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特開2024-163061ファスナーの傷を最小限に抑える機能を有するスライダ、前記スライダを使用するファスナー及び、これらファスナーを使用した商品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163061
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ファスナーの傷を最小限に抑える機能を有するスライダ、前記スライダを使用するファスナー及び、これらファスナーを使用した商品
(51)【国際特許分類】
   A44B 19/26 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
A44B19/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024075614
(22)【出願日】2024-05-08
(31)【優先権主張番号】112117361
(32)【優先日】2023-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】593091957
【氏名又は名称】周 朝木
(71)【出願人】
【識別番号】507267285
【氏名又は名称】鄭 秀英
(74)【代理人】
【識別番号】100096758
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100114845
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 雅和
(74)【代理人】
【識別番号】100148781
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友和
(72)【発明者】
【氏名】周 朝木
【テーマコード(参考)】
3B098
【Fターム(参考)】
3B098AA01
3B098AA02
3B098AA11
3B098CC01
3B098CC02
(57)【要約】
【課題】ファスナーの傷を軽減する機能を有するスライダを提供する。
【解決手段】上側プレートと、上側プレートに対向する底側プレートと、上側プレートと底側プレートとを接続するリンク部と、底側プレートは、その2つの側縁から延びる2つの側壁を有し、上側プレートは上部内面と上部外面を有し、底側プレートは底側内面と底側外面を有し、内部通路は、上部内面、底側内面、側壁およびリンク部によって形成されている、ファスナーの傷を最小限に抑えることができるスライダであって、一対の平行な縦溝が、成形プロセス中に上部内面および/または底側内面に形成され、組み合わせ金型の一組の境界線の少なくとも一部を収容して、組み合わせ境界線マーク部位のこぼれがファスナーに対して付ける傷を減少させていることを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側プレートと、上側プレートに対向する底側プレートと、
上側プレートと底側プレートとを接続するリンク部と、
底側プレートは、その2つの側縁から延びる2つの側壁を有し、
上側プレートは上部内面と上部外面を有し、
底側プレートは底側内面と底側外面を有し、
内部通路は、上部内面、底側内面、側壁およびリンク部によって形成されている、ファスナーの傷を最小限に抑えることができるスライダであって、
一対の平行な縦溝が、成形プロセス中に上部内面および/または底側内面に形成され、組み合わせ金型の一組の境界線の少なくとも一部を収容して、漏れた溶融素材を収容することを特徴とする、ファスナーの傷を最小限に抑えることができるスライダ。
【請求項2】
前記上部外面および/または底側外面に配置された少なくとも1つのプルハンドルをさらに含む、請求項1に記載のファスナーの傷を最小限に抑えることができるスライダ。
【請求項3】
上部内面および底側内面のそれぞれは、一組の境界線マークを有し、境界線マークのセットは、一対の長手方向境界線マークと、長手方向境界線マークのそれぞれに接続された前側横境界線マークと、長手方向境界線マークのそれぞれに接続された後側横境界線マークとを含む、請求項1に記載のファスナーの傷を最小限に抑えることができるスライダ。
【請求項4】
前記ファスナーの一対のトップストップを受ける一対のトップストップ受け部が、上部内面および/または底側内面の前端に形成されており、
各溝は部分的にトップストップ受け部の1つに配置されている、請求項1に記載のファスナーの傷を最小限に抑えることができるスライダ。
【請求項5】
前記溝の幅と深さが各々異なることを特徴とする請求項1に記載のファスナーの傷を最小限に抑えることができるスライダ。
【請求項6】
前記スライダは、ピン無しスライダ、ばね式ピンスライダ、圧接式ピンスライダ、板ばね式ピンスライダ、インビジブルファスナーのばね式ピンスライダ、及びインビジブルファスナーのピン無しスライダから選択されていることを特徴とする請求項1に記載のファスナーの傷を軽減する機能を有するスライダ。
【請求項7】
前記スライダは金属合金またはプラスチックであることを特徴とする、請求項1に記載のファスナーの傷を軽減する機能を有するスライダ。
【請求項8】
前端横境界線マークおよび後端横境界線マークと各長手方向境界線マークとの交点が面取りまたは丸みを帯びた角を有する形状であることを特徴とする、請求項1に記載のファスナーの傷を軽減する機能を有するスライダ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のスライダを備えたファスナー。
【請求項10】
ファスナー操作が可能にされた、請求項9に記載のファスナーを備えた商品。
【請求項11】
衣料品、物品キャリアおよびキャンプ用品からなる群から選択される、請求項10に記載の商品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライダに関し、特に、内面に溝を設けて、組み合わせモールドの境界線からこぼれた溶融素材を溜めることにより、ファスナーの傷を最小限に抑えることができるスライダに関する。
【背景技術】
【0002】
スライダの本体は、一般に、上側プレート(カバー)、底側プレート(カバー)、一対の側壁、及び上側カバーと底側カバーを接続するリンク部から構成され、その内部には内部通路が形成されている。使用中、ファスナーの2つのチェーンは内部通路内に閉じ込められており、ユーザーはスライダの本体に接続されているタブを上下に引っ張って、ジッパーの2つのチェーンをそれぞれに係合または解放することができる。
【0003】
従来のスライダ1の三次元図を示す図1を参照すると、従来のスライダ1は、上側プレート11と、上側プレート11に対向する底側プレート12とを有し、上側プレート11は上部外面111を有する。また、スライダ1の前端にはリンク部13が設けられ、上側プレート11と連結されている。上側プレート11および底側プレート12は、いずれもその2つの側縁から延びる2つの側壁14を有し、一対の延長部がそれぞれ底側内面122と側壁との間に接続されている。さらに、プルハンドル18は、上部外面111に配置される(プルハンドル18は、底側外面121に配置することもできる)。また、底側内面122aには、スライダ1を成形する際に、組み合わせ金型(図示せず)の2つの境界線から溶融素材が漏れ出すことにより、2つの境界線マークa、bが形成される。
【0004】
より具体的には、スライダは、組み合わせ金型を用いてスライダ成形工程を行うことにより製造される。スライダ成形プロセスには、一定量の溶融金属または溶融プラスチックを組み合わせ金型に充填または射出する工程と、冷却してから組み合わせ金型を型から取り出してスライダを製造する工程とが含まれる。内部通路の形成に関しては、溶融金属または溶融プラスチックを充填または射出する前に、まず、相互に適合する一組のブロックをスライダ結合金型に差し込み、スライダの成形が完了した後に引き抜かれ、内部通路の空間が形成される。
【0005】
図2および図3はそれぞれ、スライダ1を切り開いた後、上部内面112および底側内面122の両方が上を向いた状態のスライダ1の概略図を示す。上部内面112および底側内面122のそれぞれは、相互に一致するブロックの集合によって生成される境界線マークa、bおよびcの集合を有する。より具体的には、上部内面112および底側内面122は、それぞれ、一対の長手方向境界線マークaと、一対の前端横方向境界線マークbと、一対の後端横方向境界線マークcとを有する。
【0006】
前端横境界線マークbは、スライダ1の前端に位置し、長手方向境界線マークaの前端に接続されている。後端横境界線マークcは、スライダ1の後端に位置し、長手方向境界線マークaの後端に接続されている。
【0007】
また、図2から明らかなように、長手方向境界線マークaは、2本のチェーン4とその固定糸41がスライダ1内を係合または分離するために通過しなければならない経路である。固定糸41は、ミシン糸や経緯糸等であるため、ファスナーを損傷しないように、その通過経路を滑らかに保つ必要がある。
【0008】
実際、スライダの鋳造プロセス中、相互に一致したブロックのセットは互いに閉じたり離れたりを繰り返し、相互に一致したブロックの継続的な衝突により裂傷や摩耗が発生する。それにより、上部内面112および/または底側内面122の境界線マークa、bおよびcにこぼれ5が生じる。また、図3に示すように、互いに突き合わせた一組のブロックを組み合わせ金型から引き抜く際、組み合わせ金型との摩擦を繰り返すことにより、相互に突き合わせたブロックの後端が磨耗し、少なくとも1つの凹凸の傷6が発生する可能性がある。 凹凸の傷6は、スライダ1の上部内面112および/または底側内面122に発生し、境界線マークaの片側または両側に多く発生する。
【0009】
前述の境界線マークa、b、cに形成されたこぼれ5は、ファスナーを損傷する可能性がある。例えば、上部内面112上のスライダ1の長手方向境界線マークaのこぼれ5は、ファスナーの一対の支持布ストラップの表面に取り付けられた防水層を傷つけたり、ファスナーの表面を損傷したりする可能性さえある。上述のこぼれや傷によりチェーンの固定糸41が切れると、チェーンの締結要素が一対の支持布ストラップから脱落し、ファスナーが正常に機能しなくなり、ファスナーが装着された衣料品が正常に使用できなくなる。
【0010】
さらに、前述のこぼれ5や傷6は、プラスチック鋼や金属製のチェーンの締結要素の表面を摩耗させる可能性があるため、チェーン上のこの欠陥は、ファスナーが取り付けられた衣料品の美観を損なう可能性がある。
【0011】
上記の問題に対処するために、従来の方法は、小さな研磨ヤスリをスライダ1に到達させ、こぼれ5を除去することであり、これはトリミングプロセスと呼ばれる。研磨ヤスリのサイズはスライダ1の内部空間よりも小さくなければならないため、そうでないと内部空間が拡大し、ファスナーの正常な機能に影響を与えることになる。したがって、こぼれ5を完全に削り取ることはできない。また、研磨ヤスリでは傷6の凹凸を修正することはできない。
【0012】
さらに、スライダの生産量は膨大で、1バッチあたり数万個、さらには数百万個にもなる場合があるため、各部品をこする従来のプロセスで流出物を除去するのはコストがかかり、不可能である。したがって、スライダの内部空間の境界線マークへのこぼれをいかに最小限に抑え、それによってファスナーの使用時におけるファスナーへの傷の損傷を軽減するかは、この分野において解決すべき困難な問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の主な目的は、上側内面および/または底側内面に一対の縦溝が平行に設けられ、ファスナーの傷つきを最小限に抑えることができるスライダを提供することにある。各溝は、スライダの製造工程中に形成される一組の組み合わせ金型境界線マークの少なくとも一部を収容し、組み合わせ金型境界線マークへのこぼれによるファスナーへの引っ掻き傷の損傷を軽減し、組み合わせ金型とファスナーの寿命を延ばす。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、ファスナーの傷を最小限に抑えることができる、上側プレートと、上側プレートに対向する底側プレートと、上側プレートと底側プレートとを接続するリンク部とを備えたスライダが提案されている。底側プレートはその2つの側縁から延びる2つの側壁を有し、上側プレートは上部内面および上部外面を有し、底側プレートは底側内面および底側外面を有し、内部通路は、上部内面、底側内面、側壁およびリンク部によって形成される。 スライダは、成形工程中に、組み合わせ金型の一組の境界線の少なくとも一部を収容するために、上部内面および/または底側内面に一対の平行な縦溝が形成されることを特徴とする。境界線からの溶融素材の漏れ出し量を少なくし、スライダによるファスナーへの傷を最小限に抑えることができる。
【0015】
一実施形態では、スライダは、上部外面および/または底側外面に配置された少なくとも1つのプルハンドルをさらに含む。
【0016】
一実施形態では、上部内面および底側内面のそれぞれに一組の境界線マークがある。一組の境界線マークは、一対の長手方向(縦方向)境界線マークを含み、前方の横方向境界線マークは各長手方向境界線マークに接続され、後方の横方向境界線マークは各長手方向境界線マークに接続される。
【0017】
一実施形態では、ファスナーの一対のトップストップを受け入れるために、一対のトップストップ受け入れ部が、上部内面および/またはその底側内面の前端に形成され、各溝は部分的にトップストップ受け部の1つに配置されている。
【0018】
一実施形態では、溝はそれぞれ異なる幅と深さを有する。
【0019】
可能な実施形態では、スライダは、ピン無しスライダ、ばね式ピンスライダ、圧接式ピンスライダ、板ばね式ピンスライダ、インビジブルファスナーのばね式ピンスライダ、及びインビジブルファスナーのピン無しスライダであってよい。
【0020】
考えられる実施形態では、スライダ材料は合金金属またはプラスチックであり得る。
【0021】
一実施形態では、前端横境界線マークおよび後端横境界線マークと各縦境界線マークとの交点は、面取りまたは丸みを帯びた角を有する形状である。
【0022】
本発明はさらに、ファスナーの使用時にファスナーに生じる傷を最小限に抑え、それによってファスナーの耐用年数を延ばす、上述のようなスライダを有するファスナーを提供する。
【0023】
本発明はさらに、確実な開閉動作を提供する上記のファスナーを備えた商品を提供する。
【0024】
考えられる実施形態では、商品は衣類、物品キャリア、またはキャンプ用品であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】従来のスライダを示す外観斜視図である。
図2図1に示すスライダの底側内面を示す平面図であり、境界線マークとチェーン部材の相対的な位置を示す。
図3図1に示すスライダの上部内面を示す平面図であり、境界線マークとこぼれと傷の相対的な位置を示す。
図4a】本発明のスライダの第1の実施形態の平面図であり、底側内面が境界線マーク上のこぼれおよび引っかき傷の一部を収容する一対の溝を有することを示す。
図4b】本発明のスライダの第1の実施形態の別の平面図であり、上部内面上の境界線マーク、こぼれ、および引っかき傷の相対位置を示す。
図4c図4aのX1-X2線に沿う断面図である。
図5a】本発明のスライダの第2の実施形態の平面図であり、長手方向境界線マークの一部と後端横方向境界線マークの一部を収容する一対の溝を有する底側内面を示す。
図5b】本発明のスライダの第2実施形態の別の平面図であり、長手方向境界線マークの一部と後端横方向境界線マークの一部を収容する一対の溝を有する上部内面を示す。
図5c】第1の実施形態の上部内面の平面図であり、長手方向境界線マークと後端横方向境界線マークとの交点が面取りされた、または丸い角を有することをそれぞれ示す。
図5d】第1の実施形態の底側内面の平面図であり、長手方向境界線マークと後端横方向境界線マークとの交点が面取りされた、または丸い角を有することをそれぞれ示す。
図6a】本発明のスライダの第3の実施形態の平面図であり、底側内面が、前端の横方向の境界線マーク、縦方向の境界線マークの一部、および後端横境界線マークの一部を収容する一対の溝を有することを示している。
図6b】本発明の第3実施例に係るスライダを示す他の平面図であり、上部内面が、前端横境界線マーク、長手方向境界線マークの一部、および後端横境界線マークの一部を収容する一対の溝を有することを示している。
図7】本発明のスライダの第4の実施形態の平面図であり、上部内面と底側内面のそれぞれ一対の溝が、前端横境界線マークの一部、長手方向境界線マークおよび後端横境界線マークの一部を収容することを示す。
図8a】本発明の第5実施例に係るスライダを示す3次元図である。
図8b】本発明のスライダの第5の実施形態の平面図であって、底側内面が一対の溝を有し、前端横境界線マークの一部、長手方向境界線マーク、および後端横境界線マークの一部を収容することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のスライダの構成要素のほとんどは、図1に示されるスライダと同一である。本発明のスライダ1は、互いに対向して配置された上側プレート11と底側プレート12とを備え、上側プレート11は上部外面111と上部内面112を有し、底側プレート12は底側外面121と底側内面122を有する。スライダ1の前端では、上側プレート11と底側プレート12とがリンク部13によって連結されており、上側プレート11と底側プレート12は、それぞれ両側縁に側壁14を有しており、一対の延出部17は、それぞれ底側プレート12の対応する側壁14に接続されている。リンク部13は、スライダ1の前端において上側プレート11と底側プレート12とを連結しており、上側プレート11と底側プレート12は、それぞれの辺の端部に側壁14を有している。そして、一対の延出部17は、対応する側壁14と底側プレート12の底側内面122とにそれぞれ接続されている。上部外面111にはプルハンドル18が配置され、必要に応じてプルハンドル18は上部外面111および/または底側外面121に配置されてもよい。
【0027】
[第1実施例]
図4aから図4cに、本発明のスライダの第1の実施形態の底側内面122の平面図、上部内面112、および底側内面122の断面図がそれぞれ示される。図4aおよび図4bは、スライダ1が底側内面122に一対の平行な溝8のみを有することを示しており、もちろん、実際の必要に応じて、上部内面112のみに一対の平行な溝8を設けることもできる。上側プレート11および底側プレート12は、それぞれ両側に2つの側壁14を有しており、底側プレート12の側壁14は上側プレート11の側壁14よりも高くなっている。溝8は、縦境界線マークaと後端横境界線マークcの一部とを収容するように配置されている。
【0028】
図4aの線X1-X2に沿った断面図である図4cに、一対の溝8の位置と、溝8の傾斜した側面が示されている。
【0029】
また、各側壁14は、その下部に延出部17を有しており、底側内面122には、ヘッド1内のナイロンジッパーや編み込みジッパー等のコイル型ジッパーの開閉機能を安定させるためのボス15が形成されており、ボス15は、チェーン4(図2に示す)のコイル型締結要素の形状に依存する形状、幅および高さを有している。従って、ボス15の形状、幅および高さは特に限定される必要はない。
【0030】
また、延出部17及びボス15は、いずれも底側内面122から突出しているが、延出部17とボス15との間の距離が広いため、チェーン4の締結要素の固定糸41は依然としてそれぞれの長手方向境界線マークa上のこぼれ5に接触する可能性があり、スライダ1がチェーン4に沿って引っ張られるときにこぼれ5によって引っ掻かれる可能性がある。本実施形態の一対の溝8は、長手方向境界線マークa及び後端横境界線マークcのこぼれ5及び傷6の一部を収容し、溝8に収容されたこぼれ5および傷6の高さをそれぞれの内面112、122よりも低くすることができ、それによってファスナーの傷を低減することができる。
【0031】
実際、各長手方向境界線マークaの前端は、上部内面112から溝8の対応する面取りされた縁部へと徐々に下降し、最終的には溝8の底側まで下降する。溝8は、溝8の傾斜した縁部を含む底側内面122の下から、明らかな境界を持たずに延びている。縦境界線aが溝8の対応する領域に進入する位置は任意に設定することができる。各溝8の輪郭形状、深さおよび幅は制限される必要はなく、ファスナーのサイズおよび必要性に応じて、各溝8さえも異なる幅または深さを有してもよいが、各溝8の深さは、0.05mm以上が好ましい。
【0032】
[第2実施例]
図5aおよび図5bは、本発明のスライダの第2の実施形態を示す。この実施形態は、上部内面112に加えて底側内面122が一対の平行な溝8を有する点で第1の実施形態とは異なる。底側プレート12は上側プレート11の側壁14よりも高く、底側プレート12の側壁14の内側には延出部17が形成されている。
【0033】
一対の溝8は、長手方向境界線マークaに対応する位置に配置されており、各溝8には、長手方向境界線マークaの全部と、前端横境界線マークbの一部と、後端横境界線マークcの一部とが収容されている。上部内面112および下側内面122はそれぞれボス15を有する。ボス15及び延出部17は、スライダ1内でナイロンジッパーや編み込みジッパー等のコイル型ジッパーの開閉機能を安定させるために用いられる。ボス15の形状、幅および高さは、チェーン4の締結要素の形状に依存するため、特に限定する必要はない。
【0034】
また、延出部17及びボス15はいずれも底側内面122より上にあるが、延出部17とボス15との間の距離が非常に広いため、チェーン4の締結要素の固定糸41は、スライダ1がチェーン4に沿って引っ張られたときに、長手方向の境界線マークa上のこぼれ5に依然として接触し、こぼれ5によって引っ掻かれる可能性がある。本実施形態の溝8は、長手方向境界線マークaおよび後端横境界線マークcの吹きこぼれ5や傷6を吸収することができ、ファスナーの傷つきを軽減することができる。
【0035】
また、スライダをダイカスト成形する際、組み合わせ金型内のスライディングブロック同士が噛み合って衝撃が加わると、スライダの破損が発生する場合があり、また、長手方向境界線マークaと後端横境界線マークcとの交点においては、原料のこぼれが多くなる。この問題を解決するために、図5cおよび5dを参照すると、スライドブロックの両端は、長手方向境界線マークaと後端横境界線マークcとの交点が面取りまたは丸みを帯びた形状を有するように設計されてもよい。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、過剰な流出の問題を解決できる任意の形状を代わりに使用することができる。
【0036】
スライダ1の長手方向境界線マークaの先端は、上部内面112および底側内面122から溝8の対応する面取り縁に向かって徐々に下降し、最終的には溝の底に至る。溝8は、上部内面112および底側内面122の下から延在し、それぞれが2つの面取りされた縁を有する。縦境界線aが溝8の対応する領域に進入する位置は任意に設定することができる。各溝8の輪郭形状、深さおよび幅は制限される必要はなく、ファスナーのサイズおよび必要性に応じて、各溝8さえも異なる幅または深さを有してもよいが、各溝8の深さは、0.05mm以上が好ましい。
【0037】
[第3実施例]
図6aおよび6bは、本発明のスライダの第3の実施形態を示しており、第1の実施形態とは次の点で異なる。本実施形態のスライダ1は、上部内面112と底側内面122の両方に一対の平行な溝8が形成されており、上部内面112の前端と底側内面122にはファスナーの一対のトップストップ(図示せず)を受けるための一対のトップストップ受け部16が形成されている。また、各溝8には、長手方向境界線マークaの全部と、前端横境界線マークbの一部と、後端横境界線マークcの一部とが収容されている。
【0038】
また、各溝8の一部はトップストップ受け部16内に位置しており、必要に応じて、前端横境界線マークbの一部と長手方向境界線マークaの一部がトップストップ受け部16内に位置するように、トップストップ受け部16を拡大してもよい。上側プレート11および底側プレート12は、それぞれ2つの側縁に2つの側壁14を有する。上部内面112と底側内面122の両方にはボス15が設けられており、底側プレート12の対向する2つの側壁14には2つの延長部17が位置している。ボス15及び延出部17は、スライダ1内におけるコイル式ジッパーの開閉機能を安定させるために用いられる。ボス15の形状、幅および高さは、チェーン4の締結要素の形状に依存するため、特に限定する必要はない。
【0039】
また、延出部17及びボス15はいずれも底側内面122より上にあるが、延出部17とボス15との間の距離が非常に広いため、チェーン4の締結要素の固定糸41は、スライダ1がチェーン4に沿って引っ張られたときに、長手方向境界線マークa上のこぼれ5に依然として接触し、こぼれ5によって引っ掻かれる可能性がある。本実施形態の溝8は、長手方向境界線マークaおよび後端横境界線マークcの吹きこぼれ5や傷6を吸収することができ、ファスナーの傷つきを軽減することができる。あるため、前記ファスナーに対する損傷を軽減させる。
【0040】
溝8は、上部内面112および底側内面122の下から延在し、それぞれが2つの面取りされた縁を有する。本実施形態では、各溝8は、縦境界線マークaの全部と、前端横境界線マークbの一部と、後端横境界線マークcの一部とを収容している。各溝8の輪郭形状、深さおよび幅は制限される必要はなく、ファスナーのサイズおよび必要性に応じて、各溝8さえも異なる幅または深さを有してもよいが、各溝8の深さは、0.05mm以上が好ましい。
【0041】
[第4実施例]
図7は、本発明のスライダの第4の実施形態を示す。本実施形態のスライダ1は、金属ジッパーまたはプラスチック鋼ジッパーなど、チェーン用の個別の歯付き締結要素を有するファスナーに使用されるという点で第1の実施形態と異なる。個々の歯付き締結要素のそれぞれの上面および底面は本質的に平面であるため、上部内面112および底側内面122にボス15を設ける必要はない。図7から分かるように、上側プレート11および底側プレート12は、それぞれ2つの側縁に2つの側壁14を備え、上部内面112と底側内面122は実質的に同じ構成を有する。さらに、スライダ1の上部内面112は、一対の平行な溝8を有し、各溝8には、長手方向境界線マークaの全部と、前端横境界線マークbの一部と、後端横境界線マークcの一部とが収容されている。
【0042】
溝8は、上部内面112および底側内面122の下から延在し、それぞれが2つの面取りされた縁を有する。この実施形態では、溝8のそれぞれの深さおよび幅は制限される必要はなく、さらに、ファスナーのサイズおよびニーズに応じて、溝8のそれぞれが異なる輪郭、幅または深さを有してもよいが、溝8の深さは0.05mm以上であることが好ましい。
【0043】
[第5実施例]
図8aは、本発明の第5の実施形態によるスライダの3次元図を示す。インビジブルファスナーに使用されるスライダ1は、底側プレート12を有し、底側プレート12の2つの側縁に2つの側壁14を備え、一対の翼付きフラップ141が各側壁14の上部で内側に延びている。スライダ1の前端にはリンク部13が設けられ、リンク部13の上部にはテーパカバー131が設けられている。一対の翼付きフラップ141とテーパカバー131は共に、従来のスライダの上側プレートと同様の機能を備えた結合された上側プレート11aを形成し、一対の翼付きフラップ141とテーパカバー131は共に、既存のスライダの既存のカバープレートと同様の機能を有する結合された上側プレート11aを形成し、また、一対の翼付きカバープレート141とテーパ状カバープレート131との間にはY字状の隙間19が形成されており、一対の支持布ストラップがY字状の隙間19を通ってスライダ1の外に突出することができる。
【0044】
結合された上側プレート11aは結合された上部内面113を有し、底側プレート12は結合された底側内面122を有し、各側壁14は、その内側に延出部17を有し、そして、組み合わされた上部内面113と底側内面122のそれぞれは、ボス15を有する。延長部17およびボス15は、スライダ1内でチェーン4の締結要素の開閉を安定させるために使用される。
【0045】
図8bは、スライダ1の底側内面122の平面図を示しており、底側内面122は一対の平行な溝8を有する。各溝8には、長手方向境界線マークaの全部と、前端横境界線マークbの一部と、後端横境界線マークcの一部とが収容されている。
【0046】
溝8は、底側内面122の下から延在し、それぞれが2つの面取りされた縁を有する。各溝8の深さと幅は制限される必要はなく、ファスナーのサイズとニーズに応じて、各溝8が異なる輪郭、幅または深さを有してもよいが、溝8の深さは0.05mm以上であることが好ましい。
【0047】
すべてのファスナーは開閉機能のためにスライダ1を必要とするため、ファスナーに傷を付けないように、具体的には、ファスナーの支持生地表面の防水層、縫い糸、縦糸と横糸、または金属やプラスチック鋼製の固定要素などの個々の歯付き固定要素を傷つけないように、スライダ1の上部内面と底側内面の両方ができるだけ平らであるか、さらには滑らかである必要がある。特に、ファスナーが光沢のある表面を有する貴金属製のファスナーである場合には、通常、光沢のある表面に傷がつかないようにすることが最優先の要件となる。本発明の溝の設計は、組み合わせ金型境界線マークのこぼれや傷の問題を回避するだけでなく、スライダの製造における従来のこぼれトリミングプロセスの必要性も排除する。特に要件が厳しいスライダについては、溝の形状に適合するトリミングツールを使用して、各境界線マーク上の大きなこぼれを効率的に除去し、ファスナーの傷を避けるためにこぼれが内面112、122より高くならないようにすることができる。
【0048】
また、本発明のスライダは、各種ジッパーチェーンに適用可能であり、例えば、コイル型締結要素を有するジッパーチェーン、連続折り込み型締結要素を有するジッパーチェーン、独立歯型締結要素を有する金属ジッパーチェーン、独立歯型締結要素を有するプラスチックスチールジッパーチェーン、またはコイル型締結要素を有する防水ジッパーチェーンなどが挙げられる。ファスナーチェーンの種類ごとにエレメント断面形状が異なるため、スライダ内でのファスナーの開閉を安定させるため、上部内面と底側内面の対応する中心にボスを形成することができる。
【0049】
スライダはピン無しスライダ、ばね式ピンスライダ、圧接式ピンスライダ、板ばね式ピンスライダ、インビジブルファスナーのばね式ピンスライダ、及びインビジブルファスナーのピン無しスライダなどが挙げられ、材質は金属またはプラスチックなどであり得るが、これらに限定されない。
【0050】
本発明を例として、また好ましい実施形態に関して説明してきたが、本発明はそれらに限定されないことを理解されたい。それどころか、本発明は、様々な修正および同様の構成および手順を包含することを意図しており、従って、添付の特許請求の範囲は、そのような修正および同様の構成および手順をすべて包含するように最も広範に解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0051】
1 スライダ
11 上側プレート
11a 結合された上側プレート
111 上部外面
112 上部内面
113 結合された上部内面
12 底側プレート
121 底側外面
122 底側内面
13 リンク部
131 テーパーカバー
14 側壁
141 翼付きフラップ
15 ボス
16 トップストップ受け部
17 延長部
18 プルハンドル
19 Y字状の隙間
4 チェーン
41 固定糸
5 こぼれ
6 傷
8 溝
a 長手方向境界線マーク
b 前端横方向境界線マーク
c 後端横方向境界線マーク
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図5c
図5d
図6a
図6b
図7
図8a
図8b
【外国語明細書】