(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163142
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ボリナンセリンの重水素化形態および誘導体
(51)【国際特許分類】
C07D 211/22 20060101AFI20241114BHJP
A61K 31/4465 20060101ALI20241114BHJP
A61K 31/45 20060101ALI20241114BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20241114BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20241114BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20241114BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C07D211/22 CSP
A61K31/4465
A61K31/45
A61P7/02
A61P25/16
A61P25/18
A61P25/20
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024147359
(22)【出願日】2024-08-29
(62)【分割の表示】P 2021535751の分割
【原出願日】2019-12-20
(31)【優先権主張番号】62/784,056
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521506722
【氏名又は名称】テラン バイオサイエンシズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】スコット ワイントローブ
(72)【発明者】
【氏名】スコット エル. ハーベソン
(57)【要約】
【課題】ボリナンセリンの重水素化形態および誘導体を提供すること。
【解決手段】構造式(I)によるボリナンセリンの重水素化形態およびそれらの薬学的に許容される塩、これらの化合物を含有する医薬組成物、ならびにこれらの化合物または医薬組成物を使用する処置または予防方法が記載される。化合物は、精神病、統合失調症、統合失調性感情障害、パーキンソン病、レビー小体認知症、睡眠障害(不眠症を含む)、激越、気分障害(うつ状態を含む)、血栓塞栓性障害、自閉症、および注意欠陥多動性障害から選択される疾患または状態を処置または予防するのに有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2018年12月21日出願の米国仮特許出願第62/784,056号の利益を主張する。本願の教示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
現在の多くの薬には、吸収、分布、代謝および/または排出(ADME)特性が低く、それらによってより広範な使用が妨げられ、またはある特定の適応症における使用が制限されるという欠点がある。低いADME特性は、臨床試験における薬物候補の欠如の主な理由でもある。一部の場合には、製剤技術およびプロドラッグ戦略を、ある特定のADME特性を改善するために用いることができるが、これらの手法は、しばしば、多くの薬物および薬物候補に存在する根本的なADME問題に対処することができない。このような問題の1つは、いくつかの薬物を身体からあまりに急速に排出する急速な代謝であり、急速な代謝がなければ疾患の処置において非常に有効となるはずである。薬物の急速なクリアランスに対して可能な解決法は、十分に高い薬物血漿レベルを達成するための頻繁な投薬または高用量の投薬である。しかしこれは、投薬レジメンに対する患者の服薬順守の低下、用量が高いほど急性になる副作用、および処置費用の増大などのいくつかの潜在的な処置の問題を生じる。急速に代謝された薬物は、患者を望ましくない毒性または反応性代謝産物に曝露するおそれもある。
【0003】
多くの薬に影響を及ぼす別のADMEの制限は、毒性または生物学的に反応性の代謝産物の形成である。その結果として、薬物を与えられている患者の一部は、毒性を経験する場合があり、またはこのような薬物の安全な投薬は、患者が最適以下の量の活性剤を与えられるように制限される場合がある。ある特定の場合には、投薬間隔および製剤化手法の修正を、臨床的有害影響を低減する一助にすることができるが、このような望ましくない代謝産物の形成は、しばしば化合物の代謝に固有のものである。
【0004】
一部の選択された場合には、代謝阻害剤は、あまりにも急速に排出される薬物と共投与される。これには、HIV感染症を処置するために使用されるプロテアーゼ阻害剤クラスの薬物の場合が当てはまる。FDAは、これらの薬物を、それらの代謝に典型的に関与する酵素であるチトクロムP450酵素3A4(CYP3A4)の阻害剤リトナビルと共投薬することを推奨している(Kempf, D.J., et al., Antimicrobial agents and chemotherapy, 1997, 41(3):654-60を参照されたい)。しかし、リトナビルは、有害影響を引き起こし、既に異なる薬物の組合せを摂取しなければならないHIV患者に、錠剤数の負担(pill burden)を加える。同様に、CYP2D6阻害剤であるキニジンは、情動調節障害の処置においてデキストロメトルファンの急速なCYP2D6代謝を低減する目的で、デキストロメトルファンに追加されている。しかしキニジンは、潜在的に可能な併用療法における使用を大きく制限する望ましくない副作用を有する(Wang, L., et al., Clinical Pharmacology and Therapeutics, 1994, 56(6 Pt 1):659-67お
よびFDA label for quinidine at www.accessdata.fda.govを参照されたい)。
【0005】
一般に、薬物をチトクロムP450阻害剤と組み合わせることは、薬物クリアランスを低下させるための満足な戦略ではない。CYP酵素活性の阻害は、その酵素によって代謝される他の薬物の代謝およびクリアランスに影響を及ぼすおそれがある。CYP阻害は、他の薬物を、毒性レベルまで体内に蓄積させるおそれがある。
【0006】
薬物の代謝特性を改善するための潜在的に魅力的な戦略は、重水素修飾である。この手法では、1つまたは1つより多くの水素原子を重水素原子で置き換えることによって、薬物のCYP媒介性代謝を緩徐するか、または望ましくない代謝産物の形成を低減する試みがなされている。重水素は、水素の安全で安定な非放射性同位体である。重水素は、水素と比較して、炭素とより強力な結合を形成する。選択された場合、重水素によって付与された結合強度の増大は、薬物のADME特性にプラスの影響を与え、薬物の有効性、安全性、および/または認容性を改善する潜在可能性をもたらすことができる。同時に、重水素のサイズおよび形状は、水素と本質的に同じなので、水素を重水素によって置き換えても、水素だけを含有する元の化学実体と比較して、薬物の生化学的効力および選択性に影響を及ぼすことはないと予測される。
過去35年にわたって、代謝速度に対する重水素置換の効果は、非常にわずかなパーセンテージの承認薬物についてしか報告されていない(例えば、Blake, MI, et al., J
Pharm Sci, 1975, 64:367-91、Foster, AB, Adv Drug Res 1985, 14:1-40 (「Foster」)、Kushner, DJ, et al., Can J Physiol Pharmacol 1999, 79-88、Fisher, MB, et al., Curr Opin Drug Discov Devel, 2006, 9:101-09 (「Fisher」)を参照されたい)。結果は一定ではなく、予測不可能であった。いくつかの化合物について、重水素化は、in vivoでの代謝クリアランスの低下を引き起こした。他の化合物については、代謝に変化はなかった。さらに他の化合物では、代謝クリアランスの増大が実証された。重水素効果の変動性により、専門家は、有害な代謝を阻害するための実行可能な薬物設計戦略としての重水素修飾を疑問視し、却下することにもなった(Foster at p. 35およびFisher at p. 101を参照されたい)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kempf, D.J., et al., Antimicrobial agents and chemotherapy, 1997, 41(3):654-60
【非特許文献2】Wang, L., et al., Clinical Pharmacology and Therapeutics, 1994, 56(6 Pt 1):659-67
【非特許文献3】FDA label for quinidine at www.accessdata.fda.gov
【非特許文献4】Blake, MI, et al., J Pharm Sci, 1975, 64:367-91
【非特許文献5】Foster, AB, Adv Drug Res 1985, 14:1-40
【非特許文献6】Kushner, DJ, et al., Can J Physiol Pharmacol 1999, 79-88
【非特許文献7】Fisher, MB, et al., Curr Opin Drug Discov Devel, 2006, 9:101-09
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明は、ボリナンセリンの重水素化形態および誘導体(プロドラッグを含む)、ならびに薬学的に許容されるその塩に関する。一態様では、本発明は、構造式(I)の化合物
【化1】
、または薬学的に許容されるその塩を提供する[式中、R
1およびR
2は、独立に、-CH
3、-CH
2D、-CHD
2、および-CD
3から選択され、Xは、-OHまたは-Fであり、Y
1a、Y
1b、Y
2a、Y
2b、Y
3a、Y
3b、Y
4a、Y
4b、Y
5、Y
6、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、およびY
11は、それぞれ独立に、水素および重水素から選択され、
ただし、Y
1a、Y
1b、Y
2a、Y
2b、Y
3a、Y
3b、Y
4a、Y
4b、Y
5、Y
6、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、Y
11、R
1およびR
2の少なくとも1つは、重水素を含み、ただし、Y
1a、Y
1b、Y
2a、およびY
2bが、それぞれ重水素である場合には、Y
3a、Y
3b、Y
4a、Y
4b、Y
5、Y
6、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、Y
11、R
1およびR
2の少なくとも1つは、重水素を含み、ただし、Y
3a、Y
3b、Y
4a、およびY
4bが、それぞれ重水素である場合には、Y
1a、Y
1b、Y
2a、Y
2b、Y
5、Y
6、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、Y
11、R
1およびR
2の少なくとも1つは、重水素を含む]。
【0009】
本発明はまた、本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を含む、本発明の化合物を含む組成物を提供する。本発明はまた、主な効果が、セロトニン2A(5-HT2A)受容体逆アゴニズムまたはアンタゴニズムによって媒介されるボリナンセリンまたは他の薬物を投与することによって有益に処置される疾患および状態を処置する方法における、このような化合物、塩および組成物の使用を提供する。一部の例示的な実施形態は、精神病、統合失調症(慢性統合失調症を含む)、統合失調性感情障害、パーキンソン病(パーキンソン病精神病を含む)、レビー小体認知症、睡眠障害(不眠症を含む)、激越、気分障害(うつ状態を含む)、血栓塞栓性障害、自閉症、注意欠陥多動性障害、およびそれらの任意の組合せから選択される疾患または状態を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に、本発明の薬学的に許容される化合物、塩または組成物を投与するステップを含む、方法を含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
ボリナンセリンは、(R)-(+)-α-(2,3-ジメトキシフェニル)-1-[2-(4-フルオロフェニル)エチル]-4-ピペリジンメタノールとしても公知であり、高度に選択的な5-HT2A受容体アンタゴニストである。ボリナンセリンは、5-HT2A受容体の機能を調査するための科学的研究において広く使用されている。
【0011】
ボリナンセリンは、潜在的な抗精神病薬、抗うつ薬および不眠症のための処置として臨床試験において調査されており、ヒトにおける統合失調症の一部の行動学的症状に似てい
ることが公知の効果である、NMDAグルタミン酸作動性チャネル受容体を遮断する動物モデルにおいても活性である。De Paulis T, Curr Opin Investig Drugs. 2001 Jan;2(1):123-32。
【0012】
ボリナンセリンの有益な活性にもかかわらず、前述の疾患および状態を処置するための新しい化合物が、引き続き必要とされている。
定義
【0013】
「処置する」という用語は、疾患(例えば、本発明で記述される疾患)の発症もしくは進行を低下させ、抑制し、減弱し、減少し、抑止し、もしくは安定化すること、疾患の重症度を低減すること、または疾患と関連する症状を改善することを意味する。
【0014】
「疾患」は、細胞、組織、または臓器の正常な機能を損傷または妨害する、任意の状態または障害を意味する。
【0015】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語には、ヒトおよび非ヒト哺乳動物が含まれる。非ヒト哺乳動物の非限定的な例として、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、サル、類人猿、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ等が挙げられる。
【0016】
「アルキル」という用語は、一価の飽和炭化水素基を指す。Ca~Cbアルキルは、a~b個の炭素原子を有するアルキルである。例えば、C1~C6アルキルは、1~6個の炭素原子を有するアルキルである。一部の実施形態では、アルキルは、直鎖または分枝状であり得る。一部の実施形態では、アルキルは、第一級、第二級、または第三級であり得る。アルキル基の非限定的な例として、メチル、エチル、n-プロピルおよびイソプロピルを含むプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびt-ブチルを含むブチル、例えば、n-ペンチル、イソペンチルおよびネオペンチルを含むペンチル、ならびに例えば、n-ヘキシルおよび2-メチルペンチルを含むヘキシルが挙げられる。第一級アルキル基の非限定的な例として、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、およびn-ヘキシルが挙げられる。第二級アルキル基の非限定的な例として、イソプロピル、sec-ブチル、および2-メチルペンチルが挙げられる。第三級アルキル基の非限定的な例として、t-ブチルが挙げられる。
【0017】
「アルケニル」という用語は、不飽和が二重結合によって表される一価の不飽和炭化水素基を指す。C2~C6アルケニルは、2~6個の炭素原子を有するアルケニルである。アルケニルは、直鎖または分枝状であり得る。アルケニル基の例として、CH2=CH-(ビニル)、CH2=C(CH3)-、CH2=CH-CH2-(アリル)、CH3-CH=CH-CH2-(クロチル)、CH3-CH=C(CH3)-およびCH3-CH=CH-CH(CH3)-CH2-が挙げられる。二重結合の立体異性性が可能である場合、アルケニルの立体化学は、(E)、(Z)、またはそれらの混合物であり得る。
【0018】
用語「アルキニル」は、不飽和が三重結合によって表される一価の不飽和炭化水素基を指す。C2~C6アルキニルは、2~6個の炭素原子を有するアルキニルである。アルキニルは、直鎖または分枝状であり得る。アルキニル基の例として、HC≡C-、CH3-C≡C-、CH3-C≡C-CH2-、CH3-C≡C-CH2-CH2-およびCH3-C≡C-CH(CH3)-CH2-が挙げられる。
【0019】
本明細書に記載される化合物は、ペグ化され得る。「ペグ化」化合物は、それに共有結合した少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)鎖を有する化合物を指す。例えば、下記の構造式(II)のR3は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)基であり得る。典型的に、ポリ(エチレングリコール)は、複数の(例えば、n個の)繰り返し単位を有
することができる(例えば、nが5~350の間である-O(CH2CH2O)nH)。ポリエチレングリコールは、得られるペグ化化合物(例えば、本明細書に記載される構造式(II)の)が、プロドラッグとして適している限り、任意の特定数の繰り返し単位nまたは任意の特定の分子量に限定されない。例えば、PEG基は、25kDaまでの分子量を有することができる。例えば、PEG基は、例えば、300Da~12kDaの間、1kDa~12kDaの間、3kDa~12kDaの間、または3kDa~8KDaの間の分子量を有する低分子量PEG(すなわち、≦12kDa)であってもよい。別の例では、PEG基は、例えば、12kDa~25kDaの間、または18kDa~22kDaの間を有する分子量を有する高分子量PEG(すなわち、>12kDa)であってもよい。
【0020】
「アミノ酸エステル」は、カルボン酸基がエステルに変換されている、アミノ酸の誘導体を指す。例えば、アミノ酸エステルには、バリンエステル、ロイシンエステル、イソロイシンエステル、アルファ-t-ブチルグリシンエステル、ジメチルグリシンエステル等が含まれる。
【0021】
適切なアミノ酸には、それに限定されるものではないが、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、リシン(Lys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、トレオニン(Thr)、トリプトファン(Trp)、バリン(Val)、アルギニン(Arg)、システイン(Cys)、グルタミン(Gln)、グリシン(Gly)、プロリン(Pro)、セリン(Ser)、チロシン(Tyr)、アラニン(Ala)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、およびセレノシステイン(Sec)が含まれる。
【0022】
合成において使用される化学材料の起源に応じて、合成された化合物に天然同位体存在量のいくらかの変動が生じることが認識されよう。したがって、ボリナンセリンの調製物は、本来的に少量の重水素化アイソトポログを含有する。この変動にかかわらず、天然に豊富に存在する安定な水素および炭素同位体の濃度は、本発明の化合物の安定な同位体置換度と比較して小さく、微々たるものである。例えば、Wada, E., et al., Seikagaku, 1994, 66:15、Gannes, LZ, et al., Comp Biochem Physiol Mol Integr Physiol, 1998, 119:725を参照されたい。
【0023】
本発明の化合物において、特定の同位体として具体的に指定されていない任意の原子は、その原子の任意の安定な同位体を表すことを意味する。別段記述されない限り、ある位置が「H」または「水素」として具体的に指定されている場合、その位置は、その天然同位体組成の水素を有すると理解される。しかし、記述される場合のある特定の実施形態では、ある位置が「H」または「水素」として具体的に指定されている場合、その位置は、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の水素を有する。記述される場合の一部の実施形態では、ある位置が「H」または「水素」として具体的に指定されている場合、その位置は、≦20%の重水素、≦10%の重水素、≦5%の重水素、≦4%の重水素、≦3%の重水素、≦2%の重水素、または≦1%の重水素を取り込んでいる。また、別段記述されない限り、ある位置が「D」または「重水素」として具体的に指定されている場合、その位置は、0.015%である重水素の天然存在量の少なくとも3340倍多い存在量の重水素を有する(すなわち、重水素の少なくとも50.1%の取り込み)と理解される。
【0024】
「同位体濃縮係数」という用語は、本明細書で使用される場合、特定された同位体の同位体存在量と天然存在量との比を意味する。
【0025】
他の実施形態では、本発明の化合物は、それぞれ指定された重水素原子について少なくとも3500(それぞれ指定された重水素原子において52.5%の重水素の取り込み)、少なくとも4000(60%の重水素の取り込み)、少なくとも4500(67.5%の重水素の取り込み)、少なくとも5000(75%重水素)、少なくとも5500(82.5%の重水素の取り込み)、少なくとも6000(90%の重水素の取り込み)、少なくとも6333.3(95%の重水素の取り込み)、少なくとも6466.7(97%の重水素の取り込み)、少なくとも6600(99%の重水素の取り込み)、または少なくとも6633.3(99.5%の重水素の取り込み)の同位体濃縮係数を有する。
【0026】
一部の実施形態では、本発明の化合物において、それぞれ指定された重水素原子は、少なくとも52.5%の重水素の取り込みを有する。
【0027】
一部の実施形態では、本発明の化合物において、それぞれ指定された重水素原子は、少なくとも60%の重水素の取り込みを有する。
【0028】
一部の実施形態では、本発明の化合物において、それぞれ指定された重水素原子は、少なくとも67.5%の重水素の取り込みを有する。
【0029】
一部の実施形態では、本発明の化合物において、それぞれ指定された重水素原子は、少なくとも75%の重水素の取り込みを有する。
【0030】
一部の実施形態では、本発明の化合物において、それぞれ指定された重水素原子は、少なくとも82.5%の重水素の取り込みを有する。
【0031】
一部の実施形態では、本発明の化合物において、それぞれ指定された重水素原子は、少なくとも90%の重水素の取り込みを有する。
【0032】
一部の実施形態では、本発明の化合物において、それぞれ指定された重水素原子は、少なくとも95%の重水素の取り込みを有する。
【0033】
一部の実施形態では、本発明の化合物において、それぞれ指定された重水素原子は、少なくとも97.5%の重水素の取り込みを有する。
【0034】
一部の実施形態では、本発明の化合物において、それぞれ指定された重水素原子は、少なくとも99%の重水素の取り込みを有する。
【0035】
一部の実施形態では、本発明の化合物において、それぞれ指定された重水素原子は、少なくとも99.5%の重水素の取り込みを有する。
【0036】
「アイソトポログ」という用語は、化学構造が、本発明の種とはその同位体組成だけが異なっている分子を指す。
【0037】
「化合物」という用語は、本発明の化合物に言及する場合、分子の構成原子の中に、同位体変動が存在し得ることを除いて、同一の化学構造を有する分子の集まりを指す。したがって、特定の化学構造によって表される化合物は、その化学構造において重水素と指定された位置のそれぞれに重水素を有する分子を含有しており、その構造において指定された重水素位置の1つまたは1つより多くに水素原子を有するアイソトポログも含有し得ることが、当業者には明らかとなろう。本発明の化合物におけるこのようなアイソトポログの相対量は、化合物を作製するために使用された重水素化試薬の同位体純度、および化合物を調製するために使用された様々な合成ステップにおける重水素の取り込み効率を含む
、いくつかの因子に応じて決まることになる。ある特定の実施形態では、このようなアイソトポログの全体における相対量は、化合物の49.9%未満になる。他の実施形態では、このようなアイソトポログの全体における相対量は、化合物の47.5%未満、40%未満、32.5%未満、25%未満、17.5%未満、10%未満、5%未満、3%未満、1%未満、または0.5%未満になる。
【0038】
本発明はまた、本発明の化合物の塩(例えば、薬学的に許容される塩)を提供する。別段の指定がない限り、明確には記載されていないが、本明細書に記載される化合物の塩(例えば、薬学的に許容される塩)は、本明細書に記載される任意の実施形態、またはその態様において本明細書に記載される化合物(例えば、構造式(I)、(II)の化合物)の代わりになることができる。
【0039】
本発明の化合物の塩は、酸とアミノ官能基などの化合物の塩基性基との間、または塩基とカルボキシル官能基などの化合物の酸性基との間で形成される。一実施形態によれば、化合物は、薬学的に許容される酸付加塩である。一実施形態では、酸付加塩は、重水素化された酸付加塩であり得る。
【0040】
「薬学的に許容される」という用語は、本明細書で使用される場合、妥当な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答等なしにヒトおよび他の哺乳動物の組織と接触させて使用するのに適しており、合理的なベネフィット/リスク比に見合う構成成分を指す。「薬学的に許容される塩」は、レシピエントへの投与時に、本発明の化合物を直接的または間接的に提供することができる任意の非毒性の塩を意味する。「薬学的に許容される対イオン」は、レシピエントへの投与の際に、塩から放出されるときに毒性でない塩のイオン部分である。
【0041】
薬学的に許容される塩を形成するために一般に用いられる酸には、無機酸、例えば二硫化水素、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸およびリン酸、ならびに有機酸、例えば、パラ-トルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、重酒石酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ベシル酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、ギ酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、乳酸、シュウ酸、パラ-ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸および酢酸、ならびに関連の無機および有機酸が含まれる。したがって、このような薬学的に許容される塩には、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-二酸塩、ヘキシン-1,6-二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、β-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、マンデル酸塩および他の塩が含まれる。一実施形態では、薬学的に許容される酸付加塩には、鉱酸、例えば塩酸および臭化水素酸を用いて形成された塩、特に有機酸、例えばマレイン酸を用いて形成された塩が含まれる。一実施形態では、薬学的に許容される塩を形成するために一般に用いられる酸には、少なくとも1つの水素が重水素で置き換えられている、先に列挙される無機酸が含まれる。
【0042】
本発明の化合物(例えば、式Iの化合物)は、例えば、重水素置換またはその他の方法の結果として不斉炭素原子を含有し得る。したがって、本発明の化合物は、個々のエナン
チオマー、または2つのエナンチオマーの混合物のいずれかとして存在することができる。したがって、本発明の化合物は、ラセミ混合物もしくは異なる割合のエナンチオマー(scalemic)混合物のいずれかとして、または別の可能な立体異性体を実質的に含まない個々のそれぞれの立体異性体として存在し得る。「他の立体異性体を実質的に含まない」という用語は、本明細書で使用される場合、25%未満の他の立体異性体、好ましくは10%未満の他の立体異性体、より好ましくは5%未満の他の立体異性体、最も好ましくは2%未満の他の立体異性体が存在することを意味する。所与の化合物について個々のエナンチオマーを得るまたは合成する方法は、当技術分野で公知であり、最終化合物、または出発材料もしくは中間体に実行可能な場合には適用され得る。
【0043】
別段指定されない限り、開示される化合物が命名されるか、または立体化学を特定しない構造によって図示され、1つまたは1つより多くのキラル中心を有する場合、化合物のあらゆる可能な立体異性体を表すと理解される。
【0044】
「安定な化合物」という用語は、本明細書で使用される場合、それらの製造を可能にするのに十分な安定性を有し、本明細書において詳説される目的(例えば、治療生成物への製剤化、治療化合物の生成において使用するための中間体、単離可能または保存可能な中間体化合物、治療剤に対して応答性の疾患または状態の処置)に有用となるのに十分な期間、化合物の完全性を維持する化合物を指す。
【0045】
「D」および「d」は、共に重水素を指す。「立体異性体」は、共にエナンチオマーおよびジアステレオマーを指す。「tert」および「t-」は、それぞれ第三級を指す。「sec」または「s-」は、それぞれ第二級を指す。「n-」は、ノルマルを指す。「i-」は、イソを指す。「US」は、米国を指す。
【0046】
「重水素で置換されている」は、1つまたは1つより多くの水素原子が、対応する数の重水素原子で置き換えられることを指す。
【0047】
本明細書を通して、変数は、一般的に言及され得るか(例えば、「各R」)、または具体的に言及され得る(例えば、R1、R2、R3等)。別段指定されない限り、変数が一般的に言及される場合、その特定の変数のすべての具体的な実施形態を含むことを意味する。
治療化合物
【0048】
ある特定の実施形態では、本発明は、構造式(I)の化合物を提供する
【化2】
、[式中、
R
1およびR
2は、独立に、-CH
3、-CH
2D、-CHD
2、および-CD
3から選択され、
Xは、-OHまたは-Fであり、
Y
1a、Y
1b、Y
2a、Y
2b、Y
3a、Y
3b、Y
4a、Y
4b、Y
5、Y
6、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、およびY
11は、それぞれ独立に、水素および重水素から選択され、
ただし、Y
1a、Y
1b、Y
2a、Y
2b、Y
3a、Y
3b、Y
4a、Y
4b、Y
5、Y
6、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、Y
11、R
1およびR
2の少なくとも1つは、重水素を含み、
ただし、Y
1a、Y
1b、Y
2a、およびY
2bが、それぞれ重水素である場合には、Y
3a、Y
3b、Y
4a、Y
4b、Y
5、Y
6、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、Y
11、R
1およびR
2の少なくとも1つは、重水素を含み、
ただし、Y
3a、Y
3b、Y
4a、およびY
4bが、それぞれ重水素である場合には、Y
1a、Y
1b、Y
2a、Y
2b、Y
5、Y
6、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、Y
11、R
1およびR
2の少なくとも1つは、重水素を含む]。
【0049】
さらなる実施形態では、本発明は、式中、R1およびR2が、独立に、-CH3、-CH2D、-CHD2、および-CD3から選択され、Xが、-OHまたは-Fであり、Y1a、Y1b、Y2a、Y2b、Y3a、Y3b、Y4a、Y4b、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、Y10、およびY11が、それぞれ独立に、水素および重水素から選択され、ただし、Y1a、Y1b、Y2a、Y2b、Y3a、Y3b、Y4a、Y4b、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、Y10、Y11、R1およびR2の少なくとも1つが、重水素を含む、構造式(I)の化合物を提供する。
【0050】
さらなる実施形態では、本発明は、構造式(II)の化合物(すなわち、構造式(I)の化合物のプロドラッグ)
【化3】
、または薬学的に許容されるその塩を提供する[式中、
R
1およびR
2は、独立に、-CH
3、-CH
2D、-CHD
2、および-CD
3から選択され、
R
3は、-C(O)-C
1~21アルキル(例えば、C(O)-C
1~6アルキル、-C(O)-C
5~19アルキル、-C(O)-C
9~17アルキル、または-C(O)-C
15アルキル(すなわち、パルミトイル))、-C(O)-C
2~8アルケニル、C(O)-C
2~8アルキニル、ポリエチレングリコール(PEG)、またはアミノ酸であり、
ここでアミノ酸は、そのカルボン酸基を介してR
3基が結合している酸素に結合し、それによって、アミノ酸エステルを形成し、
Y
1a、Y
1b、Y
2a、Y
2b、Y
3a、Y
3b、Y
4a、Y
4b、Y
5、Y
6、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、およびY
11は、それぞれ独立に、水素および重水素から選択され、
ただし、Y
1a、Y
1b、Y
2a、Y
2b、Y
3a、Y
3b、Y
4a、Y
4b、Y
5、Y
6、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、Y
11、R
1およびR
2の少なくとも1つは、重水素を含む]。構造式(II)の化合物のこの実施形態の態様では、Y
1a、Y
1b、Y
2a、およびY
2bが、それぞれ重水素である場合には、Y
3a、Y
3b、Y
4a、Y
4b、Y
5、Y
6、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、Y
11、R
1およびR
2の少なくとも1つは、重水素を含むことがさらに提供され、
ただし、Y
3a、Y
3b、Y
4a、およびY
4bが、それぞれ重水素である場合には、Y
1a、Y
1b、Y
2a、Y
2b、Y
5、Y
6、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、Y
11、R
1およびR
2の少なくとも1つは、重水素を含む]。
【0051】
構造式(I)の化合物または構造式(II)の化合物のある特定の実施形態では、R1およびR2は、独立に、-CH3および-CD3から選択される。この実施形態の態様では、Xは、存在する場合、-OHである。この実施形態のさらなる態様またはこの実施形態の先の態様のいずれかでは、Y7、Y8、Y9、Y10、およびY11は、それぞれ、水素である。この実施形態のさらなる態様またはこの実施形態の先の態様のいずれかでは、Y4a、Y4b、Y5、Y7、Y8、Y9、Y10、およびY11は、それぞれ、水素である。この実施形態のまたさらなる態様またはこの実施形態の先の態様のいずれかでは、Y1aおよびY1bは、同じである。この実施形態のまたさらなる態様またはこの実施形態の先の態様のいずれかでは、Y2aおよびY2bは、同じである。この実施形態のまたさらなる態様またはこの実施形態の先の態様のいずれかでは、Y3aおよびY3bは、同じである。この実施形態のまたさらなる態様またはこの実施形態の先の態様のいずれかでは、Y4aおよびY4bは、同じである。
【0052】
この実施形態のまたさらなる態様では、R1およびR2は、独立に、-CH3および-CD3から選択され、Xは、存在する場合、-OHであり、Y1aおよびY1bは、同じであり、Y2aおよびY2bは、同じであり、Y3aおよびY3bは、同じであり、Y4aおよびY4bは、同じであり、Y7、Y8、Y9、Y10、およびY11は、それぞれ、水素である。
【0053】
この実施形態のまたさらなる態様では、R1およびR2は、独立に、-CH3および-CD3から選択され、Xは、存在する場合、-OHであり、Y4a、Y4b、Y5、Y7、Y8、Y9、Y10、およびY11は、それぞれ、水素であり、Y1a、Y1b、Y2aおよびY2bは、同じであり、Y3aおよびY3bは、同じである。この実施形態のまたさらなる態様では、R1およびR2は、独立に、-CH3および-CD3から選択され、Xは、存在する場合、-OHであり、Y4a、Y4b、Y5、Y7、Y8、Y9、Y10、およびY11は、それぞれ、水素であり、Y1aおよびY1bは、同じであり、Y2a、Y2b、Y3aおよびY3bは、同じである。この実施形態のまたさらなる態様またはこの実施形態の先の態様のいずれかでは、Y2aおよびY2bは、重水素である。この実施形態のまたさらなる態様またはこの実施形態の先の態様のいずれかでは、重水素と指定されていない任意の原子は、その天然同位体存在量で存在する。
【0054】
構造式(I)の化合物または構造式(II)の化合物の別の実施形態では、Y4a、Y4b、Y5、Y7、Y8、Y9、Y10、およびY11は、それぞれ、水素である。この実施形態のまたさらなる態様またはこの実施形態の先の態様のいずれかでは、Y1aおよびY1bは、同じである。この実施形態のまたさらなる態様またはこの実施形態の先の態
様のいずれかでは、Y2aおよびY2bは、同じである。この実施形態のまたさらなる態様またはこの実施形態の先の態様のいずれかでは、Y3aおよびY3bは、同じである。この実施形態のまたさらなる態様では、R1およびR2は、独立に、-CH3および-CD3から選択され、Xは、存在する場合、-OHであり、Y4a、Y4b、Y5、Y7、Y8、Y9、Y10、およびY11は、それぞれ、水素であり、Y1a、Y1b、Y2aおよびY2bは、同じであり、Y3aおよびY3bは、同じである。この実施形態のまたさらなる態様では、R1およびR2は、独立に、-CH3および-CD3から選択され、Xは、存在する場合、-OHであり、Y4a、Y4b、Y5、Y7、Y8、Y9、Y10、およびY11は、それぞれ、水素であり、Y1aおよびY1bは、同じであり、Y2a、Y2b、Y3aおよびY3bは、同じである。この実施形態のまたさらなる態様またはこの実施形態の先の態様のいずれかでは、Y2aおよびY2bは、重水素である。この実施形態のまたさらなる態様またはこの実施形態の先の態様のいずれかでは、重水素と指定されていない任意の原子は、その天然同位体存在量で存在する。
【0055】
構造式(I)の化合物または構造式(II)の化合物の別の実施形態では、Y1aおよびY1bは、同じである。この実施形態のまたさらなる態様では、Y2aおよびY2bは、同じである。この実施形態のまたさらなる態様またはこの実施形態の先の態様のいずれかでは、Y3aおよびY3bは、同じである。この実施形態のまたさらなる態様では、R1およびR2は、独立に、-CH3および-CD3から選択され、Xは、存在する場合、-OHであり、Y4a、Y4b、Y5、Y7、Y8、Y9、Y10、およびY11は、それぞれ、水素であり、Y1a、Y1b、Y2aおよびY2bは、同じであり、Y3aおよびY3bは、同じである。この実施形態のまたさらなる態様では、R1およびR2は、独立に、-CH3および-CD3から選択され、Xは、存在する場合、-OHであり、Y4a、Y4b、Y5、Y7、Y8、Y9、Y10、およびY11は、それぞれ、水素であり、Y1aおよびY1bは、同じであり、Y2a、Y2b、Y3aおよびY3bは、同じである。この実施形態のまたさらなる態様またはこの実施形態の先の態様のいずれかでは、Y2aおよびY2bは、重水素である。この実施形態のまたさらなる態様またはこの実施形態の先の態様のいずれかでは、重水素と指定されていない任意の原子は、その天然同位体存在量で存在する。
【0056】
構造式(I)の化合物または構造式(II)の化合物の別の実施形態では、Y2aおよびY2bは、同じである。この実施形態のまたさらなる態様では、Y3aおよびY3bは、同じである。この実施形態のまたさらなる態様では、R1およびR2は、独立に、-CH3および-CD3から選択され、Xは、存在する場合、-OHであり、Y4a、Y4b、Y5、Y7、Y8、Y9、Y10、およびY11は、それぞれ、水素であり、Y1a、Y1b、Y2aおよびY2bは、同じであり、Y3aおよびY3bは、同じである。この実施形態のまたさらなる態様では、R1およびR2は、独立に、-CH3および-CD3から選択され、Xは、存在する場合、-OHであり、Y4a、Y4b、Y5、Y7、Y8、Y9、Y10、およびY11は、それぞれ、水素であり、Y1aおよびY1bは、同じであり、Y2a、Y2b、Y3aおよびY3bは、同じである。この実施形態のまたさらなる態様またはこの実施形態の先の態様のいずれかでは、Y2aおよびY2bは、重水素である。この実施形態のまたさらなる態様またはこの実施形態の先の態様のいずれかでは、重水素と指定されていない任意の原子は、その天然同位体存在量で存在する。
【0057】
構造式(I)の化合物または構造式(II)の化合物の別の実施形態では、Y3aおよびY3bは、同じである。この実施形態のまたさらなる態様では、R1およびR2は、独立に、-CH3および-CD3から選択され、Xは、存在する場合、-OHであり、Y4a、Y4b、Y5、Y7、Y8、Y9、Y10、およびY11は、それぞれ、水素であり、Y1a、Y1b、Y2aおよびY2bは、同じであり、Y3aおよびY3bは、同じである。この実施形態のまたさらなる態様では、R1およびR2は、独立に、-CH3およ
び-CD3から選択され、Xは、存在する場合、-OHであり、Y4a、Y4b、Y5、Y7、Y8、Y9、Y10、およびY11は、それぞれ、水素であり、Y1aおよびY1bは、同じであり、Y2a、Y2b、Y3aおよびY3bは、同じである。この実施形態のまたさらなる態様またはこの実施形態の先の態様のいずれかでは、Y2aおよびY2bは、重水素である。この実施形態のまたさらなる態様またはこの実施形態の先の態様のいずれかでは、重水素と指定されていない任意の原子は、その天然同位体存在量で存在する。
【0058】
構造式(I)の化合物または構造式(II)の化合物の別の実施形態では、R1およびR2は、独立に、-CH3および-CD3から選択され、Xは、存在する場合、-OHであり、Y4a、Y4b、Y5、Y7、Y8、Y9、Y10、およびY11は、それぞれ、水素であり、Y1a、Y1b、Y2aおよびY2bは、同じであり、Y3aおよびY3bは、同じである。この実施形態のまたさらなる態様では、Y2aおよびY2bは、重水素である。この実施形態のまたさらなる態様またはこの実施形態の先の態様のいずれかでは、重水素と指定されていない任意の原子は、その天然同位体存在量で存在する。
【0059】
構造式(I)の化合物または構造式(II)の化合物の別の実施形態では、R1およびR2は、独立に、-CH3および-CD3から選択され、Xは、存在する場合、-OHであり、Y4a、Y4b、Y5、Y7、Y8、Y9、Y10、およびY11は、それぞれ、水素であり、Y1aおよびY1bは、同じであり、Y2a、Y2b、Y3aおよびY3bは、同じである。この実施形態のまたさらなる態様では、Y2aおよびY2bは、重水素である。この実施形態のまたさらなる態様またはこの実施形態の先の態様のいずれかでは、重水素と指定されていない任意の原子は、その天然同位体存在量で存在する。
【0060】
構造式(I)の化合物または構造式(II)の化合物の別の実施形態では、Y2aおよびY2bは、重水素である。この実施形態のまたさらなる態様では、重水素と指定されていない任意の原子は、その天然同位体存在量で存在する。
【0061】
構造式(I)の化合物または構造式(II)の化合物の別の実施形態では、重水素と指定されていない任意の原子は、その天然同位体存在量で存在する。
【0062】
一部の実施形態では、構造式(I)または構造式(II)の化合物は、表1(下)に記載される化合物のいずれか1つから選択され、ここで、Xは、存在する場合、-OHであり、Y
1aおよびY
1bは、同じであり、Y
2aおよびY
2bは、同じであり、Y
3aおよびY
3bは、同じであり、Y
4a、Y
4b、Y
5、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、およびY
11は、それぞれ、水素である。
【表1-1】
【表1-2】
【0063】
一部の実施形態では、化合物は、表1(上)に記載される化合物のいずれか1つから選択され、ここで、重水素と指定されていない任意の原子は、その天然同位体存在量で存在する。
【0064】
一部の実施形態では、構造式(I)または構造式(II)の化合物は、表2(下)に記載される化合物のいずれか1つから選択され、ここで、Xは、存在する場合、-OHであり、Y
1aおよびY
1bは、同じであり、Y
2aおよびY
2bは、同じであり、Y
3aおよびY
3bは、同じであり、Y
4a、Y
4b、Y
5、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、およびY
11は、それぞれ、水素である。
【表2-1】
【表2-2】
【0065】
一部の実施形態では、化合物は、表2(上)に記載される化合物のいずれか1つから選択され、ここで、重水素と指定されていない任意の原子は、その天然同位体存在量で存在する。
【0066】
一部の実施形態では、構造式(I)または構造式(II)の化合物は、表3(下)に記載される化合物のいずれか1つから選択され、ここで、Xは、-OHであり、Y
1aおよびY
1bは、同じであり、Y
2aおよびY
2bは、同じであり、Y
3aおよびY
3bは、同じであり、Y
4aおよびY
4bは、同じであり、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、およびY
11は、それぞれ、水素である。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【0067】
一部の実施形態では、化合物は、表3(上)に記載される化合物のいずれか1つから選択され、ここで、重水素と指定されていない任意の原子は、その天然同位体存在量で存在する。
【0068】
一部の実施形態では、構造式(I)または構造式(II)の化合物は、表4(下)に記載される化合物のいずれか1つから選択され、ここで、Xは、-OHであり、Y
1aおよびY
1bは、同じであり、Y
2aおよびY
2bは、同じであり、Y
3aおよびY
3bは、同じであり、Y
4aおよびY
4bは、同じであり、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、およびY
11は、それぞれ、水素である。
【表4-1】
【表4-2】
【0069】
一部の実施形態では、化合物は、表4(上)に記載される化合物のいずれか1つから選択され、ここで、重水素と指定されていない任意の原子は、その天然同位体存在量で存在する。
【0070】
本発明の化合物の一部の実施形態では、Y1aまたはY1bが重水素である場合、重水素と指定された各Y1aまたはY1bにおける重水素の取り込みレベルは、少なくとも52.5%、少なくとも75%、少なくとも82.5%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%である。
【0071】
本発明の化合物の一部の実施形態では、Y2aまたはY2bが重水素である場合、重水素と指定された各Y2aまたはY2bにおける重水素の取り込みレベルは、少なくとも52.5%、少なくとも75%、少なくとも82.5%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%である。
【0072】
本発明の化合物の一部の実施形態では、Y3aまたはY3bが重水素である場合、重水素と指定された各Y3aまたはY3bにおける重水素の取り込みレベルは、少なくとも52.5%、少なくとも75%、少なくとも82.5%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%である。
【0073】
本発明の化合物の一部の実施形態では、Y4aまたはY4bが重水素である場合、重水素と指定された各Y4aまたはY4bにおける重水素の取り込みレベルは、少なくとも52.5%、少なくとも75%、少なくとも82.5%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%である。
【0074】
本発明の化合物の一部の実施形態では、Y5が重水素である場合、重水素と指定された各Y5における重水素の取り込みレベルは、少なくとも52.5%、少なくとも75%、少なくとも82.5%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%である。
【0075】
本発明の化合物の一部の実施形態では、Y6が重水素である場合、重水素と指定された各Y6における重水素の取り込みレベルは、少なくとも52.5%、少なくとも75%、少なくとも82.5%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%である。
【0076】
本発明の化合物の一部の実施形態では、Y7が重水素である場合、重水素と指定された各Y7における重水素の取り込みレベルは、少なくとも52.5%、少なくとも75%、少なくとも82.5%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%である。
【0077】
本発明の化合物の一部の実施形態では、Y8が重水素である場合、重水素と指定された各Y8における重水素の取り込みレベルは、少なくとも52.5%、少なくとも75%、
少なくとも82.5%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%である。
【0078】
本発明の化合物の一部の実施形態では、Y9が重水素である場合、重水素と指定された各Y9における重水素の取り込みレベルは、少なくとも52.5%、少なくとも75%、少なくとも82.5%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%である。
【0079】
本発明の化合物の一部の実施形態では、Y10が重水素である場合、重水素と指定された各Y10における重水素の取り込みレベルは、少なくとも52.5%、少なくとも75%、少なくとも82.5%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%である。
【0080】
本発明の化合物の一部の実施形態では、Y11が重水素である場合、重水素と指定された各Y11における重水素の取り込みレベルは、少なくとも52.5%、少なくとも75%、少なくとも82.5%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%である。
【0081】
本発明の化合物の一部の実施形態では、R1が-CH2D、-CHD2、または-CD3である場合、R1のそれぞれ指定された重水素における重水素の取り込みレベルは、少なくとも52.5%、少なくとも75%、少なくとも82.5%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%である。
【0082】
本発明の化合物の一部の実施形態では、R2が-CH2D、-CHD2、または-CD3である場合、R2のそれぞれ指定された重水素における重水素の取り込みレベルは、少なくとも52.5%、少なくとも75%、少なくとも82.5%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%である。
【0083】
実施形態の別の組では、本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて重水素と指定されていない任意の原子は、その天然同位体存在量で存在する。
【0084】
本発明の化合物の一部の実施形態では、それぞれ指定された重水素原子における重水素の取り込みは、少なくとも52.5%、少なくとも75%、少なくとも82.5%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%である。
【0085】
本発明の化合物の一部の実施形態では、Y1a、Y1b、Y2a、Y2b、Y3a、Y3b、Y4a、Y4b、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、Y10、およびY11の少なくとも1つは、水素であり、R1が、-CH3、-CH2Dもしくは-CHD2であるか、またはR2が、-CH3、-CH2Dもしくは-CHD2である。
【0086】
構造式(I)の化合物の合成は、本明細書に開示される例示的合成および実施例を参照することによって、当技術分野の合成化学者によって容易に達成され得る。構造式(I)の化合物およびその中間体の調製のための使用手順に類似の関連手順は、例えば、米国特許出願公開第2005/0,261,341号、Huck, L., et. al., Org. Lett.,
2017, 19, 3747-3750、Reddy,B.P.らのWO2017017630A1、Winkler, M., et. al., Adv. Synth. Cat., 2007, 8+9, 1475-1480、Barker,O.らのWO2012035023A1、Ratton,S.らのEP0037353A1、Huet, L., et. al., Synlett, 2012, 23, 1230-1234、Senaweera, S.,
et. al., Chem. Comm., 2017, 53, 7545-7548、Shaik, S., et. al., Eur.
J. Med. Chem., 2017, 126, 36-51、Mahtab, R., et. al., J. Chem. Phar
m. Sci., 2014, 7, 34-38、Sakamuri, S., et. al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 2001, 11, 495-500に開示されている。
【0087】
このような方法は、本明細書に記述される化合物を合成するために、対応する重水素化されたならびに必要に応じて他の同位体を含有する試薬および/もしくは中間体を利用するか、または同位体原子を化学構造に導入するための当技術分野で公知の標準合成プロトコールを行使して行うことができる。
【0088】
例示的合成
構造式(I)の化合物を合成するための好都合な方法は、スキーム1に図示される。
スキーム1
【化4】
【化5】
【0089】
ボリナンセリン(7a)の合成は、Lauxらの米国特許出願公開第2005/026
1341号に記載されており、カルボン酸1から対応するワインレブアミド2への変換により、メトキシメチルアミンおよびCDI(カルボニルジイミダゾール)を用いる処理を介して開始する。次に、2と臭化アリールから生成したグリニャール試薬3の反応により、ケトン4が得られる。これは、R
1、R
2、Y
7、Y
8およびY
9位置において不斉重水素化パターンを用いてボリナンセリンアナログの調製を可能にするために、Lauxらによって記載されている経路を修正したものである。Huck, L., et. al., Org. Lett., 2017, 19, 3747-3750に記載される通り、提案されるアリールグリニャールとワインレブアミドとの反応を図示するすべての部分(portio)の例が以下に示される。
【化6】
【0090】
次に、Boc保護基の除去に続いて、アルキルブロミド9(第一級アルコール8から1ステップで調製した)との反応により、ケトン6が生成し、これは、キラル触媒((R)-メチル-CBS)の存在下でボラン-ジメチルスルフィドを使用して不斉還元を介してボリナンセリンに容易に変換される。
【0091】
中間体6の最終的な変換プロセスを、Y5位置において高レベルの%のDを得るために用いた後(K2CO3/D2OまたはDClを使用する)、最終的な不斉還元を行うことができる。あるいは、この段階で高レベルの%のHが必要とされる場合には、Y5位置を完全に脱濃縮するように、中間体6をK2CO3/H2OまたはHClに晒すことが役に立つ場合がある。
【0092】
先に示される通り、スキーム1で提示された重水素化アナログを入手するには、以下の合成中間体および試薬:1、3、8およびBD3・SMe2が必要である。試薬BD3・SMe2は、Cambridge Isotope Laboratoriesから商業的に入手可能であるが、中間体1、3、および8の重水素化アナログを入手するには、以下のスキーム2~4に示される通り、商業的に入手可能な重水素化前駆体および試薬からの個々の合成調製が必要である。
【0093】
カルボン酸1のすべての部分のアナログの合成(1a、Y3a=Y3b=Y4a=Y4b=Y5=H)は、以下のスキーム2aに示される。その順序の最初のステップは、ReddyらのWO2017/017630A1によって記載されている手順に従って、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)を用いる処理を介するケトン10a(Sigma Aldrichから商業的に入手可能)の還元を含む。次に、生じたアルコール11aは、Winkler et. al., Adv. Synth. Cat., 2007, 8+9,1475-1480において報告された
2つのステップ手順を介して、ニトリル12aに変換される。次に、ニトリル12aは、構造的に類似の化合物の加水分解についてBarkerらのWO2012/035023A1に記載されている手順に従って、水酸化カリウム水溶液を用いる処理を介してカルボン酸1aに加水分解される。次に、スキーム2aにおいて水素化ホウ素ナトリウムを重水素化ホウ素ナトリウム(Cambridge Isotope Laboratoriesから商業的に入手可能なNaBD4(99%D))で置き換えることにより、1b(Y3a=Y3b=Y4a=Y4b=H、Y5=D)を提供する(スキーム2b)。
【0094】
残りのアナログ(1c~1h)は、以下のスキーム2c~2hに図示される通り、商業
的に入手可能な適正に標識された出発材料(CDN Isotopesから入手可能な10b(99%D)、APIChemicalから入手可能な10c(95~98%D)およびCombiPhosから入手可能な10d(98%D))から出発して同様に調製することができる。
【0095】
適正に重水素化された試薬を使用することにより、Y
3a、Y
3b、Y
4a、Y
4b、およびY
5のいずれかにおいて、例えば、約90%、約95%、約97%、約98%または約99%の重水素の取り込みで、構造式(I)の化合物(例えば、化合物7)または本明細書の任意の適正な中間体のY
3a、Y
3b、Y
4a、Y
4b、およびY
5位置に重水素を取り込むことが可能である。
スキーム2.中間体1a~1hの合成
【化7】
【化8】
【化9】
【0096】
臭化アリール3のすべての部分のアナログ(3a、Y7=Y8=Y9=H;R1=R2=CH3)は、Alfa Aesarから商業的に入手可能であるが、文献の手順に従うその調製は、スキーム3aに示される。その順序の最初のステップは、Ratton,Sらの欧州特許第0037353A1号によって記載される通り、酢酸ナトリウムおよび酢酸の存在下でカテコール(13a、Alfa Aesarから商業的に入手可能)をメタノールと反応させて、モノメチルエーテル14aを形成することを含む。次に、Huet, L. et. al., Synlett, 2012, 23, 1230-1234に例示されている通り、生じたフェノ
ールは、臭素化に続いてヨウ化メチルを用いるアルキル化を含む2ステッププロセスを介して3aに変換することができる。
【0097】
残りのアナログ(3b~3h)は、スキーム3aに示される一般経路に従って、カテコール(13a)またはd4-カテコール(13b(96%D)、Aldrichから商業的に入手可能な)のいずれかから出発して、適宜、d4-メタノール(99.8%D、Aldrichから商業的に入手可能)をメタノールの代わりに使用し、かつ/またはd3-ヨウ化メチル(99.5%D、Aldrichから商業的に入手可能)をヨウ化メチルの代わりに使用して、調製することができる(スキーム3b~3h)。
【0098】
適正に重水素化された試薬を使用することにより、Y
7、Y
8、Y
9、R
1、およびR
2のいずれかにおいて、例えば、約90%、約95%、約97%、約98%または約99%の重水素の取り込みで、構造式(I)の化合物(例えば、化合物7)または本明細書の任意の適正な中間体のY
7、Y
8、Y
9、R
1、およびR
2位置に重水素を取り込むこと
が可能である。
スキーム3.中間体3a~3hの合成
【化10】
【化11】
【0099】
第一級アルコール8のすべての部分のアナログ(8a、Y1a=Y1b=Y2a=Y2b=Y10=Y11=H)は、Aldrichから商業的に入手可能であるが、文献の手順に従うその調製は、スキーム4aに示される。その順序の最初のステップは、Senaweera et. al., Chem. Comm., 2017, 53, 7545-7548に記載される方法に従って、4-フルオロ安息香酸(16a、Aldrichから商業的に入手可能)を水素化リチウムアルミニウムで還元して、ベンジルアルコール17aを得ることを含む。次に、Shaik et.
al., Eur. J. Med. Chem., 2017, 126, 36-51に記載される通り、三臭化リン(phosphorous tribromide)を用いるその後の処理によって、臭化アルキル18aが提供
され、次にそれを、Mahtab et. al., J. Chem. Pharm. Sci., 2014, 7, 34-38
によって報告された2ステップ手順を介して、カルボン酸19aに変換する。最後に、Sakamuri et. al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 2001, 11, 495-500の手順に従って、カルボン酸19aをボランで還元することによって、第一級アルコール8aが得られる。
【0100】
残りのアナログ(8b~8h)は、スキーム4aに示される一般経路に従って、4-フルオロ安息香酸(16a)またはd4-4-フルオロ安息香酸(16b(99%D)、CDN Isotopeから商業的に入手可能)のいずれかから出発して、適宜、LiAlD4(98%D、Cambridge Isotope Laboratoriesから商業的に入手可能)をLiAlH4の代わりに使用し、かつ/またはBD3(98%D、Cambridge Isotope Laboratoriesから商業的に入手可能)をBH3の代わりに使用して、調製することができる(スキーム8b~8h)。
【0101】
適正に重水素化された試薬を使用することにより、Y
1a、Y
1b、Y
2a、Y
2b、Y
10、およびY
11のいずれかにおいて、例えば、約90%、約95%、約97%、約98%または約99%の重水素の取り込みで、構造式Iの化合物(例えば、化合物7)または本明細書の任意の適正な中間体のY
1a、Y
1b、Y
2a、Y
2b、Y
10、およびY
11位置に重水素を取り込むことが可能である。
スキーム4.中間体8a~8hの合成
【化12】
【化13】
【化14】
【0102】
d
27-ボリナンセリン(7h)の提案される合成は、本明細書に記載される重水素化中間体を使用する代表的な例として、以下のスキーム5に図示される。
スキーム5.d
27-ボリナンセリン(7h)の代表的な合成
【化15】
【化16】
【0103】
適正に重水素化された試薬を使用することにより、Y1a、Y1b、Y2a、Y2b、Y3a、Y3b、Y4a、Y4b、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、Y10、Y11、R1、および/またはR2のいずれかにおいて、例えば、約90%、約95%、約97%または約99%の重水素の取り込みで、構造式(I)の化合物または本明細書の任意の適正な中間体のY1a、Y1b、Y2a、Y2b、Y3a、Y3b、Y4a、Y4b、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、Y10、Y11、R1、およびR2位置に重水素を取り込むことが可能である。
【0104】
先に示された特定の手法および化合物は、制限することを企図しない。本明細書のスキームの化学構造は、同じ変数名(すなわち、R1、R2、R3等)によって特定されていても特定されていなくても、本明細書の化合物の式における対応する位置の化学基の定義(部分、原子等)に応じて本明細書に定義される変数を図示している。別の化合物の合成において使用するための化合物構造における化学基の適切性は、当業者の知識の範囲内である。
【0105】
本明細書のスキームに明確に示されていない経路におけるものを含む、構造式(I)の化合物およびそれらの合成前駆体を合成するさらなる方法は、当技術分野の化学者の手段の範囲内である。本明細書に記載される方法は、さらに、本明細書に具体的に記載されるステップの前または後のいずれかに、本明細書の化合物の合成を最終的に可能にするために適切な保護基を付加または除去するステップを含むこともできる。さらに、様々な合成ステップを、所望の化合物を得るための代替順序または順番で実施することができる。適用できる化合物の合成に有用な合成化学変換および保護基の方法論(保護および脱保護)は、当技術分野で公知であり、それには、例えば、Larock R, Comprehensive Organic
Transformations, VCH Publishers (1989)、Greene, TW, et al., Protective
Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley and Sons (1999)、Fieser, L., et al., Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis,
John Wiley and Sons (1994)、およびPaquette, L, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1995)ならびにこれら
のその後の版に記載されているものが含まれる。
【0106】
本発明によって想定される置換基および変数の組合せは、安定な化合物を形成する組合せだけである。
組成物
【0107】
本発明はまた、有効量の構造式(I)(例えば、第1もしくは第2の実施形態、または先に記載される任意の実施形態もしくはその実施形態の態様の)もしくは構造式(II)の化合物、または前記化合物の薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。担体は、製剤のその他の成分と適合性があり、薬学的に許容される担体の場合には、医薬において使用される量でそのレシピエントにとって有害でないという意味で「許容される」。
【0108】
本発明の医薬組成物において使用され得る薬学的に許容される担体、アジュバントおよびビヒクルには、それに限定されるものではないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばホスフェート、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が含まれる。
【0109】
必要な場合には、医薬組成物における本発明の化合物の溶解度およびバイオアベイラビリティは、当技術分野において周知の方法によって増強され得る。ある方法は、製剤に脂質賦形剤を使用することを含む。"Oral Lipid-Based Formulations:Enhancing the Bioavailability of Poorly Water-Soluble Drugs (Drugs and the Pharmaceutical Sciences)," David J. Hauss, ed. Informa Healthcare, 2007および"Role
of Lipid Excipients in Modifying Oral and Parenteral Drug Delivery:Basic Principles and Biological Examples," Kishor M. Wasan, ed. Wiley-Interscience, 2006を参照されたい。
【0110】
バイオアベイラビリティを増強する別の公知の方法は、必要に応じてLUTROL(登録商標)およびPLURONIC(登録商標)(BASF Corporation)などのポロキサマー、またはエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロックコポリマーを用いて製剤化された本発明の化合物の非晶質形態の使用である。米国特許第7,014,866号および米国特許出願公開第20060094744号および同第20060079502号を参照されたい。
【0111】
本発明の医薬組成物には、経口、直腸、経鼻、局所(頬側および舌下を含む)、膣内または非経口(皮下、筋肉内、静脈内および皮内を含む)投与に適したものが含まれる。ある特定の実施形態では、本明細書における式の化合物は、経皮的に投与される(例えば、経皮パッチまたはイオン泳動技術を使用する)。他の製剤は、単位剤形、例えば、錠剤、持続放出カプセル剤、およびリポソームで好都合に提示することができ、調剤分野で周知の任意の方法によって調製することができる。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott Williams & Wilkins, Baltimore, MD (20t
h ed. 2000)を参照されたい。
【0112】
このような調製方法は、投与される分子を、1つまたは1つより多くの補助成分を構成する担体などの成分と合わせるステップを含む。一般に、組成物は、活性成分を、液体担体、リポソームもしくは微粉砕固体担体、またはその両方と均一にかつ十分に合わせ、次に必要な場合には、生成物を成形することによって調製される。
【0113】
別の実施形態は、構造式(I)の化合物(例えば、本明細書に記載される任意の実施形態または実施形態の態様の)を含む、制御放出性の医薬組成物である。
【0114】
制御放出性の医薬組成物の一態様では、制御放出性の医薬組成物は、放出制御剤および必要に応じて薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。
【0115】
放出制御剤は、親水性放出制御剤、疎水性放出制御剤、またはそれらの混合物から選択することができる。
【0116】
親水性放出制御剤は、それに限定されるものではないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、キサンタンガム、グアーガム、キトサンおよびその誘導体、カルボマー、カラゲニン、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリグリコール化グリセリド、ポリエチレングリコール、またはそれらの混合物から選択される。
【0117】
疎水性放出制御剤は、それに限定されるものではないが、ポリビニルアセテート分散液、エチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース(低分子量、中分子量または高分子量)、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、セルローストリアセテート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、およびポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ワックス、例えば蜜蝋、カルナウバ(camauba)ワックス、パラ
フィンワックス、微結晶性ワックス、およびオゾケライト;脂肪アルコール、例えばセトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコールおよびミリスチルアルコール、ならびに脂肪酸エステル、例えばモノステアリン酸グリセリル;モノオレイン酸グリセロール、アセチル化モノグリセリド、トリステアリン、トリパルミチン、セチルエステルワックス、パルミトステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、または水素化植物油から選択される。
【0118】
放出制御剤の量は、組成物の約5重量%~約95重量%、より典型的には、組成物の約25重量%~約75重量%、より好ましくは、組成物の約35重量%~約65重量%の範囲であってもよい。
【0119】
薬学的に許容される賦形剤には、それに限定されるものではないが、当業者に公知の希釈剤、結合剤、可溶化剤、溶解増強剤、細孔形成剤、浸透剤(osmagent)、ガス形成剤、滑沢剤および流動促進剤が含まれる。
【0120】
別の実施形態は、構造式(I)の化合物(または構造式(I)の化合物の任意の実施形態もしくは実施形態の態様)、親水性放出制御剤、疎水性放出制御剤、およびそれらの混合物から選択される放出制御剤、ならびに必要に応じて薬学的に許容される賦形剤を含む
、制御放出性の医薬組成物である。
【0121】
別の実施形態は、構造式(I)の化合物(または構造式(I)の化合物の任意の実施形態もしくは実施形態の態様)、親水性放出制御剤、疎水性放出制御剤、およびそれらの混合物から選択される放出制御剤、ならびに必要に応じて薬学的に許容される賦形剤を含む、制御放出性の医薬組成物であり、ここで、親水性放出制御剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、キサンタンガム、グアーガム、キトサンおよびその誘導体、カルボマー、カラゲニン、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリグリコール化グリセリド、ポリエチレングリコール、ならびにそれらの混合物から選択される。
【0122】
別の実施形態は、構造式(I)の化合物(または構造式(I)の化合物の任意の実施形態もしくは実施形態の態様)、親水性放出制御剤、疎水性放出制御剤、およびそれらの混合物から選択される放出制御剤、ならびに必要に応じて薬学的に許容される賦形剤を含む、制御放出性の医薬組成物であり、ここで、疎水性放出制御剤は、ポリビニルアセテート分散液、エチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース(低分子量、中分子量または高分子量)、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、セルローストリアセテート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、およびポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ワックス、例えば蜜蝋、カルナウバワックス、パラフィンワックス、微結晶性ワックス、およびオゾケライト;脂肪アルコール、例えばセトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコールおよびミリスチルアルコール、ならびに脂肪酸エステル、例えばモノステアリン酸グリセリル;モノオレイン酸グリセロール、アセチル化モノグリセリド、トリステアリン、トリパルミチン、セチルエステルワックス、パルミトステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、および水素化植物油から選択される。
【0123】
2013年6月6日公開の米国特許出願公開第2013/0143897号は、ブロナンセリンを含む制御放出性の医薬組成物を記載している。記載されている組成物では、ブロナンセリンを、構造式(I)の化合物(または構造式(I)の化合物の任意の実施形態もしくは実施形態の態様)で置換して、本発明の化合物の制御放出性の医薬組成物を形成することができる。
【0124】
ある特定の実施形態では、化合物は、経口投与される。経口投与に適した本発明の組成物は、所定量の活性成分をそれぞれ含有する、カプセル剤、サシェ剤、または錠剤などの別個の単位;散剤もしくは顆粒剤;水性液体もしくは非水性液体中の溶液剤もしくは懸濁液剤;水中油液体エマルション剤;油中水液体エマルション剤;リポソームに充填されたもの;またはボーラス等として提示され得る。軟ゼラチンカプセルは、このような懸濁液剤を含有するのに有用であり、これは化合物の吸収速度を有益に増大することができる。
【0125】
経口使用のための錠剤の場合、一般に使用される担体には、ラクトースおよびトウモロコシデンプンが含まれる。滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムも典型的に添加される。カプセル形態での経口投与について、有用な希釈剤には、ラクトースおよび乾燥トウモロコシデンプンが含まれる。水性懸濁液剤が経口投与される場合、活性成分は、乳化剤および懸濁化剤と合わされる。所望される場合には、ある特定の甘味剤および/または香味剤および/または着色剤を添加してもよい。
【0126】
経口投与に適した組成物には、フレーバー付き基剤、通常、スクロースおよびアカシアまたはトラガントに成分を含む舐剤、ならびに不活性基剤、例えばゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアに活性成分を含むトローチ剤が含まれる。
【0127】
非経口投与に適した組成物には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および製剤を所期のレシピエントの血液と等張にする溶質を含有することができる水性および非水性滅菌注射溶液剤、ならびに懸濁化剤および増粘剤を含み得る水性および非水性滅菌懸濁液剤が含まれる。製剤は、単位用量または複数用量容器、例えば密封アンプルおよびバイアルで提示することができ、使用直前に、注射用の滅菌液体担体、例えば水を添加するだけでよいフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することができる。即時注射溶液剤および懸濁液剤は、滅菌散剤、顆粒剤および錠剤から調製することができる。
【0128】
このような注射溶液剤は、例えば、注射可能な滅菌水性または油性懸濁液剤の形態であり得る。この懸濁液剤は、適切な分散化剤または湿潤剤(例えば、Tween(登録商標)80など)および懸濁化剤を使用して、当技術分野で公知の技術に従って製剤化することができる。注射可能な滅菌調製物は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の、例えば1,3-ブタンジオール溶液としての注射可能な滅菌溶液剤または懸濁液剤であってもよい。用いることができる許容されるビヒクルおよび溶媒の中には、マンニトール、水、リンガー溶液および等張塩化ナトリウム溶液が含まれる。さらに、溶媒または懸濁化媒体として、従来、滅菌固定油が用いられる。この目的では、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激性固定油を用いることができる。脂肪酸、例えばオレイン酸およびそのグリセリド誘導体も、天然の薬学的に許容される油、例えばオリーブ油またはヒマシ油、特にそれらのポリオキシエチレン化したものと同様に、注射剤の調製において有用である。これらの油溶液剤または懸濁液剤は、長鎖アルコール希釈剤または分散剤を含有することもできる。
【0129】
本発明の医薬組成物は、直腸投与のための坐剤の形態で投与することができる。これらの組成物は、本発明の化合物を、室温では固体であるが、直腸温度では液体になり、したがって直腸で溶融して活性構成成分を放出する適切な非刺激性の賦形剤と混合することによって調製することができる。このような材料には、それに限定されるものではないが、カカオバター、蜜蝋およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0130】
本発明の医薬組成物は、鼻エアロゾルまたは吸入によって投与することができる。このような組成物は、医薬製剤分野で周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコールまたは他の適切な防腐剤、バイオアベイラビリティを増強するための吸収促進剤、フッ化炭素、および/または当技術分野で公知の他の可溶化剤もしくは分散化剤を用いて、生理食塩水溶液として調製することができる。例えば、Alexza Molecular Delivery Corporationに譲渡されたRabinowitz JDおよびZaffaroni ACの米国特許第6,803,031号を参照されたい。
【0131】
本発明の医薬組成物の局所投与は、所望の処置が、局所適用によって容易に到達可能な領域または臓器を伴う場合に、特に有用である。皮膚への局所適用では、医薬組成物は、担体に懸濁または溶解した活性構成成分を含有する適切な軟膏を用いて製剤化されるべきである。本発明の化合物の局所投与のための担体には、それに限定されるものではないが、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化蝋、および水が含まれる。あるいは、医薬組成物は、担体に懸濁または溶解した活性化合物を含有する適切なローションまたはクリームを用いて製剤化することができる。適切な担体には、それに限定されるものではないが、鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルア
ルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水が含まれる。本発明の医薬組成物は、直腸坐剤製剤によって、または適切な浣腸製剤で下部腸管に局所適用することもできる。局所経皮パッチおよびイオン泳動投与も、本発明に含まれる。
【0132】
対象の治療の適用は、目的の部位に投与されるように局所であってもよい。対象の目的の部位に組成物を提供するために、様々な技術、例えば注射、カテーテルの使用、外套針、噴出装置、プルロニック(登録商標)ゲル、ステント、持続薬物放出ポリマーまたは内部への到達を提供する他のデバイスを使用することができる。
【0133】
したがって、さらに別の実施形態によれば、本発明の化合物は、埋込み型医療デバイス、例えば人工関節、人工弁、血管グラフト、ステント、またはカテーテルをコーティングするための組成物に取り込むことができる。適切なコーティングおよびコーティングされた埋込み型デバイスの一般的調製は、当技術分野で公知であり、米国特許第6,099,562号、同第5,886,026号および同第5,304,121号に例示されている。コーティングは、典型的に、生体適合性ポリマー材料、例えばヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレン酢酸ビニル、およびそれらの混合物である。コーティングは、必要に応じて、組成物に制御放出性の特徴を付与するために、フルオロシリコーン、多糖類、ポリエチレングリコール、リン脂質またはそれらの組合せの適切なトップコートによってさらに被覆することができる。侵襲的デバイスのためのコーティングは、薬学的に許容される担体、アジュバントまたはビヒクルという用語が本明細書で使用される通り、それらの用語の定義に含まれることになる。
【0134】
別の実施形態によれば、本発明は、埋込み型医療デバイスをコーティングする方法であって、前記デバイスを前述のコーティング組成物と接触させるステップを含む方法を提供する。デバイスのコーティングは、哺乳動物への埋込みの前に行われることが、当業者には明らかとなろう。
【0135】
別の実施形態によれば、本発明は、埋込み型の薬物放出デバイスを含浸させる方法であって、前記薬物放出デバイスを、本発明の化合物または組成物と接触させるステップを含む方法を提供する。埋込み型の薬物放出デバイスには、それに限定されるものではないが、生分解性ポリマーカプセルまたは弾丸状カプセル(bullet)、非分解性拡散性ポリマーカプセルおよび生分解性ポリマーウエハが含まれる。
【0136】
別の実施形態によれば、本発明は、本発明の化合物が治療的に活性になるように、本発明の化合物または化合物を含む組成物でコーティングされた埋込み型医療デバイスを提供する。
【0137】
別の実施形態によれば、本発明は、本発明の化合物がデバイスから放出され、治療的に活性になるように、本発明の化合物または化合物を含む組成物を含浸させた、またはそれを含有する埋込み型医療デバイスを提供する。
【0138】
臓器または組織が、対象から除去することにより到達可能な場合、このような臓器または組織を、本発明の組成物を含有する媒体に浸してもよく、本発明の組成物を、臓器上に塗布してもよく、または本発明の組成物を、任意の他の好都合なやり方で適用してもよい。
【0139】
別の実施形態では、本発明の組成物は、1つまたは1つより多くの追加の治療剤をさらに含む。追加の治療剤は、ボリナンセリンと同じ作用機序を有する化合物と共に投与される場合に、有利な特性を有することが公知の、または有利な特性を実証する任意の化合物
または治療剤から選択することができる。このような薬剤には、それに限定されるものではないがエスシタロプラムを含む、ボリナンセリンとの組合せにおいて有用であると示されている薬剤が含まれる。
【0140】
好ましくは、追加の治療剤は、精神病、統合失調症(慢性統合失調症(schizoprenia)を含む)、統合失調性感情障害、パーキンソン病(パーキンソン病精神病を含む)、レビー小体認知症、睡眠障害(不眠症を含む)、激越、気分障害(うつ状態を含む)、血栓塞栓性障害、自閉症、および注意欠陥多動性障害から選択される疾患または状態の処置において有用な薬剤である。
【0141】
一実施形態では、追加の治療剤は、エスシタロプラムである。
【0142】
別の実施形態では、本発明は、本発明の化合物および前述の追加の治療剤のいずれかの1つまたは1つより多くの別々の剤形を提供し、ここで化合物および追加の治療剤は、互いに関連している。「互いに関連している」という用語は、本明細書で使用される場合、別々の剤形が一緒にパッケージされるか、またはそうでなければ互いに付着していることを意味し、したがって、別々の剤形が一緒に販売され、投与される(互いに24時間未満で、連続的にまたは同時に)ことが企図されることが容易にわかる。
【0143】
本発明の医薬組成物において、本発明の化合物は、有効量で存在する。本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、適切な投薬レジメンで投与される場合、標的疾患を処置するのに十分な量を指す。
【0144】
「それを必要とする対象」という用語は、精神病、統合失調症(慢性統合失調症を含む)、統合失調性感情障害、パーキンソン病(パーキンソン病精神病を含む)、レビー小体認知症、睡眠障害(不眠症を含む)、激越、気分障害(うつ状態を含む)、血栓塞栓性障害、自閉症、および注意欠陥多動性障害から選択される疾患もしくは状態を有するか、もしくは有すると診断された対象、またはこのような疾患もしくは障害が持続するか、もしくは発症するリスクがある対象を指す。
【0145】
動物およびヒトのための投薬量の相互関係(体表面1平方メートル当たりのミリグラムに対して)は、Cancer Chemother. Rep, 1966, 50:219に記載されている。体表面積は、対象の身長および体重から概算的に決定することができる。例えば、Scientific Tables, Geigy Pharmaceuticals, Ardsley, N.Y., 1970, 537を参照されたい。
【0146】
一実施形態では、本発明の化合物の有効量は、0.4mg~4mg、0.2mg~10mg、または0.02mg~20mgの範囲であり得る。好ましい実施形態では、有効量は、2mgである。
【0147】
一実施形態では、本発明の化合物の有効量は、0.4mg/日~4mg/日、0.2mg/日~10mg/日、または0.02mg/日~20mg/日の範囲であり得る。好ましい実施形態では、有効量は、2mg/日である。
【0148】
一実施形態では、本発明の化合物の有効量は、0.008mg/kg~0.08mg/kg、0.004mg/kg~0.2mg/kg、0.0004mg/kg~0.4mg/kgの範囲であり得る。好ましい実施形態では、有効量は、0.04mg/kgである。
【0149】
一実施形態では、本発明の化合物の有効量は、1日当たり0.008mg/kg~1日当たり0.08mg/kg、1日当たり0.004mg/kg~1日当たり0.2mg/
kg、1日当たり0.0004mg/kg~1日当たり0.4mg/kgの範囲であり得る。好ましい実施形態では、有効量は、1日当たり0.04mg/kgである。
【0150】
有効量は、1日1回または1日2回、2日毎、1週間に1回または2週間に1回投与することができる。好ましい実施形態では、有効量は、1日1回投与される。有効用量はまた、当業者によって認識される通り、処置される疾患、疾患の重症度、投与経路、対象の性別、年齢および全体的な健康状態、賦形剤の使用、他の薬剤の使用などの他の治療的処置との共使用の可能性、ならびに処置する医師の判断に応じて変わる。例えば、有効用量を選択するための指針は、ボリナンセリンに関する処方情報を参照することによって決定することができる。
【0151】
1つまたは1つより多くの追加の治療剤を含む医薬組成物について、追加の治療剤の有効量は、その薬剤だけを使用する単剤治療レジメンにおいて通常利用される投薬量の約20%~100%の間である。好ましくは、有効量は、通常の単剤治療用量の約70%~100%の間である。これらの追加の治療剤の通常の単剤治療投薬量は、当技術分野で周知である。例えば、それらの参考文献のそれぞれの全体が、参照により本明細書に組み込まれる、Wells et al., eds., Pharmacotherapy Handbook, 2nd Edition, Appleton and Lange, Stamford, Conn. (2000)、PDR Pharmacopoeia, Tarascon Pocket
Pharmacopoeia 2000, Deluxe Edition, Tarascon Publishing, Loma Linda, Calif. (2000)を参照されたい。
【0152】
先に言及した追加の治療剤の一部は、本発明の化合物と相乗的に作用することができる。これが生じる場合、追加の治療剤および/または本発明の化合物の有効投薬量は、単剤治療で必要とされる投薬量から低減することができる。このことは、本発明の化合物の追加の治療剤のいずれかの毒性副作用を最小限に抑え、有効性を相乗的に改善し、投与しやすさもしくは使用しやすさを改善し、かつ/または化合物の調製もしくは製剤化の全体的な費用を低減するという利点を有する。
【0153】
処置方法
【0154】
他の実施形態では、本発明は、細胞におけるセロトニン(seretonin)5-HT2A受
容体の活性を拮抗するまたは逆刺激する方法であって、細胞を、構造式(I)(例えば、任意の実施形態またはその実施形態の態様の)もしくは構造式(II)の1つもしくは1つより多くの化合物、または薬学的に許容されるその塩と接触させるステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、細胞は、in vitroで接触させられる。一部の実施形態では、細胞は、in vivoで接触させられる。一部の実施形態では、細胞は、ex vivoで接触させられる。
【0155】
ある特定の実施形態では、本発明は、それを必要とする対象において、構造式(I)の化合物によって有益に処置される疾患を処置する方法であって、対象に、有効量の化合物、または薬学的に許容されるその塩、または本発明の組成物(本明細書に記載される医薬組成物および制御放出性の医薬組成物を含む)を投与するステップを含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、対象は、このような処置を必要とする患者である。ある特定の実施形態では、対象は、ヒトである。
【0156】
さらなる実施形態では、本発明は、精神病、慢性統合失調症(慢性統合失調症を含む)、統合失調性感情障害、パーキンソン病(パーキンソン病精神病を含む)、レビー小体認知症、睡眠障害(不眠症を含む)、激越、気分障害(うつ状態を含む)、血栓塞栓性障害、自閉症、注意欠陥多動性障害、およびそれらの任意の組合せから選択される疾患または状態を処置または予防するための医薬組成物であって、構造式(I)(例えば、本明細書
に記載される実施形態またはその実施形態の態様の)もしくは構造式(II)の化合物、または薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を提供する。
【0157】
さらなる実施形態では、本発明は、精神病、統合失調症(慢性統合失調症を含む)、統合失調性感情障害、パーキンソン病(パーキンソン病精神病を含む)、レビー小体認知症、睡眠障害(不眠症を含む)、激越、気分障害(うつ状態を含む)、血栓塞栓性障害、自閉症、注意欠陥多動性障害、およびそれらの任意の組合せから選択される疾患または状態の処置または予防において使用するための、構造式(I)(例えば、本明細書に記載される実施形態またはその実施形態の態様の)もしくは構造式(II)の化合物、または薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0158】
さらなる実施形態では、本発明は、精神病、統合失調症(慢性統合失調症を含む)、統合失調性感情障害、パーキンソン病(パーキンソン病精神病を含む)、レビー小体認知症、睡眠障害(不眠症を含む)、激越、気分障害(うつ状態を含む)、血栓塞栓性障害、自閉症、注意欠陥多動性障害、およびそれらの任意の組合せから選択される疾患または状態を処置または予防する医薬の製造のための、構造式(I)(例えば、本明細書に記載される実施形態またはその実施形態の態様の)もしくは構造式(II)の化合物、または薬学的に許容されるその塩の使用を提供する。
【0159】
本明細書に開示される処置方法に適応する疾患は、当技術分野で周知であり、それに限定されるものではないが、精神病、統合失調症(慢性統合失調症を含む)、統合失調性感情障害、パーキンソン病(パーキンソン病精神病を含む)、レビー小体認知症、睡眠障害(不眠症を含む)、激越、気分障害(うつ状態を含む)、血栓塞栓性障害、自閉症、および注意欠陥多動性障害が含まれる。
【0160】
このような処置を必要とする対象の特定は、対象または医療専門家の判断に委ねることができ、主観的に(例えば、意見)または客観的に(例えば、試験または診断方法によって測定可能)行うことができる。
【0161】
別の実施形態では、先の処置方法のいずれかは、それを必要とする対象に、1つまたは1つより多くの追加の治療剤を共投与するさらなるステップを含む。追加の治療剤の選択は、ボリナンセリントンとの共投与に有用であることが公知の任意の追加の治療剤から行うことができる。追加の治療剤の選択は、処置される特定の疾患または状態にも依存する。本発明の方法において用いることができる追加の治療剤の例は、本発明の化合物および追加の治療剤を含む併用組成物において使用するための前述のものである。
【0162】
特に、本発明の併用療法は、以下の状態(特定の追加の治療剤は、徴候の後に括弧に入れて示される):うつ状態(エスシタロプラム)の処置のために、構造式(I)(例えば、本明細書に記載される実施形態またはその実施形態の態様の)もしくは構造式(II)の化合物、または薬学的に許容されるその塩、および1つまたは1つより多くの追加の治療剤を、それを必要とする対象に共投与するステップを含む。
【0163】
「共投与される」という用語は、本明細書で使用される場合、追加の治療剤が、本発明の化合物と一緒に、単一剤形の一部として(例えば、本発明の化合物および前述の追加の治療剤を含む、本発明の組成物)、または別々の複数剤形として投与され得ることを意味する。あるいは、追加の薬剤は、本発明の化合物の投与前に、それと連続して、またはその後に投与することができる。このような併用療法処置では、本発明の化合物および追加の治療剤は、共に従来の方法によって投与される。本発明の化合物および追加の治療剤の両方を含む本発明の組成物の対象への投与は、まさにその治療剤、任意の他の追加の治療剤または本発明の任意の化合物を、処置過程中の別の時間に、前記対象に別々に投与する
ことを除外しない。
【0164】
これらの追加の治療剤の有効量は、当業者に周知であり、投薬のための指針は、本明細書で参照される特許および公開特許出願、ならびにWells et al., eds., Pharmacotherapy Handbook, 2nd Edition, Appleton and Lange, Stamford, Conn. (2000)、PDR Pharmacopoeia, Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000, Deluxe Edition,
Tarascon Publishing, Loma Linda, Calif. (2000)および他の医療テキストに見
出すことができる。しかし、追加の治療剤の最適な有効量の範囲を決定することは、十分に当業者の権限内である。
【0165】
追加の治療剤が対象に投与される本発明の一実施形態では、本発明の化合物の有効量は、追加の治療剤が投与されない場合の有効量未満である。別の実施形態では、追加の治療剤の有効量は、本発明の化合物が投与されない場合の有効量未満である。このやり方で、いずれかの薬剤の高用量と関連する望ましくない副作用を最小限に抑えることができる。他の潜在的な利点(それに限定されるものではないが、投薬レジメンの改善および/または薬物費用の低減を含む)は、当業者に明らかとなろう。
【0166】
さらに別の態様では、本発明は、対象における前述の疾患、障害または症候の処置のための、単一組成物または別々の剤形のいずれかとしての医薬の製造における、構造式(I)(例えば、本明細書に記載される実施形態またはその実施形態の態様の)もしくは構造式(II)の化合物、または薬学的に許容されるその塩単独、あるいは前述の追加の治療剤の1つまたは1つより多くと一緒の使用を提供する。本発明の別の態様は、本明細書で記述される対象における疾患、障害またはその症候の処置における使用のための、構造式(I)(例えば、本明細書に記載される実施形態またはその実施形態の態様の)もしくは構造式(II)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。
【実施例0167】
(実施例1)
(R)-(2,3-ビス(メトキシ-d
3)フェニル)(1-(4-フルオロフェネチル)ピペリジン-4-イル)メタノール(化合物147)の合成
スキーム6.(R)-(2,3-ビス(メトキシ-d
3)フェニル)(1-(4-フルオロフェネチル)ピペリジン-4-イル)メタノール(化合物147)の調製。
【化17】
ステップ1.1,2-ビス(メトキシ-d
3)ベンゼン(21b)。1,2-ジヒドロキシベンゼン(20a)(30g、272.5mmol)の無水DMSO(250mL)溶液に、室温でKOH(61.2g、1090mmol)を添加し、続いてヨウ化メチル-d
3(42.4mL、681.1mmol、Sigma Aldrich、>99.5%D原子)を添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物を水(800mL)で希釈し、CH
2Cl
2(4×600mL)で抽出した。合わせた有機層を、水(3×1L)で洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物を乾燥させて(真空オーブン)、21b(36.4g、92%)を黄色の油状物として得た。
【0168】
ステップ2.tert-ブチル4-(2,3-ビス(メトキシ-d3)ベンゾイル)ピペリジン-1-カルボキシレート(4b)。ヘキサン(50mL、125mmol)中2.5Mのn-ブチルリチウムの溶液を、21b(18g、125mmol)のTHF(230mL)溶液に0℃でゆっくり添加した。反応混合物を室温に加温し、2時間撹拌し、次に0℃に再冷却した。2a(34.0g、125mmol)のTHF(400mL)溶液を、0℃に予冷し、反応混合物にゆっくり添加した。反応混合物を室温に加温し、一晩撹拌した。反応混合物を、飽和NH4Cl水溶液(400mL)でクエンチした。層を分離し、水層をEtOAc(3×600mL)で抽出した。合わせた有機層を飽和ブライン(1×600mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、黄色の油状物に濃縮した。粗製材料を、クロマトグラフィーによって3つのバッチで精製して(Interchim自動化クロマトグラフィー系、SorbTech330gシリカカートリッジ、ヘキサン中5~20%EtOAcのグラジエントで溶離する)、4b(26.6g、60%)を透明な油状物として得た。
【0169】
ステップ3.(2,3-ビス(メトキシ-d3)フェニル)(ピペリジン-4-イル)メタノン(5b)。4b(26.6g、75mmol)およびトリフルオロ酢酸(172mL、2240mmol)の混合物を、室温で30分間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮して、透明な油状物を得た。Et2O(800mL)を混合物に添加して、白色の沈
殿物を得、それを濾過して、5b(26.5g、95%)を白色の固体として得た。
【0170】
ステップ4.(2,3-ビス(メトキシ-d3)フェニル)(1-(4-フルオロフェネチル)ピペリジン-4-イル)メタノン(6b)。5b(5.0g、14.2mmol)の無水DMF(66mL)溶液に、室温で重炭酸ナトリウム(3.0g、35.5mmol)を添加し、続いて9a(2.88g、14.2mmol)を添加した。反応混合物を90℃で3時間加熱し、次に減圧下で濃縮した。残留物をEtOAc(100mL)で希釈し、次に水(3×100mL)および飽和ブライン(100mL)で洗浄した。有機層を減圧下で濃縮し、残留物を、クロマトグラフィーによって精製して(Interchim自動化クロマトグラフィー系、Biotage Sfar60gシリカカートリッジ、CH2Cl2中0~5%MeOHのグラジエントで溶離する)、6b(2.96g、55%)を褐色の油状物として得た。
【0171】
ステップ5.(2,3-ビス(メトキシ-d3)フェニル)(1-(4-フルオロフェネチル)ピペリジン-4-イル)メタノール(7b)。水素化ホウ素ナトリウム(0.24g、6.37mmol)を、6b(0.80g、2.12mmol)のMeOH(30mL)溶液に0℃で添加した。反応混合物を室温に加温し、16時間撹拌した。反応混合物を0℃に冷却し、水素化ホウ素ナトリウム(0.16g、4.24mmol)を添加した。反応混合物を室温に加温し、16時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、残留物を水(50mL)およびEtOAc(50mL)に分けた。層を分離し、有機層をEtOAc(2×50mL)で抽出した。合わせた有機層を減圧下で濃縮し、クロマトグラフィーによって精製して(Interchim自動化クロマトグラフィー系、Interchim25g HPシリカカートリッジ、CH2Cl2中0~10%MeOHのグラジエントで溶離する)、ラセミ7b(0.51g、64%)を白色の固体として得た。
【0172】
(R)-(2,3-ビス(メトキシ-d3)フェニル)(1-(4-フルオロフェネチル)ピペリジン-4-イル)メタノール(化合物147)のキラル分離。7b(0.44g)を、キラルSFCによって精製して(Chiralpak AD-H、250×20mm、5mm、25%EtOH(0.1%ジエチルアミン/CO2、100バール、流量65mL/分、波長220nm)、初期に溶離する(R)エナンチオマーを透明な油状物(220mg)として得た。
【0173】
生じた透明な油状物を、CH2Cl2およびヘキサンと研和して、化合物147(212mg、96%)を白色の固体として得た。
【0174】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.26-1.53 (m, 3H), 1.68 (td , J = 3.9, 7.8, 11.6 Hz, 1 H), 1.81-2.02 (m, 2H), 2.04-2.11 (m, 1H), 2.39 (br s, 1H), 2.46 -2.58 (m, 2H), 2.70-2.82 (m, 2H), 2.92 (br d, J =
12.0 Hz, 1H), 3.07 (br d, J = 11.2 Hz, 1H), 4.63 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.81-7.00 (m, 4H), 7.01 - 7.07 (m, 1H), 7.13 (t, J = 6.1 Hz, 2H).LCMS(方法:SorbTech C18 AQ、2.1×50mm、3μ
m、14分で5~95%アセトニトリル/水と0.1%ギ酸、4分保持、流量:0.7mL/分、波長:210nm):保持時間:4.7分、99.3%純度、(EI-MS):m/z=380.2([M+H]+)。
【0175】
キラルHPLC(Chiralpak IGカラム、150mm×4.6mm、3μm、方法:100%EtOH、流量:0.8mL/分、波長:230nm):保持時間:(R)異性体:4.1分、(S)異性体:5.3分、99.9%ee。
【0176】
旋光[α]
D
20(2.14g/MeOH100mL)=+19.1°。
(実施例2)
(R)-(1-(4-フルオロフェネチル)ピペリジン-4-イル)(2-メトキシ-3-(メトキシ-d
3)フェニル)メタノール(化合物115)の合成。
スキーム7.(R)-(1-(4-フルオロフェネチル)ピペリジン-4-イル)(2-メトキシ-3-(メトキシ-d
3)フェニル)メタノール(化合物115)の調製。
【化18】
【0177】
ステップ1.2-((1-(4-フルオロフェネチル)ピペリジン-4-イル)(ヒドロキシ)メチル)-6-(メトキシ-d3)フェノール(30b)。THF(27mL、27mmol)中1.0MのL-セレクトリドの溶液を、6b(2.5g、7mmol)の無水THF(100mL)溶液に0℃で添加した。反応混合物を0℃で2時間撹拌し、次に70℃で一晩加熱した。反応混合物を0℃に冷却し、水(150mL)でクエンチした。層を分離し、水層をEt2O(2×150mL)で抽出した。合わせた有機層を飽和ブライン溶液で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物をクロマトグラフィーによって精製して(Interchim自動化クロマトグラフィー系、Biotage100gシリカカートリッジ、CH2Cl2中MeOH中0~10%0.3Mアンモニアのグラジエントで溶離する)、30b(0.8g、33%)を白色の固体として得た。
【0178】
ステップ2.(1-(4-フルオロフェネチル)ピペリジン-4-イル)(3-(メトキシ-d3)-2-メトキシフェニル)-メタノール(7c)。炭酸セシウム(1.2g、3.8mmol)を、30b(680mg、1.9mmol)のアセトン(60mL)溶液に室温で添加した。メチル-4-メチルベンゼンスルホネート(321mg、1.7mmol)を、4つに分けて4時間にわたって室温で添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌し、セライト(10g)を介して濾過し、濾過ケーキをCH2Cl2(2×50mL)で洗浄した。濾液を減圧下で濃縮した。残留物をクロマトグラフィーによって精製した(Interchim自動化クロマトグラフィー系、Biotage55g KP-NHカートリッジ、CH2Cl2中0~10%MeOHのグラジエントで溶離する)。得られた材料を、前述の通り再精製して、ラセミ7c(458mg、65%)を透明な油状物として得た。
【0179】
(R)-(1-(4-フルオロフェネチル)ピペリジン-4-イル)(2-メトキシ-3-(メトキシ-d3)フェニル)メタノール(化合物115)のキラル分離。7c(0.45g)を、キラルSFCによって精製して(AD-H、250×20mm、5mm、25%EtOH(0.1%ジエチルアミン/CO2、100バール、流量60mL/分、
波長220nm)、初期に溶離する(R)エナンチオマーを透明な油状物(230mg)として得た。生じた透明な油状物を、CH2Cl2およびヘキサンと研和して、化合物115(184mg)を白色の固体として得た。
【0180】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.24 - 1.33 (m, 1H), 1.33 - 1.43 (m,
1H), 1.44 - 1.54 (m, 1H), 1.68 (tdt, J = 3.9, 7.8, 11.6 Hz, 1 H), 1.91 (dt, J = 2.8, 11.5 Hz, 1 H), 1.99 (dt, J = 2.4, 11.6 Hz,
1H), 2.05 - 2.11 (m, 1H), 2.37 (br s, 1H), 2.49 - 2.56 (m, 2H),
2.73 - 2.81 (m, 2H), 2.93 (br d, J = 10.9 Hz, 1H), 3.07 (br d,
J = 11.2 Hz, 1H), 3.87 (s, 3H), 4.63 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.84
(dd, J = 1.5, 8.1 Hz, 1H), 6.89 (dd, J = 1.5, 7.8 Hz, 1H), 6.91
- 6.98 (m, 2H), 7.02 - 7.08 (m, 1H), 7.10 - 7.16 (m, 2H).
【0181】
LCMS(方法:Atlantis T3カラム、2.1×50mm、3μm、14分で5~95%アセトニトリル/水と0.1%ギ酸、4分保持、流量:0.7mL/分、波長:210nm):保持時間:4.5分、98.8%純度、(EI-MS):m/z=377.2([M+H]+)
【0182】
キラルHPLC(Chiralpak IGカラム、250mm×4.6mm、5μm、方法:100%EtOH、流量:1.0mL/分、波長:230nm):保持時間:(R)異性体:4.8分、(S)異性体:5.8分、98.9%ee。
(実施例3)
(R)-(2,3-ビス(メトキシ-d3)フェニル)(1-(4-フルオロフェネチル)ピペリジン-4-イル)メタン-d-オール(化合物148)の合成。
スキーム8.(R)-(2,3-ビス(メトキシ-d3)フェニル)(1-(4-フルオロフェネチル)ピペリジン-4-イル)メタン-d-オール(化合物148)の調製。
【化19】
【0183】
ステップ1.(2,3-ビス(メトキシ-d3)フェニル)(1-(4-フルオロフェネチル)ピペリジン-4-イル)メタン-d-オール(7d)。重水素化ホウ素ナトリウム(0.64g、15.12mmol、CIL、99%D4)を、6b(1.90g、5.04mmol)のMeOD(70mL、Aldrich、99.5%D原子)溶液に0℃で添加した。反応混合物を室温に加温し、16時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、残留物を、水(50mL)およびEtOAc(50mL)に分けた。層を分離し、水層をEtOAc(2×50mL)で抽出した。合わせた有機層を減圧下で濃縮して、7d(2.4g、定量的)を黄色の油状物として得た。
【0184】
キラル分離。(R)-(2,3-ビス(メトキシ-d3)フェニル)(1-(4-フルオロフェネチル)ピペリジン-4-イル)メタン-d-オール(化合物148)。7d(830mg)を、キラルSFCによって精製して(AD-H、250×20mm、5mm、25%EtOH(0.1%ジエチルアミン/CO2、100バール、流量65mL/分、波長220nm)、初期に溶離する(R)エナンチオマーを透明な油状物(398mg)として得た。
【0185】
生じた透明な油状物を、CH2Cl2およびヘキサンと研和して、化合物148(286mg)を白色の固体として得た。
【0186】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.21-1.32 (m, 1H), 1.32-1.42 (m, 1H), 1.43-1.52 (m, 1H), 1.57 (s, 4H), 1.67 (tt, J = 3.8, 7.8, 11.6 Hz, 1H), 1.89 (dt, J = 2.9, 11.5 Hz, 1H), 1.97 (dt, J = 2.4, 11.7 Hz,
1H), 2.08 (br d, J = 13.1 Hz, 1H), 2.31 (br s, 1H), 2.49 - 2.54
(m, 2H), 2.73 - 2.78 (m, 2H), 2.92 (br d, J = 10.8 Hz, 1H), 3.07 (br d, J = 11.5 Hz, 1H), 3.81-3.85 (m, 1H), 4.60-4.65 (m, 1H), 6.84 (dd, J = 1.4, 8.1 Hz, 1H), 6.89 (dd, j = 1.5, 7.8 Hz, 1H), 6.95 (t, J = 8.7 Hz, 2H), 7.04 (t, J = 7.9 Hz, 1H), 7.13 (dd, J = 5.5, 8.5 Hz, 2H).
【0187】
LCMS(方法:SorbTech C18AQカラム、2.1×50mm、3μm、14分で5~95%アセトニトリル/水と0.1%ギ酸、4分保持、流量:0.7mL/分、波長:210nm):4.6分、99.6%純度、(EI-MS):m/z=381.3([M+H]+)。
【0188】
キラルHPLC(Chiralpak IGカラム、150mm×4.6mm、3μm、方法:100%EtOH、流量:0.8mL/分、波長:230nm):保持時間:(R)異性体:4.1分、(S)異性体:5.3分、99.7%ee。
(実施例4)
(R)-(1-(4-フルオロフェネチル)ピペリジン-4-イル)(3-メトキシ-2-(メトキシ-d
3)フェニル)メタノール(化合物131)の合成
スキーム9.(R)-(1-(4-フルオロフェネチル)ピペリジン-4-イル)(3-メトキシ-2-(メトキシ-d
3)フェニル)メタノール(化合物131)の調製。
【化20】
【0189】
ステップ1.tert-ブチル4-(2,3-ビスメトキシベンゾイル)ピペリジン-1-カルボキシレート(4a)。ヘキサン(7.8mL、19.5mmol)中2.5Mのn-ブチルリチウムの溶液を、21a(2.7g、19.5mmol)の無水THF(30mL)溶液に0℃で添加した。反応混合物を室温に2時間加温し、次に0℃に再冷却した。予冷した0℃の2a(5.3g、19.5mmol)の無水THF(50mL)溶液を、0℃でゆっくり添加した。反応混合物を室温に加温し、一晩撹拌した。反応混合物を、飽和NH4Cl溶液(100mL)でクエンチした。層を分離し、水層をEtOAc(3×120mL)で抽出した。合わせた有機層を飽和ブライン溶液で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物をクロマトグラフィーによって精製して(Interchim自動化クロマトグラフィー系、SorbTech220シリカカートリッジ、ヘキサン中5~20%EtOAcのグラジエントで溶離する)、4a(4.05g、60%)を透明な油状物として得た。
【0190】
ステップ2.(2,3-ビスメトキシフェニル)(ピペリジン-4-イル)メタノントリフルオロ酢酸塩(5a)。トリフルオロ酢酸(44mL、576mmol)を、0℃で4a(6.7g、19mmol)に添加した。反応混合物を、室温で30分間撹拌し、次に減圧下で濃縮して、透明な油状物を得た。Et2O(100mL)を添加し、混合物を室温で2時間撹拌した。固体を濾過し、Et2O(50mL)で洗浄して、5a(5.9g、90%)を白色の固体として得た。
【0191】
ステップ3.(2,3-ジメトキシフェニル)(1-(4-フルオロフェネチル)ピペリジン-4-イル)メタノン(6a)。NaHCO3(3.6g、43mmol)および
9a(3.5g、17mmol)を、5a(5.9g、17mmol)のDMF(80mL)溶液に室温で添加した。反応混合物を90°で一晩加熱した。反応混合物を室温に冷却し、減圧下で濃縮した。残留物をセライト(25g)上に吸着させ、次にクロマトグラフィーによって精製して(Interchim自動化クロマトグラフィー系、Biotage100gシリカカートリッジ、CH2Cl2中0~10%MeOHのグラジエントで溶離する)、6a(4.3g、68%)を暗褐色の油状物として得た。
【0192】
ステップ4.2-((1-(4-フルオロフェネチル)ピペリジン-4-イル)(ヒドロキシ)メチル)-6-メトキシフェノール(30a)。THF(46mL、46mmol)中1.0のL-セレクトリドの溶液を、6a(4.3g、12mmol)の無水THF(200mL)溶液に0℃で添加した。反応混合物を0℃で2時間撹拌し、次に70℃で一晩加熱した。反応混合物を0℃に冷却し、水(150mL)で希釈した。層を分離し、水層をEt2O(2×150mL)で抽出した。合わせた有機層を、飽和ブライン溶液で洗浄し、減圧下で濃縮した。残留物をクロマトグラフィーによって精製して(Interchim自動化クロマトグラフィー系、Biotage100gシリカカートリッジ、CH2Cl2中0~10%の0.3Mアンモニア/MeOHのグラジエントで溶離する)、30a(2.9g、70%)を黄色の固体として得た。
【0193】
ステップ5.(1-(4-フルオロフェネチル)ピペリジン-4-イル)(3-メトキシ-2-(メトキシ-d3)フェニル)-メタノール(7e)。炭酸セシウム(564mg、1.7mmol)を、30a(310mg、0.86mmol)のアセトン(50mL)溶液に室温で添加した。メチル-d3-4-メチルベンゼンスルホネート(151mg、0.8mmol、CDN、99.5%D原子)を、4つに均等に分けて4時間にわたって室温で反応混合物に添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌し、次にセライト(10g)を介して濾過し、濾過ケーキをCH2Cl2(2×50mL)で洗浄した。濾液を減圧下で濃縮した。残留物をクロマトグラフィーによって精製して(Interchim自動化クロマトグラフィー系、Biotage110g KP-NHカートリッジ、CH2Cl2中0~10%MeOHのグラジエントで溶離する)、7e(0.2g、62%)を透明な油状物として得た。
【0194】
(R)-(1-(4-フルオロフェネチル)ピペリジン-4-イル)(3-メトキシ-2-(メトキシ-d3)フェニル)メタノール(化合物131)のキラル分離。7e(390mg)を、キラルSFCによって精製して(AD-H、250×20mm、5mm、25%EtOH(0.1%ジエチルアミン/CO2、100バール、流量60mL/分、波長220nm)、初期に溶離する(R)エナンチオマーを透明な油状物(180mg)として得た。
【0195】
生じた透明な油状物を、CH2Cl2およびヘキサンと研和して、化合物131(148mg、回収率82%)を白色の固体として得た。
【0196】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.24 - 1.33 (m, 1H), 1.34 - 1.43 (m,
1H), 1.44 - 1.54 (m, 1H), 1.68 (tdt, J = 3.9, 7.8, 11.6 Hz, 1H),
1.79 (br s, 1H), 1.90 (dt, J = 2.9, 11.4 Hz, 1H), 1.98 (dt, J =
2.4, 11.7 Hz, 1H), 2.08 (quint, J = 2.8, 13.1 Hz, 1H), 2.37 (br s, 1H), 2.48 - 2.56 (m, 2H), 2.71 - 2.81 (m, 2H), 2.93 (br d, J = 11.1 Hz, 1H), 3.07 (br d, J = 11.4 Hz, 1H), 3.87 (s, 3H), 4.63
(d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.84 (dd, J = 1.5, 8.2 Hz, 1H), 6.89 (dd,
J = 1.5, 7.8 Hz, 1H), 6.91 - 6.98 (m, 2H), 7.01 - 7.07 (m, 1H),
7.10 - 7.17 (m, 2H).
【0197】
LCMS(方法:Atlantis T3カラム、2.1×50mm、3μm、14分で5~95%アセトニトリル/水と0.1%ギ酸、4分保持、流量:0.7mL/分、波長:210nm):保持時間:4.6分、99.9%純度、(EI-MS):m/z=377.2([M+H]+)
【0198】
キラルHPLC(Chiralpak IGカラム、250mm×4.6mm、5μm、方法:100%EtOH、流量:1.0mL/分、波長:230nm):保持時間:(R)異性体:4.8分、(S)異性体:5.8分、99.9%ee。
(実施例5)
(R)-(2,3-ビス(メトキシ-d
3)フェニル)(1-(2-(4-フルオロフェニル)エチル-1,1-d
2)ピペリジン-4-イル)メタノール(化合物151)の合成
スキーム10.1-(2-ブロモエチル-2,2-d
2)-4-フルオロベンゼン(9b)の調製
【化21】
【0199】
ステップ1.2-(4-フルオロフェニル)エタン-1,1-d2-1-オール(8b)。19a(5.0g、32.45mmol)をMeOD(8mL、Cambridge
Isotope、99.8%D原子)に溶解し、減圧下で濃縮し、次に2回反復した。残留物を無水THF(20mL)に溶解し、0℃で無水THF(50mL)中、重水素化リチウムアルミニウム(1.36g、32.45mmol、Boc Sciences、98%D原子)の懸濁液に添加した。反応混合物を室温に加温し、1時間撹拌し、次に4時間加熱還流させた。反応混合物を室温に冷却し、水(1.5mL)、15%水酸化ナトリウム溶液(2mL)、次に水(3mL)でクエンチした。混合物を、セライトパッド(20g)を介して濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。粗製生成物をクロマトグラフィーによって精製して(Interchim自動化クロマトグラフィー系、RediSep80gシリカカートリッジ、ヘキサン中0~25%アセトングラジエントで溶離する)、8b(4.0g、87%)を黄色の油状物として得た。
【0200】
ステップ2.1-(2-ブロモエチル-2,2-d
2)-4-フルオロベンゼン(9b)。四臭化炭素(5.08g、15.32mmol)を、8b(1.74g、12.26mmol)のCH
2Cl
2(25mL)溶液に0℃で添加し、続いてトリフェニルホスフィン(4.82g、18.39mmol)を添加した。反応混合物を0℃で1時間撹拌し、次にジエチルエーテル(100mL)およびヘキサン(40mL)で希釈し、40分間撹拌して、白色の沈殿物を形成した。懸濁液を、セライトパッド(20g)を介して濾過して、透明な濾液を得、それを減圧下で濃縮した。粗製生成物をクロマトグラフィーによって精製して(Interchim自動化クロマトグラフィー系、Biotage100gシリカゲルカートリッジ、ヘキサン中0~10%EtOAcのグラジエントで溶離する)、9b(1.57g、63%)を透明な油状物として得た。
スキーム11.(R)-(2,3-ビス(メトキシ-d
3)フェニル)(1-(2-(4-フルオロフェニル)エチル-1,1-d
2)ピペリジン-4-イル)メタノール(化合物151)の調製。
【化22】
【0201】
ステップ3.(2,3-ビス(メトキシ-d3)フェニル)(1-(2-(4-フルオロフェニル)エチル-1,1-d2)ピペリジン-4-イル)-メタノン(6c)。重炭酸ナトリウム粉末(0.89g、10.61mmol)に続いて9b(0.87g、4.24mmol)の無水DMF(1mL)溶液を、5b(1.5g、4.24mmol)の無水DMF(21mL)溶液にrtで添加した。反応混合物を90℃で3時間加熱し、次に減圧下で濃縮した。水(30mL)を添加し、混合物をEtOAc(3×30mL)で抽出した。合わせた有機層を、水(30mL)、飽和ブライン(30mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、減圧下で濃縮した。粗製生成物をクロマトグラフィーによって精製して(Interchim自動化クロマトグラフィー系、SorbTech80gシリカゲルカートリッジ、CH2Cl2中0~5%MeOHのグラジエントで溶離する)、6c(0.58g、36%)を黄色の油状物として得た。
【0202】
ステップ4.(2,3-ビス(メトキシ-d3)フェニル)(1-(2-(4-フルオロフェニル)エチル-1,1-d2)ピペリジン-4-イル)-メタノール(7f)。水素化ホウ素ナトリウム(0.173g、4.59mmol)を、6c(0.58g、1.53mmol)のMeOH(20mL)溶液に0℃で一度に添加した。反応混合物を室温に加温し、一晩撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、残留物を、水(20mL)およびEtOAc(30mL)に分けた。層を分離し、水層をEtOAc(2×30mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、減圧下で濃縮して、7f(0.46g、80%)を白色の固体として得た。
【0203】
キラル分離。(R)-(2,3-ビス(メトキシ-d3)フェニル)(1-(2-(4-フルオロフェニル)エチル-1,1-d2)ピペリジン-4-イル)メタノール(化合物151)。7f(437mg)を、キラルSFCによって精製して(AD-H、250×20mm、5mm、25%EtOH(0.1%ジエチルアミン/CO2、100バール、流量60mL/分、波長220nm)、初期に溶離する(R)エナンチオマーを透明な油状物(230mg)として得た。
【0204】
生じた透明な油状物を、CH2Cl2およびヘキサンと研和して、化合物151(220mg)を白色の固体として得た。
【0205】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.22 - 1.34 (m, 2H), 1.38 (s, 1H), 1.48 (d, J = 24.5 Hz, 1H), 1.68 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 1.89 (d, J =
20.3 Hz, 1H), 1.98 (d, J = 23.3 Hz, 1H), 2.08 (d, J = 18.5 Hz,
1H), 2.31 (s, 1H), 2.74 (s, 2H), 2.92 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 3.06
(d, J = 11.9 Hz, 1H), 4.59 - 4.67 (m, 1H), 6.84 (d, J = 9.5 Hz, 1H), 6.89 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 6.95 (t, J = 8.7 Hz, 2H), 7.04
(t, J = 7.9 Hz, 1H), 7.10 - 7.16 (m, 2H).
【0206】
LCMS(方法:SorbTech C18AQカラム、2.1×50mm、3μm、14分で5~95%アセトニトリル/水と0.1%ギ酸、4分保持、流量:0.7mL/分、波長:210nm):保持時間:4.6分、98.6%純度、(EI-MS):m/z=382.2([M+H]+)
【0207】
キラルHPLC(Chiralpak IGカラム、150mm×4.6mm、3μm、方法:100%EtOH、流量:0.3mL/分、波長:230nm):保持時間:(R)異性体:10.9分、(S)異性体:14.2分、99.7%ee
(実施例6)
(R)-(2,3-ビス(メトキシ-d
3)フェニル)(1-(2-(4-フルオロフェニル)エチル-1,1,2,2-d
4)ピペリジン-4-イル)メタノール(化合物159)の合成
スキーム12.1-(2-ブロモエチル-1,1,2,2-d
4)-4-フルオロベンゼン(9c)の調製
【化23】
【0208】
ステップ1.メチル2-(4-フルオロフェニル)アセテート-d2(20b)。新しく調製したMeOD中2.11Mナトリウムメトキシドの溶液(2.82mL、5.9mmol)を、20a(10g、59.5mmol)のMeOD(100mL)溶液に室温で添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌し、次に減圧下で濃縮して、白色の半固体を得た。さらなるMeOD(110mL)および新しく調製したMeOD中2.11Mナトリウムメトキシド溶液(2.82mL、5.9mmol)を室温で添加し、次に反応混合物を一晩撹拌した。このプロセスを、合計4サイクル反復した。反応混合物を減圧下で濃縮して、20b(11.50g、定量的収量)を得た。
【0209】
ステップ2.2-(4-フルオロフェニル)エタン-1,1,2,2-d4-1-オール(8c)。無水THF(50mL)中20b(10g、58.7mmol)の懸濁液を、無水THF(100mL)中重水素化リチウムアルミニウム(3.69g、88.0mmol、Boc Sciences、98%D原子)の懸濁液に0℃でゆっくり添加した。反応混合物を室温に加温し、1時間撹拌し、次に4時間加熱還流させた。反応混合物を室温に冷却し、次に水(3mL)、15%NaOH溶液(4mL)、次に水(6mL)でクエンチした。混合物がクエンチ中に非常に増粘したので、必要に応じてTHFを添加した。次に、混合物を、セライトパッド(20g)を介して濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。粗製生成物をクロマトグラフィーによって精製して(Interchim自動化クロマトグラフィー系、Biotage350gシリカゲルカートリッジ、ヘキサン中0~25%アセトンのグラジエントで溶離する)、8c(7.06g、83%)を透明な油状物として得た。
【0210】
ステップ3.1-(2-ブロモエチル-1,1,2,2-d
4)-4-フルオロベンゼン(9c)。四臭化炭素(23.95g、72.0mmol)を、8c(8.33g、58.0mmol)のCH
2Cl
2(140mL)溶液に0℃で添加し、続いてトリフェニルホスフィン(22.73g、86.6mmol)を添加した。反応混合物を0℃で2時間撹拌し、次に減圧下で黄色の油状物に濃縮した。油状物をEt
2O(400mL)で希釈し、40分間撹拌して、白色の懸濁液を得た。懸濁液を、セライトパッド(20g)を介して濾過して、透明な濾液を得、それを減圧下で濃縮した。ヘキサン(300mL)を添加し、混合物を15分間撹拌して、白色の沈殿物をさらに得た。沈殿物を、細かいフリット漏斗を介して濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残留物をクロマトグラフィーによって精製して(Biotage自動化クロマトグラフィー系、Biotage350gシリカゲルカートリッジ、ヘキサン中0~25%EtOAcのグラジエントで溶離する)、9c(7.7g、64%)を透明な油状物として得た。
スキーム13.(R)-(2,3-ビス(メトキシ-d
3)フェニル)(1-(2-(4-フルオロフェニル)エチル-1,1,2,2-d
4)ピペリジン-4-イル)メタノール(化合物159)の調製
【化24】
【0211】
ステップ4.(2,3-ビス(メトキシ-d3)フェニル)(1-(2-(4-フルオロフェニル)エチル-1,1,2,2-d4)ピペリジン-4-イル)メタノン(6d)。重炭酸ナトリウム粉末(0.71g、8.4mmol)に続いて9c(0.70g、3.35mmol、1当量)のDMF(3mL)溶液を、5b(1.2g、3.35mmol)のDMF(15mL)溶液にrtで添加した。反応混合物を90℃で2時間加熱し、次に室温に冷却し、減圧下で濃縮した。残留物を水(35mL)で希釈し、EtOAc(3×35mL)で抽出した。合わせた有機層を、飽和ブライン(50mL)、水(30mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、減圧下で濃縮した。粗製生成物をクロマトグラフィーによって精製して(Biotage自動化クロマトグラフィー系、Biotage50gシリカゲルカートリッジ、CH2Cl2中0~5%MeOHのグラジエントで溶離する)、6d(0.86g、68%)を黄色の油状物として得た。
【0212】
ステップ5.(2,3-ビス(メトキシ-d3)フェニル)(1-(2-(4-フルオロフェニル)エチル-1,1,2,2-d4)ピペリジン-4-イル)メタノール(7g)。水素化ホウ素ナトリウム(0.26g、6.80mmol、3当量)を、6d(0.86g、2.27mmol、1当量)のMeOH(30mL)溶液に0℃で一度に添加した。反応混合物を室温に加温し、38時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、残留物を水(30mL)およびEtOAc(30mL)に分けた。層を分離し、水層をEtOAc(2×30mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、減圧下で濃縮して、7g(0.77g、89%)を白色の固体として得た。
【0213】
(R)-(2,3-ビス(メトキシ-d3)フェニル)(1-(2-(4-フルオロフェニル)エチル-1,1,2,2-d4)ピペリジン-4-イル)メタノール(化合物159)のキラル分離。7g(700mg)を、キラルSFCによって精製して(AD-H、250×20mm、5mm、25%EtOH(0.1%ジエチルアミン/CO2、100バール、流量65mL/分、波長220nm)、初期に溶離する(R)エナンチオマーを透明な油状物(385mg)として得た。
【0214】
生じた透明な油状物を、CH2Cl2およびヘキサンと研和して、化合物159(270mg)を白色の固体として得た。
【0215】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.21 - 1.42 (m, 2H), 1.42-1.55 (m, 1H), 1.68 (dtd, J = 4.0, 7.8, 11.6 Hz) (s, 2H), 1.91 (br t, J= 11.0
Hz, 1H), 1.99 (br t, J= 11.4 Hz, 1H), 2.08 (d, J = 2.7, 13.1 Hz, 1H), 2.35 (br s, 1H), 2.93 (d, J = 10.9 Hz, 1H), 3.07 (d, J =
10.8 Hz, 1H), 4.63 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.84 (dd, J = 1.6, 8.1
Hz, 1H), 6.89 (dd, J = 1.4, 7.8 Hz, 1H), 6.91-6.98 (m, 2H), 7.02
- 7.07 (m, 1H), 7.10 - 7.17 (m, 2H).
【0216】
LCMS(方法:Atlantis T3カラム、2.1×50mm、3μm、14分で5~95%アセトニトリル/水と0.1%ギ酸、4分保持、流量:0.7mL/分、波長:210nm):保持時間:4.5分、99.9%純度、(EI-MS):m/z=384.3([M+H]+)
【0217】
キラルHPLC(Chiralpak IGカラム、250mm×4.6mm、3μm、方法:100%EtOH、流量:0.3mL/分、波長:230nm):保持時間:(R)異性体:16.9分、(S)異性体:21.5分、99.7%ee。
(実施例7)
(R)-(2,3-ジメトキシフェニル)(1-(4-フルオロフェネチル)ピペリジン-4-イル-2,2,3,3,4,5,5,6,6-d
9)メタノール(化合物203)の合成
スキーム14.tert-ブチル4-(メトキシ(メチル)カルバモイル)ピペリジン-1-カルボキシレート-2,2,3,3,4,5,5,6,6-d
9(2b)の調製。
【化25】
【0218】
ステップ1.1-(tert-ブトキシカルボニル)ピペリジン-4-カルボン酸-2,2,3,3,4,5,5,6,6-d9酸(1h)。MeOD(12mL、Sigma
Aldrich、99.5%D原子)を、ピペリジン-4-カルボン酸-2,2,3,3,4,5,5,6,6-d9酸(3g、CDN同位体、98.6%D原子)に添加した。混合物を減圧下で濃縮した。このプロセスをさらに2回反復した。次に、トリエチルアミン(6.6g、65.0mmol)を、ピペリジン-4-カルボン酸-2,2,3,3,4,5,5,6,6-d9酸(3g、22.0mmol)の無水CH2Cl2(30mL)溶液に添加し、続いてBoc無水物(5.7g、26mmol)を室温で添加した。
反応混合物をこの温度で一晩撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮した。THF(40mL)を残留物に添加し、混合物を1N塩化重水素(水溶液)(30mL、Sigma、≧99%D原子)で酸性にした。混合物を15分間撹拌し、次にEtOAc(70mL)を添加した。層を分離し、水層をEtOAc(2×70mL)で抽出した。有機層を合わせ、重水(1×70mL)中飽和ブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、減圧下で濃縮し、乾燥させて(真空オーブン)、1h(4.81g、93%)を得た。
【0219】
ステップ2.tert-ブチル4-(メトキシ(メチル)カルバモイル)ピペリジン-1-カルボキシレート-2,2,3,3,4,5,5,6,6-d
9(2b)。トリエチルアミン(3.1mL、22.0mmol)を、固体N,O-ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(2.14g、22.0mmol)に室温で添加し、混合物を1時間撹拌して、遊離塩基化N,O-ジメチルヒドロキシルアミンを油状物として得た。DBU(3.38g、22.0mmol)に続いてプロパンホスホン酸無水物(1.07g、64.5mmol)を、1h(4.81g、20.16mmol)の無水アセトニトリル(60mL)溶液に0℃で添加した。15分間撹拌した後、遊離塩基N,O-ジメチルヒドロキシルアミンを、先の反応混合物に0℃で添加し、この温度で3時間撹拌した。次に、反応混合物を減圧下で濃縮した。EtOAc(400mL)を残留物に添加し、混合物を25%クエン酸(水溶液)(2×200mL)および飽和重炭酸ナトリウム(2×200mL)で洗浄した。有機層を乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、減圧下で濃縮して、2b(3.31g、58%)を黄色の油状物として得た。
スキーム15.(R)-(2,3-ジメトキシフェニル)(1-(4-フルオロフェネチル)ピペリジン-4-イル-2,2,3,3,4,5,5,6,6-d
9)メタノール(化合物203)の調製。
【化26】
【0220】
ステップ1.tert-ブチル4-(2,3-ジメトキシベンゾイル)ピペリジン-1-カルボキシレート-2,2,3,3,4,5,5,6,6-d9(4c)。ヘキサン(1.95mL、4.86mmol)中2.5Mのn-ブチルリチウム(buthyllithium)
の溶液を、21a(0.64g、4.6mmol、1当量)の無水THF(11mL)溶液に0℃で滴下添加した。添加の後、混合物を室温に加温し、2時間撹拌し、次に0℃に再冷却した。予冷した(0℃)2b(1.30g、4.6mmol)の無水THF(9mL)溶液を、反応混合物にゆっくり添加した。反応混合物を室温に加温し、一晩撹拌した。無水THF(11mL)中さらなる21a(0.64g、4.6mmol)部分を、0℃でヘキサン(1.95mL、4.86mmol)中2.5Mのn-BuLiで処理し、次に反応混合物に0℃で添加した。反応混合物を室温に加温し、一晩撹拌した。反応混合物を重水(25mL、CIL、99.9%D原子)中飽和ND4Cl溶液でクエンチし、15分撹拌した。層を分離し、水層をEt2O(3×30mL)で抽出した。合わせた有機層を重水(50mL)中飽和ブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、減圧下で濃縮して、粗製4c(2.9g)を黄色の油状物として得た。粗製材料を、クロマトグラフィー(Biotage自動化クロマトグラフィー系、Biotage100gシリカゲルカートリッジ、ヘキサン中10~15%EtOAcのグラジエントで溶離する)に続いて逆相クロマトグラフィー(Biotage自動化クロマトグラフィー系、Teledyne100g C18カートリッジ、水中0~85%アセトニトリルで溶離する)によって精製して、ケトンに対してアルファに22%プロトンが取り込まれた4c(0.51g、31%)を得た。炭酸カリウム(0.3g、2.15mmol)を、重水(50mL、CIL、99.9%D原子)および無水THF(50mL)の1:1混合物中、得られた4c(0.51g、1.43mmol)の溶液に室温で添加した。反応混合物を3日間撹拌した。反応混合物を重水(20mL、CIL、99.9%D原子)中飽和ブラインで希釈し、次にCH2Cl2(150mL)で抽出した。水層をCH2Cl2(50mL)で抽出した。合わせた有機層を重水(20mL)中飽和ブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、減圧下で濃縮して、4c(0.51g)を得た。
【0221】
ステップ2.(2,3-ジメトキシフェニル)(ピペリジン-4-イル-2,2,3,3,4,5,5,6,6-d9)メタノントリフルオロ酢酸塩(5c)。トリフルオロ酢酸-d(7.54g、66.11mmol、Sigma Aldrich、99.5%D原子)を、4c(0.79g、2.20mmol)に0℃で添加した。反応混合物を室温に加温し、1.5時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮して、黄色の油状物を得た。Et2O(150mL)を添加し、混合物を10分間撹拌して、白色の沈殿物を得た。固体を濾過して、5c(0.66g、85%)を白色の固体として得た。
【0222】
ステップ3.(2,3-ジメトキシフェニル)(ピペリジン-4-イル-2,2,3,3,4,5,5,6,6-d9)メタノール(30b)。水素化ホウ素ナトリウム(0.28g、7.45mmol)を、5c(0.66g、1.86mmol)のMeOD(35mL、Sigma Aldrich、99.5%D原子)溶液に0℃で一度に添加した。反応混合物をrtに加温し、一晩撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、次に残留物を、重水(60mL、CIL、99.9%D原子)中飽和重炭酸ナトリウムおよびCH2Cl2(100mL)中10%MeOHに分けた。層を分離し、水層を、CH2Cl2中10%MeOH(2×100mL)で抽出した。合わせた有機層を重水(50mL、CIL、99.9%D原子)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、減圧下で濃縮して、30b(0.17g)を得た。前述の合わせた水層を減圧下で濃縮し、残留物をCH2Cl2(3×100mL)で抽出した。合わせた有機層を減圧下で濃縮して、30bの全部(0.40g、83%)を得た。
【0223】
ステップ4.(2,3-ジメトキシフェニル)(1-(4-フルオロフェネチル)ピペ
リジン-4-イル-2,2,3,3,4,5,5,6,6-d9)メタノール(7j)。重炭酸ナトリウム粉末(0.13g、1.54mmol)に続いて9a(0.15g、0.77mmol)の無水DMF(3mL)溶液を、30b(0.2g、0.77mmol)の無水DMF(7mL)溶液にrtで添加した。反応混合物を90℃で2時間加熱し、次に室温に冷却した。反応混合物を減圧下で濃縮した。残留物を水(10mL)で希釈し、EtOAc(3×25mL)で抽出した。合わせた有機層を飽和ブライン(20mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、減圧下で濃縮して、7j(0.26g、88%)を黄色の油状物として得、それを静置すると固化した。
【0224】
キラル分離。(R)-(2,3-ジメトキシフェニル)(1-(4-フルオロフェネチル)ピペリジン-4-イル-2,2,3,3,4,5,5,6,6-d9)メタノール(化合物203)。7j(260mg)を、キラルSFCによって精製して(AD-H、250×20mm、5mm、20%EtOH(0.1%ジエチルアミン/CO2、100バール、流量60mL/分、波長220nm)、初期に溶離する(R)エナンチオマーを透明な油状物(130mg)として得た。
【0225】
生じた透明な油状物を、CH2Cl2およびヘキサンと研和して、化合物203(86mg)を白色の固体として得た。
【0226】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 2.35 (bs, 1H), 2.49 - 2.55 (m, 2H), 2.72 - 2.83 (m, 2H), 3.87 (s, 6H), 4.63 (s, 1H), 6.85 (d, J = 8.1
Hz, 1H), 6.89 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 6.96 (m, 2H), 7.05 (t, J = 7.9 Hz, 1H), 7.10 - 7.17 (m, 2H).
【0227】
LCMS(方法:Atlantis T3カラム、2.1×50mm、3μm、14分で5~95%アセトニトリル/水と0.1%ギ酸、4分保持、流量:0.7mL/分、波長:210nm):保持時間:4.5分、99.9%純度、(EI-MS):m/z=383.3([M+H]+)
【0228】
キラルHPLC(Chiralpak IGカラム、250mm×4.6mm、5μm、方法:100%EtOH、流量:0.3mL/分、波長:230nm):保持時間:(R)異性体:16.6分、(S)異性体:21.2分、99.9%ee。
(実施例8)
(R)-(2,3-ジメトキシフェニル)(1-(2-(4-フルオロフェニル)エチル-1,1-d
2)ピペリジン-4-イル-2,2,3,3,4,5,5,6,6-d
9)メタノール(化合物215)の合成
スキーム16.(R)-(2,3-ジメトキシフェニル)(1-(2-(4-フルオロフェニル)エチル-1,1-d
2)ピペリジン-4-イル-2,2,3,3,4,5,5,6,6-d
9)メタノール(化合物215)の調製。
【化27】
【0229】
ステップ1.(2,3-ジメトキシフェニル)(1-(2-(4-フルオロフェニル)エチル-1,1-d2)ピペリジン-4-イル-2,2,3,3,4,5,5,6,6-d9)メタノール(7i)。重炭酸ナトリウム(0.13g、1.6mmol)に続いて9b(0.16g、0.80mmol)のDMF(3mL)溶液を、30b(0.21g、0.80mmol)のDMF(7mL)溶液に室温で添加した。反応混合物を90℃で2.5時間加熱し、室温に冷却し、減圧下で濃縮した。残留物を水(10mL)で希釈し、EtOAc(3×25mL)で抽出した。合わせた有機層を飽和ブライン(20mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、減圧下で濃縮して、粗製7i(0.26g、収率87%)を透明な油状物として得、それを静置すると固化した。
【0230】
(R)-(2,3-ジメトキシフェニル)(1-(2-(4-フルオロフェニル)エチル-1,1-d2)ピペリジン-4-イル-2,2,3,3,4,5,5,6,6-d9)メタノール(化合物215)のキラル分離。7i(266mg)を、キラルSFCによって精製して(AD-H、250×20mm、5mm、20%EtOH(0.1%ジエチルアミン/CO2、100バール、流量60mL/分、波長220nm)、初期に溶離する(R)エナンチオマーを透明な油状物(134mg)として得た。
【0231】
生じた透明な油状物を、CH2Cl2およびヘキサンと研和して、化合物215(105mg)を白色の固体として得た。
【0232】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 2.29 (br s, 1H), 2.74 (s, 2H), 3.87 (s, 6H), 4.63 (s, 1H), 6.85 (dd, J = 1.5, 8.1 Hz, 1H), 6.89 (dd, J
= 1.2, 7.8 Hz, 1H), 6.95 (t, J = 8.7 Hz, 2H), 7.05 (t, J = 7.9
Hz, 1H), 7.10 - 7.18 (m, 2H).
【0233】
LCMS(方法:Atlantis T3カラム、2.1×50mm、3μm、14分で5~95%アセトニトリル/水と0.1%ギ酸、4分保持、流量:0.7mL/分、波長:210nm):保持時間:4.6分、99.8%純度、(EI-MS):m/z=385.3([M+H]+)
【0234】
キラルHPLC(Chiralpak IGカラム、250mm×4.6mm、5μm、方法:100%EtOH、流量:0.3mL/分、波長:230nm):保持時間:(R)異性体:16.8分、(S)異性体:21.3分、99.2%ee
(実施例9)
(R)-(2,3-ビス(メトキシ-d
3)フェニル)(1-(4-フルオロフェネチル)ピペリジン-4-イル-2,2,3,3,4,5,5,6,6-d
9)メタノール(化合物347)の合成
スキーム17.(R)-(2,3-ビス(メトキシ-d
3)フェニル)(1-(4-フルオロフェネチル)ピペリジン-4-イル-2,2,3,3,4,5,5,6,6-d
9)メタノール(化合物347)の調製。
【化28】
【0235】
ステップ1.tert-ブチル4-(2,3-ビス(メトキシ-d3)ベンゾイル)ピペリジン-1-カルボキシレート-2,2,3,3,4,5,5,6,6-d9(4d)。ヘキサン(2.89mL、7.23mmol)中2.5Mのn-ブチルリチウムの溶液を、21b(0.99g、6.90mmol)の無水THF(16mL)溶液に0℃で滴下添加した。添加の後、反応混合物を室温に加温し、2時間撹拌し、次に0℃に再冷却した。予冷した(0℃)2b(1.94g、6.90mmol)のTHF(14mL)溶液を、反応混合物にゆっくり添加した。反応混合物を室温に加温し、次に一晩撹拌した。無水THF(16mL)中さらなる21b(0.99g、6.9mmol)部分を、0℃でヘキサン(2.89mL、7.23mmol)中2.5Mのn-BuLiで処理し、次に反応混合物に0℃で添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物を、重水(35mL、CIL、99.9%D原子)中飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチし、15分間撹拌した。層を分離し、水層をEtOAc(3×100mL)で抽出した。合わせた有機層を重水(60mL、CIL、99.9%D原子)中飽和ブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、減圧下で濃縮して、粗製4d(3.9g)を黄色の油状物として得た。粗製材料をクロマトグラフィーによって精製し(Biotage自動化クロ
マトグラフィー系、Biotage100gシリカゲルカートリッジ、ヘキサン中10~15%EtOAcのグラジエントで溶離する)、次に逆相クロマトグラフィーによって再精製して(Biotage自動化クロマトグラフィー系、Teledyne100g C18カートリッジ、水中0~85%アセトニトリルのグラジエントで溶離する)、ケトン基に対してアルファに19%プロトンが取り込まれた4d(1.16g、収率46%)を得た。
【0236】
炭酸カリウム(0.66g、4.77mmol)を、重水(100mL、CIL、99.9%D原子)および無水THF(100mL)の1:1混合物中、こうして得られた4d(1.16g、3.18mmol)の溶液にrtで添加した。反応混合物を3日間撹拌した。反応混合物を、重水(60mL、CIL、99.9%D原子)中飽和ブラインおよびCH2Cl2(300mL)に分けた。層を分離し、水層をCH2Cl2(200mL)で抽出した。合わせた有機層を、重水(100mL、CIL、99.9%D原子)中飽和ブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、減圧下で濃縮して、4d(1.18g)を透明な油状物として得た。
【0237】
ステップ2.(2,3-ビス(メトキシ-d3)フェニル)(ピペリジン-4-イル-2,2,3,3,4,5,5,6,6-d9)メタノントリフルオロ酢酸塩(5d)。トリフルオロ酢酸-d(10.88g、95.5mmol、Sigma Aldrich、99.5%D原子)を、未希釈で4d(1.16g、3.2mmol)に0℃で添加した。反応混合物を室温に加温し、3時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮して、黄色の油状物を得た。Et2O(100mL)を残留物に添加した。混合物を10分間撹拌すると、重い白色の沈殿物が生じた。固体を濾過して、5d(1.17g、定量的収量)を白色の固体として得た。
【0238】
ステップ3.(2,3-ビス(メトキシ-d3)フェニル)(ピペリジン-4-イル-2,2,3,3,4,5,5,6,6-d9)メタノール(30c)。水素化ホウ素ナトリウム(0.49g、12.9mmol)を、5d(1.17g、3.22mmol)のMeOD(60mL、Sigma Aldrich、99.5%D原子)溶液に0℃で一度に添加した。反応混合物を室温に加温し、一晩撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、残留物を、重水(50mL、CIL、99.9%D原子)中飽和重炭酸ナトリウム溶液およびCH2Cl2(100mL)に分けた。層を分離し、水層を、CH2Cl2(2×100mL)で抽出した。合わせた有機層を重水(50mL、CIL、99.9%D原子)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、減圧下で濃縮して、30c(0.26g)を得た。合わせた水層を減圧下で濃縮し、残留物をCH2Cl2(3×100mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を減圧下で濃縮して、30c(0.74g、87%)を得た。
【0239】
ステップ4.(2,3-ビス(メトキシ-d3)フェニル)(1-(4-フルオロフェネチル)ピペリジン-4-イル-2,2,3,3,4,5,5,6,6-d9)メタノール(7k)。重炭酸ナトリウム粉末(0.15g、1.8mmol)に続いて9a(0.18g、0.90mmol)のDMF(3mL)溶液を、30c(0.24g、0.90mmol)のDMF(7mL)溶液に室温で添加した。反応混合物を90℃で2.5時間加熱し、rtに冷却し、減圧下で濃縮した。残留物を水(10mL)で希釈し、EtOAc(3×25mL)で抽出した。合わせた有機層を飽和ブライン(20mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、減圧下で濃縮して、粗製7k(0.31g、88%)を透明な油状物として得、それを静置すると固体になった。
【0240】
キラル分離。(R)-(2,3-ビス(メトキシ-d3)フェニル)(1-(4-フルオロフェネチル)ピペリジン-4-イル-2,2,3,3,4,5,5,6,6-d9)
メタノール(化合物347)。7k(290mg)を、キラルSFCによって精製して(AD-H、250×20mm、5mm、20%EtOH(0.1%ジエチルアミン/CO2、100バール、流量60mL/分、波長220nm)、初期に溶離する(R)エナンチオマー(154mg)を透明な油状物として得た。
【0241】
生じた透明な油状物を、CH2Cl2およびヘキサンと研和して、化合物347(102mg)を白色の固体として得た。
【0242】
1H NMR (400 MHz, CDCL3) δ 2.32 (br s, 1H), 2.51 (d, J = 16.5 Hz, 2H), 2.75 (d, J = 16.5 Hz, 2H), 4.63 (s, 1H), 6.84 (d, J = 6.9 Hz, 1H), 6.89 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 6.95 (t, J = 8.7 Hz, 2H), 7.04 (t, J = 7.9 Hz, 1H), 7.10 - 7.18 (m, 2H).
【0243】
LCMS(方法:Atlantis T3カラム、2.1×50mm、3μm、14分で5~95%アセトニトリル/水と0.1%ギ酸、4分保持、流量:0.7mL/分、波長:210nm):保持時間4.6分、99.8%純度、(EI-MS):m/z=389.3([M+H]+)
【0244】
キラルHPLC(Chiralpak IGカラム、250mm×4.6mm、5μm、方法:100%EtOH、流量:0.3mL/分、波長:230nm):保持時間:(R)異性体:16.9分、(S)異性体:21.4分、99.3%ee。
(実施例10)
(R)-(2,3-ビス(メトキシ-d
3)フェニル)(1-(2-(4-フルオロフェニル)エチル-1,1-d
2)ピペリジン-4-イル-2,2,3,3,4,5,5,6,6-d
9)メタノール(化合物359)の合成
スキーム18.(R)-(2,3-ビス(メトキシ-d
3)フェニル)(1-(2-(4-フルオロフェニル)エチル-1,1-d
2)ピペリジン-4-イル-2,2,3,3,4,5,5,6,6-d
9)メタノール(化合物359)の調製。
【化29】
【0245】
ステップ1.(2,3-ビス(メトキシ-d3)フェニル)(1-(2-(4-フルオロフェニル)エチル-1,1-d2)ピペリジン-4-イル-2,2,3,3,4,5,5,6,6-d9)メタノール(7m)。重炭酸ナトリウム粉末(0.15g、1.8mmol)に続いて9b(0.19g、0.90mmol)のDMF(3mL)溶液を、30c(0.24g、0.90mmol)のDMF(7mL)溶液に室温で添加した。反応
混合物を90℃で2.5時間加熱し、室温に冷却し、減圧下で濃縮した。残留物を水(10mL)で希釈し、EtOAc(3×25mL)で抽出した。合わせた有機層を飽和ブライン(20mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、減圧下で濃縮して、7m(0.30g、83%)を透明な油状物として得、それを静置すると固化した。
【0246】
(R)-(2,3-ビス(メトキシ-d3)フェニル)(1-(2-(4-フルオロフェニル)エチル-1,1-d2)ピペリジン-4-イル-2,2,3,3,4,5,5,6,6-d9)メタノール(化合物359)のキラル分離。7m(289mg)を、キラルSFCによって精製して(AD-H、250×20mm、5mm、20%EtOH(0.1%ジエチルアミン/CO2、100バール、流量60mL/分、波長220nm)、初期に溶離する(R)エナンチオマーを透明な油状物(148mg)として得た。生じた透明な油状物を、CH2Cl2およびヘキサンと研和して、化合物359(113mg)を白色の固体として得た。
【0247】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 2.32 (br s, 1H), 2.74 (s, 2H), 4.63 (s, 1H), 6.84 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.89 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 6.95
(t, J = 8.7 Hz, 2H), 7.04 (t, J = 7.9 Hz, 1H), 7.13 (d, J = 13.9 Hz, 2H).
【0248】
LCMS(方法:Atlantis T3カラム、2.1×50mm、3μm、14分で5~95%アセトニトリル/水と0.1%ギ酸、4分保持、流量:0.7mL/分、波長:210nm):4.5分、99.8%純度、(EI-MS):m/z=391.3([M+H]+)
【0249】
キラルHPLC(Chiralpak IGカラム、250mm×4.6mm、3μm、方法:100%EtOH、流量:0.3mL/分、波長:230nm):保持時間:(R)異性体:16.8分、(S)異性体:21.4分、99.2%ee。
(実施例11)
(R)-(2,3-ビス(メトキシ-d
3)フェニル)(1-(2-(4-フルオロフェニル)エチル-1,1,2,2-d
4)ピペリジン-4-イル-2,2,3,3,4,5,5,6,6-d
9)メタノール(化合物383)の合成
スキーム19.(R)-(2,3-ビス(メトキシ-d
3)フェニル)(1-(2-(4-フルオロフェニル)エチル-1,1,2,2-d
4)ピペリジン-4-イル-2,2,3,3,4,5,5,6,6-d
9)メタノール(化合物383)の調製
【化30】
【0250】
ステップ1.(2,3-ビス(メトキシ-d3)フェニル)(1-(2-(4-フルオロフェニル)エチル-1,1,2,2-d4)ピペリジン-4-イル-2,2,3,3,4,5,5,6,6-d9)メタノール(7n)。30c(0.27g、1.0mmol)のDMF(7mL)溶液に、NaHCO3(0.17g、2.0mmol)に続いて9c(0.21g、1.0mmol)のDMF(3mL)溶液を添加した。反応混合物を90℃で2.5時間加熱し、室温に冷却し、減圧下で濃縮した。残留物を水(10mL)で希釈し、EtOAc(3×25mL)で抽出した。合わせた有機層を飽和ブライン(20mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、減圧下で濃縮して、7n(0.35g、90%)を透明な油状物として得、それを静置すると固化した。
【0251】
(R)-(2,3-ビス(メトキシ-d3)フェニル)(1-(2-(4-フルオロフェニル)エチル-1,1,2,2-d4)ピペリジン-4-イル-2,2,3,3,4,5,5,6,6-d9)メタノール(化合物383)のキラル分離。7n(350mg)を、キラルSFCによって精製して(AD-H、250×20mm、5mm、20%EtOH(0.1%ジエチルアミン/CO2、100バール、流量60mL/分、波長220nm)、初期に溶離する(R)エナンチオマーを透明な油状物(150mg)として得た。
【0252】
生じた透明な油状物を、CH2Cl2およびヘキサンと研和して、化合物359(142mg)を白色の固体として得た。
【0253】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 2.32 (s, 1H), 4.63 (s, 1H), 6.84 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.89 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 6.95 (t, J = 8.8 Hz,
2H), 7.04 (t, J = 7.9 Hz, 1H), 7.13 (d, J = 14.1 Hz, 2H).
【0254】
LCMS(方法:Atlantis T3カラム、2.1×50mm、3μm、14分で5~95%アセトニトリル/水と0.1%ギ酸、4分保持、流量:0.7mL/分、波長:210nm):保持時間:4.5分、99.9%純度、(EI-MS):m/z=393.3([M+H]+)
【0255】
キラルHPLC(Chiralpak IGカラム、250mm×4.6mm、5μm、方法:100%EtOH、流量:0.3mL/分、波長:230nm):保持時間:(R)異性体:16.8分、(S)異性体:21.4分、99.3%ee。
(実施例12)
ヒト肝ミクロソームにおける代謝安定性の評価
【0256】
ミクロソームアッセイ:ヒト肝ミクロソーム(20mg/mL)を、Xenotech,LLC(Lenexa、KS)から得た。β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸の還元形態(NADPH)、塩化マグネシウム(MgCl2)、およびジメチルスルホキシド(DMSO)を、Sigma-Aldrichから購入した。
【0257】
代謝安定性の決定:構造式(I)(例えば、本明細書に記載される実施形態またはその実施形態の態様の)もしくは構造式(II)の試験化合物、または薬学的に許容されるその塩の7.5mMのストック溶液を、DMSOで調製した。7.5mMのストック溶液を、アセトニトリル(ACN)で12.5~50μMに希釈した。20mg/mLのヒト肝ミクロソームを、3mMのMgCl2を含有する0.1Mのリン酸カリウム緩衝液、pH7.4で、0.625mg/mLに希釈した。希釈したミクロソームを、96ウェルのディープウェルポリプロピレンプレートのウェルに三連で添加した。12.5~50μMの試験化合物のアリコート10μLを、ミクロソームに添加し、混合物を10分間、予め加
温した。予め加温したNADPH溶液を添加することによって、反応を開始させた。最終反応体積は0.5mLであり、0.1Mのリン酸カリウム緩衝液、pH7.4、および3mMのMgCl2中、4.0mg/mLのヒト肝ミクロソーム、0.25μMの試験化合物、および2mMのNADPHを含有していた。反応混合物を37℃でインキュベートし、アリコート50μLを0分、5分、10分、20分、および30分において除去し、氷冷ACN(アセトニトリル)50μLを内部標準と共に含有する浅いウェルの96ウェルプレートに添加して、反応を停止させた。プレートを4℃で20分間保存し、その後、水100μLをプレートのウェルに添加した後、遠心分離して、沈殿したタンパク質をペレット化した。上清を別の96ウェルプレートに移し、残りの親の量について、LC-MS/MSによってApplied Bio-systems API 4000質量分析計を使用して分析した。式Iの化合物の非重水素化対応物および正の対照である7-エトキシクマリン(1μM)について、同じ手順を行った。試験を三連で行った。
【0258】
データ分析:試験化合物についてin vitroでのt1/2を、残りの親%の線形回帰(ln)対インキュベーション時間の関係の勾配から計算した。
in vitroでのt1/2=0.693/k
k=-[残りの親%の線形回帰(ln)対インキュベーション時間の勾配]
見かけの固有クリアランスを、以下の等式を使用して計算した。
CLint(mL/分/kg)=(0.693/in vitroでのt1/2)(インキュベーション体積/ミクロソーム1mg)(ミクロソーム45mg/肝臓1グラム)(肝臓20g/b.w.1kg)
【0259】
データ分析は、マイクロソフトのエクセルソフトウェアを使用して実施した。結果は、以下の表5および6に示される。
【表5】
【表6】
【0260】
これらの実験では、半減期の15%に等しいまたはそれを超える増大値は、有意差であるとみなされる。見かけの固有クリアランス比(重水素化化合物/ボリナンセリン)が>1.15または<0.85である場合には、有意差であるとみなされる。
【0261】
結果は、重水素化化合物147、115、148、131、151、159、359、および383が、非重水素化ボリナンセリンと比較して、ヒト肝ミクロソームにおける半減期(t1/2)の有意な増大を示すが、重水素化化合物203、215、および347は示さなかったことを示している。
(実施例13)
CYP3A4 Supersomesにおける代謝安定性の評価
材料および方法
【0262】
材料:CYP3A4 supersomes(登録商標)を、Corning Gentestから得た。β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸の還元形態(NADPH)、塩化マグネシウム(MgCl2)、およびジメチルスルホキシド(DMSO)を、Sigma-Aldrichから購入した。D-クリゾチニブ化合物は、Concert Pharmaceuticalsによって供給された。
【0263】
代謝安定性の決定:試験化合物の10mMのストック溶液を、DMSOで調製した。7.5mMのストック溶液を、アセトニトリル(ACN)で12.75μMに希釈した。CYP3A4 supersomesを、3mMのMgCl2を含有する0.1Mのリン酸カリウム緩衝液、pH7.4で、50pmol/mLに希釈した。希釈したsupersomesを、96ウェルのディープウェルポリプロピレンプレートのウェルに三連で添加した。12.75μMの試験化合物10μLを、supersomesに添加し、混合物を10分間、予め加温した。予め加温したNADPH溶液を添加することによって、反応を開始させた。最終反応体積は0.5mLであり、0.1Mのリン酸カリウム緩衝液、pH7.4、および3mMのMgCl2中、50pmol/mLのCYP3A4 supersomes、0.25μMの試験化合物、および2mMのNADPHを含有していた。反応混合物を37℃でインキュベートし、アリコート50μLを0分、5分、10分、20分、および30分において除去し、氷冷ACN50μLを内部標準と共に含有する浅い
ウェルの96ウェルプレートに添加して、反応を停止させた。プレートを4℃で20分間保存し、その後、水100μLをプレートのウェルに添加した後、遠心分離して、沈殿したタンパク質をペレット化した。上清を別の96ウェルプレートに移し、残りの親の量について、LC-MS/MSによってApplied Bio-systems API 4000質量分析計を使用して分析した。
【0264】
データ分析:試験化合物についてin vitroでのt1/2を、残りの親%の線形回帰(ln)対インキュベーション時間の関係の勾配から計算した。
in vitroでのt1/2=0.693/k
k=-[残りの親%の線形回帰(ln)対インキュベーション時間の勾配]
【0265】
データ分析は、マイクロソフトのエクセルソフトウェアを使用して実施した。結果は、以下の表7および8に示される。
【表7】
【表8】
【0266】
これらの実験では、半減期の15%に等しいまたはそれを超える増大値は、有意差であるとみなされる。結果は、重水素化化合物147、115、148、131、151、159、347、359、および383が、非重水素化ボリナンセリンと比較して、CYP3A4 supersomesにおける半減期(t1/2)の有意な増大を示すが、重水素化化合物203および215は示さなかったことを示している。
【0267】
本明細書に引用されるすべての特許、公開特許出願および参考文献の関連する教示は、それらの全体が参照により組み込まれる。
【0268】
当業者は、さらなる説明なしに、上記の説明および例示的な例を使用して、本発明の化合物を作製し利用し、特許請求される方法を実施することができると考えられる。先の議論および実施例は、単に、ある特定の好ましい実施形態の詳細な説明を提示することを理解されるべきである。当業者には、様々な改変形態および均等物が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく作製され得ることが明らかとなろう。
一実施形態において、例えば、以下の項目が提供される。
(項目1)
構造式(I)によって表される化合物
【化31】
、または薬学的に許容されるその塩[式中、
R
1およびR
2は、独立に、-CH
3、-CH
2D、-CHD
2、および-CD
3から選択され、
Xは、-OHまたは-Fであり、そして
Y
1a、Y
1b、Y
2a、Y
2b、Y
3a、Y
3b、Y
4a、Y
4b、Y
5、Y
6、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、およびY
11は、それぞれ独立に、水素および重水素から選択され、
ただし、Y
1a、Y
1b、Y
2a、Y
2b、Y
3a、Y
3b、Y
4a、Y
4b、Y
5、Y
6、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、Y
11、R
1およびR
2の少なくとも1つは、重水素を含み、
ただし、Y
1a、Y
1b、Y
2a、およびY
2bが、それぞれ重水素である場合には、Y
3a、Y
3b、Y
4a、Y
4b、Y
5、Y
6、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、Y
11、R
1およびR
2の少なくとも1つは、重水素を含み、そして
ただし、Y
3a、Y
3b、Y
4a、およびY
4bが、それぞれ重水素である場合には、Y
1a、Y
1b、Y
2a、Y
2b、Y
5、Y
6、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、Y
11、R
1およびR
2の少なくとも1つは、重水素を含み、
重水素として具体的に指定された各位置は、少なくとも50.1%の重水素の取り込みを有する]。
(項目2)
R
1およびR
2が、独立に、-CH
3および-CD
3から選択される、項目1に記載の化合物。
(項目3)
Xが、-OHである、前記項目のいずれか一項に記載の化合物。
(項目4)
Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、およびY
11が、それぞれ、水素である、前記項目のいずれか一項に記載の化合物。
(項目5)
Y
4aおよびY
4bが、同じである、前記項目のいずれか一項に記載の化合物。
(項目6)
Y
4a、Y
4b、Y
5、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、およびY
11が、それぞれ、水素である、前記項目のいずれか一項に記載の化合物。
(項目7)
Y
1aおよびY
1bが、同じである、前記項目のいずれか一項に記載の化合物。
(項目8)
Y
2aおよびY
2bが、同じである、前記項目のいずれか一項に記載の化合物。
(項目9)
Y
3aおよびY
3bが、同じである、前記項目のいずれか一項に記載の化合物。
(項目10)
R
1およびR
2が、独立に、-CH
3および-CD
3から選択され、Xが、-OHであり、Y
4a、Y
4b、Y
5、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、およびY
11が、それぞれ、水素であり、Y
1a、Y
1b、Y
2aおよびY
2bが、同じであり、そしてY
3aおよびY
3bが、同じである、前記項目のいずれか一項に記載の化合物。
(項目11)
R
1およびR
2が、独立に、-CH
3および-CD
3から選択され、Xが、-OHであり、Y
4a、Y
4b、Y
5、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、およびY
11が、それぞれ、水素であり、Y
1aおよびY
1bが、同じであり、そしてY
2a、Y
2b、Y
3aおよびY
3bが、同じである、前記項目のいずれか一項に記載の化合物。
(項目12)
Y
2aおよびY
2bが、重水素である、前記項目のいずれか一項に記載の化合物。
(項目13)
重水素と指定されていない任意の原子が、その天然同位体存在量で存在する、前記項目のいずれか一項に記載の化合物。
(項目14)
Xが、-OHであり、Y
1aおよびY
1bが、同じであり、Y
2aおよびY
2bが、同じであり、Y
3aおよびY
3bが、同じであり、そしてY
4a、Y
4b、Y
5、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、およびY
11が、それぞれ、水素であり、そして前記化合物が、以下の表1に記載される化合物のいずれか1つ
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
または前述したもののいずれかの薬学的に許容される塩から選択され、重水素と指定されていない任意の原子が、その天然同位体存在量で存在する、項目1に記載の化合物。
(項目15)
Xが、-OHであり、Y
1aおよびY
1bが、同じであり、Y
2aおよびY
2bが、同じであり、Y
3aおよびY
3bが、同じであり、そしてY
4a、Y
4b、Y
5、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、およびY
11が、それぞれ、水素であり、そして前記化合物が、以下の表2に記載される化合物のいずれか1つ
【表2-3】
または前述したもののいずれかの薬学的に許容される塩から選択され、重水素と指定されていない任意の原子が、その天然同位体存在量で存在する、項目1に記載の化合物。
(項目16)
Xが、-OHであり、Y
1aおよびY
1bが、同じであり、Y
2aおよびY
2bが、同じであり、Y
3aおよびY
3bが、同じであり、Y
4aおよびY
4bが、同じであり、そしてY
7、Y
8、Y
9、Y
10、およびY
11が、それぞれ、水素であり、そして前記化
合物が、以下の表3に記載される化合物のいずれか1つ
【表3-6】
【表3-7】
【表3-8】
【表3-9】
【表3-10】
または前述したもののいずれかの薬学的に許容される塩から選択され、重水素と指定されていない任意の原子が、その天然同位体存在量で存在する、項目1に記載の化合物。
(項目17)
Xが、-OHであり、Y
1aおよびY
1bが、同じであり、Y
2aおよびY
2bが、同じであり、Y
3aおよびY
3bが、同じであり、Y
4aおよびY
4bが、同じであり、そしてY
7、Y
8、Y
9、Y
10、およびY
11が、それぞれ、水素であり、そして前記化合物が、以下の表4に記載される化合物のいずれか1つ
【表4-3】
または前述したもののいずれかの薬学的に許容される塩から選択され、重水素と指定されていない任意の原子が、その天然同位体存在量で存在する、項目1に記載の化合物。
(項目18)
重水素として具体的に指定された各位置が、少なくとも90%の重水素の取り込みを有する、前記項目のいずれか一項に記載の化合物。
(項目19)
重水素として具体的に指定された各位置が、少なくとも95%の重水素の取り込みを有する、前記項目のいずれか一項に記載の化合物。
(項目20)
重水素として具体的に指定された各位置が、少なくとも97%の重水素の取り込みを有する、前記項目のいずれか一項に記載の化合物。
(項目21)
構造式(I)によって表される化合物
【化32】
、もしくは薬学的に許容されるその塩[式中、
R
1およびR
2は、独立に、-CH
3、-CH
2D、-CHD
2、および-CD
3から選択され、
Xは、-OHまたは-Fであり、そして
Y
1a、Y
1b、Y
2a、Y
2b、Y
3a、Y
3b、Y
4a、Y
4b、Y
5、Y
6、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、およびY
11は、それぞれ独立に、水素および重水素から選択され、
ただし、Y
1a、Y
1b、Y
2a、Y
2b、Y
3a、Y
3b、Y
4a、Y
4b、Y
5、Y
6、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、Y
11、R
1およびR
2の少なくとも1つは、重水素を含む]、または
項目1~15のいずれか一項に記載の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、および薬学的に許容される担体
を含む、医薬組成物。
(項目22)
それを必要とする対象において、精神病、統合失調症、統合失調性感情障害、パーキンソン病、レビー小体認知症、睡眠障害、激越、気分障害、血栓塞栓性障害、自閉症、注意欠陥多動性障害、およびそれらの任意の組合せから選択される疾患または状態を処置または予防する方法であって、前記対象に、有効量の構造式(I)によって表される化合物
【化33】
、もしくは薬学的に許容されるその塩[式中、
R
1およびR
2は、独立に、-CH
3、-CH
2D、-CHD
2、および-CD
3から選択され、
Xは、-OHまたは-Fであり、そして
Y
1a、Y
1b、Y
2a、Y
2b、Y
3a、Y
3b、Y
4a、Y
4b、Y
5、Y
6、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、およびY
11は、それぞれ独立に、水素および重水素から選択され、
ただし、Y
1a、Y
1b、Y
2a、Y
2b、Y
3a、Y
3b、Y
4a、Y
4b、Y
5、Y
6、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、Y
11、R
1およびR
2の少なくとも1つは、重水素を含む]、
項目1~15のいずれか一項に記載の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、または項目17に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
(項目23)
前記対象が、ヒトである、項目22に記載の方法。
(項目24)
精神病、統合失調症、統合失調性感情障害、パーキンソン病、レビー小体認知症、睡眠障害、激越、気分障害、血栓塞栓性障害、自閉症、注意欠陥多動性障害、およびそれらの任意の組合せから選択される疾患または状態を処置または予防するための医薬組成物であって、構造式(I)によって表される化合物
【化34】
、もしくは薬学的に許容されるその塩[式中、
R
1およびR
2は、独立に、-CH
3、-CH
2D、-CHD
2、および-CD
3から選択され、
Xは、-OHまたは-Fであり、そしてY
1a、Y
1b、Y
2a、Y
2b、Y
3a、Y
3b、Y
4a、Y
4b、Y
5、Y
6、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、およびY
11は、それぞれ独立に、水素および重水素から選択され、
ただし、Y
1a、Y
1b、Y
2a、Y
2b、Y
3a、Y
3b、Y
4a、Y
4b、Y
5、Y
6、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、Y
11、R
1およびR
2の少なくとも1つは、重水素を含む]、または項目1~15のいずれか一項に記載の化合物を含む、医薬組成物。
(項目25)
精神病、統合失調症、統合失調性感情障害、パーキンソン病、レビー小体認知症、睡眠障害、激越、気分障害、血栓塞栓性障害、自閉症、注意欠陥多動性障害、およびそれらの任意の組合せから選択される疾患または状態の処置または予防において使用するための、構造式(I)によって表される化合物
【化35】
、もしくは薬学的に許容されるその塩[式中、
R
1およびR
2は、独立に、-CH
3、-CH
2D、-CHD
2、および-CD
3から選択され、
Xは、-OHまたは-Fであり、そして
Y
1a、Y
1b、Y
2a、Y
2b、Y
3a、Y
3b、Y
4a、Y
4b、Y
5、Y
6、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、およびY
11は、それぞれ独立に、水素および重水素から選択され、
ただし、Y
1a、Y
1b、Y
2a、Y
2b、Y
3a、Y
3b、Y
4a、Y
4b、Y
5、Y
6、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、Y
11、R
1およびR
2の少なくとも1つは、重水素を含む]、
または項目1~15のいずれか一項に記載の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩。
(項目26)
精神病、統合失調症、統合失調性感情障害、パーキンソン病、レビー小体認知症、睡眠障害、激越、気分障害、血栓塞栓性障害、自閉症、注意欠陥多動性障害、およびそれらの任意の組合せから選択される疾患または状態を処置または予防するための医薬の製造のための、構造式(I)によって表される化合物
【化36】
、もしくは薬学的に許容されるその塩[式中、
R
1およびR
2は、独立に、-CH
3、-CH
2D、-CHD
2、および-CD
3から選択され、
Xは、-OHまたは-Fであり、そして
Y
1a、Y
1b、Y
2a、Y
2b、Y
3a、Y
3b、Y
4a、Y
4b、Y
5、Y
6、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、およびY
11は、それぞれ独立に、水素および重水素から選択され、
ただし、Y
1a、Y
1b、Y
2a、Y
2b、Y
3a、Y
3b、Y
4a、Y
4b、Y
5、Y
6、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、Y
11、R
1およびR
2の少なくとも1つは、重水素を含む]、または
項目1~15のいずれか一項に記載の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩の使用。