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特開2024-163038ガラス板の測定方法及び測定装置並びにガラス板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163038
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ガラス板の測定方法及び測定装置並びにガラス板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/32 20060101AFI20241114BHJP
   C03B 17/06 20060101ALI20241114BHJP
   G01N 21/23 20060101ALN20241114BHJP
【FI】
G01B21/32
C03B17/06
G01N21/23
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024070534
(22)【出願日】2024-04-24
(31)【優先権主張番号】P 2023077342
(32)【優先日】2023-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 忠
【テーマコード(参考)】
2F069
2G059
【Fターム(参考)】
2F069AA68
2F069CC06
2F069GG07
2F069MM02
2G059AA03
2G059AA05
2G059BB10
2G059EE01
2G059EE09
2G059KK01
2G059MM09
(57)【要約】
【課題】ガラス板の歪等の特性を効率良く測定する。
【解決手段】ガラス板の測定方法は、縦姿勢で支持されたガラス板GSの表裏両面から押さえ部材24a,24bを当接させる準備工程S8と、押さえ部材24a,24bが当接した状態でガラス板GSの特性を測定する測定工程S9と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦姿勢で支持されたガラス板の表裏両面から押さえ部材を当接させる準備工程と、前記押さえ部材が当接した状態で前記ガラス板の特性を測定する測定工程と、を備えることを特徴とするガラス板の測定方法。
【請求項2】
前記ガラス板の前記特性は、歪または残留応力であることを特徴とする請求項1に記載のガラス板の測定方法。
【請求項3】
前記測定工程では、前記ガラス板の上端部が吊り下げ支持されることを特徴とする請求項1または2に記載のガラス板の測定方法。
【請求項4】
前記押さえ部材は、横方向に長尺である横方向押さえ部材を備え、
前記測定工程では、複数の前記横方向押さえ部材を縦方向に所定のピッチで配置することを特徴とする請求項1または2に記載のガラス板の測定方法。
【請求項5】
複数の前記横方向押さえ部材の前記ピッチは、50mm以上150mm以下であることを特徴とする請求項4に記載のガラス板の測定方法。
【請求項6】
前記押さえ部材は、縦方向に長尺である縦方向押さえ部材を備え、
前記測定工程では、複数の前記縦方向押さえ部材を横方向に所定のピッチで配置することを特徴とする請求項1または2に記載のガラス板の測定方法。
【請求項7】
複数の前記縦方向押さえ部材の前記ピッチは、50mm以上150mm以下であることを特徴とする請求項6に記載のガラス板の測定方法。
【請求項8】
前記押さえ部材は、前記ガラス板と当接する当接面を有し、
前記当接面の平面度が、前記ガラス板の対角長さL[mm]に対して、0.012×L+10μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のガラス板の測定方法。
【請求項9】
前記押さえ部材の前記当接面は、エラストマ製であることを特徴とする請求項8に記載のガラス板の測定方法。
【請求項10】
前記押さえ部材の前記当接面の硬度は、JIS K6253-3に規定されるタイプAデュロメータ硬さで50°以上70°以下であることを特徴とする請求項9に記載のガラス板の測定方法。
【請求項11】
前記ガラス板は、矩形状に構成されており、
前記ガラス板の一辺の長さは、1000mm以上3600mm以下であり、
前記ガラス板の厚さは、0.1mm以上1.1mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のガラス板の測定方法。
【請求項12】
ガラス板を縦姿勢で搬送経路に沿って搬送する搬送工程を備え、
前記搬送経路上の前記ガラス板に対して、請求項1または2に記載のガラス板の測定方法を実行することを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項13】
前記搬送工程は、前記ガラス板を主搬送経路に沿って搬送する主搬送工程と、前記主搬送工程から抽出されたサンプルガラス板が分岐搬送経路に沿って搬送される分岐搬送工程とを備え、
前記分岐搬送経路上の前記サンプルガラス板に対して、前記測定方法を実行することを特徴とする請求項12に記載のガラス板の製造方法。
【請求項14】
ガラス板を縦姿勢で支持する支持部材と、前記ガラス板の表裏両面に当接する押さえ部材と、前記ガラス板の特性を測定する測定部と、を備えることを特徴とするガラス板の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板を測定する方法及び装置、さらにはガラス板を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子デバイスの基板やカバー等に用いられるガラス板は、成形されて徐冷された後にどの程度の歪や残留応力が存在するかを検査する必要がある。これは、ガラス板の歪や残留応力が大きすぎると、後工程で問題が生じるためである。特に、液晶ディスプレイなどのパネルディスプレイ用ガラス基板やハードディスク用ガラス基板に用いられるガラス板の場合には、ガラス板の歪や残留応力が小さいことが要求される。
【0003】
例えば、液晶ディスプレイの製造工程では、ガラス板の表面にTFTが形成されたり、カラーフィルタが形成されたりする。TFTやカラーフィルタの形成工程では、ガラス板の加熱を伴う。そのため、ガラス板の歪や残留応力が大きいと、加熱に伴う歪や残留応力の解放によってガラス板が変形し、寸法安定性が著しく悪くなる。その結果、TFTのパターンずれや、カラーフィルタの色むらが生じる原因となる。
【0004】
歪や残留応力の検査としては、ガラス板にレーザ光を照射してガラス板のレタデーション(複屈折による位相差)を測定し、このレタデーションの測定結果の傾向から歪や残留応力の状態を判断する方法がある。
【0005】
例えば特許文献1には、架台上の載置エリアにおいてガラス板を傾斜状態の載置台に載置し、傾斜状態の載置台を回動させて水平状態にし、水平状態の載置台を架台上の測定エリアまでスライド移動し、測定エリアにて載置台が有する開口部を介してガラス板にレーザ光を照射して歪を測定する歪測定方法が開示されている(同文献の請求項1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2017/221825号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の歪測定方法では、ガラス板の搬送経路からサンプルとなるガラス板を抜き出して、ガラス板を傾斜状の載置台に載置した後に、載置台の姿勢を変更し、ガラス板を水平姿勢にする必要がある。
【0008】
このため、歪の測定に時間を要することになり、その結果、意図しない成形条件の変化などによってガラス板の歪が悪化した場合に、歪の悪化を迅速に検知することが難しくなっていた。
【0009】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、ガラス板の歪等の特性を効率良く測定することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本発明は上記の課題を解決するためのものであり、縦姿勢で支持されたガラス板の表裏両面から押さえ部材を当接させる準備工程と、前記押さえ部材が当接した状態で前記ガラス板の特性を測定する測定工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、準備工程においてガラス板を押さえ部材によって挟持することで、縦姿勢の状態におけるガラス板の特性を精度良く測定することが可能となる。さらに、測定工程では、製造ラインにおいて縦姿勢で搬送されるガラス板の姿勢を変更することなく、ガラス板の特性を迅速に測定することができる。これにより、ガラス板の特性を効率良く測定することが可能となる。
【0012】
(2) 上記(1)に記載のガラス板の測定方法では、ガラス板の前記特性は、歪または残留応力であってもよい。
【0013】
ガラス板の特性としての歪や残留応力は、縦姿勢で支持されるガラス板に作用する外力の影響を受けやすい。例えばガラス板の上端部をチャックにより把持し、ガラス板を縦姿勢にした状態では、ガラス板の下部において、歪または残留応力(歪等)が開放され、ガラス板を定盤上に載置した状態とは歪等が変化する。本発明では、準備工程においてガラス板の表裏両面を押さえ部材によって挟持することから、ガラス板の歪等の状態を、ガラス板を定盤上に載置した状態と同等とすることができる。
【0014】
(3) 上記(1)または(2)に記載のガラス板の測定方法において、前記ガラス板の上端部が吊り下げ支持されてもよい。これにより、簡易な構成の支持装置により、ガラス板を支持することができる。
【0015】
(4) 上記(1)から(3)のいずれかに記載のガラス板の測定方法において、前記押さえ部材は、横方向に長尺である横方向押さえ部材を備え、前記測定工程では、複数の前記横方向押さえ部材を縦方向に所定のピッチで配置してもよい。
【0016】
かかる構成によれば、複数の横方向押さえ部材によって、ガラス板の表裏両面を挟持することで、製造過程でガラス板に反りが発生した場合であっても、反りの影響を最小限にすることができる。これにより、ガラス板を歪等の特性の測定に適した姿勢にすることができる。
【0017】
(5) 上記(4)に記載のガラス板の測定方法において、複数の前記横方向押さえ部材の前記ピッチは、50mm以上150mm以下であってもよい。
【0018】
かかる構成によれば、横方向押さえ部材によってガラス板の反りを矯正するとともに、所定のピッチで配置される横方向押さえ部材の間から、ガラス板の歪等の特性を測定することが可能となる。
【0019】
(6) 上記(1)から(5)のいずれかに記載のガラス板の測定方法において、前記押さえ部材は、縦方向に長尺である縦方向押さえ部材を備え、前記測定工程では、複数の前記縦方向押さえ部材を横方向に所定のピッチで配置してもよい。
【0020】
かかる構成によれば、複数の縦方向押さえ部材によって、ガラス板の表裏両面を挟持することで、製造過程でガラス板に反りが発生した場合であっても、反りの影響を最小限にすることができる。これにより、ガラス板を歪等の特性の測定に適した姿勢にすることができる。
【0021】
(7) 上記(6)に記載のガラス板の測定方法において、複数の前記縦方向押さえ部材の前記ピッチは、50mm以上150mm以下であってもよい。
【0022】
かかる構成によれば、縦方向押さえ部材によってガラス板の反りを矯正するとともに、所定のピッチで配置される縦方向押さえ部材の間から、ガラス板の特性を測定することが可能となる。
【0023】
(8) 上記(1)から(7)のいずれかに記載のガラス板の測定方法において、前記押さえ部材は、前記ガラス板と当接する当接面を有し、前記当接面の平面度が、前記ガラス板の対角長さL[mm]に対して、0.012×L+10μm以下であってもよい。
【0024】
かかる構成によれば、押さえ部材の当接面の平面度を上記のように規定することで、押さえ部材によって挟持されるガラス板の表面の平面度を高く維持することができる。これにより、ガラス板の特性を精度良く測定することが可能となる。
【0025】
(9) 上記(8)に記載のガラス板の測定方法において、前記押さえ部材の前記当接面は、エラストマ製であってもよい。かかる構成によれば、押さえ部材の当接面またはガラス板の表面にガラス粉や粉塵などの異物が付着している場合に、押さえ部材の当接面が異物を避けるように変形することで、異物の周囲でガラス板の特性が変化することを防止できる。また、押さえ部材の当接面によって、ガラス板の表裏両面を傷つけることなく挟持することができる。
【0026】
(10) 上記(9)に記載のガラス板の測定方法において、前記押さえ部材の前記当接面の硬度は、JIS K6253-3に規定されるタイプAデュロメータ硬さで50°以上70°以下であってもよい。
【0027】
かかる構成によれば、ガラス板の表面に異物が付着している場合であっても、当接面が弾性変形することで、異物がガラス板の表面に押し付けられることによる特性の変化や表面の損傷を防止することができる。
【0028】
(11) 上記(1)から(10)のいずれかに記載のガラス板の測定方法において、前記ガラス板は、矩形状に構成されており、前記ガラス板の一辺の長さは、1000mm以上3500mm以下であり、前記ガラス板の厚さは、0.1mm以上1.1mm以下であってもよい。
【0029】
大型または薄型のガラス板について特性を測定する場合には、従来の測定方法のように姿勢を変更してしまうと、測定に多大な時間が必要となる。本発明を適用することにより、大型のガラス板を縦姿勢から水平姿勢に変更することなく、その特性を迅速に測定することが可能となる。
【0030】
(12)本発明に係るガラス板の製造方法は上記の課題を解決するためのものであり、ガラス板を縦姿勢で搬送経路に沿って搬送する搬送工程を備え、前記搬送経路上の前記ガラス板に対して、上記(1)から(11)のいずれかに記載のガラス板の測定方法を実行することを特徴とする。
【0031】
かかる構成によれば、ガラス板の測定方法における準備工程において、ガラス板を押さえ部材によって挟持することで、縦姿勢の状態におけるガラス板の特性を精度良く測定することができる。さらに、測定工程では、製造ラインにおいて縦姿勢で搬送されるガラス板の姿勢を変更することなく、特性の測定を迅速に行うことができる。これにより、ガラス板の特性を効率良く測定することが可能となる。
【0032】
(13) 上記(12)に記載のガラス板の製造方法では、前記搬送工程は、前記ガラス板を主搬送経路に沿って搬送する主搬送工程と、前記主搬送工程から抽出されたサンプルガラス板が分岐搬送経路に沿って搬送される分岐搬送工程とを備え、前記分岐搬送経路上の前記サンプルガラス板に対して、前記測定方法を実行してもよい。かかる構成によれば、搬送工程から抽出したサンプルガラス板に本発明を適用することで、サンプルガラス板の特性を効率良く測定することができる。
【0033】
(14) 本発明は上記の課題を解決するためのものであり、ガラス板を縦姿勢で支持する支持部材と、前記ガラス板の表裏両面に当接する押さえ部材と、前記ガラス板の特性を測定する測定部と、を備えることを特徴とする。
【0034】
かかる構成によれば、支持部材によって縦姿勢に支持されたガラス板の表裏両面を押さえ部材によって挟持することで、縦姿勢の状態におけるガラス板の特性を精度良く測定することができる。さらに、ガラス板の姿勢を変更することなく、測定部によって特性を迅速に測定することができる。これにより、ガラス板の特性を効率良く測定することが可能となる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、ガラス板の歪等の特性を効率良く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】ガラス板の製造装置における成形装置及び切断装置を示す側面図である。
図2】ガラス板の製造装置における搬送設備を示す平面図である。
図3図2のIII-III矢視線に係る側面断面図である。
図4】特性測定装置の斜視図である。
図5】ガラス板の製造方法を示すフローチャートである。
図6】測定工程の一例を示す平面図である。
図7】測定工程の一例を示す側面図である。
図8】測定工程の一例を示す側面図である。
図9】測定工程の一例を示す側面図である。
図10】特性測定装置及び測定工程の他の例を示す側面図である。
図11】測定工程の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。図1乃至図11は、本発明に係るガラス板の製造装置及び製造方法の一実施形態を示す。
【0038】
図1乃至図3に示すように、ガラス板の製造装置は、溶融ガラスからガラスリボンGRを連続成形する成形装置1と、ガラスリボンGRからガラス板Gを切り出す第一切断装置2と、ガラス板Gを搬送する搬送設備3と、を備える。
【0039】
図1に示すように、成形装置1は、ガラスリボンGRを成形する成形炉4と、ガラスリボンGRの歪等を低減するためにガラスリボンGRを徐冷(アニール処理)する徐冷炉5と、ガラスリボンGRを室温付近まで冷却する冷却ゾーン6と、成形炉4、徐冷炉5及び冷却ゾーン6のそれぞれに上下複数段に設けられるローラ対7と、を備えている。ローラ対7は、ガラスリボンGRの幅方向の両端部を挟持し、ガラスリボンGRに適度な張力を付与しながら、ガラスリボンGRを搬送して降下させる。以下、ガラスリボンGRの長手方向を板引き方向Dという。
【0040】
成形炉4の内部空間には、オーバーフローダウンドロー法により溶融ガラスからガラスリボンGRを成形する成形体8が配置されている。成形体8は、その上部に、溶融ガラスを溢れ出させるためのオーバーフロー溝を有している。成形装置1によって成形されたガラスリボンGRの幅方向の両端部は、成形過程の収縮等の影響により、幅方向の中央部に比べて厚みが大きい耳部(不要部)を含む。
【0041】
図1に示すように、第一切断装置2は、成形装置1の下方で縦姿勢のガラスリボンGRを所定の長さ毎に幅方向に切断することにより、ガラスリボンGRからガラス板Gを順次切り出す。ここで、幅方向は、ガラスリボンGRの長手方向(板引き方向D)と直交する方向であり、本実施形態では実質的に水平方向と一致する。
【0042】
第一切断装置2は、ガラスリボンGRの一方の表面上に幅方向に沿ってスクライブ線SL1を形成するスクライブ装置(図示省略)と、スクライブ線SL1に対応する位置で、ガラスリボンGRの他方の表面を支持する接触部9と、切り出し対象のガラス板Gに対応する部分(スクライブ線SL1より下の部分)のガラスリボンGRを保持し、スクライブ線SL1に曲げ応力を作用させる応力付与部10とを備える。
【0043】
スクライブ装置は、例えばホイールカッタを備えている。スクライブ装置は、ホイールカッタに限らず、例えばレーザ照射などの他の方法でスクライブ線SL1を形成するものであってもよい。
【0044】
接触部9は、降下中のガラスリボンGRに追従降下しつつ、ガラスリボンGRの方向に沿って、ガラスリボンGRの表面に接触する平面状の接触面を有する板状体(定盤)から構成されている。応力付与部10は、ガラスリボンGRの幅方向の両端部を把持する把持部(例えばチャック)を備える。
【0045】
搬送設備3は、例えば外部からの汚染物質をある程度遮断できる空間を区画形成するクリーンルームにより構成される。搬送設備3は、複数の空間(処理室)に区切られている。搬送設備3は、主搬送設備3cと、主搬送設備3cから分岐する分岐搬送設備3dと、を含む。搬送設備3は、搬送設備3内でガラス板Gを搬送する搬送経路を含み、搬送経路は、主搬送設備3c内でガラス板Gを搬送する主搬送経路3aと、主搬送経路3aから分岐し、分岐搬送設備3d内でガラス板Gを搬送する分岐搬送経路3bと、を含む。
【0046】
図1乃至図3に示すように、主搬送設備3cは、ガラスリボンGRから切り出されたガラス板Gを受け渡す受渡室11と、ガラス板Gの一部を切断する切断室12と、ガラス板Gの検査を行う検査室13と、ガラス板Gを梱包する梱包室14と、を備える。分岐搬送設備3dは、ガラス板Gをサンプルガラス板GSとして採取する採取室15と、採取したサンプルガラス板GSの特性を測定する測定室16と、を備える。これらの各処理室は、壁17によって仕切られている。各壁17には、ガラス板Gを通過させるための開口部17aが設けられている。なお、壁17の開口部17aには、この開口部17aを開閉するためのシャッタが設けられていてもよい。
【0047】
上記の構成の他、搬送設備3は、ガラス板Gを縦姿勢で搬送する搬送装置18~20を備える。搬送装置18~20は、第一搬送装置18と、第二搬送装置19と、第三搬送装置20と、を含む。各搬送装置18~20は、ガラス板Gの上端部を把持する把持部21(例えばチャック)を備える。
【0048】
受渡室11は、ガラス板Gを第一搬送装置18から第二搬送装置19へと受け渡すためのものである。第一搬送装置18は、ガラスリボンGRから切り出されたガラス板Gを、第一切断装置2から受け取り、受渡室11内で第二搬送装置19に向かって搬送する。第二搬送装置19は、受渡室11内の所定位置に待機している。第二搬送装置19は、第一搬送装置18からガラス板Gを受け取ると、このガラス板Gを主搬送経路3aに沿って、切断室12、検査室13、梱包室14の順に搬送する。また、第二搬送装置19は、所定のタイミングで、ガラス板Gを分岐搬送経路3bに沿って採取室15へと搬送する。
【0049】
図3に示すように、第二搬送装置19は、ガラス板Gを縦姿勢で吊り下げ支持するとともに、その幅方向Wに沿って搬送する。すなわち、第二搬送装置19は、ガラス板Gの表面が搬送方向に面しない状態でガラス板Gを搬送する。これにより、搬送時におけるガラス板Gの揺れを抑制することができる。
【0050】
以下の説明では、ガラス板Gの幅方向Wを横方向という場合がある。また、上下方向(Z軸方向)を縦方向という場合がある。ガラス板Gは、板引き方向Dが上下方向と一致するように各搬送装置18~20によって支持される。
【0051】
切断室12は、ガラス板Gの幅方向Wの端部に形成されている不要部(耳部)Gxを除去するためのものである。切断室12は、第二切断装置(図示せず)としてのスクライブ装置及び折割装置を内部に備える。
【0052】
検査室13は、ガラス板Gを検査するための検査設備22を備える。検査設備22は、ガラス板Gを撮像する撮像装置と、撮像装置によって取得された画像データに基づいてガラス板Gの検査を実施する検査装置と、を備える。
【0053】
梱包室14は、ガラス板GをパレットCに梱包することによってガラス板梱包体を製造するためのものである。梱包室14内には、パレットCと、第三搬送装置20とが配されている。梱包室14では、第二搬送装置19から第三搬送装置20へのガラス板Gの受け渡しが行われる。第三搬送装置20は、ガラス板Gを縦姿勢で保持した状態でパレットCに載置することが可能な積載装置として機能する。
【0054】
梱包室14には、シート供給装置(図示せず)によって、ガラス板Gを保護するための保護シート(図示せず)が供給される。シート供給装置は、梱包室14に隣接するシート供給室(図示せず)に配置されている。第三搬送装置20によって搬送されるガラス板Gは、シート供給装置によって保護シートが重ねられた状態で、パレットCに載置される。
【0055】
採取室15は、ガラス板Gの歪等の特性を測定するために、所定のタイミングでサンプルガラス板GSを採取するためのものである。採取室15は、ガラス板Gの不要部Gxを除去する第三切断装置(図示せず)としてのスクライブ装置及び折割装置を備える。採取室15では、ガラス板Gの不要部Gxを除去することにより、サンプルガラス板GSを得る。
【0056】
測定室16は、採取室15に隣接している。測定室16には、特性測定装置23が配置されている。図4に示すように、特性測定装置23は、サンプルガラス板GSの表裏両面に当接する押さえ部材24a,24bと、サンプルガラス板GSの特性を測定する測定部25と、を備える。
【0057】
この他、第二搬送装置19は、サンプルガラス板GSの特性を測定する場合に、特性測定装置23の一部として機能する。すなわち、第二搬送装置19の把持部21は、特性測定装置23による特性の測定の際に、サンプルガラス板GSの上端部を支持する支持部材として機能する。
【0058】
押さえ部材24a,24bは、横方向に長尺である複数の押さえ部材(横方向押さえ部材)を含む。押さえ部材24a,24bの長さは、サンプルガラス板GSの横方向における長さよりも長い。押さえ部材24a,24bの長手方向における端部は、押さえ部材24a,24bがサンプルガラス板GSに当接している状態において、サンプルガラス板GSの横方向における各辺GSa,GSbから突出している。押さえ部材24a,24bの厚さ(縦方向における寸法)は、例えば10mm以上30mm以下である。
【0059】
複数の押さえ部材24a,24bは、縦方向に所定のピッチPC1で配置されている。このピッチPC1は、好ましくは50mm以上150mm以下である。ピッチPC1の上限値は、より好ましくは140mm以下、さらに好ましくは130mm以下、最も好ましくは120mm以下である。ピッチPC1の下限値は、より好ましくは60mm以上、さらに好ましくは70mm以上、最も好ましくは80mm以上である。なお、ピッチPC1は、等ピッチであってもよく、不等ピッチであってもよい。
【0060】
図2及び図4に示すように、押さえ部材24a,24bは、サンプルガラス板GSの一方の表面に当接する第一押さえ部材24aと、サンプルガラス板GSの他方の表面(裏面)に当接する第二押さえ部材24bとを含む。第一押さえ部材24aと第二押さえ部材24bとは、サンプルガラス板GSを挟持できるように、サンプルガラス板GSの厚さ方向において、対向して配置されている。
【0061】
各押さえ部材24a,24bは、サンプルガラス板GSの表面に当接する当接部26と、当接部26を支持する支持部27とを有する。
【0062】
当接部26は、例えば弾性部材により構成される。当接部26は、例えば板状、棒状又はブロック状に構成される。本実施形態では、当接部26としてエラストマ製(例えばウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等のゴムや、ポリウレタン系熱可塑性エラストマ、ポリエステル系熱可塑性エラストマ等の熱可塑性エラストマ)のものを用いるが、当接部26の材質はエラストマに限定されない。当接部26は、支持部27の一部に固定されている。
【0063】
当接部26は、サンプルガラス板GSの表面に当接する当接面26aを有する。当接面26aの平面度は、サンプルガラス板GSの対角長さL[mm]に対して、0.012×L+10μm以下であることが好ましい。サンプルガラス板GSの対角長さLは、例えば1400mm以上5000mm以下である。当接面26aの平面度は、複数の押さえ部材24a,24bの当接面について、それぞれの厚さ方向中央に、長手方向の端部から250mm間隔で測定点を設定し、各測定点の座標を三次元測定機(例えば株式会社ミツトヨ製のCRYSTA-Apex)で測定することで、測定することができる。
【0064】
なお、押さえ部材24a,24bの当接部26を、吸着パッドやエアクッションにより形成する方法も考えられるが、本発明のような平面度を得ることはできず、サンプルガラス板GSの特性を精度良く測定することができない。
【0065】
当接部26(当接面26a)の硬度は、JIS K6253-3に規定されるタイプAデュロメータ硬さで50°以上70°以下であることが好ましい。当接部26の硬度の上限値は、より好ましくは68μm以下、さらに好ましくは65μm以下である。当接部26の硬度の下限値は、より好ましくは52μm以上、さらに好ましくは55μm以上である。これにより、当接部26が接触することよるサンプルガラス板GSの表面の損傷を防止することができる。また、当接面26aまたはサンプルガラス板GSの表面にガラス粉や塵埃などの異物が付着している場合に、当接面26aが異物を避けるように変形することで、異物の周囲でサンプルガラス板GSの特性が変化することを防止することができる。また、当接部26によって異物が押し付けられることによるサンプルガラス板GSの表面の損傷を防止することができる。
【0066】
支持部27は、例えばアルミニウム合金や鉄鋼等の金属により構成される。支持部27は、例えば板状、棒状又はブロック状に構成されるが、支持部27の形状は本実施形態に限定されない。支持部27は、図示しない駆動装置に支持されており、サンプルガラス板GSに対して接近・離反可能に構成される。
【0067】
各押さえ部材24a,24bは、サンプルガラス板GSの表面に当接する押さえ位置と、サンプルガラス板GSの表面から離れた待機位置と、に位置を変更することができる。
【0068】
測定部25としては、例えば光ヘテロダイン法による共通光路干渉計とフーリエ解析法を利用して、サンプルガラス板GSの複屈折量を測定する複屈折測定装置が好適に使用される。この複屈折測定装置は、サンプルガラス板GSの特性を評価するために、レタデーション(Retardation:複屈折による位相差)の大きさ及びレタデーションの方位角を測定することができる。測定部25は、このレタデーションの大きさ及びレタデーションの方位角に基づいて、サンプルガラス板GSの歪等を算出することができる。なお、レタデーションが大きい程、歪等が大きいことを意味する。
【0069】
図2乃至図4に示すように、測定部25は、サンプルガラス板GSにレーザ光を照射する照射部28と、レーザ光を受光する受光部29とを備える。照射部28及び受光部29は、図示しない駆動装置によって横方向及び縦方向に移動可能に構成される。照射部28と受光部29は、サンプルガラス板GSの厚さ方向に対して、相互に対向するように配置されている。
【0070】
照射部28の駆動装置及び受光部29の駆動装置は、例えば直動ガイドやボールねじ機構、モータ等を備える直動機構により構成される。
【0071】
上記の構成に限らず、測定部25は、複数の駆動装置を組み合わせることで、照射部28及び受光部29を横方向及び縦方向に移動させるように構成されてもよい。また、測定部25は、照射部28及び受光部29をロボットアーム(駆動装置)に取り付けてなる構成としてもよい。これにより、測定部25は、照射部28及び受光部29を三次元的に移動させることが可能になる。
【0072】
以下、上記の製造装置によってガラス板Gを製造する方法について説明する。
【0073】
図5に示すように、ガラス板Gの製造方法は、成形工程S1と、徐冷工程S2と、冷却工程S3と、切断工程S4と、検査工程S5と、梱包工程S6と、採取工程S7と、準備工程S8と、測定工程S9と、を備える。この他、本方法は、各搬送装置18~20により、ガラス板G及びサンプルガラス板GSを搬送経路に沿って搬送する搬送工程を備える。
【0074】
図1に示すように、成形工程S1では、成形装置1によって溶融ガラスからガラスリボンGRを連続成形する。成形体8は、溶融ガラスをオーバーフロー溝から溢れ出させて、当該成形体8の両側の側壁面に沿って流下させる。さらに成形体8は、流下させた溶融ガラスを各側壁面の下端部で融合させる。これにより、所定の幅を有するガラスリボンGRが成形される。なお、成形工程S1は、スロットダウンドロー法などの他のダウンドロー法を実行するものであってもよい。
【0075】
徐冷工程S2では、成形体8によって成形されたガラスリボンGRを徐冷炉5内で徐冷する。徐冷工程S2では、徐冷炉5内に配されたローラ対7によって、ガラスリボンGRを下方に搬送する。徐冷炉5内では所定の温度勾配が設定されており、ガラスリボンGRは徐冷炉5内を通過することで徐冷される。
【0076】
冷却工程S3では、徐冷工程S2後のガラスリボンGRをさらに冷却する。冷却工程S3では、ガラスリボンGRは、徐冷されながら徐冷炉5の下方に配された冷却ゾーン6を通過する。
【0077】
切断工程S4は、第一切断工程及び第二切断工程を含む。第一切断工程では、第一切断装置2によってガラスリボンGRの中途部を幅方向Wに沿って切断することで、所定サイズのガラス板Gを切り出す。すなわち、第一切断工程では、下方に移動するガラスリボンGRの中途部にスクライブ装置によって幅方向に沿うスクライブ線SL1を形成し(スクライブ工程)、このスクライブ線SL1に沿ってガラスリボンGRの一部を折割ることで、枚葉状のガラス板Gを形成する(折割工程)。
【0078】
スクライブ工程において、スクライブ装置のホイールカッタは、降下中のガラスリボンGRに追従降下しつつ、ガラスリボンGRの幅方向Wにスクライブ線SL1を形成する。折割工程において、応力付与部10は、降下中のガラスリボンGRに追従降下しつつ、接触部9を支点としてガラスリボンGRを湾曲させるための動作(A1方向の動作)を行う。この応力付与部10の動作により、スクライブ線SL1に曲げ応力が付与される。その結果、ガラスリボンGRがスクライブ線SL1に沿って幅方向に折り割られ、ガラスリボンGRからガラス板Gが切り出される。
【0079】
図1及び図2に示すように、応力付与部10は、切り出されたガラス板Gを縦姿勢のままB方向に沿って搬送した後、受渡位置P1でガラス板Gを第一搬送装置18に受け渡す。受け渡し後、応力付与部10は、ガラス板Gの幅方向両端部の保持を解除すると共に、ガラスリボンGRから次のガラス板Gを切り出すために、切り出しを開始する前の位置に戻る。第一搬送装置18はガラス板Gの上端部を把持部21によって把持した状態で、受渡室11内に待機する第二搬送装置19に向かって移動する。
【0080】
第一搬送装置18が第二搬送装置19の位置まで到達すると、第二搬送装置19は、その把持部21によって、ガラス板Gの上端部を把持する。その後、第一搬送装置18は、ガラス板Gの把持を解除し、受渡位置P1に戻る。第二搬送装置19は、第一搬送装置18からガラス板Gを受け取ると、主搬送経路3aに沿ってガラス板Gを搬送する。
【0081】
第二切断工程は、切断室12内において、第二搬送装置19によって縦姿勢に保持されるガラス板Gに対して、第二切断装置によって不要部Gxを除去する工程である。第二切断工程では、第二切断装置のスクライブ装置によってガラス板Gにスクライブ線SL2を形成し(スクライブ工程)、その後、折割装置によってガラス板Gの不要部Gxを折割る(折割工程)。切断工程S4が終了すると、第二搬送装置19は、不要部Gxが除去されたガラス板Gを検査室13へと搬送する。
【0082】
検査工程S5は、切断工程S4によって形成されたガラス板Gに含まれる欠陥を検出し、この欠陥に基づいて各ガラス板Gの良否を検査する工程である。検査設備22の撮像装置は、第二搬送装置19によって縦姿勢に保持されたガラス板Gを撮像し、その画像データを取得する。
【0083】
検査設備22の検査装置は、撮像装置によって取得された画像データに基づき、ガラス板Gに含まれる欠陥を検出する。検査装置は、例えば、ガラス板Gの欠陥情報として、ガラス板Gの偏肉(板厚)、筋(脈理)、欠陥の種類(例えば、泡、異物など)、位置(座標)、大きさ、各欠陥の個数などを検出することができる。
【0084】
検査装置は、検出した欠陥を所定の判定基準によって判定し、ガラス板Gの合否を決定する。検査に合格したガラス板Gは、第二搬送装置19によって梱包室14に搬送される。
【0085】
梱包工程S6において、第三搬送装置20は、第二搬送装置19から受け取ったガラス板Gを縦姿勢で保持し、パレットCに搬送する。ガラス板Gは、シート供給装置によって保護シートが重ねられた状態でパレットCに積載される。なお、複数の第三搬送装置20により複数のパレットCに同時にガラス板Gを積載するようにしてもよい。所定数のガラス板GがパレットCに積載されることで、パレットC上にガラス板積層体が構成される。その後、ガラス板G積層体を保護するための保護カバーや位置規制部材がパレットCに取り付けられる。これにより、ガラス板梱包体が製造される。
【0086】
採取工程S7は、搬送工程で搬送されるガラス板Gからサンプルガラス板GSを抽出する工程である。採取工程S7では、第二搬送装置19は、所定のタイミングで、受渡室11において第一搬送装置18から受け取ったガラス板Gを分岐搬送経路3bの採取室15に搬入する。本実施形態では、第一切断工程の実行後であって第二切断工程の実行前のガラス板Gからサンプルガラス板GSを採取する。
【0087】
採取室15に搬入されたガラス板Gは、第二搬送装置19によって吊り下げ支持された状態(縦姿勢)で所定位置に停止する。第三切断装置のスクライブ装置は、このガラス板Gにスクライブ線SL3を形成する(図3参照)。その後、第三切断装置の折割装置は、ガラス板Gの不要部Gxを、スクライブ線SL3に沿って折割ることでガラス板Gから分離させる。このように不要部Gxをガラス板Gから除去することで、サンプルガラス板GSが形成される。
【0088】
サンプルガラス板GSは矩形状であり、切断工程S4の第二切断工程後のガラス板Gと同一の寸法を有する。サンプルガラス板GSは、一辺の長さが1000mm以上3600mm以下であることが好ましい。一辺の長さの上限値は、より好ましくは3500mm以下、さらに好ましくは3430mm以下である。一辺の長さの下限値は、より好ましくは1100mm以上、さらに好ましくは1500mm以上である。サンプルガラス板GSの厚さは、0.1mm以上1.1mm以下であることが好ましい。厚さの上限値は、より好ましくは0.7mm以下、さらに好ましくは0.5mm以下である。厚さの下限値は、より好ましくは0.2mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上である。
【0089】
その後、サンプルガラス板GSは、第二搬送装置19によって測定室16へと搬送される。
【0090】
準備工程S8において、第二搬送装置19は、測定室16にサンプルガラス板GSを搬入した後に停止する。具体的には、第二搬送装置19は、待機位置にある第一押さえ部材24aと第二押さえ部材24bとの間の測定位置にサンプルガラス板GSを配置した後に停止する。
【0091】
図6に示すように、準備工程S8において、サンプルガラス板GSが所定の測定位置に配置されると、各押さえ部材24a,24bは、待機位置(図6において実線で示す位置)から押さえ位置(図6において二点鎖線で示す位置)へと移動する。これにより、第一押さえ部材24aの当接面26aがサンプルガラス板GSの一方の表面に当接し、第二押さえ部材24bの当接面26aがサンプルガラス板GSの他方の表面に当接する。
【0092】
以上により、サンプルガラス板GSは、第二搬送装置19の把持部21によって縦姿勢で吊り下げ支持された状態で、各押さえ部材24a,24bによって測定位置に固定される。
【0093】
測定工程S9では、測定室16の特性測定装置23によってサンプルガラス板GSの特性を測定し、その良否を評価する。
【0094】
測定工程S9では、測定部25をサンプルガラス板GSに対して相対的に移動させながらサンプルガラス板GSの測定を行う。照射部28は、縦方向に間隔をおいて位置する複数の第一押さえ部材24aの間を横方向に移動しながら、レーザ光をサンプルガラス板GSに照射する。受光部29は、照射部28と同じ速度で横方向に移動しながら、照射部28から照射され、サンプルガラス板GSを透過したレーザ光を受ける。
【0095】
測定部25は、受光したレーザ光に基づいて、レタデーションの大きさ及びレタデーションの方位角を測定する。測定部25は、このレタデーションの大きさ及びレタデーションの方位角に基づいて、サンプルガラス板GSの歪等を算出する。
【0096】
図7乃至図9は、測定工程S9における測定部25の移動態様を示す。
【0097】
図7に示す例では、測定部25は、横方向(幅方向W)に往復移動を繰り返すことによって、サンプルガラス板GSに設定される複数の測定点における特性を測定する。
【0098】
測定部25は、図7において矢印DM1で示すように、横方向におけるサンプルガラス板GSの一方の辺GSa側から他方の辺GSbに向かって移動する。測定部25は、側面視において、サンプルガラス板GSの他方の辺GSbを通過した後に、矢印DM2で示すように、下方に移動する。次に、測定部25は、矢印DM3で示すように、サンプルガラス板GSの他方の辺GSb側から一方の辺GSaに向かって移動する。その後、測定部25は、矢印DM4で示すように、下方に移動する。測定部25は、上記の動作を繰り返すことで、サンプルガラス板GSに設定される各測定点について特性の測定を行う。
【0099】
図8は、複数の測定部25によって行われる測定工程S9を例示する。複数の測定部25は、縦方向に間隔をおいて配置されている。測定工程S9において、各測定部25は、矢印DM1で示すように、サンプルガラス板GSの一方の辺GSa側から他方の辺GSbに向かって移動する。このとき、各測定部25は、側面視において、複数の押さえ部材24a,24bの間を通過する。本例のように、複数の測定部25を用いて測定工程S9を行うことで、サンプルガラス板GSの特性の測定を効率良く行うことができる。
【0100】
図9に示す例では、測定部25は、サンプルガラス板GSの上辺GScと下辺GSdとの間を往復移動することで、サンプルガラス板GSの特性の測定を行う。具体的には、測定部25は、図9において矢印DM1~DM4で示すように、縦方向の移動と、横方向の移動とを繰り返すことで、サンプルガラス板GSに設定された各測定点について特性の測定を行う。この測定において、測定部25は、側面視において、押さえ部材24a,24bと交差するように、各押さえ部材24a,24bを通過することになる。測定部25は、押さえ部材24a,24bの位置を通過する際に、照射部28によるレーザ光の照射を一時的に停止することができる。
【0101】
図10及び図11は、特性測定装置23及び測定工程S9の他の例を示す。本例における特性測定装置23は、縦方向に沿って長尺に構成される複数の押さえ部材24a,24b(縦方向押さえ部材)を備える。複数の押さえ部材24a,24bは、横方向に所定のピッチPC2で配置されている。このピッチPC2は、好ましくは50mm以上150mm以下である。ピッチPC2の上限値は、より好ましくは140mm以下、さらに好ましくは130mm以下、最も好ましくは120mm以下である。ピッチPC2の下限値は、より好ましくは60mm以上、さらに好ましくは70mm以上、最も好ましくは80mm以上である。なお、ピッチPC2は、等ピッチであってもよく、不等ピッチであってもよい。
【0102】
図10に示すように、測定工程S9において、測定部25は、矢印DM1~DM4で示すように、縦方向の移動と横方向の移動とを繰り返すことにより、サンプルガラス板GSの上辺GScと下辺GSdとの間を往復移動する。測定部25は、縦方向に移動する場合に、複数の押さえ部材24a,24bの間を通過する。
【0103】
図11に示す例において、特性測定装置23は、複数の測定部25を備える。各測定部25は、横方向に間隔をおいて配置される。測定工程S9において、各測定部25は、矢印DM1で示すように、サンプルガラス板GSの下辺GSd側から上辺GScに向かって上方に移動することで、サンプルガラス板GSに設定された各測定点について特性の測定を行う。これに限らず、各測定部25は、サンプルガラス板GSの上辺GSc側から下辺GSdに向かって下方に移動することによって、サンプルガラス板GSの特性を測定することができる。
【0104】
上記の測定工程S9により、ガラス板Gの全体に対する特性の分布図が作成される。特性の測定結果は、徐冷工程S2などの上流工程にフィードバックされ、必要に応じて、特性を改善するための処理が実施される。特性を改善するための処理としては、例えば、徐冷工程S2におけるガラスリボンGRの徐冷温度の調整などの成形条件の変更が挙げられる。なお、サンプルガラス板GSは、測定工程S9の実行後に廃棄される。
【0105】
サンプルガラス板GSが押さえ部材24a,24bによって挟持されておらず、第二搬送装置19のみによって吊り下げ支持された状態では、サンプルガラス板GSの特性を正確に測定することができない。この場合には、サンプルガラス板GSの上端部のみが支持され、下部は自由に変形できるため、サンプルガラス板GSの下部の歪等が開放され、歪等を精度良く測定することができない。
【0106】
これに対し、本実施形態では、特性測定装置23の押さえ部材24a,24bによってサンプルガラス板GSの表裏両面を挟持することで、サンプルガラス板GSの反りを防止し、サンプルガラス板GSを定盤上に載置した場合と同様にその特性を精度良く測定することが可能となる。
【0107】
さらに、測定工程S9では、搬送工程において縦姿勢で搬送されるガラス板Gの姿勢を変更することなく、このガラス板Gからサンプルガラス板GSを抽出し、特性測定装置23によってその特性を迅速に測定することができる。これにより、サンプルガラス板GSの特性を効率良く測定することが可能となる。
【0108】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0109】
上記の実施形態において、特性測定装置23における複数の第一押さえ部材24aの端部同士をフレームで連結し、一体化させてもよい。第二押さえ部材24bについても同様である。
【0110】
上記の実施形態において、押さえ部材24a,24bがサンプルガラス板GSを表裏から当接するとともに、第二搬送装置19がサンプルガラス板GSの上端部を支持した状態で、サンプルガラス板GSの特性を測定したが、これに限定されない。押さえ部材24a,24bがサンプルガラス板GSを表裏から当接した後に、第二搬送装置19がサンプルガラス板GSの上端部の支持を解除した状態で、サンプルガラス板GSの特性を測定しても良い。これにより、第二搬送装置19がサンプルガラス板GSの上端部を支持することによるサンプルガラス板GSの特性の変化を低減することができる。
【0111】
上記の実施形態では、押さえ部材24a,24bは、横方向に長尺である複数の押さえ部材(横方向押さえ部材)、または縦方向に長尺である複数の押さえ部材(縦方向押さえ部材)であるが、横方向押さえ部材と縦方向押さえ部材とを組み合わせた格子状の押さえ部材であっても良い。
【0112】
上記の実施形態では、搬送工程で搬送されるガラス板Gから採取工程S7で抽出したサンプルガラス板GSに対して準備工程S8及び測定工程S9を実行しているが、これに限定されない。搬送工程で搬送されるガラス板Gに対して準備工程S8及び測定工程S9を実行しても良い。この場合、分岐搬送経路3bを設けなくても良い。
【0113】
上記の実施形態では、採取工程S7において、第一切断工程の実行後で第二切断工程の実行前のガラス板Gからサンプルガラス板GSを採取していたが、これに限定されない。第二切断工程を実行後のガラス板Gや、検査工程S5を実行後のガラス板Gから、サンプルガラス板GSを採取しても良い。
【符号の説明】
【0114】
23 特性測定装置
24a 第一押さえ部材
24b 第二押さえ部材
26a 当接面
G ガラス板
GS サンプルガラス板
S8 準備工程
S9 測定工程
PC1 横方向押さえ部材のピッチ
PC2 縦方向押さえ部材のピッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11