(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163037
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】キャビネット及びエネルギー貯蔵装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/658 20140101AFI20241114BHJP
H01M 50/222 20210101ALI20241114BHJP
H01M 50/231 20210101ALI20241114BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20241114BHJP
H01M 50/213 20210101ALI20241114BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20241114BHJP
H01M 10/627 20140101ALI20241114BHJP
H01M 10/643 20140101ALI20241114BHJP
H01M 10/6554 20140101ALI20241114BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M50/222
H01M50/231
H01M50/204 401F
H01M50/204 401H
H01M50/213
H01M10/613
H01M10/627
H01M10/643
H01M10/6554
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024070449
(22)【出願日】2024-04-24
(31)【優先権主張番号】112117227
(32)【優先日】2023-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】523418764
【氏名又は名称】台泥儲能科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】張 安平
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031KK02
5H040AA28
5H040AA37
5H040AS01
5H040AT01
5H040AT06
5H040AY05
5H040CC20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】リチウム電池の熱暴走に伴い生じる高温の火炎及び高熱をキャビネットの内部に規制可能なため、防火性、耐燃性及び遮熱性という良好な特性を有するキャビネット及びエネルギー貯蔵装置を提供する。
【解決手段】キャビネット10は、防火戸、コンクリート本体110、遮熱層170及び耐燃層120を含む。コンクリート本体は、収容空間を形成すべく複数の壁111~115を含む。遮熱層は、収容空間における複数の壁の1つ又は複数の内表面111a~115aに設けられる。耐燃層は、遮熱層に設けられるとともに、収容空間S1に露出する。遮熱層の体積密度は耐燃層の体積密度よりも低い。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー貯蔵装置に用いられるキャビネットであって、
収容空間を形成すべく、複数の壁を含むコンクリート本体、
前記収容空間における前記複数の壁の1つ又は複数の内表面に設けられる遮熱層、及び
前記遮熱層に設けられるとともに、前記収容空間に露出する耐燃層を含み、
前記遮熱層の体積密度は前記耐燃層の体積密度よりも低いキャビネット。
【請求項2】
更に、
前記遮熱層及び前記耐燃層の開口に挿設されて、前記コンクリート本体に緊締される緊締部材と、
前記耐燃層の前記開口を被覆するとともに、前記収容空間に露出する遮熱構造、を含む請求項1に記載のキャビネット。
【請求項3】
前記遮熱構造は、
前記緊締部材に緊締される遮熱緊締部材と、
前記緊締部材を被覆するとともに、前記開口と前記緊締部材の間の少なくとも1つの空隙を充填する遮熱シール構造、を含む請求項2に記載のキャビネット。
【請求項4】
前記遮熱シール構造は、
前記緊締部材を被覆して接触する遮熱フィラーと、
前記遮熱フィラーを被覆して接触する遮熱ペースト、を含む請求項3に記載のキャビネット。
【請求項5】
前記コンクリート本体は、前記複数の壁の少なくとも1つの外表面から外側へ突出する突出構造を含み、前記緊締部材は前記突出構造内まで延伸する請求項2に記載のキャビネット。
【請求項6】
更に、前記遮熱層と前記耐燃層を前記コンクリート本体に緊締する緊締機構を含み、前記緊締機構は少なくとも1つの遮熱材料を含む請求項1に記載のキャビネット。
【請求項7】
前記緊締機構はスタッド及びナットを含み、前記スタッドは、前記耐燃層、前記遮熱層及び前記コンクリート本体に螺合して緊締し、前記ナットは前記スタッドに螺接するとともに前記耐燃層に当接し、且つ、前記ナットは前記遮熱材料を含む請求項6に記載のキャビネット。
【請求項8】
前記スタッドの端部は前記ナットのネジ孔に挿通され、且つ、前記キャビネットは、更に、前記端部を被覆する遮熱フィラーを含む請求項7に記載のキャビネット。
【請求項9】
更に、前記遮熱フィラーを被覆するとともに、前記収容空間に露出する遮熱保護層を含む請求項8に記載のキャビネット。
【請求項10】
前記遮熱層の加熱線収縮率は前記耐燃層の加熱線収縮率よりも低い請求項1に記載のキャビネット。
【請求項11】
更に、前記コンクリート本体の開口の側縁に枢結される戸を含み、当該戸はコンクリート層を含み、前記耐燃層は、更に、前記戸の前記コンクリート層に設けられ、且つ、前記遮熱層は、更に、前記耐燃層と前記コンクリート層の間に設けられる請求項1に記載のキャビネット。
【請求項12】
エネルギー貯蔵装置に用いられるキャビネットであって、
収容空間を形成すべく、複数の壁を含むコンクリート本体、
前記収容空間における前記複数の壁の1つ又は複数の内表面に設けられる遮熱層、及び
前記遮熱層に設けられるとともに、前記収容空間に露出する耐燃層を含み、
前記耐燃層は互いに連続的に係接される複数の耐燃ボードを含み、且つ、これらの耐燃ボードの間の少なくとも1つの接続界面は非平面の表面であるキャビネット。
【請求項13】
これらの耐燃ボードの間の前記少なくとも1つの接続界面は段差状の断面輪郭を有する請求項12に記載のキャビネット。
【請求項14】
これらの耐燃ボードは第1耐燃ボードと第2耐燃ボードを含み、前記第1耐燃ボードの第1側面は第1突縁を有し、前記第2耐燃ボードの第1側面は第1凹溝を有し、且つ、前記第1突縁が前記第1凹溝内に設けられることで、前記第1耐燃ボードと前記第2耐燃ボードが接続される請求項12に記載のキャビネット。
【請求項15】
これらの耐燃ボードは第1耐燃ボードと第2耐燃ボードを含み、前記第1耐燃ボードの第1側面は第1段差構造を有し、前記第2耐燃ボードの第1側面は第2段差構造を有し、且つ、前記第1段差構造と前記第2段差構造が係合することで、前記第1耐燃ボードと前記第2耐燃ボードが接続される請求項12に記載のキャビネット。
【請求項16】
更に、前記第1段差構造、前記第2段差構造及び前記遮熱層に挿設されて、前記遮熱層と前記耐燃層を前記コンクリート本体に緊締する緊締機構を含み、前記緊締機構は少なくとも1つの遮熱材料を含む請求項15に記載のキャビネット。
【請求項17】
これらの耐燃ボードは、第1耐燃ボード、第2耐燃ボード及び第3耐燃ボードを含み、且つ、前記第1耐燃ボードと前記第2耐燃ボードの間の第1接続界面、及び、前記第1耐燃ボードと前記第3耐燃ボードの間の第2接続界面は、互いに隣接するとともに、いずれも非平面の表面である請求項12に記載のキャビネット。
【請求項18】
前記第1耐燃ボードの第1突縁は前記第1接続界面における第1の段差状の断面輪郭を規定し、前記第1耐燃ボードの第2突縁は前記第2接続界面における第2の段差状の断面輪郭を規定し、且つ、前記第1突縁の延伸長さは前記第2突縁の延伸長さよりも大きい請求項17に記載のキャビネット。
【請求項19】
エネルギー貯蔵装置であって、
収容空間を形成すべく複数の壁を含むコンクリート本体と、前記収容空間における前記複数の壁の1つ又は複数の内表面に設けられる遮熱層と、前記遮熱層に設けられるとともに、前記収容空間に露出する耐燃層を含み、前記遮熱層の体積密度が前記耐燃層の体積密度よりも低いキャビネットと、
前記キャビネットに固定的に接続される少なくとも1つの電池システム、を含む装置。
【請求項20】
前記耐燃層は、互いに連続的に係接される複数の耐燃ボードを含み、且つ、これらの耐燃ボードの間の少なくとも1つの接続界面は非平面の表面である請求項19に記載のエネルギー貯蔵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、実質的には、キャビネット及びエネルギー貯蔵装置に関する。より具体的に、本開示は、コンクリート本体を含むキャビネット及びエネルギー貯蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギーの利用効率と柔軟性を向上させるべく、エネルギー貯蔵装置の開発が近年の潮流となっている。電池技術(例えば、リチウム電池)の発展が成熟するにつれて、電池エネルギー貯蔵装置がエネルギー貯蔵装置の主流の一つとなっている。また、搭載や運搬のしやすさ及び耐候性等を考慮して、現在は、国際海運において一般的に使用される金属製コンテナがエネルギー貯蔵装置のエネルギー貯蔵キャビネットとして用いられている。
【0003】
しかし、電池は、保管や輸送の過程において、各種の要因(例えば、過充電、衝撃、電子制御システムのエラー、操作環境又は製造プロセスの瑕疵)により、電池内部のセパレータが破損する恐れがある。この場合、正極と負極が接触して短絡が形成される結果、高熱化学反応が生じて電池内の可燃性有機成分が発火する。また、電池の熱暴走(thermal runaway)に伴い生じる高温は、更に、電池エネルギー貯蔵装置付近の機器の破損や火災事故の発生を招来する恐れがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つ又は複数の実施例において、エネルギー貯蔵装置に用いられるキャビネットは、コンクリート本体、遮熱層及び耐燃層を含む。コンクリート本体は、収容空間を形成すべく複数の壁を含む。遮熱層は、収容空間における複数の壁の1つ又は複数の内表面に設けられる。耐燃層は、遮熱層に設けられるとともに、収容空間に露出する。遮熱層の体積密度は耐燃層の体積密度よりも低い。
【0005】
1つ又は複数の実施例において、エネルギー貯蔵装置に用いられるキャビネットは、コンクリート本体、遮熱層及び耐燃層を含む。コンクリート本体は、収容空間を形成すべく複数の壁を含む。遮熱層は、収容空間における複数の壁の1つ又は複数の内表面に設けられる。耐燃層は、遮熱層に設けられるとともに、収容空間に露出する。耐燃層は、互いに連続的に係接される複数の耐燃ボードを含む。且つ、耐燃ボードの間の少なくとも1つの接続界面は非平面の表面である。
【0006】
1つ又は複数の実施例において、エネルギー貯蔵装置はキャビネット及び少なくとも1つの電池システムを含む。キャビネットは、コンクリート本体、遮熱層及び耐燃層を含む。コンクリート本体は、収容空間を形成すべく複数の壁を含む。遮熱層は、収容空間における複数の壁の1つ又は複数の内表面に設けられる。耐燃層は、遮熱層に設けられるとともに、収容空間に露出する。遮熱層の体積密度は耐燃層の体積密度よりも低い。電池システムはキャビネットに固定的に接続される。
【0007】
図面を組み合わせて本開示を閲覧する際には、以下の実施形態により、本開示の態様をよく理解することができる。注意すべき点として、本開示の内容を明瞭に記載するために、各種の特徴は比率通りに図示していない場合があり、且つ、各特徴のサイズを任意に拡大又は縮小している場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】
図1Aは、本開示のいくつかの実施例に基づくキャビネットの概略図を示す。
【
図1B】
図1Bは、本開示のいくつかの実施例に基づくキャビネットの断面図を示す。
【
図2A】
図2Aは、本開示のいくつかの実施例に基づくキャビネットの一部の断面図を示す。
【
図2B】
図2Bは、本開示のいくつかの実施例に基づくキャビネットの一部の断面図を示す。
【
図3A】
図3Aは、本開示のいくつかの実施例に基づくキャビネットの一部の断面図を示す。
【
図3B】
図3Bは、本開示のいくつかの実施例に基づくキャビネットの一部の概略図を示す。
【
図3C】
図3Cは、本開示のいくつかの実施例に基づくキャビネットの一部の断面図を示す。
【
図4A】
図4Aは、本開示のいくつかの実施例に基づくキャビネットの一部の概略図を示す。
【
図4B】
図4Bは、本開示のいくつかの実施例に基づくキャビネットの一部の分解図を示す。
【
図4C】
図4Cは、本開示のいくつかの実施例に基づくキャビネットの一部の分解図を示す。
【
図4D】
図4Dは、本開示のいくつかの実施例に基づくキャビネットの一部の断面図を示す。
【
図5A】
図5Aは、本開示のいくつかの実施例に基づく電池システムの概略図を示す。
【
図5B】
図5Bは、本開示のいくつかの実施例に基づく電池パック(pack)の概略図を示す。
【
図6A】
図6Aは、本開示のいくつかの実施例に基づくエネルギー貯蔵装置の透視図を示す。
【
図6B】
図6Bは、本開示のいくつかの実施例に基づくエネルギー貯蔵装置の透視図を示す。
【
図7A】
図7Aは、本開示のいくつかの実施例に基づくキャビネットの戸の分解図を示す。
【
図7B】
図7Bは、本開示のいくつかの実施例に基づくキャビネットの戸の一部の断面図を示す。
【
図8】
図8は、本開示のいくつかの実施例に基づく裏面温度測定位置の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の図面及び実施形態では、同じ又は類似の部材を同じ符号で示している。
【0010】
図1Aは、本開示のいくつかの実施例に基づくキャビネット10の概略図を示し、
図1Bは、本開示のいくつかの実施例に基づくキャビネット10の断面図を示す。いくつかの実施例において、
図1Bは
図1Aの構造のx方向の断面図を示す。キャビネット10は、コンクリート本体110、耐燃層120、遮熱層170及び戸130を含む。また、明瞭に提示及び記載するために、
図1Bではいくつかの部材(例えば、戸130)を省略しており、図示していない。
【0011】
コンクリート本体110は、収容空間S1を形成すべく、複数の壁(例えば、壁111、112、113、114及び115)を含み得る。いくつかの実施例において、収容空間S1は、操作者が内部に進入して、収容空間S1内に設けられた機能ユニット又は機器を修繕及び/又は操作可能なサイズとなっている。いくつかの実施例において、コンクリート本体110の壁111、112及び113は側壁としてもよい。また、壁114は天板としてもよく、壁115は底板としてもよい。いくつかの実施例において、壁111、112、113、114及び115は、それぞれ、約5cm以下の厚さT1を有している。いくつかの実施例において、壁111、112、113、114及び115は、それぞれ、約4cm、3.5cm、3cm又は2.5cm以下の厚さT1を有している。いくつかの実施例において、
図1A及び
図1Bに示すように、壁111、112、113、114及び115は非プレート状の構造を有してもよい。いくつかの実施例において、コンクリート本体110は、複数の壁(例えば、壁111、112、113、114及び115)の少なくとも1つの外表面から外側へ突出する突出構造110Pを含む。例えば、壁111、112及び113の外表面は突出リブ構造を有する。いくつかの実施例において、壁111、112、113、114及び115のうちの1つ又は複数の外表面は、同じ又は異なる特殊な立体形態(例えば、波形構造、ホール構造、凹溝構造、突出リブ構造又はその他任意の形状の立体形態)を有してもよい。また、いくつかの実施例において、壁111、112、113、114及び115のうちの1つ又は複数はプレート状の構造を有してもよい。例えば、壁111、112、113、114及び115の外表面は、実質的に平坦な表面であってもよい。
【0012】
いくつかの実施例において、コンクリート本体110は合成繊維を含んでもよい。いくつかの実施例において、合成繊維の長さは約4mm~約20mmであり、合成繊維の直径は約0.2mmである。いくつかの実施例において、コンクリート本体110における合成繊維の含有量は約30kg/m3~約60kg/m3である。合成繊維は、コンクリート本体110の曲げ強度を強化可能である。いくつかの実施例において、コンクリート本体110は、超高性能コンクリート(ultra-high performance concrete,UHPC)により形成される。
【0013】
本開示のいくつかの実施例によれば、コンクリート本体110は、上記の合成繊維を含み、及び/又は、超高性能コンクリートにより形成される。よって、コンクリート本体110の壁に鉄筋構造(例えば、鉄筋かご及び/又は複数のスターラップで構成される鉄筋ユニット)を設置しなくても、コンクリート本体110はそれ自体が良好な耐曲げ性能を備え得る。加えて、コンクリート本体110は高い圧縮強度を有するため、コンクリート本体110に小さな壁厚を持たせることができる。また、いくつかの実施例において、キャビネット10は可動式のキャビネットとしてもよい。コンクリート本体110は小さな壁厚を有するため、キャビネット10の全体重量を減少させることができ、キャビネット10の搬送及び移動に都合がよい。また、いくつかの実施例において、キャビネット10は固定式のキャビネットとしてもよく、固定ユニット(例えば、緊締機構)によって、キャビネット10を建築物内の床又は屋外環境の地面に固定してもよい。
【0014】
いくつかの実施例において、コンクリート本体110は、更に、異なる成分を有する1種類又は2種類以上のセメント、複数種類の異なる粉末材、酸化物及び複数種類の異なる添加剤を含んでもよい。いくつかの実施例において、コンクリート本体110は、ポルトランドセメント、マイクロシリカ(サイズの特徴が粉末状)、珪砂(サイズ又は粒径が約2ミリ(mm)未満)、石英粉末(サイズ又は粒径が約20マイクロメートル(μm)未満)、減水剤、消泡剤、膨張剤、又はこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0015】
いくつかの実施例において、コンクリート本体110は、含有量が約800kg/m3~約900kg/m3の普通ポルトランドセメント、改良ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント及び耐硫酸塩ポルトランドセメントのうちの1つ又は複数を含んでもよい。また、いくつかの実施例において、コンクリート本体110は、含有量が約400kg/m3~約500kg/m3の普通ポルトランドセメント、改良ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント及び耐硫酸塩ポルトランドセメントのうちの1つと、含有量が約400kg/m3~約500kg/m3の普通ポルトランドセメント、改良ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント及び耐硫酸塩ポルトランドセメントのうちの別の1つを含んでもよい。いくつかの実施例において、コンクリート本体110は、含有量が約120kg/m3~約180kg/m3のマイクロシリカを含んでもよい。いくつかの実施例において、コンクリート本体110は、含有量が約900kg/m3~約1000kg/m3の珪砂を含んでもよい。いくつかの実施例において、コンクリート本体110は、含有量が約30kg/m3~約150kg/m3の石英粉末を含んでもよい。いくつかの実施例において、上記のマイクロシリカと石英粉末を組み合わせることで、コンクリート本体110は一般的なコンクリートよりも高い圧縮強度を有する。また、いくつかの実施例において、酸化物を添加することで、コンクリート本体110の外観色を調整可能である。
【0016】
いくつかの実施例において、コンクリート本体110は、含有量が約10kg/m3~約20kg/m3の減水剤を含んでもよい。また、いくつかの実施例において、コンクリート本体110は、含有量が約10kg/m3以下の消泡剤と、含有量が約25kg/m3以下の膨張剤を含んでもよい。
【0017】
いくつかの実施例において、コンクリート本体110の構造の単位重量は約2300kg/m3以上である。いくつかの実施例において、コンクリート本体110の構造の単位重量は約2300kg/m3~約2700kg/m3である。いくつかの実施例において、コンクリート本体110の圧縮強度は約120MPa以上である。いくつかの実施例において、コンクリート本体110の圧縮強度は約120MPa~約180MPaである。いくつかの実施例において、コンクリート本体110の極限曲げ強度は約15MPaよりも大きい。こうすることで、曲げ強度を向上させるための鉄筋かご及び/又は複数のスターラップで構成される鉄筋ユニットをコンクリート本体110に設置しなくても、コンクリート本体110に小さな壁厚を持たせることができるため、キャビネット10の全体重量を減少させられる。また、コンクリート本体110は、キャビネット10に高圧縮強度及び高曲げ強度を付与できるため、比較的過酷な環境(例えば、高温の火炎を受ける環境)に適用しても構造全体の完全性を維持できる。
【0018】
いくつかの実施例において、コンクリート本体110の熱伝導率(又は、熱伝導係数)は約1.8W/m・K以下である。いくつかの実施例において、コンクリート本体110の熱伝導率は約1.6W/m・K~約1.8W/m・Kである。金属材料又は一般的なコンクリート(熱伝導率は約1.9W/m・K~約2.1W/m・K)と比較して、本開示のコンクリート本体110は優れた断熱効果を有するため、収容空間S1内とコンクリート本体110の外部との間における熱伝導を低減させるのに有利である。収容空間S1内の装置又は部材を特定の高温又は低温に維持する必要がある場合、コンクリート本体110の良好な断熱効果は空調設備に要するエネルギーの減少に貢献し、コストダウンを可能にするとともに、環境保護や省エネ、CO2削減といった付加的な効果も有する。
【0019】
いくつかの実施例において、コンクリート本体110は一体的に成形される。いくつかの実施例では、攪拌混合を完了したコンクリートスラリーを所定の形状を有する金型に流し込んでから、養生及び型抜きを経ることで、一体的に成形された(例えば、壁111、112、113、114及び115が一体的に成形された)コンクリート本体110を製造可能である。
【0020】
いくつかの実施例において、コンクリート本体110は、組み立てられた複数の部分的構造部材又は壁(例えば、壁111、112、113、114及び115)を含んでもよい。いくつかの実施例では、攪拌混合を完了したコンクリートスラリーを所定の形状を有する金型に流し込んでから、養生及び型抜きを経ることで、複数の部分的構造部材又は壁を製造可能である。そして、複数の部分的構造部材又は壁を接続部材(例えば、ボルト)で接合するか、構造部材又は壁の継ぎ目をグラウト充填して接合することで、複数の部分的構造部材又は壁を組み立ててなるコンクリート本体110を形成する。
【0021】
遮熱層170は、収容空間S1の壁の1つ又は複数の内表面に設置可能である。例えば、遮熱層170は、壁111の内表面111a、壁112の内表面(図示しない)、壁113の内表面113a、壁114の内表面114a及び壁115の内表面115aに設置可能である。いくつかの実施例において、遮熱層170は、コンクリート本体110の複数の壁(例えば、壁111、112、113、114及び115)と直接接触する。いくつかの実施例において、遮熱層170は、コンクリート本体110の複数の壁(例えば、壁111、112、113、114及び115)の1つ又は複数の内表面と直接接触する。遮熱層170は、「断熱層」と称してもよい。いくつかの実施例において、遮熱層170は、キャビネット10の収容空間S1と外部環境との間における熱伝導を低減、阻害又は遮断するように構成される。
【0022】
いくつかの実施例において、遮熱層170は、耐熱温度が約1200℃~約1400℃の材料(例えば、耐熱温度が約1300℃の材料)を含むか、それにより構成される。いくつかの実施例において、遮熱層170は、耐熱温度が約600℃、700℃、又は800℃以上の材料を含むか、それにより構成される。いくつかの実施例において、遮熱層170の体積密度は約200kg/m3以下である。いくつかの実施例において、遮熱層170の体積密度は、約160kg/m3、140kg/m3、又は130kg/m3以下である。いくつかの実施例において、遮熱層170の体積密度は約120kg/m3~約160kg/m3である。いくつかの実施例において、遮熱層170の熱伝導率は約0.28W/m・K以下である。いくつかの実施例において、遮熱層170の熱伝導率は、約0.24W/m・K、0.14W/m・K、又は0.06W/m・K以下である。いくつかの実施例において、遮熱層170の加熱線収縮率は約2.4%~約3.0%、約2.6%~約2.8%、又は約2.7%である。いくつかの実施例において、加熱線収縮率は、サンプルを1200℃の温度で24時間加熱したあとに測定する。
【0023】
いくつかの実施例において、遮熱層170は、ロックウール、発泡ポリエチレン、セラミックファイバーブランケット、可溶性繊維ブランケット、又はこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施例において、遮熱層170は約3cm以下の厚さT2を有する。いくつかの実施例において、遮熱層170は、約2.5cm、2cm、1.5cm、1cm、0.5cm、又は0.2cm以下の厚さT2を有する。
【0024】
耐燃層120は、遮熱層170に設置可能であるとともに、収容空間S1に露出する。いくつかの実施例において、耐燃層120は遮熱層170と直接接触する。いくつかの実施例において、耐燃層120は、約600℃、700℃、800℃以上、或いは、約900℃~約1300℃の温度の火炎に耐え得るように構成される。
【0025】
いくつかの実施例において、耐燃層120は、耐熱温度が約1200℃~約1400℃の材料(例えば、耐熱温度が約1300℃の材料)を含むか、それにより構成される。いくつかの実施例において、耐燃層120の体積密度は約200kg/m3以上である。いくつかの実施例において、耐燃層120の体積密度は、約250kg/m3、260kg/m3、又は280kg/m3以上である。いくつかの実施例において、耐燃層120の体積密度は約250kg/m3~約300kg/m3である。いくつかの実施例において、遮熱層170の体積密度は耐燃層120の体積密度よりも低い。いくつかの実施例において、耐燃層120の熱伝導率は約0.20W/m・K以下である。いくつかの実施例において、耐燃層120の熱伝導率は、約0.17W/m・K、0.12W/m・K、又は0.07W/m・K以下である。いくつかの実施例において、耐燃層120の加熱線収縮率(1200℃/24時間)は、約3.2%~約4.0%、約3.4%~約3.8%、又は約3.6%である。いくつかの実施例において、遮熱層170の加熱線収縮率は耐燃層120の加熱線収縮率よりも低い。
【0026】
いくつかの実施例において、耐燃層120は、セラミックファイバーボード、可溶性繊維ブランケット、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施例において、耐燃層120と遮熱層170は、同じ又は類似の化学成分を含んでもよい。いくつかの実施例において、耐燃層120と遮熱層170は、いずれも、酸化ケイ素、酸化カルシウム及び酸化マグネシウムを含む。いくつかの実施例において、耐燃層120は約5cm以下の厚さT3を有する。いくつかの実施例において、耐燃層120は、約4.5cm、4cm、3cm、2.5cm、又は2cm以下の厚さT3を有する。
【0027】
いくつかの実施例において、キャビネット10は、約600℃以上の温度の火炎に連続2時間以上耐えられるように構成される。いくつかの実施例において、キャビネット10は、約900℃以上の温度の火炎に連続2時間以上耐えられるように構成される。いくつかの実施例において、キャビネット10は、約900℃以上~約1300℃の温度の火炎に連続2時間以上耐えられるように構成される。いくつかの実施例において、キャビネット10は、CNS 12514-1(又は、ISO 834-1)における2時間以上の耐燃との要求を満たす。いくつかの実施例において、コンクリート本体110、耐燃層120及び遮熱層170は、全体として、約600℃以上の温度の火炎に連続2時間以上耐えられるように構成される。いくつかの実施例において、コンクリート本体110、耐燃層120及び遮熱層170は、全体として、約900℃以上の温度の火炎に連続2時間以上耐えられるように構成される。いくつかの実施例において、コンクリート本体110、耐燃層120及び遮熱層170は、全体として、約900℃以上~約1300℃の温度の火炎に連続2時間以上耐えられるように構成される。いくつかの実施例において、コンクリート本体110、耐燃層120及び遮熱層170は、全体として、CNS 12514-1(又は、ISO 834-1)における2時間以上の耐燃との要求を満たす。
【0028】
戸130は、コンクリート本体110の開口117における側縁(例えば、側縁1171及び1172の少なくとも一方)に枢結可能である。いくつかの実施例において、戸枠130Aは開口117の側縁に設けられる。いくつかの実施例において、戸130は、戸枠130Aを介してコンクリート本体110の開口117に枢結可能である。いくつかの実施例において、戸130は、戸枠130Aを介してコンクリート本体110の開口117における側縁1171及び1172の少なくとも一方に枢結可能である。いくつかの実施例において、戸130は2枚の扉を含んでもよい。2枚の扉は左右両開きであり、且つ、コンクリート本体110の開口117における側縁1171及び1172にそれぞれ枢結される。いくつかの実施例において、戸130は、コンクリート本体110の開口117における側縁1171及び1172上の戸枠130Aに枢結される。いくつかの実施例において、戸130は1枚の扉を含んでもよく、扉の一方の側がコンクリート本体110の開口117における側縁1171又は側縁1172に枢結される。いくつかの実施例において、戸130は、戸枠130Aを介してコンクリート本体110の開口117における側縁1171又は側縁1172に枢結可能である。いくつかの実施例において、戸130は防火戸であってもよく、戸枠130Aは防火材料を含んでもよい。
【0029】
いくつかの実施例において、
図1Aに示すように、キャビネット10は1つの戸130を含む。且つ、戸130は、キャビネット10の1つの側面(壁112と対向する側面。つまり、開口117の存在する側面)の面積全体を覆う。いくつかのその他の実施例において、キャビネット10は、更に、壁111~115以外のもう1つの壁を含んでもよい。当該壁は、壁112と対向する側面に位置する。且つ、開口117は当該壁の一部の領域だけを露出させ、戸130は当該壁の開口117における側縁に枢結可能である。また、いくつかのその他の実施例において、キャビネット10は2つ以上の戸を含んでもよい。いくつかの実施例において、これらの戸は、同じ又は異なる壁(同じ又は異なる側面)に設置してもよい。且つ、これらの戸は異なる設計を有してもよい(例えば、それぞれを、2枚の扉が両開きとなる設計と、扉が1枚の設計としてもよい)。
【0030】
図2Aは、本開示のいくつかの実施例に基づくキャビネット10の一部の断面図を示し、
図2Bは、本開示のいくつかの実施例に基づくキャビネット10の一部の断面図を示す。いくつかの実施例において、
図2Aは、
図1Aの断面線2A-2A’に沿うキャビネット10の一部の断面図を示しており、
図2Bは、
図1Aの断面線2B-2B’に沿うキャビネット10の一部の断面図を示している。
【0031】
いくつかの実施例において、キャビネット10は緊締機構30を含んでもよい。耐燃層120及び遮熱層170は、緊締機構30によりコンクリート本体110に緊締される。いくつかの実施例において、緊締機構30は複数の緊締部材を含み、例えば、ナット及びスタッド(又は、ネジ)を含んでもよい。いくつかの実施例において、緊締機構30はスタッド310及びナット320を含む。スタッド310(緊締部材とも称する)は、耐燃層120、遮熱層170及びコンクリート本体110に螺合して緊締する。いくつかの実施例において、ナット320は、スタッド310に螺接するとともに耐燃層120に当接する。いくつかの実施例において、緊締機構30は、ナット330(緊締部材とも称する)を含んでもよい。スタッド310は、ナット330によりコンクリート本体110内に緊締される。
【0032】
いくつかの実施例において、緊締機構30は少なくとも1つの遮熱材料を含む。いくつかの実施例において、スタッド310及びナット330は、例えば、金属材料又はセラミック材料といった緊締部材の製造に適した材料を含んでもよい。いくつかの実施例において、スタッド310及びナット330は、ステンレス鋼(例えば、SUS304)を含むか、それにより構成されてもよい。いくつかの実施例において、ナット320は、上述した少なくとも1つの遮熱材料を含む。ナット320は、遮熱緊締部材と称してもよい。いくつかの実施例において、ナット320は、耐熱温度が約1200℃~約1400℃の材料(例えば、耐熱温度が約1300℃の材料)を含むか、それにより構成される。いくつかの実施例において、ナット320は、耐熱温度が約600℃、700℃又は800℃以上の材料を含むか、それにより構成される。いくつかの実施例において、ナット320は、セラミック材料を含むか、それにより構成されてもよい。
【0033】
いくつかの実施例において、キャビネット10は、更に、遮熱シール構造を含んでもよい。遮熱シール構造は、スタッド310を被覆するとともに、耐燃層120と緊締機構30の間の空隙を充填する。いくつかの実施例において、遮熱シール構造は、遮熱フィラー180と遮熱保護層182を含んでもよい。
【0034】
いくつかの実施例において、合わせて
図1Aを参照すると、コンクリート本体110は、コンクリート本体110の壁の外表面から外側へ突出する複数の突出構造110P(又は、突出リブ構造)を含む。緊締機構30の緊締部材(又は、スタッド310)は突出構造110P内まで延伸する。いくつかの実施例では、
図2Aに示すように、突出構造110Pの延伸方向(即ち、z軸方向)において、複数のスタッド310が1つの突出構造110P内まで延伸する。いくつかの実施例では、
図2Bに示すように、突出構造110Pの延伸方向と垂直な方向(即ち、y軸方向)において、各スタッド310がそれぞれに対応する突出構造110P内まで延伸する。いくつかの実施例において、突出構造110Pの高さH1はコンクリート本体110の壁の厚さT1よりも大きい。いくつかの実施例において、突出構造110Pの高さH1は遮熱層170の厚さT2よりも大きい。いくつかの実施例において、突出構造110Pの高さH1は耐燃層120の厚さT3よりも大きい。
【0035】
図3Aは、本開示のいくつかの実施例に基づくキャビネット10の一部の断面図を示す。いくつかの実施例において、
図3Aは、
図2Aの領域3Aにおける一部の断面図を示している。
【0036】
いくつかの実施例では、スタッド310を緊締部材の一例としてもよく、ナット320を遮熱緊締部材の一例としてもよい。いくつかの実施例において、スタッド310(又は、緊締部材)は、遮熱層170及び耐燃層120の開口120Hに挿設されて、コンクリート本体110に緊締される。いくつかの実施例において、ナット320(又は、遮熱緊締部材)はスタッド310に緊締される。いくつかの実施例において、遮熱シール構造は、スタッド310を被覆するとともに、開口120Hとスタッド310の間の少なくとも1つの空隙を充填する。いくつかの実施例において、ナット320(又は、遮熱緊締部材)は延伸部320Eを有する。延伸部320Eは耐燃層120の一部の表面を被覆する。いくつかの実施例において、延伸部320Eは、開口120Hとスタッド310の間の空隙を被覆する。
【0037】
いくつかの実施例において、スタッド310(又は、緊締部材)の端部310aは、ナット320(又は、遮熱緊締部材)のネジ孔320Hに挿通される。且つ、遮熱フィラー180が端部310aを被覆する。また、いくつかの実施例では、遮熱保護層182が遮熱フィラー180を被覆して接触する。いくつかの実施例において、遮熱保護層182は延伸部320Eの一部の表面を被覆する。いくつかの実施例において、遮熱保護層182は、遮熱フィラー180とナット320(又は、遮熱緊締部材)の間の空隙を被覆及び充填する。いくつかの実施例において、遮熱フィラー180及び遮熱保護層182で構成される遮熱シール構造はスタッド310を被覆して接触する。いくつかの実施例において、遮熱フィラー180及び遮熱保護層182は、スタッド310を完全に被覆して、スタッド310を外部から隔離する。いくつかの実施例において、ナット320、遮熱フィラー180及び遮熱保護層182は遮熱構造を構成する。当該遮熱構造は、耐燃層120の開口120Hを被覆するとともに、収容空間S1に露出する。いくつかの実施例において、遮熱保護層182は遮熱フィラー180を被覆するとともに収容空間S1に露出する。
【0038】
いくつかの実施例において、ナット320(又は、遮熱緊締部材)は、耐熱温度が約1300℃~約1400℃の材料を含むか、それにより構成される。いくつかの実施例において、ナット320(又は、遮熱緊締部材)は、耐熱温度が約600℃、700℃又は800℃以上の材料を含むか、それにより構成される。いくつかの実施例において、ナット320(又は、遮熱緊締部材)は、セラミック材料を含むか、それにより構成されてもよい。いくつかの実施例において、遮熱フィラー180はセラミックウールを含む。いくつかの実施例において、遮熱フィラー180は、セラミックファイバー、可溶性繊維又は上記の組み合わせを含む。いくつかの実施例において、遮熱保護層182は遮熱ペースト(例えば、セラミックペースト)を含む。いくつかの実施例において、遮熱保護層182はセラミックファイバー及び無機接着剤を含む。
【0039】
本開示のいくつかの実施例によれば、金属材質を有するスタッド310は、セラミック材料を有するナット320、遮熱フィラー180(例えば、セラミックウール)及び遮熱保護層182(例えば、セラミックペースト)により保護される。セラミック材料の熱伝導率は金属の熱伝導率よりも遥かに低いため、熱エネルギーがスタッド310に伝わりにくくなる。これにより、熱エネルギーがスタッド310を通じて更にコンクリート本体110に伝わるとの事態が生じにくくなるため、コンクリート本体110の構造が破壊されることがない。よって、上記の設計は、キャビネット10の耐火性及び防護性を向上させるとの効果を有する。
【0040】
更に、本開示のいくつかの実施例によれば、ナット320(又は、遮熱緊締部材)は、例えばセラミック材料のような耐熱温度が約1200℃~約1400℃の材料(例えば、耐熱温度が約1300℃の材料)を含むか、それにより構成される。よって、金属材質のナットが高熱により軟化するとの事態を効果的に回避可能であり、有効となり得る。例えば、SUS304で製造されるナットの最高耐熱温度は約800℃であるため、高温により軟化することで、耐燃層120と遮熱層170の剥離及び破損を招来してしまう。
【0041】
図3Bは、本開示のいくつかの実施例に基づくキャビネット10の一部の概略図を示す。いくつかの実施例において、
図3Bは、
図3Aの耐燃層120、遮熱保護層182及びナット320(又は、遮熱緊締部材)の一部の概略図を示している。
【0042】
いくつかの実施例において、遮熱保護層182の表面粗さは耐燃層120の表面粗さよりも大きい。いくつかの実施例において、遮熱保護層182の表面粗さはナット320(又は、遮熱緊締部材)の表面粗さよりも大きい。いくつかの実施例において、遮熱保護層182の表面粗さは延伸部320Eの表面粗さよりも大きい。いくつかの実施例において、遮熱保護層182の表面は微細構造を有する。いくつかの実施例において、遮熱保護層182の表面は不規則な輪郭を有する。いくつかの実施例において、遮熱保護層182は不均一な高さ又は厚さを有する。いくつかの実施例において、遮熱保護層182は非対称な形状又はパターンを有する。いくつかの実施例において、遮熱保護層182は不規則な周辺輪郭を有する。
【0043】
図3Cは、本開示のいくつかの実施例に基づくキャビネット10の一部の断面図を示す。いくつかの実施例において、
図3Cは、
図2Aの領域3Aにおける一部の断面図を示している。
【0044】
いくつかの実施例において、ナット320は耐燃層120の開口120H内に位置する。いくつかの実施例において、遮熱フィラー180はスタッド310の端部310aとナット320を被覆する。いくつかの実施例において、遮熱フィラー180は耐燃層120の開口120H内に充填される。いくつかの実施例において、遮熱保護層182は遮熱フィラー180及び耐燃層120の一部の表面を被覆する。いくつかの実施例において、遮熱保護層182は、遮熱フィラー180と開口120Hの間の空隙を被覆及び充填する。
【0045】
いくつかの実施例において、遮熱フィラー180及び遮熱保護層182は、スタッド310を完全に被覆して、スタッド310を外部から隔離する。いくつかの実施例において、遮熱フィラー180及び遮熱保護層182は、ナット320を完全に被覆して、ナット320を外部から隔離する。いくつかの実施例において、
図3Cに示すナット320は、例えば、金属材料又はセラミック材料といった緊締部材の製造に適した材料を含んでもよい。
【0046】
図4Aは、本開示のいくつかの実施例に基づくキャビネット10の一部の概略図を示す。いくつかの実施例において、
図4Aは、コンクリート本体110、遮熱層170及び耐燃層120の一部の概略図を示している。
【0047】
いくつかの実施例において、耐燃層120は互いに連続的に係接される複数の耐燃ボードを含む。且つ、複数の耐燃ボードの間の少なくとも1つの接続界面(例えば、接続界面120S及び120S’)は非平面の表面である。いくつかの実施例において、複数の耐燃ボードの間の少なくとも1つの接続界面(例えば、接続界面120S及び120S’)は段差状の断面輪郭を有する。いくつかの実施例において、1つ又は複数の緊締機構30は、互いに係接される2つの耐燃ボードに挿設されて、耐燃ボードと遮熱層170をコンクリート本体110(例えば、壁112)に緊締する。いくつかの実施例において、耐燃ボードの間の接続界面(例えば、接続界面120S及び120S’)は耐燃ボードの間の接触表面である。いくつかの実施例において、遮熱保護層182は、更に、互いに係接される耐燃ボードの間の空隙を被覆及び充填可能である。いくつかの実施例において、遮熱保護層182は耐燃ボードの一部表面を被覆可能である。
【0048】
いくつかの実施例において、接続界面120S及び120S’は異なる段差状の断面輪郭を有する。いくつかの実施例において、接続界面120S’の長さは接続界面120Sの長さよりも大きい。いくつかの実施例において、接続界面120S’のx軸方向の延伸長さは、接続界面120Sのz軸方向の延伸長さよりも大きい。いくつかの実施例において、接続界面120S’の面積は接続界面120Sの面積よりも大きい。いくつかの実施例において、接続界面120S’の接触面積は接続界面120Sの接触面積よりも大きい。いくつかの実施例において、接続界面120S’の段差面は接続界面120Sの段差面よりも大きい。
【0049】
耐燃ボードを並列にキャビネット上に貼り付けた場合には、熱を受けたときに耐燃ボードが収縮し、耐燃ボード間の隙間が大きくなることで、火炎が容易に隙間を通過してキャビネットの裏面温度(即ち、キャビネットの壁における外部壁面の温度)を上昇させる恐れがある。これに対し、本開示のいくつかの実施例によれば、耐燃ボードを互い違いに貼り付け又は設置することで、係接される耐燃ボードの間に非平面の表面である接続界面が形成される。よって、熱を受けたときに耐燃ボードが収縮して耐燃ボード間の隙間が大きくなったとしても、非平面の表面である接続界面で形成される隙間はダイレクトに貫通する通路ではなく、屈曲した通路であるため、火炎が容易に通過するとの事態を効果的に回避できる。例えば、
図4Aに示す接続界面120S’は段差状の断面輪郭を有するため、耐燃ボードが熱を受けて収縮し、接続界面120S’に沿って隙間が形成された場合にも、隙間は耐燃ボードから遮熱層170までダイレクトに貫通するわけではない。よって、火炎は、まず位置P1から隙間に進入すると、続いて接続界面120S’の段差面に遮られて方向転換を余儀なくされ、その後、位置P2に向かって耐燃ボードから抜けようとする。こうすることで、火炎が耐燃層120を通過するとの事態を効果的に阻止できるため、キャビネットの裏面温度(即ち、キャビネットの壁における外部壁面の温度)の上昇幅を効果的に低下させられる。
【0050】
加えて、本開示のいくつかの実施例によれば、遮熱保護層182は、更に、互いに係接される耐燃ボードの間の空隙(又は、隙間)を被覆及び充填する。これにより、火炎が耐燃層120を通過するとの事態をいっそう効果的に阻止できるため、キャビネットの裏面温度(即ち、キャビネットの壁における外部壁面の温度)の上昇幅をいっそう効果的に低下させられる。
【0051】
図4Bは、本開示のいくつかの実施例に基づくキャビネット10の一部の分解図を示す。いくつかの実施例において、
図4Bは、コンクリート本体110、遮熱層170及び耐燃層120の一部の概略図を示している。キャビネット10の一部の構造を明瞭に提示及び記載するために、
図4Bではいくつかの部材を省略しており、図示していない。例えば、耐燃層120の一部の耐燃ボード(例えば、耐燃ボード121及び122)のみを図示している。
【0052】
いくつかの実施例において、耐燃ボード121の側面1211は段差構造(又は、第1段差構造と称する)を有し、耐燃ボード122の側面1221は段差構造(又は、第2段差構造と称する)を有する。且つ、2つの段差構造が互いに係合することで耐燃ボード121と耐燃ボード122が接続される。いくつかの実施例において、緊締機構30は、耐燃ボード121の段差構造、耐燃ボード122の段差構造及び遮熱層170に挿設されて、遮熱層170と耐燃層120をコンクリート本体110に緊締する。
【0053】
いくつかの実施例において、耐燃ボード121の側面1211は突縁1211Pを有し、耐燃ボード122の側面1221は凹溝1221Rを有する。且つ、突縁1211Pが凹溝1221R内に設けられることで、耐燃ボード121と耐燃ボード122が接続される。いくつかの実施例において、耐燃ボード121の側面1211は凹溝1211Rを有し、耐燃ボード122の側面1221は突縁1221Pを有する。且つ、突縁1221Pが凹溝1211R内に設けられることで、耐燃ボード121と耐燃ボード122が接続される。いくつかの実施例において、突縁1211Pと凹溝1211Rは耐燃ボード121の段差構造を規定し、突縁1221Pと凹溝1221Rは耐燃ボード122の段差構造を規定する。
【0054】
いくつかの実施例において、耐燃ボード121の側面1212は突縁1212Pと凹溝1212Rを有する。いくつかの実施例において、凹溝1211Rと凹溝1212Rは互いに連通している。いくつかの実施例において、突縁1211Pと突縁1212Pは実質的に同じ厚さを有する。いくつかの実施例において、突縁1211Pと突縁1212Pの厚さは耐燃ボード121の最大厚さのおよそ半分である。いくつかの実施例において、耐燃ボード121の突縁1211Pは、側面1211(又は、接続界面と称する)の段差状の断面輪郭(又は、第1の段差状の断面輪郭と称する)を規定し、耐燃ボード121の突縁1212Pは、側面1212(又は、接続界面と称する)の段差状の断面輪郭(又は、第2の段差状の断面輪郭と称する)を規定する。いくつかの実施例において、突縁1211Pの延伸長さL1は突縁1212Pの延伸長さL2よりも大きい。いくつかの実施例において、耐燃ボード121の側面1212における突縁1212Pと凹溝1212Rは、別の耐燃ボード(例えば、
図4Cの耐燃ボード123)の段差構造と係合して耐燃ボード121と別の耐燃ボードを接続するための段差構造を規定可能である。
【0055】
いくつかの実施例において、耐燃ボード122の側面1222は突縁1222Pと凹溝1222Rを有する。いくつかの実施例において、突縁1221Pと突縁1222Pは実質的に同じ厚さを有する。いくつかの実施例において、突縁1221Pと突縁1222Pの厚さは耐燃ボード122の最大厚さのおよそ半分である。いくつかの実施例において、耐燃ボード122の突縁1221Pは、側面1221(又は、接続界面と称する)の段差状の断面輪郭(又は、第3の段差状の断面輪郭と称する)を規定し、耐燃ボード122の突縁1222Pは、側面1222(又は、接続界面と称する)の段差状の断面輪郭(又は、第4の段差状の断面輪郭と称する)を規定する。いくつかの実施例において、突縁1221Pの延伸長さL1aは突縁1222Pの延伸長さL2aよりも大きい。いくつかの実施例において、耐燃ボード122の側面1222における突縁1222Pと凹溝1222Rは、別の耐燃ボード(例えば、
図4Cの耐燃ボード124)の段差構造と係合して耐燃ボード122と別の耐燃ボードを接続するための段差構造を規定可能である。
【0056】
いくつかの実施例において、耐燃ボード122の側面1223は突縁1223Pと凹溝1223Rを有する。いくつかの実施例において、突縁1223Pと突縁1222Pは実質的に同じ厚さを有する。いくつかの実施例において、突縁1223Pと突縁1222Pの厚さは耐燃ボード122の最大厚さのおよそ半分である。いくつかの実施例において、耐燃ボード122の突縁1223Pは、側面1223(又は、接続界面と称する)の段差状の断面輪郭(又は、第5の段差状の断面輪郭と称する)を規定する。いくつかの実施例において、突縁1223Pの延伸長さL1a’は突縁1222Pの延伸長さL2aよりも大きい。いくつかの実施例において、耐燃ボード122の側面1223における突縁1223Pと凹溝1223Rは、別の耐燃ボード(例えば、
図4Cの耐燃ボード125)の段差構造と係合して耐燃ボード122と別の耐燃ボードを接続するための段差構造を規定可能である。
【0057】
図4Cは、本開示のいくつかの実施例に基づくキャビネット10の一部の分解図を示す。いくつかの実施例において、
図4Cは、耐燃層120における複数の耐燃ボードの一部の概略図を示している。キャビネット10の一部の構造を明瞭に提示及び記載するために、
図4Cではいくつかの部材を省略しており、図示していない。
【0058】
いくつかの実施例において、耐燃層120は、互いに連続的に係接される複数の耐燃ボード(例えば、耐燃ボード121、122、123、124、125、126、127、128、129、129A、129B及び129C)を含んでもよい。
【0059】
いくつかの実施例において、耐燃ボード123の側面1231は突縁1231Pと凹溝1231Rを有し、耐燃ボード123の側面1232は突縁1232Pと凹溝1232Rを有する。いくつかの実施例において、凹溝1231Rと凹溝1232Rは互いに連通している。いくつかの実施例において、突縁1231Pと突縁1232Pは実質的に同じ厚さを有する。いくつかの実施例において、突縁1231Pと突縁1232Pの厚さは耐燃ボード123の最大厚さのおよそ半分である。いくつかの実施例において、耐燃ボード123の突縁1231Pは、側面1231(又は、接続界面と称する)の段差状の断面輪郭を規定し、耐燃ボード123の突縁1232Pは、側面1232(又は、接続界面と称する)の段差状の断面輪郭を規定する。いくつかの実施例において、突縁1231Pの延伸長さL1bは突縁1232Pの延伸長さL2bよりも大きい。いくつかの実施例において、耐燃ボード123の側面1232における突縁1232Pと凹溝1232Rは、耐燃ボード121の段差構造と係合して耐燃ボード123と耐燃ボード121を接続するための段差構造を規定可能である。
【0060】
いくつかの実施例において、耐燃ボード124の側面1241は突縁1241Pと凹溝1241Rを有し、耐燃ボード124の側面1242は突縁1242Pと凹溝1242Rを有し、耐燃ボード124の側面1243は突縁1243Pと凹溝1243Rを有し、耐燃ボード124の側面1244は突縁1244Pと凹溝1244Rを有する。いくつかの実施例において、突縁1241P、突縁1242P、突縁1243P及び突縁1244Pは実質的に同じ厚さを有する。いくつかの実施例において、突縁1241P、突縁1242P、突縁1243P及び突縁1244Pの厚さは耐燃ボード124の最大厚さのおよそ半分である。いくつかの実施例において、耐燃ボード124の突縁1241Pは、側面1241(又は、接続界面と称する)の段差状の断面輪郭を規定し、耐燃ボード124の突縁1242Pは、側面1242(又は、接続界面と称する)の段差状の断面輪郭を規定し、耐燃ボード124の突縁1243Pは、側面1243(又は、接続界面と称する)の段差状の断面輪郭を規定する。いくつかの実施例において、突縁1241Pの延伸長さL1cは突縁1231Pの延伸長さL1bとほぼ等しい。いくつかの実施例において、突縁1241Pの延伸長さL1cと突縁1243Pの延伸長さL1c’は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。いくつかの実施例において、耐燃ボード124の側面1241における突縁1241Pと凹溝1241Rは、耐燃ボード123の段差構造と係合して耐燃ボード123と耐燃ボード124を接続するための段差構造を規定可能である。いくつかの実施例において、耐燃ボード124の側面1242における突縁1242Pと凹溝1242Rは、耐燃ボード122の段差構造と係合して耐燃ボード122と耐燃ボード124を接続するための段差構造を規定可能である。いくつかの実施例において、耐燃ボード124の側面1243における突縁1243Pと凹溝1243Rは、耐燃ボード126の段差構造と係合して耐燃ボード124と耐燃ボード126を接続するための段差構造を規定可能である。
【0061】
いくつかの実施例において、耐燃層120の各耐燃ボードは、いずれも、隣接する別の耐燃ボードの段差構造と係合することでこれら2つの耐燃ボードを接続するための少なくとも1つの段差構造を有する。いくつかの実施例において、耐燃層120の各耐燃ボードは、少なくとも2つの隣り合う側面に、隣接する2つの耐燃ボードの段差構造とそれぞれ係合することでこれら3つの耐燃ボードを接続するための段差構造を1つずつ有する。いくつかの実施例において、耐燃層120の各耐燃ボードにおける少なくとも2つの接続界面(又は、接触表面)はいずれも非平面の表面であり、例えば段差構造を有する。例えば、いくつかの実施例において、耐燃ボード121と耐燃ボード122の間の接続界面120S’(即ち、側面1211と側面1221との接触表面)と、耐燃ボード121と耐燃ボード123の間の接続界面120S(即ち、側面1212と側面1232との接触表面)は、互いに隣り合うとともに、いずれも非平面の表面となっている。
【0062】
図4Dは、本開示のいくつかの実施例に基づくキャビネットの一部の断面図を示す。いくつかの実施例において、
図4Dは、
図4A~
図4Cの一部領域における一部の断面図を示している。
【0063】
いくつかの実施例では、スタッド310を緊締部材の一例としてもよく、ナット320を遮熱緊締部材の一例としてもよい。いくつかの実施例において、スタッド310(又は、緊締部材)は、遮熱層170の開口170H、耐燃ボード121の開口121H及び耐燃ボード122の開口122Hに挿設されて、コンクリート本体110に緊締される。いくつかの実施例において、ナット320(又は、遮熱緊締部材)はスタッド310に緊締される。いくつかの実施例において、遮熱シール構造は、スタッド310を被覆するとともに、開口122Hとスタッド310の間の少なくとも1つの空隙を充填する。いくつかの実施例において、ナット320(又は、遮熱緊締部材)は延伸部320Eを有する。延伸部320Eは耐燃ボード122の一部の表面を被覆する。いくつかの実施例において、延伸部320Eは、開口122Hとスタッド310の間の空隙を被覆する。
【0064】
いくつかの実施例において、開口122Hは段差式の幅を有している。いくつかの実施例において、開口122Hにおけるスタッド310の端部310aに近接する部分(又は、第1部分と称する)は大きめの幅を有しており、開口122Hにおける開口121Hに近接する部分(又は、第2部分と称する)は小さめの幅を有している。いくつかの実施例において、開口122Hの第2部分の幅は、開口121Hの幅とほぼ同じか異なっている。いくつかの実施例において、開口122Hの第2部分と開口121Hは、互いにずらされているか、整列していない。いくつかの実施例において、開口170Hの幅は開口121Hの幅以上である。いくつかの実施例において、開口170Hと開口121Hは、互いにずらされているか、整列していない。
【0065】
いくつかの実施例において、スタッド310(又は、緊締部材)の端部310aは、ナット320(又は、遮熱緊締部材)のネジ孔320Hに挿通される。且つ、遮熱フィラー180が端部310aを被覆する。また、いくつかの実施例では、遮熱保護層182が遮熱フィラー180を被覆して接触する。いくつかの実施例において、遮熱保護層182は延伸部320Eの一部の表面を被覆する。いくつかの実施例において、遮熱保護層182は、遮熱フィラー180とナット320(又は、遮熱緊締部材)の間の空隙を被覆及び充填する。いくつかの実施例において、遮熱フィラー180及び遮熱保護層182で構成される遮熱シール構造はスタッド310を被覆して接触する。いくつかの実施例において、遮熱フィラー180及び遮熱保護層182は、スタッド310を完全に被覆して、スタッド310を外部から隔離する。いくつかの実施例において、ナット320、遮熱フィラー180及び遮熱保護層182は遮熱構造を構成する。当該遮熱構造は、耐燃ボード122の開口122Hを被覆するとともに、収容空間S1に露出する。いくつかの実施例において、遮熱保護層182は遮熱フィラー180を被覆するとともに収容空間S1に露出する。
【0066】
図5Aは、本開示のいくつかの実施例に基づく電池システム20の概略図を示し、
図5Bは、本開示のいくつかの実施例に基づく電池パック210の概略図を示す。電池パック210の主な構造を明瞭に提示及び記載するために、
図5Bではいくつかの部材を省略しており、図示していない。
【0067】
いくつかの実施例において、キャビネット10は、少なくとも1つの電池システム20を収容するように構成される。いくつかの実施例において、電池システム20は複数の電池パック(pack)210を含んでもよい。また、各電池パック210は複数のバッテリを含んでもよい。いくつかの実施例において、電池システム20は収容ボックス220を含んでもよく、電池パック210は収容ボックス220内に設けられる。
【0068】
いくつかの実施例において、電池パック210は複数のバッテリ211とハウジング215を含んでもよく、バッテリ211はハウジング215内に設けられる。いくつかの実施例において、各バッテリ211は複数の電池213を含んでもよい。いくつかの実施例において、電池213は円筒形リチウムイオン電池又はその他のタイプの電池であってもよい。例えば、円筒形リチウムイオン電池は、18650電池、21700電池、又はその他のタイプのリチウムイオン電池であってもよい。いくつかの実施例において、電池パック210内の複数のバッテリ211は互いに直列に接続され、バッテリ211内の電池213は互いに並列に接続される。いくつかの実施例において、電池213の正極及び負極の延伸方向はハウジング215の底板の延伸方向と垂直である。
【0069】
バッテリ211内の電池213(例えば、リチウム電池)は、充電及び放電の過程において、各種の要因(例えば、過充電、衝撃、電子制御システムのエラー、操作環境又は製造プロセスの瑕疵)により、リチウムイオンが電池のセパレータを貫くことがある。この場合、正極と負極が接触して短絡が形成される結果、高熱化学反応が生じて電池内の可燃性有機成分が発火する。リチウム電池の熱暴走に伴い生じる高温は600~1000℃或いはそれ以上にも達する恐れがある。発火した電池213から周囲に向かってこれらの熱エネルギーが拡散すると、それに応じて、隣り合うその他の電池213のセルも昇温する。そして、セルの許容温度を超えた場合(例えば、リチウム電池の許容温度は約150℃)、隣り合う昇温したセルが自己発熱することで、バッテリ211ないしは電池システム20全体に延焼してしまう。また、電池内部の正極材の燃焼は内部材料の化学反応により生じるため、火炎の持続的な発生が招来されて、火炎の温度が600~1000℃にも達する恐れがある。
【0070】
本開示のいくつかの実施例によれば、キャビネット10は、コンクリート本体110、遮熱層170及び耐燃層120を含む複合構造となっているため、リチウム電池の熱暴走に伴い生じる高温の火炎をキャビネット10内に効果的に規制するとともに、熱伝導を効果的に阻害することが可能である。これにより、高熱がキャビネット10の内部からキャビネット10の外部に伝わることがなくなるため、リチウム電池の熱暴走に伴い生じる高温の火炎及び高熱をキャビネット10内に規制できる。加えて、リチウム電池の熱暴走に伴い生じる高温の火炎及び高熱をキャビネット10の内部に規制できるため、これと連携して、キャビネット10の内部へ放水するだけで、火炎の広がりに起因する火災事故の発生を防止できる。また、これにより、事故対応のプロセスをより便利且つ安全とすることが可能となる。
【0071】
加えて、従来の金属製コンテナをエネルギー貯蔵キャビネットとして用いる場合には、高温となったときに金属に変形やねじれ、屈曲等の状況が発生しやすく、金属製コンテナが崩壊する結果、火炎が外部に延焼し、火が容易に広がって制御困難となる。これに対し、本開示のいくつかの実施例によれば、キャビネット10のコンクリート本体110は高圧縮強度と高曲げ強度を有する。よって、コンクリート本体110、遮熱層170及び耐燃層120という複合構造は、高温環境に遭遇したとしても、軟化や変形を生じて崩壊することがなく、事故対応のプロセスをより便利且つ安全とすることが可能である。加えて、本開示のコンクリート本体110は、鉄筋の埋め込みが不要であるか、少量の鉄筋を埋め込むだけで、キャビネット10に十分な構造強度を付与可能である。よって、従来の鉄筋コンクリートと比較して、本開示のキャビネット10は、薄めの厚さと軽めの重量を有することができ、輸送にいっそう有利となる。
【0072】
図6Aは、本開示のいくつかの実施例に基づくエネルギー貯蔵装置1Aの透視図を示す。エネルギー貯蔵装置1Aは、キャビネット10及び1つ又は複数の電池システム20を含む。
【0073】
いくつかの実施例において、電池システム20はキャビネット10に固定的に接続される。いくつかの実施例において、電池システム20は、緊締構造(図示しない)によって、キャビネット10のコンクリート本体110における1つ又は複数の壁に緊締可能である。例えば、
図6Aに示すように、電池システム20は、キャビネット10のコンクリート本体110における壁114及び115に緊締可能である。
【0074】
図6Bは、本開示のいくつかの実施例に基づくエネルギー貯蔵装置1Bの透視図を示す。エネルギー貯蔵装置1Bは、キャビネット10及び1つ又は複数の電池システム20を含む。
【0075】
いくつかの実施例において、コンクリート本体110は、更に、収容空間S1を複数のサブスペース(例えば、サブスペースS11及びS12)に分割するための隔壁116を含んでもよい。いくつかの実施例において、耐燃層120と遮熱層170は、隔壁116における対向する2つの面116a及び116bに設けられる。
【0076】
いくつかの実施例において、コンクリート本体110のサブスペースS11及びサブスペースS12内には、それぞれ、1つ又は複数の電池システム20を設けてもよい。いくつかの実施例において、複数の電池システム20は、それぞれ、サブスペースS11内の1つ又は複数の壁(例えば、壁112、113、114及び115)と、サブスペースS12内の1つ又は複数の壁(例えば、壁111、112、114及び115)に緊締してもよい。また、いくつかの実施例において、サブスペースS11内の電池システム20は隔壁116に緊締してもよい。また、いくつかの実施例において、サブスペースS12内の電池システム20は隔壁116に緊締してもよい。
【0077】
本開示のいくつかの実施例によれば、隔壁116の設計によって、個々のサブスペース内における電池システムの熱暴走をそのサブスペース内に規制可能となるため、ほかのサブスペースないしはキャビネット10の内部全体に火炎が広がる可能性が低下する。従って、火炎の広がりに起因する火災事故の発生をいっそう効果的に防止できる。
【0078】
図7Aは、本開示のいくつかの実施例に基づくキャビネット10の戸130’の分解図を示す。
【0079】
いくつかの実施例において、戸130’の1枚の扉は、コンクリート層131、遮熱層170及び耐燃層120を含む。コンクリート層131は遮熱層170と直接接触可能であり、遮熱層170は耐燃層120と直接接触可能である。いくつかの実施例において、遮熱層170はコンクリート層131と耐燃層120の間に設置可能である。
【0080】
図7Bは、本開示のいくつかの実施例に基づくキャビネットの戸130’の一部の断面図を示す。
【0081】
いくつかの実施例において、コンクリート層131、遮熱層170及び耐燃層120は、いずれも扉枠133内に取り付けられる。コンクリート層131、遮熱層170及び耐燃層120は、係合方式、接続部材(例えば、ボルト)による接合、或いは、その他の適切な方式で扉枠133内に組み付けられる。いくつかの実施例において、コンクリート層131、遮熱層170及び耐燃層120の合計厚さは、扉枠133の厚さ以下である。
【0082】
以下に、本開示のいくつかの実施例に基づき、キャビネットに用いられる耐燃層120及び遮熱層170の特性及び利点を示す例示的実施例の実験結果を提示する。実施例のキャビネットの構造は
図4Aに示す通りとした。収容空間S1に露出する内部壁面(即ち、耐燃ボード120の表面)に1050℃の火炎を継続的に30分、60分、90分及び120分吹き付けてから、その時点におけるキャビネットの外部壁面(即ち、コンクリート本体の壁の外表面)の温度(裏面温度とも称する)をそれぞれ測定した。表1は、実施例1及び2の複数の測定位置における裏面温度(単位は℃)を示している。実施例E1では、厚さ2.5cmの遮熱層170に厚さ5cmの耐燃層120を組み合わせ、実施例E2では、厚さ1cmの遮熱層170に厚さ4cmの耐燃層120を組み合わせた。また、コンクリート本体110の壁の厚さはいずれも2.5cmであった。遮熱層170の材料は生体溶解性繊維(AES)ウールとし、耐燃層120の材料はAESボードとした。実施例E1及びE2では、いずれも、上記の緊締機構30により耐燃層120及び遮熱層170をコンクリート本体の壁に緊締するとともに、遮熱シール構造を設けた。
図8は、本開示のいくつかの実施例に基づく裏面温度測定位置の概略図を示す。測定位置T01は壁面の真中に近接する位置である。また、測定位置T02、T04、T28及びT30は、それぞれ、位置T01と壁面の四隅との接続線におけるほぼ中心点の位置である。「AVG」は上記5つの点の平均温度を表し、「MAX」は、測定された最高裏面温度とその対応位置を表す。
【0083】
【0084】
表2は、更に、実施例E1~E5の実験結果を示す。実施例E1~E5は、異なる厚さの耐燃層120と遮熱層170を組み合わせた点でのみ異なっていた。表2は、実施例E1~E5の複数の測定位置で測定された裏面温度の平均温度(火炎を継続的に120分吹き付けたあと)を示している。なお、緊締機構30の長さは8cmとし、各測定位置の平均開始温度は35℃とした。
【0085】
【0086】
CNS 12514の規定より、温度測定面の平均温度は「室温+140℃」未満となる必要があり、温度測定面の一点の最高温度は「室温+180℃」未満となる必要があった。表1及び表2から明らかなように、測定位置の平均開始温度35℃を室温と規定した場合には、温度測定面の平均温度が175℃未満であれば上記の規定を満たし、温度測定面の一点の最高温度が215℃未満であれば上記の規定を満たした。表1~表2の結果から明らかなように、遮熱層170の厚さが0.5cmよりも大きい場合、どの厚さの耐燃層120と組み合わせても、CNS 12514の規定を満たすことができた。
【0087】
加えて、使用場所が屋外空間の場合には、室温が35℃未満となる可能性がある。しかし、仮に室温を相対的に低い14.5℃に規定したとしても、温度測定面の平均温度が154.5℃未満であれば上記の規定を満たし、温度測定面の一点の最高温度が194.5°C未満であれば上記の規定を満たした。表1~表2の結果から明らかなように、厚さ1cm以上の遮熱層170に厚さ4cm以上の耐燃層120を組み合わせた場合には、いずれもCNS 12514の規定を満たすことができた。以上の結果から明らかなように、本開示のいくつかの実施例に基づくキャビネットは、リチウム電池の熱暴走に伴い生じる高温の火炎及び高熱をキャビネットの内部に規制可能なため、防火性、耐燃性及び遮熱性という良好な特性を有する。
【0088】
本文中で使用する「およそ」、「実質的に」、「基本的に」及び「約」との用語は、小さな変動について記載及び考慮するために用いられる。事柄又は事態と組み合わせて使用する場合、用語は、事柄又は事態が明らかに発生する状況と、事柄又は事態の発生に極めて近い状況を示し得る。一例を挙げると、数値と組み合わせて使用する場合、これらの用語は、その数値の±10%以下の変動範囲、例えば、±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、又は±0.05%以下の変動範囲を示し得る。また、一例を挙げると、2つの値の差が、それらの値の平均値の±10%以下である場合、例えば、±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、又は±0.05%以下である場合、2つの数値は「実質的に」又は「約」同一であるとみなしてもよい。また、一例を挙げると、「実質的に」平行であるとは、0°に対して±10°以下の角度の変動範囲、例えば、±5°以下、±4°以下、±3°以下、±2°以下、±1°以下、±0.5°以下、±0.1°以下、又は±0.05°以下の角度の変動範囲を示し得る。また、一例を挙げると、「実質的に」垂直であるとは、90°に対して±10°以下の角度の変動範囲、例えば、±5°以下、±4°以下、±3°以下、±2°以下、±1°以下、±0.5°以下、±0.1°以下、又は±0.05°以下の角度の変動範囲を示し得る。
【0089】
2つの表面同士の変位が5μm以下、2μm以下、1μm以下又は0.5μm以下の場合には、2つの表面が共面又は実質的に共面であるとみなしてもよい。
【0090】
本文中で使用する「導電(conductive)」、「電気伝導(electrically conductive)」及び「導電率」とは、電流を送る能力を意味する。また、通常、導電性材料とは、電流の流れに対し極めて小さい抵抗又はゼロ抗力を示す材料のことである。導電率の単位の一つはジーメンス/メートル(S/m)である。通常、導電性材料は、約104S/mよりも大きな(例えば、少なくとも105S/m又は少なくとも106S/m)導電率を有する材料である。材料の導電率は、温度に伴い変化し得る場合がある。よって、別途規定している場合を除き、材料の導電率は室温で測定する。
【0091】
文脈で別途明瞭に規定している場合を除き、本文中で使用する単数形の「一の(a/an)」及び「当該」との用語は、複数の対象物を含み得る。また、いくつかの実施例の記載において、ユニットが別のユニットの「上」又は「上方」に設けられている場合には、前者のユニットが後者のユニット上に直接位置する(例えば、実体と接触する)場合と、1つ又は複数の介在ユニットが前者のユニットと後者のユニットの間に位置する場合を含み得る。
【0092】
本開示における特定の実施例を参照して本開示につき記載及び説明したが、これらの記載及び説明は本開示を制限するものではない。当業者は、添付の特許請求の範囲で規定される本開示の真の精神及び範疇を逸脱しなければ、各種の変更が可能であり、且つ、実施例において等価のユニットに置き換え可能であることを明瞭に理解し得る。また、図面は必ずしも比率通りに記載しているとは限らない。製造工程における変数等に起因して、本開示におけるプロセスの再現と実際の機器との間には違いが存在し得る。また、具体的に示していない本開示のその他の実施例が存在し得る。明細書及び図面は、説明のためのものとみなすべきであり、制限するためのものではない。また、修正を行うことで、具体的な状況、材料、物質の構成、方法又は手順を本開示の目標、精神及び範疇に適応させてもよい。この種の全ての修正は、添付の特許請求の範囲の範疇内にあるようにされたい。なお、本文中で開示した方法については、特定の順序で実行される特定の操作を参照して記載したが、本開示の教示を逸脱しなければ、これらの操作を組み合わせたり、更に細分化したり、順序を並べ替えたりすることで等価の方法を形成し得るものと理解可能である。よって、本文中で具体的に示している場合を除き、操作の順序及び区分は本開示を制限するものではない。
【符号の説明】
【0093】
1A エネルギー貯蔵装置
1B エネルギー貯蔵装置
2A-2A’ 断面線
2B-2B’ 断面線
3A 領域
10 キャビネット
20 電池システム
30 緊締機構
110 コンクリート本体
110P 突出構造
111 壁
111a 内表面
112 壁
113 壁
113a 内表面
114 壁
114a 内表面
115 壁
115a 内表面
116 隔壁
117 開口
120 耐燃層
120H 開口
120S 接続界面
120S’ 接続界面
121 耐燃ボード
121H 開口
122 耐燃ボード
122H 開口
123 耐燃ボード
124 耐燃ボード
125 耐燃ボード
126 耐燃ボード
127 耐燃ボード
128 耐燃ボード
129 耐燃ボード
129A 耐燃ボード
129B 耐燃ボード
129C 耐燃ボード
130 戸
130’ 戸
130A 戸枠
131 コンクリート層
133 扉枠
170 遮熱層
180 遮熱フィラー
182 遮熱保護層
210 電池パック
211 バッテリ
213 電池
215 ハウジング
220 収容ボックス
310 スタッド
310a 端部
320 ナット
320E 延伸部
320H ネジ孔
330 ナット
1171 側縁
1172 側縁
1211 側面
1211P 突縁
1211R 凹溝
1212 側面
1212P 突縁
1212R 凹溝
1221 側面
1221P 突縁
1221R 凹溝
1222 側面
1222P 突縁
1222R 凹溝
1223 側面
1223P 突縁
1223R 凹溝
1231 側面
1231P 突縁
1231R 凹溝
1232 側面
1232P 突縁
1232R 凹溝
1241 側面
1241P 突縁
1241R 凹溝
1242 側面
1242P 突縁
1242R 凹溝
1243 側面
1243P 突縁
1243R 凹溝
1244 側面
1244P 突縁
1244R 凹溝
H1 高さ
L1 長さ
L1a 長さ
L1a’ 長さ
L1b 長さ
L1c 長さ
L1c’ 長さ
L2 長さ
L2a 長さ
L2b 長さ
P1 位置
P2 位置
S1 収容空間
S11 サブスペース
S12 サブスペース
T1 厚さ
T2 厚さ
T3 厚さ
T01 位置
T02 位置
T04 位置
T26 位置
T27 位置
T28 位置
T30 位置