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特開2024-163096パターンマッチングの心室位置を特定するための空間相関
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163096
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】パターンマッチングの心室位置を特定するための空間相関
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/287 20210101AFI20241114BHJP
   A61B 5/363 20210101ALI20241114BHJP
【FI】
A61B5/287
A61B5/363
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024077102
(22)【出願日】2024-05-10
(31)【優先権主張番号】18/195,995
(32)【優先日】2023-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127DD04
4C127GG10
4C127GG13
4C127GG16
4C127HH13
(57)【要約】
【課題】心臓内の電気的伝播を評価すること。
【解決手段】方法は、患者の心臓の心室内の複数の位置から心臓信号を受信することを含む。受信された信号は不整脈を示す基準信号と比較される。この比較に基づいて、受信された信号と基準信号との間の相関の増加を示し得る位置に向かう方向が計算される。方向は、ユーザに対して示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
患者の心臓の心室内の複数の位置から心臓信号を受信するように構成されたインターフェースと、
プロセッサであって、
前記受信された信号を不整脈を示す基準信号と比較し、
前記比較に基づいて、前記受信された信号と前記基準信号との間の相関の増加を示し得る位置に向かう方向を計算し、
前記方向をユーザに対して示すように構成された、プロセッサと、を含む、システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記方向を推定するために統計分析方法を適用することによって比較するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記方向についての損失関数を含む機械学習(ML)モデルを適用することによって比較するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサは、既知の解剖学的位置に向かう方向に関する方向の損失項を前記損失関数に含めるように更に構成されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロセッサは、候補分析ゾーンに向かう方向の中から前記損失関数を最小化する方向を見つけることによって前記方向を計算するように構成されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記方向によって誘導される前記位置が不整脈惹起性としての関心領域であるかどうかをチェックし、そのような場合、前記位置にタグ付けし、そうでない場合、追加の複数の位置から心臓信号を受信し、前記追加の心臓信号を分析することに基づいてユーザに次の方向を示すように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記位置を含む分析ゾーンにわたる相関の平均値が所与の閾値を上回るかどうか、及び/又は前記分析ゾーン内の最小相関の値が所与の閾値を上回るかどうかをチェックすることによって、前記位置が関心領域であるかどうかをチェックするように構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記方向及び次の方向が生成する経路を視覚化し、相関データにおける前進を視覚化するために、前記相関のマップを構築するように更に構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記インターフェースが、カテーテルを使用して取得された単極及び双極電位図の1つを受信することによって、前記心臓信号を受信するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
方法であって、
患者の心臓の心室内の複数の位置から心臓信号を受信することと、
前記受信された信号を不整脈を示す基準信号と比較することと、
前記比較に基づいて、前記受信された信号と前記基準信号との間の相関の増加を示し得る位置に向かう方向を計算することと、
前記方向をユーザに対して示すことと、を含む、方法。
【請求項11】
比較することは、前記方向を推定するために統計分析方法を適用することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
比較することは、前記方向についての損失関数を含む機械学習(ML)モデルを適用することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
既知の解剖学的位置に向かう方向に関する方向の損失項を前記損失関数に含めることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方向を計算することは、候補分析ゾーンに向かう方向の中から、前記損失関数を最小化する方向を見つけることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記方向によって誘導される前記位置が不整脈惹起性としての関心領域であるか否かをチェックし、そのような場合、前記位置にタグ付けし、そうでない場合、追加の複数の位置から心臓信号を受信し、前記追加の心臓信号を分析することに基づいてユーザに次の方向を示すことを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記位置が関心領域であるかどうかをチェックすることは、前記位置を含む分析ゾーンにわたる相関の平均値が所与の閾値を上回るかどうか、及び/又は前記分析ゾーン内の最小相関の値が所与の閾値を上回るかどうかをチェックすることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記方向及び次の方向が生成する経路を視覚化し、相関データにおける前進を視覚化するように、前記相関のマップを構築することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記心臓信号を受信することが、カテーテルを使用して取得された単極及び双極電位図の1つを受信することを含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して電気生理学的(electrophysiological、EP)信号に関し、具体的には、心臓内の電気的伝播の評価のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心室性不整脈の位置を決定するための電気生理学的信号の推定は、特許文献に従前に示唆されていた。例えば、米国特許第7,907,994号は、生存被験者に誘導される心室性頻拍(VT)信号を記載している。次いで、ペースマッピングされた信号は、心室内の複数の点から得られ、自動的に誘導信号と数値的に比較される。誘導信号とペースマッピングされたシグナルの1つ以上との間の高度の相互相関の認識は、不整脈惹起性の病巣又は経路を特定し、不整脈惹起性の病巣又は経路を、次いで、不整脈が非誘導性になるように、切除することができる。
【0003】
以下の本開示の実施例の詳細な説明を図面と併せ読むことで、本開示のより完全な理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】本開示の一例による、電気生理学的(electrophysiology、EP)マッピング及びアブレーションを行うカテーテルベースのシステムの概略的な描画図である。
図2】本開示の一例による、不整脈の候補左心室位置に医師を誘導する方法を概略的に図示する。
図3】本開示の一例による、図2の誘導方法を実行している間の左心室の相関マップの構築を概略的に示す。
図4】本開示の一例による、図2の誘導方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
概要
左心室(LV)などの心室の不整脈(例えば、リエントリー不整脈)を特徴付けるために、医師は、多電極マッピングカテーテルを使用して、心室内の疑わしい組織経路及び回路の電気生理学的(EP)マッピングを行うことができる。
【0006】
EP処置中に、異所性拍動、期外収縮、又は心室性期外収縮(PVC)などの一過性不整脈惹起性事象が発生した場合、医師は、その事象を記録し、次いで、不整脈惹起性事象の起源又は原因を評価することを可能にするために、ペーシングを用いてその事象の反復を刺激しようと試みることができる。
【0007】
ペーシングを伴う事象の反復を刺激するために、医師は、心室内の複数の点からペースマッピングされた信号を捕捉し、記録された信号を比較する。記録された信号とペースマッピングされた信号のうちの1つ以上との間の高度な相互相関の認識は、記憶されている同じ一過性事象の誘発の成功を示す。複雑な心室不整脈のメカニズムを特定するためのペーシング中に、医師は、心室の異なる領域をサンプリングし、パターンマッチング(例えば、取得された波形とVT特性波形の記憶されたパターンとの間の心電図波形マッチング)を実行して、定義されたパターンとの相関を特定する。一例では、VTメカニズムの位置を特定するために、電極のアレイ上でパターンマッチングが実行される。
【0008】
しかしながら、時として、医師は、サンプリングされたデータと記憶されたパターンとの間の良好な相関を提供する心室面積を見出すことが困難である。例えば、1つ以上の電極から取得された波形は、パターンと十分に一致しない場合がある。時には、ほとんどのチャネルからの波形は、記憶されたパターンと良好に相関するが、少数のチャネルのうちの1つだけが、記憶されたパターンと相関しない。これが起こると、全てのチャネルに対する相関を改善するためにカテーテルをどの方向及び/又は配向に移動させるべきかを医師が決定することが特に困難になる場合がある。
【0009】
以下に説明される本開示の実施例は、サンプリングされたデータと記憶されたパターンとの間の良好な相関を提供する心室領域に医師を誘導する技術を提供する。開示された技術は、医師がカテーテルを心腔内で移動させ、心腔内の異なる場所でペーシングするときに蓄積された膨大な量のEPデータを分析するプロセッサの利益に依存する。
【0010】
一例では、プロセッサは、捕捉されたEP心臓信号の各々の空間位置に関する統計的分析を適用して、医師がカテーテルを移動させることができる心室領域への方向を示す。その方向への移動は、記憶されたパターンとのより良い相関を有する信号を提供することが期待される。統計分析方法の例には、主軸分析及び回帰法が含まれる。使用される別の統計的分析は、各ポイントにおける各チャネルの相関をチェックし、次いで最大値を探すことである。
【0011】
別の例では、プロセッサは、医師がカテーテルを移動させることができる心室領域への方向を示す損失関数を含む機械学習モデル(ML)を適用する。
【0012】
一例では、損失関数は、(i)潜在的に不整脈惹起性であることが知られているLV解剖学的標的、(ii)それぞれの平均相関を有する心室領域の分析ゾーン、及び(iii)最も低い相関を有する信号を示す分析ゾーンに関して可能な方向のメトリックを含む。医師によって考慮される心室上の任意の所与の位置において、MLモデルを適用するプロセッサは、損失関数を最小化する方向を見出す。
【0013】
分析ゾーンは、電位図取得ステップ中に任意の所与の位置で多電極カテーテルによってカバーされる領域であってもよい。ゾーンは、代替として、分析に好適な所与のサイズ及び形状の面積(例えば、十分な数の相関データ点を含む、事前定義された半径の円)によって定義されてもよい。
【0014】
本開示の実施形態では、医師は、異なる位置で心臓組織をペーシングし、各ペーシング位置について、プロセッサは、ペーシングに応答して呼び出されたEP信号を記憶された信号と比較する。プロセッサは、最良の(例えば、最高の平均)相関を有する組織位置を検索する。任意選択で、各チャネルからの信号の相関は、基準を満たすために所定の閾値を上回る必要がある。任意選択で、最良の相関は、最大数のチャネルが、その対応する記憶された信号との所定の閾値を上回る相関を有するという基準を満たす位置である。
【0015】
アルゴリズムの出力は、次のペーシングが実行されるべき方向に医師を指し示す矢印である。医師が指示に従って領域に到達すると、新しいEP信号がそこで取得され、プロセッサが新しい位置での相関を計算する。プロセッサは、例えば、所与の閾値を上回る平均相関値を達成すること、及び/又は所与の閾値を上回る最小相関値を達成することによって、新しい位置が記憶されたパターンとより良好に相関されるかどうかをチェックしてもよい。その領域が不整脈惹起性であるとれる場合、医師は、不整脈(例えば、VT)を排除するために、その中の組織をアブレーションしてもよい。
【0016】
いくつかの例では、MLモデルが医師を誘導した後、プロセッサは、相関データの蓄積の前進を視覚化するためにMLモデルによって構築された経路を視覚化するように、相関係数のマップの形態で視覚的支援を構築する。マップは、アブレーションを行うかどうか、またどこで行うかを医師に誘導する視覚的補助ツールとして機能する。
【0017】
マップを構築するために、プロセッサは、複数の異なる位置の各々において、チャネルの各々について相関係数を記憶し、計算された相関係数の空間マップを生成する。相関係数は、分析ゾーン内の異なる電極(重み付けされた電極又は重み付けされていない電極)からの全ての相関係数の平均とすることができ、又は分析ゾーン内の1つ以上の選択された電極からの相関係数とすることができる。
【0018】
他の例では、MLモデルの代わりに、プロセッサは、統計モデル(例えば、主成分分析(PCA))を適用して、方向を見つける。
【0019】
システムの説明
図1は、本開示の一例による、カテーテルベースの電気生理学的(EP)マッピング及びアブレーションシステム10の概略的な描画図である。
【0020】
システム10は、医師24によって、患者の血管系を通して心臓12の腔又は血管構造内へ経皮的に挿入される、複数のカテーテルを含む(挿入図45参照)。典型的には、送達シースカテーテルは、心臓12の所望の位置の近くの左心房又は右心房内などの心室へと挿入される。その後、複数のカテーテルを送達シースカテーテルに挿入して、所望の位置に到達させることができる。複数のカテーテルは、ペーシング専用のカテーテル、心内電位図信号を感知するためのカテーテル、アブレーション専用のカテーテル、及び/又はEPマッピングとアブレーションの両方専用のカテーテルを含むことができる。本明細書に示される例示的カテーテル14は、双極電位図を感知するように構成されている。医師24は、心臓12の標的部位を感知するために、カテーテル14の遠位先端部28(以後、本明細書で「遠位端組立体28」と呼ばれる)を心臓壁と接触させる。アブレーションのために、医師24は、同様に、アブレーションカテーテルの遠位端を標的部位に運ぶ。
【0021】
挿入図65に見られるように、カテーテル14は、バスケット遠位端28と、任意選択的遠位先端部28において複数のスプライン22にわたって分布し、IEGM信号を感知するように構成された、1つ、好ましくは複数の電極26を含む例示的なカテーテルである。カテーテル14は、遠位先端部28の位置及び向きを追跡するために、カテーテル14のシャフト46上の遠位先端部28内又はその近くに埋め込まれた位置センサ29を更に含むことができる。任意選択的にかつ好ましくは、位置センサ29は、三次元(three-dimensional、3D)位置及び配向を感知するための3つの磁気コイルを含む磁気ベースの位置センサである。見られるように、遠位先端部28は更に、アセンブリ28の遠位縁41においてバスケットアセンブリ28に機械的に接続される、拡張可能アセンブリ28の拡張/圧潰ロッド42を含む。
【0022】
磁気ベースの位置センサ29は、所定の作業体積内に磁場を生成するように構成された複数の磁気コイル32を含む位置パッド25とともに動作し得る。カテーテル14の遠位先端部28のリアルタイム位置は、位置パッド25によって生成され、磁気ベースの位置センサ29によって感知される磁場に基づいて追跡され得る。磁気ベースの位置検知技術の詳細は、米国特許第5,5391,199号、同第5,443,489号、同第5,558,091号、同第6,172,499号、同第6,239,724号、同第6,332,089号、同第6,484,118号、同第6,618,612号、同第6,690,963号、同第6,788,967号、同第6,892,091号に記載される。
【0023】
システム10は、位置パッド25の位置基準及び電極26のインピーダンスベースの追跡を確立するために、患者23上の皮膚接触のために配置された1つ以上の電極パッチ38を含む。インピーダンスベースの追跡のために、電流が電極26に向けられ、電極皮膚パッチ38において検知され、それにより、各電極の位置を電極パッチ38を介して三角測量することができる。インピーダンスベースの位置追跡技術の詳細は、米国特許第7,536,218号、同第7,756,576号、同第7,848,787号、同第7,869,865号、及び同第8,456,182号に記載される。
【0024】
レコーダ11は、体表面ECG電極18を用いて取得された心臓信号21(例えば、電位図及びそれぞれの心臓組織位置)と、カテーテル14の電極26を用いて取得された心臓内電位図とを表示する。レコーダ11は、心臓の律動をペーシングするためのペーシング能力を含み得、及び/又は独立型ペーサに電気的に接続され得る。
【0025】
システム10は、アブレーションするように構成されたカテーテルの遠位先端部の1つ以上の電極にアブレーションエネルギーを伝達するように適合された、アブレーションエネルギー発生器50を含み得る。アブレーションエネルギー発生器50によって生成されるエネルギーは、不可逆エレクトロポレーション(IRE)をもたらすために使用され得るような単極性若しくは双極高電圧直流パルスを含む、高周波(RF)エネルギー若しくはパルス場アブレーション(PFA)エネルギー、又はそれらの組み合わせを含み得るが、それらに限定されない。
【0026】
患者インターフェースユニット(PIU)30は、カテーテル、電気生理学的機器、電源、及びワークステーション55の間の電気通信を確立してシステム10の動作を制御し、カテーテルからEP信号を受信するように構成されたインターフェースである。システム10の電気生理学的機器は、例えば、複数のカテーテルと、位置パッド25と、体表面ECG電極18と、電極パッチ38と、アブレーションエネルギー発生器50と、レコーダ11と、を含み得る。任意選択で、かつ好ましくは、PIU30は、カテーテル位置のリアルタイム計算を実施し、ECG計算を実行するための処理能力を追加的に含む。
【0027】
ワークステーション55は、メモリ57と、適切なオペレーティングソフトウェアがロードされたメモリ又は記憶装置を有するプロセッサ56ユニットと、ユーザインターフェース機能と、を含む。ワークステーション55は、任意選択で、(i)心内膜解剖学的構造を三次元(three-dimension、3D)でモデル化して、モデル又は解剖学的マップ20をディスプレイデバイス27上に表示するようにレンダリングすること、(ii)記録された心臓信号21からコンパイルされた活性化シーケンス(又は他のデータ)を、レンダリングされた解剖学的マップ20に重ね合わせられた代表的な視覚的表示又は画像で、ディスプレイデバイス27上に表示すること、(iii)心室内の複数のカテーテルのリアルタイムの位置及び配向を表示すること、及び(iv)アブレーションエネルギーが印加された場所などの関心部位をディスプレイデバイス27上に表示すること、を含む、複数の機能を提供し得る。システム10の要素を具現化する1つの市販製品は、Biosense Webster,Inc.、31A Technology Drive、Irvine、CA、92618から入手可能なCARTO(商標)3システムとして入手可能である。
【0028】
いくつかの実施例では、プロセッサ56は、典型的には、本明細書に記載の機能を実行するようにソフトウェアでプログラムされた汎用コンピュータを含む。ソフトウェアは、例えばネットワークを介して電子形式でコンピュータにダウンロードされてもよく、あるいは、代替的又は追加的に、磁気メモリ、光学メモリ、又は電子メモリなどの非一時的な有形媒体に提供及び/又は格納されてもよい。
【0029】
システム10のこの特定の構成は、本開示の実施例によって対処される特定の問題を示し、そのようなシステムの性能を向上させる際のこれらの実施例の応用を実証するために、例として示される。しかしながら、本開示の実施例は、この特定の種類の例示的なシステムに決して限定されるものではなく、本明細書に記載の原理は、他の種類の医療システムにも同様に適用されてもよい。例えば、OCTARAY(商標)カテーテル又はバスケットカテーテル等の他の多極カテーテルタイプが使用されてもよい。
【0030】
不整脈を示す心室位置の特定
図2は、本開示の一例による、不整脈の左心室位置に医師を誘導する方法を概略的に示す。医師が考慮する左心室上の任意の所与の位置で、統計分析方法又はMLモデルを適用するプロセッサは、サンプリングされたデータと記憶されたパターンとの間のより良好な相関を有する心室領域に向かう方向dを医師に提供する。
【0031】
図2では、LV(例えば、分析ゾーン212内で既に選択されている位置)の解剖学的表面202上の誘導経路210上の位置が与えられると、候補分析ゾーン214間を決定することによって、関心領域(すなわち、高い相関を示す)に向かう方向dが考慮される。一例では、十分な相関とは、マッピングカテーテル(例えば、カテーテル14)のチャネルのそれぞれが、定義された閾値を上回る相関を有することを意味する。そのような例では、チャネルの1つが低すぎる相関を有する場合であっても、医師は、これを改善するためにカテーテルを移動させる必要がある。別の例では、ある位置におけるチャネルにわたる平均相関が、定義された閾値を上回ることで十分である。
【0032】
上述のように、機械学習モデル(ML)を使用して決定を行うことができる。MLモデルは、(i)不整脈を示すことが知られている解剖学的標的(既知の解剖学的位置とも呼ばれる)に対する方向vai、(ii)候補分析ゾーン214間の最も高い平均相関を有するゾーンに対する方向vbj、及び(iii)ゾーン214における相関が所与の閾値未満である場合に候補分析ゾーン214内の最も低い相関を示す分析ゾーン内の位置に対する方向vcjに関するメトリックを含む損失関数fを含み、損失関数では逆に考慮される。そのような損失関数の一例は、である。
【0033】
【数1】
ここで、iは、LV内の疑わしい解剖学的領域(例えば、LV尖部222、LV付属器など)上で実行されるインデックスであり、jは、分析ゾーン214上で実行される。重みwは、MLモデルのパラメータである。
【0034】
経路210上の任意の所与の現在位置において、関心領域に向かう次の方向dは、非負の損失関数f(d)を最小化する方向として決定される。分析ゾーン212内の位置が、そのようなゾーンに誘導された医師によってアブレーションの標的として決定されると、上記のプロセッサ誘導は終了する。視覚補助は、以下に説明するように、相関マップ200の形態で提供することができる。
【0035】
地図誘導支援ツール
図3は、本開示の一例による、図2の誘導方法を実行している間の左心室の相関マップ220の構築を概略的に示す。図示の例では、MLモデルがLV解剖学的表面202上の経路210に沿って医師を誘導するので、プロセッサは、相関係数のマップ200を構築して、MLモデルによって構築された経路210を視覚化し、スケール218によって記述される領域203~206の形態で相関データの前進を視覚化する。マップは、医師を関心領域208(本開示では関心領域208とも呼ばれる)に向けて誘導するための視覚的補助ツールとして機能する。
【0036】
不整脈の心室位置に医師を誘導する方法
図4本開示の一例による、図2の誘導方法を概略的に示すフローチャートである。アルゴリズムは、提示された例によれば、信号取得ステップ402において、医師24が多電極カテーテル14を使用して左心室領域から信号を取得することから始まるプロセスを実行する。
【0037】
プロセッサ56は、分析ゾーン生成ステップ404において、カテーテルの現在位置に従って候補分析ゾーン214を生成する。
【0038】
相関分析ステップ406において、プロセッサ56は、図2のMLモデルを分析ゾーン214の各々に適用して、そのように考慮される関心領域に向かう経路210上の次の方向dを、最大の増加した相関を実証することによって計算する。
【0039】
次に、医師は、次の信号取得ステップ408において、カテーテルを計算された方向に沿って新しい位置に移動させる。
【0040】
相関計算ステップ410において、プロセッサ56は、チャネルの各々について新しい位置における相関を計算する。
【0041】
関心領域への到着をチェックするステップ412において、プロセッサ56は、経路210上の次の方向dによって誘導される新しい位置が不整脈惹起性としての関心領域であるかどうかをチェックする。これは、例えば、所与の閾値を上回る平均相関の値を達成すること、及び/又は所与の閾値を上回る最小相関の値を達成することによって行うことができる。
【0042】
答えが「はい」である場合、プロセスはタグ付けステップ414で終了し、プロセッサ56は現在位置を関心領域としてタグ付けする。答えが「いいえ」である場合、プロセスはステップ402に戻る。
【0043】
図4に示されている例示的なフローチャートは、純粋に概念を明確にする目的で選択されたものである。例えば、PCA等の他の分析方法を用いてもよい。接触力センサから電極と診断された組織との物理的接触の程度の指示を受信するなど、追加のステップが実行されてもよい。この工程及び他の可能な工程は、より単純化されたフローチャートを提供するために、本明細書における開示内容から意図的に省略されている。
【実施例0044】
(実施例1)
方法は、患者の心臓(12)の心室内の複数の位置から心臓信号(21)を受信することを含む。受信された信号は不整脈を示す基準信号と比較される。この比較に基づいて、受信された信号と基準信号との間の相関の増加を示し得る位置(208、222)に向かう方向が計算される。方向は、ユーザに対して示される。
【0045】
(実施例2)
比較することは、方向を推定するために統計分析方法を適用することを含む、例1に記載の方法。
【0046】
(実施例3)
比較することは、方向についての損失関数を含む機械学習(ML)モデルを適用することを含む、例1に記載の方法。
【0047】
(実施例4)
損失関数に、既知の解剖学的位置(222)に向かう方向に関する方向の損失項を含めることを含む、実施例1及び3のいずれかに記載の方法。
【0048】
(実施例5)
方向を計算することは、候補分析ゾーン(214)に向かう方向の中から方向を見つけることを含み、方向は損失関数を最小化する、実施例1及び3及び4のいずれかに記載の方法。
【0049】
(実施例6)
例1~5のいずれかに記載の方法であって、方向によって誘導される位置が不整脈惹起性として関心領域であるか否かをチェックし(208)、そのような場合、位置にタグ付けし、そうでない場合、追加の複数の位置から心臓信号を受信し、追加の心臓信号を分析することに基づいてユーザに次の方向を示すことを含む、方法。
【0050】
(実施例7)
位置が関心領域であるかどうかをチェックすることは、位置を含む分析ゾーン(214)にわたる相関の平均値が所与の閾値を上回るかどうか、及び/又は分析ゾーン(214)内の最小相関の値が所与の閾値を上回るかどうかをチェックすることを含む、請求項6に記載の方法。
【0051】
(実施例8)
方向及び次の方向が生成する経路(210)を視覚化し、相関データにおける前進を視覚化するように、相関のマップ(220)を構築することを含む、請求項6に記載の方法。
【0052】
(実施例9)
心臓信号を受信することが、カテーテル(14)を使用して取得された単極及び双極電位図の1つを受信することを含む、請求項1に記載の方法。
【0053】
(実施例10)
システム(10)は、インターフェース(30)と、プロセッサ(56)と、を含む。インターフェース(30)は、患者の心臓の心室内の複数の位置から心臓信号を受信するように構成されている。プロセッサ(560)は、(i)受信された信号を不整脈を示す基準信号と比較し、(ii)比較に基づいて、受信された信号と基準信号との間の相関の増加を示し得る位置(208、222)に向かう方向を計算し、(iii)方向をユーザに示すように構成されている。
【0054】
上に記載される実施例は例として挙げたものであり、本開示は本明細書の上記で特に図示及び記載されるものに限定されない点が理解されよう。むしろ、本開示の範囲は、本明細書の上記した様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の記載を読むと当業者に着想されるであろう、先行技術に開示されていないその変形及び修正を含む。
【0055】
〔実施の態様〕
(1) システムであって、
患者の心臓の心室内の複数の位置から心臓信号を受信するように構成されたインターフェースと、
プロセッサであって、
前記受信された信号を不整脈を示す基準信号と比較し、
前記比較に基づいて、前記受信された信号と前記基準信号との間の相関の増加を示し得る位置に向かう方向を計算し、
前記方向をユーザに対して示すように構成された、プロセッサと、を含む、システム。
(2) 前記プロセッサは、前記方向を推定するために統計分析方法を適用することによって比較するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記プロセッサは、前記方向についての損失関数を含む機械学習(ML)モデルを適用することによって比較するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(4) 前記プロセッサは、既知の解剖学的位置に向かう方向に関する方向の損失項を前記損失関数に含めるように更に構成されている、実施態様3に記載のシステム。
(5) 前記プロセッサは、候補分析ゾーンに向かう方向の中から前記損失関数を最小化する方向を見つけることによって前記方向を計算するように構成されている、実施態様3に記載のシステム。
【0056】
(6) 前記プロセッサは、前記方向によって誘導される前記位置が不整脈惹起性としての関心領域であるかどうかをチェックし、そのような場合、前記位置にタグ付けし、そうでない場合、追加の複数の位置から心臓信号を受信し、前記追加の心臓信号を分析することに基づいてユーザに次の方向を示すように更に構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(7) 前記プロセッサは、前記位置を含む分析ゾーンにわたる相関の平均値が所与の閾値を上回るかどうか、及び/又は前記分析ゾーン内の最小相関の値が所与の閾値を上回るかどうかをチェックすることによって、前記位置が関心領域であるかどうかをチェックするように構成されている、実施態様6に記載のシステム。
(8) 前記プロセッサは、前記方向及び次の方向が生成する経路を視覚化し、相関データにおける前進を視覚化するために、前記相関のマップを構築するように更に構成されている、実施態様6に記載のシステム。
(9) 前記インターフェースが、カテーテルを使用して取得された単極及び双極電位図の1つを受信することによって、前記心臓信号を受信するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(10) 方法であって、
患者の心臓の心室内の複数の位置から心臓信号を受信することと、
前記受信された信号を不整脈を示す基準信号と比較することと、
前記比較に基づいて、前記受信された信号と前記基準信号との間の相関の増加を示し得る位置に向かう方向を計算することと、
前記方向をユーザに対して示すことと、を含む、方法。
【0057】
(11) 比較することは、前記方向を推定するために統計分析方法を適用することを含む、実施態様10に記載の方法。
(12) 比較することは、前記方向についての損失関数を含む機械学習(ML)モデルを適用することを含む、実施態様10に記載の方法。
(13) 既知の解剖学的位置に向かう方向に関する方向の損失項を前記損失関数に含めることを含む、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記方向を計算することは、候補分析ゾーンに向かう方向の中から、前記損失関数を最小化する方向を見つけることを含む、実施態様12に記載の方法。
(15) 前記方向によって誘導される前記位置が不整脈惹起性としての関心領域であるか否かをチェックし、そのような場合、前記位置にタグ付けし、そうでない場合、追加の複数の位置から心臓信号を受信し、前記追加の心臓信号を分析することに基づいてユーザに次の方向を示すことを含む、実施態様10に記載の方法。
【0058】
(16) 前記位置が関心領域であるかどうかをチェックすることは、前記位置を含む分析ゾーンにわたる相関の平均値が所与の閾値を上回るかどうか、及び/又は前記分析ゾーン内の最小相関の値が所与の閾値を上回るかどうかをチェックすることを含む、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記方向及び次の方向が生成する経路を視覚化し、相関データにおける前進を視覚化するように、前記相関のマップを構築することを含む、実施態様15に記載の方法。
(18) 前記心臓信号を受信することが、カテーテルを使用して取得された単極及び双極電位図の1つを受信することを含む、実施態様10に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】