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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163149
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】電動自転車用モータユニット
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/18 20060101AFI20241114BHJP
   H02K 5/00 20060101ALI20241114BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20241114BHJP
   H02K 7/18 20060101ALI20241114BHJP
   H02K 11/30 20160101ALI20241114BHJP
   B62M 6/55 20100101ALI20241114BHJP
   B62M 6/70 20100101ALI20241114BHJP
【FI】
H02K5/18
H02K5/00 A
H02K7/116
H02K7/18 A
H02K11/30
B62M6/55
B62M6/70
【審査請求】有
【請求項の数】30
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024147588
(22)【出願日】2024-08-29
(62)【分割の表示】P 2022132748の分割
【原出願日】2018-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西森 雅人
(72)【発明者】
【氏名】川上 将史
(72)【発明者】
【氏名】足立 良平
(72)【発明者】
【氏名】梅垣 史
(72)【発明者】
【氏名】山口 雄大
(57)【要約】
【課題】放熱性向上を実現することのできる電動自転車用モータユニットを提供する。
【解決手段】電動自転車用モータユニット3は、ステータ53、ロータ54、及び回転軸51を有するモータ5と、回転軸51の一部が収容されるユニットケース4と、ユニットケース4に収容され、モータ5の回転を制御する制御基板35と、制御基板35およびユニットケース4に接することにより、制御基板35の熱をユニットケース4に伝導する熱伝導性部材9と、を備える。熱伝導性部材9は、制御基板35とステータ53との間に設けられた第1熱伝導性部材91を有する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ、ロータ、及び回転軸を有するモータと、
前記回転軸の一部が収容されるユニットケースと、
前記ユニットケースに収容され、前記モータの回転を制御する制御基板と、
前記制御基板および前記ユニットケースに接することにより、前記制御基板の熱を前記ユニットケースに伝導する熱伝導性部材と、を備え、
前記熱伝導性部材は、前記制御基板と前記ステータとの間に設けられた第1熱伝導性部材を有する、
電動自転車用モータユニット。
【請求項2】
前記制御基板は、第1面と前記第1面とは反対の第2面を有し、
前記第1熱伝導性部材は、前記第1面と前記ユニットケースとの間に設けられ、
前記熱伝導性部材は、前記第2面と前記ユニットケースとの間に設けられた第2熱伝導性部材をさらに有する、
請求項1に記載の電動自転車用モータユニット。
【請求項3】
前記ユニットケースは、第1分割体と第2分割体とを有し、
前記第1熱伝導性部材は、前記第1分割体に接触し、
前記第2熱伝導性部材は、前記第2分割体に接触している、
請求項2に記載の電動自転車用モータユニット。
【請求項4】
前記ユニットケースに収容され、前記モータの回転を減速して伝達する減速機構をさらに備え、
前記第1分割体は、前記減速機構を軸支している、
請求項3に記載の電動自転車用モータユニット。
【請求項5】
前記第2熱伝導性部材は、前記モータの前記回転軸の軸方向に視たとき、前記モータと重なる位置に設けられている、
請求項2から4のいずれか一項に記載の電動自転車用モータユニット。
【請求項6】
前記モータは、
開口を含み、前記ステータと前記ロータの少なくとも一部が収容される金属カップを有し、
前記金属カップの内周面は、前記ステータに圧接している、
請求項1から5のいずれか一項に記載の電動自転車用モータユニット。
【請求項7】
回転軸を備えるモータと、
前記回転軸の一部が収容されるユニットケースと、
前記ユニットケースを貫通するように前記ユニットケースに配置され、軸線まわりに回転自在な入力軸と、
前記入力軸の外周面に沿って配置され、前記入力軸と一体に回転する入力体と、
前記入力軸の外周面に沿って配置され、前記入力体の回転力を受けて前記軸線まわりに回転する出力体と、
前記入力体と前記出力体の間に配置されるワンウェイクラッチと、
前記ユニットケースに収容され、前記モータの回転を制御する制御基板を具備し、
前記ユニットケースは、
前記制御基板の第1面に接続される第1放熱部と、
前記制御基板の前記第1面とは反対の第2面に接続される第2放熱部を有し、
前記入力体は、前記入力軸に連結された第1入力体と、前記出力体に回転力を伝達する第2入力体とを有し、
前記第2入力体は、前記ワンウェイクラッチの半径方向の内側に配置され、
前記出力体は、前記ワンウェイクラッチの半径方向の外側に配置される、
電動自転車用モータユニット。
【請求項8】
前記ユニットケース内に配置される熱伝導性部材を更に具備し、
前記熱伝導性部材は、前記第1放熱部と前記制御基板の間と、前記第2放熱部と前記制御基板の間の、少なくとも一方に配置される、
請求項7に記載の電動自転車用モータユニット。
【請求項9】
前記制御基板は、発熱素子を含み、
前記第1放熱部と前記第2放熱部の少なくとも一方は、前記制御基板の厚み方向に視たときに、前記発熱素子と重なる位置にある、
請求項7に記載の電動自転車用モータユニット。
【請求項10】
前記第1放熱部は、前記制御基板の厚み方向に視たときに、前記第2放熱部と重なる位置にある、
請求項7に記載の電動自転車用モータユニット。
【請求項11】
前記制御基板は、発熱素子を含み、
前記第1放熱部と前記第2放熱部の少なくとも一方は、前記制御基板の厚み方向に視たときに、前記発熱素子と重なる位置にあり、
前記熱伝導性部材は、前記第2放熱部と前記制御基板の間に配置される第2熱伝導性部材を有し、
前記第2熱伝導性部材は、複数の前記発熱素子に接触する、
請求項8に記載の電動自転車用モータユニット。
【請求項12】
前記熱伝導性部材は、前記第1放熱部と前記制御基板の間に配置される第1熱伝導性部材を有し、
前記第1熱伝導性部材は、複数の前記発熱素子に接触する、
請求項11に記載の電動自転車用モータユニット。
【請求項13】
前記ユニットケースの第1分割体は、前記第1放熱部を一体に有し、
前記第1分割体の一部は、周囲の部分よりも肉厚に形成され、
前記第1放熱部は、前記肉厚の部分が、前記ユニットケースの内側に張り出すように構成される、
請求項7に記載の電動自転車用モータユニット。
【請求項14】
前記ユニットケースの第2分割体は、前記第2放熱部を一体に有し、
前記第2分割体の一部は、周囲の部分よりも内側に凹むように形成され、
前記第2放熱部は、前記凹んだ部分の底部が、前記ユニットケースの内側に張り出すように構成される、
請求項7に記載の電動自転車用モータユニット。
【請求項15】
前記制御基板のうち前記入力軸から離れた側の端縁部が、前記第1放熱部と前記第2放熱部によって挟み込まれる、
請求項7に記載の電動自転車用モータユニット。
【請求項16】
前記出力体は、筒状の部材であり、前記入力軸の外周面に沿って回転可能に配置され、
前記出力体の一端部は、前記第2分割体の貫通孔を通って、前記ユニットケースの外に突出している、
請求項14に記載の電動自転車用モータユニット。
【請求項17】
前記第1放熱部または前記第2放熱部は、前記モータの近傍に設けられる、
請求項7に記載のモータユニット。
【請求項18】
前記第1放熱部または前記第2放熱部は、前記モータの前記回転軸の軸方向に視たとき前記モータと重なる位置に設けられる、
請求項7に記載のモータユニット。
【請求項19】
前記第1放熱部および前記第2放熱部は、前記ユニットケースの内面に形成されている、
請求項7に記載のモータユニット。
【請求項20】
前記制御基板は前記第1放熱部または前記第2放熱部に戴置されている、
請求項7に記載のモータユニット。
【請求項21】
前記モータの回転力を伝達する減速機構を、更に備え、
前記第1放熱部または前記第2放熱部は、前記減速機構よりも前記入力軸から離れて位置する、
請求項7に記載のモータユニット。
【請求項22】
請求項7に記載の電動自転車用モータユニットと、
前記電動自転車用モータユニットの前記モータの回転力が伝えられる車輪を具備する、
電動自転車。
【請求項23】
回転軸を有するモータと、
前記回転軸の一部が収容されるユニットケースと、
前記ユニットケースを貫通し、軸線まわりに回転自在な入力軸と、
前記入力軸の外周面に沿って配置され、前記入力軸と一体に回転する入力体と、
前記入力軸の外周面に沿って配置され、前記入力体の回転力を受けて軸線まわりに回転する出力体と、
前記入力体と前記出力体の間に配置されるワンウェイクラッチと、
前記ユニットケースに収容され、第1面と前記第1面とは反対の第2面を有し、前記モータの回転を制御する制御基板と、を備える電動自転車用モータユニットであって、
前記第1面に接触する第1熱伝導性部材と、
前記第1熱伝導性部材に接触し、前記電動自転車用モータユニットの外殻に前記制御基板の熱を伝導する第1放熱部と、
前記第2面に接触する第2熱伝導性部材と、
前記第2熱伝導性部材に接触し、前記電動自転車用モータユニットの外殻に前記制御基板の熱を伝導する第2放熱部と、を備え、
前記入力体は、前記入力軸に連結された第1入力体と、前記出力体に回転力を伝達する第2入力体とを有し、
前記第2入力体は、前記ワンウェイクラッチの半径方向の内側に配置され、
前記出力体は、前記ワンウェイクラッチの半径方向の外側に配置される、
電動自転車用モータユニット。
【請求項24】
回転軸を有するモータと、
前記回転軸の一部を収容し、第1分割体と第2分割体とを有するユニットケースと、
前記ユニットケースを貫通し、軸線まわりに回転自在な入力軸と、
前記入力軸の外周面に沿って配置され、前記入力軸と一体に回転する入力体と、
前記入力軸の外周面に沿って配置され、前記入力体の回転力を受けて前記軸線まわりに回転する出力体と、
前記入力体と前記出力体の間に配置されるワンウェイクラッチと、
前記ユニットケースに収容され、前記モータの回転力を減速して伝達する減速機構と、
前記入力体に伝達された人力と、前記減速機構により伝達された前記モータの回転力との合力が出力されるスプロケットと、
前記ユニットケースに収容され、前記モータの回転を制御する制御基板と、
前記ユニットケース内に配置される熱伝導性部材と、を備え、
前記第2分割体は、周囲の部分よりも前記ユニットケースの内側に凹むように形成され、前記凹んだ部分の底部が前記制御基板に接続される放熱部を有し、
前記放熱部は、前記熱伝導性部材を介して前記制御基板に接続され、
前記入力体は、前記入力軸に連結された第1入力体と、前記出力体に回転力を伝達する第2入力体と、を有し、
前記第2入力体は、前記ワンウェイクラッチの半径方向の内側に配置され、
前記出力体は、前記ワンウェイクラッチの半径方向の外側に配置される、
電動自転車用モータユニット。
【請求項25】
前記熱伝導性部材と前記制御基板との接触面は、前記第1分割体と前記第2分割体の合わせ面よりも前記第1分割体側にある、
請求項24に記載の電動自転車用モータユニット。
【請求項26】
前記制御基板は電気部品を含み、
前記熱伝導性部材は、前記電気部品に接触する、
請求項24又は8に記載の電動自転車用モータユニット。
【請求項27】
前記放熱部は、前記モータの前記回転軸の軸方向に視たとき、前記モータと重なる位置に設けられる、
請求項24に記載の電動自転車用モータユニット。
【請求項28】
前記制御基板は、コンデンサを有し、
前記コンデンサは、前記モータの前記回転軸の軸方向に視たとき、前記モータと重なる位置に設けられている、
請求項24又は7に記載の電動自転車用モータユニット。
【請求項29】
前記放熱部は、前記減速機構よりも前記入力軸から離れて位置する、
請求項24に記載の電動自転車用モータユニット。
【請求項30】
前記ユニットケースに収容され、前記入力軸に掛かるトルクを検出するトルク検出器を更に備え、
前記制御基板は、前記モータの前記回転軸の軸方向に対して垂直な方向から視たとき、前記トルク検出器と重なる位置に設けられている、
請求項24に記載の電動自転車用モータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動自転車用モータユニットとこれを備えた電動自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータユニットを備えた電動自転車(電動アシスト自転車)が記載されている。このモータユニットでは、外殻となるユニットケースに、モータが収納されている。ユニットケースは、モータを収容するモータケースを備えている。このモータケースは、モールド成形の手法を用いて、モータのステータと一体に樹脂成形されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/184826号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来のモータユニットにおいては、モータの駆動により生じる熱の放熱性において改善の余地があった。
【0005】
本発明は、放熱性向上を実現することのできる電動自転車用モータユニット及びこれを備えた電動自転車を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る電動自転車用モータユニットは、モータと、前記モータが取り付けられるユニットケースを具備する。前記モータは、ステータと、前記ステータに囲まれて位置するロータと、前記ロータに固定された回転軸と、開口を有し、前記ステータと前記ロータの少なくとも一部が収容される金属カップを備える。前記金属カップの内周面は、前記ステータに圧接している。
【0007】
本発明の一態様に係る電動自転車は、前記の一態様に係る電動自転車用モータユニットと、この電動自転車用モータユニットの前記モータの回転力が伝えられる車輪を具備する。
【0008】
本発明の別態様に係る電動自転車用モータユニットは、回転軸を備えるモータと、前記回転軸の一部が収容されるユニットケースと、前記ユニットケースを貫通するように前記ユニットケースに配置され、軸線まわりに回転自在な入力軸と、前記入力軸の外周面に沿って配置され、前記入力軸と一体に回転する入力体と、前記入力軸の外周面に沿って配置され、前記入力体の回転力を受けて前記軸線まわりに回転する出力体と、前記ユニットケースに収容され、前記モータの回転を制御する制御基板を具備する。前記ユニットケースは、前記制御基板の第1面に接続される第1放熱部と、前記制御基板の前記第1面とは反対の第2面に接続される第2放熱部を有する。
【0009】
本発明の別態様に係る電動自転車は、前記の別態様に係る電動自転車用モータユニットと、この電動自転車用モータユニットの前記モータの回転力が伝えられる車輪を具備する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、放熱性向上を実現することのできる電動自転車用モータユニット及びこれを備えた電動自転車を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態の電動自転車の側面図である。
図2図2Aは、同上の電動自転車が備えるモータユニットの側面図であり、図2Bは、同上のモータユニットの斜視図である。
図3図3は、図2AのA-A線断面図である。
図4図4は、同上のモータユニットの要部分解斜視図である。
図5図5は、同上のモータユニットの別の要部分解斜視図である。
図6図6は、同上のモータユニットの金属カップの側面図である。
図7図7は、同上のモータユニットの変形例1の断面図である。
図8図8は、同上のモータユニットの変形例2の断面図である。
図9図9は、同上のモータユニットの変形例3の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(一実施形態)
一実施形態の電動自転車1は、電動アシスト自転車である。一実施形態の電動自転車1は、フレーム10と、フレーム10に固定された電動自転車用モータユニット3(以下、単に「モータユニット3」という。)と、フレーム10に回転自在に連結された二つの車輪11を具備する。二つの車輪11は、前輪111と後輪112である。このうち後輪112が、モータユニット3から出力される駆動力によって回転駆動される。
【0013】
本文において用いる前後左右の各方向は、電動自転車1の運転者を基準として定義される。つまり、運転者が電動自転車1に乗って進行する方向が前方、これの反対側が後方であり、運転者から視て左の方向が左方、運転者から視て右の方向が右方である。以下、各構成について詳しく説明する。
【0014】
まず、フレーム10について説明する。
【0015】
図1に示すように、フレーム10は、ヘッドパイプ101、上パイプ102、下パイプ103、立パイプ104、シートステー105、チェーンステー106及びブラケット2を有する。
【0016】
フレーム10(つまりフレーム10を構成する上記の各部)は、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属で形成されるが、非金属を一部に含んでもよい。フレーム10全体が非金属で形成されてもよく、フレーム10の材質は特に限定されない。
【0017】
ヘッドパイプ101には、ハンドルポスト12が回転自在に挿通されている。ハンドルポスト12の下端部には、フロントフォーク121が形成されている。フロントフォーク121には、前輪111が回転可能に取り付けられている。ハンドルポスト12の上端部には、ハンドルバー122が固定されている。
【0018】
ヘッドパイプ101には、上パイプ102の前端部が固定されている。上パイプ102の後端部は、立パイプ104に固定されている。立パイプ104の上端開口には、サドル13から下方に延びるパイプ132が挿入されている。このパイプ132が立パイプ104に固定されることで、サドル13が固定される。立パイプ104の下端部には、ブラケット2が固定されている。
【0019】
ヘッドパイプ101には、下パイプ103の前端部が更に固定されている。下パイプ103の後端部は、ブラケット2に固定されている。
【0020】
ブラケット2の下側には、モータユニット3が固定されている。ブラケット2の後端部には、チェーンステー106の前端部が固定されている。
【0021】
上パイプ102の後端部には、シートステー105の前端部が固定されている。シートステー105の後端部は、チェーンステー106の後端部に連結されており、この連結部分に後輪112が回転自在に装着されている。下パイプ103には、モータユニット3に電力を供給するためのバッテリ15が、着脱自在に装着される。
【0022】
次に、モータユニット3について説明する。
【0023】
図2A図2Bに示すように、モータユニット3の外殻の大部分は、ユニットケース4で形成されている。図3に示すように、ユニットケース4には、車輪11を回転駆動させるための駆動源であるモータ5が取り付けられている。ユニットケース4には、モータ5の回転力が伝達される減速機構31と、モータ5の回転を制御する制御基板35に加えて、入力軸6、入力体7、出力体8等が収容されている。
【0024】
ユニットケース4の外面には、モータ5の主要部分を収容する有底筒状の金属カップ57が、取り付けられている。金属カップ57は開口を有し、金属カップ57の開口縁部574が、ユニットケース4に結合されている。
【0025】
モータ5のうち金属カップ57に収容されない部分(例えば、後述の回転軸51の一部)は、ユニットケース4に収容される。ユニットケース4の外面からは、ブラケット2に固定される複数の第1取付片401と、同じくブラケット2に固定される複数の第2取付片402が、突出している。
【0026】
ユニットケース4は、ユニットケース4の左側半部を形成する第1分割体41と、ユニットケース4の右側半部を構成する第2分割体42を含む。複数の第1取付片401は第1分割体41から突出し、複数の第2取付片402は第2分割体42から突出している。第1分割体41と第2分割体42が組み合わさることで、中空のユニットケース4が構成される。
【0027】
図3図4等に示すように、第1分割体41は、右方に開口された空間を有する。この空間が、ユニットケース4の収納空間の左半部を構成する。第1分割体41は、モータ5と対向する部分に壁部415を有する。壁部415には、円形状の貫通孔412と、これと同心である円弧状の貫通孔413が、形成されている。貫通孔412には、モータ5の一部(後述の回転軸51)が挿通される。貫通孔413には、モータ5への給電経路とこれをモールドした樹脂部分が、挿通される。
【0028】
第2分割体42は、左方に開放された空間を有する。この空間が、ユニットケース4の収納空間の右半部を構成する。第1分割体41と第2分割体42は、それぞれの空間が連通するように互いに固定される。
【0029】
モータ5が備える金属カップ57は、円形状の底壁572と、底壁572の周縁から延長された周壁573と、周壁573の先端部に形成されたフランジ状の開口縁部574を、一体に有する(図5図6参照)。周壁573は、底壁572の厚み方向に沿って延長されている。
【0030】
金属カップ57は、アルミニウム(アルミダイカスト)製であるが、金属カップ57の材質はこれに限定されず、例えば鉄、マグネシウム合金、チタン等でもよい。
【0031】
円環状である開口縁部574には、周方向に距離をあけて位置する複数のねじ穴575と、同じく周方向に距離をあけて位置する複数の突起576と、円環状の溝577が形成されている(図6参照)。
【0032】
複数のねじ穴575は、複数のねじ具571を一対一で締結するためのねじ穴である。
複数の突起576は、第1分割体41の外面の凹みに嵌って金属カップ57の位置決めを行う突起である。溝577は、Oリング49を配置するための溝であり、開口縁部574の全周にわたって形成されている。
【0033】
溝577は、複数のねじ穴575と複数の突起576よりも、径方向の内側(金属カップ57の開口に近い側)に位置する。溝577の外形は真円ではなく、ねじ穴575と突起576が位置する部分では、径方向の内側に向けて屈曲している(図6参照)。これにより、一実施形態のモータユニット3では金属カップ57の開口縁部574の外径寸法を抑えているが、溝577の外形を真円に形成することも可能である。
【0034】
金属カップ57を第1分割体41の外面に固定するには、第1分割体41の開口を通じて複数のねじ具571を挿し込み(図4参照)、第1分割体41を通じて、各ねじ具571を対応するねじ穴575に締結させればよい。これにより、金属カップ57の開口縁部574が、弾性を有するOリング49を介して、第1分割体41の外面に気密に固定される。金属カップ57とユニットケース4の間にOリング49が介在することで、振動の伝達抑制の効果も得られる。
【0035】
図3に示すように、モータ5は、円柱状の回転軸51と、回転軸51と一体に回転するように回転軸51に結合されたロータ52と、ロータ52を囲んで位置する円筒状のステータ53を有する。
【0036】
金属カップ57には、モータ5のうち回転軸51の軸方向の一部(回転軸51の軸方向の半部)と、ロータ52と、ステータ53の一部(ステータ53の大部分)が収容されている。金属カップ57の開口からは、回転軸51の残りの部分(回転軸51の軸方向の残り半部)と、ステータ53の残りの部分(ステータ53のうち樹脂モールドされた部分)が、突出している。
【0037】
金属カップ57の底壁572の内面には、軸受552を配置するための凹部578が形成されている。軸受552は、回転軸51の軸方向の端部を回転自在に支持する軸受である。回転軸51の軸方向の別の端部は、第2分割体42の内面の凹部428に配置された軸受551に、回転自在に支持される。
【0038】
回転軸51のうち金属カップ57から突出した部分の外周面には、減速機構31と噛み合うための歯部54が形成されている。
【0039】
一実施形態のモータユニット3において、金属カップ57の内周面570(すなわち金属製の周壁573の内周面)は、ステータ53の外周面530に対して、全周にわたって強固に圧接している。ここで、金属カップ57の内周面570がステータ53に圧接するとは、金属カップ57の内周面570が圧力を伴ってステータ53に接触することを意味する。金属カップ57の内周面570と、ステータ53の外周面530の間には、径方向において互いに押し合う向きの圧力が働いている。
【0040】
より具体的には、金属カップ57はステータ53に対して焼き嵌めされている。つまり、加熱により膨張した金属カップ57がステータ53に嵌められ、その後に金属カップ57が温度低下により収縮することで、金属カップ57はステータ53に対して強固に圧接している。金属カップ57の内周面570は、環状につながる金属面である。金属カップ57の内周面570は、その全周にわたって、ステータ53の外周面530に対して圧力を伴って密着している。
【0041】
ステータ53の外周面530のうち樹脂モールドされていない部分が、金属面535である。ステータ53は、全体が樹脂モールドされているのではなく、少なくとも金属面535が外周に露出するように、部分的に樹脂モールドされている。金属面535は、ステータ53の鉄心533の外周面である。鉄心533に巻かれたコイル534は、樹脂モールドで覆われている。
【0042】
このように、一実施形態のモータユニット3において、ステータ53は、一部分を除いて樹脂モールド(部分モールド)されている。この一部分には、ステータ53のうち金属カップ57の内周面570に圧接する部分(つまりステータ53の外周面530)が含まれている。
【0043】
したがって、モータ5の内部で生じた発熱は、ステータ53から金属カップ57に直接的に伝わり、金属カップ57を通じて効率よく外気に放熱される。金属カップ57の表面には、走行風が当たることができる。なお、後述の変形例で示すように、ステータ53における樹脂モールドは必須ではない。
【0044】
図5に示すように、金属カップ57とステータ53の間には、回り止めのピン48が配されている。ステータ53の外周面530には、ピン48の一部が嵌るように直線状の溝538が形成されている。金属カップ57の内周面570には、ピン48の別の部分が嵌るように直線状の溝579が形成されている(図6参照)。
【0045】
ピン48は、モータ5の軸方向(つまり回転軸51の軸方向)と平行に配される。金属カップ57とステータ53の間にピン48が嵌め込まれることで、金属カップ57とステータ53の相対的な回転が、より強固に抑えられる。
【0046】
ところで、一実施形態のモータユニット3では、ステータ53は、金属カップ57の開口を通じて突出する部分531を含んでいる(図4参照)。モータ5の軸方向において、ステータ53のこの部分531は、金属カップ57の底壁572が位置する側とは反対側に向けて突出している。この部分531が、Oリング49を装着するときにはガイドとしても機能する。
【0047】
ここまで、モータ5の構造について主に説明した。次いで、ユニットケース4に収容される各種の機構について説明する。
【0048】
図3に示すように、ユニットケース4には、入力軸6がその軸線60まわりに回転可能に収納される。第1分割体41には、入力軸6が挿し通される貫通孔411が形成されている。第2分割体42には、入力軸6が挿通される貫通孔421が形成されている。
【0049】
入力軸6の両端部には、クランクアーム18が固定される。クランクアーム18の先端部には、ペダル181が回転可能に取り付けられる(図1参照)。運転者は、ペダル181を漕ぐことにより、入力軸6に対して人力の回転力を加えることができる。
【0050】
ユニットケース4内において、入力体7は、入力軸6の外周面に沿って配置されている。入力体7は筒状の部材であり、入力軸6と一体に回転する。
【0051】
入力体7は、第1入力体71と第2入力体72に分割されている。第1入力体71は、第1分割体41内で入力軸6に連結されている。第2入力体72は、第2分割体42内で第1入力体71に連結され、出力体8に回転力を伝達する。
【0052】
出力体8は筒状の部材であり、入力軸6の外周面に沿って回転可能に配置されている。出力体8の一端部は、第2分割体42の貫通孔421を通ってユニットケース4の外に突出している。
【0053】
出力体8のうちユニットケース4から突出した部分には、前側のスプロケット191が固定されている。前側のスプロケット191は、出力体8と一体に回転する。後輪112のハブには、後側のスプロケット192が固定されている(図1参照)。前側のスプロケット191と後側のスプロケット192の間には、チェーン193が掛け回されている。
【0054】
図3に示すように、ユニットケース4内には、入力体7と出力体8との間に位置するようにワンウェイクラッチ32が配置されている。ワンウェイクラッチ32は、入力体7に対して加速方向の回転力が掛かる場合には、この回転力を出力体8に伝達させ、入力体7に対して減速方向の回転力が掛かる場合には、この回転力の出力体8への伝達を遮断するように構成されている。ここでの加速方向は、電動自転車1を進行方向に加速させる方向を意味する。減速方向は、加速方向とは反対の方向である。
【0055】
出力体8は、ウェブ81とリム82を一体に有する。ウェブ81は、出力体8の径方向の外側に向けて突出する。リム82は、ウェブ81の径方向の外端部に連続する。リム82の外周面に、減速機構31に噛み合う歯部83が形成されている。
【0056】
ユニットケース4に収容された減速機構31は、モータ5の回転を減速して出力体8に伝達するように構成されている。
【0057】
減速機構31は、回転軸310と、回転軸310に支持された第1伝達歯車311と第2伝達歯車312を有する。
【0058】
第1伝達歯車311は、モータ5の回転軸51から回転力を受ける筒状の部材である。第1伝達歯車311の外周面に、回転軸51の歯部54と噛み合う歯部313が形成されている。
【0059】
回転軸310は、左右方向を軸方向とするように、ユニットケース4に回転自在に収容されている。回転軸310の一端部は、第2分割体42に配置された軸受314に、回転自在に支持されている。
【0060】
第1伝達歯車311は、ワンウェイクラッチ315を介して回転軸310に連結されている。
【0061】
ワンウェイクラッチ315は、第1伝達歯車311に対して加速方向の回転力が掛かる場合には、この回転力を回転軸310に伝達し、第1伝達歯車311に対して減速方向の回転力が掛かる場合には、この回転力の回転軸310への伝達を遮断するように構成されている。
【0062】
第2伝達歯車312は、回転軸310と一体に回転するように固定されている。第2伝達歯車312は、回転軸310を介して第1伝達歯車311から伝達された回転力を、出力体8の歯部83に伝達する。第2伝達歯車312の外周面には、歯部83に噛み合う歯部316が形成されている。
【0063】
一実施形態のモータユニット3は上記の構成を備えるので、電動自転車1のペダル181を運転者が漕ぐことで入力軸6が加速方向に回転すると、第1入力体71及び第2入力体72は、入力軸6と一体に回転する。第2入力体72の加速方向の回転力が、ワンウェイクラッチ32を介して出力体8に伝達されると、出力体8及び前側のスプロケット191は加速方向に回転する。前側のスプロケット191が加速方向に回転すると、チェーン193を介して後側のスプロケット192が加速方向に回転し、後輪112が加速方向に回転駆動される。
【0064】
また、一実施形態のモータユニット3では、以下に説明するように、モータ5から出力される回転力を出力体8に加えることが可能である。
【0065】
モータ5の回転軸51が加速方向に回転すると、回転軸51と噛み合う第1伝達歯車311が加速方向に回転する。第1伝達歯車311の加速方向の回転力は、ワンウェイクラッチ315を介して回転軸310と第2伝達歯車312に伝達され、第2伝達歯車312は加速方向に回転する。第2伝達歯車312の加速方向の回転力は、出力体8に伝達される。出力体8には、モータ5からの回転力と、運転者がペダル181を漕いで発生させる回転力が、合わさって伝達される。
【0066】
一実施形態の電動自転車1においては、入力軸6に掛かっているトルクと、入力軸6の単位時間当たりの回転数に応じて、制御基板35が有する制御部が、モータ5の回転を制御する。入力軸6に掛かっているトルクは、ユニットケース4に収容されたトルク検出器33で検出される。トルク検出器33は、第1入力体71の外周面に形成された磁歪発生部331と、磁歪発生部331から僅かな間隔をあけて位置するコイル332を備えた、磁歪式のトルク検出器である。
【0067】
入力軸6の単位時間当たりの回転数は、回転検出器34で検出される。回転検出器34は、入力体7と一体に回転する回転体341と、回転体341から僅かな間隔をあけて位置する光センサ342を備えた、光学式の回転検出器である。
【0068】
制御基板35の制御部は、例えばマイクロコンピュータを有し、ROM(Read Only Memory)等の記憶部に記憶されたプログラムを実行することで、各要素の動作を制御する。この制御部としては、公知のものを適宜に利用することができる。
【0069】
一実施形態のモータユニット3は、上記の構成を備えるので、ステータ53の熱が金属面535を通じて金属カップ57に直接的に伝わり、金属カップ57の外表面から効率的に放熱される。加えて、樹脂の使用量が抑えられるので、モータユニット3全体が軽量化される。
【0070】
(変形例)
次に、一実施形態のモータユニット3及び電動自転車1の各種の変形例について説明する。なお、以下に説明する各種の変形例において、既に説明した構成と同様の構成については、同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0071】
図7には、モータユニット3の変形例1の断面を示している。図3等に示したモータユニット3では、ステータ53が部分的に樹脂モールドされているが、モータユニット3の変形例1では、ステータ53が樹脂モールドされていない。
【0072】
つまり、ステータ53の鉄心533とこれに巻かれたコイル534は、いずれも樹脂モールドされていない。鉄心533の外周面で構成された金属面535と、金属カップ57の内周面570が、互いに押し合う圧力を伴って密着している。
【0073】
変形例1では、ステータ53が樹脂モールドされていないので、モータ5全体が更に軽量化される。これに対して、ステータ53が金属面535を除いて樹脂モールドされていると、樹脂部分の蓄熱性によってステータ53の急激な温度上昇が抑えられるという利点と、樹脂部分が振動抑制、騒音抑制の機能を発揮するという利点と、樹脂部分によってコイル534と金属カップ57の間の絶縁性が高められるという利点がある。
【0074】
図8には、モータユニット3の変形例2の断面を示している。図3等に示したモータユニット3は、いわゆる一軸式のモータユニットであるのに対し、モータユニット3の変形例2は、二軸式のモータユニット3である。
【0075】
変形例2において、モータユニット3は、出力体8とは異なる第2出力体310Bを備える。
【0076】
第2出力体310Bの第1端部は、ユニットケース4内に位置している。第2出力体310Bは、第1分割体41に配置された軸受3191Bと、第2分割体42に配置された軸受3192Bに、回転可能に支持されている。
【0077】
第2出力体310Bの第2端部は、ユニットケース4の外に突出している。第2出力体310Bの第2端部には、スプロケット194Bが固定されている。スプロケット194Bには、チェーン193が掛けられる。
【0078】
第2出力体310Bの外周面には、ワンウェイクラッチ317Bを介して、大径の歯車318Bが取り付けられている。歯車318Bは、モータ5の回転軸51の歯部54と噛み合っている。
【0079】
モータユニット3の変形例2を備える電動自転車1では、運転者がペダル181を漕いで進行している最中に、モータ5の回転軸51が加速方向に回転すると、歯車318Bが加速方向に回転し、この回転力がワンウェイクラッチ317Bを介して第2出力体310Bに伝達され、更にチェーン193に伝達される。
【0080】
次に、モータユニット3の変形例3について、図9に基づいて説明する。
【0081】
変形例3において、金属製であるユニットケース4の第1分割体41は、第1放熱部414を一体に有する。変形例3では、第1分割体41の一部が周囲の部分よりも肉厚に形成されており、この肉厚の部分が、ユニットケース4の内側に張り出す金属製の第1放熱部414を構成している。
【0082】
第1放熱部414は、制御基板35の厚み方向の第1面351に対して、熱伝導性部材9である第1熱伝導性シート91を介して接続されている。本文で用いる接続の概念は、他の部材を介さずに直接接する場合のほか、他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0083】
制御基板35の厚み方向は、制御基板35が有するプリント基板354の厚み方向であり、変形例3においては左右方向である。制御基板35の第1面351は、プリント基板354の厚み方向の一面で主体が構成されている。制御基板35の第2面352は、プリント基板354の厚み方向のもう一面で主体が構成されている。
【0084】
制御基板35は、プリント基板354に実装された複数の電気部品353を更に有する。複数の電気部品353には、例えばコンデンサ3532、集積回路(ホールIC)3533に加えて、特に発熱を生じやすい発熱素子3531が含まれる。発熱素子3531は、例えばモータ5に電力を供給するFET等のスイッチング素子、ダイオード、コイル等である。その他、複数の電気部品353には各種の抵抗器、コネクタ等が含まれ得る。
【0085】
ユニットケース4の第2分割体42は、第2放熱部424を一体に有する。変形例3では、第2分割体42の一部が周囲の部分よりも内側に凹むように形成されており、この凹んだ部分の底部が、ユニットケース4の内側に張り出す金属製の第2放熱部424を構成している。
【0086】
第2放熱部424は、制御基板35の第2面352に対して、熱伝導性部材9である第2熱伝導性シート92を介して接続されている。第2面352は、第1面351とは反対側を向く面である。
【0087】
第2熱伝導性シート92には、複数の発熱素子3531が接触している。複数の発熱素子3531の発熱は、第2熱伝導性シート91及び第2放熱部424を介して、ユニットケース4の外面から効率的に放熱される。
【0088】
第2熱伝導性シート91に接触する発熱素子3531の数は複数に限らず、一つでもよい。また、第1熱伝導性シート91に対して一つ又は複数の発熱素子3531が接触してもよいし、第1熱伝導性シート91と第2熱伝導性シート92の両方に、それぞれ一つ又は複数の発熱素子3531が接触してもよい。
【0089】
このように、変形例3においては、ユニットケース4と一体に形成された第1放熱部414が制御基板35の第1面351に接続され、ユニットケース4と一体に形成された第2放熱部424が、制御基板35の第2面352に接続されている。制御基板35の熱(例えば発熱素子3531で生じた熱)は、厚み方向の両側から効率的に放熱されるので、電動自転車用モータユニット3の放熱性向上が実現される。
【0090】
加えて、制御基板35の放熱性が向上することから、プリント基板354に実装する複数の発熱素子3531の間隔を狭くすることができ、制御基板35の小型化も実現される。
【0091】
図9に示すように、変形例3では、制御基板35の厚み方向(つまり左右方向)に視たときに、第1放熱部414と第2放熱部424は共に、発熱素子3531と重なる位置にある。そのため、発熱素子3531で生じた熱は、第1放熱部414と第2放熱部424を介して効率的に放熱される。第1放熱部414と第2放熱部424は、少なくとも一部が発熱素子3531と重なる位置にあればよい。
【0092】
同じく図9に示すように、制御基板35の厚み方向に視たときに、第1放熱部414は、第2放熱部424と重なる位置にある。変形例3では、制御基板35の一部(詳しくは制御基板35のうち入力軸6から離れた側の端縁部)が、第1放熱部414と第2放熱部424によって両側から挟み込まれるので、放熱性が向上することに加えて、制御基板35の固定の信頼性が向上し、モータユニット3の耐振動性も向上する。第1放熱部414は、少なくとも一部が第2放熱部424と重なる位置にあればよい。
【0093】
変形例3では、熱伝導性部材9が第1熱伝導性シート91と第2熱伝導性シート92を含んでいるが、熱伝導性部材9が第1熱伝導性シート91と第2熱伝導性シート92の一方を含まないことも有り得る。
【0094】
熱伝導性部材9が第1熱伝導性シート91を含まない場合、第1放熱部414は制御基板35の第1面351に直接接する。熱伝導性部材9が第2熱伝導性シート92を含まない場合、第2放熱部424は制御基板35の第2面352に直接接する。
【0095】
また、変形例3では、第1熱伝導性シート91と第2熱伝導性シート92が、互いに別のシート材で形成されているが、第1熱伝導性シート91と第2熱伝導性シート92が同一のシート材で形成されてもよい。つまり、熱伝導性部材9を構成するシート材の一部分が第1熱伝導性シート91を構成し、該シート材の別部分が第2熱伝導性シート92を構成してもよい。
【0096】
上記した変形例1から3は、多様な変形例の一つに過ぎない。金属カップ57には、ステータ53とロータ52の少なくとも一部が収納されればよい。一実施形態及びこれの変形例1から3では、ステータ53の一部が金属カップ57の開口から突出しているが、ステータ53の全体が金属カップ57に収容されてもよい。一実施形態及びこれの変形例1から3では、モータユニット3が搭載された電動自転車は、いわゆる電動アシスト自転車であるが、これに限定されず、モータ5の回転力だけで車輪11を回転駆動させることのできる電動自転車でもよい。また、一実施形態及びこれの変形例1から3の電動自転車は、車輪11を二つ備えているが、車輪11の数は特に限定されず、例えば車輪11を三つ備えてもよい。
【0097】
また、実施形態及びこれの変形例1から3では、焼き嵌めの手法を利用して金属カップ57とステータ53を固定しているが、金属カップ57とステータ53の間(例えば、金属カップ57の内周面570とステータ53の外周面530の間)に、さらに接着剤が介在してもよい。つまり、金属カップ57とステータ53を固定するために、焼き嵌めによる固定に加えて、接着剤による固定を行ってもよい。また、焼き嵌め以外の手法(例えば圧入の手法)で金属カップ57とステータ53を圧接させてもよいし、これに加えて接着剤による固定を行ってもよい。
【0098】
(態様)
上記した一実施形態及びこれの各種変形例の説明から明らかなように、第1の態様の電動自転車用モータユニット(3)は、モータ(5)と、モータ(5)が取り付けられるユニットケース(4)を具備する。モータ(5)は、ステータ(53)と、ステータ(53)に囲まれて位置するロータ(52)と、ロータ(52)に固定された回転軸(51)と、ステータ(53)とロータ(52)の少なくとも一部が収容される金属カップ(57)を備える。金属カップ(57)は開口を有する。金属カップ(57)の内周面(570)は、ステータ(53)に圧接している。
【0099】
第1の態様の電動自転車用モータユニット(3)では、ステータ(53)の熱がこれに圧接した金属カップ(57)に伝わり、金属カップ(57)を通じて効率的に放熱される。したがって、電動自転車用モータユニット(3)の放熱性向上を実現することができる。加えて、第1の態様の動自転車用モータユニット(3)では、金属カップ(57)の採用により一層の軽量化が実現される。
【0100】
第2の態様の電動自転車用モータユニット(3)は、第1の態様との組み合わせにより実現される。第2の態様の電動自転車用モータユニット(3)では、ステータ(53)の外周面(530)の少なくとも一部が、金属面(535)である。金属カップ(57)の内周面(570)は、金属面(535)に圧接している。
【0101】
第2の態様の電動自転車用モータユニット(3)では、金属カップ(57)の内周面(570)が、精度を比較的出しやすくかつ熱を伝えやすい金属面(535)に対して圧接するので、金属カップ(57)とステータ(53)の間で熱が伝わりやすく、高い放熱性が得られる。
【0102】
第3の態様の電動自転車用モータユニット(3)は、第1又は第2の態様との組み合わせにより実現される。第3の態様の電動自転車用モータユニット(3)では、ステータ(53)は、一部分を除いて樹脂モールドされている。この一部分は、ステータ(53)のうち金属カップ(57)が圧接する部分を含む。
【0103】
第3の態様の電動自転車用モータユニット(3)では、部分的な樹脂モールドによってステータ53の急激な温度上昇が抑えられ、また、樹脂モールドによって振動が抑制される。更に、部分的な樹脂モールドによって、ステータ(53)と金属カップ(57)の間の絶縁性が高められる。
【0104】
第4の態様の電動自転車用モータユニット(3)は、第1から第3のいずれか一つの態様との組み合わせにより実現される。第4の態様の電動自転車用モータユニット(3)では、モータ(5)の回転力が伝達される減速機構(31)を更に具備し、ユニットケース(4)内に、減速機構(31)が収容される。
【0105】
第4の態様の電動自転車用モータユニット(3)では、モータ(5)とこれの回転力を伝達する減速機構(31)がユニット化される。
【0106】
第5の態様の電動自転車用モータユニット(3)は、第4の態様との組み合わせにより実現される。第5の態様の電動自転車用モータユニット(3)では、ユニットケース(4)と金属カップ(57)の間に介在するOリング(49)を更に備える。金属カップ(57)は、Oリング(49)が押し当たる開口縁部(574)を有する。
【0107】
第5の態様の電動自転車用モータユニット(3)では、Oリング(49)によって、金属カップ(57)とユニットケース(4)の間の密着性を高めることができ、また、振動の伝達を抑制することができる。
【0108】
第6の態様の電動自転車用モータユニット(3)は、第5の態様との組み合わせにより実現される。第6の態様の電動自転車用モータユニット(3)では、ステータ(53)は、開口を通じて金属カップ(57)から突出する部分(531)を含む。
【0109】
第6の態様の電動自転車用モータユニット(3)では、ステータ(53)のうち金属カップ(57)から突出する部分(531)が、Oリング(49)を装着するときのガイドとして機能する。
【0110】
第7の態様の電動自転車用モータユニット(3)は、第1から第6のいずれか一つの態様との組み合わせにより実現される。第6の態様の電動自転車用モータユニット(3)では、金属カップ(57)は、ステータ(53)に焼き嵌めされている。
【0111】
第7の態様の電動自転車用モータユニット(3)では、金属カップ(57)をステータ(53)に対して強固に圧接させることができる。
【0112】
第8の態様の電動自転車用モータユニット(3)は、第1から第7のいずれか一つの態様との組み合わせにより実現される。第8の態様の電動自転車用モータユニット(3)では、モータ(5)は、回転軸(51)を回転自在に支持する軸受(552)を更に備える。金属カップ(57)の一部に、軸受(552)を配置する凹部(578)が形成されている。
【0113】
第8の態様の電動自転車用モータユニット(3)では、軸受(552)を配置する構造を金属カップ(57)の一部で構成することができ、一層の軽量化を実現することができる。
【0114】
第9の態様の電動自転車(1)は、第1から第8のいずれか一つの態様の電動自転車用モータユニット(3)と、電動自転車用モータユニット(3)のモータ(5)の回転力が伝えられる車輪(11)を具備する。
【0115】
第9の態様の電動自転車(1)では、電動自転車(1)において電動自転車用モータユニット(3)放熱性向上を実現することができる。加えて、第9の態様の電動自転車(1)では、軽量化を実現することができる。
【0116】
また、上記した一実施形態及びこれの各種変形例(特に変形例3)の説明から明らかなように、第10の態様の電動自転車用モータユニット(3)は、回転軸(51)を備えるモータ(5)と、回転軸(51)の一部が収容されるユニットケース(4)と、ユニットケース(4)を貫通するようにユニットケース(4)に配置され、軸線(60)まわりに回転自在な入力軸(6)と、入力軸(6)の外周面に沿って配置され、入力軸(6)と一体に回転する入力体(7)と、入力軸(6)の外周面に沿って配置され、入力体(7)の回転力を受けて軸線(60)まわりに回転する出力体(8)と、ユニットケース(4)に収容され、モータ(5)の回転を制御する制御基板(35)を具備する。ユニットケース(4)は、制御基板(35)の第1面(351)に接続される第1放熱部(414)と、制御基板(35)の第1面(351)とは反対の第2面(352)に接続される第2放熱部(424)を有する。
【0117】
第10の態様の電動自転車用モータユニット(3)では、制御基板(35)の熱が、第1放熱部(414)と第2放熱部(424)を介して両側から効率的に放熱される。したがって、電動自転車用モータユニット(3)の放熱性向上を実現することができる。
【0118】
第11の態様の電動自転車用モータユニット(3)は、第10の態様との組み合わせにより実現される。第11の態様の電動自転車用モータユニット(3)は、ユニットケース(4)内に配置される熱伝導性部材(9)を更に具備する。熱伝導性部材(9)は、第1放熱部(414)と制御基板(35)の間と、第2放熱部(424)と制御基板(35)の間の、少なくとも一方に配置される。
【0119】
第11の態様の電動自転車用モータユニット(3)では、制御基板(35)の熱が、熱伝導性部材(9)を介してより効率的に放熱される。
【0120】
第12の態様の電動自転車用モータユニット(3)は、第11の態様との組み合わせにより実現される。第12の態様の電動自転車用モータユニット(3)では、制御基板(35)は、電気部品(353)を含む。熱伝導性部材(9)は、電気部品(353)に接触する。
【0121】
第12の態様の電動自転車用モータユニット(3)では、電気部品(353)の熱が、熱伝導性部材(9)を介して効率的に放熱される。
【0122】
第13の態様の電動自転車用モータユニット(3)は、第10から第12のいずれか一つの態様との組み合わせにより実現される。第13の態様の電動自転車用モータユニット(3)では、制御基板(35)は、発熱素子(3531)を含む。第1放熱部(414)と第2放熱部(424)の少なくとも一方は、制御基板(35)の厚み方向に視たときに、発熱素子(3531)と重なる位置にある。
【0123】
第13の態様の電動自転車用モータユニット(3)では、制御基板(35)のなかでも特に高温になりやすい発熱素子(3531)の熱が、より効率的に放熱される。
【0124】
第14の態様の電動自転車用モータユニット(3)は、第10から第13のいずれか一つの態様との組み合わせにより実現される。第14の態様の電動自転車用モータユニット(3)では、第1放熱部(414)は、制御基板(35)の厚み方向に視たときに、第2放熱部(424)と重なる位置にある。
【0125】
第14の態様の電動自転車用モータユニット(3)では、制御基板(35)が、第1放熱部(414)と第2放熱部(424)によって両側から挟み込まれることで、放熱性の向上に加えて、制御基板(35)の固定の信頼性が向上し、ひいてはモータユニット(3)の耐振動性が向上する。
【0126】
第15の態様の電動自転車(1)は、第10から第14のいずれか一つの態様の電動自転車用モータユニット(3)と、電動自転車用モータユニット(3)のモータ(5)の回転力が伝えられる車輪(11)を具備する。
【0127】
第15の態様の電動自転車(1)では、電動自転車(1)において電動自転車用モータユニット(3)放熱性向上を実現することができる。
【符号の説明】
【0128】
1 電動自転車
11 車輪
3 モータユニット
31 減速機構
35 制御基板
353 電気部品
3531 発熱素子
4 ユニットケース
414 第1放熱部
424 第2放熱部
49 Oリング
5 モータ
51 回転軸
52 ロータ
53 ステータ
530 外周面
535 金属面
552 軸受
57 金属カップ
570 内周面
574 開口縁部
578 凹部
6 入力軸
60 軸線
7 入力体
8 出力体
9 熱伝導性部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9