(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163194
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】フロピリミジン化合物の酸付加塩の結晶形
(51)【国際特許分類】
C07D 491/048 20060101AFI20241114BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20241114BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241114BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241114BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20241114BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C07D491/048 CSP
A61K31/519
A61P35/00
A61P29/00
A61P19/02
A61P37/02
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024150788
(22)【出願日】2024-09-02
(62)【分割の表示】P 2021557870の分割
【原出願日】2020-03-20
(31)【優先権主張番号】10-2019-0037060
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】516132149
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヒ・スク・オ
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ヒュク・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ヨン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】スン・ヨン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】テ・ヒ・ハ
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、新規フロピリミジン化合物の酸付加塩、例えば、塩酸塩、メタンスルホン酸塩及びエタンスルホン酸塩の結晶形、及びそれを含む薬学的組成物を提供することである。
【解決手段】一様態は、N-(3-(2-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニルアミノ)フロ[3,2-d]ピリミジン-4-イルオキシ)フェニル)アクリルアミドの酸付加塩の結晶形、及びそれを含む薬学的組成物に係り、該結晶形は、それを有効成分として含む薬学的組成物の製造に容易に利用されうる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1の化合物の酸付加塩の、結晶形:
【化1】
【請求項2】
酸付加塩が塩酸塩である、請求項1に記載の結晶形。
【請求項3】
前記結晶形が、前記化学式1の化合物の二塩酸塩三水和物(2HCl・3H2O)結晶形であり、Cu-Kα光源で照射したとき、6.4°、7.1°、11.1°、12.8°及び21.2°の回折角(2θ±0.2°)におけるピークを含むX線粉末回折(XRPD)スペクトルを有することを特徴とする請求項2に記載の結晶形。
【請求項4】
前記結晶形が、前記化学式1の化合物の一塩酸塩二水和物(1HCl・2H2O)結晶形であり、Cu-Kα光源で照射したとき、7.0°、7.9°、15.8°、17.2°、18.6°、20.6°、21.3°及び23.2°の回折角(2θ±0.2°)におけるピークを含むX線粉末回折(XRPD)スペクトルを有することを特徴とする請求項2に記載の結晶形。
【請求項5】
前記結晶形が、前記化学式1の化合物の一塩酸塩無水物(1HCl)結晶形であり、Cu-Kα光源で照射したとき、4.9°、14.8°及び21.2°の回折角(2θ±0.2°)におけるピークを含むX線粉末回折(XRPD)スペクトルを有することを特徴とする請求項2に記載の結晶形。
【請求項6】
酸付加塩が、スルホン酸塩である、請求項1に記載の結晶形。
【請求項7】
スルホン酸塩がメタンスルホン酸塩である、請求項6に記載の結晶形。
【請求項8】
前記結晶形が、前記化学式1の化合物のメタンスルホン酸無水物(1MsOH)結晶形であり、Cu-Kα光源で照射したとき、11.8°、17.2°、19.0°、20.0°、22.8°及び24.0°の回折角(2θ±0.2°)におけるピークを含むX線粉末回折(XRPD)スペクトルを有することを特徴とする請求項7に記載の結晶形。
【請求項9】
前記結晶形が、前記化学式1の化合物のメタンスルホン酸一水和物(1MsOH・1H2O)結晶形であり、Cu-Kα光源で照射したとき、7.6°、15.2°、17.0°、18.7°、20.8°及び22.8°の回折角(2θ±0.2°)におけるピークを含むX線粉末回折(XRPD)スペクトルを有することを特徴とする請求項7に記載の結晶形。
【請求項10】
スルホン酸塩がエタンスルホン酸塩である、請求項6に記載の結晶形。
【請求項11】
前記結晶形が、前記化学式1の化合物のエタンスルホン塩無水物(1EsOH)結晶形であり、Cu-Kα光源で照射したとき、17.1°、18.6°、21.3°、22.3°、23.0°及び23.6°の回折角(2θ±0.2°)におけるピークを含むX線粉末回折(XRPD)スペクトルを有することを特徴とする請求項10に記載の結晶形。
【請求項12】
請求項1ないし11のうちいずれか1項に記載の結晶形、及び1以上の薬剤学的に許容される担体または希釈剤を含む、薬学的組成物。
【請求項13】
前記薬学的組成物が、上皮細胞成長因子受容体チロシンキナーゼ、またはその変異体によって誘発される陽性腫瘍または悪性腫瘍、炎症性疾患、あるいはリウマチ性関節炎のような自己免疫疾患の治療または予防のために使用されることを特徴とする請求項12に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌治療、及びリウマチ性関節炎のような自己免疫疾患の治療に有用な下記化学式1で表されるチロシンキナーゼ活性抑制効果を有するフロピリミジン化合物の酸付加塩の結晶形、及びそれを含む薬学的組成物に係り、さらに具体的には、N-(3-(2-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニルアミノ)フロ[3,2-d]ピリミジン-4-イルオキシ)フェニル)アクリルアミドの酸付加塩の結晶形、及びそれを含む薬学的組成物に関する:
【化1】
【背景技術】
【0002】
化合物名がN-(3-(2-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニルアミノ)フロ[3,2-d]ピリミジン-4-イルオキシ)フェニル)アクリルアミドである下記化学式1の化合物は、大韓民国登録特許第1,589,114号及び国際特許公開第2011162515号に開示されている。前記化合物は、変異性上皮細胞成長因子受容体チロシンキナーゼを選択的に抑制する活性を有することにより、陽性腫瘍または悪性腫瘍、炎症性疾患、あるいはリウマチ性関節炎のような自己免疫疾患の治療に有用である。
【化2】
【0003】
また、前記参照文献には、化学式1の化合物を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】大韓民国登録特許第1,589,114号
【特許文献2】国際特許公開第2011162515号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記参照文献において製造された前記化学式1の化合物は、一般的に、大規模の薬剤製造過程にあまり適さない形態である無定形固体として製造される。また、前記参照文献によって製造された化学式1の化合物は、水に対する溶解度が非常に低い(0.001mg/mL未満)という短所がある。
【0006】
従って、水に対する溶解度が向上しながら、薬剤剤形に対する厳格な要求条件、及びその具体的な事項に十分に適合する化学式1の化合物の塩を結晶状に製造する必要がある。
【0007】
そのために、本発明者らは、化学式1の化合物の多様な条件及び手続きにより、多様な酸と溶媒とを利用し、化学式1の化合物の酸付加塩生成いかんを探索した。また、本発明者らは、前記酸付加塩に係わる溶解度、吸湿性及び安定性のような物理化学的な物性を評価した。その結果、化学式1の化合物の酸付加塩のうち、塩酸塩、メタンスルホン酸塩及びエタンスルホン酸の結晶形が、水に対する溶解度にすぐれ、特定の保存条件を必要とせず、長期間、安定して維持されるというように、製薬学的に要求される物理化学的諸般の特性にすぐれ、それを有効成分として含む薬学的組成物の製造に容易に利用されうるということを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
従って、本発明の目的は、前記化学式1のフロピリミジン化合物の酸付加塩、例えば、塩酸塩、メタンスルホン酸塩及びエタンスルホン酸塩の結晶形、及びそれを含む薬学的組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的により、一様態は、下記化学式1の化合物の酸付加塩の結晶形を提供する:
【化3】
【0010】
一具体例において、前記化学式1の化合物の酸付加塩は、塩酸塩である。
【0011】
一具体例において、前記化学式1の化合物の酸付加塩は、メタンスルホン酸塩である。
【0012】
一具体例において、前記化学式1の化合物の酸付加塩は、エタンスルホン酸塩である。
【0013】
一具体例において、前記化学式1の化合物の酸付加塩は、塩酸塩、メタンスルホン酸塩及びエタンスルホン酸塩で構成された群のうちから選択された1以上でもある。
【0014】
一具体例において、前記化学式1の化合物の酸付加塩は、無水物または水和物の形態でもある。例えば、前記化学式1の化合物の酸付加塩は、一水和物、二水和物または三水和物でもあるが、それらに制限されるものではない。
【0015】
前記結晶形の具体的な例は、下記に示した通りである:
Cu-Kα光源で照射したとき、6.4°、7.1°、12.8°及び21.2°の回折角(2θ±0.2°)におけるピークを含むX線粉末回折(XRPD)スペクトルを有する前記化学式1の化合物の二塩酸塩三水和物(2HCl・3H2O)結晶形;
Cu-Kα光源で照射したとき、7.0°、7.9°、15.8°、17.2°、18.6°、20.6°、21.3°及び23.2°の回折角(2θ±0.2°)におけるピークを含むX線粉末回折(XRPD)スペクトルを有する前記化学式1の化合物の一塩酸塩二水和物(1HCl・2H2O)結晶形;
Cu-Kα光源で照射したとき、4.9°、14.8°及び21.2°の回折角(2θ±0.2°)におけるピークを含むX線粉末回折(XRPD)スペクトルを有する前記化学式1の化合物の一塩酸塩無水物(1HCl・2H2O)結晶形。
Cu-Kα光源で照射したとき、11.8°、17.2°、19.0°、20.0°、22.8°及び24.0°の回折角(2θ±0.2°)におけるピークを含むX線粉末回折(XRPD)スペクトルを有する前記化学式1の化合物のメタンスルホン酸無水物(1MsOH)結晶形;
Cu-Kα光源で照射したとき、7.6°、15.2°、17.0°、18.7°、20.8及び22.8°の回折角(2θ±0.2°)におけるピークを含むX線粉末回折(XRPD)スペクトルを有する前記化学式1の化合物のメタンスルホン酸一水和物(1MsOH・1H2O)結晶形;及び
Cu-Kα光源で照射したとき、17.1°、18.6°、21.3°、22.3°、23.0°及び23.6°の回折角(2θ±0.2°)におけるピークを含むX線粉末回折(XRPD)スペクトルを有する前記化学式1の化合物のエタンスルホン塩無水物(1EsOH)結晶形。
【0016】
一具体例において、前記結晶形は、それぞれ実質的に純粋な形態である。
【0017】
本明細書で使用する用語「実質的に純粋」は、少なくとも、95%純粋、望ましくは、99%純粋なものを意味し、95%純粋なものは、5%以下、99%純粋なものは、1%以下の化学式1の化合物が、任意の他形態(その他結晶形、非結晶形など)で存在することを意味する。
【0018】
他の様態は、前記化学式1の化合物の結晶形のうち1以上、及び1以上の薬学的に許容される担体または希釈剤を含む薬学的組成物を提供する。
【0019】
前記薬学的組成物は、上皮細胞成長因子受容体チロシンキナーゼ、またはその変異体によって誘発される陽性腫瘍または悪性腫瘍、炎症性疾患、あるいはリウマチ性関節炎のような自己免疫疾患の治療のためにも使用される。
【発明の効果】
【0020】
一様態による化学式1の化合物の結晶形、例えば、塩酸塩、メタンスルホン酸塩及びエタンスルホン酸塩は、物理化学的諸般の特性、すなわち、水に対する溶解度、吸湿度、化学的安定性などの面においてすぐれ、それを有効成分として含む薬学的組成物の製造にも容易に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】実施例による化学式1の化合物の酸付加塩の結晶形のX線粉末回折(XRPD)スペクトルを示した図である。
【
図1B】実施例による化学式1の化合物の酸付加塩の結晶形のX線粉末回折(XRPD)スペクトルを示した図である。
【
図1C】実施例による化学式1の化合物の酸付加塩の結晶形のX線粉末回折(XRPD)スペクトルを示した図である。
【
図1D】実施例による化学式1の化合物の酸付加塩の結晶形のX線粉末回折(XRPD)スペクトルを示した図である。
【
図1E】実施例による化学式1の化合物の酸付加塩の結晶形のX線粉末回折(XRPD)スペクトルを示した図である。
【
図1F】実施例による化学式1の化合物の酸付加塩の結晶形のX線粉末回折(XRPD)スペクトルを示した図である。
【
図2A】実施例による化学式1の化合物の酸付加塩の結晶形の示差走査熱量(DSC)グラフである。
【
図2B】実施例による化学式1の化合物の酸付加塩の結晶形の示差走査熱量(DSC)グラフである。
【
図2C】実施例による化学式1の化合物の酸付加塩の結晶形の示差走査熱量(DSC)グラフである。
【
図2D】実施例による化学式1の化合物の酸付加塩の結晶形の示差走査熱量(DSC)グラフである。
【
図2E】実施例による化学式1の化合物の酸付加塩の結晶形の示差走査熱量(DSC)グラフである。
【
図2F】実施例による化学式1の化合物の酸付加塩の結晶形の示差走査熱量(DSC)グラフである。
【
図3A】実施例による化学式1の化合物の酸付加塩の結晶形の動的蒸気吸着(DVS)グラフである。
【
図3B】実施例による化学式1の化合物の酸付加塩の結晶形の動的蒸気吸着(DVS)グラフである。
【
図3C】実施例による化学式1の化合物の酸付加塩の結晶形の動的蒸気吸着(DVS)グラフである。
【
図3D】実施例による化学式1の化合物の酸付加塩の結晶形の動的蒸気吸着(DVS)グラフである。
【
図3E】実施例による化学式1の化合物の酸付加塩の結晶形の動的蒸気吸着(DVS)グラフである。
【
図3F】実施例による化学式1の化合物の酸付加塩の結晶形の動的蒸気吸着(DVS)グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書で特別に定義されない用語は、記述及び文脈に照らし、当業者によって付与される意味を有する。しかし、取り立てて具体化されない限り、本明細書の全般にわたり、下記用語は、下記に指示される意味を有する:
【0023】
用語「約」は、所定の値または範囲の5%以内であり、望ましくは、1%ないし2%以内を意味する。例えば、「約10%」は、9.5%ないし10.5%、望ましくは、9.8%ないし10.2%を意味する。他の例を挙げれば、「約100℃」は、95℃ないし105℃、望ましくは、98℃ないし102℃を意味する。
【0024】
取り立てて明示されない限り、当業者であるならば、本発明で報告されたX線粉末回折研究からのピーク値が、典型的に、当該分野において、観察可能な実験誤差と関連するということを理解するであろう。具体的には、該ピークは、本明細書に報告された値の±0.5°内に位置すると解釈される。さらに具体的には、該ピークは、本明細書に報告された値の±0.2°内に位置すると解釈される。
【0025】
用語「酸付加塩」は、化学式1の化合物との酸塩基反応によって塩を形成することができる無機酸、有機酸との塩を意味する。該酸付加塩の形成に使用する無機酸の例としては、塩酸塩、臭素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩などを挙げることができ、有機酸の例としては、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、シュウ酸、酒石酸、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸及び(+)-カンファー-10-スルホン酸塩などを意味する。
【0026】
化学式1の化合物の塩酸塩、メタンスルホン酸塩及びエタンスルホン酸塩、及びその結晶形
下記化学式1の化合物、すなわち、N-(3-(2-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニルアミノ)フロ[3,2-d]ピリミジン-4-イルオキシ)フェニル)アクリルアミドの塩酸塩、メタンスルホン酸塩及びエタンスルホン酸塩、及びその結晶形が提供される:
【化4】
【0027】
前記化学式1の化合物は、大韓民国登録特許第1,589,114号及び国際特許公開第2011162515号に記述された一般手続きによっても製造され、それら文献は、その全文が本発明に参照により援用される。
【0028】
前記文献に記載された化学式1の化合物は、無定形であり、水に対する溶解度が、0.001mg/mL未満の溶解度を有する難溶性(poorly soluble)化合物である。
【0029】
一般的に、遊離塩基(free base)の塩形態への転換は、水難溶性薬物物質可溶化の一助となることが知られている。しかし、そのような塩が、製薬学的に要求される特定結晶形製造の再現性、高結晶化度、結晶形の安定性、化学的安定性、非吸湿性のような物理化学的諸般の性質を備えなければならない。
【0030】
化学式1の化合物の適する塩形態を選別するために、多様な条件及び手続きにより、多様な酸と溶媒とを利用し、化学式1の化合物の塩生成いかんを探索し、生成された塩の溶解度、吸湿性及び安定性のような物理化学的な物性を評価した。そのように製造された塩のうち、化学式1の化合物の塩酸塩、メタンスルホン酸塩及びエタンスルホン酸塩の結晶形が、製薬学的に要求される特定結晶形製造の再現性、純度向上性、高結晶化度、結晶形の安定性、化学的安定性、非吸湿性のような物理化学的諸般の性質の側面で最もすぐれていた。
【0031】
化学式1の化合物の塩酸塩、メタンスルホン酸塩及びエタンスルホン酸塩の結晶形
前記化学式1の化合物の塩は、結晶形または無定形であるか、またはそれらの混合物にも製造されるが、結晶形であることが望ましい。化学式1の化合物の塩酸塩、メタンスルホン酸塩及びエタンスルホン酸塩の結晶形は、安定性にすぐれ、製剤化が容易である物理化学的特性を有する点で望ましい。
【0032】
本発明によれば、前記化学式1の化合物は、多様な結晶性酸付加塩の形態、例えば、その化学式1の化合物の二塩酸塩三水和物(2HCl・3H2O)結晶形、一塩酸塩二水和物(1HCl・2H2O)結晶形、一塩酸塩無水物(1HCl)結晶形、メタンスルホン酸塩無水物(1MsOH)結晶形、メタンスルホン酸塩一水和物(1MsOH・1H2O)結晶形、エタンスルホン酸塩無水物(1EsOH)結晶形が可能である。
【0033】
下記試験例1で調べた結果、前記結晶性酸付加塩において、二塩酸塩三水和物(2HCl・3H2O)、メタンスルホン酸塩無水物(1MsOH)結晶形、メタンスルホン酸塩一水和物(1MsOH・1H2O)結晶形、エタンスルホン酸塩無水物(1EsOH)結晶形が水に対する溶解度側面ですぐれており、エタンスルホン酸塩無水物(1EsOH)結晶形が溶解度において最もすぐれていた。前述の酸付加塩は、非吸湿性/非脱湿性、安定性の側面で有利であるので、薬学的組成物の有効成分として有用な物質でもある。
【0034】
以下、前述の本発明によるそれぞれの結晶形につき、さらに具体的に説明する。
【0035】
一具体例により、本発明は、前記化学式1の化合物の二塩酸塩三水和物(2HCl・3H2O)結晶形を提供し、前記結晶形は、Cu-Kα光源で照射したとき、6.4°、7.1°、11.1°、12.8°及び21.2°の回折角(2θ±0.2°)におけるピークを含むX線粉末回折(XRPD)スペクトルを有する。さらに具体的には、前記化学式1の化合物の二塩酸塩三水和物(2HCl・3H2O)結晶形は、Cu-Kα光源で照射したとき、6.4°、7.1°、12.8°、15.6°、19.6°、21.2°、27.9及び28.3°の回折角(2θ±0.2°)におけるピークを含むXRPDスペクトルを有することができる。それらピークは、相対強度(relative intensity)が約10%以上であるピークでもある。
【0036】
前記化学式1の化合物の二塩酸塩三水和物(2HCl・3H2O)結晶形は、約8.5%ないし9.5%の水分含量(理論値水分含量9.04%)、及び約210℃ないし220℃の融点を有することができる。前記結晶形は、DSC(10℃/分)において、約75℃ないし80℃と、約105℃ないし110℃との近辺において、2個の吸熱ピークを有することができ、該吸熱ピークは、三水和物の脱水点を意味する。約200℃ないし220℃で吸熱ピークを有することができ、それは、溶融点を意味する。約240℃ないし250℃で発熱ピークを有することができ、それは熱分解(decomposition)を意味する。前記結晶形のDVS(dynamic vapor sorption)において、相対湿度が10%ないし20%の区間においては、水分吸湿が起こり、相対湿度が30%ないし90%の区間の吸湿度が、非常に低く測定されうる。
【0037】
一具体例により、本発明は、前記化学式1の化合物の一塩酸塩二水和物(1HCl・2H2O)結晶形を提供し、前記結晶形は、Cu-Kα光源で照射したとき、7.0°、7.9°、15.8°、17.2°、18.6°、20.6°、21.3°及び23.2°の回折角(2θ±0.2°)におけるピークを含むX線粉末回折(XRPD)スペクトルを有する。さらに具体的には、前記化学式1の化合物の一塩酸塩二水和物(1HCl・2H2O)結晶形は、Cu-Kα光源で照射したとき、7.0°、7.9°、12.6°、15.8°、17.2°、18.6°、20.2°、20.6°、21.0°、21.3°、23.2°、26.9及び28.9°の回折角(2θ±0.2°)におけるピークを含むXRPDスペクトルを有することができ、それらピークは、相対強度が約25%以上であるピークでもある。
【0038】
前記化学式1の化合物の一塩酸塩二水和物(1HCl・2H2O)結晶形は、DSC(10℃/分)において、約110℃ないし140℃近辺において、吸熱ピークを有することができ、該吸熱ピークは、二水和物の脱水点を意味する。約160℃ないし170℃で吸熱ピークを有することができ、それは、溶融点を意味する。前記結晶形は、約6.5%ないし7.5%の水分含量(理論値水分含量6.63%)、及び約150℃ないし170℃の融点を有することができる。前記結晶形は、DVSにおいて、相対湿度10%ないし90%の区間の吸湿度が非常に低く測定されうる。
【0039】
一具体例により、本発明は、前記化学式1の化合物の一塩酸塩無水物(1HCl)結晶形を提供し、前記結晶形は、Cu-Kα光源で照射したとき、4.9°、14.8°及び21.2°の回折角(2θ±0.2)におけるピークを含むX線粉末回折(XRPD)スペクトルを有する。さらに具体的には、前記化学式1の化合物の一塩酸塩無水物(1HCl)結晶形は、Cu-Kα光源で照射したとき、4.9°、12.2°、14.8°、21.2°、23.1°及び24.9°の回折角(2θ±0.2)におけるピークを含むXRPDスペクトルを有することができ、それらピークは、相対強度が約5%以上であるピークでもある。
【0040】
前記化学式1の化合物の一塩酸塩無水物(1HCl)結晶形は、DSC(10℃/分)において、約250℃ないし270℃で吸熱ピークを有することができ、それは、溶融点を意味する。前記結晶形は、約0.1%ないし1.0%の水分含量(理論値水分含量0%)、及び約255℃ないし270℃の融点を有することができる。前記結晶形は、DVSにおいて、相対湿度10%ないし90%の区間の吸湿度が非常に低く測定されうる。
【0041】
一具体例により、本発明は、前記化学式1の化合物のメタンスルホン酸無水物(1MsOH)結晶形を提供し、前記結晶形は、Cu-Kα光源で照射したとき、11.8°、17.2°、19.0°、20.0°、22.8°及び24.0°の回折角(2θ±0.2°)におけるピークを含むX線粉末回折(XRPD)スペクトルを有する。さらに具体的には、前記化学式1の化合物のメタンスルホン酸無水物(1MsOH)結晶形は、Cu-Kα光源で照射したとき、10.7°、11.3°、11.8°、12.2°、15.0°、17.2°、17.6°、18.6°、19.0°、20.0°、22.3°、22.8°、23.3°、23.7°及び24.0°の回折角(2θ±0.2°)におけるピークを含むXRPDスペクトルを有することができる。それらピークは、相対強度が約15%以上であるピークでもある。
【0042】
前記化学式1の化合物のメタンスルホン酸無水物(1MsOH)結晶形は、約0.5%ないし1.5%の水分含量(理論値水分含量0%)、及び約235℃ないし245℃の融点を有することができる。前記結晶形は、DSC(10℃/分)において、約235℃ないし240℃で吸熱ピークを有することができ、それは、溶融点を意味する。前記結晶形のDVSにおいて、相対湿度が10%ないし90%の区間においては、2%ないし3%の水分吸湿が測定されうる。
【0043】
一具体例により、本発明は、前記化学式1の化合物のメタンスルホン酸一水和物(1MsOH・1H2O)結晶形を提供し、前記結晶形は、Cu-Kα光源で照射したとき、7.6°、15.2°、17.0°、18.7°、20.8°及び22.8°の回折角(2θ±0.2°)におけるピークを含むX線粉末回折(XRPD)スペクトルを有する。さらに具体的には、前記化学式1の化合物のメタンスルホン酸一水和物(1MsOH・1H2O)結晶形は、Cu-Kα光源で照射したとき、7.6°、8.8°、15.2°、17.0°、17.8°、18.4°、18.7°、20.1°、20.8°、21.0°、22.1°、22.8°、24.6°、24.9°、25.4°、26.1°、26.5°、27.0°及び28.4°の回折角(2θ±0.2°)におけるピークを含むXRPDスペクトルを有することができ、それらピークは、相対強度が約15%以上であるピークでもある。
【0044】
前記化学式1の化合物のメタンスルホン酸一水和物(1MsOH・1H2O)結晶形は、DSC(10℃/分)において、約90℃ないし95℃近辺において、吸熱ピークを有することができ、該吸熱ピークは、一水和物の脱水点を意味する。約205℃ないし210℃で吸熱ピークを有することができ、それは、溶融点を意味する。前記結晶形は、約2.5%ないし3.5%の水分含量(理論値水分含量3.08%)、及び約200℃ないし210℃の融点を有することができる。前記結晶形は、DVSにおいて、相対湿度10%ないし90%の区間の吸湿度が非常に低く測定されうる。
【0045】
一具体例により、本発明は、前記化学式1の化合物のエタンスルホン塩無水物(1EsOH)結晶形を提供し、前記結晶形は、Cu-Kα光源で照射したとき、17.1°、18.6°、21.3°、22.3°、23.0°及び23.6°の回折角(2θ±0.2)におけるピークを含むX線粉末回折(XRPD)スペクトルを有する。さらに具体的には、前記化学式1の化合物のエタンスルホン塩無水物(1EsOH)結晶形は、Cu-Kα光源で照射したとき、7.1°、11.1°、11.7°、14.2°、17.1°、18.1°、18.6°、19.8°、20.0°、21.3°、22.3°、23.0°及び23.6°の回折角(2θ±0.2)におけるピークを含むXRPDスペクトルを有することができ、それらピークは、相対強度が約15%以上であるピークでもある。
【0046】
前記化学式1の化合物のエタンスルホン塩無水物(1EsOH)結晶形は、DSC(10℃/分)において、約230℃ないし240℃で吸熱ピークを有することができ、それは、溶融点を意味する。前記結晶形は、約0.1%ないし1.0%の水分含量(理論値水分含量0%)、及び約230℃ないし240℃の融点を有することができる。前記結晶形は、DVSにおいて、相対湿度10%ないし90%の区間の吸湿度が1%未満と、非常に低く測定されうる。
【0047】
薬学的組成物
大韓民国登録特許第1,589,114号及び国際特許公開第2011162515号で開示されているように、前記化学式1の化合物は、上皮細胞成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ、またはその変異体によって誘発される癌細胞の成長、及び薬物耐性に対し、選択的であって効果的に抑制する活性が立証された。
【0048】
そのような観点から見るとき、前記化学式1の化合物の結晶状の塩酸塩、メタンスルホン酸塩及びエタンスルホン酸塩は、上皮細胞成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ、またはその変異体によって誘発される陽性腫瘍または悪性腫瘍、炎症性疾患、あるいはリウマチ性関節炎のような自己免疫疾患の治療用または予防用の薬学的組成物を製造するためにも使用される。
【0049】
それにより、本発明は、前記化学式1の化合物の結晶状の塩酸塩、メタンスルホン酸塩及びエタンスルホン酸塩、及び1以上の薬学的に許容される担体または希釈剤を含む薬学的組成物を提供する。前記薬学的組成物は、上皮細胞成長因子受容体チロシンキナーゼ、またはその変異体によって誘発される癌、腫瘍、炎症性疾患、またはリウマチ性関節炎のような自己免疫疾患の治療のためにも使用される。
【0050】
前記化学式1の化合物の結晶状の塩酸塩、メタンスルホン酸塩及びエタンスルホン酸塩、またはそれを含む薬学的組成物の投与量は、処理される対象、疾病または状態の深刻度、投与の速度、及び処方医者の判断によっても異なるが、一般的に、化学式1の化合物を基準に、人に対し、活性成分として、体重70kg基準時、化学式1の化合物の遊離塩基として、10mgないし2,000mg、望ましくは、50mgないし1,000mgの量で、1日に1回ないし4回、またはオン/オフ(on/off)スケジュールで、経口または非経口の経路を介しても投与される。一部の場合において、前述の範囲より少ない投与量がさらに適し、また有害な副作用を起こさずにも、さらに多くの投与量が使用されもし、さらに多くの投与量の場合は、1日にわたり、数回の少ない投与量に分配される。
【0051】
本発明による薬学的組成物は、一般的な方法によって製剤化することができ、錠剤、丸剤、散剤、カプセル剤、シロップ、エマルジョン、マイクロエマルジョンのような多様な経口投与形態、または筋肉内投与、静脈内投与または皮下投与のような非経口投与形態にも製造される。
【0052】
前記薬学的組成物は、任意の一般的な無毒性の薬学的に許容される担体、希釈剤、補助剤、賦形剤などを含んでもよい。本発明による薬学的組成物が、経口剤形の形態に製造される場合、使用される担体の例としては、セルロース、ケイ酸カルシウム、とうもろこし澱粉、ラクトース、スクロース、デキストロース、リン酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ゼラチン、タルク、界面活性剤、懸濁液剤、乳化剤、希釈剤などを挙げることができる。また、前記薬学的組成物が経口剤形の形態に製造される場合、使用される希釈剤の例としては、ラクトース、マンニトール、糖、微細結晶性セルロース及びセルロース誘導体、並びに乾燥したとうもろこし澱粉などを挙げることができる。本発明による薬学的組成物が注射剤の形態に製造される場合、前記担体としては、水、食塩水、ブドウ糖水溶液、類似糖水溶液、アルコール、グリコール、エーテル(例:ポリエチレングリコール400)、オイル、脂肪酸、脂肪酸エステル、グリセリド、界面活性剤、懸濁液剤、乳化剤などを使用することができる。
【0053】
また、前記化学式1の化合物の結晶形、または薬学的組成物を個体に治療学的に有効な量で投与する段階を含む、疾患を治療する方法が提供される。前記疾患は、陽性腫瘍または悪性腫瘍、炎症性疾患またはリウマチ性関節のような自己免疫疾患でもある。
【0054】
以下、本発明につき、具体的な実施例によって説明する。ただし、以下の実施例は、本発明を例示するためのものであるのみ、本発明の範囲は、それらに限定されるものではない。
【実施例0055】
分析機器及び測定方法
1.X線粉末回折(XRPD:X ray powder diffraction)
X線粉末回折分光(XRPD)分析は、サンプルを3°2θから40°2θまで、D8 Advance(Bruker ASX、ドイツ)分析機で行った。試料の量が100mg未満である場合、約5mgないし10mgのサンプルを、サンプルホルダにフィッティングされているガラススライド上にゆるやかに圧着させた。試料の量が100mg超過である場合、サンプル表面が平滑であり、サンプルホルダレベル真上になるように、約100mgのサンプルをプラスチックサンプルホルダにゆるやかに圧着させた。
測定は、次のように行った:
アノード材料(Ka):Cu Ka(1.54056Å)
スキャン範囲(scan range):3°ないし40°
Geneator setting:100mA、40.0kV
スキャン速度(scan speed):1sec/step
発散スリットサイズ(diver slit):0.3度
反スキャッタスリット(anti-scatter slit):0.3度
温度(temperature):20℃
ステップサイズ(step size):0.02 deg 2θ
回転(rotating):使用
角度計半径(goniometer radius):435mm
【0056】
2.示差走査熱量測定法(DSC)
示差走査熱量測定法(DSC)分析は、30℃ないし350℃において、STA-1000(Scinco、韓国)分析機で行った。5mgないし10mgの試料を、アルミニウムDSCパンに秤量付加し、穿孔されたアルミニウム蓋で非密閉式に密封した後、該試料を10℃/分のスキャン速度で、30℃から350℃まで加熱して生成された熱流反応(DSC)をモニタリングした。
【0057】
3.動的蒸気吸着(DVS)
動的蒸気吸着(DVS)分析は、25℃、相対湿度0%ないし90%において、DVS advantage(surface measurement system、英国)分析機で行った。10mgの試料を、ワイヤメッシュ蒸気収着バランスパンに配し、表面測定システム(surface measurement systems)によるDVS-advantage動的蒸気吸着バランスに付着させた。安定した重量が達成されるまで(99.5%段階完了)、試料を各段階に維持させながら、試料を10%増分で、10%ないし90%相対湿度(RH)のランピングプロフィールに適用させた。吸着サイクルを完了した後、試料を、同一過程を使用して乾燥させるが、0%以下の相対湿度に維持させた。吸着(adsorption)/脱着(desorption)サイクル(3回反復)間の重量変化を記録し、試料の吸湿性を測定した。
【0058】
4.高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)
高性能液体クロマトグラフィ(HPLC:high performance liquid chromatography)分析は、安定性試験のような、純度分析及び含量分析を目的に、Agilent 1100/1200 series HPLC Systems(Agilent、米国)分析機で行い、HPLCの分析条件は、それぞれ下記の通りである。
純度分析及び含量分析の条件:化学式1のフロピリミジン化合物
カラム:Hydrosphere C18(YMC)、5μm(150mm×4.6mm)
カラム温度:30℃
検出器:紫外部吸光光度計
検出波長:254nm
流速:1.0mL/分
分析時間:35分
溶離液:NaClO4-NaH2PO4-リン酸緩衝溶液(pH2.5±0.1)/CH3CN=65/35(v/v%)
【0059】
5.イオンクロマトグラフィ(IC)
イオンクロマトグラフィ(IC:ion chromatography)分析は、塩酸塩の塩酸含量分析を目的に、Thermo Fisher Scientific ICS-2500 series IC systems(Thermo Fisher Scientific、米国)分析機で行い、IC分析条件は、それぞれ下記の通りである。
含量分析条件:化学式1のフロピリミジン化合物
カラム:IonPac AS19(Dionex)、(25mm×4mm)、ガード(50mm×mm)
カラム温度:30℃
検出器:電気伝導度検出器(CD)
サプレッサ:ASRS 4mm、電流40mA
流速:1.0mL/分
分析時間:30分
溶離液:10mM水酸化カリウム溶液
【0060】
6.水分測定
水分測定は、795KFT Titrino(Metrohm、スイス)カール・フィッシャー水分測定器を利用して測定した。
【0061】
7.融点測定
融点測定はIA9200(Electrothermal、英国)融点測定器を利用して測定した。
【0062】
実施例:化学式1の化合物の酸付加塩の結晶形の製造及び分析
【0063】
実施例1.化学式1の化合物の二塩酸塩三水和物(2HCl・3H
2
O)結晶形の製造
本明細書に引用された大韓民国登録特許第1,589,114号及び国際特許公開第2011162515号の方法、またはそれと類似した方法によって製造した化学式1の化合物690g(1.47mol)を、80%のイソプロパノール水溶液(イソプロパノール/水=8/2)6,900mLに添加した。反応液に、濃塩酸240mL(2.93mol)を加えた後、常温で12時間撹拌した。該反応液を10℃に冷却し、沈澱固体を濾過した。80%のイソプロパノール水溶液(イソプロパノール/水=8/2)690mLで洗浄した後で乾燥させ、650gの標題化合物(収率:82.0%)を得た。
水分:8.8%(三水和物理論値:9.04%)
イオンクロマトグラフィ:13.6%(二塩酸塩理論値:13.4%)
【0064】
特性分析
前記実施例1で製造された結晶形のXRPD分析、DSC分析及びDVS分析の結果を、
図1A、
図2A及び
図3Aにそれぞれ示した。
前記結晶形のXRPDスペクトルにおいて、相対強度(I/I
o)が3%以上であるピークを、下記表1に記載した。I/I
oの比率が10%以上であるピークの場合、6.4°、7.1°、12.8°、15.6°、19.6°、21.2°、27.9及び28.3°の回折角(2θ±0.2°)で示された。
【0065】
【0066】
前記結晶形のDSC(10℃/分)において、約58.7℃を開始点にし、最低点が約77.4℃及び約109.4℃である吸熱ピークを示し、約200.1℃及び約218.7℃で吸熱ピークを示し、約250℃で発熱ピークを示した。前記DSCにおける約77.4℃及び約109.4℃の吸熱ピークは、二塩酸塩三水和物結晶形の脱水点を意味し、約200.08℃と約218.69との吸熱ピークは、溶融点を意味し、約250℃の発熱ピークは、熱分解を意味する。
【0067】
前記結晶形は、カール・フィッシャー水分測定器で、約8.8%の水分含量(理論値水分含量9.04%)を示し、約210℃ないし218℃の融点を示した。
【0068】
前記結晶形のDVSにおいて、相対湿度が0%ないし20%の区間においては、水分吸湿が起こるが、相対湿度が30%以上の区間において、水分吸湿程度が非常に低い。前記結晶形は、長期保存条件(例:25℃の温度、及び60%の相対湿度)、加速条件(例:40℃の温度、及び75%の相対湿度)及び苛酷条件(例:40℃の温度、及び75%の相対湿度)において、十分に安定していた。
【0069】
実施例2.化学式1の化合物の一塩酸塩二水和物(1HCl・2H
2
O)結晶形の製造
実施例2.1.化学式1の化合物二塩酸塩三水和物(2HCl・3H
2
O)からの製造
化学式1の化合物二塩酸塩三水和物(2HCl・3H2O)460g(0.85mol)を、50%のエタノール水溶液(エタノール/水=5/5)4,600mLに添加した。反応液を、40℃ないし45℃に昇温させ、水460mLに、水酸化ナトリウム67.7g(1.69mol)を溶解させた水溶液を加えた後、40℃ないし45℃で30分撹拌した。該反応液に、濃塩酸89.7mL(1.02mol)を加えた後、40℃ないし45℃で1時間撹拌した。該反応液を、20℃ないし25℃に徐々に冷却し、20℃ないし25℃で12時間撹拌した。沈澱固体を濾過し、冷却させた50%のエタノール水溶液(エタノール/水=5/5)460mLで洗浄した後で乾燥させ、398gの標題化合物(収率:87.0%)を得た。
水分:7.5%(二水和物理論値:6.63%)
イオンクロマトグラフィ:7.4%(一塩酸塩理論値:7.2%)
【0070】
実施例2.2.化学式1の化合物からの製造
化学式1の化合物53g(0.11mol)を、80%のメタノール水溶液(メタノール/水=8/2)530mLに添加した。反応液に、濃塩酸10.9mL(0.12mol)を加えた後、20℃ないし25℃で12時間撹拌した。沈澱固体を濾過し、80%のメタノール水溶液(メタノール/水=8/2)53mLで洗浄した後、50℃で乾燥させ、49gの標題化合物(収率:80.0%)を得た。
水分:6.2%(二水和物理論値:6.63%)
イオンクロマトグラフィ:7.0%(一塩酸塩理論値:7.2%)
【0071】
特性分析
前記実施例2で製造された結晶形のXRPD分析、DSC分析及びDVS分析の結果を、
図1Bb、
図2B及び
図3Bにそれぞれ示した。
前記結晶形のXRPDスペクトルにおいて、相対強度(I/I
o)が5%以上であるピークを下記表2に記載した。I/I
oの比率が10%以上であるピークの場合、7.0°、7.9°、12.6°、13.4°、15.5°、15.8°、17.2°、18.2°、18.6°、19.1°、20.2°、20.6°、21.0°、21.3°、22.1°、23.2°、23.8°、24.1°、24.8°、25.0°、25.3°、25.9°、26.9°、28.1°、28.9°、30.1°、30.7°、31.2°、32.2及び33.9°の回折角(2θ±0.2°)で示された。
【0072】
【0073】
前記結晶形のDSC(10℃/分)において、約115.0℃及び135.8℃で吸熱ピークを示し、約165.1℃で吸熱ピークを示した。DSCにおける約115.0℃及び135.8℃の吸熱ピークは、一塩酸塩二水和物結晶形の脱水点を意味し、約165.1℃の吸熱ピークは、溶融点を意味する。
前記結晶形は、カール・フィッシャー水分測定器で、約7.5%の水分含量(理論値水分含量6.63%)を示し、約154℃ないし165℃の融点を示した。
前記結晶形のDVSにおいて、相対湿度が10%ないし90%の区間において、水分吸湿程度が約0.8%と低く測定された。前記結晶形は、長期保存条件(例:25℃の温度、及び60%の相対湿度)及び加速条件(例:40℃の温度、及び75%の相対湿度)において、十分に安定していた。
【0074】
実施例3.化学式1の化合物の一塩酸塩無水物(1HCl・anhydrate)結晶形の製造
実施例3.1.化学式1の化合物二塩酸塩三水和物(2HCl・3H
2
O)からの製造
化学式1の化合物二塩酸塩三水和物(2HCl・3H2O)70gを水2,100mLに添加した。反応液を常温で2時間撹拌した後、沈澱固体を濾過した。水70mLで洗浄した後で乾燥させ、25gの標題化合物(収率:35.7%)を得た。
水分:0.3%
イオンクロマトグラフィ:7.1%(一塩酸塩理論値:7.2%)
【0075】
実施例3.2.化学式1の化合物からの製造
化学式1の化合物53g(0.11mol)をメタノール530mLに添加した。反応液に濃塩酸10.9mL(0.12mol)を加えた後、20℃ないし25℃で12時間撹拌した。沈澱固体を濾過し、メタノール53mLで洗浄した後、50℃で乾燥させ、46gの標題化合物(収率:81.0%)を得た。
水分:0.4%
イオンクロマトグラフィ:7.2%(一塩酸塩理論値:7.2%)
【0076】
特性分析
前記実施例3で製造された結晶形のXRPD分析、DSC分析及びDVS分析の結果を、
図1C、
図2C及び
図3Cにそれぞれ示した。
前記結晶形のXRPDスペクトルにおいて、相対強度(I/I
o)が2%以上であるピークを下記表3に記載した。I/I
oの比率が5%以上であるピークの場合、4.9°、12.2°、14.8°、21.2°、23.1°及び24.9°の回折角(2θ±0.2°)で示された。
【0077】
【0078】
前記結晶形のDSC(10℃/分)において、約264.2℃で吸熱ピークを示した。DSCにおける約264.2℃の吸熱ピークは、溶融点を意味する。
【0079】
前記結晶形は、カール・フィッシャー水分測定器で、約0.3%の水分含量を示し、約259ないし264℃の融点を示した。
【0080】
前記結晶形のDVSにおいて、相対湿度が10%ないし90%の区間において、水分吸湿程度が約1%と低く測定された。前記結晶形は、長期保存条件(例:25℃の温度、及び60%の相対湿度)及び加速条件(例:40℃の温度、及び75%の相対湿度)において、十分に安定していた。
【0081】
実施例4.化学式1の化合物のメタンスルホン酸塩無水物(mesylate・anhydrate)の製造
化学式1の化合物10g(21.26mmol)をエタノール100mLに添加した。反応液にメタンスルホン酸1.52mL(23.38mmol)を滴加し、20℃ないし25℃で12時間撹拌した後、沈澱固体を濾過した。前記濾過物をエタノール10mLで洗浄し、50℃で乾燥させ、10gの標題化合物(収率:83.0%)を得た。
水分:1.0%
【0082】
特性分析
前記実施例4で製造された化学式1の化合物のメタンスルホン酸塩無水物(MsOH・anhydrate)の結晶形のXRPD分析、DSC分析及びDVS分析の結果を、
図1D、
図2D及び
図3Dにそれぞれ示した。
前記結晶形のXRPDスペクトルにおいて、相対強度(I/I
o)が5%以上であるピークを下記表4に記載した。I/I
oの比率が10%以上であるピークの場合、7.1°、10.7°、11.3°、11.8°、12.2°、14.2°、15.0°、17.2°、17.6°、18.1°、18.6°、19.0°、20.0°、21.4°、22.3°、22.8°、23.3°、23.7°、24.0°、24.7°、27.5°、27.7°及び30.3°の回折角(2θ±0.2°)で示された。
【0083】
【0084】
前記結晶形のDSC(10℃/分)において、約242.5℃で吸熱ピークを示した。前記DSCにおける約242.5℃の吸熱ピークは、溶融点を意味する。
【0085】
前記結晶形は、カール・フィッシャー水分測定器で、約1.0%の水分含量を示し、約237ないし242℃の融点を示した。
【0086】
前記結晶形のDVSにおいて、相対湿度が10%ないし90%の区間において、水分吸湿程度が約2%と低く測定された。前記結晶形は、長期保存条件(例:25℃の温度、及び60%の相対湿度)及び加速条件(例:40℃の温度、及び75%の相対湿度)において、十分に安定していた。
【0087】
実施例5.化学式1の化合物のメタンスルホン酸塩一水和物(mesylate・1H
2
O)の製造
化学式1の化合物10g(21.26mmol)を90%のエタノール水溶液(エタノール/水=9/1)100mLに添加した。反応液にメタンスルホン酸1.52mL(23.38mmol)を滴加し、20℃ないし25℃で12時間撹拌した後、沈澱固体を濾過した。前記濾過物をエタノール10mLで洗浄し、50℃で乾燥させ、10.9gの標題化合物(収率:91.0%)を得た。
水分:3.1%(一水和物理論値:3.08%)
【0088】
特性分析
前記実施例5で製造された化学式1の化合物のメタンスルホン酸塩一水和物(MsOH・1H
2O)の結晶形のXRPD分析、DSC分析及びDVS分析の結果を、
図1E、
図2E及び
図3Eにそれぞれ示した。
【0089】
前記結晶形のXRPDスペクトルにおいて、相対強度(I/Io)が5%以上であるピークを下記表5に記載した。I/Ioの比率が10%以上であるピークの場合、7.6°、8.8°、12.3°、13.1°、14.9°、15.2°、17.0°、17.8°、18.4°、18.7°、19.7°、20.1°、20.8°、21.0°、22.1°、22.8°、24.6°、24.9°、25.4°、26.1°、26.5°、27.0°、27.4°、28.4°、28.8°、29.7°及び30.5°の回折角(2θ±0.2°)で示された。
【0090】
【0091】
前記結晶形のDSC(10℃/分)において、約92.0℃で吸熱ピークを示し、約209.0℃で吸熱ピークを示した。DSCにおける約92.0℃の吸熱ピークは、メタンスルホン酸塩一水和物結晶形の脱水点を意味し、約209.0℃の吸熱ピークは、溶融点を意味する。
【0092】
前記結晶形は、カール・フィッシャー水分測定器で、約3.1%の水分含量(理論値水分含量3.08%)を示し、約204℃ないし208℃の融点を示した。
【0093】
前記結晶形のDVSにおいて、相対湿度が10%ないし90%の区間において、水分吸湿程度が約1%と低く測定された。前記結晶形は、長期保存条件(例:25℃の温度、及び60%の相対湿度)及び加速条件(例:40℃の温度、及び75%の相対湿度)において、十分に安定していた。
【0094】
実施例6.化学式1の化合物のエタンスルホン酸塩無水物(esylate・anhydrate)結晶形の製造
実施例6.1.無水エタノールにおける製造
化学式1の化合物10g(21.26mmol)をエタノール100mLに添加した。反応液にエタンスルホン酸1.92mL(23.38mmol)を滴加し、20℃ないし25℃で3時間撹拌した後、沈澱固体を濾過した。前記濾過物をエタノール10mLで洗浄し、50℃で乾燥させ、10.5gの標題化合物(収率:85.0%)を得た。
水分:0.3%
【0095】
実施例6.2.エタノール水溶液における製造
化学式1の化合物10g(21.26mmol)を90%のエタノール水溶液(エタノール/水=9/1)100mLに添加した。反応液にエタンスルホン酸1.92mL(23.38mmol)を滴加し、20℃ないし25℃で3時間撹拌した後、沈澱固体を濾過した。前記濾過物をエタノール10mLで洗浄し、50℃で乾燥させ、8.9gの標題化合物(収率:73.0%)を得た。
水分:0.2%
【0096】
特性分析
前記実施例6で製造された化学式1の化合物のエタンスルホン酸塩無水物(esylate・anhydrate)結晶形のXRPD分析、DSC分析及びDVS分析の結果を、
図1F、
図2F及び
図3Fにそれぞれ示した。
【0097】
前記結晶形のXRPDスペクトルにおいて、相対強度(I/Io)が10%以上であるピークを下記表6に記載した。I/Ioの比率が10%以上であるピークの場合、7.1°、11.1°、11.7°、12.2°、14.2°、14.9°、17.1°、18.1°、18.6°、19.8°、20.0°、21.3°、22.3°、23.0°、23.6及び27.6°の回折角(2θ±0.2)で示された。
【0098】
【0099】
前記結晶形のDSC(10℃/分)において、約235.2℃で吸熱ピークを示した。前記DSCにおける約235.2℃の吸熱ピークは、溶融点を意味する。
【0100】
前記結晶形は、カール・フィッシャー水分測定器で、0.3%の水分含量を示し、融点は約229ないし235℃に測定された。
【0101】
前記結晶形のDVSにおいて、相対湿度が10%ないし90%の区間において、水分吸湿程度が約1%と低く測定された。それを介し、前記結晶形は、長期保存条件(25℃の温度、及び60%の相対湿度)及び加速条件(例:40℃の温度、及び75%の相対湿度)において、十分に安定していた。
【0102】
試験例1.水溶解度測定試験
水溶解度を測定するために、前記実施例1ないし6で製造された化学式1の化合物の酸付加塩それぞれを、非イオン水において、下記の条件で試料を製造した後、それぞれの溶液を、化学式1の化合物の含量測定条件により、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)で分析した。化学式1の化合物を基準に、溶解された量を測定(LOD:0.001mg/mL超過)した後、その値を換算し、下記の表7及び表8にその結果値を示した。
【0103】
具体的には、それぞれの多形100mgを水5mLに添加し、20℃ないし25℃で、voltamixerを利用して混和した後、GH Polypro membrane Acrodisc、PALL(細孔径(pore size)0.2μm)を利用して濾過した濾液を高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)分析用希釈溶媒に希釈して製造した。
【0104】
【0105】
【0106】
前記表7から分かるように、化学式1の化合物(遊離塩基)の溶解度との比較時、化学式1の化合物の塩酸塩が高く、特に、化学式1の化合物の二塩酸塩が、一塩酸の結晶形より溶解度が高いという結果を示した。
【0107】
従って、化学式1の化合物の塩酸塩のうちでは、二塩酸塩三水和物結晶形が、溶出などを考慮したとき、薬学的組成物側面においても、最も有利であると予想される。
【0108】
また、前記表8から分かるように、化学式1の化合物(遊離塩基)の溶解度との比較時、化学式1の化合物のスルホン酸塩が顕著に高く、特に、化学式1の化合物のエタンスルホン酸無水物の結晶形が顕著に溶解度が高いという結果を示した。
【0109】
従って、化学式1の化合物のスルホン酸塩のうちでは、エタンスルホン酸無水物の結晶形が、溶出などを考慮したとき、薬学的組成物側面においても、最も有利であると予想される。
前記薬学的組成物が、上皮細胞成長因子受容体チロシンキナーゼ、またはその変異体によって誘発される良性腫瘍または悪性腫瘍、炎症性疾患、あるいはリウマチ性関節炎のような自己免疫疾患の治療または予防のために使用されることを特徴とする請求項2に記載の薬学的組成物。