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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163242
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ポンプの空気抜き弁
(51)【国際特許分類】
   F04B 53/06 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
F04B53/06
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024151973
(22)【出願日】2024-09-04
(62)【分割の表示】P 2020126556の分割
【原出願日】2020-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000141174
【氏名又は名称】株式会社丸山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140682
【弁理士】
【氏名又は名称】妙摩 貞茂
(72)【発明者】
【氏名】柳 栄二
(57)【要約】
【課題】構造の簡素化及び小型化を図りつつ空気抜き後の弁の閉への切替を時間遅れなく速やかで円滑に行う。
【解決手段】弁押さえ2の筒孔2aの出口側端部を、弾発手段4により弾発された弁3により塞ぎ、弁押さえ2の筒孔2aに流入する空気及び液体を、弁押さえ2の出口側端部に設けられ筒内外を連通する切欠2eから、弁本体1の内面に設けられ切欠2eに連通する空間1dを通して、弁本体1の出口側の筒孔1e,1fへ流し外部へ排出する。大部分の空気が排出されるのと同時に、弁押さえ2の筒孔2aに対面する弁3の窪み3cに対して、直進し真正面から受け止められ溜められた液体の圧力により、弁3を弾発手段4に抗して直ちに押し下げ、弁本体1内の出口側の縮径する段差面1aのパッキン5に当接させ、弁3を閉とする。即ち、液体の流路を1つとし構造の簡素化及び小型化を図りつつ空気抜き後の弁3の閉への切替を時間遅れなく速やかで円滑に行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプの吐出側に接続されるポンプの空気抜き弁(100)において、
筒状の弁本体(1)と、
前記弁本体(1)の入口側の内部に装着され液体が流入する筒孔(2a)を有し、出口側端部に筒内外を連通する切欠(2e)が設けられた筒状の弁押さえ(2)と、
前記弁本体(1)内の前記弁押さえ(2)より出口側に軸線方向移動可能に内挿され、入口側の端面に、前記入口側に突出する円環部(3d)が形成されることで軸線方向出口側にへこむ窪み(3c)が設けられた弁(3)と、
前記弁(3)の前記円環部(3d)の入口側の端面が前記弁押さえ(2)の出口側の端面に当接し前記筒孔(2a)が塞がれると共に前記弁(3)の前記窪み(3c)と前記弁押さえ(2)の前記筒孔(2a)が対面するように前記弁(3)を弾発する弾発手段(4)と、
前記弁本体(1)内の出口側の縮径する段差面(1a)に設けられ、前記弾発手段(4)が内挿されると共に、前記弁押さえ(2)側からの液体が出口側へ通過可能な孔(5a)を有し、前記弁(3)が当接可能な環状のパッキン(5)と、
前記弁本体(1)の内面に設けられ、前記弁(3)が前記弾発手段(4)より弾発され前記弁押さえ(2)に当接し前記筒孔(2a)を塞いだ状態で、前記弁押さえ(2)の前記切欠(2e)と前記弁本体(1)の出口側の筒孔(1e,1f)とを連通する空間(1d)と、を備え、
前記円環部は、前記弁(3)の入口側の前記端面の周縁に形成されている、ポンプの空気抜き弁(100)。
【請求項2】
前記弁押さえ(2)は前記弁本体(1)に螺合により装着されており、
前記弁本体(1)の前記空間(1d)は、螺子逃がし部である、請求項1に記載のポンプの空気抜き弁(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプの空気抜き弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポンプの吐出側に接続されて、ポンプ起動時に空気抜きを自動的に行うポンプの空気抜き弁が知られている。以下の特許文献1に記載のポンプの空気抜き弁では、弁(弁体)は、ポンプ起動時には、付勢部材により開に保持されて空気を抜き、空気抜き後は、弁にかかる液圧による力により自動的に閉へ切り替わり、圧送液体の漏れを防止できるようになっている。
【0003】
しかしながら、上記空気抜き弁では、空気抜き後、液体が、弁周囲の間隙を通過しつつ、弁自体に閉方向へ作用する(弁側面に主要な圧力がかかる)ようになっているため、弁が閉方向へ十分な力を受けて閉となるまで、時間遅れが生じるという問題があった。
【0004】
そこで、以下の特許文献2の空気抜き弁では、ポンプ吐出口部と排出口との接続を制御する弁(ニードル弁)と、弁と一体的に軸方向へ変位しポンプ吐出口部の圧力から弁の閉方向の力を受ける圧力受け部と、弁を開方向へ付勢する付勢部材と、一端がポンプ吐出口部に連通すると共に他端が圧力受け部の上面に連通する上側通路と、一端がポンプ吐出口部に連通すると共に他端が排出口に連通する下側通路と、を備えており、ポンプ起動時では、空気がポンプ吐出口部に残存し、ポンプ吐出口部の圧力は、上側通路から圧力受け部を介して弁の閉方向へ作用するものの小さく、従って、弁は付勢部材の付勢力により開に保持され、ポンプ吐出口部の残存空気は、下側通路を通り弁を経て排出口へ達し、排出口から外部へ排出される。その後、ポンプ吐出口部内の残存空気がほぼ消失すると、ポンプ吐出口部は、ポンプからの液体によりほぼ満たされると共に、ポンプ吐出口部側から上側通路を介して圧力受け部にかかる力が増大し、これにより、弁は、付勢部材の付勢力に抗し移動して閉じ、その結果、ポンプ吐出口部と排出口との連通が断たれ、ポンプ吐出口部内の液体の排出口からの漏れが防止されている。
【0005】
すなわち。引用文献2の空気抜き弁では、ポンプ吐出口部における空気抜きを終了するのに伴い、圧力受け部に十分な力がかかって弁を閉止するようになっているため、空気抜き弁の閉への切替を、時間遅れなく速やかで円滑に行うことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平2-92075号公報
【特許文献2】実開平6-47677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載のポンプの空気抜き弁にあっては、ポンプ吐出口部からの液体が流れる流路(通路)が2つ必要であり、構造が複雑で且つ大型化してしまうため、構造の簡素化及び小型化が求められている。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、構造の簡素化及び小型化を図りつつ、空気抜き後の弁の閉への切替を時間遅れなく速やかで円滑に行うことができるポンプの空気抜き弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるポンプの空気抜き弁(100)は、ポンプの吐出側に接続されるポンプの空気抜き弁(100)において、筒状の弁本体(1)と、弁本体(1)の入口側の内部に装着され液体が流入する筒孔(2a)を有し、出口側端部に筒内外を連通する切欠(2e)が設けられた筒状の弁押さえ(2)と、弁本体(1)内の弁押さえ(2)より出口側に軸線方向移動可能に内挿され、入口側の端面に、軸線方向出口側にへこむ窪み(3c)が設けられた弁(3)と、弁(3)が弁押さえ(2)に当接し筒孔(2a)を塞ぐと共に弁(3)の窪み(3c)と弁押さえ(2)の筒孔(2a)が対面するように弁(3)を弾発する弾発手段(4)と、弁本体(1)内の出口側の縮径する段差面(1a)に設けられ、弾発手段(4)が内挿されると共に、弁押さえ(2)側からの液体が出口側へ通過可能な孔(5a)を有し、弁(3)が当接可能な環状のパッキン(5)と、弁本体(1)の内面に設けられ、弁(3)が弾発手段(4)より弾発され弁押さえ(2)に当接し筒孔(2a)を塞いだ状態で、弁押さえ(2)の前記切欠(2e)と弁本体(1)の出口側の筒孔(1e,1f)とを連通する空間(1d)と、を備えたことを特徴としている。
【0010】
このようなポンプの空気抜き弁(100)によれば、ポンプが起動されると、ポンプ及び配管内の空気及び液体は、筒状の弁本体(1)の入口側の内部に装着された弁押さえ(2)の筒孔(2a)に流入する。ここで、弁本体(1)内の弁押さえ(2)より出口側に軸線方向移動可能に内挿されると共に入口側の端面に軸線方向出口側にへこむ窪み(3c)が設けられた弁(3)が、弾発手段(4)より弾発されて、弁押さえ(2)の筒孔(2a)を塞いでいるため、空気及び液体は、弁押さえ(2)の出口側端部に設けられ筒内外を連通する切欠(2e)から、弁本体(1)の内面に設けられ切欠(2e)に連通する空間(1d)を通して、弁本体(1)の出口側の筒孔(1e,1f)へ流れ、外部へ排出される。そして、大部分の空気が排出されるのとほぼ同時に、弁押さえ(2)の筒孔(2a)に対面する弁(3)の窪み(3c)に対して直進し真正面から受け止められて溜められた液体の圧力により、弁(3)が弾発手段(4)の弾発力に抗して直ちに押し下げられる。押し下げられた弁(3)は、弁本体(1)内の出口側の縮径する段差面(1a)に設けられ、弁押さえ(2)側からの液体が出口側へ通過可能な孔(5a)を有する環状のパッキン(5)に当接し、弁(3)が閉とされる。すなわち、空気抜き後の弁(3)の閉への切替が、弁押さえ(2)の筒孔(2a)を直線的に流れ対面する弁(3)の窪み(3c)に溜められた液体の圧力により、時間遅れなく速やかで円滑に行われる。そして、ポンプが停止すると、ポンプ及び配管の圧力が運転時より下がるため、弾発手段(4)の弾発力により、弁(3)が押し上げられ、弁押さえ(2)の筒孔(2a)を塞ぐが、弁押さえ(2)の切欠(2e)、弁本体(1)の内面の空間(1d)、弁本体(1)の出口側の筒孔(1e,1f)は連通しているため、液体は外部へ排出され、残圧及び残液はなくされる。このように、液体が流れる流路を1つとし構造の簡素化及び小型化を図りつつ、空気抜き後の弁(3)の閉への切替を時間遅れなく速やかで円滑に行うことができる。
【0011】
ここで、上記作用を好適に奏する構成としては、具体的には、弁押さえ(2)は弁本体(1)に螺合により装着されており、弁本体(1)の空間(1d)は、螺子逃がし部である構成が挙げられる。このような空気抜き弁によれば、別途空間を設ける必要がなく、空気抜き弁(100)を簡易に構成できる。
【発明の効果】
【0012】
このように本発明によれば、構造の簡素化及び小型化を図りつつ、空気抜き後の弁の閉への切替を時間遅れなく速やかで円滑に行うことができるポンプの空気抜き弁を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る空気抜き弁を示す縦断面図であり、弁が開の状態を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る空気抜き弁を示す縦断面図であり、弁が閉の状態を示す図である。
図3図1及び図2中の弁本体を示す縦断面図である。
図4図1及び図2中の弁押さえを示す斜視図である。
図5図4に示す弁押さえの縦断面図である。
図6図1及び図2中の弁を示す斜視図である。
図7図6に示す弁の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るポンプの空気抜き弁の好適な実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る空気抜き弁を示す縦断面図であり、弁が開の状態を示す図、図2は、空気抜き弁の弁が閉の状態を示す縦断面図、図3は、弁本体を示す縦断面図、図4及び図5は、弁押さえを示す各図、図6及び図7は、弁を示す各図である。本実施形態のポンプの空気抜き弁は、例えば背負式動力噴霧機等に用いられるものである。
【0015】
図1に示すように、空気抜き弁100は、ポンプの吐出側に接続されるものであって、段付き円筒状に構成される弁本体1と、弁本体1の入口側の内部に装着された円筒状の弁押さえ2と、弁本体1内の弁押さえ2より出口側に軸線方向移動可能に内挿された弁3と、弁本体1内に配置され、弁3が弁押さえ2に当接するように当該弁3を弾発する弾発手段としての圧縮コイルバネ4と、弁本体1内の段差面1aに設けられ、弁3が圧縮コイルバネ4の弾発力に抗して押し下げられたとき(図示左側へ移動したとき)に、弁3に当接可能なパッキン5と、を備えている。
【0016】
弁本体1は、図1及び図3に示すように、入口側(図示右側)の円筒部1xに対して出口側(図示左側)の円筒部1yが内外径とも縮径するように構成され、縮径する内面側の段差面が上記パッキン5を固定する段差面1aとされる。
【0017】
弁本体1の円筒部1xの入口側の筒孔(内周面)には、雌螺子1cの螺子逃がし部(溝)として設けられると共に、Oリング6を装着するためのOリング溝1bが円環状に凹設され、Oリング溝1bから弁本体1の軸線方向中程に亘る筒孔には、Oリング溝1bより縮径された上記雌螺子1cが、弁押さえ2を装着するためのものとして設けられている。弁本体1の雌螺子1cの出口側には、空間としての円環状の雌螺子1cの螺子逃がし部(溝)1dが、軸線方向に所定長連設されている。弁本体1の螺子逃がし部1dから出口側の筒孔1eは縮径され、段差面1aに至っている。弁本体1の段差面1aから出口側へ亘る筒孔1fは、主に圧縮コイルバネ4を収容するための筒孔とされ、弁本体1の筒孔1fの出口部は縮径された排出口1gとされている。弁本体1の出口側の小径の円筒部1yの外周面は、周方向に連続する鉤形状に構成され、円筒部1yに外挿されたホース8が鉤形状に係合することにより、弁本体1の出口側にホース8が接続されている。
【0018】
弁押さえ2は、図1図4及び図5に示すように、頭部2x及び軸部2yを有する六角ボルトの中央に、軸線方向に貫通する筒孔2aを設けた形状に構成されている。弁押さえ2の軸部2yの外周面には、弁本体1の雌螺子1cに螺合する雄螺子2cが設けられており、雄螺子2cに連設される軸部2yの根元には、雄螺子2cの螺子逃がし部(溝)2bが、Oリング6を収容するものとして設けられている。また、弁押さえ2の筒孔2aの入口側の頭部2xの内周面には、ポンプからの配管に繋がるニップル7に螺合する雌螺子2dが形成されている。
【0019】
また、弁押さえ2の出口側端部には、出口側外方から軸線方向に短尺に切り込まれると共に筒内外を連通する切欠2eが、周方向に180°離間して一対設けられている。この切欠2eは、ポンプ起動時にポンプ側の空気を抜くと共に、ポンプ停止時にポンプ側の残圧及び残液を抜くためのものである。
【0020】
そして、図1に示すように、弁本体1の雌螺子1cに弁押さえ2の雄螺子2cを螺合し締め付けることにより、弁押さえ2が弁本体1に装着され、弁本体1のOリング溝1bと弁押さえ2の螺子逃がし部2bとの間にOリング6が圧縮されて保持されると共に、弁本体1の入口側の端面と弁押さえ2の頭部2xの出口側の端面が密着し、弁本体1と弁押さえ2のシールが行われる。
【0021】
弁3は、図1図6及び図7に示すように、入口側の円板状の頭部3aの後端面の中央に、円柱又は円筒状の軸部3bを連設したものである。頭部3aは、弁本体1内において弁押さえ2の出口側の端面とパッキン5との間を移動可能とされ、入口側の端面には、弁押さえ2の筒孔2aに対向し軸線方向出口側に断面円形にへこむ窪み3cが設けられている。このように頭部3aに窪み3cを形成することにより、窪み3cを形成する周縁部が、入口側へ突出する円環部3dとされている。また、軸部3bは、外挿される圧縮コイルバネ4を案内するためのものであり、上記筒孔1e及び筒孔1fに亘って移動可能とされている。
【0022】
図1に示すように、パッキン5は、可撓性樹脂より形成され、薄い円板の中央に孔5aを有する円環状に構成されている。このパッキン5は、孔5aが、弁本体1の筒孔1fと連通するようにして、弁本体1の上記段差面1aに例えば貼着等により固定されている。
【0023】
圧縮コイルバネ4は、弁3の軸部3bに外挿されると共に、弁本体1の筒孔1f及びパッキン5の孔5aに内挿され、弁3の頭部3aの出口側端面と弁本体1の排出口1gを形成する周縁の内側部分との間に介装されており、弁3の頭部3aを弁押さえ2側へ弾発している。
【0024】
このような構成を有する本実施形態のポンプの空気抜き弁100においては、ポンプを運転していない状態では、図1に示すように、圧縮コイルバネ4により弁3が弾発されて押し上げられ(図示右側へ移動し)、弁3の頭部3aの入口側端部、具体的には、頭部3aの円環部3dの端面が、弁押さえ2の出口側の端面に当接し弁押さえ2の筒孔2aを塞いだ状態となっている。この状態にあっては、弁押さえ2の切欠2eは、弁本体1の螺子逃がし部1dを介して、弁本体1の出口側の筒孔1e,1fに連通した状態となっている。
【0025】
ポンプが起動されると、ポンプ及び配管内の空気及び液体(例えば水)は、弁押さえ2の筒孔2aに流入する。ここで、弁3は、圧縮コイルバネ4より弾発されて、弁押さえ2の筒孔2aを塞いでいるため、空気及び液体は、弁押さえ2の切欠2eから、弁本体1の内面に設けられた螺子逃がし部1dを通して、弁本体1の出口側の筒孔1e,1fへ流れ、排出口1gを通して外部へ排出される。すなわち、ポンプ起動時にポンプ側の空気を抜くことができる。
【0026】
そして、大部分の空気が排出される(抜ける)のとほぼ同時に、弁押さえ2の筒孔2aに対面する弁3の窪み3cに対して、弁押さえ2の筒孔2aを直進する液体が真正面から受け止められて溜められることになり、当該液体の圧力により、図2に示すように、弁3が圧縮コイルバネ4の弾発力に抗して直ちに押し下げられる(図示左側へ移動する)。押し下げられた弁3はパッキン5に当接し、弁3が閉とされ、液体の排出は遮断される。
【0027】
すなわち、空気抜き後の弁3の閉への切替が、弁押さえ2の筒孔2aを直線的に流れ対面する弁3の窪み3cに溜められた液体の圧力により、時間遅れなく速やかで円滑に行われる。
【0028】
そして、ポンプが停止すると、ポンプ及び配管の圧力が運転時より下がる。このため、図1に示すように、圧縮コイルバネ4の弾発力により、弁3が押し上げられ、弁押さえ2の筒孔2aが塞がれる。この状態で、弁押さえ2の切欠2e、弁本体1の内面の螺子逃がし部1d、弁本体1の出口側の筒孔1e,1fは連通しているため、液体は外部へ排出され、残圧及び残液はなくされる。
【0029】
このように、本実施形態のポンプの空気抜き弁100によれば、液体が流れる流路を1つとし構造の簡素化及び小型化を図りつつ、空気抜き後の弁3の閉への切替を時間遅れなく速やかで円滑に行うことができる。
【0030】
また、弁押さえ2は弁本体1に螺合により装着されており、弁本体1の抜き空間を螺子逃がし部1dにより構成しているため、別途空間を設ける必要がなく、空気抜き弁100を簡易に構成できるようになっている。
【0031】
また、本実施形態によれば、以下の作用・効果も奏する。すなわち、残圧が残らないため、ポンプ起動時のモータに無駄な負荷がかからず、起動しやすい。また、霧を噴霧するためのノズルを接続する場合、ポンプ停止時のノズルからの水滴のボタ落ちを防止するため、チャッキ弁を付設することになり、複数個のノズルを接続する場合には、各ノズルのチャッキ弁のバネのばらつきにより閉止圧力がばらつき、閉止圧力の高いノズルがポンプの近いところにあると残圧が高い時間が増え、ポンプ停止時間が短いとモータが再起動しなくなるという問題を生じるが、チャッキ弁のバネのばらつきに関係なく残圧が抜けるため、モータの起動トラブルを防止できる。また、ポンプ停止時の内圧が高い場合、吸水側へ逆流し、低圧パッキンを傷める虞があるが、残圧が残らないため、低圧パッキンを傷めることはない。
【0032】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、特に好適であるとして、弁押さえ2を弁本体1に螺合により装着し、弁本体1の内面の空間を螺子逃がし部1dとしているが、弁押さえ2と弁本体1との結合は螺合以外であっても良く、従って、弁本体1の内面の空間は螺子逃がし部でなくても良い。
【0033】
また、上記実施形態においては、弾発手段を圧縮コイルバネ4としているが、圧縮コイルバネ4と同様な弾発性能を発揮するものであれば、他のものであっても良い。
【0034】
また、上記実施形態においては、切欠2eを一対対向して設けているが、2個に限定されるものではなく、3個以上であっても良い。この場合には、周方向に沿って等配位置に設けるのが好ましい。また、切欠2eは複数個に限られない。
【0035】
また、上記実施形態においては、例えば背負式動力噴霧機のポンプに対する適用を述べているが、例えばブームスプレーヤのポンプ等に対しても適用でき、要は、ポンプ全般に適用できる。
【符号の説明】
【0036】
1…弁本体、1a…段差面、1d…螺子逃がし部(空間)、1e,1f…出口側の筒孔、2…弁押さえ、2a…筒孔、2e…切欠、3…弁、3c…窪み、4…圧縮コイルバネ(弾発手段)、5…パッキン、5a…孔、100…空気抜き弁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7