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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163178
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20241114BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20241114BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20241114BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20241114BHJP
   H04N 25/77 20230101ALI20241114BHJP
【FI】
H01L27/146 A
H01L27/146 E
H01L29/78 618B
H01L29/78 613Z
H01L27/088 E
H01L27/088 331E
H01L27/06 102A
H04N25/77
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024150463
(22)【出願日】2024-09-02
(62)【分割の表示】P 2022144606の分割
【原出願日】2015-09-24
(31)【優先権主張番号】P 2014196247
(32)【優先日】2014-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】池田 隆之
(72)【発明者】
【氏名】黒川 義元
(57)【要約】
【課題】撮像品質が高く、高速動作に適した撮像装置を提供する。
【解決手段】第1の領域乃至第nの領域(nは2以上16以下の自然数)を有し、それぞ
れの領域において、第1の回路と、第2の回路と、第3の回路と、第4の回路を有する撮
像装置であって、第1乃至第3の回路は、シリコンを活性層または活性領域とするトラン
ジスタを有し、第4の回路は、酸化物半導体を活性層とするトランジスタ、および光電変
換素子を有し、第1の回路は、第4の回路と重なる領域を有し、第3の回路は、第4の回
路と重なる領域を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の領域乃至第nの領域(nは2以上16以下の自然数)を有し、
前記それぞれの領域において、第1の回路と、第2の回路と、第3の回路と、第4の回路を有する撮像装置であって、
前記第1乃至第3の回路は、シリコンを活性層または活性領域とするトランジスタを有し、
前記第4の回路は、酸化物半導体を活性層とするトランジスタ、および光電変換素子を有し、
前記第1の回路は、前記第3の回路から信号を読み出すことができる機能を有し、
前記第2の回路は、前記第4の回路を駆動する信号を出力することができる機能を有し、
前記第3の回路は、前記第4の回路から出力される信号を処理することができる機能を有し、
前記第4の回路は、光を信号に変換することができる機能を有し、
前記第1の回路は、前記第4の回路と重なる領域を有し、
前記第3の回路は、前記第4の回路と重なる領域を有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、酸化物半導体を用いた撮像装置に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の
一態様の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関するものである。または、本発明
の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・
オブ・マター)に関するものである。そのため、より具体的に本明細書で開示する本発明
の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装置、液晶表示装置、発光装置、照明装
置、蓄電装置、記憶装置、撮像装置、それらの駆動方法、または、それらの製造方法、を
一例として挙げることができる。
【0003】
なお、本明細書等において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置
全般を指す。トランジスタ、半導体回路は半導体装置の一態様である。また、記憶装置、
表示装置、撮像装置、電子機器は、半導体装置を有する場合がある。
【背景技術】
【0004】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を用いてトランジスタを構成する技術が
注目されている。当該トランジスタは集積回路(IC)や表示装置のような電子デバイス
に広く応用されている。トランジスタに適用可能な半導体材料として、シリコン系半導体
が広く知られているが、その他の材料として酸化物半導体が注目されている。
【0005】
例えば、酸化物半導体として酸化亜鉛、またはIn-Ga-Zn系酸化物半導体を用いて
トランジスタを作製する技術が開示されている(特許文献1および特許文献2参照)。
【0006】
また、特許文献3では、酸化物半導体を有するオフ電流が極めて低いトランジスタを画素
回路の一部に用い、CMOS(Complementary Metal Oxide
Semiconductor)回路が作製可能なシリコンを有するトランジスタを周辺回
路に用いる構成の撮像装置が開示されている。
【0007】
また、特許文献4では、シリコンを有するトランジスタと、酸化物半導体を有するトラン
ジスタと、結晶性シリコン層を有するフォトダイオードを積層する構成の撮像装置が開示
されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007-123861号公報
【特許文献2】特開2007-96055号公報
【特許文献3】特開2011-119711号公報
【特許文献4】特開2013-243355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
撮像装置は様々な携帯情報機器に組み込まれており、高精細化、小型化、低消費電力化な
どが求められる。また、それらの要求を満たしつつ、より低コストで作製することのでき
る撮像装置が望まれている。
【0010】
また、撮像装置の高精細化、すなわち画素数が増加すると高速駆動が必要となる。撮像装
置を高速駆動するには、半導体材料の物性の改善などのほか、回路構成の工夫も必要とな
る。
【0011】
したがって、本発明の一態様では、高速動作に適した撮像装置を提供することを目的の一
つとする。または、解像度の高い撮像装置を提供することを目的の一つとする。または、
集積度の高い撮像装置を提供することを目的の一つとする。または、低消費電力の撮像装
置を提供することを目的の一つとする。または、低コストの撮像装置を提供することを目
的の一つとする。または、低照度下で撮像することができる撮像装置を提供することを目
的の一つとする。または、ダイナミックレンジの広い撮像装置を提供することを目的の一
つとする。または、広い温度範囲において使用可能な撮像装置を提供することを目的の一
つとする。または、高開口率の撮像装置を提供することを目的の一つとする。または、信
頼性の高い撮像装置を提供することを目的の一つとする。または、新規な撮像装置などを
提供することを目的の一つとする。または、新規な半導体装置などを提供することを目的
の一つとする。
【0012】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一
態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題
は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図
面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、半導体基板に形成されたトランジスタを含む回路と、酸化物半導体を
用いて形成されたトランジスタを有する回路と、光電変換素子と、が積層された撮像装置
に関する。
【0014】
本発明の一態様は、第1の領域乃至第nの領域(nは2以上16以下の自然数)を有し、
それぞれの領域において、第1の回路と、第2の回路と、第3の回路と、第4の回路を有
する撮像装置であって、第1乃至第3の回路は、シリコンを活性層または活性領域とする
トランジスタを有し、第4の回路は、酸化物半導体を活性層とするトランジスタ、および
光電変換素子を有し、第1の回路は、第3の回路から信号を読み出すことができる機能を
有し、第2の回路は、第4の回路を駆動する信号を出力することができる機能を有し、第
3の回路は、第4の回路から出力される信号を処理することができる機能を有し、第4の
回路は、光を信号に変換することができる機能を有し、第1の回路は、第4の回路と重な
る領域を有し、第3の回路は、第4の回路と重なる領域を有することを特徴とする撮像装
置である。
【0015】
上記酸化物半導体は、InとZnと、M(MはAl、Ti、Ga、Sn、Y、Zr、La
、Ce、NdまたはHf)とを有することが好ましい。
【0016】
また、光電変換素子は、光電変換層にセレンを用いることができる。
【0017】
また、第1の回路および第2の回路は、シフトレジスタ回路およびバッファ回路を有する
ことができる。
【0018】
また、第3の回路は、相関二重サンプリング(CDS)回路、アナログ-デジタル変換(
ADC)回路およびラッチ回路を有することができる。
【0019】
また、第1の回路は、二つの領域に分割して配置することができる。
【0020】
また、第2の回路は、二つの領域に分割して配置することができる。
【0021】
また、第1の回路、第2の回路および第3の回路は、第1の層に設けられ、第4の回路が
有する酸化物半導体を活性層とするトランジスタは、第2の層に設けられ、光電変換素子
は、第3の層に設けられ、第2の層は、第1の層と第3の層との間に設けられている構成
とすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様により、高速動作に適した撮像装置を提供することができる。または、解
像度の高い撮像装置を提供することができる。または、集積度の高い撮像装置を提供する
ことができる。または、低消費電力の撮像装置を提供することができる。または、低コス
トの撮像装置を提供することができる。または、低照度下で撮像することができる撮像装
置を提供することができる。または、ダイナミックレンジの広い撮像装置を提供すること
ができる。または、広い温度範囲において使用可能な撮像装置を提供することができる。
または、高開口率の撮像装置を提供することができる。または、信頼性の高い撮像装置を
提供することができる。または、新規な撮像装置などを提供することができる。または、
新規な半導体装置などを提供することができる。
【0023】
なお、本発明の一態様はこれらの効果に限定されるものではない。例えば、本発明の一態
様は、場合によっては、または、状況に応じて、これらの効果以外の効果を有する場合も
ある。または、例えば、本発明の一態様は、場合によっては、または、状況に応じて、こ
れらの効果を有さない場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】撮像装置を説明する断面図。
図2】撮像装置を説明する断面図。
図3】光電変換素子の接続形態を説明する断面図。
図4】撮像装置が有する回路を説明する図。
図5】撮像装置の構成を説明する上面図。
図6】撮像装置が有する回路を説明する図。
図7】撮像装置が有する回路を説明する図。
図8】撮像装置が有する回路を説明する図。
図9】撮像装置が有する回路を説明する図。
図10】撮像装置が有する回路を説明する図。
図11】撮像装置の構成を説明する上面図。
図12】撮像装置の構成を説明する上面図。
図13】撮像装置の構成を説明する上面図。
図14】画素部の分割の形態を説明する図。
図15】撮像装置の構成を説明する上面図。
図16】撮像装置の構成を説明する上面図。
図17】撮像装置の構成を説明する上面図。
図18】撮像装置の構成を説明する断面図。
図19】湾曲した撮像装置を説明する図。
図20】画素回路の構成を説明する図。
図21】画素回路の動作を説明するタイミングチャート。
図22】画素回路の構成を説明する図。
図23】画素回路の構成を説明する図。
図24】画素回路の構成を説明する図。
図25】グローバルシャッタ方式とローリングシャッタ方式の動作を説明するタイミングチャート。
図26】トランジスタを説明する上面図および断面図。
図27】トランジスタを説明する上面図および断面図。
図28】トランジスタを説明する上面図および断面図。
図29】トランジスタを説明する上面図および断面図。
図30】トランジスタを説明する上面図および断面図。
図31】トランジスタを説明する上面図および断面図。
図32】トランジスタのチャネル幅方向の断面を説明する図。
図33】トランジスタのチャネル長方向の断面を説明する図。
図34】半導体層を説明する上面図および断面図。
図35】トランジスタを説明する上面図および断面図。
図36】トランジスタを説明する上面図および断面図。
図37】トランジスタを説明する上面図および断面図。
図38】トランジスタを説明する上面図および断面図。
図39】トランジスタを説明する上面図および断面図。
図40】トランジスタを説明する上面図および断面図。
図41】トランジスタのチャネル幅方向の断面を説明する図。
図42】トランジスタのチャネル長方向の断面を説明する図。
図43】トランジスタを説明する上面図。
図44】電子機器を説明する図。
図45】光電変換素子の接続形態を説明する断面図。
図46】画素回路の構成を説明する図。
図47】画素回路の構成を説明する図。
図48】画素回路の構成を説明する図。
図49】画素回路の構成を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定さ
れず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変
更し得ることは当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は以下に示す実施
の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成
において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通
して用い、その繰り返しの説明は省略することがある。なお、図を構成する同じ要素のハ
ッチングを異なる図面間で適宜省略または変更する場合もある。
【0026】
例えば、本明細書等において、XとYとが接続されている、と明示的に記載されている場
合は、XとYとが電気的に接続されている場合と、XとYとが機能的に接続されている場
合と、XとYとが直接接続されている場合とが、本明細書等に開示されているものとする
。したがって、所定の接続関係、例えば、図または文章に示された接続関係に限定されず
、図または文章に示された接続関係以外のものも、図または文章に記載されているものと
する。
【0027】
ここで、X、Yは、対象物(例えば、装置、素子、回路、配線、電極、端子、導電膜、層
、など)であるとする。
【0028】
XとYとが直接的に接続されている場合の一例としては、XとYとの電気的な接続を可能
とする素子(例えば、スイッチ、トランジスタ、容量素子、インダクタ、抵抗素子、ダイ
オード、表示素子、発光素子、負荷など)が、XとYとの間に接続されていない場合であ
り、XとYとの電気的な接続を可能とする素子(例えば、スイッチ、トランジスタ、容量
素子、インダクタ、抵抗素子、ダイオード、表示素子、発光素子、負荷など)を介さずに
、XとYとが、接続されている場合である。
【0029】
XとYとが電気的に接続されている場合の一例としては、XとYとの電気的な接続を可能
とする素子(例えば、スイッチ、トランジスタ、容量素子、インダクタ、抵抗素子、ダイ
オード、表示素子、発光素子、負荷など)が、XとYとの間に1個以上接続されることが
可能である。なお、スイッチは、オンオフが制御される機能を有している。つまり、スイ
ッチは、導通状態(オン状態)、または、非導通状態(オフ状態)になり、電流を流すか
流さないかを制御する機能を有している。または、スイッチは、電流を流す経路を選択し
て切り替える機能を有している。なお、XとYとが電気的に接続されている場合は、Xと
Yとが直接的に接続されている場合を含むものとする。
【0030】
XとYとが機能的に接続されている場合の一例としては、XとYとの機能的な接続を可能
とする回路(例えば、論理回路(インバータ、NAND回路、NOR回路など)、信号変
換回路(DA変換回路、AD変換回路、ガンマ補正回路など)、電位レベル変換回路(電
源回路(昇圧回路、降圧回路など)、信号の電位レベルを変えるレベルシフタ回路など)
、電圧源、電流源、切り替え回路、増幅回路(信号振幅または電流量などを大きく出来る
回路、オペアンプ、差動増幅回路、ソースフォロワ回路、バッファ回路など)、信号生成
回路、記憶回路、制御回路など)が、XとYとの間に1個以上接続されることが可能であ
る。なお、一例として、XとYとの間に別の回路を挟んでいても、Xから出力された信号
がYへ伝達される場合は、XとYとは機能的に接続されているものとする。なお、XとY
とが機能的に接続されている場合は、XとYとが直接的に接続されている場合と、XとY
とが電気的に接続されている場合とを含むものとする。
【0031】
なお、XとYとが電気的に接続されている、と明示的に記載されている場合は、XとYと
が電気的に接続されている場合(つまり、XとYとの間に別の素子又は別の回路を挟んで
接続されている場合)と、XとYとが機能的に接続されている場合(つまり、XとYとの
間に別の回路を挟んで機能的に接続されている場合)と、XとYとが直接接続されている
場合(つまり、XとYとの間に別の素子又は別の回路を挟まずに接続されている場合)と
が、本明細書等に開示されているものとする。つまり、電気的に接続されている、と明示
的に記載されている場合は、単に、接続されている、とのみ明示的に記載されている場合
と同様な内容が、本明細書等に開示されているものとする。
【0032】
なお、例えば、トランジスタのソース(又は第1の端子など)が、Z1を介して(又は介
さず)、Xと電気的に接続され、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)が、Z
2を介して(又は介さず)、Yと電気的に接続されている場合や、トランジスタのソース
(又は第1の端子など)が、Z1の一部と直接的に接続され、Z1の別の一部がXと直接
的に接続され、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)が、Z2の一部と直接的
に接続され、Z2の別の一部がYと直接的に接続されている場合では、以下のように表現
することが出来る。
【0033】
例えば、「XとYとトランジスタのソース(又は第1の端子など)とドレイン(又は第2
の端子など)とは、互いに電気的に接続されており、X、トランジスタのソース(又は第
1の端子など)、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)、Yの順序で電気的に
接続されている。」と表現することができる。または、「トランジスタのソース(又は第
1の端子など)は、Xと電気的に接続され、トランジスタのドレイン(又は第2の端子な
ど)はYと電気的に接続され、X、トランジスタのソース(又は第1の端子など)、トラ
ンジスタのドレイン(又は第2の端子など)、Yは、この順序で電気的に接続されている
」と表現することができる。または、「Xは、トランジスタのソース(又は第1の端子な
ど)とドレイン(又は第2の端子など)とを介して、Yと電気的に接続され、X、トラン
ジスタのソース(又は第1の端子など)、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など
)、Yは、この接続順序で設けられている」と表現することができる。これらの例と同様
な表現方法を用いて、回路構成における接続の順序について規定することにより、トラン
ジスタのソース(又は第1の端子など)と、ドレイン(又は第2の端子など)とを、区別
して、技術的範囲を決定することができる。
【0034】
または、別の表現方法として、例えば、「トランジスタのソース(又は第1の端子など)
は、少なくとも第1の接続経路を介して、Xと電気的に接続され、前記第1の接続経路は
、第2の接続経路を有しておらず、前記第2の接続経路は、トランジスタを介した、トラ
ンジスタのソース(又は第1の端子など)とトランジスタのドレイン(又は第2の端子な
ど)との間の経路であり、前記第1の接続経路は、Z1を介した経路であり、トランジス
タのドレイン(又は第2の端子など)は、少なくとも第3の接続経路を介して、Yと電気
的に接続され、前記第3の接続経路は、前記第2の接続経路を有しておらず、前記第3の
接続経路は、Z2を介した経路である。」と表現することができる。または、「トランジ
スタのソース(又は第1の端子など)は、少なくとも第1の接続経路によって、Z1を介
して、Xと電気的に接続され、前記第1の接続経路は、第2の接続経路を有しておらず、
前記第2の接続経路は、トランジスタを介した接続経路を有し、トランジスタのドレイン
(又は第2の端子など)は、少なくとも第3の接続経路によって、Z2を介して、Yと電
気的に接続され、前記第3の接続経路は、前記第2の接続経路を有していない。」と表現
することができる。または、「トランジスタのソース(又は第1の端子など)は、少なく
とも第1の電気的パスによって、Z1を介して、Xと電気的に接続され、前記第1の電気
的パスは、第2の電気的パスを有しておらず、前記第2の電気的パスは、トランジスタの
ソース(又は第1の端子など)からトランジスタのドレイン(又は第2の端子など)への
電気的パスであり、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)は、少なくとも第3
の電気的パスによって、Z2を介して、Yと電気的に接続され、前記第3の電気的パスは
、第4の電気的パスを有しておらず、前記第4の電気的パスは、トランジスタのドレイン
(又は第2の端子など)からトランジスタのソース(又は第1の端子など)への電気的パ
スである。」と表現することができる。これらの例と同様な表現方法を用いて、回路構成
における接続経路について規定することにより、トランジスタのソース(又は第1の端子
など)と、ドレイン(又は第2の端子など)とを、区別して、技術的範囲を決定すること
ができる。
【0035】
なお、これらの表現方法は、一例であり、これらの表現方法に限定されない。ここで、X
、Y、Z1、Z2は、対象物(例えば、装置、素子、回路、配線、電極、端子、導電膜、
層、など)であるとする。
【0036】
なお、回路図上は独立している構成要素同士が電気的に接続しているように図示されてい
る場合であっても、1つの構成要素が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合もあ
る。例えば配線の一部が電極としても機能する場合は、一の導電膜が、配線の機能、及び
電極の機能の両方の構成要素の機能を併せ持っている。したがって、本明細書における電
気的に接続とは、このような、一の導電膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場
合も、その範疇に含める。
【0037】
なお、「膜」という言葉と、「層」という言葉とは、場合によっては、または、状況に応
じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜
」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用
語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
【0038】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である撮像装置について、図面を参照して説明する。
【0039】
図1(A)は、本発明の一態様の撮像装置の構成を示す断面図であり、回路91a、回路
91b、回路92a、回路92bが形成される領域の一部の断面を示している。回路91
aは、酸化物半導体層を活性層とするトランジスタ53と、光電変換層61を有する光電
変換素子60を含む。また、回路91aと重なる領域を有するように回路92aが設けら
れている。回路92aは、シリコン基板40に活性領域を有するトランジスタ51および
トランジスタ52を含む。なお、上記各トランジスタおよび光電変換素子60は、絶縁層
に埋め込まれた導電体70、および各配線と電気的な接続を有する。
【0040】
また、回路91bは回路91aと同等の構成で設けられ、シリコン基板40に活性領域を
有するトランジスタを有する回路92bと重なる領域を有する。なお、回路92bは回路
92aと同等の構成である例を図示しているが、回路92aと回路92bの構成は異なっ
ていてもよい。
【0041】
なお、上記要素における電気的な接続の形態は一例である。また、同一面上に設けられる
、または同一工程で設けられる配線および電極等は符号を統一し、絶縁層に埋め込まれた
導電体70については全体で符号を統一している。また、図面上では各配線、各電極、お
よび導電体70を個別の要素として図示しているが、それらが電気的に接続しているもの
については、同一の要素として設けられる場合もある。
【0042】
当該撮像装置は、シリコン基板40に設けられたトランジスタ51、トランジスタ52、
絶縁層および導電体70等を有する第1の層1100と、配線71、導電体70および絶
縁層等を有する第2の層1200と、トランジスタ53、導電体70および絶縁層等を有
する第3の層1300と、配線72、配線73、配線75、導電体70および絶縁層等を
有する第4の層1400を備えている。第1の層1100、第2の層1200、第3の層
1300、第4の層1400は、当該順序で積層されている。
【0043】
ここで、第2の層1200は多層配線を有する構成であってもよい。また、第2の層12
00は、電気的なシールド、熱的なシールド、および光学的なシールドを兼ね、第1の層
1100に形成されるトランジスタ、および第3の層1300に形成されるトランジスタ
の安定的な動作に寄与する。
【0044】
なお、上記配線等の一部が設けられない場合や、上記以外の配線等やトランジスタ等が各
層に含まれる場合もある。また、上記以外の層が当該積層構造に含まれる場合もある。ま
た、上記の一部の層が含まれない場合もある。また、上記絶縁層は層間絶縁膜やパッシベ
ーション膜としての機能を有する。
【0045】
シリコン基板40はバルクのシリコン基板に限らず、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウ
ム、炭化シリコン、ガリウムヒ素、アルミニウムガリウムヒ素、インジウムリン、窒化ガ
リウム、または有機半導体を材料とする基板を用いることもできる。
【0046】
トランジスタ51およびトランジスタ52は、図1(B)に示すように、シリコン薄膜の
活性層59を有するトランジスタであってもよい。この場合、基板41には、ガラス基板
や半導体基板等を用いることができる。また、活性層59は、多結晶シリコンやSOI(
Silicon on Insulator)の単結晶シリコンとすることができる。
【0047】
上記積層において、トランジスタ51およびトランジスタ52を有する第1の層1100
と、トランジスタ53を有する第3の層1300との間には絶縁層80が設けられる。
【0048】
トランジスタ51およびトランジスタ52の活性領域近傍に設けられる絶縁層中の水素は
シリコンのダングリングボンドを終端する。したがって、当該水素はトランジスタ51お
よびトランジスタ52の信頼性を向上させる効果がある。一方、トランジスタ53等の活
性層である酸化物半導体層の近傍に設けられる絶縁層中の水素は、酸化物半導体層中にキ
ャリアを生成する要因の一つとなる。そのため、当該水素はトランジスタ53等の信頼性
を低下させる要因となる場合がある。したがって、シリコン系半導体材料を用いたトラン
ジスタを有する一方の層と、酸化物半導体を用いたトランジスタを有する他方の層を積層
する場合、これらの間に水素の拡散を防止する機能を有する絶縁層80を設けることが好
ましい。絶縁層80により、一方の層に水素を閉じ込めることでトランジスタ51および
トランジスタ52の信頼性が向上することができる。また、一方の層から他方の層への水
素の拡散が抑制されることでトランジスタ53等の信頼性も向上させることができる。
【0049】
絶縁層80としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム
、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化
窒化ハフニウム、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)等を用いることができる。
【0050】
光電変換素子60は、可視光に対する量子効率が高いセレン系材料を光電変換層61に用
いることが好ましい。セレン系材料を光電変換層61に用いることで、アバランシェ現象
により入射される光量に対する電子の増幅が大きい高感度の光電変換素子とすることがで
きる。したがって、セレン系材料を用いた光電変換素子は、低照度環境における撮像にも
適しているといえる。また、セレン系材料は光吸収係数が高いため、光電変換層61を薄
くしやすい利点を有する。
【0051】
セレン系材料としては、非晶質セレンまたは結晶セレンを用いることができる。結晶セレ
ンは、一例として、非晶質セレンを成膜後、熱処理することで得ることができる。なお、
結晶セレンの結晶粒径を画素ピッチより小さくすることで、画素ごとの特性ばらつきを低
減させることができる。また、結晶セレンは、非晶質セレンよりも可視光に対する分光感
度や光吸収係数が高い特性を有する。
【0052】
また、光電変換層61は、銅、インジウム、セレンの化合物(CIS)を含む層であって
もよい。または、銅、インジウム、ガリウム、セレンの化合物(CIGS)を含む層であ
ってもよい。CIS層およびCIGS層では、セレンの単層と同様にアバランシェ現象が
利用できる光電変換素子を形成することができる。
【0053】
セレン系材料を用いた光電変換素子60は、例えば、金属材料などで形成された配線72
と透光性導電層62との間に光電変換層61を有する構成とすることができる。また、リ
ーク電流などの防止のため、酸化亜鉛などの酸化物半導体層を光電変換層61と接して設
けてもよい。
【0054】
なお、図1(A)では、光電変換層61および透光性導電層62を回路間で分離しない構
成としているが、図45(A)に示すように回路間で分離する構成としてもよい。また、
画素間における配線72を有さない領域には、絶縁体で隔壁74を設け、光電変換層61
および透光性導電層62に亀裂が入らないようにすることが好ましいが、図45(B)に
示すように隔壁74を設けない構成としてもよい。また、図45(C)、(D)に示すよ
うに透光性導電層62と配線72が直接接する形態としてもよい。
【0055】
また、光電変換素子60には、シリコン基板においてpn型やpin型の接合が形成され
たダイオード素子を用いることができる。または非晶質シリコン膜や微結晶シリコン膜な
どを用いたpin型ダイオード素子などを用いてもよい。
【0056】
例えば、図2は光電変換素子60にpin型の薄膜フォトダイオードを用いた例である。
当該フォトダイオードは、n型の半導体層65、i型の半導体層64、およびp型の半導
体層63が順に積層された構成を有している。i型の半導体層64には非晶質シリコンを
用いることが好ましい。また、p型の半導体層63およびn型の半導体層65には、それ
ぞれの導電型を付与するドーパントを含む非晶質シリコンまたは微結晶シリコンなどを用
いることができる。非晶質シリコンを光電変換層とするフォトダイオードは可視光の波長
領域における感度が高く、微弱な可視光を検知しやすい。
【0057】
図2に示す光電変換素子60では、カソードとして作用するn型の半導体層65がトラン
ジスタ53と電気的な接続を有する配線72と電気的な接続を有する。また、アノードと
して作用するp型の半導体層63が導電体70および配線73を介して配線75と電気的
な接続を有する。
【0058】
なお、図2に示す回路91aおよび回路91bでは、光電変換素子60のアノードおよび
カソードにおいて、それぞれに接続される配線等の接続形態が図2とは逆となる場合もあ
る。
【0059】
なお、いずれの場合においても、p型の半導体層63が受光面となるように光電変換素子
60を形成することが好ましい。p型の半導体層63を受光面とすることで、光電変換素
子60の出力電流を高めることができる。
【0060】
また、pin型の薄膜フォトダイオードの形態を有する光電変換素子60の構成、ならび
に光電変換素子60、トランジスタ53および配線の接続形態は、図3(A)、(B)、
(C)、(D)、(E)、(F)に示す例であってもよい。なお、光電変換素子60の構
成、光電変換素子60と配線の接続形態、およびトランジスタ53と配線の接続形態はこ
れらに限定されず、他の形態であってもよい。
【0061】
図3(A)は、光電変換素子60のp型の半導体層63と接する透光性導電層62を設け
た構成である。透光性導電層62は電極として作用し、光電変換素子60の出力電流を高
めることができる。
【0062】
透光性導電層62には、例えば、インジウム錫酸化物、シリコンを含むインジウム錫酸化
物、亜鉛を含む酸化インジウム、酸化亜鉛、ガリウムを含む酸化亜鉛、アルミニウムを含
む酸化亜鉛、酸化錫、フッ素を含む酸化錫、アンチモンを含む酸化錫、またはグラフェン
等を用いることができる。また、透光性導電層62は単層に限らず、異なる膜の積層であ
っても良い。
【0063】
図3(B)は、光電変換素子60のp型の半導体層63と配線73が電気的な接続を直接
有する構成である。
【0064】
図3(C)は、光電変換素子60のp型の半導体層63と接する透光性導電層62が設け
られ、配線73と透光性導電層62が電気的な接続を有する構成である。
【0065】
図3(D)は、光電変換素子60を覆う絶縁層にp型の半導体層63が露出する開口部が
設けられ、当該開口部を覆う透光性導電層62と配線73が電気的な接続を有する構成で
ある。
【0066】
図3(E)は、光電変換素子60を貫通する導電体70が設けられた構成である。当該構
成では、配線75は導電体70を介してp型の半導体層63と電気的に接続される。なお
、図面上では、配線75とトランジスタ53と電気的な接続を有する配線72とは、n型
の半導体層65を介して見かけ上導通してしまう形態を示している。しかしながら、n型
の半導体層65の横方向の抵抗が高いため、配線75と配線72との間に適切な間隔を設
ければ、両者間は極めて高抵抗となる。したがって、光電変換素子60は、アノードとカ
ソードが短絡することなく、ダイオード特性を有することができる。なお、p型の半導体
層63と電気的に接続される導電体70は複数であってもよい。
【0067】
図3(F)は、図3(E)の光電変換素子60に対して、p型の半導体層63と接する透
光性導電層62を設けた構成である。
【0068】
なお、図3(D)、図3(E)、および図3(F)に示す光電変換素子60では、受光領
域と配線等が重ならないため、広い受光面積を確保できる利点を有する。
【0069】
上述したセレン系材料や非晶質シリコンなどを用いて形成した光電変換素子60は、成膜
工程、リソグラフィ工程、エッチング工程などの一般的な半導体作製工程を用いて作製す
ることができる。また、セレン系材料は高抵抗であり、図1(A)に示すように、光電変
換層61を回路間で分離しない構成とすることもできる。したがって、本発明の一態様の
撮像装置は、歩留りが高く、低コストで作製することができる。一方で、結晶性シリコン
を光電変換層61とするフォトダイオードを形成する場合は、研磨工程や貼り合わせ工程
などの難度の高い工程が必要となる。
【0070】
回路91aは、画素回路として機能させることができ、例えば、図4(A)に示す回路図
のような構成とすることができる。トランジスタ53のソースまたはドレインの一方と光
電変換素子60のカソードは電気的に接続される。また、トランジスタ53のソースまた
はドレインの他方、トランジスタ54(図1(A)に図示なし)のゲート、およびトラン
ジスタ55(図1(A)に図示なし)のソースまたはドレインの一方は、電荷蓄積部(F
D)と電気的に接続される。なお、回路91bも同等の回路構成とすることができる。
【0071】
なお、電荷蓄積部(FD)は、具体的にはトランジスタ53およびトランジスタ55のソ
ースまたはドレインの空乏層容量、トランジスタ54のゲート容量、ならびに配線容量な
どで構成される。また、図4(A)では、電荷蓄積部(FD)の一部としての機能を有す
る容量素子58を設けた例を図示しているが、当該容量素子を設けない構成としてもよい
【0072】
ここで、トランジスタ53は、光電変換素子60の出力に応じて電荷蓄積部(FD)の電
位を制御するための転送トランジスタとして機能させることができる。また、トランジス
タ54は、電荷蓄積部(FD)の電位に応じた出力を行う増幅トランジスタとして機能さ
せることができる。また、トランジスタ55は、電荷蓄積部(FD)の電位を初期化する
リセットトランジスタとして機能させることができる。
【0073】
回路92aは、回路91a等が出力する信号を読み出す回路や当該信号を変換する処理な
どを行う回路であり、例えば、図4(B)に示す回路図のようなCMOSインバータを含
む構成とすることができる。トランジスタ51(p-ch型)およびトランジスタ52(
n-ch型)のゲートは電気的に接続される。また、一方のトランジスタのソースまたは
ドレインの一方は、他方のトランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続さ
れる。また、両方のトランジスタのソースまたはドレインの他方はそれぞれ別の配線に電
気的に接続される。なお、回路92bも同等の回路構成とすることができるが、別の回路
構成であってもよい。
【0074】
図4(A)の回路においては、活性層を酸化物半導体で形成したトランジスタ(以下、O
Sトランジスタ)を用いることが好ましい。また、図4(B)の回路においては、活性領
域をシリコン基板に有する、または活性層をシリコンとするトランジスタ(以下、Siト
ランジスタ)を代表的に用いることができるが、n-ch型のトランジスタはOSトラン
ジスタであってもよい。
【0075】
OSトランジスタは極めて低いオフ電流特性を有するため、撮像のダイナミックレンジを
拡大することができる。図4(A)に示す回路構成では、光電変換素子60に入射される
光の強度が大きいときに電荷蓄積部(FD)の電位が小さくなる。OSトランジスタは極
めてオフ電流が低いため、ゲート電位が極めて小さい場合においても当該ゲート電位に応
じた電流を正確に出力することができる。したがって、検出することのできる照度のレン
ジ、すなわちダイナミックレンジを広げることができる。
【0076】
また、トランジスタ53およびトランジスタ55の低いオフ電流特性によって電荷蓄積部
(FD)で電荷を保持できる期間を極めて長くすることができる。そのため、回路構成や
動作方法を複雑にすることなく、全画素で同時に電荷の蓄積動作を行うグローバルシャッ
タ方式を適用することができる。したがって、被写体が動体であっても歪の小さい画像を
容易に得ることができる。
【0077】
また、OSトランジスタは、Siトランジスタよりも電気特性変動の温度依存性が小さい
ため、極めて広い温度範囲で使用することができる。したがって、OSトランジスタを有
する撮像装置および半導体装置は、自動車、航空機、宇宙機などへの搭載にも適している
【0078】
また、OSトランジスタは、Siトランジスタよりもドレイン耐圧の高い特性を有する。
前述したセレン系材料を光電変換層とした光電変換素子では、アバランシェ現象が起こり
やすいように比較的高い電圧(例えば、10V以上)を印加することが好ましい。したが
って、OSトランジスタと、セレン系材料を光電変換層とした光電変換素子とを組み合わ
せることで、信頼性の高い撮像装置とすることができる。
【0079】
また、回路91aにおいて、光電変換素子60と、トランジスタ53とを重なるように形
成することができるため、画素の集積度を高めることができる。すなわち、撮像装置の解
像度を高めることができる。例えば、画素数が4k2k、8k4kまたは16k8kなど
の撮像装置に本発明の一態様の撮像装置を用いることが適する。
【0080】
また、図1(A)に示す撮像装置は、シリコン基板40には光電変換素子を設けない構成
である。したがって、各種トランジスタや配線などの影響を受けずに光電変換素子に対す
る光路を確保することができ、高開口率の画素を形成することができる。
【0081】
なお、本実施の形態における撮像装置が有するトランジスタおよび光電変換素子の構成は
一例である。したがって、例えば、回路91aおよび回路91bを活性領域または活性層
にシリコン等を有するトランジスタで構成することもできる。また、回路92aおよび回
路92bを活性層に酸化物半導体層を有するトランジスタで構成することもできる。また
、シリコン基板40を光電変換層として光電変換素子60を構成することもできる。
【0082】
また、本発明の一態様の撮像装置は、回路91aと回路92aとが互いに重なる領域を有
する構成であるため、撮像装置を小型化することができる。
【0083】
図5は、一般的な撮像装置のブロック図であり、当該撮像装置が有する要素の一部(画素
部400、回路411、回路412、回路421、回路422、回路431、回路432
、回路433、回路434、データ線441、442、443、444)を示している。
【0084】
画素部400には回路91a、回路91b等の画素回路がマトリクス状に並べられており
、当該画素回路の出力部はデータ線441乃至データ線444等と電気的に接続される。
例えば、図5の水平方向に並ぶ画素数が7680であり、各データ線が水平方向に並ぶ二
つの画素で共有されたとすると、データ線は3840本となる。
【0085】
データ線441は回路431に電気的に接続され、データ線442は回路432に電気的
に接続され、データ線443は回路433に電気的に接続され、データ線444は回路4
34に電気的に接続される。
【0086】
また、回路431および回路433は、回路411と電気的に接続され、回路432およ
び回路434は、回路412と電気的に接続される。回路411および回路412で読み
出された信号は、回路411および回路412の一端または両端から出力され、外部回路
へと入力される。
【0087】
また、回路421および回路422は、画素部400が有する画素回路の各々に電気的に
接続される。なお、回路421および回路422が統合されて一つの領域に配置されてい
る構成であってもよい。
【0088】
ここで、回路411および回路412は、カラムドライバとしての機能を有することがで
きる。例えば、回路411および回路412は、図6(A)に示すブロック図の構成の回
路とすることができる。当該回路には、図6(B)に示すシフトレジスタ回路(SR)お
よび図6(C)に示すバッファ回路(BUF)が含まれる。
【0089】
また、回路431乃至回路434は、画素回路から出力された信号を変換するなどの処理
を行う機能を有することができる。例えば、回路431乃至回路434は、相関二重サン
プリング(CDS)回路、アナログ-デジタル変換(ADC)回路およびラッチ回路など
を有する。
【0090】
相関二重サンプリング(CDS)回路94は、図7に示すように画素回路91の出力部と
データ線を介して接続される。なお、回路93は電流源等の回路である。
【0091】
アナログ-デジタル変換(ADC)回路95は、図8(A)に示すようにコンパレータ、
およびカウンター回路の一部を含む構成となっている。コンパレータは、例えば、図8
B)に示す回路構成とすることができる。なお、図7に示す相関二重サンプリング(CD
S)回路94の出力部(OUT)は、コンパレータのIN2に接続することができる。
【0092】
カウンター回路は、例えば、図9(A)に示す回路構成とすることができる。なお、図9
(A)の破線で囲んだ領域は、アナログ-デジタル変換(ADC)回路95の一部に相当
する。
【0093】
カウンター回路は、図9(B)の破線で囲んだ領域に示すラッチ回路(LAT)を含む。
また、クロックドインバータはカラムドライバに含まれ、配線SELおよびSEL_Bは
図6に示すバッファ回路の出力部outに接続される。
【0094】
また、回路421および回路422は、ロードライバとしての機能を有することができる
。例えば、回路421および回路422は、図10に示すブロック図の構成の回路とする
ことができる。当該回路におけるバッファ回路の出力部outは、図7に示す配線SEと
接続される。
【0095】
図5に示す撮像装置では、上述したような回路が含まれるが、撮像の高精細化にともなっ
て画素数が増加すると、画素から信号を読み出すための回路(回路411および回路41
2など)や信号を処理するための回路(回路431乃至回路434など)の面積が大きく
なり、撮像装置の小型化が困難となることがある。また、画素数が増加すると高速動作が
必要となるが、回路面積が大きくなると寄生抵抗や寄生容量等が大きくなり、高速動作の
妨げとなることがある。
【0096】
したがって、本発明の一態様の撮像装置では、図11(A)に示すように回路411およ
び回路412を画素部400と重なるように配置する。また、回路431乃至回路434
を画素部400と重なるように配置する。このような配置とすることで撮像装置の小型化
を行うことができる。また、回路411および回路412はシフトレジスタ回路などを共
用することもできる。なお、回路431乃至回路434は、各データ線と画素部の端側で
接続する形態を示しているが、画素部の中央に近い側で接続する形態であってもよい。
【0097】
また、本発明の一態様の撮像装置は、図11(B)に示す構成であってもよい。図11
B)に示す形態では、回路431乃至回路434と各データ線との接続部が画素部の中央
部付近に位置しており、各データ線の配線抵抗の影響を緩和することができる。
【0098】
また、本発明の一態様の撮像装置は、図12に示す構成であってもよい。図12は、画素
部を画素部400aと画素部400bに2分割した形態を示している。画素部400aは
、カラムドライバとして機能する回路411および回路412、および信号を処理するた
めの回路として機能する回路431乃至回路434、ならびにデータ線441乃至データ
線444と重なる。また、ロードライバとして機能する回路421および回路422と接
続される。画素部400bは、カラムドライバとして機能する回路413および回路41
4、および信号を処理するための回路として機能する回路435乃至回路438、ならび
にデータ線445乃至データ線448と重なる。また、ロードライバとして機能する回路
423および回路424と接続される。
【0099】
図12に示す形態では、上述したように画素部400aと画素部400bとを異なる回路
で駆動や信号処理を行うことができる。したがって、画素部400aと画素部400bに
おいて、信号処理や信号の読み出しを並行して行うことができ、動作周波数を低くしても
撮像装置を実質的に高速動作させることができる。したがって、4k2k以上の画素数を
有する撮像装置においても2倍速駆動、4倍速駆動または8倍速駆動などを行うことがで
きる。また、図12に示す形態は、図11に示す形態と同じく、撮像装置の小型化などを
可能とする効果を有する。
【0100】
OSトランジスタはSiトランジスタよりもオフ電流が小さいなどの利点を有する反面、
電流駆動能力が若干劣っている。そのため、例えば、図4(A)に示す画素回路のトラン
ジスタ54にOSトランジスタを用いた場合は、データ線の配線抵抗や寄生容量など影響
を強く受け、高速動作や省電力化が困難になることがある。したがって、図12に示すよ
うな画素部を分割する構成とすることでOSトランジスタの電流駆動能力を補うことがで
き、撮像装置の高速動作や省電力化が可能となる。
【0101】
また、本発明の一態様の撮像装置は、図13に示す構成であってもよい。図13に示す形
態は、図12に示す形態と同じく画素部を分割する構成であり、上述した高速動作を可能
とする効果を有する。また、図11(B)に示す形態と同じく、撮像装置の小型化などを
可能とする効果および各データ線の配線抵抗の影響を緩和する効果を有する。
【0102】
なお、図12および図13では、図14(A)に示すように画素部400aおよび画素部
400bに2分割する形態を示したが、分割数はこれに限らない。例えば、図14(B)
に示すように画素部400a乃至画素部400dの4分割にしてもよい。または、図14
(C)に示すように画素部400a乃至画素部400hの8分割にしてもよい。図14
D)に示すように画素部400a乃至画素部400pの16分割にしてもよい。または、
垂直方向の画素数が等分に割り切れる任意の数で分割することもできる。
【0103】
また、本発明の一態様の撮像装置は、図15に示す構成であってもよい。図15に示す形
態は、図11(A)に回路450を付加し、回路450を画素部400と重なるように配
置した構成となっている。回路450は、例えば、電源回路、タイミング回路、記憶回路
、および/または画像処理回路などを有することができる。なお、図15では回路450
を一つの領域に設置した構成を図示しているが、回路450が複数の領域に分割されて配
置された構成であってもよい。
【0104】
また、本発明の一態様の撮像装置は、図16に示す構成であってもよい。図16に示す形
態は、図12に示す形態と同様に画素部を2分割しているが、ロードライバは分割してい
ない。この形態の場合、分割した画素部400aおよび画素部400bを同時に動作させ
ることはできず、垂直方向に順次読み出す動作となる。しかしながら、読み出しを行わな
い画素部のカラムドライバおよび信号を処理するための回路の電源をオフすることができ
、消費電力を削減することができる。例えば、画素部400aの読み出しを行っていると
きには、回路413、回路414、回路435乃至回路438への電源供給を止めること
ができる。なお、図17に示すように、図13に示す形態と同様に画素部を2分割し、ロ
ードライバを分割しない構成とすることもできる。なお、画素部の分割数は2つに限らず
、垂直方向の画素数が等分に割り切れる任意の数で分割することもできる。
【0105】
図18(A)は、図1(A)に示す撮像装置にカラーフィルタ等を付加した形態の一例の
断面図である。当該断面図は、3画素分の画素回路(回路91a等)を有する領域(領域
93a、領域93b、領域93c)、および回路92a等を有する領域96を示している
。第4の層1400に形成される光電変換素子60上には絶縁層1500が形成される。
絶縁層1500は可視光に対して透光性の高い酸化シリコン膜などを用いることができる
。また、パッシベーション膜として窒化シリコン膜を積層する構成としてもよい。また、
反射防止膜として、酸化ハフニウムなどの誘電体膜を積層する構成としてもよい。
【0106】
絶縁層1500上には、遮光層1510が形成される。遮光層1510は、上部のカラー
フィルタを通る光の混色を防止する機能を有する。遮光層1510には、アルミニウム、
タングステンなどの金属層や当該金属層と反射防止膜としての機能を有する誘電体膜を積
層する構成とすることができる。
【0107】
絶縁層1500および遮光層1510上には平坦化膜として有機樹脂層1520が形成さ
れる。また、領域93a、領域93bおよび領域93c上に、カラーフィルタ1530a
、カラーフィルタ1530bおよびカラーフィルタ1530cがそれぞれ形成される。上
記それぞれのカラーフィルタに、R(赤)、G(緑)、B(青)、Y(黄)、C(シアン
)、M(マゼンタ)などの色を割り当てることにより、カラー画像を得ることができる。
【0108】
カラーフィルタ1530a、カラーフィルタ1530bおよびカラーフィルタ1530c
上には、マイクロレンズアレイ1540が設けられる。したがって、マイクロレンズアレ
イ1540が有する個々のレンズを通る光が直下のカラーフィルタを通り、光電変換素子
に照射されるようになる。
【0109】
上記撮像装置の構成において、カラーフィルタ1530a、カラーフィルタ1530bお
よびカラーフィルタ1530cの代わりに光学変換層1550(図18(B)参照)を用
いてもよい。このような構成とすることで、様々な波長領域における画像が得られる撮像
装置とすることができる。
【0110】
例えば、光学変換層1550に可視光線の波長以下の光を遮るフィルタを用いれば赤外線
撮像装置とすることができる。また、光学変換層1550に赤外線の波長以下の光を遮る
フィルタを用いれば遠赤外線撮像装置とすることができる。また、光学変換層1550に
可視光線の波長以上の光を遮るフィルタを用いれば紫外線撮像装置とすることができる。
【0111】
また、光学変換層1550にシンチレータを用いれば、X線撮像装置などに用いる、放射
線の強弱を可視化した画像を得る撮像装置とすることができる。被写体を透過したX線等
の放射線がシンチレータに入射されると、フォトルミネッセンスと呼ばれる現象により可
視光線や紫外光線などの光(蛍光)に変換される。そして、当該光を光電変換素子60で
検知することにより画像データを取得する。また、放射線検出器などに当該構成の撮像装
置を用いてもよい。
【0112】
シンチレータは、X線やガンマ線などの放射線が照射されると、そのエネルギーを吸収し
て可視光や紫外光を発する物質を含む。例えば、GdS:Tb、GdS:P
r、GdS:Eu、BaFCl:Eu、NaI、CsI、CaF、BaF、C
eF、LiF、LiI、ZnOなどの材料や、それらを樹脂やセラミクスに分散させた
ものを用いることができる。
【0113】
セレン系材料を用いた光電変換素子60においては、X線等の放射線を電荷に直接変換す
ることができるため、シンチレータを不要とする構成とすることもできる。
【0114】
また、撮像装置は、図19(A1)および図19(B1)に示すように湾曲させてもよい
図19(A1)は、撮像装置を同図中の二点鎖線X1-X2の方向に湾曲させた状態を
示している。図19(A2)は、図19(A1)中の二点鎖線X1-X2で示した部位の
断面図である。図19(A3)は、図19(A1)中の二点鎖線Y1-Y2で示した部位
の断面図である。
【0115】
図19(B1)は、撮像装置を同図中の二点鎖線X3-X4の方向に湾曲させ、かつ、同
図中の二点鎖線Y3-Y4の方向に湾曲させた状態を示している。図19(B2)は、図
19(B1)中の二点鎖線X3-X4で示した部位の断面図である。図19(B3)は、
図19(B1)中の二点鎖線Y3-Y4で示した部位の断面図である。
【0116】
撮像装置を湾曲させることで、像面湾曲や非点収差を低減することができる。よって、撮
像装置と組み合わせて用いるレンズなどの光学設計を容易とすることができる。例えば、
収差補正のためのレンズ枚数を低減できるため、撮像装置を用いた半導体装置などの小型
化や軽量化を容易とすることができる。また、撮像された画像の品質を向上させる事がで
きる。
【0117】
なお、本実施の形態において、本発明の一態様について述べた。または、他の実施の形態
において、本発明の一態様について述べる。ただし、本発明の一態様は、これらに限定さ
れない。例えば、本発明の一態様として、撮像装置に適用した場合の例を示したが、本発
明の一態様は、これに限定されない。場合によっては、または、状況に応じて、本発明の
一態様は、撮像装置に適用しなくてもよい。例えば、本発明の一態様は、別の機能を有す
る半導体装置に適用してもよい。
【0118】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能
である。
【0119】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で説明した画素回路について説明する。
【0120】
図4(A)に示す画素回路(回路91aに相当)および各配線との接続形態の詳細を図2
0(A)に示す。図20(A)に示す回路は、光電変換素子60、トランジスタ53、ト
ランジスタ54、トランジスタ55、およびトランジスタ56を含んだ構成となっている
【0121】
光電変換素子60のアノードは配線316に接続され、カソードはトランジスタ53のソ
ースまたはドレインの一方と接続される。トランジスタ53のソースまたはドレインの他
方は電荷蓄積部(FD)と接続され、ゲートは配線312(TX)と接続される。トラン
ジスタ54のソースまたはドレインの一方は配線314(GND)と接続され、ソースま
たはドレインの他方はトランジスタ56のソースまたはドレインの一方と接続され、ゲー
トは電荷蓄積部(FD)と接続される。トランジスタ55のソースまたはドレインの一方
は電荷蓄積部(FD)と接続され、ソースまたはドレインの他方は配線317と接続され
、ゲートは配線311(RS)と接続される。トランジスタ56のソースまたはドレイン
の他方は配線315(OUT)と接続され、ゲートは配線313(SE)に接続される。
なお、上記接続は全て電気的な接続とする。
【0122】
なお、配線314には、GND、VSS、VDDなどの電位が供給されていてもよい。こ
こで、電位や電圧は相対的なものである。そのため、GNDの電位の大きさは、必ずしも
、0ボルトであるとは限らないものとする。
【0123】
光電変換素子60は受光素子であり、画素回路に入射した光に応じた電流を生成する機能
を有する。トランジスタ53は、光電変換素子60による電荷蓄積部(FD)への電荷蓄
積を制御する機能を有する。トランジスタ54は、電荷蓄積部(FD)の電位に応じた信
号を出力する機能を有する。トランジスタ55は、電荷蓄積部(FD)の電位のリセット
する機能を有する。トランジスタ56は、読み出し時に画素回路の選択を制御する機能を
有する。
【0124】
なお、電荷蓄積部(FD)は、電荷保持ノードであり、光電変換素子60が受ける光の量
に応じて変化する電荷を保持する。
【0125】
なお、トランジスタ54とトランジスタ56とは、配線315と配線314との間で、直
列接続されていればよい。したがって、配線314、トランジスタ54、トランジスタ5
6、配線315の順で並んでもよいし、配線314、トランジスタ56、トランジスタ5
4、配線315の順で並んでもよい。
【0126】
配線311(RS)は、トランジスタ55を制御するための信号線としての機能を有する
。配線312(TX)は、トランジスタ53を制御するための信号線としての機能を有す
る。配線313(SE)は、トランジスタ56を制御するための信号線としての機能を有
する。配線314(GND)は、基準電位(例えばGND)を設定する信号線としての機
能を有する。配線315(OUT)は、トランジスタ54から出力される信号を読み出す
ための信号線としての機能を有する。配線316は電荷蓄積部(FD)から光電変換素子
60を介して電荷を出力するための信号線としての機能を有し、図20(A)の回路にお
いては低電位線である。また、配線317は電荷蓄積部(FD)の電位をリセットするた
めの信号線としての機能を有し、図20(A)の回路においては高電位線である。
【0127】
また、本発明の一態様の画素回路は、図20(B)に示す構成であってもよい。図20
B)に示す回路は、図20(A)に示す回路と構成要素は同じであるが、光電変換素子6
0のアノードがトランジスタ53のソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、光
電変換素子60のカソードが配線316と電気的に接続される点で異なる。この場合、配
線316は光電変換素子60を介して電荷蓄積部(FD)に電荷を供給するための信号線
としての機能を有し、図20(B)の回路においては高電位線となる。また、配線317
は低電位線となる。
【0128】
次に、図20(A)、(B)に示す各素子の構成について説明する。
【0129】
光電変換素子60には、実施の形態1で説明したように、セレン系材料と導電層で構成さ
れた素子や、シリコン層によってpin型の接合が形成された素子を用いることができる
【0130】
トランジスタ53、トランジスタ54、トランジスタ55、およびトランジスタ56は、
非晶質シリコン、微結晶シリコン、多結晶シリコン、単結晶シリコンなどのシリコン半導
体を用いて形成することも可能であるが、酸化物半導体を用いたトランジスタで形成する
ことが好ましい。酸化物半導体でチャネル形成領域を形成したトランジスタは、極めてオ
フ電流が低い特性を示す特徴を有している。
【0131】
特に、電荷蓄積部(FD)と接続されているトランジスタ53およびトランジスタ55の
リーク電流が大きいと、電荷蓄積部(FD)に蓄積された電荷が保持できる時間が十分で
なくなる。したがって、少なくとも当該二つのトランジスタに酸化物半導体を用いたトラ
ンジスタを使用することで、電荷蓄積部(FD)からの不要な電荷の流出を防止すること
ができる。
【0132】
また、トランジスタ54およびトランジスタ56においても、リーク電流が大きいと、配
線314または配線315に不必要な電荷の出力が起こるため、これらのトランジスタと
して、酸化物半導体でチャネル形成領域を形成したトランジスタを用いることが好ましい
【0133】
図20(A)の回路の動作の一例について図21(A)に示すタイミングチャートを用い
て説明する。
【0134】
図21(A)では簡易に説明するため、各配線の電位は、二値変化する信号として与える
。ただし、各電位はアナログ信号であるため、実際には状況に応じて二値に限らず種々の
値を取り得る。なお、図に示す信号701は配線311(RS)の電位、信号702は配
線312(TX)の電位、信号703は配線313(SE)の電位、信号704は電荷蓄
積部(FD)の電位、信号705は配線315(OUT)の電位に相当する。なお、配線
316の電位は常時”Low”、配線317の電位は常時”High”とする。
【0135】
時刻Aにおいて、配線311の電位(信号701)を”High”、配線312の電位(
信号702)を”High”とすると、電荷蓄積部(FD)の電位(信号704)は配線
317の電位(”High”)に初期化され、リセット動作が開始される。なお、配線3
15の電位(信号705)は、”High”にプリチャージしておく。
【0136】
時刻Bにおいて、配線311の電位(信号701)を”Low”とするとリセット動作が
終了し、蓄積動作が開始される。ここで、光電変換素子60には逆方向バイアスが印加さ
れるため、逆方向電流により、電荷蓄積部(FD)(信号704)の電位が低下し始める
。光電変換素子60は、光が照射されると逆方向電流が増大するので、照射される光の量
に応じて電荷蓄積部(FD)の電位(信号704)の低下速度は変化する。すなわち、光
電変換素子60に照射する光の量に応じて、トランジスタ54のソースとドレイン間のチ
ャネル抵抗が変化する。
【0137】
時刻Cにおいて、配線312の電位(信号702)を”Low”とすると蓄積動作が終了
し、電荷蓄積部(FD)の電位(信号704)は一定となる。ここで、当該電位は、蓄積
動作中に光電変換素子60が生成した電荷量により決まる。すなわち、光電変換素子に照
射されていた光の量に応じて変化する。また、トランジスタ53およびトランジスタ55
は、酸化膜半導体層でチャネル形成領域を形成したオフ電流が極めて低いトランジスタで
構成されているため、後の選択動作(読み出し動作)を行うまで、電荷蓄積部(FD)の
電位を一定に保つことが可能である。
【0138】
なお、配線312の電位(信号702)を”Low”とする際に、配線312と電荷蓄積
部(FD)との間における寄生容量により、電荷蓄積部(FD)の電位に変化が生じるこ
とがある。当該電位の変化量が大きい場合は、蓄積動作中に光電変換素子60が生成した
電荷量を正確に取得できないことになる。当該電位の変化量を低減するには、トランジス
タ53のゲート-ソース(もしくはゲート-ドレイン)間容量を低減する、トランジスタ
54のゲート容量を増大する、電荷蓄積部(FD)に保持容量を設ける、などの対策が有
効である。なお、本実施の形態では、これらの対策により当該電位の変化を無視できるも
のとしている。
【0139】
時刻Dに、配線313の電位(信号703)を”High”にすると、トランジスタ56
が導通して選択動作が開始され、配線314と配線315が、トランジスタ54とトラン
ジスタ56とを介して導通する。そして、配線315の電位(信号705)は、低下して
いく。なお、配線315のプリチャージは、時刻D以前に終了しておけばよい。ここで、
配線315の電位(信号705)が低下する速さは、トランジスタ54のソースとドレイ
ン間の電流に依存する。すなわち、蓄積動作中に光電変換素子60に照射されている光の
量に応じて変化する。
【0140】
時刻Eにおいて、配線313の電位(信号703)を”Low”にすると、トランジスタ
56が遮断されて選択動作は終了し、配線315の電位(信号705)は、一定値となる
。ここで、一定値となる値は、光電変換素子60に照射されていた光の量に応じて変化す
る。したがって、配線315の電位を取得することで、蓄積動作中に光電変換素子60に
照射されていた光の量を知ることができる。
【0141】
より具体的には、光電変換素子60に照射されている光が強いと、電荷蓄積部(FD)の
電位、すなわちトランジスタ54のゲート電圧は低下する。そのため、トランジスタ54
のソース-ドレイン間に流れる電流は小さくなり、配線315の電位(信号705)はゆ
っくりと低下する。したがって、配線315からは比較的高い電位を読み出すことができ
る。
【0142】
逆に、光電変換素子60に照射されている光が弱いと、電荷蓄積部(FD)の電位、すな
わち、トランジスタ54のゲート電圧は高くなる。そのため、トランジスタ54のソース
-ドレイン間に流れる電流は大きくなり、配線315の電位(信号705)は速く低下す
る。したがって、配線315からは比較的低い電位を読み出すことができる。
【0143】
次に、図20(B)の回路の動作の例について図21(B)に示すタイミングチャートを
用いて説明する。なお、配線316の電位は常時”High”、配線317の電位は常時
”Low”とする。
【0144】
時刻Aにおいて、配線311の電位(信号701)を”High”、配線312の電位(
信号702)を”High”とすると、電荷蓄積部(FD)の電位(信号704)は配線
317の電位(”Low”)に初期化され、リセット動作が開始される。なお、配線31
5の電位(信号705)は、”High”にプリチャージしておく。
【0145】
時刻Bにおいて、配線311の電位(信号701)を”Low”とするとリセット動作が
終了し、蓄積動作が開始される。ここで、光電変換素子60には逆方向バイアスが印加さ
れるため、逆方向電流により、電荷蓄積部(FD)の電位(信号704)が上昇し始める
【0146】
時刻C以降の動作は、図21(A)のタイミングチャートの説明を参照することができ、
時刻Eにおいて、配線315の電位を取得することで、蓄積動作中に光電変換素子60に
照射されていた光の量を知ることができる。
【0147】
なお、図20(A)に示す画素回路は、図46に示すようにトランジスタ54乃至トラン
ジスタ56を複数の画素で共用する形態としてもよい。図46は垂直方向の複数の画素で
トランジスタ54乃至トランジスタ56を共用する構成を例示しているが、水平方向また
は水平垂直方向の複数の画素でトランジスタ54乃至トランジスタ56を共用してもよい
。このような構成とすることで、一画素あたりが有するトランジスタ数を削減させること
ができる。なお、図46ではトランジスタ54乃至トランジスタ56が4画素で共用され
る形態を図示しているが、2画素、3画素または5画素以上であってもよい。また、図2
0(B)に示す画素回路においても同様な構成とすることができる。
【0148】
また、本発明の一態様の画素回路は、図22(A)、(B)に示す構成であってもよい。
【0149】
図22(A)に示す回路は、図20(A)に示す回路の構成からトランジスタ55、配線
316および配線317を省いた構成であり、配線311(RS)は光電変換素子60の
アノードに電気的に接続される。その他の構成は、図20(A)に示す回路と同じである
【0150】
図22(B)に示す回路は、図22(A)に示す回路と構成要素は同じであるが、光電変
換素子60のアノードがトランジスタ53のソースまたはドレインの一方と電気的に接続
され、光電変換素子60のカソードが配線311(RS)と電気的に接続される点で異な
る。
【0151】
図22(A)の回路は図20(A)の回路と同様に、図21(A)に示すタイミングチャ
ートで動作させることができる。
【0152】
時刻Aにおいて、配線311の電位(信号701)を”High”、配線312の電位(
信号702)を”High”とすると、光電変換素子60に順方向バイアスが印加され、
電荷蓄積部(FD)の電位(信号704)が”High”となる。すなわち、電荷蓄積部
(FD)の電位は配線311(RS)の電位(”High”)に初期化され、リセット状
態となる。以上がリセット動作の開始である。なお、配線315の電位(信号705)は
、”High”にプリチャージしておく。
【0153】
時刻Bにおいて、配線311の電位(信号701)を”Low”とするとリセット動作が
終了し、蓄積動作が開始される。ここで、光電変換素子60には逆方向バイアスが印加さ
れるため、逆方向電流により、電荷蓄積部(FD)の電位(信号704)が低下し始める
【0154】
時刻C以降の動作は、図20(A)の回路動作の説明を参照することができ、時刻Eにお
いて、配線315の電位を取得することで、蓄積動作中に光電変換素子60に照射されて
いた光の量を知ることができる。
【0155】
図22(B)の回路は、図21(C)に示すタイミングチャートで動作させることができ
る。
【0156】
時刻Aにおいて、配線311の電位(信号701)を”Low”、配線312の電位(信
号702)を”High”とすると、光電変換素子60に順方向バイアスが印加され、電
荷蓄積部(FD)の電位(信号704)が”Low”のリセット状態となる。以上がリセ
ット動作の開始である。なお、配線315の電位(信号705)は、”High”にプリ
チャージしておく。
【0157】
時刻Bにおいて、配線311の電位(信号701)を”High”とするとリセット動作
が終了し、蓄積動作が開始される。ここで、光電変換素子60には逆方向バイアスが印加
されるため、逆方向電流により、電荷蓄積部(FD)の電位(信号704)が上昇し始め
る。
【0158】
時刻C以降の動作は、図20(A)の回路動作の説明を参照することができ、時刻Eにお
いて、配線315の電位を取得することで、蓄積動作中に光電変換素子60に照射されて
いた光の量を知ることができる。
【0159】
なお、図22(A)に示す画素回路は、図47に示すようにトランジスタ54乃至トラン
ジスタ56を複数の画素で共用する形態としてもよい。図47は垂直方向の複数の画素で
トランジスタ54乃至トランジスタ56を共用する構成を例示しているが、水平方向また
は水平垂直方向の複数の画素でトランジスタ54乃至トランジスタ56を共用してもよい
。なお、図47ではトランジスタ54乃至トランジスタ56が4画素で共用される形態を
図示しているが、2画素、3画素または5画素以上であってもよい。また、図22(B)
に示す画素回路においても同様な構成とすることができる。
【0160】
また、図20(A)、(B)および図22(A)、(B)では、トランジスタ53が設け
られている場合の例を示したが、本発明の一態様は、これに限定されない。図23(A)
、(B)に示すように、トランジスタ53を省くことも可能である。
【0161】
また、画素回路に用いるトランジスタは、図24(A)または図24(B)に示すように
、トランジスタ53、トランジスタ54、およびトランジスタ56にバックゲートを設け
た構成であってもよい。図24(A)はバックゲートに定電位を印加する構成であり、し
きい値電圧を制御することができる。また、図24(B)はフロントゲートと同じ電位が
バックゲートに印加される構成であり、オン電流を増加させることができる。なお、図2
4(A)においては、バックゲートが配線314(GND)と電気的に接続される構成を
例示したが、定電位が供給される別の配線と電気的に接続されていてもよい。なお、図2
4(A)、(B)は図22(A)に示す回路においてトランジスタにバックゲートを設け
た例を示したが、同様の構成を図20(A)、(B)、図22(B)、図23(A)、(
B)に示す回路にも適用することもできる。また、一つの回路に含まれるトランジスタに
対し、フロントゲートと同じ電位がバックゲートに印加される構成、バックゲートに定電
位を印加する構成、またはバックゲートを設けない構成を必要に応じて任意に組み合わせ
た回路構成としてもよい。
【0162】
なお、図24(A)に示す画素回路は、図48に示すようにトランジスタ54乃至トラン
ジスタ56を複数の画素で共用する形態としてもよい。また、図24(B)に示す画素回
路は、図49に示すようにトランジスタ54乃至トランジスタ56を複数の画素で共用す
る形態としてもよい。
【0163】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能
である。
【0164】
(実施の形態3)
本実施の形態では、画素回路の駆動方法の一例について説明する。
【0165】
実施の形態2で説明したように、画素回路の動作は、リセット動作、蓄積動作、および選
択動作の繰り返しである。画素マトリクス全体を制御する撮像方法としては、グローバル
シャッタ方式とローリングシャッタ方式が知られている。
【0166】
図25(A)は、グローバルシャッタ方式におけるタイミングチャートである。なお、図
25(A)は、マトリクス状に複数の画素回路を有し、当該画素回路に図20(A)の回
路を有する撮像装置を例として、第1行目から第n行目(nは3以上の自然数)の画素回
路の動作を説明するものである。なお、下記の動作説明は、図20(B)、図22(A)
、(B)、および図23(A)、(B)に示す回路にも適用することができる。
【0167】
図25(A)において、信号501、信号502、信号503は、第1行目、第2行目、
第n行目の各画素回路に接続された配線311(RS)に入力される信号である。また、
信号504、信号505、信号506は、第1行目、第2行目、第n行目の各画素回路に
接続された配線312(TX)に入力される信号である。また、信号507、信号508
、信号509は、第1行目、第2行目、第n行目の各画素回路に接続された配線313(
SE)に入力される信号である。
【0168】
また、期間510は、1回の撮像に要する期間である。また、期間511は、各行の画素
回路がリセット動作を同時に行っている期間である。また、期間520は、各行の画素回
路が蓄積動作を同時に行っている期間である。なお、選択動作は各行の画素回路で順次行
われる。一例として、期間531は、第1行目の画素回路が選択動作を行っている期間で
ある。このように、グローバルシャッタ方式では、全画素回路で略同時にリセット動作が
行われた後、全画素回路で略同時に蓄積動作が行われ、1行毎に順次読み出し動作が行わ
れる。
【0169】
つまり、グローバルシャッタ方式では、全ての画素回路において蓄積動作が略同時に行わ
れているため、各行の画素回路における撮像の同時性が確保される。したがって、被写体
が動体であっても歪の小さい画像を取得することができる。
【0170】
一方、図25(B)は、ローリングシャッタ方式を用いた場合のタイミングチャートであ
る。なお、信号501乃至509は図25(A)の説明を参照することができる。期間6
10は1回の撮像に要する期間である。また、期間611、期間612、期間613は、
それぞれ第1行目、第2行目、第n行目のリセット期間である。また、期間621、期間
622、期間623は、それぞれ第1行目、第2行目、第n行目の蓄積動作期間である。
また、期間631は、1行目の画素回路が選択動作を行っている期間である。このように
、ローリングシャッタ方式では、蓄積動作が全ての画素回路では同時に行われず、行毎に
順次行われるため、各行の画素回路における撮像の同時性が確保されない。したがって、
一行目と最終行目では撮像のタイミングが異なるため、動体が被写体である場合は歪の大
きい画像となってしまう。
【0171】
グローバルシャッタ方式を実現するためには、各画素からの信号の読み出しが順次終了す
るまで、電荷蓄積部(FD)の電位を長時間保つ必要がある。電荷蓄積部(FD)の電位
の長時間の保持は、トランジスタ53などにチャネル形成領域を酸化物半導体で形成した
極めてオフ電流の低いトランジスタを用いることで実現できる。一方、トランジスタ53
などにチャネル形成領域をシリコンなどで形成したトランジスタを適用した場合は、オフ
電流が高いために電荷蓄積部(FD)の電位を長時間保持できず、グローバルシャッタ方
式を用いることが困難となる。
【0172】
以上のように、画素回路にチャネル形成領域を酸化物半導体で形成したトランジスタを用
いることでグローバルシャッタ方式を容易に実現することができる。
【0173】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能
である。
【0174】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様に用いることのできる酸化物半導体を有するトランジ
スタについて図面を用いて説明する。なお、本実施の形態における図面では、明瞭化のた
めに一部の要素を拡大、縮小、または省略して図示している。
【0175】
図26(A)、(B)は、本発明の一態様のトランジスタ101の上面図および断面図で
ある。図26(A)は上面図であり、図26(A)に示す一点鎖線B1-B2方向の断面
図26(B)に相当する。また、図26(A)に示す一点鎖線B3-B4方向の断面が
図32(A)に相当する。また、一点鎖線B1-B2方向をチャネル長方向、一点鎖線B
3-B4方向をチャネル幅方向と呼称する場合がある。
【0176】
トランジスタ101は、基板115と接する絶縁層120と、絶縁層120と接する酸化
物半導体層130と、酸化物半導体層130と電気的に接続する導電層140および導電
層150と、酸化物半導体層130、導電層140および導電層150と接する絶縁層1
60と、絶縁層160と接する導電層170と、導電層140、導電層150、絶縁層1
60および導電層170と接する絶縁層175と、絶縁層175と接する絶縁層180と
、を有する。また、必要に応じて絶縁層180に平坦化膜としての機能を付加してもよい
【0177】
ここで、導電層140はソース電極層、導電層150はドレイン電極層、絶縁層160は
ゲート絶縁膜、導電層170はゲート電極層としてそれぞれ機能することができる。
【0178】
また、図26(B)に示す領域231はソース領域、領域232はドレイン領域、領域2
33はチャネル形成領域として機能することができる。領域231および領域232は導
電層140および導電層150とそれぞれ接しており、例えば導電層140および導電層
150として酸素と結合しやすい導電材料を用いれば領域231および領域232を低抵
抗化することができる。
【0179】
具体的には、酸化物半導体層130と導電層140および導電層150とが接することで
酸化物半導体層130内に酸素欠損が生じ、当該酸素欠損と酸化物半導体層130内に残
留または外部から拡散する水素との相互作用により、領域231および領域232は低抵
抗のn型となる。
【0180】
なお、トランジスタの「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを
採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることが
ある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」という用語は、入れ替
えて用いることができるものとする。また、「電極層」は、「配線」と言い換えることも
できる。
【0181】
また、導電層170は、導電層171および導電層172の二層で形成される例を図示し
ているが、一層または三層以上の積層であってもよい。当該構成は本実施の形態で説明す
る他のトランジスタにも適用できる。
【0182】
また、導電層140および導電層150は単層で形成される例を図示しているが、二層以
上の積層であってもよい。当該構成は本実施の形態で説明する他のトランジスタにも適用
できる。
【0183】
また、本発明の一態様のトランジスタは、図27(A)、(B)に示す構成であってもよ
い。図27(A)はトランジスタ102の上面図であり、図27(A)に示す一点鎖線C
1-C2方向の断面が図27(B)に相当する。また、図27(A)に示す一点鎖線C3
-C4方向の断面は、図32(B)に相当する。また、一点鎖線C1-C2方向をチャネ
ル長方向、一点鎖線C3-C4方向をチャネル幅方向と呼称する場合がある。
【0184】
トランジスタ102は、ゲート絶縁膜として作用する絶縁層160の端部とゲート電極層
として作用する導電層170の端部とを一致させない点を除き、トランジスタ101と同
様の構成を有する。トランジスタ102の構造は、導電層140および導電層150が絶
縁層160で広く覆われているため、導電層140および導電層150と導電層170と
の間の抵抗が高く、ゲートリーク電流の少ない特徴を有している。
【0185】
トランジスタ101およびトランジスタ102は、導電層170と導電層140および導
電層150が重なる領域を有するトップゲート構造である。当該領域のチャネル長方向の
幅は、寄生容量を小さくするために3nm以上300nm未満とすることが好ましい。当
該構成では、酸化物半導体層130にオフセット領域が形成されないため、オン電流の高
いトランジスタを形成しやすい。
【0186】
また、本発明の一態様のトランジスタは、図28(A)、(B)に示す構成であってもよ
い。図28(A)はトランジスタ103の上面図であり、図28(A)に示す一点鎖線D
1-D2方向の断面が図28(B)に相当する。また、図28(A)に示す一点鎖線D3
-D4方向の断面は、図32(A)に相当する。また、一点鎖線D1-D2方向をチャネ
ル長方向、一点鎖線D3-D4方向をチャネル幅方向と呼称する場合がある。
【0187】
トランジスタ103は、基板115と接する絶縁層120と、絶縁層120と接する酸化
物半導体層130と、酸化物半導体層130と接する絶縁層160と、絶縁層160と接
する導電層170と、酸化物半導体層130、絶縁層160および導電層170を覆う絶
縁層175と、絶縁層175と接する絶縁層180と、絶縁層175および絶縁層180
に設けられた開口部を通じて酸化物半導体層130と電気的に接続する導電層140およ
び導電層150を有する。また、必要に応じて絶縁層180、導電層140および導電層
150に接する絶縁層(平坦化膜)などを有していてもよい。
【0188】
ここで、導電層140はソース電極層、導電層150はドレイン電極層、絶縁層160は
ゲート絶縁膜、導電層170はゲート電極層としてそれぞれ機能することができる。
【0189】
また、図28(B)に示す領域231はソース領域、領域232はドレイン領域、領域2
33はチャネル形成領域として機能することができる。領域231および領域232は絶
縁層175と接しており、例えば絶縁層175として水素を含む絶縁材料を用いれば領域
231および領域232を低抵抗化することができる。
【0190】
具体的には、絶縁層175を形成するまでの工程により領域231および領域232に生
じる酸素欠損と、絶縁層175から領域231および領域232に拡散する水素との相互
作用により、領域231および領域232は低抵抗のn型となる。なお、水素を含む絶縁
材料としては、例えば窒化シリコンや窒化アルミニウムなどを用いることができる。
【0191】
また、本発明の一態様のトランジスタは、図29(A)、(B)に示す構成であってもよ
い。図29(A)はトランジスタ104の上面図であり、図29(A)に示す一点鎖線E
1-E2方向の断面が図29(B)に相当する。また、図29(A)に示す一点鎖線E3
-E4方向の断面は、図32(A)に相当する。また、一点鎖線E1-E2方向をチャネ
ル長方向、一点鎖線E3-E4方向をチャネル幅方向と呼称する場合がある。
【0192】
トランジスタ104は、導電層140および導電層150が酸化物半導体層130の端部
を覆うように接している点を除き、トランジスタ103と同様の構成を有する。
【0193】
また、図29(B)に示す領域331および領域334はソース領域、領域332および
領域335はドレイン領域、領域333はチャネル形成領域として機能することができる
【0194】
領域331および領域332は、トランジスタ101における領域231および領域23
2と同様に低抵抗化することができる。
【0195】
また、領域334および領域335は、トランジスタ103における領域231および領
域232と同様に低抵抗化することができる。なお、チャネル長方向における領域334
および領域335の幅が100nm以下、好ましくは50nm以下の場合には、ゲート電
界の寄与によりオン電流は大きく低下しない。したがって、領域334および領域335
の低抵抗化を行わない場合もある。
【0196】
トランジスタ103およびトランジスタ104は、導電層170と導電層140および導
電層150が重なる領域を有さないセルフアライン構造である。セルフアライン構造のト
ランジスタはゲート電極層とソース電極層およびドレイン電極層間の寄生容量が極めて小
さいため、高速動作用途に適している。
【0197】
また、本発明の一態様のトランジスタは、図30(A)、(B)に示す構成であってもよ
い。図30(A)はトランジスタ105の上面図であり、図30(A)に示す一点鎖線F
1-F2方向の断面が図30(B)に相当する。また、図30(A)に示す一点鎖線F3
-F4方向の断面は、図32(A)に相当する。また、一点鎖線F1-F2方向をチャネ
ル長方向、一点鎖線F3-F4方向をチャネル幅方向と呼称する場合がある。
【0198】
トランジスタ105は、基板115と接する絶縁層120と、絶縁層120と接する酸化
物半導体層130と、酸化物半導体層130と電気的に接続する導電層141および導電
層151と、酸化物半導体層130、導電層141、導電層151と接する絶縁層160
と、絶縁層160と接する導電層170と、酸化物半導体層130、導電層141、導電
層151、絶縁層160および導電層170と接する絶縁層175と、絶縁層175と接
する絶縁層180と、絶縁層175および絶縁層180に設けられた開口部を通じて導電
層141および導電層151とそれぞれ電気的に接続する導電層142および導電層15
2を有する。また、必要に応じて絶縁層180、導電層142および導電層152に接す
る絶縁層などを有していてもよい。
【0199】
ここで、導電層141および導電層151は、酸化物半導体層130の上面と接し、側面
には接しない構成となっている。
【0200】
トランジスタ105は、導電層141および導電層151を有する点、絶縁層175およ
び絶縁層180に設けられた開口部を有する点、並びに当該開口部を通じて導電層141
および導電層151とそれぞれ電気的に接続する導電層142および導電層152を有す
る点を除き、トランジスタ101と同様の構成を有する。導電層140(導電層141お
よび導電層142)はソース電極層として作用させることができ、導電層150(導電層
151および導電層152)はドレイン電極層として作用させることができる。
【0201】
また、本発明の一態様のトランジスタは、図31(A)、(B)に示す構成であってもよ
い。図31(A)はトランジスタ106の上面図であり、図31(A)に示す一点鎖線G
1-G2方向の断面が図31(B)に相当する。また、図31(A)に示す一点鎖線G3
-G4方向の断面は、図32(A)に相当する。また、一点鎖線G1-G2方向をチャネ
ル長方向、一点鎖線G3-G4方向をチャネル幅方向と呼称する場合がある。
【0202】
トランジスタ106は、基板115と接する絶縁層120と、絶縁層120と接する酸化
物半導体層130と、酸化物半導体層130と電気的に接続する導電層141および導電
層151と、酸化物半導体層130と接する絶縁層160と、絶縁層160と接する導電
層170と、絶縁層120、酸化物半導体層130、導電層141、導電層151、絶縁
層160、導電層170と接する絶縁層175と、絶縁層175と接する絶縁層180と
、絶縁層175および絶縁層180に設けられた開口部を通じて導電層141および導電
層151とそれぞれ電気的に接続する導電層142および導電層152を有する。また、
必要に応じて絶縁層180、導電層142および導電層152に接する絶縁層(平坦化膜
)などを有していてもよい。
【0203】
ここで、導電層141および導電層151は、酸化物半導体層130の上面と接し、側面
には接しない構成となっている。
【0204】
トランジスタ106は、導電層141および導電層151を有する点を除き、トランジス
タ103と同様の構成を有する。導電層140(導電層141および導電層142)はソ
ース電極層として作用させることができ、導電層150(導電層151および導電層15
2)はドレイン電極層として作用させることができる。
【0205】
トランジスタ105およびトランジスタ106の構成では、導電層140および導電層1
50が絶縁層120と接しない構成であるため、絶縁層120中の酸素が導電層140お
よび導電層150に奪われにくくなり、絶縁層120から酸化物半導体層130中への酸
素の供給を容易とすることができる。
【0206】
なお、トランジスタ103における領域231および領域232、トランジスタ104お
よびトランジスタ106における領域334および領域335には、酸素欠損を形成し導
電率を高めるための不純物を添加してもよい。酸化物半導体層に酸素欠損を形成する不純
物としては、例えば、リン、砒素、アンチモン、ホウ素、アルミニウム、シリコン、窒素
、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、インジウム、フッ素、塩素、チ
タン、亜鉛、および炭素のいずれかから選択される一つ以上を用いることができる。当該
不純物の添加方法としては、プラズマ処理法、イオン注入法、イオンドーピング法、プラ
ズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いることができる。
【0207】
不純物元素として、上記元素が酸化物半導体層に添加されると、酸化物半導体層中の金属
元素および酸素の結合が切断され、酸素欠損が形成される。酸化物半導体層に含まれる酸
素欠損と酸化物半導体層中に残存または後から添加される水素の相互作用により、酸化物
半導体層の導電率を高くすることができる。
【0208】
なお、不純物元素の添加により酸素欠損が形成された酸化物半導体に水素を添加すると、
酸素欠損サイトに水素が入り伝導帯近傍にドナー準位が形成される。その結果、酸化物導
電体を形成することができる。ここでは、導電体化された酸化物半導体を酸化物導電体と
いう。なお、酸化物導電体は酸化物半導体と同様に透光性を有する。
【0209】
酸化物導電体は、縮退半導体であり、伝導帯端とフェルミ準位とが一致または略一致して
いると推定される。このため、酸化物導電体層とソース電極層およびドレイン電極層とし
て機能する導電層との接触はオーミック接触であり、酸化物導電体層とソース電極層およ
びドレイン電極層として機能する導電層との接触抵抗を低減することができる。
【0210】
また、本発明の一態様のトランジスタは、図33(A)、(B)、(C)、(D)、(E
)、(F)に示すチャネル長方向の断面図、ならびに図32(C)、(D)に示すチャネ
ル幅方向の断面図のように、酸化物半導体層130と基板115との間に導電層173を
備えていてもよい。導電層173を第2のゲート電極層(バックゲート)として用いるこ
とで、オン電流の増加や、しきい値電圧の制御を行うことができる。なお、図33(A)
、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)に示す断面図において、導電層173の幅を
酸化物半導体層130よりも短くしてもよい。さらに、導電層173の幅を導電層170
の幅よりも短くしてもよい。
【0211】
オン電流を増加させるには、例えば、導電層170と導電層173を同電位とし、ダブル
ゲートトランジスタとして駆動させればよい。また、しきい値電圧の制御を行うには、導
電層170とは異なる定電位を導電層173に供給すればよい。導電層170と導電層1
73を同電位とするには、例えば、図32(D)に示すように、導電層170と導電層1
73とをコンタクトホールを介して電気的に接続すればよい。
【0212】
また、図26乃至図31におけるトランジスタ101乃至トランジスタ106では、酸化
物半導体層130が単層である例を図示したが、酸化物半導体層130は積層であっても
よい。トランジスタ101乃至トランジスタ106の酸化物半導体層130は、図34
B)、(C)または図34(D)、(E)に示す酸化物半導体層130と入れ替えること
ができる。
【0213】
図34(A)は酸化物半導体層130の上面図であり、図34(B)、(C)は、二層構
造である酸化物半導体層130の断面図である。また、図34(D)、(E)は、三層構
造である酸化物半導体層130の断面図である。
【0214】
酸化物半導体層130a、酸化物半導体層130b、酸化物半導体層130cには、それ
ぞれ組成の異なる酸化物半導体層などを用いることができる。
【0215】
また、本発明の一態様のトランジスタは、図35(A)、(B)に示す構成であってもよ
い。図35(A)はトランジスタ107の上面図であり、図35(A)に示す一点鎖線H
1-H2方向の断面が図35(B)に相当する。また、図35(A)に示す一点鎖線H3
-H4方向の断面が図41(A)に相当する。また、一点鎖線H1-H2方向をチャネル
長方向、一点鎖線H3-H4方向をチャネル幅方向と呼称する場合がある。
【0216】
トランジスタ107は、基板115と接する絶縁層120と、絶縁層120と接する酸化
物半導体層130aおよび酸化物半導体層130bからなる積層と、当該積層と電気的に
接続する導電層140および導電層150と、当該積層、導電層140および導電層15
0と接する酸化物半導体層130cと、酸化物半導体層130cと接する絶縁層160と
、絶縁層160と接する導電層170と、導電層140、導電層150、酸化物半導体層
130c、絶縁層160および導電層170と接する絶縁層175と、絶縁層175と接
する絶縁層180と、を有する。また、必要に応じて絶縁層180に平坦化膜としての機
能を付加してもよい。
【0217】
トランジスタ107は、領域231および領域232において酸化物半導体層130が二
層(酸化物半導体層130a、酸化物半導体層130b)である点、領域233において
酸化物半導体層130が三層(酸化物半導体層130a、酸化物半導体層130b、酸化
物半導体層130c)である点、および導電層140および導電層150と絶縁層160
との間に酸化物半導体層の一部(酸化物半導体層130c)が介在している点を除き、ト
ランジスタ101と同様の構成を有する。
【0218】
また、本発明の一態様のトランジスタは、図36(A)、(B)に示す構成であってもよ
い。図36(A)はトランジスタ108の上面図であり、図36(A)に示す一点鎖線I
1-I2方向の断面が図36(B)に相当する。また、図36(A)に示す一点鎖線I3
-I4方向の断面が図41(B)に相当する。また、一点鎖線I1-I2方向をチャネル
長方向、一点鎖線I3-I4方向をチャネル幅方向と呼称する場合がある。
【0219】
トランジスタ108は、領域231および領域232において酸化物半導体層130が二
層(酸化物半導体層130a、酸化物半導体層130b)である点、領域233において
酸化物半導体層130が三層(酸化物半導体層130a、酸化物半導体層130b、酸化
物半導体層130c)である点、および導電層140および導電層150と絶縁層160
との間に酸化物半導体層の一部(酸化物半導体層130c)が介在している点を除き、ト
ランジスタ102と同様の構成を有する。
【0220】
また、本発明の一態様のトランジスタは、図37(A)、(B)に示す構成であってもよ
い。図37(A)はトランジスタ109の上面図であり、図37(A)に示す一点鎖線J
1-J2方向の断面が図37(B)に相当する。また、図37(A)に示す一点鎖線J3
-J4方向の断面が図41(A)に相当する。また、一点鎖線J1-J2方向をチャネル
長方向、一点鎖線J3-J4方向をチャネル幅方向と呼称する場合がある。
【0221】
トランジスタ109は、基板115と接する絶縁層120と、絶縁層120と接する酸化
物半導体層130aおよび酸化物半導体層130bからなる積層と、当該積層と接する酸
化物半導体層130cと、酸化物半導体層130cと接する絶縁層160と、絶縁層16
0と接する導電層170と、当該積層、酸化物半導体層130c、絶縁層160および導
電層170を覆う絶縁層175と、絶縁層175と接する絶縁層180と、絶縁層175
および絶縁層180に設けられた開口部を通じて当該積層と電気的に接続する導電層14
0および導電層150を有する。また、必要に応じて絶縁層180、導電層140および
導電層150に接する絶縁層(平坦化膜)などを有していてもよい。
【0222】
トランジスタ109は、領域231および領域232において酸化物半導体層130が二
層(酸化物半導体層130a、酸化物半導体層130b)である点、領域233において
酸化物半導体層130が三層(酸化物半導体層130a、酸化物半導体層130b、酸化
物半導体層130c)である点を除き、トランジスタ103と同様の構成を有する。
【0223】
また、本発明の一態様のトランジスタは、図38(A)、(B)に示す構成であってもよ
い。図38(A)はトランジスタ110の上面図であり、図38(A)に示す一点鎖線K
1-K2方向の断面が図38(B)に相当する。また、図38(A)に示す一点鎖線K3
-K4方向の断面が図41(A)に相当する。また、一点鎖線K1-K2方向をチャネル
長方向、一点鎖線K3-K4方向をチャネル幅方向と呼称する場合がある。
【0224】
トランジスタ110は、領域231および領域232において酸化物半導体層130が二
層(酸化物半導体層130a、酸化物半導体層130b)である点、領域233において
酸化物半導体層130が三層(酸化物半導体層130a、酸化物半導体層130b、酸化
物半導体層130c)である点を除き、トランジスタ104と同様の構成を有する。
【0225】
また、本発明の一態様のトランジスタは、図39(A)、(B)に示す構成であってもよ
い。図39(A)はトランジスタ111の上面図であり、図39(A)に示す一点鎖線L
1-L2方向の断面が図39(B)に相当する。また、図39(A)に示す一点鎖線L3
-L4方向の断面が図41(A)に相当する。また、一点鎖線L1-L2方向をチャネル
長方向、一点鎖線L3-L4方向をチャネル幅方向と呼称する場合がある。
【0226】
トランジスタ111は、基板115と接する絶縁層120と、絶縁層120と接する酸化
物半導体層130aおよび酸化物半導体層130bからなる積層と、当該積層と電気的に
接続する導電層141および導電層151と、当該積層、導電層141および導電層15
1と接する酸化物半導体層130cと、酸化物半導体層130cと接する絶縁層160と
、絶縁層160と接する導電層170と、当該積層、導電層141、導電層151、酸化
物半導体層130c、絶縁層160および導電層170と接する絶縁層175と、絶縁層
175と接する絶縁層180と、絶縁層175および絶縁層180に設けられた開口部を
通じて導電層141および導電層151とそれぞれ電気的に接続する導電層142および
導電層152を有する。また、必要に応じて絶縁層180、導電層142および導電層1
52に接する絶縁層(平坦化膜)などを有していてもよい。
【0227】
トランジスタ111は、領域231および領域232において酸化物半導体層130が二
層(酸化物半導体層130a、酸化物半導体層130b)である点、領域233において
酸化物半導体層130が三層(酸化物半導体層130a、酸化物半導体層130b、酸化
物半導体層130c)である点、および導電層141および導電層151と絶縁層160
との間に酸化物半導体層の一部(酸化物半導体層130c)が介在している点を除き、ト
ランジスタ105と同様の構成を有する。
【0228】
また、本発明の一態様のトランジスタは、図40(A)、(B)に示す構成であってもよ
い。図40(A)はトランジスタ112の上面図であり、図40(A)に示す一点鎖線M
1-M2方向の断面が図40(B)に相当する。また、図40(A)に示す一点鎖線M3
-M4方向の断面が図41(A)に相当する。また、一点鎖線M1-M2方向をチャネル
長方向、一点鎖線M3-M4方向をチャネル幅方向と呼称する場合がある。
【0229】
トランジスタ112は、領域331、領域332、領域334および領域335において
酸化物半導体層130が二層(酸化物半導体層130a、酸化物半導体層130b)であ
る点、領域333において酸化物半導体層130が三層(酸化物半導体層130a、酸化
物半導体層130b、酸化物半導体層130c)である点を除き、トランジスタ106と
同様の構成を有する。
【0230】
また、本発明の一態様のトランジスタは、図42(A)、(B)、(C)、(D)、(E
)、(F)に示すチャネル長方向の断面図、ならびに図41(C)、(D)に示すチャネ
ル幅方向の断面図のように、酸化物半導体層130と基板115との間に導電層173を
備えていてもよい。当該導電層を第2のゲート電極層(バックゲート)として用いること
で、更なるオン電流の増加や、しきい値電圧の制御を行うことができる。なお、図42
A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)に示す断面図において、導電層173の
幅を酸化物半導体層130よりも短くしてもよい。さらに、導電層173の幅を導電層1
70の幅よりも短くしてもよい。
【0231】
また、本発明の一態様のトランジスタにおける導電層140(ソース電極層)および導電
層150(ドレイン電極層)は、図43(A)、(B)に示す上面図(酸化物半導体層1
30、導電層140および導電層150のみを図示)のように酸化物半導体層130の幅
(WOS)よりも導電層140および導電層150の幅(WSD)が長く形成されていて
もよいし、短く形成されていてもよい。WOS≧WSD(WSDはWOS以下)とするこ
とで、ゲート電界が酸化物半導体層130全体にかかりやすくなり、トランジスタの電気
特性を向上させることができる。
【0232】
本発明の一態様のトランジスタ(トランジスタ101乃至トランジスタ112)では、い
ずれの構成においても、ゲート電極層である導電層170は、ゲート絶縁膜である絶縁層
160を介して酸化物半導体層130のチャネル幅方向を電気的に取り囲み、オン電流が
高められる。このようなトランジスタの構造を、surrounded channel
(s-channel)構造とよぶ。
【0233】
また、酸化物半導体層130aおよび酸化物半導体層130bを有するトランジスタ、な
らびに酸化物半導体層130a、酸化物半導体層130bおよび酸化物半導体層130c
を有するトランジスタにおいては、酸化物半導体層130を構成する二層または三層の材
料を適切に選択することで酸化物半導体層130bに電流を流すことができる。酸化物半
導体層130bに電流が流れることで、界面散乱の影響を受けにくく、高いオン電流を得
ることができる。なお、酸化物半導体層130bを厚くすると、オン電流を向上させるこ
とができる。例えば、酸化物半導体層130bの膜厚を100nm乃至200nmとして
もよい。
【0234】
以上の構成のトランジスタを用いることにより、半導体装置に良好な電気特性を付与する
ことができる。
【0235】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることが
できる。
【0236】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態4に示したトランジスタの構成要素について詳細を説明す
る。
【0237】
基板115は、トランジスタが形成されたシリコン基板、および当該シリコン基板上に絶
縁層、配線、コンタクトプラグとして機能を有する導電体等が形成されたものを用いるこ
とができる。なお、シリコン基板にp-ch型のトランジスタを形成する場合は、n
の導電型を有するシリコン基板を用いることが好ましい。または、n型またはi型のシ
リコン層を有するSOI基板であってもよい。また、シリコン基板に設けるトランジスタ
がp-ch型である場合は、トランジスタを形成する面の面方位は、(110)面である
シリコン基板を用いることが好ましい。(110)面にp-ch型トランジスタを形成す
ることで、移動度を高くすることができる。
【0238】
絶縁層120は、基板115に含まれる要素からの不純物の拡散を防止する役割を有する
ほか、酸化物半導体層130に酸素を供給する役割を担うことができる。したがって、絶
縁層120は酸素を含む絶縁膜であることが好ましく、化学量論組成よりも多い酸素を含
む絶縁膜であることがより好ましい。例えば、膜の表面温度が100℃以上700℃以下
、好ましくは100℃以上500℃以下の加熱処理で行われるTDS(Thermal
Desorption Spectroscopy)法にて、酸素原子に換算しての酸素
の放出量が1.0×1019atoms/cm以上である膜とする。なお、上記TDS
分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、または100℃以上5
00℃以下の範囲が好ましい。また、上述のように基板115が他のデバイスが形成され
た基板である場合、絶縁層120は、層間絶縁膜としての機能も有する。その場合は、表
面が平坦になるようにCMP(Chemical Mechanical Polish
ing)法等で平坦化処理を行うことが好ましい。
【0239】
例えば、絶縁層120には、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化
窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム
、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムおよび酸化タンタルなどの酸化物絶縁膜
、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウムなどの窒
化物絶縁膜、またはこれらの混合材料を用いることができる。また、上記材料の積層であ
ってもよい。
【0240】
なお、本実施の形態では、トランジスタが有する酸化物半導体層130が酸化物半導体層
130a、酸化物半導体層130bおよび酸化物半導体層130cを絶縁層120側から
順に積んだ三層構造である場合を主として詳細を説明する。
【0241】
なお、酸化物半導体層130が単層の場合は、本実施の形態に示す、酸化物半導体層13
0bに相当する層を用いればよい。
【0242】
また、酸化物半導体層130が二層の場合は、本実施の形態に示す、酸化物半導体層13
0aに相当する層および酸化物半導体層130bに相当する層を絶縁層120側から順に
積んだ積層を用いればよい。この構成の場合、酸化物半導体層130aと酸化物半導体層
130bとを入れ替えることもできる。
【0243】
また、酸化物半導体層130が四層以上である場合は、例えば、本実施の形態で説明する
三層構造の酸化物半導体層130に対して他の酸化物半導体層を付加する構成とすること
ができる。
【0244】
一例としては、酸化物半導体層130bには、酸化物半導体層130aおよび酸化物半導
体層130cよりも電子親和力(真空準位から伝導帯下端までのエネルギー)が大きい酸
化物半導体を用いる。電子親和力は、真空準位と価電子帯上端とのエネルギー差(イオン
化ポテンシャル)から、伝導帯下端と価電子帯上端とのエネルギー差(エネルギーギャッ
プ)を差し引いた値として求めることができる。
【0245】
酸化物半導体層130aおよび酸化物半導体層130cは、酸化物半導体層130bを構
成する金属元素を一種以上含み、例えば、伝導帯下端のエネルギーが酸化物半導体層13
0bよりも、0.05eV、0.07eV、0.1eV、0.15eVのいずれか以上で
あって、2eV、1eV、0.5eV、0.4eVのいずれか以下の範囲で真空準位に近
い酸化物半導体で形成することが好ましい。
【0246】
このような構造において、導電層170に電界を印加すると、酸化物半導体層130のう
ち、伝導帯下端のエネルギーが最も小さい酸化物半導体層130bにチャネルが形成され
る。
【0247】
また、酸化物半導体層130aは、酸化物半導体層130bを構成する金属元素を一種以
上含んで構成されるため、酸化物半導体層130bと絶縁層120が接した場合の界面と
比較して、酸化物半導体層130bと酸化物半導体層130aとの界面には界面準位が形
成されにくくなる。該界面準位はチャネルを形成することがあるため、トランジスタのし
きい値電圧が変動することがある。したがって、酸化物半導体層130aを設けることに
より、トランジスタのしきい値電圧などの電気特性のばらつきを低減することができる。
また、当該トランジスタの信頼性を向上させることができる。
【0248】
また、酸化物半導体層130cは、酸化物半導体層130bを構成する金属元素を一種以
上含んで構成されるため、酸化物半導体層130bとゲート絶縁膜(絶縁層160)が接
した場合の界面と比較して、酸化物半導体層130bと酸化物半導体層130cとの界面
ではキャリアの散乱が起こりにくくなる。したがって、酸化物半導体層130cを設ける
ことにより、トランジスタの電界効果移動度を高くすることができる。
【0249】
酸化物半導体層130aおよび酸化物半導体層130cには、例えば、Al、Ti、Ga
、Ge、Y、Zr、Sn、La、CeまたはHfを酸化物半導体層130bよりも高い原
子数比で含む材料を用いることができる。具体的には、当該原子数比を1.5倍以上、好
ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上とする。前述の元素は酸素と強く結合する
ため、酸素欠損が酸化物半導体層に生じることを抑制する機能を有する。すなわち、酸化
物半導体層130aおよび酸化物半導体層130cは、酸化物半導体層130bよりも酸
素欠損が生じにくいということができる。
【0250】
また、酸化物半導体層130a、酸化物半導体層130b、および酸化物半導体層130
cとして用いることのできる酸化物半導体は、少なくともInもしくはZnを含むことが
好ましい。または、InとZnの双方を含むことが好ましい。また、該酸化物半導体を用
いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすため、それらと共に、スタビライザーを
含むことが好ましい。
【0251】
スタビライザーとしては、Ga、Sn、Hf、Al、またはZr等がある。また、他のス
タビライザーとしては、ランタノイドである、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、G
d、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等がある。
【0252】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ガリウム、酸化亜鉛、I
n-Zn酸化物、Sn-Zn酸化物、Al-Zn酸化物、Zn-Mg酸化物、Sn-Mg
酸化物、In-Mg酸化物、In-Ga酸化物、In-Ga-Zn酸化物、In-Al-
Zn酸化物、In-Sn-Zn酸化物、Sn-Ga-Zn酸化物、Al-Ga-Zn酸化
物、Sn-Al-Zn酸化物、In-Hf-Zn酸化物、In-La-Zn酸化物、In
-Ce-Zn酸化物、In-Pr-Zn酸化物、In-Nd-Zn酸化物、In-Sm-
Zn酸化物、In-Eu-Zn酸化物、In-Gd-Zn酸化物、In-Tb-Zn酸化
物、In-Dy-Zn酸化物、In-Ho-Zn酸化物、In-Er-Zn酸化物、In
-Tm-Zn酸化物、In-Yb-Zn酸化物、In-Lu-Zn酸化物、In-Sn-
Ga-Zn酸化物、In-Hf-Ga-Zn酸化物、In-Al-Ga-Zn酸化物、I
n-Sn-Al-Zn酸化物、In-Sn-Hf-Zn酸化物、In-Hf-Al-Zn
酸化物を用いることができる。
【0253】
なお、ここで、例えば、In-Ga-Zn酸化物とは、InとGaとZnを主成分として
有する酸化物という意味である。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていても
よい。また、本明細書においては、In-Ga-Zn酸化物で構成した膜をIGZO膜と
も呼ぶ。
【0254】
また、InMO(ZnO)(m>0、且つ、mは整数でない)で表記される材料を用
いてもよい。なお、Mは、Ga、Y、Zr、La、Ce、またはNdから選ばれた一つの
金属元素または複数の金属元素を示す。また、InSnO(ZnO)(n>0、且
つ、nは整数)で表記される材料を用いてもよい。
【0255】
なお、酸化物半導体層130a、酸化物半導体層130b、酸化物半導体層130cが、
少なくともインジウム、亜鉛およびM(Al、Ti、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、La
、CeまたはHf等の金属)を含むIn-M-Zn酸化物であるとき、酸化物半導体層1
30aをIn:M:Zn=x:y:z[原子数比]、酸化物半導体層130bをI
n:M:Zn=x:y:z[原子数比]、酸化物半導体層130cをIn:M:Z
n=x:y:z[原子数比]とすると、y/xおよびy/xがy/x
よりも大きくなることが好ましい。y/xおよびy/xはy/xよりも1.
5倍以上、好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上とする。このとき、酸化物半
導体層130bにおいて、yがx以上であるとトランジスタの電気特性を安定させる
ことができる。ただし、yがxの3倍以上になると、トランジスタの電界効果移動度
が低下してしまうため、yはxの3倍未満であることが好ましい。
【0256】
酸化物半導体層130aおよび酸化物半導体層130cにおけるZnおよびOを除いた場
合において、InおよびMの原子数比率は、好ましくはInが50atomic%未満、
Mが50atomic%以上、さらに好ましくはInが25atomic%未満、Mが7
5atomic%以上とする。また、酸化物半導体層130bのZnおよびOを除いての
InおよびMの原子数比率は、好ましくはInが25atomic%以上、Mが75at
omic%未満、さらに好ましくはInが34atomic%以上、Mが66atomi
c%未満とする。
【0257】
また、酸化物半導体層130bは、酸化物半導体層130aおよび酸化物半導体層130
cよりもインジウムの含有量を多くするとよい。酸化物半導体では主として重金属のs軌
道がキャリア伝導に寄与しており、Inの含有率を多くすることにより、より多くのs軌
道が重なるため、InがMよりも多い組成となる酸化物はInがMと同等または少ない組
成となる酸化物と比較して移動度が高くなる。そのため、酸化物半導体層130bにイン
ジウムの含有量が多い酸化物を用いることで、高い電界効果移動度のトランジスタを実現
することができる。
【0258】
酸化物半導体層130aの厚さは、3nm以上100nm以下、好ましくは5nm以上5
0nm以下、さらに好ましくは5nm以上25nm以下とする。また、酸化物半導体層1
30bの厚さは、3nm以上200nm以下、好ましくは10nm以上150nm以下、
さらに好ましくは15nm以上100nm以下とする。また、酸化物半導体層130cの
厚さは、1nm以上50nm以下、好ましくは2nm以上30nm以下、さらに好ましく
は3nm以上15nm以下とする。また、酸化物半導体層130bは、酸化物半導体層1
30aおよび酸化物半導体層130cより厚い方が好ましい。
【0259】
酸化物半導体層をチャネルとするトランジスタに安定した電気特性を付与するためには、
酸化物半導体層中の不純物濃度を低減し、酸化物半導体層を真性または実質的に真性にす
ることが有効である。ここで、実質的に真性とは、酸化物半導体層のキャリア密度が、1
×1017/cm未満であること、1×1015/cm未満であること、あるいは1
×1013/cm未満であることを指す。
【0260】
また、酸化物半導体層において、水素、窒素、炭素、シリコン、および主成分以外の金属
元素は不純物となる。例えば、水素および窒素はドナー準位の形成に寄与し、キャリア密
度を増大させてしまう。また、シリコンは酸化物半導体層中で不純物準位の形成に寄与す
る。当該不純物準位はトラップとなり、トランジスタの電気特性を劣化させることがある
。したがって、酸化物半導体層130a、酸化物半導体層130bおよび酸化物半導体層
130cの層中や、それぞれの界面において不純物濃度を低減させることが好ましい。
【0261】
酸化物半導体層を真性または実質的に真性とするためには、SIMS(Secondar
y Ion Mass Spectrometry)分析で見積もられるシリコン濃度が
1×1019atoms/cm未満、好ましくは5×1018atoms/cm未満
、さらに好ましくは1×1018atoms/cm未満となる領域を有するように制御
する。また、水素濃度が、2×1020atoms/cm以下、好ましくは5×10
atoms/cm以下、より好ましくは1×1019atoms/cm以下、さら
に好ましくは5×1018atoms/cm以下になる領域を有するように制御する。
また、窒素濃度が、5×1019atoms/cm未満、好ましくは5×1018at
oms/cm以下、より好ましくは1×1018atoms/cm以下、さらに好ま
しくは5×1017atoms/cm以下になる領域を有するように制御する。
【0262】
また、シリコンや炭素が高濃度で含まれると、酸化物半導体層の結晶性を低下させること
がある。酸化物半導体層の結晶性を低下させないためには、例えばシリコン濃度を1×1
19atoms/cm未満、好ましくは5×1018atoms/cm未満、さら
に好ましくは1×1018atoms/cm未満になる領域を有するように制御する。
また、炭素濃度を1×1019atoms/cm未満、好ましくは5×1018ato
ms/cm未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm未満になる領域を
有するように制御する。
【0263】
また、上述のように高純度化された酸化物半導体膜をチャネル形成領域に用いたトランジ
スタのオフ電流は極めて小さい。例えば、ソースとドレインとの間の電圧を0.1V、5
V、または、10V程度とした場合に、トランジスタのチャネル幅あたりのオフ電流を数
yA/μm乃至数zA/μmにまで低減することが可能となる。
【0264】
トランジスタのゲート絶縁膜としては、シリコンを含む絶縁膜が多く用いられるため、上
記理由により酸化物半導体層のチャネルとなる領域は、本発明の一態様のトランジスタの
ようにゲート絶縁膜と接しない構造が好ましいということができる。また、ゲート絶縁膜
と酸化物半導体層との界面にチャネルが形成される場合、該界面でキャリアの散乱が起こ
り、トランジスタの電界効果移動度が低くなることがある。このような観点からも、酸化
物半導体層のチャネルとなる領域はゲート絶縁膜から離すことが好ましいといえる。
【0265】
したがって、酸化物半導体層130を酸化物半導体層130a、酸化物半導体層130b
、酸化物半導体層130cの積層構造とすることで、酸化物半導体層130bにチャネル
を形成することができ、高い電界効果移動度および安定した電気特性を有したトランジス
タを形成することができる。
【0266】
酸化物半導体層130a、酸化物半導体層130b、酸化物半導体層130cのバンド構
造においては、伝導帯下端のエネルギーが連続的に変化する。これは、酸化物半導体層1
30a、酸化物半導体層130b、酸化物半導体層130cの組成が近似することにより
、酸素が相互に拡散しやすい点からも理解される。したがって、酸化物半導体層130a
、酸化物半導体層130b、酸化物半導体層130cは組成が異なる層の積層体ではある
が、物性的に連続であるということもでき、図面において、当該積層体のそれぞれの界面
は点線で表している。
【0267】
主成分を共通として積層された酸化物半導体層130は、各層を単に積層するのではなく
連続接合(ここでは特に伝導帯下端のエネルギーが各層の間で連続的に変化するU字型の
井戸構造(U Shape Well))が形成されるように作製する。すなわち、各層
の界面にトラップ中心や再結合中心のような欠陥準位を形成するような不純物が存在しな
いように積層構造を形成する。仮に、積層された酸化物半導体層の層間に不純物が混在し
ていると、エネルギーバンドの連続性が失われ、界面でキャリアがトラップあるいは再結
合により消滅してしまう。
【0268】
例えば、酸化物半導体層130aおよび酸化物半導体層130cにはIn:Ga:Zn=
1:3:2、1:3:3、1:3:4、1:3:6、1:4:5、1:6:4または1:
9:6(原子数比)などのIn-Ga-Zn酸化物などを用いることができる。また、酸
化物半導体層130bにはIn:Ga:Zn=1:1:1、2:1:3、5:5:6、ま
たは3:1:2(原子数比)などのIn-Ga-Zn酸化物などを用いることができる。
なお、上記酸化物をスパッタターゲットとして成膜を行った場合、成膜される酸化物半導
体層130a、酸化物半導体層130b、および酸化物半導体層130cの原子数比は必
ずしも同一とならず、±40%程度の差を有する。
【0269】
酸化物半導体層130における酸化物半導体層130bはウェル(井戸)となり、チャネ
ルは酸化物半導体層130bに形成される。なお、酸化物半導体層130は伝導帯下端の
エネルギーが連続的に変化しているため、U字型井戸とも呼ぶことができる。また、この
ような構成で形成されたチャネルを埋め込みチャネルということもできる。
【0270】
また、酸化物半導体層130aおよび酸化物半導体層130cと、酸化シリコン膜などの
絶縁層との界面近傍には、不純物や欠陥に起因したトラップ準位が形成され得る。酸化物
半導体層130aおよび酸化物半導体層130cがあることにより、酸化物半導体層13
0bと当該トラップ準位とを遠ざけることができる。
【0271】
ただし、酸化物半導体層130aおよび酸化物半導体層130cの伝導帯下端のエネルギ
ーと、酸化物半導体層130bの伝導帯下端のエネルギーとの差が小さい場合、酸化物半
導体層130bの電子が該エネルギー差を越えてトラップ準位に達することがある。電子
がトラップ準位に捕獲されることで、絶縁層界面にマイナスの電荷が生じ、トランジスタ
のしきい値電圧はプラス方向にシフトしてしまう。
【0272】
酸化物半導体層130a、酸化物半導体層130bおよび酸化物半導体層130cには、
結晶部が含まれることが好ましい。特にc軸に配向した結晶を用いることでトランジスタ
に安定した電気特性を付与することができる。また、c軸に配向した結晶は歪曲に強く、
フレキシブル基板を用いた半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0273】
ソース電極層として作用する導電層140およびドレイン電極層として作用する導電層1
50には、例えば、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、W、Ni、Mn、Nd、Sc
、および当該金属材料の合金から選ばれた材料の単層、または積層を用いることができる
。代表的には、特に酸素と結合しやすいTiや、後のプロセス温度が比較的高くできるこ
となどから、融点の高いWを用いることがより好ましい。また、低抵抗のCuやCu-M
nなどの合金と上記材料との積層を用いてもよい。なお、トランジスタ105、トランジ
スタ106、トランジスタ111、トランジスタ112においては、例えば、導電層14
1および導電層151にW、導電層142および導電層152にTiとAlとの積層膜な
どを用いることができる。
【0274】
上記材料は酸化物半導体膜から酸素を引き抜く性質を有する。そのため、上記材料と接し
た酸化物半導体膜の一部の領域では酸化物半導体膜中の酸素が脱離し、酸素欠損が形成さ
れる。膜中に僅かに含まれる水素と当該酸素欠損が結合することにより当該領域は顕著に
n型化する。したがって、n型化した当該領域はトランジスタのソースまたはドレインと
して作用させることができる。
【0275】
また、導電層140および導電層150にWを用いる場合には、窒素をドーピングしても
よい。窒素をドーピングすることで酸素を引き抜く性質を適度に弱めることができ、n型
化した領域がチャネル領域まで拡大することを防ぐことができる。また、導電層140お
よび導電層150をn型の半導体層との積層とし、n型の半導体層と酸化物半導体層を接
触させることによってもn型化した領域がチャネル領域まで拡大することを防ぐことがで
きる。n型の半導体層としては、窒素が添加されたIn-Ga-Zn酸化物、酸化亜鉛、
酸化インジウム、酸化スズ、酸化インジウムスズなどを用いることができる。
【0276】
ゲート絶縁膜として作用する絶縁層160には、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、
酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸
化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、
酸化ハフニウムおよび酸化タンタルを一種以上含む絶縁膜を用いることができる。また、
絶縁層160は上記材料の積層であってもよい。なお、絶縁層160に、La、N、Zr
などを、不純物として含んでいてもよい。
【0277】
また、絶縁層160の積層構造の一例について説明する。絶縁層160は、例えば、酸素
、窒素、シリコン、ハフニウムなどを有する。具体的には、酸化ハフニウム、および酸化
シリコンまたは酸化窒化シリコンを含むと好ましい。
【0278】
酸化ハフニウムおよび酸化アルミニウムは、酸化シリコンや酸化窒化シリコンと比べて比
誘電率が高い。したがって、酸化シリコンを用いた場合と比べて絶縁層160の膜厚を大
きくできるため、トンネル電流によるリーク電流を小さくすることができる。即ち、オフ
電流の小さいトランジスタを実現することができる。さらに、結晶構造を有する酸化ハフ
ニウムは、非晶質構造を有する酸化ハフニウムと比べて高い比誘電率を備える。したがっ
て、オフ電流の小さいトランジスタとするためには、結晶構造を有する酸化ハフニウムを
用いることが好ましい。結晶構造の例としては、単斜晶系や立方晶系などが挙げられる。
ただし、本発明の一態様は、これらに限定されない。
【0279】
また、酸化物半導体層130と接する絶縁層120および絶縁層160は、窒素酸化物の
放出量の少ない膜を用いることが好ましい。窒素酸化物の放出量の多い絶縁層と酸化物半
導体が接した場合、窒素酸化物に起因する準位密度が高くなることがある。絶縁層120
および絶縁層160には、例えば、窒素酸化物の放出量の少ない酸化窒化シリコン膜また
は酸化窒化アルミニウム膜等の酸化物絶縁層を用いることができる。
【0280】
なお、窒素酸化物の放出量の少ない酸化窒化シリコン膜は、TDS法において、窒素酸化
物の放出量よりアンモニアの放出量が多い膜であり、代表的にはアンモニアの放出量が1
×1018個/cm以上5×1019個/cm以下である。なお、アンモニアの放出
量は、膜の表面温度が50℃以上650℃以下、好ましくは50℃以上550℃以下の加
熱処理による放出量とする。
【0281】
絶縁層120および絶縁層160として、上記酸化物絶縁層を用いることで、トランジス
タのしきい値電圧のシフトを低減することが可能であり、トランジスタの電気特性の変動
を低減することができる。
【0282】
ゲート電極層として作用する導電層170には、例えば、Al、Ti、Cr、Co、Ni
、Cu、Y、Zr、Mo、Ru、Ag、Mn、Nd、Sc、TaおよびWなどの導電膜を
用いることができる。また、上記材料の合金や上記材料の導電性窒化物を用いてもよい。
また、上記材料、上記材料の合金、および上記材料の導電性窒化物から選ばれた複数の材
料の積層であってもよい。代表的には、タングステン、タングステンと窒化チタンの積層
、タングステンと窒化タンタルの積層などを用いることができる。また、低抵抗のCuま
たはCu-Mnなどの合金や上記材料とCuまたはCu-Mnなどの合金との積層を用い
てもよい。本実施の形態では、導電層171に窒化タンタル、導電層172にタングステ
ンを用いて導電層170を形成する。
【0283】
絶縁層175には、水素を含む窒化シリコン膜または窒化アルミニウム膜などを用いるこ
とができる。実施の形態4に示したトランジスタ103、トランジスタ104、トランジ
スタ106、トランジスタ109、トランジスタ110、およびトランジスタ112では
、絶縁層175として水素を含む絶縁膜を用いることで酸化物半導体層の一部をn型化す
ることができる。また、窒化絶縁膜は水分などのブロッキング膜としての作用も有し、ト
ランジスタの信頼性を向上させることができる。
【0284】
また、絶縁層175としては酸化アルミニウム膜を用いることもできる。特に、実施の形
態4に示したトランジスタ101、トランジスタ102、トランジスタ105、トランジ
スタ107、トランジスタ108、およびトランジスタ111では絶縁層175に酸化ア
ルミニウム膜を用いることが好ましい。酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物
、および酸素の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミ
ニウム膜は、トランジスタの作製工程中および作製後において、水素、水分などの不純物
の酸化物半導体層130への混入防止、酸素の酸化物半導体層からの放出防止、絶縁層1
20からの酸素の不必要な放出防止の効果を有する保護膜として用いることに適している
。また、酸化アルミニウム膜に含まれる酸素を酸化物半導体層中に拡散させることもでき
る。
【0285】
また、絶縁層175上には絶縁層180が形成されていることが好ましい。当該絶縁層に
は、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリ
コン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ラ
ンタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムおよび酸化タンタルを一種以上含む絶縁膜を用い
ることができる。また、当該絶縁層は上記材料の積層であってもよい。
【0286】
ここで、絶縁層180は絶縁層120と同様に化学量論組成よりも多くの酸素を有するこ
とが好ましい。絶縁層180から放出される酸素は絶縁層160を経由して酸化物半導体
層130のチャネル形成領域に拡散させることができることから、チャネル形成領域に形
成された酸素欠損に酸素を補填することができる。したがって、安定したトランジスタの
電気特性を得ることができる。
【0287】
半導体装置を高集積化するにはトランジスタの微細化が必須である。一方、トランジスタ
の微細化によりトランジスタの電気特性が悪化することが知られており、特にチャネル幅
が縮小するとオン電流が低下する。
【0288】
本発明の一態様のトランジスタ107乃至トランジスタ112では、チャネルが形成され
る酸化物半導体層130bを覆うように酸化物半導体層130cが形成されており、チャ
ネル形成層とゲート絶縁膜が接しない構成となっている。そのため、チャネル形成層とゲ
ート絶縁膜との界面で生じるキャリアの散乱を抑えることができ、トランジスタのオン電
流を大きくすることができる。
【0289】
また、本発明の一態様のトランジスタでは、前述したように酸化物半導体層130のチャ
ネル幅方向を電気的に取り囲むようにゲート電極層(導電層170)が形成されているた
め、酸化物半導体層130に対しては上面に垂直な方向からのゲート電界に加えて、側面
に垂直な方向からのゲート電界が印加される。すなわち、チャネル形成層に対して全体的
にゲート電界が印加されることになり実効チャネル幅が拡大するため、さらにオン電流を
高められる。
【0290】
また、本発明の一態様における酸化物半導体層130が二層または三層のトランジスタで
は、チャネルが形成される酸化物半導体層130bを酸化物半導体層130a上に形成す
ることで界面準位を形成しにくくする効果を有する。また、本発明の一態様における酸化
物半導体層130が三層のトランジスタでは、酸化物半導体層130bを三層構造の中間
に位置する層とすることで上下からの不純物混入の影響を排除できる効果などを併せて有
する。そのため、上述したトランジスタのオン電流の向上に加えて、しきい値電圧の安定
化や、S値(サブスレッショルド値)の低減をはかることができる。したがって、ゲート
電圧VGが0V時の電流を下げることができ、消費電力を低減させることができる。また
、トランジスタのしきい値電圧が安定化することから、半導体装置の長期信頼性を向上さ
せることができる。また、本発明の一態様のトランジスタは、微細化にともなう電気特性
の劣化が抑えられることから、集積度の高い半導体装置の形成に適しているといえる。
【0291】
なお、本実施の形態で説明した金属膜、半導体膜、無機絶縁膜など様々な膜は、代表的に
はスパッタ法やプラズマCVD法により形成することができるが、他の方法、例えば、熱
CVD法により形成してもよい。熱CVD法の例としては、MOCVD(Metal O
rganic Chemical Vapor Deposition)法やALD(A
tomic Layer Deposition)法などがある。
【0292】
熱CVD法は、プラズマを使わない成膜方法のため、プラズマダメージにより欠陥が生成
されることが無いという利点を有する。
【0293】
また、熱CVD法では、原料ガスと酸化剤を同時にチャンバー内に送り、チャンバー内を
大気圧または減圧下とし、基板近傍または基板上で反応させて基板上に堆積させることで
成膜を行ってもよい。
【0294】
ALD法は、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、反応のための原料ガスをチャンバ
ーに導入・反応させ、これを繰り返すことで成膜を行う。原料ガスと一緒に不活性ガス(
アルゴン、或いは窒素など)をキャリアガスとして導入しても良い。例えば2種類以上の
原料ガスを順番にチャンバーに供給してもよい。その際、複数種の原料ガスが混ざらない
ように第1の原料ガスの反応後、不活性ガスを導入し、第2の原料ガスを導入する。ある
いは、不活性ガスを導入する代わりに真空排気によって第1の原料ガスを排出した後、第
2の原料ガスを導入してもよい。第1の原料ガスが基板の表面に吸着・反応して第1の層
を成膜し、後から導入される第2の原料ガスが吸着・反応して、第2の層が第1の層上に
積層されて薄膜が形成される。このガス導入順序を制御しつつ所望の厚さになるまで複数
回繰り返すことで、段差被覆性に優れた薄膜を形成することができる。薄膜の厚さは、ガ
ス導入の繰り返す回数によって調節することができるため、精密な膜厚調節が可能であり
、微細なFETを作製する場合に適している。
【0295】
MOCVD法やALD法などの熱CVD法は、これまでに記載した実施形態に開示された
金属膜、半導体膜、無機絶縁膜など様々な膜を形成することができ、例えば、In-Ga
-Zn-O膜を成膜する場合には、トリメチルインジウム(In(CH)、トリメ
チルガリウム(Ga(CH)、およびジメチル亜鉛(Zn(CH)を用いる
ことができる。これらの組み合わせに限定されず、トリメチルガリウムに代えてトリエチ
ルガリウム(Ga(C)を用いることもでき、ジメチル亜鉛に代えてジエチル
亜鉛(Zn(C)を用いることもできる。
【0296】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化ハフニウム膜を形成する場合には、溶媒と
ハフニウム前駆体を含む液体(ハフニウムアルコキシドや、テトラキスジメチルアミドハ
フニウム(TDMAH、Hf[N(CH)やテトラキス(エチルメチルアミド
)ハフニウムなどのハフニウムアミド)を気化させた原料ガスと、酸化剤としてオゾン(
)の2種類のガスを用いる。
【0297】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化アルミニウム膜を形成する場合には、溶媒
とアルミニウム前駆体を含む液体(トリメチルアルミニウム(TMA、Al(CH
)など)を気化させた原料ガスと、酸化剤としてHOの2種類のガスを用いる。他の材
料としては、トリス(ジメチルアミド)アルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ア
ルミニウムトリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナート)など
がある。
【0298】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化シリコン膜を形成する場合には、ヘキサク
ロロジシランを被成膜面に吸着させ、酸化性ガス(O、一酸化二窒素)のラジカルを供
給して吸着物と反応させる。
【0299】
例えば、ALDを利用する成膜装置によりタングステン膜を成膜する場合には、WF
スとBガスを順次導入して初期タングステン膜を形成し、その後、WFガスとH
ガスを順次導入してタングステン膜を形成する。なお、Bガスに代えてSiH
ガスを用いてもよい。
【0300】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化物半導体膜、例えばIn-Ga-Zn-O
膜を成膜する場合には、In(CHガスとOガスを順次導入してIn-O層を形
成し、その後、Ga(CHガスとOガスを順次導入してGaO層を形成し、更に
その後Zn(CHガスとOガスを順次導入してZnO層を形成する。なお、これ
らの層の順番はこの例に限らない。これらのガスを用いてIn-Ga-O層やIn-Zn
-O層、Ga-Zn-O層などの混合化合物層を形成しても良い。なお、Oガスに変え
てAr等の不活性ガスでバブリングして得られたHOガスを用いても良いが、Hを含ま
ないOガスを用いる方が好ましい。
【0301】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることが
できる。
【0302】
(実施の形態6)
以下では、本発明の一態様に用いることのできる酸化物半導体膜の構造について説明する
【0303】
なお、本明細書において、「平行」とは、二つの直線が-10°以上10°以下の角度で
配置されている状態をいう。したがって、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また、
「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう
。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。
【0304】
また、本明細書において、結晶が三方晶または菱面体晶である場合、六方晶系として表す
【0305】
酸化物半導体膜は、非単結晶酸化物半導体膜と単結晶酸化物半導体膜とに大別される。非
単結晶酸化物半導体膜とは、CAAC-OS(C Axis Aligned Crys
talline Oxide Semiconductor)膜、多結晶酸化物半導体膜
、微結晶酸化物半導体膜、非晶質酸化物半導体膜などをいう。
【0306】
まずは、CAAC-OS膜について説明する。
【0307】
CAAC-OS膜は、c軸配向した複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つである。
【0308】
透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Micro
scope)によって、CAAC-OS膜の明視野像および回折パターンの複合解析像(
高分解能TEM像ともいう。)を観察することで複数の結晶部を確認することができる。
一方、高分解能TEM像によっても明確な結晶部同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバ
ウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、CAAC-OS膜は、結
晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0309】
試料面と概略平行な方向から、CAAC-OS膜の断面の高分解能TEM像を観察すると
、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子の各層は
、CAAC-OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸を反映し
た形状であり、CAAC-OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
【0310】
一方、試料面と概略垂直な方向から、CAAC-OS膜の平面の高分解能TEM像を観察
すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列していることを確認
できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
【0311】
CAAC-OS膜に対し、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)装
置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnOの結晶を有するCAAC-OS膜
のout-of-plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピークが
現れる場合がある。このピークは、InGaZnOの結晶の(009)面に帰属される
ことから、CAAC-OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に概
略垂直な方向を向いていることが確認できる。
【0312】
なお、InGaZnOの結晶を有するCAAC-OS膜のout-of-plane法
による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れ
る場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC-OS膜中の一部に、c軸配向性
を有さない結晶が含まれることを示している。CAAC-OS膜は、2θが31°近傍に
ピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
【0313】
CAAC-OS膜は、不純物濃度の低い酸化物半導体膜である。不純物は、水素、炭素、
シリコン、遷移金属元素などの酸化物半導体膜の主成分以外の元素である。特に、シリコ
ンなどの、酸化物半導体膜を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸化
物半導体膜から酸素を奪うことで酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる
要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径
(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体膜内部に含まれると、酸化物半導体膜の
原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。なお、酸化物半導体膜に含まれる不純
物は、キャリアトラップやキャリア発生源となる場合がある。
【0314】
また、CAAC-OS膜は、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜である。例えば、酸化物
半導体膜中の酸素欠損は、キャリアトラップとなることや、水素を捕獲することによって
キャリア発生源となることがある。
【0315】
不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損の少ない)ことを、高純度真性または
実質的に高純度真性と呼ぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜
は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。したがって、
当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(
ノーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純
度真性である酸化物半導体膜は、キャリアトラップが少ない。そのため、当該酸化物半導
体膜を用いたトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとな
る。なお、酸化物半導体膜のキャリアトラップに捕獲された電荷は、放出するまでに要す
る時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、不純物濃度が
高く、欠陥準位密度が高い酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性が不安定と
なる場合がある。
【0316】
また、CAAC-OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性
の変動が小さい。
【0317】
次に、微結晶酸化物半導体膜について説明する。
【0318】
微結晶酸化物半導体膜は、高分解能TEM像において、結晶部を確認することのできる領
域と、明確な結晶部を確認することのできない領域と、を有する。微結晶酸化物半導体膜
に含まれる結晶部は、1nm以上100nm以下、または1nm以上10nm以下の大き
さであることが多い。特に、1nm以上10nm以下、または1nm以上3nm以下の微
結晶であるナノ結晶(nc:nanocrystal)を有する酸化物半導体膜を、nc
-OS(nanocrystalline Oxide Semiconductor)
膜と呼ぶ。また、nc-OS膜は、例えば、高分解能TEM像では、結晶粒界を明確に確
認できない場合がある。
【0319】
nc-OS膜は、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上
3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OS膜は、異なる
結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。し
たがって、nc-OS膜は、分析方法によっては、非晶質酸化物半導体膜と区別が付かな
い場合がある。例えば、nc-OS膜に対し、結晶部よりも大きい径のX線を用いるXR
D装置を用いて構造解析を行うと、out-of-plane法による解析では、結晶面
を示すピークが検出されない。また、nc-OS膜に対し、結晶部よりも大きいプローブ
径(例えば50nm以上)の電子線を用いる電子回折(制限視野電子回折ともいう。)を
行うと、ハローパターンのような回折パターンが観測される。一方、nc-OS膜に対し
、結晶部の大きさと近いか結晶部より小さいプローブ径の電子線を用いるナノビーム電子
回折を行うと、スポットが観測される。また、nc-OS膜に対しナノビーム電子回折を
行うと、円周状に分布したスポットが観測される場合がある。また、nc-OS膜に対し
ナノビーム電子回折を行うと、リング状の領域内に複数のスポットが観測される場合があ
る。
【0320】
nc-OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも規則性の高い酸化物半導体膜である。その
ため、nc-OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも欠陥準位密度が低くなる。ただし、
nc-OS膜は、異なる結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、nc-O
S膜は、CAAC-OS膜と比べて欠陥準位密度が高くなる。
【0321】
次に、非晶質酸化物半導体膜について説明する。
【0322】
非晶質酸化物半導体膜は、膜中における原子配列が不規則であり、結晶部を有さない酸化
物半導体膜である。石英のような無定形状態を有する酸化物半導体膜が一例である。
【0323】
非晶質酸化物半導体膜は、高分解能TEM像において結晶部を確認することができない。
【0324】
非晶質酸化物半導体膜に対し、XRD装置を用いた構造解析を行うと、out-of-p
lane法による解析では、結晶面を示すピークが検出されない。また、非晶質酸化物半
導体膜に対し、電子回折を行うと、ハローパターンが観測される。また、非晶質酸化物半
導体膜に対し、ナノビーム電子回折を行うと、スポットが観測されず、ハローパターンが
観測される。
【0325】
なお、酸化物半導体膜は、nc-OS膜と非晶質酸化物半導体膜との間の物性を示す構造
を有する場合がある。そのような構造を有する酸化物半導体膜を、特に非晶質ライク酸化
物半導体(amorphous-like OS:amorphous-like Ox
ide Semiconductor)膜と呼ぶ。
【0326】
amorphous-like OS膜は、高分解能TEM像において鬆(ボイドともい
う。)が観察される場合がある。また、高分解能TEM像において、明確に結晶部を確認
することのできる領域と、結晶部を確認することのできない領域と、を有する。amor
phous-like OS膜は、TEMによる観察程度の微量な電子照射によって、結
晶化が起こり、結晶部の成長が見られる場合がある。一方、良質なnc-OS膜であれば
、TEMによる観察程度の微量な電子照射による結晶化はほとんど見られない。
【0327】
なお、amorphous-like OS膜およびnc-OS膜の結晶部の大きさの計
測は、高分解能TEM像を用いて行うことができる。例えば、InGaZnOの結晶は
層状構造を有し、In-O層の間に、Ga-Zn-O層を2層有する。InGaZnO
の結晶の単位格子は、In-O層を3層有し、またGa-Zn-O層を6層有する、計9
層がc軸方向に層状に重なった構造を有する。よって、これらの近接する層同士の間隔は
、(009)面の格子面間隔(d値ともいう。)と同程度であり、結晶構造解析からその
値は0.29nmと求められている。そのため、高分解能TEM像における格子縞に着目
し、格子縞の間隔が0.28nm以上0.30nm以下である箇所においては、それぞれ
の格子縞がInGaZnOの結晶のa-b面に対応する。
【0328】
なお、酸化物半導体膜は、例えば、非晶質酸化物半導体膜、amorphous-lik
e OS膜、微結晶酸化物半導体膜、CAAC-OS膜のうち、二種以上を有する積層膜
であってもよい。
【0329】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることが
できる。
【0330】
(実施の形態7)
本発明の一態様に係る撮像装置および当該撮像装置を含む半導体装置は、表示機器、パー
ソナルコンピュータ、記録媒体を備えた画像再生装置(代表的にはDVD:Digita
l Versatile Disc等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディス
プレイを有する装置)に用いることができる。その他に、本発明の一態様に係る撮像装置
および当該撮像装置を含む半導体装置を用いることができる電子機器として、携帯電話、
携帯型を含むゲーム機、携帯データ端末、電子書籍端末、ビデオカメラ、デジタルスチル
カメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲー
ションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー等)、
複写機、ファクシミリ、プリンタ、プリンタ複合機、現金自動預け入れ払い機(ATM)
、自動販売機などが挙げられる。これら電子機器の具体例を図44に示す。
【0331】
図44(A)は携帯型ゲーム機であり、筐体901、筐体902、表示部903、表示部
904、マイク905、スピーカー906、操作キー907、スタイラス908、カメラ
909等を有する。なお、図44(A)に示した携帯型ゲーム機は、2つの表示部903
と表示部904とを有しているが、携帯型ゲーム機が有する表示部の数は、これに限定さ
れない。カメラ909には本発明の一態様の撮像装置を用いることができる。
【0332】
図44(B)は携帯データ端末であり、第1筐体911、表示部912、カメラ919等
を有する。表示部912が有するタッチパネル機能により情報の入出力を行うことができ
る。カメラ919には本発明の一態様の撮像装置を用いることができる。
【0333】
図44(C)はデジタルカメラであり、筐体921、シャッターボタン922、マイク9
23、発光部927、レンズ925等を有する。レンズ925の焦点となる位置には本発
明の一態様の撮像装置を備えることができる。
【0334】
図44(D)は腕時計型の情報端末であり、筐体931、表示部932、リストバンド9
33、カメラ939等を有する。表示部932はタッチパネルとなっていてもよい。カメ
ラ939には本発明の一態様の撮像装置を用いることができる。
【0335】
図44(E)はビデオカメラであり、第1筐体941、第2筐体942、表示部943、
操作キー944、レンズ945、接続部946等を有する。操作キー944およびレンズ
945は第1筐体941に設けられており、表示部943は第2筐体942に設けられて
いる。そして、第1筐体941と第2筐体942とは、接続部946により接続されてお
り、第1筐体941と第2筐体942の間の角度は、接続部946により変更が可能であ
る。表示部943における映像を、接続部946における第1筐体941と第2筐体94
2との間の角度に従って切り替える構成としても良い。レンズ945の焦点となる位置に
は本発明の一態様の撮像装置を備えることができる。
【0336】
図44(F)は携帯電話であり、筐体951に、表示部952、マイク957、スピーカ
ー954、カメラ959、入出力端子956、操作用のボタン955等を有する。カメラ
959には本発明の一態様の撮像装置を用いることができる。
【0337】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる
【符号の説明】
【0338】
40 シリコン基板
41 基板
51 トランジスタ
52 トランジスタ
53 トランジスタ
54 トランジスタ
55 トランジスタ
56 トランジスタ
58 容量素子
59 活性層
60 光電変換素子
61 光電変換層
62 透光性導電層
63 半導体層
64 半導体層
65 半導体層
70 導電体
71 配線
72 配線
73 配線
74 隔壁
75 配線
80 絶縁層
91 画素回路
91a 回路
91b 回路
92a 回路
92b 回路
93 回路
93a 領域
93b 領域
93c 領域
94 回路
95 回路
96 領域
101 トランジスタ
102 トランジスタ
103 トランジスタ
104 トランジスタ
105 トランジスタ
106 トランジスタ
107 トランジスタ
108 トランジスタ
109 トランジスタ
110 トランジスタ
111 トランジスタ
112 トランジスタ
115 基板
120 絶縁層
130 酸化物半導体層
130a 酸化物半導体層
130b 酸化物半導体層
130c 酸化物半導体層
140 導電層
141 導電層
142 導電層
150 導電層
151 導電層
152 導電層
160 絶縁層
170 導電層
171 導電層
172 導電層
173 導電層
175 絶縁層
180 絶縁層
231 領域
232 領域
233 領域
311 配線
312 配線
313 配線
314 配線
315 配線
316 配線
317 配線
331 領域
332 領域
333 領域
334 領域
335 領域
400 画素部
400a 画素部
400b 画素部
400d 画素部
400h 画素部
400p 画素部
411 回路
412 回路
413 回路
414 回路
421 回路
422 回路
423 回路
424 回路
431 回路
432 回路
433 回路
434 回路
435 回路
438 回路
441 データ線
442 データ線
443 データ線
444 データ線
445 データ線
448 データ線
450 回路
501 信号
502 信号
503 信号
504 信号
505 信号
506 信号
507 信号
508 信号
509 信号
510 期間
511 期間
520 期間
531 期間
610 期間
611 期間
612 期間
613 期間
621 期間
622 期間
623 期間
631 期間
701 信号
702 信号
703 信号
704 信号
705 信号
901 筐体
902 筐体
903 表示部
904 表示部
905 マイク
906 スピーカー
907 操作キー
908 スタイラス
909 カメラ
911 筐体
912 表示部
919 カメラ
921 筐体
922 シャッターボタン
923 マイク
925 レンズ
927 発光部
931 筐体
932 表示部
933 リストバンド
939 カメラ
941 筐体
942 筐体
943 表示部
944 操作キー
945 レンズ
946 接続部
951 筐体
952 表示部
954 スピーカー
955 ボタン
956 入出力端子
957 マイク
959 カメラ
1100 層
1200 層
1300 層
1400 層
1500 絶縁層
1510 遮光層
1520 有機樹脂層
1530a カラーフィルタ
1530b カラーフィルタ
1530c カラーフィルタ
1540 マイクロレンズアレイ
1550 光学変換層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
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図26
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図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
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図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
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図48
図49