもよく、固定部材(18)は、少なくともフランジリング(13)を横切って荷重を伝達するように構成され、取付手段(33)は、荷重の伝達なしに固定部材(18)を所定位置に保持するように構成される。
【0094】
フランジ継手システムは、二重壁配管システム内の配管セグメントを接続するために構成されてもよい。
【0095】
航空機は、上記の特徴を備えるフランジ継手システムが備えつけられた水素システムを備えてもよい。
【符号の説明】
【0096】
10 継手システム
11 第1フランジ要素
12 第2フランジ要素
13 第1フランジ要素のフランジリング
14 開口部
15 第2フランジ要素のフランジリング
16 開口部
17 シール表面
18 第1フランジ要素の固定部材/爪
19 第2フランジ要素の固定部材/テンションリング
21 封止面
22 固定面
23 シールリング
24 第1フランジ要素の外側
25 爪の前端
26 ボルト/締結要素
27 ナット
28 第2フランジ要素の外側
29 貫通孔
30 爪のアーム
31 ボルトヘッド
32 テンションリングの裏側
33 取付手段
34 第1フランジ要素の管部
35 爪の突起
36 溝
37 第2フランジ要素の管部
D 距離