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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163044
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】冷却具
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/10 20060101AFI20241114BHJP
   A61F 9/04 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
A61F7/10 300C
A61F7/10 330D
A61F9/04 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024073827
(22)【出願日】2024-04-30
(31)【優先権主張番号】P 2023077439
(32)【優先日】2023-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 拓也
【テーマコード(参考)】
4C099
【Fターム(参考)】
4C099AA02
4C099CA06
4C099EA05
4C099HA09
4C099LA04
4C099NA03
4C099NA10
(57)【要約】
【課題】着用者の目及び/又は目の周辺に対する冷却体のフィット性を向上させることで、着用者の目及び/又は目の周辺への冷却性を向上させることが可能な冷却具に関する。
【解決手段】着用者の顔の少なくとも目及び/又は目の周辺を覆う本体部と、本体部に設けられる冷却体とを備える冷却具であって、本体部は、着用時において、着用者の肌側に向く内面シートと、冷却体を介して内面シートと対向するよう配された外面シートとを有し、冷却体は、水を保有し得る保水層を有しており、冷却体は、着用時において、少なくとも一部が内面シートを介して着用者の目及び/又は目の周辺と接触するよう本体部に配置されており、内面シートの剛軟度は、外面シートの剛軟度よりも低い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の顔の少なくとも目及び/又は目の周辺を覆う本体部と、前記本体部に設けられる冷却体とを備える冷却具であって、
前記本体部は、
着用時において、着用者の肌側に向く内面シートと、
前記冷却体を介して前記内面シートと対向するよう配された外面シートと
を有し、
前記冷却体は、水を保有し得る保水層を有しており、
前記冷却体は、着用時において、少なくとも一部が前記内面シートを介して着用者の目及び/又は目の周辺と接触するよう前記本体部に配置されており、
前記内面シートの剛軟度は、前記外面シートの剛軟度よりも低い
冷却具。
【請求項2】
前記本体部は、
該本体部を幅方向に二分する縦中心線と、
前記縦中心線を境とした幅方向の一方側を構成する第1パネル部と、
前記縦中心線を境とした幅方向の他方側を構成する第2パネル部と
を有しており、
前記冷却体は、前記第1パネル部と前記第2パネル部とにそれぞれ設けられる
請求項1に記載の冷却具。
【請求項3】
前記縦中心線と前記冷却体の該縦中心線側の端部との離間距離が、それぞれ5mm以上35mm以下である
請求項2に記載の冷却具。
【請求項4】
前記本体部は、
着用時において、着用者の額側に位置する上縁部と、
着用時において、着用者の鼻側に位置する下縁部と、
前記上縁部から前記下縁部側に向けて形成された上側スリットと、
前記下縁部から前記上縁部側に向けて形成された下側スリットと
を有しており、
前記上側スリット及び前記下側スリットは、該本体部を幅方向に二分する縦中心線上に形成されている
請求項1~3のいずれか1項に記載の冷却具。
【請求項5】
前記下側スリットは、前記上側スリットよりも長く形成されている
請求項4に記載の冷却具。
【請求項6】
前記上側スリットの上下方向に沿う長さは、前記本体部の前記上縁部から前記下縁部までの上下方向に沿う長さに対して3%以上25%以下である
請求項4に記載の冷却具。
【請求項7】
前記下側スリットの上下方向に沿う長さは、前記本体部の前記上縁部から前記下縁部までの上下方向に沿う長さに対して23%以上73%以下である
請求項4に記載の冷却具。
【請求項8】
前記下側スリットは、前記下縁部から前記上縁部側に向けて先細りとなるよう形成された切り欠きである
請求項4に記載の冷却具。
【請求項9】
前記本体部は、前記縦中心線を境とした幅方向の一方側を構成する第1パネル部側の前記下縁部から前記縦中心線に向けて傾斜する第1内側辺部と、前記縦中心線を境とした幅方向の他方側を構成する第2パネル部側の前記下縁部から前記縦中心線に向けて傾斜する第2内側辺部とを備え、
前記下側スリットは、前記第1内側辺部及び前記第2内側辺部により画定された切り欠きであり、
前記第1内側辺部に沿う第1仮想線と前記第2内側辺部に沿う第2仮想線との開き角度は、1°以上36°以下である
請求項8に記載の冷却具。
【請求項10】
前記本体部の幅方向の両端部に設けられ、該本体部により着用者の顔の少なくとも目及び/又は目の周辺が覆われるように該本体部を着用者の顔に保持させることが可能な耳掛け部を更に備え、
前記耳掛け部は、前記本体部の幅方向に対して、着用時における前記本体部の下方側に傾斜して設けられている
請求項1~3のいずれか1項に記載の冷却具。
【請求項11】
前記耳掛け部は、それぞれ、着用時における前記本体部の上下方向に対して傾斜した接合部によって前記本体部に接合されており、
前記接合部に沿う第3仮想線は、それぞれ、前記本体部を幅方向に二分する縦中心線の中心よりも着用時における前記本体部の下方側において収束するよう、前記縦中心線に対して傾斜しており、
前記縦中心線に対する前記第3仮想線の傾斜角度は、それぞれ1°以上25°以下である
請求項10に記載の冷却具。
【請求項12】
前記保水層は、水の初期含有量が1cmあたり0.04ml以上0.40ml以下である
請求項1~3のいずれか1項に記載の冷却具。
【請求項13】
前記内面シートの剛軟度は、前記外面シートの剛軟度に対して95%以下である
請求項1~3のいずれか1項に記載の冷却具。
【請求項14】
前記内面シートの剛軟度が20mm以上90mm以下である
請求項1~3のいずれか1項に記載の冷却具。
【請求項15】
前記外面シートの剛軟度が50mm以上160mm以下である
請求項1~3のいずれか1項に記載の冷却具。
【請求項16】
前記冷却体の前記内面シートに対向する対向面の総面積が3000mm以上12000mm以下である
請求項1~3のいずれか1項に記載の冷却具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、着用者の顔の少なくとも目を覆う本体部と、本体部に設けられる冷却体とを備える冷却具が知られている(特許文献1等)。この冷却具は、着用者の目の疲れや目の腫れ等を緩和するために用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-28176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷却具により着用者の目の疲れや目の腫れ等を緩和するためには、冷却具に設けられる冷却体が着用者の目及び/又は目の周辺にフィットしている状態が望まれる。しかしながら、特許文献1に記載の冷却具も含め、従来の冷却具では、着用者の目及び/又は目の周辺に対する冷却体のフィット性については考慮されていない傾向にある。
【0005】
本発明は、着用者の目及び/又は目の周辺に対する冷却体のフィット性を向上させることで、着用者の目及び/又は目の周辺への冷却性を向上させることが可能な冷却具に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る冷却具は、着用者の顔の少なくとも目及び/又は目の周辺を覆う本体部と、前記本体部に設けられる冷却体とを備える冷却具であって、前記本体部は、着用時において、着用者の肌側に向く内面シートと、前記冷却体を介して前記内面シートと対向するよう配された外面シートとを有し、前記冷却体は、水を保有し得る保水層を有しており、前記冷却体は、着用時において、少なくとも一部が前記内面シートを介して着用者の目及び/又は目の周辺と接触するよう前記本体部に配置されており、前記内面シートの剛軟度は、前記外面シートの剛軟度よりも低い。
【発明の効果】
【0007】
本発明の冷却具によれば、着用者の目及び/又は目の周辺に対する冷却体のフィット性を向上させることで、着用者の目及び/又は目の周辺への冷却性を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る冷却具を示す図である。
図2】本実施形態に係る冷却具の概略断面図である。
図3】本実施形態に係る下側スリットを示す部分拡大図である。
図4】本実施形態に係る冷却体を示す図である。
図5図4のII-II´線に沿った概略断面図である。
図6図6(a)は、耳掛け部の引張時の状態を示す図であり、図6(b)は、耳掛け部の装着時の状態を示す図である。
図7】本実施形態に係る冷却具が、包装体に封入された状態を示す図である。
図8】水蒸気発生量を測定する装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、本実施形態においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や、一部の構成要素が省略されている場合がある。
【0010】
[冷却具の全体構成]
図1に示すように、本実施形態に係る冷却具1は、着用者の顔の少なくとも目及び/又は目の周辺を覆う本体部10と、本体部10に設けられる冷却体20と、本体部10の幅方向の両端部に設けられる耳掛け部30とを備えている。なお、図1は、着用者の非目元側の面(外面)が上を向くよう本体部10を展開させた状態における平面図である。
【0011】
本実施形態において、冷却具1は、防水性を有する包装体200に封入された状態で保存されている(図7参照)。なお、冷却具1全体が包装体200に封入されている必要は必ずしもない。例えば、冷却体20が本体部10と一体となっていない場合(後付け可能な場合)には、少なくとも冷却体20が包装体200に封入された状態で保存されていると良い。すなわち、本体部10と冷却体20とを個別に包装しても良いし、冷却体20のみを包装しても良い。また、冷却体20に水を添加して使用する場合には、冷却具1乃至冷却体20が防水性を有する包装体200に封入されていなくても良い。
【0012】
本明細書において、「幅方向」とは、本体部10を平面方向から見た状態(すなわち、図1の状態)における後述する第1パネル部10A及び第2パネル部10Bの並び方向に一致する方向をいう。「本体部10の幅方向両端部」とは、第1パネル部10Aの耳掛け部30側の端部と第2パネル部10Bの耳掛け部30側の端部とを意味する。
【0013】
[本体部の基本的構成]
図2に示すように、本体部10は、冷却具1の着用時において、着用者の肌側(図2の上側)に向く内面シート11と、冷却体20を介して内面シート11と対向するよう配された外面シート12とを備えており、全体としてシート状に形成されている。内面シート11及び外面シート12は、同形同大に形成されており、内面シート11と外面シート12との間に冷却体20が配された状態において、互いに接合されている。なお、本実施形態では、内面シート11及び外面シート12が同形同大に形成されているものとして説明したが、これに限定されず、内面シート11と外面シート12とで形状が異なっていても良いし、大きさが異なっていても良い。
【0014】
ここで、内面シート11と外面シート12の接合方法について説明する。本実施形態においては、外面シート12には、接着剤(図示せず)が塗布されており、該接着剤を介して冷却体20及び内面シート11が接着されている。接着剤としては、ホットメルト型接着剤を用いることが好ましいが、これに限定されず、種々の公知の固定手段を用いることができる。例えば、ホットメルト型以外の接着剤、縫製、熱融着等が可能であるが、固定できれば限定されない。
【0015】
なお、外面シート12に接着剤を塗布する構成に代えて、又はこれに加えて、内面シート11に接着剤を塗布する構成を採用することも可能である。また、内面シート11と外面シート12とを局所的に非接着とすることにより、内面シート11と外面シート12との間に冷却体20を挿脱可能な開口及び収納空間を形成する構成としても良い。
【0016】
[本体部の具体的構成]
以下、本実施形態に係る本体部10の具体的な構成として、剛性、通気性、透湿防水性、坪量、伸縮性、材料及び形状等について、それぞれ説明する。
【0017】
[剛性]
本実施形態において、内面シート11は、外面シート12よりも剛性が低くなっている。すなわち、内面シート11の剛軟度が外面シート12の剛軟度よりも低くなっている。具体的には、内面シート11の剛軟度は、冷却体20を内面シート11側に凸の状態とし、肌への冷却効果を高める観点から、外面シート12の剛軟度に対して、95%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、65%以下であることが更に好ましい。また、内面シート11の剛軟度は、フィット性と肌への冷却効果の両立の観点から、外面シート12の剛軟度に対して、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることが更に好ましい。そして、内面シート11の剛軟度は、外面シート12の剛軟度に対して、好ましくは10%以上95%以下であり、より好ましくは20%以上80%以下であり、更に好ましくは30%以上65%以下である。
【0018】
内面シート11の剛軟度は、シート強度をバランスよく高める観点から、10mm以上であることが好ましく、20mm以上であることがより好ましく、30mm以上であることが更に好ましい。また、心地良い着け心地の観点から、90mm以下であることが好ましく、80mm以下であることがより好ましく、70mm以下であることが更に好ましい。そして、内面シート11の剛軟度は、好ましくは10mm以上90mm以下、より好ましくは20mm以上80mm以下、更に好ましくは30mm以上70mm以下である。
【0019】
外面シート12の剛軟度は、形状を安定に保つ観点から、50mm以上であることが好ましく、60mm以上であることがより好ましく、70mm以上であることが更に好ましい。また、着用者の目や目の周辺へのフィット性を良好にしつつ肌への冷却効果を両立する観点から、160mm以下であることが好ましく、140mm以下であることがより好ましく、120mm以下であることが更に好ましい。そして、外面シート12の剛軟度は、好ましくは50mm以上160mm以下、より好ましくは60mm以上140mm以下、更に好ましくは70mm以上120mm以下である。
【0020】
ここで、剛軟度とは、JIS L 1096:2010のA法(45°カンチレバー法)に準拠しつつ、下記(4)の方法に一部変更を加えた、以下の方法によって測定及び算出される値である。
(1) 20mm×約150mmの試験片を5枚採取し、一端が45°の斜面をもつ表面の滑らかな水平台の上に試験片の短辺をスケール基線に合わせて置く。なお、上記の寸法で試験片を採取できない場合は、上記の寸法に可能な限り近い寸法で試験片を採取する。
(2) 適切な方法によって試験片を斜面の方向に緩やかに滑らせて、試験片の一端の中央点が斜面と接したときに、試験片の他端の位置をスケールによって読む。
(3) 剛軟度は、試験片が移動した長さ(mm)で示され、5枚の試験片の表裏をそれぞれ測る。
(4) たて方向及びよこ方向の値をまとめて平均値を算出し、整数位に丸める。
剛軟度の値が小さいことは、測定に供されるシートが軟らかいこと(剛性が低いこと)を意味し、剛軟度の値が大きいことは、測定に供されるシートが硬いこと(剛性が高いこと)を意味している。本実施形態では、内面シート11の剛軟度が外面シート12の剛軟度よりも低くなっているため、内面シート11の方が外面シート12よりも柔らかいものとなっている。
【0021】
[通気性]
本実施形態において、内面シート11は、通気性シートからなることが好ましい。具体的には、内面シート11は、少なくとも着用者の目と保水層22との間の領域における透気度が、水の蒸発による気化放熱を促進させる観点から、30000秒/100mL以下であることが好ましく、3000秒/100mL以下であることがより好ましく、300秒/100mL以下であることが更に好ましく、200秒/100mL以下であることがより更に好ましく、100秒/100mL以下であることがより更に好ましく、5秒/100mL以下であることがより更に好ましく、また、0秒/100mLであることが最も好ましい。こうした透気度を満足すれば、内面シート11は、その一部が通気性を有しない構成であってもよい。
【0022】
なお、本実施形態において、内面シート11は、通気性を有するシートであるものとして説明したが、これに限定されず、使用感に影響のない範囲で透気度を調整して良く、難通気性シート又は非通気性シートであっても良い。
【0023】
ここで、透気度とは、JIS P8117(2009年改正版)によって測定される値であり、一定の圧力のもとで100mlの空気が6.42cmの面積を通過する時間として定義される。したがって、透気度の数値が大きいことは空気の通過に時間がかかること、即ち通気性が低いことを意味している。逆に、透気度の数値が小さいことは通気性が高いことを意味している。このように、透気度の数値の大小と通気性の高低とは逆の関係を示す。透気度は、王研式透気度計で計測することができる。本明細書中においては、30000秒/100ml未満の透気度を「通気性」と定義し、30000秒/100ml以上80000秒/100ml未満の透気度を「難通気性」と定義し、80000秒/100ml以上の透気度を「非通気性」と定義する。
【0024】
本実施形態において、外面シート12の通気性は特に指定されず、製品の性能を損なわない限り、製品の設計に応じて任意の材料を用いることができる。具体的には、通気性シート、難通気性シート及び非通気性シートのいずれでもよい。しかしながら、外面シート12は、冷却体20の蒸気放出方向を内面シート11側(着用者の目側)に規定する観点から、難通気性又は非通気性を有していることが好ましい。
【0025】
[透湿防水性]
内面シート11は、通気性に加え、透湿性と防水性とを兼ね備えた透湿防水性シートであることが好ましい。具体的には、内面シート11の透湿度は、着用時に蒸れや濡れを抑制する観点から、12000g/m・24hr以下であることが好ましく、11000g/m・24hr以下であることがより好ましく、10000g/m・24hr以下であることが更に好ましい。また、この透湿度は、水分の蒸発に伴う気化放熱によって冷却効果を高める観点から、2000g/m・24hr以上であることが好ましく、2500g/m・24hr以上であることがより好ましく、3000g/m・24hr以上であることが更に好ましい。こうした透湿度を満足すれば、内面シート11は、その一部が透湿性を有しない構成であってもよい。また、内面シート11は、透湿性を有するシートであるものとして説明したが、これに限定されず、使用感に影響のない範囲で透湿度を調整して良く、難透湿性シート又は非透湿性シートであっても良い。なお、内面シート11や外面シート12等のシート部材において、シート部材が通気性を有している場合には、透湿性も有している。
【0026】
ここで、透湿性とは、水蒸気を通す性質のことをいう。透湿度は、JIS L1099:2012のA-1法によって測定される値であり、1mあたりにおける24時間で透過する水分を数値(g)として定義される。したがって、透湿度の数値が大きいことは透湿性が高いことを意味し、逆に、透湿度の数値が小さいことは透湿性が低いことを意味している。本明細書中においては、100g/m・24h以上の透湿度を「透湿性」と定義し、100g/m・24hr未満30g/m・24hr以上の透湿度を「難透湿性」と定義し、30g/m・24hr未満の透湿度を「非透湿性」と定義する。
【0027】
また、内面シート11の耐水度は、着用者の目及び/又は目の周辺の濡れを防ぐ観点から、300mm以上であることが好ましく、400mm以上であることがより好ましく、500mm以上であることが更に好ましい。さらに、1000mm以上であることが最も好ましい。こうした耐水度を満足すれば、内面シート11は、その一部が防水性を有しない構成であってもよい。また、内面シート11は、防水性を有するシートであるものとして説明したが、これに限定されず、非防水性シート(透水性シート)であっても良い。
【0028】
ここで、防水性とは、水の透過を防ぐ性質のことをいう。防水性は、耐水度によって評価することができ、この耐水度は、JIS L 1092 A法により測定することができる。この耐水度は、水の透過に耐えることができる1cmあたりの水柱の高さ(mm)として定義される。したがって、耐水度の数値が大きいことは防水性が高いことを意味し、逆に、耐水度の数値が小さいことは防水性が低いことを意味している。本明細書中においては、300mm以上の耐水度を「防水性」と定義し、300mm未満の耐水度を「非防水性」又は「透水性」と定義する。
【0029】
[坪量]
内面シート11の坪量は、厚み、シート強度をバランスよく高める観点及び着用者の目及び/又は目の周辺へのフィット感を良好にしつつ肌への冷却効果を両立する観点から、5g/m以上であることが好ましく、10g/m以上であることがより好ましく、15g/m以上であることが更に好ましく、20g/m以上であることがより更に好ましい。また、内面シート11の坪量は、着用者の顔から冷却体20への伝熱効率を高めると共に、冷却体20から発生される水蒸気を蒸発させやすくする観点及び冷たさを感じやすくする観点から、80g/m以下であることが好ましく、60g/m以下であることがより好ましく、40g/m以下であることが更に好ましく、30g/m以下であることがより更に好ましい。
【0030】
外面シート12の坪量は、本体部10の形状を安定に保ち、冷却体20を安定に保持し、更に冷却体20が透けて外観が損なわれることを防止する観点等から決定される。かかる観点から、10g/m以上であることが好ましく、15g/m以上であることがより好ましく、20g/m以上であることが更に好ましく、25g/m以上であることがより更に好ましい。また、外面シート12の坪量は、心地よいつけ心地を持たせる観点から、200g/m以下であることが好ましく、160g/m以下であることがより好ましく、120g/m以下であることが更に好ましく、80g/m以下であることがより更に好ましい。
【0031】
[伸縮性]
本実施形態において、内面シート11は、伸縮性を有していることが好ましく、外面シート12よりも伸縮性を有していることが好ましい。また、外面シート12は、伸縮性を有していても良いし、非伸縮性であっても良い。伸縮性を有するシートとしては、構成繊維として弾性繊維を含むシート、弾性フィラメントを含むシート、ゴム編等の構造により伸縮性を発現するシート等が挙げられる。
【0032】
具体的には、内面シート11は、着用者の目及び/又は目の周辺に対する冷却体20のフィット性を良好にしつつ肌への冷却効果を両立する観点から、内面シート11の幅方向の引張強さが5N/5cm以上80N/5cm以下であることが好ましく、10N/5cm以上60N/5cm以下であることがより好ましく、20N/5cm以上40N/5cm以下であることが更に好ましい。また、外面シート12は、着用者の目及び/又は目の周辺へのフィット感を良好にしつつ肌への冷却効果を両立すると共に、着用者の額部中央と内面シート11との間に冷却体20から放出された水蒸気の通り道となる隙間を設ける観点から、外面シート12の幅方向の引張強さが15N/5cm以上115N/5cm以下であることが好ましく、30N/5cm以上95N/5cm以下であることがより好ましく、45N/5cm以上75N/5cm以下であることが更に好ましい。引張強さの値が小さいことは、測定に供されるシートが高伸縮であることを示しており、引張強さの値が大きいことは、測定に供されるシートが低伸縮であることを示している。
【0033】
ここで、引張強さは、例えば、JIS L 1913:2010の「6.3 引張強さ及び伸び率(ISO法)」の項目に準拠し、以下の方法によって測定をすることができる。
(1) シートから幅方向の長さが50mm、幅方向と直交する方向の長さが300mmとなる試験片を5枚採取する。なお、上記の寸法で試験片を採取できない場合は、上記の寸法に可能な限り近い寸法で試験片を採取する。
(2) 採取した試験片を初荷重で引張試験機につかみ間隔を200mmで取り付ける。なお、つかみ間隔を上記の値に設定することができない場合は、上記の値に可能な限り近い値に設定する。
(3) 300mm/minの引張速度で、試験片が切断するまで荷重を加え、引張荷重が最大値となる値を引張強さとし、引張強さを読み取る。
(4) 5枚の試験片について、それぞれ引張強さを測定し、引張強さの平均値を求め、小数点以下1けたに丸める。
【0034】
[材料]
内面シート11及び外面シート12の材料は、着用者の目及び/又は目の周辺を覆う冷却具の技術分野において従来から用いられているものを用いることができる。例えば、不織布、織布、紙などの繊維シート、樹脂発泡シート、金属シート又はこれらの組み合わせ等が用いられる。なかでも、加工のしやすさや経済性の観点から不織布を用いることが好ましい。不織布の繊維素材としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステル;PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、エチレンプロピレン共重合体等のポリオレフィン;レーヨン;コットン等から選択される1種又は2種以上の繊維で構成されるものが好ましい。また、不織布としては、前記の1種又は2種以上の素材の繊維を用いて、エアスルー法、スパンボンド法、ニードルパンチ法、メルトブローン法、カード法、熱融着法、水流交絡法、溶剤接着法等により製造されたものを用いることができ、単層でも多層構造でもよい。なお、不織布は、目的に応じ化学処理を行ってもよい。
【0035】
また、内面シート11及び外面シート12は、それぞれ、単層及び多層を問わない一枚のシート材のみからなる単層の構造であってもよく、二種以上のシート材を重ね合わせた多層の構造であってもよい。さらに、内面シート11と外面シート12とで構成材料が異なる構成としても良い。具体的には、着用した際に外側に配される外面シート12は、冷却具に保形性を与える上で適した構成材料を選択してもよく、また、外面の風合いや外観を良くするために適した構成材料を選択してもよい。一方、着用した際に内側に配される内面シート11は、肌あたりの良好さを目的とした構成材料を選択してもよい。また、内面シート11及び外面シート12は、任意の色に着色されていても良く、印刷等により任意の模様(柄)が施されていても良い。このような構成によれば、風合いや趣向性が向上し、使用者の好みの冷却具とすることが可能となる。
【0036】
[形状等]
図1及び図2に示すように、本体部10は、本体部10を幅方向に二分する縦中心線100と、縦中心線100を境とした幅方向の一方側を構成する第1パネル部10Aと、縦中心線100を境とした幅方向の他方側を構成する第2パネル部10Bとを有している。
【0037】
縦中心線100は、着用者の非目元側の面(外面)が上を向くよう本体部10を展開させた状態(図1の状態)における本体部10の幅方向の中央部において、該幅方向と直交する方向に延びる線である。
【0038】
第1パネル部10Aは、冷却具1の着用時において、着用者の一方の目(例えば右目)を覆うように構成されている。第2パネル部10Bは、冷却具1の着用時において、着用者の他方の目(例えば左目)を覆うように構成されている。第1パネル部10A及び第2パネル部10Bは、それぞれ略正方形状に形成されており、本体部10の幅方向両端部の周縁は、外側に突出する円弧状に形成されている。なお、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bは、正方形状に形成されていても良いし、矩形状に形成されていても良いし、他の形状を有していても良い。
【0039】
また、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bは、縦中心線100を境として左右対称の形状を有しており、かつ、縦中心線100において一体的に連続している。換言すれば、本体部10は、同形同大の第1パネル部10A及び第2パネル部10Bを左右対称に配したシート状部材からなる。なお、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bが当初から一体として形成された構成に代えて、例えば、別体として形成された第1パネル部10A及び第2パネル部10Bを機械的に結合させる構成であっても良い。
【0040】
第1パネル部10A及び第2パネル部10Bは、縦中心線100の後述する上縁部13近傍及び後述する下縁部14近傍がそれぞれ接続されておらず、縦中心線100においてのみ接続されている。これにより、本体部10は、縦中心線100を中心として第1パネル部10A及び第2パネル部10Bを展開させた際に、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bが平面方向に並列する平面形状となるよう構成されている。すなわち、本体部10は、図2に示すように、第1パネル部10Aと第2パネル部10Bとのなす角が180度となるよう、縦中心線100を中心として第1パネル部10A及び第2パネル部10Bを展開させることが可能に構成されている。なお、ここでいう「接続」には、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bが一体として形成されることにより当初から接続されている構成と、別体として形成された第1パネル部10A及び第2パネル部10Bを機械的に接続させる構成との双方が含まれる。
【0041】
図1に示すように、本体部10は、冷却具1の着用時において、着用者の額側に位置する上縁部13と、冷却具1の着用時において、着用者の鼻側に位置する下縁部14と、上縁部13から下縁部14側に向けて形成された上側スリット15と、下縁部14から上縁部13側に向けて形成された下側スリット16とを有している。
【0042】
また、本体部10は、第1パネル部10A側の下縁部14から縦中心線100に向けて傾斜する第1内側辺部17と、第2パネル部10B側の下縁部14から縦中心線100に向けて傾斜する第2内側辺部18とを有している。
【0043】
上側スリット15及び下側スリット16は、縦中心線100上に形成されている。なお、本実施形態において、「上側スリット及び下側スリットが縦中心線上に形成されている」とは、上側スリット15の幅方向の中央部と、下側スリット16の幅方向の中央部とが、それぞれ、縦中心線100の延長線上に位置するように、上側スリット15及び下側スリット16が形成されていることをいう。
【0044】
上側スリット15は、上縁部13から下縁部14側に向けて先細りとなるよう形成された略三角状の切り欠きである。また、上側スリット15は、冷却具1の着用時において、着用者の眉間又はその近傍に位置するよう構成されている。
【0045】
本実施形態において、上側スリット15の上下方向に沿う長さは、着用者の額部へのフィット性を良好にしつつ水分の蒸発に伴う気化熱や放熱によって顔への冷却効果を高める観点から、本体部10の上縁部13から下縁部14までの上下方向に沿う長さに対して、25%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、15%以下であることが更に好ましい。また、この上側スリット15の上下方向に沿う長さは、着用者の額部中央と内面シート11との間に冷却体20から放出された水蒸気の通り道となる隙間を設ける観点から、本体部10の上縁部13から下縁部14までの上下方向に沿う長さに対して、3%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることが更に好ましい。そして、上側スリット15の上下方向に沿う長さは、本体部10の上縁部13から下縁部14までの上下方向に沿う長さに対して、3%以上25%以下であることが好ましく、5%以上20%以下であることがより好ましく、10%以上15%以下であることが更に好ましい。
【0046】
なお、本実施形態において、「上側スリットの上下方向に沿う長さ」とは、縦中心線100に沿う方向における上側スリット15の始点(上縁部13が下縁部14側に向けて傾斜を開始する始点)から終点(縦中心線100の上端)までの直線長さである。また、「本体部の上縁部から下縁部までの上下方向に沿う長さ」とは、縦中心線100に沿う方向における上縁部13から下縁部14までの直線長さである。なお、上縁部13及び下縁部14が水平でない場合、例えば、上縁部13及び下縁部14が傾斜している場合や上縁部13及び下縁部14の一部に凹凸が存在する場合には、上縁部13の最上端(上縁部13の内、本体部10の上方向に最も遠い位置)から下縁部14の最下端(下縁部14の内、本体部10の下方向に最も遠い位置)までの直線長さを「本体部の上縁部から下縁部までの上下方向に沿う長さ」とする。
【0047】
例えば、上側スリット15の上下方向に沿う長さは、着用者の額部へのフィット性を良好にしつつ水分の蒸発に伴う気化熱や放熱によって顔への冷却効果を高める観点から、18mm以下であることが好ましく、16mm以下であることがより好ましく、14mm以下であることが更に好ましい。また、本体部10の上縁部13から下縁部14までの上下方向に沿う長さは、着用者の額部中央と内面シート11との間に冷却体20から放出された水蒸気の通り道となる隙間を設ける観点から、2mm以上であることが好ましく、4mm以上であることがより好ましく、6mm以上であることが更に好ましい。そして、上側スリット15の上下方向に沿う長さは、2mm以上18mm以下であることが好ましく、4mm以上16mm以下であることがより好ましく、6mm以上14mm以下であることが更に好ましい。
【0048】
下側スリット16は、下縁部14から上縁部13側に向けて先細りとなるよう形成された略逆三角状の切り欠きである。具体的には、下側スリット16は、第1内側辺部17及び第2内側辺部18により画定された切り欠きである。また、下側スリット16の先端は、上縁部13側に向けて湾曲する円弧状に形成されている。
【0049】
ここで、図3に示すように、下側スリット16の切り欠き角度、すなわち、第1内側辺部17に沿う第1仮想線VL1と第2内側辺部18に沿う第2仮想線VL2との開き角度θは、本体部10により着用者の目及び/又は目の周辺を覆う観点から、36°以下であることが好ましく、26°以下であることがより好ましく、16°以下であることが更に好ましい。また、下側スリット16の切り欠き角度、すなわち、第1内側辺部17に沿う第1仮想線VL1と第2内側辺部18に沿う第2仮想線VL2との開き角度θは、着用者の鼻部へのフィット性を良好にしつつ水分の蒸発に伴う気化熱や放熱によって顔への冷却効果を高める観点から、1°以上であることが好ましく、4°以上であることがより好ましく、8°以上であることが更に好ましい。そして、下側スリット16の切り欠き角度θは、1°以上36°以下であることが好ましく、4°以上26°以下であることがより好ましく、8°以上16°以下であることが更に好ましい。なお、図3において、縦中心線100の図示を省略している。
【0050】
なお、本実施形態において、「第1内側辺部に沿う第1仮想線」とは、第1内側辺部17の縦中心線100に向けて収束する直線部分に沿って延びる仮想線である。また、「第2内側辺部に沿う第2仮想線」とは、第2内側辺部18の縦中心線100に向けて収束する直線部分に沿って延びる仮想線である。
【0051】
下側スリット16は、冷却具1の着用時において、着用者の鼻梁又はその近傍に位置するよう構成されている。
【0052】
本実施形態において、下側スリット16は、上側スリット15よりも長く形成されている。ここで、下側スリット16の上下方向に沿う長さは、冷却具1の使用時における本体部10の幅方向への広がりを抑え、フィット性を悪化させない観点から、上側スリット15の上下方向に沿う長さに対して750%以下であることが好ましく、600%以下であることがより好ましく、450%以下であることが更に好ましい。また、下側スリット16の上下方向に沿う長さは、着用者の鼻部へのフィット性を良好にしつつ水分の蒸発に伴う気化熱や放熱によって顔への冷却効果を高める観点から、上側スリット15の上下方向に沿う長さに対して150%以上であることが好ましく、250%以上であることがより好ましく、350%以上であることが更に好ましい。そして、下側スリット16の上下方向に沿う長さは、上側スリット15の上下方向に沿う長さに対して150%以上750%以下であることが好ましく、250%以上で600%以下であることがより好ましく、350%以上450%以下であることが更に好ましい。
【0053】
なお、本実施形態において、「下側スリットの上下方向に沿う長さ」とは、縦中心線100に沿う方向における下側スリット16の始点(第1内側辺部17又は第2内側辺部18の基端)から終点(第1内側辺部17又は第2内側辺部18の先端乃至縦中心線100の下端)までの直線長さである。
【0054】
また、本実施形態において、下側スリット16の上下方向に沿う長さは、冷却具1の使用時における本体部10の幅方向への広がりを抑える観点から、本体部10の上縁部13から下縁部14までの上下方向に沿う長さに対して73%以下であることが好ましく、63%以下であることがより好ましく、53%以下であることが更に好ましい。また、下側スリット16の上下方向に沿う長さは、着用者の鼻部へのフィット性を良好にしつつ水分の蒸発に伴う気化熱や放熱によって顔への冷却効果を高める観点から、本体部10の上縁部13から下縁部14までの上下方向に沿う長さに対して23%以上であることが好ましく、33%以上であることがより好ましく、43%以上であることが更に好ましい。そして、下側スリット16の上下方向に沿う長さは、本体部10の上縁部13から下縁部14までの上下方向に沿う長さに対して23%以上73%以下であることが好ましく、33%以上63%以下であることがより好ましく、43%以上53%以下であることが更に好ましい。
【0055】
さらに、本実施形態において、下側スリット16の幅方向に沿う長さは、着用者の目及び/又は目の周辺を覆う観点から、下側スリット16の上下方向に沿う長さに対して70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、50%以下であることが更に好ましい。また、下側スリット16の幅方向に沿う長さは、着用者の鼻部へのフィット性を良好にしつつ水分の蒸発に伴う気化熱や放熱によって顔への冷却効果を高める観点から、下側スリット16の上下方向に沿う長さに対して20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることが更に好ましい。そして、下側スリット16の幅方向に沿う長さは、下側スリット16の上下方向に沿う長さに対して20%以上70%以下であることが好ましく、30%以上60%以下であることがより好ましく、40%以上50%以下であることが更に好ましい。
【0056】
例えば、下側スリット16の上下方向に沿う長さは、冷却具1の使用時における本体部10の幅方向への広がりを抑える観点から、61mm以下であることが好ましく、52mm以下であることがより好ましく、43mm以下であることが更に好ましい。また、下側スリット16の上下方向に沿う長さは、着用者の鼻部へのフィット性を良好にしつつ水分の蒸発に伴う気化熱や放熱によって顔への冷却効果を高める観点から、15mm以上であることが好ましく、24mm以上であることがより好ましく、33mm以上であることが更に好ましい。そして、下側スリット16の上下方向に沿う長さは、15mm以上61mm以下であることが好ましく、24mm以上52mm以下であることがより好ましく、33mm以上43mm以下であることが更に好ましい。
【0057】
なお、本実施形態において、「下側スリットの幅方向に沿う長さ」とは、第1内側辺部17の基端から第2内側辺部18の基端までの直線長さである。
【0058】
本体部10の上縁部13、下縁部14、上側スリット15及び下側スリット16の形状は、着用者の顔(特に、鼻、目元及び額)にフィットしやすくなるよう適宜調整されるものであり、それぞれ、直線、円弧状、局所的に凸部や曲線部を有する形状等の種々の任意の形状を採用することが可能である。例えば、上述した実施形態では、上側スリット15及び下側スリット16が切り欠きであるものとして説明したが、これに限定されず、上側スリット15及び下側スリット16が切開線であっても良い。
【0059】
以上の構成を備える本体部10は、使用前においては、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bが縦中心線100に沿って二つ折りにされて平面状に折り畳まれているため(図2及び図7参照)、コンパクト化することが可能である。一方、本体部10は、使用時に縦中心線100とは反対側の縁部から開かれ、本体部10が折り畳まれていた内側の面が着用者側の面となるようにして着用される。
【0060】
また、本体部10は、冷却具1の着用時において、着用者の顔の目及び目の周辺を覆うように構成されている。本明細書において、「目の周辺」とは、例えば、額、眉毛、頬、こめかみ、鼻等である。なお、本実施形態では、本体部10が着用者の顔の目及び目の周辺を覆うように構成されているものとして説明したが、これに限定されず、少なくとも着用者の顔の目の周辺を覆うように構成されていれば良い。すなわち、本体部10は、冷却具1の着用時において、着用者の目と対向する領域が開口していても良い。また、本体部10は、着用者の顔の全部を覆うように構成されていても良い。
【0061】
なお、本実施形態では、本体部10が内面シート11及び外面シート12を有しているものとして説明したが、これに限定されず、内面シート11と冷却体20との間に他のシートを有していても良いし、外面シート12と冷却体20との間に他のシートを有していても良い。
【0062】
[冷却体の構成]
図1図5に示すように、冷却体20は、水を保有し得る保水層22を有している。本実施形態において、保水層22は、事前に(本体部10に設けられる前に)水を含浸させたものである。すなわち、保水層22は、冷却具1が包装体200に封入された状態において水を保有している。
【0063】
冷却体20の形態として、例えば、以下に示す(1)及び(2)の形態が挙げられる。
(1) 冷却体20の一形態として、保水層22をもつシート状物である形態が挙げられる。この場合、保水層22は、粉末状または繊維状の保水材に水を含有させ混合することで得られるペーストを、シートの一方の面に塗布することで得られるものである。シートとは、後述する第一シート23、第二シート24及び基材層21のいずれであってもよい。
(2) また、冷却体20の別の形態として、保水材自体が形状を保持しており、保水層22である形態が挙げられる。この場合、保水材を好みのサイズに切断し、水を含有させることで得られるものである。
なお、本明細書において、保水材とは、保水能(吸水作用又は除水作用)を有するものであり、水の保持が可能なものであればその種類に特に制限はないが、水放散性に優れたものであることが好ましい。
【0064】
上記(1)及び(2)のいずれの形態においても、冷却体20は、第一シート23及び第二シート24の周縁部を互いに接合することにより形成された袋体の中に、保水材が封入された構成を有していてもよい。冷却体20は、このように第一シート23及び第二シート24が袋体を構成することにより、構成材料の意図しない脱落を防いで製造効率を更に高めることができる。
【0065】
冷却体20の一形態としては、図2図4及び図5に示すように、矩形状の扁平体であり、基材層21と、基材層21上に積層された保水層22とを備えている。また、冷却体20は、第一シート23と、保水層22を介して第一シート23と対向するよう配された第二シート24とを更に備えている。
【0066】
[保水層]
上記(1)の形態の場合、保水層22は、基材層21の上に散布された保水材と、該保水材に保持された水とを有している。保水材としては、例えば、炭素成分、繊維材料及び吸水性の粉体等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0067】
また、上記(2)の形態の場合、保水層22及び保水材としては、たとえば、種々の繊維素材により構成が可能であるが、親水性繊維や、親水性繊維と合成繊維の混紡とすることで構成できる。繊維素材として例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、レーヨン、コットン、パルプ等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0068】
炭素成分は、保水能を有するものであり、例えば、活性炭、アセチレンブラック、及び黒鉛から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。また、繊維材料としては、親水性繊維、中でもセルロース繊維を用いることがより好ましい。セルロース繊維としては、化学繊維(合成繊維)や天然繊維を用いることができる。さらに、前記以外の吸水性の粉体としては、バーミキュライト、おがくず、シリカゲル、ケイ酸カルシウム、ゼオライト、パルプ粉末、及び吸水性ポリマーから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0069】
吸水性ポリマーとしては、自重の20倍以上の液体を吸収、保持できる架橋構造を有する親水性のポリマーが挙げられる。吸水性ポリマーの形状は、球状、塊状、ブドウ房状、及び繊維状のいずれでもよい。吸水性ポリマーの質量平均粒径は、1μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、100μm以上であることがさらに好ましい。また、吸水性ポリマーの質量平均粒径は、1000μm以下であることが好ましく、700μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることがさらにより好ましい。吸水性ポリマーの粒径はレーザー回折法により測定される。
【0070】
吸水性ポリマーの具体例としては、例えば、デンプン、架橋カルボキシルメチル化セルロース、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体等、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリアクリル酸塩グラフト重合体からなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられる。これらのなかでも、担持される水の量を特定の範囲に維持しやすいことから、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体等、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリアクリル酸塩グラフト重合体が好ましい。
【0071】
吸水性ポリマーを使用した場合の保水層の態様としては、例えば、(a)吸水性ポリマーが2枚の透湿性シート間に挟持されて形成された単一層を有する態様、(b)吸水性ポリマーが、基材層21に直接積層されており、単一層状に配された態様、あるいは(c)吸水性ポリマーが隣接して層状に配された第1吸水性ポリマー層と、第1吸水性ポリマー層に隣接し、吸水性樹脂の粉末が2枚の透湿性シート間に挟持されて形成された第2吸水性ポリマー層とが配された積層構造をとる態様等が挙げられる。
【0072】
保水層22に保持される水は、電解質水溶液(例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の水溶液)由来のものであっても良く、また、例えばエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、フェノキシエタノール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の防腐剤、静菌剤、殺菌剤や酸化防止剤が添加されていても良い。
【0073】
保水層22に保有される水の初期含有量は、冷却具1の着用初期の冷却効果を高めると共に、冷却体20から放出される水分の持続性を高め、冷却体20による冷却効果を長時間に亘り維持する観点から、保水層22の最大吸水量の1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましく、4質量%以上であることがよりさらに好ましい。また、水の初期含有量は、冷却体20の重さを抑え、顔に対する冷却具1のずれ落ちを防止する観点から、保水層22の最大吸水量の20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、7質量%以下であることがよりさらに好ましい。
【0074】
[保水層の最大吸水量の測定方法]
保水層22の最大吸水量は、例えば、次の方法により測定することができる。すなわち、まず、250メッシュ(61μm)のナイロン製織物袋(100mm×150mm)と試料を秤量し、メッシュ袋の風袋重量と試料の重量を量る。次に、上記メッシュ袋内に試料を入れ、300mLビーカー内に立てて入れ、イオン交換水をメッシュ袋に直接当たらないように300mL加え、30分間浸せきし、充分膨潤させる。その後、10分間吊り下げて水切りを行い、化学天秤で小数点以下2桁まで秤量する。そして、以上により求めた「メッシュ袋総重量」、「メッシュ袋の風袋重量」及び「試料の重量」を用いて、以下の式により最大吸水量を求める。
「最大吸水量」=「メッシュ袋総重量」-「メッシュ袋の風袋重量」-「試料の重量」
【0075】
保水層22に保有される水の初期含有量(すなわち、酸素遮断袋等の包材を開封させた直後の水含有量)は、上述の観点から、1cmあたり0.04ml以上であることが好ましく、1cmあたり0.08ml以上であることがより好ましく、1cmあたり0.10ml以上であることがさらに好ましく、また、1cmあたり0.40ml以下であることが好ましく、1cmあたり0.30ml以下であることがより好ましく、1cmあたり0.25ml以下であることがさらに好ましい。
【0076】
[水の初期含有量の定義]
なお、冷却体20の保水層22における水の初期含有量は、以下の手順で定義する。
すなわち、まず、包材を開封し、冷却具1を包材から取り出し、冷却具1の水を含有している部位、すなわち、冷却体20を取り出した後、水分計(ケット水分計 FD-240、(株)ケット科学研究所製)に冷却体20を設置する。そして、包材開封開始から30秒後に冷却体20の水分計の測定を開始する。
上記方法において、水分計にて70℃、10時間加熱乾燥した際の、乾燥前重量から乾燥後重量の差分を水の初期含有量として定義する。
【0077】
[基材層]
基材層21は、保水層22の第一シート23又は第二シート24とは反対側の表面を被覆するよう設けられている。本実施形態では、基材層21は、保水層22の第一シート23とは反対側の表面を被覆している。
【0078】
基材層21が着用時に非目元側になるよう配置した場合には、基材層21は、保水層22の第一シート23とは反対側の表面を被覆している。このように、基材層21が着用時に非目元側になるよう配置した場合、着用者の目及び/又は目の周辺に向けた蒸気発生を促進し、これに伴う気化熱によって着用者の目及び/又は目の周辺への冷却効果を高めることが可能となる。また、保水層22の水分が非目元側に蒸発することを抑制することにより、冷却体20から放出される蒸気の持続性を高めることができるため、冷却体20による冷却効果を長時間に亘り維持することが可能となる。
【0079】
上述した、基材層21が目元側、非目元側に配置されている場合でも基材層21の透気度によって適宜非目元側(本体部10の外側)や目元側への蒸気発生量を変えることが出来る。例えば、基材層21に伴う気化熱によって蒸気発生を促進し、本体部10内の冷却効果を更に高めたい場合、基材層21としては、透気度が50秒/100mL以下、好ましくは10秒/100mL以下、より好ましくは1秒/100mL以下のシートを用いることができる。また、顔や本体部10内の冷却時間の持続効果を高めたい場合としては、非通気性(透気度が80000秒/100mL以上)又は難通気性(透気度が30000秒/100mL以上)のシートを用いることができる。基材層21の透気度は、50000秒/100mL以上であることが好ましく、80000秒/100mL以上であることがより好ましい。
なお、基材層21を非目側になるよう配置した場合、基材層21の上に保水層22を積層させることで、本体部10に冷却体20を設置する際の生産性が向上する。
【0080】
このような基材層21としては、例えば、合成樹脂フィルムを用いることができ、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。合成樹脂フィルムは、単層でも、複数層の積層体であってもよい。不織布、紙若しくはフィルム又はこれらの2種以上の積層体を用いることができる。
【0081】
なお、本実施形態では、基材層21は、保水層22の第一シート23とは反対側の表面を被覆しているものとして説明したが、これに限定されず、基材層21が保水層22の第二シート24とは反対側の表面を被覆するよう設けられているものや、基材層21を有しない構成としても良い。
【0082】
[第一シート23及び第二シート24]
第一シート23は、着用者の目元側に配されている。本実施形態において、第一シート23は、通気性シートからなることが好ましい。具体的には、第一シート23は、少なくとも着用者の目と保水層22との間の領域における透気度が、発生した蒸気をゆるやかに放出しつつ、過度に加湿しない観点から、350秒/100mL以下であることが好ましく、100秒/100mL以下であることがより好ましい。第一シート23は、このような透気度を有することにより、水分の蒸発に伴う気化熱や放熱によって顔への冷却効果を高めることも可能となる。なお、第一シート23は、こうした透気度を満足すれば、その一部が通気性を有しない構成であってもよい。
【0083】
なお、本実施形態において、第一シート23は、通気性を有するシートであるものとして説明したが、これに限定されず、使用感に影響のない範囲で透気度を調整して良く、難通気性シート又は非通気性シートであっても良い。
【0084】
第一シート23は、通気性に加え、透湿性と防水性とを兼ね備えた透湿防水性シートであることが好ましい。具体的には、第一シート23は、少なくとも着用者の目と保水層22との間の領域における透湿度が、水蒸気の蒸発に伴う気化放熱によって冷却効果を高める観点から、2000g/m・24hr以上であることが好ましく、2500g/m・24hr以上であることがより好ましく、3000g/m・24hr以上であることが更に好ましい。また、着用時に蒸れや濡れを抑制する観点から、12000g/m・24hr以下であることが好ましく、11000g/m・24hr以下であることがより好ましく、10000g/m・24hr以下であることが更に好ましく、8000g/m・24hr以下であることがより一層好ましい。こうした透湿度を満足すれば、第一シート23は、その一部が透湿性を有しない構成であってもよい。また、第一シート23は、透湿性を有するシートであるものとして説明したが、これに限定されず、難透湿性シート及び非透湿性シートであっても良い。
【0085】
また、第一シート23は、少なくとも着用者の目と保水層22との間の領域における耐水度が、着用時に蒸れや濡れを抑制する観点から、300mm以上であることが好ましく、400mm以上であることがより好ましく、500mm以上であることが更に好ましい。さらに、1000mm以上であることが最も好ましい。こうした耐水度を満足すれば、第一シート23は、その一部が防水性を有しない構成であってもよい。また、第一シート23は、防水性を有するシートであるものとして説明したが、これに限定されず、非防水性シート(透水性シート)であっても良い。
【0086】
このような透湿防水性シートとしては、例えば、合成樹脂製の多孔性シートが好適である。具体的には、ポリエチレン又はポリプロピレン等に炭酸カルシウムを含有させ延伸したフィルムが挙げられる。かかる多孔性シートを用いる場合には、多孔性シートの外面に不織布を積層して、該透湿防水性シートの風合いを高めてもよい。不織布としては、例えば、ニードルパンチ不織布、エアスルー不織布、及びスパンボンド不織布などが挙げられる。水は通さないが酸素や水蒸気を通すシートであって、且つ防漏性が考慮されていれば多孔性シート以外のものであってもよい。例えば、ポリアミド、ビニロン、ポリエステル、レーヨン、アセテート、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリ塩化ビニル等の人工繊維や、パルプ、綿、麻、絹及び獣毛等の天然繊維から選ばれた1種又は2種以上を混合した織布、不織布、紙、合成紙等を、透湿防水性シートとして用いることができる。
【0087】
第二シート24は、着用者の非目元側に配されている。本実施形態において、第二シート24は、難通気性シート又は非通気性シートであることが好ましい。第二シート24の透気度は、50000秒/100mL以上であることが好ましく、80000秒/100mL以上であることがより好ましい。第二シート24にこのような非通気性又は難通気性シートを用いることにより、保水層22の水分が蒸発する蒸発量をコントロールすることが可能となるため、冷却体20から放出される蒸気の持続性を高め、冷却体20による冷却効果を長時間に亘り維持することが可能となる。なお、第二シート24は、難通気性シート及び非通気性シートであるものとして説明したが、これ限定されず、製品の設計に応じて任意の材料を用いることができ、通気性シートであってもよい。
【0088】
このような非通気性又は難通気性シートとしては、例えば、合成樹脂製のフィルムを単独で又は複数積層して用いることが可能である。また、非通気性又は難通気性シートは、用途に応じ、外面に不織布等を積層して風合いを高めることができる。不織布は、ニードルパンチ不織布、エアスルー不織布、及びスパンボンド不織布等から選択することができるが、ポリエチレンフィルムとパルプシートからなるラミネートフィルムが好ましい。なお、非通気性又は難通気性シートは、全体として通気性の低いシートであれば、その一部が通気性を有していてもよい。
【0089】
また、第二シート24は、透湿性、難透湿性及び非透湿性のいずれを有していても良い。しかしながら、第二シート24は、保水層22の蒸気放出方向を内面シート11側(着用者の目側)に規定する観点から、難透湿性又は非透湿性を有していることが好ましい。
【0090】
さらに、第二シート24は、防水性を有していても良いし、非防水性(透水性)を有していても良い。
【0091】
第一シート23及び第二シート24の材料は、内面シート11及び外面シート12と同じあっても良いし、異なっていても良い。
【0092】
本実施形態では、冷却体20が第一シート23及び第二シート24を有しているものとして説明したが、これに限定されず、第一シート23及び第二シート24のいずれか一方のみを有する構成としても良い。また、第一シート23及び第二シート24を有しておらず、基材層21及び保水層22を内面シート11又は外面シート12に固定させる構成としても良いし、基材層21及び保水層22を内面シート11と外面シート12との間に封入させる構成としても良い。さらに、冷却体20が第一シート23及び第二シート24に加えて基材層21も有していない場合には、保水層22を内面シート11又は外面シート12に固定させる構成としても良いし、保水層22を内面シート11と外面シート12との間に封入させる構成としても良い。
【0093】
[香料成分]
冷却体20は、例えば「合成香料化学と商品知識」(印藤元一著 化学工業日報社)に記載の香料成分を、本発明の効果を妨げない範囲で配合又は任意の箇所に付加することもできる。具体的には、ミルセン、ファルネセン、ピネン、リモネン、カンフェン、フェランドレン、ターピネン、ターピノレン、p-サイメン、セドレン、カリオフィレン等のテルペン系炭化水素;ヘキシルシンナミックアルデヒド、2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)-プロパナール、4-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒド、バニリン等のアルデヒド類;ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、パンプルフルール(2-メチル-4-フェニルペンタノール)、ジメチルベンジルカルビノール、フェニルヘキサノール(3-メチル-5-フェニルペンタノール)等の芳香族アルコール類;アネトール、オイゲノール等のフェノール類;γ-ノナラクトン、γ-ウンデカラクトン等のラクトン類が挙げられる。
【0094】
[冷涼成分]
冷却体20は、より一層の冷涼感を付与する観点から、冷涼成分を発明の効果を妨げない範囲で配合又は任意の箇所に付加することもできる。身体に存在する温度感受性TRPチャネルのうち、冷受容体であるTRPM8に作用するアゴニストを含有するものが良い。例えば、L-メントール、DL-メントール等のメントール、メンタンジオール、シネオール、メンチルグリセリルエーテル、メントングリセリンアセタール、ブチルシクロヘキサノン、イソプレゴール、トリメチルイソプロピルブタンアミド、メントキシプロパンジオール、カンフル等が挙げられ、TRPM8アゴニストを含有するハッカ油、ペパーミント油、スペアミント油、ユーカリ油等の植物や精油等を使用してもよい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、使用時の心地よさ及び実効感、安全性の観点から、メントール、乳酸メンチル、コハク酸メンチル、グルタル酸メンチル、トリメチルイソプロピルブタンアミド、メントキシプロパンジオール、及びカンフルから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、メントールがより好ましい。
【0095】
[冷却体の水蒸気発生量]
以上の構成を備える冷却体20は、着用者の目元側への水蒸気発生量が、2.5mg/(cm・時)以上であることが好ましく、5.0mg/(cm・時)以上であることがより好ましく、7.5mg/(cm・時)以上であることがさらに好ましい。このような水蒸気発生量とすることにより、水の気化を利用し効率的に肌を冷やすことができる。
【0096】
また、冷却体20は、上記水蒸気発生量が、20.0mg/(cm・時)以下であることが好ましく、15.0mg/(cm・時)以下であることがより好ましく、10.0mg/(cm・時)以下であることがさらに好ましい。このような水蒸気発生量とすることにより、湿度を抑え、蒸れを抑制することができる。
【0097】
着用者の目元側への水蒸気発生量は、図8に示す測定装置40を用いて、次のように測定される数値である。なお、以下の説明では防水性の包材等に封入されて密封状態となっている冷却体20を対象とし、該防水性の包材等の開封を開始し、開封開始から図8に示す測定装置40に設置するまでに要する時間、つまり開封開始から5秒後の時点を「水蒸気発生開始時点」と定義する。図8に示す測定装置40は、アルミニウム製の測定室(容積4.2L)41と、測定室41の下部に除湿空気(湿度2%未満、流量2.1L/分)を流入させる流入路42と、測定室41の上部から空気を流出させる流出路43と、流入路42に設けられた入口温湿度計44及び入口流量計45と、流出路43に設けられた出口温湿度計46及び出口流量計47と、測定室41内に設けられた温度計(サーミスタ)48とを備えている。温度計48としては、温度分解能が0.01℃程度のものを使用する。なお、本明細書における蒸気発生量とは、冷却体20の「水蒸気発生開始時点」を起点とし、1時間後までに測定された総量をいう。
【0098】
[冷却体の配置]
冷却体20は、冷却具1の着用時において、少なくとも一部が着用者の目及び/又は目の周辺と直接的又は間接的に接触するよう本体部10に配置されている。具体的には、冷却体20は、冷却具1の着用時において、少なくとも一部が着用者の目及び目の周辺と内面シート11を介して接触するよう本体部10に配置されている。
【0099】
なお、本実施形態では、冷却体20の少なくとも一部が着用者の目及び目の周辺と内面シート11を介して接触するものとして説明したが、これに限定されず、冷却体20の少なくとも一部が着用者の目の周辺と直接的又は間接的に接触すれば良い。すなわち、冷却体20は、冷却具1の着用時において、着用者の目と対向する領域が開口していても良い。さらに、冷却体20は、少なくとも一部が着用者の顔の全域と直接的又は間接的に接触しても良い。
【0100】
図1に示すように、本実施形態に係る冷却体20は、縦中心線100を境として左右対称となるよう、第1パネル部10Aと第2パネル部10Bとにそれぞれ設けられている。図示の例においては、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bに1つずつ、計2つの冷却体20が設置されている。
【0101】
本実施形態において、縦中心線100と冷却体20の該縦中心線100側の端部との離間距離は、着用者の目及び/又は目の周辺に対する冷却体20の配置位置を適切なものとし、冷却体20が保有する水の気化放熱を促進する観点から、35mm以下であることが好ましく、30mm以下であることがより好ましく、25mm以下であることが更に好ましい。また、縦中心線100と冷却体20の該縦中心線100側の端部との離間距離は、着用者の目及び/又は目の周辺へのフィット性を高めつつ肌への冷却効果を両立する観点から、5mm以上であることが好ましく、10mm以上であることがより好ましく、15mm以上であることが更に好ましい。そのため、縦中心線100と冷却体20の該縦中心線100側の端部との離間距離は、5mm以上35mm以下であることが好ましく、10mm以上30mm以下であることがより好ましく、15mm以上25mm以下であることが更に好ましい。
【0102】
なお、本実施形態において、「縦中心線と冷却体の該縦中心線側の端部との離間距離」とは、幅方向における縦中心線100から冷却体20の該縦中心線100側の端部までの直線距離である。また、「冷却体の縦中心線側の端部」とは、冷却体20の内、縦中心線100との離間距離が最も近くなる部分である。
【0103】
本実施形態では、冷却体20が第1パネル部10A及び第2パネル部10Bに1つずつ設けられているものとして説明したが、これに限定されず、例えば、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bに2つずつ設けられていても良いし、本体部10全体で1つの冷却体20が設けられていても良い。また、冷却体20が複数設けられる場合において、複数の冷却体20の冷却特性は同じであっても良いし、異なっても良いが、同じであることがより好ましい。
【0104】
[冷却体の形状・大きさ]
冷却体20の平面形状は、特に限定されず、円形、多角形等であってもよい。製造効率、取り扱い易さ、冷却効果の観点から、長方形、略正方形等の四角形が好ましく、取り扱いやすさの観点から略正方形がより好ましい。
【0105】
冷却体20は、着用者の目及び/又は目の周辺へのフィット性を高めつつ水分の蒸発に伴う気化熱や放熱によって顔への冷却効果を高める観点から、内面シート11に対向する対向面の総面積が12000mm以下であることが好ましく、11000mm以下であることがより好ましく、10000mm以下であることが更に好ましい。また、当該総面積は、着用者の目及び/又は目の周辺に対して効果的に冷却感を与える観点から、3000mm以上であることが好ましく、4000mm以上であることがより好ましく、5000mm以上であることが更に好ましい。そのため、当該総面積は、3000mm以上12000mm以下であることが好ましく、4000mm以上11000mm以下であることがより好ましく、5000mm以上10000mm以下であることが更に好ましい。
【0106】
なお、本実施形態において、冷却体20の「内面シートに対向する対向面」とは、冷却体20を上下方向及び幅方向に直交する方向から見た投影面である。
【0107】
既述のとおり、冷却体20は、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bにそれぞれ設けられているところ、第1パネル部10Aに設けられている冷却体20の当該第1パネル部10Aに対向する対向面の総面積と、第2パネル部10Bに設けられている冷却体20の当該第2パネル部10Bに対向する対向面の総面積とは、着用者の目及び/又は目の周辺へのフィット性を高めつつ水分の蒸発に伴う気化熱や放熱によって顔への冷却効果を高める観点から、それぞれ6000mm以下であることが好ましく、5500以下であることがより好ましく、5000mm以下であることが更に好ましい。また、各総面積は、着用者の目及び/又は目の周辺に対して効果的に冷却感を与える観点から、それぞれ1500mm以上であることが好ましく、2000mm以上であることがより好ましく、2500mm以上であることが更に好ましい。そのため、各総面積は、それぞれ1500mm以上6000mm以下であることが好ましく、2000mm以上5500以下であることがより好ましく、2500mm以上5000mm以下であることが更に好ましい。
【0108】
なお、本実施形態において、冷却体20の「第1パネル部に対向する対向面」及び「第2パネル部に対向する対向面」とは、冷却体20を上下方向及び幅方向に直交する方向から見た投影面である。
【0109】
本実施形態において、冷却体20の内面シート11に対向する対向面の総面積は、着用者の目及び/又は目の周辺に対する冷却体20のフィット性を高めつつ水分の蒸発に伴う気化熱や放熱によって顔への冷却効果を高める観点から、内面シート11の総面積に対して90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、70%以下であることが更に好ましい。また、冷却体20の内面シート11に対向する対向面の総面積は、着用者の目及び/又は目の周辺への冷却効果を高める観点から、内面シート11の総面積に対して10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましく、20%以上であることが更に好ましい。そのため、冷却体20の内面シート11に対向する対向面の総面積は、内面シート11の総面積に対して10%以上90%以下であることが好ましく、15%以上80%以下であることがより好ましく、20%以上70%以下であることが更に好ましい。
【0110】
例えば、内面シート11の総面積は、19000mm以下であることが好ましく、17000mm以下であることがより好ましく、15000mm以下であることが更に好ましい。また、内面シート11の総面積は、7000mm以上であることが好ましく、9000mm以上であることがより好ましく、11000mm以上であることが更に好ましい。そのため、内面シート11の総面積は、7000mm以上19000mm以下であることが好ましく、9000mm以上17000mm以下であることがより好ましく、11000mm以上15000mm以下であることが更に好ましい。
【0111】
また、本実施形態において、第1パネル部10Aに設けられている冷却体20の当該第1パネル部10Aに対向する対向面の総面積は、第1パネル部10Aの総面積に対して90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、70%以下であることが更に好ましい。また、第1パネル部10Aに設けられている冷却体20の当該第1パネル部10Aに対向する対向面の総面積は、第1パネル部10Aの総面積に対して10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましく、20%以上であることが更に好ましい。そのため、第1パネル部10Aに設けられている冷却体20の当該第1パネル部10Aに対向する対向面の総面積は、第1パネル部10Aの総面積に対して10%以上90%以下であることが好ましく、15%以上80%以下であることがより好ましく、20%以上70%以下であることが更に好ましい。
【0112】
また、本実施形態において、第2パネル部10Bに設けられている冷却体20の当該第2パネル部10Bに対向する対向面の総面積は、第2パネル部10Bの総面積に対して90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、70%以下であることが更に好ましい。また、第2パネル部10Bに設けられている冷却体20の当該第2パネル部10Bに対向する対向面の総面積は、第2パネル部10Bの総面積に対して10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましく、20%以上であることが更に好ましい。そのため、第2パネル部10Bに設けられている冷却体20の当該第2パネル部10Bに対向する対向面の総面積は、第2パネル部10Bの総面積に対して10%以上90%以下であることが好ましく、15%以上80%以下であることがより好ましく、20%以上70%以下であることが更に好ましい。
【0113】
例えば、第1パネル部10Aの総面積及び第2パネル部10Bの総面積は、それぞれ、9500mm以下であることが好ましく、8500mm以下であることがより好ましく、7500mm以下であることが更に好ましい。また、第1パネル部10Aの総面積及び第2パネル部10Bの総面積は、それぞれ、3500mm以上であることが好ましく、4500mm以上であることがより好ましく、5500mm以上であることが更に好ましい。そのため、第1パネル部10Aの総面積及び第2パネル部10Bの総面積は、それぞれ、3500mm以上9500mm以下であることが好ましく、4500mm以上8500mm以下であることがより好ましく、5500mm以上7500mm以下であることが更に好ましい。
【0114】
[耳掛け部の構成]
耳掛け部30は、本体部10の幅方向の両端部に設けられており、該本体部10により着用者の顔の少なくとも目が覆われるように該本体部10を着用者の顔に保持させることが可能に構成されている(図6参照)。
【0115】
図2に示すように、耳掛け部30は、冷却具1の使用前においては、本体部10の内側に折り込んで収納されている。また、図1及び図6に示すように、耳掛け部30は、冷却具1の使用時においては、本体部10の幅方向外側に展開されている。
【0116】
図1に示すように、耳掛け部30は、本体部10の幅方向に対して、着用時における本体部10の下方側に傾斜して設けられている。また、耳掛け部30は、それぞれ、着用時における本体部10の上下方向に対して傾斜した接合部50によって本体部10に接合されている。
【0117】
ここで、接合部50に沿う第3仮想線VL3は、それぞれ、縦中心線100の中心よりも着用時における本体部10の下方側において収束するよう、縦中心線100に対して傾斜している。すなわち、第3仮想線VL3は、本体部10の幅方向外側から内側かつ下方に向けて傾斜している。なお、「接合部に沿う第3仮想線」とは、接合部50の縦中心線100側の端部に沿って延びる仮想線である。すなわち、耳掛け部30を展開させた状態(図1の状態)において、耳掛け部30の折り曲げ線に沿って延びる仮想線である。
【0118】
本実施形態において、縦中心線100に対する第3仮想線VL3の傾斜角度は、着用者の耳上部への圧迫感を低減する観点から、それぞれ25°以下であることが好ましく、20°以下であることがより好ましく、15°以下であることが更に好ましい。また、縦中心線100に対する第3仮想線VL3の傾斜角度は、着用者の額部と内面シート11との間に冷却体20から放出された水蒸気の通り道となる隙間を作る観点から、それぞれ1°以上であることが好ましく、3°以上であることがより好ましく、5°以上であることが更に好ましい。そして、縦中心線100に対する第3仮想線VL3の傾斜角度は、それぞれ1°以上25°以下であることが好ましく、3°以上20°以下であることがより好ましく、5°以上15°以下であることが更に好ましい。
【0119】
本実施形態に係る接合部50の構成としては、例えば、以下の(1)及び(2)の構成が挙げられる。
(1) 本体部10と耳掛け部30とが接着剤(例えば、ホットメルト型接着剤)等の他の部材により相互に接続されている場合には、当該接着剤等の他の部材が接合部50として機能する。
(2) 本体部10と耳掛け部30とが熱融着により相互に接続されている場合等、本体部10と耳掛け部30とが他の部材を介することなく相互に接合されている場合には、本体部10における耳掛け部30が接合される接合領域と耳掛け部30における本体部10が接合される接合領域とが、それぞれ接合部50として機能する。
【0120】
図1に示すように、各耳掛け部30は、耳掛け部本体31と、着用者の耳が挿通可能な耳掛け孔32とを有している。耳掛け部本体31は、上辺31aと、下辺31bと、本体部10に接合されていない耳掛け部30の開放側の開放縁31cと、本体部10に接合されている接合縁31dとを有している。
【0121】
本実施形態において、耳掛け部本体31は、平面形状を有しており、かつ略四角形状を有している。具体的には、上辺31a及び下辺31bが接合縁31d側から開放縁31cに向けて先細りとなっており、開放縁31cと連結する部分において湾曲している。また、接合縁31dが第1パネル部10A又は第2パネル部10Bの周縁に沿った形状を有している。
【0122】
耳掛け孔32は、耳掛け部本体31の接合縁31d近傍から耳掛け部本体31の開放縁31c近傍に亘って形成された円弧状の切開線である。この耳掛け孔32は、着用者の耳を挿通可能に構成されている。なお、耳掛け孔32の形状は何ら限定されるものではなく、直線状の切開線であっても良いし、着用者の耳を挿通可能な開口であっても良い。
【0123】
本実施形態において、耳掛け部30の幅方向の長さD1は、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bの幅方向の長さD2と同じであるか、又は第1パネル部10A及び第2パネル部10Bの幅方向の長さD2よりも短いことが好ましい。これにより、冷却具1を縦中心線100で二つ折りにした際に、耳掛け部30が本体部10と重なり、本体部10の内部で不自然に折りたたまれ、厚みが増えたり、耳掛け部30どうしが絡まったりすることを抑制し、冷却具1をよりコンパクトにまとめることができる。また、耳掛け部30が本体部10の内側に折り畳まれる場合は、耳掛け部30が汚染されにくくなり、さらに衛生面を向上できる。
【0124】
なお、本実施形態において、「耳掛け部の幅方向の長さ」とは、図1に示すように、耳掛け部本体31の開放縁31cの中央点と、耳掛け部本体31の接合縁31dの中央点とを結んだ直線の初期の長さをいう。また、「初期の長さ」とは、耳掛け部30を伸縮させる外力が付与される前の伸縮前の長さのことをいう。
【0125】
また、本実施形態において、「第1パネル部の幅方向の長さ」とは、第1パネル部10Aの幅方向外側の周縁が縦中心線100と平行である場合には、幅方向における縦中心線100から第1パネル部10Aの幅方向外側の周縁までの直線長さをいう。一方、第1パネル部10Aの幅方向外側の周縁が縦中心線100に対して傾斜している場合や、図1に示すように、第1パネル部10Aの幅方向外側の周縁が円弧状に形成されている場合等、第1パネル部10Aの幅方向外側の周縁が縦中心線100と平行ではない場合には、幅方向における縦中心線100から第1パネル部10Aの幅方向外側の周縁の接線(縦中心線100に平行な接線)までの直線長さをいう。これらの点は、「第2パネル部の幅方向の長さ」に対しても同様である。なお、図1においては、第2パネル部10Bの幅方向の長さのみを示している。
【0126】
耳掛け部30の幅方向の長さD1は、冷却具1の装着時における耳へのフィット性を高める観点から、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bの幅方向の長さD2に対して、100%以下であることが好ましく、98%以下であることがより好ましく、96%以下であることが更に好ましい。また、耳掛け部30の幅方向の長さD1は、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bの幅方向の長さD2に対して、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましい。そして、耳掛け部30の幅方向の長さD1は、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bの幅方向の長さD2に対して、60%以上100%以下であることが好ましく、70%以上98%以下であることがより好ましく、80%以上96%以下であることが更に好ましい。
【0127】
例えば、耳掛け部30の幅方向の長さD1は、冷却具1の装着時における耳へのフィット性を高める観点から、93mm以下であることが好ましく、90mm以下であることがより好ましく、88mm以下であることが更に好ましい。また、耳掛け部30の幅方向の長さD1は、55mm以上であることが好ましく、65mm以上であることがより好ましく、74mm以上であることが更に好ましい。そして、耳掛け部30の幅方向の長さD1は、55mm以上93mm以下であることが好ましく、65mm以上90mm以下であることがより好ましく、74mm以上88mm以下であることが更に好ましい。
【0128】
また、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bの幅方向の長さD2は、着用者の目及び/又は目の周辺を覆う観点から、それぞれ、65mm以上115mm以下であることが好ましく、75mm以上105mm以下であることがより好ましく、85mm以上95mm以下であることが更に好ましい。
【0129】
耳掛け部30は、本体部10と同様な材料であってもよく、異なる材料であってもよいが、本体部10のフィット感を良好にする観点から、伸縮性を有する材料であることが好ましく、本体部10の幅方向に伸長しやすいものがよい。本実施形態においては、耳掛け部30は、不織布からなることが好ましく、伸縮性を有する不織布であることがより好ましい。なお、耳掛け部30は、伸縮性を更に高める観点から、不織布にエラストマーフィルムを積層させた多層構造であっても良い。また、耳掛け部30は、本体部10との結合性の観点から、構成繊維として熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。更に、加工のし易さの観点から、ポリプロピレンを含むことがより好ましい。なお、耳掛け部30は、ポリプロピレン以外の熱可塑性樹脂を更に含んでも良く、例えば、ウレタン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートからなる群から選ばれる一種以上を更に含むことが好ましく、ウレタンからなる合成繊維を用いることがより好ましい。このような構成となっていることによって、耳掛け部30の柔軟性及びフィット性を効率良く発現させることができるとともに、冷却具1の使用時に十分な強度を発現できる。
【0130】
本実施形態において、耳掛け部30は、100%伸長時荷重が、着用者の耳及び/又は耳の周辺や目及び/又は目の周辺に対する本体部10や冷却体20のフィット性を良好にしつつ水分の蒸発に伴う気化熱や放熱によって顔への冷却効果を高める観点から、50g/inch以上400g/inch以下であることが好ましく、100g/inch以上350g/inch以下であることがより好ましく、150g/inch以上300g/inch以下であることが更に好ましい。なお、上記の100%伸長時荷重は、耳掛け部30の素材の伸縮物性としての値である。
【0131】
[100%伸長時荷重の測定方法]
ここで、100%伸長時荷重とは、耳掛け部30を本体部10の幅方向に100%伸長させたときの荷重を意味する。100%伸長時荷重は、例えば、ASTMD882に準拠し、以下の方法によって測定をすることができる。
(1) 耳掛け部30から25mm×150mmの試験片を採取する。なお、上記の寸法で試験片を採取できない場合は、上記の寸法に可能な限り近い寸法で試験片を採取する。
(2) チャック間距離が100mmとなるよう、試験片の長手方向の両端部を引張試験機のチャックに固定する。なお、チャック間距離を上記の値に設定することができない場合は、上記の値に可能な限り近い値に設定する。
(3) 500mm/minの引張速度において、試験片が破断するまで試験片を引っ張り初期長から試験片を100%伸長させた時点の荷重を100%伸長時荷重とする。
【0132】
上記の100%伸長時荷重は、例えば、耳掛け部30に用いる不織布の坪量等の物性を調整することにより、実現することができる。例えば、耳掛け部30の坪量は、着用者の耳への心地よい着け心地を実現させつつ、冷却体20を着用者の目及び/又は目の周辺にフィットさせながら、水分の蒸発に伴う気化熱や放熱によって顔への冷却効果を高める観点、及び冷却体20を内面シート11側により一層凸の状態にさせる観点から、20g/m以上であることが好ましく、30g/m以上であることがより好ましく、40g/m以上であることが更に好ましい。また、耳掛け部30の坪量は、100g/m以下であることが好ましく、80g/m以下であることがより好ましく、60g/m以下であることが更に好ましい。そして、耳掛け部30の坪量は、20g/m以上100g/m以下であることが好ましく、30g/m以上80g/m以下であることがより好ましく、40g/m以上60g/m以下であることが更に好ましい。
【0133】
なお、耳掛け部30は、本体部10を着用者の目前に保持することが可能な構成であれば、上述した平面状(シート状)の耳掛けに限定されず、冷却具を固定するために通常用いることが可能なものを任意に用いることが可能であり、例えば、ゴム紐状の耳掛けや、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bの幅方向両端部に亘って架け渡された1又は複数のバンド等の種々の構成を採用可能である。また、耳掛け部30は、本体部10の幅方向両端部に接合される別部材の構成に限定されず、本体部10と一体的に形成された構成であっても良い。
【0134】
[1時間平均相対湿度及び1時間平均温度]
以上の構成及び水蒸気発生性能を有する冷却体20を具備する冷却具1によれば、湿度を長時間に亘り維持することが可能であると共に、着用者の顔を長時間に亘り冷却することが可能となる。
【0135】
具体的には、内面シート11に通気性シートを使用し目元側に配向すると共に、外面シート12に非通気性又は難通気性シートを使用し非目元側に配向した冷却具1おいては、1時間平均相対湿度(すなわち、冷却体20が直接的又は間接的に接触していない領域における1時間平均相対湿度)を、80%以上95%以下に維持することが可能となる。また、冷却体20の着用者の目と直接的又は間接的に接触する部位における1時間平均温度を、29.5℃以下に抑えることが可能となる。
【0136】
より具体的には、冷却具1の1時間平均温度は、29.5℃以下であるこがより好ましく、29℃以下であることがさらに好ましい。また、冷却具1の1時間平均相対湿度は、80%以上95%以下であることがより好ましく、85%以上90%以下であることがさらに好ましい。
【0137】
[温度及び相対湿度の測定方法]
ここで、温度及び相対湿度は、以下の方法により測定することが可能である。すなわち、有限会社デジタルヒューマンテクノロジー社製の女性版平均人頭データ(出願時における最新データ)に基づいて造形された女性版人頭モデル(幅151.24mm、奥行き206.82mm、高さ233.01mm)の上眼瞼に湿温度センサーを配置し、サージカルテープで動かないように固定する。そして、30℃40%RH環境下において、該女性版人頭モデルに冷却具1を装着し、10秒毎の温湿度変化を測定する。なお、温湿度センサーとしては、温湿度センサーSHT71(センシリオン社製)を用いることができる。
【0138】
[冷却具の使用方法]
次に、本実施形態に係る冷却具1の使用方法について、説明する。本実施形態においては、図7に示すように、冷却体20が本体部10と一体となっているため、冷却具1全体が防水性の包装体200に封入された状態で保管されている。この保管状態において、本体部10は、縦中心線100を中心として折り畳まれている。また、この保管状態(包装体に封入された状態)において、保水層22には、既に水が含侵されている。
【0139】
まず、着用者は、装着時に包装体200を開封し、冷却具1を包装体200から取り出す。また、包装体200から冷却具1を取り出した後、着用者は、二つ折りになっている本体部10を幅方向両端部側から開き、図6(a)に示すように、本体部10を目に当てた状態において耳掛け部30を指で引張り、耳掛け孔32に耳を挿通させる。このようにして一対の耳掛け部30を着用者の左右の耳に引っ掛けることにより、図6(b)に示すように、本体部10によって着用者の目が覆われた状態が維持されるよう、該本体部10を着用者の顔に保持させることができる。
【0140】
なお、本実施形態に係る冷却具1は、包装体200に封入された状態において既に保水層22に水が含侵されているため、包装体200から取り出した後に水に浸ける等して湿潤させる必要はない。そのため、開封のみで使用が可能で簡便に使用ができる。また、冷却具1が包装体200に1個のみ封入されている場合は、衛生的であるという利点もある。
【0141】
そして、このように本体部10により着用者の目が覆われた状態において、冷却体20の少なくとも一部が着用者の目及び目の周辺に接触することで、着用者の目及び目の周辺から冷却体20に熱が伝導され、着用者の目及び目の周辺が冷却される。特に、本実施形態に係る冷却具1は、内面シート11の剛軟度が外面シート12の剛軟度よりも低くなっており、冷却体20が着用者の目元側に凸の状態となるため(図2参照)、冷却体20が着用者の目及び目の周辺にフィットしつつ肌への冷却効果が両立される。そのため、着用者に対してより効果的に冷却感を感じさせることができる。
【0142】
また、冷却体20が着用者の目及び目の周辺の熱で温められると、冷却体20が保有する水が蒸発すると共に、水分の蒸発に伴う気化熱によって冷却体20から放熱されることとなる。さらに、冷却体20から外気への熱伝導によって、冷却体20から放熱されることとなる。そのため、内面シート11及び第一シート23が通気性シートからなる場合には、このような水分の蒸発に伴う気化熱や放熱を促進させることができるため、着用者の目及び目の周辺への冷却効果を更に高めることができる。また、本実施形態に係る冷却具1は、上側スリット15及び下側スリット16の長さや角度、冷却体20の配置により、着用者の額部中央と内面シート11との間に空間が形成されるため、内面シート11及び第一シート23が難通気性シート又は非通気性シートからなる場合であっても、着用者の額部中央と内面シート11との間に空間が形成されない場合と比較して、着用者に冷却感を感じさせることができる。
【0143】
また、このような冷却メカニズムにより、本実施形態に係る冷却具1は、長時間に亘り、着用者に対して冷却感を与えることが可能となる。特に、本実施形態に係る冷却具1では、既述のとおり、内面シート11の剛軟度が外面シート12の剛軟度よりも低くなっており、冷却体20が着用者の目及び目の周辺に適度にフィットしつつ、着用者の額部中央と内面シート11との間に形成された空間により気化熱を有効に発生させることができるため、上記冷却メカニズムをより効果的に奏することが可能になる。さらに、本実施形態に係る冷却具1は、このような冷却メカニズムにより着用者に対して冷却感を与えるものであるため、事前に冷蔵庫等で冷やす必要はない。
【0144】
[本実施形態に係る冷却具の利点]
このように、本実施形態に係る冷却具1は、着用者の顔の少なくとも目及び/又は目の周辺を覆う本体部10と、本体部10に設けられる冷却体20とを備える冷却具1であって、本体部10は、着用時において、着用者の肌側に向く内面シート11と、冷却体20を介して内面シート11と対向するよう配された外面シート12とを有し、冷却体20は、水を保有し得る保水層22を有しており、冷却体20は、着用時において、少なくとも一部が内面シート11を介して着用者の目及び/又は目の周辺と接触するよう本体部10に配置されており、内面シート11の剛軟度は、外面シート12の剛軟度よりも低い。
【0145】
このような構成を備える冷却具1によれば、内面シート11の剛軟度が外面シート12の剛軟度よりも低くなっており、冷却体20が着用者の目元側に凸の状態となるため(図2参照)、着用者の目及び/又は目の周辺に対する冷却体20のフィット性を向上させることができると共に、着用者の目及び/又は目の周辺と冷却体20との接触に伴う気化放熱を効果的に発生させることができるという利点がある。そのため、着用者の目及び/又は目の周辺を効果的に冷却することができる。
【0146】
また、本実施形態に係る冷却具1において、本体部10は、該本体部10を幅方向に二分する縦中心線100と、縦中心線100を境とした幅方向の一方側を構成する第1パネル部10Aと、縦中心線100を境とした幅方向の他方側を構成する第2パネル部10Bとを有しており、冷却体20は、第1パネル部10Aと第2パネル部10Bとにそれぞれ設けられる。このような構成を備える冷却具1によれば、冷却体20が着用者の左右の目に対して少なくとも1つずつ設けられているため、着用者の目及び/又は目の周辺に対する冷却体20のフィット性をより向上させることができると共に、着用者の目及び/又は目の周辺と冷却体20との接触に伴う気化放熱を効果的に発生させることができるという利点がある。
【0147】
さらに、本実施形態に係る冷却具1において、本体部10は、着用時において、着用者の額側に位置する上縁部13と、着用時において、着用者の鼻側に位置する下縁部14と、上縁部13から下縁部14側に向けて形成された上側スリット15と、下縁部14から上縁部13側に向けて形成された下側スリット16とを有しており、上側スリット15及び下側スリット16は、該本体部10を幅方向に二分する縦中心線100上に形成されている。このような構成を備える冷却具1によれば、上側スリット15及び下側スリット16により本体部10の動きの自由度が増すため、着用者の目及び/又は目の周辺に対する冷却体20のフィット性を向上させることができると共に、着用者の目及び/又は目の周辺と冷却体20との接触に伴う気化放熱を効果的に発生させることができるという利点がある。また、冷却具1の着用時において、着用者の額部中央と内面シート11との間に空間を形成することができるため、冷却体20による気化放熱を効果的に利用することができるという利点もある。
【0148】
また、本実施形態に係る冷却具1において、下側スリット16は、上側スリット15よりも長く形成されている。このような構成を備える冷却具1によれば、下側スリット16が着用者の鼻に適した形状となっているため、着用者の目及び/又は目の周辺に対する冷却体20のフィット性を向上させることができると共に、着用者の目及び/又は目の周辺と冷却体20との接触に伴う気化放熱を効果的に発生させることができるという利点がある。
【0149】
さらに、本実施形態に係る冷却具1において、下側スリット16は、下縁部14から上縁部13側に向けて先細りとなるよう形成された切り欠きである。このような構成を備える冷却具1によれば、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bが幅方向外側に広がる動作や幅方向内側に重なる動作等、本体部10の動作がよりスムーズになるため、着用者の目及び/又は目の周辺に対する冷却体20のフィット性を向上させることができると共に、着用者の目及び/又は目の周辺と冷却体20との接触に伴う気化放熱を効果的に発生させることができるという利点がある。
【0150】
また、本実施形態に係る冷却具1は、本体部10の幅方向の両端部に設けられ、該本体部10により着用者の顔の少なくとも目及び/又は目の周辺が覆われるように該本体部10を着用者の顔に保持させることが可能な耳掛け部30を更に備え、耳掛け部30は、本体部10の幅方向に対して、着用時における本体部10の下方側に傾斜して設けられている。このような構成を備える冷却具1によれば、耳掛け部30を着用者の耳に装着させたときに、本体部10が耳掛け部30に引っ張られて幅方向外側に伸長しようとするため、着用者の目及び/又は目の周辺に対して適度な圧迫感が加わる。そのため、着用者の目及び/又は目の周辺に対する冷却体20のフィット性を向上させることができると共に、着用者の目及び/又は目の周辺と冷却体20との接触に伴う気化放熱を効果的に発生させることができるという利点がある。
【0151】
[変形例]
本発明に係る冷却具は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内において種々の改変を行なうことができる。
【0152】
例えば、上述した実施形態では、冷却具1全体が包装体200に封入されているものとして説明したが、これに限定されず、冷却体20が本体部10と一体となっていない場合(後付け可能な場合)には、本体部10と冷却体20とを個別に包装しても良いし、冷却体20のみを包装しても良い。
【0153】
また、上述した実施形態では、保水層22は、冷却具1が包装体200に封入された状態において水を保有しているものとして説明したが、これに限定されず、冷却具1の使用時に、保水層22に水を含侵させる構成としても良い。
【0154】
さらに、上述した実施形態では、本体部10が上側スリット15及び下側スリット16を有しているものとして説明したが、これに限定されず、上側スリット15及び下側スリット16の何れか一方、或いは両方を有しない構成としても良い。
【0155】
また、上述した実施形態では、下側スリット16が上側スリット15よりも長く形成されているものとして説明したが、これに限定されず、上側スリット15及び下側スリット16の長さが同じであっても良いし、上側スリット15の方が下側スリット16よりも長く形成されていても良い。
【0156】
さらに、上述した実施形態では、耳掛け部30が本体部10の幅方向に対して、着用時における本体部10の下方側に傾斜して設けられているものとして説明したが、これに限定されず、例えば、耳掛け部30が本体部10の幅方向に沿って設けられていても良い。
【0157】
また、上述した実施形態では、内面シート11の材料として不織布を用いることが好ましいものとして説明をしたが、さらに、当該不織布が親水性を有していても良い。すなわち、内面シート11の材料として親水性不織布を用いても良い。内面シート11の材料として親水性不織布を用いることにより、蒸発した水が内面シート11に吸収及び保持されるため、着用者に与える冷却感を向上させることができるという利点がある。
【0158】
親水性不織布としては、例えば、親水性繊維により形成された不織布や、親水化剤により親水化処理が施された不織布等を用いることができる。親水性繊維としては、例えば、セルロース繊維やポリアクリロニトリル繊維を含むことが好ましい。セルロース繊維としては、レーヨン、リヨセル(登録商標)、テンセル(登録商標)、コットンの繊維などが挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、親水性の合成繊維を用いることも好ましい。親水性の合成繊維としては、アクリル繊維や、繊維油剤などの親水化剤による処理で親水化されたポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維などを用いることが好ましい。親水化処理の方法としては、親水化剤による表面付着処理や練り込みなどが挙げられる。親水化剤としては、一般的な繊維用界面活性剤や親水性油剤などを用いることができる。
【0159】
なお、本明細書では、親水度が1%以上の不織布を「親水性不織布」と定義する。この親水度は、例えば、以下の(1)~(7)の方法により測定することができる。
(1)不織布サンプルを温度25℃湿度25%環境下で24時間置き、乾燥させる。
(2)不織布サンプルに1cm×1cmのマス目を100マス分記入する。
(3)不織布サンプルの裏面が作業台に触れないよう、不織布サンプルを任意の枠に固定する。この時、不織布サンプルは、弛みおよび伸びの無いこととする。
(4)3μLのイオン交換水をマイクロピペットでとり、不織布サンプルに着滴する。着滴は、1マスに1滴とする。1個目の着滴から時間を計測し、5秒ごとに1滴のペースで着滴を行う。
(5)10回の着滴が終わったら、1個目の着滴から60秒後に1個目の水滴の評価を行い、続けて5秒ごとに1滴のペースで2個目以降の水滴の状態を順番に評価する。評価内容は、以下のa~cの3通りで行う。
a:球状のままの水滴
b:球状を保てずに不織布上で広がった水滴
c:不織布にしみ込んでいる水滴
(6)10個の水滴の評価が終わったら、上記(4)及び(5)を10回繰り返し、計100個の水滴の評価を行う。
(7)上記a~cの内、aを0点,bを0.5点、cを1点とする。また、評価がaだった水滴の個数を「A」、評価がbだった水滴の個数を「B」、評価がcだった水滴の個数を「C」とし、次の式で親水度を求める。
親水度(%)={(0×A+0.5×B+1×C)/100}×100
【0160】
上記のような変形例が本発明の範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0161】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の冷却具を開示する。
【0162】
<1>
着用者の顔の少なくとも目及び/又は目の周辺を覆う本体部と、前記本体部に設けられる冷却体とを備える冷却具であって、
前記本体部は、
着用時において、着用者の肌側に向く内面シートと、
前記冷却体を介して前記内面シートと対向するよう配された外面シートと
を有し、
前記冷却体は、水を保有し得る保水層を有しており、
前記冷却体は、着用時において、少なくとも一部が前記内面シートを介して着用者の目及び/又は目の周辺と接触するよう前記本体部に配置されており、
前記内面シートの剛軟度は、前記外面シートの剛軟度よりも低い
冷却具。
【0163】
<2>
前記本体部は、
該本体部を幅方向に二分する縦中心線と、
前記縦中心線を境とした幅方向の一方側を構成する第1パネル部と、
前記縦中心線を境とした幅方向の他方側を構成する第2パネル部と
を有しており、
前記冷却体は、前記第1パネル部と前記第2パネル部とにそれぞれ設けられる
前記<1>に記載の冷却具。
<3>
前記縦中心線と前記冷却体の該縦中心線側の端部との離間距離が、それぞれ5mm以上35mm以下である
前記<2>に記載の冷却具。
<4>
前記本体部は、前記縦中心線を中心として前記第1パネル部及び前記第2パネル部を展開させた際に、前記第1パネル部及び前記第2パネル部が平面方向に並列する平面形状となるよう構成されている
前記<2>又は<3>に記載の冷却具。
【0164】
<5>
前記本体部は、
着用時において、着用者の額側に位置する上縁部と、
着用時において、着用者の鼻側に位置する下縁部と、
前記上縁部から前記下縁部側に向けて形成された上側スリットと、
前記下縁部から前記上縁部側に向けて形成された下側スリットと
を有しており、
前記上側スリット及び前記下側スリットは、該本体部を幅方向に二分する縦中心線上に形成されている
前記<1>~<4>のいずれか1項に記載の冷却具。
【0165】
<6>
前記下側スリットは、前記上側スリットよりも長く形成されている
前記<5>に記載の冷却具。
<7>
前記下側スリットの上下方向に沿う長さは、前記上側スリットの上下方向に沿う長さに対して150%以上750%以下である
前記<5>又は<6>に記載の冷却具。
<8>
前記上側スリットの上下方向に沿う長さは、前記本体部の前記上縁部から前記下縁部までの上下方向に沿う長さに対して3%以上25%以下である
前記<5>~<7>のいずれか1項に記載の冷却具。
<9>
前記下側スリットの上下方向に沿う長さは、前記本体部の前記上縁部から前記下縁部までの上下方向に沿う長さに対して23%以上73%以下である
前記<5>~<8>のいずれか1項に記載の冷却具。
【0166】
<10>
前記上側スリットの上下方向に沿う長さは、2mm以上18mm以下である
前記<5>~<9>のいずれか1項に記載の冷却具。
<11>
前記下側スリットの上下方向に沿う長さは、15mm以上61mm以下である
前記<5>~<10>のいずれか1項に記載の冷却具。
<12>
前記下側スリットの幅方向に沿う長さは、該下側スリットの上下方向に沿う長さに対して20%以上70%以下である
前記<5>~<11>のいずれか1項に記載の冷却具。
【0167】
<13>
前記上側スリットは、前記上縁部から前記下縁部側に向けて先細りとなるよう形成された切り欠きである
前記<5>~<12>のいずれか1項に記載の冷却具。
<14>
前記下側スリットは、前記下縁部から前記上縁部側に向けて先細りとなるよう形成された切り欠きである
前記<5>~<13>のいずれか1項に記載の冷却具。
<15>
前記本体部は、前記縦中心線を境とした幅方向の一方側を構成する第1パネル部側の前記下縁部から前記縦中心線に向けて傾斜する第1内側辺部と、前記縦中心線を境とした幅方向の他方側を構成する第2パネル部側の前記下縁部から前記縦中心線に向けて傾斜する第2内側辺部とを備え、
前記下側スリットは、前記第1内側辺部及び前記第2内側辺部により画定された切り欠きであり、
前記第1内側辺部に沿う第1仮想線と前記第2内側辺部に沿う第2仮想線との開き角度は、1°以上36°以下である
前記<14>に記載の冷却具。
【0168】
<16>
前記本体部の幅方向の両端部に設けられ、該本体部により着用者の顔の少なくとも目及び/又は目の周辺が覆われるように該本体部を着用者の顔に保持させることが可能な耳掛け部を更に備え、
前記耳掛け部は、前記本体部の幅方向に対して、着用時における前記本体部の下方側に傾斜して設けられている
前記<1>~<15>のいずれか1項に記載の冷却具。
<17>
前記耳掛け部は、それぞれ、着用時における前記本体部の上下方向に対して傾斜した接合部によって前記本体部に接合されており、
前記接合部に沿う第3仮想線は、それぞれ、前記本体部を幅方向に二分する縦中心線の中心よりも着用時における前記本体部の下方側において収束するよう、前記縦中心線に対して傾斜しており、
前記縦中心線に対する前記第3仮想線の傾斜角度は、それぞれ1°以上25°以下である
前記<16>に記載の冷却具。
<18>
前記耳掛け部は、それぞれ、耳掛け部本体と、着用者の耳が挿通可能な耳掛け孔とを有しており、
前記耳掛け部本体は、平面形状を有している
前記<16>又は<17>に記載の冷却具。
【0169】
<19>
前記本体部は、
該本体部を幅方向に二分する縦中心線と、
前記縦中心線を境とした幅方向の一方側を構成する第1パネル部と、
前記縦中心線を境とした幅方向の他方側を構成する第2パネル部と
を有しており、
前記耳掛け部の幅方向の長さは、前記第1パネル部及び前記第2パネル部の幅方向の長さと同じであるか、又は前記第1パネル部及び前記第2パネル部の幅方向の長さよりも短い
前記<16>~<18>のいずれか1項に記載の冷却具。
<20>
前記耳掛け部の幅方向の長さは、前記第1パネル部及び前記第2パネル部の幅方向の長さに対して、60%以上100%以下である
前記<19>に記載の冷却具。
<21>
前記耳掛け部の幅方向の長さは、55mm以上93mm以下である
前記<19>又は<20>に記載の冷却具。
【0170】
<22>
前記耳掛け部は、100%伸長時荷重が、50g/inch以上400g/inch以下である
前記<16>~<21>のいずれか1項に記載の冷却具。
<23>
前記保水層は、水の初期含有量が1cmあたり0.04ml以上0.40ml以下である
前記<1>~<22>のいずれか1項に記載の冷却具。
<24>
前記内面シートの剛軟度は、前記外面シートの剛軟度に対して95%以下である
前記<1>~<23>のいずれか1項に記載の冷却具。
<25>
前記内面シートの剛軟度が20mm以上90mm以下である
前記<1>~<24>のいずれか1項に記載の冷却具。
<26>
前記外面シートの剛軟度が50mm以上160mm以下である
前記<1>~<25>のいずれか1項に記載の冷却具。
【0171】
<27>
前記冷却体の前記内面シートに対向する対向面の総面積が3000mm以上12000mm以下である
前記<1>~<26>のいずれか1項に記載の冷却具。
<28>
前記冷却体の前記内面シートに対向する対向面の総面積は、前記内面シートの総面積に対して10%以上90%以下である
前記<1>~<27>のいずれか1項に記載の冷却具。
<29>
前記本体部は、
該本体部を幅方向に二分する縦中心線と、
前記縦中心線を境とした幅方向の一方側を構成する第1パネル部と、
前記縦中心線を境とした幅方向の他方側を構成する第2パネル部と
を有しており、
前記冷却体は、前記第1パネル部と前記第2パネル部とにそれぞれ設けられており、
前記第1パネル部に設けられている冷却体の当該第1パネル部に対向する対向面の総面積と、第2パネル部に設けられている冷却体の当該第2パネル部に対向する対向面の総面積とは、それぞれ1500mm以上6000mm以下である
前記<1>~<28>のいずれか1項に記載の冷却具。
【0172】
<30>
前記内面シートは、通気性シートからなる
前記<1>~<29>のいずれか1項に記載の冷却具。
<31>
前記内面シートは、少なくとも着用者の目と前記保水層との間の領域における透気度が、30000秒/100mL以下である
前記<30>に記載の冷却具。
<32>
前記外面シートは、難通気性シート又は非通気性シートからなる
前記<1>~<31>のいずれか1項に記載の冷却具。
<33>
前記内面シートは、透湿性シートからなる
前記<1>~<32>のいずれか1項に記載の冷却具。
<34>
前記内面シートの透湿度が2000g/m・24hr以上12000g/m・24hr以下である
前記<33>に記載の冷却具。
【0173】
<35>
前記内面シートは、防水性シートからなる
前記<1>~<34>のいずれか1項に記載の冷却具。
<36>
前記内面シートの耐水度が300mm以上である
前記<35>に記載の冷却具。
<37>
前記冷却体は、
着用者の目元側に配された第一シートと、
少なくとも前記保水層を介して前記第一シートと対向するよう配された第二シートと
を有しており、
前記第一シートは、通気性シートからなる
前記<1>~<36>のいずれか1項に記載の冷却具。
<38>
前記第一シートは、少なくとも着用者の目と前記保水層との間の領域における透気度が、350秒/100mL以下である
前記<37>に記載の冷却具。
【0174】
<39>
前記第二シートは、難通気性シート又は非通気性シートからなる
前記<37>又は<38>に記載の冷却具。
<40>
前記第一シートは、透湿性シートからなる
前記<37>~<39>のいずれか1項に記載の冷却具。
<41>
前記第一シートは、少なくとも着用者の目と前記保水層との間の領域における透湿度が、2000g/m・24hr以上12000g/m・24hr以下である
前記<40>に記載の冷却具。
<42>
前記第一シートは、防水性シートからなる
前記<37>~<41>のいずれか1項に記載の冷却具。
<43>
前記第一シートは、少なくとも着用者の目と前記保水層との間の領域における耐水度が、300mm以上である
前記<42>に記載の冷却具。
<44>
前記冷却具は、防水性を有する包装体に封入された状態で保存されており、
前記保水層は、前記冷却具が前記包装体に封入された状態において水を保有している
前記<1>~<43>のいずれか1項に記載の冷却具。
<45>
前記内面シートの材料は、親水性不織布である
前記<1>~<44>のいずれか1項に記載の冷却具。
<46>
前記親水性不織布は、親水度が1%以上の不織布である
前記<45>に記載の冷却具。
【符号の説明】
【0175】
1 :冷却具
10 :本体部
10A :第1パネル部
10B :第2パネル部
11 :内面シート
12 :外面シート
13 :上縁部
14 :下縁部
15 :上側スリット
16 :下側スリット
17 :第1内側辺部
18 :第2内側辺部
20 :冷却体
21 :基材層
22 :保水層
23 :第一シート
24 :第二シート
30 :耳掛け部
31 :耳掛け部本体
31a :上辺
31b :下辺
31c :開放縁
31d :接合縁
32 :耳掛け孔
40 :測定装置
41 :測定室
42 :流入路
43 :流出路
44 :入口温湿度計
45 :入口流量計
46 :出口温湿度計
47 :出口流量計
48 :温度計
50 :接合部
100 :縦中心線
200 :包装体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8