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特開2024-163121アンチセンスを使用した肝細胞癌治療用の方法および組成物
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  • 特開-アンチセンスを使用した肝細胞癌治療用の方法および組成物 図1A
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  • 特開-アンチセンスを使用した肝細胞癌治療用の方法および組成物 図1D
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163121
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】アンチセンスを使用した肝細胞癌治療用の方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20241114BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20241114BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N15/113 Z
C12N5/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024127685
(22)【出願日】2024-08-02
(62)【分割の表示】P 2021523858の分割
【原出願日】2019-10-31
(31)【優先権主張番号】62/755,064
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516241599
【氏名又は名称】トーマス・ジェファーソン・ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】フーパー、ダグラス クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリューズ、デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ボンジョモ、エミリー
(57)【要約】
【課題】本開示は、肝癌、とりわけ肝細胞癌の新しく改善された治療を提供する。
【解決手段】本開示は、インスリン様成長因子1受容体(Insulin-like Growth Factor 1 Receptor、IGF-1R)に対するアンチセンス(AS)核酸を使用した肝癌、とりわけ肝細胞癌治療用の組成物および方法に関連する。ASは、患者に全身投与され得、または自家癌細胞ワクチンを製造するために使用され得る。複数の実施形態において、ASは、腫瘍細胞と有効量のASとを含む移植可能な放射線照射されたバイオ拡散チャンバ内に提供される。チャンバは、放射線を照射され、対象の腹部に移植され、腫瘍を遠位から攻撃する免疫応答を刺激する。本明細書に開示される組成物および方法は、多くの異なる種類の肝癌の治療に使用され得る。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝癌を有する対象への移植用のバイオ拡散チャンバを調製する方法であって、
(a)前記対象から得られた腫瘍細胞であって、組織モルセレータを使用して前記対象から得られたものである前記腫瘍細胞をIGF-1R AS ODNの存在下、前記バイオ拡散チャンバ内にカプセル化することと、
(b)前記バイオ拡散チャンバに放射線を照射すること
とを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、肝細胞癌治療用の組成物および方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
原発性肝癌は、世界で最も一般的な癌の形態のうちの1つである。2つの主な肝癌のタイプがある;悪性肝癌としても知られる肝細胞癌(HCC)、および胆管細胞癌。
HCCは、現在世界の癌による死因の第3位であり、500,000人以上が冒されている。肝細胞癌、とりわけ進行したか、または再発肝細胞癌の場合の治療選択肢は限られている。手術および放射線治療は初期のステージの肝癌の選択肢であるが、進行したか、または再発肝細胞癌にはあまり効果的ではない。体系的な化学療法は特に効果的であるわけではなく、使用可能な薬物の数は非常に限られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、当分野において肝癌、とりわけ肝細胞癌の新しく改善された治療を得ることが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示はインスリン様成長因子1受容体(insulin-like growth factor receptor-1、IGF-1R)を標的にするアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(AS-ODN)が本明細書に記載される治療的アプローチにおいて使用されたとき、肝細胞癌を含む肝癌を治療する対象内応答を効果的に刺激することを実証する。特定の態様において、方法は、自家癌細胞ワクチンの一部として単独で、または任意選択的に、全身投与と共に患者の肝癌治療に有効である。好ましいアプローチにおいて、本明細書に開示される方法は単剤療法として有効な肝癌療法を提供する。すなわち化学療法なしで、かつ、放射線治療なしで。
【0005】
複数の実施形態において、本開示は、肝細胞癌を含む肝癌を患う対象への移植用のバイオ拡散チャンバを提供し、バイオ拡散チャンバは、放射線を照射された腫瘍細胞および放射線を照射されたインスリン様成長因子1受容体のアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(IGF-1R AS ODN)を含む。複数の実施形態において、腫瘍細胞は対象の切除部位から除去される。
【0006】
複数の実施形態において、本開示は放射線を照射されたIGF-1R AS ODNと、放射線を照射され接着で富化され細片化された腫瘍細胞とを含む拡散チャンバを提供し、バイオ拡散チャンバは、それらの細胞に対して不透過性でかつIGF-1R AS ODNに対して透過性であるメンブレンを含む。
【0007】
複数の実施形態において、腫瘍細胞は、内視鏡装置を使用して切除部位から除去される。さらなる実施形態において、腫瘍細胞は、組織モルセレータを使用して切除部位から除去される。他の実施形態において、組織モルセレータは静止外部カニューレ内に高速往復内部カニューレを含む。外部カニューレは、側面開口部を含み得、腫瘍細胞は電子制御可変吸引によって側面開口部に引き込まれる。複数の実施形態において、組織モルセレータは切除部位において熱を発生しない。さらなる実施形態において、腫瘍細胞は、バイオ拡散チャンバ内に配置される前にネスチンの発現で富化される。いくつかの実施形態において、チャンバの移植は対象内の腫瘍の再増殖を抑制する。いくつかの実施形態において、チャンバの移植は、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間または少なくとも36ヶ月間、腫瘍の再増殖を抑制する。
【0008】
追加の実施形態において、本開示は肝細胞癌を含む肝癌を患う対象への移植用のバイオ拡散チャンバの調製法を提供し、本方法はIGF-1R AS ODNの存在下でバイオ拡散チャンバ内に腫瘍細胞を配置することと、バイオ拡散チャンバに放射線を照射することとを含み、その腫瘍細胞は、切除部位において熱を発生しない組織モルセレータを使用して対象の切除部位から除去される。通常、多数のチャンバが使用される。例えば、約10個のチャンバ、または約20個のチャンバが使用され得る。有利には、最適な抗腫瘍応答は、チャンバ内の細胞数が約750,000~約1,250,000個であるときに得られ、例えば20個のチャンバが移植された場合チャンバあたり約1,000,000個である。
【0009】
いくつかの実施形態において、組織モルセレータは内視鏡装置である。さらなる実施形態において、組織モルセレータは静止外部カニューレ内に高速往復内部カニューレを含む。追加の実施形態において、外部カニューレは側面開口部を含み、腫瘍細胞は電子制御可変吸引によって側面開口部に引き込まれる。
【0010】
いくつかの実施形態において、本開示は癌細胞(例えば、肝細胞癌細胞)とアンチセンス(例えば、IGF-1R AS ODN)とを含む組成物を提供する。
複数の実施形態において、本開示は肝細胞癌を含む肝癌を患う対象を治療する方法を提供し、本方法は1つ以上のバイオ拡散チャンバを対象に移植することを含み、1つ以上のバイオ拡散チャンバは放射線を照射された腫瘍細胞、放射線を照射されたインスリン様成長因子1受容体のアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(IGF-1R AS ODN)を含み、その腫瘍細胞は切除部位において熱を発生しない組織モルセレータを使用して対象の切除部位から除去される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】実施例2に記載のチャンバ免疫化実験の結果を示す図。腫瘍細胞(Hepa1-6)注射後4、7、12、15、19、22、26および29日目における腫瘍体積(mm)を示す。
図1B】実施例2に記載のチャンバ免疫化実験の結果を示す図。Hepa1-6-特異的な全IgGレベルを示す。
図1C】実施例2に記載のチャンバ免疫化実験の結果を示す図。Hepa1-6-特異的なIgG1レベルを示す。
図1D】実施例2に記載のチャンバ免疫化実験の結果を示す図。0日目および28日目におけるHepa1-6-特異的なIgG2Aレベルを示す。点線の横線は、該当する場合はバックグラウンドであるプレートを表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、インスリン様成長因子1受容体(IGF-1R)に対するアンチセンス核酸を使用して肝細胞癌を含む肝癌を治療するための組成物および方法に関連する。本開示はまた、腫瘍細胞とIGF-1Rに対するアンチセンス核酸とを含む、少なくとも1つの移植可能な放射線を照射されたバイオ拡散チャンバ(参照によってその全体が本明細書に援用される米国特許第6,541,036号明細書およびPCT/US2016/026970を参照されたい)で対象を治療することによる肝癌を治療するための組成物および方法に関連する。
【0013】
定義
本明細書に定義されない全ての用語は、その共通の技術認識されている意味を有する。
本明細書に使用されるとき、「1つの(“a”、“an”)」および「その(“the”)」などの用語は、文脈が明らかにその他要求しなければ、単数および複数の指示対象を含む。
【0014】
本明細書に使用されるとき、用語「約」は、数値の前に使用される場合、その値プラスマイナス10%の範囲を示す。例えば、「約100」は、90および110を包含する。
本明細書に使用されるとき、用語「自家の」は、その同一の個人から得られた細胞または組織を意味する。
【0015】
本明細書に使用されるとき、用語「自家癌細胞ワクチン」は、個人から腫瘍細胞を単離すること、および、エクスビボでこれらの腫瘍細胞を処理することによって部分的に製造される治療剤を表す。細胞は、その後、その腫瘍細胞が単離された個体に再投与される。複数の実施形態において、自家癌細胞ワクチンは腫瘍細胞に加えて、緩衝液および/またはアンチセンス核酸などの追加の成分を含み得る。複数の実施形態において、「自家癌細胞ワクチン」は、腫瘍細胞と1つ以上の追加の成分とを含むバイオ拡散チャンバに言及し得る。ある態様において、「自家癌細胞ワクチン」は「完全に配合されたチャンバ」であり得、また本明細書において「完全に配合されたバイオ拡散チャンバ」として表される。
【0016】
本明細書に使用されるとき、用語「完全に配合されたチャンバ」または「完全に配合されたバイオ拡散チャンバ」は、当該チャンバ内にカプセル化される前に第1の量のIGF-1R AS ODNと処理されることもありされないこともある自家腫瘍細胞および腫瘍微小環境(TME)内に含まれる他の細胞を含むバイオ拡散チャンバである。細胞は、外因的な追加の第2の量、例えば少なくとも2μg、少なくとも4μg、少なくとも6μg、少なくとも8μg、または少なくとも10μgのIGF-1R AS ODNとカプセル化され、その後5Gyのガンマ線でチャンバは照射される。
【0017】
本明細書に使用されるとき、用語「小分子」は、核酸、ペプチド、タンパク質、および他の化学物質(例えば、細胞によって産生されるサイトカインおよび成長ホルモンなど)を含むが、細胞、エキソソーム、または微小胞は含まない。
【0018】
本明細書に使用されるとき、用語「IGF-1R発現を標的にすること」または「IGF-1R発現を標的にする」は、IGF-1Rに結合するように設計された配列を有するアンチセンス核酸を投与することを表す。
【0019】
本明細書に使用されるとき、用語「全身投与」は、対象の体全体に物質の送達を達成することを表す。典型的な全身投与経路は、非経口投与、経皮吸収投与、腹腔内投与、静脈内投与、皮下投与、および、筋肉内投与を含む。
【0020】
他の投与ルートは、経口投与、経鼻投与、局所投与、眼内投与、バッカル投与、舌下投与、膣内投与、肝内投与、心臓内投与、膵臓内投与、吸入による投与、および移植ポンプを介する投与を含む。
【0021】
肝癌
2つの主な肝癌のタイプがある;悪性肝癌としても知られる肝細胞癌(HCC)、および胆管細胞癌。
【0022】
HCCは原発性肝癌の最も一般的な形態であり、肝細胞内で発生する。HCCはほとんど男性で生じる。HCCの症候は黄疸、腹痛、原因不明の体重減少、肝臓の肥大、疲労、吐き気、嘔吐、背中の痛み、かゆみ、発熱を含み得る。
【0023】
HCCの病因は完全には分かっていない。多くの証拠によって、DNA損傷が生じることによって、DNAメチル化の調節解除、染色体の不安定性、癌原遺伝子の活性化、および腫瘍抑制遺伝子の不活性化につながるという考えが支持されている。RASシグナル伝達経路が活性化され、これが細胞増殖を活性化するように働く。
【0024】
HCCはたいてい、慢性肝疾患の状況で発生し、多くの場合、特に経済的に発展した国で肝硬変を有する患者で見られる。HCCの顕著なリスク因子は、慢性ウイルス性肝炎BまたはCおよびアルコール関連肝臓疾患を含む。任意の原因の肝硬変は、HCCのリスクを増大させる。新たな脅威は、したがって、非アルコール性肝疾患および肝硬変に罹患しやすくする肥満の流行に起因する。最近の研究によって、HCCの年間累積発生率は、C型肝炎肝硬変のある患者で4.0%/年であるのに比べて、脂肪肝疾患に副次的な肝硬変のある患者で2.6%/年であることが示された。
【0025】
HCCのリスク因子は、チロシン血症およびヘモクロマトーシスなどの遺伝性疾患、2型糖尿病、家族歴、アルコールの大量摂取、免疫力低下、肥満、男性であること、喫煙、およびヒ素への曝露を含む。発展途上国では、特に熱帯および亜熱帯気候では、アフラトキシン曝露はHCCの促進因子である。アフラトキシンは、土壌中や、不適切に保管されたナッツ、シリアル、その他の農産物の汚染物質として通常存在するコウジカビ属の菌類によって作られるマイコトキシンである。
【0026】
対照的に、胆管細胞癌(CCA)または胆管癌は、肝臓内の小胆管で発生する。このタイプの癌は女性でより一般的である。それらの解剖学的位置によると、CCAは一般に肝内および肝外腫瘍に分類され、後者の実体は、クラッキン腫瘍とも呼ばれる肺門周囲CCAと遠位腫瘍とにさらに細分化される。CCAの大部分は散発的に生じるが、確立されたリスク因子は、肝吸虫の侵入(例えば、タイ肝吸虫(Opisthorchis viverrini)または肝ジストマ(Clonorchis sinensis))および原発性硬化性胆管炎を含む。
【0027】
腫瘍が小さく、肝臓の小さい部分を占めるとき、肝臓のその部分は外科的に除去することができる(部分肝切除)。しかしながら、肝癌を有する多くの人は肝硬変を有する。これは、肝切除は、手術後に肝臓が必要な機能を果たすために十分な、健康な組織を残す必要があることを意味する。したがって、部分肝切除は、そうでなければ健康な肝機能を有する人のためのみとみなされる。この手術は、癌が肝臓の他の部分、または身体の他の器官に広がってしまったときは選択肢ではない。
【0028】
肝移植はまた、肝癌の治療にも使用される。しかしながら、免疫系は新たな器官を拒絶し得、異物として攻撃し、移植を行う機会が限られる。新たな肝臓を適合させるための免疫系を抑制する薬物は、深刻な感染症および、時には、既に転移した腫瘍が広がることにもつながり得る。
【0029】
進行肝癌は、極めて低い生存率を有する。これらの症例において癌の症候を治療し、腫瘍の増殖を遅くするために使用される治療は、切除療法、放射線治療、および化学療法を含む。
【0030】
アンチセンス分子
アンチセンス分子は、ワトソンおよびクリック塩基対合則によってmRNAの標的相補的配列に結合することによって機能する核酸である。標的mRNAの翻訳は、相補的ならせん間でハイブリダイゼーションが起こる場合、能動的および/または受動的な機序によって抑制される。受動的な機序において、mRNAおよび外因性のヌクレオチド配列との間のハイブリダイゼーションは、リボソーム複合体がそのメッセージを読むことを防ぐ2本鎖形成につながる。能動的な機序において、ハイブリダイゼーションは、RNaseHの結合を促進し、RNaseHはRNAを破壊するがアンチセンスをそのままにし、別の相補的なmRNA標的とハイブリダイズする。いずれかの、または両方の機序により、悪性の表現型に寄与する、または持続するタンパク質の翻訳が抑制される。治療剤としては、アンチセンス分子は、はるかに選択的であり、結果として、従来の薬物に比べて、より効果的でより有毒でない。
【0031】
本明細書に開示される方法および組成物は、癌治療のためのアンチセンス分子の使用を含む。典型的には、アンチセンス分子は、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(AS-ODN)である。いくつかの実施形態において、アンチセンス分子は、修飾されたリン酸骨格を含む。ある態様において、リン酸骨格修飾はアンチセンスをヌクレアーゼ分解に対してより耐性があるようにする。ある実施形態において、修飾はロックド・アンチセンス(locked antisense)である。他の実施形態において、修飾は、ホスホロチオエート結合である。ある態様において、アンチセンスは、1つ以上のホスホロチオエート結合を含む。ある実施形態において、ホスホロチオエート結合は、ヌクレアーゼ耐性を与え、それによってその半減期を増加させることによってアンチセンス分子を安定化する。いくつかの実施形態において、アンチセンスは、部分的にホスホロチオエート結合され得る。例えば、約1%まで、約3%まで、約5%まで、約10%まで、約20%まで、約30%まで、約40%まで、約50%まで、約60%まで、約70%まで、約80%まで、約90%まで、約95%まで、または約99%までのアンチセンスは、ホスホロチオエート結合され得る。いくつかの実施形態において、アンチセンスは、完全にホスホロチオエート結合する。他の実施形態において、ホスホロチオエート結合は、ホスホジエステル結合と代替し得る。ある実施形態において、アンチセンスは、少なくとも1つの末端ホスホロチオエート1リン酸を有する。
【0032】
いくつかの実施形態において、アンチセンス分子は、1つ以上のCpGモチーフを含む。他の実施形態において、アンチセンス分子は、CpGモチーフを含まない。ある態様において、1つ以上のCpGモチーフはメチル化されている。他の態様において、1つ以上のCpGモチーフはメチル化されていない。ある実施形態において、アンチセンス分子が対象に投与されたとき、その1つ以上のメチル化されていないCpGモチーフは自然免疫応答を誘発する。いくつかの態様において、自然免疫応答は、メチル化されていないCpG-含有アンチセンス分子がToll様受容体(TLR)に結合することによって媒介される。
【0033】
ある実施形態において、アンチセンス分子は、少なくとも1つの末端修飾または「キャップ」を含む。キャップは5’および/または3’-キャップ構造であり得る。用語「キャップ」または「末端-キャップ」は、オリゴヌクレオチドのいずれかの末端(末端リボヌクレオチドに関して)における化学修飾を含み、5’端の最後の2つのヌクレオチド間および3’端の最後の2つのヌクレオチド間の結合における修飾を含む。キャップ構造は、標的配列または細胞内機構との分子相互作用を損なうことなく、アンチセンス分子のエキソヌクレアーゼに対する耐性を増加させ得る。そのような修飾は、インビトロまたはインビボでのそれらの増加した効力に基づいて選択され得る。キャップは、5’-末端(5’-キャップ)または3’-末端(3’-キャップ)に存在することができるか、または、両端に存在することができる。ある実施形態において、5’-および/または3’-キャップは、ホスホロチオエート1リン酸、脱塩基残基(部分)、ホスホロチオエート結合、4’-チオヌクレオチド、炭素環式ヌクレオチド、ホスホロジチオエート結合、反転ヌクレオチドまたは反転脱塩基部分(2’-3’または3’-3’)、ホスホロジチオエート1リン酸、およびメチルホスホン酸部分から独立して選択される。ホスホロチオエートまたはホスホロジチオエート結合は、キャップ構造の部分である場合、一般に5’端の2つの末端ヌクレオチド間および3’端の2つの末端ヌクレオチド間に位置する。
【0034】
好ましい複数の実施形態において、アンチセンス分子は、インスリン様成長因子1受容体(Insulin like Growth Factor 1 Receptor、IGF-1R)の発現を標的にする。IGF-1Rは、インスリン受容体と70%の相同性を共有するチロシンキナーゼ細胞表面受容体である。そのリガンド(IGF-I、IGF-IIおよびインスリン)によって活性化されたとき、IGF-1Rは増殖、形質転換、および細胞生存を含む幅広い細胞機能を調節する。IGF-1Rは、通常の増殖には絶対要件ではないが、悪性組織で起こり得る足場に依存しない条件における増殖には必須である。腫瘍におけるIGF-1Rの役割のレビューは、Basergaら、Vitamins and Hormones、53:65-98(1997)において提供され、それは本明細書に参照によりその全体が援用される。
【0035】
ある実施形態において、アンチセンス分子は成長因子または例えば、IGF-1Rなどの成長因子受容体のDNAまたはRNAに対するオリゴヌクレオチドである。
ある実施形態において、アンチセンスは、IGF-1R(IGF-1R AS ODN)に対するデオキシヌクレオチドである。IGF-1Rの全長コーディング配列は、配列番号15として提供される(例えば、参照によってその全体が援用されるPCT/US2016/26970を参照)。
【0036】
ある実施形態において、アンチセンス分子は、IGF-1Rシグナル配列と相補的であるヌクレオチド配列を含み、RNAまたはDNAのいずれかを含む。IGF-1Rのシグナル配列は30アミノ酸配列である。他の実施形態において、アンチセンス分子は、IGF-1Rシグナル配列の部分に相補的であるヌクレオチド配列を含み、RNAまたはDNAのいずれかを含む。いくつかの実施形態において、アンチセンス分子は、IGF-1Rのコドン1-309に相補的であるヌクレオチド配列を含み、RNAまたはDNAのいずれかを含む。他の実施形態において、アンチセンス分子は、IGF-1Rのコドン1-309の部分に相補的であるヌクレオチド配列を含み、RNAまたはDNAのいずれかを含む。
【0037】
ある実施形態において、IGF-1R AS ODNは、少なくとも約5ヌクレオチド、少なくとも約10ヌクレオチド、少なくとも約15ヌクレオチド、少なくとも約20ヌクレオチド、少なくとも約25ヌクレオチド、少なくとも約30ヌクレオチド、少なくとも約35ヌクレオチド、少なくとも約40ヌクレオチド、少なくとも約45ヌクレオチド、または少なくとも約50ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態において、IGF-1R AS ODNは、約15ヌクレオチドから約22ヌクレオチドの長さである。ある態様において、IGF-1R AS ODNは、約18ヌクレオチドの長さである。
【0038】
ある実施形態において、IGF-1R AS ODNは18℃で2次構造を形成するが、約37℃では2次構造を形成しない。他の実施形態において、IGF-1R AS ODNは、約18℃で、または約37℃で2次構造を形成しない。さらに他の実施形態において、IGF-1R AS ODNは、いかなる温度においても2次構造を形成しない。他の実施形態において、IGF-1R AS ODNは37℃で2次構造を形成しない。特定の実施形態において、2次構造はヘアピンループ構造である。
【0039】
いくつかの態様において、IGF-1R AS ODNは、配列番号1、またはその断片のヌクレオチド配列を含む。ある実施形態において、IGF-1R AS ODNは、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約98%、または100%同一性を配列番号1、またはその断片と有し得る。いくつかの実施形態において、IGF-1R AS ODNは、1つ以上のホスホロチオエート結合を含む(例えば、配列番号16を参照)。
【0040】
ある態様において、IGF-1R AS ODNは、配列番号1からなる。NOBELは、ホスホロチオエート骨格およびIGF-1R遺伝子のコドン2~7と相補的な配列を有する18-merオリゴデオキシヌクレオチドである。したがって、NOBELは、IGF-1Rに対するアンチセンスオリゴヌクレオチド(IGF-1R AS ODN)である。5’端において、IGF-1R遺伝子の相補的な配列として由来するNOBEL配列は、
5’-TCCTCCGGAGCCAGACTT-3’(配列番号1)
である。
【0041】
NOBELは安定な保存寿命を有し、そのホスホロチオエート骨格によりヌクレアーゼ分解に耐性がある。NOBELの投与は、当業者に知られているオリゴデオキシヌクレオチドの導入に関する標準的な方法のいずれかにおいて提供することができる。有利には、NOBELを含む本明細書に開示されるAS ODNは、毒性がほとんど/全くなく投与され得る。マウス試験(尾静脈中に40μg)に基づいた約2g/kg(スケール調整された)レベルでさえ、毒性の問題を示さなかった。NOBELは、当業者に知られる一般的な手順に従って製造することができる。
【0042】
アンチセンス分子、例えば配列番号1のNOBEL配列は、参照によってその全体が本明細書に援用される米国特許第9,744,187号明細書において開示される1つ以上のp-エトキシ骨格修飾をも含み得る。いくつかの実施形態において、アンチセンス分子の核酸骨格は、少なくとも1つのp-エトキシ骨格結合を含む。例えば、約1%まで、約3%まで、約5%まで、約10%まで、約20%まで、約30%まで、約40%まで、約50%まで、約60%まで、約70%まで、約80%まで、約90%まで、約95%まで、または約99%までのアンチセンス分子は、p-エトキシ結合され得る。残りの結合は、ホスホジエステル結合またはホスホロチオエート結合またはその組み合わせであり得る。好ましい一実施形態において、各オリゴヌクレオチドにおける50%~80%のリン酸骨格結合は、p-エトキシ骨格結合であり、各オリゴヌクレオチドにおける20%~50%のリン酸骨格結合は、ホスホジエステル骨格結合である。
【0043】
様々なIGF-1Rアンチセンス配列は、NOBEL配列の多様式効果のうちのいくつかまたはすべてにおいて生物活性がある。18-merのNOBEL配列は、IGF-1R受容体の下方制御活性およびTLRアゴニスト活性の両方を有し、マウスにおけるさらなる実験により、両方の活性がインビボでの抗腫瘍免疫活性に必要であることが示唆された。AS ODN分子は、抗腫瘍活性を有するが、相補的なセンス配列はCpGモチーフをまた有するが、抗腫瘍活性を有しない。
【0044】
ある実施形態において、アンチセンスの配列は、表1において示されるように、配列番号1~14からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、アンチセンスは、配列番号1~14のうちの1つ以上と90%配列同一性を有する。いくつかの実施形態において、アンチセンスは、配列番号1~14のうちの1つ以上と80%配列同一性を有する。いくつかの実施形態において、アンチセンス配列番号1~14のうちの1つ以上と70%配列同一性を有する。
【0045】
【表1】

ある実施形態において、IGF-1R AS ODNは、配列番号1~14、またはその断片のうちのいずれか1つのヌクレオチド配列を含む。ある実施形態において、IGF-1R AS ODNは、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約98%、または100%同一性を配列番号1~14、またはその断片と有し得る。
【0046】
いくつかの実施形態において、アンチセンス分子は、細胞内のIGF-1R経路の下流の遺伝子の発現を下方制御する。ある態様において、下流の遺伝子はヘキソキナーゼ(Hex II)である。いくつかの実施形態において、アンチセンス分子は、細胞内のハウス・キーピング遺伝子の発現を下方制御する。いくつかの態様において、ハウス・キーピング遺伝子は、L13である。
【0047】
ある態様において、IGF-1R AS ODNは、化学的に合成される。ある実施形態において、IGF-1R AS ODNは固相有機合成によって製造される。いくつかの態様において、IGF-1R AS ODNの合成は、フロースルー技術を使用した密閉化学カラムリアクタを備えたシンセサイザ内において実施される。いくつかの実施形態において、固体担体上における各合成サイクルシーケンスは、全長のIGF-1R AS
ODNが得られるまで順次に実施される複数のステップからなる。ある実施形態において、IGF-1R AS ODNは、液体形態で貯蔵される。他の実施形態において、IGF-1R AS ODNは貯蔵前に凍結乾燥される。いくつかの実施形態において、凍結乾燥されたIGF-1R AS ODNは、使用前に水に溶解される。他の実施形態において、凍結乾燥されたIGF-1R AS ODNは、使用前に有機溶媒に溶解される。さらに他の実施形態において、凍結乾燥されたIGF-1R AS ODNは、医薬組成物に製剤される。いくつかの態様において医薬組成物は、液体医薬組成物である。他の態様において、医薬組成物は、固体医薬組成物である。追加のアンチセンス核酸はまた、参照によりその全体が本明細書に援用される米国特許第2017/0056430号明細書に記載される。
【0048】
自家癌細胞ワクチン
導入
免疫療法は、現在、1つの共通の細胞抗原を有する血液学的悪性腫瘍を標的にするために使用される。残念なことに、固形腫瘍ははるかに複雑であり、同定不能な数の腫瘍特異的な標的を有する悪性状態への遺伝的変化のエピジェネティックな進行を表す。さらに困難なことに、WHO診断の癌群内には、腫瘍表現型における顕著な変動が存在する。自家細胞ワクチンは、全てのそのような変動および全てのそのような標的を包含し得、固形腫瘍癌のための理想的な対象特異的な免疫療法になるであろう。しかしながら、連続的な継代は腫瘍表現型を変え、したがって一連の腫瘍特異的な抗原を減少させるので、自家癌細胞ワクチンは初代細胞培養から得ることはできない。これには、各継代において実現しがたいロットリリース認定も必要になる。本開示は、新たに切除され、細片化された腫瘍細胞をプレーティングし、デポ(depot)抗原として24時間以内にそれらを再移植することによってこれらの懸念を除去する。ある態様において、本明細書において達成された優れた結果は、本明細書に記載されている他の詳細の中で適切な数の細胞がチャンバ内に存在することを保証することによって得られる。
【0049】
以前の研究は、自家腫瘍細胞の代わりに抗原提示細胞の使用を通じて自家細胞ワクチンを設計していた。このパラダイムにおいて、対象の単球を治療前の血漿ロイコフェレーシス(leukopheresis)から回収し、エクスビボで自家樹状細胞(DC)に分化させる。その後、樹状細胞をDC活性化/成熟を誘導する対象の腫瘍の粗溶解物に提示し、後の時点で、腫瘍抗原でクロスプライムされたその成熟した樹状細胞をDCワクチンとして対象内に注射した。しかしながら、エクスビボでの分化は、インビボでのみ起こるいくつかの重要な刺激成分が欠落している。それに加えて、造血前駆体からのDCの分化は、高価な施設での労働集約的な細胞処理による広範なインビトロ操作を必要とする。本開示は、内因性のDC成熟プロセスと適切な免疫応答の発生を促進する免疫調節性および免疫刺激性アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(AS-ODN)とを提供することによってこれらの懸念を回避する。より具体的には、本開示は、患者由来の分散された腫瘍細胞と放射線を照射されたアンチセンス分子とを含むバイオ拡散チャンバを提供し、バイオ拡散チャンバは、治療有効期間、その患者に移植される。理論に縛られることなしに、放射線を照射された腫瘍細胞と、アンチセンスと、バイオ拡散チャンバとの組み合わせは局所免疫応答をシミュレート(simulate)するように協調して作用し、M2細胞を減少または排除することによって免疫系の低下を防ぎ、免疫応答を増強することが考えられる。
【0050】
したがって、本開示によって、新たに切除された腫瘍細胞とIGF-1R AS ODNとを含む放射線を照射された、移植可能なバイオ拡散チャンバは、肝癌免疫療法のための有効な、対象特異的自家細胞ワクチンとして安全に機能することが示された。したがって、対象における腫瘍細胞を選択的に標的にする免疫応答を装備するためのクレームされた移植可能なバイオ拡散チャンバの使用は、肝癌、とりわけ肝細胞癌の治療のための新しく重要なアプローチを提供する。
【0051】
バイオ拡散チャンバ
代表的な拡散チャンバは、第1端および第2端の2つの端を有するチャンババレルを含む。複数の実施形態において、バイオ拡散チャンバは、Millipore Corporationによって製造されるDuropore membraneなどの多孔性、細胞不透過性メンブレンによって両側がキャップされた小さなリングである。任意選択的に、両端のうちの一方は、チャンバ本体の部分として閉鎖され、片方の端だけを開いたままにして、多孔性メンブレンを使用して密閉され得る。メンブレンは、強くて可撓性があり、化学処理に耐えることができるプラスチック、テフロン(登録商標)、ポリエステル、または任意の不活性材料から作られ得る。チャンバは、限定するものではないが、プラスチック、テフロン(登録商標)、ルーサイト、チタン、プレキシガラスまたは、ヒトに対して無毒であり、十分に耐えられる不活性材料などの任意の物質から作られ得る。それに加えて、チャンバは、滅菌を耐えられるようにすべきである。いくつかの態様において、拡散チャンバは、使用前にエチレンオキシドで滅菌される。他の好適なチャンバは、2018年1月24日に出願された米国仮出願第62/621,295号明細書、米国特許第6,541,036号明細書、PCT/US16/26970、および、米国特許第5,714,170号明細書において記載され、それらは参照によってそれらの全体が本明細書に援用される。
【0052】
ある実施形態において、メンブレンは小分子を通過させるが、細胞は通過させない(すなわち、細胞はチャンバを出入り出来ない)。いくつかの態様において、メンブレンの孔の直径は、核酸および他の化学物質(例えば、細胞によって産生されるサイトカインなど)をチャンバから拡散させるが、チャンバと、チャンバが移植されている対象との間で細胞を通過させない。しかしながら、チャンバと、チャンバが移植されている対象との間で細胞を通過させない任意のチャンバを含む、本開示において有用なバイオ拡散チャンバは、チャンバと対象との間で因子の交換および通過を可能にすることを提供する。したがって、ある態様において、孔径は、体積が100μmを超える物質のチャンバ内外の通過を防ぐカットオフを有する。いくつかの実施形態において、メンブレンの孔は、約0.25μm以下の直径を有する。例えば、孔は約0.1μmの直径を有し得る。特定の態様において、孔は直径0.1μm~0.25μmの範囲である。参照によってその全体が本明細書に援用される、Langeら、J.Immunol.、1994、153、205-211およびLanzaら、Transplantation、1994、57、1371-1375も参照されたい。この孔の直径は、チャンバ内外の細胞の通過を防ぐ。ある実施形態において、拡散チャンバは、0.1μmの孔径の親水性のDuraporeメンブレン(マサチューセッツ州ベッドフォードのミリポア社)を有する14mmのルーサイトリングから構築される。
【0053】
ある実施形態において、バイオ拡散チャンバは、IGF-1R AS ODNをチャンバの外に拡散させるメンブレンを含む。いくつかの実施形態において、約50%のIGF-1R AS ODNは約12時間内にチャンバの外に拡散し、約60%のIGF-1R
AS ODNは約24時間内にチャンバの外に拡散し、約80%のIGF-1R AS
ODNは約48時間内にチャンバの外に拡散し、および/または約100%のIGF-1R AS ODNは、約50時間内にチャンバの外に拡散する。
【0054】
例示的なアプローチにおいて、バイオ拡散チャンバをアセンブルするために、第1多孔性メンブレンは、密封を作るために接着剤および圧力を使用して第1拡散チャンバの片側に取り付けられる。第2多孔性メンブレンは、第2拡散チャンバリングに同様に取り付けられる。メンブレンはまた、より密封を提供し得るゴムガスケットで所定の位置に固定できる。拡散チャンバリングを一晩乾燥させた(最小8時間)。その後、接着剤を使用して第1拡散チャンバリングおよび第2拡散チャンバリングを互いに取り付け、一晩乾燥させた(最小8時間)。好ましい一実施形態において、第1チャンバリングおよび第2チャンバリングの接合プロセスは、2つのリング間で接着を容易にするために、2ジクロロエタンを溶媒として使用することを含む。代替的なアプローチにおいて、チャンバは、多孔性メンブレンを含む側を1つのみ有し得る。
【0055】
チャンバのバレル部分上において、キャップによって覆われ得る1つ以上の開口部(例えば、ポート)が提供され、チャンバが移植されると、キャップは対象の身体の外側からアクセスされ、したがって、拡散チャンバを再充填することができる。開口部は、汚染することなく、かつ対象を傷つけることなく、内容物の多数かつ連続したサンプリングを可能にし、したがって対象に対して実行される移植手順の数を大幅に低減する。患者への移植前に、1つ以上の開口部は、ボーンワックス、ポートプラグまたは、例えば、PMMAから作られたキャップで密閉され得る。キャップはセルフシールゴムのねじ込むタイプであり、開口部に適合され得る。いくつかの構成において、拡散チャンバは、2つ以上の注入開口部またはポートを含み得る。チャンバ内容物のサンプリングは、対象の身体の外側のキャップを取り外して一般的なニードルおよびシリンジを挿入することによって、開口部にアクセスすることによって行うことができる。いくつかの実施形態において、チャンバは取り外し装置をさらに含み得る。そのような装置は患者からのチャンバの取り外しを容易にする。
【0056】
複数の実施形態において、チャンバは、腫瘍抗原が治療的な宿主免疫応答を促進する目的のためにチャンバから拡散するように設計された抗原デポとして役立つ。外因性のIGF-1R AS ODNおよびエクスビボでの放射線の照射は、炎症誘発性応答を促進する。この配合は、臨床的およびX線撮影の改善、プロトコルでの生存期間の延長に関連し、出願人らが腫瘍免疫効果を誘導または向上させると解釈する外因性の医薬品有効成分(API)および放射線を含む新規の自家細胞ワクチンを表す。さらにまた、低濃度のIGF-1R
AS ODNの添加は、炎症誘発性応答に重要である。
【0057】
ある実施形態において、本開示は、癌を患う対象への移植のために、(a)腫瘍細胞、および、(b)有効量のアンチセンス分子を含むバイオ拡散チャンバを提供する。他の実施形態において(a)腫瘍細胞と有効量のアンチセンス核酸とを含むバイオ拡散チャンバを得ることと、(b)バイオ拡散チャンバおよび内容物に放射線を照射することと、(c)放射線を照射されたバイオ拡散チャンバを治療有効期間中、対象に移植することとを含む、対象の癌治療方法が提供される。
【0058】
ある実施形態において、IGF-1R AS ODNは、約0.5μg~約10μgの範囲の量でバイオ拡散チャンバ内に存在する。ある態様において、IGF-1R AS ODNは、チャンバごとに約1μg~約5μgの範囲、またはチャンバごとに約2μg~4μgの範囲の量で存在する。ある実施形態において、IGF-1R AS ODNは、約0.5μg~約10μgの範囲の量でバイオ拡散チャンバ内に存在する。ある態様において、IGF-1R AS ODNは、チャンバごとに約1μg~約5μgの範囲、またはチャンバごとに約2μg~約4μgの範囲の量で存在する。例えば、このIGF-1Rは、チャンバごとに約1、約1.5、約2、約2.5、約3、約3.5、約4、約4.5、または約5μgの量で存在し得る。特定の態様において、IGF-1R AS ODNは、チャンバごとに約2μgの量で存在する。特定の態様において、IGF-1R AS
ODNはチャンバごとに約4μgの量で存在する。ある実施形態において、IGF-1R AS ODNは、バイオ拡散チャンバ内に約10μg~約500μgの範囲の量で存在する。ある態様において、IGF-1R AS ODNは、チャンバごとに約40μg~約400μgの範囲、チャンバごとに約40~約70μgの範囲、またはチャンバごとに約100μg~約200μgの範囲の量で存在する。特定の態様において、IGF-1R AS ODNは、チャンバごとに約100μgの量で存在する。特定の態様において、IGF-1R AS ODNは、チャンバごとに約200μgの量で存在する。ある態様において、IGF-1R AS ODNは、チャンバごとに約1mg~約100mgの範囲、またはチャンバごとに約2mg~約10mgの範囲の量で存在する。特定の態様において、IGF-1R AS ODNは、チャンバごとに約2mgの量で存在する。特定の態様において、IGF-1R AS ODNは、チャンバごとに約4mgの量で存在する。理論に縛られることなしに、これらのレベルは、対象内における増強されたTh1応答を促進しながら、対象内におけるM2免疫賦活応答を回避すると考えられる。
【0059】
ある実施形態において、腫瘍細胞はチャンバ内にカプセル化する前にIGF-1R AS ODNで処理されない。しかしながら、通常、腫瘍細胞はチャンバ内にカプセル化する前にIGF-1R AS ODNで処理される。カプセル化する前に細胞を処理する時間は変わり得る。例えば、腫瘍細胞は、カプセル化する直前に約4時間まで、約6時間まで、約8時間まで、約12時間まで、または約18時間までエクスビボでIGF-1R AS ODNと処理され得る。通常、腫瘍組織はカプセル化する前、約12時間から約18時間エクスビボで処理され得る。好都合なことに、細胞は、一晩まで続く事前処理の後にカプセル化され得る。理論に縛られることなしに、事前カプセル化処理は、腫瘍抗原の産生の刺激において所望の役割を果たすと考えられる。
【0060】
事前カプセル化処理に使用されるIGF-1R AS ODNの量は、100万個の細胞あたり約1mg~8mgの範囲、例えば、100万個の細胞あたり約2mg~約6mg、100万個の細胞あたり約3mg~約5mgであり得る。通常、カプセル化する前の処理のために使用されるIGF-1R AS ODNの量は、100万個の細胞あたり約4mgである。
【0061】
いくつかの実施形態において、腫瘍細胞のエクスビボでの処理のためのIGF-1R AS ODNは、少なくとも約2mg/mlから少なくとも約5mg/mlまでの範囲の濃度において使用される。ある態様において、IGF-1R AS ODNは少なくとも4mg/mlの濃度において使用される。特定の実施形態において、IGF-1R AS
ODNは4mg/mlの濃度において使用される。
【0062】
ある実施形態において、エクスビボで腫瘍細胞処理に使用されるIGF-1R AS ODNと、チャンバ内に存在するIGF-1R AS ODNとは同じである。他の実施形態において、エクスビボで腫瘍細胞処理に使用されるIGF-1R AS ODNと、チャンバ内に存在するおよびIGF-1R AS ODNとは異なる。ある実施形態において、エクスビボで腫瘍細胞処理に使用されるIGF-1R AS ODNは、少なくとも約5ヌクレオチド、少なくとも約10ヌクレオチド、少なくとも約15ヌクレオチド、少なくとも約20ヌクレオチド、少なくとも約25ヌクレオチド、少なくとも約30ヌクレオチド、少なくとも約35ヌクレオチド、少なくとも約40ヌクレオチド、少なくとも約45ヌクレオチド、または少なくとも約50ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態において、エクスビボで腫瘍細胞処理に使用されるIGF-1R AS ODNは、約15ヌクレオチドから約22ヌクレオチドの長さである。ある態様において、腫瘍細胞処理に使用されるIGF-1R AS ODNは、約18ヌクレオチドの長さである。
【0063】
ある実施形態において、エクスビボで腫瘍細胞処理に使用されるIGF-1R AS ODNは18℃で2次構造を形成するが、約37℃では2次構造を形成しない。他の実施形態において、腫瘍細胞処理に使用されるIGF-1R AS ODNは、約18℃で、または約37℃で2次構造を形成しない。さらに他の実施形態において、エクスビボで腫瘍細胞処理に使用されるIGF-1R AS ODNは、いかなる温度においても2次構造を形成しない。他の実施形態において、腫瘍細胞処理に使用されるIGF-1R AS
ODNは、37℃で2次構造を形成しない。特定の実施形態において、2次構造はヘアピンループ構造である。
【0064】
いくつかの態様において、腫瘍細胞処理に使用されるIGF-1R AS ODNは、配列番号1、またはその断片のヌクレオチド配列を含む。ある実施形態において、腫瘍細胞処理に使用されるIGF-1R AS ODNは、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約98%または100%同一性を配列番号1、またはその断片と有し得る。ある態様において、腫瘍細胞処理に使用されるIGF-1R
AS ODNは、配列番号1である。
【0065】
しばらくの間、腫瘍細胞をAS-ODNで処理した後、AS-ODNを除去し、新たなAS-ODNをチャンバに添加し、その後、対象に移植する前に放射線を照射する。ある態様において、バイオ拡散チャンバは、約1Gy、約2Gy、約4Gy、約5Gy、約6Gy、約10Gy、または約15Gyまでの量のガンマ照射で処理される。ある態様において、放射線量は約5Gyより多くない。他の態様において、放射線量は少なくとも約5Gyである。いくつかの態様において、放射線量は5Gyである。ある実施形態において、バイオ拡散チャンバは少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、または少なくとも5回照射され得る。いくつかの実施形態において、チャンバは、対象への移植前約24時間未満に照射される。他の実施形態において、チャンバは、対象への移植の約24時間前に照射される。さらに他の実施形態において、チャンバは対象への移植は、少なくとも約24時間前に照射される。さらなる他の実施形態において、チャンバは、対象への移植前に約48時間以下で照射される。さらに他の実施形態において、チャンバは対象への移植前に少なくとも約48時間照射される。
【0066】
通常、腫瘍細胞は移植前に、例えば放射線によって殺傷されるが、細胞は殺傷される必要はなく、実際、抗原の放出を促進するために細胞を生存状態に維持することが有利であり得る。したがって、ある実施形態において、細胞は移植前に放射線を照射されない場合がある。しかしながら、安全のため、対象内への生きた腫瘍細胞の放出を防ぐことが望ましい。
【0067】
腫瘍細胞は、チャンバ内に様々な数で配置され得る。ある実施形態において、約1×10~約5×10個の腫瘍細胞が各拡散チャンバ内に配置される。他の実施形態において、約1×10~約1.5×10個の腫瘍細胞が拡散チャンバ内に配置される。さらに他の実施形態において、約5×10~1×10個の腫瘍細胞がチャンバ内に配置される。対象とともに使用され得る。出願人らは、腫瘍細胞の数が対象の抗腫瘍応答に影響を及ぼし得ることおよび所望の結果を得る機会を増やすために適切な範囲を選択すべきであることを発見した。いくつかの実施形態において、抗腫瘍免疫応答は、チャンバ内に約750,000~約1,250,000個の範囲の細胞が最適であり、約100万個の細胞/チャンバにピークを有する。放射線を照射された腫瘍細胞を含む多数のチャンバが投与され、最適な免疫応答を維持するためにチャンバあたりの細胞数は、好ましくはその範囲に維持される。好ましくは、腫瘍細胞は、本明細書に記載されているように、そのままであり、自己分解またはその他の損傷を受けていない。
【0068】
ある実施形態において、チャンバ内の細胞とAS ODNの比率を維持することが好ましい場合がある。したがって、ある態様においてチャンバは、約2μgのAS ODNと750,000~1,250,000個の細胞、例えば1,000,000個の細胞とを含み得る。細胞とAS ODNの比率は、したがって、約3.75×10~約6.25×10/μg AS ODNの範囲、例えば、約5.0×10細胞/μgであり得る。したがって、20個のチャンバを受け入れる通常の患者において、AS ODNの全用量は、約40μgである。
【0069】
典型的には、本明細書に記載されるように投与はチャンバ内である。しかしながら、ある態様において、放射線を照射された細胞およびIGF-1R AS ODNは、チャンバまたは別の容器内に物理的に一緒に含まれることなく対象に同時投与され得る。このアプローチを使用するある方法において、放射線を照射された細胞IGF-1R AS ODNは、したがって、対象の生理学によって制限された身体内で分散、拡散、または代謝される。したがって、ある態様において、例えば、使用のための腫瘍細胞は、チャンバのために本明細書に記載されるように調製されてIGF-1R AS ODNとともに投与され得るが、投与は物理的な容器に含まれていない場合がある。そのような投与は、通常筋肉内投与である。
【0070】
チャンバのための腫瘍組織調製
自家ワクチン接種に使用される腫瘍細胞は、対象から外科的に除去される。複数の実施形態において、腫瘍細胞は、組織モルセレータを使用して患者から除去される。この摘出装置は、好ましくは静止外部カニューレ内に高速往復内部カニューレと電子制御可変吸引とを組み合わせる。外部カニューレは1.1mm、1.9mm、2.5mm、または3.0mmの直径を有し、10cm、13cm、または25cmの長さを有する。器具はまた、デシケーターの平滑末端から0.6mmに位置する、側面に開口する切除吸引用開口部に依存する。除去される組織への開口部の穏やかな前方圧力と吸引との組み合わせにより、所望の組織が側面開口部に引き込まれ、内部カニューレの相互切断作用によって制御された正確な組織の切除が可能になる。重要な特徴は、回転ブレードがないことである。これにより、意図しない組織が開口部に引き込まれることを防ぐ。好適な装置の一例は、Myriad(登録商標)組織アスピレータ(インディアナ州インディアナポリスのNICO Corporation(登録商標))であり、直接、顕微鏡、または内視鏡による視覚化での軟部組織の除去に使用され得る低侵襲手術システムである。削り取った組織を吸引し、回収チャンバ内に集め、滅菌組織トラップ内に回収する。滅菌組織トラップ内への組織の回収中、調製物から血液を除去する。好ましくは、滅菌トラップは、そのトラップの底部に回収ディッシュと、トラップにアクセスを提供するステムとを含む。トラップ構造はまた、トラップからの組織除去を容易にするための、トラップから取り外し可能な柄杓型内部構造を含み得る。
【0071】
好ましくは、モルセレータは切除部位またはそのシャフトに沿って熱を発生せず、組織除去のための超音波エネルギーを必要としない。したがって、特定の実施形態において、腫瘍組織は細片化された腫瘍組織(すなわち熱なしに、任意選択的には超音波処理なしに側面に開口する切除部によって得られた削り取った腫瘍組織)である。有利には、アスピレータ摘出物および細片化された組織は、他の方法によって除去された組織より高い生存率を有する。摘出プロセスは、部分的には、除去期間中腫瘍細胞の高温への曝露を制限することによってより高い腫瘍細胞生存率を維持すると考えられている。例えば、本明細書の方法は、除去中、25℃を超えて腫瘍細胞を曝露しない。したがって、細胞は体温、すなわち、約37℃を超えた温度に曝露されない。
【0072】
いくつかの実施形態において、例えば、組織モルセレータを使用して患者から除去されたとき、腫瘍細胞は生存可能である。いくつかの実施形態において、組織モルセレータを使用した患者からの細胞の除去は、細胞を殺傷しない。いくつかの実施形態において、組織モルセレータを使用して患者から除去された少なくとも60%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98、または少なくとも99%の腫瘍細胞が生存可能である。
【0073】
対象から得られる腫瘍組織の量は変わり得る。好ましくは、その量は少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3グラムまたは少なくとも4グラムの湿潤腫瘍組織が患者から得られる。組織を滅菌組織トラップから取り除き、大きな組織断片を壊すように滅菌ピペットでピペッティングして脱凝集した。その後、脱凝集した細胞の懸濁液を血清含有培地中、滅菌組織培養プレートに配置し、組織培養インキュベータでインキュベートした。このプレーティングステップは接着によって所望の機能的な細胞を富化するために役立ち、また、調製物からごみを除去することを補助する。したがって、本明細書に記載される処理において使用される腫瘍細胞は、好ましくは腫瘍組織からの接着細胞から本質的になるか、またはからなる。
【0074】
所定のインキュベーション時間(例えば、6、12、24、または48時間)のあと、細胞をプレートから除去する。細胞をスクレーピングによって、化学的な方法によって(例えば、EDTA)または酵素的な処理(例えば、トリプシン)によって除去してよい。細胞を1つ以上の拡散チャンバ内に配置する。いくつかの実施形態において、細胞を2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30個以上の拡散チャンバ間に分ける。しばしば、20個のチャンバが使用される。いくつかの実施形態において、各拡散チャンバは同数の細胞を含む。いくつかの実施形態において、第1拡散チャンバは第2チャンバより細胞を含む。
【0075】
いくつかの実施形態において、細胞はチャンバ内に配置される前にソートされる。いくつかの実施形態において、チャンバ内に配置される前に、細胞は1つ以上の細胞マーカーで選択することによって富化される。選択は、例えば、ビーズを使用して、または当業者に既知の細胞ソーティング技術を使用して行われ得る。いくつかの実施形態において、チャンバ内に配置される細胞は1つ以上のマーカーで富化される。
【0076】
いくつかの実施形態において、治療有効期間の間のバイオ拡散チャンバの移植は、対象における癌の再発を減少または排除する。ある態様において、バイオ拡散チャンバの移植は、対象内の癌に関連する腫瘍体積の減少を引き起こす。さらに他の実施形態において、治療有効期間中、バイオ拡散チャンバの移植は対象における腫瘍の排除を誘導する。いくつかの実施形態において、チャンバの移植は、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、少なくとも36ヶ月間、または無期限に腫瘍の再増殖を抑制する。
【0077】
バイオ拡散チャンバは以下の非限定的な方法で対象に移植され得る:皮下、腹腔内、および頭蓋内。ある実施形態において、拡散チャンバは、腹直筋鞘などの良好なリンパドレナージュおよび/または血管供給を有する受容部位に移植される。他の実施形態において、再充填可能なチャンバが用いられ得、拡散チャンバは治療のために再利用され、治療後に空にされ得るようにする。ある態様において、複数の拡散チャンバ、好ましくは5~20の拡散チャンバを単一の対象に使用することができる。
【0078】
ある実施形態において、少なくとも約1、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45、または少なくとも約50個のチャンバが対象内に移植される。いくつかの実施形態において、10~20個のチャンバが対象内に移植される。好ましくは、約20個のチャンバが対象内に移植される。ある実施形態において、腫瘍細胞は各チャンバ間で均等に分けられる。
【0079】
通常、チャンバは一定期間後取り外される。例えば、チャンバは約24時間、約48時間、約72時間、または約96時間対象内に移植され得る。約48時間の移植は、有益な治療結果に関連する。したがって、移植の好ましい時間は、約48時間である。ある実施形態において、ワクチン接種手順は患者あたり1回行われる。他の実施形態において、ワクチン接種手順は、患者あたり多数回行われる。複数の実施形態において、ワクチン接種手順は単一の患者で2回、3回、4回、5回、6回、7回、または8回行われる。複数の実施形態において、ワクチン接種は、一定期間、7、14、または28日毎、または1、3、または6ヶ月ごとに繰り返される。さらなる実施形態において、ワクチン接種手順は患者の癌がなくなるまで定期的に繰り返される。
【0080】
理論に縛られることなしに、バイオ拡散チャンバの移植は、移植部位においてまたは近くでM2細胞の排除または減少を引き起こし、チャンバから拡散する腫瘍抗原に対する免疫応答が達成されると考えられる。ある態様において、移植部位におけるM2細胞の排除または減少は、CD4 T細胞への抗原提示細胞(APC)による自己腫瘍抗原の提示の増強につながり、インターフェロンガンマ(IFNγ)の産生および1型腫瘍免疫の誘導につながる。ある態様において、腫瘍抗原特異的なCD4 T細胞によるIFNγの産生およびIGF-1R AS ODNの抗M2効果は、1型抗腫瘍免疫と、腫瘍増殖と間接的に干渉する循環および腫瘍微小環境から抗炎症性M2細胞の損失とを促進する。いくつかの態様において、腫瘍抗原特異的なCD4 T細胞によるIFNγの産生およびIGF-1R AS ODNの抗M2効果は、腫瘍細胞および腫瘍微小環境(M2細胞)のエフェクターを介した損傷を引き起こし、腫瘍抗原を認識するメモリーT細胞のプログラミングのより長いプロセスを開始する。ある実施形態において、抗腫瘍適応免疫応答は、継続的な腫瘍退縮を持続させる。
【0081】
任意選択的に、チャンバ内に導入された細胞は、ある細胞タイプについて富化され得る。ネスチン、細胞骨格関連クラスVI中間径フィラメント(IF)タンパク質は、神経幹細胞マーカーとしてその重要性のために従来から注目されている。出願人らは、ある腫瘍サンプルにおいてネスチンがポジティブな細胞(ネスチン+細胞)は、良性の組織に比べて富化されること、および、これが治療反応の改善に対応することを発見した。したがって、ある態様において、対象の腫瘍はネスチン発現の程度を評価するために採取され得、したがって、ある態様において、チャンバ細胞は、良性の組織に比べてネスチンポジティブ(「+」)細胞が富化されている。理論に縛られることなしに、ネスチンが抗腫瘍免疫応答を生み出す好適な有用な抗原と関連するマーカーを提供すると考えられる。したがって、チャンバ内に移植された細胞は、対象から摘出されたとき、腫瘍細胞集団に比べて全体としてネスチン+細胞が富化され得る。
【0082】
組成物
いくつかの実施形態において、本開示は、癌細胞(例えば、肝細胞癌細胞)とアンチセンス(例えば、IGF-1R AS ODN)とを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、組成物は、細片化された癌細胞(例えば、肝細胞癌細胞)とアンチセンス(例えば、IGF-1R AS ODN)とを含む。いくつかの実施形態において、組成物は細片化された癌細胞(例えば、肝細胞癌細胞)とアンチセンス(例えば、IGF-1R AS ODN)とを含み、その癌細胞およびアンチセンスのうちの1つまたは両方は放射線を照射される。いくつかの実施形態において、組成物は、細片化され、放射線を照射された癌細胞(例えば、肝細胞癌細胞)と、放射線を照射されたアンチセンス(例えば、IGF-1R AS ODN)とを含む。
【0083】
いくつかの実施形態において、組成物は、約1×10、約5×10、約1×10、約5×10、約1×10、約5×10、約1×10、約5×10、約1×10、約5×10、約1×10、約5×10、約1×1010、約5×1010個癌細胞を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、約1μg、約2μg、約3μg、約4μg、約5μg、約6μg、約7μg、約8μg、約9μg、約10μg、約20μg、約30μg、約40μg、約50μg、約60μg、約70μg、約80μg、約90μg、約100μg、約250μg、約500μg、約750μg、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、または約10mgアンチセンス(例えば、IGF-1R AS-ODN)を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、約1μg/ml、約2μg/ml、約3μg/ml、約4μg/ml、約5μg/ml、約6μg/ml、約7μg/ml、約8μg/ml、約9μg/ml、約10μg/ml、約20μg/ml、約30μg/ml、約40μg/ml、約50μg/ml、約60μg/ml、約70μg/ml、約80μg/ml、約90μg/ml、約100μg/ml、約250μg/ml、約500μg/ml、約750μg/ml、または約1mg/mLアンチセンス(例えば、IFG-1R AS-ODN)を含む。
【0084】
いくつかの実施形態において、組成物は癌細胞(例えば、肝細胞癌細胞)とアンチセンス(例えば、IGF-1R AS ODN)とを含み、薬学的に許容されるキャリヤ、緩衝液、安定剤、または賦形剤をさらに含む。
【0085】
本開示の組成物を含むバイオ拡散チャンバもまた提供される。
全身投与
チャンバの移植の代替として、または補足として、IGF-1R AS ODNが全身投与され得る。したがって、複数の実施形態において、IGF-1R AS ODNは全身投与のために医薬組成物中に提供される。IGF-1R AS ODNに加えて、医薬組成物は、例えば、生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム)を含み得る。組成物はリン脂質を含み得る。いくつかの態様において、リン脂質は生理的pHで帯電していないか、中性の電荷を有する。いくつかの態様において、リン脂質は中性リン脂質である。ある態様において、中性リン脂質はホスファチジルコリンである。ある態様において、中性リン脂質は、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)である。いくつかの態様において、リン脂質は本質的にコレステロールを含まない。
【0086】
いくつかの態様において、リン脂質およびオリゴヌクレオチドは、約5:1~約100:1のモル比、またはその中で導出可能な任意の比で存在する。様々な態様において、リン脂質およびオリゴヌクレオチドは、約5:1、約10:1、約15:1、約20:1、約25:1、約30:1、約35:1、約40:1、約45:1、約50:1、約55:1、約60:1、約65:1、約70:1、約75:1、約80:1、約85:1、約90:1、約95:1、または約100:1のモル比で存在する。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドおよびリン脂質は、オリゴヌクレオチド-脂質複合体、例えば、リポソーム複合体などを形成する。いくつかの態様において、少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のリポソームは直径が5ミクロン(5μm)未満である。様々な態様において、組成物は、例えば、ポリソルベート20などの少なくとも1つの界面活性剤をさらに含む。いくつかの態様において、総リポソームアンチセンス薬品の少なくとも約5%は界面活性剤からなり、少なくとも約90%のリポソームは直径5ミクロン(5μm)未満である。いくつかの態様において、界面活性剤と少なくとも約90%のリポソームとからなる、総リポソームアンチセンス薬製品の少なくとも約15%は、直径3ミクロン(3μm)未満である。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドの集団は、リポソームの集団に取り込まれる。
【0087】
いくつかの態様において、医薬組成物は液体医薬組成物である。他の態様において、医薬組成物は、固体医薬組成物である。
ヒト対象におけるアンチセンスの全身投与のための投与量は、約0.025g/kg、約0.05g/kg、約0.1g/kg、約0.15g/kg、または約0.2g/kgであり得る。ある実施形態において、全身投与のための投与量は、0.025g/kg~0.2g/kgであり得る。いくつかの実施形態において、投与量は約0.2g/kgである。他の実施形態において、投与量は0.004g/kg~0.01g/kgである。他の実施形態において、投与量は0.01g/kg未満である。さらなる実施形態において、投与量は0.01g/kg~0.2g/kgではない。ある態様において、アンチセンスは凍結乾燥された粉末として供給され、投与前に再懸濁される。再懸濁されたとき、アンチセンスの濃度は約50mg/ml、約100mg/ml、約200mg/ml、約500mg/ml、約1000mg/ml、またはそれらの量の間の範囲であり得る。
【0088】
ある実施形態において、AS ODNは、例えば腫瘍負荷を減少させるための手術の前など、手術前に全身投与され得る。例えば、AS ODNは手術前24時間まで、36時間まで、48時間まで、または72時間まで投与され得る。特定の態様において、医薬組成物は手術の約48~約72時間前に投与され得る。通常、そのような状況において、投与は静脈内ボーラスによる。
【0089】
併用療法
歴史的には、癌療法は、放射線、化学療法、またはその両方を用いて対象を治療することを必要としていた。そのようなアプローチは文書による十分な裏付けのある課題を有する。しかしながら、有利には、本明細書に開示されるチャンバ移植方法は、単剤療法として癌を有する対象を治療するために使用され得る。したがって、本明細書に開示される方法が化学療法または放射線治療を含まないことが好ましい。しかしながら、本明細書の単剤療法アプローチによって達成される優れた効果にもかかわらず、ある状況下では当該チャンバ方法を例えば、放射線治療などの他の療法と組み合わせることは有益であり得る。ある実施形態において、放射線治療は、限定するものではないが、内部線源放射線治療、体外照射療法、および全身性ラジオアイソトープ放射線治療を含む。ある態様において、放射線治療は体外照射療法である。いくつかの実施形態において、体外照射療法は、限定するものではないが、ガンマ放射線治療、X線療法、強度変調放射線治療(IMRT)、および画像誘導放射線治療(IGRT)を含む。ある実施形態において、体外照射療法は、ガンマ放射線治療である。放射線は、チャンバ移植前、または移植後に、例えばサルベージ療法として投与され得る。通常、そのようなサルベージ療法アプローチは癌が再発したと確定されるまで実施されない。
【0090】
したがって、ある組み合わせアプローチにおいて、本明細書に記載されるチャンバ方法と、全身法および組成物との両方は、同じ対象に単独で、または放射線治療または化学療法との組み合わせで使用され得る。本明細書に記載される組み合わせアプローチにおいて、チャンバ移植は、好ましくは第1選択療法として使用される。他の療法によって対象の免疫系が抑制され、チャンバ移植の治療的有益性が減少し得るのでチャンバ移植を最初に使用することは望ましい。
【0091】
任意選択的に、全身投与はチャンバ移植前に行われ得る。そのようなアプローチは、プライミングアプローチとして対象の免疫系を増強するために使用することができる。プライミングアプローチは、先の療法によって対象の免疫系が損なわれた場合、特に有利であり得る。
【0092】
全身投与が組み合わせて使用されたとき、AS ODNは、自家癌細胞ワクチンを使用した患者の治療の少なくとも2週間前、少なくとも1週間前、少なくとも3日前、または少なくとも1日前に全身投与され得る。他の実施形態において、自家癌細胞ワクチン、すなわちチャンバを使用した患者の治療に続いて、AS ODNは少なくとも1日、少なくとも3日、少なくとも1週間、または少なくとも2週間全身投与され得る。
【0093】
任意選択的に、対象は第1ワクチン接種に続いて本明細書に記載される方法を使用したチャンバで再ワクチン接種され得る。第2またはさらなる追加のワクチン接種は、組織除去中に対象から採取され、貯蔵されていた腫瘍細胞を使用し得る。任意選択的に、第2またはさらなる追加のワクチン接種は、対象から除去され、本明細書に記載されるように処理された新たな腫瘍組織を使用し得る。対象内に残っている任意の腫瘍は同じ抗原を発現し得、したがって、デポとして作用し、再刺激を提供し得る。しかしながら、再発腫瘍は新たな抗原を発生し得、したがって抗腫瘍応答を刺激する追加の選択肢を提供する。その後のワクチン接種は、第1治療が完了して腫瘍が再発した後、または対象が第1治療に反応しなかった場合にあり得る。
【0094】
IGF-1R AS ODNを使用した治療の対象
好適な対象は癌を有する動物であり、通常、対象はヒトである。肝癌は、特に本明細書に記載されるこの方法から恩恵を受けるが、本方法は一般的に癌に適用する。したがって、本開示は肝細胞癌および胆管細胞癌からなる群から選択されるものを含む癌治療の方法を提供する。特定の実施形態において、肝癌は肝細胞癌である。いくつかの実施形態において、肝癌は転移性肝細胞癌である。いくつかの実施形態において、肝癌は再発肝細胞癌である。ある実施形態において、治療の候補である対象はWHOグレードII、WHOグレードIII、またはWHOグレードIVの腫瘍を患っている。例えば、ある実施形態において、腫瘍は、グレードIの肝細胞癌、グレードIIの肝細胞癌、グレードIIIの肝細胞癌、およびグレードIVの肝細胞癌から選択される。ある実施形態において、腫瘍は、ステージIの肝細胞癌、ステージIIの肝細胞癌、ステージIIIの肝細胞癌およびステージIVの肝細胞癌から選択される。
【0095】
対象は、好ましくは免疫抑制的な任意の治療的アプローチで以前に治療されていない人である。特定の態様において、適格な対象は18歳より上であり、60以上のカルノフスキースコアを有する。
【0096】
任意選択的に、治療の候補者である対象は、対象に腫瘍生検を行うことによって特定され得る。いくつかの実施形態において、対象からの腫瘍は単球の存在について分析される。ある態様において、単球は、限定するものではないが、CD11b+、CD14+、CD15+、CD23+、CD64+、CD68+、CD163+、CD204+、またはCD206+単球を含む。腫瘍内の単球の存在は、免疫組織化学を使用して分析され得る。ある実施形態において、治療の候補者である対象は、対象の総末梢血単核細胞(PBMC)の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、または約50%より多いCD163+ M2細胞を示す。ある態様において、対象は、対象の総PBMCの約20%より多いCD163+ M2細胞を示す。
【0097】
さらに他の実施形態において、治療の候補者である対象は、対象の血清中の1つ以上のサイトカインの存在によって特定される。これらのサイトカインは、限定するものではないが、CXCL5、CXCL6、およびCXCL7、IL6、IL7、IL8、IL10、IL11、IFN-γ、およびHSP-70を含む。
【0098】
さらに他の実施形態において、治療の候補者である対象は、対象の血清中の1つ以上の増殖因子の存在によって特定される。これらの増殖因子は、限定することなしにFGF-2、G-CSF、GM-CSF、およびM-CSFを含む。
【0099】
いくつかの実施形態において、バイオ拡散チャンバでの治療の候補者である対象は、特定のセットのサイトカインのレベルを測定することにより特定される。いくつかの実施形態において、その対象は、健康な対象と比較してこれらのサイトカインのレベルが上昇している。本明細書に使用されるとき、用語「健康な対象」は、癌または任意の他の疾患を患っておらず、かつ、バイオ拡散チャンバでの治療を必要としていない対象を表す。
【0100】
特定の実施形態において、サイトカインが抗腫瘍免疫応答を増強するためにチャンバに添加され得る。例えば、チャンバに添加されるサイトカインは、CCL19、CCL20、CCL21、およびCXCL12、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0101】
ある実施形態において、健康な対象と比較して、循環するCD14+単球は上昇したレベルのCD163を有する。いくつかの態様において、健康な対象と比較して、循環するCD14+単球のCD163のレベルは、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、または少なくとも約100倍上昇する。特定の実施形態において、健康な対象と比較して、循環するCD14+単球のCD163のレベルは、約2倍上昇する。
【0102】
他の実施形態において、治療の候補者である対象は、未分化の単球をM2細胞に極性化する血清を有する。ある態様において、対象の血清を未分化の単球とインキュベーションすることにより、限定するものではないが、CD11b、CD14、CD15、CD23、CD64、CD68、CD163、CD204、および/またはCD206を含む、単球の1つ以上の細胞表面マーカーの発現が誘導される。他の態様において、対象の血清を未分化の単球とインキュベーションすることは、対象の血清とインキュベートしない単球と比較して、単球の1つ以上の細胞表面マーカーの発現を上昇させる。ある態様において、細胞表面マーカーは、限定するものではないが、CD11b、CD14、CD15、CD23、CD64、CD68、CD163、CD204、および/またはCD206を含む。いくつかの態様において、1つ以上の表面マーカーのレベルは、対象の血清とインキュベートしない未分化の単球と比較して少なくとも約1.3倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約1.8倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、または少なくとも約100倍上昇する。特定の実施形態において、1つ以上の表面マーカーのレベルは、対象の血清とインキュベートしない未分化の単球と比較して約2倍上昇する。対象の血清によって極性化された単球は、FACSを使用して測定され得る。
【0103】
標的細胞
理論に縛られることなしに、AS ODNはIGF-1R発現を下方制御することにより、対象のM2細胞を減少し、および/または細胞のM2細胞への極性化を阻害すると考えられる。いくつかの実施形態において、M2細胞におけるIGF-1R発現は、アンチセンスで処理していない細胞と比較して、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%下方制御される。M2細胞におけるIGF-1R発現は定量的RT-PCRによって測定され得る。
【0104】
いくつかの実施形態において、単回投与のアンチセンスを受けた後、M2細胞におけるIGF-1R発現は、少なくとも約1日間、少なくとも約2日間、少なくとも約3日間、少なくとも約4日間、少なくとも約5日間、少なくとも約6日間、少なくとも約7日間、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間、少なくとも約11日間、少なくとも約12日間、少なくとも約13日間、少なくとも約14日間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、または少なくとも約6週間、対象において下方制御されたままである。
【0105】
いくつかの態様において、M2細胞におけるIGF-1Rの発現の下方制御は、IGF-1Rを発現していない細胞と比較して、対象内のM2細胞の選択的減少を引き起こす。ある実施形態において、対象のM2細胞は、アンチセンスで治療されていない対象と比較して、少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%減少する。他の実施形態において、M2細胞集団は排除される。例えば、バイオ拡散チャンバの移植後、M2細胞集団は、バイオ拡散チャンバの移植前の集団の約1%、約2%、約5%、または約10%であり得る。対象のM2細胞は、FACSを使用して測定され得る。ある態様において、治療後M2細胞は除去される。すなわち、FACSによっては検出できない。他の態様において、M2細胞の減少はプロキシアッセイ(proxy
assay)を使用して測定され得る。例えば、対象からの血清は、そのM2細胞の極性化能の評価のために治療前後で得られてよい。本明細書に開示される方法での治療後、血清のM2細胞の極性化能は、約80%~約100%、約20%~約60%、または約10%~約50%減少される。
【0106】
いくつかの実施形態において、M2細胞においてIGF-1Rの発現を標的とすることはM2細胞の細胞死を引き起こす。ある実施形態において、細胞死はネクローシスである。他の実施形態において、細胞死はアポトーシスである。本開示の目的では、アポトーシスはプログラム細胞死として定義され、限定するものではないが、原発腫瘍および転移性腫瘍の退縮を含む。アポトーシスは、無数の生理学的および病理学的プロセスで重要な役割を果たす、広く行われる現象であるプログラム細胞死である。対照的に、ネクローシスは、様々な有害な条件および有毒物質に対する細胞の応答である偶発的な細胞死である。さらに他の実施形態において、M2細胞におけるIGF-1Rの発現を標的にすることは、M2細胞の細胞周期停止を引き起こす。
【0107】
キット
完成チャンバの調製は、多数の構成要素および多数のステップを必要とする。本開示の別の態様において、本明細書に開示される方法を実施するための構成要素を含むキットが提供される。ある態様において、キットは1つの部分、または2つの半分ずつであり得るチャンバ本体を含む。1つ以上のメンブレン、接着剤、および溶媒(例えば、アルコール、または2ジクロロエタン)を含むチャンバを密閉するためのアイテムも含まれ得る。任意選択的に、メンブレンは密閉を作るようにチャンバに超音波溶接され得る。キットはアンチセンスODNを含む。任意選択的に、ODNは2つの部分に分割され得る。対象から外科的に除去した後に細胞を処理するための第1の部分、および、対象に導入されたときに細胞と組み合わせるための第2の部分。他の任意選択的なキットアイテムは、細胞培養のための培地、および培地中での細菌の増殖を防ぐための抗生物質を含む。
【0108】
任意選択的に、キット内のチャンバは、ハトメまたはチャンバに取り付けられた他の装置によって互いに事前に連結され得(例えば、縫合によって)、連結材料を受けるように適合され得る。有利には、多数のチャンバを事前に連結することによって、所望の数のチャンバが外科医によって簡単に導入および取り外され得る。
【0109】
実施例
実施例1
バイオ拡散チャンバの調製
腫瘍組織は、組織アスピレータ(NICO Myriad(登録商標))を使用して肝細胞癌患者から外科的に除去され、滅菌組織トラップ内に配置される。滅菌組織トラップは、その後、指定のBSL-2施設に移され、そこで腫瘍組織はプロセスされバイオ拡散チャンバ内に配置される。
【0110】
バイオ拡散チャンバは、手術において除去された自家腫瘍細胞を含む。バイオ拡散チャンバに加える前に、その細胞を一晩(およそ12~18時間)第1の量(4mg/ml)の配列5’-TCCTCCGGAGCCAGACTT-3’(NOBEL)を有する18-merのIGF-1R AS ODNで事前処理する。AS ODNが免疫調節特性を有することを示すデータに基づいて、第2の量(2μg)の外因性のNOBELアンチセンスをチャンバ(C-v)に添加し、続いてチャンバに放射線を照射する。チャンバ内の腫瘍細胞のIGF-1R AS ODNに対する比は、約3.75×10:1μg~約6.25×10:1μgの範囲である。
【0111】
実施例2
ワクチン接種はマウス肝細胞癌モデルで抗腫瘍応答を誘導する
抗腫瘍応答がインビボで誘導されるか見るために、本明細書に記載されるバイオ拡散チャンバをマウスの肝細胞癌モデルで試験した。これらの実験において、Hepa1-6細胞を単独で、または100万個の細胞あたり4mgのIGF-1R AS ODNで一晩培養した。細胞を翌日に採取し、NOBEL(2μg)を含む各チャンバに100万個の細胞を追加した。PBS単独を含むチャンバ、Hepa1-6細胞を含むチャンバ、または、一晩NOBELでインキュベートされたHepa1-6細胞とチャンバ内の追加のNOBELとを含むチャンバをマウスの脇腹に48時間外科的に移植し、その後除去した。35日目に、反対の脇腹において、皮下に10個のHepa1-6細胞を移植することでマウスを接種した。
【0112】
図1Aは、チャンバ免疫化のある動物は完全に退行される最小の腫瘍増殖を有するが、モック処理されたマウスはかなり大きい腫瘍を成長させたことを示す。チャンバ免疫化後28日目で取られた血清からHepa1-6-特異的なIgG(図1B)、Hepa1-6-特異的なIgG1(図1C)、およびHepa1-6-特異的なIgG2A(図1D)を測定し、Hepa1-6細胞に曝露された動物の強いTh2バイアスを反映している。点線の横線は、該当する場合はバックグラウンドであるプレートを表す。したがって、チャンバ内のHepa1-6細胞およびNOBELで免疫化されたマウスは、腫瘍形成の発生率が低下し、これらの腫瘍は、空のチャンバが移植された外科的対照マウスより小さく、より早く退行した。免疫化されたマウスはまた、Hepa1-6-特異的な抗体を産生し、チャンバワクチン接種によって特異的な抗腫瘍応答が誘導されたことが確認された。
【0113】
まとめると、これらのデータによって、本明細書に開示されるバイオ拡散チャンバは、肝細胞癌に対する抗腫瘍免疫応答を誘導するために使用され得ることが実証された。
実施例3
NOBELは培養で増殖したHepa1-6細胞の細胞死を引き起こさない
また、NOBELが培養液中で成長したHepa1-6細胞において細胞死を引き起こすかどうかを試験するために実験を行った。これらの実験において、Hepa1-6細胞は1ウェルあたり10個の細胞で、24ウェルプレートで培養された。各ウェルの培地中にNOBELを添加し、3重反復実験で様々な用量で滴定した。NOBEL(0.5μg、1μg、2μg、4μg、40μg、400μgおよび4mg)と24時間インキュベートした後、プレートを遠心し、任意の付着していない、おそらく死んでいる細胞をペレット化した。培地を除去し、細胞をトリプシン処理し、その後培地に再懸濁した。その後細胞を96ウェル-V底プレートのウェルに移し、PBSで洗浄した。生/死染色は、PBS中のZombie Green(商標)生存率染色を使用して行った。その後細胞を洗浄し、固定し、フローサイトメトリーを行って生存率を決定した。
【0114】
処理なしの対照に比べて、培養液中で成長したNOBEL処理したHepa1-6細胞では全く細胞死が観察されなかった。
実施例4
肝細胞癌のある患者における自家腫瘍細胞およびIGF-1R AS ODNでのワクチン接種
肝細胞癌患者は、標準的な療法を使用して治療前、後、または治療と同時に特定される。各患者は以下の基準を満たし得る:年齢>18、60以上のカルノフスキー・パフォーマンススコア、および治療を妨げるような合併症がない。
【0115】
バイオ拡散チャンバは実施例1のように調製される。腫瘍組織を除去するための手術の翌日、2~20個の放射線を照射されたバイオ拡散チャンバを患者の腹直筋鞘内に移植する。24~48時間後、チャンバを除去する。任意選択的に、IGFR-1に対するアンチセンスヌクレオチドを同時に全身投与する。
【0116】
放射線学的評価を使用して臨床的有効性を経時的に監視した。連続的なイメージング評価はPhilips 1.5Tおよび3T MRIスキャナーまたはGE 1.5T MRIスキャナーで行われ得る。ルーチン的な解剖学的MRI機能が評価される場合がある。動的磁化率強調(DSC)MR灌流および15方向拡散テンソル画像(DTI)の生理学的なMRI技術も利用し得る。Nordic Iceワークステーション(v.2.3.14)でMR灌流およびDTI後処理を行った。対側の正常白質と対比してrCBVが計算され得る。DTIデータから平均拡散係数(平均拡散率)を計算し得る。
【0117】
治療は、腫瘍増殖を抑制するおよび/または排除するために必要に応じて繰り返され得る。
参照による援用
本明細書で参照されるすべての特許および刊行物は、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
【0118】
本発明の番号付き実施形態
添付の特許請求の範囲に関わらず、本開示は以下の番号付き実施形態を示す。
1.肝癌を有する対象への移植用のバイオ拡散チャンバを調製する方法であって、
(a)対象から得られた腫瘍細胞をIGF-1R AS ODNの存在下、バイオ拡散チャンバ内にカプセル化することであって、
その腫瘍細胞は組織モルセレータを使用して対象から得られることと、
(b)そのバイオ拡散チャンバに放射線を照射すること
とを含む方法。
【0119】
2.当該肝癌は肝細胞癌(HCC)および胆管細胞癌から選択される実施形態1に記載の方法。
3.当該肝癌はHCCである実施形態2に記載の方法。
【0120】
4.当該肝癌は胆管細胞癌である実施形態2に記載の方法。
5.当該腫瘍細胞はチャンバに追加される前に分散される実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0121】
6.当該細胞は、当該対象からの除去中、体温を超えた温度に曝露されない実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
7.当該細胞は、当該対象からの除去中、37℃を超えた温度に曝露されない実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0122】
8.当該組織モルセレータは、滅菌トラップを含む実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
9.当該組織モルセレータは、静止外部カニューレ内に高速往復内部カニューレを含む実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0123】
10.当該外部カニューレは側面開口部を含み、さらに当該腫瘍細胞は電子制御可変吸引によって当該側面開口部に引き込まれる実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
11.当該腫瘍細胞は当該バイオ拡散チャンバ内に配置される前にネスチン発現で富化される実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0124】
12.当該チャンバ内の当該腫瘍細胞は、当該対象から得られた当該腫瘍細胞と比較して接着細胞が富化される実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
13.当該腫瘍細胞は本質的に接着細胞からなる実施形態12に記載の方法。
【0125】
14.当該チャンバ内にカプセル化する前に当該細胞をIGF-1R AS ODNで処理する実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
15.カプセル化する前のIGF-1R AS ODNでの当該処理は、約18時間までである実施形態14に記載の方法。
【0126】
16.カプセル化する前のIGF-1R AS ODNでの当該処理は、約12時間~約18時間である実施形態14に記載の方法。
17.当該IGF-1R AS ODNは配列番号1の配列を有する実施形態1に記載の方法。
【0127】
18.肝癌を有する対象を治療するための方法であって、実施形態1にしたがって、2つ以上のバイオ拡散チャンバを当該対象に移植することを含む方法。
19.約10~約30個のバイオ拡散チャンバが当該対象に移植される実施形態18に記載の方法。
【0128】
20.約10~約20個のバイオ拡散チャンバが当該対象に移植される実施形態19に記載の方法。
21.当該拡散チャンバが48時間、当該対象に移植される実施形態18~20のいずれか1つに記載の方法。
【0129】
22.当該肝癌は肝細胞癌である実施形態18~21のいずれか1つに記載の方法。
23.当該肝細胞癌は、ステージI、ステージII、ステージIII、およびステージIVの肝細胞癌から選択される実施形態22に記載の方法。
【0130】
24.当該肝細胞癌はステージIVの肝細胞癌である実施形態28に記載の方法。
25.当該方法は、化学療法なしに、放射線治療なしに、または両方なしに実施される実施形態18~24のいずれか1つに記載の方法。
【0131】
26.第1移植に続いてチャンバの第2移植をさらに含む実施形態18に記載の方法。
27.当該第2移植は第1移植で使用したチャンバの当該細胞と同時に当該対象から得られた腫瘍細胞を含むチャンバを使用する実施形態26に記載の方法。
【0132】
28.当該第2移植は、第1移植が完了した後当該腫瘍が再発したか、または第1移植に反応しなかった当該対象から得られた腫瘍細胞を使用する実施形態26に記載の方法。
29.肝癌を有する対象をワクチン接種する方法であって、
(i)当該対象から細片化された腫瘍組織を得ることと、
(ii)その細片化した組織を滅菌トラップ内に回収することと、
(iii)その細片化した組織から接着細胞を採取することと、
(iv)バイオ拡散チャンバ内で配列番号1の配列を有するインスリン様成長因子1受容体のアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(IGF-1R AS ODN)と共に採取した細胞をカプセル化することと、
(v)当該チャンバに放射線を照射することと、
(vi)当該対象に当該チャンバを移植することと
を含み、当該肝癌に対する免疫応答が得られる、方法。
【0133】
30.当該肝癌は、肝細胞癌(HCC)および胆管細胞癌から選択される実施形態29に記載の方法。
31.当該肝癌はHCCである実施形態30に記載の方法。
【0134】
32.当該肝癌は胆管細胞癌である実施形態30に記載の方法。
33.カプセル化する前に18時間まで当該接着細胞をIGF-1R AS ODNで処理するステップを含む実施形態29~32のいずれか1つに記載の方法。
【0135】
34.約48時間、20個のチャンバで当該対象をワクチン接種する実施形態29~33のいずれか1つに記載の方法。
35.腫瘍細胞は体温を超えた温度に曝露されない実施形態29~34のいずれか1つに記載の方法。
【0136】
36.当該HCCはステージI、ステージII、ステージIII、およびステージIVのHCCから選択される実施形態31に記載の方法。
37.前記HCはステージIVのHCCである実施形態36に記載の方法。
【0137】
38.肝癌を有する対象への移植用のバイオ拡散チャンバであって、
(a)放射線を照射された腫瘍細胞であって、
当該腫瘍細胞は、当該対象の腫瘍組織から得られた接着細胞を含み、
当該腫瘍細胞は、当該チャンバ内にカプセル化する前にインスリン様成長因子1受容体のアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(IGF-1R AS ODN)で事前にインキュベートされる腫瘍細胞と、
(b)放射線を照射されたIGF-1R AS ODNであって、
当該IGF-1R AS ODNは配列番号1の配列を有する、放射線を照射されたIGF-1R AS ODNと
を含む、バイオ拡散チャンバ。
【0138】
39.当該肝癌は肝細胞癌(HCC)および胆管細胞癌から選択される実施形態38に記載のバイオ拡散チャンバ。
40.当該肝癌はHCCである実施形態39に記載のバイオ拡散チャンバ。
【0139】
41.当該肝癌は胆管細胞癌である実施形態39に記載のバイオ拡散チャンバ。
42.当該チャンバ内の当該腫瘍細胞は、当該対象から得られた当該腫瘍組織と比べてネスチンポジティブ細胞が富化される実施形態38~41のいずれか1つに記載のバイオ拡散チャンバ。
【0140】
43.当該腫瘍細胞は組織モルセレータを使用して当該対象から得られる実施形態38~42のいずれか1つに記載のバイオ拡散チャンバ。
44.当該組織モルセレータは、静止外部カニューレ内に高速往復内部カニューレを含む実施形態43に記載のバイオ拡散チャンバ。
【0141】
45.当該腫瘍組織が当該対象から得られるとき、当該組織モルセレータは熱を発生しない実施形態43に記載のバイオ拡散チャンバ。
図1A
図1B
図1C
図1D
【配列表】
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【外国語明細書】