(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163244
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】組換え操作された、リパーゼ/エステラーゼ欠損哺乳動物細胞株
(51)【国際特許分類】
C12N 5/16 20060101AFI20241114BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20241114BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241114BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20241114BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20241114BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20241114BHJP
【FI】
C12N5/16 ZNA
C12P21/02 C
A61K39/395 N
A61K39/395 J
A61K47/26
C12N5/16
C12P21/08
C12N15/09 100
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024152049
(22)【出願日】2024-09-04
(62)【分割の表示】P 2022522067の分割
【原出願日】2020-10-14
(31)【優先権主張番号】62/915,234
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100221523
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 渉
(72)【発明者】
【氏名】フライ,クリストファー カール
(72)【発明者】
【氏名】ホール,トゥロッイ
(72)【発明者】
【氏名】ホアン,リフア
(72)【発明者】
【氏名】サンデファー,ステファニー リン
(57)【要約】
【課題】本発明は、操作された哺乳動物細胞株、それを産生する方法、当該細胞株において組換えタンパク質を産生する方法、および当該細胞株において産生された組換えタンパク質を含む組成物に関する。
【解決手段】リパーゼ/エステラーゼの発現および/または活性が減少した哺乳動物細胞株、ならびにこれらを産生するための方法が提供される。また、ポリソルベート安定性が向上した、ポリソルベートおよび当該哺乳動物細胞において産生された組換えタンパク質を含む組成物も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの内因性宿主細胞タンパク質(HCP)パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ、ならびにリポタンパク質リパーゼ、リソソーム酸リパーゼ、ホスホリパーゼD、およびホスホリパーゼA2からなる群から選択される少なくとも1つの他の内因性HCPの減少した発現、ならびに/または減少した活性を有する、組換え操作された哺乳動物細胞。
【請求項2】
HCPパルミトイルタンパク質チオエステラーゼをコードする、破壊された、または不活性化された遺伝子と、リソソーム酸リパーゼタンパク質、リポタンパク質リパーゼタンパク質、ホスホリパーゼD、およびホスホリパーゼA2タンパク質からなる群から選択されるHCPをコードする、少なくとも1つの破壊された、または不活性化された遺伝子とを含む、請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
前記パルミトイルタンパク質チオエステラーゼが、PPT1、ならびにLAL、LPL、PLD3およびLPLA2からなる群から選択されるHCPをコードする、少なくとも1つの不活性化された遺伝子である、請求項1または2に記載の細胞。
【請求項4】
前記細胞が、前記リソソーム酸リパーゼ(LAL)タンパク質、前記リポタンパク質リパーゼ(LPL)タンパク質、前記ホスホリパーゼA2(LPLA2)タンパク質、および前記パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ1(PPT1)タンパク質をコードするポリヌクレオチドのコード配列において修飾を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項5】
前記細胞が、前記リソソーム酸リパーゼ(LAL)タンパク質、前記リポタンパク質リパーゼ(LPL)タンパク質、前記ホスホリパーゼA2(LPLA2)タンパク質、および前記パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ1(PPT1)タンパク質をコードするポリヌクレオチドのコード配列において修飾を含み、前記修飾が、前記修飾のうちのいずれも有しない細胞の発現レベルと比較して、前記修飾を有する細胞において前記LALタンパク質、前記LPLタンパク質、前記LPLA2タンパク質、および前記PPT1タンパク質の発現レベルを低下させる、請求項1~3のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項6】
前記細胞が、検出可能なレベルの前記LALタンパク質、前記LPLタンパク質、前記LPLA2タンパク質、および前記PPT1タンパク質を発現しない、請求項4または5に記載の細胞。
【請求項7】
前記修飾が、前記特定のタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチドの前記コード配列のエクソン1または2内のヌクレオチド挿入または欠失を含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項8】
前記修飾が、
a)前記LPL、前記LPLA2、およびPPT1タンパク質をコードする前記ポリヌクレオチドの前記コード配列のエクソン1内のヌクレオチド挿入または欠失、ならびに
b)前記LALタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチドの前記コード配列のエクソン2内のヌクレオチド挿入または欠失を含む、請求項4~7のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項9】
前記PPT1タンパク質が、配列番号1と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の細胞。
【請求項10】
前記修飾が、配列番号8内のヌクレオチド挿入または欠失を含む、請求項9に記載の細胞。
【請求項11】
前記LALタンパク質が、配列番号2と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の細胞。
【請求項12】
前記修飾が、配列番号7内のヌクレオチド挿入または欠失を含む、請求項11に記載の細胞。
【請求項13】
前記LPLタンパク質が、配列番号3と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の細胞。
【請求項14】
前記修飾が、配列番号6内のヌクレオチド挿入または欠失を含む、請求項13に記載の細胞。
【請求項15】
前記LPLA2タンパク質が、配列番号4と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の細胞。
【請求項16】
前記修飾が、配列番号5内のヌクレオチド挿入または欠失を含む、請求項15に記載の細胞。
【請求項17】
前記修飾が、PPT1、LAL、LPL、およびLPLA2から構成されるリストからのタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチドの前記コード配列のエクソン2、エクソン3、またはエクソン4内のヌクレオチド挿入または欠失を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項18】
1つ以上のバイオ製品をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項19】
前記バイオ製品が、抗体、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗原結合断片、抗原結合タンパク質、タンパク質-タンパク質融合およびFc融合タンパク質からなる群から選択される、請求項18に記載の細胞。
【請求項20】
前記細胞が、前記修飾のうちのいずれも有しない細胞のポリソルベート分解活性と比較して、実質的に減少したポリソルベート分解活性を有するプロテインA結合画分を産生する、請求項4~19のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項21】
インタクトなポリソルベートの分解の前記減少が、30%以上である、請求項20に記載の細胞。
【請求項22】
インタクトなポリソルベートの分解の前記減少が、30%以上である、請求項20に記載の細胞。
【請求項23】
前記細胞が、CHO細胞である、請求項1~22のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項24】
前記細胞が、CHO-K1細胞、CHOK1SV細胞、DG44 CHO細胞、DUXB11 CHO細胞、CHO-S、CHO GSノックアウト細胞(グルタミンシンテターゼ)、CHOK1SV FUT8ノックアウト細胞、CHOZN、またはCHO由来細胞である、請求項23に記載の細胞。
【請求項25】
(a)未修飾細胞と比較して、減少したレベルのPPT1を産生するように修飾された宿主細胞から、バイオ製品および複数の宿主細胞タンパク質を含む試料を得るステップ、次いで
(b)前記試料を少なくとも1つの精製ステップに供して、少なくとも1つの宿主細胞タンパク質を除去するステップを含む、バイオ製品を製造するための方法。
【請求項26】
前記複数の宿主細胞タンパク質が、(a)検出可能な量のPPT1タンパク質を含まず、(b)検出可能な量の少なくとも1つの他のリパーゼまたはエステラーゼを含まない、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記宿主細胞が、
a)PPT1タンパク質をコードするポリヌクレオチドのコード配列における修飾、および
b)リソソーム酸リパーゼ(LAL)、リポタンパク質リパーゼ(LPL)、ホスホリパーゼA2(LPLA2)、ホスホリパーゼD3(PLD3)、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される脂肪酸ヒドロラーゼをコードするポリヌクレオチドのコード配列における修飾を含む、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記精製ステップが、プロテインAアフィニティー(PA)クロマトグラフィーもしくは別のアフィニティークロマトグラフィー法、陽イオン交換(CEX)クロマトグラフィー、陰イオン交換(AEX)クロマトグラフィー、または疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)である、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
タンパク質製剤中のポリソルベート分解を減少させるための方法であって、
(a)宿主細胞を修飾して、パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ1(PPT1)タンパク質の発現を減少させるか、または排除するステップ、
(b)前記宿主細胞を修飾して、リソソーム酸リパーゼ(LAL)、リポタンパク質リパーゼ(LPL)、ホスホリパーゼD3(PLD3)、および/またはホスホリパーゼA2(LPLA2)の発現を減少させるか、または排除するステップ、
(c)前記細胞にバイオ製品をコードするポリヌクレオチドをトランスフェクトするステップ、
(d)前記宿主細胞から目的のタンパク質を含むタンパク質画分を抽出するステップ、
(e)前記タンパク質画分を、プロテインAアフィニティー(PA)クロマトグラフィーもしくは別のアフィニティークロマトグラフィー法、陽イオン交換(CEX)クロマトグラフィー、陰イオン交換(AEX)クロマトグラフィー、または疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)である、クロマトグラフィー媒体と接触させるステップ、
(f)前記媒体から目的の前記タンパク質を収集するステップ、
(g)前記バイオ製品を脂肪酸エステルと混合するステップ、
(h)任意選択により、緩衝液を添加するステップ、次いで
(i)任意選択により、1つまたはそれ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を添加するステップを含む、方法。
【請求項30】
タンパク質製剤中の凝集または粒子形成を減少させるための方法であって、
(a)宿主細胞を修飾して、パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ1(PPT1)タンパク質の発現を減少させるか、または排除するステップ、
(b)前記宿主細胞を修飾して、リソソーム酸リパーゼ(LAL)、リポタンパク質リパーゼ(LPL)、ホスホリパーゼD3(PLD3)、および/またはホスホリパーゼA2(LPLA2)の発現を減少させるか、または排除するステップ、
(c)前記細胞に目的のバイオ製品をコードするポリヌクレオチドをトランスフェクトするステップ、
(d)前記宿主細胞から目的のタンパク質を含むタンパク質画分を抽出するステップ、
(e)前記タンパク質画分を、プロテインAアフィニティー(PA)クロマトグラフィーもしくは別のアフィニティークロマトグラフィー法、陽イオン交換(CEX)クロマトグラフィー、陰イオン交換(AEX)クロマトグラフィー、または疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)である、クロマトグラフィー媒体と接触させるステップ、
(f)前記媒体から目的の前記タンパク質を収集するステップ、
(g)目的の前記タンパク質を脂肪酸エステルと混合するステップ、
(h)任意選択により、緩衝液を添加するステップ、次いで
(i)任意選択により、1つまたはそれ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を添加するステップを含む、方法。
【請求項31】
安定な製剤化したバイオ製品を産生するための方法であって、
(a)宿主細胞を修飾して、パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ1(PPT1)タンパク質の発現を減少させるか、または排除すること、
(b)前記宿主細胞を修飾して、リソソーム酸リパーゼ(LAL)、リポタンパク質リパーゼ(LPL)、ホスホリパーゼD3(PLD3)、および/またはホスホリパーゼA2(LPLA2)の発現を減少させるか、または排除すること、
(c)前記細胞にバイオ製品をコードするポリヌクレオチドをトランスフェクトすること、
(d)前記宿主細胞から前記バイオ製品を含むタンパク質画分を抽出すること、
(e)前記タンパク質画分を、プロテインAアフィニティー(PA)クロマトグラフィーもしくは別のアフィニティークロマトグラフィー法、陽イオン交換(CEX)クロマトグラフィー、陰イオン交換(AEX)クロマトグラフィー、または疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)である、クロマトグラフィー媒体と接触させること、
(f)前記媒体から前記バイオ製品を収集すること、
(g)前記バイオ製品を脂肪酸エステルと混合すること、
(h)任意選択により、緩衝液を添加すること、次いで
(i)任意選択により、1つまたはそれ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を添加することを含む、方法。
【請求項32】
前記宿主細胞を修飾して、PPT1の前記発現を減少させるか、または排除する前記ステップが、前記PPT1タンパク質をコードするポリヌクレオチドのエクソン2、エクソン3、またはエクソン4内の少なくとも1つのヌクレオチドを挿入または欠失することを含む、請求項29~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記PPT1タンパク質をコードする前記ポリヌクレオチドが、配列番号1と少なくとも80%同一である核酸配列を含む、請求項29~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記細胞によって産生された前記ホスホリパーゼのうちのいずれかの前記発現および/または活性が減少している、請求項29~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記減少した発現および/または活性が、脂肪分解活性についてアッセイすることによって決定される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ポリソルベート、および請求項1~24のいずれか一項に記載の哺乳動物細胞によって産生されたバイオ製品を含む、医薬組成物。
【請求項37】
ポリソルベート、および請求項29~35のいずれか一項に記載の方法によって産生されたバイオ製品を含む、医薬組成物。
【請求項38】
前記バイオ製品が、タネズマブ、レブリキズマブ、ミリキズマブ、ソラネズマブ、ドナネマブ、ザゴテネマブ(zagotenemab)、ラムシルマブ、ガルカネズマブ、イキセキズマブ、デュラグルチド、ネシツムマブ、オララツマブ、セツキシマブ、アンジオポエチン2mAb、インスリン-Fc融合タンパク質、CD200Rアゴニスト抗体、エピレグリン/TGFα mAb、ANGPTL 3/8抗体、BTLA抗体アゴニスト、CXCR1/2リガンド抗体、GDF15アゴニスト、IL-33抗体、PACAP38抗体、PD-1アゴニスト抗体、N3pG Abeta mAbとも呼ばれるpGlu-Abeta、TNFα/IL-23二重特異性抗体、抗α-シヌクレイン抗体、CD226アゴニスト抗体、MCT1抗体、SARS-CoV-2中和抗体、FcgRIIB抗体、IL-34抗体、CD19抗体、TREM2抗体、およびリラキシン類似体、ならびにポリソルベートからなる群から選択され、前記バイオ製品が、本発明の組換え哺乳動物細胞によって産生される、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項39】
請求項29~35のいずれか一項に記載の方法によって作製された、バイオ製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作された哺乳動物細胞株、それを産生する方法、当該細胞株において組換えタンパク質を産生する方法、および当該細胞株において産生された組換えタンパク質を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの哺乳動物細胞は、治療用タンパク質、ペプチド、およびモノクローナル抗体(mAb)を含む、組換えタンパク質を産生するためにバイオ医薬品業界において広範に使用されている。バイオ製品の製造プロセスでは、組換えタンパク質を含有する安全で効果的な薬物、診断、および/または研究試薬製品を産生するために、同時に産生された宿主細胞タンパク質(HCP)を除去または減少させる必要がある。バイオ製品製造において組換えタンパク質を精製するために、多種多様な精製技術が利用されてきた。しかしながら、HCPは、哺乳動物細胞において産生された組換えタンパク質から分離することが困難であり得る。したがって、HCPは、特に治療用バイオ製品の製造において、組換えタンパク質の産生に重大な課題を提示し得る。バイオ製品の製造のために使用される哺乳動物細胞における問題のあるHCPの発現または活性のいずれかを減少させるための方法は、組換えタンパク質の製造に必要な精製プロセスの複雑さを大幅に減少させることができる。HCPが減少した細胞株を使用すると、多くの場合、より安定した、より安全な、および/またはより効果的な組換えタンパク質ベースの薬物、診断法、および/または診断研究試薬が得られる。
【0003】
組換えタンパク質製品の産生では、生物医学製剤においてポリソルベートが、多くの場合、製造、出荷、および保管中のタンパク質の安定性を向上させるために使用される。ポリソルベートは、特に界面応力に起因する凝集および粒子形成、ならびに有効成分の表面接着を減少させることにより、バイオ製品の安定性を向上させることができる。しかしながら、特定のリパーゼ/エステラーゼの存在下でのポリソルベート(これはポリオキシエチレンソルビタンの脂肪酸エステルである)は、分解を受けて長鎖脂肪酸を放出する可能性がある。これは、例えば、エステル加水分解によって発生する可能性がある。ポリソルベート分解は、医薬品有効成分(API)を保護する際の界面活性剤の有効性を低下させ、時間の経過とともに製剤の濁りおよび粒子形成を引き起こし、製品を非準拠にし、その貯蔵寿命を制限する可能性があり、ポリソルベート分解生成物は、患者の安全性リスクに対してリスクを示す場合がある。ポリソルベート洗浄剤の酵素分解の原因となる細胞リパーゼ/エステラーゼを低下させるか、または排除することによって、ポリソルベート洗浄剤を含有する組換え産生されたバイオ製品製剤の貯蔵寿命を増加させることができる。廃棄物を減少させ、流通ネットワークを有効にする組換え製品の効率的な供給には、貯蔵寿命の増加が重要である。
【0004】
国際特許出願公開WO2017/053482、WO2016/138467、WO2018/039499、およびWO2015/095568は、様々なリパーゼ/エステラーゼを含む、哺乳動物細胞における問題のあるHCPの発現を減少させる方法を記載している。しかしながら、どのリパーゼ/エステラーゼが、ポリソルベート分解に関連する特定の問題を引き起こすかは、多くの場合、不明確である。したがって、組換えタンパク質産生法およびポリソルベート含有バイオ製品製剤における残留哺乳動物細胞リパーゼ/エステラーゼ活性の問題により効果的に対処する、操作されたリパーゼ/エステラーゼ欠損哺乳動物細胞に対する重大な必要性が依然として存在する。本発明は、とりわけ、ポリソルベート分解宿主細胞タンパク質汚染物質が著しく少ないバイオ製品の製造を可能にし、ポリソルベート含有バイオ製品製剤における安定性を著しく向上させる、遺伝子操作された宿主細胞を提供する。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、少なくとも1つの内因性パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ(PPT)、ならびにリソソーム酸リパーゼ(LAL)、リポタンパク質リパーゼ(LPL)、ホスホリパーゼA2、およびホスホリパーゼDからなる群から選択される少なくとも1つのHCPの減少した発現、ならびに/または活性を有する、哺乳動物細胞が提供される。
【0006】
別の態様では、タンパク質製剤中のポリソルベート分解を減少させるための方法であって、
(a)宿主細胞を修飾して、パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ1(PPT1)タンパク質の発現を減少させるか、または排除するステップと、
(b)宿主細胞を修飾して、リソソーム酸リパーゼ(LAL)、リポタンパク質リパーゼ(LPL)、ホスホリパーゼD3(PLD3)、および/またはホスホリパーゼA2(LPLA2)の発現を減少させるか、または排除するステップと、
(c)細胞にバイオ製品をコードするポリヌクレオチドをトランスフェクトするステップと、
(d)宿主細胞から目的のタンパク質を含むタンパク質画分を抽出するステップと、
(e)タンパク質画分を、プロテインAアフィニティー(PA)クロマトグラフィーもしくは別のアフィニティークロマトグラフィー法、陽イオン交換(CEX)クロマトグラフィー、陰イオン交換(AEX)クロマトグラフィー、または疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)である、クロマトグラフィー媒体と接触させるステップと、
(f)媒体から目的のタンパク質を収集するステップと、
(g)バイオ製品を脂肪酸エステルと混合するステップと、
(h)任意選択により、緩衝液を添加するステップと、
(i)任意選択により、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を添加するステップとを含む、方法が提供される。
【0007】
別の態様では、タンパク質製剤中の凝集または粒子形成を減少させるための方法であって、
(a)宿主細胞を修飾して、パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ1(PPT1)タンパク質の発現を減少させるか、または排除するステップと、
(b)宿主細胞を修飾して、リソソーム酸リパーゼ(LAL)、リポタンパク質リパーゼ(LPL)、ホスホリパーゼD3(PLD3)、および/またはホスホリパーゼA2(LPLA2)の発現を減少させるか、または排除するステップと、
(c)細胞に目的のバイオ製品をコードするポリヌクレオチドをトランスフェクトするステップと、
(d)宿主細胞から目的のタンパク質を含むタンパク質画分を抽出するステップと、
(e)タンパク質画分を、プロテインAアフィニティー(PA)クロマトグラフィーもしくは別のアフィニティークロマトグラフィー法、陽イオン交換(CEX)クロマトグラフィー、陰イオン交換(AEX)クロマトグラフィー、または疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)である、クロマトグラフィー媒体と接触させるステップと、
(f)媒体から目的のタンパク質を収集するステップと、
(g)目的のタンパク質を脂肪酸エステルと混合するステップと、
(h)任意選択により、緩衝液を添加するステップと、
(i)任意選択により、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を添加するステップとを含む、方法が提供される。
【0008】
別の態様では、安定な製剤化したバイオ製品を産生するための方法であって、
(a)宿主細胞を修飾して、パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ1(PPT1)タンパク質の発現を減少させるか、または排除するステップと、
(b)宿主細胞を修飾して、リソソーム酸リパーゼ(LAL)、リポタンパク質リパーゼ(LPL)、ホスホリパーゼD3(PLD3)、および/またはホスホリパーゼA2(LPLA2)の発現を減少させるか、または排除するステップと、
(c)細胞にバイオ製品をコードするポリヌクレオチドをトランスフェクトするステップと、
(d)宿主細胞からバイオ製品を含むタンパク質画分を抽出するステップと、
(e)タンパク質画分を、プロテインAアフィニティー(PA)クロマトグラフィーもしくは別のアフィニティークロマトグラフィー法、陽イオン交換(CEX)クロマトグラフィー、陰イオン交換(AEX)クロマトグラフィー、または疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)である、クロマトグラフィー媒体と接触させるステップと、
(f)媒体からバイオ製品を収集するステップと、
(g)バイオ製品を脂肪酸エステルと混合するステップと、
(h)任意選択により、緩衝液を添加するステップと、
(i)任意選択により、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を添加するステップとを含む、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】PPT1の存在下でのPS80モノオレエートエステルの温度依存性分解を経時的に示すグラフであり、これは、PPT1がPS80を温度依存的に経時的に分解することを示す。
【
図2】対照(A)、ならびに(B)LAL-1ppm、(C)LPL-1ppm、(D)PPT1-1ppm、および(E)LPLA2-0.1ppmを別々に添加した、製剤化されたmAb試料中でPS80モノオレエートエステルの分解を経時的に示すグラフであり、製剤中に存在するPS80モノオレエートエステルが、製剤化されたmAb対照より、これらのタンパク質の存在下で、より大きな程度で経時的に分解することを示す。
【
図3】対照試料(A)中および0.25UN/mLのPLD4(B)、2.5UN/mLのPLD4(D)、0.25UN/mLのPLD7(C)、および2.5UN/mLのPLD7(E)の存在下でのPS80モノオレエートエステルの分解を経時的に示すグラフ。このデータは、PLDファミリーのメンバーがPS80を経時的に分解する能力を定性的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、抗原に結合する免疫グロブリン分子を指す。抗体の実施形態には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、二重特異性もしくは多重特異性抗体、またはコンジュゲート抗体が含まれる。抗体は、任意のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA)、および任意のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)であってもよい。
【0011】
本開示の例示的な抗体は、4つのポリペプチド鎖:鎖間ジスルフィド結合を介して架橋される2つの重鎖(HC)および2つの軽鎖(LC)から構成される免疫グロブリンG(IgG)型抗体である。4つのポリペプチド鎖の各々のアミノ末端部分は、抗原認識に主に関与する約100~125個以上のアミノ酸の可変領域を含む。4つのポリペプチド鎖の各々のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能に主に関与する定常領域を含有する。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)および重鎖定常領域から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)および軽鎖定常領域から構成される。IgGアイソタイプは、さらにサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)に分割され得る。
【0012】
VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存されている領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる、超可変領域にさらに細分され得る。CDRはタンパク質の表面上に露出しており、抗原結合特異性のための抗体の重要な領域である。各VHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRから構成されており、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序でアミノ末端からカルボキシ末端へと配置される。本明細書では、重鎖の3つのCDRを「HCDR1、HCDR2、およびHCDR3」と称し、軽鎖の3つのCDRを「LCDR1、LCDR2、およびLCDR3」と称する。CDRは、抗原との特異的相互作用を形成する残基の大部分を含有する。アミノ酸残基のCDRへの割り当ては、Kabat(Kabat et al.,“Sequences of Proteins of Immunological Interest”,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))、Chothia(Chothia et al.,“Canonical structures for the hypervariable regions of immunoglobulins”,Journal of Molecular Biology,196,901-917(1987)、Al-Lazikani et al.,“Standard conformations for the canonical structures of immunoglobulins”,Journal of Molecular Biology,273,927-948(1997))、North(North et al.,“A New Clustering of Antibody CDR Loop Conformations”,Journal of Molecular Biology,406,228-256(2011))、またはIMGT(www.imgt.orgで利用可能な国際的なImMunoGeneTicsデータベース;Lefranc et al.,Nucleic Acids Res.1999;27:209-212を参照のこと)に記載されているものを含む、周知のスキームに従って行われ得る。
【0013】
本開示の実施形態はまた、本明細書で使用される場合、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片、scFv抗体断片、scFab、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、Fd断片などの、抗原または抗原のエピトープと特異的に相互作用する能力を保持する抗体の少なくとも一部を含む、Fc断片、または抗原結合断片を含むが、これらに限定されない、抗体断片も含む。
【0014】
本明細書で使用される場合、「脂肪酸ヒドロラーゼ」または「FAH」という用語は、カルボニル基で切断してカルボン酸生成物を生成する任意の加水分解酵素を指すことを意図し、そのカルボン酸は、親油性またはそうでなければ疎水性であるR基を含む。場合によっては、カルボン酸生成物は脂肪酸である。
【0015】
「ポリソルベート」という用語は、ポリエトキシル化ソルビタンの脂肪酸エステルである非イオン性界面活性剤を指す。生物医学製剤で使用されるポリソルベートの例には、ポリソルベート80(PS80)、ポリソルベート20(PS20)、ポリソルベート40(PS40)、ポリソルベート60(PS60)、ポリソルベート65(PS65)、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物中のポリソルベートの濃度は、本発明の組成物中で、約0.01重量%~約1重量%、好ましくは約0.01重量%~約0.10重量%、より好ましくは約0.01重量%~約0.05重量%、さらにより好ましくは約0.02重量%~約0.05重量%であってもよい。
【0016】
本明細書で使用される場合、「リパーゼ/エステラーゼ」という用語は、「エステラーゼ」および「リパーゼ」の両方からなる哺乳動物細胞酵素の群を意味することを意図する。「エステラーゼ」は、脂肪酸エステルを脂肪酸およびアルコールに切断する脂肪酸ヒドロラーゼの亜属である。「リパーゼ」は、脂質(脂肪、ワックス、ステロール、グリセリド、およびリン脂質)を切断するエステラーゼの亜属である。「ホスホリパーゼ」は、リン脂質を切断するリパーゼの亜属である。
【0017】
パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ1(PPT1)は、パルミトイルタンパク質チオエステラーゼファミリーのメンバーであり、リソソーム分解中の脂質修飾タンパク質の異化に関与し、脂肪酸パルミテートから形成されたチオエステルをタンパク質におけるシステイン残基から切断するリソソーム酵素である。一実施形態では、チャイニーズハムスターPPT1は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、PPT1は、配列番号8の結合/切断領域核酸配列でZFNによって修飾される。リソソームリパーゼ、リパーゼA、リソソーム酸およびコレステロールエステラーゼとしても知られている、リソソーム酸リパーゼ(LAL)は、リソソームで機能する細胞内リパーゼである。LALは、コレステリルエステル結合の切断を触媒する。一実施形態では、チャイニーズハムスターLALは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、LALは、配列番号7の結合/切断領域核酸配列でZFNによって修飾される。
【0018】
リポタンパク質リパーゼアイソフォームX2(本明細書ではLPLと称される)は、実質細胞によって分泌され、毛細管腔の内皮細胞に関連するグリコシル化ホモ二量体である。一実施形態では、チャイニーズハムスターLPLは、配列番号3のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、LPLは、配列番号6の結合/切断領域核酸配列でZFNによって修飾される。
【0019】
グループXVリソソームホスホリパーゼA2アイソフォームX1(本明細書ではLPLA2と称される)は、主要な脂質代謝酵素のファミリーのメンバーであり、膜リン脂質のsn-2位から脂肪酸を切断する。一実施形態では、チャイニーズハムスターLPLA2は、配列番号4のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、LPLA2は、配列番号5の結合/切断領域核酸配列でZFNによって修飾される
【0020】
PLD3は、ホスホリパーゼD(PLD)脂質シグナル伝達酵素スーパーファミリーのメンバーである。PLDファミリーのメンバーは、ホスファチジルコリンを加水分解して、ホスファチジン酸およびコリンを生成することが知られている。PLD3は、N-グリコシル化II型膜貫通タンパク質であり、他のPLDファミリーのメンバー(例えば、PLD1およびPLD2)にホスホジエステル加水分解活性を付与することが示されているHKDモチーフを保持する。一実施形態では、チャイニーズハムスターPLD3は、配列番号9のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、PLD3は、配列番号10の結合/切断領域核酸配列でZFNによって修飾される。
【0021】
「哺乳動物細胞」および「宿主細胞」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、組換えDNA技術を使用するバイオ製品の産生において一般的に使用される哺乳動物細胞を指す。例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎臓293(HEK293)、ならびにNS0およびSp2/0細胞を含むマウス骨髄腫細胞は、タンパク質発現のために一般的に使用される哺乳動物細胞である。好ましくは、哺乳動物細胞は、CHO-K1、CHO pro-3、DUKX-X11、DG44、CHOK1SVまたはCHOK1SV GS-KOを含むが、これらに限定されない、CHOである。親細胞株はまた、組換えバイオ製品ポリペプチドの重要な品質特性もしくは他の翻訳後修飾、または組換えバイオ製品をコードする遺伝子の発現に影響を及ぼす遺伝子の挿入、ノックアウトまたはノックダウンによって修飾され得る。実施形態では、宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。一実施形態では、宿主細胞は、CHO-K1細胞、CHOK1SV細胞、DG44 CHO細胞、DUXB11 CHO細胞、CHO-S、CHO GSノックアウト細胞(グルタミンシンテターゼ)、CHOK1SV FUT8ノックアウト細胞、CHOZN、またはCHO由来細胞である。CHO GSノックアウト細胞(例えば、GSKO細胞)は、例えば、CHO-K1SV GSノックアウト細胞(Lonza Biologics,Inc.)である。CHO FUT8ノックアウト細胞は、例えば、Potelligent(登録商標)CHOK1SV FUT8ノックアウト(Lonza Biologics,Inc.)である。実施形態では、宿主細胞は、HeLa、MDCK、Sf9、Sf21、Tn5、HT1080、NB324K、FLYRD18、HEK293、HEK293T、HT1080、H9、HepG2、MCF7、Jurkat、NIH3T3、PC12、PER.C6、BHK(ベビーハムスター腎臓)、VERO、SP2/0、NS0、YB2/0、Y0、EB66、C127、L細胞、COS(例えば、COS1およびCOS7)、QC1-3、CHOK1、CHOK1SV、Potelligent(商標)(CHOK1SV FUT8-KO)、CHO GSノックアウト、Xceed(商標)(CHOK1SV GS-KO)、CHOS、CHO DG44、CHO DXB11、もしくはCHOZN細胞、またはそれらに由来する任意の細胞である。
【0022】
本明細書において「親細胞株」という用語は、タンパク質発現を操作するために一般的に使用される哺乳動物細胞を発現する非トランスジェニックタンパク質生成物を指す。本発明のいくつかの実施形態では、親細胞株は、CHO、HEK293、またはNS0細胞株である。好ましくは、親細胞株は、GS-CHO(CHOK1SVまたはCHOK1SV GS-KO)細胞株を含むが、これらに限定されない、CHO細胞株である。
【0023】
「生成物を発現する細胞株」という用語は、少なくとも1つのバイオ製品をコードする1つ以上の遺伝子が挿入され、そのようなタンパク質または複数のタンパク質を発現することができる「親細胞株」を指す。好ましくは、「生成物を発現する細胞株」は、抗体、またはその抗原結合断片を発現する。
【0024】
「インデル」という用語は、細胞のゲノムにおける核酸塩基の挿入または欠失を指す。
【0025】
本明細書で使用される場合、「バイオ製品」という用語は、組換えDNA技術を使用して遺伝子操作された哺乳動物細胞に由来する目的の組換えタンパク質ベースの製品を指す。例えば、バイオ製品には、抗体、その抗原結合断片、ワクチン、成長因子、サイトカイン、ホルモン、ペプチド、酵素、融合タンパク質が含まれ得る。好ましくは、バイオ製品は、治療的、診断的、工業的、および/または研究用途に有用である。
【0026】
「不活性化された遺伝子」という用語は、1)変更されていない野生型遺伝子によって最初にコードされたタンパク質の検出可能なレベルを発現しない、かつ/または2)変更された遺伝子によってコードされたタンパク質が、変更されていない野生型遺伝子によって最初にコードされたタンパク質と比較して、表現型的に非機能的である、ように変更されている遺伝子を指す。
【0027】
「破壊された遺伝子」という用語は、1)変更されていない野生型遺伝子が最初にコードしたタンパク質の発現が減少している、かつ/または2)変更された遺伝子によってコードされたタンパク質の活性が、変更されていない野生型遺伝子によってコードされたタンパク質の活性と比較して、減少している、ように変更されている遺伝子を指す。
【0028】
「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、本明細書では、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために交換可能に使用される。ポリマーは線状または分枝状であってもよく、それは修飾されたアミノ酸を含んでもよく、それは非アミノ酸によって中断されてもよい。この用語はまた、自然に、または介入、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、もしくは任意の他の操作もしくは修飾、例えば、標識成分とのコンジュゲーションによって修飾されているアミノ酸ポリマーも包含する。また、定義には、例えば、アミノ酸の1つ以上の類似体(例えば、非天然アミノ酸などを含む)、および当該技術分野で既知の他の修飾を含有するタンパク質も含まれる。タンパク質の例には、抗体、ペプチド、酵素、受容体、ホルモン、調節因子、抗原、結合剤、サイトカイン、Fc融合タンパク質(例えば、目的のペプチド/タンパク質に遺伝的に結合しているIgGのFcドメイン)、イムノアドヘシン分子などが含まれるが、これらに限定されない。
【0029】
本発明の一態様では、少なくとも1つの内因性パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ(PPT)、ならびにリソソーム酸リパーゼ(LAL)、リポタンパク質リパーゼ(LPL)、ホスホリパーゼA2、およびホスホリパーゼDからなる群から選択される少なくとも1つのHCPの減少した発現、ならびに/または活性を有する、哺乳動物細胞が提供される。本発明の別の態様では、哺乳動物細胞は、少なくとも1つのバイオ製品を発現するようにさらに修飾される。バイオ製品は、例えば、1)ポリペプチド、2)抗体、もしくはその抗原結合断片を含むが、これに限定されない、その断片、または3)Fc融合タンパク質を含むが、これに限定されない、タンパク質-タンパク質融合であってもよい。
【0030】
本発明の一態様では、内因性パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ1(PPT1)、ならびにリソソーム酸リパーゼ(LAL)、リポタンパク質リパーゼ(LPL)、ホスホリパーゼA2(LPLA2)、およびホスホリパーゼD3(PLD3)からなる群から選択される少なくとも1つのHCPの減少した発現、ならびに/または活性を有する、哺乳動物細胞が提供される。
【0031】
本発明の一態様では、リソソーム酸リパーゼ(LAL)タンパク質、リポタンパク質リパーゼ(LPL)タンパク質、ホスホリパーゼA2(LPLA2)タンパク質、およびパルミトイルタンパク質チオエステラーゼ1(PPT1)タンパク質をコードするポリヌクレオチドのコード配列において修飾を有し、その修飾が、当該修飾のうちのいずれも有しない細胞の発現レベルと比較して、修飾を有する細胞においてLALタンパク質、LPLタンパク質、LPLA2タンパク質、およびPPT1タンパク質の発現レベルを低下させる、哺乳動物細胞が提供される。
【0032】
本発明の別の態様では、哺乳動物細胞は、少なくとも1つのバイオ製品を発現するようにさらに修飾される。バイオ製品は、例えば、1)ポリペプチド、2)抗体、もしくはその抗原結合断片を含むが、これに限定されない、その断片、または3)Fc融合タンパク質であってもよい。
【0033】
本発明の別の態様では、内因性PPT、ならびにLAL、LPL、LPLA2、およびPLD3からなる群から選択される少なくとも1つの他のポリソルベート分解HCPをコードする細胞の遺伝子が修飾され、それによって内因性PPT1および他の分泌HCPの発現ならびに/または活性が減少している、哺乳動物細胞が提供される。好ましくは、内因性PPT1、ならびにLAL、LPL、LPLA2、およびPLD3からなる群から選択される少なくとも1つのHCPの活性ならびに/または発現は、実質的に減少しているか、または完全に排除されている。別の態様では、内因性PPT1、ならびにLAL、LPL、LPLA2、およびPLD3からなる群から選択される少なくとも1つのHCPをコードする遺伝子が、それらのHCPの発現ならびに/または活性が減少するように修飾されている、哺乳動物細胞を産生するための方法が提供される。好ましくは、内因性PPT1、ならびにLAL、LPL、LPLA2、およびPLD3からなる群から選択される少なくとも1つのHCPの活性ならびに/または発現は、実質的に減少しているか、または完全に排除されている。本発明の別の態様では、本明細書に記載される哺乳動物細胞の実施形態において組換えタンパク質を産生する方法が提供される。本明細書に記載される哺乳動物細胞の実施形態から産生された材料は、加水分解ポリソルベート分解を示さないか、または著しく減少させ、関連するリパーゼ活性を、(脂肪分解活性アッセイなどで)本質的に測定することができない。
【0034】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞から産生されたバイオ製品は、修飾のうちのいずれも有しない本質的に類似の細胞において産生された同じバイオ製品のポリソルベート分解活性と比較して、実質的に減少したポリソルベート分解活性を有するプロテインA結合画分を提供する。いくつかの実施形態では、対応する修飾されていない生成物を発現する細胞株で産生された同じバイオ製品から生じるインタクトなポリソルベートの分解と比較した、本発明の生成物を発現する細胞株で産生されたバイオ製品から生じるインタクトなポリソルベートの分解の減少は、約20%以上、25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、または約80%以上である。いくつかの実施形態では、対応する修飾されていない生成物を発現する細胞株で産生された同じバイオ製品から生じるインタクトなポリソルベートの分解と比較した、本発明の生成物を発現する細胞株で産生されたバイオ製品から生じるインタクトなポリソルベートの分解の減少は、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、または80%以上である。
【0035】
いくつかの実施形態では、対応する修飾されていない生成物を発現する細胞株で産生された同じバイオ製品から生じるインタクトなポリソルベートの分解と比較した、本発明の生成物を発現する細胞株で産生されたバイオ製品から生じるインタクトなポリソルベートの分解の減少は、約20%~約80%、約30%~約75%、約35%~約70%、約40%~約65%、または約45%~約60%である。
【0036】
いくつかの実施形態では、対応する修飾されていない生成物を発現する細胞株で産生された同じバイオ製品から生じるインタクトなポリソルベートの分解と比較した、本発明の生成物を発現する細胞株で産生されたバイオ製品から生じるインタクトなポリソルベートの分解の減少は、20%~80%、30%~75%、35%~70%、40%~65%、および45%~60%である。
【0037】
本発明の一態様では、遺伝子編集方法を利用して、内因性PPT1をコードする遺伝子、ならびにLAL、LPL、LPLA2、およびPLD3からなる群から選択される少なくとも1つのHCPをコードする遺伝子を標的として、例えば、ゲノム遺伝子座の修飾、挿入、または欠失のために、それらを編集、破壊、および/または不活性化する。いくつかの実施形態では、内因性宿主細胞タンパク質、PPT1、ならびにLAL、LPL、LPLA2、およびPLD3からなる群から選択される少なくとも1つのHCPの一方または両方の対立遺伝子は、本明細書に記載される操作された宿主細胞(例えば、CHO細胞)のゲノムからノックアウトされる。例えば、遺伝子編集方法には、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、クラスター化された規則的な間隔の短いパリンドロームリピート(CRISPR)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、およびメガヌクレアーゼシステムの使用が含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
本発明の一態様では、LALタンパク質、LPLタンパク質、LPLA2タンパク質、および内因性PPT1タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列における修飾を含む、組換え操作された哺乳動物細胞が提供される。本発明の別の態様では、修飾は、修飾を欠く細胞、例えば、野生型哺乳動物細胞の発現レベルと比較して、LALタンパク質、LPLタンパク質、LPLA2タンパク質、およびPPT1タンパク質の発現レベルを低下させる。
【0039】
いくつかの実施形態では、標的HCP遺伝子は、遺伝子欠失によって編集、破壊、および/または不活性化される。本明細書で使用される場合、「遺伝子欠失」は、遺伝子から、または遺伝子に近接したDNA配列の少なくとも一部を除去することを指す。いくつかの実施形態では、遺伝子欠失に供される配列は、遺伝子のエクソン配列を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子欠失に供される配列は、遺伝子のプロモーター配列を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子欠失に供される配列は、遺伝子の隣接配列を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子欠失に供される配列は、標的化されたHCPのシグナルペプチドをコードする配列を含む。いくつかの実施形態では、標的HCP遺伝子配列の一部は、標的HCP遺伝子から、または標的HCP遺伝子に比較的近接した領域から除去される。いくつかの実施形態では、完全な標的HCP遺伝子配列は、染色体から除去される。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞は、標的HCP遺伝子に近接した遺伝子欠失を含む。いくつかの実施形態では、標的HCP遺伝子は、遺伝子欠失によって編集、破壊、および/または不活性化され、遺伝子配列中の少なくとも1つのヌクレオチドまたはヌクレオチド塩基対の欠失は、非機能的遺伝子産物をもたらす。いくつかの実施形態では、標的HCP遺伝子は、遺伝子欠失によって編集、破壊、および/または不活性化され、遺伝子配列の少なくとも1つのヌクレオチドの欠失は、もはやもとの遺伝子産物の機能もしくは活性を有しないか、または機能不全である遺伝子産物をもたらす。
【0040】
いくつかの実施形態では、標的HCP遺伝子は、遺伝子付加または置換によって編集、破壊、および/または不活性化される。本明細書で使用される場合、「遺伝子付加」または「遺伝子置換」は、1つ以上のヌクレオチドまたはヌクレオチド塩基対の挿入または置換を含む、標的HCP遺伝子配列の変更を指す。いくつかの実施形態では、標的HCP遺伝子のイントロン配列が変更される。いくつかの実施形態では、標的HCP遺伝子のエクソン配列が変更される。いくつかの実施形態では、標的HCP遺伝子のプロモーター配列が変更される。いくつかの実施形態では、標的HCP遺伝子の隣接配列が変更される。いくつかの実施形態では、標的HCPのシグナルペプチドをコードする配列が変更される。いくつかの実施形態では、1つのヌクレオチドまたはヌクレオチド塩基対が、標的HCP遺伝子配列に付加される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの連続したヌクレオチドまたはヌクレオチド塩基対が、標的HCP遺伝子配列に付加される。いくつかの実施形態では、標的HCP遺伝子が、遺伝子付加または置換によって不活性化され、少なくとも1つのヌクレオチドまたはヌクレオチド塩基対の標的HCP遺伝子配列への付加または置換が、非機能的遺伝子産物をもたらす。いくつかの実施形態では、標的HCP遺伝子が、遺伝子不活性化によって不活性化され、少なくとも1つのヌクレオチドの標的HCP遺伝子配列への組み込みまたは置換が、もはやもとの遺伝子産物の機能もしくは活性を有しないか、または機能不全である遺伝子産物をもたらす。
【0041】
一般に、CRISPRシステムは、Cas9などのカスパーゼタンパク質と、目的の配列に相補的である、ガイド配列と称される、ヌクレオチド配列を含むRNA配列と、を含む。カスパーゼおよびRNA配列は、哺乳動物細胞のDNA配列を特定する複合体を形成し、その後、カスパーゼのヌクレアーゼ活性により、DNA鎖の切断が可能になる。カスパーゼアイソタイプは、一本鎖DNAまたは二本鎖DNAヌクレアーゼ活性を有する。CRISPRシステムで使用されるガイドRNA配列およびガイドRNA配列の数の設計により、遺伝子の特定のストレッチの除去および/またはDNA配列の付加が可能になる。
【0042】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、CRISPR、TALEN、ZFN、およびメガヌクレアーゼシステムからなる群から選択される少なくとも1つのゲノム編集システムを使用して、内因性PPT1をコードする遺伝子、ならびにLAL、LPL、LPLA2、およびPLD3からなる群から選択される少なくとも1つのHCPをコードする遺伝子を編集、破壊、および/または不活性化することを含む。
【0043】
一般に、TALENシステムは、1つ以上の制限ヌクレアーゼおよび2つ以上のタンパク質複合体を含み、DNA配列の認識およびその後の二本鎖DNAの切断を可能にする。TALENシステムのタンパク質複合体は、各々が特定のヌクレオチドを認識する多数の転写活性化因子様エフェクター(TALE)、および制限ヌクレアーゼのドメインを含む。一般に、TALENシステムは、各々がTALEおよび制限ヌクレアーゼのドメインを含む、2つのタンパク質複合体が、制限ヌクレアーゼの2つのドメイン(各タンパク質複合体から1つ)が、活性ヌクレアーゼを形成し、特定のDNA配列を切断することを可能にする方法でDNA配列に個別に結合するように設計されている。TALENシステムで切断されるタンパク質複合体および配列の数の設計により、遺伝子の特定のストレッチの除去および/またはDNA配列の付加が可能になる。
【0044】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、TALENシステムを使用して、内因性PPT1をコードする遺伝子、ならびにLAL、LPL、LPLA2、およびPLD3からなる群から選択される少なくとも1つのHCPをコードする遺伝子を編集、破壊、および/または不活性化することを含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞が、減少したレベルの内因性PPT1、ならびに減少したレベルの、LAL、LPL、LPLA2、およびPLD3からなる群から選択される少なくとも1つのHCPを有する、哺乳動物細胞を産生する方法は、TALENシステムを使用して、内因性PPT1、ならびに他の標的HCP遺伝子(すなわち、LAL、LPL、LPLA2、およびPLD3)のうちの少なくとも1つを編集、破壊、および/または不活性化することを含む。
【0046】
一般に、ZFNシステムは、1つ以上の制限ヌクレアーゼおよび2つ以上のタンパク質複合体を含み、DNA配列の認識およびその後の二本鎖DNAの切断を可能にする。ZFNシステムのタンパク質複合体は、各々が特定のヌクレオチドコドンを認識する多数のジンクフィンガー、および制限ヌクレアーゼのドメインを含む。一般に、ZFNシステムは、各々がジンクフィンガーおよび制限ヌクレアーゼのドメインを含む、2つのタンパク質複合体が、制限ヌクレアーゼの2つのドメイン(各タンパク質複合体から1つ)が、活性ヌクレアーゼを形成し、特定のDNA配列を切断することを可能にする方法でDNA配列に個別に結合するように設計されている。ZFNシステムで切断されるタンパク質複合体および配列の数の設計により、遺伝子の特定のストレッチの除去および/またはDNA配列の付加が可能になる。
【0047】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、ZFNシステムを使用して、内因性PPT1をコードする遺伝子、ならびにLAL、LPL、LPLA2、およびPLD3からなる群から選択される少なくとも1つのHCPをコードする遺伝子を編集、破壊、ならびに/または不活性化することを含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞が、減少したレベルの内因性PPT1、ならびに減少したレベルの、LAL、LPL、LPLA2、およびPLD3からなる群から選択される少なくとも1つのHCPを有する、哺乳動物細胞を産生する方法は、ZFNシステムを使用して、内因性PPT1、ならびに他の標的HCP遺伝子(すなわち、LAL、LPL、LPLA2、およびPLD3)のうちの少なくとも1つを編集、破壊、および/または不活性化することを含む。
【0049】
一般に、メガヌクレアーゼシステムは、1つ以上のメガヌクレアーゼを含み、DNA配列の認識およびその後の二本鎖DNAの切断を可能にする。
【0050】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、メガヌクレアーゼシステムを使用して、内因性PPT1をコードする遺伝子、ならびにLAL、LPL、LPLA2、およびPLD3からなる群から選択される少なくとも1つのHCPをコードする遺伝子を編集、破壊、および/または不活性化することを含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞が、減少したレベルの内因性PPT1、ならびに減少したレベルの、LAL、LPL、LPLA2、およびPLD3からなる群から選択される少なくとも1つのHCPを有する、哺乳動物細胞を産生する方法は、メガヌクレアーゼシステムを使用して、内因性PPT1、ならびに他の標的HCP遺伝子(すなわち、LAL、LPL、LPLA2、およびPLD3)のうちの少なくとも1つを編集、破壊、および/または不活性化することを含む。
【0052】
本明細書に記載される操作された宿主細胞(例えば、CHO細胞)は、それらの細胞で産生される抗体のグリコシル化パターンを変更するためのさらなるゲノム修飾を含むことができる。減少したフコシル化などのグリコシル化パターンの変更は、抗体の抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を増加させることが示されている。例えば、FUT8(フコシルトランスフェラーゼ8、またはa-1,6-フコシルトランスフェラーゼ)の両方の対立遺伝子をノックアウトした宿主細胞は、増強されたADCC活性を有する抗体を産生することができる(米国特許第6946292号を参照のこと)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作された宿主細胞(例えば、CHO細胞)は、抗体のフコシル化を減少させる遺伝子修飾を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作された宿主細胞(例えば、CHO細胞)は、例えば、FUT8ゲノム遺伝子座の修飾、挿入、または欠失のために、編集、破壊、および/または不活性化されたFUT8遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、FUT8の一方または両方の対立遺伝子は、本明細書に記載される操作された宿主細胞(例えば、CHO細胞)のゲノムからノックアウトされる。このようなFUT8ノックアウト宿主細胞で産生された抗体は、増加したADCC活性を有し得る。グリコシル化に関与する他の酵素には、GDP-マンノース4,6-デヒドラターゼ、GDP-ケト-6-デオキシマンノース3,5-エピメラーゼ4,6-レダクターゼ、GDP-ベータ-L-フコースピロホスホリラーゼ、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII、およびフコキナーゼが含まれる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作された宿主細胞(例えば、CHO細胞)は、これらの酵素のうちの1つ以上をコードする不活性化された遺伝子を含み得る。一実施形態では、チャイニーズハムスターFUT8は、配列番号11のアミノ酸配列を含む。
【0053】
本明細書に記載される操作された宿主細胞(例えば、CHO細胞)はまた、それらが発現する組換えタンパク質の安定性に影響を及ぼすさらなるゲノム修飾を含むことができる。例えば、カテプシンD(CatD)は、Fc融合組換えタンパク質の分解に関与するCHO HCPとして同定されている(Robert,F.;et al.“Degradation of an Fc-Fusion Recombinant Protein by Host Cell Proteases:Identification of a CHO Cathepsin D Protease.”Biotechnology and Bioengineering 2009,104(6),1132-1141を参照のこと)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作された宿主細胞(例えば、CHO細胞)は、例えば、CatDゲノム遺伝子座の修飾、挿入、または欠失のために、編集、破壊、および/または不活性化されたCatD遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、CatDの一方または両方の対立遺伝子は、本明細書に記載される操作された宿主細胞(例えば、CHO細胞)のゲノムからノックアウトされる。このようなノックアウト宿主細胞で産生された組換えタンパク質は、産生の間に分解をほとんど受けない可能性がある。一実施形態では、チャイニーズハムスターCatDは、配列番号12のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、CatDは、配列番号13の結合/切断領域核酸配列でZFNによって修飾される。
【0054】
本明細書に記載される操作された宿主細胞(例えば、CHO細胞)はまた、それらが発現する組換えタンパク質の不均質性に影響を及ぼすさらなるゲノム修飾を含むことができる。例えば、カルボキシペプチダーゼD(CpD)は、IgG1、IgG2、およびIgG4モノクローナル抗体アイソタイプからC末端リジンを切断することができる(国際特許出願公開WO2017/053482を参照のこと)。これにより、電荷バリアントがもたらされる可能性があり、製造管理戦略が複雑になる可能性がある。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作された宿主細胞(例えば、CHO細胞)は、例えば、CpDゲノム遺伝子座の修飾、挿入、または欠失のために、編集、破壊、および/または不活性化されたCpD遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、CpDの一方または両方の対立遺伝子は、本明細書に記載される操作された宿主細胞(例えば、CHO細胞)のゲノムからノックアウトされる。このようなノックアウト宿主細胞で産生された組換えタンパク質は、低下した電荷バリアント不均質性を有し得る。一実施形態では、チャイニーズハムスターCpDは、配列番号14のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、CpDは、配列番号15の結合/切断領域核酸配列でZFNによって修飾される。
【0055】
本明細書に記載される操作された宿主細胞(例えば、CHO細胞)はまた、組換えタンパク質を製造する際に使用される下流のプロセスに影響を及ぼすさらなるゲノム修飾を含むことができる。例えば、ホスホリパーゼB様2(PLBL2)およびペルオキシレドキシン-1(PRDX1)は、タンパク質捕捉クロマトグラフィー後にCHO細胞で産生された組換えタンパク質における汚染物質として同定されたHCPである(WO2016/138467およびDoneanu,C.;et al.“Analysis of host-cell proteins in biotheraputic proteins by comprehensive online two-dimensional liquid chromatography/mass spectrometry.”mAbs 2012,4(1),24-44を参照のこと)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作された宿主細胞(例えば、CHO細胞)は、例えば、ゲノム遺伝子座または複数の遺伝子座の修飾、挿入、または欠失のために、編集、破壊、および/または不活性化された、PLBL2およびPRDX1からなる群のタンパク質の一方または両方をコードする遺伝子または複数の遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、PLBL2およびPRDX1からなる群のタンパク質の一方または両方をコードする遺伝子または複数の遺伝子の一方または両方の対立遺伝子は、本明細書に記載される操作された宿主細胞(例えば、CHO細胞)のゲノムからノックアウトされる。このようなノックアウト宿主細胞で産生された組換えタンパク質は、野生型と比較して低下したHCP汚染物質を有し得、より少ない下流の精製ステップを必要とし得る。一実施形態では、チャイニーズハムスターPLBL2は、配列番号16のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、PLBL2は、配列番号17の結合/切断領域核酸配列でZFNによって修飾される。一実施形態では、チャイニーズハムスターPRDX1は、配列番号18のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、PRDX1は、配列番号19の結合/切断領域核酸配列でZFNによって修飾される。
【0056】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、タネズマブである組換えタンパク質をコードする(例えば、WO2004/058184を参照のこと)。
【0057】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、レブリキズマブである組換えタンパク質をコードする(例えば、WO2005/062967を参照のこと)。
【0058】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、ミリキズマブである組換えタンパク質をコードする(例えば、WO2014/137962を参照のこと)。
【0059】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、ソラネズマブである組換えタンパク質をコードする(例えば、WO2001/62801を参照のこと)。
【0060】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、ドナネマブである組換えタンパク質をコードする(例えば、WO2012/021469を参照のこと)。
【0061】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、ザゴテネマブ(zagotenemab)である組換えタンパク質をコードする(例えば、WO2016/137811を参照のこと)。
【0062】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、ラムシルマブである組換えタンパク質をコードする(例えば、WO2003/075840を参照のこと)。
【0063】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、ガルカネズマブである組換えタンパク質をコードする(例えば、WO2011/156324を参照のこと)。
【0064】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、イキセキズマブである組換えタンパク質をコードする(例えば、WO2007/070750を参照のこと)。
【0065】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、デュラグルチドである組換えタンパク質をコードする(例えば、WO2005/000892を参照のこと)。
【0066】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、ネシツムマブである組換えタンパク質をコードする(例えば、WO2005/090407を参照のこと)。
【0067】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、オララツマブである組換えタンパク質をコードする(例えば、WO2006/138729を参照のこと)。
【0068】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、セツキシマブである組換えタンパク質をコードする。
【0069】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、アンジオポエチン2 mAbである組換えタンパク質をコードする(例えば、WO2015/179166を参照のこと)。
【0070】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、インスリン-Fc融合タンパク質である組換えタンパク質をコードする(例えば、WO2016/178905を参照のこと)。
【0071】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、CD200Rアゴニスト抗体である組換えタンパク質をコードする(例えば、WO2020/055943を参照のこと)。
【0072】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、エピレグリン/形質転換成長因子アルファ(エピレグリン/TGFα)mAbである組換えタンパク質をコードする(例えば、WO2012/138510を参照のこと)。
【0073】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、アンジオポエチン様3/8(ANGPTL 3/8)抗体である組換えタンパク質をコードする(例えば、WO2020/131264を参照のこと)。
【0074】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、BおよびTリンパ球アテニュエーター(BTLA)抗体アゴニストである組換えタンパク質をコードする(例えば、WO2018/213113を参照のこと)。
【0075】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、CXCケモカイン受容体1/2(CXCR1/2)リガンド抗体である組換えタンパク質をコードする(例えば、WO2014/149733を参照のこと)。
【0076】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、成長/分化因子15(GDF15)アゴニストである組換えタンパク質をコードする(例えば、WO2019/195091を参照のこと)。
【0077】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、インターロイキン33(IL-33)抗体である組換えタンパク質をコードする(例えば、WO2018/081075を参照のこと)。
【0078】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド-38(PACAP38)抗体である組換えタンパク質をコードする(例えば、WO2019/067293を参照のこと)。
【0079】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、プログラム細胞死-1(PD-1)抗体アゴニストである組換えタンパク質をコードする(例えば、WO2017/025016を参照のこと)。
【0080】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、ピログルタメート-Abeta(N3pG Abetaとも呼ばれるpGlu-Abeta)mAbである組換えタンパク質をコードする(例えば、WO2012/021469を参照のこと)。
【0081】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、腫瘍壊死因子アルファ/インターロイキン23(TNFα/IL-23)二重特異性抗体である組換えタンパク質をコードする(例えば、WO2019/027780を参照のこと)。
【0082】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、抗α-シヌクレイン抗体である組換えタンパク質をコードする(例えば、WO2020/123330を参照のこと)。
【0083】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、分化226(CD226)アゴニスト抗体のクラスターである組換えタンパク質をコードする(例えば、WO2020/023312を参照のこと)。
【0084】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、モノカルボン酸輸送体1(MCT1)抗体である組換えタンパク質をコードする(例えば、WO2019/136300を参照のこと)。
【0085】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)中和抗体である組換えタンパク質をコードする。
【0086】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、抗Fcガンマ受容体IIB(FcgRIIBまたはFcγRIIB)抗体である組換えタンパク質をコードする。
【0087】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、抗インターロイキン34(IL-34)抗体である組換えタンパク質をコードする。
【0088】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、分化19(CD19)抗体の抗クラスターである組換えタンパク質をコードする。
【0089】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、骨髄細胞2(TREM2)抗体で発現されるトリガリング受容体である組換えタンパク質をコードする。
【0090】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、リラキシン類似体である組換えタンパク質をコードする。
【0091】
いくつかの実施形態では、本発明の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)は、タネズマブ、レブリキズマブ、ミリキズマブ、ソラネズマブ、ドナネマブ、ザゴテネマブ(zagotenemab)、ラムシルマブ、ガルカネズマブ、イキセキズマブ、デュラグルチド、ネシツムマブ、オララツマブ、セツキシマブ、アンジオポエチン2 mAb、インスリン-Fc融合タンパク質、CD200Rアゴニスト抗体、エピレグリン/TGFα mAb、ANGPTL 3/8抗体、BTLA抗体アゴニスト、CXCR1/2リガンド抗体、GDF15アゴニスト、IL-33抗体、PACAP38抗体、PD-1アゴニスト抗体、N3pG Abeta mAbとも呼ばれるpGlu-Abeta、TNFα/IL-23二重特異性抗体、抗α-シヌクレイン抗体、CD226アゴニスト抗体、MCT1抗体、SARS-CoV-2中和抗体、FcgRIIB抗体、IL-34抗体、CD19抗体、TREM2抗体、およびリラキシン類似体からなる群から選択される組換えタンパク質をコードする。
【0092】
本発明の実施形態はまた、ポリソルベートと、タネズマブ、レブリキズマブ、ミリキズマブ、ソラネズマブ、ドナネマブ、ザゴテネマブ(zagotenemab)、ラムシルマブ、ガルカネズマブ、イキセキズマブ、デュラグルチド、ネシツムマブ、オララツマブ、セツキシマブ、アンジオポエチン2 mAb、インスリン-Fc融合タンパク質、CD200Rアゴニスト抗体、エピレグリン/TGFα mAb、ANGPTL 3/8抗体、BTLA抗体アゴニスト、CXCR1/2リガンド抗体、GDF15アゴニスト、IL-33抗体、PACAP38抗体、PD-1アゴニスト抗体、N3pG Abeta mAbとも呼ばれるpGlu-Abeta、TNFα/IL-23二重特異性抗体、抗α-シヌクレイン抗体、CD226アゴニスト抗体、MCT1抗体、SARS-CoV-2中和抗体、FcgRIIB抗体、IL-34抗体、CD19抗体、TREM2抗体、およびリラキシン類似体からなる群から選択されるバイオ製品と、を含む、医薬組成物であって、バイオ製品が、本発明の組換え哺乳動物細胞によって産生される、医薬組成物を提供する。様々な実施形態では、ポリソルベートは、ポリソルベート80(PS80)、ポリソルベート20(PS20)、ポリソルベート40(PS40)、ポリソルベート60(PS60)、ポリソルベート65(PS65)、またはそれらの組み合わせである。本発明の医薬組成物中のポリソルベートの濃度は、本発明の組成物中で、約0.01重量/体積(w/v)%~約1重量/体積(w/v)%、好ましくは約0.01重量/体積(w/v)%~約0.10重量/体積(w/v)%、より好ましくは約0.01重量/体積(w/v)%~約0.05重量/体積(w/v)%、さらにより好ましくは約0.02重量/体積(w/v)%~約0.05重量/体積(w/v)%であってもよい。他の実施形態では、本発明の医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤をさらに含む。本発明の細胞株を使用して産生されたバイオ製品を含む医薬組成物は、当該技術分野で周知の方法によってさらに製剤化され得る(例えば、Remington:The Science and Practice a/Pharmacy,19th edition(1995),(A.Gennaro et al.,Mack Publishing Co.)。
【0093】
図面の簡単な説明
図1:PPT1の存在下でのPS80モノオレエートエステルの温度依存性分解を経時的に示すグラフであり、これは、PPT1がPS80を温度依存的に経時的に分解することを示す。
図2:対照(A)、ならびに(B)LAL-1ppm、(C)LPL-1ppm、(D)PPT1-1ppm、および(E)LPLA2-0.1ppmを別々に添加した、製剤化されたmAb試料中でPS80モノオレエートエステルの分解を経時的に示すグラフであり、製剤中に存在するPS80モノオレエートエステルが、製剤化されたmAb対照より、これらのタンパク質の存在下で、より大きな程度で経時的に分解することを示す。
図3:対照試料(A)中および0.25UN/mLのPLD4(B)、2.5UN/mLのPLD4(D)、0.25UN/mLのPLD7(C)、および2.5UN/mLのPLD7(E)の存在下でのPS80モノオレエートエステルの分解を経時的に示すグラフ。このデータは、PLDファミリーのメンバーがPS80を経時的に分解する能力を定性的に示す。
【0094】
本発明の範囲を限定することなく、以下の調製物および実施例は、本明細書に記載される方法および組成物を作製および使用する手段を当業者に提供する。
【実施例0095】
実施例1-PPT1のポリソルベート加水分解活性の特徴付け
液体クロマトグラフィー-質量分析(LCMS)によるポリソルベート分解分析-一般手順A
LCMS分析を、Waters SYNAPT(登録商標)G2-Si質量分析計を備えたWaters ACQUITY UPLC(Iクラス)、カラム:Agilent PLRP-S 2.1×50mm、1000Å、5μm粒径、移動相:A-水中の0.05%トリフルオロ酢酸(TFA)、B-アセトニトリル中の0.04%TFAで実施する。標準溶液を、2%PS80および10mMクエン酸緩衝液を用いて調製し、0.001、0.002、0.005、0.01、0.025、0.05%のPS80溶液を得る。ポリソルベートモノオレエートについてLCMS抽出イオンクロマトグラムによって試料中のインタクトなPS80を定量化するために、10mMクエン酸緩衝液中での調製したPS80溶液の標準曲線を得る。標準曲線を使用して、各試料についてのモノオレエートエステルとしてインタクトなPS80の相対パーセント(%)を、時間=ゼロに対して計算する。
【0096】
実施例1a-PPT1の存在下でのポリソルベート80の分解
ポリソルベート80(PS80)およびPPT1の試料を、以下のように調製する。10mMクエン酸緩衝液(pH6)中の0.02w/v%のPS80 0.5mLを、PPT1の0.3mg/mL溶液(組換え発現により調製)5.6μLと混合し、試料を、研究期間の間、4、15、25、および35℃に維持する。これらの溶液の試料(50μL)を時間間隔で採取し、LCMS分析のために水中の5%ギ酸5μLと混合する。モノオレエートエステルとして残存しているインタクトなPS80の割合を、一般手順Aを使用してLCMSによって経時的にモニターする。これらのデータを
図1に示し、PPT1が温度依存的にPS80を経時的に分解することを示す。
【0097】
実施例1b-LAL、LPL、PPT1、およびLPLA2を添加したmAb製剤試料中でのポリソルベート80の分解
製剤化したmAb(抗体1、0.03w/v%のPS80を含む、20mM酢酸ナトリウム緩衝液中100mg/mL、pH5.0)の試料に、1ppmのLAL、LPL、およびPPT1、ならびに0.1ppmのLPLA2(組換え発現から得た)を別々に添加する。試料を、研究期間の間、37℃でインキュベートする。各試料を20mM酢酸ナトリウム緩衝液で1:2の比で希釈し、次いで一般手順Aを使用してLCMSによって分析する。モノオレエートエステルとして残存しているインタクトなPS80の経時的な割合を、表1および
図2に示す。
【表1】
【0098】
これらのデータは、製剤中に存在するPS80モノオレエートエステルが、製剤化したmAb対照より、これらのタンパク質の存在下で、より大きな程度で経時的に分解することを示す。
【0099】
この実施例におけるデータを合わせると、これらのタンパク質(LAL、LPL、PPT1、およびLPLA2)が、溶液中のPS80を経時的に分解する能力が示される。
【0100】
実施例2-Fc融合タンパク質製剤中のPPT1の同定
Fc融合タンパク質(Fc融合タンパク質1)の2つの別々の培養バッチを、プロテインAクロマトグラフィーに供する。プロテインAの主流のアリコート(25μL)を、1Mのトリス-HCl緩衝液、pH8(5μL)、Barnstead水(172μL)、タンパク質標準混合物(0.8μL)、および2.5mg/mLのウシr-トリプシン(2μL)と混合する。試料を、16時間、37℃でインキュベートする。試料を、50mg/mLのジチオスレイトール(DTT)溶液2μLと混合し、次いで90℃で10分間加熱する。試料を10,000gで2分間遠心分離し、上清をバイアルに移す。次いで、試料を、H2O(5μL)中の5%TFAで酸性化し、LCMSによって分析する。LCMS分析を、ThermoFisher Q Exactive(商標)Plus質量分析計を備えたWaters ACQUITY UPLC、カラム:Waters UPLC CSH C18、2.1×50mm、1.7μm粒径、移動相:A-水中の0.10%ギ酸(FA)、B-アセトニトリル中の0.10%FAで、カラムを氷水に浸して実施する。この実験では、PPT1を、0.5±0.1ppm(n=2)での非標的プロテオミクス(DDA)アプローチによるプロテインA精製後のFc融合タンパク質1の試料中で同定する。
【0101】
実施例3-組換え操作されたLPLA2、LAL、LPL、およびPPT1ノックアウトCHO細胞株の生成
特に断りのない限り、使用される細胞培養培地は、8mMグルタミンが補充された無血清細胞培養培地を指す。さらに、特に断りのない限り、使用される哺乳動物細胞は、グルタミンシンターゼ欠損CHO(GS-CHO)細胞株である。
【0102】
細胞株の操作は、Sigma Aldrichによって構築された、各標的HCP遺伝子に対して特異的であるように設計されたオーダーメードのジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)試薬(CompoZr(登録商標)カスタムジンクフィンガーヌクレアーゼ、カタログ番号CSTZFN,Sigma Aldrich、St.Louis,MO)の使用によって達成する。LPLA2、LPL、LAL、およびPPT1についてのZFN結合/切断領域核酸配列を表2に示す。
【表2】
【0103】
遺伝子破壊のための細胞の調製-一般手順B
細胞を含有するバイアルを、氷の薄片だけが残るまで36℃の水浴中で解凍する。振とうフラスコ培養で細胞を細胞培養培地に播種する。親細胞株の培養物を、細胞培養培地に継代培養し、3日/4日のスケジュールで維持および継代する。上記のように、細胞培養物を、30mLの適切な維持培地中に0.2×106vc/mLの播種密度で播種する。トランスフェクションの日に、細胞を計数し、適切な体積の細胞を収集する。
【0104】
ZFNトランスフェクションおよびバルク培養物回収-一般手順C
Nucleofector(商標)技術および関連するcGMP Nucleofector(商標)キットV(カタログ番号VGA-1003,Lonza、Basel,Switzerland)を使用してZFNトランスフェクションを実施する。簡単に説明すると、単一のNucleofection試薬(2~4.5×106vc)に十分な細胞を、遠心分離によって収集する。上清を完全に除去した後、細胞ペレットを、製造業者のプロトコルに従って、補足物を添加した、100μLのNucleofector(商標)溶液V中に懸濁する。懸濁した細胞を粉砕により穏やかに混合し、ZFN mRNA[Sigma Aldrich(St.Louis,MO)によって生成されたカスタムZFNキットの一部]のアリコートを含有するバイアルに移す。次いで細胞/mRNA混合物を、Nucleofector(商標)キットに提供されている2mmキュベットに移し、そのキュベットを、Nucleofector(商標)デバイスに挿入し、細胞をエレクトロポレーションする。エレクトロポレーション後、細胞をキュベット内で室温で30~60秒間静置し、次いでそれらを、滅菌トランスファーピペットを使用して、3mLの細胞培養培地を含有する、ラベル付き6ウェルプレート(Falconカタログ番号351146,Corning、Durham,NC)のウェルに移す。トランスフェクトされた細胞を、加湿インキュベーター内で静止させた6ウェルプレートに36℃、6%CO2で1~4日間維持し、その後、それらを、生存率が90%を超えるまで、125rpmで振とうしながら、36℃、6%CO2で細胞培養培地中での振とうフラスコ培養に移す。トランスフェクションから細胞を完全に回収してから(振とうフラスコ培養での生存率によって測定)、FACS技術を使用してバルク培養物を単一細胞選別する。
【0105】
各標的HCPについてのZFNトランスフェクションは、単一細胞選別の前に1回実施することができる。代替的に、任意の特定の標的HCPについてのZFNトランスフェクションを2回実施し、2回目のZFNトランスフェクションの前に完全な細胞の回収を行うことができる。1ラウンドより多くのZFNトランスフェクションは、それぞれの標的HCPに2対立遺伝子変異を含有する細胞の数を増加させ、スクリーニングをより効率的にすることができる。
【0106】
バルク培養物中のZFNを介した標的HCP配列修飾の検出-一般手順D
トランスフェクションの2~7日後、部分的から完全に回収したZFNバルク培養物からの細胞を評価のために収集して、トランスフェクトされたZFNの活性を評価する。Surveyor(登録商標)変異検出アッセイ(MDA)(Transgenomic Inc.、Omaha,NE)を使用して、製造業者のプロトコルに従って、標的HCP部位で修飾を生成する際のZFN手順の効率を検出する。簡単に説明すると、CompoZr(登録商標)カスタムジンクフィンガーヌクレアーゼキット(Sigma、St.Louis,MO)に提供されているプライマーを使用して、ZFN結合領域をPCR増幅させる。次いでPCR産物を変性し、再アニーリングする。MDAキットに提供されているCel-Iエンドヌクレアーゼ(Surveyor Nuclease S)を使用して、天然または野生型配列およびインデルを含有するものからなるPCR産物のアニーリングに由来する、DNAミスマッチ「バブル」を検出する。なぜならCel-Iは、ミスマッチのこれらの「バブル」を認識し、DNAを切断するからである。Cel-I消化後、次いで生成物を、2%または4%TBEアガロースゲル(Reliant Gel,Lonza、Basel,Switzerland)上で分離する。DNAミスマッチの「バブル」がない場合、DNA切断は発生せず、PCR産物を表す、1つのバンドのみが存在する。ZFN活性を表す、いずれかの非相同末端結合(NHEJ)が発生した場合、切断産物が、2つ(またはそれ以上)のバンドの形態でゲル上に観察される。MDAにおいて陽性反応を示すZFNバルク培養物のみを、単一細胞選別への処理に進ませる。
【0107】
蛍光活性化細胞選別による単一細胞選別-一般手順E
回収したバルク培養物を、蛍光活性化細胞選別(FACS)技術によって選別する。単一細胞クローニングのためのプロトコルおよび方法は、当該技術分野で周知である。クローニングのために、セルソーター(MoFlo(商標)XDP,Beckman Coulter)を使用して、当該技術分野で周知の方法に従って、前方および側方散乱方向のレーザー回折を測定することによって、単一の生細胞を同定および選別する(例えば、Krebs,L.,et al.(2015)“Statistical verification that one round of fluorescence-activated cell sorting(FACS)can effectively generate a clonally-derived cell line.”BioProcess J 13(4):6-19を参照のこと)。
【0108】
細胞を、動物成分を含まない選別培地(Ex-Cell CHOクローニング培地、SAFC C6366)+20%馴化細胞培養培地+フェノールレッド(Sigma P0290))を含有する96ウェルマイクロタイタープレート(Falcon、カタログ番号35-3075)に選別する。馴化細胞培養培地を調製するために、親細胞を、1×106vc/mLの密度でグルタミンを含まない細胞培養培地に播種し、振とうフラスコ内で36℃、6%CO2、125rpmで20~24時間インキュベートする。培養物を遠心分離して細胞を除去し、馴化培地を、滅菌0.22μmフィルターを通して濾過する。単一細胞選別の7~10日後、すべてのプレートにウェル当たり50μLの細胞培養培地を供給する。単一細胞選別の14~15日後、クローン増殖についてプレートを分析する。増殖は、CloneSelect Imager(Molecular Devices、Sunnyvale,CA)を使用してソートプレートをイメージングするか、もしくはミラーを使用して手動で、および/または赤からオレンジ/黄色への培地の色の変化を観察することによって決定する。
【0109】
ZFNを介した標的HCP配列修飾についてのクローン由来細胞株のスクリーニング-一般手順F
クローン由来細胞株(CDCL)は、目に見えるコロニーになるので、回収したZFNバルク培養物に由来する96ウェルプレートから選択し、細胞培養培地を含有するディープ96ウェルプレート(Greiner、カタログ番号780271)に移す。クローン由来細胞株を、150μLの細胞培養培地を含有するディープウェルプレートに統合する。培養物を、スクリーニングおよび特徴付けが完了するまで、3日/4日のフィード/パススケジュールで静的条件下で細胞培養培地にて維持する。
【0110】
クローン由来細胞株(CDCL)を、Surveyor(登録商標)MDAを使用してインデルについてスクリーニングする。ゲノムDNAを、製造業者のプロトコルに従って、Promega Wizard(登録商標)SV 96 Genomic DNA Purification Kit(カタログ番号A2371,Promega、Madison,WI)を使用して各細胞株から単離する。ZFN PCR反応を、製造業者のプロトコルに従って、Phusion(登録商標)High-Fidelity DNA Polymerase(New England BioLabs、Ipswich,MA)を使用して実施する。MDA消化産物を、2%TBEアガロースゲル上で分離する。MDAにおいて陽性であると同定された細胞株を、一般手順Gまたは一般手順Hのいずれかによって特徴付けする。
【0111】
RT-PCRを使用したCDCLのインデルの特徴付け-一般手順G:
CDCLを、標的遺伝子RT-PCR反応を使用してZFN PCR産物のシーケンシングによって特徴付けする。全RNAを、製造業者のプロトコルに従って、RNeasy Micro Kit(Qiagen、カタログ番号74004、Germantown,MD)を使用して各々の潜在的なKO細胞株から単離する。逆転写反応を、製造業者のプロトコルに従って、RT-PCRのためのSuperScript(商標)III First-Strand Synthesis System(カタログ番号18080-051、Invitogen、Carlsbad,CA)を使用して行い、続いてPCR反応を、製造業者のプロトコルに従って、Phusion(登録商標)High-Fidelity DNA Polymerase(New England BioLabs、Ipswich,MA)を使用して行う。RT-PCR産物を、1%TAEアガロースゲル上で分離し、変化したRT-PCR産物を有する細胞株を同定する。処理を進ませるために選択した細胞株はRT-PCR産物を欠き、LCMSによって標的HCPタンパク質を含有しない。
【0112】
次世代シーケンシング(NGS)を使用したCDCLのインデルの特徴付け-一般手順H:
MDA陽性CDCLを、さらなる維持のために96ウェルディープウェルプレートに統合する。統合するときに、「異常な」PCRおよび/またはMDAの結果を示す細胞株を、GENEWIZによって提供されている次世代シーケンシング(NGS)を使用して特徴付けする。標的HCP遺伝子座において許容可能な2対立遺伝子のインデルを含有する細胞株を、LCMSによって評価し、標的HCPタンパク質を含有しない細胞株を次に進める。
【0113】
ノックアウト細胞株のスケーリングおよびバンキング-一般手順I:
最初のスクリーニング/特徴付け作業に基づいて、さらなる評価が必要なCDCLを、96ウェルディープウェルプレート(DWP)から振とうフラスコにスケーリングし、研究細胞バンク(RCB)を生成する。DWPから、適切なウェルからの細胞を、3mLの細胞培養培地を含有する6ウェルプレートの適切にラベル付けしたウェルに移す。スケーリングしたCDCLを、加湿インキュベーター内で静止させた6ウェルプレートに36℃、6%CO2で3~4日間維持し、その後、それらを、125rpmで振とうしながら、36℃、6%CO2で15mLの細胞培養培地を含有する振とうフラスコに移す。振とうフラスコ培養物を少なくとも1回継代して、バンキングに好適な細胞集団を構築する。各細胞株について、Freezing Menstrum(90:10の細胞培養培地:DMSO)中でバイアル当たり10~13×106vcで3~10バイアルRCBを生成する。バイアルを、-80℃で発泡スチロールラックの「サンドイッチ」に少なくとも24時間置いて、細胞を制御された速度で凍結できるようにする。バイアルが完全に凍結したら、それらを-80℃で保管する。
【0114】
実施例3a-LPLA2ノックアウトCHO細胞株
CHO細胞を、一般手順Bに従って遺伝子破壊のために調製する。次いで細胞を、一般手順Cに従って単一のZFNトランスフェクションおよびバルク培養物回収に供する。一般手順Dを使用して、バルク培養物の配列修飾を検出する。MDAにおいて陽性反応を示すバルク培養物を、一般手順Eに従って単一細胞選別へ処理を進ませる。それから得られたクローン由来細胞株を、一般手順Fに従って標的HCP配列修飾についてスクリーニングする。インデルを一般手順Gに従って特徴付けし、LCMSによって検出可能な量のLPLA2タンパク質を含有しない細胞株を選択する。一般手順Iに従ってRCBを生成して、LPLA2ノックアウトCHO細胞株を得る。
【0115】
実施例3b-LPLA2/LPLノックアウトCHO細胞株
実施例3aからのLPLA2ノックアウトCHO細胞を、一般手順Bに従って遺伝子破壊のために調製する。次いで細胞を、一般手順Cに従って2回のZFNトランスフェクションおよびバルク培養物回収に供する。一般手順Dを使用して、バルク培養物の配列修飾を検出する。MDAにおいて陽性反応を示すバルク培養物を、一般手順Eに従って単一細胞選別へ処理を進ませる。それから得られたクローン由来細胞株を、一般手順Fに従って標的HCP配列修飾についてスクリーニングする。インデルを一般手順Hに従って特徴付けし、LCMSによって検出可能な量のLPLタンパク質を含有しない細胞株を選択する。一般手順Iに従ってRCBを生成して、LPLA2/LPLノックアウトCHO細胞株を得る。
【0116】
実施例3c-LPLA2/LPL/LALノックアウトCHO細胞株
実施例3bからのLPLA2/LPLノックアウトCHO細胞を、一般手順Bに従って遺伝子破壊のために調製する。次いで細胞を、一般手順Cに従って2回のZFNトランスフェクションおよびバルク培養物回収に供する。一般手順Dを使用して、バルク培養物の配列修飾を検出する。MDAにおいて陽性反応を示すバルク培養物を、一般手順Eに従って単一細胞選別へ処理を進ませる。それから得られたクローン由来細胞株を、一般手順Fに従って標的HCP配列修飾についてスクリーニングする。インデルを一般手順Hに従って特徴付けし、LCMSによって検出可能な量のLALタンパク質を含有しない細胞株を選択する。一般手順Iに従ってRCBを生成して、LPLA2/LPL/LALノックアウトCHO細胞株を得る。
【0117】
実施例3d-LPLA2/LPL/LAL/PPT1ノックアウトCHO細胞株
実施例3cからのLPLA2/LPL/LALノックアウトCHO細胞を、一般手順Bに従って遺伝子破壊のために調製する。次いで細胞を、一般手順Cに従って2回のZFNトランスフェクションおよびバルク培養物回収に供する。一般手順Dを使用して、バルク培養物の配列修飾を検出する。MDAにおいて陽性反応を示すバルク培養物を、一般手順Eに従って単一細胞選別へ処理を進ませる。それから得られたクローン由来細胞株を、一般手順Fに従って標的HCP配列修飾についてスクリーニングする。インデルを一般手順Hに従って特徴付けするが、細胞株のうちのいずれも、標的化されたPPT1領域において2対立遺伝子変異を含有しない。1または2対立遺伝子インデルを含有する細胞株をLCMSによって評価し、LCMS評価によって検出可能な量のPPT1タンパク質を含有しない細胞株を次に進める。一般手順Iに従ってRCBを生成して、LPLA2/LPL/LAL/PPT1ノックアウトCHO細胞株を得る。
【0118】
実施例4-LPLA2/LPL/LAL/PPT1ノックアウトCHO細胞株と対照において発現された製剤化したmAb中のポリソルベート安定性の比較
Fc融合タンパク質(Fc融合タンパク質1)および抗体(抗体2)を、LPLA2、LPL、LAL、およびPPT1がノックアウトされた、生成物を発現するCHO細胞株(「リパーゼ/エステラーゼKO細胞株」と称される)から産生し、また、対照として、LPLA2、LPL、LAL、またはPPT1がノックアウトされていない、生成物を発現するCHO細胞株から産生する。Fc融合タンパク質1は、プロテインAクロマトグラフィー、低pHウイルス不活性化、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)、陽イオン交換(CEX)クロマトグラフィー、および接線流ろ過(TFF)濃縮によって処理し、その後、0.02%PS80で製剤化する。抗体2は、プロテインAクロマトグラフィー、低pHウイルス不活性化、CEXクロマトグラフィー、およびTFF濃縮によって処理し、その後、0.02%PS80で製剤化する。Fc融合タンパク質1および抗体2の製剤化した試料を、研究期間の間、25℃に維持し、一般手順Aを使用して、LCMS分析のために直接使用して、モノオレエートエステルとして残存しているインタクトなPS80の割合を経時的にモニターする。結果を表3に列挙し、KO細胞株を使用して産生したFc融合タンパク質1および抗体2におけるPS80が、対照試料よりも安定であることを示す。
【表3】
【0119】
実施例5-モノクローナル抗体製剤中のPLD3の同定
プロテインA捕捉、低pHウイルス不活性化、陰イオン交換(AEX)クロマトグラフィー、および接線流ろ過(TFF)による150mg/mLの濃度への濃縮によって処理した1mgの抗体3を含有する試料を、トリス-HCl緩衝液(1M、pH8、5μL)および水と混合して、195μLの体積にする。各溶液を5μLのトリスピンおよびタンパク質標準混合物(20μLの2.5mg/mLのr-ウシトリプシン、20μLのタンパク質標準混合物および60μLの水)で37℃で一晩処理する。各試料を1,4-ジチオスレイトール(DTT、50mg/mL、2μL)と混合し、90℃で10分間加熱し、白い沈殿物を観察する。次いで試料を13000gで2分間遠心分離し、上清をHPLCバイアルに移す。本質的に実施例2に記載されているように、LCMS分析の前に、試料を水中の10%ギ酸5μLで酸性化する。この実験では、PLD3を、17±6ng/mg(n=2)の抗体3で抗体3の試料中で同定する。
【0120】
実施例6-PLD4およびPLD7のポリソルベート加水分解活性の特徴付け
PLD3と同様に、PLD4およびPLD7は、ホスホリパーゼDファミリーのメンバーである。PLD4およびPLD7の加水分解活性を、本質的に実施例1に記載されている方法で評価する。0.02%PS80を含有する試料を、ミリリットル当たり0.25および2.5単位(UN/mL)のPLD4およびPLD7と35℃でインキュベートし、モノオレエートエステルとして残存しているインタクトなPS80の割合を、一般手順Aを使用してLCMSによって経時的にモニターする。これらの条件下で35時間のインキュベーション後、PS80は、2.5UN/mLのPLD4およびPLD7の存在下で、それぞれ、30%超および80%超、加水分解する。これらのデータを
図3に示し、PLDファミリーのメンバーが、PS80を経時的に分解する能力を定性的に示す。
【0121】
配列表
配列番号1-チャイニーズハムスターパルミトイルタンパク質チオエステラーゼ1(PPT1)
MASPGSRWLLAVSLLPWCCAAWSLGHLNPPSLTPLVIWHGMGDSCCNPISMGAIKKMVEKEIPGIYVLSLEIGKNMMEDVENSFFLNVNSQVMMVCQILEKDPKLQQGYNAIGFSQGGQFLRAVAQRCPSPRMINLISVGGQHQGVFGLPRCPGESSHVCDFIRKMINAGAYSKVVQLRLVQAQYWHDPIKEDVYRNHSIFLADINQERCVNETYKKNLMALNKFVMVKFLNDSIVDPVDSEWFGFYRSGQAKETIPLQESTLYTEDRLGLKQMDKAGKLVFLAKEGDHLQLSKEWFNAYIIPFLK
配列番号2-チャイニーズハムスターリソソーム酸リパーゼ(LAL)
MQILGLVVCLFLSVLLSGRPTGSIPHVDPEANMNVTEMIRYWGYPSEEHMIQTEDGYILGVHRIPHGRKNHSHKGPKPVVYLQHGFLADSSNWVTNSDNSSLGFILADAGFDVWLGNSRGNTWSLKHRTLSISQDEFWAFSFDEMAKYDLPASIYYIVNKTGQEQVYYVGHSQGTTIGFIAFSQIPELAKKIKMFFALAPVVFLNFALSPVIKISKWPEVIIEDLFGHKQFFPQSAKLKWLSTHVCNRVVLKKLCTNVFFLICGFNEKNLNESRVNVYTSHSPAGTSVQNLRHWGQIAKHHMFQAFDWGSKAKNYFHYNQTCPPVYDLKDMLVPTALWSGDHDWLADPSDVNILLTQIPNLVYHKRLPDWEHLDFLWGLDAPWRMYNEIVNLLRKYQ
配列番号3-チャイニーズハムスターリポタンパク質リパーゼアイソフォームX2(LPL)
MESKALLLVALGVWLQSLTASQGXAAADGGRDFTDIESKFALRTPDDTAEDNCHLIPGIAESVSNCHFNHSSKTFVVIHGWTVTGMYESWVPKLVAALYKREPDSNVIVVDWLYRAQQHYPVSAGYTKLVGNDVARFINWMEEEFNYPLDNVHLLGYSLGAHAAGVAGSLTNKKVNRITGLDPAGPNFEYAEAPSRLSPDDADFVDVLHTFTRGSPGRSIGIQKPVGHVDIYPNGGTFQPGCNIGEAIRVIAERGLGDVDQLVKCSHERSIHLFIDSLLNEENPSKAYRCNSKEAFEKGLCLSCRKNRCNNVGYEINKVRAKRSSKMYLKTRSQMPYKVFHYQVKIHFSGTESDKQLNQAFEISLYGTVAESENIPFTLPEVSTNKTYSFLIYTEVDIGELLMMKLKWKSDSYFSWSDWWSSPGFVIEKIRVKAGETQKKVIFCAREKVSHLQKGKDSAVFVKCHDKSLKKSG
配列番号4-チャイニーズハムスターグループXVホスホリパーゼA2アイソフォームX1(LPLA2)
MDRHHLTCRATQLRSGLLVPLLLLMMLADLALSVQRHPPVVLVPGDLGNQLEAKLDKPKVVHYLCSKRTDSYFTLWLNLELLLPVIIDCWIDNIRLVYNRTSRATQFPDGVDVRVPGFGETFSLEFLDPSKRTVGSYFHTMVESLVGWGYTRGEDLRGAPYDWRRAPNENGPYFLALREMIEEMYQMYGGPVVLVAHSMGNMYTLYFLQRQPQAWKDKYIHAFISLGAPWGGVAKTLRVLASGDNNRIPVIGPLKIREQQRSAVSTSWLLPYNHTWSHDKVFVHTPTTNYTLRDYHQFFQDIRFEDGWFMRQDTEGLVEAMMPPGVELHCLYGTGVPTPDSFYYESFPDRDPKICFGDGDGTVNLESVLQCQAWQSRQEHKVSLQELPGSEHIEMLANATTLAYLKRVLFEP
配列番号5-LPLA2についてのZFN結合/切断核酸配列
TGGATCGCCATCACCTCACTTGTCGCGCGACCCAGCTCCGGAG
配列番号6-LPLについてのZFN結合/切断核酸配列
AGCAAAGCCCTGCTCCTGGTGGCTCTGGGAGTGTGGCTCCAG
配列番号7-LALについてのZFN結合/切断核酸配列
TACTGGGGATACCCGAGTGAGGAGCATATGATCCAGAC
配列番号8-PPT1についてのZFN結合/切断核酸配列
CGCCTTCGCTGACACCGCTGGTGATCTGGCATGGGATGGGTA
配列番号9-チャイニーズハムスターホスホリパーゼD3(PLD3)
MKPKLMYQELKVPVEEPAGELPVNEIEAWKAAEKKARWVLLVLILAVVGFGALMTQLFLWEYGDLHLFGPNQRPAPCYDPCEAVLVESIPEGLEFPNATTSNPSTSQAWLGLLAGAHSSLDIASFYWTLTNNDTHTQEPSAQQGEEILQQLQALAPRGVKVRIAVSKPNGPLADLQSLLQSGAQVRMVDMQKLTHGVLHTKFWVVDQTHFYLGSANMDWRSLTQVKELGVVMYNCSCLARDLTKIFEAYWFLGQAGSSIPSTWPRPFDTRYNQETPMEICLNGTPALAYLASAPPPLCPSGRTPDLKALLSVVDSARSFIYIAVMNYLPTMEFSHPRRFWPAIDDGLRRAAYERGVKVRLLVSCWGHSEPSMRSFLLSLAALRDNHTHSDIQVKLFVVPADEAQARIPYARVNHNKYMVTERAVYIGTSNWSGSYFTETAGTSLLVTQNGHDGLRSQLEDVFLRDWNSLYSHNLDTAADSVGNACRLL
配列番号10-PLD3についてのZFN結合/切断核酸配列
GCCCCCTGCTATGACCCCTGCGAGTAAGTGGCAGGGGAG
配列番号11-チャイニーズハムスターフコシルトランスフェラーゼ8(FUT8)
MRAWTGSWRWIMLILFAWGTLLFYIGGHLVRDNDHPDHSSRELSKILAKLERLKQQNEDLRRMAESLRIPEGPIDQGTATGRVRVLEEQLVKAKEQIENYKKQARNDLGKDHEILRRRIENGAKELWFFLQSELKKLKKLEGNELQRHADEILLDLGHHERSIMTDLYYLSQTDGAGEWREKEAKDLTELVQRRITYLQNPKDCSKARKLVCNINKGCGYGCQLHHVVYCFMIAYGTQRTLILESQNWRYATGGWETVFRPVSETCTDRSGLSTGHWSGEVKDKNVQVVELPIVDSLHPRPPYLPLAVPEDLADRLLRVHGDPAVWWVSQFVKYLIRPQPWLEREIEETTKKLGFKHPVIGVHVRRTDKVGTEAAFHPIEEYMVHVEEHFQLLERRMKVDKKRVYLATDDPSLLKEAKTKYSNYEFISDNSISWSAGLHNRYTENSLRGVILDIHFLSQADFLVCTFSSQVCRVAYEIMQTLHPDASANFHSLDDIYYFGGQNAHNQIAVYPHQPRTKEEIPMEPGDIIGVAGNHWNGYSKGVNRKLGKTGLYPSYKVREKIETVKYPTYPEAEK
配列番号12-チャイニーズハムスターカテプシンD(CatD)
MQTLGILLLAVGLLAASASAVIRIPLRKFTSIRRTMTEVGGSVEDLILKGPITKYSNQSPAETKGPVSELLKNYLDAQYYGEIGIGTPPQCFTVVFDTGSSNLWVPSIHCKLLDIACWIHHKYNSGKSSTFVKNGTSFDIHYGSGSLSGYLSQDTVSVPCKSEQPGGLKVEKQIFGEAIKQPGITFIAAKFDGILGMGYPSISVNNVVPVFDNLMQQKLVEKNIFSFFLNRDPTGQPGGELMLGGIDSKYYEGELSYLNVTRKAYWQVHMDQLDVANGLTLCKGGCEAIVDTGTSLLVGPVDEVKELQKAIGAVPLIQGEYMIPCEKVSSLPSVTLKLGGKDYELSPSKYVLKVSQGGKTICLSGFMGMDIPPPSGPLWILGDVFIGTYYTVFDRDNNRVGFAKAATL
配列番号13-CatDについてのZFN結合/切断核酸配列
CAGTGTCAGAGTTGCTCAAAAACTACCTGGATGTGAGTGAT
配列番号14-チャイニーズハムスターカルボキシペプチダーゼD(CpD)
AGPLLPGRPQVKLVGNMHGDETVSRQVLVYLAHELASGYRRGDPRLVRLLNITDVYLLPSLNPDGFERSREGDCGLGDSGSPXAPPRRGRDLNRSFPDQFSTGKPPSLDEVPEVRALIDWIRKNKFVLSGNLHGGSVVASYPFDDSPDHMATGIYSKTSDDEVFRYLAKAYASNHPIMKTGEPHCPGDEDETFKDGITNGAHWYDVEGGMQDYNYVWANCFEITLELSCCKYPPASQLRQEWENNRESLITLIEKVHIGIKGFVKDSVTGAGLENATISVAGINHNITTGRFGDFHRLLIPGIYNLTAVSTGYMPLTIHNIRVKEGPATEMDFSLRPTVTSKVPDSTEAVATPGTVAVPNIPPGTSSSHQPIQPKDFHHHHFPDMEIFLRRFANEYPNITRLYSLGKSVESRELYVMEISDNPGVHEPGEPEFKYIGNMHGNEVVGRELLLNLIEYLCKNFGTDPEVTDLVRSTRIHLMPSMNPDGYEKSQEGDSVSVVGRNNSNNFDLNRNFPDQFVTITDPTQPETIAVMSWIKSYPFVLSANLHGGSLVVNYPFDDNEQGVATYSKSPDDAVFQQIALSYSRENSQMFQGRPCKDMSILNEYFLHGITNGASWYNVPGGMQDWNYLQTNCFEVTIELGCVKYPFEKELPKYWEQNRRSLIQFMKQVHQGVKGFVLDATDGRGILNATLSVAEINHPVTTYKAGDYWRLLVPGTYKITASARGYNPVTKNVTVRSEGAIQVNFTLVRSSTDANNESKKGKGASTSTDDSSDPTTKEFEALIKHLSAENGLEGFMLSSSSDLALYRYHSYKDLSEFLRGLVMNYPHITNLTTLGQSAEYRHIWSLEISNKPNVSEPEEPKIRFVAGIHGNAPVGTELLLALAEFLCLNYKKNPVVTQLVDRTRIVIVPSLNPDGRERAQEKECTSKIGQTNARGKDLDTDFTSNASQPETKAIIENLIQKQDFSLSIALDGGSVLVTYPYDKPVQTVENKETLKHLASLYANNHPSMHMGQPSCPNKSDENIPGGVMRGAEWHSHLGSMKDYSVTYGHCPEITVYTSCCYFPSAAQLPALWAENKRSLLSMLVEVHKGVHGLVKDKTGKPISKAVIVLNDGIKVHTKEGGYFHVLLAPGVHNINAIAEGYQQQHSQVFVHHDAASSVLIVFDTDNRIFGLPRELVVTVSGATMSALILTACIIWCICSIKSNRHKDGFHRLRQHHDEYEDEIRMMSTGSKKSLLSHEFQDETDTEEETLYSSKH
配列番号15-CpDについてのZFN結合/切断核酸配列
GTCAGTGGAGTCAAGAGAACTGTATGTGATGGAGATATC
配列番号16-チャイニーズハムスターホスホリパーゼB様2(PLBL2)
MAAPMDRSPGGRAVRALRLALALASLTEVLLNCPAGALPTQGPGRRRQNLDPPVSRVRSVLLDAASGQLRLVDGIHPYAVAWANLTNAIRETGWAYLDLGTNGSYNDSLQAYAAGVVEASVSEELIYMHWMNTMVNYCGPFEYEVGYCEKLKSFLEINLEWMQREMELSQDSPYWHQVRLTLLQLKGLEDSYEGRLTFPTGRFTIKPLGFLLLQIAGDLEDLEQALNKTSTKLSLGSGSCSAIIKLLPGARDLLVAHNTWNSYQNMLRIIKKYQLQFRQGPQEAYPLIAGNNLVFSSYPGTIFSGDDFYILGSGLVTLETTIGNKNPALWKYVQPQGCVLEWIRNIVANRLALDGATWADIFKQFNSGTYNNQWMIVDYKAFIPNGPSPGSRVLTILEQIPGMVVVADKTEDLYKTTYWASYNIPFFEIVFNASGLQDLVAQYGDWFSYTKNPRAQIFQRDQSLVEDMNSMVRLIRYNNFLHDPLSLCEACIPKPNAENAISARSDLNPANGSYPFQALYQRPHGGIDVKVTSFSLAKRMSMLAASGPTWDQLPPFQWSLSPFRSMLHMGQPDLWTFSPISVPWD
配列番号17-PLBL2についてのZFN結合/切断核酸配列
CGGTTCCTGCTCCGCTATCATCAAGTTGCTGCCAGGCGCACG
配列番号18-チャイニーズハムスターペルオキシレドキシン-1(PRDX1)
MSSGNAKIGYPAPNFKATAVMPDGQFRDICLSEYRGKYVVFFFYPLDFTFVCPTEIIAFSDRAEEFKKLNCQVIGASVDSHFCHLAWINTPKKQGGLGPMNIPLVSDPKRTIAQDYGVLKADEGISFRGLFIIDDKGILRQITINDLPVGRSVDEILRLVQAFQFTDKHGEVCPAGWKPGSDTIKPDVQKSKEYFSKQK
配列番号19-PRDX1についてのZFN結合/切断核酸配列
CCTGCCCCCAACTTCAAAGCCACAGCTGTTATGCCAGATGGAC
宿主細胞タンパク質(HCP)パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ1(PPT1)、ならびに内因性HCPであるリポタンパク質リパーゼ、リソソーム酸リパーゼ、およびホスホリパーゼA2の減少した発現および/または減少した活性を有する、組換え操作された哺乳動物細胞であって、
前記細胞が、前記パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ、前記リソソーム酸リパーゼ、前記リポタンパク質リパーゼ、および前記ホスホリパーゼA2をコードする、破壊され、または不活性化された遺伝子を含み、さらにタネズマブ、レブリキズマブ、ミリキズマブ、ドナネマブ、ザゴテネマブ(zagotenemab)、ラムシルマブ、ガルカネズマブ、イキセキズマブ、デュラグルチド、ネシツムマブ、オララツマブ、セツキシマブ、アンジオポエチン2抗体、インスリン-Fc融合タンパク質、CD200Rアゴニスト抗体、エピレグリン/TGFα抗体、ANGPTL 3/8抗体、BTLA抗体アゴニスト、CXCR1/2リガンド抗体、GDF15アゴニスト、IL-33抗体、PACAP38抗体、PD-1アゴニスト抗体、pGlu-Abeta抗体、N3pG Abeta抗体、TNFα/IL-23二重特異性抗体、抗α-シヌクレイン抗体、CD226アゴニスト抗体、MCT1抗体、SARS-CoV-2中和抗体、FcgRIIB抗体、IL-34抗体、CD19抗体、TREM2抗体、およびリラキシン類似体からなる群から選択されるバイオ製品または前記バイオ製品の抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチドを含む、細胞。
宿主細胞タンパク質PLD3の減少した発現および/または減少した活性を有し、PLD3をコードする破壊され、または不活性化された遺伝子をさらに含む、請求項1に記載の細胞。
前記細胞が、破壊も不活性化もされていない細胞のポリソルベート分解活性と比較して、実質的に減少したポリソルベート分解活性を有するプロテインA結合画分を産生する、請求項1または2に記載の細胞。
前記細胞が、CHO-K1細胞、CHOK1SV細胞、DG44 CHO細胞、DUXB11 CHO細胞、CHO-S、CHO GS(グルタミンシンテターゼ)ノックアウト細胞、CHOK1SV FUT8ノックアウト細胞、CHOZN、またはCHO由来細胞である、請求項6に記載の細胞。
(a)未修飾細胞と比較して、PPT1を産生するレベルを減少させるか、または排除するように修飾された宿主細胞から、バイオ製品および複数の宿主細胞タンパク質を含む試料を得るステップ、次いで
(b)前記試料を少なくとも1つの精製ステップに供して、少なくとも1つの宿主細胞タンパク質を除去するステップを含む、バイオ製品を製造するための方法であって、
前記宿主細胞が、
a)PPT1タンパク質をコードするポリヌクレオチドのコード配列における発現を減少させるか、または排除するための修飾、および
b)リソソーム酸リパーゼ(LAL)、リポタンパク質リパーゼ(LPL)、およびホスホリパーゼA2(LPLA2)の脂肪酸ヒドロラーゼをコードするポリヌクレオチドのコード配列における発現を減少させるか、または排除するための修飾を含み、
前記バイオ製品がタネズマブ、レブリキズマブ、ミリキズマブ、ドナネマブ、ザゴテネマブ、ラムシルマブ、ガルカネズマブ、イキセキズマブ、デュラグルチド、ネシツムマブ、オララツマブ、セツキシマブ、アンジオポエチン2抗体、インスリン-Fc融合タンパク質、CD200Rアゴニスト抗体、エピレグリン/TGFα抗体、ANGPTL 3/8抗体、BTLA抗体アゴニスト、CXCR1/2リガンド抗体、GDF15アゴニスト、IL-33抗体、PACAP38抗体、PD-1アゴニスト抗体、pGlu-Abeta抗体、N3pG Abeta抗体、TNFα/IL-23二重特異性抗体、抗α-シヌクレイン抗体、CD226アゴニスト抗体、MCT1抗体、SARS-CoV-2中和抗体、FcgRIIB抗体、IL-34抗体、CD19抗体、TREM2抗体、およびリラキシン類似体からなる群から選択されるバイオ製品または前記バイオ製品の抗原結合フラグメントである、方法。
前記複数の宿主細胞タンパク質が、(a)検出可能な量のPPT1タンパク質を含まず、(b)検出可能な量の少なくとも1つの他のリパーゼまたはエステラーゼを含まない、請求項8に記載の方法。
前記精製ステップが、プロテインAアフィニティー(PA)クロマトグラフィーもしくは別のアフィニティークロマトグラフィー法、陽イオン交換(CEX)クロマトグラフィー、陰イオン交換(AEX)クロマトグラフィー、または疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)である、請求項8または9に記載の方法。
前記宿主細胞を修飾して、PPT1の前記発現を減少させるか、または排除する前記ステップ(a)が、前記PPT1タンパク質をコードするポリヌクレオチドのエクソン2、エクソン3、またはエクソン4内の少なくとも1つのヌクレオチドを挿入または欠失することを含む、請求項12または13に記載の方法。
前記PPT1タンパク質をコードする前記ポリヌクレオチドが、配列番号1と少なくとも80%同一である核酸配列を含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。