(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163057
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】CNTs@マイクロビーズコアシェルフィラー、セメントベース複合材料及び製造方法並びに応用
(51)【国際特許分類】
C04B 28/04 20060101AFI20241114BHJP
C01B 32/166 20170101ALI20241114BHJP
C04B 18/08 20060101ALI20241114BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20241114BHJP
C04B 14/36 20060101ALI20241114BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20241114BHJP
C04B 24/42 20060101ALI20241114BHJP
C04B 24/04 20060101ALI20241114BHJP
H01B 1/18 20060101ALI20241114BHJP
H01B 13/00 20060101ALN20241114BHJP
【FI】
C04B28/04
C01B32/166
C04B18/08 Z
C04B18/14 Z
C04B14/36
C04B24/26 E
C04B24/42 Z
C04B24/04
H01B1/18
H01B13/00 501Z
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024075139
(22)【出願日】2024-05-07
(31)【優先権主張番号】202310517335.X
(32)【優先日】2023-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】519380222
【氏名又は名称】青島理工大学
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO UNIVERSITY OF TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】羅 健林
(72)【発明者】
【氏名】袁 士柯
(72)【発明者】
【氏名】高 乙博
(72)【発明者】
【氏名】陶 雪君
(72)【発明者】
【氏名】張 紀剛
(72)【発明者】
【氏名】馬 明亮
(72)【発明者】
【氏名】于 科
【テーマコード(参考)】
4G112
4G146
5G301
【Fターム(参考)】
4G112MD00
4G112PA14
4G112PA27
4G112PA28
4G112PB16
4G112PB31
4G112PB41
4G146AA11
4G146AB06
4G146AD37
4G146BA01
4G146BA12
4G146BA15
4G146BB02
4G146BB11
4G146BC15
4G146BC18
4G146BC44
4G146CB16
4G146CB26
4G146DA29
5G301DA20
5G301DA32
5G301DA33
5G301DD06
5G301DD10
5G301DE01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】CNTs@マイクロビーズコアシェルフィラー、セメントベース複合材料及び製造方法並びに応用を提供する。
【解決手段】CNTs@マイクロビーズコアシェルフィラーの製造方法は、GOを有機溶媒に均一に分散させ、その中にピロールモノマーを加え混合溶液を得るステップと、ガラスマイクロビーズを洗浄してから混合溶液に加え、超音波処理し、ガラスマイクロビーズをFeCl
3水溶液に移して浸漬させ、PPy+GO@マイクロビーズを得るステップと、PPy+GO@マイクロビーズをフェロセン溶液と混合した後、ヘキサンを添加し、マイクロ波放射を行い、ガラスマイクロビーズ上にその場でCNTsを合成し、CNTs@マイクロビーズコアシェル材料を製造するステップとを含み、GO、ピロールモノマー、フェロセン、ヘキサンとガラスマイクロビーズの質量比は0.01~0.1:1~10:10~25:0.1~0.7:30~50である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GOを有機溶媒に均一に分散させ、その後、その中にピロールモノマーを加え、混合溶液を得るステップと、
ガラスマイクロビーズを洗浄してから前記混合溶液に加え、設定時間で超音波処理し、その後、ガラスマイクロビーズをFeCl3水溶液に移して設定時間で浸漬させ、PPy+GO@マイクロビーズを得るステップと、
PPy+GO@マイクロビーズをフェロセン溶液と混合した後、ヘキサンを添加し、その後、マイクロ波放射を行い、電力が800~900Wであり、時間が20~30sであり、ガラスマイクロビーズ上にその場でCNTsを合成し、CNTs@マイクロビーズコアシェル材料を製造するステップと、を含み、
GO、ピロールモノマー、フェロセン、ヘキサンとガラスマイクロビーズの質量比は0.01~0.1:1~10:10~25:0.1~0.7:30~50であり、
前記ガラスマイクロビーズはミクロン級のガラスマイクロビーズであり、前記ガラスマイクロビーズの平均粒径は2~10μmであることを特徴とする、CNTs@マイクロビーズコアシェルフィラーの製造方法。
【請求項2】
前記ガラスマイクロビーズの平均粒径は2.3μmであることを特徴とする、請求項1に記載のCNTs@マイクロビーズコアシェルフィラーの製造方法。
【請求項3】
前記FeCl3水溶液の濃度は0.1~0.15g/mlであることを特徴とする、請求項1に記載のCNTs@マイクロビーズコアシェルフィラーの製造方法。
【請求項4】
ガラスマイクロビーズのFeCl3水溶液における浸漬時間は10~30minであることを特徴とする、請求項3に記載のCNTs@マイクロビーズコアシェルフィラーの製造方法。
【請求項5】
前記GOの層数は1~5層であり、酸素含有量は40%を超え、%は質量パーセントであることを特徴とする、請求項1に記載のCNTs@マイクロビーズコアシェルフィラーの製造方法。
【請求項6】
前記有機溶媒はN-メチルピロリドンであり、前記超音波処理の時間は0.5~1.5hであり、超音波処理の温度は20~30℃であり、
N-メチルピロリドンとピロールモノマーの質量比は(80~150):(1~10)であることを特徴とする、請求項1に記載のCNTs@マイクロビーズコアシェルフィラーの製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されることを特徴とする、CNTs@マイクロビーズコアシェルフィラー。
【請求項8】
以下の重量部の成分、即ち、セメント100部、フライアッシュ5~15部、シリカヒューム4~9部、水25~35部、減水剤0.5~1.5部及び請求項7に記載のCNTs@マイクロビーズコアシェルフィラー0.4~5部を含むことを特徴とする、セメントベース複合材料。
【請求項9】
消泡剤をさらに含み、消泡剤は有機シリコーン系又はリン酸トリブチルであることを特徴とする、請求項8に記載のセメントベース複合材料。
【請求項10】
前記セメントはP.I.52.5型、P.II 52.5型、P.I.62.5型又はP.II 62.5型のポルトランドセメントであり、
前記フライアッシュは一級フライアッシュであることを特徴とする、請求項8に記載のセメントベース複合材料。
【請求項11】
シリカヒュームはS96級以上のシリカヒュームであり、減水剤は減水率が30%を超えるポリカルボン酸高効率減水剤であることを特徴とする、請求項8に記載のセメントベース複合材料。
【請求項12】
セメント、フライアッシュ、シリカヒューム及びCNTs@マイクロビーズコアシェルフィラーを割合で空練りして、空練り材料を得るステップと、
空練り材料を減水剤が溶解した水と混合し、30~60sゆっくり撹拌してから、2~5min速く撹拌し、セメントベース複合材料を得るステップと、を含むことを特徴とする、請求項8に記載のセメントベース複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントベース複合材料製造方法に関し、特に、CNTs@マイクロビーズコアシェルフィラー、セメントベース複合材料及び製造方法並びに応用に関する。
【背景技術】
【0002】
ここでの説明は、本発明に関連する背景技術を提供するものに過ぎず、必ずしも従来技術を構成するものではない。
【0003】
セメントベース複合材料は、コンクリート基材との適合性が高く、真性力学的強度、機能性能に優れているなどの利点を持っている。ここで、導電性フィラーが混在したセメントベース導電性複合材料は真性電気学センサに発展することができ、貼付又は埋め込みの手段を通じて、インフラ構造の健康モニタリングと劣化警報の面で巨大な応用潜在力を持っている。電磁波吸収フィラーが混在したセメントベース電磁波吸収複合材料は、高級建築物や軍事施設用の真性壁面電磁波吸収部材に発展することができる。
【0004】
近年、カーボンナノチューブ(CNTs)は、その優れた力学、電気/磁気学、熱学及びその他の物理性能により、広く研究されているが、直接添加法を採用すると、ナノスケールのCNTsは巻き付け、凝集の現象が発生しやすく、それに応じて、CNTsの導電/導磁性能がセメントベース材料において効果的に発揮することは困難である。
【0005】
セメント基材の他の構成材料-セメントクリンカ、砂石、鉱物ブレンド、ポリマーエマルジョンを分散媒介として、CNTsをそれぞれセメントクリンカ、砂石、鉱物ブレンド、ポリマーの表面等に貼り付けることを試み、さらにCNTsの最終的なセメント基材における分散性と機能性の発揮を実現しようと試みた人がいる。しかし、このような方式では、セメントクリンカ、砂石、鉱物ブレンドの表面に導電/導磁CNTsを直接付着させることが困難であり、ポリマーエマルジョンは絶縁材料に属し、CNTsベース複合材料のマクロな導電、導磁、熱伝導などの機能の実現を保証しにくいという問題が存在する。
【発明の概要】
【0006】
従来技術に存在する不足に対して、本発明の目的は、CNTs@マイクロビーズコアシェルフィラー、セメントベース複合材料及び製造方法並びに応用を提供することである。
【0007】
上記目的を実現するために、本発明は、以下の技術的解決手段によって実現される。
【0008】
第1態様では、本発明は、
GOを有機溶媒に均一に分散させ、その後、その中にピロールモノマーを加え、混合溶液を得るステップと、
ガラスマイクロビーズを洗浄してから前記混合溶液に加え、設定時間で超音波処理し、その後、ガラスマイクロビーズをFeCl3水溶液に移して設定時間で浸漬させ、PPy+GO@マイクロビーズを得るステップと、
PPy+GO@マイクロビーズをフェロセン溶液と混合した後、ヘキサンを添加し、その後、マイクロ波放射を行い、電力が800~900Wであり、時間が20~30sであり、ガラスマイクロビーズ上にその場でCNTsを合成し、CNTs@マイクロビーズコアシェル材料を製造するステップと、を含み、
GO、ピロールモノマー、フェロセン、ヘキサンとガラスマイクロビーズの質量比は0.01~0.1:1~10:10~25:0.1~0.7:30~50である、CNTs@マイクロビーズコアシェルフィラーの製造方法を提供する。
【0009】
超音波処理は、GO及びピロールモノマーをよりよく分散させ、それらをガラスマイクロビーズの表面に均一に吸着させて、後続の重合を容易にするためのものである。FeCl3水溶液は酸化剤としてピロールモノマーをポリピロールに酸化する。フェロセンが高温で分解して生成した鉄原子は触媒として反応を促進し、ヘキサンは補充炭素源である。マイクロ波放射の電力と時間は重要であり、電力が小さすぎるか時間が短すぎると、反応温度が不足し、電力が高すぎるか時間が長すぎると、CNTsの構造がアブレーションにより破壊される。
【0010】
GOの高表面積を利用してピロールモノマーに大量の重合部位を提供し、また、GOの負電荷と正電荷ピロールの間の静電相互作用、及びGOとピロール環の共役結合の間のπ-π相互作用は、GOシート表面のピロールの重合を促進し、球状ガラス体マイクロビーズの表面に1つの安定的で均一なGO@PPy層が沈積された。
【0011】
フェロセン溶液(ヘキサン)においてGO@PPy層で被覆されたマイクロビーズに対してマイクロ波放射を行い、その場で直径が均一で、寸法分布が好ましいCNTsを成長させ、最終的にはCNTs@マイクロビーズコアシェル材料とする。
【0012】
CNTs@マイクロビーズコアシェル材料をセメントベース体系にドーピングした場合、直接添加法における、CNTsがセメントベース材料において分散しにくく、凝集しやすいという問題が効果的に解決され、対応するセメントベース複合材料の自己感知、電磁遮蔽、電磁波吸収、熱伝導などの機能が大幅に改善され、構造モニタリング用の高性能真性センサ又は高級建築物や軍事施設用の真性壁面電磁波吸収層への応用を発展させる。
【0013】
いくつかの実施例において、前記ガラスマイクロビーズはミクロン級のガラスマイクロビーズである。
【0014】
好ましくは、前記ガラスマイクロビーズの平均粒径は2~10μmである。
【0015】
さらに好ましくは、前記ガラスマイクロビーズの平均粒径は2.3μmである。
【0016】
いくつかの実施例において、前記FeCl3水溶液の濃度は0.1~0.15g/mlである。
【0017】
好ましくは、ガラスマイクロビーズのFeCl3水溶液における浸漬時間は10~30minである。
【0018】
いくつかの実施例において、前記GOの層数は1~5層であり、酸素含有量は40%を超え、%は質量パーセントである。GOの層数及び酸素含有量の大きさは水溶液中のGOの分散性と関係があり、酸素含有量が高いと、GOの分散を促進でき、層数が少ないと、ナノ材料としての役割をよりよく果たし、凝集を避けることができる。
【0019】
いくつかの実施例において、前記有機溶媒はN-メチルピロリドン(NMP)である。
【0020】
好ましくは、N-メチルピロリドンとピロールモノマーの質量比は80~150:1~10である。
【0021】
いくつかの実施例において、ガラスマイクロビーズをアセトンで洗浄する。
【0022】
いくつかの実施例において、前記超音波処理の時間は0.5~1.5hであり、超音波処理の温度は20~30℃である。
【0023】
第2態様では、本発明は、前記製造方法によって製造される、CNTs@マイクロビーズコアシェルフィラーを提供する。
【0024】
第3態様では、本発明は、以下の重量部の成分、即ち、セメント100部、フライアッシュ5~15部、シリカヒューム4~9部、水25~35部、減水剤0.5~1.5部及びCNTs@マイクロビーズコアシェルフィラー0.4~5部を含む、セメントベース複合材料を提供する。
【0025】
いくつかの実施例において、前記セメントベース複合材料は消泡剤をさらに含み、消泡剤は有機シリコーン系又はリン酸トリブチルである。
【0026】
いくつかの実施例において、前記セメントはP.I.52.5型、P.II 52.5型、P.I.62.5型又はP.II 62.5型のポルトランドセメントである。
【0027】
いくつかの実施例において、前記フライアッシュは一級フライアッシュであり、
又は、シリカヒュームはS96級以上のシリカヒュームであり、
又は、減水剤は減水率が30%を超えるポリカルボン酸高効率減水剤である。
【0028】
第4態様では、本発明は、
セメント、フライアッシュ、シリカヒューム及びCNTs@マイクロビーズコアシェルフィラーを割合で空練りして、空練り材料を得るステップと、
空練り材料を減水剤が溶解した水と混合し、30~60sゆっくり撹拌してから、2~5min速く撹拌し、セメントベース複合材料を得るステップと、を含む、前記セメントベース複合材料の製造方法を提供する。
【0029】
第5態様では、本発明は、前記セメントベース複合材料の交通&構造知能モニタリング、電磁波吸収コーティング&電磁遮蔽や屋外融雪融氷プロジェクトの分野における応用を提供する。
【0030】
上述した本発明の1つ又は複数の実施例によって得られた有益な効果は以下の通りである。
【0031】
1、マイクロビーズがセメントベース材料中で十分に撹拌されて均一に分散できるという特徴を利用し、マイクロ波放射の方法でマイクロビーズ上にその場でCNTsを合成し、CNTs@マイクロビーズコアシェル材料を形成し、そしてCNTs@マイクロビーズコアシェル材料を機能フィラーとしてセメントベース材料に加え、これによりCNTsはセメント基材において均一に分散でき、CNTsの導電性と電磁波吸収性が大幅に発揮され、セメントベース材料の力電気センシングと電磁波吸収性能が大幅に向上する。
【0032】
2、他の分散方法は多かれ少なかれCNTsの構造を損傷するが、このようなその場で合成する方法は、CNTs構造が完全であるとともにCNTs@マイクロビーズコアシェル媒介に頼って良好な分散効果を得ることを保証でき、これによりCNTsの機能作用を最大化する。
【0033】
3、GOは中間物質として、マイクロ波放射により酸素含有基がアブレーションされ、さらにCNTsとなり、これにより最終的に生成したCNTsの直径がより一致し、寸法分布がより均一になる。
【0034】
4、本発明のCNTs@マイクロビーズコアシェル材料補強セメントベース複合材料は、力学的性質に優れ、耐久性が高く、コンクリート材料との適合性が高い等の特徴を有するだけでなく、さらに良好な知能力電気センシング、電磁波遮蔽性能と熱伝導性能を有し、さらに交通&構造知能モニタリング、壁材電磁遮蔽&電磁波吸収や屋外融雪融氷プロジェクトの分野に広く応用することができる。
【0035】
本発明の一部を構成する明細書の図面は、本発明に対するさらなる理解を提供するためのものであり、本発明の例示的な実施例及びその説明は、本発明を解釈するためのであり、本発明を不適切に限定する意図がない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】CNTs@マイクロビーズコアシェル材料補強セメントベース複合材料の製造フローチャートである。
【
図2】CNTs@マイクロビーズコアシェル材料補強セメントベース複合材料の電気伝導率テスト結果である。
【
図3】CNTs@マイクロビーズコアシェル材料補強セメントベース複合材料の反射率テスト結果である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
指摘すべきことは、以下の詳細な説明はすべて例示的であり、本発明のさらなる説明を提供するためのものである点である。特に指示がない限り、本発明で使用されるすべての技術用語と科学用語は、当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。
【0038】
以下において、実施例を参照しながら本発明をさらに説明する。
【0039】
実施例1
CNTs@マイクロビーズコアシェル材料は、以下の重量部の原料、即ち、GO 0.01部、ピロール1部、FeCl3溶液5部、フェロセン10部、ヘキサン0.1部、マイクロビーズ30部、NMP80部及び複数のアセトンからなる。
【0040】
CNTs@マイクロビーズコアシェル材料の製造方法は、具体的には、以下のステップを含む。
1-1)マイクロビーズ表面にGO及びPPyを沈積させた。つまり、まずGOをNMPに分散させて1h超音波処理してから、精製したピロールモノマーを分散済みのGO溶液に加え、次にアセトンで洗浄したマイクロビーズを加え、25℃の水浴中で1h超音波処理し、その後マイクロビーズを取り出してFeCl3水溶液中に15min放置し、最後に、被覆処理されたPPy+GO@マイクロビーズを取り出し、洗い流してオーブン中で48h乾燥させた。
1-2)沈積が完了したPPy+GO@マイクロビーズに対してマイクロ波放射を行った。つまり、ステップ1-1)で沈積が完了したPPy+GO@マイクロビーズをフェロセン溶液と混合し、ヘキサンを添加し、電子レンジ中でサンプルに対して850Wの電力でのマイクロ波放射を行い、放射時間が30sであり、これによりマイクロビーズ上にその場でCNTsを合成し、CNTs@マイクロビーズコアシェル材料を製造した。
【0041】
CNTs@マイクロビーズコアシェル材料補強セメントベース複合材料は、以下の重量部の原料、即ち、P.I.52.5型のポルトランドセメント100部、フライアッシュ5部、シリカヒューム4部、水25部、減水剤1.5部、CNTs@マイクロビーズコアシェル材料1部及び消泡剤0.05部からなる。
【0042】
CNTs@マイクロビーズコアシェル材料補強セメントベース複合材料の製造方法は、具体的には、以下のステップを含む。
2-1)CNTs@マイクロビーズコアシェル材料を機能フィラーとしてセメントベース材料に混入させた。つまり、ステップ1-2)で得られたCNTs@マイクロビーズコアシェル材料、鉱物ブレンド(フライアッシュ、シリカヒューム)をセメントとともにプラネタリーミキサーに入れ、5min速く撹拌し、CNTs@マイクロビーズコアシェル材料補強セメントベース空練り材料を形成した。
2-2)CNTs@マイクロビーズコアシェル材料補強セメントベース空練り材料を、事前に減水剤が溶解した水中に加え、60sゆっくり撹拌してから、3min速く撹拌し、適量の消泡剤を加え、その後プレス成形又は注入成形を行い、振動養生などのプロセスを経て、最終的にはCNTs@マイクロビーズコアシェル材料補強セメントベース複合材料を製造した。
【0043】
実施例2
CNTs@マイクロビーズコアシェル材料は、以下の重量部の原料、即ち、GO 0.02部、ピロール5部、FeCl3溶液10部、フェロセン20部、ヘキサン0.2部、マイクロビーズ40部、NMP120部及び複数のアセトンからなる。製造方法は実施例1と同じである。
【0044】
CNTs@マイクロビーズコアシェル材料補強セメントベース複合材料は、以下の重量部の原料、即ち、P.I.52.5型のポルトランドセメント100部、フライアッシュ5部、シリカヒューム4部、水25部、減水剤1.5部、CNTs@マイクロビーズコアシェル材料2部及び消泡剤0.06部からなる。製造方法は実施例1と同じである。
【0045】
実施例3
CNTs@マイクロビーズコアシェル材料は、以下の重量部の原料、即ち、GO 0.03部、ピロール10部、FeCl3溶液15部、フェロセン25部、ヘキサン0.4部、マイクロビーズ50部、NMP150部及び複数のアセトンからなる。製造方法は実施例1と同じである。
【0046】
CNTs@マイクロビーズコアシェル材料補強セメントベース複合材料は、以下の重量部の原料、即ち、P.I.52.5型のポルトランドセメント100部、フライアッシュ5部、シリカヒューム4部、水30部、減水剤1部、CNTs@マイクロビーズコアシェル材料3部及び消泡剤0.07部からなる。製造方法は実施例1と同じである。
【0047】
実施例4
CNTs@マイクロビーズコアシェル材料は、以下の重量部の原料、即ち、GO 0.04部、ピロール5部、FeCl3溶液15部、フェロセン20部、ヘキサン0.7部、マイクロビーズ50部、NMP150部及び複数のアセトンからなる。製造方法は実施例1と同じである。
【0048】
CNTs@マイクロビーズコアシェル材料補強セメントベース複合材料は、以下の重量部の原料、即ち、P.II.52.5型のポルトランドセメント100部、フライアッシュ5部、シリカヒューム4部、水35部、減水剤0.5部、CNTs@マイクロビーズコアシェル材料4部及び消泡剤0.08部からなる。製造方法は実施例1と同じである。
【0049】
比較例
CNTs@マイクロビーズコアシェル材料がない。
【0050】
対照群のセメントベース複合材料は、以下の重量部の原料、即ち、P.II.52.5型のポルトランドセメント100部、フライアッシュ5部、シリカヒューム4部、水35部、減水剤0.5部及び消泡剤0.08部からなる。製造方法は実施例1と同じである。
【0051】
実施例1~4で製造されたCNTs@マイクロビーズコアシェル材料、CNTs@マイクロビーズコアシェル材料補強セメントベース複合材料及び比較例の性能テスト実験方法は以下のとおりである。
【0052】
CNTs@マイクロビーズコアシェル材料中のCNTsの特徴、純度については、それぞれ赤外スペクトルとラマンスペクトルの手段によって特性評価測定を行い、その結果、CNTsは、1750 cm-1にカルボキシル基官能基の特徴ピークを有し、それぞれ1340 cm-1、1580 cm-1付近に典型的なDピーク、Gピークを有することが示されている。
【0053】
材料の耐圧、曲げ試験について、試験は規範『セメントモルタル強度検査方法(ISO法)』(GB/T17671-1999)の規定を参考にして、異なる配合比、異なる材齢(7d、28d)のモルタル試験ブロックの曲げ、耐圧強度に対して試験を行った。試料寸法は160mm×40mm×40mmであり、3つの試料を1群とし、実験結果は3つの試料の平均値を取った。
【0054】
比較例、実施例1~4の試料に対してそれぞれ力学的性質のテストを行った結果は表1に示すとおりである。CNTs@マイクロビーズコアシェル材料が添加されていない比較例に比べて、実施例1~4の力学的性質は明らかに向上し、混入したCNTs@マイクロビーズコアシェル材料はCNTsの良好な分散を保証し、ナノ材料の作用を最大限に発揮し、細長比が高いCNTsはより接合しやすく、セメントベース材料内部のマイクロクラックの拡張を阻止し、これによりマクロな力学的性質が向上する。7dの耐圧強度は70MPa以上に達することができ、曲げ強度は一般的に10MPa前後であり、28dの耐圧強度は90MPa以上であり、曲げ強度は13MPa前後である。このような真性センシング材料は工事構造のコンクリート材料自体との適合性が高く、元の構造を破壊することがなく、さらには元のコンクリート構造を補強することができ、優れた力学的性質により、それは実際の工事中のより厳しい挑戦に対応することができる。
【0055】
【0056】
CNTs@マイクロビーズコアシェル材料補強セメントベース複合材料の電気伝導率テストについて、四電極法を用いて乾燥後のCNTs@マイクロビーズコアシェル材料補強セメントベース複合材料試料の電気伝導率をテストする。試料寸法は60mm×20mm×20mmであり、スラリーをダイに入れて振動させた後、手動で4枚の銅メッシュを電極として挿入し、内、外側の2対の電極はそれぞれ30mm、50mm離れる。CNTs@マイクロビーズコアシェル材料補強セメントベース複合材料の熱伝導係数テストについて、平板熱伝導法を用いて乾燥試料の熱伝導係数を測定し、試料寸法は300mm×300mm×30mmの角柱体試料であり、3つの試料を1群とし、実験結果は3つの試料の平均値を取った。
【0057】
知能力電気センシングテストについて、Wheatstoneブリッジ技術及び動的信号収集技術と組み合わせ、単純支持梁体系の中間部分に嵌め込まれ3点曲げ荷重作用を受けた場合にCNTs@マイクロビーズコアシェル材料補強セメントベース複合材料で封止されたセンサが受けた応力、ひずみ及び抵抗率の変化をテストする。
【0058】
比較例及び実施例1~4の試料に対して自己感知性能のテストを行い、Wheatstoneブリッジ技術及び動的信号収集技術と組み合わせ、単純支持梁体系の中間部分に嵌め込まれ3点曲げ荷重作用を受けた場合にCNTs@マイクロビーズコアシェル材料補強セメントベース複合材料で封止されたセンサの抵抗率の変化を研究し、その結果は表2に示すとおりである。対照群に比べて、CNTs@マイクロビーズコアシェル材料が添加された試料の最大抵抗率変化率、応力感度、ひずみ感度、直線性、鋭く感知できる範囲はいずれも大幅に向上し、実施例1の最大抵抗率変化率は23.46%前後に達することができ、応力感度は0.45%/MPaであり、ひずみ感度は23であり、直線性は0.69%であり、鋭く感知できる範囲は0~60%ピーク応力であり、1万回の循環ロード後の零点ドリフトは3.54%である。これは、混入したCNTs@マイクロビーズコアシェル材料がCNTsの良好な分散を保証するため、供試体が圧力を受けた時、CNTs間がより接合しやすく、CNTsトンネル効果と接触導通の発生に役立つからである。
【0059】
したがって、本発明のCNTs@マイクロビーズコアシェル材料補強セメントベース複合材料は良好な知能力電気センシング性能を有する。
【0060】
【0061】
実施例1の製造方法によって、GO以外の他の原材料の配合比が変化しない(実施例1と同じである)ことを確保し、GOがピロールモノマーの異なる割合(0%、0.02%、0.04%、0.06%、0.08%)を占める場合のCNTs@マイクロビーズコアシェルフィラー補強セメントベース複合材料をそれぞれ製造し、そしてその電気伝導率をテストし、
図2を得る。
図2によると、GOが添加されていない場合、フェロセンが高温下で生成したシクロペンタジエニル基は炭素源としてCNTsを生成することができるが、フェロセンとマイクロビーズの間はマクロな混合であるため、得られたCNTsの直径、長さ及び均一性はあまりよくなく、それに応じて試料の電気伝導率の向上も限られている。
【0062】
GOが添加された後、GOの高表面積を利用してピロールモノマーに大量の重合部位を提供し、また、GOの負電荷と正電荷ピロールの間の静電相互作用、及びGOとピロール環の共役結合の間のπ-π相互作用は、GOシート表面のピロールの重合を促進し、球状ガラス体マイクロビーズの表面に1つの安定的で均一なGO@PPy層が沈積され、GO固有の酸素含有基は高温で消失し、CNTsに変換され、このように得られたCNTsは寸法がよく、均一性が高く、試料の電気伝導率が大幅に向上する。
【0063】
反射率テストについて、国家軍用規格GJB2038A-2011に従い、レーダ電磁波吸収材料(RAM)反射率テスト方法にはレーダ散乱断面(RCS)テスト法及び弓形テスト法があり、弓形テスト法を採用して試料の反射率をテストする。試料寸法は200mm×200mm×25mmであり、テスト周波数は2~18GHzであり、テスト前に試料を乾燥処理し、各群に3つの試料があり、実験結果は3つの試料の平均値である。
【0064】
実施例1の製造方法によって、GO以外の他の原材料の配合比が変化しない(実施例1と同じである)ことを確保し、GOがピロールモノマーの異なる割合(0%、0.01%、0.05%)を占める場合のCNTs@マイクロビーズコアシェルフィラー補強セメントベース複合材料をそれぞれ製造し、電磁波吸収性能テストを行い、その結果は
図3に示すとおりである。2~18GHzの範囲内で各試料曲線にも複数の-10dB未満のピークがあり、GOの混入量が0である場合、試料は3GHzに最高吸収ピーク-14.5dBが現れ、-10dB未満の周波数帯域幅は5.1GHzであり、GOの混入量が0.01%である場合、試料は10GHzに最高吸収ピーク-32.7dBが現れ、-10dB未満の周波数帯域幅は6.5GHzに達し、GOの混入量が0.05%である場合、試料は4.7GHzに最高吸収ピーク-42dBが現れ、-10db未満の周波数帯域幅は11.5GHzに達し、長管及び大管径のCNTsの電場作用下での分極度及び電気双極子モーメントの再配列はより多くの誘電損失を引き起こし、以上から分かるように、GOの混入により、CNTsの直径、長さ、均一性は全て改善され、GOを添加した試料は優れた電磁波吸収性能を有する。
【0065】
以上は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を制限するためのものではない。当業者であれば、本発明に様々な直しや変化を施すことができる。本発明の主旨と原理を逸脱せずに行った直し、同等な置換、改良等は、全て本発明の保護範囲内に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0066】
1 マイクロビーズ
2 ピロールモノマー
3 GO-NMP分散液
4 FeCl3溶液
5 PPy+GO@マイクロビーズ
6 CNTs@マイクロビーズコアシェル材料
7 ゲル化材料と砂の空練り材料
8 水と減水剤の混合液
9 CNTs@マイクロビーズコアシェル材料補強セメントベース複合材料
10 超音波分散
11 酸化重合
12 マイクロ波照射
13 混合撹拌
A プローブ式超音波細胞粉砕機
B 恒温水浴釜
C 電子レンジ