(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163131
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ポリプロピレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系無延伸フィルム、包装材、および包装体
(51)【国際特許分類】
C08L 23/12 20060101AFI20241114BHJP
C08L 23/16 20060101ALI20241114BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20241114BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20241114BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C08L23/12
C08L23/16
C08J5/18 CES
B32B27/32
B65D65/40 D
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024146426
(22)【出願日】2024-08-28
(62)【分割の表示】P 2020192444の分割
【原出願日】2020-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹之内 基邦
(57)【要約】
【課題】レトルト処理時の包装材由来の臭気が少なく、かつヒートシール強度と耐衝撃性に優れるポリプロピレン系無延伸フィルム、当該フィルムを用いた包装材、および当該包装材を用いた包装体を提供する。また前記ポリプロピレン系無延伸フィルムを提供するためのポリプロピレン系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】60~70重量部のプロピレン単独重合体と、30~40重量部のエチレンプロピレンランダム共重合体からなり、ケミルミネッセンス法によって測定される発光量が300,000以下であり、重量平均分子量が600,000以上700,000以下である、ポリプロピレン系樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
60~70重量部のプロピレン単独重合体と、30~40重量部のエチレンプロピレンランダム共重合体からなり、
ケミルミネッセンス法によって測定される発光量が300,000以下であり、
重量平均分子量が600,000以上700,000以下である、ポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物を用いたポリプロピレン系無延伸フィルム。
【請求項3】
請求項2に記載のポリプロピレン系無延伸フィルムに、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリエステルフィルム、印刷紙、金属箔から選ばれる少なくとも1層の基材を積層することを特徴とした包装材。
【請求項4】
請求項3に記載の包装材を用いたことを特徴とする包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレンの劣化度合いと分子量を制御することで、低臭気性とヒートシール強度と耐衝撃性を有するポリプロピレン系樹脂組成物に関するものである。また、当該ポリプロピレン系樹脂組成物を用いたポリプロピレン系無延伸フィルム、包装材、および包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂であるポリプロピレン系樹脂は剛性、耐熱性等において優れた特性を有しているため、食品包装及び繊維包装や医薬包装などの包装分野に広く使用されている。内容物充填後に加熱殺菌を行い賞味期限の延長が出来るレトルト食品向けの包装材には、耐熱性に優れることから、ポリプロピレン系無延伸フィルムが多く用いられる。
【0003】
レトルト食品は独特の臭気を発することがある。この臭気は、レトルト処理において長時間加熱されることで、内容物と包装材の両方から臭気成分が出るために発生する。臭気を抑える方法として、フィルムに吸着剤を練りこむ方法(特許文献1)や印刷層に吸着剤を混合する方法(特許文献2)、接着剤層に吸着剤を混合する方法(特許文献3)が提案されている。これらの方法は内容物由来と包装材由来の臭気を吸着することが出来るが、吸着剤が高コストであるため、実用が難しい。
【0004】
包装材由来の臭気は、包装材の加工時の熱やせん断によって、ポリプロピレンが分解されて生じる低分子成分や、添加剤に使用した酸化防止剤が分解されて発生するフェノール類が、レトルト処理によってフィルムから内容物に移ることが原因である。包装材由来の臭気を抑制するためには、ポリプロピレンや酸化防止剤の分解を抑えて成形加工を行うことが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-177521号公報
【特許文献2】特開2019-182536号公報
【特許文献3】特開2017―94533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような課題を鑑みてなされたものであり、レトルト処理時の包装材由来の臭気が少なく、かつヒートシール強度と耐衝撃性に優れるポリプロピレン系無延伸フィルム、当該フィルムを用いた包装材、および当該包装材を用いた包装体を提供することを目的とする。また前記ポリプロピレン系無延伸フィルムを提供するためのポリプロピレン系樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一局面は、60~70重量部のプロピレン単独重合体と、30~40重量部のエチレンプロピレンランダム共重合体からなり、ケミルミネッセンス法によって測定される発光量が300,000以下であり、重量平均分子量が600,000以上700,000以下である、ポリプロピレン系樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、レトルト処理時の包装材由来の臭気が少なく、かつヒートシール強度と耐衝撃性に優れるポリプロピレン系無延伸フィルム、当該フィルムを用いた包装材、および当該包装材を用いた包装体を提供することができる。また前記ポリプロピレン系無延伸フィルムを提供するためのポリプロピレン系樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物について詳細を記述する。
【0010】
[樹脂組成物特性]
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、下記特性(a)から(c)を満たす必要がある。
(a)プロピレン単独重合体60~70重量部と、エチレンプロピレンランダム共重合体30~40重量部からなること。
(b)ケミルミネッセンス法によって測定される発光量が300,000以下であること。
(c)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される重量平均分子量(Mw)が600,000以上、700,000以下であること。
【0011】
[ケミルミネッセンス法による発光量測定]
ケミルミネッセンス法による発光量測定には、ケミルミネッセンスアナライザー(CLA)が用いられる。CLAは、JISK7351に記載された化学発光の測定に用いる装置であり、カルボニル基の電子が励起状態から基底状態に変化するときに発する微弱な化学発光を検知し、樹脂の劣化を評価することができる。プロピレン単独重合体やエチレンプロピレンランダム共重合体は、成形加工時のせん断により樹脂劣化が進行してカルボニル基が生成され、CLAにて化学発光が確認される。CLAで測定される発光量が小さいと、成形加工時に樹脂に加えられた熱とせん断応力が小さく、樹脂劣化が少ないことを示している。また、酸化防止剤の分解も抑えられていることもわかる。従って、CLA発光量が小さいポリプロピレン系樹脂組成物を用いれば、低分子成分の生成と酸化防止剤の分解とが抑えられ、低臭気性に優れたポリプロピレン系無延伸フィルムを得ることができる。CLA発光量は、300,000以下であることが望ましい。ポリプロピレン系無延伸フィルムについては後述する。
【0012】
[重量平均分子量]
重量平均分子量はモノマーの重合度に依存する値であり、この値が大きいとより多くのモノマーが重合されていることを示す。重量平均分子量は、樹脂粘度や剛性、耐熱性に影響することが知られており、ポリプロピレン系樹脂組成物の重量平均分子量が600,000以下では、剛性や耐熱性が低くなり、耐衝撃性およびレトルト後のヒートシール強度が低下する。重量平均分子量が700,000以上では樹脂粘度が大きく樹脂成型機の負荷が高くなり、成形加工性が悪くなる。
【0013】
[プロピレン単独重合体]
プロピレン単独重合体はプロピレンを原料に用いて重合したポリマーである。本発明に用いるプロピレン単独重合体の重合方法は特に制限されるものではなく、公知の方法で重合されたものを用いてよい。重合触媒はチーグラーナッタ触媒やメタロセン触媒、その他の触媒を用いることが出来る。原料のプロピレンは溶媒に溶かした状態で重合してもよく、液体状態で重合してもよく、気体状態で重合してもよい。本発明に用いるプロピレン単独重合体は1種類のものを単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いても良い。
【0014】
[エチレンプロピレンランダム共重合体]
エチレンプロピレンランダム共重合体は、エチレンとプロピレンを原料に用いて重合し
て得られる、エチレン構造とプロピレン構造の配列に規則性のないポリマーである。本発明に用いるエチレンプロピレンランダム共重合体の重合方法は特に制限されるものではなく、公知の方法で重合されたものを用いてよい。重合触媒はチーグラーナッタ触媒やメタロセン触媒、その他の触媒を用いることが出来る。原料のエチレンとプロピレンは溶媒に溶かした状態で重合してもよく、液体状態で重合してもよく、気体状態で重合してもよい。本発明に用いるエチレンプロピレンランダム共重合体は、エチレン構造とプロピレン構造の比率に特に限定はない。また、エチレンプロピレンランダム共重合体は1種類のものを単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いても良い。
【0015】
ポリプロピレン系無延伸フィルム成型時の加工適性、また当該フィルムを使用する際の適性向上のため、本発明の効果を阻害しない範囲で必要に応じて公知の酸化防止剤、帯電防止剤、中和剤、造核剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤等の添加剤をエチレンプロピレンランダム共重合体に添加することができる。
【0016】
本発明のプロピレン単独重合体とエチレンプロピレンランダム共重合体を混合する方法は特に制限されるものではなく、公知の方法を使用することが可能である。例えばドライブレンドと呼ばれるペレット状態のまま混合する方法や、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機等の一般的な混合機を用いて溶融混練し造粒することで混合する方法などを用いることが出来る。作業性を考慮する場合、ドライブレンドまたは二軸スクリュー押出機を用いる方法が特に好ましい。
【0017】
二軸スクリュー押出機の種類については、同方向回転二軸スクリュー押出機、異方向回転二軸スクリュー押出機など特に限定されるものではない。スクリュー形状もフルフライトスクリュー、ニーディングディスクタイプと特に限定されるものではない。また低分子量成分を押出機から除去する公知の方法を用いてもよい。例えばベントシリンダーを用いて脱揮する方法や、水や超臨界流体等を加える方法などを用いることが出来る。これらの方法を合わせて使用してもよい。
【0018】
次に、ポリプロピレン系無延伸フィルムについて説明する。ポリプロピレン系無延伸フィルムの厚みは、包装材用フィルムとして、使用可能な範囲であれば特に制限されることはないが、厚みが厚すぎる場合にはコストデメリットとなる。このため、100μm以下の範囲であることが好ましい。
【0019】
本発明のポリプロピレン系無延伸フィルムを熱成形加工する方法は特に制限されるものではなく、公知の方法を使用することが可能である。例えば、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解又は分散混合後、溶剤を加熱除去する方法等を用いることが出来る。作業性を考慮した場合、単軸スクリュー押出機または二軸スクリュー押出機を使用することが特に好ましい。単軸押出機を用いる場合にはフルフライトスクリュー、ミキシングエレメントを持つスクリュー、バリアフライトスクリュー、フルーテッドスクリュー等、特に制限されることなく使用することが可能である。二軸混練装置については、同方向回転二軸スクリュー押出機、異方向回転二軸スクリュー押出機、またスクリュー形状もフルフライトスクリュー、ニーディングディスクタイプと特に限定されるものではない。
【0020】
上記方法において、ポリプロピレン系無延伸フィルムは、単軸押出機または二軸押出機等により溶融したのち、フィードブロックまたはマルチマニホールドを介しTダイで製膜する方法を用いることが可能である。
【0021】
さらに、本発明のポリプロピレン系無延伸フィルムには、必要に応じて適宜後工程適性を向上する表面改質処理を実施することが可能である。例えば、単体フィルム使用時の印
刷適性向上、積層使用時のラミネート適性向上のために他基材と接触する面に対して表面改質処理を行うことが可能である。表面改質処理は、コロナ放電処理、プラズマ処理、フレーム処理等の、フィルム表面を酸化させることにより官能基を発現させる手法や、易接着層のコーティング等のウェットプロセスにより改質させる手法を、好適に用いることが可能である。
【0022】
ポリプロピレン系無延伸フィルムは、フィルム単体で使用してもよいし、他基材を積層して包装材として使用してもよい。具体的には本発明のポリプロピレン系無延伸フィルムに、二軸延伸ポリアミドフィルム(ONy)、二軸延伸ポリエステルフィルム(PET)、印刷紙、金属箔(AL箔)から選ばれる少なくとも1層の基材を積層し、包装材を形成する。これらの代表的な構成は、PET/AL箔/ポリプロピレン系無延伸フィルム、PET/ONy/AL箔/ポリプロピレン系無延伸フィルム、PET/AL箔/ONy/ポリプロピレン系無延伸フィルム、ONy/ポリプロピレン系無延伸フィルムである。包装材の製造方法は、ポリプロピレン系無延伸フィルムに接着剤を用いて基材を貼合せる通常のドライラミネート法が好適に採用できるが、必要に応じて直接ポリプロピレン系無延伸フィルムを押出ラミネートする方法も採用することができる。
【0023】
これらの包装材の積層構造は、包装材の要求特性、例えば包装する食品の品質保持期間を満たすバリア性、内容物の重量に対応できるサイズ・耐衝撃性、内容物の視認性などに応じて適宜選択する必要がある。
【0024】
これらの包装材は、ポリプロピレン系無延伸フィルムをシール材として、平袋、三方袋、合掌袋、ガゼット袋、スタンディングパウチ、スパウト付きパウチ、ビーク付きパウチ等の包装体に用いることが可能であり、その製袋様式は特に制限されるものではない。
【0025】
以上のように、本実施形態に係るポリプロピレン系樹脂組成物を用いることで、CLAによって測定される化学発光量を抑え、適切な分子量分布を持つように樹脂組成物を混合し製膜することで、レトルト特有の臭気を抑え、かつヒートシール強度と耐衝撃性に優れるポリプロピレン系無延伸フィルム、包装材、包装体を作製することができる。
【実施例0026】
以下、本発明の実施例について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0027】
プロピレン単独重合体は2種類用意した。プロピレン単独重合体Aとして、ISO1133に準拠した方法で測定したMFR(230℃、2.16kg)=3.0g/10min、Mw=596,000である市販のプロピレン単独重合体を使用した。プロピレン単独重合体Bとして、MFR(230℃、2.16kg)=0.5g/10min、Mw=987,000である市販のプロピレン単独重合体を使用した。エチレンプロピレンランダム共重合体は2種類用意した。エチレンプロピレンランダム共重合体Aとして、MFR(230℃、2.16kg)=0.6g/10min、Mw=765,000である市販のエチレンプロピレンランダム共重合体を使用した。エチレンプロピレンランダム共重合体Bとして、MFR(230℃、2.16kg)=8.0g/10min、Mw=354,000である市販のエチレンプロピレンランダム共重合体を使用した。
【0028】
次に、ケミルミネッセンス測定と分子量分布測定を行い、樹脂の特性評価をしたのでその説明をする。
【0029】
[ケミルミネッセンス測定]
ケミルミネッセンス測定は、下記の条件にて行った。
装置:ケミルミネッセンスアナライザーCLA-FS4(東北電子産業株式会社製)
試料室温度:150℃
パージガス:窒素ガス
測定時間:5min
ゲートタイム:0.1sec
試料量:0.2g
【0030】
[分子量分布測定]
分子量分布測定は、下記の条件にて行った。
装置:HLC-8321GPC/HT型高温ゲル浸透クロマトグラフ(東ソー株式会社製)
カラム/温度:TSKgelGMH6-HT×2本+TSKgel GMH6-HTL×
2本、7.5mm×300mm(東ソー株式会社製)/140℃
移動相:o-ジクロロベンゼン(安定剤;0.025wt%BHT含有)
流 量:1.0mL/min
注入量:0.4mL
検出器:示差屈折計(RI)
カラム較正:単分散PS(TSKgel標準ポリスチレン;東ソー株式会社製)
分子量較正:相対的較正法(PS換算)
解析ソフト:Empower3(日本ウォーターズ株式会社製)
【0031】
(実施例1)
プロピレン単独重合体A65重量部と、エチレンプロピレンランダム共重合体A35重量部を、CLA発光量が99,297、Mwが657,219となるようにドライブレンドして得られたたポリプロピレン系樹脂組成物を用いた。
【0032】
前記記載プロピレン原料を温度230℃に温調させた単軸押出機に供給し、溶融押出しを行い、冷却ロールに20℃の冷却水を供給し、製膜速度15m/分にて厚さ60μmとなるように調整し、実施例1のポリプロピレン系無延伸フィルムを作製した。
【0033】
厚み12μmの二軸延伸PETフィルム、厚み7μmのAL箔、厚み15μmの二軸延伸ポリアミドフィルム、前記記載のポリプロピレン系無延伸フィルムの順番に積層されるようウレタン系接着剤を用いてドライラミネート加工を行い、実施例1の包装材を作製した。
【0034】
(実施例2)
プロピレン単独重合体A65重量部とエチレンプロピレンランダム共重合体A35重量部を、温度230℃に温調させ、スクリュー回転数300rpm、樹脂吐出量40kg/hに設定し、超臨界状態の二酸化炭素を2.4kg/hの注入量で注入した、スクリュー径42mmの二軸押出機に供給した。CLA発光量が134,131、Mwが656,509となるようにブレンドして得られたポリプロピレン系樹脂組成物を用いた。
【0035】
実施例1と同様の作製方法において、実施例2のポリプロピレン系無延伸フィルムと包装材を作製した。
【0036】
(実施例3)
プロピレン単独重合体A65重量部と、エチレンプロピレンランダム共重合体A35重量部を、温度230℃に温調させ、スクリュー回転数300rpm、樹脂吐出量20kg/hに設定し、押出機に超臨界状態の二酸化炭素を1.2kg/hの注入量で注入した、スクリュー径26.5mmの二軸押出機に供給した。CLA発光量が210,048、M
wが676,829となるようにブレンドして得られたポリプロピレン系樹脂組成物を用いた。
【0037】
実施例1と同様の作製方法において、実施例3のポリプロピレン系無延伸フィルムと包装材を作製した。
【0038】
(比較例1)
プロピレン単独重合体A65重量部と、エチレンプロピレンランダム共重合体A35重量部を、温度230℃に温調させ、スクリュー回転数300rpm、樹脂吐出量20kg/hに設定した、スクリュー径26.5mmの二軸押出機に供給した。CLA発光量が345,579、Mwが497,953となるようにブレンドして得られたポリプロピレン系樹脂組成物を用いた。
【0039】
実施例1と同様の作製方法において、比較例1のポリプロピレン系無延伸フィルムと包装材を作製した。
【0040】
(比較例2)
プロピレン単独重合体A65重量部と、エチレンプロピレンランダム共重合体A35重量部を、温度230℃に温調させ、スクリュー回転数300rpm、樹脂吐出量40kg/hに設定した、スクリュー径42mmの二軸押出機に供給した。CLA発光量が1,251,796、Mwが252,005となるようにブレンドして得られたポリプロピレン系樹脂組成物を用いた。
【0041】
実施例1と同様の作製方法において、比較例2のポリプロピレン系無延伸フィルムと包装材を作製した。
【0042】
(比較例3)
プロピレン単独重合体A65重量部と、エチレンプロピレンランダム共重合体B35重量部を、CLA発光量が101,267、Mwが483,062となるようにドライブレンドしたポリプロピレン系樹脂組成物を用いた。
【0043】
実施例1と同様の作製方法において、比較例3のポリプロピレン系無延伸フィルムと包装材を作製した。
【0044】
(比較例4)
プロピレン単独重合体A65重量部と、エチレンプロピレンランダム共重合体B35重量部を、温度230℃に温調させ、スクリュー回転数300rpm、樹脂吐出量40kg/hに設定し、押出機に超臨界状態の二酸化炭素を2.4kg/hの注入量で注入した、スクリュー径42mmの二軸押出機に供給した。CLA発光量が167,028、Mwが472,550となるようにブレンドして得られたポリプロピレン系樹脂組成物を用いた。
【0045】
実施例1と同様の作製方法において、比較例4のポリプロピレン系無延伸フィルムと包装材を作製した。
【0046】
(比較例5)
プロピレン単独重合体A65重量部と、エチレンプロピレンランダム共重合体B35重量部を、温度230℃に温調させ、スクリュー回転数300rpm、樹脂吐出量20kg/hに設定し、押出機に超臨界状態の二酸化炭素を1.2kg/hの注入量で注入した、スクリュー径26.5mmの二軸押出機に供給した。CLA発光量が176,541、M
wが469,066となるように、ブレンドして得られたポリプロピレン系樹脂組成物を用いた。
【0047】
実施例1と同様の作製方法において、比較例5のポリプロピレン系無延伸フィルムと包装材を作製した。
【0048】
(比較例6)
プロピレン単独重合体A65重量部と、エチレンプロピレンランダム共重合体B35重量部を、温度230℃に温調させ、スクリュー回転数300rpm、樹脂吐出量20kg/hに設定した、スクリュー径26.5mmの二軸押出機に供給した。CLA発光量が393,786、Mwが366,000となるようにブレンドして得られたポリプロピレン系樹脂組成物を用いた。
【0049】
実施例1と同様の作製方法において、比較例6のポリプロピレン系無延伸フィルムと包装材を作製した。
【0050】
(比較例7)
プロピレン単独重合体A65重量部と、エチレンプロピレンランダム共重合体B35重量部を、温度230℃に温調させ、スクリュー回転数300rpm、樹脂吐出量40kg/hに設定した、スクリュー径42mmの二軸押出機に供給した。CLA発光量が1,203,760、Mwが236,046となるように、ブレンドして得られたポリプロピレン系樹脂組成物を用いた。
【0051】
実施例1と同様の作製方法において、比較例7のポリプロピレン系無延伸フィルムと包装材を作製した。
【0052】
(比較例8)
プロピレン単独重合体B65重量部と、エチレンプロピレンランダム共重合体A35重量部を、CLA発光量が98,354、Mwが911,124となるようにドライブレンドしたポリプロピレン系樹脂組成物を用いた。
【0053】
実施例1と同様の作製方法において、比較例8のポリプロピレン系無延伸フィルムを作製しようとしたが、押出機の稼働可能トルク上限を超えたため成形できなかった。
(比較例9)
【0054】
プロピレン単独重合体B65重量部と、エチレンプロピレンランダム共重合体B35重量部を、CLA発光量が104,874、Mwが731,851となるようにドライブレンドしたポリプロピレン系樹脂組成物を用いた。
【0055】
実施例1と同様の作製方法において、比較例9のポリプロピレン系無延伸フィルムを作製しようとしたが、押出機の稼働可能トルク上限を超えたため成形できなかった。
【0056】
実施例1~3、比較例1~9を整理したものを表1に記載する。
【0057】
【0058】
[臭気評価]
実施例1~3、比較例1~7で作製した包装材のそれぞれについて臭気評価を実施した。各包装材に対して200℃、0.15MPa、シール幅5mmで1秒間ヒートシールして三方袋を作製し、水を200mL入れ同条件にて未シールの1辺をヒートシールして、内寸が130mm×160mmである包装体を作製した。これを130℃、40分間のレトルト処理を行い、内容物の水に臭気がなく、飲用に問題がないものを良好「〇」、内容
物の水に臭気があり、飲用に問題があったものを不良「×」と判定した。
【0059】
[ヒートシール強度評価]
実施例1~3、比較例1~7で作製した包装材のそれぞれについて、ヒートシール強度評価を実施した。ヒートシール強度評価の条件は下記のとおりである。
装置:引張試験機AGS-500NX(株式会社島津製作所製)
試験速度:300mm/min
試料寸法:15mm幅×80mm
【0060】
包装材を200℃、0.15MPa、シール幅5mmで1秒間ヒートシールした試料(レトルト前試料)を作製した。また同条件でシールして三方袋を作製し、水を200mL入れ同条件にて未シールの1辺をヒートシールして、内寸が130mm×160mmである包装体を作製した。この包装体を130℃、40分間レトルト処理を行った試料(レトルト後試料)を作製した。これらの2種類の試料を用いて上記試料寸法に切り出し、測定を実施した。レトルト前後ともにヒートシール強度が50N/15mm以上であるものを、ヒートシール強度が良好、レトルト前後の少なくとも一方のヒートシール強度が50N/15mm未満であるものを不良であると判定した。
【0061】
[耐衝撃性評価]
実施例1~3、比較例1~7で作製したポリプロピレン系無延伸フィルムのそれぞれについて、耐衝撃性評価を実施した。耐衝撃性評価の条件は下記のとおりである。
装置:恒温槽付きフィルムインパクトテスター(株式会社東洋精機製作所)
温度:-5℃
弾頭サイズ:1/2インチ
測定荷重:1.5J
試料寸法:100mm幅×2000mm
【0062】
測定値を試料厚みで割った値が8J/mm以上であるものを、耐衝撃性が良好、8J/mm未満であるものが不良であると判定した。
【0063】
実施例1~3と比較例1~9において、臭気評価、ヒートシール強度評価、耐衝撃性評価のいずれの結果も良好であったものは「〇」とし、いずれかの結果で不良があったもの、またはリプロピレン系無延伸フィルムを作製できなかったものは「×」として評価した。
【0064】
実施例1~3と比較例1~9において上述の評価を実施した結果を表2に記載する。
【0065】
【0066】
実施例1~3においては、上述の判定基準を全て満たしており、低臭気性とヒートシール性と耐衝撃性に優れる。
【0067】
比較例1~2に関しては、CLA発光量が300,000超、重量平均分子量が600,000未満であり、低臭気性とレトルト後のヒートシール強度が劣っているため、実用が難しい。
【0068】
比較例3~5に関しては、重量平均分子量が600,000未満であり、レトルト後のヒートシール強度と耐衝撃性が不足しているため、実用が難しい。
【0069】
比較例6~7に関しては、CLA発光量が300,000超、重量平均分子量が600,000未満であり、低臭気性とヒートシール強度と耐衝撃性が劣っているため、実用が難しい。
【0070】
比較例8~9に関しては、重量平均分子量が700,000超であり、樹脂粘度が大きく押出機の稼働可能範囲以上のトルク値となってしまい、押出機が稼働できないためフィルムの成形ができない。
本発明は、低臭気性、ヒートシール強度、および耐衝撃性に優れるポリプロピレン系無延伸フィルム、包装材、包装体、およびこれらを提供するためのポリプロピレン系樹脂組成物に有用である。