(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163159
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】防食テープ
(51)【国際特許分類】
C23F 11/00 20060101AFI20241114BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20241114BHJP
B32B 15/085 20060101ALI20241114BHJP
B32B 15/088 20060101ALI20241114BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20241114BHJP
B32B 15/082 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C23F11/00 G
B32B15/08 A
B32B15/085 Z
B32B15/088
B32B27/00 M
B32B15/082 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024148396
(22)【出願日】2024-08-30
(62)【分割の表示】P 2020117908の分割
【原出願日】2020-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】393032125
【氏名又は名称】MCCアドバンスドモールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】森越 誠
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 恭資
(57)【要約】
【課題】施工性に優れ、かつ防食性とその長期耐久性に優れ、また、物理的な外的応力に対してもピンホールや亀裂の発生しにくい鋼材の防食用ラミネートフィルムおよび防食テープを提供する。
【解決手段】金属箔と、該金属箔の少なくとも片面に接着剤を介して積層された高弾性樹脂層とを有する鋼材の防食用ラミネートフィルム。この防食用ラミネートフィルムに、アクリルフォームにアクリル系粘着剤を含浸してなる両面テープを貼り合わせてなる防食テープ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材の防食用ラミネートフィルムであって、金属箔と、該金属箔の少なくとも片面に接着剤を介して積層された高弾性樹脂層とを有することを特徴とする防食用ラミネートフィルム。
【請求項2】
前記高弾性樹脂層が、厚み5~50μmで、引張弾性率1500~5000MPaの二軸延伸フィルムからなり、前記金属箔が、厚み6~60μmのアルミ箔である請求項1に記載の防食用ラミネートフィルム。
【請求項3】
前記二軸延伸フィルムが、二軸延伸ポリアミドフィルムである請求項2に記載の防食用ラミネートフィルム。
【請求項4】
更に低弾性樹脂層を有する請求項1~3のいずれかに記載の防食用ラミネートフィルム。
【請求項5】
前記高弾性樹脂層の前記金属箔とは反対側の面に前記低弾性樹脂層を有する請求項4に記載の防食用ラミネートフィルム。
【請求項6】
前記低弾性樹脂層は、ポリエチレン樹脂を主成分とし、MFRが0.1~20g/10minで、密度が0.91~0.960g/cm3で、引張弾性率が100MPa以上1500MPa未満である請求項4または5に記載の防食用ラミネートフィルム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の防食用ラミネートフィルムに、両面テープを貼り合わせてなることを特徴とする防食テープ。
【請求項8】
請求項1~6のいずれかに記載の防食用ラミネートフィルムに、アクリルフォームにアクリル系粘着剤を含浸してなる両面テープを貼り合わせてなることを特徴とする防食テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材の防食用材料に関し、詳しくは、構造物等の構成部材として使用される鋼材の表面に貼り付ける防食用ラミネートフィルムおよび防食テープに関するものである。より具体的には 建築物、海洋構造物、鉄塔、高架水槽、タンク、水門、橋梁、プラント等の各種構造物に使用される鋼材の腐食防止に好適に用いられる防食用ラミネートフィルムおよび防食テープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物、海洋構造物、鉄塔、高架水槽、タンク、水門、橋梁、プラント等の構成部材として使用される鋼材には、用途、目的に応じて、炭素含有量や熱処理の方法などにより、強度、耐食性、耐熱性、磁気特性、熱膨張率等が調整され、様々な種類のものが使用されている。
【0003】
このような鋼材は、屋内外でそのままで放置された場合、腐食により赤錆や黄褐色の浮き錆等を生じ、景観を損なうばかりではなく、腐食による肉厚減少に起因した構造物としての強度が低下し、著しい場合には破損に到る問題がある。
【0004】
従来、このような鋼材の経時腐食の対策としては、特許文献1のように防食または防錆機能を付与した塗装を施すことが一般的であった。
【0005】
一方、特許文献2、3には、樹脂層あるいは金属層からなる防水性フィルムを粘着剤を介して鋼材の表面に貼ることで防食性を付与することが提案されている。
【0006】
例えば特許文献2には、透水率の低い材料、例えばブチルゴム等のゴム材料、アクリル、シリコーン、ポリエチレン、エポキシ、ウレタン等の樹脂材料よりなる基材に、天然ゴム、スチレンーブタジエンゴム、ブチルゴム、アクリルゴムなどを主成分とする粘着剤を塗布した防水性粘着テープが記載され、この防水性粘着テープの膜厚は0.1~2.0mm、粘着力として1kg・cm以上、吸水率は1.0%以下のものが好ましいとされている。
【0007】
特許文献3には、ポリ塩化ビニルよりなる樹脂層の内部または表面に弾力性を付与する繊維層または金属層を配置した樹脂シートを、鋼材の表面に接着剤を塗布して貼り付けることで鋼材を防食する方法が記載されている。
【0008】
特許文献4には、無機物を蒸着した蒸着ベースフィルム層を有する重防食被覆鋼材が記載されている。
【0009】
特許文献5には、鋼材表面に腐食部を覆うように金属箔を貼付する工程を含む鋼材補修方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004-97945号公報
【特許文献2】特開2001-81800号公報
【特許文献3】特開2013-71267号公報
【特許文献4】特開2005-262787号公報
【特許文献5】特開2020-33730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1のような塗装による防食方法では、防食効果は十分ではなく、水分がたまりやすい場所、塩分が付着しやすい場所や、塗膜が薄くなりやすい角部では腐食が進行しやすいという問題がある。また塗装コストが高いこと、耐用年数に限りがあること、定期的な塗り替えが必要なことからメンテナンスコストが高いという問題もある。
【0012】
特許文献2、3の、樹脂層あるいは金属層からなる防水性フィルムを粘着剤を介して鋼材の表面に貼る方法では、樹脂層、金属層の選定により防食効果を高めることはできるが、屋外での使用時には、風雨により砂、小石等がフィルム表面に衝突することでピンホールや亀裂が発生しやすく、防食性を長期間保つことができない問題がある。
ピンホールや亀裂の発生を防止するために金属層を厚くすると、シートが硬くなり、鋼材への施工性に問題を生じる。
また、フィルム基材として使用される防水性樹脂シートは、塗料や接着剤の付着力が弱く、剥離の問題もある。
【0013】
特許文献4の無機物蒸着ベースフィルム層を有する重防食被覆鋼材では、樹脂フィルムより水分バリア性が向上し、耐久性は増すものの、ピンホールや亀裂が生じ易く、防食性を長期間保つには不十分であるとともに、フィルム強度も不十分で外力による破損の可能性もある。
【0014】
特許文献5の、金属箔を鋼材表面の腐食部を覆うように貼付する方法では、薄膜の金属箔では、強度が不十分であり、外力による破損の問題がある。厚みの厚い金属箔であれば強度は増すが、硬すぎるためにハンドリング性、施工性に問題があり、施工対象が限定的される問題がある。
【0015】
このように、従来において、鋼材に防食性を付与するために各種の防食方法、種々の防食フィルムが提案されているが、鋼材の防食性を長期間保つことができず、鋼材が腐食するたびにメンテナンスが必要になる問題がある。
さらに、風雨により小石等の飛散物が衝突した場合に、ピンホールや亀裂が発生してバリア性が損なわれ、鋼材が腐食しやすくなるといった問題もある。
【0016】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、施工性に優れ、かつ防食性とその長期耐久性に優れ、また、物理的な外的応力に対してもピンホールや亀裂の発生しにくい鋼材の防食用ラミネートフィルムおよび防食テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、特定の構成を採用することにより、上記課題を容易に解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、
鋼材の防食用ラミネートフィルムであって、金属箔と、該金属箔の少なくとも片面に接着剤を介して積層された高弾性樹脂層とを有することを特徴とする防食用ラミネートフィルム、
および
当該防食用ラミネートフィルムに、アクリルフォームにアクリル系粘着剤を含浸してなる両面テープを貼り合わせてなることを特徴とする防食テープ、
に存する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、施工性、防食性およびその長期耐久性、耐水性、耐ピンホール性に優れ、しかも環境負荷の少ない方法で安価に製造することができる鋼材防食用ラミネートフィルムおよび防食テープが提供される。
本発明の防食用ラミネートフィルムおよび防食テープを用いて、鋼材の発錆や劣化を低コストにかつ効果的に防止することができ、各種構造物に用いられる鋼材の長期耐久性、信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の防食用ラミネートフィルムおよび防食テープの実施の形態の一例を示す模式的断面図である。
【
図2】本発明の防食用ラミネートフィルムおよび防食テープの実施の形態の他の例を示す模式的断面図である。
【
図3】本発明の防食用ラミネートフィルムおよび防食テープの実施の形態の別の例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の防食用ラミネートフィルムおよび防食テープの実施の形態の一例を示す
図1~3を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0021】
[防食用ラミネートフィルム]
本発明の防食用ラミネートフィルムは、鋼材の防食用ラミネートフィルムであって、金属箔と、該金属箔の少なくとも片面に接着剤を介して積層された高弾性樹脂層とを有することを特徴とする。
即ち、本発明の防食用ラミネートフィルム10(10A~10C)は、
図1~3に示すように、少なくとも高弾性樹脂層1(1a,1b)、接着剤の層である接着層2(2a,2b,2c,2d)および金属箔3を有し、更に低弾性樹脂層4(4a,4b)を有していてもよいものである。
【0022】
なお、本発明において、高弾性樹脂層とは、引張弾性率が比較的大きい樹脂よりなる層をさし、低弾性樹脂層とは、引張弾性率が比較的小さい樹脂よりなる層をさす。各々の層の好適な引張弾性率は後述の通りであるが、同一の防食用ラミネートフィルム内に用いられる高弾性樹脂層の引張弾性率は、低弾性樹脂層の引張弾性率よりも大きく、その差は500MPa以上であることが好ましい。
本発明において、樹脂の引張弾性率は、後述の実施例の項に記載の方法により測定された値であり、樹脂フィルムの面内の引張弾性率の最大値(フィルムの押出方向(長手方向)MDまたは幅方向(押出方向に直交する方向)TDのいずれか一方の引張弾性率)を当該樹脂フィルムの引張弾性率とする。
【0023】
<金属箔>
金属箔3は、外部からの水分が浸入することを防止(バリア)するための層であり、ピンホールが無いこと、防食用ラミネートフィルムとしての高い引張強度を有していること、外力による変形および伸びに対する耐クラック性を有していること等が要求される。
【0024】
金属箔3としては、耐腐食性を有しかつ安価なアルミニウムやその合金、ステンレスなどが用いられる。また耐クラック性の面から、純度99%以上の純Al(アルミニウム)、Al-Cu-Mg系合金、Al-Mn系合金、Al-Si系合金、Al-Mg系合金、Al-Mg-Si系合金、Al-Zn-Mg系合金、Al-Fe系合金等が使用可能である。なお、Al合金中のアルミニウム含有量は95重量%以上であることが好ましい。
【0025】
これらの中でも、金属箔としては伸び性に優れたアルミニウム箔が好ましく、鉄を0.1重量%以上3.0重量%以下含有するアルミニウム箔(合金番号8000番台)や、純度99%以上の純アルミニウム(合金番号1000番台)が好ましい。上記の鉄を0.1重量%以上、3.0重量%以下含有するアルミニウム箔において、鉄の含有量がこの範囲より少ないと伸びが十分でない傾向にあり、この範囲より多い場合には、金属箔が腐食しやすい問題が発生する傾向にある。鉄含有アルミニウム箔の好ましい鉄含有量は0.2重量%以上1.7重量%以下である。
また、アルミニウム箔には、硬質アルミニウム箔と軟質アルミニウム箔とが存在するが、焼鈍処理を施してある軟質アルミニウム箔が柔軟性を有しているため好ましい。
【0026】
アルミニウム箔等の金属箔3の厚みは、6μm以上60μm以下、特に9μm以上25μm以下であることが、薄膜化とバリア性を両立させる上で好ましい。
【0027】
アルミニウム箔は、耐腐食性を向上させるために、化成処理を施してもよい。特にベーマイト処理は安価で無害なため好ましく、ベーマイト処理後の処理面の水との接触角は10゜~90゜であることが好ましい。
【0028】
<高弾性樹脂層>
本発明における高弾性樹脂層1(1a,1b)は、突き刺し等による外部からの力による金属箔の破損を防ぐこと、金属箔を補強すると共に、外部からの物理的応力に対するフィルム自体の破損を防止するための層であり、単層フィルムであっても2層フィルム以上の積層フィルムであってもよい。
【0029】
高弾性樹脂層1は、機械的強度、金属箔3の保護性に優れ、バリア性を有することが要求され、ある程度引張弾性率の高い樹脂フィルムよりなることが、フィルム厚みを薄くすることができる点で好ましい。
【0030】
高弾性樹脂層を構成する樹脂としては、ポリアミド(PAまたはNy)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアセタール(POM)、ポリアリレート(Par)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)等のポリアルキレンテレフタレート(PAT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフェニレンオキシド(PPE)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリメチルペンテン(TPX)、ポリオキシベンジレン(POB)、ポリイミド(PI)、液晶性ポリエステル、ポリスルフォン(PSF)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリビスアミドトリアゾール、ポリアミノビスマレイミド、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等、或いはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
その中でも、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリアルキレンテレフタレート(PAT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリアミド(PAまたはNy)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)よりなるものが好ましい。
【0031】
高弾性樹脂層としては無延伸フィルムであっても延伸フィルムであってもよいが、機械的強度および耐熱性の観点から、高弾性樹脂層は延伸フィルムよりなることが好ましく、中でも二軸延伸フィルムであることが好ましい。特に、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、二軸延伸ポリアミドフィルム、または二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムからなるものは、引張弾性率が適度に高く、安価であり好ましい。
【0032】
これらの中でも二軸延伸ポリアミドフィルムと二軸延伸ポリブテレンテレフタレートフィルムは、適度な柔軟性も持ち合わせている点においてより好ましい。
さらには、フィルムの方向(長手方向、幅方向)による異方性が少ない点において、チューブラー法で製膜された二軸延伸ポリアミドフィルムと二軸延伸ポリブテレンテレフタレートフィルムが特に好ましく、二軸延伸ポリアミドフィルムが特に好ましい。
【0033】
高弾性樹脂層は、外部からの突き刺し等の変形による金属箔のピンホールや亀裂発生を阻止するための役割も必要となり、施工時の防食用ラミネートフィルムの破損を防止するための役割を担うために、ある程度の弾性率と厚みが必要である。
この観点から、高弾性樹脂層の引張弾性率は、フィルムの面内の最大値(通常、フィルムの押出方向(長手方向)または幅方向のどちらか一方となる)が、1500MPa以上、特に1700MPa以上であり、とりわけ2000MPa以上であることが好ましい。
高弾性樹脂層の引張弾性率が1500MPaより小さいと金属箔を補強する効果が低くなる傾向があり、外的応力によりピンホールや亀裂が発生しやすくなる傾向がある。
【0034】
高弾性樹脂層の引張弾性率の上限には特に制限はないが、フィルム面内の最大値が6500MPa以下であることが好ましい。引張弾性率がこれより大きいと本発明の防食用ラミネートフィルムが硬くなりすぎ、柔軟性が損なわれるため厚みを薄くする必要があり、耐ピンホール性、耐突き刺し性が悪化することがある。また施工時に鋼材への貼り付けが困難になるとともに角部などに防食用ラミネートフィルムを曲げながら貼り合わせた際に、時間の経過で戻る力が強くなり、剥離が生じる場合がある。
高弾性樹脂層の引張弾性率の上限は5000MPa以下であることがより好ましく、4500MPa以下であることが特に好ましい。
【0035】
また、高弾性樹脂層の厚みは、好ましくは5μm以上50μm以下である。高弾性樹脂層の厚みが50μmよりも厚いと、本発明の防食用ラミネートフィルムの剛性が高くなりすぎ、曲げにくく、鋼材の角部への貼り付けが困難になり、施工しにくくなるばかりか、面密度が大きくなり軽量化が図れなくなる傾向にある。一方、高弾性樹脂層の厚みが5μmより薄いと耐突き刺し性に影響が出る場合がある。高弾性樹脂層の厚みは特に8μm以上30μm以下であることが好ましい。
なお、ここで、高弾性樹脂層の厚みとは、高弾性樹脂層1つ当たり(1ヶ所当たり)の厚みをさす。ここで、1つの高弾性樹脂層とは、接着層2を含まない層、例えば接着層と接着層との間の層であり、1つの高弾性樹脂層が複数層の積層構造であれば、その合計の厚みに該当する。
【0036】
<接着層>
接着層2は、高弾性樹脂層1と金属箔3または低弾性樹脂層4、或いは金属箔3と低弾性樹脂層4とを接着するための層である。
【0037】
接着層2の接着剤としては、高接着樹脂層1と金属箔3または低弾性樹脂層4、或いは金属箔3と低弾性樹脂層4とをドライラミネーション法により貼り合わせる場合には、ドライラミネーション用の接着剤、例えば、脂肪族ポリエステル系、芳香族ポリエステル系、ポリエチレンイミン系、ポリエーテル系、シアノアクリレート系、ウレタン系、有機チタン系、ポリエーテルウレタン系、エポキシ系、ポリエステルウレタン系、イミド系、イソシアネート系、ポリオレフィン系、シリコーン系、アクリル系などの各種の接着剤を用いることができる。
これらの接着剤の中でも、芳香族ポリエステル系、ポリオレフィン系、アクリル系の接着剤が耐候性、耐水性に優れ、好ましい。
【0038】
更なる防湿性や耐候性が要求される場合には、接着層に酸変性樹脂を用いて熱ラミネーション法による張り合わせや、押出ラミネーション法、サンドイッチラミネーション法により酸変性樹脂を金属箔または低弾性樹脂層あるいは高弾性樹脂層の上に押出し、高弾性樹脂層と金属箔または低弾性樹脂層とを貼り合わせてもよい。
【0039】
接着層の厚みは限定されないが、ドライラミネーション法の接着剤では、通常1~10μmの範囲であり、3~6μmの範囲が好ましい。
熱ラミネーション法による張り合わせや、押出ラミネーション法、サンドイッチラミネーション法の場合の酸変性樹脂層の厚みは、通常3~80μmの範囲であり、5~30μmの範囲が好ましい。
【0040】
<低弾性樹脂層>
本発明の防食用ラミネートフィルムは、柔軟性や、塗料や接着剤を塗布することを想定した耐溶剤性を重視する場合は、さらにポリオレフィン等の引張弾性率の低い柔軟な低弾性樹脂層4を積層してもよい。
例えば、
図1に示すように、金属箔3の両面に引張弾性率の高い高弾性樹脂層1a,1bと耐溶剤性を有する低弾性樹脂層4a,4bとを積層することによって、柔軟性を付与することができ、ハンドリング等の施工性が良化し、また、溶剤を含む塗料や接着剤に対する耐性が向上し、好ましい。
図3に示すように、金属箔3の鋼材に対する接着面側にのみ低弾性樹脂層4aを設けた場合には、柔軟性の付与で施工性の向上を図ることができる。
【0041】
低弾性樹脂層4を構成する樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン(高密度,中密度,低密度,直鎖状低密度)、プロピレンエチレンブロックまたはランダム共重合体等のポリオレフィンおよびその酸変性体、ゴムまたはラテックス成分、例えばエチレン・プロピレン共重合体ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体またはその水素添加誘導体、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリフッ素化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ素化ビニル、クロロトリフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、アクリル酸アルキルエステル共重合体、ポリエステルエステル共重合体、ポリエーテルエステル共重合体、ポリエーテルアミド共重合体、ポリウレタン共重合体、塩化ビニル樹脂等の1種またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0042】
特に、高弾性樹脂層を衝撃や外部環境から保護する耐衝撃性、耐候性付与を目的として、また、鋼材への貼り合わせの際の粘着剤に含まれる溶剤による劣化防止を目的として必要に応じて用いられる低弾性樹脂層4としては、ポリプロピレン、ポリエチレン(高密度,中密度,低密度,直鎖状低密度)、プロピレンエチレンブロックまたはランダム共重合体等のポリオレフィンおよびその酸変性体、ゴムまたはラテックス成分、例えばエチレン・プロピレン共重合体ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体またはその水素添加誘導体、ポリブタジエン、ポリイソブチレンよりなるものが好ましい。
【0043】
本発明において、低弾性樹脂層4には、ポリエチレン樹脂、即ち、高密度、中密度、低密度、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分とするもの、ランダムまたはブロックポリプロピレンを主成分とするポリオレフィン樹脂や、酸やシランで変性したポリオレフィン樹脂を適宜選択できる。これらの中で好ましいものは、直鎖状低密度ポリエチレン(LLPE)、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンを主成分とするポリエチレン樹脂層を含む単層、または積層構造であり、ランダムポリプロピレン(R-PP)を主成分とする樹脂層を含む単層または積層構造のものも好ましい。
ここでいう主成分とは、複数の成分を配合してなる材料において、当該配合材料中、重量割合で最も多く含まれている成分を指す。
【0044】
なお、本発明において、上記の条件を満たすものであれば、低弾性樹脂層にはポリエチレン樹脂以外の他の成分を含んでいてもよい。
【0045】
ポリエチレン樹脂はポリプロピレン樹脂より融点は低いが、熱が繰り返し加えられることにより分子が架橋するポリマーであり、屋外炎天下で鋼材の温度が40~80℃に上昇した場合における高温環境下での長時間暴露に対し、分子が切断しにくく、ポリプロピレン樹脂より長期耐熱性が優れている。
更にポリエチレン樹脂は、溶融張力も高く、柔軟性があり、変形に対しても強く、変形時の白化もしにくく、耐寒性にも優れる。また、ポリエチレン樹脂はポリプロピレン樹脂より密度が高く、外部からの水分や粘着剤に含まれる極性溶媒への耐性も強い。
【0046】
本発明において直鎖状低密度ポリエチレン(LLPE)とは、エチレンと炭素数4~20程度のα-オレフィンとの共重合体を意味し、α-オレフィンで構成される分岐側鎖の具体例としては、ブテン-1、ヘキセン-1、4-メチルペンテン-1、オクテン-1、デセン-1、テトラセン-1、オクタデセン-1等の各種コモノマーが挙げられる。これらのα-オレフィンは2種以上を併用してもよい。また、炭素数4~20程度のα-オレフィンをコモノマーとして用いていれば、さらにプロピレンをコモノマーとしてもよい。
【0047】
直鎖状低密度ポリエチレン(LLPE)としては、MFR、密度および引張弾性率を後述の好適範囲とすることができるものであれば、いずれも用いることができる。その中でも特に、ブテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1のうち少なくとも何れかの側鎖がついた直鎖状低密度ポリエチレンが適度な柔軟性を有するため好ましく、特にヘキセン-1、オクテン-1は耐溶剤性に優れているため好ましい。
【0048】
直鎖状低密度ポリエチレン(LLPE)の製造方法は限定されず、ポリオレフィン樹脂を製造する公知の方法を採用することができるが、通常、チーグラー系触媒、メタロセン系触媒等によって製造することが好ましい。
【0049】
本発明におけるポリエチレン樹脂には、直鎖状低密度ポリエチレン(LLPE)以外のポリエチレン樹脂も配合することができる。直鎖状低密度ポリエチレン(LLPE)以外のポリエチレン樹脂は限定されないが、具体的には、高密度ポリエチレン(HDPE)や中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等が挙げられる。ここで低密度ポリエチレン(LDPE)とは、前記の直鎖状低密度ポリエチレン(LLPE)は含まず、通常、高圧法低密度ポリエチレンと呼ばれるものが挙げられる。高密度ポリエチレン(HDPE)や中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)の製造方法は限定されず、公知の方法を採用することができるが、通常、チーグラー系触媒、メタロセン系触媒等によって製造することが好ましい。
【0050】
更に、低弾性樹脂層には、高弾性樹脂層の吸湿性や紫外線劣化を防ぐために、本発明の効果を損なわない範囲で、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-ブテン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体等のオレフィン系エラストマーや、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等の各種エラストマー成分、酸化防止剤、熱安定剤、各種可塑剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、架橋剤、架橋助剤、着色剤、難燃剤、分散剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0051】
本発明における低弾性樹脂層は、メルトフローレート(MFR)0.1g/10min以上20g/10min以下、密度0.91g/cm3以上0.960g/cm3以下、引張弾性率100MPa以上2000MPa以下であることが好ましい。なお、低弾性樹脂層のMFR、密度、引張弾性率は、後述の実施例の項に記載の方法で測定される。
【0052】
低弾性樹脂層5のMFRが、20g/10minより大きいと、高分子の分子量が低くなり、耐溶剤性が低下し、また、耐候性が劣る場合がある。好ましいMFRは10g/10min、より好ましくは5g/10min以下、さらに好ましくは3g/10min以下である。MFRの下限は、インフレーション成形法で製膜する場合において、製膜性に問題が無いレベルである必要があるため0.1g/10min以上であり、特に0.3g/10min以上であれば、インフレーション成形における高速成形性を維持できるため好ましい。
【0053】
また、低弾性樹脂層の密度が0.91g/cm3より小さいと、耐溶剤性、耐防水性が悪化するおそれがある。外部からの水分を遮断し、溶剤に対する耐性を高めるためにも、低弾性樹脂層の密度はある程度高い方がよく、好ましい密度の下限は0.918g/cm3以上、より好ましくは0.920g/cm3以上であり、特に好ましくは0.923g/cm3以上である。密度の上限は、柔軟性を損なわない範囲として0.960g/cm3以下、特に0.950g/cm3以下であり、耐白化性を考慮すると、密度の上限はより好ましくは0.945g/cm3以下である。
低弾性樹脂層の密度を上記範囲とするための手段は限定されないが、例えば、低弾性樹脂層に用いるポリエチレン樹脂の最適化、前記の通り、ポリエチレン樹脂やポリエチレン樹脂以外の樹脂等を併用し、それらの配合比率を最適化することなどが挙げられる。
【0054】
低弾性樹脂層の引張弾性率は、柔軟性を付与しすぎると変形等の外力が作用した時に材料破壊を引き起こしやすくなるため100MPa以上であり、反対に硬くなりすぎると脆くなりやすく、接着層を介して接する金属箔との間で剥離しやすくなるため、1500MPa未満であることが好ましく、1300MPa以下であることがより好ましい。低弾性樹脂層の引張弾性率は特に好ましくは130MPa以上1000MPa以下、とりわけ好ましくは180MPa以上900MPa以下である。
【0055】
なお、前述のMFR、密度、引張弾性率の値は、低弾性樹脂層を構成する樹脂の特性を意味し、ポリエチレン樹脂として複数のポリエチレン樹脂を併用する場合や、ポリエチレン樹脂以外の樹脂を含有する場合においては、樹脂組成物としての値を意味するものである。
【0056】
本発明では、特に低弾性樹脂層を直鎖状低密度ポリエチレンを主成分とする層とし、高弾性樹脂層や金属箔との貼り合わせ側となる接着層に特定の酸変性ポリエチレン樹脂層を使用することで、より耐溶剤性、耐防水性性を高めることができ、好ましい。
【0057】
また、低弾性樹脂層を多層構造とし、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分とする層と、ランダムポリプロピレン層またはブロックポリプロピレン層との積層構造、或いは、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分とする層と中密度ポリエチレンまたは高密度ポリエチレンを主成分とする層との積層構造としてもよく、更に3~5層程度の多層積層構造としてもよい。
【0058】
低弾性樹脂層の厚みは、3μm以上80μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上70μm以下、特に好ましくは12μm以上60μm以下である。低弾性樹脂層の厚みが上記下限よりも薄いと、耐水性が不足し、防食性が低下することがある。また柔軟性が不足し施工性が劣る場合がある。一方、上記上限よりも厚いと、ハンドリング性が悪化する場合がある。
なお、ここで、低弾性樹脂層の厚みとは、低弾性樹脂層1つ当たり(1ヶ所当たり)の厚みをさす。ここで、1つの低弾性樹脂層とは、接着層2を含まない層、例えば接着層2に隣接する層であり、1つの低弾性樹脂層が複数層の積層構造であれば、その合計の厚みに該当する。
【0059】
低弾性樹脂層は、鋼材に貼る際の粘着剤や、高弾性樹脂層と貼り合わせる際の接着剤との接着性を高めるために、表面に凹凸を付与することが好ましい。この場合、凹凸付与面の表面粗さRaは、0.1~1.0μm、特に0.3~0.8μm程度であることが好ましい。
また、低弾性樹脂層の片面または両面にコロナ放電処理、プラズマ処理、プライマー処理、アンカーコート処理等の粘着剤や接着剤への接着性、塗装を施す場合の塗装性を高める処理を行ってもよい。この場合、処理面の水との接触角は50°~95°が好ましく、特に好ましくは55°~90°である。
【0060】
[防食用ラミネートフィルムの層構成]
本発明の防食用ラミネートフィルムは、高弾性樹脂層と、金属箔とこれらを接着する接着層を有するものであればよく、その層構成には特に制限はないが、例えば
図1に示すように、金属箔3の両面にそれぞれ接着層2(2a,2b)を介して高弾性樹脂層1(1a,1b)を積層し、更にその外側にそれぞれ接着層2(2c,2d)を介して低弾性樹脂層4(4a,4b)を積層して一体化した防食用ラミネートフィルム10(10A)が挙げられる。
【0061】
また、
図2に示すように、
図1の防食用ラミネートフィルム10Aの低弾性樹脂層4a,4bを省略し、金属箔3の両面にそれぞれ接着層2(2a,2b)を介して高弾性樹脂層1(1a,1b)を積層して一体化した防食用ラミネートフィルム10(10B)が挙げられる。
【0062】
更に、
図3に示すように、金属箔3の一方の面にのみ接着層2(2a)を介して高弾性樹脂層1(1a)を積層し、他方の面に接着層2(2b)を介して低弾性樹脂層4(4a)を積層して一体化した防食用ラミネートフィルム10(10C)としてもよい。
【0063】
また、
図2の防食用ラミネートフィルム10Bにおいて、更に一方の高弾性樹脂層側にのみ接着層を介して低弾性樹脂層を積層して一体化したものであってもよく、
図3の防食用ラミネートフィルム10Cの高弾性樹脂層1aに更に接着層を介して低弾性樹脂層を積層して一体化したものであってもよい。
【0064】
いずれの場合であっても、金属箔の一方の面側に高弾性樹脂層と低弾性樹脂層を積層する場合は、金属箔/接着層/高弾性樹脂層/接着層/低弾性樹脂層の積層順となるように積層し、低弾性樹脂層は、高弾性樹脂層よりも外側(表面側)に設けることが好ましい。
【0065】
本発明の防食用ラミネートフィルムにおいて、高弾性樹脂層、金属箔、低弾性樹脂層が、それぞれ前述の好適な厚み範囲であればよく、その総厚みについては特に制限はないが、各層の必要な厚みを確保してそれぞれの機能を有効に得る上で、本発明の防食用ラミネートフィルムの総厚みの下限は30μm以上であることが好ましく、45μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることが破れにくくなるため特に好ましい。
一方、防食用ラミネートフィルムが過度に厚膜となって、高剛性となり、施工性等が損なわれることを防止する観点から、本発明の防食用ラミネートフィルムの総厚みの上限は250μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。
【0066】
<その他の処理>
防食用ラミネートフィルムの外表面側面(鋼材貼着面とは反対側の面)には、防食効果を高めるための塗装(図示せず)を施してもよい。
また、塗装や鋼材への貼り付けのための粘着剤や接着剤に対する濡れ性を高めるために、水との接触角が50゜以上95゜以下となるような表面処理を施してもよい。
更に、防食用ラミネートフィルムの外側に塗料を吹き付ける場合や、内側に接着剤を塗布する場合には、耐溶剤性が必要になるため、耐溶剤性の優れた疎水性の低弾性樹脂層を設けることが好ましいが、濡れ性の良い表面性も重要となる。そのためプライマーを塗布したり、前述の通り、低弾性樹脂層表面に凹凸を付与したり、防食用ラミネートフィルムの外側表面にコロナ放電処理やプラズマ処理や火炎処理等の表面処理をするなどして接着剤、塗料との接着性を向上させる処理を施してもよい。
【0067】
[防食性ラミネートフィルムの製造方法]
本発明の防食用ラミネートフィルムの製造方法としては特に制限はないが、少なくとも高弾性樹脂層と金属箔とのラミネートは、接着剤を介したドライラミネーション法で貼り合わせることが好ましい。
【0068】
また、予め高弾性樹脂層と低弾性樹脂層とをドライラミネーション法で貼り合わせ、その後、金属箔とドライラミネーション法で貼り合わせても良いし、高弾性樹脂層と金属箔との貼り合わせはドライラミネーション法で行い、その後、低弾性樹脂層との貼り合わせは、予めインフレーション成形法(多層インフレーション成形法)により製膜した低弾性樹脂フィルムを接着剤を介してドライラミネート法により貼り合わせることでも良い。
あるいは、低弾性樹脂フィルムを熱ラミネーション法により高弾性樹脂層に貼り合わせても良いし、押し出しラミネーション法により高弾性樹脂層の表面に低弾性樹脂を溶融しながらTダイから押出成膜化しても良い。
【0069】
一般的に、低弾性樹脂層に用いられる樹脂としては、耐熱性が必要であればポリプロピレンが用いられる場合が多く、また、低コストを重視するため、押出ラミネーション法、サンドラミネーション法またはキヤスト法で製膜したポリプロピレンを使用する場合が多い。これらは全てT型の金型(帯状の樹脂吐出口)から押し出した溶融樹脂を冷却して製膜するため、MD方向とTD方向とで引張強度、伸度、引張弾性率といった物性に差が発生しやすい。一方で、低弾性樹脂層としてこのようなフィルムを用いた防食用ラミネートフィルムを、粘着剤により鋼材に貼り合わせによる施工時には、あらゆる方向による機械的ストレスがあること、粘着剤に含まれる溶剤による収縮等が起こることが想定される。このため、MD方向とTD方向とで引張強度、伸度、引張弾性率といった物性に差があるフィルムでは、施工時にシワが発生しやすい傾向がある。
【0070】
これに対して、インフレーション成形法により製膜されたフィルムは、押出方向(MD方向)と押出方向と直交する円周方向(TD方向)との機械的物性の差が出にくく、施工時の取り扱いに際してシワが発生しにくいといった利点がある。
【0071】
このようなことから、低弾性樹脂層に用いられる樹脂としては、耐熱性が必要でなければ、耐溶剤性に優れ、適度な柔軟性のあるポリエチレンを用い、インフレーション成形でMD/TD方向での物性の差を出にくくし、高弾性樹脂層の物性とのバランスを考慮して、防食用ラミネートフィルムとして、異方性をなくすように、成形時のブローアップ比を調整して製膜することが好ましい。
【0072】
また、インフレーション成形法に適合する樹脂原料には、MFRが低く、高分子量であるとともに、溶融張力が大きいといった特性が必要となり、更には、製膜時の加工温度も低くする必要がある。この点において、高温で成形加工され、かつ高MFR、高流動の樹脂特性を必要とする押出ラミネート法またはサンドイッチラミネート法で使用される樹脂とはその特性が異なる。このため、本発明では低弾性樹脂層として、好ましくは前述のような低MFRの樹脂を用いるが、これらの樹脂は、低MFR性と高溶融張力性により、フィルム強度が得られやすいといった利点もある。
【0073】
本発明では、インフレーション成形法によるフィルムの異方性の少なさをより生かしつつ、防食用ラミネートフィルムとしての機械物性、シール性、耐熱性、成形性等の各種特性を付与すために、インフレーション成形法に使用されるその樹脂特性に着目し、好ましくは前記した特定の樹脂および特定の物性を有する層を構成することにより、バリア層である金属箔との接着性に優れ、水分の浸入を阻止することができ、耐溶剤性に優れた、防食用ラミネートフィルムが得られる。
【0074】
[防食テープ]
本発明の防食性ラミネートフィルムを、予め粘着剤または接着剤を塗布した離型紙や離型フィルムで保護したり、または、本発明の防食用ラミネートフィルムにフィルムないしシート状物に粘着剤を含浸させた所謂両面テープを貼り合わせて防食テープとして用いることができる。このような構成により、防食性テープとしての長期耐水性、耐久性、施工性の向上を図ることができる。
この場合、特に貼り合わせ初期の接着力が適度に低く、湿度による硬化後、接着力が向上するような特性を有する粘着剤を防食性のテープとして防食基材である本発明の防食用ラミネートフィルムに貼り合わせることが好ましい。
また、鋼材などの被着体の凹凸面を吸収し、かつ貼り合わせ時に加わる応力や外的衝撃からの応力を緩和し防食用ラミネートフィルムの破損を長期にわたり防ぐために、適度な弾力性と厚みを有する必要がある。
このような観点から、紙、不織布、綿布、ポリエチレンまたはアクリルフォームの基材にアクリル系の粘着剤を含浸させた両面テープを防食用ラミネートフィルムに貼り、防食テープとして使用することが好ましい。
【0075】
図1~3では、このような両面テープ5と離型紙または離型フィルム6を防食用ラミネートフィルム10(10A,10B,10C)にそれぞれ貼着して防食テープ20(20A,20B,20C)としたものが示されている。
図1~3に示されるように、両面テープ5および離型紙または離型フィルム6は、防食用ラミネートフィルム10A~10Cにおける金属箔3よりも外表面側に高弾性樹脂層1(1a)が存在するように設けられる。
【0076】
好ましい両面テープ5の厚みは、0.1mm以上2mm以下であり、これより厚いと柔軟性が損なわれ、施工性が悪化することがある。一方、これより薄いと被着体の凹凸追従性が悪化し、また接着強度も不足することがある。より好ましい両面テープの厚みは0.15mm以上1.5mm以下で、0.25mm以上1.2mm以下が特に好ましい。
【0077】
また、両面テープの弾性率も適度に低い方がよく、引張弾性率として100MPa以下のアクリルフォームにアクリル系粘着剤を含浸させた粘着性両面テープを使用することが好ましい。
【実施例0078】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0079】
[評価方法]
以下の実施例および比較例で用いた材料、製造された防食用ラミネートフィルムおよび防食テープの評価方法は以下の通りである。
【0080】
<水との接触角>
試料表面の水との接触角は、協和界面科学株式会社製 商品名DROPMASTER自動接触角計を用いて測定し、5点の測定値の平均値を採用した。
【0081】
<引張弾性率>
樹脂または樹脂組成物の引張弾性率は、ISO1184-1970に基づき、15mm幅の短冊状のサンプルを、チャック間距離100mmでテンシロン型引張り試験機にて1mm/minで測定した値である。
【0082】
<MFR(メルトフローレート)>
JISK 7210A法に基づき、190℃、2.16kgf荷重にて測定した値である。
【0083】
<密度>
密度はJIS K7112A法(水中置換法)により求めた。
【0084】
<突き刺し強度>
防食用ラミネートフィルムを50mm×100mmに切り出して試験片とした。イマダ社製引張試験機を用い、中央に直径20mmの開口部を有する押さえ板と台の間に試験片を固定し、直径1mm、先端形状半径0.5mmの半円径の針を、突き刺し速度50mm/minで突き刺し、針が貫通するまでの最大荷重を測定した。3サンプルの平均値を測定結果とし、下記基準で評価した。
○:突き刺し強度15N以上
△:突き刺し強度10N以上15N未満
×:突き刺し強度10N未満
【0085】
<反り>
防食用ラミネートフィルムを100mm×200mmの短冊状に切り出して試験片とし、10℃20%、45℃80%の環境試験機にそれぞれ放置した状態で10分保持し、その時の試験片の反り状態を観察し、下記基準で評価した。
○:水平に対して反りによる試験片フィルム端部の浮きが10mm未満
△:水平に対して反りによる試験片フィルム端部の浮きが10mm以上20mm未満
×:水平に対して反りによる試験片フィルム端部の浮きが20mm以上
【0086】
<剥離強度>
防食テープを予めイソシアネート系プライマーを塗布したSUS430板に貼り合わせ、23℃50%で24時間放置後(初期)のサンプルと、45℃75%で20時間状態調整後、23℃50%で48時間放置後(湿度硬化後)のサンプルについて、それぞれ180℃剥離強度を測定し、湿度硬化性を評価した。
具体的には、それぞれのサンプルから15mm幅の短冊状に切り出した試験片を用い、SUS板と防食テープとの接着側との界面の180°ピール強度をオリエンテック社製引張試験機「STA1225」を用いて50mm/minの引張り速度の条件で1cm間剥離させながら測定し、この剥離時の最大荷重を剥離強度とした。
【0087】
防食テープとしての剥離強度は、初期剥離強度と湿度硬化後の剥離強度の測定値から、以下の基準で判断した。
〇:湿度硬化後剥離強度を初期剥離強度で除した値が1.2倍を超える
×:上記を満たさない
【0088】
<総合評価>
総合評価は、以下の基準で判断した。
○:突き刺し強度、反り、剥離強度のすべての評価が「○」である。
△:突き刺し強度、反り、剥離強度のうち、いずれか1つに「△」があるが、実用可能なレベルである。
×:突き刺し強度、反り、剥離強度のうち、いずれかに「×」がある。
【0089】
[樹脂の物性]
実施例および比較例において、高弾性樹脂層、低弾性樹脂層に用いた樹脂の特性は以下の表-1の通りである。
【0090】
【0091】
[各層の構成材料]
実施例および比較例で防食用ラミネートフィルムおよび防食テープの製造に用いた各層の構成材料は以下の通りである。
【0092】
<高弾性樹脂層>
Ny-15:チューブラー方式により製膜した二軸延伸ポリアミド(Ny)フィルム(厚み:15μm、引張弾性率:2300MPa、表面粗さRa:0.04μm、両面コロナ処理品)
Ny-25:チューブラー方式により製膜した二軸延伸ポリアミド(Ny)フィルム(厚み:25μm、引張弾性率:2300MPa、表面粗さRa:0.04μm、両面コロナ処理品)
PET-25:Tダイ方式により製膜した二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み:25μm、引張弾性率:4500MPa、表面粗さRa:0.05μm、両面コロナ処理品)
PBT-15:チューブラー方式により製膜した二軸延伸ポリブチレンテレフフタレート(PBT)フィルム(厚み:15μm、引張弾性率:2400MPa、表面粗さRa:0.03μm、両面コロナ処理品)
【0093】
<金属箔>
AL-40:厚み40μmのJIS A8079H-O材(鉄を1.0重量%含む軟質アルミニウム箔)の両面にベーマイト処理を施したもの
ベーマイト処理は、脱イオン水にトリエタノールアミンを0.5重量%の濃度で添加した95℃のベーマイト処理水に、上記のアルミニウム箔を1分間浸漬させることにより行い、厚さ0.25μmのベーマイトの針状結晶皮膜を形成した。その皮膜面の水との接触角は15°であった。
AL-35:厚み35μmのJIS A8021H-O材(鉄を1.5重量%含む軟質アルミニウム箔)の両面にベーマイト処理を施したもの
ベーマイト処理は、脱イオン水にトリエタノールアミンを0.5重量%の濃度で添加した95℃のベーマイト処理水に、上記のアルミニウム箔を40秒浸漬させることにより行い、厚さ0.2μmのベーマイトの針状結晶皮膜を形成した。その皮膜面の水との接触角は15°であった。
AL-25:厚み25μmのJIS 1N30H-O材(鉄を0.4重量%含む軟質アルミニウム箔)の未処理品。その未処理面の水との接触角は90°であった。
AL-15:厚み15μmのJIS 8021H-O材(鉄を1.3重量%含む軟質アルミニウム箔)の未処理品。その未処理面の水との接触角は90°であった。
AL-9:厚み9μmのJIS 8021H-O材(鉄を1.3重量%含む軟質アルミニウム箔)の未処理品。その未処理面の水との接触角は90°であった。
【0094】
<低弾性樹脂層>
LLPE-30:LLPE95重量%、LDPE5重量%の配合でドライブレンドした材料をインフレーション成形により製膜したフィルム(厚み:30μm、引張弾性率:450MPa、両面プラズマ処理品、プラズマ処理面の水との接触角:80゜)
PEE-25:ポリエステルエラストマー(PEE)をTダイで押出し二軸延伸したフィルム(厚み:25μm、引張弾性率:1300MPa、表面粗さRa:0.05μm、両面コロナ処理品)
【0095】
<接着層付き低弾性樹脂層>
積層LLPE-50:LLPE95重量%、LDPE5重量%の配合でドライブレンドした材料と酸変性LLPEとを共押出インフレーション成形により製膜した2層フィルム(総厚み:50μm、酸変性LLPE層(接着層)厚み:20μm、LLPE層厚み:30μm、LLPE層の引張弾性率:450MPa、LLPE層側プラズマ処理品、プラズマ処理面の水との接触角:80゜、表面粗さRa:0.3μm)
積層LLPE-30:LLPE95重量%、LDPE5重量%の配合でドライブレンドした材料と酸変性LLPEとを共押出インフレーション成形により製膜した2層フィルム(総厚み:30μm、酸変性LLPE層(接着層)厚み:10μm、LLPE層厚み:20μm、LLPE層の引張弾性率:450MPa、LLPE層側プラズマ処理品、プラズマ処理面の水との接触角:80゜、表面粗さRa:0.3μm)
【0096】
<接着層>
接着剤(4):芳香族ポリエステルとポリイソシアネートとの2液混合系ドライラミ用接着剤を厚み4μmに塗付して乾燥させた層
【0097】
<両面テープ>
両面テープA:厚み0.25mmのアクリルフォームにアクリル系粘着剤を含浸させた両面テープ(スリーエム製VHBテープ 製品名Y4914、引張弾性率:10MPa以下)
両面テープB:厚み0.4mmのアクリルフォームにアクリル系粘着剤を含浸させた両面テープ(スリーエム製VHBテープ 製品名Y4920、引張弾性率:10MPa以下)
【0098】
[実施例1]
高弾性樹脂層として、Ny-15を用い、ドライラミネーション法により接着剤(4)を介して、AL-25の両面それぞれに貼り合わせた。
次に、低弾性樹脂層としてLLPE-30を用い、それぞれのNy-15面に接着剤(4)を介してドライラミネーション法によりラミネートし、9層の多層フィルム(総厚み:131μm)である防食用ラミネートフィルムを得た。
この防食用ラミネートフィルムの突き出し強度と反りを評価した。
これに両面テープAを貼って防食テープとし、湿度硬化性を評価した。
これらの結果を表-2に示す。
【0099】
[実施例2]
高弾性樹脂層として、Ny-15を用い、ドライラミネーション法により接着剤(4)を介して、AL-9の両面それぞれに貼り合わせた。
次に、低弾性樹脂層としてLLPE-30を用い、それぞれのNy-15面に接着剤(4)を介してドライラミネーション法によりラミネートし、9層の多層フィルム(総厚み:115μm)である防食用ラミネートフィルムを得た。
この防食用ラミネートフィルムの突き出し強度と反りを評価した。
これに両面テープAを貼って防食テープとし、湿度硬化性を評価した。
これらの結果を表-2に示す。
【0100】
[実施例3]
高弾性樹脂層として、Ny-15を用い、ドライラミネーション法により接着剤(4)を介して、AL-25の両面それぞれに貼り合わせて、5層の多層フィルム(総厚み:63μm)である防食用ラミネートフィルムを得た。
この防食用ラミネートフィルムの突き出し強度と反りを評価した。
これに両面テープBを貼って防食テープとし、湿度硬化性を評価した。
これらの結果を表-2に示す。
【0101】
[実施例4]
高弾性樹脂層として、Ny-15を用い、ドライラミネーション法により接着剤(4)を介して、AL-9の両面それぞれに貼り合わせて5層の多層フィルム(総厚み:47μm)である防食用ラミネートフィルムを得た。
この防食用ラミネートフィルムの突き出し強度と反りを評価した。
これに両面テープBを貼って防食テープとし、湿度硬化性を評価した。
これらの結果を表-2に示す。
【0102】
[実施例5]
高弾性樹脂層として、Ny-25を用い、ドライラミネーション法により接着剤(4)を介してAL-25の片面にNy-25を貼り合わせた。
AL-25の反対面(Ny-25を貼り合わせていない面)に、積層LLPE-30の酸変性LLPE層側を熱ラミネーション法によりラミネートし、5層の多層フィルム(総厚み:84μm)を防食用ラミネートフィルムとして得た。
この防食用ラミネートフィルムの突き出し強度と反りを評価した。
これに両面テープBを積層LLPE-30側に貼って防食テープとし、湿度硬化性を評価した。
これらの結果を表-2に示す。
【0103】
[実施例6]
高弾性樹脂層として、Ny-25を用い、ドライラミネーション法により接着剤(4)を介して、AL-35の片面にNy-25を貼り合わせた。
AL-35の反対面(Ny-25を貼り合わせていない面)に、積層LLPE-50の酸変性LLPE層側を熱ラミネーション法によりラミネートし、5層の多層フィルム(総厚み:114μm)を防食用ラミネートフィルムとして得た。
この防食用ラミネートフィルムの突き出し強度と反りを評価した。
これに両面テープAを積層LLPE-50側に貼って防食テープとし、湿度硬化性を評価した。
これらの結果を表-2に示す。
【0104】
[実施例7]
高弾性樹脂層として、Ny-25を用い、ドライラミネーション法により接着剤(4)を介して、AL-40の片面にNy-25を貼り合わせた。
AL-40の反対面(Ny-25を貼り合わせていない面)に、積層LLPE-50の酸変性LLPE層側を熱ラミネーション法によりラミネートし、5層の多層フィルム(総厚み:119μm)を防食用ラミネートフィルムとして得た。
この防食用ラミネートフィルムの突き出し強度と反りを評価した。
これに両面テープAを積層LLPE-50側に貼って防食テープとし、湿度硬化性を評価した。
これらの結果を表-2に示す。
【0105】
[実施例8]
高弾性樹脂層として、PET-25を用い、ドライラミネーション法により接着剤(4)を介して、AL-15の両面それぞれに貼り合わせた。
次に、低弾性樹脂層としてLLPE-30を用い、それぞれのPET-25面に接着剤(4)を介してドライラミネーション法によりラミネートし、9層の多層フィルム(総厚み:141μm)である防食用ラミネートフィルムを得た。
この防食用ラミネートフィルムの突き出し強度と反りを評価した。
これに両面テープAを貼って防食テープとし、湿度硬化性を評価した。
これらの結果を表-2に示す。
【0106】
[実施例9]
高弾性樹脂層として、PBT-15を用い、ドライラミネーション法により接着剤(4)を介して、AL-15の両面それぞれに貼り合わせた。
次に、低弾性樹脂層としてLLPE-30を用い、それぞれのPBT-15面に接着剤(4)を介してドライラミネーション法によりラミネートし、9層の多層フィルム(総厚み:121μm)である防食用ラミネートフィルムを得た。
この防食用ラミネートフィルムの突き出し強度と反りを評価した。
これに両面テープAを貼って防食テープとし、湿度硬化性を評価した。
これらの結果を表-2に示す。
【0107】
[実施例10]
高弾性樹脂層として、PBT-15を用い、ドライラミネーション法により接着剤(4)を介してAL-15の片面にPBT-15を貼り合わせた。
AL-15の反対面(PBT-15を貼り合わせていない面)に、LLPE-30をドライラミネーション法により接着剤(4)を介してラミネートし、5層の多層フィルム(総厚み:68μm)を防食用ラミネートフィルムとして得た。
この防食用ラミネートフィルムの突き出し強度と反りを評価した。
これに両面テープBをLLPE-30側に貼って防食テープとし、湿度硬化性を評価した。
これらの結果を表-2に示す。
【0108】
[比較例1]
高弾性樹脂層を使用せず、低弾性樹脂層として積層LLPE-30を用い、AL-15の両面に酸変性LLPE層側を熱ラミネーション法により張り合わせ、5層の多層フィルム(総厚み:75μm)を防食用ラミネートフィルムとして得た。
この防食用ラミネートフィルムの突き出し強度と反りを評価した。
これに両面テープBを貼って防食テープとし、湿度硬化性を評価した。
これらの結果を表-2に示す。
【0109】
[比較例2]
高弾性樹脂層を使用せず、低弾性樹脂層として積層LLPE-50を用い、AL-25の両面に酸変性LLPE層側を熱ラミネーション法により貼り合わせ、5層の多層フィルム(総厚み:125μm)を防食用ラミネートフィルムとして得た。
この防食用ラミネートフィルムの突き出し強度と反りを評価した。
これに両面テープAを貼って防食テープとし、湿度硬化性を評価した。
これらの結果を表-2に示す。
【0110】
[比較例3]
低弾性樹脂層として、PEE-25を用い、接着剤(4)を介して、AL-15の片面に貼り合わせた。
次に、低弾性樹脂層として積層LLPE-30を用い、AL-15の反対面(PEE-25を貼り合わせていない面)に酸変性LLPE層側を熱ラミネーション法により貼り合わせ、5層の多層フィルム(総厚み:74μm)を防食用ラミネートフィルムとして得た。
この防食用ラミネートフィルムの突き出し強度と反りを評価した。
これに両面テープBを積層LLPE-30側に貼って防食テープとし、湿度硬化性を評価した。
これらの結果を表-2に示す。
【0111】
【0112】
[考察]
表-2より、次のことが分かる。
実施例1~4では、本発明で規定される高弾性樹脂層としてポリアミドフィルムを金属箔の両面に貼り付けることにより、薄膜の金属箔であっても、湿度変化による樹脂の膨潤性が両面で同じため、反ることがないフィルムができるとともに、突き刺し強度も非常に高い防食用ラミネートフィルムとすることができ、あらゆる温度湿度の作業環境下で、フィルムが反ることなく施工性に優れ、かつ高い耐久性、更に防水性を備えた防食用ラミネートフィルムが得られた。実施例1~4は、特に突き刺し強度が高く、低温低湿から高温高湿環境下でフィルムは反ることなく作業性が高いフィルムであることが分かる。
【0113】
実施例5,6,7では高弾性樹脂層としてポリアミドフィルムを金属箔の片面のみに貼り付けているが、金属箔を厚くすることにより、突き刺し強度が高く、低温低湿から高温高湿環境下で反りのないフィルムとなった。ただし、金属箔を厚くすることにより、剛性が上がり、作業性、施工性には少々難があるものの防食用ラミネートフィルムとしては十分に実用可能であった。
【0114】
実施例8,9,10では、高弾性樹脂層としてポリアミドフィルム以外の、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリブチレンテレフタレートフィルムを金属箔の片面または両面に貼り付けているが、低温低湿から高温高湿環境下で反りのないフィルムとなった。突き刺し強度は、ポリアミドフィルムを用いた実施例1~4より劣る結果となったが、防食用ラミネートフィルムとしては十分に実用可能なレベルとなった。
【0115】
これに対して、比較例1~2は、高弾性樹脂層を用いていないため、突き刺し強度が低く、長期耐久性に劣る。
比較例3は、低弾性樹脂層として二軸延伸ポリエステルエラストマーフィルムを使用したが、引張弾性率が低いため、突き刺し強度が低く、防食用ラミネートフィルムとしての耐久性が得られない。