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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016320
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】表示灯付発信機
(51)【国際特許分類】
   G09F 13/04 20060101AFI20240131BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
G09F13/04 Z
G08B17/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118334
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】大下 剛
(72)【発明者】
【氏名】石田 悠馬
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 俊介
(72)【発明者】
【氏名】原田 真宏
(72)【発明者】
【氏名】原田 麻魚
(72)【発明者】
【氏名】武井 隆
【テーマコード(参考)】
5C096
5G405
【Fターム(参考)】
5C096BA01
5C096CC06
5C096CD32
5C096FA03
5G405AA02
5G405AA08
5G405AD07
5G405CA21
5G405FA03
5G405FA04
(57)【要約】
【課題】設置個所の内装に馴染み易いとともに、デザイン性の良好な表示灯付発信機を提供する。
【解決手段】前方からの押圧操作でオン状態にされる押しボタンスイッチを内蔵した本体ケース(13)と、押しボタンスイッチの前方に配置された保護板(21)と、保護板の周囲に配設された放光部(22)を有する前面パネル部(20)と、を備えた表示灯付発信機において、前記放光部は、前面パネル部より奥の部位に配設された光源から放出された光を導く導光部材(22A)と、導光部材の前側を覆う透光性のカバー部材(22B)と、を備え、導光部材の裏面には複数の溝(22d)が形成されており、複数の溝の形成態様が異なることによって放光部の前面における単位面積当たりの光の放出量が異なるように構成した。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方からの押圧操作でオン状態にされる押しボタンスイッチを内蔵した本体ケースと、前記押しボタンスイッチの前方に配置された保護板と、当該保護板の周囲に配設された放光部を有する前面パネル部と、を備えた表示灯付発信機であって、
前記放光部は、前記前面パネル部より奥の部位に配設された光源から放出された光を導く導光部材と、前記導光部材の前側を覆う透光性のカバー部材と、を備え、
前記導光部材の裏面には複数の溝が形成されており、前記複数の溝の形成態様が異なることによって前記放光部の前面における単位面積当たりの光の放出量が異なるように構成されていることを特徴とする表示灯付発信機。
【請求項2】
前記導光部材は、ほぼ平坦な円環状部分と該円環状部分の内側であって前記本体ケース側に向かって傾斜する傾斜部とを有し、
前記傾斜部の内端部は前記保護板の背部に位置し、前記傾斜部の内端部に後方を向いた端面が形成され、該端面に対向するように光源が配設されており、
前記傾斜部の前記光源の光放出方向前方の表面部位に、前記光源からの光を全反射する角度を有し出射範囲全体を覆う大きさを有する全反射部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の表示灯付発信機。
【請求項3】
前記傾斜部の内端部の前記端面の幅は前記光源の幅よりも大きく設定され、前記光源は、前記端面の中心に対して前記保護板の中央方向へ偏位した位置に配設されていることを特徴とする請求項2に記載の表示灯付発信機。
【請求項4】
前記放光部は、断面が前方へ凸となる半円形をなし前面視で円環状をなすように形成されており、
前記導光部材の裏面には、前記複数の溝が、前記凸の中心側ほど小さなピッチで密に形成又は/および前記凸の中心側ほど大きく形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の表示灯付発信機。
【請求項5】
前記導光部材の裏面には、前記複数の溝が、前記放光部の中心から離れるほど小さなピッチで密に形成又は/および前記放光部の中心から離れるほど大きく形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の表示灯付発信機。
【請求項6】
前記導光部材の裏面には、前記複数の溝が、前記放光部の中心に近いほど小さなピッチで密に形成又は/および前記放光部の中心に近いほど大きく形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の表示灯付発信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急報知用の発信機、さらには表示灯を備え建物の壁部等に設置され緊急事態の発生時に操作されることで警報を発するための表示灯付発信機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物内部には火災など緊急事態の発生を知らせるために、押しボタンスイッチを備えた手動の発信機が建物の壁面に適切な高さで設置されている。緊急事態の発生時には、発見者が発信機の押しボタンスイッチを強く押すことにより、緊急事態の発生を知らせる信号が受信機等へ伝送されると共に、発信機の近傍に設けられるベルから警報音が発せられて、周囲の人に対し緊急事態の発生を知らせることができるようになっている。
また、発信機には、火災関連設備(発信機を含む)があることを知らせるための表示灯が一体に設けられているものがある(例えば特許文献1)。
【0003】
一方、従来の表示灯は、横方向からの視認性を良くするため砲弾型と呼ばれるものが一般的であった。しかし、砲弾型の表示灯は建物の壁面より突出するように設置されるため、通行の際の障害物となり通行する人の体の一部や搬送物が接触するおそれがある。そこで、近年においては、フラット型の表示灯が設置されるようになってきている。
フラット型の表示灯に関する発明としては、例えば特許文献2に記載されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-142051号公報
【特許文献2】特開2018-106804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のフラット型の表示灯は多くの場合、導光板や拡散材などを用いて前面の発光面が均一に発光するように構成されている。そのため、横方向の所定距離離れた位置から視認し易い明るさに設定すると、正面方向から見た際に、明る過ぎて存在の自己主張が強過ぎるため、設置個所の周囲の環境すなわち内装に馴染みにくい。また、暗闇下においては、表示灯によって何かが存在することは認識できるが、その物品がどういったものか、どこを操作すべきかを認識しにくいという課題があった。
また、従来の表示灯は、一般に内蔵する発光源としてLEDを使用しており、使用するLEDの数やピッチの大きさ、LEDと導光板からなる前面パネルとの距離などを調整して、所望の明るさや均一性を確保するようにするだけであるため、設置個所の周囲の環境すなわち内装意匠を配慮した発光やデザイン性を向上させるための設計の自由度が低いという課題があった。
【0006】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、設置個所の内装に馴染み易いとともに、デザイン性の良好な表示灯付発信機を提供することにある。
本発明の他の目的は、設置個所の内装意匠を配慮した発光やデザイン性を向上させるための設計の自由度を高めることができる表示灯付発信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、
前方からの押圧操作でオン状態にされる押しボタンスイッチを内蔵した本体ケースと、前記押しボタンスイッチの前方に配置された保護板と、当該保護板の周囲に配設された放光部を有する前面パネル部と、を備えた表示灯付発信機において、
前記放光部は、前記前面パネル部より奥の部位に配設された光源から放出された光を導く導光部材と、前記導光部材の前側を覆う透光性のカバー部材と、を備え、
前記導光部材の裏面には複数の溝が形成されており、前記複数の溝の形成態様が異なることによって前記放光部の前面における単位面積当たりの光の放出量が異なるように構成したものである。
【0008】
上記のような構成によれば、放光部全体が均一の明るさで光るのではなく、明暗のある状態で光るため、発信機が設置個所の内装に馴染み易いとともに、デザイン性を向上させることができる。また、導光部材の裏面に形成する溝の形成態様を変えることによって、放光部の前面における単位面積当たりの光の放出量を場所によって変化させて、明暗を変更することができるため、例えば設置個所と表示灯付発信機の側面との輝度差を少なくして徐々に明るくしていくなど、設置個所の内装意匠を配慮した発光やデザイン性を向上させるための設計の自由度を高めることができる。
【0009】
ここで、望ましくは、前記導光部材は、ほぼ平坦な円環状部分と該円環状部分の内側であって前記本体ケース側に向かって傾斜する傾斜部とを有し、
前記傾斜部の内端部は前記保護板の背部に位置し、前記傾斜部の内端部に後方を向いた端面が形成され、該端面に対向するように光源が配設されており、
前記傾斜部の前記光源の光放出方向前方の表面部位に、前記光源からの光を全反射する角度を有し出射範囲全体を覆う大きさを有する全反射部が設けられているようにする。
かかる構成によれば、光源から放出された光が前方へ漏れ、光源を配置した箇所が部分的に明るく光って見えてしまう不所望な現象が生じるのを防止することができる。
【0010】
さらに、望ましくは、前記傾斜部の内端部の前記端面の幅は前記光源の幅よりも大きく設定され、前記光源は、前記端面の中心に対して前記保護板の中央方向へ偏位した位置に配設されているように構成する。
かかる構成によれば、傾斜部の内端部の厚みおよび端面の幅が光源の幅よりも大きいため、光源から出射された光が導光部材内で反射を繰り返す回数を減らして減衰を抑えることができるとともに、光源が押しボタンの内側方向へ偏位した位置に配設されているため、全反射部の範囲(位置および大きさ)を容易に設定することができる。
【0011】
また、望ましくは、前記放光部は、断面が前方へ凸となる半円形をなし前面視で円環状をなすように形成されており、
前記導光部材の裏面には、前記複数の溝が、前記凸の中心側ほど小さなピッチで密に形成又は/および前記凸の中心側ほど大きく形成されているように構成する。
かかる構成によれば、凸の中心が強く光ることから側方からの視認性を維持しつつ正面視で明るくなりすぎず、さらに押しボタンの視認性を良好にすると共に周囲の内装になじみやすくすることができる。
【0012】
また、望ましくは、前記導光部材の裏面には、前記複数の溝が、前記放光部の中心から離れるほど小さなピッチで密に形成又は/および前記放光部の中心から離れるほど大きく形成されているように構成する。
かかる構成によれば、表示灯の側方からの視認性を向上させることができる。
【0013】
また、望ましくは、前記導光部材の裏面には、前記複数の溝が、前記放光部の中心に近いほど小さなピッチで密に形成又は/および前記放光部の中心に近いほど大きく形成されているように構成する。
かかる構成によれば、押しボタンの前方からの視認性や操作性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る表示灯付発信機によれば、設置個所の内装に馴染み易くすることができるとともにデザイン性を向上させることができる。また、設置個所の内装意匠を配慮した発光やデザイン性を向上させるための設計の自由度を高めることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態の表示灯付発信機を前方から見た外観を示す斜視図である。
図2】第1実施形態の表示灯付発信機の内部構造を示す断面側面図である。
図3】第1実施形態の表示灯付発信機における放光部からの光の放出状態を示す要部拡大断面図である。
図4】第1実施形態の表示灯付発信機における放光部を構成する導光部材の裏面への溝の形成例を示す要部拡大断面図である。
図5】第1実施形態の表示灯付発信機における放光部を構成する導光部材の端部への全反射湾曲部の形成例を示す要部拡大断面図である。
図6】(A)は第2実施形態の表示灯付発信機を前方から見た外観を示す斜視図、(B)は第2実施形態の表示灯付発信機の内部構造を示す断面側面図である。
図7】第2実施形態の表示灯付発信機における押しボタンの裏面および放光部を構成する導光部材の裏面への溝の形成例を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明を適用した表示灯付発信機の一実施形態について説明する。
本実施形態の発信機は、緊急事態が発生した際に押しボタンを強く押して内部のスイッチをオンさせることにより緊急事態の発生を知らせる信号を送出する機能を備え、建造物の壁面や所定の取付けパネルなどに設置されて使用されるように構成される。具体的には、本実施形態の表示灯付発信機は、中央に押しボタンを有する前面パネルと、前面パネルの背部に設けられ上記押しボタンの押込み操作によってオン状態にされる押しボタンスイッチおよび該スイッチのオンによって信号を生成し外部へ送出する回路基板を内蔵した本体ケースとから構成される。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本発明に係る発信機の第1の実施形態を示す。このうち、図1は発信機の全体斜視図、図2図1に示す発信機の内部構造を示す断面側面図、図3図1に示す発信機の一部(放光部)を拡大して示す要部拡大断面図である。
本実施形態の発信機は、図1に示すように、押しボタンスイッチを内蔵した箱状の収納ケース13を備えた発信機本体部10と、前面中央に押しボタンスイッチを保護する保護板としての押しボタン21を備え発信機本体部10の前部に設けられた円板状の前面パネル部20とから構成されている。
【0018】
発信機本体部10は、図2に示すように、内部に押しボタンスイッチ11や送受話器のコード先端のプラグを差し込む電話ジャック12等を内蔵した箱状の収納ケース13を備えている。
収納ケース13は、押しボタン21側(図では左側)に開口を有し奥部(図では右側)に複数(例えば4個)の圧縮バネ15を収納するバネ受け部材16が設けられ、このバネ受け部材16の各バネ収納凹部に収納された圧縮バネ15の前方側を覆うように、前面視
で円形をなすスライド部材17が設けられている。
【0019】
上記スライド部材17の中心部には、後方(図では右側)に向かって突出するボス部17aが形成されているとともに、上記バネ受け部材16の前面側の中心には上記ボス部17aが嵌合可能なガイド筒部16aが形成されており、スライド部材17はガイド筒部16aに案内されて前後方向に移動可能に構成されている。また、ガイド筒部16aの中央に、アクチュエータがボス部17aの端面に対向するように、押しボタンスイッチ11が配設されている。
さらに、上記収納ケース13の前端には、前面パネル部20の背面に接合される円環状の鍔部13aが形成されている。
【0020】
一方、前面パネル部20は、前面中央に透光材で形成された円形状の押しボタン21が設けられ、その周囲に、半ドーナツ状をなすつまり断面が半円形をなし前面視で円環状をなす放光部22が設けられ、放光部22の背面側に皿状の支持プレート23が設けられている。そして、この支持プレート23の中央にガイド筒部23aが形成されており、このガイド筒部23aには、円形状の押しボタン21の背面中心に後方(図では右側)に向かって突出するように形成された押圧ロッド部21aが嵌合されている。なお、図示しないが、押しボタン21は所定以上前方(図では左方)へ移動しないように構成されている。
【0021】
さらに、押圧ロッド部21aは、ガイド筒部23aを貫通し収納ケース13側へ突出し、その突出端部が発信機本体部10の収納ケース13内の前記スライド部材17の前面中央に当接するように構成されている。そして、押しボタン21を前方より後方へ押圧すると、発信機本体部10内の圧縮バネ15のバネ力に抗して押しボタン21が後方へ移動され、背面の押圧ロッド部21aが押しボタンスイッチ11のアクチュエータ部に当接してこれを押し込むことでスイッチ11がオン状態にされるように構成されている。
【0022】
また、前面パネル部20の放光部22は、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂のような光透過性を有する導光材で形成され、前面パネル部20の内部に配設された光源としての発光素子(LED)らの光を誘導し前面へ放出させることで発光表示を行う表示灯として機能するように構成されている。
また、上記支持プレート23前面のガイド筒部23aの周囲にLED基板27が設置され、このLED基板27上に複数の発光素子(LED)28が所定の間隔をおいて周方向に沿って並んで配設されている。発光素子28から前方へ放出された光は前面パネル部20の円環状をなす放光部22へ誘導され、反射を繰り返しながら放光部22の前面より放出され、全体が明るく光るように構成されている。
【0023】
上記発光素子28の発光色は、例えば従来の表示灯と同様な赤色とされる。赤色の発光素子を使用する代わりに、白色の発光素子を使用し放光部22を形成する導光材として赤色に着色されたものを使用するようにしても良い。さらに、押しボタン21と放光部22は、ガラスやアクリル樹脂のような光透過性を有する樹脂などの導光材で形成され、この導光材は、内部に粒子状の拡散材が混入されていても良い。
【0024】
また、前面パネル部20を構成する上記放光部22は、すり鉢状の傾斜部を中央側に有し、前方へ膨らむように湾曲した湾曲部を押しボタン21の周囲に有しており、図3に示すように、LED基板27上の複数の発光素子28に対向する傾斜部の端部に光導入部22cが形成された導光部材22Aと、該導光部材22Aの表面を覆う光透過可能なカバー部材22Bとから構成されている。
導光部材22Aは、前記支持プレート23の平坦部の前面に接合されている。さらに、押しボタン21には鍔部21bが設けられ、その鍔部21bが導光部材22Aの光導入部22cすなわち発光素子28の前方位置まで延設されている。
【0025】
本実施形態の発信機においては、導光部材22Aの内側の端面の光導入部22cより入射した光が、傾斜部により外側の平坦部へ導光されて表面に当たって方向を変え、一部は表面側へ放出されるとともに残りは表面と裏面で反射を繰り返して外縁部の方へ導光される。
また、導光部材22Aおよび支持プレート23の外縁部には庇部22b,23bが設けられている。これにより、導光部材22Aの本体部分により導光された光の一部は庇部22bより側方へ放出されるため、発信機の側方の離れた位置から前面パネル部20の発光表示を視認することが容易になる。
【0026】
さらに、導光部材22Aの裏面側には、図4に示すように、断面がV字状をなす複数の溝22dが形成されている。なお、これらの溝22dは前面視で同心円をなすように形成されているとともに、中心からの距離に応じて溝の深さが異なるように形成されている。導光部材22Aに沿って誘導されて来た光は、上記溝22dの斜面に当たって方向を変え、カバー部材22Bの表面より前方へ放出される。この際、溝が深いほど、反射する光の量が多くなって明るくなる。
【0027】
本実施形態の発信機においては、図3に矢印で示すように、カバー部材22Bの最も膨らんでいる部分が最も明るくなり、外側および内側へ向かうほど徐々に明るさが低下するように、溝22dの深さが設定されている。なお、溝22dの深さを変える代わりに、溝のピッチを変化させて、カバー部材22Bの最も膨らんでいる部分において最もピッチが狭く密になり、外側および内側へ向かうほど徐々にピッチが大きくなるように、溝22dを形成するようにしても良い。
【0028】
また、導光部材22Aの裏面に光反射層を形成することで、導光部材22Aの裏面側へ漏れる光の量を減らして放光部22より前方へ放出される光の量を多くしても良いが、本実施形態においては、支持プレート23の少なくとも前側表面を白色にすることで、導光部材22Aの裏面から後方へ漏れた光を支持プレート23の表面で反射させて、導光部材22Aへ戻すことによって、放光部22から放出される光の量が低下するのを防止するようにしている。
【0029】
一方、カバー部材22Bは、シリコーン樹脂等の透光性を有し形状を保持可能な軟質材料で形成された保形部材と、該保形部材の表面を覆うように設けられた合成樹脂製シートや布のような柔軟性のある材料で形成された被覆部とから構成されている。そして、カバー部材22Bは、導光部材22Aの外縁部の庇部22bを側部から背部まで覆うように形成されている。
これにより、カバー部材22Bに外部から衝撃が加わったとしても保形部材が変形して衝撃を吸収し、表面の損傷を防止することができる。また、保形部材の表面が被覆部で覆われているため、導光部材22Aにより導かれて来た光を拡散または透過させて前方へ放出することで、ぼんやりとした柔らかな質感を与えることができる。
【0030】
また、前面パネル部20の表面側が湾曲しているとともに、前述したように、カバー部材22Bの最も膨らんでいる部分が最も明るくなり、外側および内側へ向かうほど徐々に明るさが低下するように設定されているため、デザイン性が向上し、発信機の設置環境である建物の内装との調和がとれ内装に馴染み易くなる。
さらに、本実施形態の発信機は、放光部22が発信機の位置を示す表示灯として機能するとともに、放光部22の前面が平坦に近い湾曲形状であるため、従来の砲弾型の表示灯に比べて前方への突出量がなく、備品を搬送する際に移動の障害となることがないという利点がある。
【0031】
さらに、本実施形態の発信機においては、特に限定されるものでないが、図5に示すように、発光素子(LED)28が、導光部材22Aの端部の光導入部22cの中心よりも内側に偏位して設置され、導光部材22Aの内端部の近傍の発光素子(LED)28に対向する表面部位が、LEDから放出された光を全反射する角度を有する全反射部Cとして形成されている。言い換えると、この全反射部Cは、発光素子(LED)28の出射角(点線)に対応して、発光素子(LED)28の出射方向全体をカバーする、つまりLEDの出射光が全反射部C以外に当たらないように、位置および大きさが設定されている。
これにより、押しボタン21が樹脂製である場合に、導光部材22Aの内側の端部の近傍にて、LEDから放出された光が前方へ漏れ、光源を配置した箇所が部分的に明るく光って見えてしまう不所望な現象が生じるのを防止することができる。なお、全反射部Cは、図5では湾曲しているが、図示の断面で平坦な傾斜面であっても良い。
【0032】
また、押しボタン21が透光材で形成されており、放光部22の導光部材22Aの前面側が湾曲され、中央開口付近では開口部に向かって下り傾斜しているため、該傾斜部から放出(散乱)された光の一部が押しボタン21の表面に達して明るくするので、押しボタン21の表面と放光部22の表面の明度差が小さくなり、押しボタン21の視認性を良くして、周囲の内装と調和し違和感の少ない発信機を実現することが可能である。
【0033】
なお、本実施形態の発信機においては、カバー部材22Bの最も膨らんでいる部分が最も明るくなり、外側および内側へ向かうほど徐々に明るさが低下するように、導光部材22Aの裏面の溝22dの形成態様が設定されているが、放光部22の外側ほど明るくなるように、導光部材22Aの裏面の溝22dの形成態様を設定しても良い。これにより、放光部22すなわち表示灯の側方からの視認性を高めることができる。また、放光部22の中央側ほど明るくなるように、導光部材22Aの裏面の溝22dの形成態様を設定しても良い。これにより、押しボタン21の視認性を高めることができる。
【0034】
(第2実施形態)
図6図7は、第2実施形態の発信機を示す。このうち、図6(A)は発信機の全体斜視図、図6(B)は発信機の内部構造を示す断面側面図、図7図6に示す発信機の一部(一点鎖線の楕円で囲まれた部分)を拡大して示す要部拡大断面図である。
第2実施形態の発信機は、図6(A)に示すように、箱状をなす発信機本体部10と、発信機本体部10の前部に設けられた前面パネル部20とから構成されている。
【0035】
発信機本体部10は、図6(B)に示すように、内部に押しボタンスイッチ11を内蔵した箱状の収納ケース13を備えている。
一方、前面パネル部20は、前面中央に円板状の押しボタン21が設けられ、その周囲に前面が比較的平坦な円環状をなす放光部22が配設されている。なお、押しボタン21と放光部22は、アクリル樹脂のような光透過性を有する導光材で形成されている。
【0036】
発信機本体部10の収納ケース13は、開口部側(図では左側)に凹部を有するバネ受け部材16が嵌挿され、このバネ受け部材16の開口部には、内側(図では右側)に1個の圧縮バネ15を収納するバネ収納部を有しバネ受け部材16の周壁に沿って移動可能なスライド部材17が嵌挿され、スライド部材17の前面に押しボタン21の背面が接合されている。
また、上記バネ受け部材16の中央には円筒状をなす内側ガイド壁16aおよび外側ガイド壁16bが形成されているとともに、スライド部材17の内面中央には上記ガイド壁16aに嵌合するボス部17aが形成され、この押圧部ボス部17aの周囲に、2重円筒状をなし上記内側ガイド壁14aおよび外側ガイド壁14b内に挿入される上記バネ収納部17bが形成されている。
【0037】
さらに、発信機本体部10の収納ケース13内に収納された押しボタンスイッチ11のアクチュエータ部11aが上記バネ受け部材16の内側ガイド壁16aに挿入されてボス部17aに対向するように、配設されている。
また、上記バネ受け部材16と上記スライド部材17とは、隙間δを有するように配設されており、押しボタン21を発信機本体部10側へ押し込むと上記スライド部材17が移動し、ボス部17aがアクチュエータ部11aに当接してこれを押圧することでスイッチ11の接点を閉じてオン状態にさせることができるように構成されている。
【0038】
上記バネ受け部材16の開口側端部には前面プレート部16cが形成されており、この前面プレート部16cに導光材からなり円環状をなす放光部22が接合されている。一方、放光部22の外縁部には、バネ受け部材16の前面プレート部16cの外周面を覆う庇部22bが設けられている。
さらに、上記スライド部材16の外縁部の前面側には、図6(A)に破線で示すように、所定の角度間隔をおいて複数個(図では8個)の発光素子(LED)28が、押しボタン21の周りに周方向に沿って並んで配設されている。なお、ドット状の発光素子を所定の間隔をおいて複数個配設する代わりに、線状あるいは面状の発光素子または可撓性のある発光素子を配設するようにしても良い。
【0039】
また、円板状をなす押しボタン21は、環状をなす放光部22の中央開口部に嵌合する押圧部21cが中央部に設けられているとともに、裏面側外周に鍔部21bが設けられており、この鍔部21bの周縁部の上記発光素子28と対向する部位に、後方へ向って突出する柱状突起部からなる複数の光導入部21dが形成されている。発光素子28の発光色は、例えば従来の表示灯と同様な赤色とされる。赤色の発光素子を使用する代わりに、白色の発光素子を使用し放光部22を形成する導光材として赤色に着色されたものを使用するようにしても良い。
【0040】
また、上記収納ケース13と前面パネル部20とは、例えば図6(A)に示すように、収納ケース13の外縁部に後方へ向かって突出する係止爪29を形成し、この係止爪29の先端の爪を収納ケース13の段差部に係止させることで結合させるように構成することができる。
バネ受け部材16は、前面プレート部16cが収納ケース13の開口側端部に形成されたフランジ部13aと前面パネル部20との間に挟まれることで一体化することができる。バネ受け部材16の上記前面プレート部16cとフランジ部13aにそれぞれ複数のビス挿通孔を互いに対向するように形成して、これらのビス挿通孔にビスを挿通して両者を結合させるように構成しても良い。なお、上記結合構造は一例であって、これらに限定されるものでない。
【0041】
次に、本実施形態の発信機における上記前面パネル部20の構造および発光表示のさせ方について、図7を用いて説明する。
図7に拡大して示すように、本実施形態の発信機においては、放光部22は、すり鉢状の傾斜部を備えておらず、前方へ少し膨らむように湾曲した湾曲部を押しボタン21の周囲に有している。また、図7の例では図6の構成に対して第1実施形態のように該導光部材22Aの表面を覆う光透過可能なカバー部材22Bを設けている。そして、スライド部材17の鍔部に設置されたLED基板27上の複数の発光素子28に、押しボタン21の光導入部21dの端面が対向するように配設されている。また、光導入部21dの端面と反対側には、約45度をなすよう傾斜した反射面21eが形成されている。これにより、発光素子28から放出された光は、光導入部21dから押しボタン21に導入され、押しボタン21を光らせるとともに、押しボタン21を経由して放光部22へ導光され、放光部22を光らせるようになっている。
【0042】
放光部22は、導光部材22Aと、該導光部材22Aの表面を覆う光透過可能なカバー部材22Bとから構成されている。導光部材22Aは、前記バネ受け部材16の前面プレート部16cの前面に接合されている。一方、カバー部材22Bは、第1実施形態と同様に、シリコーン樹脂等の透光性を有し形状を保持可能な軟質材料で形成された保形部材と、該保形部材の表面を覆うように設けられた合成樹脂製シートや布のような柔軟性のある材料で形成された被覆部とから構成されている。そして、カバー部材22Bは、導光部材22Aの外縁部の庇部22bを側部から背部まで覆うように形成されている。
【0043】
さらに、本実施形態の発信機においては、押しボタン21および導光部材22Aの裏面側には、図7に示すように、断面がV字状をなす複数の溝21fおよび22dが形成されている。なお、これらの溝21fおよび22dは前面視で同心円をなすように形成されているとともに、中心からの距離に応じて溝の深さが異なるように形成されている。押しボタン21および導光部材22Aに沿って誘導されて来た光は、上記溝21fおよび22dの斜面に当たって方向を変え、押しボタン21や導光部材22Aおよびカバー部材22Bの表面より前方へ放出される。この際、溝が深いほど、反射する光の量が多く明るくなる。
【0044】
本実施形態の発信機においては、放光部22においては、円環状をなす導光部材22Aの開口部側の部分が最も明るくなり外側ほど明るさが低下するように上記溝22dの深さが設定され、また押しボタン21においては、中央部分が最も明るくなり外側ほど明るさが低下するように上記溝21fの深さが設定されている。溝21fおよび溝22dの深さを変える代わりに、溝のピッチを変化させて明るさを変化させるようにしても良い。
上のように構成されていることにより、本実施形態の発信機は、デザイン性が向上し、発信機の設置環境である建物の内装との調和がとれ内装に馴染み易くなる。
【0045】
また、押しボタン21および導光部材22Aの裏面に光反射層を形成することで、導光部材22Aの裏面側へ漏れる光の量を減らして放光部22より前方へ放出される光の量を多くしても良いが、スライド部材17およびバネ受け部材16の前面プレート部16cの少なくとも前側表面を白色にすることで、押しボタン21および導光部材22Aの裏面から後方へ漏れた光をスライド部材17およびバネ受け部材16の表面で反射させて戻すことによって、押しボタン21および放光部22から放出される光の量が低下するのを防止するようにしても良い。
【0046】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態のものに限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、放光部22の導光部材22Aや押しボタン21の裏面に、断面がV字状をなす複数の溝を同心円状に形成することにより、表示灯としての明るさを前面均一ではなく、径方向に明るさを変化させるようにしたものについて説明したが、溝を同心円状に形成する代わりに多数の角錐状の凹みを、深さやピッチを変えて形成することで面内の明るさの分布を変化させるようにしても良い。
また、溝は、連続した円形状に設けることに限らず、点線状やドットなどの非連続で設けるようにしてもよい。また楕円や格子状に設けるなど、発光したい態様や物品の形状に合わせて配置を変化させてもよい。
さらに、カバー部材は上記実施形態で説明した例の他に、少なくとも透光性を有していれば弾力性を有さない樹脂のみで構成するなどのようにしてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、本発明を、主として火災報知システムを構成する火災発信機に適用したものを説明したが、本発明は火災発信機に限定されず、駅のプラットホームや踏切に設置される列車緊急報知用の発信機、トイレや浴室など設置される緊急呼出し用の発信機に広く利用することができる。さらに、本発明は、表示灯付発信機に限定されず、単独の表示灯に対しても適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
10 本体ケース
11 押しボタンスイッチ
12 電話ジャック
13 収納ケース
15 圧縮バネ
16 バネ受け部材
17 スライド部材
20 前面パネル
21 押しボタン
22 放光部
22A 導光部材
22B カバー部材
23 支持プレート
28 発光素子(LED)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7