(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163225
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】核酸保存溶液ならびに製造方法および使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/10 20060101AFI20241114BHJP
C12M 1/26 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C12N15/10 Z
C12M1/26
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024151398
(22)【出願日】2024-09-03
(62)【分割の表示】P 2022019552の分割
【原出願日】2018-01-16
(31)【優先権主張番号】62/446,818
(32)【優先日】2017-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519255458
【氏名又は名称】スペクトラム・ソリューションズ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】SPECTRUM SOLUTIONS L.L.C.
【住所又は居所原語表記】12248 Lone Peak Parkway, #106, Draper, Utah 84020, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(72)【発明者】
【氏名】ガエータ・フェデリコ・カルロス・アレジョラ
(57)【要約】
【課題】核酸保存組成物を提供する。
【解決手段】ヒト核酸保存組成物は、43.92%±10%(w/w)のチオシアン酸グアニジンと、2.65%±10%(w/w)のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)と、0.81%±10%(w/w)のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはEDTA二ナトリウム(塩)二水和物と、0.279%±10%(w/w)のラウロイルサルコシン酸ナトリウム(SLS)と、約95%±10%(v/v)のエタノールおよび約5%±10%(v/v)のイソプロパノールの混合物を含む、17.73%±10%(w/w)のアルコールと、0.093%±10%(w/w)のN-アセチル-L-システインと、約pH8.0まで適量の塩酸(±10%)と、100%まで適量の、ろ過され、精製され、蒸留され、かつ/または脱イオンされた水を含む水性担体と、を含む。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト核酸保存組成物であって、
43.92%±10%(w/w)のチオシアン酸グアニジンと、
2.65%±10%(w/w)のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)と、
0.81%±10%(w/w)のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはEDTA二ナトリウム(塩)二水和物と、
0.279%±10%(w/w)のラウロイルサルコシン酸ナトリウム(SLS)と、
約95%±10%(v/v)のエタノールおよび約5%±10%(v/v)のイソプロパノールの混合物を含む、17.73%±10%(w/w)のアルコールと、
0.093%±10%(w/w)のN-アセチル-L-システインと、
約pH8.0まで適量の塩酸(±10%)と、
100%まで適量の、ろ過され、精製され、蒸留され、かつ/または脱イオンされた水を含む水性担体と、を含む、ヒト核酸保存組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本開示は核酸の保存に関する。具体的には、本開示は、さらなる分析のために生物学的試料中のヒト核酸を保存するための組成物および方法に関する。
【0002】
関連技術
核酸は、細胞性および/または無細胞核酸を含む生物学的試料から抽出することができる。抽出された核酸を、系図分析を含む様々な分析目的に使用することができる。唾液の試料採取は、比較的非侵襲的であるので、唾液からの核酸の抽出は特に有用であり得る。
【0003】
核酸含有生物学的試料は、特定の種類の核酸分析のために適切に処理される必要があることが多い。例えば、核酸配列決定(例えば、次世代配列決定(NGS))などの分析技術は、使用される特定のプラットフォームに依存する特定の処理または前処理工程を必要とし得る。場合によっては、核酸含有生物学的試料は、試料またはその核酸を安定化するために処理する必要があり得る。その分析を行うことができるまで核酸の一部の生存を確実にするために、安定化溶液を核酸含有生物学的試料に添加することが多い。
【0004】
既存の安定化溶液は、ある種類の分析技術またはそれを実施するための装置に最適ではない場合がある。例えば、ある次世代シーケンサーにおける最適または適切な分析のために処方された安定化溶液は、他の次世代シーケンサーにおける分析に最適または適切ではない場合がある。場合によっては、不適切な処方は、分析上のアーチファクト、高いバックグラウンドシグナル(またはノイズ)、微生物核酸の汚染および/もしくは保持、ならびに/またはヒト核酸の総潜在的収率の低下を発生させるか、またはもたらし得る。
【0005】
既存の安定化溶液はまた、微生物の生存を制御するのに不十分であり得る。唾液などの生物学的試料は、1つ以上の微生物(例えば、細菌、真菌など)を含む、および/またはそれらに汚染されていることが多い。これらの微生物は、宿主または生物学的試料の供給源の核酸と干渉するか、またはそれと共に検出され得る核酸を含有する。保存溶液は、不注意で微生物核酸を安定化させるか、または微生物の増殖さえも可能にし得る。
【0006】
したがって、既存の製品と比較して、様々な分析技術および装置に適した汎用の核酸安定化溶液、および/または核酸の全体的な収率および試料の品質を向上させる溶液が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本開示の実施形態は、核酸の保存、安定化、および/または調製組成物、それを含むキット、ならびにそれを製造および使用する方法を含む1つ以上の実施形態を用いて、当技術分野における上記のまたは他の問題の1つ以上を解決する。例えば、本開示のいくつかの実施形態は、生物学的試料中の核酸を、保存、安定化、および/または調製するための組成物を含む。組成物は、様々な分析技術および装置における使用に適切であり得る。組成物により、その後の分析のために多量の核酸を得ることができる。例えば、組成物により、その後の分析のために、好ましくはおよび/または場合により少量の微生物(例えば、細菌)核酸(例えば、DNA)と共に、多量のヒト核酸(例えば、DNA)を得ることができる。組成物は、ヒト核酸(DNA)の安定化および細菌汚染の防止における使用ならびに長期保存に適切な、場合により(淡)青色の、溶液または水性液体(例えば、水溶液)を含み得る。
【0008】
本開示の実施形態は、水性担体、カオトロピック剤、緩衝剤、キレート剤、界面活性剤、アルコール、酸、および粘液溶解剤を含む、核酸保存組成物を含む。実施形態は、視覚的指示薬をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、水性担体は、水、好ましくは、ろ過され、精製され、蒸留され、かつ/または脱イオンされた水であり得るか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、カオトロピック剤は、グアニジンおよび/またはチオシアン酸塩、好ましくはチオシアン酸グアニジンであり得るか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)、好ましくはTris-HCl、より好ましくはTrizma(登録商標)塩基であり得るか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、キレート剤は、好ましくはEDTA二ナトリウム塩、より好ましくはEDTA二ナトリウム(塩)二水和物としてのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)であり得るか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム(SLS)であり得るか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、アルコールは、特別変性アルコール(SDA)またはエタノールおよびイソプロパノールの混合物、好ましくは約95%(v/v)のエタノールおよび約5%(v/v)のイソプロパノールの混合物、またはSDA 3Cであり得るか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、酸は、塩酸であり得るか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、粘液溶解剤は、N-アセチル-L-システインであり得るか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、視覚的指示薬は、染料(例えば、FD&C Blue No.1)などの着色剤であり得るか、またはそれを含み得る。
【0009】
本開示の一実施形態は、約43.92%(w/w)のカオトロピック剤(例えば、チオシアン酸グアニジン)、約2.65%(w/w)の緩衝剤(例えば、Tris)、約0.81%(w/w)のキレート剤(例えば、EDTA二ナトリウム二水和物)、約0.279%(w/w)の界面活性剤(例えば、SLS)、約17.73%(w/w)のアルコール(例えば、SDA 3C)、約0.093%(w/w)の粘液溶解剤(例えば、N-アセチル-L-システイン)、約0.4%(w/w)の酸(例えば、塩酸)もしくはpH約8.0まで適量の酸、および/または約34.12%(w/w)の担体(例えば、ろ過され、精製され、蒸留され、かつ/または脱イオンされた水を含む水性担体)もしくは100%まで適量の担体を含む、ヒト核酸保存組成物を含む。一実施形態は、約0.00037%(w/w)の視覚的指示薬(例えば、FD&C Blue No.1)またはその同等物(例えば、0.185%(w/w)、0.2%(w/w)の視覚的指示薬濃縮物(例えば、水中))をさらに含み得る。
【0010】
1つ以上の実施形態は、43.92%±10%(w/w)のカオトロピック剤(例えば、チオシアン酸グアニジン)、2.65%±10%(w/w)の緩衝剤(例えば、Tris)、0.81%±10%(w/w)のキレート剤(例えば、EDTA二ナトリウム二水和物)、0.279%±10%(w/w)の界面活性剤(例えば、SLS)、17.73%±10%(w/w)のアルコール(例えば、SDA 3Cまたは95%±10%(v/v)のエタノールおよび5%±10%(v/v)のイソプロパノールの混合物)、0.093%±10%(w/w)の粘液溶解剤(例えば、N-アセチル-L-システイン)、および/またはpH8.0まで適量の酸(例えば、塩酸)(±10%)を、100%まで適量の担体(例えば、水性担体、好ましくはろ過され、精製され、蒸留され、かつ/または脱イオンされた水)と共に含み得る。一実施形態は、0.00037%±10%(w/w)の視覚的指示薬(例えば、FD&C Blue No.1)またはその同等物(例えば、0.185%±10%(w/w)、0.2%±10%(w/w)の視覚的指示薬濃縮物(例えば、水中))をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、±10%である各構成要素の量が、さらに±9%、好ましくは±8%、より好ましくは±7%、さらにより好ましくは±6%、さらにより好ましくは±5%、さらにより好ましくは±4%、さらにより好ましくは±3%、さらにより好ましくは±2%、さらにより好ましくは±1%である(記載された量に限定)。
【0011】
1つ以上の実施形態は、20~50%(w/w)のカオトロピック剤、0.1~5%(w/w)の緩衝剤、0.05~2.5%(w/w)のキレート剤、0.01~5%(w/w)の界面活性剤、5~25%(w/w)のアルコール、0.005~0.25%(w/w)の粘液溶解剤、0.005~5%(w/w)の酸もしくはpH6.5~9.5まで適量の酸、および/または10~60%(w/w)の担体もしくは100%まで適量の担体を含み得る。一実施形態は、0.00005~0.5%(w/w)の視覚的指示薬(または0.01~2.5%(w/w)、0.05~5%(w/w)の視覚的指示薬濃縮物(例えば、水中))を含み得る。
【0012】
1つ以上の実施形態は、(例えば、アルコール(複数可)、カオトロピック剤(複数可)、界面活性剤(複数可)/洗浄剤(複数可)、および/または粘液溶解剤(複数可)以外のまたはその他の)、(追加のまたはあらゆる)抗菌剤(複数可)(例えば、殺菌剤(複数可)および/または静菌剤(複数可))を(実質的に)欠き得る。1つ以上の実施形態は、(例えば、カオトロピック剤(複数可)以外のまたはその他の)(追加のまたはあらゆる)リボヌクレアーゼ阻害剤(複数可)、またはリボヌクレアーゼの阻害剤(複数可)を(実質的に)欠き得る。1つ以上の実施形態は、(あらゆる)プロテアーゼ(複数可)を(実質的に)欠き得る。
【0013】
いくつかの実施形態は、核酸を安定化させる方法を含む。方法は、核酸を含有する生物学的試料を得ることと、本開示の組成物を生物学的試料と組み合わせることと、を含み得る。方法はまた、当該技術分野において周知の他の処理工程も含み得る。本開示の一実施形態は、核酸(例えば、ヒトDNAなどのヒト核酸)を安定化させる方法を含む。一実施形態は、核酸を含有する生物学的試料を本開示の組成物と接触させることを含む。一実施形態では、生物学的試料は、ヒト唾液を含む。
【0014】
いくつかの実施形態は、生物学的試料保存キットを含む。キットは、試料採取装置および核酸保存組成物を含み得る。試料採取装置は、溶液区画を含み得る。核酸保存組成物は、溶液区画に配置され得る。本開示の一実施形態は、試料採取装置の一部に配置された本開示の組成物を含むキットを含む。
【0015】
いくつかの実施形態は、本開示の組成物を製造する方法を含む。方法は、本開示の構成要素を組み合わせることを含み得る。方法はまた、当該技術分野において周知の他の製造工程も含み得る。本開示の一実施形態は、核酸安定化組成物を製造する方法を含む。一実施形態は、担体を得ることと、本開示の組成物の構成要素または成分を担体に添加することと、を含む。
【0016】
本開示の例示的な実施形態の追加の特徴および利点は、以下の説明に記載され、一部は説明から明らかになるか、またはそのような例示的な実施形態の実施によって理解され得る。かかる実施形態の特色および利点は、添付の特許請求の範囲で特に指摘される機器および組み合わせによって実現および取得され得る。これらの特色および他の特色は、以下の説明および添付の特許請求の範囲からより完全に明らかになるか、または以下に記載のようなかかる例示的な実施形態の実施によって習得され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本開示の上記および他の利点および特徴が得られ得る様式を説明するために、上で簡潔に説明した実施形態のより具体的な説明を、添付図面に示されているその特定の実施形態を参照することによって提供することにする。より良好な理解のために、同様の要素は、図(複数可)全体を通して同様の参照番号によって表記されている。これらの図面は、本発明の典型的な実施形態のみを示しており、したがって、その範囲を限定するものと見なされるべきではないことを理解されたく、本発明は、添付の図面(複数可)の使用を通して、追加の特異性および詳細と共に記載および説明されるであろう。
【0018】
【
図1A】本開示の一実施形態による組成物を使用して保存された高分子量DNAを有するゲルの画像である。
【
図1B】Bionexus All Purpose HI-LO DNA Markerを用いたゲルの画像である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示の様々な実施形態を詳細に説明する前に、本開示が、それぞれの実施形態で変動し得る、具体的に例示したシステム、方法、および/または製品の特定のパラメータおよび説明に限定されないことを理解されたい。したがって、特定の特色(例えば、構成、パラメータ、特性、ステップ、構成要素、成分、部材、要素、部品、および/または部分など)を参照して、本開示のある特定の実施形態は、詳細に説明されるが、説明は例示的なものであり、本開示および/または特許請求される発明の範囲を限定するものとして解釈されるものではない。加えて、本明細書で使用される用語は、実施形態を説明する目的のためであり、必ずしも本開示および/または特許請求される発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0020】
詳細な説明は段落に分かれているが、各段落内の段落の見出しおよび内容は、独立した説明および実施形態であることを意図していない。むしろ、詳細な説明内の各段落の内容は、1つの段落の要素が他の段落に関係し、かつ/または他の段落に知らせる得る集合的な全体として読み取られ、かつ理解されることを意図する。したがって、1つの段落内に具体的に開示される実施形態はまた、同じおよび/または同様のシステム、装置、方法、および/または用語を有する別の段落において、追加のおよび/または代替的な実施形態に関係し得、かつ/またはそれとして機能し得る。
【0021】
定義された用語の概略リスト
前述の範囲および内容ならびに以下記載の説明および特許請求の範囲の理解を助けるために、選択されたいくつかの用語を以下に定義する。特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が関係する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0022】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる」という移行句は、請求項の範囲が、請求項において言及される特定の材料または工程、および請求された発明の「基本的および新規な特性(複数可)に実質的に影響を及ぼさないもの」を含むと解釈されるべきであることを意味する。In re Herz,537 F.2d 549,551-52,190 U.S.P.Q.461,463(CCPA 1976)(原文における強調)を参照されたい;MPEP§2111.03もまた参照されたい。したがって、本開示の請求項において使用される場合の用語「から本質的になる」は、「含む」と同等であると解釈されることを意図していない。
【0023】
本明細書で使用される場合、「核酸」という用語は、DNAもしくはRNAもしくはDNA-RNAハイブリッド一本鎖もしくは二重鎖の、センスもしくはアンチセンスであるかに関わらず、ワトソン-クリック塩基対形成による相補的核酸にハイブリダイズすることのできる自然発生もしくは合成されるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを指す。本発明の核酸は、ヌクレオチド類似体(例えば、BrdU、dUTP、7-deaza-dGTP)、および非リン酸ジエステルヌクレオシド間連鎖(例えば、ペプチド核酸(PNA)またはチオジエステル連鎖)もまた含み得る。特に、核酸としては、DNA、RNA、cDNA、gDNA、ssDNA、dsDNAまたはそれらの任意の組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0024】
「試料」、「生物学的試料」などの用語は、動物;動物からの組織もしくは器官;細胞(対象内か、対象から直接取り出したもの、もしくは培養中に維持された細胞もしくは培養細胞系統由来のもの);細胞溶解物(もしくは溶解物画分)もしくは細胞抽出物;細胞、細胞物質、もしくはウイルス物質由来の1つ以上の分子(例えば、ポリペプチドもしくは核酸)を含有する溶液;または本明細書に記載される通りにアッセイされるか、もしくはアッセイされ得る、天然に存在するか、もしくは天然に存在しない核酸を含有する溶液を指す。試料はまた、1つ以上の細胞、細胞成分、または限定されるものではないが、細胞、核、または無細胞核酸を含む核酸を含有する任意の体液または排泄物であってもよい。
【0025】
「体液」とは、限定されないが、動物(例えば、ヒトまたはヒト以外の動物)由来の液体、半固体、通気液体、液体-気体混合物などを含む、天然に存在する液体を意味する。そのような体液としては、限定されないが、唾液、痰、血清、血漿、血液、尿、粘液、汗、涙もしくは他の眼科用流体、耳の体液、小便(例えば、水疱もしくは潰瘍由来)、胃液、糞便、膵液、精液、泌乳もしくは月経の産物、髄液、体液性骨髄、またはリンパ液が挙げられ得る。
【0026】
「痰」とは、哺乳動物の鼻腔または口腔内に含まれるか、またはそこから排出されるムコイド物質を意味する。本明細書で使用される場合、痰は、一般に、唾液および肺を含む気道からの排出物を含む。
【0027】
「唾液」とは、耳下腺、顎下腺、および舌下腺を含む任意の唾液腺からの分泌物、または分泌物の組み合わせを意味し、場合によっては口腔腺からの分泌物と混合される。
【0028】
「ムコイド」とは、ムチンを含有する任意の体液を意味する。
【0029】
「ムチン」とは、それを分泌する細胞の周囲の培地の粘度を上昇させる任意のムコタンパク質を意味する。
【0030】
本明細書で使用される場合、値に関して、用語「約」は、記載された値の+/-10%またはそれによって表される量を意味する。例えば、本開示を通して、用語「約」は、構成要素または成分のパーセント濃度または組成(例えば、流体または液体混合物、水性混合物、溶液などの混合物中、場合によりまたは好ましくは、w/wパーセント、w/vパーセント、v/vパーセントなどとして測定される)に関して使用される。そのような場合、用語「約」および/または用語「+/-10%」は、列挙されたパーセントの+/-10パーセントポイントとは対照的に、述べられている数値の+/-10%を意味し、かつ/または含む。例として、構成要素または成分の20%(w/w)が、全混合物100mLあたり20gの構成要素または成分を反映する場合、用語「約」および/または用語「+/-10%」は、10%(w/w)~30%(w/w)の範囲ではなく、18g~22g(すなわち、18%(w/w)~22%(w/w))の記載された範囲を意味し、かつ/または含む。いわゆる「約」の値および/または+/-10%の代替は、述べられた値の+/-1%、+/-2%、+/-3%、+/-4%、+/-5%、+/-6%、+/-7%、+/-8%、または+/-9%を含み、このそれぞれが本明細書における用語「約」または+/-10%の使用の適切な代替または代用として考えられる。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「およそ」および「実質的に」は、(例えば、依然として所望の機能を果たす、または(所望もしくは予想される)結果を達成する)、述べられた量に近いある(またはあらゆる)量を表すかまたは意味する。例えば、用語「およそ」および「実質的に」は、述べられた量の10%、5%、1%、0.1%、0.01%、もしくは他のパーセントの範囲内またはそれ未満の量を指し得る。本明細書で使用される場合、用語「実質的に含まない」とは、(1)検出不能もしくは定量不可能な量、(2)検出可能もしくは定量可能な量を反映すると当業者によって一般に考えられる量未満もしくはそれより少ない量、および/または(3)機能的である、もしくは(所望のもしくは予想される)結果を達成することができると当業者によって一般に考えられる量未満もしくはそれより少ない量(例えば、10%、5%、1%、0.1%、0.01%、もしくは他のパーセント未満)を意味する。
【0032】
「適量」(「適量(q.s.)」または「適量(qs)」とも呼ばれる)とは、十分な量を意味する。したがって、「適量100%の」、「適量100%で提供される」、または「100%まで適量の」構成要素または成分は、構成要素または成分が、組成物を完成させるのに、または(列挙されているかどうかにかかわらず、全ての構成要素の)全体を100%にもたらすのに十分な量で提供されるか、または含まれることを示す。しかしながら、「適量100%の」、「適量100%で提供される」、または「100%まで適量の」(最終)構成要素または成分は、混合物が、「適量100%の」構成要素の直前に記載または列挙された構成要素からなる、それらから本質的になる、またはそれらのみを含有することを示すものではないことに留意されたい。言い換えれば、「適量100%の」および同様の用語は、その残りが何であれ、その残りの供給源を示す無制限の表現であることを意味する。
【0033】
「アルコール」とは、水酸基含有有機化合物の水混和性混合物を含む、水酸基を含有する水混和性有機化合物を意味する。
【0034】
「水性」とは、30(容量%または重量%)以上の水を含有する媒体または物質を意味する。
【0035】
「水溶液」とは、30容量%以上の水を含有する溶液または懸濁液を意味する。
【0036】
「変性剤」とは、それが添加されるものの天然の状態を変化させる物質を意味する。
【0037】
「カオトロピック剤」とは、カオトロピック活性を発揮する分子を意味する。当業者には理解されるように、カオトロピック活性を発揮する分子は、水分子間の水素結合ネットワークを破壊し、それによって疎水効果を弱めることによって、他の分子(溶液中)、主に高分子(タンパク質、核酸)の本来の状態の安定性に影響を及ぼし得る。したがって、カオトロピック活性を発揮する分子は、タンパク質変性活性を有し得る(またはタンパク質変性剤であり得る)。
【0038】
「抗菌剤」とは、存在しない場合の生物の成長速度と比較して、生物の成長速度を低下させる物質または物質の群を意味する。生物の成長速度の低下は、少なくとも5%、より望ましくは、少なくとも10%、さらに一層望ましくは、少なくとも20%、50%、または75%、最も望ましくは、90%以上であり得る。その定義はまた、生物の生存能力、毒性、または病原性に影響を与える物質にまで及ぶ。抗菌剤は、天然(例えば、細菌または他の供給源に由来する)、合成、または組換えのものであり得る。抗菌剤は、静菌性、殺菌性またはその両方であり得る。抗菌剤が、阻害された細胞の生存率に影響を与えずに、細胞分裂を阻害するのであれば静菌性である。抗菌剤が、細胞死を引き起こすのであれば殺菌性である。細胞死は、液体増殖培地中での細胞増殖の非存在(例えば、濁度の非存在)または固体表面上(例えば、寒天上のコロニー形成の非存在)によって、一般に検出される。当業者は、所与の濃度で静菌性である物質または物質群が、より高い濃度で殺菌性になり得ることを知っている。特定の静菌性物質は、どの濃度でも殺菌性を示さない。
【0039】
本明細書で使用される場合、「アセチルシステイン」または「N-アセチルシステイン」(NAC)は、N-アセチル-L-システイン、N-アセチル-D-システイン、およびラセミ体のN-アセチルシステインまたは(ラセミ体の)N-アセチル-L-システインおよびN-アセチル-D-システインの混合物を含む、任意の形態のアセチルシステインを含む。ある形態のアセチルシステインへの言及は、任意の形態のアセチルシステインへの具体的な言及を支持する。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「組成物」は、製品、配合物、および混合物、ならびに装置、機器、アセンブリ、キットなどを含む。同様に、「方法」という用語は、プロセス、手順、工程などを含む。
【0041】
システム、方法、および/または製品を含む本開示の様々な態様は、本質的に例示的な1つ以上の実施形態または実装形態を参照して例示され得る。本明細書で使用される場合、用語「実施形態」および「実装形態」は、「例、事例、または例示として役割を果たす」ことを意味し、本明細書に開示の他の態様よりも好ましいまたは有利であると必ずしも解釈されるべきではない。さらに、本開示または本発明の「実装形態」への言及は、その1つ以上の実施形態への具体的な言及を含み、またその逆もあり、その説明よりもむしろ添付の特許請求の範囲によって示される、本発明の範囲を限定することなく例示的な例を提供することを意図している。
【0042】
本明細書で使用される場合、本開示または本明細書で開示される実施形態の「特徴」は、当面の主題の、特性、構成要素、成分、要素、部材、部分、(方法)工程、または他の態様を指す。
【0043】
本開示全体を通して使用されるように、「し得る(can)」および「してもよい(may)」という言葉は、強制的な意味(すなわち、しなければならない(must)、を意味する)ではなく、許容的な意味(すなわち、可能性を有することを意味する)で使用される。さらに、「含む(including)」、「有する(having)」、「含む(involving)」、「含有する(containing)」、「特徴とする(characterized by)」という用語、その変形(例えば、「含む(includes)」、「有する(has)」および「含む(involves)」、「含有する(contains)」など)、ならびに特許請求の範囲を含む本明細書で使用される同様の用語は、包括的でありかつ/または変更可能であるものとし、例示的に、言葉「含む(comprising)」およびその変形(例えば、「含む(comprise)」および「含む(comprises)」が同じ意味を有するものとし、かつ追加の列挙されていない要素または方法ステップを除外しない。
【0044】
本明細書で使用される「または」という語は、特定のリストの任意の1つのメンバーを意味し、そのリストのメンバーの任意の組み合わせも含む。
【0045】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、別段の明確な指示がない限り、単数および複数の指示対象の両方であると各々考慮され、含み、かつ具体的に開示する。例えば、「タンパク質」への言及は、1つ、ならびに2つ以上のタンパク質を考慮し、かつ具体的に開示する。同様に、複数の指示対象の使用は、必ずしもそのような指示対象の複数を必要としないが、別段の明確な指示がない限り、そのような指示対象の1つ、ならびに2つ以上を考慮し、含み、かつ具体的に開示する。
【0046】
本開示の実施形態は、本明細書に記載の2つ以上の特徴の1つ以上の組み合わせを含み得ることに留意されたい。本明細書で使用される場合、「特徴(複数可)」および同様の用語は、例えば、組成物、成分、構成要素、要素、メンバー、部材、部分、システム、方法、構成、パラメータ、特性などを含み得る。実施形態は、本開示の他の態様または実施形態を含む、本開示の他の場所に記載された特徴、選択肢、および/または可能性のいずれかを含み得る。本明細書に記載の前述の、以下の、および/または他の特徴のそれぞれが、本開示の別個の実施形態を表すことにも留意されたい。特徴はまた、それぞれが本開示において企図される、独特の実施形態を形成するために、1つ以上の追加の特徴を含むか、または含まずに、またはそれらの間で実行されて、任意の適切な組み合わせおよび/または順序で別の1つ以上の他の特徴と組み合わせられ得る、かつ/または組み合わせることができる。さらに、そのような特徴のうちの任意の2つ以上のそのような組み合わせは、本開示の別個の実施形態を表す。したがって、本開示は、本明細書に詳細に記載されている例示的な実施形態の特定の組み合わせに限定されず、本開示の特定の実施形態に関連する特定の特徴の開示は、該特徴の特定の実施形態への適用または包含を制限するものとして解釈されるべきではない。
【0047】
加えて、特色が特定の実施形態で必要とされていると記載されていない限り、様々な実施形態に記載の特色は任意選択的であり、本開示の他の実施形態に含まれ得ない。さらに、特色がそれと組み合わせて別の特色を必要とするものとして記載されていない限り、本明細書の任意の特色は、本明細書に開示の同じかまたは異なる実施形態の任意の他の特色と組み合わせられ得る。同様に、本明細書に記載の、および/または特許請求の範囲に列挙される任意の方法に列挙される任意の工程は、任意の好適な順序で実行され得、特に(明示的または黙示的に)記載されない限り、記載および/または列挙される順序に必ずしも限定されない。しかしながら、そのような工程はまた、本開示の特定の実施形態では、特定の順序で実施されることが必要とされ得る。
【0048】
2つ以上の値、または値の範囲(例えば、より小さい、より大きい、少なくとも、および/もしくは特定の値まで、ならびに/または2つの列挙された値の間)が開示または列挙されている場合、開示の値または値の範囲内の任意の特定の値または値の範囲は、同様に、本明細書において具体的に開示および考慮されることもまた理解されるであろう。したがって、約10単位以下または0~10単位である例示的な測定値(例えば、長さ、幅、厚さなど)の開示は、例示的に、(i)9単位、5単位、1単位、または0単位および/もしくは10単位を含む0~10単位の任意の他の値の測定値;ならびに/または(ii)9単位~1単位、8単位~2単位、6単位~4単位、および/もしくは0単位~10単位の任意の他の値の範囲の測定値の特定の開示を含む。
【0049】
理解を容易にするために、可能な場合は、本開示の異なる実施形態に共通の同様の要素を表記するために、同様の参照(すなわち、構成要素および/または要素の同様の名称)が使用されている。同様に、同様の構成要素、または同様の機能を有する構成要素には、可能な場合は、同様の参照表記で提供されるであろう。本明細書では、例示的な実施形態を説明するために特定の言語が使用されるであろう。それでもなお、それによって本開示の範囲を限定することを意図しないことが理解されるであろう。むしろ、例示的な実施形態を説明するために使用される言語は、(かかる言語が不可欠であると明らかに本明細書に記載されない限り)例示に過ぎず、開示の範囲を限定するものと解釈されるものではないことが理解されるものである。
【0050】
例示的な実施形態
以下の実施形態の説明は、本開示の1つ以上の実施形態に関連する開示を含む。したがって、いくつかの実施形態は、本開示の範囲から逸脱することなく、以下の実施例に開示される特徴を含み得る。言い換えれば、以下の実施例に開示される特徴は、本明細書に開示される任意の1つ以上の実施形態に含まれ得る、かつ/または組み込まれ得る。
【0051】
組成物
本開示のいくつかの実施形態は組成物を含む。組成物は、精製および分析のために実行可能な核酸源として痰または唾液を提供することができる。組成物は、核酸の化学的安定化ならびにデオキシリボヌクレアーゼを含むヌクレアーゼおよび微生物増殖の阻害の有利な特性を提供する。唾液試料中の核酸の化学的安定化は、緩衝剤、酸、キレート剤、粘液溶解剤、カオトロピック剤、界面活性剤、およびアルコールを使用することによって達成され得る。
【0052】
本開示の組成物は、生物学的試料、例えば、ムチン含有体液と混合される場合、周囲条件下、室温で長期間にわたって核酸を保存することができる。試料を冷蔵することもできるが、核酸の回収および精製の前に試料を凍結する必要はない。本開示の特定の組成物の特性は、(a)核酸を化学的に安定化し、(b)唾液中に存在し得るヌクレアーゼを阻害し、(c)オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを精製/増幅するために使用されるタンパク質分解酵素および他の試薬と適合性があることである。
【0053】
担体
少なくとも一実施形態では、組成物は担体を含み得る。好ましくは、担体は、液体担体または溶媒、より好ましくは水性担体または溶媒、さらにより好ましくは水であり得る。最も好ましくは、担体は、精製され、ろ過(例えば、0.2ミクロンろ過)され、蒸留され、かつ/または脱イオンされた水であり得るか、またはそれを含み得る。したがって、組成物は担体を含み得る。担体は、ろ過水、精製水、蒸留水、または脱イオン水などの水であり得るか、またはそれを含み得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、組成物は、100%まで適量の担体を含み得る。いくつかの実施形態では、組成物は、10~60%(w/w)、好ましくは15~55%(w/w)、より好ましくは20~50%(w/w)、さらにより好ましくは25~45%(w/w)、さらにより好ましくは28~40%(w/w)、さらにより好ましくは30~35%(w/w)、さらにより好ましくは31~34%(w/w)、さらにより好ましくは32~33%(w/w)(またはその間の任意の値もしくは値の範囲)の担体を含み得る。最も好ましくは、組成物は、(約)32.602%(w/w)の水を含み得る。
【0055】
カオトロピック剤
組成物は1つ以上のカオトロピック剤を含み得る。1つ以上の実施形態では、カオトロピック剤(複数可)はタンパク質変性剤であり得る。いくつかの実施形態では、カオトロピック剤は、塩化グアニジニウムおよび/またはチオシアン酸グアニジニウムからなる群から選択され得る。したがって、少なくとも一実施形態では、組成物はカオトロピック剤を含み得る。好ましくは、カオトロピック剤は、グアニジン(もしくはグアニジニウム)またはその適切な塩であり得るか、またはそれを含み得る。より好ましくは、カオトロピック剤は、チオシアン酸グアニジンであり得るか、またはそれを含み得る。少なくとも一実施形態では、カオトロピック剤は、チオシアネートであり得るか、またはそれを含み得る。少なくとも一実施形態では、カオトロピック剤は、グアニジンイソチオシアネート、塩化グアニジン、塩酸グアニジン、ヨウ化グアニジニウムなどであり得るか、またはそれを含み得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、カオトロピック剤は、乾燥形態、固体形態、粉末形態、無水形態、および/または顆粒形態であり得るか、それを有し得るか、それを含み得るか、またはそれで提供され得る。いくつかの実施形態では、カオトロピック剤は、少なくとも、最大、および/または約、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%(CoAなどの適切な材料アッセイによって測定される)の純度を有し得る。いくつかの実施形態では、カオトロピック剤は、任意の適切な濃度を有するストック溶液の形態(例えば、水中)を含み得るか、またはその形態で提供され得る。いくつかの実施形態では、カオトロピック剤は、(CoAなどの適切な材料アッセイによって測定される)溶液中のカオトロピック剤の濃度に実質的に相当する純度を有し得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、組成物は、20~50%(w/w)、好ましくは25~49%(w/w)、より好ましくは30~48%(w/w)、さらにより好ましくは35~47%(w/w)、さらにより好ましくは40~46%(w/w)、さらにより好ましくは42~45%(w/w)、さらにより好ましくは43~44%(w/w)(またはその間の任意の値もしくは値の範囲)のカオトロピック剤(例えば、チオシアン酸グアニジン)を含み得る。最も好ましくは、組成物は、(約)43.92%(w/w)のチオシアン酸グアニジンを含み得る。カオトロピック剤(例えば、チオシアン酸グアニジン)は、約43.92%(w/w)で、または約35%~約50%(w/w)、好ましくは約40%~約46%(w/w)、より好ましくは約42%~約45%(w/w)、さらにより好ましくは約43%~約44%(w/w)の範囲で組成物に含まれ得る。
【0058】
緩衝剤
組成物は、1つ以上の緩衝剤(または緩衝液、pH緩衝液など)を含み得る。緩衝剤の例としては、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Trisとしても知られる;Tris塩基、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、THAM、トロメタモール)またはその適切な配合物(例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩またはTris-HCl)、Trizma(登録商標)塩基(例えば、水中Tris40%(w/w)のストック溶液)、HEPES、BES、MOPS、HEPES、TAE、TBE、リン緩衝液、ホウ酸ナトリウム緩衝液、カコジル酸ナトリウム緩衝液などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、緩衝剤は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)であり得るか、またはそれを含み得る。より好ましくは、緩衝剤は、Tris-HClであり得るか、またはそれを含み得る。最も好ましくは、緩衝剤は、Trizma(登録商標)塩基であり得るか、またはそれを含み得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、緩衝剤は、乾燥形態、固体形態、粉末形態、無水形態、および/または顆粒形態であり得るか、それを有し得るか、それを含み得るか、またはそれで提供され得る。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、少なくとも、最大、および/または約、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%(CoAなどの適切な材料アッセイによって測定される)の純度を有し得る。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、任意の適切な濃度(例えば、水中Tris~40%(w/w)のストック溶液)を有するストック溶液の形態(例えば、水中)を含み得るか、またはその形態で提供され得る。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、(CoAなどの適切な材料アッセイによって測定される)溶液中の緩衝剤の濃度に実質的に相当する純度を有し得る。
【0060】
緩衝剤は、約2.65%(w/w)で、または約0.1%~約5%(w/w)、好ましくは約0.5%~約4.5%(w/w)、より好ましくは約0.75%~約4%(w/w)、さらにより好ましくは約1%~約3.5%(w/w)、さらにより好ましくは約1.5%~約3.25%(w/w)、さらにより好ましくは約2%~約3%(w/w)、さらにより好ましくは約2.5%~約2.8%(w/w)の範囲で組成物に含まれ得る。いくつかの実施形態では、組成物は、1~5%(w/w)、好ましくは1.25~4.5%(w/w)、より好ましくは1.5~4%(w/w)、さらにより好ましくは1.75~3.75%(w/w)、さらにより好ましくは2~3.5%(w/w)、さらにより好ましくは2.25~3%(w/w)、さらにより好ましくは2.5~2.75%(w/w)(またはその間の任意の値もしくは値の範囲)の緩衝剤(例えば、Tris)を含み得る。最も好ましくは、組成物は、(約)2.65%(w/w)のTrisを含み得る。
【0061】
キレート剤
少なくとも一実施形態では、組成物はキレート剤(またはキレート化剤)を含み得る。好ましくは、キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはその適切な塩および/もしくは水和物であり得るか、またはそれを含み得る。より好ましくは、キレート剤は、EDTA二ナトリウム塩であり得るか、もしくはそれを含み得るか、またはそれとして提供され得る。さらにより好ましくは、キレート剤は、EDTA二ナトリウム(塩)二水和物であり得るか、もしくはそれを含み得るか、またはそれとして提供され得る。少なくとも一実施形態では、キレート剤は、エチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N、N、N’、N’-四酢酸(EGTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン(または1,2-ジアミノエタン)などであり得るか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、キレート剤は、対イオン(例えば、ナトリウム)を含むか、含有するか、またはそれと共に提供される。少なくとも一実施形態では、キレート剤は、水和物(例えば、二水和物)を含むか、含有するか、またはそれとして提供される。
【0062】
組成物は1つ以上のキレート剤を含み得る。組成物のキレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、シクロヘキサンジアミン四酢酸(CDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、テトラアザシクロドデカン四酢酸(DOTA)、テトラアザシクロテトラデカン四酢酸(TETA)、デスフェリオキシミン、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン(もしくは1,2-ジアミノエタン)、またはそれぞれのそのキレート類似体、塩、および/もしくは水和物からなる群から選択され得る。好ましくは、キレート剤は、EDTA(例えば、EDTA二ナトリウム塩、好ましくはEDTA二ナトリウム(塩)二水和物としての)であり得るか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、キレート剤は、対イオン(例えば、ナトリウム)を含むか、含有するか、またはそれと共に提供される。少なくとも一実施形態では、キレート剤は、水和物(例えば、二水和物)を含むか、含有するか、またはそれとして提供される。
【0063】
いくつかの実施形態では、キレート剤は、乾燥形態、固体形態、粉末形態、無水形態、および/または顆粒形態であり得るか、それを有し得るか、それを含み得るか、またはそれで提供され得る。いくつかの実施形態では、キレート剤は、少なくとも、最大、および/または約、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%(CoAなどの適切な材料アッセイによって測定される)の純度を有し得る。いくつかの実施形態では、キレート剤は、任意の適切な濃度を有するストック溶液の形態(例えば、水中)を含み得るか、またはその形態で提供され得る。いくつかの実施形態では、キレート剤は、(CoAなどの適切な材料アッセイによって測定される)溶液中のキレート剤の濃度に実質的に相当する純度を有し得る。
【0064】
キレート剤(例えば、EDTA)は、約0.81%(w/w)で、または約0.05%~約2.5%(w/w)、好ましくは約0.1%~約2%(w/w)、より好ましくは約0.5%~約1%(w/w)、さらにより好ましくは約0.75%~約0.9%(w/w)の範囲で組成物に含まれ得る。いくつかの実施形態では、組成物は、0.05~2.5%(w/w)、好ましくは0.1~2.25%(w/w)、より好ましくは0.25~2%(w/w)、さらにより好ましくは0.5~1.75%(w/w)、さらにより好ましくは0.6~1.5%(w/w)、さらにより好ましくは0.7~1.25%(w/w)、さらにより好ましくは0.75~1%(w/w)(またはその間の任意の値もしくは値の範囲)のキレート剤(例えば、EDTA)を含み得る。最も好ましくは、組成物は、(約)0.81%(w/w)のEDTAまたはEDTA二ナトリウム(塩)二水和物を含み得る。
【0065】
界面活性剤
少なくとも一実施形態では、組成物は界面活性剤または洗浄剤を含み得る。好ましくは、界面活性剤は、ラウロイルサルコシネートであり得るか、またはそれを含み得る。より好ましくは、界面活性剤は、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム(SLS)であり得るか、またはそれを含み得る。少なくとも一実施形態では、界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ポリソルベート(Tween(商標))、ラウリルジメチルアミンオキシド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ポリエトキシル化アルコール、ポリオキシエチレン、ソルビタン、オクトキシノール(Triton X100(商標))、N、N-ジメチルドデシルアミン-N-オキシド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HTAB)、ポリオキシル10ラウリルエーテル、胆汁酸塩(デオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム)、ポリオキシルヒマシ油(Cremophor(商標))、ノニルフェノールエトキシレート(Tergitol(商標))、シクロデキストリン、レシチン、塩化メチルベンゼトニウム(Hyamine(商標))などからなる群から選択される1つ以上の構成要素であり得るか、またはそれを含み得る。組成物は、尿素、過塩素酸塩、ドデシル硫酸(ナトリウム)(SDS)、および/またはラウロイルサルコシン酸(ナトリウム)(SLS)、好ましくはラウロイルサルコシン酸ナトリウム(SLS)などの界面活性剤または洗浄剤を含み得る。いくつかの実施形態では、SLSは、SDSまたは他の(溶解性が低い)界面活性剤よりも好ましい可能性がある。
【0066】
いくつかの実施形態では、界面活性剤は、乾燥形態、固体形態、粉末形態、無水形態、および/または顆粒形態であり得るか、それを有し得るか、それを含み得るか、またはそれで提供され得る。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、少なくとも、最大、および/または約、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%(CoAなどの適切な材料アッセイによって測定される)の純度を有し得る。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、任意の適切な濃度(例えば、約10%、15%、20%、25%、28%、29%、30%、32%、35%、40%、または45%(w/w)の水溶液(例えば、水中))を有するストック溶液の形態(例えば、水中)を含み得るか、またはその形態で提供され得る。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、(CoAなどの適切な材料アッセイによって測定される)溶液中の界面活性剤の濃度(例えば、約30%(w/w))に実質的に相当する純度を有し得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、界面活性剤(例えば、SLS)は、約0.279%(w/w)で組成物に含まれ得る。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、約0.01%~約5%(w/w)、好ましくは約0.025%~約2.5%(w/w)、より好ましくは約0.05%~約2%(w/w)、さらにより好ましくは約0.075%~約1.5%(w/w)、さらにより好ましくは約0.1%~約1%(w/w)、さらにより好ましくは約0.15%~約0.5%(w/w)、さらにより好ましくは約0.2%~約0.4%(w/w)、さらにより好ましくは約0.25%~約0.3%(w/w)の範囲で組成物に含まれ得る。いくつかの実施形態は、0.01%~5%(w/w)、好ましくは0.025%~2.5%(w/w)、より好ましくは0.05%~2%(w/w)、さらにより好ましくは0.075%~1.5%(w/w)、さらにより好ましくは0.1%~1%(w/w)、さらにより好ましくは0.15%~0.5%(w/w)、さらにより好ましくは0.2%~0.4%(w/w)、さらにより好ましくは0.25%~0.3%(w/w)、最も好ましくは0.279%(w/w)の界面活性剤またはSLSを含む。少なくとも一実施形態では、界面活性剤(例えば、SLS)は、~30%のストック溶液(水溶液)、またはその等価物の、約0.93%(w/w)で組成物に含まれ得る。
【0068】
アルコール
少なくとも一実施形態では、組成物はアルコールを含み得る。好ましくは、アルコールは、エタノールであり得るか、またはそれを含み得る。より好ましくは、アルコールは、エタノールと1つ以上の追加の化学物質または構成要素との混合物であり得るか、またはそれを含み得る。少なくとも一実施形態では、1つ以上の追加の化学物質または構成要素は、イソプロパノールであり得るか、またはそれを含み得る。さらにより好ましくは、アルコールは、エタノールとイソプロパノールとの混合物であり得るか、またはそれを含み得る。少なくとも一実施形態では、1つ以上の追加の化学物質または構成要素は、メタノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノールなどであり得るか、またはそれを含み得る。少なくとも一実施形態では、アルコールは、特別変性アルコール(SDA)であり得るか、またはそれを含み得る。より好ましくは、アルコールは、約95%(v/v)のエタノールと約5%(v/v)イソプロパノールとの混合物を含むことが当業者に知られているSDA 3Cであり得るか、またはそれを含み得る。組成物は、エタノール、メタノール、プロパノール、および/またはイソプロパノールなどのアルコール、好ましくは特別変性アルコール(SDA)またはエタノールと、メタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、トリフルオロエタノール、フェノール、または2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールなどの別のアルコールとの混合物、より好ましくはエタノールとイソプロパノールとの混合物、さらにより好ましくはエタノールとイソプロパノールなどの1つ以上の追加の化学物質または構成要素との混合物を含み得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、界面活性剤は、乾燥形態、固体形態、粉末形態、無水形態、および/または顆粒形態であり得るか、それを有し得るか、それを含み得るか、またはそれで提供され得る。いくつかの実施形態では、アルコールは、液体、水溶液、および/または溶液の形態であり得るか、それを有し得るか、それを含み得るか、またはそれで提供され得る。いくつかの実施形態では、アルコールは、アルコール(例えば、水中)の任意の適切な濃度を有するストック溶液の形態(例えば、水中)を含み得るか、またはその形態で提供され得る。いくつかの実施形態では、アルコールは実質的に純粋であり得るか、または実質的に純粋なアルコールの混合物であり得る。いくつかの実施形態では、アルコールは、少なくとも、最大、および/または約、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%(または純粋なエチルアルコール、200プルーフ)(CoAなどの適切な材料アッセイによって測定される)の純度を有し得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、アルコールは、約95%(v/v)のエタノールと約5%(v/v)のイソプロパノールとの、もしくはそれを含む、混合物またはストック溶液であり得るか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、アルコールは、90~99%(v/v)のエタノールと約1~10%(v/v)のイソプロパノールとの、もしくはそれを含む、混合物またはストック溶液であり得るか、またはそれを含み得る。特定の実施形態では、アルコールは、50~99%(v/v)のエタノールと1~50%(v/v)のイソプロパノールとの混合物を含み得る。より好ましくは、アルコールは、60~98%(v/v)のエタノールと2~40%(v/v)のイソプロパノールとの混合物を含み得る。さらにより好ましくは、アルコールは、75~97%(v/v)のエタノールと3~25%(v/v)のイソプロパノールとの混合物を含み得る。さらにより好ましくは、アルコールは、80~96%(v/v)のエタノールと4~20%(v/v)のイソプロパノールとの混合物を含み得る。さらにより好ましくは、アルコールは、85~95%(v/v)のエタノールと5~15%(v/v)のイソプロパノールとの混合物を含み得る。さらにより好ましくは、アルコールは、90~95%(v/v)のエタノールと5~10%(v/v)のイソプロパノールとの混合物を含み得る。さらにより好ましくは、アルコールは、92~95%(v/v)のエタノールと5~8%(v/v)のイソプロパノールとの混合物を含み得る。さらにより好ましくは、アルコールは、95%(v/v)のエタノールと5%(v/v)のイソプロパノールとの混合物を含み得る。最も好ましくは、アルコールは、SDA 3Cであり得るか、またはそれを含み得る。
【0071】
アルコール(例えば、SDA 3C)は、約17.73%(w/w)で、または約10%~約25%(w/w)、好ましくは約12%~約22%(w/w)、より好ましくは約15%~約20%(w/w)、さらにより好ましくは約16%~約19%(w/w)、さらにより好ましくは約17%~約18%(w/w)の範囲で組成物に含まれ得る。いくつかの実施形態では、組成物に含まれるアルコールの量は、典型的、伝統的、または既存の核酸保存溶液よりも少なくてもよい(例えば、約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、または60%未満)(例えば、組成物を出荷または輸送に対してより修正可能にする)。いくつかの実施形態では、組成物は、5~25%(w/w)、好ましくは10~22%(w/w)、より好ましくは12~20%(w/w)、さらにより好ましくは15~19%(w/w)、さらにより好ましくは16~18.5%(w/w)、さらにより好ましくは17~18.25%(w/w)、さらにより好ましくは17.5~18%(w/w)(またはその間の任意の値もしくは値の範囲)のアルコールを含み得る。
【0072】
好ましくは、アルコールは、エタノールとイソプロパノールなどの1つ以上の追加の化学物質または構成要素との混合物、より好ましくは、約95%(v/v)のエタノールと約5%(v/v)のイソプロパノールとの混合物を含む。さらにより好ましくは、アルコールは、特別変性アルコール(SDA)、さらにより好ましくはSDA 3C(すなわち、~95%(v/v)のエタノールと~5%(v/v)のイソプロパノールとの混合物)である。最も好ましくは、組成物は、(約)17.73%(w/w)のSDA 3Cを含み得る。いくつかの実施形態では、アルコール(例えば、SDA 3C)は、約16.84%(w/w)のエタノール、または約10%~約25%(w/w)、好ましくは約12%~約22%(w/w)、より好ましくは約15%~約20%(w/w)、さらにより好ましくは約16%~約18%(w/w)、さらにより好ましくは約16.5%~約17%(w/w)の範囲のエタノール、および約0.89%(w/w)のイソプロパノール、または約0.05%~約2.5%(w/w)、好ましくは約0.1%~約2%(w/w)、より好ましくは約0.5%~約1.5%(w/w)、さらにより好ましくは約0.75%~約1.25%(w/w)、さらにより好ましくは約0.8%~約1%(w/w)の範囲のイソプロパノールで組成物に含まれ得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、組成物に含まれるアルコールの量は、典型的、伝統的、または既存の核酸保存溶液よりも少なくてもよい(例えば、約50%未満)(例えば、組成物を出荷または輸送に対してより修正可能にする)。
【0074】
酸
少なくとも一実施形態では、組成物は酸を含み得る。好ましくは、酸は、塩酸(HCl)であり得るか、またはそれを含み得る。少なくとも一実施形態では、酸は、臭化水素酸(HBr)、過塩素酸(HClO4)、硝酸(HNO3)、または硫酸(H2SO4)であり得るか、またはそれを含み得る。少なくとも一実施形態では、酸は、炭酸(H2CO3)または酢酸(CH3COOH)であり得るか、またはそれを含み得る。少なくとも一実施形態では、酸は、リン酸(H3PO4)、ホウ酸(H3BO3)、またはエメラルドセーフ酸(ESA)などであり得るか、またはそれを含み得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、酸は、乾燥形態、固体形態、粉末形態、無水形態、および/または顆粒形態であり得るか、それを有し得るか、それを含み得るか、またはそれで提供され得る。いくつかの実施形態では、酸は、少なくとも、最大、および/または約、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%(CoAなどの適切な材料アッセイによって測定される)の純度を有し得る。いくつかの実施形態では、酸は、任意の適切な濃度(例えば、約10%、15%、20%、25%、30%、32%、35%、37%、38%、40%、または45%(w/w)の水溶液(例えば、水中))を有するストック溶液の形態(例えば、水中)を含み得るか、またはその形態で提供され得る。いくつかの実施形態では、酸は、(CoAなどの適切な材料アッセイによって測定される)溶液中の酸の濃度(例えば、約37%(w/w))に実質的に相当する純度を有し得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、組成物は、pH約8.0、またはpH7.5~9.5、pH6.5~9.5、pH7~9、pH7.2~8.8、pH7.4~8.6、pH7.5~8.5、pH7.6~8.4、もしくはpH7.8~8.2まで適量(もしくはその間の任意の値もしくは値の範囲)の酸(例えば、塩酸)を含み得る。いくつかの実施形態では、組成物のpHは、約5超~約12未満、好ましくは約6~約11のpH範囲内、より好ましくは約6~約10のpH範囲内、さらにより好ましくは約7~約9のpH範囲、さらにより好ましくは約7.5~約8.5のpH範囲内、最も好ましくは約8.0のpHであり得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、酸(例えば、塩酸)は、約0.4%(w/w)で、または約0.01%~約5%(w/w)、好ましくは約0.025%~約2.5%(w/w)、より好ましくは約0.05%~約2%(w/w)、より好ましくは約0.1%~約1.5%(w/w)、より好ましくは約0.25%~約1%(w/w)、より好ましくは約0.5%~約0.75%(w/w)、より好ましくは約0.3%~約0.5%(w/w)の範囲で組成物に含まれ得る。いくつかの実施形態では、組成物は、0.005~5%、好ましくは0.01~2.5%、より好ましくは0.025~1.5%、さらにより好ましくは0.05~1%、さらにより好ましくは0.1~0.75%、さらにより好ましくは0.25~0.5%の酸(例えば、塩酸)を含み得る。少なくとも一実施形態では、酸(例えば、塩酸)は、~37%(w/w)または~12Mのストック溶液(水溶液)、またはその等価物の、約1.08%(w/w)で組成物に含まれ得る。最も好ましくは、組成物は、(約)1.08%(w/w)の37%(w/w)塩酸、もしくはその等価物、またはpH(約)8.0まで適量の塩酸を含み得る。
【0078】
いかなる理論にも縛られることなく、異なる酸が、異なる「強さ」またはプロトン(H+)を失う酸の能力もしくは傾向を有することに留意されたく、それが当業者には理解されるであろう。強酸は、溶液中で完全にイオン化(解離)するものである(十分な溶媒がある場合)。例えば、水中では、1モルの強酸HAが溶解し、1モルのH+(ヒドロニウムイオンH3O+およびそれ以上の凝集体として)および1モルの共役塩基A-を生じる。本質的に、非イオン化酸HAは全く残らない。強酸のいくつかの例は、塩酸(HCl)、ヨウ化水素酸(HI)、臭化水素酸(HBr)、過塩素酸(HClO4)、硝酸(HNO3)および硫酸(H2SO4)である。水溶液中では、これらはそれぞれ本質的に100%イオン化する。対照的に、弱酸は部分的にしか解離しない。水中の例には、炭酸(H2CO3)および酢酸(CH3COOH)が含まれる。平衡状態では、酸と共役塩基の両方が溶液中に存在する。より強い酸は、より弱い酸よりも大きい酸解離定数(Ka)および小さい対数定数(pKa=-logKa)を有する。強い酸ほどプロトンH+を失いやすい。脱プロトン化の容易さに寄与する2つの重要な要因は、H-A結合の極性およびH-A結合の強度を決定する原子Aのサイズである。酸強度はまた共役塩基の安定性にも依存する。
【0079】
上記に照らして、組成物のpHを所望のレベルにするのに必要な各酸の量(w/w)は異なる。例えば、(約)1.08%(w/w)の37%(w/w)塩酸(水中)は、本開示の特定の実施形態をpH(約)8.0にするのに十分であり得るが、1.08%(w/w)の37%(w/w)酢酸(水中)は、同様の実施形態をpH(約)8.0にするには弱すぎ得、1.08%(w/w)の37%(w/w)硫酸(水中)は、実施形態をpH(約)8.0にするには強すぎ得、1.08%(w/w)の37%(w/w)硝酸(水中)は、アルコールなどを酸化し得る。いかなる理論にも縛られることなく、当業者であっても、どの酸が本開示の1つ以上の実施形態において適切であるかをさらなる実験で決定することができない場合がある。
【0080】
粘液溶解剤
少なくとも一実施形態では、組成物は粘液溶解剤を含み得る。1つ以上の実施態様では、粘液溶解剤は、還元剤であり得るか、またはそれを含み得る。好ましくは、粘液溶解剤は、アセチルシステイン(すなわち、N-アセチル-L-システイン、N-アセチル-D-システイン、およびラセミ体N-アセチルシステインを含むN-アセチルシステイン(NAC)またはN-アセチル-L-システインおよびN-アセチル-D-システインの(ラセミ)混合物)であり得るか、またはそれを含み得る。より好ましくは、粘液溶解剤は、N-アセチル-L-システインであり得るか、またはそれを含み得る。少なくとも一実施形態では、粘液溶解剤は、N-アセチルシステイン(N-アセチル-L-システイン)、アスコルビン酸、ジチオナイト、エリソルベート、システイン、グルタチオン、ジチオトレイトール、2-メルカプトエタノール、ジエリスリトール、樹脂担持チオール、樹脂担持ホスフィン、ビタミンE、および/またはトロロックス、またはそれらの塩、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、カリウムヨウ化物、塩化アンモニウム、グアイフェネシン(guaiphenesin)(またはグアイフェネシン(guaifenesin))、トルバルサム、バサカ、アンブロキソール、カルボシステイン、エルドステイン、メシステイン、ドルナーゼアルファなどであり得るか、またはそれを含み得る。組成物は、1つ以上の粘液溶解剤を含み得る。好ましくは、粘液溶解剤は、アスコルビン酸、エリソルベート、N-アセチルシステイン、ジチオトレイトール、または2-メルカプトエタノールであり、最も好ましくは、粘液溶解剤は、N-アセチルシステインである。
【0081】
1つ以上の実施態様では、組成物は、アスコルビン酸、ジチオナイト、エリソルベート、ジチオトレイトール、2-メルカプトエタノール、ジエリスリトール、樹脂担持チオール、樹脂担持ホスフィン、ビタミンE、トロロックス、および/またはそれらの塩を含有しない。少なくとも一実施形態は、アスコルビン酸、ジチオナイト、エリソルベート、ジチオトレイトール、2-メルカプトエタノール、ジエリスリトール、樹脂担持チオール、樹脂担持ホスフィン、ビタミンE、トロロックス、および/またはそれらの塩を(実質的に)含まない。少なくとも一実施形態は、N-アセチル-L-システイン以外に粘液溶解剤を(実質的に)含まない。
【0082】
いくつかの実施形態では、粘液溶解剤は、乾燥形態、固体形態、粉末形態、無水形態、および/または顆粒形態であり得るか、それを有し得るか、それを含み得るか、またはそれで提供され得る。いくつかの実施形態では、粘液溶解剤は、少なくとも、最大、および/または約、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%(CoAなどの適切な材料アッセイによって測定される)の純度を有し得る。いくつかの実施形態では、粘液溶解剤は、任意の適切な濃度を有するストック溶液の形態(例えば、水中)を含み得るか、またはその形態で提供され得る。いくつかの実施形態では、粘液溶解剤は、(CoAなどの適切な材料アッセイによって測定される)溶液中の粘液溶解剤の濃度に実質的に相当する純度を有し得る。
【0083】
粘液溶解剤(例えば、N-アセチルシステイン)は、約0.093%(w/w)で、または約0.01%~約0.5%(w/w)、好ましくは約0.025%~約0.25%(w/w)、より好ましくは約0.05%~約0.2%(w/w)、さらにより好ましくは約0.075%~約0.15%(w/w)、さらにより好ましくは約0.08%~約0.1%(w/w)の範囲で組成物に含まれ得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、組成物は、0.005~0.25%(w/w)、好ましくは0.005~0.2%(w/w)、より好ましくは0.01~0.2%(w/w)、さらにより好ましくは0.025~0.175%(w/w)、さらにより好ましくは0.05~0.165%(w/w)、さらにより好ましくは0.075~0.15%(w/w)、さらにより好ましくは0.08~0.125%(w/w)、さらにより好ましくは0.09~0.1%(w/w)(またはその間の任意の値もしくは値の範囲)の粘液溶解剤(例えば、N-アセチル-L-システイン)を含み得る。最も好ましくは、組成物は、(約)0.093%(w/w)のN-アセチル-L-システインを含み得る。
【0085】
視覚的指示薬
少なくとも一実施形態は視覚的指示薬を含み得る。好ましくは、視覚的指示薬は着色剤であり得るか、またはそれを含み得る。より好ましくは、視覚的指示薬は、染料または着色染料であり得るか、またはそれを含み得る。さらにより好ましくは、視覚的指示薬は、青色染料であり得るか、またはそれを含み得る。最も好ましくは、視覚的指示薬は、FD&C Blue No.1であり得るか、またはそれを含み得る。組成物は、視覚的指示薬、好ましくは着色剤、より好ましくは着色染料、さらにより好ましくは青色染料、さらにより好ましくはFD&C Blue No.1を含み得る。
【0086】
いくつかの実施形態では、視覚的指示薬は、乾燥形態、固体形態、粉末形態、無水形態、および/または顆粒形態であり得るか、それを有し得るか、それを含み得るか、またはそれで提供され得る。いくつかの実施形態では、視覚的指示薬は、少なくとも、最大、および/または約、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%(CoAなどの適切な材料アッセイによって測定される)の純度を有し得る。いくつかの実施形態では、視覚的指示薬は、任意の適切な濃度(例えば、約0.01%、0.05%、0.075%、0.1%、0.125%、0.15%、0.175%、0.2%、0.25%、0.3%、または0.5%(w/w)の水溶液(例えば、水中))を有するストック溶液の形態(例えば、水中)を含み得るか、またはその形態で提供され得る。いくつかの実施形態では、ストック溶液は、乾燥、固形、粉末状、無水、および/または粒状物質を使用して作製することができる。いくつかの実施形態では、視覚的指示薬は、(CoAなどの適切な材料アッセイによって測定される)溶液中の酸の濃度(例えば、約0.2%(w/w))に実質的に相当する純度を有し得る。
【0087】
視覚的指示薬(例えば、FD&C Blue No.1)は、約0.00037%(w/w)、または約0.00005%~約0.001%(w/w)、好ましくは約0.0001%~約0.00075%(w/w)、より好ましくは約0.0002%~約0.0005%(w/w)、さらにより好ましくは約0.0003%~約0.0004%(w/w)の範囲などの任意の視覚的に適切な量で組成物に含まれ得る。いくつかの実施形態では、組成物は、可視(視覚的に適切な)量の、視覚的指示薬、好ましくは着色剤、より好ましくは着色染料、さらにより好ましくは青色染料、さらにより好ましくはFD&C Blue No.1を含み得る。最も好ましくは、組成物は、(約)0.00037%(w/w)のFD&C Blue No.1を含み得る。
【0088】
少なくとも一実施形態では、視覚的指示薬(例えば、FD&C Blue No.1)を、濃縮物として組成物に添加することができる。いくつかの実施形態では、濃縮物は、水性または水ベースの濃縮物であり得る。いくつかの実施形態では、組成物は、0.01~5%(w/w)(水中)の視覚的指示薬濃縮物の0.01~2.5%(w/w)を含み得る。好ましくは、組成物は、0.05~1%(w/w)(水中)の視覚的指示薬濃縮物の0.05~1%(w/w)を含み得る。より好ましくは、組成物は、0.075~0.5%(w/w)(水中)の視覚的指示薬濃縮物の0.075~0.5%(w/w)を含み得る。さらにより好ましくは、組成物は、0.1~0.25%(w/w)(水中)の視覚的指示薬濃縮物の0.1~0.25%(w/w)を含み得る。さらにより好ましくは、組成物は、(約)0.2%(w/w)(水中)の視覚的指示薬濃縮物の(約)0.185%(w/w)を含み得る。少なくとも一実施形態では、視覚的指示薬(例えば、FD&C Blue No.1)は、~0.2%のストック溶液(水溶液)、またはその等価物の、約0.185%(w/w)で組成物に含まれ得る。最も好ましくは、組成物は、(約)0.2%(w/w)(水中)のFD&C Blue No.1濃縮物の(約)0.185%(w/w)を含み得る。
【0089】
抗菌剤
いくつかの実施形態では、組成物は抗菌剤を含み得る。いくつかの実施形態では、前述の構成要素の1つ以上は、抗菌活性を示し得る。例えば、いくつかの実施形態では、アルコール、カオトロピック剤、界面活性剤、および/または粘液溶解剤は、抗菌性であり得るか、または抗菌活性を示し得る。したがって、特定の実施形態は、別個の抗菌剤(例えば殺菌剤および/または静菌剤)を含む必要はない。1つ以上の実施態様では、アルコール(例えば、SDA 3C)の抗菌特性は、アルコールが本開示の該実施形態(複数可)において提供されるより低い濃度(例えば、約17.73%(w/w)、または5~25%(w/w)、10~22%(w/w)、10~20%(w/w)、15~19%(w/w)、16~18.5%(w/w)、17~18.25%(w/w)、または17.5~18%(w/w)(またはその間の任意の値もしくは値の範囲))でさえ持続する。
【0090】
リボヌクレアーゼ阻害剤
いくつかの実施形態は、ヘパリン、ヘパラン硫酸、オリゴ(ビニルスルホン酸)、ポリ(ビニルスルホン酸)、オリゴ(ビニルホスホン酸)、およびポリ(ビニルスルホン酸)、またはそれらの塩などのリボヌクレアーゼ阻害剤、またはリボヌクレアーゼの阻害剤を含む。特定の(例えば、好ましい)実施形態では、組成物は、リボヌクレアーゼ阻害剤またはリボヌクレアーゼの阻害剤を含まないか、または(例えば、内因性RNAse阻害活性を有し得る、チオシアン酸グアニジンなどのカオトロピック剤以外に)1つ以上(例えば、任意)のリボヌクレアーゼ阻害剤またはリボヌクレアーゼの阻害剤を(実質的に)含まない。したがって、少なくとも一実施形態は、1つ以上の(任意の)リボヌクレアーゼ阻害剤、またはリボヌクレアーゼの阻害剤を(実質的に)含まない。1つ以上の実施形態は、(例えば、チオシアン酸グアニジンなどのカオトロピック剤以外に)リボヌクレアーゼ阻害剤、またはリボヌクレアーゼの阻害剤を(実質的に)含まない。
【0091】
プロテアーゼ
いくつかの実施形態はプロテアーゼを含む。特定の(例えば、好ましい)実施形態では、組成物は、プロテアーゼを含まないか、または1つ以上の(例えば、任意の)プロテアーゼを(実質的に)含まない。したがって、少なくとも一実施形態は、1つ以上の(任意の)プロテアーゼを(実質的に)含まない。いかなる理論にも縛られることなく、プロテアーゼ(またはタンパク質分解酵素、ペプチダーゼまたはプロテイナーゼ)は、加水分解によって1つ以上のペプチド結合を切断し、それによってタンパク質をより小さいタンパク質断片(もしくはペプチド)または個々のタンパク質サブユニット(もしくはアミノ酸)に変換する酵素の一種である。
【0092】
タンパク質変性剤
いくつかの実施形態は、1つ以上のタンパク質変性剤を含む。例えば、少なくとも一実施形態では、(i)カオトロピック剤は、タンパク質変性剤であり得るか、それを含み得るか、またはそれとして機能し得る(またはタンパク質を変性させるか、もしくはタンパク質変性活性を有するかもしくは示す)。少なくとも一実施形態では、(ii)界面活性剤/洗浄剤は、タンパク質変性剤であり得るか、それを含み得るか、またはそれとして機能し得る(またはタンパク質を変性させるか、もしくはタンパク質変性活性を有するかもしくは示す)。少なくとも一実施形態では、(iii)アルコールは、タンパク質変性剤であり得るか、それを含み得るか、またはそれとして機能し得る(またはタンパク質を変性させるか、もしくはタンパク質変性活性を有するかもしくは示す)。少なくとも一実施形態では、(iv)粘液溶解剤は、タンパク質(複数可)が接近可能なジスルフィド結合または架橋を含有する場合などに、タンパク質変性剤であり得るか、それを含み得るか、またはそれとして機能し得る(またはタンパク質を変性させるか、もしくはタンパク質変性活性を有するかもしくは示す)。いくつかの実施形態では、(i)カオトロピック剤、(ii)界面活性剤/洗浄剤、(iii)アルコール、および(iv)粘液溶解剤の2つ以上が、タンパク質変性剤であり得るか、それを含み得るか、またはそれとして機能し得る(またはタンパク質を変性させるか、もしくはタンパク質変性活性を有するかもしくは示す)。いくつかの実施形態では、(i)カオトロピック剤、(ii)界面活性剤/洗浄剤、(iii)アルコール、および(iv)粘液溶解剤のそれぞれまたは全てが、タンパク質変性剤であり得るか、それを含み得るか、またはそれとして機能し得る(またはタンパク質を変性させるか、もしくはタンパク質変性活性を有するかもしくは示す)。
【0093】
いかなる理論にも縛られることなく、1つ以上の前述の構成要素または成分のタンパク質変性活性は、濃度および/または時間依存性であり得る。
【0094】
配合物
本開示は実施形態は、水性担体、カオトロピック剤、緩衝剤、キレート剤、界面活性剤、アルコール、酸、および粘液溶解剤を含む、核酸保存組成物(または配合物)を含む。一実施形態は、任意選択の視覚的指示薬をさらに含む。実施形態は、20~50%(w/w)のカオトロピック剤、1~5%(w/w)の緩衝剤、0.05~2.5%(w/w)のキレート剤、0.05~2.5%(w/w)の界面活性剤、5~25%(w/w)のアルコール、0.005~0.25%(w/w)の粘液溶解剤、pH6.5~9.5まで適量の酸、および100%まで適量の担体を含み得る。実施形態は、0.005~2.5%(w/w)の視覚的指示薬をさらに含み得る。
【0095】
少なくとも一実施形態では、組成物は、約43.92%(w/w)のカオトロピック剤、約2.65%(w/w)の緩衝剤、約0.81%(w/w)のキレート剤、約0.279%(w/w)の界面活性剤、約17.73%(w/w)のアルコール、約0.093%(w/w)の粘液溶解剤、pH約8.0まで適量の酸(例えば、37%酸溶液、またはその等価物の約1.08%)、および100%まで適量の担体を含む。組成物は、約0.00037%(w/w)の視覚的指示薬を含み得る。
【0096】
いくつかの実施形態では、担体は、水、好ましくは、ろ過され、精製され、蒸留され、かつ/または脱イオンされた水などの水性担体であり得るか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、カオトロピック剤は、グアニジンおよび/またはチオシアン酸塩、好ましくはチオシアン酸グアニジンであり得るか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)、好ましくはTris-HCl、より好ましくはTrizma塩基登録商標であり得るか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、好ましくは、EDTA二ナトリウム(塩)二水和物であり得るか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム(SLS)であり得るか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、アルコールは、特別変性アルコール(SDA)またはエタノールおよびイソプロパノールの混合物、好ましくは約95%(v/v)のエタノールおよび約5%(v/v)のイソプロパノールの混合物、またはSDA 3Cであり得るか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、酸は、塩酸であり得るか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、粘液溶解剤は、N-アセチル-L-システインであり得るか、またはそれを含み得る。
【0097】
本開示の一実施形態は、約43.92%(w/w)のカオトロピック剤(例えば、チオシアン酸グアニジン)、約2.65%(w/w)の緩衝剤(例えば、Tris)、約0.81%(w/w)のキレート剤(例えば、EDTAまたはEDTA二ナトリウム(塩)二水和物)、約0.279%(w/w)の界面活性剤(例えば、SLS)、約17.73%(w/w)のアルコール(例えば、SDA 3C)、約0.093%(w/w)の粘液溶解剤(例えば、N-アセチル-L-システイン)、pH約8.0まで適量の酸(例えば、塩酸)、および/または100%まで適量の担体(例えば、ろ過され、精製され、蒸留され、かつ/または脱イオンされた水を含む水性担体)を含む、核酸安定化および/または保存組成物を含む。一実施形態は、約0.00037%(w/w)の視覚的指示薬(例えば、FD&C Blue No.1)をさらに含み得る。
【0098】
本開示の一実施形態は、43.92%±10%(w/w)のカオトロピック剤(例えば、チオシアン酸グアニジン)、2.65%±10%(w/w)の緩衝剤(例えば、Tris)、0.81%±10%(w/w)のキレート剤(例えば、EDTA二ナトリウム二水和物)、0.279%±10%(w/w)の界面活性剤(例えば、SLS)、17.73%±10%(w/w)のアルコール(例えば、SDA 3Cまたは95%±10%(v/v)のエタノールおよび5%±10%(v/v)のイソプロパノールの混合物)、0.093%±10%(w/w)の粘液溶解剤(例えば、N-アセチル-L-システイン)、および/またはpH8.0まで適量の酸(例えば、塩酸)(±10%)を、100%まで適量の担体(例えば、水性担体、好ましくはろ過され、精製され、蒸留され、かつ/または脱イオンされた水)と共に含む。一実施形態は、0.00037%±10%(w/w)の視覚的指示薬(例えば、FD&C Blue No.1)またはその同等物(例えば、0.185%±10%(w/w)、0.2%±10%(w/w)の視覚的指示薬濃縮物(例えば、水中))をさらに含む。一実施形態では、±10%である各構成要素の量が、さらに±9%、好ましくは±8%、より好ましくは±7%、さらにより好ましくは±6%、さらにより好ましくは±5%、さらにより好ましくは±4%、さらにより好ましくは±3%、さらにより好ましくは±2%、さらにより好ましくは±1%である(記載された量に限定)。
【0099】
少なくとも一実施形態では、組成物は、約43.92%(w/w)のチオシアン酸グアニジン、約2.65%(w/w)のTris、約0.81%(w/w)のEDTAまたはEDTA二ナトリウム(塩)二水和物、約0.279%(w/w)のSLS、約17.73%(w/w)のSDA 3C、約0.093%(w/w)のN-アセチル-L-システイン、約1.08%(w/w)の37%塩酸、もしくはその等価物、またはpH約8.0まで適量の塩酸、および100%(w/w)まで適量の水を含む。組成物は、約0.00037%(w/w)のFD&C Blue No.1(または0.185%(w/w)の0.2%(w/w)(水中)濃縮物)、および約32.602%(w/w)の水を含み得る。
【0100】
いくつかの実施形態では、組成物は、微生物(例えば、細菌、真菌、および/またはウイルス)汚染を実質的に含まないか、または欠いていてもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、(約)100cfu/g以下の細菌または細菌汚染を有し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、(約)99、98、97、96、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、または5cfu/g以下の細菌または細菌汚染を有し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、(約)100cfu/g以下の真菌(または酵母および/もしくはカビなどの真菌)または真菌汚染を有し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、(約)99、98、97、96、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、または5cfu/g以下の真菌(または酵母および/もしくはカビなどの真菌)または真菌汚染を有し得る。本明細書で使用される場合、「cfu/g」は、((最終および/または液体)組成物の)グラム当たりの(1つ以上の微生物の)コロニー形成単位を指す。
【0101】
本開示の例示的な実施形態を以下の表1に提示する。表1は、例示的組成物の成分、ならびに該成分の使用、機能、および/または活性を記載する。
【0102】
【0103】
表1.1は、本開示の組成物について別の例示的な配合物を提示する。
【0104】
【0105】
本開示のさらなる特徴は、全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,482,116号から理解することができる。
【0106】
キット
いくつかの実施形態は、生物学的試料保存キットなどのキットを含む。具体的には、1つ以上の実施形態では、本発明の組成物は、キットに組み込まれ得る。キットは、例えば、本明細書に開示および/または記載される組成物、ならびに試料採取装置を含み得る。少なくとも一実施形態では、組成物は、試料採取装置の一部に配置され得る。例示的な試料採取装置は、試料採取部分を有する容器またはバイアル(例えば、管)を含み得る。例えば、容器は、内部区画を少なくとも部分的に囲む外壁を含み得る。内部区画は、生物学的試料を添加され得る組成物を含有し得る。あるいは、試料が区画に添加され得、組成物が採取後の試料に添加され得る。例えば、装置は、試料採取前または試料採取後に、区画に組成物を添加するための組成物ディスペンサーを含み得る。少なくとも一実施形態では、ディスペンサーは、装置の開口部を閉鎖または密閉するためのキャップを含み得る。開口部は、区画に通じているか、または区画と流体連通していてもよい。キャップは、組成物が容器の区画に添加されるまで組成物を保持するための区画を有し得る。
【0107】
いくつかの実施形態は、生物学的試料採取装置(または容器)および本開示の組成物を含むキットを含み得る。少なくとも一実施形態では、組成物は、装置の一部に配置され得る。例えば、いくつかの実施形態では、組成物は、装置のキャップまたは蓋の一部に配置され得る。採取装置(または容器)は、生物学的試料を(例えば、その内部区画内に)収容し、それに組成物を添加するように構成され得る。
【0108】
いくつかの実施形態では、キット中の組成物は、(上記の通り)微生物汚染を実質的に含まないか、または欠いていてもよい。
【0109】
様々な試料採取装置が以下の出願に記載されており、その各々の全体が具体的参照により本明細書に組み込まれる:2015年11月25日に出願された米国特許出願第14/952,712号、2016年8月3日に出願された米国仮特許出願第62/370,630号、2017年2月1日に出願された米国仮特許出願第62/453,459号、2017年5月23日に出願された米国仮特許出願第62/510,174号、2017年5月30日に出願された米国仮特許出願第62/512,594号、2017年5月31日に出願された米国仮特許出願第62/513,235号、2017年7月6日に出願された米国仮特許出願第62/529,355号、2017年8月2日に出願された米国特許出願第15/667,228号、2017年8月3日に出願された国際出願シリアル番号PCT/US2017/045352、2017年8月31日に出願された米国特許出願第15/692,259号、および2017年11月22日に出願された米国仮特許出願第62/590,165号。
【0110】
本開示の組成物は、前述の出願のいずれかに記載されている装置に組み込まれ得る。本開示の実施形態は、本明細書に開示および/または記載されている組成物と、前述の出願のいずれかに記載されている試料採取装置と、を含むキットを含み得る。
【0111】
製造方法
いくつかの実施形態は、本開示の組成物を製造する方法を含む。実施形態は、本明細書に記載の担体を提供または得ることを含み得る。実施形態は、適切な量の本明細書に記載の1つ以上の構成要素または成分(例えば、本明細書に記載の最終濃度になるように)を担体に添加することを含み得る。実施形態は、本明細書に記載の1つ以上の構成要素または成分の記載量のストック溶液を担体に添加することを含み得る。
【0112】
少なくとも一実施形態は、カオトロピック剤、緩衝剤、キレート剤、界面活性剤、アルコール、酸、および/または粘液溶解剤を担体に添加することを含む。1つ以上の実施形態は、視覚的指示薬を、担体に添加することを含み得る。少なくとも一実施形態は、最終濃度20~50%(w/w)になるカオトロピック剤、最終濃度0.1~5%(w/w)になる緩衝剤、最終濃度0.01~5%(w/w)になるキレート剤、最終濃度0.01~5%(w/w)になる界面活性剤、最終濃度5~25%(w/w)になるアルコール、pH6.5~9.5になるか、もしくは同等量の酸、および/または最終濃度0.005~0.25%(w/w)になる粘液溶解剤を、(液体)担体に添加することを含む。少なくとも一実施形態は、最終濃度0.00005~0.5%(w/w)になる視覚的指示薬を、(液体)担体に添加することを含む。担体は100%まで適量で含まれ得る。
【0113】
少なくとも一実施形態は、最終濃度(約)43.92%(w/w)になるカオトロピック剤、最終濃度(約)2.65%(w/w)になる緩衝剤、最終濃度(約)0.81%(w/w)になるキレート剤、最終濃度(約)0.279%(w/w)になる界面活性剤、最終濃度(約)17.73%(w/w)になるアルコール、pH(約)6.5~9.5になるか、もしくは最終濃度(約)0.4%(w/w)になる酸、および/または最終濃度(約)0.093%(w/w)になる粘液溶解剤を、(液体)担体に添加することを含む。少なくとも一実施形態は、最終濃度(約)0.00037%(w/w)になる視覚的指示薬を、(液体)担体に添加することを含む。担体は、(約)34.12%または100%まで適量で含まれ得る。
【0114】
いくつかの実施形態では、カオトロピック剤はグアニジンおよび/またはチオシアネートであり得るかまたはそれを含み得、緩衝剤はTrisまたはTrizma塩基であり得るかまたはそれを含み得、キレート剤はEDTAまたはEDTA二ナトリウム(塩)二水和物であり得るかまたはそれを含み得、界面活性剤はSLSであり得るかまたはそれを含み得、アルコールはエタノールおよび/またはイソプロパノール(例えばSDA 3C)であり得るかまたはそれを含み得、粘液溶解剤はN-アセチル-L-システインであり得るかまたはそれを含み得、酸はHClであり得るかまたはそれを含み得、担体は水であり得るかまたはそれを含み得、かつ/または任意選択の視覚的指示薬は、FD&C Blue No.1であり得るかまたはそれを含み得る。
【0115】
核酸安定化および/または保存組成物を製造する方法は、担体を容器に添加すること(例えば、混合タンクに(ろ過、脱イオンなどされた)水を充填すること)を含み得る。いくつかの実施形態では、担体は、組成物の最終濃度約34.12%(w/w)または100%まで適量で含まれ得る。
【0116】
いくつかの実施形態では、1つ以上の追加の構成要素または成分を担体に添加する前に、ミキサーを作動させ得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の追加の構成要素または成分を担体に添加した後に、ミキサーを作動させ得る。いくつかの実施形態では、ミキサーは、2~8、好ましくは3~7、より好ましくは4~6、さらにより好ましくは5の速度設定、および/または2~8、好ましくは3~7、より好ましくは4~6、さらにより好ましくは5の掃引設定に設定され得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の追加の構成要素または成分を担体に添加する前に、担体は適切な混合温度に加熱され得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の追加の構成要素または成分を担体に添加した後に、担体は適切な混合温度に加熱され得る。いくつかの実施形態では、適切な混合温度は、(約)55~95±5°F、好ましくは60~90±5°F、より好ましくは65~85±5°F、さらにより好ましくは70~80±5°F、最も好ましくは75±5°Fであり得る。
【0117】
いくつかの実施形態では、適切な量(例えば、組成物の最終濃度約43.92%(w/w)になる)のカオトロピック剤(例えば、チオシアン酸グアニジン)が、担体に添加され得る。いくつかの実施形態では、カオトロピック剤は、ある期間(例えば、30~300分、好ましくは60~240分、より好ましくは120~180分、さらにより好ましくは140~160分、最も好ましくは150分、またはカオトロピック剤が溶液に溶解するまで)担体中で混合され得る。
【0118】
いくつかの実施形態では、適切な量(例えば、組成物の最終濃度約2.65%(w/w)になる)の緩衝剤(例えば、TrisまたはTrizma塩基)が、担体に添加され得る。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、ある期間(例えば、1~90分、好ましくは5~60分、より好ましくは10~45分、さらにより好ましくは12~30分、さらにより好ましくは15~25分、最も好ましくは(約)20分、または緩衝剤が溶液に溶解するまで)担体中で混合され得る。
【0119】
いくつかの実施形態では、適切な量(例えば、組成物の最終濃度約0.81%(w/w)になる)のキレート剤(例えばEDTA、EDTA二ナトリウム塩、EDTA二ナトリウム(塩)二水和物)が、担体に添加され得る。いくつかの実施形態では、キレート剤は、ある期間(例えば、1~90分、好ましくは5~60分、より好ましくは10~45分、さらにより好ましくは12~30分、さらにより好ましくは15~25分、最も好ましくは(約)20分、またはキレート剤が溶液に溶解するまで)担体中で混合され得る。少なくとも一実施形態では、緩衝剤およびキレート剤は、事前に一緒に混合するか、または混合せずに、(ほぼ)同時に(the same time)、同時に(contemporarily)、同時に(concomitantly)、および/または(実質的に)同時に(concurrently)(もしくは同時に(simultaneously))一緒に担体に添加され得る。いくつかの実施形態では、緩衝剤およびキレート剤は、別々に担体に添加され得る。
【0120】
いくつかの実施形態では、適切な量(例えば、組成物の最終濃度約0.279%(w/w)になる)の界面活性剤(例えば、SLS)が、担体に添加され得る。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ある期間(例えば、1~90分、好ましくは5~60分、より好ましくは10~45分、さらにより好ましくは15~35分、さらにより好ましくは20~30分、最も好ましくは(約)25分、または界面活性剤が溶液に溶解するまで)担体中で混合され得る。
【0121】
いくつかの実施形態では、適切な量(例えば、組成物の最終濃度約17.73%(w/w)になる)のアルコール(例えば、エタノール、エタノールとイソプロパノールなどの別の化学物質との混合物、またはSDA、好ましくはSDA 3C)が、担体に添加され得る。いくつかの実施形態では、アルコールは、ある期間(例えば、5~90分、好ましくは10~75分、より好ましくは15~60分、さらにより好ましくは25~45分、さらにより好ましくは30~40分、最も好ましくは(約)35分、またはアルコールが溶液に溶解するまで)担体中で混合され得る。
【0122】
いくつかの実施形態では、適切な量(例えば、組成物の最終濃度約0.00037%(w/w)になる)の任意選択の視覚的指示薬(例えば、着色剤、染料、好ましくはFD&C Blue No.1などの青色染料)が、担体に添加され得る。いくつかの実施形態では、視覚的指示薬は、ある期間(例えば、5~90分、好ましくは10~60分、より好ましくは15~45分、さらにより好ましくは10~30分、さらにより好ましくは15~25分、最も好ましくは(約)20分、または視覚的指示薬が溶液に溶解するまで)担体中で混合され得る。
【0123】
いくつかの実施形態では、適切な量(例えば、組成物の最終濃度約0.4%(w/w)になるか、または組成物のpH8.0になる)の酸(例えば、塩酸)が、担体に添加され得る。いくつかの実施形態では、酸は、ある期間(例えば、5~90分、好ましくは10~60分、より好ましくは15~45分、さらにより好ましくは10~30分、さらにより好ましくは15~25分、最も好ましくは(約)20分、または酸が溶液に溶解する、かつ/もしくは混合物が所望のpHで平衡化するまで)担体中で混合され得る。
【0124】
いくつかの実施形態では、適切な量(例えば、組成物の最終濃度約0.093%(w/w)になる)の粘液溶解剤(または還元剤)(例えば、N-アセチルシステイン、N-アセチル-L-システイン)が、担体に添加され得る。いくつかの実施形態では、粘液溶解剤は、ある期間(例えば、5~90分、好ましくは10~60分、より好ましくは15~45分、さらにより好ましくは10~30分、さらにより好ましくは15~25分、最も好ましくは(約)20分、または粘液溶解剤が溶液に溶解する、かつ/もしくは混合物が所望のpHで平衡化するまで)担体中で混合され得る。
【0125】
一連の例示的な製造バッチ手順を表3に示す。
【0126】
【0127】
品質管理試験は製造中の任意の適切な時点で実施され得る。例えば、各バッチのバルク製造プロセスが完了すると、2つの試料(それぞれ約4オンス)が、以下の位置のそれぞれから試料を得るための清潔で衛生的で承認済みの適切なツールを使用してバルク混合タンクから無菌的に得られた:タンクの中央近くのバッチの上面、タンクの側壁近くのバッチの上面、タンクの中央近くのバッチの中央、タンクの側壁近くのバッチの中央、タンクの中央近くのバッチの底、およびタンクの側壁近くのバッチの底。各試料を滅菌カップに入れて標識した。
【0128】
各試料を適切な外観、比重、およびpHについて試験した。さらに、キレート剤、アルコール、および粘液溶解剤の協調性および/または有効性を試験するためにアッセイを行った。さらに、総好気性プレート数、酵母およびカビ、黄色ブドウ球菌、ならびに緑膿菌を測定することによって汚染(微生物限度)を試験した。表4は、さまざまな品質管理測定のテスト仕様を示している。
【0129】
【0130】
いくつかの実施形態では、方法は、適切な貯蔵容器または試料採取装置の一部(例えば、容器またはバイアル(例えば、管)の組成物貯蔵部)に組成物を密封することを含み得る。また試料を、貯蔵容器および試料採取装置中で、制御された室温(CRT)および加速(ACC)安定性試験に供した。
【0131】
いくつかの実施形態では、方法は、(上記の通り)微生物汚染を実質的に含まないか、または欠き得る組成物を生成するか、またはもたらし得る。
【0132】
使用方法
いくつかの実施形態は、核酸を保存および/または安定化する方法を含む。方法は、核酸を含有する生物学的試料を得ることと、本開示の組成物を生物学的試料と組み合わせることと、を含み得る。少なくとも一実施形態では、生物学的試料は、ムチン含有体液または組織、例えば痰または唾液であり得る。方法は、(例えば、粘液溶解剤または還元剤を用いてムチンに固有のジスルフィド結合を還元することによって)ムチン含有体液または組織の粘度を低下させることを含み得る。
【0133】
少なくとも一実施形態では、核酸はDNAである。いくつかの実施形態では、組成物は核酸またはDNAを(例えば、分解に対して)安定化させることができる。いくつかの実施形態では、組成物は核酸またはDNAを第1の期間安定化させることができる。いくつかの実施形態では、第1の期間は、約14日、30日、60日、90日、120日、240日、300日、または365日以上であり得る。いくつかの実施形態では、組成物は、核酸またはDNAを、室温、-20℃~50℃、または他の適切な温度もしくは温度範囲で、第1の期間安定化させることができる。いくつかの実施形態では、組成物は第2の期間安定化させることができる。いくつかの実施形態では、第2の期間は、約12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月、30ヶ月、または36ヶ月以上であり得る。いくつかの実施形態では、組成物は、室温、-20℃~50℃、または他の適切な温度もしくは温度範囲で、第2の期間安定化させることができる。
【0134】
少なくとも一実施形態は、i)対象から痰を得ること、ii)本開示の組成物と痰を接触させて試料混合物を形成すること、iii)必要に応じて混合物をプロテアーゼと接触させること、およびiv)混合物から核酸を回収することを含む、痰から核酸を回収する方法を含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、組成物は、生物学的試料に適切な量で添加された場合、その後の核酸分析、例えばDNA増幅(PCRによる)、(次世代)配列決定などを有意に阻害または妨害しない。
【0136】
試料採取
本開示のいくつかの実施形態は、(例えば、ヒト対象などの対象から)生物学的試料を取得、得る、かつ/または採取することを含む。いくつかの実施形態では、生物学的試料は、(ヒト)唾液であり得るか、またはそれを含み得る。(ヒト)試料は、((微生物)汚染を避けるために)無菌的に採取され得る。1つ以上の実施形態では、試料は、試料採取装置またはその試料容器に採取され得る。いくつかの実施形態では、試料採取装置または容器は、キットの一部であり得、かつ/または本開示の組成物を含み得る。実施形態は、試料を本開示の組成物と接触させることを含み得る。
【0137】
DNAの抽出および分析
本開示のいくつかの実施形態は、生物学的試料から核酸を抽出することを含む。以下は、本開示の組成物と共に使用するのに適している可能性がある様々な様式の抽出または抽出手順の非網羅的列挙または説明である。
【0138】
抽出化学
有機フェノールクロロホルム抽出は、研究室と臨床室の両方で依然として採用されているメカニズムであり、組織源に関しては試料の種類に依存する。高分子量ゲノムDNAを抽出するために、手動のフェノール/クロロホルム抽出とそれに続く有機溶媒汚染の除去を補助するためのクロロホルム逆抽出を行う。
【0139】
塩析-自家製および市販の塩析化学の両方が、高分子量の核酸抽出に広く使用されている。このアプローチは、エタノールの添加下で核酸を破壊するために、高濃度の塩を唾液試料に添加することを必要とする。分析前に、試料から過剰の塩を除去するために一連の洗浄が行われる。
【0140】
固相-核酸精製のためにDNAを固相支持体に結合させるためのスピンカラムと真空マニホールドの両方のソリューションをさまざまな技術プロバイダーが提供している。DNAが支持体に付着したら、一連の洗浄を行う。最終的には、分析のために少量のDNAが固体支持体から溶出する。スピンカラム化学は、研究室および臨床研究室の両方で頻繁に使用される。
【0141】
ビーズベース-ビーズまたは(パラ)磁性ビーズは、高分子量DNAを結合するために、様々な結合部分を用いてまたは電荷によって調製される。ビーズは磁場によって捕捉されるので、ビーズに結合していないものは精製プロセスの一部として洗い流され得る。洗浄が完了したら、DNAを可溶化する溶液を用いて核酸をビーズから溶出させ、その後残ったビーズを磁場を再適用することによって除去する。研究および臨床環境におけるこのアプローチには、小容量と大容量の両方の自動化ソリューションがある。
【0142】
例示的な抽出
本開示の組成物を含有する唾液採取キットから以前に抽出された10個のDNA試料、および既存の唾液採取キットからの最大6個の試料を試験に使用した。本発明の唾液採取キットを使用して、さらに23個の試料を新たに採取した。23個の試料のそれぞれを、二連の700μlアリコートで抽出した。DNAの品質を評価するために標準QCを実施した。
【0143】
1試料あたり2つの複製で23/23の試料を抽出した。全試料のUV分光光度法(Nanodrop)による平均合算収率は、20.4ug(2.8~111.4)であった。20/23の抽出は、1.7の所望の値よりも260/280の比率を有していたが、1.7より低い3つの試料は、下流の分析において良好に機能する可能性が高い。
図1Aに示すように、全ての試料は高分子量DNAを有していた。
【0144】
MSM1(Chemagen)抽出システム用のPerkin Elmer試薬を使用して、700μlの唾液試料溶液を抽出した。全ての試料の濃度は、UV分光光度法(Nanodrop)によって決定した。純度の推定値は、A260/A280吸光度比を測定することによって、UV分光光度法で決定した。さらに、試料の完全性を視覚化するために、試料をアガロースゲル上で分析した。分子量サイジングラダー(L)および50kbを超えるコントロール試料(C)が各ゲルに含まれている。定性的ゲルに使用されるBionexus万能HI-LO DNAマーカー(
図3Bを参照)。
【0145】
分析的アプローチ
いくつかの実施形態は、抽出された核酸を分析することを含む。抽出された核酸を分析するために、いくつかの方法が利用可能である。以下は、本開示の組成物と共に使用するのに適している可能性がある抽出された核酸を分析するための様々な方法の非網羅的列挙または説明である。
【0146】
PCR
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析は、DNAテンプレートの忠実度と清浄度を評価するための迅速かつ費用対効果の高い方法である。一連のPCR反応(様々なサイズのアンプリコン)が、全てのDNAテンプレートから生成され、正しいサイズの増幅産物について電気泳動で分離される。PCRアンプリコンサイズの範囲は、全てのDNA抽出産物の忠実度に関する情報を提供する。
【0147】
qPCR
定量的PCR(qPCR)は、PCRアンプリコンの定量のために二重標識蛍光プローブを使用する。Taqman化学を利用する対立遺伝子識別は、全ての抽出アプローチにわたって採取および抽出された全てのDNAについての特定の遺伝子型を決定するために使用されるであろう。各対象の遺伝子型は、分析されている全ての変数にわたる一致について測定されるであろう。全ての定量的測定は、三重に行われるであろう。
【0148】
dPCR
デジタルPCR(dPCR)は、限られた量および/または限られた品質で試料中の遺伝子型を高感度で検出するために採用されている新しい技術である。抽出された全てのDNA試料の絶対感度を決定するために、同じTaqmanアッセイが使用される。dPCRの感度を考えると、分析されている各変異体の最終的な感度を決定することができる。
【0149】
マイクロアレイ
単一のDNA試料の発見と臨床的分類の両方になると、数十万または数百万のSNPの測定は同時に大きな意味を持つ。感度および特異性の要件は、QPCRに基づく分析とは全く異なり、SNP検出のためのアプローチもまた、この分析アプローチがDNA変異体を同定するためのハイブリダイゼーションに基づくメカニズムを使用するので異なる。異なるDNA抽出化学で処理されたドナー間のコールレートおよびSNPの一致は、重要な分析上の評価項目となる。
【0150】
サンガーシーケンス
この研究では、変異分析のためのゴールドスタンダードが全ての試料にわたって採用される。分析のための標的領域は、他の全ての分析方法にわたって遺伝子型を交差検定するために、QPCR、dPCRおよびマイクロアレイの同じアンプリコンをカバーする。高品質のサンガーベースコール(したがって変異体)を作る能力は、核酸の品質に大きく依存している。このアプローチは臨床分析に定期的に使用される。
【0151】
NextGenシーケンス
本明細書で使用される場合、ハイスループットシーケンスとしても知られる「次世代シーケンス」(NGS)は、非サンガーベースのハイスループットDNAシーケンス技術を指す。NGSを通じて、数百万、さらには数十億のDNA鎖を並行して配列決定することができ、実質的により高いスループットをもたらし、ゲノムのサンガーシーケンスにおいてしばしば使用されるフラグメントクローニング法の必要性を最小にする。NGSは、例えば、パイロシーケンス、合成によるシーケンス、ライゲーションによるシーケンス、イオン半導体シーケンス、および当技術分野で公知の他のものを含む、いくつかの現代のシーケンス技術またはプラットフォームを説明するために使用される包括的な用語である。
【0152】
当業者には理解されるように、NGSは、一般に、サンガーシーケンスよりもはるかに迅速にかつ安価に大量のDNAおよびRNAの配列決定を可能にする。NGSでは、膨大な数の短い読み取りが1回のストロークでシーケンスされる。これを行うために、最初に入力試料を短いセクションに分割することができる。これらのセクションの長さは使用される特定の配列決定機構に依存する。具体的なNGS技術の例示的な例としては、例えば、イルミナ(登録商標)(Solexa)シーケンス、Roche 454(商標)シーケンス、Ion torrent(商標):Proton/PGMシーケンス、SOLiDシーケンスなどが挙げられる。
【0153】
イルミナシーケンスでは、100~150bpの読み取りが使用される。幾分長い断片を一般的なアダプターに連結し、アダプターを使用してスライドにアニーリングする。PCRを行って各読み取りを増幅し、同じ読み取りのコピーが多数あるスポットを作成する。次いで、それらを一本鎖に分離して配列決定する。スライドはヌクレオチドおよびDNAポリメラーゼであふれている。これらのヌクレオチドは、塩基に対応する色で蛍光標識されている。それらはターミネーターも有しているので、一度に1つの塩基だけが追加される。スライドの画像が撮影される。各読み取り位置に、追加された塩基を示す蛍光シグナルがある。次いでスライドを次のサイクルに備える。ターミネーターは除去され、次の塩基を付加することを可能にし、蛍光シグナルは除去され、シグナルが次の画像を汚染するのを防止する。このプロセスを繰り返し、一度に1つのヌクレオチドを追加し、その間にイメージングする。次いで、コンピュータを用いて各画像中の各部位の塩基を検出し、これらを用いて配列を構築する。読み取り長は実行されるサイクル数に依存するので、全てのシーケンス読み取りは同じ長さになる。
【0154】
Roche 454(商標)シーケンスは、一般に、Illumina(登録商標)よりもはるかに長い読み取りをシーケンスできる。Illumina(登録商標)のように、それは、塩基が付加されたときに光信号を読み取ることによって一度に複数の読み取りをシーケンスすることによってこれを行う。Illumina(登録商標)と同様に、DNAまたはRNAは、より短いリード、この場合は1kbまでに断片化されている。次いで、断片を、アダプター特異的プライマーを使用したPCRにより増幅する。次いで、各ビーズをスライドの単一のウェルに入れる。そのため、各ウェルには単一のビーズが含まれており、単一のシーケンスの多数のPCRコピーでカバーされている。ウェルにはDNAポリメラーゼおよびシーケンスバッファーも含まれている。スライドは4つのNTP種のうちの1つであふれている。このヌクレオチドが配列の次にある場合、それは読み取られた配列に追加される。その単一の塩基が繰り返される場合は、次いでさらに追加される。そのため、グアニン塩基であふれ、配列の次の部分がGである場合、1つのGが追加されるが、配列の次の部分がGGGGである場合は、次いで4つのGが追加される。各ヌクレオチドの付加は、光信号を放出する。これらのシグナルの位置は検出され、ヌクレオチドがどのビーズに付加されるかを決定するために使用される。このNTPミックスは洗い流される。次のNTPミックスが追加され、4つのNTPを循環しながらこのプロセスが繰り返される。この種の配列決定は、読み取られた各配列についてグラフを作成し、各ヌクレオチド洗浄についてのシグナル密度を示す。次いで、各洗浄におけるシグナル密度から配列をコンピュータで決定することができる。各サイクルで異なる数の塩基が加えられるので、454から得られる全ての読み取られた配列は異なる長さであろう。
【0155】
Illumina(登録商標)およびRoche 454(商標)とは異なり、Ion torrent(商標)およびIon proton シーケンスは光信号を利用しない。代わりに、それらは、DNAポリマーへのdNTPの付加がH+イオンを放出するという事実を利用している。他の種類のNGSと同様に、入力DNAまたはRNAは断片化されており、今回は~200bpである。アダプターを付加し、1分子をビーズ上に配置する。分子は、エマルジョンPCRによってビーズ上で増幅される。各ビーズをスライドの単一ウェルに入れる。Roche 454(商標)のように、スライドは、緩衝液とポリメラーゼと共にdNTPの単一の種で一度に1つのNTPであふれる。放出された各H+イオンはpHを低下させるので、pHは各ウェルで検出される。pHの変化により、その塩基、およびそのどれ程が、読み取られた配列に付加されたかを判断することができる。dNTPは洗い流され、プロセスは異なるdNTP種を繰り返し循環する。もしあれば、pHの変化が、(もしあれば)どれくらいの塩基が各サイクルで付加されたかを決定するために使用される。
【0156】
追加的または代替的に、配列決定は、より一般的には、蛍光に基づく配列決定技術および/または任意の電流に基づく配列決定技術によって行われてもよい。蛍光に基づく配列決定技術の例示的な例としては、例えば、Illumina(登録商標)に基づく配列決定方法およびシステムを使用した配列決定などの、フルオロフォアに結合したヌクレオチドを取り込む任意の技術が挙げられる。電流に基づく配列決定技術の例示的な例としては、ポリヌクレオチドが荷電膜に挿入された孔を通過するときにポリヌクレオチドの電流を測定するか、そうでなければセンサおよび/または帯電膜の電流を特異的に乱す任意の配列決定技術(鎖配列決定法を含む)が挙げられる。電流に基づく配列決定技術の非限定的な例としては、Nanopore DNA配列決定システムおよびOxford NanoPore Technologies(登録商標)の方法が挙げられる。
【0157】
Oxford NanoPore Technologies(登録商標)によって提供されるものなどの鎖配列決定システムは、核酸のコピー数の変動、特に新生物および/または癌性細胞由来の潜在的にDNA(または他の核酸)を含む試料のコピー数の変動を決定するときにいくつかの利点を提供する。例えば、鎖配列決定技術において、ゲノムの単一部分は連続的に配列決定され、これは、試料核酸が配列決定のために小さな断片に切断される他の配列決定方法によって提供される配列決定データを分析するときに起こり得るコピー数変動の暗黙分析の代わりにコピー数変動の直接分析を可能にする。これは、シーケンスカバレッジが低い場合の実施形態にとって特に有利であり得る。すなわち、いくつかの実施形態では、低シーケンスカバレッジランは、不完全なゲノムデータのセットを返し得る。配列データから、各配列領域についての暗黙のコピー数に加えてゲノム領域の存在および/または非存在を推論することが可能であり得る。しかしながら、鎖配列決定法において、生成された長い配列リードは、特に重複または欠失している領域に関して、コピー数の変動のより決定的な評価を可能にし得る。配列決定実行のカバー率が低いために全配列が利用できない場合、ゲノムのどの部分が削除されたか(コピー数の変動の形態)対ゲノムのどの部分が統計的確率(すなわち、無作為抽出)に基づいて表されなかったかを決定することは困難であり得る。
【0158】
例示的な例として、0.5倍のカバレッジを有するデータを生成する配列決定実行は、理論的には試料の半分を提示されないままにするであろう。配列決定のために核酸を小さな断片に「切り刻む」配列決定法を用いて、最終生成物は全基準ゲノムの約半分を表す配列ライブラリーであり得、整列基準ゲノムは、より小さな核酸マッチの散在で散在する。一方、鎖配列決定法を使用して、やはり低い適用範囲(例えば、0.5倍)で、結果は、やはり全参照ゲノムの約半分を表す配列ライブラリーであり得る。しかしながら、参照ゲノムと整列させると、一致部分ははるかに長くなり、どの配列が欠失、重複、挿入などされたかなどのより決定的な情報を提供し得る。これもまた問題となることがある。ゲノムのより長い連続部分は、鎖配列決定アプローチによって表され得るが、ゲノムの長い連続部分もまた未知のままである。したがって、鎖配列決定法はゲノムの部分のより高精細な視野を可能にし得るが、より小さい配列決定リードは全ゲノムのより包括的な全体像を提供する可能性を有する。この方法および他の方法で、鎖配列決定はコピー数変動を分析するためのロバストモデルを提供し得る。
【0159】
上記は既知の配列決定技術および本明細書に開示される本発明の方法およびシステムへのそれらの適用を例示するものであるが、これは未だ発見されていないまたはそうでなければ開示されない。すなわち、配列決定方法それ自体は、多くの実施形態では、必要な進歩性ではない(例えば、特定の配列決定技術の使用を通じて方法および/またはシステムに改善が提供されない限り);むしろ、配列決定方法によって提供された配列決定データを用いて行われること、および/またはそれらのデータがどのように適用されるかは、一般に進歩性を含む。したがって、開示された方法またはシステムにおいてツールとして使用される場合、将来の配列決定技術(および本明細書に明示的に列挙されていないそれらの配列決定技術)が本出願の範囲内に含まれることを理解されたい。
【0160】
さらに、前述の配列決定技術のいずれも、各配列決定反応/実行について提供される配列決定リードの総数に影響を及ぼす任意の数または容量で、任意の数のフローセルまたは他の同様の入力と共に使用することができる。
【0161】
次世代シーケンスは、最終的にはDNAとRNAの両方のターゲットを分析するための標準となり得る。qPCR、dPCR、およびアレイベースのターゲットでカバーされるゲノム領域を含むターゲットパネルは、標準的なライブラリー調製プロセスを通じて全てのDNA試料に対して作成される。試料は、バリアント分析のためにNextGenプラットフォーム上でバーコード化および多重化される。他の全てのプラットフォームにわたる遺伝子型コールの直接比較のために、データを逆多重化し、分析する。
【0162】
本開示の核酸保存料組成物を含有する2mL唾液採取キットを使用して採取された試料から抽出されたDNAの品質および有用性を評価するために、上記および他のDNAベースの下流方法のいくつかを試験した。さらに、2つの既存の製品から抽出された少数のDNA試料が、いくつかの下流メソッドの比較に使用された。以下は、OpenArray(登録商標)フォーマット(n=120 SNP/試料)を使用した一塩基多型(SNP)、TaqMan(登録商標)化学(CYP2D6遺伝子)を使用したコピー数バリアント(CNV)の検出のためのTaqMan(登録商標)化学、全エクソーム次世代シーケンス(WES)(Thermo Fisher)および染色体マイクロアレイ分析(CMA)(Affymetrix CytoScan HD)を含む、試験されたいくつかの下流メソッドの非網羅的な列挙または記載である。これらの方法は、分子遺伝学研究所で使用される多種多様な一般的方法を含むように選択された。下流の分析に加えて、全DNAの百分率としての細菌DNA含有量を定量的PCR(qPCR)アッセイを使用して測定した。いかなる理論にも縛られることなく、唾液試料は、いくつかの方法にとって干渉物質となり得る高濃度の細菌DNAを有することが知られている。
【0163】
TaqMan(登録商標)OpenArray(登録商標)SNPジェノタイピング:
一塩基多型のジェノタイピングは、TaqMan(登録商標)OpenArray(登録商標)ジェノタイピングアッセイを使用して行った。TaqMan(登録商標)アッセイは、PCR増幅およびSNPを標的とする一対の蛍光色素検出器を使用した対立遺伝子識別アッセイである。1つの蛍光色素が、第一の対立遺伝子(例えば「A」ヌクレオチド)に完全に一致する検出器に結合され、異なる蛍光色素が第二の対立遺伝子(例えば「C」ヌクレオチド)に完全に一致する検出器に結合される。PCRの間、ポリメラーゼはLife Technologies、Inc.のエンドポイント分析を使用して検出される溶液中に蛍光プローブを放出する。具体的には、OpenArray(登録商標)技術は、少量の液相反応用のナノリットルの流体工学プラットフォームである。OpenArray(登録商標)技術は、3,072個の貫通孔を有する顕微鏡スライドサイズのプレートを使用する。各貫通孔は直径300μm、深さ300μmであり、親水性および疎水性のコーティングで処理される。シングルアッセイ用のTaqMan(登録商標)化学は、各貫通孔にプリロードされ、乾燥される。OpenArrays(登録商標)はLife Technologiesの設計および製造を通じて入手した。Life TechnologiesのTaqman Genotyper v1.0.1ソフトウェアを使用して遺伝子型を決定した。
【0164】
118~120個のSNP/試料につき44個の試料について合計5234個の遺伝子型を決定した。44個の試料は、本発明のキットおよび既存のキットの両方からの抽出からのそれぞれ3つの試料の繰り返しを含んでいた。本発明のキットからの試料の遺伝子型決定は大いに成功しており、このタイプのアッセイについての既知の性能期待を超えた。いかなる理論にも縛られることなく、Taqmanジェノタイピングは、99%を超える試料でうまくジェノタイピングすることが期待される。この実験では、99.75%の試料が遺伝子型(5221/5234)を生成した。本発明の溶液DNA抽出物と既存の抽出物との間に、それぞれ99.74%および99.87%の遺伝子型決定率に有意差はなかった。本発明の溶液DNA抽出物および既存の抽出物の両方において重複した6つの試料において、全ての遺伝子型は一致した。
【0165】
Taqman(登録商標)コピー数バリアント検出:
TaqMan(登録商標)コピー数アッセイ(CYP2D6-Hs00010001_cn)を使用して、薬理遺伝学において評価された十分に特徴付けられたCNVであるCYP2D6遺伝子のコピー数を検出した。TaqMan(登録商標)コピー数アッセイは、TaqMan(登録商標)MGBプローブ化学を使用して、ゲノムDNAターゲットのコピー数を評価する。このアッセイでは、AppliedBiosystems(登録商標)7900 HTリアルタイムPCR機器およびコピー発信者ソフトウェアを使用して、コピー数を決定した。各試料を3回増幅し、コピー数を決定するために標準曲線に対してプロットした。
【0166】
33個の本発明の抽出DNA試料および5個の既存の抽出試料を、CYP2D6遺伝子中のよく特徴付けられたコピー数変異体について分析した。30/33の本発明の溶液抽出DNA試料はCNV結果を生じた。5/5の競合他社の抽出試料はCNV結果を生じた。CNV結果を生じなかった3つの試料は、同じ日に採取された3つの独立した試料からの全て同じ人(「B」)からのものであった。別の日に採取され、既存の唾液キットから抽出された、この同じ個人からの試料は、潜在的な干渉突然変異を除外した正常なCNV結果をもたらした。
【0167】
全エクソームシーケンス(WES):
Ion AmpliSeq(商標)Exome Kitを使用してエキソームライブラリーを調製した。このライブラリーキットを、12のプライマープールにわたって約294,000のプライマーペアを含有する、Ampliseq Exome Panel Primerプールと組み合わせている。次いで、得られた標的アンプリコンを試薬で処理してプライマーを部分的に消化し、アンプリコンをリン酸化する。次いで、アンプリコンをバーコードを用いてイオンアダプターに連結し、精製する。エキソームライブラリー調製の完了時に、精製された、エキソーム富化ライブラリーはリアルタイムPCRにより定量される。次いで、定量化したライブラリーを100pMに希釈し、シーケンス用のテンプレート化されたIon PI(商標)Ion Sphere(商標)Particles(ISP)を調製するために使用する。次いで、試料をIon PI(商標)Chip v3を使用してIon Proton Systemでシーケンスした。Ion Hi-Q Sequencing 200 V2化学を使用して、200塩基対までの平均インサートライブラリーをシーケンスした。
【0168】
4つの試料のうちの、本発明の唾液キットから抽出された3つの試料および既存の唾液キットから抽出された1つの試料を、全エクソームライブラリー調製物(AmpliSeq Exome、Thermo Fisher)、続いてIon Proton装置(Thermo Fisher)での次世代配列決定により評価した。通常予想される結果は、3000万回を超える読み取り、80倍を超える平均カバレッジ深度、および20倍を超える深さでカバーされる80%を超える塩基である。4つの試料のうち3つがこれらの基準を満たした。3,000万回未満の読み取りおよび80倍未満の平均深度範囲を有する3つのQC測定基準のうちの2つを満たさなかった、本発明の唾液キット抽出試料が1つあった。性能が劣っている試料は、同様に成功したCNV分析を有していなかった同じ試料のうちの1つであったことに留意されたい。DNA QCプロファイルの検査は、この試料について異常なことを示した。全てのQC測定基準が満たされた。この試料の性能は不十分であったが、評価のために適切なエクソームシーケンス結果が得られた。
【0169】
染色体マイクロアレイ(CMA):
製造者のプロトコルに従ってAffymetrix CytoScan HDアッセイを使用してCMA分析を行った。試料をGenome Analyzer 3000でスキャンした。染色体マイクロアレイを使用して、核型分析よりも高い分解能で染色体異常を検出した。このアッセイは、DNA調製とそれに続くゲノム全体で約270万のCNVを含むCytoScan HDチップへのハイブリダイゼーションからなる。試料をAffymetrix ChASソフトウェアを使用して評価した。
【0170】
Spectrum唾液キット抽出DNAから1つの試料を選択した。それを染色体マイクロアレイ(Affymetrix、CytoScan HD)で首尾よく評価した。試料は、MAPD値<0.25(0.18)、SNPQC値>15(16.47)、うねり値<0.12(0.09)、およびQCコール率>95%(96.8%)を有していた。
【0171】
qPCRアッセイを使用した細菌DNA含有量
試料中の細菌DNA含有量は、文献に記載されている修正されたプロトコルを使用して決定された。手短に言えば、生成したリアルタイムPCRデータと比較するために、標準曲線を大腸菌の段階希釈を使用して作成した。PCRプライマーは、多種多様な微生物にわたって保存されていることが知られており、真核生物DNAには見られない16S rRNA遺伝子の領域から選択された。コピー発信者ソフトウェアを使用してThermoFisher 7900HT機器でリアルタイムqPCRを使用して、16S rRNA遺伝子の存在についてDNAを試験した。
【0172】
唾液採取試料からのDNAの総量の百分率としての細菌DNA含有量は、おそらく下流分析の成功率を阻害または減少させると考えられてきた。本発明の唾液キットから抽出した33個のDNA試料および既存の唾液キットから抽出した5個のDNA試料を、存在する細菌DNAの割合について試験した。競合他社の以前のデータでは、細菌DNAの割合は約13%と推定されていた。本発明の唾液キット抽出物の平均細菌含有量は、5.5%(1.1~14.3%)であった。競合他社の唾液キット抽出物の平均細菌含有量は、26%(2.1~96.2%)~14.31%であった。
【0173】
下記の表5に概説されるように、有機抽出、固相抽出、ビーズベース抽出、および塩析抽出、ならびにPCR、qPCR、dPCR、マイクロアレイ、Sangerシーケンス、およびいわゆる次世代(またはNextGen)シーケンス(NGS)を含む、現在使用されているさまざまな分子解析のうちのいずれか1つを含む、様々な利用可能な化学的アプローチのうちのいずれか1つを使用した核酸抽出のための採取装置における本開示の配合物の使用の承認を得るために、一連の上記および/または他の実験的試験を行って、510K検討に対するFDA提出を支持した。
【0174】
【0175】
結果の概要
全ての複製における全ての試料からDNAを首尾よく抽出した。一般に、抽出されたDNAのサイズ(および収率)は高かった。劣化の証拠はわずかしかなかった。試料からの複製物は、収率に関して非常に類似していた。さらに、同じ個人であると仮定されているもの全体の収量も同様に機能した。SNPについての遺伝子型決定は、高品質の結果を生み出し、期待される収率を満たした。1人の個人からの試料、4つの別々に採取された試料は、CNV(n=3)またはNGS(n=1)のQC測定基準を満たしていなかった。総DNAに対する割合としての細菌DNA含有量は、本発明の唾液キットDNA抽出物において比較的低かった。
【0176】
表6および表7に示されるさらなる例において、100の試料が、本開示の核酸保存組成物(「本発明」)および2つの既存の製品(「既存1」および「既存2」)の性能を試験するために使用された。表6に示されるように、「本発明」本開示の核酸保存組成物は、いずれの「既存」の製品よりも高い平均DNA濃度および高い量(収率)の総DNAをもたらした。
【0177】
【0178】
さらに表7に示されるように、「本発明」本開示の核酸保存組成物で処理された試料は、「既存」の製品のいずれよりも有意に少ない平均量の非ヒトDNAを有していた。
【0179】
【0180】
したがって、本開示の組成物は、驚くべきことに、既存のDNA保存製品よりも著しく優れている。具体的には、本開示の組成物が非常にうまく機能すること(例えば、大量の(ヒト)核酸(DNA)を得ること、および/または低レベルの微生物汚染を有するかもしくは示すこと)は、驚くべきかつ予想外のことであった。本開示の組成物が、いくつかの実施形態において提供される少量のアルコールで非常にうまく機能することは、さらに驚くべきかつ予想外のことであった。例えば、いくつかの実施形態では、組成物に含まれるアルコールの量は、典型的、伝統的、または既存の核酸保存溶液よりも少なくてもよい(例えば、約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、または60%未満)。さらに、より少ない量のアルコールは、より経済的であり、かつ/または組成物を出荷または輸送に対してより修正可能にする(例えば、出荷の要件および規制を順守すること、揮発性を減らすことなどをより容易にすることによって)。
【0181】
結論
特定の実施形態(例えば、組成物、キット、方法など)は、本明細書に開示および/または記載された他の実施形態に記載された特徴(例えば、特性、構成要素、成分、要素、部材、部分、工程など)を含む、組み込む、または含み得ることが理解されるであろう。一実施形態の様々な特徴は、本開示の他の実施形態と互換性があり、組み合わせられ、含まれ、および/または組み込まれ得る。したがって、本開示の一実施形態に関連する特定の特徴の開示は、該特徴の特定の実施形態への適用または包含を制限するものとして解釈されるべきではない。むしろ、本開示の範囲から必ずしも逸脱することなく、他の実施形態もまた該特徴を含み得ることが理解されるであろう。さらに、特色がそれと組み合わせて別の特徴を必要とするものとして記載されていない限り、本明細書に記載の任意の特徴は、本明細書に開示の同じかまたは異なる実施形態の任意の他の特色と組み合わせられ得る。
【0182】
記載された実施形態は、全ての点において、単に例示的なものであって、限定的なものではないとみなされるべきである。したがって、本発明の範囲は、前述の説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求に相当する範囲および意味に入る全ての変更は、その範囲内に含まれるものである。当業者に想起され、かつ本開示を所有する、本明細書に例示された特徴の様々な変更および/または修正ならびに追加の適用は、特許請求の範囲によって定義された本発明の精神および範囲から逸脱することなく例示された実施形態に対して実行され得、本開示の範囲内にあるとみなされるべきである。本明細書では様々な特徴および実施形態が開示されているが、他の特徴および実施形態も考えられる。例えば、記載された実施形態の態様を曖昧にすることを避けるために、周知の特徴および実施形態は、本明細書では具体的に詳細には記載されない。しかしながら、そのような特徴および実施形態もまた本明細書において企図されている。