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特開2024-163179原子炉運転による廃棄物としてのトリチウムの処理方法
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  • 特開-原子炉運転による廃棄物としてのトリチウムの処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163179
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】原子炉運転による廃棄物としてのトリチウムの処理方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/06 20060101AFI20241114BHJP
   G21F 9/12 20060101ALI20241114BHJP
   G21F 9/02 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G21F9/06 591
G21F9/12
G21F9/02 551
G21F9/02 511A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024150467
(22)【出願日】2024-09-02
(62)【分割の表示】P 2022580488の分割
【原出願日】2022-05-18
(31)【優先権主張番号】P202130480
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(71)【出願人】
【識別番号】522500479
【氏名又は名称】ニュークリーンテック,エセ.エレ.
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】グラウ ジローナ,ラモン
(72)【発明者】
【氏名】ダシエルノ フランチェスコ
(57)【要約】
【課題】原子炉運転による廃棄物としてのトリチウムを処理する方法を提供する。
【解決手段】本発明の方法は、トリチウム放射性排出物を、非水溶性又は無視できる溶解度であるセルロースフィラメント又は微結晶性セルロースからなる吸収材で処理して、トリチウムをセルロースフィラメント又は微結晶性セルロースの分子内に取り込むことと、処理後の排出物からトリチウム化された吸収材を分離することと、そのトリチウムを低及び中レベル放射性廃棄物として処理することとを含む。その方法は、セルロースフィラメント又は微結晶性セルロースを、トリチウム放射性排出物1リットル当たり0.6~3.4グラム、好ましくは1.1~1.6グラムの量になるまでトリチウム化排出物に入れることを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉運転による廃棄物としてのトリチウムを処理する方法であって、トリチウム放射性排出物を、非水溶性又は無視できる溶解度であるセルロースフィラメント又は微結晶性セルロースからなる吸収材で処理して、トリチウムを前記セルロースフィラメント又は微結晶性セルロースの分子内に取り込むことと、処理後の前記排出物からトリチウム化された前記吸収材を分離して、前記トリチウムを低及び中レベル放射性廃棄物として処理することとを特徴とする、原子炉運転による廃棄物としてのトリチウム処理方法。
【請求項2】
セルロースフィラメント又は微結晶性セルロースを、トリチウム放射性排出物1リットル当たり0.6~3.4グラム、好ましくは1.1~1.6グラムの量になるまで前記トリチウム放射性排出物に入れることを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
所定量のトリチウム放射性排出物と、前記量になるまでセルロースフィラメント又は微結晶性セルロースからなる所定量の吸収材とを撹拌タンクに取り込むことと、該タンクの内容物を撹拌することと、処理後の前記排出物を限外ろ過膜でろ過することによって分離し、最後に放射能を持った使用済みの前記吸収材を抽出することとを含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記吸収材を保持するために使用されると共に処理及び除染された水を通過させることができる孔径1~20μmのセルロース又はポリプロピレンフィルターバッグ内に入れられた前記セルロースフィラメント又は微結晶性セルロースを含有する容器を通って、前記放射性排出物を流動床で再循環させることよって処理することと、前記吸収材を使い尽くしたら、取り出して低及び中レベル放射性廃棄物として管理することとを特徴とする、請求項1及び2のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
トリチウムを含有する煙、ガス、蒸気などのガス状の排出物の処理が、孔径1~100μmのフィルタースリーブに入れられたセルロースフィラメント又は微結晶性セルロースに前記排出物を通し、その後にHEPAフィルターでろ過することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉運転による放射性物質(気体、液体、固体)の除染、より具体的には、トリチウム排出物の除染の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
トリチウムの化学的及び物理的特性、並びに水分子の形成における様々な組み合わせの選択肢により、現在の技術水準では、大規模な産業用の分離システムを使用することは困難である。しかしながら、この状況は、トリチウム処理システムが開発されていないことを意味するものではない。それどころか、トリチウム種の処理、捕獲及び貯蔵についての論文や実験的プロセスの数は増えている。この事実は、核融合炉のプロトタイプの建設によっても促進されている。
【0003】
トリチウムは原子炉の核分裂反応で生成され、気体、トリチウム水分子、並びに[O H]及び[O H]イオンとして拡散されることができる。
【0004】
トリチウムは質量3.01605g/molの水素同位体で、3つの同位体の中で唯一の放射性同位体である。半減期は12.33年で、1グラムのトリチウムは9619Ciの放射能を有し、次のように崩壊する。
【数1】
【0005】
化学的性質が最外殻電子に依存することから、トリチウムはジュウテリウム及びプロチウムと同じ化学的挙動を示し、これが他の同位体と化学的に分離することが困難な理由である。更に、トリチウムは純粋β放射体であり、この観点から防護システムが容易である。産業的な分離のレベルでは、様々なトリチウム化された種を分離することの問題は、近い液体-気体転移温度、長い分離カラムと超極低温を必要とする問題点によって決まる。
【0006】
ss
トリチウム(12.3年周期、β線のみの特異な放射体)は、核燃料中で主に三体核分裂によって、1年に200,000から400,000Ci/GW(e)の割合で生成される。また、不純物として、あるいは燃料成分、冷却材、減速材、シース及びその他の核物質として存在する一連の軽元素の中性子放射化によっても生じる。現在では、ジュウテリウム(D)が中性子を捕獲するとT(トリチウム)を生成するため、重水(DO)を減速材として使用する既存の核分裂反応炉(例えばCANDU)からトリチウムを得ることが可能である。これらの原子炉からの重水は、定期的に「洗浄」されなければならない。したがって、これらの原子炉は、例えばカナダなどで、トリチウムの比較的定期的な発生源となる。中性子毒はトリチウムの重要な供給源である。その役割は、中性子の吸収により核反応を抑制することである。PWR原子炉では、トリチウムは、以下の反応によりリチウム-6と中性子の相互作用により生成される。
【数2】
【0007】
リチウム-6は、溶液でのpHを調整する能力を備えたLiOHの形で使用される。一方、ホウ素-10はHBOの形で中性子吸収材として使用され、それにより炉心反応度を調節する。また、リチウム-6は、中性子吸収によりLi-7を生じて、トリチウムに進展する。一般に、最も利用されている中性子毒はトリチウム源の一部である。
【0008】
三体核分裂では、トリチウムは次の反応の結果として現れる。
【数3】
【0009】
PWR型原子炉では、減速材と冷却材の両方が高温高圧で運転され、施設の通常運転時には拡散により、停止時には混合により、トリチウムがそれらの間で交換される更なる可能性がある。国際放射線防護委員会(ICRP)は、作業者の線量を5年間の平均で1年20mSv(ミリシーベルト)に制限している。総線量に対するトリチウムの大きな寄与から、稼働中の原子炉や先進設計に関して、トリチウム制御技術の研究、開発及び最適化が奨励されている。PWR原子炉の水中でのトリチウムの値は約330Bq/grであり、I-131の値は約9Bq/grである。ss
【0010】
核反応で生じるトリチウムは、トリチウムガス[ H]の形であるか、又はほとんどが以下の形で水分子の一部を形成している。
【数4】
【0011】
トリチウムと酸素の反応により、トリチウム水TOが生じる。
【数5】
【0012】
水性媒体中に、次の化学種が存在する。
【数6】
【0013】
トリチウムの基本的な特性は、プロチウムとの交換のし易さである。平衡状態は、溶液中の他の化学種との酸塩基反応に依存し、水溶液のpHにより決まる。
【0014】
中性子束の作用により、プロチウム原子は中性子を捕獲してジュウテリウムになることができることを考慮する。ジュウテリウムとトリチウムは結合して、他の異なる水性構造を形成することができる。トリチウム同位体は12.3年の寿命を有する純粋β放射体であることを考慮すると、それはガス種を含めどの分子構造でも起こり得、この事実は産業レベルでのその分離の試みを極めて困難にする。
【0015】
トリチウム排出による職業線量や起こり得る環境汚染の可能性を低減するために、トリチウム排出の効果的な処理を実現する様々な技術的研究が世界中で提案されており、特に次のような目的が一般的に指摘されている。
-トリチウム水の喪失を最小化すること、並びに液体及び蒸気の状態で回収すること。
-高量トリチウム重水から低量トリチウム重水への転換。
【0016】
核融合炉でのトリチウム管理、並びに原子力発電所での従来工程及び廃止措置工程でのトリチウム水管理により、トリチウムとトリチウム水の分離に関する論文や実験室での試験が継続的に増加していることを考慮して、トリチウムとトリチウム水の分離について提案されている様々な最先端のプロセスを以下に記載する。
【0017】
a)水素化物の形成
水素ガス、従ってTは、高温で遷移金属(スカンジウム、イットリウム、ランタン、アクチノイド、特にチタン族及びバナジウム族の元素)と反応して、水素化物を形成する。
【0018】
水素を捕獲して水素化物を形成する最も効率的な方法はウランによるが、ウランの使用に関する理由から、次に従ってZr-Co合金が可逆的に使用される。
【数7】
【0019】
この化合物の問題は、安定性の欠如と、以下によるその熱分解である。
【数8】
【0020】
水素化物の使用は、Tを含有する可能性を提供する。T.Motyka教授によって開発された、水素化物によるトリチウム(T)の閉じ込めのための操作プロセスがある。
【0021】
b)粒子ベッド
Molecular Separations, Inc(MSI)社は、周囲温度近くで水和水としてのトリチウム水を選択的に帯電させるための粒子ベッドの特許を開発した。試験は、126μCiのトリチウム/リットルの水を標準混合液として行われた。直列の長さ2mのカラムを使用して、25μCiのトリチウム/リットルまで低減することが示された。ハンフォードの廃水試料を使用して、0.3μCiのトリチウム/リットルの水から、0.07μCiのトリチウム/リットルの水までのトリチウムの減少を示した。ベッドに固定されたトリチウムは、適度な温度上昇に伴って放出されることができ、そしてベッドは再利用されることができる。代表的な量の廃水を処理するために、流動床プロセスが提案されている。この分離システムはまた、冷却水中のトリチウム濃度を再利用可能なレベルまで低下させることが示されている。
【0022】
c)トリチウムの吸収
ベルギー原子力研究センターSCK/CENでは、数年前からトリチウムの吸収及びトリチウム化液体排出物の処理に関する研究が行われている。当初は、その研究は、再処理工程で発生するガス状排出物からのトリチウムの除去に焦点を当てた。いずれかの水系作業の前に使用済み燃料からトリチウムが放出される可能性がある場合には、最も実用的な回収方法は、水素での同位体の溶解及びその後にトリチウム水に完全に変換した後での分子ふるいへの吸着である。
【0023】
SCK/CENは、密閉再生システムを備え、単位体積当たり1000ppmまでのトリチウムと水の入口での総濃度で除染係数1000である、15m/hの酸化吸収装置を建設した。SCK/CENは、水の電気分解と、水素と水の間のトリチウム交換とを組み合わせたことに基づくELEXと呼ばれる同位体分離プロセスを開発しており、その交換は疎水性触媒によって促進される。
【0024】
通常の条件下での電気分解については、標準偏差6%で元素トリチウム分離係数11.6が得られている。交換能力に関しては、大気圧及び20℃で用いられる流量に関して、向流トリクルベッド反応器での全体の交換速度定数9mol/s.mをもたらす疎水性触媒が開発されている。このパイロットプラントの設備は、80kWの水電解槽と、直径10cmのトリクルベッドカラムの2つの主要部分から構成されている。トリチウム水の供給量は5リットル/hで、それはトリチウム放射能3.7GBq/lのトリチウムの水相を含んでいる。
【0025】
d)水素同位体の複極式電解分離
Pd/Ag電極(25%Pd)による水素同位体の複極式電解分離により、トリチウム及びトリチウム化種を、様々な種類の排出物から分離することの可能性が証明された。双極プロセスは、各双極電極が他のものと同じ面積である個々のセルを、直列配置でカスケード配置することで実験的に実行された。H-D多重双極分離の測定係数は、シングルステップのセル測定で測定された値に近く、H-T分離では、ステップ間の漏れが測定分離係数を低下させた。しかし、両方の場合で、高電流密度の大容量システムからのトリチウムの抽出での実際の適用の実現可能性を示す十分な大きさの分離が達成された。
【0026】
e)深冷蒸留
この選択肢では、蒸留の前に、トリチウム水をH、Tガス分子、及び該当する場合にはジュウテリウムに変換する電解工程が必要である。これらのガスはチタンベッドに貯蔵されることができる。この蒸留プロセスは24Kで行われ、そして良好な分離係数を有する、産業規模で水素同位体の濃縮と分離について実績のある方法の1つである。この種のプラントの欠点は、超極低温を維持するための高いエネルギーコストと、その一方でトリチウムの在庫量が多いことにある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明は、液体排出物及び蒸発による気相を含むガス状排出物に着目した、トリチウム放射性排出物を処理するためのこれまでのすべての方法に代わる、異なる方法を提案する。この処理は、更なる操作の単純化、低コスト化、常温での実施、及び安定した母材でのトリチウムの封じ込めを実現する。
【課題を解決するための手段】
【0028】
より具体的には、本発明は、セルロースフィラメント又は微結晶性セルロース(MCC)を吸収材として用いるトリチウムの処理方法を提供する。両製品とも、本発明に従って適切に使用された場のその有効性が証明されている。この方法は、特に液体及び気体のトリチウム放射性排出物の処理に関して、環境面での大きな利益を達成する。
【0029】
上述の製品は市販の製品であり、他の分野、例えば、接着剤、プラスチック及び複合材料、塗料及びコーティング材料、衛生及びパーソナルケア製品、食品及び飲料、医薬品及び健康製品の製造のために、何十年にも亘って使用されている。
【0030】
本発明は、非水溶性又は無視できる溶解度であるセルロースフィラメント又は微結晶性セルロースを、トリチウム及びその他の放射性同位体を含む放射性排出物(液体、気体)の処理用吸収材として使用することを提案する。
【0031】
セルロース繊維は、結晶成分と非晶質成分を含む多結晶集合体であり、すなわち、異なる非晶質領域と結晶領域を、分子構造において交互に含む。純粋なセルロースが半結晶構造であるのに対して、ヘミセルロース及びリグニンは非晶質物質である。規則正しい繊維の大きさがセルロースの品質であり、検出される最小の繊維単位の寸法は3~3.5nm、超極細繊維群の寸法は25nmである。
【0032】
セルロースは、D-グルコースがその基本単位である線状重合体で、β-(1,4)のグリコシド結合の構成を通じて連続的に結合し、セルロースの繰り返し単位であるセロビオース分子を形成している。各構造単位(β-D-グルコピラノース)には、1つの第1の基及び2つの第2の基の3つの遊離水酸基が存在する。セルロース分子は、分子間及び分子内結合を形成する強い傾向がある。これらの結合の存在は、セルロースの反応性に大きな影響を与える。分子間結合は3次構造を形成し、それは高結晶度を意味する。高結晶度領域は試薬が浸透し難く、一方で非晶構造は高反応性になりやすい。
【0033】
非晶構造及び結晶構造は、セルロースの特性及び挙動に大きな影響を与える。結晶化度、非晶構造の程度、特定の接触可能表面、及び繊維の細孔の大きさに従って、これらの特性を調節することが可能である。
【0034】
本発明の提案は、吸収材として使用されるセルロースフィラメント又は微結晶性セルロースの構造とトリチウム同位体との間での交換、特にセルロース構造を構成する水酸基との交換に基づくものであり、それは所定量の上記吸収材を使用し、以下のトリチウムが存在する形態に関係しない。
【数9】
【0035】
トリチウム及び他の放射性同位体を含有する放射性排出物(液体、気体)と接触したセルロースフィラメント又は微結晶性セルロース(非晶質又はガラス質)は、トリチウムをその分子に取り込み、ろ過(HEPA、従来のセルロースフィルター、精密ろ過及び限外ろ過、活性炭など)の手段によって溶液からの除去を可能にする。
【0036】
トリチウム化したセルロースフィラメント、又はトリチウム化した微結晶性セルロースを除去することにより、このトリチウム化した吸収材を少量の低及び中レベル放射性廃棄物として処理し、放射能が除去された処理済の流出物とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】セルロースフィラメントを吸収材として用いてのトリチウム吸収量(Bq)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
使用試験は、2つのステップで行なわれた。
【0039】
最初のステップは、使用するセルロース材料の量を決定するための予備的方法からなる。試験に関係する放射能リスクに応じた合理的な量、この場合は100mlから500mlの排出物(トリチウム水)から、溶液中のトリチウムを吸収するために必要なセルロース材料の正確な量を確定するために、異なる試料と各種量のセルロースフィラメント及び微結晶性セルロースで一連の撹拌試験を行ったところ、両吸収材で良い結果を得ることができた。
【0040】
下の表と図1のグラフに示されるように、この最初のステップでは、使用されるセルロースフィラメントの量に応じて吸収されるトリチウムの量(ベクレル-Bq-)が一様に変化せず、むしろ特定の量の吸収材でトリチウムの吸収量が驚くほど増加することが明らかになった。具体的には次のとおりである。
-トリチウム水1リットル当たり0.6~3.4グラムのセルロースフィラメントの量の使用で、2000Bqを超える。
-トリチウム水1リットル当たり0.8~2.4グラムのセルロースフィラメントの量の使用で、3000Bqを超える。
-排出物、つまりトリチウム水1リットル当たり1.1~1.6グラムのセルロースフィラメント又は微結晶性セルロースの量の使用で、4400Bq以上の最大値に達する。
【0041】
【表1】
【0042】
吸収材の量が最初に述べた範囲、すなわち排出物、つまりトリチウム水1リットル当たり0.6~3.4グラム未満である又はそれより多いと、トリチウムの吸収量は急激に減少する。
【0043】
第2のステップは、先に明らかにされたセルロースフィラメントの量を用いて、産業的な量のトリチウム化排出物を処理することを含む。通常の条件下で、100~40000Bq/グラムの放射能である排出物、つまりトリチウム水1リットル当たり0.6~3.4g、好ましくは1.1~1.6gの吸収材の量を設定した。
【0044】
本発明では、一般に原子力発電所で発生し、その処理のために適切なタンクに貯蔵される原子炉の冷却回路からの汚染水、蒸発凝縮水、洗浄水などの液体トリチウム排出物の処理と、原子力発電所のタンク又は密閉区域から生じる煙、ガス又は蒸気のろ過方法の2つの方法が提案される。
【0045】
A.- トリチウム放射性排出物の攪拌タンクでの処理であって、予備的方法で規定された量になるまで、処理温度(範囲:15℃~100℃)の所定量のトリチウム放射性排出物と、所定量のセルロースフィラメント又は微結晶性セルロースからなる吸収材とをそのタンクに取り込む。反応時間は、1~10時間、好ましくは2~5時間からなる。
【0046】
タンクの内容物の撹拌と反応の時間の後、限外ろ過膜(キャピラリー又は中空糸)を通してろ過することによって水を抽出する。使用済みの吸収材は、低及び中レベル放射性廃棄物として管理される。分離された材料は、低及び中レベル放射性廃棄物として一般的な方法に従って管理される。
【0047】
B.- 流動床での放射性排出物の再循環による処理であって、バッファタンクに収容されたトリチウム水を、吸収材を保持すると共に処理及び除染された排出物を通過させることができる孔径1~20μmのセルロース又はポリプロピレンフィルターバッグ内に入れられた、吸収材として使用されるセルロースフィラメント又は微結晶性セルロースを含有した1つ以上の容器を通って再循環させる。吸収材を使い尽くし、バッファタンクにおいて水の放射能の規定された低減を達成するのに十分な時間が経過したら、除染水を出し、最後にトリチウム化した吸収材を容器から取り出して、低及び中レベル放射性廃棄物として一般的な方法に従って管理する。最適な放射能値が得られるまで再循環が行われたら、その時点で処理水は排出され、吸収材は管理される。
【0048】
C.- トリチウムを含有する煙、ガス及び蒸気の処理であって、それは孔径1~100μmのフィルタースリーブに入れられたセルロースフィラメント又は微結晶性セルロースに上記の排出物を通し、その後にHEPAフィルターでろ過し、吸収材は、使い切ったら原子力発電所での低及び中レベル放射性廃棄物に関する一般的方法に従って廃棄されることを含む。
【0049】
本発明の本質、及び例示の好ましい実施形態を十分に説明したが、本発明の本質的特徴を変更しないことを条件に、適切な目的のために説明した要素の材料、形状、大きさ及び配置を変更することができる。
図1