(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163167
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】発光素子、表示装置、電子機器および照明装置
(51)【国際特許分類】
H10K 50/12 20230101AFI20241114BHJP
【FI】
H10K50/12
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024149852
(22)【出願日】2024-08-30
(62)【分割の表示】P 2023075448の分割
【原出願日】2016-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2015257631
(32)【優先日】2015-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 剛吉
(72)【発明者】
【氏名】沼田 智子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】尾坂 晴恵
(72)【発明者】
【氏名】渡部 智美
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 哲史
(57)【要約】
【課題】発光効率が高く、信頼性の高い発光素子を提供する。
【解決手段】第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、ゲスト材料とを含む発光層を有
する発光素子である。第1の有機化合物は、含窒素六員複素芳香族骨格を有する。発光層
において、NH基を有する含窒素五員複素環骨格、2級アミン骨格、または1級アミン骨
格、を含む有機化合物の含有量が、第1の有機化合物に対する重量比で0.03以下、ま
たは、第2の有機化合物に対する重量比で0.01以下である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光層を有する発光素子であって、
前記発光層は、第1の有機化合物と、ゲスト材料と、を有し、
前記第1の有機化合物は、含窒素六員複素芳香族骨格を有し、
前記発光層において、NH基を有する含窒素五員複素環骨格、NH基を有する2級アミン骨格、またはNH基を有する1級アミン骨格、を含む有機化合物の含有量が、前記第1の有機化合物に対する重量比で0.03以下である、発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、発光素子、または該発光素子を有する表示装置、電子機器、及び照
明装置に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明
の一態様の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関する。または、本発明の一態様
は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マ
ター)に関する。そのため、より具体的に本明細書で開示する本発明の一態様の技術分野
としては、半導体装置、表示装置、液晶表示装置、発光装置、照明装置、蓄電装置、記憶
装置、それらの駆動方法、または、それらの製造方法、を一例として挙げることができる
。
【背景技術】
【0003】
近年、エレクトロルミネッセンス(Electroluminescence:EL)
を利用した発光素子の研究開発が盛んに行われている。これら発光素子の基本的な構成は
、一対の電極間に発光性の物質を含む層(EL層)を挟んだ構成である。この素子の電極
間に電圧を印加することにより、発光性の物質からの発光が得られる。
【0004】
上述の発光素子は自発光型であるため、これを用いた表示装置は、視認性に優れ、バッ
クライトが不要であり、消費電力が少ない等の利点を有する。さらに、薄型軽量に作製で
き、応答速度が高いなどの利点も有する。
【0005】
発光性の物質に有機化合物を用い、一対の電極間に当該発光性の物質を含むEL層を設
けた発光素子(例えば、有機EL素子)の場合、一対の電極間に電圧を印加することによ
り、陰極から電子が、陽極から正孔(ホール)がそれぞれEL層に注入され、電流が流れ
る。そして、注入された電子及び正孔が再結合することによって発光性の有機化合物が励
起状態となり、励起された発光性の有機化合物から発光を得ることができる。
【0006】
発光性の有機化合物が呈する発光は、その有機化合物に特有の発光である。そのため、
種々の有機化合物を発光性の物質として用いることにより、様々な発光を呈する発光素子
を得ることができる。
【0007】
このような発光素子の重要な特性の一つに、効率および信頼性がある。そのため、発光
素子の効率および信頼性を低下させる原因となる不純物を低減することが重要である。特
許文献1では、有機化合物を有するEL層中のハロゲン化合物に注目し、その濃度を一定
以下にすることで、信頼性が高い発光素子を得ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発光素子の効率および信頼性といった特性を低下させる原因となる不純物がある一方、
発光素子の特性に影響を与えない不純物もある。そのため、発光素子の特性を低下させる
不純物の種類を特定することは重要である。しかしながら、発光素子が含有する不純物の
含有量は少ないため、不純物を特定することは困難な場合が多い。また、不純物が、発光
素子の特性を低下させるメカニズムは、ほとんど解明されていない。
【0010】
したがって、本発明の一態様では、信頼性が高い発光素子を提供することを課題の一と
する。または、本発明の一態様では、発光効率が高い発光素子を提供することを課題の一
とする。または、本発明の一態様では、消費電力が低減された発光素子を提供することを
課題の一とする。または、本発明の一態様では、新規な発光素子を提供することを課題の
一とする。または、本発明の一態様では、新規な発光装置を提供することを課題の一とす
る。または、本発明の一態様では、新規な表示装置を提供することを課題の一とする。
【0011】
なお、上記の課題の記載は、他の課題の存在を妨げない。なお、本発明の一態様は、必
ずしも、これらの課題の全てを解決する必要はない。上記以外の課題は、明細書等の記載
から自ずと明らかであり、明細書等の記載から上記以外の課題を抽出することが可能であ
る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、発光層を有する発光素子であって、発光層は、第1の有機化合物と
、ゲスト材料と、を有し、第1の有機化合物は、含窒素六員複素芳香族骨格を有し、発光
層において、NH基を有する含窒素五員複素環骨格、NH基を有する2級アミン骨格、ま
たはNH基を有する1級アミン骨格、を含む有機化合物の含有量が、第1の有機化合物に
対する重量比で0.03以下である発光素子である。
【0013】
また、本発明の他の一態様は、発光層を有する発光素子であって、発光層は、第1の有
機化合物と、ゲスト材料と、を有し、第1の有機化合物は、ピリジン骨格、ジアジン骨格
、またはトリアジン骨格の少なくとも一を有し、発光層において、NH基を有するピロー
ル骨格、NH基を有するイミダゾール骨格、NH基を有するトリアゾール骨格、NH基を
有するテトラゾール骨格、またはNH基を有する芳香族アミン骨格、を含む有機化合物の
含有量が、第1の有機化合物に対する重量比で0.03以下である発光素子である。
【0014】
また、本発明の他の一態様は、発光層を有する発光素子であって、発光層は、第1の有
機化合物と、第2の有機化合物と、ゲスト材料と、を有し、第1の有機化合物は、含窒素
六員複素芳香族骨格を有し、第2の有機化合物は、含窒素五員複素環骨格または3級アミ
ン骨格の少なくとも一を有し、発光層において、NH基を有する含窒素五員複素環骨格、
NH基を有する2級アミン骨格、またはNH基を有する1級アミン骨格、を含む有機化合
物の含有量が、第2の有機化合物に対する重量比で0.01以下である発光素子である。
【0015】
また、本発明の他の一態様は、発光層を有する発光素子であって、発光層は、第1の有
機化合物と、第2の有機化合物と、ゲスト材料と、を有し、第1の有機化合物は、ピリジ
ン骨格、ジアジン骨格、またはトリアジン骨格の少なくとも一を有し、第2の有機化合物
は、ピロール骨格、イミダゾール骨格、トリアゾール骨格、テトラゾール骨格、または芳
香族アミン骨格の少なくとも一を有し、発光層において、NH基を有するピロール骨格、
NH基を有するイミダゾール骨格、NH基を有するトリアゾール骨格、NH基を有するテ
トラゾール骨格、またはNH基を有する芳香族アミン骨格、を含む有機化合物の含有量が
、第2の有機化合物に対する重量比で0.01以下である発光素子である。
【0016】
また、上記各構成において、当該NH基を有する有機化合物の励起状態からNH結合が
解離するために必要な活性化エネルギーが0.3eV以下であると本発明の一態様の効果
が大きい。また、NH基における、NH結合が解離する際の安定化エネルギーが、0eV
未満であると本発明の一態様の効果が大きい。
【0017】
また、上記各構成において、発光層における、窒素原子が不対電子を有する含窒素五員
複素環骨格、または窒素原子が不対電子を有する芳香族アミン骨格、を含む有機化合物の
含有量が、第1の有機化合物に対する重量比で0.03以下であると好ましい。また、発
光層における、第1の有機化合物に、さらに水素原子が結合した有機化合物の含有量が、
第1の有機化合物に対する重量比で0.03以下であると好ましい。
【0018】
また、上記各構成において、発光層における、窒素原子が不対電子を有する含窒素五員
複素環骨格、または窒素原子が不対電子を有する芳香族アミン骨格、を含む有機化合物の
含有量が、第2の有機化合物に対する重量比で0.01以下であると好ましい。また、発
光層における、第1の有機化合物に、さらに水素原子が結合した有機化合物の含有量が、
第2の有機化合物に対する重量比で0.01以下であると好ましい。
【0019】
また、上記各構成において、ゲスト材料は、三重項励起エネルギーを発光に変換するこ
とができる機能を有すると好ましい。また、ゲスト材料は、イリジウムを有すると好まし
い。
【0020】
また、本発明の他の一態様は、上記各構成の発光素子と、カラーフィルタまたはトラン
ジスタの少なくとも一と、を有する表示装置である。また、本発明の他の一態様は、当該
表示装置と、筐体またはタッチセンサの少なくとも一と、を有する電子機器である。また
、本発明の他の一態様は、上記各構成の発光素子と、筐体またはタッチセンサの少なくと
も一と、を有する照明装置である。また、本発明の一態様は、発光素子を有する発光装置
だけでなく、発光装置を有する電子機器も範疇に含める。従って、本明細書中における発
光装置とは、画像表示デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、発光素子
にコネクター、例えばFPC(Flexible Printed Circuit)、
TCP(Tape Carrier Package)が取り付けられた表示モジュール
、TCPの先にプリント配線板が設けられた表示モジュール、または発光素子にCOG(
Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装された表示モジュ
ールも本発明の一態様である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様により、信頼性が高い発光素子を提供することができる。または、発光
効率が高い発光素子を提供することができる。または、本発明の一態様により、消費電力
が低減された発光素子を提供することができる。または、本発明の一態様により、新規な
発光素子を提供することができる。または、本発明の一態様により、新規な発光装置を提
供することができる。または、本発明の一態様により、新規な表示装置を提供することが
できる。
【0022】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げない。なお、本発明の一態様は、
必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書
、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかであり、明細書、図面、請求項などの記載
から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図5】本発明の一態様に係るLUMO準位と、エネルギーとの相関を説明する図。
【
図6】本発明の一態様の発光素子の断面模式図、及び発光層に係るエネルギー準位の相関を説明する図。
【
図7】本発明の一態様の発光素子の断面模式図、及び発光層に係るエネルギー準位の相関を説明する図。
【
図8】本発明の一態様の発光素子の断面模式図、及び発光層に係るエネルギー準位の相関を説明する図。
【
図11】本発明の一態様の発光素子の作製方法を説明する断面模式図。
【
図12】本発明の一態様の発光素子の作製方法を説明する断面模式図。
【
図13】本発明の一態様の表示装置を説明する上面図及び断面模式図。
【
図14】本発明の一態様の表示装置を説明する断面模式図。
【
図15】本発明の一態様の表示装置を説明する断面模式図。
【
図16】本発明の一態様の表示装置を説明する断面模式図。
【
図17】本発明の一態様の表示装置を説明する断面模式図。
【
図18】本発明の一態様の表示装置を説明する断面模式図。
【
図19】本発明の一態様の表示装置を説明する断面模式図。
【
図20】本発明の一態様の表示装置を説明する断面模式図。
【
図21】本発明の一態様の表示装置を説明する断面模式図。
【
図24】本発明の一態様の表示装置を説明するブロック図及び回路図。
【
図25】本発明の一態様の表示装置の画素回路を説明する回路図。
【
図26】本発明の一態様の表示装置の画素回路を説明する回路図。
【
図27】本発明の一態様のタッチパネルの一例を示す斜視図。
【
図28】本発明の一態様の表示装置、及びタッチセンサの一例を示す断面図。
【
図29】本発明の一態様のタッチパネルの一例を示す断面図。
【
図30】本発明の一態様に係るタッチセンサのブロック図及びタイミングチャート図。
【
図31】本発明の一態様に係るタッチセンサの回路図。
【
図32】本発明の一態様の表示モジュールを説明する斜視図。
【
図33】本発明の一態様の電子機器について説明する図。
【
図34】本発明の一態様の電子機器について説明する図。
【
図35】本発明の一態様の電子機器について説明する図。
【
図36】本発明の一態様の電子機器について説明する図。
【
図37】本発明の一態様の表示装置を説明する斜視図。
【
図38】本発明の一態様の発光装置を説明する斜視図及び断面図。
【
図39】本発明の一態様の発光装置を説明する断面図。
【
図40】本発明の一態様の照明装置及び電子機器を説明する図。
【
図41】本発明の一態様の照明装置について説明する図。
【
図42】実施例に係る、発光素子を説明する断面模式図。
【
図43】実施例に係る、発光素子の輝度-電流密度特性を説明する図。
【
図44】実施例に係る、発光素子の輝度-電圧特性を説明する図。
【
図45】実施例に係る、発光素子の電流効率-輝度特性を説明する図。
【
図46】実施例に係る、発光素子の外部量子効率-輝度特性を説明する図。
【
図47】実施例に係る、発光素子の電力効率-輝度特性を説明する図。
【
図48】実施例に係る、発光素子の電界発光スペクトルを説明する図。
【
図49】実施例に係る、化合物の吸収スペクトル、及び発光スペクトルを説明する図。
【
図50】実施例に係る、化合物の発光スペクトルを説明する図。
【
図51】実施例に係る、発光素子の発光スペクトルを説明する図。
【
図52】実施例に係る、発光素子の外部量子効率と発光スペクトル強度の相関を説明する図。
【
図53】実施例に係る、発光素子の信頼性試験結果を説明する図。
【
図54】実施例に係る、発光素子の不純物の重量比と信頼性の相関を説明する図。
【
図55】実施例に係る、発光素子の輝度-電流密度特性を説明する図。
【
図56】実施例に係る、発光素子の輝度-電圧特性を説明する図。
【
図57】実施例に係る、発光素子の電流効率-輝度特性を説明する図。
【
図58】実施例に係る、発光素子の外部量子効率-輝度特性を説明する図。
【
図59】実施例に係る、発光素子の電力効率-輝度特性を説明する図。
【
図60】実施例に係る、発光素子の電界発光スペクトルを説明する図。
【
図61】実施例に係る、薄膜の発光スペクトルを説明する図。
【
図62】実施例に係る、薄膜の発光スペクトルを説明する図。
【
図63】実施例に係る、薄膜の発光スペクトルを説明する図。
【
図64】実施例に係る、薄膜の発光量子収率の測定結果を説明する図。
【
図65】実施例に係る、薄膜の発光量子収率の測定結果を説明する図。
【
図66】実施例に係る、薄膜の発光量子収率の測定結果を説明する図。
【
図67】実施例に係る、薄膜の過渡蛍光特性を説明する図。
【
図68】実施例に係る、薄膜の過渡蛍光特性を説明する図。
【
図69】実施例に係る、薄膜の過渡蛍光特性を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下
の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細
を様々に変更し得ることが可能である。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内
容に限定して解釈されない。
【0025】
なお、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、
実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、
必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0026】
また、本明細書等において、第1、第2等として付される序数詞は便宜上用いており、
工程順又は積層順を示さない場合がある。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」又
は「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。また、本明細書等に記載され
ている序数詞と、本発明の一態様を特定するために用いられる序数詞は一致しない場合が
ある。
【0027】
また、本明細書等において、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを
指す符号は異なる図面間でも共通して用いる場合がある。
【0028】
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、互いに入れ
替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変
更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」
という用語に変更することが可能な場合がある。
【0029】
なお、本明細書等において、一重項励起状態(S*)は、励起エネルギーを有する一重
項状態のことである。また、S1準位は、一重項励起エネルギー準位の最も低い準位であ
り、最も低い一重項励起状態(S1状態)の励起エネルギー準位のことである。また、三
重項励起状態(T*)は、励起エネルギーを有する三重項状態のことである。また、T1
準位は、三重項励起エネルギー準位の最も低い準位であり、最も低い三重項励起状態(T
1状態)の励起エネルギー準位のことである。なお、本明細書等において、単に一重項励
起状態および一重項励起エネルギー準位と表記した場合であっても、S1状態およびS1
準位を表す場合がある。また、三重項励起状態および三重項励起エネルギー準位と表記し
た場合であっても、T1状態およびT1準位を表す場合がある。
【0030】
また、本明細書等において、蛍光性化合物とは、一重項励起状態から基底状態へ緩和す
る際に可視光領域に発光を与える物質である。一方、燐光性化合物とは、三重項励起状態
から基底状態へ緩和する際に、室温において可視光領域に発光を与える物質である。換言
すると燐光性化合物とは、三重項励起エネルギーを可視光へ変換可能な物質の一つである
。
【0031】
また、燐光発光エネルギーまたは三重項励起エネルギーは、燐光発光の最も短波長側の
発光ピーク(ショルダーを含む)または立ち上がりの波長から導出することができる。な
お、該燐光発光は、低温(例えば、10K)環境下において、時間分解フォトルミネッセ
ンス法を行うことで観測することができる。また、熱活性化遅延蛍光の発光エネルギーは
、熱活性化遅延蛍光の最も短波長側の発光ピーク(ショルダーを含む)または立ち上がり
の波長から導出することができる。
【0032】
なお、本明細書等において、室温とは、0℃以上40℃以下のいずれかの温度をいう。
【0033】
また、本明細書等において、青色の波長領域とは、400nm以上500nm未満の波
長領域であり、青色の発光とは該領域に少なくとも一つの発光スペクトルピークを有する
発光である。また、緑色の波長領域とは、500nm以上580nm未満の波長領域であ
り、緑色の発光とは該領域に少なくとも一つの発光スペクトルピークを有する発光である
。また、赤色の波長領域とは、580nm以上680nm以下の波長領域であり、赤色の
発光とは該領域に少なくとも一つの発光スペクトルピークを有する発光である。
【0034】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光素子について、
図1乃至
図5を用いて以下説
明する。
【0035】
<発光素子の構成例>
まず、本発明の一態様の発光素子の構成について、
図1(A)及び(B)を用いて、以
下説明する。
【0036】
図1(A)は、本発明の一態様の発光素子150の断面模式図である。
【0037】
発光素子150は、一対の電極(電極101及び電極102)を有し、該一対の電極間
に設けられたEL層100を有する。EL層100は、少なくとも発光層130を有する
。
【0038】
また、
図1(A)に示すEL層100は、発光層130の他に、正孔注入層111、正
孔輸送層112、電子輸送層118、及び電子注入層119等の機能層を有する。
【0039】
なお、本実施の形態においては、一対の電極のうち、電極101を陽極として、電極1
02を陰極として説明するが、発光素子150の構成としては、その限りではない。つま
り、電極101を陰極とし、電極102を陽極とし、当該電極間の各層の積層を、逆の順
番にしてもよい。すなわち、陽極側から、正孔注入層111と、正孔輸送層112と、発
光層130と、電子輸送層118と、電子注入層119と、が積層する順番とすればよい
。
【0040】
なお、EL層100の構成は、
図1(A)に示す構成に限定されず、正孔注入層111
、正孔輸送層112、電子輸送層118、及び電子注入層119の中から選ばれた少なく
とも一つを有する構成とすればよい。あるいは、EL層100は、正孔または電子の注入
障壁を低減する、正孔または電子の輸送性を向上する、正孔または電子の輸送性を阻害す
る、または電極による消光現象を抑制する、ことができる等の機能を有する機能層を有す
る構成としてもよい。なお、機能層はそれぞれ単層であっても、複数の層が積層された構
成であってもよい。
【0041】
図1(B)は、
図1(A)に示す発光層130の一例を示す断面模式図である。
図1(
B)に示す発光層130は、ホスト材料131と、ゲスト材料132と、を有する。
【0042】
ホスト材料131としては、少なくとも有機化合物131_1を有すればよい。有機化
合物131_1としては、電子を輸送する機能(電子輸送性を有する)化合物が好ましく
、含窒素六員複素芳香族骨格を有する化合物であると好ましい。含窒素六員複素芳香族骨
格は、電子輸送性が高く安定であり好ましい。
【0043】
また、ホスト材料131は、さらに、有機化合物131_2を有すると好ましい。有機
化合物131_2としては、正孔を輸送する機能(正孔輸送性を有する)化合物が好まし
く、含窒素五員複素環骨格または3級アミン骨格を有する化合物であると好ましい。含窒
素五員複素環骨格または3級アミン骨格は、正孔輸送性が高く安定であり好ましい。
【0044】
また、有機化合物131_1と有機化合物131_2との組み合わせが、電子輸送性を
有する化合物と正孔輸送性を有する化合物との組み合わせである場合、その混合比によっ
てキャリアバランスを容易に制御することが可能となる。具体的には、電子輸送性を有す
る化合物:正孔輸送性を有する化合物=1:9から9:1(重量比)の範囲が好ましい。
また、該構成を有することで、容易にキャリアバランスを制御することができることから
、キャリア再結合領域の制御も簡便に行うことができる。
【0045】
また、ゲスト材料132としては、発光性の有機化合物を用いればよく、該発光性の有
機化合物としては、蛍光を発することができる物質(以下、蛍光性化合物)または燐光を
発することができる物質(以下、燐光性化合物ともいう)であると好適である。以下の説
明においては、ゲスト材料132として、蛍光性化合物または燐光性化合物を用いる構成
について説明する。なお、ゲスト材料132を蛍光性化合物または燐光性化合物として読
み替えてもよい。
【0046】
本発明の一態様の発光素子150においては、一対の電極(電極101及び電極102
)間に電圧を印加することにより、陰極から電子が、陽極から正孔(ホール)が、それぞ
れEL層100に注入され、電流が流れる。そして、注入された電子及び正孔が再結合す
ることによって、励起子が形成される。なお、励起子とは、キャリア(電子及び正孔)対
のことである。励起子は励起エネルギーを有するため、励起子が形成された材料は、励起
状態となる。
【0047】
ホスト材料131においてキャリアが再結合した場合、励起子の生成によってホスト材
料131の励起状態(一重項励起状態または三重項励起状態)が形成される。ゲスト材料
132が蛍光性化合物の場合、ホスト材料131のS1準位からゲスト材料132のS1
準位へ、励起エネルギーがエネルギー移動し、ゲスト材料132の一重項励起状態が形成
される。また、ゲスト材料132が燐光性化合物の場合、ホスト材料131のS1準位ま
たはT1準位からゲスト材料132のT1準位へ、励起エネルギーがエネルギー移動し、
ゲスト材料132の三重項励起状態が形成される。そして、いずれの場合においても励起
状態のゲスト材料132が基底状態に失活する際に発光する。
【0048】
発光素子150に求められる特性の一つとして、高い発光効率が挙げられる。また、長
期の保存もしくは長期の駆動に伴う発光効率の低下が少ないこと、すなわち、長寿命であ
ること、別言すると、信頼性が高いこと、が求められている。発光素子が高い発光効率お
よび高い信頼性を有するためには、EL層100に、特に発光層130には不純物の含有
量が少ない有機化合物を用いることが好ましい。
【0049】
不純物の含有量が少ない有機化合物を得るためには、有機化合物の純度を高くすること
が好ましい。例えば、有機化合物を合成する際に用いた溶媒などの不純物及び溶媒などに
含まれる不純物が含まれる有機化合物や有機化合物の合成に用いられる原料中の元素が含
まれる有機化合物を用いて発光素子を作製した場合、発光素子の特性、例えば駆動電圧特
性、発光効率特性、及び信頼性などが悪くなる場合がある。また、例えば、これらの不純
物の中でもハロゲン元素を有する不純物は影響が大きいため、その含有量は少ないことが
好ましい。そのため、発光素子に用いる有機化合物には、昇華精製を施した不純物の少な
い材料が一般的に使用される。昇華精製により、合成時の残存溶媒や、微量の不純物(例
えば、ハロゲン化物)の分離を行うことができる。
【0050】
しかしながら、EL層100に用いる有機化合物と分子構造が近いなどの理由のため、
含有量を低減することが困難な不純物もあり、昇華精製を施した材料であっても当該不純
物が含まれてしまう場合がある。また、発光素子を作製するために使用する有機化合物中
の不純物の含有量を低減させたとしても、発光素子の作製中に不純物が混入し、発光素子
中に不純物が含まれる場合がある。例えば、真空蒸着を行った際に有機化合物の分解によ
り生成する物質が不純物として発光素子中に混入する場合がある。また、例えば、塗布法
、インクジェット法、及び印刷法等の溶媒を用いる作製方法では、溶媒もしくは溶媒中の
不純物が発光素子に混入する場合がある。また、発光素子を駆動する際に、有機化合物が
分解することで生成する物質が、不純物として発光素子中に含まれる場合がある。そのた
め、発光素子が有する全ての不純物を無くすことは困難である。
【0051】
一方、EL層100に含まれていても発光素子の特性に影響を与えない不純物もある。
しかし、このような不純物であっても、他の化合物と相互作用することによって、発光素
子の特性に影響を与える物質が生成する場合があることを本発明者らは見出した。具体的
には、NH基を有する含窒素五員複素環骨格または2級アミン骨格を含む有機化合物と、
含窒素六員複素芳香族骨格を有する有機化合物とが、相互作用することで、発光素子の特
性に影響を与える物質が生成する。したがって、含窒素六員複素芳香族骨格を有する有機
化合物を含む発光素子において、NH基を有する含窒素五員複素環骨格または2級アミン
骨格を有する有機化合物の含有量は、少ないことが好ましい。
【0052】
<量子化学計算を用いた反応メカニズムの解析>
≪PCCHと35DCzPPyとの反応メカニズムの計算≫
ここで、NH基を有する含窒素五員複素環骨格または2級アミン骨格を含む有機化合物
と、含窒素六員複素芳香族骨格を有する有機化合物とが相互作用することで、発光素子の
特性に影響を与える不純物が生成する過程について、以下説明する。
【0053】
上記過程を解析するため、量子化学計算を用いた。計算に用いた化合物の構造及び略称
を以下に示す。
【0054】
【0055】
計算では、3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾー
ル(略称:PCCH)と3,5-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル
]ピリジン(略称:35DCzPPy)とが相互作用することで、PCCHのNH基に由
来する水素原子が35DCzPPyに移動し、上記構造のPCC及び35DCzPPy-
Hが生成する水素原子移動反応を解析した。
【0056】
計算方法に関しては以下の通りである。なお、量子化学計算プログラムとしては、Ga
ussian09を使用した。計算は、ハイパフォーマンスコンピュータ(SGI社製、
ICE X)を用いて行った。
【0057】
三重項最低励起状態における水素原子移動反応についての始状態、遷移状態および終状
態の安定構造は密度汎関数法(DFT)を用いて計算した。さらに、それぞれの最安定構
造において振動解析をおこなった。DFTの全エネルギーは、ポテンシャルエネルギー、
電子間静電エネルギー、電子の運動エネルギーと複雑な電子間の相互作用を全て含む交換
相関エネルギーの和で表される。DFTでは、電子密度で表現された一電子ポテンシャル
の汎関数(関数の関数の意)で交換相関相互作用を近似しているため、計算は高速である
。ここでは、混合汎関数であるB3LYPを用いて、交換と相関エネルギーに係る各パラ
メータの重みを規定した。また、基底関数として、6-311G(d,p)を用いた。
【0058】
三重項最低励起状態における水素原子移動反応の解析で得られた反応経路とエネルギー
ダイアグラムを
図2に示す。
【0059】
図2では、T1状態のPCCH、及び基底状態(S0状態)の35DCzPPyが、無
限遠に解離した状態のエネルギーを基準とした。この水素原子が移動する反応の活性化エ
ネルギーは0.03eVと非常に小さく、室温下で容易に起こり得る。さらに、水素原子
移動後の終状態ではPCCと35DCzPPy-Hとはそれぞれラジカル状態になってお
り、終状態のエネルギーは始状態のエネルギーよりも低く、この反応は発熱反応である。
このことから、発光素子を駆動させた状態での発光層中(励起状態)において、PCCH
と35DCzPPyが水素結合を形成するような分子配置にある場合には、水素原子の移
動反応が速やかに起こる可能性がある。なお、NH基を有する有機化合物の励起状態から
NH結合が解離するために必要な活性化エネルギーが0.3eV以下であると、室温下に
おいて水素が解離しやすい。
【0060】
この時、終状態であるラジカル状態のPCC及びラジカル状態の35DCzPPy-H
は、S0状態のPCCH及びS0状態の35DCzPPyよりも高いエネルギーを有する
。そのため、副反応などが無い場合、生成したラジカル状態のPCC及びラジカル状態の
35DCzPPy-Hは、可逆的に元のS0状態のPCCH及びS0状態の35DCzP
Pyへ熱失活して戻ることができる。
【0061】
この反応を、ゲスト材料を有する発光素子において考える。終状態(ラジカル状態のP
CC及びラジカル状態の35DCzPPy-H)のエネルギー準位が、ゲスト材料の励起
状態の励起エネルギー準位よりも低い場合、PCC及び35DCzPPy-Hからゲスト
材料へエネルギー移動が出来なくなってしまう。また、この場合、終状態(ラジカル状態
のPCC及びラジカル状態の35DCzPPy-H)とゲスト材料の励起状態が同時に生
成すると、励起状態のゲスト材料からラジカル状態のPCC及びラジカル状態の35DC
zPPy-Hへ励起エネルギーの移動が起きてしまう。これにより、ゲスト材料から発光
が得られなくなるため、発光素子の発光効率が低下する。
【0062】
次に、上記水素原子移動反応の反応物(PCCH及び35DCzPPy)と生成物(P
CC及び35DCzPPy-H)のイオン化ポテンシャル(Ip)と電子親和力(Ea)
を計算した。ここで、PCCHと35DCzPPyのイオン化ポテンシャルはラジカルカ
チオン状態と一重項基底状態の全エネルギーの差から算出し、電子親和力は一重項基底状
態とラジカルアニオン状態の全エネルギーの差から算出した。PCCと35DCzPPy
-Hのイオン化ポテンシャルはカチオン状態とラジカル状態の全エネルギーの差から算出
し、電子親和力はラジカル状態とアニオン状態の全エネルギーの差から算出した。なお、
この状態は、発光素子の駆動状態、すなわち分子にキャリアが注入された状態を想定した
計算である。
【0063】
以上のように見積もった、各化合物のイオン化ポテンシャル(IP)と電子親和力(E
a)を表1に示す。
【0064】
【0065】
イオン化ポテンシャルが小さいほど、正孔(ホール)が分子に入りやすく、電子親和力
が大きいほど、電子が分子に入りやすい。すなわち、正孔(ホール)は35DCzPPy
-Hに最も入りやすく、電子はPCCに最も入りやすい。
【0066】
そこで次に、ラジカル状態のPCCが電子を受け取りアニオン状態になり、ラジカル状
態の35DCzPPy-Hがホールを受け取りカチオン状態になったときのT1準位のエ
ネルギーを算出した。各化合物のT1準位のエネルギーを表2に示す。ここで、T1準位
のエネルギーは三重項最低励起状態(T1状態)と一重項基底状態(S0状態)の全エネ
ルギーの差から算出した。
【0067】
【0068】
表2のように、アニオン状態のPCC及びカチオン状態の35DCzPPy-Hにおけ
るT1準位は、いずれも2eV以下と低いエネルギー準位であった。したがって、これら
の少なくとも一方のT1準位よりも高いT1準位を有する燐光性化合物をゲスト材料とし
て有する発光素子においては、ホスト材料131及びゲスト材料132が有する三重項励
起エネルギーが、アニオン状態のPCCまたはカチオン状態の35DCzPPy-Hに移
動し、ホスト材料131及びゲスト材料132が有する励起エネルギーが失活してしまい
やすい。
【0069】
上記の通り、PCCHと35DCzPPyの共存下では、励起状態において、PCCH
のNH基に由来する水素原子が35DCzPPyへ移動する。この反応過程が生じる場合
には、ホスト材料131の励起エネルギーはゲスト材料132へ移動することなく失活し
てしまいやすい。また、水素移動反応により一時的に生成した化合物(PCC及び35D
CzPPy-H)の荷電状態(カチオン状態及びアニオン状態)におけるT1準位はエネ
ルギー的に低い準位にあるため、該T1準位が、ゲスト材料132として用いる燐光性化
合物のT1準位よりも低くなってしまう蓋然性が高く、該生成した化合物は発光素子15
0の消光因子となり得る。また、これら生成したPCC及び35DCzPPy-Hは、繰
り返しの励起、酸化、及び還元にともなう不可逆な反応により、さらに低いエネルギー準
位を有するものへとさらに反応してしまう場合がある。したがって、発光素子150の駆
動により進行する水素移動反応は信頼性の低下を引き起こすことがある。そのため、発光
層130に35DCzPPyが含まれる場合、発光層130中のPCCHの含有量は少な
いことが好ましい。
【0070】
なお、上記計算においては、T1状態のPCCH、及び基底状態(S0状態)の35D
CzPPyを始状態として反応する計算を行ったが、始状態としては、S1状態のPCC
H、及び基底状態(S0状態)の35DCzPPyであってもよい。S1状態はT1状態
よりエネルギーが高い励起状態であるため、S1状態のPCCH及びS0状態の35DC
zPPyとが反応する場合、始状態のエネルギーはより高いエネルギーとなり、PCCH
と35DCzPPyとの反応がより生じやすくなる。そのため、この場合であってもPC
CHと35DCzPPyとが反応することで、ホスト材料131の励起エネルギーはゲス
ト材料132へ移動することなく失活してしまう場合がある。また、水素移動反応により
一時的に生成した化合物の荷電状態(カチオン状態及びアニオン状態)におけるS1準位
は、低いエネルギー準位となるため、該S1準位が、ゲスト材料132として用いる蛍光
性化合物のS1準位よりも低い場合、該生成した化合物は発光素子150の消光因子とな
り得る。この場合も生成したPCC及び35DCzPPy-Hは、繰り返しの励起、酸化
、及び還元にともなう不可逆な反応により、さらに低いエネルギー準位を有するものへと
反応してしまう場合がある。したがって、発光素子150の駆動により進行する水素移動
反応は信頼性の低下を引き起こすことがある。そのため、ゲスト材料132に蛍光性化合
物を用いる場合であっても、発光層130に35DCzPPyが含まれる場合、発光層1
30中のPCCHの含有量は低いことが好ましい。
【0071】
≪PCCHの状態に依る反応性の計算≫
次に、始状態のPCCHが励起状態でない場合において、PCCHのNH基に由来する
水素原子が解離する際の安定化エネルギーについて計算を行った。計算は、各種状態のP
CCH及び35DCzPPyを始状態とし、PCCHのNH基に由来する水素原子が無限
遠に解離し35DCzPPyと結合した場合を終状態として、そのエネルギー差を安定化
エネルギーとして算出した。計算方法は、上記の方法を参酌すればよい。計算結果を表3
に示す。
【0072】
【0073】
表3のように、35DCzPPyが基底状態(S0状態)であり、且つPCCHが基底
状態(S0状態)またはラジカルカチオン状態の場合、始状態と終状態とのエネルギー差
である安定化エネルギーが1eVより大きいため、PCCHのNH基に由来する水素原子
が解離する反応が生じにくい。一方、PCCHが励起状態(T1状態)または35DCz
PPyがラジカルアニオン状態の場合は、始状態と終状態とのエネルギー差である安定化
エネルギーが1eV以下であるため、PCCHのNH基に由来する水素原子が解離する反
応が生じやすく、特に、PCCHが励起状態(T1状態)のときには安定化エネルギーが
0eV未満であるため反応が生じやすいことが分かる。なお、S1状態はT1状態より高
い励起エネルギーを有するため、PCCHがS1状態のときにも反応が生じやすいといえ
る。
【0074】
続いて、PCCH単独で存在する場合に、PCCHのNH基に由来する水素原子が解離
し得るか、同様に計算を行った。計算結果を表4に示す。
【0075】
【0076】
表4のように、PCCHが単独で存在する場合においては、PCCHのNH基に由来す
る水素原子が無限遠に解離した場合を終状態として、PCCHの各始状態と終状態とのエ
ネルギー差を安定化エネルギーとして算出した。この場合、PCCHの始状態がT1状態
である場合を除いて、PCCHのNH基に由来する水素原子が解離する際の安定化エネル
ギーは1eVより大きい。そのため、始状態が励起状態以外の状態(S0状態、ラジカル
アニオン状態、ラジカルカチオン状態)では、PCCHのNH基に由来する水素原子が解
離する反応は生じにくいことが分かる。また、始状態がT1状態の場合は、安定化エネル
ギーは1eV以下であるものの、35DCzPPyと共存するよりも安定化エネルギーが
大きいため、水素原子が解離する反応は生じにくいことが示唆される。
【0077】
すなわち、PCCHのNH基に由来する水素原子が解離する反応は、35DCPPyが
PCCHと共存する場合に、特に生じやすい反応である。
【0078】
≪PCCHと反応し得る化合物についての計算≫
次に、発光層内にPCCHと共存することによって、当該PCCHのNH基における水
素原子が解離する反応が生じ得る有機化合物の分子構造について調べるため、計算を行っ
た。計算に用いた化合物の構造及び略称を以下に記す。
【0079】
【0080】
計算方法は、PCCHと35DCzPPyとの反応メカニズムの計算と同様である。T
1状態のPCCHと、基底状態(S0状態)の2,4,6-トリス[3-(9H-カルバ
ゾール-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:mCzP3Pm)とにおける水素原子
移動反応の解析で得られた反応経路とエネルギーダイアグラムを
図3(A)に、T1状態
のPCCHと、基底状態(S0状態)の4,6-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-
イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mCzP2Pm)とにおける水素原子移動反
応の解析で得られた反応経路とエネルギーダイアグラムを
図3(B)に、T1状態のPC
CHと、基底状態(S0状態)の2,6-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)
フェニル]ピラジン(略称:2,6mCzP2Pr)と、における水素原子移動反応の解
析で得られた反応経路とエネルギーダイアグラムを
図4(A)に、T1状態のPCCHと
、基底状態(S0状態)の2,4-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニ
ル]-1,3,5-トリアミジン(略称:mCzP2Tzn)とにおける水素原子移動反
応の解析で得られた反応経路とエネルギーダイアグラムを
図4(B)に、それぞれ示す。
【0081】
図3(A)では、T1状態のPCCH、及び基底状態(S0状態)のmCzP3Pmが
、無限遠に解離した状態のエネルギーを基準とした。この系における水素原子が移動する
反応の活性化エネルギーは0.01eVと非常に小さく、室温下で容易に起こり得る。さ
らに、水素原子移動後の終状態ではPCCとmCzP3Pm-Hはラジカル状態になって
おり、終状態のエネルギーは始状態のエネルギーよりも低く、この反応は発熱反応である
。このことから、発光素子を駆動させた状態での発光層中(励起状態)において、PCC
HとmCzP3Pmが水素結合を形成するような分子配置にある場合には、水素原子の移
動反応が起こる可能性がある。
【0082】
また、T1状態のPCCHと、基底状態(S0状態)の4,6mCzP2Pm、2,6
mCzP2Pr、及びmCzP2Tznとにおいては、PCCHのNH基に基づく水素原
子が移動する反応に活性化エネルギーによる障壁がなく、PCCHとこれらの有機化合物
が水素結合を形成するような分子配置にある場合には、速やかに水素原子の移動反応が起
こる。そのため、
図3(B)、
図4(A)及び
図4(B)では、T1状態のPCCH、及
び基底状態(S0状態)の4,6mCzP2Pm、2,6mCzP2Pr、及びmCzP
2Tznが相互作用していない状態のエネルギーを基準とした。また、水素原子移動後の
終状態では、PCCと4,6mCzP2Pm-H、2,6mCzP2Pr-H、及びmC
zP2Tzn-Hはラジカル状態になっており、終状態のエネルギーは始状態のエネルギ
ーよりも低く、これらの反応は発熱反応である。このことから、発光素子を駆動させた状
態での発光層中(励起状態)において、PCCHと4,6mCzP2Pm、2,6mCz
P2Pr、及びmCzP2Tznが水素結合を形成するような分子配置にある場合には、
水素原子の移動反応が速やかに起こる可能性がある。
【0083】
次に、PCCHと共存する場合に、PCCHのNH基に由来する水素原子が解離する反
応が生じやすくなる有機化合物の分子構造について調べるため、計算を行った。計算に用
いた有機化合物の構造及び略称を以下に記す。なお、他の化合物の構造及び略称は、上記
を参酌すればよい。
【0084】
【0085】
【0086】
計算は、T1状態のPCCH(分子1)と、基底状態(S0状態)の各種有機化合物(
分子2)を始状態とし、PCCHのNH基に由来する水素原子が解離したPCCと、該水
素原子が無限遠で有機化合物(分子2)に結合し安定となる状態を終状態とし、そのエネ
ルギー差を安定化エネルギーとして算出した。計算結果を表5及び表6に示す。なお、表
6には、分子2のLUMO(Lowest Unoccupied Molecular
Orbital、最低空軌道ともいう)準位を計算した結果も併せて示す。
【0087】
【0088】
【0089】
表5のように、含窒素六員複素芳香族骨格を有さない有機化合物である4,4’,4’
’-トリス(カルバゾール-9-イル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)及び1,
3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)が共存した場合においては、P
CCHのNH基における水素原子が解離する際の安定化エネルギーは、1eVより大きく
、反応が生じにくいことが分かる。
【0090】
一方、表6のように、含窒素六員複素芳香族骨格を有する有機化合物である1,3,5
-トリ[3-(3-ピリジル)フェニル]ベンゼン(略称:TmPyPB)、35DCz
PPy、5,5’-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-3,3’
-ビピリジン(略称:5,5’mCzP2BPy(3))、4,4’-ビス[3-(9H
-カルバゾール-9-イル)フェニル]-2,2’-ビピリジン(略称:4,4’mCz
P2BPy)、4,6mCzP2Pm、及びmCzP3Pmが共存した場合においては、
PCCHのNH基における水素原子が解離する際の安定化エネルギーが0eV未満と発熱
反応であるため、反応が生じやすいことが分かる。
【0091】
次に、該含窒素六員複素芳香族骨格を有する有機化合物のLUMO準位(計算値)と、
PCCHのNH基に由来する水素原子が解離する際の安定化エネルギー(始状態と終状態
とのエネルギー差)と、の相関を
図5に示す。
【0092】
図5に示すように、有機化合物(分子2)のLUMO準位が低くなるほど、PCCHの
NH基に由来する水素原子が解離する際の安定化エネルギーが小さくなり、水素原子がP
CCHから解離しやすくなる結果となった。
【0093】
以上のように、PCCHと共存するとNH基の水素原子が解離する反応が生じやすい有
機化合物は35DCzPPyに限定されず、含窒素六員複素芳香族骨格を有する有機化合
物であればよい。
【0094】
また、NH基から水素原子が解離する解離エネルギーは、NH基以外の分子構造が変化
してもほとんど変化しない。そのため、上記のようにNH基に由来する水素原子が解離す
る反応が生じやすい有機化合物としては、PCCHに限定されない。すなわち、PCCH
のように、NH基を有する含窒素五員複素環骨格または2級アミン骨格や1級アミン骨格
を有する有機化合物において同様に生じる反応である。
【0095】
NH基を有する含窒素五員複素環骨格、2級アミン骨格、または1級アミン骨格を有す
る有機化合物としては、例えば、NH基を有するピロール骨格、イミダゾール骨格、トリ
アゾール骨格、テトラゾール骨格、またはNH基を有する芳香族アミン骨格を有する有機
化合物が挙げられる。NH基を有するピロール骨格としては、例えば、インドール骨格及
びカルバゾール骨格が挙げられる。また、NH基を有する2級アミン骨格および1級アミ
ン骨格としては、例えば、ジアリールアミン骨格およびモノアリールアミン骨格が挙げら
れる。
【0096】
したがって、発光素子の発光層が含窒素六員複素芳香族骨格を有する有機化合物を含む
場合、PCCHのようなNH基を有する含窒素五員複素環骨格、2級アミン骨格、または
1級アミン骨格を有する有機化合物の含有量は低いことが好ましい。
【0097】
具体的には、有機化合物131_1が、含窒素六員複素芳香族骨格を有するとき、発光
層130において、NH基を有する含窒素五員複素環骨格、2級アミン骨格、または1級
アミン骨格を含む有機化合物の含有量は、有機化合物131_1に対する重量比で好まし
くは0.03以下、さらに好ましくは0.003以下であればよい。そのため、NH基を
有する含窒素五員複素環骨格、2級アミン骨格、または1級アミン骨格を含む有機化合物
と、含窒素六員複素芳香族骨格を有する有機化合物131_1とが反応して生成する、窒
素原子が不対電子を有する含窒素五員複素環骨格、2級アミン骨格、または1級アミン骨
格を含む有機化合物の含有量は、有機化合物131_1に対する重量比で好ましくは0.
03以下、さらに好ましくは0.003以下であり、含窒素六員複素芳香族骨格を有する
有機化合物131_1にさらに水素原子が結合した有機化合物の含有量は、有機化合物1
31_1に対する重量比で好ましくは0.03以下、さらに好ましくは0.003以下で
ある。
【0098】
なお、重量比での算出以外では、カラムなどで不純物を分離後、吸収スペクトルの長波
長側に出るピークの比からも存在比を見積ることができる。
【0099】
また、有機化合物131_1が、含窒素六員複素芳香族骨格を有し、有機化合物131
_2が、含窒素五員複素環骨格または3級アミン骨格の少なくとも一を有するとき、発光
層130において、NH基を有する含窒素五員複素環骨格、2級アミン骨格、または1級
アミン骨格を含む有機化合物の含有量は、有機化合物131_2に対する重量比で好まし
くは0.01以下、さらに好ましくは0.001以下であればよい。そのため、NH基を
有する含窒素五員複素環骨格、2級アミン骨格、または1級アミン骨格を含む有機化合物
と、含窒素六員複素芳香族骨格を有する有機化合物131_1とが反応して生成する、窒
素原子が不対電子を有する含窒素五員複素環骨格、2級アミン骨格、または1級アミン骨
格を含む有機化合物の含有量は、有機化合物131_2に対する重量比で好ましくは0.
01以下、さらに好ましくは0.001以下であり、含窒素六員複素芳香族骨格を有する
有機化合物131_1にさらに水素原子が結合した有機化合物の含有量は、有機化合物1
31_2に対する重量比で好ましくは0.01以下、さらに好ましくは0.001以下で
ある。
【0100】
<材料>
次に、本発明の一態様に係る発光素子の構成要素の詳細について、以下説明を行う。
【0101】
≪発光層≫
発光層130中では、ホスト材料131が重量比で最も多く存在し、ゲスト材料132
は、ホスト材料131中に分散される。ゲスト材料132が蛍光性化合物の場合、発光層
130のホスト材料131(有機化合物131_1及び有機化合物131_2)のS1準
位は、発光層130のゲスト材料(ゲスト材料132)のS1準位よりも高いことが好ま
しい。また、ゲスト材料132が燐光性化合物の場合、発光層130のホスト材料131
(有機化合物131_1及び有機化合物131_2)のT1準位は、発光層130のゲス
ト材料(ゲスト材料132)のT1準位よりも高いことが好ましい。
【0102】
有機化合物131_1としては、含窒素六員複素芳香族骨格を有する化合物であると好
ましい。具体的には、ピリジン骨格、ジアジン骨格(ピラジン骨格、ピリミジン骨格、及
びピリダジン骨格)、及びトリアジン骨格を有する化合物が挙げられる。これらの塩基性
を有する含窒素複素芳香族骨格を有する化合物としては、例えば、ピリジン誘導体、ビピ
リジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジベンゾキ
ノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、プリン誘導体などの化合物が挙げられる。
また、有機化合物131_1としては、正孔よりも電子の輸送性の高い材料(電子輸送性
材料)を用いることができ、1×10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する材料で
あることが好ましい。
【0103】
具体的には、例えば、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン
(略称:BCP)などのピリジン骨格を有する複素環化合物や、2-[3-(ジベンゾチ
オフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTP
DBq-II)、2-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル
]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq-II)、2-[3’
-(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキ
サリン(略称:2mCzBPDBq)、2-[4-(3,6-ジフェニル-9H-カルバ
ゾール-9-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2CzPDBq
-III)、7-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h
]キノキサリン(略称:7mDBTPDBq-II)、及び、6-[3-(ジベンゾチオ
フェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:6mDBTPD
Bq-II)、2-[3-(3,9’-ビ-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]
ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mCzCzPDBq)、4,6-ビス[3-
(フェナントレン-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mPnP2Pm)、
4,6-ビス[3-(4-ジベンゾチエニル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mD
BTP2Pm-II)、4,6-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル
]ピリミジン(略称:4,6mCzP2Pm)などのジアジン骨格を有する複素環化合物
や、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバ
ゾール-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:
PCCzPTzn)などのトリアジン骨格を有する複素環化合物や、3,5-ビス[3-
(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリジン(略称:35DCzPPy)、1
,3,5-トリ[3-(3-ピリジル)フェニル]ベンゼン(略称:TmPyPB)など
のピリジン骨格を有する複素環化合物も用いることができる。上述した複素環化合物の中
でも、トリアジン骨格、ジアジン(ピリミジン、ピラジン、ピリダジン)骨格、またはピ
リジン骨格を有する複素環化合物は、安定で信頼性が良好であり好ましい。また、当該骨
格を有する複素環化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。また、ポリ
(2,5-ピリジンジイル)(略称:PPy)、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレン
-2,7-ジイル)-co-(ピリジン-3,5-ジイル)](略称:PF-Py)、ポ
リ[(9,9-ジオクチルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(2,2’-ビピリジ
ン-6,6’-ジイル)](略称:PF-BPy)のような高分子化合物を用いることも
できる。ここに述べた物質は、主に1×10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する
物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を用い
ても構わない。
【0104】
有機化合物131_2としては、含窒素五員複素環骨格または3級アミン骨格を有する
化合物が好ましい。具体的には、ピロール骨格または芳香族アミン骨格を有する化合物が
挙げられる。例えば、インドール誘導体、カルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導
体などが挙げられる。また、含窒素五員複素環骨格としては、イミダゾール骨格、トリア
ゾール骨格、及びテトラゾール骨格が挙げられる。また、有機化合物131_2としては
、電子よりも正孔の輸送性の高い材料(正孔輸送性材料)を用いることができ、1×10
-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する材料であることが好ましい。また、該正孔輸
送性材料は高分子化合物であっても良い。
【0105】
これら正孔輸送性の高い材料として、具体的には、芳香族アミン化合物としては、N,
N’-ジ(p-トリル)-N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(略称:DT
DPPA)、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルア
ミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’-ビス{4-[ビス(3-メチルフェニ
ル)アミノ]フェニル}-N,N’-ジフェニル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’
-ジアミン(略称:DNTPD)、1,3,5-トリス[N-(4-ジフェニルアミノフ
ェニル)-N-フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)等を挙げることができる
。
【0106】
また、カルバゾール誘導体としては、具体的には、3-[N-(4-ジフェニルアミノ
フェニル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA1
)、3,6-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-9
-フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA2)、3,6-ビス[N-(4-ジフェニ
ルアミノフェニル)-N-(1-ナフチル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称
:PCzTPN2)、3-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニ
ルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6-ビス[N-
(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバ
ゾール(略称:PCzPCA2)、3-[N-(1-ナフチル)-N-(9-フェニルカ
ルバゾール-3-イル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)
等を挙げることができる。
【0107】
また、カルバゾール誘導体としては、他に、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェ
ニル(略称:CBP)、1,3,5-トリス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]ベン
ゼン(略称:TCPB)、9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-
9H-カルバゾール(略称:CzPA)、1,4-ビス[4-(N-カルバゾリル)フェ
ニル]-2,3,5,6-テトラフェニルベンゼン等を用いることができる。
【0108】
また、N,N-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル
]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:CzA1PA)、4-(10-フェニル-
9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:DPhPA)、4-(9H-カルバゾール
-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:
YGAPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フ
ェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPA)、N,9-ジフェニル
-N-{4-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]フェニル}-9H-
カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPBA)、N,9-ジフェニル-N-(9,1
0-ジフェニル-2-アントリル)-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCA
PA)、9-フェニル-3-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9
H-カルバゾール(略称:PCzPA)、3,6-ジフェニル-9-[4-(10-フェ
ニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:DPCzPA)、N,
N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,
p]クリセン-2,7,10,15-テトラアミン(略称:DBC1)等を用いることが
できる。
【0109】
また、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4-ビニルトリフェ
ニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N-(4-{N’-[4-(4-ジフェニル
アミノ)フェニル]フェニル-N’-フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](
略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス
(フェニル)ベンジジン](略称:Poly-TPD)等の高分子化合物を用いることも
できる。
【0110】
さらに、正孔輸送性の高い材料としては、例えば、4,4’-ビス[N-(1-ナフチ
ル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα-NPD)やN,N’-
ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,
4’-ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’-トリス(カルバゾール-9-イル
)トリフェニルアミン(略称:TCTA)、4,4’,4’’-トリス[N-(1-ナフ
チル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:1’-TNATA)、4,4
’,4’’-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDAT
A)、4,4’,4’’-トリス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]
トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’
-ビフルオレン-2-イル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)、4
-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:
BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェ
ニルアミン(略称:mBPAFLP)、N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2
-イル)-N-{9,9-ジメチル-2-[N’-フェニル-N’-(9,9-ジメチル
-9H-フルオレン-2-イル)アミノ]-9H-フルオレン-7-イル}フェニルアミ
ン(略称:DFLADFL)、N-(9,9-ジメチル-2-ジフェニルアミノ-9H-
フルオレン-7-イル)ジフェニルアミン(略称:DPNF)、2-[N-(4-ジフェ
ニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:
DPASF)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)
トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-
フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1B
P)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)
トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-
(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBN
BB)、4-フェニルジフェニル-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)ア
ミン(略称:PCA1BP)、N,N’-ビス(9-フェニルカルバゾール-3-イル)
-N,N’-ジフェニルベンゼン-1,3-ジアミン(略称:PCA2B)、N,N’,
N’’-トリフェニル-N,N’,N’’-トリス(9-フェニルカルバゾール-3-イ
ル)ベンゼン-1,3,5-トリアミン(略称:PCA3B)、N-(4-ビフェニル)
-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9-フェニル-9H-カル
バゾール-3-アミン(略称:PCBiF)、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)
-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジ
メチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)、9,9-ジメチル-N
-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]フ
ルオレン-2-アミン(略称:PCBAF)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル
-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-ア
ミン(略称:PCBASF)、2-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N
-フェニルアミノ]スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:PCASF)、2,7-ビ
ス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]スピロ-9,9’-
ビフルオレン(略称:DPA2SF)、N-[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フ
ェニル]-N-(4-フェニル)フェニルアニリン(略称:YGA1BP)、N,N’-
ビス[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニル-9,9-ジ
メチルフルオレン-2,7-ジアミン(略称:YGA2F)などの芳香族アミン化合物等
を用いることができる。また、3-[4-(1-ナフチル)-フェニル]-9-フェニル
-9H-カルバゾール(略称:PCPN)、3-[4-(9-フェナントリル)-フェニ
ル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCPPn)、3,3’-ビス(9-
フェニル-9H-カルバゾール)(略称:PCCP)、1,3-ビス(N-カルバゾリル
)ベンゼン(略称:mCP)、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9-フェ
ニルカルバゾール(略称:CzTP)、3,6-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)-
9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PhCzGI)、2,8-ジ(9H-カルバ
ゾール-9-イル)-ジベンゾチオフェン(略称:Cz2DBT)等のアミン化合物、カ
ルバゾール化合物等を用いることができる。上述した化合物の中でも、ピロール骨格、芳
香族アミン骨格を有する化合物は、安定で信頼性が良好であり好ましい。また、当該骨格
を有する化合物は、正孔輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。
【0111】
また、有機化合物131_2としては、イミダゾール骨格、トリアゾール骨格、及びテ
トラゾール骨格等の含窒素五員複素環骨格を有する化合物を用いることができる。具体的
には、例えば、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチル
フェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、9-[4-(4,5-ジフェ
ニル-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(
略称:CzTAZ1)、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(
1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、2-[3-(ジベンゾ
チオフェン-4-イル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:
mDBTBIm-II)等を用いることができる。
【0112】
NH基を有する含窒素五員複素環骨格、2級アミン骨格、または1級アミン骨格を含む
有機化合物としては、具体的には、例えば、NH基を有し、且つ、有機化合物131_2
が有する骨格の一部を有する化合物が挙げられる。すなわち、上記のようなピロール骨格
、イミダゾール骨格、トリアゾール骨格、テトラゾール骨格、トリアリールアミン骨格等
を有する有機化合物131_2として用いることができる化合物から、含窒素五員複素環
骨格または3級アミン骨格が有する窒素に結合するアリール基またはアルキル基のうち少
なくとも一が水素に置換した構造を有する化合物が挙げられる。
【0113】
また、発光層130において、ゲスト材料132としては、特に限定はないが、蛍光性
化合物としては、アントラセン誘導体、テトラセン誘導体、クリセン誘導体、フェナント
レン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、スチルベン誘導体、アクリドン誘導体、ク
マリン誘導体、フェノキサジン誘導体、フェノチアジン誘導体などが好ましく、例えば以
下の物質を用いることができる。
【0114】
具体的には、5,6-ビス[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-2
,2’-ビピリジン(略称:PAP2BPy)、5,6-ビス[4’-(10-フェニル
-9-アントリル)ビフェニル-4-イル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAPP2
BPy)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオ
レン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)
、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス[3-(9-フェニル-9H
-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6mMem
FLPAPrn)、N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル
)フェニル]-N,N’-ビス(4-tert-ブチルフェニル)ピレン-1,6-ジア
ミン(略称:1,6tBu-FLPAPrn)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス
[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-3,8-ジシクロヘ
キシルピレン-1,6-ジアミン(略称:ch-1,6FLPAPrn)、N,N’-ビ
ス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニルスチルベ
ン-4,4’-ジアミン(略称:YGA2S)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)
-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)
、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(9,10-ジフェニル-2-アント
リル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-
(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略
称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11-テトラ(tert-ブチル)ペリレン
(略称:TBP)、4-(10-フェニル-9-アントリル)-4’-(9-フェニル-
9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、N,N’
’-(2-tert-ブチルアントラセン-9,10-ジイルジ-4,1-フェニレン)
ビス[N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン](略称:DPAB
PA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フ
ェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPPA)、N-[4-(9
,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-N,N’,N’-トリフェニル-1
,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)、N,N,N’,N’,N’’,N
’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン-2,7,10
,15-テトラアミン(略称:DBC1)、クマリン30、N-(9,10-ジフェニル
-2-アントリル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2
PCAPA)、N-[9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-2-アント
リル]-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCABPh
A)、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,N’,N’-トリフェニル
-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N-[9,10-ビス(1,1
’-ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,
4-フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10-ビス(1,1’-ビフ
ェニル-2-イル)-N-[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N-フ
ェニルアントラセン-2-アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9-トリフェニ
ルアントラセン-9-アミン(略称:DPhAPhA)、クマリン6、クマリン545T
、N,N’-ジフェニルキナクリドン(略称:DPQd)、ルブレン、2,8-ジ-te
rt-ブチル-5,11-ビス(4-tert-ブチルフェニル)-6,12-ジフェニ
ルテトラセン(略称:TBRb)、ナイルレッド、5,12-ビス(1,1’-ビフェニ
ル-4-イル)-6,11-ジフェニルテトラセン(略称:BPT)、2-(2-{2-
[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-6-メチル-4H-ピラン-4-イリ
デン)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、2-{2-メチル-6-[2-(2,3
,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル
]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCM2)、N,N,N
’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)テトラセン-5,11-ジアミン(略称:
p-mPhTD)、7,14-ジフェニル-N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチ
ルフェニル)アセナフト[1,2-a]フルオランテン-3,10-ジアミン(略称:p
-mPhAFD)、2-{2-イソプロピル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチ
ル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル
)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTI)
、2-{2-tert-ブチル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,
6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]
-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTB)、2-(2,
6-ビス{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-4H-ピラン-4-イ
リデン)プロパンジニトリル(略称:BisDCM)、2-{2,6-ビス[2-(8-
メトキシ-1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H
-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プ
ロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)、5,10,15,20-テトラフェニル
ビスベンゾ[5,6]インデノ[1,2,3-cd:1’,2’,3’-lm]ペリレン
、などが挙げられる。
【0115】
ゲスト材料132(燐光性化合物)としては、イリジウム、ロジウム、または白金系の
有機金属錯体、あるいは金属錯体が挙げられ、中でも有機イリジウム錯体、例えばイリジ
ウム系オルトメタル錯体が好ましい。オルトメタル化する配位子としては4H-トリアゾ
ール配位子、1H-トリアゾール配位子、イミダゾール配位子、ピリジン配位子、ピリミ
ジン配位子、ピラジン配位子、あるいはイソキノリン配位子などが挙げられる。金属錯体
としては、ポルフィリン配位子を有する白金錯体などが挙げられる。
【0116】
青色または緑色に発光ピークを有する物質としては、例えば、トリス{2-[5-(2
-メチルフェニル)-4-(2,6-ジメチルフェニル)-4H-1,2,4-トリアゾ
ール-3-イル-κN2]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:Ir(mpp
tz-dmp)3)、トリス(5-メチル-3,4-ジフェニル-4H-1,2,4-ト
リアゾラト)イリジウム(III)(略称:Ir(Mptz)3)、トリス[4-(3-
ビフェニル)-5-イソプロピル-3-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト]イ
リジウム(III)(略称:Ir(iPrptz-3b)3)、トリス[3-(5-ビフ
ェニル)-5-イソプロピル-4-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト]イリジ
ウム(III)(略称:Ir(iPr5btz)3)、のような4H-トリアゾール骨格
を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス[3-メチル-1-(2-メチルフェニル)
-5-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:Ir
(Mptz1-mp)3)、トリス(1-メチル-5-フェニル-3-プロピル-1H-
1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:Ir(Prptz1-Me)
3)のような1H-トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、fac-トリ
ス[1-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-フェニル-1H-イミダゾール]イ
リジウム(III)(略称:Ir(iPrpmi)3)、トリス[3-(2,6-ジメチ
ルフェニル)-7-メチルイミダゾ[1,2-f]フェナントリジナト]イリジウム(I
II)(略称:Ir(dmpimpt-Me)3)のようなイミダゾール骨格を有する有
機金属イリジウム錯体や、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-
N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1-ピラゾリル)ボラート(略称:FI
r6)、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリ
ジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス{2-[3’,5’-ビス
(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト-N,C2’}イリジウム(III)ピコ
リナート(略称:Ir(CF3ppy)2(pic))、ビス[2-(4’,6’-ジフ
ルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート
(略称:FIr(acac))のような電子吸引基を有するフェニルピリジン誘導体を配
位子とする有機金属イリジウム錯体が挙げられる。上述した中でも、4H-トリアゾール
骨格、1H-トリアゾール骨格およびイミダゾール骨格のような含窒素五員複素環骨格を
有する有機金属イリジウム錯体は、高い三重項励起エネルギーを有し、信頼性や発光効率
にも優れるため、特に好ましい。
【0117】
また、緑色または黄色に発光ピークを有する物質としては、例えば、トリス(4-メチ
ル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppm)3)、
トリス(4-t-ブチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:I
r(tBuppm)3)、(アセチルアセトナト)ビス(6-メチル-4-フェニルピリ
ミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppm)2(acac))、(アセチ
ルアセトナト)ビス(6-tert-ブチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(
III)(略称:Ir(tBuppm)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス
[4-(2-ノルボルニル)-6-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称
:Ir(nbppm)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[5-メチル-6
-(2-メチルフェニル)-4-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:
Ir(mpmppm)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス{4,6-ジメチ
ル-2-[6-(2,6-ジメチルフェニル)-4-ピリミジニル-κN3]フェニル-
κC}イリジウム(III)(略称:Ir(dmppm-dmp)2(acac))、(
アセチルアセトナト)ビス(4,6-ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(
略称:Ir(dppm)2(acac))のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリ
ジウム錯体や、(アセチルアセトナト)ビス(3,5-ジメチル-2-フェニルピラジナ
ト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppr-Me)2(acac))、(アセチ
ルアセトナト)ビス(5-イソプロピル-3-メチル-2-フェニルピラジナト)イリジ
ウム(III)(略称:Ir(mppr-iPr)2(acac))のようなピラジン骨
格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)
イリジウム(III)(略称:Ir(ppy)3)、ビス(2-フェニルピリジナト-N
,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)2(ac
ac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート
(略称:Ir(bzq)2(acac))、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウ
ム(III)(略称:Ir(bzq)3)、トリス(2-フェニルキノリナト-N,C2
’)イリジウム(III)(略称:Ir(pq)3)、ビス(2-フェニルキノリナト-
N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pq)2(ac
ac))のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、ビス(2,4-ジフ
ェニル-1,3-オキサゾラト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナー
ト(略称:Ir(dpo)2(acac))、ビス{2-[4’-(パーフルオロフェニ
ル)フェニル]ピリジナト-N,C2’}イリジウム(III)アセチルアセトナート(
略称:Ir(p-PF-ph)2(acac))、ビス(2-フェニルベンゾチアゾラト
-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)2(a
cac))など有機金属イリジウム錯体の他、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェ
ナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)3(Phen))のよう
な希土類金属錯体が挙げられる。上述した中でも、ピリミジン骨格を有する有機金属イリ
ジウム錯体は、信頼性や発光効率にも際だって優れるため、特に好ましい。
【0118】
また、黄色または赤色に発光ピークを有する物質としては、例えば、(ジイソブチリル
メタナト)ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト]イリジウム(II
I)(略称:Ir(5mdppm)2(dibm))、ビス[4,6-ビス(3-メチル
フェニル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:Ir
(5mdppm)2(dpm))、ビス[4,6-ジ(ナフタレン-1-イル)ピリミジ
ナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:Ir(d1npm)2(
dpm))のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、(アセチルアセ
トナト)ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:I
r(tppr)2(acac))、ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)(ジピ
バロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)2(dpm))、(
アセチルアセトナト)ビス[2,3-ビス(4-フルオロフェニル)キノキサリナト]イ
リジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)2(acac))のようなピラジン骨格を
有する有機金属イリジウム錯体や、トリス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)
イリジウム(III)(略称:Ir(piq)3)、ビス(1-フェニルイソキノリナト
-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)2(
acac))のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体の他、2,3,7,
8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィリン白金(II
)(略称:PtOEP)のような白金錯体や、トリス(1,3-ジフェニル-1,3-プ
ロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DB
M)3(Phen))、トリス[1-(2-テノイル)-3,3,3-トリフルオロアセ
トナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)3(
Phen))のような希土類金属錯体が挙げられる。上述した中でも、ピリミジン骨格を
有する有機金属イリジウム錯体は、信頼性や発光効率にも際だって優れるため、特に好ま
しい。また、ピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、色度の良い赤色発光が得
られる。
【0119】
発光層130に含まれる発光材料としては、三重項励起エネルギーを発光に変換できる
材料であれば好ましい。該三重項励起エネルギーを発光に変換できる材料としては、燐光
性化合物の他に、熱活性化遅延蛍光(Thermally activated del
ayed fluorescence:TADF)材料が挙げられる。したがって、燐光
性化合物と記載した部分に関しては、熱活性化遅延蛍光材料と読み替えても構わない。な
お、熱活性化遅延蛍光材料とは、三重項励起エネルギー準位と一重項励起エネルギー準位
との差が小さく、逆項間交差によって三重項励起状態から一重項励起状態へエネルギーを
変換する機能を有する材料である。そのため、三重項励起状態をわずかな熱エネルギーに
よって一重項励起状態にアップコンバート(逆項間交差)が可能で、一重項励起状態から
の発光(蛍光)を効率よく呈することができる。また、熱活性化遅延蛍光が効率良く得ら
れる条件としては、三重項励起エネルギー準位と一重項励起エネルギー準位のエネルギー
差が好ましくは0eVより大きく0.2eV以下、さらに好ましくは0eVより大きく0
.1eV以下であることが挙げられる。
【0120】
熱活性化遅延蛍光材料が、一種類の材料から構成される場合、例えば以下の材料を用い
ることができる。
【0121】
まず、フラーレンやその誘導体、プロフラビン等のアクリジン誘導体、エオシン等が挙
げられる。また、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、スズ(S
n)、白金(Pt)、インジウム(In)、もしくはパラジウム(Pd)等を含む金属含
有ポルフィリンが挙げられる。該金属含有ポルフィリンとしては、例えば、プロトポルフ
ィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Proto IX))、メソポルフィリン-フッ化
スズ錯体(SnF2(Meso IX))、ヘマトポルフィリン-フッ化スズ錯体(Sn
F2(Hemato IX))、コプロポルフィリンテトラメチルエステル-フッ化スズ
錯体(SnF2(Copro III-4Me))、オクタエチルポルフィリン-フッ化
スズ錯体(SnF2(OEP))、エチオポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(E
tio I))、オクタエチルポルフィリン-塩化白金錯体(PtCl2OEP)等が挙
げられる。
【0122】
また、一種の材料から構成される熱活性化遅延蛍光材料としては、π電子過剰型複素芳
香環及びπ電子不足型複素芳香環を有する複素環化合物も用いることができる。具体的に
は、2-(ビフェニル-4-イル)-4,6-ビス(12-フェニルインドロ[2,3-
a]カルバゾール-11-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:PIC-TRZ)、
2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾー
ル-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PC
CzPTzn)、2-[4-(10H-フェノキサジン-10-イル)フェニル]-4,
6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PXZ-TRZ)、3-[4-(5-
フェニル-5,10-ジヒドロフェナジン-10-イル)フェニル]-4,5-ジフェニ
ル-1,2,4-トリアゾール(略称:PPZ-3TPT)、3-(9,9-ジメチル-
9H-アクリジン-10-イル)-9H-キサンテン-9-オン(略称:ACRXTN)
、ビス[4-(9,9-ジメチル-9,10-ジヒドロアクリジン)フェニル]スルホン
(略称:DMAC-DPS)、10-フェニル-10H,10’H-スピロ[アクリジン
-9,9’-アントラセン]-10’-オン(略称:ACRSA)等が挙げられる。該複
素環化合物は、π電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有するため、電子
輸送性及び正孔輸送性が高く、好ましい。中でも、π電子不足型複素芳香環を有する骨格
のうち、ジアジン骨格(ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ピリダジン骨格)、またはトリ
アジン骨格は、安定で信頼性が良好なため、好ましい。また、π電子過剰型複素芳香環を
有する骨格の中でも、アクリジン骨格、フェノキサジン骨格、チオフェン骨格、フラン骨
格、及びピロール骨格は、安定で信頼性が良好なため、当該骨格の中から選ばれるいずれ
か一つまたは複数を有することが、好ましい。なお、ピロール骨格としては、インドール
骨格、カルバゾール骨格、及び3-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-
9H-カルバゾール骨格、が特に好ましい。なお、π電子過剰型複素芳香環とπ電子不足
型複素芳香環とが直接結合した物質は、π電子過剰型複素芳香環のドナー性とπ電子不足
型複素芳香環のアクセプター性が共に強く、一重項励起状態のエネルギー準位と三重項励
起状態のエネルギー準位との差が小さくなるため、特に好ましい。
【0123】
また、発光層130において、ホスト材料131およびゲスト材料132以外の材料を
有していても良い。
【0124】
発光層130に用いることが可能な材料としては、特に限定はないが、例えば、アント
ラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、ジベンゾ[g,
p]クリセン誘導体等の縮合多環芳香族化合物が挙げられ、具体的には、9,10-ジフ
ェニルアントラセン(略称:DPAnth)、6,12-ジメトキシ-5,11-ジフェ
ニルクリセン、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:D
PPA)、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2-tert
-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:t-BuDNA)、9,
9’-ビアントリル(略称:BANT)、9,9’-(スチルベン-3,3’-ジイル)
ジフェナントレン(略称:DPNS)、9,9’-(スチルベン-4,4’-ジイル)ジ
フェナントレン(略称:DPNS2)、1,3,5-トリ(1-ピレニル)ベンゼン(略
称:TPB3)などを挙げることができる。また、これら及び公知の物質の中から、上記
ゲスト材料132の励起エネルギー準位より高い一重項励起エネルギー準位または三重項
励起エネルギー準位を有する物質を、一種もしくは複数種選択して用いればよい。
【0125】
また、例えば、オキサジアゾール誘導体等の複素芳香族骨格を有する化合物を発光層1
30に用いることができる。具体的には、例えば、2-(4-ビフェニリル)-5-(4
-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)や、1
,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-
2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オ
キサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11)、4,
4’-ビス(5-メチルベンゾオキサゾール-2-イル)スチルベン(略称:BzOs)
などの複素環化合物が挙げられる。
【0126】
また、複素環を有する金属錯体(例えば亜鉛及びアルミニウム系金属錯体)などを発光
層130に用いることができる。例えば、キノリン配位子、ベンゾキノリン配位子、オキ
サゾール配位子、あるいはチアゾール配位子を有する金属錯体が挙げられる。具体的には
、例えば、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリ
ス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq3)、ビ
ス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq2
)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(
III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)
など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等が挙げられる。また、
この他ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnP
BO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnB
TZ)などのオキサゾール系、またはチアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いる
ことができる。
【0127】
なお、発光層130は2層以上の複数層でもって構成することもできる。例えば、第1
の発光層と第2の発光層を正孔輸送層側から順に積層して発光層130とする場合、第1
の発光層のホスト材料として正孔輸送性を有する物質を用い、第2の発光層のホスト材料
として電子輸送性を有する物質を用いる構成などがある。また、第1の発光層と第2の発
光層とが有する発光材料は、同じ材料であっても異なる材料であってもよく、同じ色の発
光を呈する機能を有する材料であっても、異なる色の発光を呈する機能を有する材料であ
ってもよい。2層の発光層に、互いに異なる色の発光を呈する機能を有する発光材料をそ
れぞれ用いることで、複数の発光を同時に得ることができる。特に、2層の発光層が呈す
る発光により、白色になるよう、各発光層に用いる発光材料を選択すると好ましい。
【0128】
なお、発光層130は、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法、グ
ラビア印刷等の方法で形成することができる。また、上述した材料の他、量子ドットなど
の無機化合物または高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を有しても
よい。
【0129】
≪正孔注入層≫
正孔注入層111は、一対の電極の一方(電極101または電極102)からのホール
注入障壁を低減することでホール注入を促進する機能を有し、例えば遷移金属酸化物、フ
タロシアニン誘導体、あるいは芳香族アミンなどによって形成される。遷移金属酸化物と
しては、モリブデン酸化物やバナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物
、マンガン酸化物などが挙げられる。フタロシアニン誘導体としては、フタロシアニンや
金属フタロシアニンなどが挙げられる。芳香族アミンとしてはベンジジン誘導体やフェニ
レンジアミン誘導体などが挙げられる。ポリチオフェンやポリアニリンなどの高分子化合
物を用いることもでき、例えば自己ドープされたポリチオフェンであるポリ(エチレンジ
オキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)などがその代表例である。
【0130】
正孔注入層111として、正孔輸送性材料と、これに対して電子受容性を示す材料の複
合材料を有する層を用いることもできる。あるいは、電子受容性を示す材料を含む層と正
孔輸送性材料を含む層の積層を用いても良い。これらの材料間では定常状態、あるいは電
界存在下において電荷の授受が可能である。電子受容性を示す材料としては、キノジメタ
ン誘導体やクロラニル誘導体、ヘキサアザトリフェニレン誘導体などの有機アクセプター
を挙げることができる。具体的には、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-
テトラフルオロキノジメタン(略称:F4-TCNQ)、クロラニル、2,3,6,7,
10,11-ヘキサシアノ-1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン(略
称:HAT-CN)等の電子吸引基(ハロゲン基やシアノ基)を有する化合物である。ま
た、遷移金属酸化物、例えば第4族から第8族金属の酸化物を用いることができる。具体
的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸
化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムなどである。中でも酸化モリブデンは大気
中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0131】
正孔輸送性材料としては、電子よりも正孔の輸送性の高い材料を用いることができ、1
×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する材料であることが好ましい。具体的に
は、発光層130に用いることができる正孔輸送性材料として挙げた芳香族アミン、カル
バゾール誘導体、芳香族炭化水素、スチルベン誘導体などを用いることができる。また、
該正孔輸送性材料は高分子化合物であっても良い。
【0132】
また、正孔輸送性材料として他には芳香族炭化水素が挙げられ、例えば、2-tert
-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:t-BuDNA)、2-
tert-ブチル-9,10-ジ(1-ナフチル)アントラセン、9,10-ビス(3,
5-ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2-tert-ブチル-9
,10-ビス(4-フェニルフェニル)アントラセン(略称:t-BuDBA)、9,1
0-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10-ジフェニルアントラ
セン(略称:DPAnth)、2-tert-ブチルアントラセン(略称:t-BuAn
th)、9,10-ビス(4-メチル-1-ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)
、2-tert-ブチル-9,10-ビス[2-(1-ナフチル)フェニル]アントラセ
ン、9,10-ビス[2-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7-
テトラメチル-9,10-ジ(1-ナフチル)アントラセン、2,3,6,7-テトラメ
チル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン、9,9’-ビアントリル、10,1
0’-ジフェニル-9,9’-ビアントリル、10,10’-ビス(2-フェニルフェニ
ル)-9,9’-ビアントリル、10,10’-ビス[(2,3,4,5,6-ペンタフ
ェニル)フェニル]-9,9’-ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、
ペリレン、2,5,8,11-テトラ(tert-ブチル)ペリレン等が挙げられる。ま
た、この他、ペンタセン、コロネン等も用いることができる。このように、1×10-6
cm2/Vs以上の正孔移動度を有し、炭素数14乃至炭素数42である芳香族炭化水素
を用いることがより好ましい。
【0133】
なお、芳香族炭化水素は、ビニル骨格を有していてもよい。ビニル基を有している芳香
族炭化水素としては、例えば、4,4’-ビス(2,2-ジフェニルビニル)ビフェニル
(略称:DPVBi)、9,10-ビス[4-(2,2-ジフェニルビニル)フェニル]
アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。
【0134】
また、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]フ
ェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi-II)、4,4’,4’’-(ベ
ンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:DBF3P-II)、
1,3,5-トリ(ジベンゾチオフェン-4-イル)ベンゼン(略称:DBT3P-II
)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フ
ェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-III)、4-[4-(9-フェニ
ル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フェニルジベンゾチオフェン(略称
:DBTFLP-IV)、4-[3-(トリフェニレン-2-イル)フェニル]ジベンゾ
チオフェン(略称:mDBTPTp-II)等のチオフェン化合物、フラン化合物、フル
オレン化合物、トリフェニレン化合物、フェナントレン化合物等を用いることができる。
上述した化合物の中でも、ピロール骨格、フラン骨格、チオフェン骨格、芳香族アミン骨
格を有する化合物は、安定で信頼性が良好であり好ましい。また、当該骨格を有する化合
物は、正孔輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。
【0135】
≪正孔輸送層≫
正孔輸送層112は正孔輸送性材料を含む層であり、正孔注入層111の材料として例
示した正孔輸送性材料を使用することができる。正孔輸送層112は正孔注入層111に
注入された正孔を発光層130へ輸送する機能を有するため、正孔注入層111のHOM
O(Highest Occupied Molecular Orbital、最高被
占軌道ともいう)準位と同じ、あるいは近いHOMO準位を有することが好ましい。
【0136】
また、1×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい
。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外の物質を用いてもよい
。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層だけでなく、上記物質からなる層が二層
以上積層してもよい。
【0137】
≪電子輸送層≫
電子輸送層118は、電子注入層119を経て一対の電極の他方(電極101または電
極102)から注入された電子を発光層130へ輸送する機能を有する。電子輸送性材料
としては、正孔よりも電子の輸送性の高い材料を用いることができ、1×10-6cm2
/Vs以上の電子移動度を有する材料であることが好ましい。電子を受け取りやすい化合
物(電子輸送性を有する材料)としては、含窒素複素芳香族化合物のようなπ電子不足型
複素芳香族や金属錯体などを用いることができる。具体的には、発光層130に用いるこ
とができる電子輸送性材料として挙げたピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、ピリミジン
誘導体、トリアジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジベンゾキノキサリン誘導体、フェナ
ントロリン誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、オキサジアゾール
誘導体などが挙げられる。また、1×10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物
質であることが好ましい。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外
の物質を電子輸送層として用いても構わない。また、電子輸送層118は、単層だけでな
く、上記物質からなる層が二層以上積層してもよい。
【0138】
また、複素環を有する金属錯体が挙げられ、例えば、キノリン配位子、ベンゾキノリン
配位子、オキサゾール配位子、あるいはチアゾール配位子を有する金属錯体が挙げられる
。具体的には、例えば、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:A
lq)、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Al
mq3)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称
:BeBq2)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)ア
ルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略
称:Znq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等が挙げら
れる。また、この他ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(
略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(
略称:ZnBTZ)などのオキサゾール系、またはチアゾール系配位子を有する金属錯体
なども用いることができる。
【0139】
また、電子輸送層118と発光層130との間に電子キャリアの移動を制御する層を設
けても良い。これは上述したような電子輸送性の高い材料に、電子トラップ性の高い物質
を少量添加した層であって、電子キャリアの移動を抑制することによって、キャリアバラ
ンスを調節することが可能となる。このような構成は、発光層を電子が突き抜けてしまう
ことにより発生する問題(例えば素子寿命の低下)の抑制に大きな効果を発揮する。
【0140】
≪電子注入層≫
電子注入層119は電極102からの電子注入障壁を低減することで電子注入を促進す
る機能を有し、例えば第1族金属、第2族金属、あるいはこれらの酸化物、ハロゲン化物
、炭酸塩などを用いることができる。また、先に示す電子輸送性材料と、これに対して電
子供与性を示す材料の複合材料を用いることもできる。電子供与性を示す材料としては、
第1族金属、第2族金属、あるいはこれらの酸化物などを挙げることができる。具体的に
は、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化セシウム(CsF
)、フッ化カルシウム(CaF2)、リチウム酸化物(LiOx)等のようなアルカリ金
属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用いることができる。また、フッ化エル
ビウム(ErF3)のような希土類金属化合物を用いることができる。また、電子注入層
119にエレクトライドを用いてもよい。該エレクトライドとしては、例えば、カルシウ
ムとアルミニウムの混合酸化物に電子を高濃度添加した物質等が挙げられる。また、電子
注入層119に、電子輸送層118で用いることが出来る物質を用いても良い。
【0141】
また、電子注入層119に、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合
材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が発
生するため、電子注入性および電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては
、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した
電子輸送層118を構成する物質(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができ
る。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的
には、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、ナトリウム
、セシウム、マグネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。
また、アルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カル
シウム酸化物、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス
塩基を用いることもできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合
物を用いることもできる。
【0142】
なお、上述した、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、及び電子注入層は、
それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法、グラビア印刷等の
方法で形成することができる。また、上述した、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子
輸送層、及び電子注入層には、上述した材料の他、量子ドットなどの無機化合物や、高分
子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いてもよい。
【0143】
≪量子ドット≫
量子ドットは、数nmから数十nmサイズの半導体ナノ結晶であり、1×103個から
1×106個程度の原子から構成されている。量子ドットはサイズに依存してエネルギー
シフトするため、同じ物質から構成される量子ドットであっても、サイズによって発光波
長が異なる。そのため、用いる量子ドットのサイズを変更することによって、容易に発光
波長を変更することができる。
【0144】
また、量子ドットは、発光スペクトルのピーク幅が狭いため、色純度のよい発光を得る
ことができる。さらに、量子ドットの理論的な内部量子効率はほぼ100%であると言わ
れており、蛍光発光を呈する有機化合物の25%を大きく上回り、燐光発光を呈する有機
化合物と同等となっている。このことから、量子ドットを発光材料として用いることによ
って発光効率の高い発光素子を得ることができる。その上、無機材料である量子ドットは
、その本質的な安定性にも優れているため、寿命の観点からも好ましい発光素子を得るこ
とができる。
【0145】
量子ドットを構成する材料としては、第14族元素、第15族元素、第16族元素、複
数の第14族元素からなる化合物、第4族から第14族に属する元素と第16族元素との
化合物、第2族元素と第16族元素との化合物、第13族元素と第15族元素との化合物
、第13族元素と第17族元素との化合物、第14族元素と第15族元素との化合物、第
11族元素と第17族元素との化合物、酸化鉄類、酸化チタン類、カルコゲナイドスピネ
ル類、半導体クラスターなどを挙げることができる。
【0146】
具体的には、セレン化カドミウム、硫化カドミウム、テルル化カドミウム、セレン化亜
鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛、テルル化亜鉛、硫化水銀、セレン化水銀、テルル化水銀、砒化
インジウム、リン化インジウム、砒化ガリウム、リン化ガリウム、窒化インジウム、窒化
ガリウム、アンチモン化インジウム、アンチモン化ガリウム、リン化アルミニウム、砒化
アルミニウム、アンチモン化アルミニウム、セレン化鉛、テルル化鉛、硫化鉛、セレン化
インジウム、テルル化インジウム、硫化インジウム、セレン化ガリウム、硫化砒素、セレ
ン化砒素、テルル化砒素、硫化アンチモン、セレン化アンチモン、テルル化アンチモン、
硫化ビスマス、セレン化ビスマス、テルル化ビスマス、ケイ素、炭化ケイ素、ゲルマニウ
ム、錫、セレン、テルル、ホウ素、炭素、リン、窒化ホウ素、リン化ホウ素、砒化ホウ素
、窒化アルミニウム、硫化アルミニウム、硫化バリウム、セレン化バリウム、テルル化バ
リウム、硫化カルシウム、セレン化カルシウム、テルル化カルシウム、硫化ベリリウム、
セレン化ベリリウム、テルル化ベリリウム、硫化マグネシウム、セレン化マグネシウム、
硫化ゲルマニウム、セレン化ゲルマニウム、テルル化ゲルマニウム、硫化錫、セレン化錫
、テルル化錫、酸化鉛、フッ化銅、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、酸化銅、セレン化銅、酸
化ニッケル、酸化コバルト、硫化コバルト、酸化鉄、硫化鉄、酸化マンガン、硫化モリブ
デン、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化タンタル、酸化チタン、酸化ジルコニウ
ム、窒化ケイ素、窒化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、セレンと亜
鉛とカドミウムの化合物、インジウムと砒素とリンの化合物、カドミウムとセレンと硫黄
の化合物、カドミウムとセレンとテルルの化合物、インジウムとガリウムと砒素の化合物
、インジウムとガリウムとセレンの化合物、インジウムとセレンと硫黄の化合物、銅とイ
ンジウムと硫黄の化合物、およびこれらの組合せなどを挙げることができるが、これらに
限定されない。また、組成が任意の比率で表される、いわゆる合金型量子ドットを用いて
も良い。例えば、カドミウムとセレンと硫黄の合金型量子ドットは、元素の含有比率を変
化させることで発光波長を変えることができるため、青色発光を得るには有効な手段の一
つである。
【0147】
量子ドットの構造としては、コア型、コア-シェル型、コア-マルチシェル型などがあ
り、そのいずれを用いても良いが、コアを覆ってより広いバンドギャップを持つ別の無機
材料でシェルを形成することによって、ナノ結晶表面に存在する欠陥やダングリングボン
ドの影響を低減することができる。これにより、発光の量子効率が大きく改善するためコ
ア-シェル型やコア-マルチシェル型の量子ドットを用いることが好ましい。シェルの材
料の例としては、硫化亜鉛や酸化亜鉛が挙げられる。
【0148】
また、量子ドットは、表面原子の割合が高いことから、反応性が高く、凝集が起こりや
すい。そのため、量子ドットの表面には保護剤が付着している又は保護基が設けられてい
ることが好ましい。当該保護剤が付着している又は保護基が設けられていることによって
、凝集を防ぎ、溶媒への溶解性を高めることができる。また、反応性を低減させ、電気的
安定性を向上させることも可能である。保護剤(又は保護基)としては、例えば、ポリオ
キシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエ
チレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、トリプロピルホス
フィン、トリブチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン等の
トリアルキルホスフィン類、ポリオキシエチレンn-オクチルフェニルエーテル、ポリオ
キシエチレンn-ノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエー
テル類、トリ(n-ヘキシル)アミン、トリ(n-オクチル)アミン、トリ(n-デシル
)アミン等の第3級アミン類、トリプロピルホスフィンオキシド、トリブチルホスフィン
オキシド、トリヘキシルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド、トリデ
シルホスフィンオキシド等の有機リン化合物、ポリエチレングリコールジラウレート、ポ
リエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコールジエステル類、また、
ピリジン、ルチジン、コリジン、キノリン類等の含窒素芳香族化合物等の有機窒素化合物
、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミ
ン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン等のアミノアルカン類、ジブチルスルフィ
ド等のジアルキルスルフィド類、ジメチルスルホキシドやジブチルスルホキシド等のジア
ルキルスルホキシド類、チオフェン等の含硫黄芳香族化合物等の有機硫黄化合物、パルミ
チン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸、アルコール類、ソルビタン脂肪酸エ
ステル類、脂肪酸変性ポリエステル類、3級アミン変性ポリウレタン類、ポリエチレンイ
ミン類等が挙げられる。
【0149】
量子ドットは、サイズが小さくなるに従いバンドギャップが大きくなるため、所望の波
長の光が得られるように、そのサイズを適宜調整する。結晶のサイズが小さくなるにつれ
て、量子ドットの発光は青色側へ、つまり、高エネルギー側へシフトするため、量子ドッ
トのサイズを変更させることにより、紫外領域、可視領域、赤外領域のスペクトルの波長
領域にわたって、その発光波長を調整することができる。量子ドットのサイズ(直径)は
、0.5nm乃至20nm、好ましくは1nm乃至10nmの範囲のものが通常良く用い
られる。なお、量子ドットはそのサイズ分布が狭いほど、より発光スペクトルが狭線化し
、色純度の良好な発光を得ることができる。また、量子ドットの形状は特に限定されず、
球状、棒状、円盤状、その他の形状であってもよい。なお、棒状の量子ドットである量子
ロッドは、指向性を有する光を呈する機能を有するため、量子ロッドを発光材料として用
いることにより、より外部量子効率が良好な発光素子を得ることができる。
【0150】
ところで、有機EL素子では多くの場合、発光材料をホスト材料に分散し、発光材料の
濃度消光を抑制することによって発光効率を高めている。ホスト材料は発光材料以上の一
重項励起エネルギー準位または三重項励起エネルギー準位を有する材料であることが必要
である。特に、青色燐光材料を発光材料に用いる場合においては、それ以上の三重項励起
エネルギー準位を有し、且つ、寿命の観点で優れたホスト材料が必要であり、その開発は
困難を極めている。ここで、量子ドットは、ホスト材料を用いずに量子ドットのみで発光
層を構成しても発光効率を保つことができるため、この点でも寿命という観点から好まし
い発光素子を得ることができる。量子ドットのみで発光層を形成する場合には、量子ドッ
トはコア-シェル構造(コア-マルチシェル構造を含む)であることが好ましい。
【0151】
発光層の発光材料に量子ドットを用いる場合、当該発光層の膜厚は3nm乃至100n
m、好ましくは10nm乃至100nmとし、発光層中の量子ドットの含有率は1乃至1
00体積%とする。ただし、量子ドットのみで発光層を形成することが好ましい。なお、
当該量子ドットを発光材料としてホストに分散した発光層を形成する場合は、ホスト材料
に量子ドットを分散させる、またはホスト材料と量子ドットとを適当な液媒体に溶解また
は分散させてウェットプロセス(スピンコート法、キャスト法、ダイコート法、ブレード
コート法、ロールコート法、インクジェット法、印刷法、スプレーコート法、カーテンコ
ート法、ラングミュア・ブロジェット法など)により形成すればよい。燐光性の発光材料
を用いた発光層については、上記ウェットプロセスの他、真空蒸着法も好適に利用するこ
とができる。
【0152】
ウェットプロセスに用いる液媒体としては、たとえば、メチルエチルケトン、シクロヘ
キサノン等のケトン類、酢酸エチル等の脂肪酸エステル類、ジクロロベンゼン等のハロゲ
ン化炭化水素類、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族
炭化水素類、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類、ジメチルホル
ムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の有機溶媒を用いることがで
きる。
【0153】
≪一対の電極≫
電極101及び電極102は、発光素子の陽極または陰極としての機能を有する。電極
101及び電極102は、金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物や積層体な
どを用いて形成することができる。
【0154】
電極101または電極102の一方は、光を反射する機能を有する導電性材料により形
成されると好ましい。該導電性材料としては、アルミニウム(Al)またはAlを含む合
金等が挙げられる。Alを含む合金としては、AlとL(Lは、チタン(Ti)、ネオジ
ム(Nd)、ニッケル(Ni)、及びランタン(La)の一つまたは複数を表す)とを含
む合金等が挙げられ、例えばAlとTi、またはAlとNiとLaを含む合金等である。
アルミニウムは、抵抗値が低く、光の反射率が高い。また、アルミニウムは、地殻におけ
る存在量が多く、安価であるため、アルミニウムを用いることによる発光素子の作製コス
トを低減することができる。また、銀(Ag)、またはAgとN(Nは、イットリウム(
Y)、Nd、マグネシウム(Mg)、イッテルビウム(Yb)、Al、Ti、ガリウム(
Ga)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、
スズ(Sn)、鉄(Fe)、Ni、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir
)、または金(Au)の一つまたは複数を表す)とを含む合金等を用いても良い。銀を含
む合金としては、例えば、銀とパラジウムと銅を含む合金、銀と銅を含む合金、銀とマグ
ネシウムを含む合金、銀とニッケルを含む合金、銀と金を含む合金、銀とイッテルビウム
を含む合金等が挙げられる。その他、タングステン、クロム(Cr)、モリブデン(Mo
)、銅、チタンなどの遷移金属を用いることができる。
【0155】
また、発光層から得られる発光は、電極101及び電極102の一方または双方を通し
て取り出される。したがって、電極101または電極102の少なくとも一方は、光を透
過する機能を有する導電性材料により形成されると好ましい。該導電性材料としては、可
視光の透過率が40%以上100%以下、好ましくは60%以上100%以下であり、か
つその抵抗率が1×10-2Ω・cm以下の導電性材料が挙げられる。
【0156】
また、電極101及び電極102は、光を透過する機能と、光を反射する機能と、を有
する導電性材料により形成されても良い。該導電性材料としては、可視光の反射率が20
%以上80%以下、好ましくは40%以上70%以下であり、かつその抵抗率が1×10
-2Ω・cm以下の導電性材料が挙げられる。例えば、導電性を有する金属、合金、導電
性化合物などを1種又は複数種用いて形成することができる。具体的には、例えば、イン
ジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide、以下ITO)、珪素または酸化珪
素を含むインジウム錫酸化物(略称:ITSO)、酸化インジウム-酸化亜鉛(Indi
um Zinc Oxide)、チタンを含有した酸化インジウム-錫酸化物、インジウ
ム-チタン酸化物、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウムなどの金属
酸化物を用いることができる。また、光を透過する程度(好ましくは、1nm以上30n
m以下の厚さ)の金属薄膜を用いることができる。金属としては、例えば、Ag、または
AgとAl、AgとMg、AgとAu、AgとYbなどの合金等を用いることができる。
【0157】
なお、本明細書等において、光を透過する機能を有する材料は、可視光を透過する機能
を有し、且つ導電性を有する材料であればよく、例えば上記のようなITOに代表される
酸化物導電体に加えて、酸化物半導体、または有機物を含む有機導電体を含む。有機物を
含む有機導電体としては、例えば、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる
複合材料、有機化合物と電子受容体(アクセプター)とを混合してなる複合材料等が挙げ
られる。また、グラフェンなどの無機炭素系材料を用いても良い。また、当該材料の抵抗
率としては、好ましくは1×105Ω・cm以下、さらに好ましくは1×104Ω・cm
以下である。
【0158】
また、上記の材料の複数を積層することによって電極101及び電極102の一方また
は双方を形成してもよい。
【0159】
また、光取り出し効率を向上させるため、光を透過する機能を有する電極と接して、該
電極より屈折率の高い材料を形成してもよい。このような材料としては、可視光を透過す
る機能を有する材料であればよく、導電性を有する材料であっても有さない材料であって
もよい。例えば、上記のような酸化物導電体に加えて、酸化物半導体、有機物が挙げられ
る。有機物としては、例えば、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、または電
子注入層に例示した材料が挙げられる。また、無機炭素系材料や光が透過する程度の金属
薄膜も用いることができ、数nm乃至数十nmの層を複数積層させてもよい。
【0160】
電極101または電極102が陰極としての機能を有する場合には、仕事関数が小さい
(3.8eV以下)材料を有することが好ましい。例えば、元素周期表の第1族又は第2
族に属する元素(リチウム、ナトリウム、セシウム等のアルカリ金属、カルシウム、スト
ロンチウム等のアルカリ土類金属、マグネシウム等)、これら元素を含む合金(例えば、
AgとMg、AlとLi)、ユーロピウム(Eu)、Yb等の希土類金属、これら希土類
金属を含む合金、アルミニウム、銀を含む合金等を用いることができる。
【0161】
また、電極101または電極102を陽極として用いる場合、仕事関数の大きい(4.
0eV以上)材料を用いることが好ましい。
【0162】
また、電極101及び電極102は、光を反射する機能を有する導電性材料と、光を透
過する機能を有する導電性材料との積層としてもよい。その場合、電極101及び電極1
02は、各発光層からの所望の波長の光を共振させ、所望の波長の光を強めることができ
るように、光学距離を調整する機能を有することができるため好ましい。
【0163】
電極101及び電極102の成膜方法は、スパッタリング法、蒸着法、印刷法、塗布法
、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、CVD法、パルスレー
ザ堆積法、ALD(Atomic Layer Deposition)法等を適宜用い
ることができる。
【0164】
≪基板≫
また、本発明の一態様に係る発光素子は、ガラス、プラスチックなどからなる基板上に
作製すればよい。基板上に作製する順番としては、電極101側から順に積層しても、電
極102側から順に積層しても良い。
【0165】
なお、本発明の一態様に係る発光素子を形成できる基板としては、例えばガラス、石英
、又はプラスチックなどを用いることができる。また可撓性基板を用いてもよい。可撓性
基板とは、曲げることができる(フレキシブル)基板のことであり、例えば、ポリカーボ
ネート、ポリアリレート、からなるプラスチック基板等が挙げられる。また、フィルム、
無機蒸着フィルムなどを用いることもできる。なお、発光素子、及び光学素子の作製工程
において支持体として機能するものであれば、これら以外のものでもよい。あるいは、発
光素子、及び光学素子を保護する機能を有するものであればよい。
【0166】
例えば、本明細書等においては、様々な基板を用いて発光素子を形成することが出来る
。基板の種類は、特に限定されない。その基板の一例としては、半導体基板(例えば単結
晶基板又はシリコン基板)、SOI基板、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、金
属基板、ステンレス・スチル基板、ステンレス・スチル・ホイルを有する基板、タングス
テン基板、タングステン・ホイルを有する基板、可撓性基板、貼り合わせフィルム、繊維
状の材料を含む紙、又は基材フィルムなどがある。ガラス基板の一例としては、バリウム
ホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、又はソーダライムガラスなどがある。可
撓性基板、貼り合わせフィルム、基材フィルムなどの一例としては、以下が挙げられる。
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)
、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に代表さ
れるプラスチックがある。または、一例としては、アクリル等の樹脂などがある。または
、一例としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、又はポリ塩化ビニ
ルなどがある。または、一例としては、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、エポキシ、
無機蒸着フィルム、又は紙類などがある。
【0167】
また、基板として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、発光素子を形成してもよ
い。または、基板と発光素子との間に剥離層を設けてもよい。剥離層は、その上に発光素
子を一部あるいは全部完成させた後、基板より分離し、他の基板に転載するために用いる
ことができる。その際、耐熱性の劣る基板や可撓性の基板にも発光素子を転載できる。な
お、上述の剥離層には、例えば、タングステン膜と酸化シリコン膜との無機膜の積層構造
の構成や、基板上にポリイミド等の樹脂膜が形成された構成等を用いることができる。
【0168】
つまり、ある基板を用いて発光素子を形成し、その後、別の基板に発光素子を転置し、
別の基板上に発光素子を配置してもよい。発光素子が転置される基板の一例としては、上
述した基板に加え、セロファン基板、石材基板、木材基板、布基板(天然繊維(絹、綿、
麻)、合成繊維(ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル)若しくは再生繊維(アセテー
ト、キュプラ、レーヨン、再生ポリエステル)などを含む)、皮革基板、又はゴム基板な
どがある。これらの基板を用いることにより、壊れにくい発光素子、耐熱性の高い発光素
子、軽量化された発光素子、または薄型化された発光素子とすることができる。
【0169】
また、上述した基板上に、例えば電界効果トランジスタ(FET)を形成し、FETと
電気的に接続された電極上に発光素子150を作製してもよい。これにより、FETによ
って発光素子150の駆動を制御するアクティブマトリクス型の表示装置を作製できる。
【0170】
なお、本実施の形態において、本発明の一態様について述べた。または、他の実施の形
態において、本発明の一態様について述べる。ただし、本発明の一態様は、これらに限定
されない。つまり、本実施の形態および他の実施の形態では、様々な発明の態様が記載さ
れているため、本発明の一態様は、特定の態様に限定されない。例えば、本発明の一態様
として、発光素子に適用した場合の例を示したが、本発明の一態様は、これに限定されな
い。例えば、場合によっては、または、状況に応じて、本発明の一態様は、発光素子に適
用しなくてもよい。または、例えば、本発明の一態様では、第1の有機化合物と、第2の
有機化合物と、ゲスト材料と、を有し、第1の有機化合物が、含窒素六員複素芳香族骨格
を有し、第2の有機化合物が、含窒素五員複素環骨格または3級アミン骨格の少なくとも
一を有する場合の例を示したが、本発明の一態様は、これに限定されない。場合によって
は、または、状況に応じて、本発明の一態様では、例えば、第2の有機化合物を有さなく
てもよい。あるいは、第1の有機化合物は、含窒素六員複素芳香族骨格を有さなくてもよ
い。あるいは、第2の有機化合物は、含窒素五員複素環骨格および3級アミン骨格を有さ
なくてもよい。または、例えば、本発明の一態様では、NH基を有する含窒素五員複素環
骨格または2級アミン骨格を含む有機化合物の含有量が、第1の有機化合物に対する重量
比で0.03以下である場合の例を示したが、本発明の一態様は、これに限定されない。
場合によっては、または、状況に応じて、本発明の一態様では、NH基を有する含窒素五
員複素環骨格または2級アミン骨格を含む有機化合物の含有量が、第1の有機化合物に対
する重量比で0.03より多くてもよい。
【0171】
以上、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることがで
きる。
【0172】
(実施の形態2)
本実施の形態においては、実施の形態1に示す発光素子の構成と異なる構成の発光素子
、及び当該発光素子の発光機構について、
図6乃至
図8を用いて、以下説明を行う。なお
、
図6乃至
図8において、
図1(A)に示す符号と同様の機能を有する箇所には、同様の
ハッチパターンとし、符号を省略する場合がある。また、同様の機能を有する箇所には、
同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する場合がある。
【0173】
<発光素子の構成例1>
図6(A)は、発光素子250の断面模式図である。
【0174】
図6(A)に示す発光素子250は、一対の電極(電極101及び電極102)の間に
、複数の発光ユニット(
図6(A)においては、発光ユニット106及び発光ユニット1
08)を有する。複数の発光ユニットのうちいずれか一つの発光ユニットは、EL層10
0と同様な構成を有すると好ましい。つまり、
図1で示した発光素子150は、1つの発
光ユニットを有し、発光素子250は、複数の発光ユニットを有すると好ましい。なお、
発光素子250において、電極101が陽極として機能し、電極102が陰極として機能
するとして、以下説明するが、発光素子250の構成としては、逆であっても構わない。
【0175】
また、
図6(A)に示す発光素子250において、発光ユニット106と発光ユニット
108とが積層されており、発光ユニット106と発光ユニット108との間には電荷発
生層115が設けられる。なお、発光ユニット106と発光ユニット108は、同じ構成
でも異なる構成でもよい。例えば、発光ユニット106に、EL層100と同様な構成を
用いると好ましい。
【0176】
また、発光素子250は、発光層120と、発光層170と、を有する。また、発光ユ
ニット106は、発光層170の他に、正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送
層113、及び電子注入層114を有する。また、発光ユニット108は、発光層120
の他に、正孔注入層116、正孔輸送層117、電子輸送層118、及び電子注入層11
9を有する。
【0177】
電荷発生層115は、正孔輸送性材料に電子受容体であるアクセプター性物質が添加さ
れた構成であっても、電子輸送性材料に電子供与体であるドナー性物質が添加された構成
であってもよい。また、これらの両方の構成が積層されていても良い。
【0178】
電荷発生層115に、有機化合物とアクセプター性物質の複合材料が含まれる場合、該
複合材料には実施の形態1に示す正孔注入層111に用いることができる複合材料を用い
ればよい。有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール化合物、芳香族炭化
水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用
いることができる。なお、有機化合物としては、正孔移動度が1×10-6cm2/Vs
以上であるものを適用することが好ましい。ただし、電子よりも正孔の輸送性の高い物質
であれば、これら以外のものを用いてもよい。有機化合物とアクセプター性物質の複合材
料は、キャリア注入性、キャリア輸送性に優れているため、低電圧駆動、低電流駆動を実
現することができる。なお、発光ユニットの陽極側の面が電荷発生層115に接している
場合は、電荷発生層115が該発光ユニットの正孔注入層または正孔輸送層の役割も担う
ことができるため、該発光ユニットには正孔注入層または正孔輸送層を設けない構成であ
っても良い。あるいは、発光ユニットの陰極側の面が電荷発生層115に接している場合
は、電荷発生層115が該発光ユニットの電子注入層または電子輸送層の役割も担うこと
ができるため、該発光ユニットには電子注入層または電子輸送層を設けない構成であって
も良い。
【0179】
なお、電荷発生層115は、有機化合物とアクセプター性物質の複合材料を含む層と他
の材料により構成される層を組み合わせた積層構造として形成してもよい。例えば、有機
化合物とアクセプター性物質の複合材料を含む層と、電子供与性物質の中から選ばれた一
の化合物と電子輸送性の高い化合物とを含む層とを組み合わせて形成してもよい。また、
有機化合物とアクセプター性物質の複合材料を含む層と、透明導電膜を含む層とを組み合
わせて形成してもよい。
【0180】
なお、発光ユニット106と発光ユニット108とに挟まれる電荷発生層115は、電
極101と電極102とに電圧を印加したときに、一方の発光ユニットに電子を注入し、
他方の発光ユニットに正孔を注入するものであれば良い。例えば、
図6(A)において、
電極101の電位の方が電極102の電位よりも高くなるように電圧を印加した場合、電
荷発生層115は、発光ユニット106に電子を注入し、発光ユニット108に正孔を注
入する。
【0181】
なお、電荷発生層115は、光取出し効率の点から、可視光に対して透光性(具体的に
は、電荷発生層115に対する可視光の透過率が40%以上)を有することが好ましい。
また、電荷発生層115は、一対の電極(電極101及び電極102)よりも低い導電率
であっても機能する。
【0182】
上述した材料を用いて電荷発生層115を形成することにより、発光層が積層された場
合における駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0183】
また、
図6(A)においては、2つの発光ユニットを有する発光素子について説明した
が、3つ以上の発光ユニットを積層した発光素子についても、同様に適用することが可能
である。発光素子250に示すように、一対の電極間に複数の発光ユニットを電荷発生層
で仕切って配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度発光を可能とし、さらに
長寿命な発光素子を実現できる。また、消費電力が低い発光素子を実現することができる
。
【0184】
なお、複数のユニットのうち、少なくとも一つのユニットに、実施の形態1で示した構
成を適用することによって、発光効率の高い発光素子および信頼性が高い発光素子を提供
することができる。
【0185】
本実施の形態では、発光ユニット106が有する発光層170が、実施の形態1で示し
た発光層130の構成を有するとして説明する。そうすることで、発光素子250は、発
光効率の高く信頼性の高い発光素子となり好適である。
【0186】
また、発光ユニット108が有する発光層120は、
図6(B)に示すように、ホスト
材料121と、ゲスト材料122とを有する。なお、ゲスト材料122は蛍光性化合物と
して、以下説明する。
【0187】
≪発光層120の発光機構≫
発光層120の発光機構について、以下説明を行う。
【0188】
一対の電極(電極101及び電極102)あるいは電荷発生層115から注入された電
子および正孔が発光層120において再結合することにより、励起子が生成する。ゲスト
材料122と比較してホスト材料121は大量に存在するので、励起子の生成により、ほ
ぼホスト材料121の励起状態が形成される。
【0189】
なお、励起子はキャリア(電子および正孔)対のことである。励起子はエネルギーを有
するため、励起子が生成した材料は励起状態となる。
【0190】
形成されたホスト材料121の励起状態が一重項励起状態である場合、ホスト材料12
1のS1準位からゲスト材料122のS1準位へ一重項励起エネルギーがエネルギー移動
し、ゲスト材料122の一重項励起状態が形成される。
【0191】
ゲスト材料122は蛍光性化合物であるため、ゲスト材料122において一重項励起状
態が形成されると、ゲスト材料122は速やかに発光する。このとき、高い発光効率を得
るためには、ゲスト材料122の蛍光量子収率は高いことが好ましい。なお、ゲスト材料
122において、キャリアが再結合し、生成した励起状態が一重項励起状態である場合も
同様である。
【0192】
次に、キャリアの再結合によってホスト材料121の三重項励起状態が形成される場合
について説明する。この場合のホスト材料121およびゲスト材料122のエネルギー準
位の相関を
図6(C)に示す。また、
図6(C)における表記および符号は、以下の通り
である。なお、ホスト材料121のT1準位がゲスト材料122のT1準位より低いこと
が好ましいため、
図6(C)では、この場合を図示するが、ホスト材料121のT1準位
がゲスト材料122のT1準位よりも高くてもよい。
【0193】
・Host(121):ホスト材料121
・Guest(122):ゲスト材料122(蛍光性化合物)
・SFH:ホスト材料121のS1準位
・TFH:ホスト材料121のT1準位
・SFG:ゲスト材料122(蛍光性化合物)のS1準位
・TFG:ゲスト材料122(蛍光性化合物)のT1準位
【0194】
図6(C)に示すように、三重項-三重項消滅(TTA:Triplet-Tripl
et Annihilation)によって、キャリアの再結合によって生成した三重項
励起子同士が相互作用し、互いに励起エネルギーの受け渡し、及びスピン角運動量の交換
を行うことで、結果としてホスト材料121のS1準位(S
FH)のエネルギーを有する
一重項励起子に変換される反応が生じる(
図6(C) TTA参照)。ホスト材料121
の一重項励起エネルギーは、S
FHから、それよりもエネルギーの低いゲスト材料122
のS1準位(S
FG)へエネルギー移動が生じ(
図6(C) ルートE
5参照)、ゲスト
材料122の一重項励起状態が形成され、ゲスト材料122が発光する。
【0195】
なお、発光層120における三重項励起子の密度が十分に高い場合(例えば、1×10
12cm-3以上)では、三重項励起子単体の失活を無視し、2つの近接した三重項励起
子による反応のみを考えることができる。
【0196】
また、ゲスト材料122においてキャリアが再結合し三重項励起状態が形成されるとき
、ゲスト材料122の三重項励起状態は熱失活するため、発光に利用することが困難とな
る。しかしながら、ホスト材料121のT1準位(T
FH)がゲスト材料122のT1準
位(T
FG)より低い場合、ゲスト材料122の三重項励起エネルギーは、ゲスト材料1
22のT1準位(T
FG)からホスト材料121のT1準位(T
FH)へエネルギー移動
する(
図6(C) ルートE
6参照)ことが可能であり、その後TTAに利用される。
【0197】
すなわち、ホスト材料121は、TTAによって三重項励起エネルギーを一重項励起エ
ネルギーに変換する機能を有すると好ましい。そうすることで、発光層120で生成した
三重項励起エネルギーの一部を、ホスト材料121におけるTTAによって一重項励起エ
ネルギーに変換し、該一重項励起エネルギーをゲスト材料122に移動することで、蛍光
発光として取り出すことが可能となる。そのためには、ホスト材料121のS1準位(S
FH)は、ゲスト材料122のS1準位(SFG)より高いことが好ましい。また、ホス
ト材料121のT1準位(TFH)は、ゲスト材料122のT1準位(TFG)より低い
ことが好ましい。
【0198】
なお、特に、ゲスト材料122のT1準位(TFG)がホスト材料121のT1準位(
TFH)よりも低い場合においては、ホスト材料121とゲスト材料122との重量比は
、ゲスト材料122の重量比が低い方が好ましい。具体的には、ゲスト材料122の含有
量がホスト材料121に対する重量比で、0より大きく0.05以下が好ましい。そうす
ることで、ゲスト材料122でキャリアが再結合する確率を低減させることができる。ま
た、ホスト材料121のT1準位(TFH)からゲスト材料122のT1準位(TFG)
へのエネルギー移動が生じる確率を低減させることができる。
【0199】
なお、ホスト材料121は単一の化合物で構成されていても良く、複数の化合物から構
成されていても良い。
【0200】
また、発光ユニット106と発光ユニット108とで発光色が異なるゲスト材料を有す
る場合、発光層120からの発光が、発光層170からの発光よりも短波長側に発光のピ
ークを有する構成とすることが好ましい。高い三重項励起エネルギー準位を有する材料を
用いた発光素子は輝度劣化が早い傾向がある。そこで、短波長な発光を呈する発光層にT
TAを用いることによって、輝度劣化の小さい発光素子を提供することができる。
【0201】
なお、発光層170は、実施の形態1で示した発光層130の構成と、発光層120の
構成とを有することができる。
【0202】
<発光素子の構成例2>
図7(A)は、発光素子252の断面模式図である。
【0203】
図7(A)に示す発光素子252は、先に示した発光素子250と同様に、一対の電極
(電極101及び電極102)の間に、複数の発光ユニット(
図7(A)においては、発
光ユニット106及び発光ユニット110)を有する。少なくとも1つの発光ユニットは
、EL層100と同様な構成を有する。なお、発光ユニット106と発光ユニット110
は、同じ構成でも異なる構成でもよい。
【0204】
また、
図7(A)に示す発光素子252において、発光ユニット106と発光ユニット
110とが積層されており、発光ユニット106と発光ユニット110との間には電荷発
生層115が設けられる。例えば、発光ユニット106に、EL層100と同様な構成を
用いると好ましい。
【0205】
また、発光素子252は、発光層140と、発光層170と、を有する。また、発光ユ
ニット106は、発光層170の他に、正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送
層113、及び電子注入層114を有する。また、発光ユニット110は、発光層140
の他に、正孔注入層116、正孔輸送層117、電子輸送層118、及び電子注入層11
9を有する。
【0206】
なお、複数のユニットのうち、少なくとも一つのユニットに、実施の形態1で示した構
成を適用することによって、発光効率の高い発光素子および信頼性が高い発光素子を提供
することができる。
【0207】
また、発光ユニット110の発光層が燐光性化合物を有すると好適である。すなわち、
発光ユニット110が有する発光層140は、燐光性化合物を有し、発光ユニット106
が有する発光層170は、実施の形態1で示した発光層130の構成を有すると好ましい
。この場合の発光素子252の構成例について、以下説明を行う。
【0208】
発光ユニット110が有する発光層140は、
図7(B)で示すように、ホスト材料1
41と、ゲスト材料142とを有する。また、ホスト材料141は、有機化合物141_
1と、有機化合物141_2と、を有する。なお、発光層140が有するゲスト材料14
2が燐光性化合物として、以下説明する。
【0209】
≪発光層140の発光機構≫
次に、発光層140の発光機構について、以下説明を行う。
【0210】
発光層140が有する、有機化合物141_1と、有機化合物141_2とは励起錯体
を形成すると好ましい。
【0211】
有機化合物141_1と有機化合物141_2との組み合わせは、互いに励起錯体を形
成することが可能な組み合わせであればよいが、一方が正孔輸送性を有する化合物であり
、他方が電子輸送性を有する化合物であることが、より好ましい。
【0212】
発光層140における有機化合物141_1と、有機化合物141_2と、ゲスト材料
142とのエネルギー準位の相関を
図7(C)に示す。なお、
図7(C)における表記及
び符号は、以下の通りである。
・Host(141_1):有機化合物141_1(ホスト材料)
・Host(141_2):有機化合物141_2(ホスト材料)
・Guest(142):ゲスト材料142(燐光性化合物)
・S
PH1:有機化合物141_1(ホスト材料)のS1準位
・T
PH1:有機化合物141_1(ホスト材料)のT1準位
・S
PH2:有機化合物141_2(ホスト材料)のS1準位
・T
PH2:有機化合物141_2(ホスト材料)のT1準位
・T
PG:ゲスト材料142(燐光性化合物)のT1準位
・S
PE:励起錯体のS1準位
・T
PE:励起錯体のT1準位
【0213】
有機化合物141_1と有機化合物141_2とは励起錯体を形成し、該励起錯体のS
1準位(S
PE)とT1準位(T
PE)は互いに隣接するエネルギー準位となる(
図7(
C) ルートE
7参照)。
【0214】
有機化合物141_1及び有機化合物141_2は、一方がホールを、他方が電子を受
け取ることで速やかに励起錯体を形成する。あるいは、一方が励起状態となると、速やか
に他方と相互作用することで励起錯体を形成する。したがって、発光層140における励
起子のほとんどが励起錯体として存在する。励起錯体の励起エネルギー準位(SPEまた
はTPE)は、励起錯体を形成するホスト材料(有機化合物141_1及び有機化合物1
41_2)のS1準位(SPH1及びSPH2)より低くなるため、より低い励起エネル
ギーでホスト材料141の励起状態を形成することが可能となる。これによって、発光素
子の駆動電圧を下げることができる。
【0215】
そして、励起錯体の(S
PE)と(T
PE)の双方のエネルギーを、ゲスト材料142
(燐光性化合物)のT1準位へ移動させて発光が得られる(
図7(C) ルートE
8、E
9参照)。
【0216】
なお、励起錯体のT1準位(TPE)は、ゲスト材料142のT1準位(TPG)より
大きいことが好ましい。そうすることで、生成した励起錯体の一重項励起エネルギーおよ
び三重項励起エネルギーを、励起錯体のS1準位(SPE)およびT1準位(TPE)か
らゲスト材料142のT1準位(TPG)へエネルギー移動することができる。
【0217】
また、励起錯体からゲスト材料142へ効率よく励起エネルギーを移動させるためには
、励起錯体のT1準位(TPE)が、励起錯体を形成する各有機化合物(有機化合物14
1_1および有機化合物141_2)のT1準位(TPH1およびTPH2)と同等か、
より小さいことが好ましい。これにより、各有機化合物(有機化合物141_1及び有機
化合物141_2)による励起錯体の三重項励起エネルギーのクエンチが生じにくくなり
、効率よく励起錯体からゲスト材料142へエネルギー移動が発生する。
【0218】
また、有機化合物141_1と有機化合物141_2とが、効率よく励起錯体を形成す
るためには、有機化合物141_1および有機化合物141_2の一方のHOMO準位が
他方のHOMO準位より高く、一方のLUMO準位が他方のLUMO準位より高いことが
好ましい。例えば、有機化合物141_1が正孔輸送性を有し、有機化合物141_2が
電子輸送性を有する場合、有機化合物141_1のHOMO準位が有機化合物141_2
のHOMO準位より高いことが好ましく、有機化合物141_1のLUMO準位が有機化
合物141_2のLUMO準位より高いことが好ましい。あるいは、有機化合物141_
2が正孔輸送性を有し、有機化合物141_1が電子輸送性を有する場合、有機化合物1
41_2のHOMO準位が有機化合物141_1のHOMO準位より高いことが好ましく
、有機化合物141_2のLUMO準位が有機化合物141_1のLUMO準位より高い
ことが好ましい。具体的には、有機化合物141_1のHOMO準位と有機化合物141
_2のHOMO準位とのエネルギー差は、好ましくは0.05eV以上であり、より好ま
しくは0.1eV以上であり、さらに好ましくは0.2eV以上である。また、有機化合
物141_1のLUMO準位と有機化合物141_2のLUMO準位とのエネルギー差は
、好ましくは0.05eV以上であり、より好ましくは0.1eV以上であり、さらに好
ましくは0.2eV以上である。
【0219】
また、有機化合物141_1と有機化合物141_2との組み合わせが、正孔輸送性を
有する化合物と電子輸送性を有する化合物との組み合わせである場合、その混合比によっ
てキャリアバランスを容易に制御することが可能となる。具体的には、正孔輸送性を有す
る化合物:電子輸送性を有する化合物=1:9から9:1(重量比)の範囲が好ましい。
また、該構成を有することで、容易にキャリアバランスを制御することができることから
、キャリア再結合領域の制御も簡便に行うことができる。
【0220】
<エネルギー移動機構>
次に、ホスト材料141と、ゲスト材料142との分子間のエネルギー移動過程の支配
因子について説明する。分子間のエネルギー移動の機構としては、フェルスター機構(双
極子-双極子相互作用)と、デクスター機構(電子交換相互作用)の2つの機構が提唱さ
れている。ここでは、ホスト材料141とゲスト材料142との分子間のエネルギー移動
過程について説明するが、ホスト材料141が励起錯体の場合も同様である。
【0221】
≪フェルスター機構≫
フェルスター機構では、エネルギー移動に、分子間の直接的接触を必要とせず、ホスト
材料141及びゲスト材料142間の双極子振動の共鳴現象を通じてエネルギー移動が起
こる。双極子振動の共鳴現象によってホスト材料141がゲスト材料142にエネルギー
を受け渡し、励起状態のホスト材料141が基底状態になり、基底状態のゲスト材料14
2が励起状態になる。なお、フェルスター機構の速度定数kh*→gを数式(1)に示す
。
【0222】
【0223】
数式(1)において、νは、振動数を表し、f’h(ν)は、ホスト材料141の規格
化された発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペ
クトル、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光スペクトル)を表し、
εg(ν)は、ゲスト材料142のモル吸光係数を表し、Nは、アボガドロ数を表し、n
は、媒体の屈折率を表し、Rは、ホスト材料141とゲスト材料142の分子間距離を表
し、τは、実測される励起状態の寿命(蛍光寿命や燐光寿命)を表し、cは、光速を表し
、φは、発光量子収率(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光量子収
率、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光量子収率)を表し、K2は
、ホスト材料141とゲスト材料142の遷移双極子モーメントの配向を表す係数(0か
ら4)である。なお、ランダム配向の場合はK2=2/3である。
【0224】
≪デクスター機構≫
デクスター機構では、ホスト材料141とゲスト材料142が軌道の重なりを生じる接
触有効距離に近づき、励起状態のホスト材料141の電子と、基底状態のゲスト材料14
2との電子の交換を通じてエネルギー移動が起こる。なお、デクスター機構の速度定数k
h*→gを数式(2)に示す。
【0225】
【0226】
数式(2)において、hは、プランク定数であり、Kは、エネルギーの次元を持つ定数
であり、νは、振動数を表し、f’h(ν)は、ホスト材料141の規格化された発光ス
ペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル、三重項
励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光スペクトル)を表し、ε’g(ν)は
、ゲスト材料142の規格化された吸収スペクトルを表し、Lは、実効分子半径を表し、
Rは、ホスト材料141とゲスト材料142の分子間距離を表す。
【0227】
ここで、ホスト材料141からゲスト材料142へのエネルギー移動効率φETは、数
式(3)で表される。krは、ホスト材料141の発光過程(一重項励起状態からのエネ
ルギー移動を論じる場合は蛍光、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐
光)の速度定数を表し、knは、ホスト材料141の非発光過程(熱失活や項間交差)の
速度定数を表し、τは、実測されるホスト材料141の励起状態の寿命を表す。
【0228】
【0229】
数式(3)より、エネルギー移動効率φETを高くするためには、エネルギー移動の速
度定数kh*→gを大きくし、他の競合する速度定数kr+kn(=1/τ)が相対的に
小さくなれば良いことがわかる。
【0230】
≪エネルギー移動を高めるための概念≫
フェルスター機構によるエネルギー移動においては、エネルギー移動効率φETは、発
光量子収率φ(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じている場合は蛍光量子収率、
三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光量子収率)が高い方が良い。ま
た、ホスト材料141の発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる
場合は蛍光スペクトル)とゲスト材料142の吸収スペクトル(一重項基底状態から三重
項励起状態への遷移に相当する吸収)との重なりが大きいことが好ましい。さらに、ゲス
ト材料142のモル吸光係数も高い方が好ましい。このことは、ホスト材料141の発光
スペクトルと、ゲスト材料142の最も長波長側に現れる吸収帯とが重なることを意味す
る。
【0231】
また、デクスター機構によるエネルギー移動において、速度定数kh*→gを大きくす
るにはホスト材料141の発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じ
る場合は蛍光スペクトル、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光スペ
クトル)とゲスト材料142の吸収スペクトル(一重項基底状態から三重項励起状態への
遷移に相当する吸収)との重なりが大きい方が良い。したがって、エネルギー移動効率の
最適化は、ホスト材料141の発光スペクトルと、ゲスト材料142の最も長波長側に現
れる吸収帯とが重なることによって実現される。
【0232】
なお、ホスト材料141からゲスト材料142へのエネルギー移動と同様に、励起錯体
からゲスト材料142へのエネルギー移動過程についても、フェルスター機構、及びデク
スター機構の双方の機構によるエネルギー移動が生じる。
【0233】
すなわち、ホスト材料141は、ゲスト材料142に効率的にエネルギー移動が可能な
エネルギードナーとしての機能を有する励起錯体を形成する組み合わせの有機化合物14
1_1および有機化合物141_2を有する。有機化合物141_1および有機化合物1
41_2が形成する励起錯体は、有機化合物141_1および有機化合物141_2単体
の励起状態より低い励起エネルギーで形成が可能となる。したがって、発光素子の駆動電
圧を低減することができる。
【0234】
さらに、励起錯体のS1準位からエネルギーアクセプターとなるゲスト材料142のT
1準位へのエネルギー移動が生じやすくするためには、励起錯体の発光スペクトルと、ゲ
スト材料142の最も長波長側(低エネルギー側)に現れる吸収帯と、が重なると好まし
い。そうすることで、ゲスト材料142の三重項励起状態の生成効率を高めることができ
る。
【0235】
なお、発光層140において生成する励起錯体は、一重項励起エネルギー準位と三重項
励起エネルギー準位とが近接しているという特徴を有するため、励起錯体の発光スペクト
ルとゲスト材料142の最も長波長側(低エネルギー側)に現れる吸収帯を重ねることで
、励起錯体の三重項励起エネルギー準位からゲスト材料142の三重項励起エネルギー準
位へのエネルギー移動も生じやすくすることが可能となる。
【0236】
発光層140を上述の構成とすることで、発光層140のゲスト材料142(燐光性化
合物)からの発光を、効率よく得ることが可能となる。
【0237】
なお、上記に示すルートE7乃至E9の過程を、本明細書等においてExTET(Ex
ciplex-Triplet Energy Transfer)と呼称する場合があ
る。別言すると、発光層140は、励起錯体からゲスト材料142への励起エネルギーの
供与がある。なお、この場合は必ずしもTPEからSPEへの逆項間交差効率が高い必要
はなく、SPEからの発光量子収率が高い必要もないため、材料を幅広く選択することが
可能となる。
【0238】
また、発光層170は、実施の形態1で示した発光層130の構成と、発光層140の
構成とを有することができる。
【0239】
なお、上記各構成において、発光ユニット106及び発光ユニット108、または発光
ユニット106及び発光ユニット110、に用いるゲスト材料が呈する発光色としては、
互いに同じであっても異なっていてもよい。発光ユニット106及び発光ユニット108
、または発光ユニット106及び発光ユニット110、で互いに同じ色の発光を呈する機
能を有するゲスト材料を有する場合、発光素子250及び発光素子252は少ない電流値
で高い発光輝度を呈する発光素子となり好ましい。また、発光ユニット106及び発光ユ
ニット108、または発光ユニット106及び発光ユニット110、で互いに異なる色の
発光を呈する機能を有するゲスト材料を有する場合、発光素子250及び発光素子252
は多色発光を呈する発光素子となり好ましい。この場合、発光層120及び発光層170
のいずれか一方もしくは双方、または発光層140及び発光層170のいずれか一方もし
くは双方、に発光波長の異なる複数の発光材料を用いることによって、発光素子250及
び発光素子252が呈する発光スペクトルは異なる発光ピークを有する発光が合成された
光となるため、少なくとも二つの極大値を有する発光スペクトルとなる。
【0240】
上記の構成は白色発光を得るためにも好適である。発光層120及び発光層170、ま
たは発光層140及び発光層170、の光を互いに補色の関係とすることによって、白色
発光を得ることができる。特に、演色性の高い白色発光、あるいは少なくとも赤色と緑色
と青色とを有する発光、になるようゲスト材料を選択することが好適である。
【0241】
また、発光層120、発光層140、または発光層170の少なくとも一つを層状にさ
らに分割し、当該分割した層ごとに異なる発光材料を含有させるようにしても良い。すな
わち、発光層120、発光層140、または発光層170の少なくとも一つが2層以上の
複数層でもって構成することもできる。例えば、第1の発光層と第2の発光層を正孔輸送
層側から順に積層して発光層とする場合、第1の発光層のホスト材料として正孔輸送性を
有する材料を用い、第2の発光層のホスト材料として電子輸送性を有する材料を用いる構
成などがある。この場合、第1の発光層と第2の発光層とが有する発光材料は、同じ材料
あっても異なる材料であってもよく、同じ色の発光を呈する機能を有する材料であっても
、異なる色の発光を呈する機能を有する材料であってもよい。互いに異なる色の発光を呈
する機能を有する複数の発光材料を有する構成により、三原色や、4色以上の発光色から
なる演色性の高い白色発光を得ることもできる。
【0242】
<発光素子の構成例3>
次に、
図6及び
図7に示す発光素子と異なる構成例について、
図8(A)(B)(C)
を用いて、以下説明を行う。
【0243】
【0244】
図8(A)に示す発光素子254は、一対の電極(電極101及び電極102)の間に
EL層100が挟まれた構造である。なお、発光素子254において、電極101が陽極
として機能し、電極102が陰極として機能するとして、以下説明するが、発光素子25
4の構成としては、逆であっても構わない。
【0245】
また、EL層100は、発光層180を有し、発光層180は、発光層120と、発光
層140と、を有する。また、発光素子254において、EL層100として、発光層の
他に、正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送層118、及び電子注入層119
が図示されているが、これらの積層構造は一例であり、発光素子254におけるEL層1
00の構成はこれらに限定されない。例えば、EL層100において、上記各層の積層順
を変えてもよい。または、EL層100において、上記各層以外の機能層を設けてもよい
。該機能層としては、例えば、正孔または電子の注入障壁を低減する機能、正孔または電
子の輸送性を向上する機能、正孔または電子の輸送性を阻害する機能、正孔または電子を
発生する機能、を有する構成であってもよい。
【0246】
また、
図8(B)に示すように、発光層120は、ホスト材料121と、ゲスト材料1
22とを有する。また、発光層140は、ホスト材料141と、ゲスト材料142とを有
する。ホスト材料141は、有機化合物141_1と、有機化合物141_2とを有する
。なお、ゲスト材料122が蛍光性化合物、ゲスト材料142が燐光性化合物として、以
下説明する。
【0247】
なお、発光層120または発光層140の少なくとも一方が、実施の形態1で示した発
光層130の構成を有すると好ましい。
【0248】
≪発光層180の発光機構≫
発光層120の発光機構としては、
図6(B)(C)に示す発光層120と同様の発光
機構である。また、発光層140の発光機構としては、
図7(B)(C)に示す発光層1
40と同様の発光機構である。
【0249】
図8(A)に示すように、発光層120と、発光層140とが互いに接する構成を有す
る場合、発光層120と発光層140との界面において、発光層140の励起錯体から発
光層120のホスト材料121へのエネルギー移動(とくに三重項励起エネルギーのエネ
ルギー移動)が起こったとしても、発光層120にて上記三重項励起エネルギーを発光に
変換することができる。
【0250】
なお、発光層120のホスト材料121のT1準位が、発光層140が有する有機化合
物141_1及び有機化合物141_2のT1準位よりも低いと好ましい。また、発光層
120において、ホスト材料121のS1準位がゲスト材料122(蛍光性化合物)のS
1準位よりも高く、且つ、ホスト材料121のT1準位がゲスト材料122(蛍光性化合
物)のT1準位よりも低いと好ましい。
【0251】
具体的には、発光層120にTTAを用い、発光層140にExTETを用いる場合の
エネルギー準位の相関を
図8(C)に示す。なお、
図8(C)における表記及び符号は、
以下の通りである。
・Fluorescence EML(120):発光層120(蛍光発光層)
・Phosphorescence EML(140):発光層140(燐光発光層)
・Host(121):ホスト材料121
・Guest(122):ゲスト材料122(蛍光性化合物)
・Host(141_1):ホスト材料(有機化合物141_1)
・Guest(142):ゲスト材料142(燐光性化合物)
・Exciplex:励起錯体(有機化合物141_1及び有機化合物141_2)
・S
FH:ホスト材料121のS1準位
・T
FH:ホスト材料121のT1準位
・S
FG:ゲスト材料122(蛍光性化合物)のS1準位
・T
FG:ゲスト材料122(蛍光性化合物)のT1準位
・S
PH:ホスト材料(有機化合物141_1)のS1準位
・T
PH:ホスト材料(有機化合物141_1)のT1準位
・T
PG:ゲスト材料142(燐光性化合物)のT1準位
・S
E:励起錯体のS1準位
・T
E:励起錯体のT1準位
【0252】
図8(C)に示すように、励起錯体は励起状態でしか存在しないため、励起錯体と励起
錯体との間の励起子拡散は生じにくい。また、励起錯体の励起エネルギー準位(S
E、T
E)は、発光層140の有機化合物141_1(すなわち、燐光性化合物のホスト材料)
の励起エネルギー準位(S
PH、T
PH)よりも低いので、励起錯体から有機化合物14
1_1へのエネルギーの拡散も生じない。すなわち、燐光発光層(発光層140)内にお
いて、励起錯体の励起子拡散距離は短いため、燐光発光層(発光層140)の効率を保つ
ことが可能となる。また、蛍光発光層(発光層120)と燐光発光層(発光層140)の
界面において、燐光発光層(発光層140)の励起錯体の三重項励起エネルギーの一部が
、蛍光発光層(発光層120)に拡散したとしても、その拡散によって生じた蛍光発光層
(発光層120)の三重項励起エネルギーは、TTAを通じて発光に変換されるため、エ
ネルギー損失を低減することが可能となる。
【0253】
以上のように、発光素子254は、発光層140にExTETを利用し、且つ発光層1
20にTTAを利用することで、エネルギー損失が低減されるため、高い発光効率の発光
素子とすることができる。また、発光素子254に示すように、発光層120と、発光層
140とが互いに接する構成とする場合、上記エネルギー損失が低減されるとともに、E
L層100の層数を低減させることができる。したがって、製造コストの少ない発光素子
とすることができる。
【0254】
なお、発光層120と発光層140とは互いに接していない構成であっても良い。この
場合、発光層140中で生成する、有機化合物141_1、有機化合物141_2、また
はゲスト材料142(燐光性化合物)の励起状態から発光層120中のホスト材料121
、またはゲスト材料122(蛍光性化合物)へのデクスター機構によるエネルギー移動(
特に三重項エネルギー移動)を防ぐことができる。したがって、発光層120と発光層1
40との間に設ける層は数nm程度の厚さがあればよい。具体的には、1nm以上5nm
以下であると、駆動電圧の上昇を抑制することができ好適である。
【0255】
発光層120と発光層140との間に設ける層は単一の材料で構成されていても良いが
、正孔輸送性材料と電子輸送性材料の両方が含まれていても良い。単一の材料で構成する
場合、バイポーラー性材料を用いても良い。ここでバイポーラー性材料とは、電子と正孔
の移動度の比が100以下である材料を指す。また、正孔輸送性材料または電子輸送性材
料などを使用しても良い。もしくは、そのうちの少なくとも一つは、発光層140のホス
ト材料(有機化合物141_1または有機化合物141_2)と同一の材料で形成しても
良い。これにより、発光素子の作製が容易になり、また、駆動電圧が低減される。さらに
、正孔輸送性材料と電子輸送性材料とで励起錯体を形成しても良く、これによって励起子
の拡散を効果的に防ぐことができる。具体的には、発光層140のホスト材料(有機化合
物141_1または有機化合物141_2)あるいはゲスト材料142(燐光性化合物)
の励起状態から、発光層120のホスト材料121あるいはゲスト材料122(蛍光性化
合物)へのエネルギー移動を防ぐことができる。
【0256】
また、発光素子254においては、発光層120が正孔輸送層112側、発光層140
が電子輸送層118側として説明したが、本発明の一態様の発光素子としては、これに限
定されず、発光層120が電子輸送層118側、発光層140が正孔輸送層112側であ
っても構わない。
【0257】
なお、発光素子254では、キャリアの再結合領域はある程度の分布を持って形成され
ることが好ましい。このため、発光層120または発光層140において、適度なキャリ
アトラップ性があることが好ましく、発光層140が有するゲスト材料142(燐光性化
合物)が電子トラップ性を有していることが好ましい。または、発光層120が有するゲ
スト材料122(蛍光性化合物)が正孔トラップ性を有していることが好ましい。
【0258】
なお、発光層120からの発光が、発光層140からの発光よりも短波長側に発光のピ
ークを有する構成とすることが好ましい。短波長の発光を呈する燐光性化合物を用いた発
光素子は輝度劣化が早い傾向がある。そこで、短波長の発光を蛍光発光とすることによっ
て、輝度劣化の小さい発光素子を提供することができる。
【0259】
また、発光層120と発光層140とで異なる発光波長の光を得ることによって、多色
発光の素子とすることができる。この場合、発光スペクトルは異なる発光ピークを有する
発光が合成された光となるため、少なくとも二つの極大値を有する発光スペクトルとなる
。
【0260】
また、上記の構成は白色発光を得るためにも好適である。発光層120と発光層140
との光を互いに補色の関係とすることによって、白色発光を得ることができる。
【0261】
また、発光層120及び発光層140のいずれか一方または双方に、発光波長の異なる
複数の発光材料を用いることによって、三原色や、4色以上の発光色からなる演色性の高
い白色発光を得ることもできる。この場合、発光層を層状にさらに分割し、当該分割した
層ごとに異なる発光材料を含有させるようにしても良い。
【0262】
<発光層に用いることができる材料の例>
次に、発光層120、発光層140、及び発光層170に用いることのできる材料につ
いて、以下説明する。
【0263】
≪発光層120に用いることのできる材料≫
発光層120中では、ホスト材料121が重量比で最も多く存在し、ゲスト材料122
(蛍光性化合物)は、ホスト材料121中に分散される。ホスト材料121のS1準位は
、ゲスト材料122(蛍光性化合物)のS1準位よりも高く、ホスト材料121のT1準
位は、ゲスト材料122(蛍光性化合物)のT1準位よりも低いことが好ましい。
【0264】
発光層120において、ゲスト材料122としては、特に限定はないが、アントラセン
誘導体、テトラセン誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、ペ
リレン誘導体、スチルベン誘導体、アクリドン誘導体、クマリン誘導体、フェノキサジン
誘導体、フェノチアジン誘導体などが好ましい。具体的には、例えば、実施の形態1で示
したゲスト材料132として例示した蛍光性化合物を用いることができる。
【0265】
また、発光層120において、ホスト材料121に用いることが可能な材料としては、
特に限定はないが、例えば、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称
:Alq)、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:
Almq3)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(
略称:BeBq2)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト
)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)
(略称:Znq)、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(
略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(
略称:ZnBTZ)などの金属錯体、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-
ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3-ビス[5
-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベン
ゼン(略称:OXD-7)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-te
rt-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、2,2’,2’
’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾー
ル)(略称:TPBI)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイ
ン(略称:BCP)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-
イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11)などの複素環化合物、4,4
’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまた
はα-NPD)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1
,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:TPD)、4,4’-ビス[N-(
スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-イル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称
:BSPB)などの芳香族アミン化合物が挙げられる。また、アントラセン誘導体、フェ
ナントレン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、ジベンゾ[g,p]クリセン誘導体
等の縮合多環芳香族化合物が挙げられ、具体的には、9,10-ジフェニルアントラセン
(略称:DPAnth)、N,N-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アン
トリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:CzA1PA)、4-(
10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:DPhPA)、4-(9
H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニ
ルアミン(略称:YGAPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9
-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPA)、N
,9-ジフェニル-N-{4-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]フ
ェニル}-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPBA)、N,9-ジフェニ
ル-N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-9H-カルバゾール-3-アミン
(略称:2PCAPA)、6,12-ジメトキシ-5,11-ジフェニルクリセン、N,
N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,
p]クリセン-2,7,10,15-テトラアミン(略称:DBC1)、9-[4-(1
0-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)、
3,6-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H
-カルバゾール(略称:DPCzPA)、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル
)アントラセン(略称:DPPA)、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称
:DNA)、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称
:t-BuDNA)、9,9’-ビアントリル(略称:BANT)、9,9’-(スチル
ベン-3,3’-ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS)、9,9’-(スチルベ
ン-4,4’-ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS2)、1,1’,1’’-(
ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリピレン(略称:TPB3)などを挙げることがで
きる。また、これら及び公知の物質の中から、上記ゲスト材料122のエネルギーギャッ
プより大きなエネルギーギャップを有する物質を、一種もしくは複数種選択して用いれば
よい。
【0266】
なお、発光層120は2層以上の複数層でもって構成することもできる。例えば、第1
の発光層と第2の発光層を正孔輸送層側から順に積層して発光層120とする場合、第1
の発光層のホスト材料として正孔輸送性を有する物質を用い、第2の発光層のホスト材料
として電子輸送性を有する物質を用いる構成などがある。
【0267】
また、発光層120において、ホスト材料121は、一種の化合物から構成されていて
も良く、複数の化合物から構成されていても良い。あるいは、発光層120において、ホ
スト材料121およびゲスト材料122以外の材料を有していても良い。
【0268】
また、発光層120が、実施の形態1で示した発光層130の構成を有してもよい。そ
の場合、実施の形態1で示したホスト材料131及びゲスト材料132(蛍光性化合物)
を用いることが好ましい。
【0269】
≪発光層140に用いることのできる材料≫
発光層140中では、ホスト材料141が重量比で最も多く存在し、ゲスト材料142
(燐光性化合物)は、ホスト材料141中に分散される。発光層140のホスト材料14
1(有機化合物141_1及び有機化合物141_2)のT1準位は、ゲスト材料142
のT1準位よりも高いことが好ましい。
【0270】
有機化合物141_1としては、亜鉛やアルミニウム系金属錯体の他、オキサジアゾー
ル誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、キノキサリン誘導体、ジベ
ンゾキノキサリン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ピリミジ
ン誘導体、トリアジン誘導体、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、フェナントロリン誘
導体などが挙げられる。他の例としては、芳香族アミンやカルバゾール誘導体などが挙げ
られる。具体的には、実施の形態1で示した電子輸送性材料および正孔輸送性材料を用い
ることができる。
【0271】
有機化合物141_2としては、有機化合物141_1と励起錯体を形成できる組み合
わせが好ましい。具体的には、例えば、実施の形態1で示した電子輸送性材料および正孔
輸送性材料を用いることができる。この場合、有機化合物141_1と有機化合物141
_2とで形成される励起錯体の発光ピークが、ゲスト材料142(燐光性化合物)の三重
項MLCT(Metal to Ligand Charge Transfer)遷移
の吸収帯、より具体的には、最も長波長側の吸収帯と重なるように、有機化合物141_
1、有機化合物141_2、およびゲスト材料142(燐光性化合物)を選択することが
好ましい。これにより、発光効率が飛躍的に向上した発光素子とすることができる。ただ
し、燐光性化合物に替えて熱活性化遅延蛍光性化合物を用いる場合においては、最も長波
長側の吸収帯は一重項の吸収帯であることが好ましい。
【0272】
ゲスト材料142(燐光性化合物)としては、イリジウム、ロジウム、または白金系の
有機金属錯体、あるいは金属錯体が挙げられ、中でも有機イリジウム錯体、例えばイリジ
ウム系オルトメタル錯体が好ましい。オルトメタル化する配位子としては4H-トリアゾ
ール配位子、1H-トリアゾール配位子、イミダゾール配位子、ピリジン配位子、ピリミ
ジン配位子、ピラジン配位子、あるいはイソキノリン配位子などが挙げられる。金属錯体
としては、ポルフィリン配位子を有する白金錯体などが挙げられる。具体的には、例えば
、実施の形態1で示したゲスト材料132として例示した燐光性化合物を用いることがで
きる。
【0273】
発光層140に含まれる発光材料としては、三重項励起エネルギーを発光に変換できる
材料であればよい。該三重項励起エネルギーを発光に変換できる材料としては、燐光性化
合物の他に、熱活性化遅延蛍光性化合物が挙げられる。したがって、燐光性化合物と記載
した部分に関しては、熱活性化遅延蛍光性化合物と読み替えても構わない。
【0274】
また、熱活性化遅延蛍光を示す材料は、単独で逆項間交差により三重項励起状態から一
重項励起状態を生成できる材料であっても良いし、励起錯体(エキサイプレックス、また
はExciplexともいう)を形成する複数の材料から構成されても良い。
【0275】
熱活性化遅延蛍光性化合物が、一種類の材料から構成される場合、具体的には、実施の
形態1で示した熱活性化遅延蛍光性化合物を用いることができる。
【0276】
また、熱活性化遅延蛍光性化合物をホスト材料として用いる場合、励起錯体を形成する
2種類の化合物を組み合わせて用いることが好ましい。この場合、上記に示した励起錯体
を形成する組み合わせである電子を受け取りやすい化合物と、正孔を受け取りやすい化合
物とを用いることが特に好ましい。
【0277】
また、発光層140が、実施の形態1で示した発光層130の構成を有してもよい。そ
の場合、実施の形態1で示したホスト材料131及びゲスト材料132(燐光性化合物)
を用いることが好ましい。
【0278】
≪発光層170に用いることのできる材料≫
発光層170に用いることのできる材料としては、先の実施の形態1に示す発光層に用
いることのできる材料を援用すればよく、そうすることで、発光効率の高い発光素子を作
製することができる。
【0279】
また、発光層120、発光層140、及び発光層170に含まれる発光材料の発光色に
限定は無く、それぞれ同じでも異なっていても良い。各々から得られる発光が混合されて
素子外へ取り出されるので、例えば両者の発光色が互いに補色の関係にある場合、発光素
子は白色の光を与えることができる。発光素子の信頼性を考慮すると、発光層120に含
まれる発光材料の発光ピーク波長は発光層170に含まれる発光材料のそれよりも短いこ
とが好ましい。
【0280】
なお、発光ユニット106、発光ユニット108、発光ユニット110、及び電荷発生
層115は、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法、グラビア印刷等
の方法で形成することができる。
【0281】
以上、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用
いることができる。
【0282】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1及び実施の形態2に示す構成と異なる構成の発光素子
の例について、
図9乃至
図12を用いて以下に説明する。
【0283】
<発光素子の構成例1>
図9(A)(B)は、本発明の一態様の発光素子を示す断面図である。なお、
図9(A
)(B)において、
図1(A)に示す符号と同様の機能を有する箇所には、同様のハッチ
パターンとし、符号を省略する場合がある。また、同様の機能を有する箇所には、同様の
符号を付し、その詳細な説明は省略する場合がある。
【0284】
図9(A)(B)に示す発光素子260a及び発光素子260bは、基板200側に光
を取り出す下面射出(ボトムエミッション)型の発光素子であってもよく、基板200と
反対方向に光を取り出す上面射出(トップエミッション)型の発光素子であってもよい。
なお、本発明の一態様はこれに限定されず、発光素子が呈する光を基板200の上方およ
び下方の双方に取り出す両面射出(デュアルエミッション)型の発光素子であっても良い
。
【0285】
発光素子260a及び発光素子260bが、ボトムエミッション型である場合、電極1
01は、光を透過する機能を有することが好ましい。また、電極102は、光を反射する
機能を有することが好ましい。あるいは、発光素子260a及び発光素子260bが、ト
ップエミッション型である場合、電極101は、光を反射する機能を有することが好まし
い。また、電極102は、光を透過する機能を有することが好ましい。
【0286】
発光素子260a及び発光素子260bは、基板200上に電極101と、電極102
とを有する。また、電極101と電極102との間に、発光層123Bと、発光層123
Gと、発光層123Rと、を有する。また、正孔注入層111と、正孔輸送層112と、
電子輸送層113と、電子注入層114と、を有する。
【0287】
また、発光素子260bは、電極101の構成の一部として、導電層101aと、導電
層101a上の導電層101bと、導電層101a下の導電層101cとを有する。すな
わち、発光素子260bは、導電層101aが、導電層101bと、導電層101cとで
挟持された電極101の構成を有する。
【0288】
発光素子260bにおいて、導電層101bと、導電層101cとは、異なる材料で形
成されてもよく、同じ材料で形成されても良い。導電層101bと導電層101cとが、
同じ導電性材料で形成される場合、電極101の形成過程におけるエッチング工程による
パターン形成が容易になるため好ましい。
【0289】
なお、発光素子260bにおいて、導電層101bまたは導電層101cにおいて、い
ずれか一方のみを有する構成としてもよい。
【0290】
なお、電極101が有する導電層101a、101b、及び101cは、それぞれ実施
の形態1で示した電極101または電極102と同様の構成および材料を用いることがで
きる。
【0291】
図9(A)(B)においては、電極101と電極102とで挟持された領域221B、
領域221G、及び領域221R、の間に隔壁145を有する。隔壁145は、絶縁性を
有する。隔壁145は、電極101の端部を覆い、該電極と重なる開口部を有する。隔壁
145を設けることによって、各領域の基板200上の電極101を、それぞれ島状に分
離することが可能となる。
【0292】
なお、発光層123Bと、発光層123Gとは、隔壁145と重なる領域において、互
いに重なる領域を有していてもよい。また、発光層123Gと、発光層123Rとは、隔
壁145と重なる領域において、互いに重なる領域を有していてもよい。また、発光層1
23Rと、発光層123Bとは、隔壁145と重なる領域において、互いに重なる領域を
有していてもよい。
【0293】
隔壁145としては、絶縁性であればよく、無機材料または有機材料を用いて形成され
る。該無機材料としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シ
リコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等が挙げられる。該有機材料としては、例
えば、アクリル樹脂、またはポリイミド樹脂等の感光性の樹脂材料が挙げられる。
【0294】
なお、酸化窒化シリコン膜とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多い膜を
指し、好ましくは酸素が55原子%以上65原子%以下、窒素が1原子%以上20原子%
以下、シリコンが25原子%以上35原子%以下、水素が0.1原子%以上10原子%以
下の範囲で含まれる膜をいう。窒化酸化シリコン膜とは、その組成として、酸素よりも窒
素の含有量が多い膜を指し、好ましくは窒素が55原子%以上65原子%以下、酸素が1
原子%以上20原子%以下、シリコンが25原子%以上35原子%以下、水素が0.1原
子%以上10原子%以下の濃度範囲で含まれる膜をいう。
【0295】
また、発光層123R、発光層123G、発光層123Bは、それぞれ異なる色を呈す
る機能を有する発光材料を有することが好ましい。例えば、発光層123Rが赤色を呈す
る機能を有する発光材料を有することで、領域221Rは赤色の発光を呈し、発光層12
3Gが緑色を呈する機能を有する発光材料を有することで、領域221Gは緑色の発光を
呈し、発光層123Bが青色を呈する機能を有する発光材料を有することで、領域221
Bは青色の発光を呈する。このような構成を有する発光素子260aまたは発光素子26
0bを、表示装置の画素に用いることで、フルカラー表示が可能な表示装置を作製するこ
とができる。また、それぞれの発光層の膜厚は、同じであっても良いし、異なっていても
良い。
【0296】
また、発光層123B、発光層123G、発光層123R、のいずれか一つまたは複数
の発光層は、実施の形態1で示した発光層130の構成を有することが好ましい。そうす
ることで、発光効率の良好な発光素子及び信頼性が高い発光素子を作製することができる
。
【0297】
なお、発光層123B、発光層123G、発光層123R、のいずれか一つまたは複数
の発光層は、2層以上が積層された構成としても良い。
【0298】
以上のように、少なくとも一つの発光層が実施の形態1で示した発光層の構成を有し、
該発光層を有する発光素子260aまたは発光素子260bを、表示装置の画素に用いる
ことで、発光効率の高い表示装置及び信頼性が高い表示装置を作製することができる。す
なわち、発光素子260aまたは発光素子260bを有する表示装置は、消費電力を低減
することができる。
【0299】
なお、光を取り出す電極の光を取り出す方向に、光学素子(例えば、カラーフィルタ、
偏光板、反射防止膜等)を設けることで、発光素子260a及び発光素子260bの色純
度を向上させることができる。そのため、発光素子260aまたは発光素子260bを有
する表示装置の色純度を高めることができる。あるいは、発光素子260a及び発光素子
260bの外光反射を低減することができる。そのため、発光素子260aまたは発光素
子260bを有する表示装置のコントラスト比を高めることができる。
【0300】
なお、発光素子260a及び発光素子260bにおける他の構成については、実施の形
態1、及び実施の形態2における発光素子の構成を参酌すればよい。
【0301】
<発光素子の構成例2>
次に、
図9(A)(B)に示す発光素子と異なる構成例について、
図10(A)(B)
を用いて、以下説明を行う。
【0302】
図10(A)(B)は、本発明の一態様の発光素子を示す断面図である。なお、
図10
(A)(B)において、
図9(A)(B)に示す符号と同様の機能を有する箇所には、同
様のハッチパターンとし、符号を省略する場合がある。また、同様の機能を有する箇所に
は、同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する場合がある。
【0303】
図10(A)(B)は、一対の電極間に、発光層を有する発光素子の構成例である。図
10(A)に示す発光素子262aは、基板200と反対の方向に光を取り出す上面射出
(トップエミッション)型の発光素子、
図10(B)に示す発光素子262bは、基板2
00側に光を取り出す下面射出(ボトムエミッション)型の発光素子である。ただし、本
発明の一態様はこれに限定されず、発光素子が呈する光を発光素子が形成される基板20
0の上方および下方の双方に取り出す両面射出(デュアルエミッション)型であっても良
い。
【0304】
発光素子262a及び発光素子262bは、基板200上に電極101と、電極102
と、電極103と、電極104とを有する。また、電極101と電極102との間、及び
電極102と電極103との間、及び電極102と電極104との間に、少なくとも発光
層170と、発光層190と、電荷発生層115とを有する。また、正孔注入層111と
、正孔輸送層112と、電子輸送層113と、電子注入層114と、正孔注入層116と
、正孔輸送層117と、電子輸送層118と、電子注入層119と、を有する。
【0305】
また、電極101は、導電層101aと、導電層101a上に接する導電層101bと
、を有する。また、電極103は、導電層103aと、導電層103a上に接する導電層
103bと、を有する。電極104は、導電層104aと、導電層104a上に接する導
電層104bと、を有する。
【0306】
図10(A)に示す発光素子262a、及び
図10(B)に示す発光素子262bは、
電極101と電極102とで挟持された領域222B、電極102と電極103とで挟持
された領域222G、及び電極102と電極104とで挟持された領域222R、の間に
、隔壁145を有する。隔壁145は、絶縁性を有する。隔壁145は、電極101、電
極103、及び電極104の端部を覆い、該電極と重なる開口部を有する。隔壁145を
設けることによって、各領域の基板200上の該電極を、それぞれ島状に分離することが
可能となる。
【0307】
また、電荷発生層115としては、正孔輸送性材料に電子受容体(アクセプター)が添
加された材料、または電子輸送性材料に電子供与体(ドナー)が添加された材料により、
形成することができる。なお、電荷発生層115の導電率が一対の電極と同程度に高い場
合、電荷発生層115によって発生したキャリアが、隣接する画素に流れて、隣接する画
素が発光してしまう場合がある。したがって、隣接する画素が不正に発光することを抑制
するためには、電荷発生層115は、一対の電極よりも導電率が低い材料で形成されると
好ましい。
【0308】
また、発光素子262a及び発光素子262bは、領域222B、領域222G、及び
領域222Rから呈される光が取り出される方向に、それぞれ光学素子224B、光学素
子224G、及び光学素子224Rを有する基板220を有する。各領域から呈される光
は、各光学素子を介して発光素子外部に射出される。すなわち、領域222Bから呈され
る光は、光学素子224Bを介して射出され、領域222Gから呈される光は、光学素子
224Gを介して射出され、領域222Rから呈される光は、光学素子224Rを介して
射出される。
【0309】
また、光学素子224B、光学素子224G、及び光学素子224Rは、入射される光
から特定の色を呈する光を選択的に透過する機能を有する。例えば、光学素子224Bを
介して射出される領域222Bから呈される光は、青色を呈する光となり、光学素子22
4Gを介して射出される領域222Gから呈される光は、緑色を呈する光となり、光学素
子224Rを介して射出される領域222Rから呈される光は、赤色を呈する光となる。
【0310】
光学素子224R、光学素子224G、及び光学素子224Bには、例えば、着色層(
カラーフィルタともいう)、バンドパスフィルタ、多層膜フィルタなどを適用できる。ま
た、光学素子に色変換素子を適用することができる。色変換素子は、入射される光を、当
該光の波長より長い波長の光に変換する光学素子である。色変換素子として、量子ドット
を用いる素子であると好適である。量子ドットを用いることにより、表示装置の色再現性
を高めることができる。
【0311】
なお、光学素子224R、光学素子224G、及び光学素子224B上に他の光学素子
を一または複数、重ねて設けてもよい。他の光学素子としては、例えば円偏光板や反射防
止膜などを設けることができる。円偏光板を、表示装置の発光素子が発する光が取り出さ
れる側に設けると、表示装置の外部から入射した光が、表示装置の内部で反射されて、外
部に射出される現象を防ぐことができる。また、反射防止膜を設けると、表示装置の表面
で反射される外光を弱めることができる。これにより、表示装置が発する発光を、鮮明に
観察できる。
【0312】
なお、
図10(A)(B)において、各光学素子を介して各領域から射出される光を、
青色(B)を呈する光、緑色(G)を呈する光、赤色(R)を呈する光、として、それぞ
れ破線の矢印で模式的に図示している。
【0313】
また、各光学素子の間には、遮光層223を有する。遮光層223は、隣接する領域か
ら発せられる光を遮光する機能を有する。なお、遮光層223を設けない構成としても良
い。
【0314】
遮光層223としては、外光の反射を抑制する機能を有する。または、遮光層223と
しては、隣接する発光素子から発せられる光の混色を防ぐ機能を有する。遮光層223と
しては、金属、黒色顔料を含んだ樹脂、カーボンブラック、金属酸化物、複数の金属酸化
物の固溶体を含む複合酸化物等を用いることができる。
【0315】
なお、光学素子224Bと、光学素子224Gとは、遮光層223と重なる領域におい
て、互いに重なる領域を有していても良い。あるいは、光学素子224Gと、光学素子2
24Rとは、遮光層223と重なる領域において、互いに重なる領域を有していても良い
。あるいは、光学素子224Rと、光学素子224Bとは、遮光層223と重なる領域に
おいて、互いに重なる領域を有していても良い。
【0316】
また、基板200、及び光学素子を有する基板220の構成としては、実施の形態1を
参酌すればよい。
【0317】
さらに、発光素子262a及び発光素子262bは、マイクロキャビティ構造を有する
。
【0318】
≪マイクロキャビティ構造≫
発光層170、及び発光層190から射出される光は、一対の電極(例えば、電極10
1と電極102)の間で共振される。また、発光層170及び発光層190は、射出され
る光のうち所望の波長の光が強まる位置に形成される。例えば、電極101の反射領域か
ら発光層170の発光領域までの光学距離と、電極102の反射領域から発光層170の
発光領域までの光学距離と、を調整することにより、発光層170から射出される光のう
ち所望の波長の光を強めることができる。また、電極101の反射領域から発光層190
の発光領域までの光学距離と、電極102の反射領域から発光層190の発光領域までの
光学距離と、を調整することにより、発光層190から射出される光のうち所望の波長の
光を強めることができる。すなわち、複数の発光層(ここでは、発光層170及び発光層
190)を積層する発光素子の場合、発光層170及び発光層190のそれぞれの光学距
離を最適化することが好ましい。
【0319】
また、発光素子262a及び発光素子262bにおいては、各領域で導電層(導電層1
01b、導電層103b、及び導電層104b)の厚さを調整することで、発光層170
及び発光層190から呈される光のうち所望の波長の光を強めることができる。なお、各
領域で正孔注入層111または正孔輸送層112のうち少なくとも一つ、あるいは電子注
入層119または電子輸送層118のうち少なくとも一つ、の厚さを異ならせることで、
発光層170及び発光層190から呈される光を強めても良い。
【0320】
例えば、電極101乃至電極104において、光を反射する機能を有する導電性材料の
屈折率が、発光層170または発光層190の屈折率よりも小さい場合においては、電極
101が有する導電層101bの膜厚を、電極101と電極102との間の光学距離がm
BλB/2(mBは自然数、λBは領域222Bで強める光の波長を、それぞれ表す)と
なるよう調整する。同様に、電極103が有する導電層103bの膜厚を、電極103と
電極102との間の光学距離がmGλG/2(mGは自然数、λGは領域222Gで強め
る光の波長を、それぞれ表す)となるよう調整する。さらに、電極104が有する導電層
104bの膜厚を、電極104と電極102との間の光学距離がmRλR/2(mRは自
然数、λRは領域222Rで強める光の波長を、それぞれ表す)となるよう調整する。
【0321】
なお、電極101乃至電極104の反射領域を厳密に決定することが困難な場合、電極
101乃至電極104の任意の領域を反射領域と仮定することで、発光層170または発
光層190から射出される光を強める光学距離を導出してもよい。また、発光層170お
よび発光層190の発光領域を厳密に決定することは困難な場合、発光層170および発
光層190の任意の領域を発光領域と仮定することで、発光層170および発光層190
から射出される光を強める光学距離を導出してもよい。
【0322】
上記のように、マイクロキャビティ構造を設け、各領域の一対の電極間の光学距離を調
整することで、各電極近傍における光の散乱および光の吸収を抑制し、高い光取り出し効
率を実現することができる。
【0323】
なお、上記構成においては、導電層101b、導電層103b、導電層104bは、光
を透過する機能を有することが好ましい。また、導電層101b、導電層103b、導電
層104b、を構成する材料は、互いに同じであっても良いし、異なっていても良い。導
電層101b、導電層103b、及び導電層104bに同じ材料を用いる場合、電極10
1、電極103、電極104の形成過程におけるエッチング工程によるパターン形成が容
易になるため好ましい。また、導電層101b、導電層103b、導電層104bは、そ
れぞれ2層以上の層が積層された構成であっても良い。
【0324】
なお、
図10(A)に示す発光素子262a、上面射出型の発光素子であるため、導電
層101a、導電層103a、及び導電層104aは、光を反射する機能を有することが
好ましい。また、電極102は、光を透過する機能と、光を反射する機能とを有すること
が好ましい。
【0325】
また、
図10(B)に示す発光素子262bは、下面射出型の発光素子であるため、導
電層101a、導電層103a、導電層104aは、光を透過する機能と、光を反射する
機能と、を有することが好ましい。また、電極102は、光を反射する機能を有すること
が好ましい。
【0326】
また、発光素子262a及び発光素子262bにおいて、導電層101a、導電層10
3a、または導電層104a、に同じ材料を用いても良いし、異なる材料を用いても良い
。導電層101a、導電層103a、導電層104a、に同じ材料を用いる場合、発光素
子262a及び発光素子262bの製造コストを低減できる。なお、導電層101a、導
電層103a、導電層104aは、それぞれ2層以上の層が積層された構成であっても良
い。
【0327】
また、発光素子262a及び発光素子262bにおける発光層170または発光層19
0の少なくとも一方には、実施の形態1及び実施の形態2で示した構成のうち少なくとも
一を有することが好ましい。そうすることで、高い発光効率を示す発光素子及び高い信頼
性を示す発光素子を作製することができる。
【0328】
また、発光層170及び発光層190は、例えば発光層190a及び発光層190bの
ように、一方または双方で2層が積層された構成としてもよい。2層の発光層に、第1の
化合物及び第2の化合物という、異なる色を呈する機能を有する2種類の発光材料をそれ
ぞれ用いることで、複数の発光を同時に得ることができる。特に発光層170と、発光層
190と、が呈する発光により、白色となるよう、各発光層に用いる発光材料を選択する
と好ましい。
【0329】
また、発光層170または発光層190は、一方または双方で3層以上が積層された構
成としても良く、発光材料を有さない層が含まれていても良い。
【0330】
以上のように、実施の形態1及び実施の形態2で示した発光層の構成を少なくとも一つ
有する発光素子262aまたは発光素子262bを、表示装置の画素に用いることで、発
光効率の高い表示装置及び信頼性が高い表示装置を作製することができる。すなわち、発
光素子262aまたは発光素子262bを有する表示装置は、消費電力を低減することが
できる。
【0331】
なお、発光素子262a及び発光素子262bにおける他の構成については、発光素子
260aまたは発光素子260b、あるいは実施の形態1、及び実施の形態2で示した発
光素子の構成を参酌すればよい。
【0332】
<発光素子の作製方法>
次に、本発明の一態様の発光素子の作製方法について、
図11及び
図12を用いて以下
説明を行う。なお、ここでは、
図10(A)に示す発光素子262aの作製方法について
説明する。
【0333】
図11及び
図12は、本発明の一態様の発光素子の作製方法を説明するための断面図で
ある。
【0334】
以下で説明する発光素子262aの作製方法は、第1乃至第7の7つのステップを有す
る。
【0335】
≪第1のステップ≫
第1のステップは、発光素子の電極(具体的には、電極101を構成する導電層101
a、電極103を構成する導電層103a、及び電極104を構成する導電層104a)
を、基板200上に形成する工程である(
図11(A)参照)。
【0336】
本実施の形態においては、基板200上に、光を反射する機能を有する導電層を形成し
、該導電層を所望の形状に加工することで、導電層101a、導電層103a、及び導電
層104aを形成する。上記光を反射する機能を有する導電層としては、銀とパラジウム
と銅の合金膜(Ag-Pd-Cu膜、またはAPCともいう)を用いる。このように、導
電層101a、導電層103a、及び導電層104aを、同一の導電層を加工する工程を
経て形成することで、製造コストを安くすることができるため好適である。
【0337】
なお、第1のステップの前に、基板200上に複数のトランジスタを形成してもよい。
また、該複数のトランジスタと、導電層101a、導電層103a、及び導電層104a
とを、それぞれ電気的に接続させてもよい。
【0338】
≪第2のステップ≫
第2のステップは、電極101を構成する導電層101a上に光を透過する機能を有す
る導電層101bを、電極103を構成する導電層103a上に光を透過する機能を有す
る導電層103bを、電極104を構成する導電層104a上に光を透過する機能を有す
る導電層104bを、形成する工程である(
図11(B)参照)
【0339】
本実施の形態においては、光を反射する機能を有する導電層101a、103a、及び
104a、の上にそれぞれ、光を透過する機能を有する導電層101b、103b、及び
104bを形成することで、電極101、電極103、及び電極104を形成する。上記
の導電層101b、103b、及び104bとしては、ITSO膜を用いる。
【0340】
なお、光を透過する機能を有する導電層101b、103b、及び104bは、複数回
に分けて形成してもよい。複数回に分けて形成することで、各領域で適したマイクロキャ
ビティ構造となる膜厚で、導電層101b、103b、及び104bを形成することがで
きる。
【0341】
≪第3のステップ≫
第3のステップは、発光素子の各電極の端部を覆う隔壁145を形成する工程である(
図11(C)参照)。
【0342】
隔壁145は、電極と重なるように開口部を有する。該開口部によって露出する導電膜
が発光素子の陽極として機能する。本実施の形態では、隔壁145として、ポリイミド樹
脂を用いる。
【0343】
なお、第1乃至第3のステップにおいては、EL層(有機化合物を含む層)を損傷する
おそれがないため、さまざまな成膜方法及び微細加工技術を適用できる。本実施の形態で
は、スパッタリング法を用いて反射性の導電層を成膜し、リソグラフィ法を用いて、該導
電層にパターンを形成し、その後ドライエッチング法またはウエットエッチング法を用い
て、該導電層を島状に加工することで、電極101を構成する導電層101a、電極10
3を構成する導電層103a、及び電極104を構成する導電層104a、を形成する。
その後、スパッタリング法を用いて透明性を有する導電膜を成膜し、リソグラフィ法を用
いて、該透明性を有する導電膜にパターンを形成し、その後ウエットエッチング法を用い
て、該透明導電膜を島状に加工して、電極101、電極103、及び電極104を形成す
る。
【0344】
≪第4のステップ≫
第4のステップは、正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層190、電子輸送層
113、電子注入層114、及び電荷発生層115を形成する工程である(
図12(A)
参照)。
【0345】
正孔注入層111としては、正孔輸送性材料とアクセプター性物質を含む材料とを共蒸
着することで形成することができる。なお、共蒸着とは、異なる複数の物質をそれぞれ異
なる蒸発源から同時に蒸発させる蒸着法である。また、正孔輸送層112としては、正孔
輸送性材料を蒸着することで形成することができる。
【0346】
発光層190としては、紫色、青色、青緑色、緑色、黄緑色、黄色、橙色、または赤色
の中から選ばれる少なくとも一つの発光を呈するゲスト材料を蒸着することで形成するこ
とができる。ゲスト材料としては、蛍光または燐光を呈する発光性の有機化合物を用いる
ことができる。また、実施の形態1及び実施の形態2で示した発光層の構成を用いること
が好ましい。また、発光層190として、2層の構成としてもよい。その場合、2層の発
光層は、それぞれ互いに異なる発光色を呈する発光性の有機化合物を有することが好まし
い。
【0347】
電子輸送層113としては、電子輸送性の高い物質を蒸着することで形成することがで
きる。また、電子注入層114としては、電子注入性の高い物質を蒸着することで形成す
ることができる。
【0348】
電荷発生層115としては、正孔輸送性材料に電子受容体(アクセプター)が添加され
た材料、または電子輸送性材料に電子供与体(ドナー)が添加された材料を蒸着すること
で形成することができる。
【0349】
≪第5のステップ≫
第5のステップは、正孔注入層116、正孔輸送層117、発光層170、電子輸送層
118、電子注入層119、及び電極102を形成する工程である(
図12(B)参照)
。
【0350】
正孔注入層116としては、先に示す正孔注入層111と同様の材料及び同様の方法に
より形成することができる。また、正孔輸送層117としては、先に示す正孔輸送層11
2と同様の材料及び同様の方法により形成することができる。
【0351】
発光層170としては、紫色、青色、青緑色、緑色、黄緑色、黄色、橙色、または赤色
の中から選ばれる少なくともいずれか一つの発光を呈するゲスト材料を蒸着することで形
成することができる。ゲスト材料としては、蛍光または燐光を呈する発光性の有機化合物
を用いることができる。また、実施の形態1及び実施の形態2で示した発光層の構成を用
いることが好ましい。また、発光層170及び発光層190は、互いに異なる発光を呈す
る機能を有する発光性の有機化合物を有すると好ましい。
【0352】
電子輸送層118としては、先に示す電子輸送層113と同様の材料及び同様の方法に
より形成することができる。また、電子注入層119としては、先に示す電子注入層11
4と同様の材料及び同様の方法により形成することができる。
【0353】
電極102としては、反射性を有する導電膜と、透光性を有する導電膜を積層すること
で形成することができる。また、電極102としては、単層構造、または積層構造として
もよい。
【0354】
上記工程を経て、電極101、電極103、及び電極104上に、それぞれ領域222
B、領域222G、及び領域222Rを有する発光素子が基板200上に形成される。
【0355】
≪第6のステップ≫
第6のステップは、基板220上に遮光層223、光学素子224B、光学素子224
G、及び光学素子224Rを形成する工程である(
図12(C)参照)。
【0356】
遮光層223としては、黒色顔料の含んだ樹脂膜を所望の領域に形成する。その後、基
板220及び遮光層223上に、光学素子224B、光学素子224G、及び光学素子2
24Rを形成する。光学素子224Bとしては、青色顔料の含んだ樹脂膜を所望の領域に
形成する。また、光学素子224Gとしては、緑色顔料の含んだ樹脂膜を所望の領域に形
成する。また、光学素子224Rとしては、赤色顔料の含んだ樹脂膜を所望の領域に形成
する。
【0357】
≪第7のステップ≫
第7のステップは、基板200上に形成された発光素子と、基板220上に形成された
遮光層223、光学素子224B、光学素子224G、及び光学素子224Rと、を貼り
合わせ、シール材を用いて封止する工程である(図示しない)。
【0358】
以上の工程により、
図10(A)に示す発光素子262aを形成することができる。
【0359】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用
いることができる。
【0360】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の表示装置について、
図13乃至
図23を用いて説
明する。
【0361】
<表示装置の構成例1>
図13(A)は表示装置600を示す上面図、
図13(B)は
図13(A)の一点鎖線
A-B、及び一点鎖線C-Dで切断した断面図である。表示装置600は、駆動回路部(
信号線駆動回路部601、及び走査線駆動回路部603)、並びに画素部602を有する
。なお、信号線駆動回路部601、走査線駆動回路部603、及び画素部602は、発光
素子の発光を制御する機能を有する。
【0362】
また、表示装置600は、素子基板610と、封止基板604と、シール材605と、
シール材605で囲まれた領域607と、引き回し配線608と、FPC609と、を有
する。
【0363】
なお、引き回し配線608は、信号線駆動回路部601及び走査線駆動回路部603に
入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC609からビデ
オ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFP
C609しか図示されていないが、FPC609にはプリント配線基板(PWB:Pri
nted Wiring Board)が取り付けられていても良い。
【0364】
また、信号線駆動回路部601は、Nチャネル型のトランジスタ623とPチャネル型
のトランジスタ624とを組み合わせたCMOS回路が形成される。なお、信号線駆動回
路部601または走査線駆動回路部603は、種々のCMOS回路、PMOS回路、また
はNMOS回路を用いることが出来る。また、本実施の形態では、駆動回路部を形成した
ドライバと画素とを基板の同一の表面上に設けた表示装置を示すが、必ずしもその必要は
なく、駆動回路部を基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0365】
また、画素部602は、スイッチング用のトランジスタ611と、電流制御用のトラン
ジスタ612と、電流制御用のトランジスタ612のドレインに電気的に接続された下部
電極613と、を有する。なお、下部電極613の端部を覆って隔壁614が形成されて
いる。隔壁614としては、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることができる。
【0366】
また、被覆性を良好にするため、隔壁614の上端部または下端部に曲率を有する曲面
が形成されるようにする。例えば、隔壁614の材料としてポジ型の感光性アクリルを用
いた場合、隔壁614の上端部のみに曲率半径(0.2μm以上3μm以下)を有する曲
面を持たせることが好ましい。また、隔壁614として、ネガ型の感光性樹脂、またはポ
ジ型の感光性樹脂のいずれも使用することができる。
【0367】
なお、トランジスタ(トランジスタ611、612、623、624)の構造は、特に
限定されない。例えば、スタガ型のトランジスタを用いてもよい。また、トランジスタの
極性についても特に限定はなく、Nチャネル型およびPチャネル型のトランジスタを有す
る構造、及びNチャネル型のトランジスタまたはPチャネル型のトランジスタのいずれか
一方のみからなる構造を用いてもよい。また、トランジスタに用いられる半導体膜の結晶
性についても特に限定はない。例えば、非晶質半導体膜、結晶性半導体膜を用いることが
できる。また、半導体材料としては、14族(ケイ素等)半導体、化合物半導体(酸化物
半導体を含む)、有機半導体等を用いることができる。トランジスタとしては、例えば、
エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、さらに好ましくは3eV
以上の酸化物半導体を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができるた
め好ましい。該酸化物半導体としては、In-Ga酸化物、In-M-Zn酸化物(Mは
、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr
)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、錫(Sn)、ハフニウム(Hf)、またはネ
オジム(Nd)を表す)等が挙げられる。
【0368】
下部電極613上には、EL層616、および上部電極617がそれぞれ形成されてい
る。なお、下部電極613は、陽極として機能し、上部電極617は、陰極として機能す
る。
【0369】
また、EL層616は、蒸着マスクを用いた蒸着法(真空蒸着法を含む)、液滴吐出法
(インクジェット法ともいう)、スピンコート法等の塗布法、グラビア印刷法等の種々の
方法によって形成される。また、EL層616を構成する材料としては、低分子化合物、
または高分子化合物(オリゴマー、デンドリマーを含む)であっても良い。
【0370】
なお、下部電極613、EL層616、及び上部電極617により、発光素子618が
形成される。発光素子618は、実施の形態1乃至実施の形態3の構成を有する発光素子
であると好ましい。なお、画素部に複数の発光素子が形成される場合、実施の形態1乃至
実施の形態3に記載の発光素子と、それ以外の構成を有する発光素子の両方が含まれてい
ても良い。
【0371】
また、シール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、
素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた領域607に発光素
子618が備えられた構造になっている。なお、領域607には、充填材が充填されてお
り、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材605に用いるこ
とができる紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂で充填される場合もあり、例えば、PVC(
ポリビニルクロライド)系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、
シリコーン系樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)系樹脂、またはEVA(エチレンビニ
ルアセテート)系樹脂を用いることができる。封止基板には凹部を形成し、そこに乾燥材
を設けると水分の影響による劣化を抑制することができ、好ましい構成である。
【0372】
また、発光素子618と互いに重なるように、光学素子621が封止基板604の下方
に設けられる。また、封止基板604の下方には、遮光層622が設けられる。光学素子
621及び遮光層622としては、それぞれ、実施の形態3に示す光学素子、及び遮光層
と同様の構成とすればよい。
【0373】
なお、シール材605にはエポキシ系樹脂やガラスフリットを用いるのが好ましい。ま
た、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しにくい材料であることが望ましい。ま
た、封止基板604に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiber
Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリ
エステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0374】
ここで、液滴吐出法を用いてEL層616を形成する方法について、
図22を用いて説
明する。
図22(A)乃至
図22(D)は、EL層616の作製方法を説明する断面図で
ある。
【0375】
まず、
図22(A)においては、下部電極613及び隔壁614が形成された素子基板
610を図示しているが、
図13のように絶縁膜上に下部電極613及び隔壁614が形
成された基板を用いてもよい。
【0376】
次に、隔壁614の開口部である下部電極613の露出部に、液滴吐出装置683より
液滴684を吐出し、組成物を含む層685を形成する。液滴684は、溶媒を含む組成
物であり、下部電極613上に付着する(
図22(B)参照)。
【0377】
なお、液滴684を吐出する工程を減圧下で行ってもよい。
【0378】
次に、組成物を含む層685より溶媒を除去し、固化することによってEL層616を
形成する(
図22(C)参照)。
【0379】
なお、溶媒の除去方法としては、乾燥工程または加熱工程を行えばよい。
【0380】
次に、EL層616上に上部電極617を形成し、発光素子618を形成する(
図22
(D)参照)。
【0381】
このようにEL層616を液滴吐出法で形成すると、選択的に組成物を吐出することが
できるため、材料のロスを削減することができる。また、形状を加工するためのリソグラ
フィ工程なども必要ないために工程も簡略化することができ、低コスト化が達成できる。
【0382】
なお、上記説明した液滴吐出法とは、組成物の吐出口を有するノズル、または一つもし
くは複数のノズルを有するヘッド等の液滴を吐出する手段を有するものの総称とする。
【0383】
次に、液滴吐出法に用いる液滴吐出装置について、
図23を用いて説明する。
図23は
、液滴吐出装置1400を説明する概念図である。
【0384】
液滴吐出装置1400は、液滴吐出手段1403を有する。また、液滴吐出手段140
3は、ヘッド1405と、ヘッド1412とを有する。
【0385】
ヘッド1405、及びヘッド1412は制御手段1407に接続され、それがコンピュ
ータ1410で制御することにより予めプログラミングされたパターンに描画することが
できる。
【0386】
また、描画するタイミングとしては、例えば、基板1402上に形成されたマーカー1
411を基準に行えば良い。あるいは、基板1402の外縁を基準にして基準点を確定さ
せても良い。ここでは、マーカー1411を撮像手段1404で検出し、画像処理手段1
409にてデジタル信号に変換したものをコンピュータ1410で認識して制御信号を発
生させて制御手段1407に送る。
【0387】
撮像手段1404としては、電荷結合素子(CCD)や相補型金属酸化物半導体(CM
OS)を利用したイメージセンサなどを用いることができる。なお、基板1402上に形
成されるべきパターンの情報は記憶媒体1408に格納されており、この情報を基にして
制御手段1407に制御信号を送り、液滴吐出手段1403の個々のヘッド1405、ヘ
ッド1412を個別に制御することができる。吐出する材料は、材料供給源1413、材
料供給源1414より配管を通してヘッド1405、ヘッド1412にそれぞれ供給され
る。
【0388】
ヘッド1405の内部は、点線が示すように液状の材料を充填する空間1406と、吐
出口であるノズルを有する構造となっている。図示しないが、ヘッド1412もヘッド1
405と同様な内部構造を有する。ヘッド1405とヘッド1412のノズルを異なるサ
イズで設けると、異なる材料を異なる幅のパターンで同時に描画することができる。また
、一つのヘッドで、複数種の発光材料などをそれぞれ吐出し、パターンを描画することが
できる。また、広領域にパターンを描画する場合は、スループットを向上させるため複数
のノズルより同材料を同時に吐出し、描画することができる。大型基板を用いる場合、ヘ
ッド1405、ヘッド1412は基板上を、
図23中に示すX、Y、Zの矢印の方向に自
在に走査し、描画する領域を自由に設定することができ、同じパターンを一枚の基板に複
数描画することができる。
【0389】
また、組成物を吐出する工程は、減圧下で行ってもよい。吐出時に基板を加熱しておい
てもよい。組成物を吐出後、乾燥と焼成の一方又は両方の工程を行う。乾燥と焼成の工程
は、両工程とも加熱処理の工程であるが、その目的、温度と時間が異なる。乾燥の工程、
焼成の工程は、常圧下又は減圧下で、レーザ光の照射や瞬間熱アニール、加熱炉などによ
り行う。なお、この加熱処理を行うタイミング、加熱処理の回数は特に限定されない。乾
燥と焼成の工程を良好に行うためには、そのときの温度は、基板の材質及び組成物の性質
に依存する。
【0390】
以上のように、液滴吐出装置を用いてEL層616を作製することができる。
【0391】
以上のようにして、実施の形態1乃至実施の形態3に記載の発光素子及び光学素子を有
する表示装置を得ることができる。
【0392】
<表示装置の構成例2>
次に、表示装置の別の一例について、
図14(A)(B)及び
図15を用いて説明を行
う。なお、
図14(A)(B)及び
図15は、本発明の一態様の表示装置の断面図である
。
【0393】
図14(A)には基板1001、下地絶縁膜1002、ゲート絶縁膜1003、ゲート
電極1006、1007、1008、第1の層間絶縁膜1020、第2の層間絶縁膜10
21、周辺部1042、画素部1040、駆動回路部1041、発光素子の下部電極10
24R、1024G、1024B、隔壁1025、EL層1028、発光素子の上部電極
1026、封止層1029、封止基板1031、シール材1032などが図示されている
。
【0394】
また、
図14(A)では、光学素子の一例として、着色層(赤色の着色層1034R、
緑色の着色層1034G、及び青色の着色層1034B)を透明な基材1033に設けて
いる。また、遮光層1035をさらに設けても良い。着色層及び遮光層が設けられた透明
な基材1033は、位置合わせし、基板1001に固定する。なお、着色層、及び遮光層
は、オーバーコート層1036で覆われている。また、
図14(A)においては、着色層
を透過する光は赤、緑、青となることから、3色の画素で映像を表現することができる。
【0395】
図14(B)では、光学素子の一例として、着色層(赤色の着色層1034R、緑色の
着色層1034G、青色の着色層1034B)をゲート絶縁膜1003と第1の層間絶縁
膜1020との間に形成する例を示している。このように、着色層は基板1001と封止
基板1031の間に設けられていても良い。
【0396】
図15では、光学素子の一例として、着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層
1034G、青色の着色層1034B)を第1の層間絶縁膜1020と第2の層間絶縁膜
1021との間に形成する例を示している。このように、着色層は基板1001と封止基
板1031の間に設けられていても良い。
【0397】
また、以上に説明した表示装置では、トランジスタが形成されている基板1001側に
光を取り出す構造(ボトムエミッション型)の表示装置としたが、封止基板1031側に
発光を取り出す構造(トップエミッション型)の表示装置としても良い。
【0398】
<表示装置の構成例3>
トップエミッション型の表示装置の断面図の一例を
図16(A)(B)に示す。
図16
(A)(B)は、本発明の一態様の表示装置を説明する断面図であり、
図14(A)(B
)及び
図15に示す駆動回路部1041、周辺部1042等を省略して例示している。
【0399】
この場合、基板1001は光を通さない基板を用いることができる。トランジスタと発
光素子の陽極とを接続する接続電極を作製するまでは、ボトムエミッション型の表示装置
と同様に形成する。その後、電極1022を覆うように、第3の層間絶縁膜1037を形
成する。この絶縁膜は平坦化の役割を担っていても良い。第3の層間絶縁膜1037は第
2の層間絶縁膜と同様の材料の他、他の様々な材料を用いて形成することができる。
【0400】
発光素子の下部電極1024R、1024G、1024Bはここでは陽極とするが、陰
極であっても構わない。また、
図16(A)(B)のようなトップエミッション型の表示
装置である場合、下部電極1024R、1024G、1024Bは光を反射する機能を有
することが好ましい。また、EL層1028上に上部電極1026が設けられる。上部電
極1026は光を反射する機能と、光を透過する機能を有し、下部電極1024R、10
24G、1024Bと、上部電極1026との間で、マイクロキャビティ構造を採用し、
特定波長における光強度を増加させると好ましい。
【0401】
図16(A)のようなトップエミッションの構造では、着色層(赤色の着色層1034
R、緑色の着色層1034G、及び青色の着色層1034B)を設けた封止基板1031
で封止を行うことができる。封止基板1031には画素と画素との間に位置するように遮
光層1035を設けても良い。なお、封止基板1031は透光性を有する基板を用いると
好適である。
【0402】
また、
図16(A)においては、複数の発光素子と、該複数の発光素子にそれぞれ着色
層を設ける構成を例示したが、これに限定されない。例えば、
図16(B)に示すように
、緑色の着色層を設けずに、赤色の着色層1034R、及び青色の着色層1034Bを設
けて、赤、緑、青の3色でフルカラー表示を行う構成としてもよい。
図16(A)に示す
ように、発光素子と、該発光素子にそれぞれ着色層を設ける構成とした場合、外光反射を
抑制できるといった効果を奏する。一方で、
図16(B)に示すように、発光素子に、緑
色の着色層を設けずに、赤色の着色層、及び青色の着色層を設ける構成とした場合、緑色
の発光素子から射出された光のエネルギー損失が少ないため、消費電力を低くできるとい
った効果を奏する。
【0403】
<表示装置の構成例4>
以上に示す表示装置は、3色(赤色、緑色、青色)の副画素を有する構成を示したが、
4色(赤色、緑色、青色、黄色、あるいは赤色、緑色、青色、白色)の副画素を有する構
成としてもよい。
図17乃至
図19は、下部電極1024R、1024G、1024B、
及び1024Yを有する表示装置の構成である。
図17(A)(B)及び
図18は、トラ
ンジスタが形成されている基板1001側に光を取り出す構造(ボトムエミッション型)
の表示装置であり、
図19(A)(B)は、封止基板1031側に発光を取り出す構造(
トップエミッション型)の表示装置である。
【0404】
図17(A)は、光学素子(着色層1034R、着色層1034G、着色層1034B
、着色層1034Y)を透明な基材1033に設ける表示装置の例である。また、
図17
(B)は、光学素子(着色層1034R、着色層1034G、着色層1034B)をゲー
ト絶縁膜1003と第1の層間絶縁膜1020との間に形成する表示装置の例である。ま
た、
図18は、光学素子(着色層1034R、着色層1034G、着色層1034B、着
色層1034Y)を第1の層間絶縁膜1020と第2の層間絶縁膜1021との間に形成
する表示装置の例である。
【0405】
着色層1034Rは赤色の光を透過し、着色層1034Gは緑色の光を透過し、着色層
1034Bは青色の光を透過する機能を有する。また、着色層1034Yは黄色の光を透
過する機能、あるいは青色、緑色、黄色、赤色の中から選ばれる複数の光を透過する機能
を有する。着色層1034Yが青色、緑色、黄色、赤色の中から選ばれる複数の光を透過
する機能を有するとき、着色層1034Yを透過した光は白色であってもよい。黄色ある
いは白色の発光を呈する発光素子は発光効率が高いため、着色層1034Yを有する表示
装置は、消費電力を低減することができる。
【0406】
また、
図19に示すトップエミッション型の表示装置においては、下部電極1024Y
を有する発光素子においても、
図16(A)の表示装置と同様に、上部電極1026との
間で、マイクロキャビティ構造を有する構成が好ましい。また、
図19(A)の表示装置
では、着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層103
4B、及び黄色の着色層1034Y)を設けた封止基板1031で封止を行うことができ
る。
【0407】
マイクロキャビティ、及び黄色の着色層1034Yを介して呈される発光は、黄色の領
域に発光スペクトルを有する発光となる。黄色は視感度が高い色であるため、黄色の発光
を呈する発光素子は発光効率が高い。すなわち、
図19(A)の構成を有する表示装置は
、消費電力を低減することができる。
【0408】
また、
図19(A)においては、複数の発光素子と、該複数の発光素子にそれぞれ着色
層を設ける構成を例示したが、これに限定されない。例えば、
図19(B)に示すように
、黄色の着色層を設けずに、赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、及び青
色の着色層1034Bを設けて、赤、緑、青、黄の4色、または赤、緑、青、白の4色で
フルカラー表示を行う構成としてもよい。
図19(A)に示すように、発光素子と、該発
光素子にそれぞれ着色層を設ける構成とした場合、外光反射を抑制できるといった効果を
奏する。一方で、
図19(B)に示すように、発光素子に、黄色の着色層を設けずに、赤
色の着色層、緑色の着色層、及び青色の着色層を設ける構成とした場合、黄色または白色
の発光素子から射出された光のエネルギー損失が少ないため、消費電力を低くできるとい
った効果を奏する。
【0409】
<表示装置の構成例5>
次に、本発明の他の一態様の表示装置について、
図20に示す。
図20は、
図13(A
)の一点鎖線A-B、及び一点鎖線C-Dで切断した断面図である。なお、
図20におい
て、
図13(B)に示す符号と同様の機能を有する箇所には同様の符号を付し、その詳細
な説明は省略する。
【0410】
図20に示す表示装置600は、素子基板610、封止基板604、及びシール材60
5で囲まれた領域607に、封止層607a、封止層607b、封止層607cを有する
。封止層607a、封止層607b、封止層607cのいずれか一つまたは複数には、例
えば、PVC(ポリビニルクロライド)系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、エ
ポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)系樹脂、またはEVA
(エチレンビニルアセテート)系樹脂等の樹脂を用いることができる。また、酸化シリコ
ン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アル
ミニウム等の無機材料を用いてもよい。封止層607a、封止層607b、封止層607
cを形成することで、水などの不純物による発光素子618の劣化を抑制することができ
好ましい。なお、封止層607a、封止層607b、封止層607cを形成する場合、シ
ール材605を設けなくてもよい。
【0411】
また、封止層607a、封止層607b、封止層607cは、いずれか一つまたは二つ
であってもよく、4つ以上の封止層が形成されてもよい。封止層を多層にすることで、水
などの不純物が、表示装置600の外部から表示装置内部の発光素子618まで侵入する
のを効果的に防ぐことができるため好ましい。なお、封止層が多層の場合、樹脂と無機材
料とを積層させると好ましい構成である。
【0412】
<表示装置の構成例6>
また、本実施の形態における構成例1乃至構成例4に示す表示装置は、光学素子を有す
る構成を例示したが、本発明の一態様としては、光学素子を設けなくてもよい。
【0413】
図21(A)(B)に示す表示装置は、封止基板1031側に発光を取り出す構造(ト
ップエミッション型)の表示装置である。
図21(A)は、発光層1028R、発光層1
028G、発光層1028B、を有する表示装置の例である。また、
図21(B)は、発
光層1028R、発光層1028G、発光層1028B、発光層1028Y、を有する表
示装置の例である。
【0414】
発光層1028Rは、赤色の発光を呈し、発光層1028Gは、緑色の発光を呈し、発
光層1028Bは、青色の発光を呈する機能を有する。また、発光層1028Yは、黄色
の発光を呈する機能、または青色、緑色、赤色の中から選ばれる複数の発光を呈する機能
を有する。発光層1028Yが呈する発光は、白色であってもよい。黄色あるいは白色の
発光を呈する発光素子は発光効率が高いため、発光層1028Yを有する表示装置は、消
費電力を低減することができる。
【0415】
図21(A)及び
図21(B)に示す表示装置は、異なる色の発光を呈するEL層を副
画素に有するため、光学素子となる着色層を設けなくてもよい。
【0416】
また、封止層1029は、例えば、PVC(ポリビニルクロライド)系樹脂、アクリル
系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、PVB(ポリビニルブ
チラル)系樹脂、またはEVA(エチレンビニルアセテート)系樹脂等の樹脂を用いるこ
とができる。また、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン
、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等の無機材料を用いてもよい。封止層1029を
形成することで、水などの不純物による発光素子の劣化を抑制することができ好ましい。
【0417】
また、封止層1029は、いずれか一つまたは二つであってもよく、4つ以上の封止層
が形成されてもよい。封止層を多層にすることで、水などの不純物が、表示装置の外部か
ら表示装置内部まで侵入するのを効果的に防ぐことができるため好ましい。なお、封止層
が多層の場合、樹脂と無機材料とを積層させると好ましい構成である。
【0418】
なお、封止基板1031は、発光素子を保護する機能を有するものであればよい。その
ため、封止基板1031には、可撓性を有する基板やフィルムを用いることができる。
【0419】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態や本実施の形態中の他の構成と適宜
組み合わせることが可能である。
【0420】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光素子を有する表示装置について、
図24乃至
図26を用いて説明を行う。
【0421】
なお、
図24(A)は、本発明の一態様の表示装置を説明するブロック図であり、
図2
4(B)は、本発明の一態様の表示装置が有する画素回路を説明する回路図である。
【0422】
<表示装置に関する説明>
図24(A)に示す表示装置は、表示素子の画素を有する領域(以下、画素部802と
いう)と、画素部802の外側に配置され、画素を駆動するための回路を有する回路部(
以下、駆動回路部804という)と、素子の保護機能を有する回路(以下、保護回路80
6という)と、端子部807と、を有する。なお、保護回路806は、設けない構成とし
てもよい。
【0423】
駆動回路部804の一部、または全部は、画素部802と同一基板上に形成されている
ことが望ましい。これにより、部品数や端子数を減らすことが出来る。駆動回路部804
の一部、または全部が、画素部802と同一基板上に形成されていない場合には、駆動回
路部804の一部、または全部は、COGやTAB(Tape Automated B
onding)によって、実装することができる。
【0424】
画素部802は、X行(Xは2以上の自然数)Y列(Yは2以上の自然数)に配置され
た複数の表示素子を駆動するための回路(以下、画素回路801という)を有し、駆動回
路部804は、画素を選択する信号(走査信号)を出力する回路(以下、走査線駆動回路
804aという)、画素の表示素子を駆動するための信号(データ信号)を供給するため
の回路(以下、信号線駆動回路804b)などの駆動回路を有する。
【0425】
走査線駆動回路804aは、シフトレジスタ等を有する。走査線駆動回路804aは、
端子部807を介して、シフトレジスタを駆動するための信号が入力され、信号を出力す
る。例えば、走査線駆動回路804aは、スタートパルス信号、クロック信号等が入力さ
れ、パルス信号を出力する。走査線駆動回路804aは、走査信号が与えられる配線(以
下、走査線GL_1乃至GL_Xという)の電位を制御する機能を有する。なお、走査線
駆動回路804aを複数設け、複数の走査線駆動回路804aにより、走査線GL_1乃
至GL_Xを分割して制御してもよい。または、走査線駆動回路804aは、初期化信号
を供給することができる機能を有する。ただし、これに限定されず、走査線駆動回路80
4aは、別の信号を供給することも可能である。
【0426】
信号線駆動回路804bは、シフトレジスタ等を有する。信号線駆動回路804bは、
端子部807を介して、シフトレジスタを駆動するための信号の他、データ信号の元とな
る信号(画像信号)が入力される。信号線駆動回路804bは、画像信号を元に画素回路
801に書き込むデータ信号を生成する機能を有する。また、信号線駆動回路804bは
、スタートパルス、クロック信号等が入力されて得られるパルス信号に従って、データ信
号の出力を制御する機能を有する。また、信号線駆動回路804bは、データ信号が与え
られる配線(以下、データ線DL_1乃至DL_Yという)の電位を制御する機能を有す
る。または、信号線駆動回路804bは、初期化信号を供給することができる機能を有す
る。ただし、これに限定されず、信号線駆動回路804bは、別の信号を供給することも
可能である。
【0427】
信号線駆動回路804bは、例えば複数のアナログスイッチなどを用いて構成される。
信号線駆動回路804bは、複数のアナログスイッチを順次オン状態にすることにより、
画像信号を時分割した信号をデータ信号として出力できる。また、シフトレジスタなどを
用いて信号線駆動回路804bを構成してもよい。
【0428】
複数の画素回路801のそれぞれは、走査信号が与えられる複数の走査線GLの一つを
介してパルス信号が入力され、データ信号が与えられる複数のデータ線DLの一つを介し
てデータ信号が入力される。また、複数の画素回路801のそれぞれは、走査線駆動回路
804aによりデータ信号のデータの書き込み及び保持が制御される。例えば、m行n列
目の画素回路801は、走査線GL_m(mはX以下の自然数)を介して走査線駆動回路
804aからパルス信号が入力され、走査線GL_mの電位に応じてデータ線DL_n(
nはY以下の自然数)を介して信号線駆動回路804bからデータ信号が入力される。
【0429】
図24(A)に示す保護回路806は、例えば、走査線駆動回路804aと画素回路8
01の間の配線である走査線GLに接続される。または、保護回路806は、信号線駆動
回路804bと画素回路801の間の配線であるデータ線DLに接続される。または、保
護回路806は、走査線駆動回路804aと端子部807との間の配線に接続することが
できる。または、保護回路806は、信号線駆動回路804bと端子部807との間の配
線に接続することができる。なお、端子部807は、外部の回路から表示装置に電源及び
制御信号、及び画像信号を入力するための端子が設けられた部分をいう。
【0430】
保護回路806は、自身が接続する配線に一定の範囲外の電位が与えられたときに、該
配線と別の配線とを導通状態にする回路である。
【0431】
図24(A)に示すように、画素部802と駆動回路部804にそれぞれ保護回路80
6を接続することにより、ESD(Electro Static Discharge
:静電気放電)などにより発生する過電流に対する表示装置の耐性を高めることができる
。ただし、保護回路806の構成はこれに限定されず、例えば、走査線駆動回路804a
に保護回路806を接続した構成、または信号線駆動回路804bに保護回路806を接
続した構成とすることもできる。あるいは、端子部807に保護回路806を接続した構
成とすることもできる。
【0432】
また、
図24(A)においては、走査線駆動回路804aと信号線駆動回路804bに
よって駆動回路部804を形成している例を示しているが、この構成に限定されない。例
えば、走査線駆動回路804aのみを形成し、別途用意された信号線駆動回路が形成され
た基板(例えば、単結晶半導体膜、多結晶半導体膜で形成された駆動回路基板)を実装す
る構成としても良い。
【0433】
<画素回路の構成例>
図24(A)に示す複数の画素回路801は、例えば、
図24(B)に示す構成とする
ことができる。
【0434】
図24(B)に示す画素回路801は、トランジスタ852、854と、容量素子86
2と、発光素子872と、を有する。
【0435】
トランジスタ852のソース電極及びドレイン電極の一方は、データ信号が与えられる
配線(データ線DL_n)に電気的に接続される。さらに、トランジスタ852のゲート
電極は、ゲート信号が与えられる配線(走査線GL_m)に電気的に接続される。
【0436】
トランジスタ852は、データ信号のデータの書き込みを制御する機能を有する。
【0437】
容量素子862の一対の電極の一方は、電位が与えられる配線(以下、電位供給線VL
_aという)に電気的に接続され、他方は、トランジスタ852のソース電極及びドレイ
ン電極の他方に電気的に接続される。
【0438】
容量素子862は、書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
【0439】
トランジスタ854のソース電極及びドレイン電極の一方は、電位供給線VL_aに電
気的に接続される。さらに、トランジスタ854のゲート電極は、トランジスタ852の
ソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続される。
【0440】
発光素子872のアノード及びカソードの一方は、電位供給線VL_bに電気的に接続
され、他方は、トランジスタ854のソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続
される。
【0441】
発光素子872としては、実施の形態1乃至実施の形態3に示す発光素子を用いること
ができる。
【0442】
なお、電位供給線VL_a及び電位供給線VL_bの一方には、高電源電位VDDが与
えられ、他方には、低電源電位VSSが与えられる。
【0443】
図24(B)の画素回路801を有する表示装置では、例えば、
図24(A)に示す走
査線駆動回路804aにより各行の画素回路801を順次選択し、トランジスタ852を
オン状態にしてデータ信号のデータを書き込む。
【0444】
データが書き込まれた画素回路801は、トランジスタ852がオフ状態になることで
保持状態になる。さらに、書き込まれたデータ信号の電位に応じてトランジスタ854の
ソース電極とドレイン電極の間に流れる電流量が制御され、発光素子872は、流れる電
流量に応じた輝度で発光する。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
【0445】
また、画素回路に、トランジスタのしきい値電圧等の変動の影響を補正する機能を持た
せてもよい。
図25(A)(B)及び
図26(A)(B)に画素回路の一例を示す。
【0446】
図25(A)に示す画素回路は、6つのトランジスタ(トランジスタ303_1乃至3
03_6)と、容量素子304と、発光素子305と、を有する。また、
図25(A)に
示す画素回路には、配線301_1乃至301_5、並びに配線302_1及び配線30
2_2が電気的に接続されている。なお、トランジスタ303_1乃至303_6につい
ては、例えばPチャネル型のトランジスタを用いることができる。
【0447】
図25(B)に示す画素回路は、
図25(A)に示す画素回路に、トランジスタ303
_7を追加した構成である。また、
図25(B)に示す画素回路には、配線301_6及
び配線301_7が電気的に接続されている。ここで、配線301_5と配線301_6
とは、それぞれ電気的に接続されていてもよい。なお、トランジスタ303_7について
は、例えばPチャネル型のトランジスタを用いることができる。
【0448】
図26(A)に示す画素回路は、6つのトランジスタ(トランジスタ308_1乃至3
08_6)と、容量素子304と、発光素子305と、を有する。また、
図26(A)に
示す画素回路には、配線306_1乃至306_3、並びに配線307_1乃至307_
3が電気的に接続されている。ここで配線306_1と配線306_3とは、それぞれ電
気的に接続されていてもよい。なお、トランジスタ308_1乃至308_6については
、例えばPチャネル型のトランジスタを用いることができる。
【0449】
図26(B)に示す画素回路は、2つのトランジスタ(トランジスタ309_1及びト
ランジスタ309_2)と、2つの容量素子(容量素子304_1及び容量素子304_
2)と、発光素子305と、を有する。また、
図26(B)に示す画素回路には、配線3
11_1乃至配線311_3、配線312_1、及び配線312_2が電気的に接続され
ている。また、
図26(B)に示す画素回路の構成とすることで、例えば、電圧入力-電
流駆動方式(CVCC方式ともいう)とすることができる。なお、トランジスタ309_
1及び309_2については、例えばPチャネル型のトランジスタを用いることができる
。
【0450】
また、本発明の一態様の発光素子は、表示装置の画素に能動素子を有するアクティブマ
トリクス方式、または、表示装置の画素に能動素子を有しないパッシブマトリクス方式の
それぞれの方式に適用することができる。
【0451】
アクティブマトリクス方式では、能動素子(アクティブ素子、非線形素子)として、ト
ランジスタだけでなく、さまざまな能動素子(アクティブ素子、非線形素子)を用いるこ
とが出来る。例えば、MIM(Metal Insulator Metal)、又はT
FD(Thin Film Diode)などを用いることも可能である。これらの素子
は、製造工程が少ないため、製造コストの低減、又は歩留まりの向上を図ることができる
。または、これらの素子は、素子のサイズが小さいため、開口率を向上させることができ
、低消費電力化や高輝度化をはかることが出来る。
【0452】
アクティブマトリクス方式以外のものとして、能動素子(アクティブ素子、非線形素子
)を用いないパッシブマトリクス型を用いることも可能である。能動素子(アクティブ素
子、非線形素子)を用いないため、製造工程が少ないため、製造コストの低減、又は歩留
まりの向上を図ることができる。または、能動素子(アクティブ素子、非線形素子)を用
いないため、開口率を向上させることができ、低消費電力化、又は高輝度化などを図るこ
とが出来る。
【0453】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いること
ができる。
【0454】
(実施の形態6)
本実施の形態においては、本発明の一態様の発光素子を有する表示装置、及び該表示装
置に入力装置を取り付けた電子機器について、
図27乃至
図31を用いて説明を行う。
【0455】
<タッチパネルに関する説明1>
なお、本実施の形態において、電子機器の一例として、表示装置と、入力装置とを合わ
せたタッチパネル2000について説明する。また、入力装置の一例として、タッチセン
サを有する場合について説明する。
【0456】
図27(A)(B)は、タッチパネル2000の斜視図である。なお、
図27(A)(
B)において、明瞭化のため、タッチパネル2000の代表的な構成要素を示す。
【0457】
タッチパネル2000は、表示装置2501とタッチセンサ2595とを有する(
図2
7(B)参照)。また、タッチパネル2000は、基板2510、基板2570、及び基
板2590を有する。なお、基板2510、基板2570、及び基板2590はいずれも
可撓性を有する。ただし、基板2510、基板2570、及び基板2590のいずれか一
つまたは全てが可撓性を有さない構成としてもよい。
【0458】
表示装置2501は、基板2510上に複数の画素及び該画素に信号を供給することが
できる複数の配線2511を有する。複数の配線2511は、基板2510の外周部にま
で引き回され、その一部が端子2519を構成している。端子2519はFPC2509
(1)と電気的に接続する。また、複数の配線2511は、信号線駆動回路2503s(
1)からの信号を複数の画素に供給することができる。
【0459】
基板2590は、タッチセンサ2595と、タッチセンサ2595と電気的に接続する
複数の配線2598とを有する。複数の配線2598は、基板2590の外周部に引き回
され、その一部は端子を構成する。そして、該端子はFPC2509(2)と電気的に接
続される。なお、
図27(B)では明瞭化のため、基板2590の裏面側(基板2510
と対向する面側)に設けられるタッチセンサ2595の電極や配線等を実線で示している
。
【0460】
タッチセンサ2595として、例えば静電容量方式のタッチセンサを適用できる。静電
容量方式としては、表面型静電容量方式、投影型静電容量方式等がある。
【0461】
投影型静電容量方式としては、主に駆動方式の違いから自己容量方式、相互容量方式な
どがある。相互容量方式を用いると同時多点検出が可能となるため好ましい。
【0462】
なお、
図27(B)に示すタッチセンサ2595は、投影型静電容量方式のタッチセン
サを適用した構成である。
【0463】
なお、タッチセンサ2595には、指等の検知対象の近接または接触を検知することが
できる、様々なセンサを適用することができる。
【0464】
投影型静電容量方式のタッチセンサ2595は、電極2591と電極2592とを有す
る。電極2591は、複数の配線2598のいずれかと電気的に接続し、電極2592は
複数の配線2598の他のいずれかと電気的に接続する。
【0465】
電極2592は、
図27(A)(B)に示すように、一方向に繰り返し配置された複数
の四辺形が角部で接続される形状を有する。
【0466】
電極2591は四辺形であり、電極2592が延在する方向と交差する方向に繰り返し
配置されている。
【0467】
配線2594は、電極2592を挟む二つの電極2591と電気的に接続する。このと
き、電極2592と配線2594の交差部の面積ができるだけ小さくなる形状が好ましい
。これにより、電極が設けられていない領域の面積を低減でき、透過率のバラツキを低減
できる。その結果、タッチセンサ2595を透過する光の輝度のバラツキを低減すること
ができる。
【0468】
なお、電極2591及び電極2592の形状はこれに限定されず、様々な形状を取りう
る。例えば、複数の電極2591をできるだけ隙間が生じないように配置し、絶縁層を介
して電極2592を、電極2591と重ならない領域ができるように離間して複数設ける
構成としてもよい。このとき、隣接する2つの電極2592の間に、これらとは電気的に
絶縁されたダミー電極を設けると、透過率の異なる領域の面積を低減できるため好ましい
。
【0469】
<表示装置に関する説明>
次に、
図28(A)を用いて、表示装置2501の詳細について説明する。
図28(A
)は、
図27(B)に示す一点鎖線X1-X2間の断面図に相当する。
【0470】
表示装置2501は、マトリクス状に配置された複数の画素を有する。該画素は表示素
子と、該表示素子を駆動する画素回路とを有する。
【0471】
以下の説明においては、白色の光を射出する発光素子を表示素子に適用する場合につい
て説明するが、表示素子はこれに限定されない。例えば、隣接する画素毎に射出する光の
色が異なるように、発光色が異なる発光素子を適用してもよい。
【0472】
基板2510及び基板2570としては、例えば、水蒸気の透過率が1×10-5g・
m-2・day-1以下、好ましくは1×10-6g・m-2・day-1以下である可
撓性を有する材料を好適に用いることができる。または、基板2510の熱膨張率と、基
板2570の熱膨張率とが、およそ等しい材料を用いると好適である。例えば、線膨張率
が1×10-3/K以下、好ましくは5×10-5/K以下、より好ましくは1×10-
5/K以下である材料を好適に用いることができる。
【0473】
なお、基板2510は、発光素子への不純物の拡散を防ぐ絶縁層2510aと、可撓性
基板2510bと、絶縁層2510a及び可撓性基板2510bを貼り合わせる接着層2
510cと、を有する積層体である。また、基板2570は、発光素子への不純物の拡散
を防ぐ絶縁層2570aと、可撓性基板2570bと、絶縁層2570a及び可撓性基板
2570bを貼り合わせる接着層2570cと、を有する積層体である。
【0474】
接着層2510c及び接着層2570cとしては、例えば、ポリエステル、ポリオレフ
ィン、ポリアミド(ナイロン、アラミド等)、ポリイミド、ポリカーボネートまたはアク
リル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂を用いることができる。もしくは、シリコーンな
どのシロキサン結合を有する樹脂を含む材料を用いることができる。
【0475】
また、基板2510と基板2570との間に封止層2560を有する。封止層2560
は、空気より大きい屈折率を有すると好ましい。また、
図28(A)に示すように、封止
層2560側に光を取り出す場合は、封止層2560は光学的な接合層を兼ねることがで
きる。
【0476】
また、封止層2560の外周部にシール材を形成してもよい。当該シール材を用いるこ
とにより、基板2510、基板2570、封止層2560、及びシール材で囲まれた領域
に発光素子2550Rを有する構成とすることができる。なお、封止層2560として、
不活性気体(窒素やアルゴン等)を充填してもよい。また、当該不活性気体内に、乾燥材
を設けて、水分等を吸着させる構成としてもよい。あるいは、アクリルやエポキシ等の樹
脂によって充填してもよい。また、上述のシール材としては、例えば、エポキシ系樹脂や
ガラスフリットを用いるのが好ましい。また、シール材に用いる材料としては、水分や酸
素を透過しない材料を用いると好適である。
【0477】
また、表示装置2501は、画素2502Rを有する。また、画素2502Rは発光モ
ジュール2580Rを有する。
【0478】
画素2502Rは、発光素子2550Rと、発光素子2550Rに電力を供給すること
ができるトランジスタ2502tとを有する。なお、トランジスタ2502tは、画素回
路の一部として機能する。また、発光モジュール2580Rは、発光素子2550Rと、
着色層2567Rとを有する。
【0479】
発光素子2550Rは、下部電極と、上部電極と、下部電極と上部電極の間にEL層と
を有する。発光素子2550Rとして、例えば、実施の形態1乃至実施の形態3に示す発
光素子を適用することができる。
【0480】
また、下部電極と上部電極との間で、マイクロキャビティ構造を採用し、特定波長にお
ける光強度を増加させてもよい。
【0481】
また、封止層2560が光を取り出す側に設けられている場合、封止層2560は、発
光素子2550Rと着色層2567Rに接する。
【0482】
着色層2567Rは、発光素子2550Rと重なる位置にある。これにより、発光素子
2550Rが発する光の一部は着色層2567Rを透過して、図中に示す矢印の方向の発
光モジュール2580Rの外部に射出される。
【0483】
また、表示装置2501には、光を射出する方向に遮光層2567BMが設けられる。
遮光層2567BMは、着色層2567Rを囲むように設けられている。
【0484】
着色層2567Rとしては、特定の波長帯域の光を透過する機能を有していればよく、
例えば、赤色の波長帯域の光を透過するカラーフィルタ、緑色の波長帯域の光を透過する
カラーフィルタ、青色の波長帯域の光を透過するカラーフィルタ、黄色の波長帯域の光を
透過するカラーフィルタなどを用いることができる。各カラーフィルタは、様々な材料を
用いて、印刷法、インクジェット法、フォトリソグラフィ技術を用いたエッチング方法な
どで形成することができる。
【0485】
また、表示装置2501には、絶縁層2521が設けられる。絶縁層2521はトラン
ジスタ2502tを覆う。なお、絶縁層2521は、画素回路に起因する凹凸を平坦化す
るための機能を有する。また、絶縁層2521に不純物の拡散を抑制できる機能を付与し
てもよい。これにより、不純物の拡散によるトランジスタ2502t等の信頼性の低下を
抑制できる。
【0486】
また、発光素子2550Rは、絶縁層2521の上方に形成される。また、発光素子2
550Rが有する下部電極には、該下部電極の端部に重なる隔壁2528が設けられる。
なお、基板2510と、基板2570との間隔を制御するスペーサを、隔壁2528上に
形成してもよい。
【0487】
走査線駆動回路2503g(1)は、トランジスタ2503tと、容量素子2503c
とを有する。なお、駆動回路を画素回路と同一の工程で同一基板上に形成することができ
る。
【0488】
また、基板2510上には、信号を供給することができる配線2511が設けられる。
また、配線2511上には、端子2519が設けられる。また、端子2519には、FP
C2509(1)が電気的に接続される。また、FPC2509(1)は、ビデオ信号、
クロック信号、スタート信号、リセット信号等を供給する機能を有する。なお、FPC2
509(1)にはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。
【0489】
また、表示装置2501には、様々な構造のトランジスタを適用することができる。図
28(A)においては、ボトムゲート型のトランジスタを適用する場合について、例示し
ているが、これに限定されず、例えば、
図28(B)に示す、トップゲート型のトランジ
スタを表示装置2501に適用する構成としてもよい。
【0490】
また、トランジスタ2502t及びトランジスタ2503tの極性については、特に限
定はなく、Nチャネル型およびPチャネル型のトランジスタを有する構造、Nチャネル型
のトランジスタまたはPチャネル型のトランジスタのいずれか一方のみからなる構造を用
いてもよい。また、トランジスタ2502t及び2503tに用いられる半導体膜の結晶
性についても特に限定はない。例えば、非晶質半導体膜、結晶性半導体膜を用いることが
できる。また、半導体材料としては、14族の半導体(例えば、ケイ素を有する半導体)
、化合物半導体(酸化物半導体を含む)、有機半導体等を用いることができる。トランジ
スタ2502t及びトランジスタ2503tのいずれか一方または双方に、エネルギーギ
ャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、さらに好ましくは3eV以上の酸化物
半導体を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができるため好ましい。
当該酸化物半導体としては、In-Ga酸化物、In-M-Zn酸化物(Mは、Al、G
a、Y、Zr、La、Ce、Sn、Hf、またはNdを表す)等が挙げられる。
【0491】
<タッチセンサに関する説明>
次に、
図28(C)を用いて、タッチセンサ2595の詳細について説明する。
図28
(C)は、
図27(B)に示す一点鎖線X3-X4間の断面図に相当する。
【0492】
タッチセンサ2595は、基板2590上に千鳥状に配置された電極2591及び電極
2592と、電極2591及び電極2592を覆う絶縁層2593と、隣り合う電極25
91を電気的に接続する配線2594とを有する。
【0493】
電極2591及び電極2592は、透光性を有する導電材料を用いて形成する。透光性
を有する導電性材料としては、酸化インジウム、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸
化物、酸化亜鉛、ガリウムを添加した酸化亜鉛などの導電性酸化物を用いることができる
。なお、グラフェンを含む膜を用いることもできる。グラフェンを含む膜は、例えば膜状
に形成された酸化グラフェンを含む膜を還元して形成することができる。還元する方法と
しては、熱を加える方法等を挙げることができる。
【0494】
例えば、透光性を有する導電性材料を基板2590上にスパッタリング法により成膜し
た後、フォトリソグラフィ法等の様々なパターン形成技術により、不要な部分を除去して
、電極2591及び電極2592を形成することができる。
【0495】
また、絶縁層2593に用いる材料としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂な
どの樹脂、シリコーンなどのシロキサン結合を有する樹脂の他、酸化シリコン、酸化窒化
シリコン、酸化アルミニウムなどの無機絶縁材料を用いることもできる。
【0496】
また、電極2591に達する開口が絶縁層2593に設けられ、配線2594が隣接す
る電極2591と電気的に接続する。透光性の導電性材料は、タッチパネルの開口率を高
めることができるため、配線2594に好適に用いることができる。また、電極2591
及び電極2592より導電性の高い材料は、電気抵抗を低減できるため配線2594に好
適に用いることができる。
【0497】
電極2592は、一方向に延在し、複数の電極2592がストライプ状に設けられてい
る。また、配線2594は電極2592と交差して設けられている。
【0498】
一対の電極2591が1つの電極2592を挟んで設けられる。また、配線2594は
一対の電極2591を電気的に接続している。
【0499】
なお、複数の電極2591は、1つの電極2592と必ずしも直交する方向に配置され
る必要はなく、0度より大きく90度未満の角度をなすように配置されてもよい。
【0500】
また、配線2598は、電極2591または電極2592と電気的に接続される。また
、配線2598の一部は、端子として機能する。配線2598としては、例えば、アルミ
ニウム、金、白金、銀、ニッケル、チタン、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コ
バルト、銅、またはパラジウム等の金属材料や、該金属材料を含む合金材料を用いること
ができる。
【0501】
なお、絶縁層2593及び配線2594を覆う絶縁層を設けて、タッチセンサ2595
を保護してもよい。
【0502】
また、接続層2599は、配線2598とFPC2509(2)を電気的に接続させる
。
【0503】
接続層2599としては、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic C
onductive Film)や、異方性導電ペースト(ACP:Anisotrop
ic Conductive Paste)などを用いることができる。
【0504】
<タッチパネルに関する説明2>
次に、
図29(A)を用いて、タッチパネル2000の詳細について説明する。
図29
(A)は、
図27(A)に示す一点鎖線X5-X6間の断面図に相当する。
【0505】
図29(A)に示すタッチパネル2000は、
図28(A)で説明した表示装置250
1と、
図28(C)で説明したタッチセンサ2595と、を貼り合わせた構成である。
【0506】
また、
図29(A)に示すタッチパネル2000は、
図28(A)及び
図28(C)で
説明した構成の他、接着層2597と、反射防止層2567pと、を有する。
【0507】
接着層2597は、配線2594と接して設けられる。なお、接着層2597は、タッ
チセンサ2595が表示装置2501に重なるように、基板2590を基板2570に貼
り合わせている。また、接着層2597は、透光性を有すると好ましい。また、接着層2
597としては、熱硬化性樹脂、または紫外線硬化樹脂を用いることができる。例えば、
アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、またはシロキサン系樹脂を用いるこ
とができる。
【0508】
反射防止層2567pは、画素に重なる位置に設けられる。反射防止層2567pとし
て、例えば円偏光板を用いることができる。
【0509】
次に、
図29(A)に示す構成と異なる構成のタッチパネルについて、
図29(B)を
用いて説明する。
【0510】
図29(B)は、タッチパネル2001の断面図である。
図29(B)に示すタッチパ
ネル2001は、
図29(A)に示すタッチパネル2000と、表示装置2501に対す
るタッチセンサ2595の位置が異なる。ここでは異なる構成について詳細に説明し、同
様の構成を用いることができる部分は、タッチパネル2000の説明を援用する。
【0511】
着色層2567Rは、発光素子2550Rと重なる位置にある。また、
図29(B)に
示す発光素子2550Rは、トランジスタ2502tが設けられている側に光を射出する
。これにより、発光素子2550Rが発する光の一部は、着色層2567Rを透過して、
図中に示す矢印の方向の発光モジュール2580Rの外部に射出される。
【0512】
また、タッチセンサ2595は、表示装置2501の基板2510側に設けられている
。
【0513】
接着層2597は、基板2510と基板2590の間にあり、表示装置2501とタッ
チセンサ2595を貼り合わせる。
【0514】
図29(A)(B)に示すように、発光素子から射出される光は、基板2510側及び
基板2570側のいずれか一方または双方を通して射出されればよい。
【0515】
<タッチパネルの駆動方法に関する説明>
次に、タッチパネルの駆動方法の一例について、
図30(A)(B)を用いて説明を行
う。
【0516】
図30(A)は、相互容量方式のタッチセンサの構成を示すブロック図である。
図30
(A)では、パルス電圧出力回路2601、電流検出回路2602を示している。なお、
図30(A)では、パルス電圧が与えられる電極2621をX1-X6として、電流の変
化を検知する電極2622をY1-Y6として、それぞれ6本の配線で例示している。ま
た、
図30(A)は、電極2621と、電極2622とが重なることで形成される容量2
603を示している。なお、電極2621と電極2622とはその機能を互いに置き換え
てもよい。
【0517】
パルス電圧出力回路2601は、X1-X6の配線に順にパルスを印加するための回路
である。X1-X6の配線にパルス電圧が印加されることで、容量2603を形成する電
極2621と電極2622との間に電界が生じる。この電極間に生じる電界が遮蔽等によ
り容量2603の相互容量に変化を生じさせることを利用して、被検知体の近接、または
接触を検出することができる。
【0518】
電流検出回路2602は、容量2603での相互容量の変化による、Y1-Y6の配線
での電流の変化を検出するための回路である。Y1-Y6の配線では、被検知体の近接、
または接触がないと検出される電流値に変化はないが、検出する被検知体の近接、または
接触により相互容量が減少する場合には電流値が減少する変化を検出する。なお電流の検
出は、積分回路等を用いて行えばよい。
【0519】
次に、
図30(B)には、
図30(A)で示す相互容量方式のタッチセンサにおける入
出力波形のタイミングチャートを示す。
図30(B)では、1フレーム期間で各行列での
被検知体の検出を行う。また
図30(B)では、被検知体を検出しない場合(非タッチ)
と被検知体を検出する場合(タッチ)との2つの場合について示している。なお、
図30
(B)では、Y1-Y6の配線で検出される電流値に対応する電圧値の波形を示している
。
【0520】
X1-X6の配線には、順にパルス電圧が与えられ、該パルス電圧にしたがってY1-
Y6の配線での波形が変化する。被検知体の近接または接触がない場合には、X1-X6
の配線の電圧の変化に応じてY1-Y6の波形が一様に変化する。一方、被検知体が近接
または接触する箇所では、電流値が減少するため、これに対応する電圧値の波形も変化す
る。
【0521】
このように、相互容量の変化を検出することにより、被検知体の近接または接触を検知
することができる。
【0522】
<センサ回路に関する説明>
また、
図30(A)ではタッチセンサとして配線の交差部に容量2603のみを設ける
パッシブマトリクス型のタッチセンサの構成を示したが、トランジスタと容量とを有する
アクティブマトリクス型のタッチセンサとしてもよい。アクティブマトリクス型のタッチ
センサに含まれるセンサ回路の一例を
図31に示す。
【0523】
図31に示すセンサ回路は、容量2603と、トランジスタ2611と、トランジスタ
2612と、トランジスタ2613とを有する。
【0524】
トランジスタ2613はゲートに信号G2が与えられ、ソースまたはドレインの一方に
電圧VRESが与えられ、他方が容量2603の一方の電極およびトランジスタ2611
のゲートと電気的に接続する。トランジスタ2611は、ソースまたはドレインの一方が
トランジスタ2612のソースまたはドレインの一方と電気的に接続し、他方に電圧VS
Sが与えられる。トランジスタ2612は、ゲートに信号G1が与えられ、ソースまたは
ドレインの他方が配線MLと電気的に接続する。容量2603の他方の電極には電圧VS
Sが与えられる。
【0525】
次に、
図31に示すセンサ回路の動作について説明する。まず、信号G2としてトラン
ジスタ2613をオン状態とする電位が与えられることで、トランジスタ2611のゲー
トが接続されるノードnに電圧VRESに対応した電位が与えられる。次に、信号G2と
してトランジスタ2613をオフ状態とする電位が与えられることで、ノードnの電位が
保持される。
【0526】
続いて、指等の被検知体の近接または接触により、容量2603の相互容量が変化する
ことに伴い、ノードnの電位がVRESから変化する。
【0527】
読み出し動作は、信号G1にトランジスタ2612をオン状態とする電位を与える。ノ
ードnの電位に応じてトランジスタ2611に流れる電流、すなわち配線MLに流れる電
流が変化する。この電流を検出することにより、被検知体の近接または接触を検出するこ
とができる。
【0528】
トランジスタ2611、トランジスタ2612、及びトランジスタ2613としては、
酸化物半導体層をチャネル領域が形成される半導体層に用いることが好ましい。とくにト
ランジスタ2613にこのようなトランジスタを適用することにより、ノードnの電位を
長期間に亘って保持することが可能となり、ノードnにVRESを供給しなおす動作(リ
フレッシュ動作)の頻度を減らすことができる。
【0529】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いること
ができる。
【0530】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光素子を有する表示モジュール及び電子機器に
ついて、
図32乃至
図37を用いて説明を行う。
【0531】
<表示モジュールに関する説明>
図32に示す表示モジュール8000は、上部カバー8001と下部カバー8002と
の間に、FPC8003に接続されたタッチセンサ8004、FPC8005に接続され
た表示装置8006、フレーム8009、プリント基板8010、バッテリ8011を有
する。
【0532】
本発明の一態様の発光素子は、例えば、表示装置8006に用いることができる。
【0533】
上部カバー8001及び下部カバー8002は、タッチセンサ8004及び表示装置8
006のサイズに合わせて、形状や寸法を適宜変更することができる。
【0534】
タッチセンサ8004は、抵抗膜方式または静電容量方式のタッチセンサを表示装置8
006に重ねて用いることができる。また、表示装置8006の対向基板(封止基板)に
、タッチセンサ機能を持たせるようにすることも可能である。また、表示装置8006の
各画素内に光センサを設け、光学式のタッチセンサとすることも可能である。
【0535】
フレーム8009は、表示装置8006の保護機能の他、プリント基板8010の動作
により発生する電磁波を遮断するための電磁シールドとしての機能を有する。またフレー
ム8009は、放熱板としての機能を有していてもよい。
【0536】
プリント基板8010は、電源回路、ビデオ信号及びクロック信号を出力するための信
号処理回路を有する。電源回路に電力を供給する電源としては、外部の商用電源であって
も良いし、別途設けたバッテリ8011による電源であってもよい。バッテリ8011は
、商用電源を用いる場合には、省略可能である。
【0537】
また、表示モジュール8000は、偏光板、位相差板、プリズムシートなどの部材を追
加して設けてもよい。
【0538】
<電子機器に関する説明>
図33(A)乃至
図33(G)は、電子機器を示す図である。これらの電子機器は、筐
体9000、表示部9001、スピーカ9003、操作キー9005(電源スイッチ、又
は操作スイッチを含む)、接続端子9006、センサ9007(力、変位、位置、速度、
加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電
場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する
機能を含むもの)、マイクロフォン9008、等を有することができる。また、センサ9
007は、脈拍センサや指紋センサ等のように生体情報を測定する機能を有してもよい。
【0539】
図33(A)乃至
図33(G)に示す電子機器は、様々な機能を有することができる。
例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッ
チセンサ機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(
プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、無線通信機能を用いて様々な
コンピュータネットワークに接続する機能、無線通信機能を用いて様々なデータの送信ま
たは受信を行う機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出して表
示部に表示する機能、等を有することができる。なお、
図33(A)乃至
図33(G)に
示す電子機器が有することのできる機能はこれらに限定されず、様々な機能を有すること
ができる。また、
図33(A)乃至
図33(G)には図示していないが、電子機器には、
複数の表示部を有する構成としてもよい。また、該電子機器にカメラ等を設け、静止画を
撮影する機能、動画を撮影する機能、撮影した画像を記録媒体(外部またはカメラに内蔵
)に保存する機能、撮影した画像を表示部に表示する機能、等を有していてもよい。
【0540】
図33(A)乃至
図33(G)に示す電子機器の詳細について、以下説明を行う。
【0541】
図33(A)は、携帯情報端末9100を示す斜視図である。携帯情報端末9100が
有する表示部9001は、可撓性を有する。そのため、湾曲した筐体9000の湾曲面に
沿って表示部9001を組み込むことが可能である。また、表示部9001はタッチセン
サを備え、指やスタイラスなどで画面に触れることで操作することができる。例えば、表
示部9001に表示されたアイコンに触れることで、アプリケーションを起動することが
できる。
【0542】
図33(B)は、携帯情報端末9101を示す斜視図である。携帯情報端末9101は
、例えば電話機、手帳又は情報閲覧装置等から選ばれた一つ又は複数の機能を有する。具
体的には、スマートフォンとして用いることができる。なお、携帯情報端末9101は、
スピーカ9003、接続端子9006、センサ9007等を省略して図示しているが、図
33(A)に示す携帯情報端末9100と同様の位置に設けることができる。また、携帯
情報端末9101は、文字や画像情報をその複数の面に表示することができる。例えば、
3つの操作ボタン9050(操作アイコンまたは単にアイコンともいう)を表示部900
1の一の面に表示することができる。また、破線の矩形で示す情報9051を表示部90
01の他の面に表示することができる。なお、情報9051の一例としては、電子メール
やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)や電話などの着信を知らせる表示
、電子メールやSNSなどの題名、電子メールやSNSなどの送信者名、日時、時刻、バ
ッテリの残量、電波等の受信信号の強度を示す表示などがある。または、情報9051が
表示されている位置に、情報9051の代わりに、操作ボタン9050などを表示しても
よい。
【0543】
筐体9000の材料としては、例えば、合金、プラスチック、セラミックス等を用い
ることができる。プラスチックとしては強化プラスチックを用いることもできる。強化プ
ラスチックの一種である炭素繊維強化樹脂複合材(Carbon Fiber Rein
forced Plastics:CFRP)は軽量であり且つ腐食しない利点がある。
また、他の強化プラスチックとしては、ガラス繊維を用いた強化プラスチック、アラミド
繊維を用いた強化プラスチックを挙げることができる。合金としては、アルミニウム合金
やマグネシウム合金が挙げられるが、中でもジルコニウムと銅とニッケルとチタンを含む
非晶質合金(金属ガラスとも呼ばれる)が弾性強度の点で優れている。この非晶質合金は
、室温においてガラス遷移領域を有する非晶質合金であり、バルク凝固非晶質合金とも呼
ばれ、実質的に非晶質原子構造を有する合金である。凝固鋳造法により、少なくとも一部
の筐体の鋳型内に合金材料が鋳込まれ、凝固させて一部の筐体をバルク凝固非晶質合金で
形成する。非晶質合金は、ジルコニウム、銅、ニッケル、チタン以外にもベリリウム、シ
リコン、ニオブ、ボロン、ガリウム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、コバル
ト、イットリウム、バナジウム、リン、炭素などを含んでもよい。また、非晶質合金は、
凝固鋳造法に限定されず、真空蒸着法、スパッタ法、電解めっき法、無電解メッキ法など
によって形成してもよい。また、非晶質合金は、全体として長距離秩序(周期構造)を持
たない状態を維持するのであれば、微結晶またはナノ結晶を含んでもよい。なお、合金と
は、単一の固体相構造を有する完全固溶体合金と、2つ以上の相を有する部分溶体の両方
を含むこととする。筐体9000に非晶質合金を用いることで高い弾性を有する筐体を実
現できる。従って、携帯情報端末9101を落下させても、筐体9000が非晶質合金で
あれば、衝撃が加えられた瞬間には一時的に変形しても元に戻るため、携帯情報端末91
01の耐衝撃性を向上させることができる。
【0544】
図33(C)は、携帯情報端末9102を示す斜視図である。携帯情報端末9102は
、表示部9001の3面以上に情報を表示する機能を有する。ここでは、情報9052、
情報9053、情報9054がそれぞれ異なる面に表示されている例を示す。例えば、携
帯情報端末9102の使用者は、洋服の胸ポケットに携帯情報端末9102を収納した状
態で、その表示(ここでは情報9053)を確認することができる。具体的には、着信し
た電話の発信者の電話番号又は氏名等を、携帯情報端末9102の上方から観察できる位
置に表示する。使用者は、携帯情報端末9102をポケットから取り出すことなく、表示
を確認し、電話を受けるか否かを判断できる。
【0545】
図33(D)は、腕時計型の携帯情報端末9200を示す斜視図である。携帯情報端末
9200は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信
、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。また、表
示部9001はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うこと
ができる。また、携帯情報端末9200は、通信規格された近距離無線通信を実行するこ
とが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハン
ズフリーで通話することもできる。また、携帯情報端末9200は、接続端子9006を
有し、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。ま
た接続端子9006を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は接続端子900
6を介さずに無線給電により行ってもよい。
【0546】
図33(E)(F)(G)は、折り畳み可能な携帯情報端末9201を示す斜視図であ
る。また、
図33(E)が携帯情報端末9201を展開した状態の斜視図であり、
図33
(F)が携帯情報端末9201を展開した状態または折り畳んだ状態の一方から他方に変
化する途中の状態の斜視図であり、
図33(G)が携帯情報端末9201を折り畳んだ状
態の斜視図である。携帯情報端末9201は、折り畳んだ状態では可搬性に優れ、展開し
た状態では、継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。携帯情報端末92
01が有する表示部9001は、ヒンジ9055によって連結された3つの筐体9000
に支持されている。ヒンジ9055を介して2つの筐体9000間を屈曲させることによ
り、携帯情報端末9201を展開した状態から折りたたんだ状態に可逆的に変形させるこ
とができる。例えば、携帯情報端末9201は、曲率半径1mm以上150mm以下で曲
げることができる。
【0547】
また、電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信
機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、
デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、ゴーグル型
ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再
生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
【0548】
また、本発明の一態様の電子機器は、二次電池を有していてもよく、非接触電力伝送を
用いて、二次電池を充電することができると好ましい。
【0549】
二次電池としては、例えば、ゲル状電解質を用いるリチウムポリマー電池(リチウムイ
オンポリマー電池)等のリチウムイオン二次電池、リチウムイオン電池、ニッケル水素電
池、ニカド電池、有機ラジカル電池、鉛蓄電池、空気二次電池、ニッケル亜鉛電池、銀亜
鉛電池などが挙げられる。
【0550】
本発明の一態様の電子機器は、アンテナを有していてもよい。アンテナで信号を受信す
ることで、表示部で映像や情報等の表示を行うことができる。また、電子機器が二次電池
を有する場合、アンテナを、非接触電力伝送に用いてもよい。
【0551】
図34(A)は携帯型ゲーム機であり、筐体7101、筐体7102、表示部7103
、表示部7104、マイク7105、スピーカ7106、操作キー7107、スタイラス
7108等を有する。表示部7103または表示部7104に本発明の一態様に係る発光
装置を用いることで、ユーザーの使用感に優れ、品質の低下が起こりにくい携帯型ゲーム
機を提供することができる。なお、
図34(A)に示した携帯型ゲーム機は、2つの表示
部7103と表示部7104とを有しているが、携帯型ゲーム機が有する表示部の数は、
これに限定されない。
【0552】
図34(B)はビデオカメラであり、筐体7701、筐体7702、表示部7703、
操作キー7704、レンズ7705、接続部7706等を有する。操作キー7704およ
びレンズ7705は筐体7701に設けられており、表示部7703は筐体7702に設
けられている。そして、筐体7701と筐体7702とは、接続部7706により接続さ
れており、筐体7701と筐体7702の間の角度は、接続部7706により変更が可能
である。表示部7703における映像を、接続部7706における筐体7701と筐体7
702との間の角度にしたがって切り替える構成としてもよい。
【0553】
図34(C)はノート型パーソナルコンピュータであり、筐体7121、表示部712
2、キーボード7123、ポインティングデバイス7124等を有する。なお、表示部7
122は、非常に画素密度が高く高精細とすることができるため、中小型でありながら8
kの表示を行うことができ、非常に鮮明な画像を得ることができる。
【0554】
図34(D)には、ヘッドマウントディスプレイ7200の外観を示している。
【0555】
ヘッドマウントディスプレイ7200は、装着部7201、レンズ7202、本体72
03、表示部7204、ケーブル7205等を有している。また装着部7201には、バ
ッテリ7206が内蔵されている。
【0556】
ケーブル7205は、バッテリ7206から本体7203に電力を供給する。本体72
03は無線受信機等を備え、受信した画像データ等の映像情報を表示部7204に表示さ
せることができる。また、本体7203に設けられたカメラで使用者の眼球やまぶたの動
きを捉え、その情報をもとに使用者の視点の座標を算出することにより、使用者の視点を
入力手段として用いることができる。
【0557】
また、装着部7201には、使用者に触れる位置に複数の電極が設けられていてもよい
。本体7203は使用者の眼球の動きに伴って電極に流れる電流を検知することにより、
使用者の視点を認識する機能を有していてもよい。また、当該電極に流れる電流を検知す
ることにより、使用者の脈拍をモニタする機能を有していてもよい。また、装着部720
1には、温度センサ、圧力センサ、加速度センサ等の各種センサを有していてもよく、使
用者の生体情報を表示部7204に表示する機能を有していてもよい。また、使用者の頭
部の動きなどを検出し、表示部7204に表示する映像をその動きに合わせて変化させて
もよい。
【0558】
図34(E)に、カメラ7300の外観を示す。カメラ7300は、筐体7301、表
示部7302、操作ボタン7303、シャッターボタン7304、結合部7305等を有
する。またカメラ7300には、レンズ7306を取り付けることができる。
【0559】
結合部7305は、電極を有し、後述するファインダー7400のほか、ストロボ装置
等を接続することができる。
【0560】
ここではカメラ7300として、レンズ7306を筐体7301から取り外して交換す
ることが可能な構成としたが、レンズ7306と筐体7301が一体となっていてもよい
。
【0561】
シャッターボタン7304を押すことにより、撮像することができる。また、表示部7
302はタッチセンサを有し、表示部7302を操作することにより撮像することも可能
である。
【0562】
表示部7302に、本発明の一態様の表示装置、またはタッチセンサを適用することが
できる。
【0563】
図34(F)には、カメラ7300にファインダー7400を取り付けた場合の例を示
している。
【0564】
ファインダー7400は、筐体7401、表示部7402、ボタン7403等を有する
。
【0565】
筐体7401には、カメラ7300の結合部7305と係合する結合部を有しており、
ファインダー7400をカメラ7300に取り付けることができる。また当該結合部には
電極を有し、当該電極を介してカメラ7300から受信した映像等を表示部7402に表
示させることができる。
【0566】
ボタン7403は、電源ボタンとしての機能を有する。ボタン7403により、表示部
7402の表示のオンとオフとを切り替えることができる。
【0567】
なお、
図34(E)(F)では、カメラ7300とファインダー7400とを別の電子
機器とし、これらを脱着可能な構成としたが、カメラ7300の筐体7301に、本発明
の一態様の表示装置、またはタッチセンサを備えるファインダーが内蔵されていてもよい
。
【0568】
図35(A)乃至(E)は、ヘッドマウントディスプレイ7500及び7510の外観
を示す図である。
【0569】
ヘッドマウントディスプレイ7500は、筐体7501、2つの表示部7502、操作
ボタン7503、及びバンド状の固定具7504を有する。
【0570】
ヘッドマウントディスプレイ7500は、上記ヘッドマウントディスプレイ7200が
有する機能に加え、2つの表示部を備える。
【0571】
2つの表示部7502を有することで、使用者は片方の目につき1つの表示部を見るこ
とができる。これにより、視差を用いた3次元表示等を行う際であっても、高い解像度の
映像を表示することができる。また、表示部7502は使用者の目を概略中心とした円弧
状に湾曲している。これにより、使用者の目から表示部の表示面までの距離が一定となる
ため、使用者はより自然な映像を見ることができる。また、表示部からの光の輝度や色度
が見る角度によって変化してしまうような場合であっても、表示部の表示面の法線方向に
使用者の目が位置するため、実質的にその影響を無視することができるため、より現実感
のある映像を表示することができる。
【0572】
操作ボタン7503は、電源ボタンなどの機能を有する。また操作ボタン7503の他
にボタンを有していてもよい。
【0573】
また、ヘッドマウントディスプレイ7510は、筐体7501、表示部7502、バン
ド状の固定具7504、及び一対のレンズ7505を有する。
【0574】
使用者は、レンズ7505を通して、表示部7502の表示を視認することができる。
なお、表示部7502を湾曲して配置させると好適である。表示部7502を湾曲して配
置することで、使用者が高い臨場感を感じることができる。
【0575】
表示部7502に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。本発明の一態
様の表示装置は、精細度を高くすることが可能なため、
図35(E)のようにレンズ75
05を用いて拡大したとしても、使用者に画素が視認されることなく、より現実感の高い
映像を表示することができる。
【0576】
図36(A)にテレビジョン装置の一例を示す。テレビジョン装置9300は、筐体9
000に表示部9001が組み込まれている。ここでは、スタンド9301により筐体9
000を支持した構成を示している。
【0577】
図36(A)に示すテレビジョン装置9300の操作は、筐体9000が備える操作ス
イッチや、別体のリモコン操作機9311により行うことができる。または、表示部90
01にタッチセンサを備えていてもよく、指等で表示部9001に触れることで操作して
もよい。リモコン操作機9311は、当該リモコン操作機9311から出力する情報を表
示する表示部を有していてもよい。リモコン操作機9311が備える操作キー又はタッチ
パネルにより、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部9001に表示される
映像を操作することができる。
【0578】
なお、テレビジョン装置9300は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機
により一般のテレビ放送の受信を行うことができる。また、モデムを介して有線又は無線
による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)又は双方向
(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0579】
また、本発明の一態様の電子機器又は照明装置は可撓性を有するため、家屋やビルの内
壁もしくは外壁、又は、自動車の内装もしくは外装の曲面に沿って組み込むことも可能で
ある。
【0580】
図36(B)に自動車9700の外観を示す。
図36(C)に自動車9700の運転席
を示す。自動車9700は、車体9701、車輪9702、ダッシュボード9703、ラ
イト9704等を有する。本発明の一態様の表示装置又は発光装置等は、自動車9700
の表示部などに用いることができる。例えば、
図36(C)に示す表示部9710乃至表
示部9715に本発明の一態様の表示装置又は発光装置等を設けることができる。
【0581】
表示部9710と表示部9711は、自動車のフロントガラスに設けられた表示装置で
ある。本発明の一態様の表示装置又は発光装置等は、電極や配線を、透光性を有する導電
性材料で作製することによって、反対側が透けて見える、いわゆるシースルー状態とする
ことができる。表示部9710や表示部9711がシースルー状態であれば、自動車97
00の運転時にも視界の妨げになることがない。よって、本発明の一態様の表示装置又は
発光装置等を自動車9700のフロントガラスに設置することができる。なお、表示装置
又は発光装置等を駆動するためのトランジスタなどを設ける場合には、有機半導体材料を
用いた有機トランジスタや、酸化物半導体を用いたトランジスタなど、透光性を有するト
ランジスタを用いるとよい。
【0582】
表示部9712はピラー部分に設けられた表示装置である。例えば、車体に設けられた
撮像手段からの映像を表示部9712に映し出すことによって、ピラーで遮られた視界を
補完することができる。表示部9713はダッシュボード部分に設けられた表示装置であ
る。例えば、車体に設けられた撮像手段からの映像を表示部9713に映し出すことによ
って、ダッシュボードで遮られた視界を補完することができる。すなわち、自動車の外側
に設けられた撮像手段からの映像を映し出すことによって、死角を補い、安全性を高める
ことができる。また、見えない部分を補完する映像を映すことによって、より自然に違和
感なく安全確認を行うことができる。
【0583】
また、
図36(D)は、運転席と助手席にベンチシートを採用した自動車の室内を示し
ている。表示部9721は、ドア部に設けられた表示装置である。例えば、車体に設けら
れた撮像手段からの映像を表示部9721に映し出すことによって、ドアで遮られた視界
を補完することができる。また、表示部9722は、ハンドルに設けられた表示装置であ
る。表示部9723は、ベンチシートの座面の中央部に設けられた表示装置である。なお
、表示装置を座面や背もたれ部分などに設置して、当該表示装置を、当該表示装置の発熱
を熱源としたシートヒーターとして利用することもできる。
【0584】
表示部9714、表示部9715、または表示部9722はナビゲーション情報、スピ
ードメーターやタコメーター、走行距離、給油量、ギア状態、エアコンの設定など、その
他様々な情報を提供することができる。また、表示部に表示される表示項目やレイアウト
などは、使用者の好みに合わせて適宜変更することができる。なお、上記情報は、表示部
9710乃至表示部9713、表示部9721、表示部9723にも表示することができ
る。また、表示部9710乃至表示部9715、表示部9721乃至表示部9723は照
明装置として用いることも可能である。また、表示部9710乃至表示部9715、表示
部9721乃至表示部9723は加熱装置として用いることも可能である。
【0585】
図37(A)(B)に示す表示装置9500は、複数の表示パネル9501と、軸部9
511と、軸受部9512と、を有する。また、複数の表示パネル9501は、表示領域
9502と、透光性を有する領域9503と、を有する。
【0586】
また、複数の表示パネル9501は、可撓性を有する。また、隣接する2つの表示パネ
ル9501は、それらの一部が互いに重なるように設けられる。例えば、隣接する2つの
表示パネル9501の透光性を有する領域9503を重ね合わせることができる。複数の
表示パネル9501を用いることで、大画面の表示装置とすることができる。また、使用
状況に応じて、表示パネル9501を巻き取ることが可能であるため、汎用性に優れた表
示装置とすることができる。
【0587】
また、
図37(A)(B)においては、表示領域9502が隣接する表示パネル950
1で離間する状態を図示しているが、これに限定されず、例えば、隣接する表示パネル9
501の表示領域9502を隙間なく重ねあわせることで、連続した表示領域9502と
してもよい。
【0588】
本実施の形態において述べた電子機器は、何らかの情報を表示するための表示部を有す
る。ただし、本発明の一態様の発光素子は、表示部を有さない電子機器にも適用すること
ができる。また、本実施の形態において述べた電子機器の表示部においては、可撓性を有
し、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる構成、または折り畳み可能な表示部
の構成について例示したが、これに限定されず、可撓性を有さず、平面部に表示を行う構
成としてもよい。
【0589】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いること
ができる。
【0590】
(実施の形態8)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光素子を有する発光装置について、
図38及び
図39を用いて説明する。
【0591】
本実施の形態で示す、発光装置3000の斜視図を
図38(A)に、
図38(A)に示
す一点鎖線E-F間に相当する断面図を
図38(B)に、それぞれ示す。なお、
図38(
A)において、図面の煩雑さを避けるために、構成要素の一部を破線で表示している。
【0592】
図38(A)(B)に示す発光装置3000は、基板3001と、基板3001上の発
光素子3005と、発光素子3005の外周に設けられた第1の封止領域3007と、第
1の封止領域3007の外周に設けられた第2の封止領域3009と、を有する。
【0593】
また、発光素子3005からの発光は、基板3001及び基板3003のいずれか一方
または双方から射出される。
図38(A)(B)においては、発光素子3005からの発
光が下方側(基板3001側)に射出される構成について説明する。
【0594】
また、
図38(A)(B)に示すように、発光装置3000は、発光素子3005が第
1の封止領域3007と、第2の封止領域3009とに、囲まれて配置される二重封止構
造である。二重封止構造とすることで、発光素子3005側に入り込む外部の不純物(例
えば、水、酸素など)を、好適に抑制することができる。ただし、第1の封止領域300
7及び第2の封止領域3009を、必ずしも設ける必要はない。例えば、第1封止領域3
007のみの構成としてもよい。
【0595】
なお、
図38(B)において、第1の封止領域3007及び第2の封止領域3009は
、基板3001及び基板3003と接して設けられる。ただし、これに限定されず、例え
ば、第1の封止領域3007及び第2の封止領域3009の一方または双方は、基板30
01の上方に形成される絶縁膜、あるいは導電膜と接して設けられる構成としてもよい。
または、第1の封止領域3007及び第2の封止領域3009の一方または双方は、基板
3003の下方に形成される絶縁膜、あるいは導電膜と接して設けられる構成としてもよ
い。
【0596】
基板3001及び基板3003としては、それぞれ先の実施の形態に記載の基板200
と、基板220と同様の構成とすればよい。発光素子3005としては、先の実施の形態
に記載の発光素子と同様の構成とすればよい。
【0597】
第1の封止領域3007としては、ガラスを含む材料(例えば、ガラスフリット、ガラ
スリボン等)を用いればよい。また、第2の封止領域3009としては、樹脂を含む材料
を用いればよい。第1の封止領域3007として、ガラスを含む材料を用いることで、生
産性や封止性を高めることができる。また、第2の封止領域3009として、樹脂を含む
材料を用いることで、耐衝撃性や耐熱性を高めることができる。ただし、第1の封止領域
3007と、第2の封止領域3009とは、これに限定されず、第1の封止領域3007
が樹脂を含む材料で形成され、第2の封止領域3009がガラスを含む材料で形成されて
もよい。
【0598】
また、上述のガラスフリットとしては、例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、
酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化セシウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸
化ホウ素、酸化バナジウム、酸化亜鉛、酸化テルル、酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸
化鉛、酸化スズ、酸化リン、酸化ルテニウム、酸化ロジウム、酸化鉄、酸化銅、二酸化マ
ンガン、酸化モリブデン、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化タングステン、酸化ビスマス、
酸化ジルコニウム、酸化リチウム、酸化アンチモン、ホウ酸鉛ガラス、リン酸スズガラス
、バナジン酸塩ガラス又はホウケイ酸ガラス等を含む。赤外光を吸収させるため、少なく
とも一種類以上の遷移金属を含むことが好ましい。
【0599】
また、上述のガラスフリットとしては、例えば、基板上にフリットペーストを塗布し、
これに加熱処理、またはレーザ照射などを行う。フリットペーストには、上記ガラスフリ
ットと、有機溶媒で希釈した樹脂(バインダとも呼ぶ)とが含まれる。また、ガラスフリ
ットにレーザ光の波長の光を吸収する吸収剤を添加したものを用いても良い。また、レー
ザとして、例えば、Nd:YAGレーザや半導体レーザなどを用いることが好ましい。ま
た、レーザ照射の際のレーザの照射形状は、円形でも四角形でもよい。
【0600】
また、上述の樹脂を含む材料としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリ
アミド(ナイロン、アラミド等)、ポリイミド、ポリカーボネートまたはアクリル樹脂、
ポリウレタン、エポキシ樹脂を用いることができる。もしくは、シリコーンなどのシロキ
サン結合を有する樹脂を含む材料を用いることができる。
【0601】
なお、第1の封止領域3007及び第2の封止領域3009のいずれか一方または双方
にガラスを含む材料を用いる場合、当該ガラスを含む材料と、基板3001との熱膨張率
が近いことが好ましい。上記構成とすることで、熱応力によりガラスを含む材料または基
板3001にクラックが入るのを抑制することができる。
【0602】
例えば、第1の封止領域3007にガラスを含む材料を用い、第2の封止領域3009
に樹脂を含む材料を用いる場合、以下の優れた効果を有する。
【0603】
第2の封止領域3009は、第1の封止領域3007よりも、発光装置3000の外周
部に近い側に設けられる。発光装置3000は、外周部に向かうにつれ、外力等による歪
みが大きくなる。よって、歪みが大きくなる発光装置3000の外周部側、すなわち第2
の封止領域3009に、樹脂を含む材料によって封止し、第2の封止領域3009よりも
内側に設けられる第1の封止領域3007にガラスを含む材料を用いて封止することで、
外力等の歪みが生じても発光装置3000が壊れにくくなる。
【0604】
また、
図38(B)に示すように、基板3001、基板3003、第1の封止領域30
07、及び第2の封止領域3009に囲まれた領域には、第1の領域3011が形成され
る。また、基板3001、基板3003、発光素子3005、及び第1の封止領域300
7に囲まれた領域には、第2の領域3013が形成される。
【0605】
第1の領域3011及び第2の領域3013としては、例えば、希ガスまたは窒素ガス
等の不活性ガスが充填されていると好ましい。あるいは、アクリルやエポキシ等の樹脂が
充填されていると好ましい。なお、第1の領域3011及び第2の領域3013としては
、大気圧状態よりも減圧状態であると好ましい。
【0606】
また、
図38(B)に示す構成の変形例を
図38(C)に示す。
図38(C)は、発光
装置3000の変形例を示す断面図である。
【0607】
図38(C)は、基板3003の一部に凹部を設け、該凹部に乾燥剤3018を設ける
構成である。それ以外の構成については、
図38(B)に示す構成と同じである。
【0608】
乾燥剤3018としては、化学吸着によって水分等を吸着する物質、または物理吸着に
よって水分等を吸着する物質を用いることができる。例えば、乾燥剤3018として用い
ることができる物質としては、アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物(酸化
カルシウムや酸化バリウム等)、硫酸塩、金属ハロゲン化物、過塩素酸塩、ゼオライト、
シリカゲル等が挙げられる。
【0609】
次に、
図38(B)に示す発光装置3000の変形例について、
図39(A)(B)(
C)(D)を用いて説明する。なお、
図39(A)(B)(C)(D)は、
図38(B)
に示す発光装置3000の変形例を説明する断面図である。
【0610】
図39(A)(B)(C)(D)に示す発光装置は、第2の封止領域3009を設けず
に、第1の封止領域3007とした構成である。また、
図39(A)(B)(C)(D)
に示す発光装置は、
図38(B)に示す第2の領域3013の代わりに領域3014を有
する。
【0611】
領域3014としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロ
ン、アラミド等)、ポリイミド、ポリカーボネートまたはアクリル樹脂、ポリウレタン、
エポキシ樹脂を用いることができる。もしくは、シリコーンなどのシロキサン結合を有す
る樹脂を含む材料を用いることができる。
【0612】
領域3014として、上述の材料を用いることで、いわゆる固体封止の発光装置とする
ことができる。
【0613】
また、
図39(B)に示す発光装置は、
図39(A)に示す発光装置の基板3001側
に、基板3015を設ける構成である。
【0614】
基板3015は、
図39(B)に示すように凹凸を有する。凹凸を有する基板3015
を、発光素子3005の光を取り出す側に設ける構成とすることで、発光素子3005か
らの光の取出し効率を向上させることができる。なお、
図39(B)に示すような凹凸を
有する構造の代わりに、拡散板として機能する基板を設けてもよい。
【0615】
また、
図39(C)に示す発光装置は、
図39(A)に示す発光装置が基板3001側
から光を取り出す構造であったのに対し、基板3003側から光を取り出す構造である。
【0616】
図39(C)に示す発光装置は、基板3003側に基板3015を有する。それ以外の
構成は、
図39(B)に示す発光装置と同様である。
【0617】
また、
図39(D)に示す発光装置は、
図39(C)に示す発光装置の基板3003、
3015を設けずに、基板3016を設ける構成である。
【0618】
基板3016は、発光素子3005の近い側に位置する第1の凹凸と、発光素子300
5の遠い側に位置する第2の凹凸と、を有する。
図39(D)に示す構成とすることで、
発光素子3005からの光の取出し効率をさらに、向上させることができる。
【0619】
したがって、本実施の形態に示す構成を実施することにより、水分や酸素などの不純物
による発光素子の劣化が抑制された発光装置を実現することができる。または、本実施の
形態に示す構成を実施することにより、光取出し効率の高い発光装置を実現することがで
きる。
【0620】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせること
ができる。
【0621】
(実施の形態9)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光素子を様々な照明装置及び電子機器に適用す
る一例について、
図40及び
図41を用いて説明する。
【0622】
本発明の一態様の発光素子を、可撓性を有する基板上に作製することで、曲面を有する
発光領域を有する電子機器、照明装置を実現することができる。
【0623】
また、本発明の一態様を適用した発光装置は、自動車の照明にも適用することができ、
例えば、ダッシュボードや、フロントガラス、天井等に照明を設置することもできる。
【0624】
図40(A)は、多機能端末3500の一方の面の斜視図を示し、
図40(B)は、多
機能端末3500の他方の面の斜視図を示している。多機能端末3500は、筐体350
2に表示部3504、カメラ3506、照明3508等が組み込まれている。本発明の一
態様の発光装置を照明3508に用いることができる。
【0625】
照明3508は、本発明の一態様の発光装置を用いることで、面光源として機能する。
したがって、LEDに代表される点光源と異なり、指向性が少ない発光が得られる。例え
ば、照明3508とカメラ3506とを組み合わせて用いる場合、照明3508を点灯ま
たは点滅させて、カメラ3506により撮像することができる。照明3508としては、
面光源としての機能を有するため、自然光の下で撮影したような写真を撮影することがで
きる。
【0626】
なお、
図40(A)、(B)に示す多機能端末3500は、
図33(A)乃至
図33(
G)に示す電子機器と同様に、様々な機能を有することができる。
【0627】
また、筐体3502の内部に、スピーカ、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角
速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、
電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含む
もの)、マイクロフォン等を有することができる。また、多機能端末3500の内部に、
ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検出装置を設けることで、多
機能端末3500の向き(縦か横か)を判断して、表示部3504の画面表示を自動的に
切り替えるようにすることができる。
【0628】
表示部3504は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部3
504に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。
また、表示部3504に近赤外光を発光するバックライト又は近赤外光を発光するセンシ
ング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。なお、表示部35
04に本発明の一態様の発光装置を適用してもよい。
【0629】
図40(C)は、防犯用のライト3600の斜視図を示している。ライト3600は、
筐体3602の外側に照明3608を有し、筐体3602には、スピーカ3610等が組
み込まれている。本発明の一態様の発光装置を照明3608に用いることができる。
【0630】
ライト3600としては、例えば、照明3608を握持する、掴持する、または保持す
ることで発光することができる。また、筐体3602の内部には、ライト3600からの
発光方法を制御できる電子回路を備えていてもよい。該電子回路としては、例えば、1回
または間欠的に複数回、発光が可能なような回路としてもよいし、発光の電流値を制御す
ることで発光の光量が調整可能なような回路としてもよい。また、照明3608の発光と
同時に、スピーカ3610から大音量の警報音が出力されるような回路を組み込んでもよ
い。
【0631】
ライト3600としては、あらゆる方向に発光することが可能なため、例えば、暴漢等
に向けて光、または光と音で威嚇することができる。また、ライト3600にデジタルス
チルカメラ等のカメラ、撮影機能を有する機能を備えてもよい。
【0632】
図41は、発光素子を室内の照明装置8501として用いた例である。なお、発光素子
は大面積化も可能であるため、大面積の照明装置を形成することもできる。その他、曲面
を有する筐体を用いることで、発光領域が曲面を有する照明装置8502を形成すること
もできる。本実施の形態で示す発光素子は薄膜状であり、筐体のデザインの自由度が高い
。したがって、様々な意匠を凝らした照明装置を形成することができる。さらに、室内の
壁面に大型の照明装置8503を備えても良い。また、照明装置8501、8502、8
503に、タッチセンサを設けて、電源のオンまたはオフを行ってもよい。
【0633】
また、発光素子をテーブルの表面側に用いることによりテーブルとしての機能を備えた
照明装置8504とすることができる。なお、その他の家具の一部に発光素子を用いるこ
とにより、家具としての機能を備えた照明装置とすることができる。
【0634】
以上のようにして、本発明の一態様の発光装置を適用して照明装置及び電子機器を得る
ことができる。なお、適用できる照明装置及び電子機器は、本実施の形態に示したものに
限らず、あらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。
【0635】
また、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用
いることができる。
【実施例0636】
本実施例では、本発明の一態様の発光素子の作製例を示す。本実施例で作製した発光素
子の断面模式図を
図42に、素子構造の詳細を表7に、それぞれ示す。また、使用した化
合物の構造と略称を以下に示す。なお、他の化合物については、実施の形態1を参酌すれ
ばよい。
【0637】
【0638】
【0639】
<発光素子の作製>
≪発光素子1の作製≫
基板200上に電極101として、ITSO膜を厚さが70nmになるように形成した
。なお、電極101の電極面積は、4mm2(2mm×2mm)とした。
【0640】
次に、電極101上に正孔注入層111として、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,
3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P-II)と、酸化モ
リブデンと、を重量比(DBT3P-II:酸化モリブデン)が1:0.5になるように
、且つ厚さが20nmになるように共蒸着した。
【0641】
次に、正孔注入層111上に正孔輸送層112として、3,3’-ビス(9-フェニル
-9H-カルバゾール)(略称:PCCP)と、3-(N-フェニル-9H-カルバゾー
ル-3-イル)-9H-カルバゾール(略称:PCCH)と、重量比(PCCP:PCC
H)が0.99:0.01になるように、且つ厚さが20nmになるように共蒸着した。
【0642】
次に、正孔輸送層112上に発光層160として、PCCPと、3,5-ビス[3-(
9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリジン(略称:35DCzPPy)と、ト
リス{2-[5-(2-メチルフェニル)-4-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-
4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル-κN2]フェニル-κC}イリジウム(I
II)(略称:Ir(mpptz-diPrp)3)と、を重量比(PCCP:35DC
zPPy:Ir(mpptz-diPrp)3)が1:0.3:0.06になるように、
且つ厚さが30nmになるように共蒸着し、続いて、35DCzPPyとIr(mppt
z-diPrp)3と、を重量比(35DCzPPy:Ir(mpptz-diPrp)
3)が1:0.06になるように、且つ厚さが10nmになるように共蒸着した。なお、
発光層160において、35DCzPPyが第1の有機化合物であり、PCCPが第2の
有機化合物であり、Ir(mpptz-diPrp)3がゲスト材料(燐光性化合物)で
ある。
【0643】
次に、発光層160上に、電子輸送層118として、35DCzPPyと、バソフェナ
ントロリン(略称:BPhen)とを、厚さがそれぞれ10nmと15nmとになるよう
に順次蒸着した。次に、電子輸送層118上に、電子注入層119として、フッ化リチウ
ム(LiF)を厚さが1nmになるように蒸着した。
【0644】
次に、電子注入層119上に、電極102として、アルミニウム(Al)を厚さが20
0nmになるように形成した。
【0645】
次に、窒素雰囲気のグローブボックス内において、有機EL用シール材を用いて封止す
るための基板220を、有機材料を形成した基板200に固定することで、発光素子1を
封止した。具体的には、基板200に形成した有機材料の周囲にシール材を塗布し、該基
板200と基板220とを貼り合わせ、波長が365nmの紫外光をシール材に6J/c
m2照射し、80℃にて1時間熱処理した。以上の工程により発光素子1を得た。
【0646】
≪発光素子2乃至4の作製≫
発光素子2乃至4は、先に示す発光素子1と、発光層160の形成工程のみ異なり、そ
れ以外の工程は発光素子1と同様の作製方法とした。
【0647】
発光素子2の発光層160として、PCCPと、PCCHと、35DCzPPyと、I
r(mpptz-diPrp)3と、を重量比(PCCP:PCCH:35DCzPPy
:Ir(mpptz-diPrp)3)が0.99:0.01:0.3:0.06になる
ように、且つ厚さが30nmになるように共蒸着し、続いて、35DCzPPyとIr(
mpptz-diPrp)3と、を重量比(35DCzPPy:Ir(mpptz-di
Prp)3)が1:0.06になるように、且つ厚さが10nmになるように共蒸着した
。なお、発光層160において、35DCzPPyが第1の有機化合物であり、PCCP
が第2の有機化合物であり、PCCHが不純物に相当する有機化合物(NH基を有する有
機化合物)であり、Ir(mpptz-diPrp)3がゲスト材料(燐光性化合物)で
ある。
【0648】
発光素子3の発光層160として、PCCPと、PCCHと、35DCzPPyと、I
r(mpptz-diPrp)3と、を重量比(PCCP:PCCH:35DCzPPy
:Ir(mpptz-diPrp)3)が0.9:0.1:0.3:0.06になるよう
に、且つ厚さが30nmになるように共蒸着し、続いて、35DCzPPyとIr(mp
ptz-diPrp)3と、を重量比(35DCzPPy:Ir(mpptz-diPr
p)3)が1:0.06になるように、且つ厚さが10nmになるように共蒸着した。な
お、発光層160において、35DCzPPyが第1の有機化合物であり、PCCPが第
2の有機化合物であり、PCCHが不純物に相当する有機化合物(NH基を有する有機化
合物)であり、Ir(mpptz-diPrp)3がゲスト材料(燐光性化合物)である
。
【0649】
発光素子4の発光層160として、PCCHと、35DCzPPyと、Ir(mppt
z-diPrp)3と、を重量比(PCCH:35DCzPPy:Ir(mpptz-d
iPrp)3)が1:0.3:0.06になるように、且つ厚さが30nmになるように
共蒸着し、続いて、35DCzPPyとIr(mpptz-diPrp)3と、を重量比
(35DCzPPy:Ir(mpptz-diPrp)3)が1:0.06になるように
、且つ厚さが10nmになるように共蒸着した。なお、発光層160において、35DC
zPPyが第1の有機化合物であり、PCCHが不純物に相当する有機化合物(NH基を
有する有機化合物)であり、Ir(mpptz-diPrp)3がゲスト材料(燐光性化
合物)である。
【0650】
<発光素子の特性>
作製した発光素子1乃至4の輝度-電流密度特性を
図43に示す。また、輝度-電圧特
性を
図44に示す。また、電流効率-輝度特性を
図45に示す。また、外部量子効率-輝
度特性を
図46に示す。また、電力効率-輝度特性を
図47に示す。なお、各発光素子の
測定は室温(23℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0651】
また、1000cd/m2付近における、発光素子1乃至4の素子特性を表8に示す。
【0652】
【0653】
また、発光素子1乃至4に2.5mA/cm
2の電流密度で電流を流した際の電界発光
スペクトル(ELスペクトル)を
図48に示す。なお、
図48において縦軸は、各電界発
光スペクトルの最大値で規格化した発光強度(EL強度)である。
【0654】
図48に示すように、発光素子1乃至4の電界発光スペクトルのピーク波長は473n
mであり、半値全幅が63nmである、青色の発光を示した。
【0655】
また、
図43乃至
図47、及び表8で示すように、発光素子1及び発光素子2は、発光
素子3及び発光素子4と比べて、高い電流効率を示した。また、発光素子1及び発光素子
2の外部量子効率の最大値はそれぞれ30%及び29%と極めて優れた値を示した。また
、発光素子1乃至発光素子3は、発光素子4と比べて、低い駆動電圧で駆動した。これら
より、発光素子1及び発光素子2は優れた電力効率を示した。このように、発光素子1及
び発光素子2と比較して発光素子3及び発光素子4におけるゲスト材料からの発光強度が
低下する結果となった。
【0656】
<吸収スペクトル及び発光スペクトルの測定結果>
ここで、本実施例で用いた化合物の吸収スペクトル及び発光スペクトルを測定した結果
を示す。測定に使用した化合物は、PCCH及びPCCPである。
【0657】
トルエン溶液中のPCCH及びPCCPの吸収スペクトル及び発光スペクトルを
図49
(A)に、薄膜状態でのPCCH及びPCCPの吸収スペクトル及び発光スペクトルを図
49(B)に示す。
【0658】
吸収スペクトルの測定には紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を
用いた。トルエン溶液中の有機化合物(PCCH及びPCCP)の吸収スペクトルは、各
有機化合物のトルエン溶液を石英セルに入れて測定し、この吸収スペクトルから、石英セ
ルを用いて測定したトルエンの吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを示した。ま
た、薄膜の吸収スペクトルは、各有機化合物を石英基板に蒸着してサンプルを作製し、こ
のサンプルの吸収スペクトルから石英の吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを示
した。また、発光スペクトルの測定にはPL-EL測定装置(浜松ホトニクス社製)を用
いた。トルエン溶液中における各有機化合物の発光スペクトルは、各有機化合物のトルエ
ン溶液を石英セルに入れて測定した。また、薄膜の発光スペクトルは、各有機化合物を石
英基板に蒸着してサンプルを作製して測定した。なお、吸収スペクトル及び発光スペクト
ルを測定した薄膜は、石英基板上に真空蒸着法により成膜することで作製した。
【0659】
測定の結果、PCCH及びPCCPのトルエン溶液中及び薄膜における吸収スペクトル
は、ほぼ同等であることがわかった。また、
図49(B)の薄膜の吸収スペクトルのデー
タより、直接遷移を仮定したTaucプロットから求めたPCCH及びPCCPの吸収端
はそれぞれ3.31eV及び3.30eVであった。従って、PCCH及びPCCPの固
体状態の光学的エネルギーギャップは3.31及び3.30eVと見積もられた。このよ
うに、PCCH及びPCCPは固体状態において同等の広いエネルギーギャップを有して
いる事がわかった。
【0660】
<CV測定結果>
次に、PCCH及びPCCPの電気化学的特性(酸化反応特性および還元反応特性)を
サイクリックボルタンメトリ(CV)測定によって測定した。なお測定には、電気化学ア
ナライザー(ビー・エー・エス(株)製、型番:ALSモデル600Aまたは600C)
を用い、各化合物をN,N-ジメチルホルムアミド(略称:DMF)に溶解させた溶液を
測定した。測定では、参照電極に対する作用電極の電位を適切な範囲で変化させて各々酸
化ピーク電位、還元電位ピーク電位を得た。また、参照電極のレドックスポテンシャルが
-4.94eVであることが見積もられているため、この数値と得られたピーク電位から
、各化合物のHOMO準位およびLUMO準位を算出した。
【0661】
CV測定の結果、PCCHの酸化電位は0.57V、還元電位は-2.94Vであり、
PCCPの酸化電位は0.685V、還元電位は-2.98Vであった。また、CV測定
より算出したPCCHのHOMO準位は-5.51eV、LUMO準位は-2.00eV
であり、PCCPのHOMO準位は-5.63eV、LUMO準位は-1.96eVであ
った。
【0662】
<低温における発光スペクトルの測定結果>
次に、PCCH及びPCCPの発光スペクトルを低温(10K)で測定した結果を
図5
0(A)(B)に示す。
【0663】
該発光スペクトルの測定には、顕微PL装置 LabRAM HR-PL ((株)堀
場製作所)を用い、測定温度は10K、励起光として波長が325nmのHe-Cdレー
ザを用い、検出器にはCCD検出器を用いた。なお、測定のための薄膜は、石英基板上に
厚さ50nmで成膜し、その石英基板に対して、窒素雰囲気中で蒸着面側から別の石英基
板を貼り付けた後、測定に用いた。
【0664】
なお、該発光スペクトルの測定は、通常の発光スペクトルの測定に加えて、発光寿命が
長い発光に着目した時間分解発光スペクトルの測定も行った。本発光スペクトルの測定は
、低温(10K)で行ったため、通常の発光スペクトルの測定では、主な発光成分である
蛍光に加えて、一部燐光も観測された。また、発光寿命が長い発光に着目した時間分解発
光スペクトルの測定では、主に燐光が観測された。
【0665】
上記測定した発光スペクトルの結果より、PCCHの発光スペクトルの蛍光成分及び燐
光成分の最も短波長側のピーク波長(ショルダーを含む)は、それぞれ391nm及び4
69nmであった。また、PCCPの発光スペクトルの蛍光成分及び燐光成分の最も短波
長側のピーク波長(ショルダーを含む)は、それぞれ391nm及び467nmであった
。
【0666】
したがって、上記ピークの波長より算出したPCCHのS1準位は3.17eV、T1
準位は2.64eVであり、PCCPのS1準位は3.17eV、T1準位は2.66e
Vであり、PCCHとPCCPとは同等のS1準位及びT1準位を有する結果が得られた
。
【0667】
また、これらの測定結果から、PCCH及びPCCPの燐光成分の最も短波長側のピー
ク波長(469nm及び467nm)は、発光素子1乃至4の電界発光スペクトルのピー
ク波長(473nm)より短波長であることから、PCCH及びPCCPのS1準位及び
T1準位は、発光素子1乃至4に用いたゲスト材料(Ir(mpptz-diPrp)3
)を励起するのに十分な励起エネルギー準位であることが分かる。そのため、PCCH及
びPCCPは、材料単体で発光素子の消光原因となり難いことがわかった。
【0668】
<光励起による発光素子の発光スペクトルの測定結果>
次に、発光素子1乃至4に、波長が325nmの紫外光を照射した際の発光スペクトル
(PLスペクトル)を
図51に示す。
【0669】
図51に示すように、光励起による発光素子1乃至4の発光スペクトルは、ピーク波長
は474nmであるゲスト材料に由来する発光が主であった。また、発光素子1及び発光
素子2と比較して、発光素子3及び発光素子4が呈するゲスト材料の発光スペクトル強度
(PL強度)は弱い結果となった。すなわち、光励起においても、発光素子3及び発光素
子4におけるゲスト材料からの発光強度が低下する結果となった。
【0670】
次に、発光素子1乃至4に電流を流した際に得られた外部量子効率(EL外部量子効率
)と、光励起における発光スペクトル強度(PL強度)との関係を
図52に示す。
図52
のように、電流を流した際に得られた外部量子効率(EL外部量子効率)と、光励起にお
ける発光スペクトル強度(PL強度)とは、比例していることが分かる。
【0671】
したがって、発光素子1及び発光素子2と比べて、発光素子3及び発光素子4の電流効
率が低下した原因は、発光層におけるホスト材料、及びその濃度が異なることに起因して
キャリアバランスが変化したためではなく、発光層において発光量子収率が低下したため
といえる。すなわち、PCCHと35DCzPPyが共存することで、発光層における発
光量子収率が低下した結果である。
【0672】
以上、発光素子の発光層に、35DCzPPyのような含窒素六員複素芳香族骨格を有
する有機化合物を含むとき、PCCHのようなNH基を有する含窒素五員複素環骨格を含
む有機化合物の含有量は低いことが好ましい。具体的には、PCCHのようなNH基を有
する含窒素五員複素環骨格を含む有機化合物の含有量は、35DCzPPyのような含窒
素六員複素芳香族骨格を有する有機化合物に対する重量比で0.03以下が好ましく、P
CCPのような含窒素五員複素環骨格を有する化合物に対する重量比で0.01以下が好
ましい。
【0673】
<信頼性試験結果>
次に、発光素子1乃至4の信頼性試験の測定結果を
図53に示す。なお、信頼性試験は
、各発光素子の電流密度を2.5mA/cm
2に設定し、電流密度を一定の条件で各発光
素子を連続駆動させた。
【0674】
その結果、発光素子1、発光素子2、発光素子3、及び発光素子4において、初期輝度
の50%に劣化した時間(輝度半減寿命)はそれぞれ、480時間、87時間、12時間
、及び3.3時間であり、発光素子1は優れた信頼性を示す結果が得られた。
【0675】
次に、35DCzPPy(第1の有機化合物)に対するPCCH(不純物)の重量比と
、輝度半減寿命との相関を
図54(A)に、PCCP(第2の有機化合物)に対するPC
CH(不純物)の重量比と、輝度半減寿命との相関を
図54(B)に、それぞれ示す。
【0676】
発光素子2乃至発光素子4の輝度半減寿命と、35DCzPPyに対するPCCHの重
量比との相関をプロットし、累乗近似でフィッティングしたところ、35DCzPPyに
対するPCCHの重量比が0.003となるところで、PCCHを有さない発光素子1の
輝度半減寿命と同等になることが分かった。すなわち、35DCzPPyに対するPCC
Hの重量比としては、0.003以下であると好ましい。
【0677】
また、発光素子2および発光素子3の輝度半減寿命と、PCCPに対するPCCHの重
量比との相関をプロットし、累乗近似でフィッティングしたところ、PCCPに対するP
CCHの重量比が0.001となるところで、PCCHを有さない発光素子1の輝度半減
寿命と同等になることが分かった。すなわち、PCCPに対するPCCHの重量比として
は、0.001以下であると好ましい。
【0678】
すなわち、発光素子の発光層に、35DCzPPyのような含窒素六員複素芳香族骨格
を有する有機化合物を含むとき、PCCHのようなNH基を有する含窒素五員複素環骨格
を含む有機化合物の含有量は低いことが好ましい。具体的には、PCCHのようなNH基
を有する含窒素五員複素環骨格を含む有機化合物の含有量は、35DCzPPyのような
含窒素六員複素芳香族骨格を有する有機化合物に対する重量比で0.003以下のときに
信頼性が高い発光素子となり好ましく、PCCPのような含窒素五員複素環骨格を有する
化合物に対する重量比で0.001以下のときに信頼性が高い発光素子となり好ましい。
【0679】
以上、本発明の一態様の構成を有することで、発光効率が高い発光素子を作製すること
ができる。また、消費電力が低減された発光素子を作製することができる。また、信頼性
の優れた発光素子を作製することができる。また、発光効率が高く、信頼性の優れた、青
色の発光を呈する発光素子を作製することができる。
【0680】
本実施例に示す構成は、他の実施例及び実施の形態と適宜組み合わせて用いる事ができ
る。