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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163039
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/192 20060101AFI20241114BHJP
   A61K 31/166 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20241114BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
A61K31/192
A61K31/166
A61P43/00 121
A61K47/02
A61K47/18
A61K47/38
A61K47/26
A61K9/20
A61P29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024072699
(22)【出願日】2024-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2023077133
(32)【優先日】2023-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】桑田 亜矢
(72)【発明者】
【氏名】西島 正道
(72)【発明者】
【氏名】後藤 佳奈
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC04
4C076DD25
4C076DD27
4C076DD29
4C076DD30
4C076DD51
4C076DD67
4C076FF46
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA22
4C206GA07
4C206GA22
4C206KA01
4C206KA04
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA54
4C206NA03
4C206ZA07
4C206ZA08
(57)【要約】
【課題】
本発明の目的は、ナプロキセン又はその塩及びエテンザミド又はその塩を含有し、保存安定性に優れた、医薬組成物を提供することである。
【解決手段】
本発明は、(A)ナプロキセン又はその塩、(B)エテンザミド又はその塩、及び(C)下記(c1)、(c2)、及び(c3)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする医薬組成物。
(c1)ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、及び水酸化アルミニウムゲルからなる群より選ばれる少なくとも1種の塩基性化合物
(c2)グリシン
(c3)乳糖、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒプロメロースからなる群より選ばれる少なくとも1種
である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ナプロキセン又はその塩、
(B)エテンザミド又はその塩、及び
(C)下記(c1)、(c2)、及び(c3)からなる群より選ばれる少なくとも1種
を含有することを特徴とする医薬組成物。
(c1)ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、及び水酸化アルミニウムゲルからなる群から選ばれる少なくとも1種の塩基性化合物
(c2)グリシン
(c3)乳糖、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒプロメロースからなる群から選ばれる少なくとも1種
【請求項2】
(A)成分と(B)成分の含有比が、(A)成分1質量部に対して(B)成分が0.125~150質量部である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
(C)成分の含有量が、(A)成分と(B)成分の合計量1質量部に対して、0.01~2質量部である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
医薬組成物が、固形製剤である請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
(A)ナプロキセン又はその塩及び(B)エテンザミド又はその塩を含有する医薬組成物の変色抑制方法であって、
下記(C)(c1)、(c2)、及び(c3)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有させることを特徴とする、前記医薬組成物の変色抑制方法。
(c1)ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、及び水酸化アルミニウムゲルからなる群から選ばれる少なくとも1種の塩基性化合物
(c2)グリシン
(c3)乳糖、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒプロメロースからなる群から選ばれる少なくとも1種
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナプロキセン又はその塩を含有した医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ナプロキセンは、プロピオン酸系の非ステロイド性解熱鎮痛消炎剤(NSAIDs)であり、発熱や炎症を引き起こす原因となるプロスタグランジンの生合成を抑制することによって、消炎、鎮痛、解熱作用を有する(非特許文献1)。現在NSAIDsは副作用が比較的少ないことから医療用だけでなく一般用医薬品においても解熱鎮痛薬及び感冒薬の主成分として多用されている。そのため、ナプロキセンの一般用医薬品への適用が期待される。ナプロキセンは上記のような薬理作用を有し、ナプロキセン自体の持つ薬効をさらに高めるための検討がなされている。例えば、ナプロキセンと特定の医薬成分の組合わせにより、解熱鎮痛消炎効果が増強させることが報告されている(特許文献1、2)。またナプロキセンは製剤安定性に優れる薬物であるが、去痰成分のアンブロキソールを配合すると配合変化を生じること、塩基性成分を配合することで配合変化を防止できることが知られている(特許文献2)。さらにはナプロキセンと制酸剤等の塩基性化合物との組み合わせにより、崩壊性が改善することが報告されている(特許文献3)。
しかしながら、ナプロキセンとエテンザミドとを配合した医薬組成物とした場合に、製剤の安定性に直接影響を与えるような相互作用が生じるか否かについては知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-76305号公報
【特許文献2】特開2018-76306号公報
【特許文献3】特開2018-76310号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ナイキサン錠100mgインタビューフォーム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、ナプロキセンと解熱鎮痛成分であるエテンザミドを配合し、製剤の保存安定性を確認したところ、驚くべきことに経時的に外観変化を及ぼすことを発見した。
【0006】
したがって、本発明の目的は、ナプロキセン又はその塩及びエテンザミド又はその塩を含有し、保存安定性に優れた、医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々の検討を行ったところ、特定の成分を配合することにより、外観変化を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は
(1)(A)ナプロキセン又はその塩、
(B)エテンザミド又はその塩、及び
(C)下記(c1)、(c2)、及び(c3)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする医薬組成物。
(c1)ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、及び水酸化アルミニウムゲルからなる群より選ばれる少なくとも1種の塩基性化合物
(c2)グリシン
(c3)乳糖、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒプロメロースからなる群より選ばれる少なくとも1種
(2)(A)成分と(B)成分の含有比が、(A)成分1質量部に対して(B)成分が0.125~150質量部である、(1)に記載の医薬組成物、
(3)(C)成分の含有量が、(A)成分と(B)成分の合計量1質量部に対して、0.01~2質量部である、(1)または(2)に記載の医薬組成物、
(4)医薬組成物が、固形製剤である(1)~(3)のいずれかに記載の医薬組成物、
(5)(A)ナプロキセン又はその塩及び(B)エテンザミド又はその塩を含有する医薬組成物の変色抑制方法であって、
下記(C)(c1)、(c2)、及び(c3)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有させることを特徴とする、前記医薬組成物の変色抑制方法。
(c1)ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、及び水酸化アルミニウムゲルからなる群より選ばれる少なくとも1種の塩基性化合物グリシン
(c2)グリシン
(c3)乳糖、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒプロメロースからなる群より選ばれる少なくとも1種
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、保存安定性に優れたナプロキセン又はその塩及びエテンザミド又はその塩を含有する医薬組成物の提供が可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のナプロキセン又はその塩を含有する医薬組成物について詳述し説明する。
【0011】
<(A)成分>
本発明の医薬組成物中における(A)成分は、ナプロキセンのみならず、ナプロキセンの薬学上許容される塩、さらには水やアルコール等との溶媒和物が含まれる。これらは公知の化合物であり、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。本発明において、ナプロキセン又はその塩としては、ナプロキセンが好ましい。
発明の医薬組成物に用いられるナプロキセンは、その化学名が、(2S)-2-(6-メトキシナフタレン-2-イル)プロパン酸((2S)-2-(6-Methoxynaphthalen-2-yl)propanoic acid)であり、分子式がC14H14O3で、その分子量は230.26である。ナプロキセンは、プロピオン酸系の非ステロイド性消炎鎮痛剤としてすでに公知の消炎鎮痛剤であり、関節リウマチ、変形性関節症、痛風発作、強直性脊椎炎、腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群、腱・腱鞘炎、月経困難症、帯状疱疹の疾患の消炎、鎮痛、解熱や、外傷後並びに手術後の消炎、鎮痛、歯科・口腔外科領域における抜歯並びに小手術後の消炎、鎮痛などを目的として広く使用されているものである。
本発明の医薬組成物におけるナプロキセンの塩としては、薬学的に許容される塩であればよく、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、メグルミン塩、トリス塩、塩基性アミノ酸の塩等が挙げられる。
本発明の医薬組成物におけるナプロキセン又はその塩の含有量は、その薬効を示す量であれば特に限定されるものではないが、服用者の性別、年齢、症状等によって適宜決定すればよく、15歳以上の成人1日当たりの服用量として、通常10~1200mg、好ましくは15~900mg、より好ましくは20~600mgである。
また、医薬組成物全質量に対し、ナプロキセンの含有量は、1~90質量%が好ましく、5~80質量%がより好ましく、5~70質量%がさらに好ましく、9~60質量%が特に好ましい。
【0012】
<(B)成分>
本発明の医薬組成物におけるエテンザミド(2-エトキシベンザミド)は、サリチル酸系の非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)であり、解熱鎮痛成分として使用される。
本発明の医薬組成物におけるエテンザミドの塩としては、薬学的に許容される塩であればよく、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、メグルミン塩、トリス塩、塩基性アミノ酸の塩等が挙げられる。
本発明の医薬組成物におけるエテンザミドの含有量は、その薬効を示す量であれば特に限定されるものではないが、服用者の性別、年齢、症状等によって適宜決定すればよく、15歳以上の成人1日当たりの服用量として、150~1500mgが好ましく、200~1500mgがより好ましく、250~1500mgがさらに好ましい。
また、医薬組成物全質量に対し、エテンザミドの含有量は、4~90質量%が好ましく、4~80質量%がより好ましく、4~70質量%がさらに好ましく、4~65質量%が特に好ましい。
【0013】
本発明の医薬組成物に含まれる(A)成分と(B)成分の合計含有量は、10~90質量%が好ましく、30~90質量%がより好ましく、30~80質量%がさらに好ましい。また、(A)成分と(B)成分の含有比は特に限定されないが、(A)ナプロキセン1質量部に対して(B)エテンザミド0.125~150質量部が好ましく、0.22~100質量部がより好ましく、0.25~75質量部がさらに好ましく、0.25~5質量部が特に好ましい。
【0014】
<(C)成分>
(A)成分と(B)成分との組み合わせにおいて、(C)成分をこれらと共存させることで、外観変化の生じ難い医薬組成物となる。
本発明の医薬組成物における(C)成分は、下記の(c1)、(c2)、及び(c3)からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
(C)成分の含有量は、本発明の医薬組成物全質量に対し、外観変化抑制の観点から5~90質量%が好ましく、8~90質量%がより好ましく、10~90質量%がさらに好ましく、10~70質量%が特に好ましい。また、ナプロキセン及びエテンザミドを配合することによる外観変化を抑制する観点から(A)成分及び(B)成分の合計値1質量部に対して、好ましくは0.1~2質量部が好ましい。
【0015】
<(c1)成分>
(c1)成分としては、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、及び乾燥水酸化アルミニウムゲルから選ばれる塩基性化合物である。他の塩基性化合物であるリン酸水素カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムでは外観変化抑制効果は認められず、本願発明の特定の成分に特有の効果である。
【0016】
本発明の医薬組成物中におけるケイ酸マグネシウムの1日あたりの15歳以上の服用量(配合量)は、特に限定されないが、200~3000mgが好ましく、600~3000mgがより好ましい。本発明の医薬組成物中におけるケイ酸マグネシウム成分の含有量は、ナプロキセン及びエテンザミドの外観変化抑制の観点から(A)成分及び(B)成分の合計値1質量部に対して、好ましくは0.3~2質量部、より好ましくは0.35~2質量部、さらに好ましくは0.43~1.5質量部、最も好ましくは0.71~1.43質量部である。また、医薬組成物全質量に対し、ケイ酸マグネシウムの含有量は、20~70質量%が好ましく、20~60質量%がより好ましく、25~60質量%がさらに好ましく、30~60質量%が特に好ましい。
【0017】
本発明の医薬組成物中における酸化マグネシウムの1日あたりの15歳以上の服用量(配合量)は、特に限定されないが、30~500mgが好ましく、100~500mgがより好ましい。本発明の医薬組成物中における酸化マグネシウム成分の含有量は、ナプロキセン及びエテンザミドの外観変化抑制の観点から(A)成分及び(B)成分の合計値1質量部に対して、好ましくは0.01~1質量部、より好ましくは0.04~1質量部、さらに好ましくは0.1~0.5質量部、特に好ましくは0.2~0.5質量部、最も好ましくは0.24~0.43質量部である。また、医薬組成物全質量に対し、酸化マグネシウムの含有量は、5~60質量%が好ましく,10~60質量%がより好ましく、10~50質量%がさらに好ましく、10~30質量%が最も好ましい。
【0018】
本発明の医薬組成物中における炭酸マグネシウムの1日あたりの15歳以上の服用量(配合量)は、特に限定されないが、30~2000mgが好ましく、130~2000mgがより好ましく、400~2000mgがさらに好ましい。本発明の医薬組成物中における炭酸マグネシウム成分の含有量は、ナプロキセン及びエテンザミドの外観変化抑制の観点から(A)成分及び(B)成分の合計値1質量部に対して、好ましくは0.01~1質量部、より好ましくは0.19~0.95質量部、特に好ましくは0.43~0.95質量部、最も好ましくは0.71~0.95質量部である。また、医薬組成物全質量に対し、炭酸マグネシウムの含有量は、10~60質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましく、15~50質量%がさらに好ましい。
【0019】
本発明の医薬組成物中における水酸化マグネシウムの1日あたりの15歳以上の服用量(配合量)は、特に限定されないが、60~1800mgが好ましく、120~1800mgがより好ましい。本発明の医薬組成物中における水酸化マグネシウムの含有量は、ナプロキセン及びエテンザミドの外観変化抑制の観点から(A)成分及び(B)成分の合計値1質量部に対して、好ましくは0.01~1質量部、より好ましくは0.1~0.5質量部,さらに好ましくは0.24~0.43質量部である。また、医薬組成物全質量に対し、水酸化マグネシウムの含有量は、5~60質量%が好ましく、10~60質量%がより好ましく、10~50質量%が特に好ましく、10~30質量%が最も好ましい。
【0020】
本発明の医薬組成物中における合成ヒドロタルサイトの1日あたりの15歳以上の服用量(配合量)は、特に限定されないが、260~4000mgが好ましく、800~4000mgがより好ましい。本発明の医薬組成物中における合成ヒドロタルサイトの含有量は、また、ナプロキセン及びエテンザミドの外観変化抑制の観点から(A)成分及び(B)成分の合計値1質量部に対して、好ましくは0.12~2質量部、より好ましくは0.3~1.9質量部、特に好ましくは0.43~1.9質量部、最も好ましくは0.71~0.1.9質量部である。また、医薬組成物全質量に対し、合成ヒドロタルサイトの含有量は、30~80質量%が好ましく、30~70質量%がより好ましく、40~70質量%がさらに好ましい。
【0021】
本発明の医薬組成物中における 乾燥水酸化アルミニウムゲルとしては、「第十七改正 日本薬局方」に所載の乾燥水酸化アルミニウムゲルが挙げられる。なお、乾燥水酸化アルミニウムゲルには、結合水等の水が保持されていてもよい。乾燥水酸化アルミニウムゲルの1日あたりの15歳以上の服用量(配合量)は、特に限定されないが、60~1000mgが好ましく、200~1000mgがより好ましい。また水酸化アルミニウムゲルとして使用してもよい。本発明の医薬組成物中における乾燥水酸化アルミニウムゲルの含有量は、ナプロキセン及びエテンザミドの外観変化抑制の観点から(A)成分及び(B)成分の合計値1質量部に対して、好ましくは0.02~0.71質量部、より好ましくは0.09~0.71質量部、特に好ましくは0.43~0.71質量部、最も好ましくは0.48~0.71質量部である。また、医薬組成物全質量に対し、乾燥水酸化アルミニウムゲルの含有量は、10~50質量%が好ましく、20~50質量%がより好ましく、30~45質量%がさらに好ましい。
【0022】
<(c2)成分>
(c2)成分としては、外観変化を抑制する点から、グリシンである。本発明の医薬組成物中におけるグリシンの1日あたりの15歳以上の服用量(配合量)は、特に限定されないが、60~900mgが好ましく、180~900mgがより好ましい。本発明の医薬組成物中におけるグリシンの含有量は、また、ナプロキセン及びエテンザミドの外観変化抑制の観点から(A)成分及び(B)成分の合計値1質量部に対して、好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.02~2質量部、特に好ましくは0.43~2質量部である。また、医薬組成物全質量に対し、グリシンの含有量は、10~70質量%が好ましく、20~70質量%がより好ましく、25~70質量%がさらに好ましく、30~70質量%がさらにより好ましい。
【0023】
<(c3)成分>
(c3)成分としては、外観変化を抑制する点から乳糖、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロースである。他の賦形剤であるバレイショデンプン、マンニトール、結晶セルロース、デンプングリコール酸ナトリウムでは外観変化抑制効果は認められず、本願発明の特定の賦形剤に特有の効果である。
【0024】
本発明のヒドロキシプロピルセルロースは結合剤であり、崩壊剤の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとは異なるものである。
本発明の医薬組成物中における乳糖、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒプロメロースの含有量は、それぞれ10~90質量%が好ましく、10~80質量%がより好ましい。また、ナプロキセン及びエテンザミドの外観変化抑制の観点から(A)成分及び(B)成分の合計値1質量部に対して、乳糖、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロースの各含有量は、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.1~6.0質量部、特に好ましくは0.13~6.0質量部、0.13~2.0質量部である。
【0025】
(C)成分は1種単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよく、共沈物や共沈生成物、混合乾燥ゲルでもよい。
【0026】
本発明の医薬組成物は、通常、日本薬局方の製剤通則に規定されている剤形であれば特に限定されないが、外観変化の観点から好ましくは錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤、特に好ましくは錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤であり、最も好ましくは錠剤である。日本薬局方の製剤通則に規定されている錠剤には、口腔内崩壊錠、チュアブル錠、発泡錠、分散錠及び溶解錠、フィルムコーティング錠、糖衣錠、積層錠などが含まれる。また、錠剤に割線や識別性向上のためのマーク、刻印を設けることができる。さらに、本製剤の錠剤は、丸錠であってもよいし、異型錠であってもよい。また、本製剤はミニタブレットでもよい。
【0027】
本発明の(A)成分と(B)成分は実質的に互いに接触するように配合することにより外観変化の度合いが高くなり、これらと共存するように(C)成分を含有させることにより効果的に外観変化を抑制できる。
(A)成分と(B)成分と(C)成分とが実質的に互いに接触するとは、(A)成分と(B)成分と(C)成分が物理的/又は化学的に隔離されることなく混在している状態のことである。ただし、(A)成分と(B)成分と(C)成分以外の成分の配合を排除するものではなく、他の成分の共存は許容される。また、本発明において、(A)成分と(B)成分と(C)成分とが別々の造粒物に含まれる場合であっても、実質的に互いに接触した状態に含まれるが、それぞれ別々の造粒物に配合し、かつ各造粒物を互いに接触しないようにコーティングした場合は含まれない。また、錠剤のフィルムコーティング層にのみ(C)成分が含まれる場合は、(A)成分と(B)成分の相互作用を抑制できないので本発明に含まれない。
【0028】
本発明の医薬組成物中には本発明の効果を損なわない質的、量的範囲で、通常用いられる他の有効成分、賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、酸味剤、甘味剤、矯味剤、清涼化剤、着色剤、発泡剤、界面活性剤、可塑剤、コーティング剤などを配合することができる。
【0029】
本発明の医薬組成物に配合できる他の有効成分としては、例えば、解熱鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、気管支拡張剤、去痰剤、催眠鎮静剤、ビタミン類、アミノ酸類、抗炎症剤、胃粘膜保護剤、生薬類、漢方処方、カフェイン類等が挙げられ、これらからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有しても良い。
【0030】
本発明の医薬組成物に配合できる崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、アルファー化デンプン等が挙げられ、結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ゼラチン、アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、プルラン等が挙げられ、滑沢剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、硬化油、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等が挙げられる。なお、本発明において、本発明の効果を損なわない範囲で、香料を配合することができる。
【0031】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、他の塩基性化合物であるリン酸水素カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムや、他の賦形剤であるデンプン、マンニトール、結晶セルロース、デンプングリコール酸ナトリウムも配合することができる。
本発明の医薬組成物は、常法により製造することができ、その方法は特に限定されるものではない。本発明の錠剤の製造方法医薬有効成分と上述のような添加剤を混合機などの適当な混合機で混合して錠剤用混合末を製造した後、当該混合末を直接圧縮打錠する方法、または、顆粒を圧縮打錠する方法等により製造することができる。顆粒の製造方法は、乾式造粒法(スラッグ法、ローラーコンパクター法)、湿式造粒法により製造することができ、特に限定はしないが好ましくは湿式造粒法である。湿式造粒法としては、撹拌造粒法、流動層造粒法、押し出し造粒法、転動造粒法、噴霧造粒等で製造すればよいが、好ましくは攪拌造粒法、流動層造粒法である。錠剤用混合末または当該混合末の顆粒を圧縮打錠する機械としては、単発打錠機、ロータリー式打錠機等を用いることができる。
【0032】
本発明の医薬組成物の包装形態については、特に限定されないが、市販されている容器に充填することができる。また医薬品の品質の観点から、気密容器又は密閉容器が好ましく、気密容器がより好ましい。気密容器としては、ガラス瓶、プラスチック製の包装が挙げられる。プラスチック製の包装は、例えば、PTP包装、アルミラミネートフィルムオーバーラップを含むPTP包装、ストリップ包装、SP包装、プラスチックボトル、アルミ分包(スティック包装を含む)、パウチ包装等が挙げられる。
【実施例0033】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に限定されるものではない。
【0034】
(固形製剤の調製)
(実施例1~27、比較例1~14)
表1、表2に記載の配合組成で混合末の各原料成分を秤量した後、均一に混合し製剤を得た。
(試験例)
<評価方法>
実施例1~27、比較例1~14及び参考例1の製剤について、以下の試験方法により保存安定性の評価を行った。
保存安定性の評価(外観評価)
得られた製剤を、密栓した状態で保存し、製造直後品と比較し6000Lx条件下に14日間保存した後の外観変化(変色)を目視にて観察した。
本発明の外観の変化の程度は5段階で評価した。また製造直後との相対評価で実施し、変化がない場合を0(変化なし)、認識できるごくわずかな外観の変化があった場合を1(ごくわずかに変化あり)、認識できるわずかな外観の変化があった場合を2(わずかに変化あり)、認識できる変化があった場合を3(変化あり)、認識できる明らかな変化があった場合を4(著しい変化あり)とし、平均値を算出した。2以下を許容とした。
(結果)
それぞれの外観評価の結果を表1、表2に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
表1に示すように、ナプロキセンを配合した参考例1と比較して、ナプロキセン及びエテンザミドを配合した比較例1では明らかな変色が確認された。本発明のc1成分、c2成分を配合した実施例1~17では変色を抑制することができた。一方、他の塩基性化合物である無水リン酸水素カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを配合した比較例2~4では変色が抑制されなかった。
比較例5、6及び実施例18、19より、ナプロキセン及びエテンザミドの配合量を変化させてもグリシンを配合することにより変色抑制することができた。
【0038】
表2に示すように、ナプロキセン及びエテンザミド配合製剤に乳糖、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロースの配合により変色抑制が可能となった。一方、バレイショデンプン、マンニット、結晶セルロースを配合しても変色抑制できなかった。またナプロキセン及びエテンザミドの配合量が変化させても、変色抑制が確認された。
【0039】
(実施例28、29)
表3に記載の配合組成で混合末の各原料成分を秤量した後、湿式造粒し、顆粒を得た。得られた造粒顆粒を打錠し錠剤を得た。
【0040】
【表3】
【0041】
(製剤例)
表4に製剤例を示す。
【0042】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、ナプロキセン又はその塩を含有し、保存安定性に優れた、医薬組成物を提供することができる。