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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163150
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】HLA多様性の定量的スコア
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6881 20180101AFI20241114BHJP
   C12Q 1/6886 20180101ALI20241114BHJP
【FI】
C12Q1/6881 Z
C12Q1/6886 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024147700
(22)【出願日】2024-08-29
(62)【分割の表示】P 2020572944の分割
【原出願日】2020-04-02
(31)【優先権主張番号】62/830,297
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500358711
【氏名又は名称】イルミナ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】ボーチャオ ジャン
(72)【発明者】
【氏名】シレ ジャン
(57)【要約】
【課題】HLA多様性の定量的スコアの提供。
【解決手段】免疫チェックポイント阻害療法に対する患者の応答性を予測する、固体組織または循環腫瘍DNA試料におけるHLA多様性を定量するためのシステムおよび方法が開示される。上記方法は、対象における1つまたは複数のHLA対立遺伝子対のDNA配列を得ることと、1つまたは複数のHLA対立遺伝子対のDNA配列を比較してアラインメントスコアを得ることと、1つまたは複数のHLA対立遺伝子対のアラインメントスコアの分布を得ることとを含み得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2019年4月5日に出願された米国仮特許出願第62/830297号に基づく優先権を主張し、その開示は参考としてその全体が本明細書に援用される。
【0002】
背景
分野
本開示は、HLA対立遺伝子の多様性およびHLA対立遺伝子の多様性を定量することに関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
ヒト白血球抗原(HLA)系または複合体は、ヒトにおける主要組織適合複合体(MHC)タンパク質をコードする遺伝子複合体である。主要組織適合複合体(MHC)は、脊椎動物における異物分子を認識するための獲得免疫系に不可欠な細胞表面タンパク質のセットであり、これが組織適合性を決定する。MHC分子の主な機能は、病原体由来の抗原に結合し、適切なT細胞による認識のためにその抗原を細胞表面に表示することである。MHC分子は、ヒトにおける免疫系の調節を担う。MHCは、臓器移植に対するドナーの適合性、ならびに交差反応免疫を介した自己免疫疾患に対する感受性を決定する。したがって、HLAは、感染症、自己免疫疾患、およびがんにおいて重要な役割を果たす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
要旨
いくつかの実施形態において、対象における少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の多様性を定量する方法は、対象における1つまたは複数のHLA対立遺伝子対のDNA配列を得ることと、1つまたは複数のHLA対立遺伝子対のDNA配列を比較してアラインメントスコアを得ることと、1つまたは複数のHLA対立遺伝子対のアラインメントスコアの分布を得ることと、全てのHLA対立遺伝子対のアラインメントスコアの分布に対する少なくとも1つのHLA対立遺伝子対のパーセンタイルスコアを決定することとを含む。
【0005】
いくつかの実施形態において、対象における少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の多様性を定量する方法は、パーセンタイルスコアを第1の所定の閾値と比較することをさらに含む。
【0006】
対象における少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の多様性を定量する方法のいくつかの実施形態において、少なくとも1つのHLA対立遺伝子対は、HLA A、B、C、E、F、G、H、J、K、L、DP、DQ、およびDR対立遺伝子のいずれかの対を含む。
【0007】
対象における少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の多様性を定量する方法のいくつかの実施形態において、パーセンタイルスコアが第1の所定の閾値と同じまたはそれよりも大きい場合、対象は第1の処置を推奨される。
【0008】
対象における少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の多様性を定量する方法のいくつかの実施形態において、パーセンタイルスコアが第1の所定の閾値よりも小さい場合、対象は第2の処置を推奨される。
【0009】
いくつかの実施形態において、対象における少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の多様性を定量する方法は、1つまたは複数のHLA対立遺伝子対の発現レベルを決定することと、1つまたは複数のHLA対立遺伝子対の発現レベルに対する少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の発現レベルスコアを得ることと、少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の発現レベルスコアに基づいて、1つまたは複数のHLA対立遺伝子対のアラインメントスコアの分布に対する少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の加重パーセンタイルスコアを決定することと、加重パーセンタイルスコアを第2の所定の閾値と比較することとをさらに含む。いくつかの実施形態において、加重パーセンタイルスコアが第2の所定の閾値と同じまたはそれよりも大きい場合、対象は第1の処置を推奨される。
【0010】
いくつかの実施形態において、加重パーセンタイルスコアが第2の所定の閾値よりも小さい場合、対象は第2の処置を推奨される。
【0011】
いくつかの実施形態において、第1の所定の閾値は、約75%である。
【0012】
いくつかの実施形態において、第2の所定の閾値は、約75%である。
【0013】
いくつかの実施形態において、第1の処置は、ICIを含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、第2の処置は、非ICIを含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、第1の所定の閾値が50%である場合、対象は第1の追加の処置をさらに推奨される。
【0016】
いくつかの実施形態において、第2の所定の閾値が50%である場合、対象は第2の追加の処置をさらに推奨される。
【0017】
いくつかの実施形態において、発現レベルは、RNAの発現レベル、タンパク質の発現レベル、またはその両方である。
【0018】
少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の多様性を定量する方法のいくつかの実施形態において、定量することを経時的に繰り返し、第1の所定の閾値に対するパーセンタイルスコアに変化があるかどうかを決定する。
【0019】
少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の多様性を定量する方法のいくつかの実施形態において、定量することを経時的に繰り返し、第2の所定の閾値に対するパーセンタイルスコアに変化があるかどうかを決定する。
【0020】
少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の多様性を定量する方法のいくつかの実施形態において、定量することはTCRクローン性の評価を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、患者におけるがん処置の予測される有効性を決定する方法は、患者におけるHLA対立遺伝子対のハザード比を計算することであって、ハザード比が患者におけるHLA対立遺伝子対の対立遺伝子多様性を反映する、計算することと、ハザード比を所定の閾値と比較することであって、所定の閾値を上回るハザード比は、患者ががん処置に対して高い有効性を有すると予測されることを示し、所定の閾値を下回るハザード比は、患者ががん処置に対して低い有効性を有すると予測されることを示す、比較することとを含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、患者におけるがん処置の予測される有効性を決定する方法は、がん処置の有効性を決定する際の因子として、患者の腫瘍負荷スコアを測定することと、腫瘍負荷スコアを所定の閾値と比較することとをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1A図1Cは、それぞれ、HLA-A(図1A)、HLA-B(図1B)およびHLA-C(図1C)によってコードされるタンパク質について、各位置におけるアミノ酸多様性を示す。グラフ上で、より低いスコアは、より大きい多様性を示す。図1Aの上部の数字は、アミノ酸位置に基づくHLAタンパク質の種々のタンパク質ドメインを示す。
【0024】
図2-1】図2Aは、当技術分野で公知の方法によるHLAヘテロ接合性と組み合わせたHLA多様性スコアの決定の結果のグラフを示す。X軸は日単位のタイムラインを示し、Y軸は全生存(1=100%)を示す。
【0025】
図2-2】図2Bは、本開示によるHLA多様性を定量する方法の一実施形態によるHLAヘテロ接合性と組み合わせたHLA多様性スコアの決定の結果のグラフを示す。X軸は日単位のタイムラインを示し、Y軸は全生存(1=100%)を示す。
【0026】
図3-1】図3Aは、当技術分野で公知の方法によるHLAヘテロ接合性およびTMBと組み合わせたHLA多様性スコアの決定の結果のグラフを示す。X軸は日単位のタイムラインを示し、Y軸は全生存(1=100%)を示す。
【0027】
図3-2】図3Bは、本開示によるHLA多様性を定量する方法の一実施形態によるHLAヘテロ接合性およびTMPと組み合わせたHLA多様性スコアの決定の結果のグラフを示す。X軸は日単位のタイムラインを示し、Y軸は全生存(1=100%)を示す。
【0028】
図4図4は、TMBと全生存との間の相関のグラフを示す。X軸は日単位のタイムラインを示し、Y軸は全生存(1=100%)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示の実施形態は、患者由来の生体試料におけるHLA対立遺伝子バリアントの多様性を定量するためのシステムおよび方法に関する。いくつかの実施形態において、システムおよび方法は、固体組織または循環腫瘍DNA試料におけるHLA多様性を定量するためのものである。いくつかの実施形態において、システムおよび方法は、かかる適応症を処置するための治療に対する患者の応答性を予測する、固体組織または循環腫瘍DNA試料におけるHLA多様性を定量するためのものである。いくつかの実施形態において、システムおよび方法は、抗腫瘍療法に対する患者の応答性を予測する、固体組織または循環腫瘍DNA試料におけるHLA多様性を定量するためのものである。いくつかの実施形態において、システムおよび方法は、免疫チェックポイント阻害療法に対する患者の応答性を予測する、固体組織または循環腫瘍DNA試料におけるHLA多様性を定量するためのものである。
【0030】
以下に考察されるように、各HLA対立遺伝子は、様々なドメインから構成される。いくつかの実施形態は、HLA対立遺伝子ごとで各ドメイン間の変動を計算するための、患者のHLAドメインの多様性を比較するためのシステムおよび方法に関する。例えば、腫瘍に罹患した1人の患者は、ドメインが95%同一である2つのHLA対立遺伝子を有し得る。腫瘍に罹患した別の患者は、ドメインが15%同一である2つのHLA対立遺伝子を有し得る。一実施形態において、本システムは、15%しか同一でなく、互いにより多様であるHLA対立遺伝子バリアントを有する患者が、より多様でないHLA対立遺伝子ドメインを有する腫瘍患者と比較して、より高いがん処置成功の可能性を有し得ると決定し得る。一例において、がん処置は、患者T細胞を取り出し、遺伝子改変して腫瘍に付着させるCAR-T処置であり得る。HLA対立遺伝子バリアントの多様性がより大きい患者は、HLA対立遺伝子間の多様性が少ない患者と比較して、CAR-T処置がより成功し得る。
【0031】
HLAクラスI遺伝子は、ヒト主要組織適合複合体(MHC)の構成要素である。クラスI遺伝子は、主要移植抗原をコードする3つの古典的遺伝子HLA-A、HLA-BおよびHLA-C、ならびに7つの非古典的クラスI遺伝子HLA-E、HLA-F、HLA-G、HLA-H、HLA-J、HLA-KおよびHLA-Lからなる。
【0032】
HLA複合体は、第6染色体の短腕上に位置する。HLAクラスIに属する遺伝子はMHCクラスIタンパク質をコードし、HLAクラスIIに属する遺伝子はMHCクラスIIタンパク質をコードする。各HLAクラスI遺伝子は、8つのエキソンを有し、最初の7つは、それぞれ、タンパク質の異なる部分をコードする(エキソン1-リーダーペプチド、エキソン2-アルファ1ドメイン、エキソン3-アルファ2ドメイン、エキソン4-アルファ3ドメイン、エキソン5-膜貫通領域、エキソン6-細胞質側末端、エキソン7-細胞質側末端)。エキソン2および3は、HLA分子の結合コアをコードし、また最も多型の領域であるため、最も重要である(図1A、1B、および1C)。
【0033】
古典的なHLAクラスI遺伝子は、ほとんどの有核細胞上で発現する多型の細胞表面タンパク質をコードしている。これらのタンパク質の天然の機能は、細胞内処理される抗原からT細胞抗原受容体(TCR)まで多様なセットのペプチド断片に結合し、提示することである。このように、MHC分子のペプチド結合能力は、細胞内病原体および改変された自己タンパク質の免疫認識を容易にする。したがって、TCRのペプチドレパートリーを増加させることによって、MHC分子の多型は、宿主の免疫応答ポテンシャルに重要な役割を果たす。一方で、MHC多型は、同種組織で移植された宿主に免疫学的負荷を及ぼす。その結果、HLAクラスI分子のミスマッチは、同種移植片拒絶および移植片対宿主疾患の主な原因の1つであり、組織ドナーとレシピエントとの間のHLAマッチングのレベルは、同種移植組織および骨髄移植の成功の主な要因である。したがって、候補臓器ドナーおよびレシピエントのHLAクラスI遺伝子の「型」を決定することができることは、非常に医学的意義のあることである。
【0034】
患者-ドナーマッチングのためのHLAクラスI組織適合抗原は、従来、血清学的タイピングによって決定されている。生化学および分子技術は、HLAクラスI多型が、従来の方法によって以前に認識されていたよりもはるかに大きいことを明らかにしている。
【0035】
新たに識別されたHLA対立遺伝子の数は時がたつにつれて増加しており、2018年時点でHLAクラスI対立遺伝子は15,000個近く、HLAクラスII対立遺伝子5,000個を超える。これまでに、約4,638個の異なるHLA-A対立遺伝子配列、5,590個の異なるHLA-B対立遺伝子配列、および4,374個の異なるHLA-C対立遺伝子配列が識別された。これらの異なる対立遺伝子配列は、約3,172個のHLA-Aタンパク質、3,923個のHLA-Bタンパク質、および2,920個のHLA-Cタンパク質をコードする。この高レベルの対立遺伝子多様性は、HLAクラスI遺伝子のタイピングを複雑にする。したがって、核酸レベルでのHLAタイピングは、非常に困難な作業である。任意の1つの遺伝子内の対立遺伝子の多様性は、ハイブリダイゼーションに基づく試験をタイピングに使用する場合、非常に多くのプローブを開発する必要があることを意味する。さらに、HLA遺伝子に対するDNAタイピング方法の一般的な適用可能性は、1つのHLA遺伝子の遺伝子座特異的増幅を有効にするプライマーの設計に依存している。
【0036】
HLA多様性の定量
いくつかの実施形態において、HLA対立遺伝子の多様性を定量するためのシステムおよび方法が本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、多様性スコアは、全て対でのアラインメントスコアの分布におけるHLA対立遺伝子の所与の対のアラインメントスコアのパーセンタイルを計算することによって、全て対でのHLA対立遺伝子について計算される。
【0037】
いくつかの実施形態において、対象における少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の多様性を定量する方法は、対象における1つまたは複数のHLA対立遺伝子対のDNA配列を得ることと、1つまたは複数のHLA対立遺伝子対のDNA配列を比較してアラインメントスコアを得ることと、1つまたは複数のHLA対立遺伝子対のアラインメントスコアの分布を得ることと、全てのHLA対立遺伝子対のアラインメントスコアの分布に対する少なくとも1つのHLA対立遺伝子対のパーセンタイルスコアを決定することとを含む。
【0038】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の多様性を定量する方法は、パーセンタイルスコアを第1の所定の閾値と比較することをさらに含む。
【0039】
少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の多様性を定量する方法のいくつかの実施形態において、少なくとも1つのHLA対立遺伝子対は、HLA A、B、C、E、F、G、H、J、K、L、DP、DQ、およびDR対立遺伝子のいずれかの対を含む。
【0040】
少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の多様性を定量する方法のいくつかの実施形態において、少なくとも1つのHLA対立遺伝子対は、表1におけるいずれかの列からの対立遺伝子と、いずれかの段からの対立遺伝子との組み合わせを含む。
表1-対立遺伝子対の組み合わせ
【表1】
【0041】
いくつかの実施形態において、表1に列挙される対立遺伝子の組み合わせのいずれかは、本明細書に提供されるHLA多様性を定量する方法の一実施形態において1つまたは複数の追加のパラメータを組み合わせることができる。追加のパラメータの非限定的な例としては、HLA対立遺伝子のRNAおよび/またはタンパク質発現レベル、HLA接合性、家族性遺伝形質、遺伝性遺伝形質、メンデル継承形質、非メンデル継承形質、他の遺伝的関連性および相関性、例えば、腫瘍変異負荷(TMB)、新抗原負荷、マイクロサテライト不安定性、腫瘍微小環境、T細胞受容体レパートリー多様性が挙げられる。
【0042】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の追加のパラメータは、本明細書に提供されるHLA多様性を定量する方法の一実施形態において腫瘍および/またはがんの変異負荷を含む。本明細書で使用される場合、「腫瘍および/またはがんの変異負荷」(本明細書において「変異負荷」または「腫瘍負荷スコア」またはTMBともいう)とは、腫瘍および/またはがんゲノムにおける体細胞コーディング変異の総数を指す。
【0043】
任意の特定の理論に制限されないが、より高いTMBは細胞傷害性T細胞による新抗原認識の確率を増加させると考えられる。
【0044】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の追加のパラメータは、患者の年齢、性別、腫瘍のステージ、がんの種類、患者の感染履歴、およびがん処置レジメンを含む。
【0045】
少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の多様性を定量する方法のいくつかの実施形態において、パーセンタイルスコアが第1の所定の閾値と同じまたはそれよりも大きい場合、対象は第1の処置を推奨される。
【0046】
本明細書で使用される場合、「パーセンタイルスコア」とは、観察群における所与のパーセンテージの観察がその値未満となる値を示す尺度として定義される。例えば、HLA対立遺伝子または対立遺伝子ドメインの対のアラインメントが95のパーセンタイルスコアを生じる場合、そのHLA対立遺伝子の対は、解析される対立遺伝子の群におけるHLA対立遺伝子またはドメインの全ての対の95%よりも互いに類似している。一方、一対のHLA対立遺伝子のアラインメントが5のパーセンタイルスコアを生じる場合、その一対のHLA対立遺伝子またはドメインは、解析される対立遺伝子の群におけるHLA対立遺伝子またはドメインの全ての対のわずか5%よりは互いに類似している。
【0047】
本明細書で使用される場合、「所定の閾値」とは、HLAパーセンタイルスコアに基づく閾値の値である。所定の閾値は、HLA多様性を定量する方法の一実施形態に基づいて変動し得る。例えば、所定の閾値は、HLA多様性を定量する方法の一実施形態に含まれる追加のパラメータの数に応じて変動し得る。
【0048】
いくつかの実施形態において、対象はヒトである。いくつかの実施形態において、本明細書において提供される方法およびシステムは、他の生物に推定され得る。非限定的な例としては、非ヒト霊長類、ラット、マウス、イヌ、ネコ、モルモット、ウシ等が挙げられる。
【0049】
腫瘍/がんの非限定的な例としては、乳腺癌、膵臓腺癌、肺癌、前立腺がん、多形神経膠芽腫、ホルモン難治性前立腺がん、結腸癌、非小細胞肺がん(NSCLC)等の固形腫瘍悪性腫瘍、未分化星細胞腫、膀胱癌、肉腫、卵巣癌、直腸血管周囲細胞腫、膵臓癌、進行性がん、大腸、胃、膵臓、卵巣のがん、黒色腫 膵臓がん、結腸がん、膀胱がん、血液悪性腫瘍、扁平上皮細胞癌、乳がん、神経膠芽腫、または星細胞腫(例えば、好中球星細胞腫、びまん性星細胞腫、形質細胞腫、および脳幹細胞腫)、神経膠芽腫(例えば、多形性神経膠芽腫)、髄膜腫、他の神経膠腫(例えば、上衣腫、乏突起神経膠腫、および混合神経膠腫)、および他の脳腫瘍(例えば、下垂体腫瘍、頭蓋咽頭腫瘍、生殖細胞腫瘍、松果体領域腫瘍、髄質芽細胞腫、および原発性CNSリンパ腫)を含むがこれらに限定されない脳に関する任意の新生物が挙げられる。いくつかの実施形態において、腫瘍/がんは、本明細書において示される1つまたは複数の種類の腫瘍/がんに関連する。
【0050】
いくつかの実施形態において、第1の処置は、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)を含む。いくつかの実施形態において、ICIは、腫瘍および/またはがん細胞に対する細胞傷害性リンパ球活性を刺激する。
【0051】
いくつかの実施形態において、第1の処置は、PD-1阻害剤、PDL-1阻害剤およびCTLA-4阻害剤からなる群から選択されるICIを含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、第1の処置は、PD-1阻害剤、PDL-1阻害剤およびCTLA-4阻害剤からなる群から選択される1つまたは複数のICIを含む。
【0053】
いくつかの実施形態において、第1の処置は、PD-1阻害剤、PDL-1阻害剤およびCTLA-4阻害剤からなる群から選択されるICIの組み合わせを含む。
【0054】
いくつかの実施形態において、第1の処置は、ペンブロリズマブ(Keytruda)、ニボルマブ(Opdivo)、セミプリマブ(Libtayo)アテゾリズマブ(Tecentriq)、アベルマブ(Bavencio)、デュルバルマブ(Imfinzi)、およびイピリムマブ(Yervoy)からなる群から選択されるICIを含む。
【0055】
いくつかの実施形態において、第1の処置は、ペンブロリズマブ(Keytruda)、ニボルマブ(Opdivo)、セミプリマブ(Libtayo)アテゾリズマブ(Tecentriq)、アベルマブ(Bavencio)、デュルバルマブ(Imfinzi)およびイピリムマブ(Yervoy)からなる群から選択される1つまたは複数のICIを含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、第1の処置は、ペンブロリズマブ(Keytruda)、ニボルマブ(Opdivo)、セミプリマブ(Libtayo)アテゾリズマブ(Tecentriq)、アベルマブ(Bavencio)、デュルバルマブ(Imfinzi)およびイピリムマブ(Yervoy)からなる群から選択されるICIの組み合わせを含む。
【0057】
いくつかの実施形態において、パーセンタイルスコアが第1の所定の閾値よりも小さい場合、対象は第2の処置を推奨されない。
【0058】
いくつかの実施形態において、第2の処置は、非ICIを含む。
【0059】
いくつかの実施形態において、第2の処置は、PD-1阻害剤、PDL-1阻害剤およびCTLA-4阻害剤以外の任意の処置を含む。
【0060】
いくつかの実施形態において、第2の処置は、ペンブロリズマブ(Keytruda)、ニボルマブ(Opdivo)、セミプリマブ(Libtayo)アテゾリズマブ(Tecentriq)、アベルマブ(Bavencio)、デュルバルマブ(Imfinzi)、およびイピリムマブ(Yervoy)以外の任意の処置を含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、第2の処置は、手術、放射線療法、化学療法、免疫療法、標的化療法、ホルモン療法、幹細胞移植、サイトカイン療法、遺伝子療法、細胞療法、光療法、熱療法および音療法からなる群から選択される処置を含む。
【0062】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の多様性を定量する方法は、1つまたは複数のHLA対立遺伝子対のRNA発現レベルを決定することと、1つまたは複数のHLA対立遺伝子対の発現レベルに対する少なくとも1つのHLA対立遺伝子対のRNA発現レベルスコアを得ることと、少なくとも1つのHLA対立遺伝子対のRNA発現レベルスコアに基づいて、1つまたは複数のHLA対立遺伝子対のアラインメントスコアの分布に対する少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の加重パーセンタイルスコアを決定することと、加重パーセンタイルスコアを第2の所定の閾値と比較することとをさらに含む。
【0063】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の多様性を定量する方法は、1つまたは複数のHLA対立遺伝子対のRNA発現レベルを決定することをさらに含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の多様性を定量する方法は、1つまたは複数のHLA対立遺伝子対のRNA発現レベルを決定することと、1つまたは複数のHLA対立遺伝子対の発現レベルに対する少なくとも1つのHLA対立遺伝子対のRNA発現レベルスコアを得ることとをさらに含む。
【0065】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の多様性を定量する方法は、1つまたは複数のHLA対立遺伝子対のRNA発現レベルを決定することと、1つまたは複数のHLA対立遺伝子対の発現レベルに対する少なくとも1つのHLA対立遺伝子対のRNA発現レベルスコアを得ることと、少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の加重パーセンタイルスコアを決定することとをさらに含む。
【0066】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の多様性を定量する方法は、1つまたは複数のHLA対立遺伝子対のRNA発現レベルを決定することと、1つまたは複数のHLA対立遺伝子対の発現レベルに対する少なくとも1つのHLA対立遺伝子対のRNA発現レベルスコアを得ることと、少なくとも1つのHLA対立遺伝子対のRNA発現レベルスコアに基づいて、少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の加重パーセンタイルスコアを決定することとをさらに含む。
【0067】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の多様性を定量する方法は、1つまたは複数のHLA対立遺伝子対のRNA発現レベルを決定することと、1つまたは複数のHLA対立遺伝子対の発現レベルに対する少なくとも1つのHLA対立遺伝子対のRNA発現レベルスコアを得ることと、少なくとも1つのHLA対立遺伝子対のRNA発現レベルスコアに基づいて、1つまたは複数のHLA対立遺伝子対のアラインメントスコアの分布に対する少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の加重パーセンタイルスコアを決定することとをさらに含む。
【0068】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の多様性を定量する方法は、1つまたは複数のHLA対立遺伝子対のRNA発現レベルを決定することと、1つまたは複数のHLA対立遺伝子対の発現レベルに対する少なくとも1つのHLA対立遺伝子対のRNA発現レベルスコアを得ることと、少なくとも1つのHLA対立遺伝子対のRNA発現レベルスコアに基づいて、1つまたは複数のHLA対立遺伝子対のアラインメントスコアの分布に対する少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の加重パーセンタイルスコアを決定することと、加重パーセンタイルスコアを第2の所定の閾値と比較することとをさらに含む。
【0069】
いくつかの実施形態において、HLA対立遺伝子のRNA発現レベルは、マイクロアレイ解析、リアルタイムPCR、定量リアルタイムPCR、逆転写PCR、RNAシーケンシング、NextGenシーケンシング、タイリングアレイ、ノーザンブロッティング、SAGE、in situハイブリダイゼーション、および発現配列タグ、ならびに当技術分野において公知の他のRNA定量技術のうちの1つまたは複数を使用して決定および定量することができる。
【0070】
いくつかの実施形態において、HLA対立遺伝子のタンパク質発現レベルは、ウエスタンブロッティング、質量解析、および当技術分野で公知の他のタンパク質定量技術のうちの1つまたは複数を使用して決定および定量することができる。
【0071】
いくつかの実施形態において、加重パーセンタイルスコアが第2の所定の閾値と同じまたはそれよりも大きい場合、対象は第1の処置を推奨される。
【0072】
いくつかの実施形態において、加重パーセンタイルスコアが第2の所定の閾値よりも小さい場合、対象は第2の処置を推奨される。
【0073】
いくつかの実施形態において、第1の所定の閾値は、50%である。いくつかの実施形態において、第1の所定の閾値は、75%である。いくつかの実施形態において、第1の所定の閾値は、25%である。いくつかの実施形態において、第1の所定の閾値は、50%であり、ここで、HLA多様性を定量する方法の一実施形態に、少なくとも1つの追加のパラメータが含まれる。いくつかの実施形態において、第1の所定の閾値は、75%であり、ここで、HLA多様性を定量する方法の一実施形態に、少なくとも1つの追加のパラメータが含まれる。いくつかの実施形態において、第1の所定の閾値は、25%であり、ここで、HLA多様性を定量する方法の一実施形態に、少なくとも1つの追加のパラメータが含まれる。いくつかの実施形態において、第1の所定の閾値は、約10%~約90%の範囲である。
【0074】
いくつかの実施形態において、第2の所定の閾値は、50%である。いくつかの実施形態において、第2の所定の閾値は、75%である。いくつかの実施形態において、第2の所定の閾値は、25%である。いくつかの実施形態において、第2の所定の閾値は、50%であり、ここで、HLA多様性を定量する方法の一実施形態に、少なくとも1つの追加のパラメータが含まれる。いくつかの実施形態において、第2の所定の閾値は、75%であり、ここで、HLA多様性を定量する方法の一実施形態に、少なくとも1つの追加のパラメータが含まれる。いくつかの実施形態において、第2の所定の閾値は、25%であり、ここで、HLA多様性を定量する方法の一実施形態に、少なくとも1つの追加のパラメータが含まれる。いくつかの実施形態において、第2の所定の閾値は、約10%~約90%の範囲である。
【0075】
いくつかの実施形態において、第1の処置は、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)を含む。いくつかの実施形態において、ICIは、腫瘍および/またはがん細胞に対する細胞傷害性リンパ球活性を刺激する。
【0076】
いくつかの実施形態において、第1の処置は、PD-1阻害剤、PDL-1阻害剤およびCTLA-4阻害剤からなる群から選択されるICIを含む。
【0077】
いくつかの実施形態において、第1の処置は、PD-1阻害剤、PDL-1阻害剤およびCTLA-4阻害剤からなる群から選択される1つまたは複数のICIを含む。
【0078】
いくつかの実施形態において、第1の処置は、PD-1阻害剤、PDL-1阻害剤およびCTLA-4阻害剤からなる群から選択されるICIの組み合わせを含む。
【0079】
いくつかの実施形態において、第1の処置は、ペンブロリズマブ(Keytruda)、ニボルマブ(Opdivo)、セミプリマブ(Libtayo)アテゾリズマブ(Tecentriq)、アベルマブ(Bavencio)、デュルバルマブ(Imfinzi)、およびイピリムマブ(Yervoy)からなる群から選択されるICIを含む。
【0080】
いくつかの実施形態において、第1の処置は、ペンブロリズマブ(Keytruda)、ニボルマブ(Opdivo)、セミプリマブ(Libtayo)アテゾリズマブ(Tecentriq)、アベルマブ(Bavencio)、デュルバルマブ(Imfinzi)およびイピリムマブ(Yervoy)からなる群から選択される1つまたは複数のICIを含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、第1の処置は、ペンブロリズマブ(Keytruda)、ニボルマブ(Opdivo)、セミプリマブ(Libtayo)アテゾリズマブ(Tecentriq)、アベルマブ(Bavencio)、デュルバルマブ(Imfinzi)およびイピリムマブ(Yervoy)からなる群から選択されるICIの組み合わせを含む。
【0082】
いくつかの実施形態において、第2の処置は、非ICIを含む。
【0083】
いくつかの実施形態において、第2の処置は、PD-1阻害剤、PDL-1阻害剤およびCTLA-4阻害剤以外の任意の処置を含む。
【0084】
いくつかの実施形態において、第2の処置は、ペンブロリズマブ(Keytruda)、ニボルマブ(Opdivo)、セミプリマブ(Libtayo)アテゾリズマブ(Tecentriq)、アベルマブ(Bavencio)、デュルバルマブ(Imfinzi)、およびイピリムマブ(Yervoy)以外の任意の処置を含む。
【0085】
いくつかの実施形態において、第2の処置は、手術、放射線療法、化学療法、免疫療法、標的療法、ホルモン療法、幹細胞移植、サイトカイン療法、遺伝子療法、細胞療法、光療法、熱療法および音療法からなる群から選択される処置を含む。
【0086】
いくつかの実施形態において、第1の所定の閾値が50%である場合、対象は第1の追加の処置をさらに推奨される。いくつかの実施形態において、第1の所定の閾値が75%である場合、対象は第1の追加の処置をさらに推奨される。いくつかの実施形態において、第1の所定の閾値が25%である場合、対象は第1の追加の処置をさらに推奨される。いくつかの実施形態において、第1の所定の閾値は、50%であり、ここで、HLA多様性を定量する方法の一実施形態に、少なくとも1つの追加のパラメータが含まれ、そして対象は第1の追加の処置をさらに推奨される。いくつかの実施形態において、第1の所定の閾値は、75%であり、ここで、HLA多様性を定量する方法の一実施形態に、少なくとも1つの追加のパラメータが含まれ、そして対象は第1の追加の処置をさらに推奨される。いくつかの実施形態において、第1の所定の閾値は、25%であり、ここで、HLA多様性を定量する方法の一実施形態に、少なくとも1つの追加のパラメータが含まれ、そして対象は第1の追加の処置をさらに推奨される。いくつかの実施形態において、第1の所定の閾値は、約10%~約90%の範囲である。
【0087】
いくつかの実施形態において、第1の追加の処置は、PD-1阻害剤、PDL-1阻害剤およびCTLA-4阻害剤からなる群から選択されるICIを含む。
【0088】
いくつかの実施形態において、第1の追加の処置は、PD-1阻害剤、PDL-1阻害剤およびCTLA-4阻害剤からなる群から選択される1つまたは複数のICIを含む。
【0089】
いくつかの実施形態において、第1の追加の処置は、PD-1阻害剤、PDL-1阻害剤およびCTLA-4阻害剤からなる群から選択されるICIの組み合わせを含む。
【0090】
いくつかの実施形態において、第1の追加の処置は、ペンブロリズマブ(Keytruda)、ニボルマブ(Opdivo)、セミプリマブ(Libtayo)アテゾリズマブ(Tecentriq)、アベルマブ(Bavencio)、デュルバルマブ(Imfinzi)、およびイピリムマブ(Yervoy)からなる群から選択されるICIを含む。
【0091】
いくつかの実施形態において、第1の追加の処置は、ペンブロリズマブ(Keytruda)、ニボルマブ(Opdivo)、セミプリマブ(Libtayo)アテゾリズマブ(Tecentriq)、アベルマブ(Bavencio)、デュルバルマブ(Imfinzi)およびイピリムマブ(Yervoy)からなる群から選択される1つまたは複数のICIを含む。
【0092】
いくつかの実施形態において、第1の追加の処置は、ペンブロリズマブ(Keytruda)、ニボルマブ(Opdivo)、セミプリマブ(Libtayo)アテゾリズマブ(Tecentriq)、アベルマブ(Bavencio)、デュルバルマブ(Imfinzi)およびイピリムマブ(Yervoy)からなる群から選択されるICIの組み合わせを含む。
【0093】
いくつかの実施形態において、第2の所定の閾値が50%である場合、対象は第2の追加の処置をさらに推奨される。いくつかの実施形態において、第2の所定の閾値が75%である場合、対象は第2の追加の処置をさらに推奨される。いくつかの実施形態において、第2の所定の閾値が25%である場合、対象は第2の追加の処置をさらに推奨される。いくつかの実施形態において、第2の所定の閾値は、50%であり、ここで、HLA多様性を定量する方法の一実施形態に、少なくとも1つの追加のパラメータが含まれ、そして対象は第2の追加の処置をさらに推奨される。いくつかの実施形態において、第2の所定の閾値は、75%であり、ここで、HLA多様性を定量する方法の一実施形態に、少なくとも1つの追加のパラメータが含まれ、そして対象は第2の追加の処置をさらに推奨される。いくつかの実施形態において、第2の所定の閾値は、25%であり、ここで、HLA多様性を定量する方法の一実施形態に、少なくとも1つの追加のパラメータが含まれ、そして対象は第2の追加の処置をさらに推奨される。いくつかの実施形態において、第2の所定の閾値は、約10%~約90%の範囲である。
【0094】
いくつかの実施形態において、第2の追加の処置は、非ICIを含む。
【0095】
いくつかの実施形態において、第2の追加の処置は、PD-1阻害剤、PDL-1阻害剤およびCTLA-4阻害剤以外の任意の処置を含む。
【0096】
いくつかの実施形態において、第2の追加の処置は、ペンブロリズマブ(Keytruda)、ニボルマブ(Opdivo)、セミプリマブ(Libtayo)アテゾリズマブ(Tecentriq)、アベルマブ(Bavencio)、デュルバルマブ(Imfinzi)、およびイピリムマブ(Yervoy)以外の任意の処置を含む。
【0097】
いくつかの実施形態において、第2の処置は、手術、放射線療法、化学療法、免疫療法、標的療法、ホルモン療法、幹細胞移植、サイトカイン療法、遺伝子療法、細胞療法、光療法、熱療法および音療法からなる群から選択される処置を含む。
【0098】
少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の多様性を定量する方法のいくつかの実施形態において、定量することを経時的に繰り返し、第1の所定の閾値に対するパーセンタイルスコアに変化があるかどうかを決定する。
【0099】
少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の多様性を定量する方法のいくつかの実施形態において、定量することを経時的に繰り返し、第2の所定の閾値に対するパーセンタイルスコアに変化があるかどうかを決定する。
【0100】
いくつかの実施形態において、TCRクローン性の評価が、HLA多様性解析において含まれる。
【0101】
いくつかの実施形態において、患者におけるがん処置の予測される有効性を決定する方法は、患者におけるHLA対立遺伝子対のハザード比を計算することであって、ハザード比が患者におけるHLA対立遺伝子対の対立遺伝子多様性を反映する、計算することと、ハザード比を所定の閾値と比較することであって、所定の閾値を上回るハザード比は、患者ががん処置に対して高い有効性を有すると予測されることを示し、所定の閾値を下回るハザード比は、患者ががん処置に対して低い有効性を有すると予測されることを示す、比較することとを含む。
【0102】
本明細書で使用される場合、「ハザード比」(HR)とは、HLA対立遺伝子の多様性と本明細書において示される1つまたは複数の追加のパラメータとの間の統計に基づく相関として決定される、集団に対する「ハザード」(例えば、疾患、衰弱、死亡、処置に対する無応答性等)の確率である。例えば、抗がん/腫瘍処置に対する応答性の文脈において、より低いハザード比は、処置に対するより大きい応答性を示し、より高いハザード比は、処置に対するより低い応答性を示す。
【0103】
いくつかの実施形態において、患者におけるがん処置の予測される有効性を決定する方法が提供される。
【0104】
いくつかの実施形態において、患者におけるがん処置の予測される有効性を決定する方法は、患者におけるHLA対立遺伝子対のハザード比を計算することを含む。
【0105】
いくつかの実施形態において、患者におけるがん処置の予測される有効性を決定する方法は、患者におけるHLA対立遺伝子対のハザード比を計算することであって、ハザード比は、患者におけるHLA対立遺伝子対の対立遺伝子多様性を反映する、計算することを含む。
【0106】
いくつかの実施形態において、患者におけるがん処置の予測される有効性を決定する方法は、患者におけるHLA対立遺伝子対のハザード比を計算することであって、ハザード比が、患者におけるHLA対立遺伝子対の対立遺伝子多様性を反映する、計算することと、ハザード比を所定の閾値と比較することとを含む。
【0107】
いくつかの実施形態において、患者におけるがん処置の予測される有効性を決定する方法は、患者におけるHLA対立遺伝子対のハザード比を計算することであって、ハザード比が患者におけるHLA対立遺伝子対の対立遺伝子多様性を反映する、計算することと、ハザード比を所定の閾値と比較することであって、所定の閾値を上回るハザード比は、患者ががん処置に対して高い有効性を有すると予測されることを示す、比較することとを含む。
【0108】
いくつかの実施形態において、患者におけるがん処置の予測される有効性を決定する方法は、患者におけるHLA対立遺伝子対のハザード比を計算することであって、ハザード比が患者におけるHLA対立遺伝子対の対立遺伝子多様性を反映する、計算することと、ハザード比を所定の閾値と比較することであって、所定の閾値を下回るハザード比は、患者ががん処置に対して低い有効性を有すると予測されることを示す、比較することとを含む。
【0109】
患者におけるがん処置の予測される有効性を決定する方法のいくつかの実施形態において、がんは、腫瘍である。
【0110】
患者におけるがん処置の予測される有効性を決定する方法のいくつかの実施形態において、がんは腫瘍であり、方法は、患者の腫瘍負荷スコアを測定することをさらに含む。
【0111】
患者におけるがん処置の予測される有効性を決定する方法のいくつかの実施形態において、がんは腫瘍であり、方法は、がん処置の有効性を決定する際の因子として、患者の腫瘍負荷スコアを測定することと、腫瘍負荷スコアを所定の閾値と比較することとをさらに含む。
【実施例0112】
以下の実施例は、非限定的なものであり、当技術分野の範囲内の他の変形形態も企図されるものとする。
【0113】
(実施例1)
HLA多様性およびヘテロ接合性
本実施例では、HLAヘテロ接合性と組み合わせたHLA多様性スコアの臨床的有用性を決定した。HLA多様性スコアをバイオマーカーとして使用して、HLAヘテロ接合性(heterogzygozity)に基づいてICI処置に対する患者の応答を予測することの実現可
能性を試験するために、CTLA-4で処置された転移性黒色腫を有する110人の患者のコホート(Van Allen, E., et al., (2015)Science, Vol.350, No.6257, pp.207-211,2015)を選択した。
【0114】
Chowell法(Chowell, D., et al., ScienceVol.359, No.6375, pp.582-587, 2018)を使用して、HLAヘテロ接合性のみに基づいて患者を分類する場合、2つの患者群、すなわち、全ての遺伝子座においてHLAヘテロ接合性であると決定された群と、少なくとも1つの遺伝子座においてホモ接合性であると決定された群とは、生存において統計的に有意な差を示さなかった(p=0.99;HR=1(95%信頼区間(CI)=0.60-1.68);図2A)。したがって、患者がHLA対立遺伝子についてホモ接合であったかヘテロ接合であったかを測定するだけでは、処置後の患者の生存とあまり相関しなかった。
【0115】
一方、本明細書に記載の方法の実施形態を使用して、HLA対立遺伝子の所与の対のアラインメントスコアのパーセンタイルに基づいて、同じ患者集団の各HLA遺伝子について多様性スコアを計算した。各患者について、HLA-A、HLA-B、およびHLA-Cについてそれぞれ1つの3つの多様性スコアを計算して、それらの対立遺伝子が互いにどの程度異なるかを決定した。次に患者を、多様性の上位20%以内に少なくとも1つのHLA遺伝子座を有する第1の群と、HLA-A、HLA-BおよびHLA-C遺伝子座の3つ全てにおいて下位80%のHLA多様性を有する第2の群の、2つの群に分類した。
【0116】
Chowell法とは対照的に、HLA多様性スコアを定量するための本明細書に記載の方法を使用して患者を、少なくとも1つの遺伝子座において上位20%の多様性スコアを有する患者(n=50)と、全ての遺伝子座において下位80%の多様性スコアを有する患者(n=60)とに分類した場合、2つの患者群は、統計的に有意に異なる全生存を示した(p<0.01、HR=2.01(95%CI=1.28-3.19);図2B)。
【0117】
これらのデータは、HLA多様性スコアを使用して、HLAヘテロ接合性に基づいて患者を区別するための本明細書に記載の方法およびシステムの適用可能性、ならびにICI処置に対する患者の応答を予測するためのバイオマーカーとしてのこのアプローチの有用性を実証する。
【0118】
(実施例2)
HLA多様性、HLAヘテロ接合性、およびTMB
本実施例では、HLAヘテロ接合性および腫瘍変異負荷(TMB)と組み合わせたHLA多様性スコアの臨床的有用性を決定した。
【0119】
HLA多様性スコアをバイオマーカーとして使用して、HLAヘテロ接合性(heterogzygozity)およびTMBに基づいてICI処置に対する患者の応答を予測することの実現
可能性を試験するために、61人の患者のコホートに関する公的に入手可能なデータを使用した。
【0120】
Chowell法(Chowell, D., et al., Science,Vol.359, No.6375, pp.582-587, 2018)を使用して、HLAヘテロ接合性およびTMBに基づいて患者を分類する場合、2
つの患者群、すなわち、全ての遺伝子座においてHLAヘテロ接合性である群と、少なくとも1つの遺伝子座においてホモ接合性である群とは、生存において統計的に有意な差を示さなかった(p=0.19;HR=1.55(95%CI=0.79-3.03);図3A)。
【0121】
本明細書に記載の方法の実施形態に基づいて、HLA対立遺伝子の所与の対のアラインメントスコアのパーセンタイルに基づいて、各HLA遺伝子について多様性スコアを計算した。各患者について、HLA-A、HLA-B、およびHLA-Cについてそれぞれ1つの3つの多様性スコアを計算した。次に患者を、多様性の上位20%以内に少なくとも1つのHLA遺伝子座を有する第1の群と、HLA-A、HLA-BおよびHLA-C遺伝子座の3つ全てにおいて下位80%のHLA多様性を有する第2の群の、2つの群に分類した。
【0122】
Chowell法とは対照的に、HLA多様性スコアを定量するための本明細書に記載の方法を使用して患者を、少なくとも1つの遺伝子座において上位20%の多様性スコアおよび高TMBを有する患者(n=28)と、全ての遺伝子座において下位80%の多様性スコアおよび低TMBを有する患者(n=33)とに分類した場合、2つの患者群は、統計的に有意に異なる全生存を示した(p<0.002、HR=2.69(95%CI=1.39-5.21);図3B)。
【0123】
これらのデータは、HLA多様性スコアを定量して、HLAヘテロ接合性およびTMBに基づいて患者を区別するための本明細書に記載の方法およびシステムの適用可能性、ならびにICI処置に対する患者の応答を予測するためのバイオマーカーとしてのその有用性を実証する。
【0124】
(実施例3)
TMBおよび全生存
本実施例では、TMBと全生存との間の相関を評価した。
【0125】
110人の患者のコホートに関する公的に入手可能なデータを使用した。患者を、カットオフとしてTMBレベルの中央値(患者あたり総変異量200)を使用して、高TMB群と低TMB群の2つの群に分類した。
【0126】
高TMB患者は、低TMB患者と比較して、より高い全生存を示した(p=0.15、HR=1.37(95%CI=0.89-2.12);図4)。これは、より高いTMBが細胞傷害性T細胞による新抗原認識の可能性を増加させるためであり得る。
【0127】
(実施例4)
第1の患者は、前立腺に腫瘍を呈する。この患者のHLA対立遺伝子バリアントから解析を行う。この患者は、99.74%の類似性パーセンテージを有するHLA対立遺伝子A01:01およびA01:02を有することが見出される。これは、それらが公知のHLA-A対立遺伝子の全ての対の99.74%よりも類似していることを意味し、非常に高い類似性を有することを示唆している。この患者は、HLA対立遺伝子の類似性により、CAR-T療法が成功する確率は低いとランク付けされる。
【0128】
第2の患者は、前立腺に腫瘍を呈する。この患者のHLA対立遺伝子バリアントから解析を行う。この患者は、17.97%しか類似性パーセンテージを有しないHLA対立遺伝子A01:01およびA24:34を有することが見出され、それらの対立遺伝子は、低い類似性および高い多様性を有することが示唆される。この患者は、HLA対立遺伝子間の多様性により、CAR-T療法が腫瘍を処置することが成功する確率は、第1の患者と比較して、相対的に高いとしてランク付けされる。
【0129】
(実施例5)
患者は、腫瘍を呈し、HLA対立遺伝子の多様性が測定して決定され、様々な処置が成功する確率が高いか低いかが決定される。患者のHLA対立遺伝子の多様性を、HLA対立遺伝子についてヘテロ接合またはおよびホモ接合の2つのカテゴリー内としてスコア化することのみを行う代わりに、より複雑な解析を行う。患者由来の各対立遺伝子のHLA
A、B、C、E、F、G、H、J、K、L、DP、DQ、およびDR遺伝子の配列を決定する。各遺伝子由来の各対立遺伝子対の同一性パーセントを計算して、全体スコアを決定する。次いで、全て対でのアラインメントスコアの分布におけるHLA対立遺伝子の所与の対のアラインメントスコアのパーセンタイルを計算することによって、各遺伝子における各対立遺伝子対について多様性スコアを計算する。このスコアから、予め設定されたカットオフを使用して患者を分割し、生存率に基づいてハザード比を計算する。統計解析は、ボンフェローニ補正の有無にかかわらず、ログランク検定またはウィルコクソン順位和検定を用いて行う。このスコアは、対立遺伝子が互いにそれほど類似していないことを意味する14.4%の全体類似性スコアをもたらす。次いで、患者のHLA遺伝子のこの高い多様性を用いて、患者が抗腫瘍療法に比較的高い応答の傾向を有すると決定することができる。
【0130】
(実施例6)
患者は、腫瘍を呈し、HLA対立遺伝子の多様性が測定して決定され、様々な処置が成功する確率が高いか低いかが決定される。患者のHLA対立遺伝子の多様性を、HLA対立遺伝子についてヘテロ接合またはおよびホモ接合の2つのカテゴリー内としてスコア化することのみを行う代わりに、より複雑な解析を行う。患者由来の各対立遺伝子のHLA
A、B、C、E、F、G、H、J、K、L、DP、DQ、およびDR遺伝子の配列を決定する。上述のように、各HLAクラスI遺伝子は、8個のエキソンを有するが、エキソン2(アルファ1ドメインに対応)およびエキソン3(アルファ2ドメインに対応)が、HLA分子の結合コアをコードし、最も多型の領域である。これを、HLA-A、HLA-BおよびHLA-C遺伝子について、それぞれ図1A図1Bおよび図1Cに示す。各対立遺伝子対由来の各エキソン2およびエキソン3ドメインのアラインメントスコアに、全体アラインメントスコアの計算においてより重みを与える。次いで、全て対でのアラインメントスコアの分布におけるHLA対立遺伝子の所与の対のアラインメントスコアのパーセンタイルを計算することによって、各遺伝子における各対立遺伝子対について多様性スコアを計算する。このスコアから、対立遺伝子多様性スコアカットオフを用いてハザード比を計算する。統計解析は、ボンフェローニ補正の有無にかかわらず、ログランク検定またはウィルコクソン順位和検定を用いて行う。このスコアは、対立遺伝子が互いにかなり類似していることを意味する70.4%の全体類似性スコアをもたらす。次いで、患者のHLA遺伝子のこの比較的低い多様性を用いて、患者が抗腫瘍療法に比較的低い応答の傾向を有すると決定することができる。
【0131】
(実施例7)
患者は、腫瘍を呈し、HLA対立遺伝子の多様性が測定して決定され、様々な処置が成功する確率が高いか低いかが決定される。患者のHLA対立遺伝子の多様性を、HLA対立遺伝子についてヘテロ接合またはおよびホモ接合の2つのカテゴリー内としてスコア化することのみを行う代わりに、より複雑な解析を行う。患者由来の各対立遺伝子のHLA
A、B、C、E、F、G、H、J、K、L、DP、DQ、およびDR遺伝子の配列を決定する。上述のように、各HLAクラスI遺伝子は、8個のエキソンを有するが、エキソン2(アルファ1ドメインに対応)およびエキソン3(アルファ2ドメインに対応)が、HLA分子の結合コアをコードし、最も多型の領域である。これを、HLA-A、HLA-BおよびHLA-C遺伝子について、それぞれ図1A図1Bおよび図1Cに示す。各対立遺伝子対由来の各エキソン2およびエキソン3ドメインのアラインメントスコアに、全体アラインメントスコアの計算においてより重みを与える。次いで、全て対でのアラインメントスコアの分布におけるHLA対立遺伝子の所与の対のアラインメントスコアのパーセンタイルを計算することによって、各遺伝子における各対立遺伝子対について多様性スコアを計算する。このスコアから、対立遺伝子多様性スコアカットオフを用いてハザード比を計算する。対立遺伝子多様性スコアは、患者由来のRNA発現データから計算されるHLA A、B、C、E、F、G、H、J、K、L、DP、DQ、およびDR遺伝子の各対立遺伝子のRNA発現レベルと組み合わせて使用する。全体多様性スコアを計算するために、予測因子として、HLA遺伝子の高発現対立遺伝子の対立遺伝子多様性スコアにより多くの重みを与える。したがって、HLA遺伝子の高発現対立遺伝子からの対立遺伝子多様性スコアは、ハザード比により多く寄与する。統計解析は、ボンフェローニ補正の有無にかかわらず、ログランク検定またはウィルコクソン順位和検定を用いて行う。このスコアは、対立遺伝子が互いにかなり類似していることを意味する91.4%の全体類似性スコアをもたらす。次いで、患者のHLA遺伝子のこの比較的低い多様性を用いて、患者が抗腫瘍療法に比較的低い応答の傾向を有すると決定することができる。
【0132】
(実施例8)
患者は、腫瘍を呈し、HLA対立遺伝子の多様性が測定して決定され、様々な処置が成功する確率が高いか低いかが決定される。患者のHLA対立遺伝子の多様性を、HLA対立遺伝子についてヘテロ接合またはおよびホモ接合の2つのカテゴリー内としてスコア化することのみを行う代わりに、より複雑な解析を行う。患者由来の各対立遺伝子のHLA
A、B、C、E、F、G、H、J、K、L、DP、DQ、およびDR遺伝子の配列を決定する。上述のように、各HLAクラスI遺伝子は、8個のエキソンを有するが、エキソン2(アルファ1ドメインに対応)およびエキソン3(アルファ2ドメインに対応)が、HLA分子の結合コアをコードし、最も多型の領域である。これを、HLA-A、HLA-BおよびHLA-C遺伝子について、それぞれ図1A図1Bおよび図1Cに示す。個々のHLA遺伝子単独(HLA A、B、C、E、F、G、H、J、K、L、DP、DQ、およびDR遺伝子)のそれぞれについて多様性スコアを生成する。HLA A、B、C、E、F、G、H、J、K、L、DP、DQ、およびDR遺伝子のスコアの組み合わせを用いて、各患者の単一スコアを達成する。スコアは等しく重み付けされる。解析は、1つまたは複数の単一の遺伝子スコアについて計算される重み因子と必要に応じて組み合わされる。重み因子は、例えば、マイクロアレイ、RNAシーケンシング解析等により決定された組織内の遺伝子の相対発現に基づく。単一遺伝子またはHLA A、B、C、E、F、G、H、J、K、L、DP、DQ、およびDR遺伝子複合スコアをTMBスコアとも組み合わせて複合スコアを達成する。さらに、ヘテロ接合性スコアを、重み付けするか、HLA接合性と組み合わせる(ホモ接合=0、最も異なる=1)。
【0133】
(実施例9)
患者は、腫瘍を呈し、HLA対立遺伝子の多様性が測定して決定され、様々な処置が成功する確率が高いか低いかが決定される。患者のHLA対立遺伝子の多様性を、HLA対立遺伝子についてヘテロ接合またはおよびホモ接合の2つのカテゴリー内としてスコア化することのみを行う代わりに、より複雑な解析を行う。患者由来の各対立遺伝子のHLA
A、B、C、E、F、G、H、J、K、L、DP、DQ、およびDR遺伝子の配列を決定する。上述のように、各HLAクラスI遺伝子は、8個のエキソンを有するが、エキソン2(アルファ1ドメインに対応)およびエキソン3(アルファ2ドメインに対応)が、HLA分子の結合コアをコードし、最も多型の領域である。これを、HLA-A、HLA-BおよびHLA-C遺伝子について、それぞれ図1A図1Bおよび図1Cに示す。各対立遺伝子対由来の各エキソン2およびエキソン3ドメインのアラインメントスコアに、全体アラインメントスコアの計算においてより重みを与える。次いで、全て対でのアラインメントスコアの分布におけるHLA対立遺伝子の所与の対のアラインメントスコアのパーセンタイルを計算することによって、各遺伝子における各対立遺伝子対について多様性スコアを計算する。このスコアから、対立遺伝子多様性スコアを用いてハザード比を計算する。対立遺伝子多様性スコアは、HLA接合性、家族性遺伝形質、遺伝性遺伝形質、メンデル継承形質、非メンデル継承形質、他の遺伝的関連性および相関性を含む1つまたは複数の追加のパラメータと組み合わせて使用する。全体多様性スコアを計算するために、予測因子として、寄与の程度に基づいて1つまたは複数の追加のパラメータ(例えば、非メンデル継承形質)に、より多くの重みを与える。統計解析は、ボンフェローニ補正の有無にかかわらず、ログランク検定またはウィルコクソン順位和検定を用いて行う。このスコアは、対立遺伝子が互いにあまり類似していないことを意味する5.2%の全体類似性スコアをもたらす。次いで、患者のHLA遺伝子のこの比較的低い多様性を用いて、患者が抗腫瘍療法に比較的高い応答の傾向を有すると決定することができる。
【0134】
(実施例10)
患者は、腫瘍を呈し、HLA対立遺伝子の多様性が測定して決定され、様々な処置が成功する確率が高いか低いかが決定される。患者のHLA対立遺伝子の多様性を、HLA対立遺伝子についてヘテロ接合またはおよびホモ接合の2つのカテゴリー内としてスコア化することのみを行う代わりに、より複雑な解析を行う。患者由来の各対立遺伝子のHLA
A、B、C、E、F、G、H、J、K、L、DP、DQ、およびDR遺伝子の配列を決定する。上述のように、各HLAクラスI遺伝子は、8個のエキソンを有するが、エキソン2(アルファ1ドメインに対応)およびエキソン3(アルファ2ドメインに対応)が、HLA分子の結合コアをコードし、最も多型の領域である。これを、HLA-A、HLA-BおよびHLA-C遺伝子について、それぞれ図1A図1Bおよび図1Cに示す。各対立遺伝子対由来の各エキソン2およびエキソン3ドメインのアラインメントスコアに、全体アラインメントスコアの計算においてより重みを与える。次いで、全て対でのアラインメントスコアの分布におけるHLA対立遺伝子の所与の対のアラインメントスコアのパーセンタイルを計算することで各遺伝子における各対立遺伝子対について多様性スコアを計算する。このスコアから、対立遺伝子多様性スコアを用いてハザード比を計算する。対立遺伝子多様性スコアは、患者の腫瘍の変異負荷を含む1つまたは複数の追加のパラメータと組み合わせて使用する。全体多様性スコアを計算するために、予測因子として、寄与の程度に基づいて1つまたは複数の追加のパラメータにより多くの重みを与える(例えば、変異負荷により多くの重みを与える)。統計解析は、ボンフェローニ補正の有無にかかわらず、ログランク検定またはウィルコクソン順位和検定を用いて行う。このスコアは、対立遺伝子が互いにあまり類似していないことを意味する3.1%の全体類似性スコアをもたらす。次いで、患者のHLA遺伝子のこの比較的低い多様性を用いて、患者が抗腫瘍療法に比較的高い応答の傾向を有すると決定することができる。
【0135】
(実施例11)
患者は、腫瘍を呈し、HLA対立遺伝子の多様性が測定して決定され、様々な処置が成功する確率が高いか低いかが決定される。患者のHLA対立遺伝子の多様性を、HLA対立遺伝子についてヘテロ接合またはおよびホモ接合の2つのカテゴリー内としてスコア化することのみを行う代わりに、より複雑な解析を行う。患者由来の各対立遺伝子のHLA
A、B、C、E、F、G、H、J、K、L、DP、DQ、およびDR遺伝子の配列を決定する。上述のように、各HLAクラスI遺伝子は、8個のエキソンを有するが、エキソン2(アルファ1ドメインに対応)およびエキソン3(アルファ2ドメインに対応)が、HLA分子の結合コアをコードし、最も多型の領域である。これを、HLA-A、HLA-BおよびHLA-C遺伝子について、それぞれ図1A図1Bおよび図1Cに示す。各対立遺伝子対由来の各エキソン2およびエキソン3ドメインのアラインメントスコアに、全体アラインメントスコアの計算においてより重みを与える。次いで、全て対でのアラインメントスコアの分布におけるHLA対立遺伝子の所与の対のアラインメントスコアのパーセンタイルを計算することによって、各遺伝子における各対立遺伝子対について多様性スコアを計算する。このスコアから、対立遺伝子多様性スコアを用いてハザード比を計算する。対立遺伝子多様性スコアは、患者由来のRNAおよび/またはタンパク質発現データから計算される対立遺伝子の患者由来のHLA A、B、C、E、F、G、H、J、K、L、DP、DQ、およびDR遺伝子の各対立遺伝子のRNAおよび/またはタンパク質発現レベル、HLA接合性、家族性遺伝形質、遺伝性遺伝形質、メンデル継承形質、非メンデル継承形質、他の遺伝的関連性および相関性を含む1つまたは複数の追加のパラメータと組み合わせて、ならびに患者の腫瘍の変異負荷と組み合わせて使用する。全体多様性スコアを計算するために、予測因子として、寄与の程度に基づいて1つまたは複数の追加のパラメータにより多くの重みを与える(例えば、HLA遺伝子の高発現対立遺伝子の対立遺伝子多様性スコアにより多くの重みを与える)。統計解析は、ボンフェローニ補正の有無にかかわらず、ログランク検定またはウィルコクソン順位和検定を用いて行う。このスコアは、対立遺伝子が互いにあまり類似していないことを意味する7.4%の全体類似性スコアをもたらす。次いで、患者のHLA遺伝子のこの比較的低い多様性を用いて、患者が抗腫瘍療法に比較的高い応答の傾向を有すると決定することができる。
【0136】
本開示は、ある特定の実施形態および実施例の文脈におけるものであるが、当業者であれば、本開示は、具体的に開示された実施形態を超えて、他の代替の実施形態および/または実施形態の使用、ならびに明らかな修正およびその均等物に及ぶことを理解する。加えて、実施形態のいくつかの変形形態が詳細に示され、説明されているが、本開示の範囲内である他の修正が、本開示に基づいて当業者に容易に明らかになるであろう。また、実施形態の特定の特徴および態様の様々な組み合わせまたは部分組み合わせがなされてもよく、依然として本開示の範囲に入ることも企図される。開示される実施形態の様々な特徴および態様は、本開示の様々な様式または実施形態を形成するために、互いに組み合わせ、または置き換えることができることを理解すべきである。したがって、本明細書における本開示の範囲は、上記の特定の開示された実施形態によって制限されるべきではないことが意図される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
対象における少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の多様性を定量する方法であって、前記対象における1つまたは複数のHLA対立遺伝子対のDNA配列を得ることと、
前記1つまたは複数のHLA対立遺伝子対の前記DNA配列を比較してアラインメントスコアを得ることと、
前記1つまたは複数のHLA対立遺伝子対の前記アラインメントスコアの分布を得ることと、
全てのHLA対立遺伝子対の前記アラインメントスコアの前記分布に対する、前記少なくとも1つのHLA対立遺伝子対のパーセンタイルスコアを決定することと
を含む、方法。
(項目2)
前記パーセンタイルスコアを第1の所定の閾値と比較することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記少なくとも1つのHLA対立遺伝子対が、HLA A、B、C、E、F、G、H、J、K、L、DP、DQ、およびDR対立遺伝子のいずれかの対を含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記パーセンタイルスコアが第1の所定の閾値と同じまたはそれよりも大きい場合、前記対象が第1の処置を推奨される、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記パーセンタイルスコアが第1の所定の閾値よりも小さい場合、前記対象が第2の処置を推奨される、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記1つまたは複数のHLA対立遺伝子対の発現レベルを決定することと、
前記1つまたは複数のHLA対立遺伝子対の前記発現レベルに対する前記少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の発現レベルスコアを得ることと、
前記少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の前記発現レベルスコアに基づいて、前記1つまたは複数のHLA対立遺伝子対の前記アラインメントスコアの前記分布に対する前記少なくとも1つのHLA対立遺伝子対の加重パーセンタイルスコアを決定することと、
前記加重パーセンタイルスコアを第2の所定の閾値と比較することと
をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記加重パーセンタイルスコアが前記第2の所定の閾値と同じまたはそれよりも大きい場合、前記対象が第1の処置を推奨される、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記加重パーセンタイルスコアが前記第2の所定の閾値よりも小さい場合、前記対象が第2の処置を推奨される、項目6に記載の方法。
(項目9)
前記第1の所定の閾値が約75%である、項目2に記載の方法。
(項目10)
前記第2の所定の閾値が約75%である、項目6に記載の方法。
(項目11)
前記第1の処置がICIを含む、項目4に記載の方法。
(項目12)
前記第2の処置が非ICIを含む、項目5に記載の方法。
(項目13)
第1の所定の閾値が50%である場合、前記対象が第1の追加の処置をさらに推奨される、項目2に記載の方法。
(項目14)
前記第2の所定の閾値が50%である場合、前記対象が第2の追加の処置をさらに推奨される、項目6に記載の方法。
(項目15)
前記発現レベルがRNAの発現レベル、タンパク質の発現レベル、またはその両方である、項目6に記載の方法。
(項目16)
前記定量することを経時的に繰り返し、前記第1の所定の閾値に対して前記パーセンタイルスコアに変化があるかどうかを決定する、先行の項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記定量することを経時的に繰り返し、前記第2の所定の閾値に対して前記パーセンタイルスコアに変化があるかどうかを決定する、先行する項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記定量することがTCRクローン性の評価を含む、先行する項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
患者におけるがん処置の予測される有効性を決定する方法であって、
前記患者におけるHLA対立遺伝子対のハザード比を計算することであって、前記ハザード比が前記患者における前記HLA対立遺伝子対の対立遺伝子多様性を反映する、計算することと、
前記ハザード比を所定の閾値と比較することであって、前記所定の閾値を上回るハザード比は、前記患者ががん処置に対して高い有効性を有すると予測されることを示し、前記所定の閾値を下回るハザード比は、前記患者ががん処置に対して低い有効性を有すると予測されることを示す、比較することと
を含む、方法。
(項目20)
前記がんが腫瘍であり、前記方法が、がん処置の前記有効性を決定する際の因子として、前記患者の腫瘍負荷スコアを測定することと、前記腫瘍負荷スコアを所定の閾値と比較することとをさらに含む、項目19に記載の方法。
図1
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4
【外国語明細書】