(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016325
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】保持機構及び露光装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240131BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118345
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 賢志
(72)【発明者】
【氏名】北村 健
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197CA04
2H197CD02
2H197CD06
2H197CD12
2H197CD13
2H197FB01
2H197HA02
2H197HA03
2H197HA05
(57)【要約】
【課題】平坦度が高い真空吸着を実現することが可能な保持機構及び露光装置を提供すること。
【解決手段】本発明の一形態に係る保持機構は、吸着部と、シール部とを具備する。前記吸着部は、基板を真空吸着する吸着エリアを有する。前記シール部は、前記吸着エリアを囲んで配置された複数の辺部と前記複数の辺部のうち隣合う辺部の間に形成された複数の角部とを有する弾性部と、前記複数の角部の少なくとも1つに対して設けられた反発力抑制部とを有する。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を真空吸着する吸着エリアを有する吸着部と、
前記吸着エリアを囲んで配置された複数の辺部と前記複数の辺部のうち隣合う辺部の間に形成された複数の角部とを有する弾性部と、前記複数の角部の少なくとも1つに対して設けられた反発力抑制部とを有するシール部と
を具備する保持機構。
【請求項2】
請求項1に記載の保持機構であって、
前記弾性部は、前記基板が載置される載置面を有し、
前記反発力抑制部は、前記角部における前記載置面の面積を、前記角部につながる2つの辺部を延長して交差させた交差領域の面積よりも小さくした構造である
保持機構。
【請求項3】
請求項2に記載の保持機構であって、
前記反発力抑制部は、前記角部の内側に形成された切り欠きである
保持機構。
【請求項4】
請求項3に記載の保持機構であって、
前記切り欠きの平面形状は、四角形又は円形のいずれか一方である
保持機構。
【請求項5】
請求項2に記載の保持機構であって、
前記反発力抑制部は、前記角部の少なくとも一部の表面を前記載置面に対して低くした段差部である
保持機構。
【請求項6】
請求項1に記載の保持機構であって、
前記反発力抑制部は、前記角部に配置され前記辺部よりも反発力が低い弾性材料で構成される低反発部である
保持機構。
【請求項7】
請求項1から6のうちいずれか1項に記載の保持機構であって、
前記反発力抑制部は、前記角部につながる2つの辺部を延長して交差させた交差領域と重なるように配置される、又は前記交差領域と接するように配置される
保持機構。
【請求項8】
請求項1から6のうちいずれか1項に記載の保持機構であって、
前記弾性部の平面形状は、矩形形状であり、
前記複数の角部は、前記矩形形状の4つの頂点に対応する4つの角部を含み
前記反発力抑制部は、前記4つの角部の少なくとも1つに設けられる
保持機構。
【請求項9】
請求項1から6のうちいずれか1項に記載の保持機構であって、
前記吸着部は、真空を供給する凹部と当該凹部内に形成された複数の凸部とを有する基台と、前記吸着エリアを形成する吸着面と当該吸着面に形成された複数の貫通孔とを有し前記凹部上に取り付けられる吸着板とを有し、
前記シール部は、前記基台又は前記吸着板のどちらか一方に取り付けられる
保持機構。
【請求項10】
請求項9に記載の保持機構であって、
前記吸着部は、前記吸着面よりも低い位置に設けられ前記シール部の下面が取付けられる取付部を有し、
前記シール部は、前記取付部に前記下面が取付けられた状態で前記下面とは反対側となる上面が前記吸着面よりも高く突出するように構成される
保持機構。
【請求項11】
請求項1から6のうちいずれか1項に記載の保持機構であって、
前記弾性部は、ゴムスポンジを用いて構成される
保持機構。
【請求項12】
露光光を出射する光出射部と、
パターンが形成されたマスクを前記露光光の光路上で保持するマスクステージと、
前記パターンが転写されるワークを保持するワークステージと
を具備し、
前記ワークステージは、前記ワークを真空吸着する吸着エリアを有する吸着部と、前記吸着エリアを囲んで配置された複数の辺部と前記複数の辺部のうち隣合う辺部の間に形成された複数の角部とを有する弾性部と、前記複数の角部の少なくとも1つに対して設けられた反発力抑制部とを有するシール部とを有する
露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を保持する保持機構及びそれを搭載した露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板、半導体基板、液晶基板等を製造する工程では、露光等の加工処理を行う際に基板が位置ずれを起こさないように、基板を吸着保持するワークステージが用いられる。基板を吸着保持する方法としては、真空吸着が広く利用されている。
【0003】
例えば特許文献1には、真空吸着により基板を保持するステージ装置について記載されている。このステージ装置では、真空系につながる複数の貫通孔が設けられた薄板状部材により基板が真空吸着される。また薄板状部材の周囲にはシール用弾性部材が環状に設けられる。これにより、基板の反り等に伴う真空のリーク等が抑制される(特許文献1の明細書段落[0015]、[0024]、[0025]
図1、
図5等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、配線の微細化や実装密度の高密度化に伴い、露光時に要求される基板の平坦度は高くなっている。一方で基板の大型化に伴い平坦度を向上させることが難しくなってきている。このため、平坦度が高い真空吸着を実現する技術が求められている。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、平坦度が高い真空吸着を実現することが可能な保持機構及び露光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る保持機構は、吸着部と、シール部とを具備する。
前記吸着部は、基板を真空吸着する吸着エリアを有する。
前記シール部は、前記吸着エリアを囲んで配置された複数の辺部と前記複数の辺部のうち隣合う辺部の間に形成された複数の角部とを有する弾性部と、前記複数の角部の少なくとも1つに対して設けられた反発力抑制部とを有する。
【0008】
この保持機構では、基板を真空吸着する吸着エリアを囲むように弾性部からなるシール部が配置される。シール部を構成する角部には反発力抑制部が設けられる。これにより、角部における反発力が抑制され基板の盛り上がりを低減することが可能となる。この結果、平坦度が高い真空吸着を実現することが可能となる。
【0009】
前記弾性部は、前記基板が載置される載置面を有してもよい。この場合、前記反発力抑制部は、前記角部における前記載置面の面積を、前記角部につながる2つの辺部を延長して交差させた交差領域の面積よりも小さくした構造であってもよい。
【0010】
前記反発力抑制部は、前記角部の内側に形成された切り欠きであってもよい。
【0011】
前記切り欠きの平面形状は、四角形又は円形のいずれか一方であってもよい。
【0012】
前記反発力抑制部は、前記角部の少なくとも一部の表面を前記載置面に対して低くした段差部であってもよい。
【0013】
前記反発力抑制部は、前記角部に配置され前記辺部よりも反発力が低い低反発部であってもよい。
【0014】
前記反発力抑制部は、前記角部につながる2つの辺部を延長して交差させた交差領域と重なるように配置されてもよい。又は前記反発力抑制部は、前記交差領域と接するように配置されてもよい。
【0015】
前記弾性部の平面形状は、矩形形状であってもよい。この場合、前記複数の角部は、前記矩形形状の4つの頂点に対応する4つの角部を含んでもよい。また前記反発力抑制部は、前記4つの角部の少なくとも1つに設けられてもよい。
【0016】
前記吸着部は、真空を供給する凹部と当該凹部内に形成された複数の凸部とを有する基台と、前記吸着エリアを形成する吸着面と当該吸着面に形成された複数の貫通孔とを有し前記凹部上に取り付けられる吸着板とを有してもよい。この場合、前記シール部は、前記基台又は前記吸着板のどちらか一方に取り付けられてもよい。
【0017】
前記吸着部は、前記吸着面よりも低い位置に設けられ前記シール部の下面が取付けられる取付部を有してもよい。この場合、前記シール部は、前記取付部に前記下面が取付けられた状態で前記下面とは反対側となる上面が前記吸着面よりも高く突出するように構成されてもよい。
【0018】
前記弾性部は、ゴムスポンジを用いて構成されてもよい。
【0019】
本発明の一形態に係る露光装置は、光出射部と、マスクステージと、ワークステージとを具備する。
前記光出射部は、露光光を出射する。
前記マスクステージは、パターンが形成されたマスクを前記露光光の光路上で保持する。
前記ワークステージは、前記パターンが転写されるワークを保持する。
前記ワークステージは、前記ワークを真空吸着する吸着エリアを有する吸着部と、前記吸着エリアを囲んで配置された複数の辺部と前記複数の辺部のうち隣合う辺部の間に形成された複数の角部とを有する弾性部と、前記複数の角部の少なくとも1つに対して設けられた反発力抑制部とを有するシール部とを有する。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、平坦度が高い真空吸着を実現することが可能となる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るワークステージを備えた露光装置の構成例を示す模式図である。
【
図2A】ワークステージの構成例を示す模式図である。
【
図2B】ワークステージの構成例を示す模式図である。
【
図3】シール部の基本的な構成について説明するための模式図である。
【
図4】ワークステージに設けられたシール部の平面構成例を示す模式図である。
【
図5A】ワークステージによる真空吸着の動作を示す模式図である。
【
図5B】ワークステージによる真空吸着の動作を示す模式図である。
【
図6A】反発力抑制部の構成例を示す模式図である。
【
図6B】反発力抑制部の構成例を示す模式図である。
【
図6C】反発力抑制部の構成例を示す模式図である。
【
図6D】反発力抑制部の構成例を示す模式図である。
【
図6E】反発力抑制部の構成例を示す模式図である。
【
図7A】反発力抑制部の他の構成例を示す模式図である。
【
図7B】反発力抑制部の他の構成例を示す模式図である。
【
図8A】反発力抑制部の他の構成例を示す模式図である。
【
図8B】反発力抑制部の他の構成例を示す模式図である。
【
図8D】反発力抑制部の他の構成例を示す模式図である。
【
図9A】反発力抑制部の他の構成例を示す模式図である。
【
図9B】反発力抑制部の他の構成例を示す模式図である。
【
図10】比較例として挙げるシール部を示す模式図である。
【
図11A】第2の実施形態に係るワークステージの構成例を示す模式図である。
【
図11B】第2の実施形態に係るワークステージの構成例を示す模式図である。
【
図12A】他の実施形態に係るワークステージの構成例を示す模式図である。
【
図12B】他の実施形態に係るワークステージの構成例を示す模式図である。
【
図13】他の実施形態に係るシール部の構成例について説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0023】
[露光装置の構成]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るワークステージを備えた露光装置の構成例を示す模式図である。露光装置100は、ワークWを露光する露光装置である。ここで、ワークWは、例えばプリント基板とすることができる。本実施形態では、ワークWは、保持機構により保持される基板に相当する。
露光装置100は、光照射部10と、マスクMと、マスクステージ11と、投影レンズ12と、ワークステージ20と、配管Lとを有する。
【0024】
光照射部10は、露光光を出射する。光照射部10は、ランプ15と、ミラー16と、ランプハウス17とを有する。ランプ15は、紫外線を含む露光光を放射する露光用光源である。ミラー16は、ランプ15から放射された露光光を所定の出射方向にむけて反射する。ランプハウス17は、ランプ15及びミラー16を収容するケースである。
なお、ここでは光照射部10の光源がランプ15である場合について説明するが、光源としてLED(Light Emitting Diode)やレーザ光源等が用いられてもよい。また露光光の波長や帯域も限定されない。
本実施形態では、光照射部10は、露光光を出射する光出射部に相当する。
【0025】
マスクMには、ワークWに露光(転写)される回路パターンなどのパターンが形成されている。
マスクステージ11は、パターンが形成されたマスクを露光光の光路上で保持する。
投影レンズ12は、マスクMを透過した露光光をワークWに投影する。例えば投影レンズ12は、マスクMのパターンを縮小してワークWの表面に結像させる縮小光学系として構成される。なお、本実施形態では、露光装置100が投影レンズ12を備える場合について説明するが、投影レンズ12を備えない露光装置にも本発明を適用可能である。
【0026】
ワークステージ20は、マスクMのパターンが転写されるワークWを保持する。具体的には、ワークステージ20は、ワークW(基板)を真空吸着して保持する保持機構である。ワークステージ20には、複数の真空吸着孔29が設けられた吸着エリア22と、吸着エリア22を囲むように配置されたシール部30とが設けられる。真空吸着孔29は、真空を引くための配管Lに接続される。
ワークステージ20の具体的な構成については後に詳しく説明する。
【0027】
配管Lは、一端がワークステージ20に接続され、他端には二股に分かれた分岐路が設けられた真空引き用の配管である。分岐路の一方は、バルブB1を介して図示しない真空ポンプに接続される。また分岐路の他方は、バルブB2を介して図示しない空気導入部に接続される。バルブB1及びバルブB2としては、流路を遮断する電磁弁等が用いられる。
【0028】
[露光装置の基本的な動作]
ここで、露光装置100の基本的な露光動作の流れを説明する。
露光装置100では、図示しない搬送手段によりプリント基板等のワークWが搬送される。ワークWはその表面(パターンを形成する側)を上側にしてワークステージ20に置かれる。より詳しくは、ワークWは吸着エリア22を囲むシール部30上に載置される。この時、ワークWの表面には、露光光によって感光するレジストが塗布されている。
【0029】
ワークWが置かれると、配管LのバルブB2が閉じられバルブB1が開かれる。この結果、配管Lに接続された貫通孔(真空吸着孔29)に真空が供給され、ワークWは吸着エリア22に吸着される。このとき、ワークWの真空吸着に伴いシール部30は押しつぶされるように弾性変形する。これによりワークWの裏面とワークステージ20との間で真空がリークするといった事態が回避され、ワークWは確実に吸着保持される。
【0030】
光照射部10から出射された露光光が、マスクMと投影レンズ12とを介して、ワークステージ20が保持するワークWに照射される。そしてマスクMに形成されたパターンが、ワークW上に投影されて所望のパターンが露光される。なお、ワークステージ20への真空の供給は、露光処理中、ワークWが移動しないように継続される。
【0031】
露光処理が終了すると、バルブB1が閉じられ、真空吸着孔29への真空の供給が停止される。これにより、ワークWの真空吸着が解除される。次にバルブB2が開かれ、真空吸着孔29にエアーが供給される。この結果、真空吸着孔29からはエアーが吹き出し、ワークステージ20からワークWが取り外される。その後、不図示の搬送手段によりワークWが回収され、露光装置100の外部に搬送される。
【0032】
[ワークステージの構成]
図2は、ワークステージ20の構成例を示す模式図である。
図2Aは、ワークステージ20を分解した状態を示す模式的な斜視図である。また
図2Bは、ワークステージ20の構成例を示す模式的な断面図である。
図2に示すように、ワークステージ20は、吸着部21と、シール部30とを有する。以下では、ワークステージ20においてワークWが保持される側(露光光が照射される側)をワークステージの上側と記載し、その反対側を下側と記載する。
【0033】
吸着部21は、ワークWを真空吸着する吸着エリア22を有する。吸着エリア22は、真空吸着によりワークWが保持される平面領域であり、ワークステージ20の上側に設けられる。真空吸着が行われている間、ワークWは吸着エリア22に張り付くようにして保持される。
吸着部21は、基台23と、基台23に取り付けられる吸着板24とを有する。このうち吸着板24の表面に吸着エリア22が形成される。また吸着部21には、シール部30を取り付けるための取付部37が設けられる。
【0034】
基台23は、吸着部21の土台となる金属ブロックである。基台23を上側からみた平面形状は矩形形状(ここでは略正方形)である。基台23は、典型的には表面を無電解ニッケルメッキ処理したアルミニウムブロックによって構成されるが、アルマイト処理や、セラミックスを溶着したものを用いてもよい。また基台23の材質も鉄や銅などの金属であってもよい。
【0035】
基台23の上側表面の中央部には、凹部25が形成され、凹部25内には吸着板24を載せる複数の凸部26が形成されている。また、凹部25には、基台23に取り付けられた真空系(配管L)から真空を凹部25に導くために、複数の真空導入路27が設けられている。配管Lに供給された真空またはエアーは、この真空導入路27から凹部25に導かれる。
このように、基台23は、真空を供給する凹部25と、当該凹部25内に形成された複数の凸部26とを有する。
【0036】
また基台23の上側表面は精度の良い平面に仕上げられている。ここで上側表面とは、凸部26の上面と基台23の上側の外周面(凹部25の縁を囲む面)とでつくる面である。即ち、凸部26の上面と基台23の外周面とは同じ高さであり、その平面度は10μm程度である。基台23の上側表面は、吸着板24が配置される面となる。
【0037】
吸着板24は、基台23の凹部25を完全に覆う大きさを有し、基台23の上側表面にならうよう、ある程度の柔軟性を有する材質で構成された薄い板状部材である。吸着板24としては、例えば厚さ0.3mmのステンレス板が用いられる。なお吸着板24の厚さや材質はこれに限定されず、例えば凹部25のサイズ等に応じて吸着板24の厚さや材質が適宜選択されてよい。
図2に示すように、吸着板24は、吸着面28と、複数の真空吸着孔29とを有する。
【0038】
吸着面28は、吸着エリア22を形成する面である。すなわち、吸着面28は、真空吸着時にワークWが保持される面となる。吸着板24は、吸着面28を上側にして、基台23の凹部25上に取り付けられる。
図2Aに示す例では、吸着板24の四隅にはネジSを通す貫通孔が設けられ、吸着板24はネジSにより基台23に対して固定される。なお、ネジSではなく他の固定金具を使って固定しても良い。
【0039】
複数の真空吸着孔29は、吸着面28に形成された貫通孔である。各真空吸着孔29は、上側から見た平面視で基台23の凹部25と重なる領域の全面に渡って設けられる。ここでは、所定の直径を有する真空吸着孔29が一定間隔で格子状に設けられている。なお、真空吸着孔29の位置は、基台23の凸部26の位置と一致することがないように設定される。
基台23上に吸着板24を取り付けて、基台23に真空を供給すると、上記のように基台23の凹部25に真空が導かれ、その凹部25を覆う吸着板24の真空吸着孔29にも真空が供給される。これにより、ワークWを真空吸着することが可能となる。
【0040】
露光装置100では、ワークWの大きさや形状、又はワークWに設けられた切欠きや貫通孔の位置に合わせて複数の吸着板24が準備される。各吸着板24に設けられる真空吸着孔29の数、孔径、形状や配列、真空吸着孔29が設けられる領域等は、ワークWに応じて設定される。
【0041】
例えば、
図2に示す例では、真空吸着孔29として円形孔を設けたが、これに限定されず、矩形孔、長円孔など種々の形状の貫通孔を真空吸着孔29として設けることができる。
また、
図2に示す例では、吸着板24の凹部25と対応する領域の全面に渡って真空吸着孔29が一定間隔で設けられているが、これに限定されず、ワークWの大きさに応じてある決まった領域にのみ真空吸着孔29を設けてもよい。
また、真空吸着孔29のサイズ(直径等)や配列も、ワークWの大きさ、柔らかさ、反り具合等に応じて、1枚の吸着板24の面内で自由に設定することが可能である。
【0042】
このように吸着板24を構成することにより、加工するワークWの種類に応じて、最適な吸着板24を選択して、ワークWを吸着保持することが可能となる。
【0043】
シール部30は、吸着エリア22を囲むように配置された環状の弾性部材である。シール部30は、下面30a及び上面30bを有する。下面30aは、基台23に取り付けられる面である。上面30bは、下面30aとは反対側の面である。上面30bの少なくとも一部は、後述する載置面34として機能する。
【0044】
本実施形態では、シール部30は、基台23に取り付けられる。具体的には、シール部30は、その下面30aを基台23の上側表面に接触させて、吸着板24を囲むように取付けられる。すなわち、基台23の上側表面において吸着板24を囲む環状の領域が、シール部30の下面30aが取付けられる取付部37となる。
図2Bに示すように、取付部37の位置は、吸着板24の厚みがあるため吸着面28よりも低い位置となる。このように、シール部30の下面30aは、吸着面28よりも低い位置に設けられた取付部37に取り付けられる。
【0045】
またシール部30は、取付部37に下面30aが取付けられた状態で上面30bが吸着エリア22(吸着面28)よりも高く突出するように構成される。従ってワークステージ20にワークWを置いた場合、真空吸着を行っていない状態では、ワークWはシール部30の上面30bに接触した状態で、吸着面28から離間して保持される(
図5A参照)。またワークWの真空吸着を行っている状態では、シール部30は、吸着面28に引き付けられるワークWにより押し潰されて圧縮変形し、真空リークを抑制するリーク抑制機構として機能する(
図5B参照)。
【0046】
シール部30の形状は、シール部30とワークWとが接触する領域が環状に閉じた領域となるように構成される。典型的には、シール部30の外周の形状は、ワークWの外周の形状と同形同大の形状に設定される。なお、シール部30の形状は、ワークWを適正に真空吸着することが可能となる範囲で、適宜設定されてよい。例えばシール部30の外周がワークWの外周の内側に収まるようにシール部30が構成されてもよい。またワークWの外周がシール部30の内周と外周との間に収まるようにシール部30が構成されてもよい。
【0047】
シール部30を、基台23に取り付ける本構成では、シール部30が取付けられる面(基台23の上側表面)よりも吸着面28が高い位置にある。このため、真空吸着時にはシール部30の厚みが吸着板24の厚みまで圧縮された時点で、ワークWは吸着面28に吸着保持される。すなわち吸着板24の厚みにより、圧縮時のシール部30の厚みがキャンセルされる。従って、圧縮時のシール部30の厚みをキャンセルするために、基台23の上側表面に余分な段差等を設ける必要はない。これにより、基台23の構成がシンプルになり、製造コストを抑えることが可能となる。また吸着板24に対しても余分な段差等を設ける必要が無いため、ワークWに応じた様々な吸着板24を安価に製造することが可能となる。
【0048】
[シール部の構成]
図3は、シール部30の基本的な構成について説明するための模式図である。
図3には、シール部30の基本的な平面構成が模式的に図示されている。ここでは、
図3を参照してシール部30を構成する各部について説明する。
シール部30は、弾性部31と、反発力抑制部40とを有する。
【0049】
弾性部31は、弾性材料を用いて構成されたシール部30の本体である。弾性部31は、例えばゴムスポンジを用いて構成される。
弾性部31構成する材料としては、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、フッ素ゴム、ウレタン等の低反発な弾性材料が用いられる。弾性部31は、全体が同様の材料で構成されてもよいし、
図9を参照して説明するように、部分的に異なる材料で構成されてもよい。
弾性部31の平面形状は、吸着エリア22を囲む帯状の領域となる。
図3では、弾性部31として矩形形状の帯状の領域が設けられる。従って、弾性部31の平面形状は、矩形形状である。また
図3では、吸着エリア22(ここでは吸着板24が配置される領域)が点線の領域により模式的に図示されている。
弾性部31は、複数の辺部32と、複数の角部33と、載置面34とを有する。
【0050】
複数の辺部32は、吸着エリア22を囲んで配置される。1つの辺部32は、例えば一方向に延在する細長い矩形形状の領域(一定の幅を持った直線状の領域)であり、矩形形状の弾性部31において辺を形成する。
図3に示す例では、矩形形状の吸着エリア22の図中上側、右側、下側、及び、左側を囲むように、一定の幅を持った直線状の4つの辺部32が配置される。
【0051】
複数の角部33は、複数の辺部32のうち隣合う辺部32の間に形成される。1つの角部33は、例えば互いに隣合う2つの辺部32を接続する部分である。2つの辺部32を直線と見做した場合、角部33は2つの直線の間に形成される頂点に対応する。
図3に示す例では、矩形型に配置された4つの辺部32に対応して、吸着エリア22の図中右上側、左上側、左下側、及び、右下側に、それぞれ4つの角部33が配置される。すなわち、複数の角部は、矩形形状の4つの頂点に対応する4つの角部33を含む。
【0052】
以下では、隣合う辺部32を延長して交差させた場合に、2つの辺部32が交差する領域を交差領域35と記載する。例えば、
図3に示すように、隣合う辺部32が直交して配置され、各辺部32の幅が等しい場合、交差領域35は、一辺が辺部32の幅と等しい正方形状の領域となる。上記した角部33は、複数の辺部32からなる弾性部31において、交差領域35に形成される部分であるともいえる。
【0053】
載置面34は、弾性部31においてワークWが載置される面である。ここでは、各辺部32及び角部33において、真空吸着を行っていない状態でワークWが接触する面が、載置面34となる。すなわち載置面34は、弾性部31(シール部30)が圧縮されていない自然状態で、ワークWを支持する面であるともいえる。
例えば、複数の辺部32及び複数の角部33の厚みは一定に設定される。この場合、弾性部31の上側表面が全て載置面34となる。また複数の辺部32及び複数の角部33の一部が低く構成された場合(
図8等参照)、その部分を除く弾性部31の上側表面が載置面34となる。
【0054】
反発力抑制部40は、弾性部31を圧縮した時に発生する反発力を抑制する構造部分である。弾性材料で構成された弾性部31は、圧縮変形された場合、元の形状に戻ろうとして弾性部31を圧縮する部材(ワークW)に対して反発力を作用させる。典型的には弾性部31の圧縮量(潰れ量)が大きいほど、弾性部31からの反発力は大きくなる。
反発力抑制部40が設けられた部分では、反発力抑制部40を設けない場合と比べてこのような反発力が小さくなる。
【0055】
シール部30では、反発力抑制部40は、複数の角部33の少なくとも1つに対して設けられる。反発力抑制部40が設けられた角部33では、弾性部31の反発力が小さくなる。
本実施形態では、複数の角部33の全てに反発力抑制部40が設けられる。
図3に示す例では、反発力抑制部40が4つの角部33にそれぞれ設けられる。これにより、矩形形状の弾性部31の4隅で反発力を小さくすることが可能となる。
反発力抑制部40の構成については、以下で具体的に説明する。
【0056】
図4は、ワークステージ20に設けられたシール部30の平面構成例を示す模式図である。
図4には、
図2A及び
図2Bに示すワークステージ20を上側からみた平面図が図示されている。以下ではシール部30(弾性部31)を構成する辺部32及び角部33の厚みが全て一定に設定されているものとする。
【0057】
ここでは、反発力抑制部40として、反発力が作用する面積を小さくする構造が用いられる。具体的には、反発力抑制部40は、角部33における載置面34の面積が、角部33につながる2つの辺部32を延長して交差させた交差領域35の面積よりも小さくする。これは、圧縮されていない角部33がワークWに接する面積を、交差領域35よりも小さくすることを意味する。これにより、角部33においてワークWに作用する反発力を抑制することが可能である。
【0058】
図4に示すように、ここでは、反発力抑制部40として、角部33の内側に形成された切り欠き41が設けられる。すなわち、角部33には、辺部32が形成する内周が外側に向けてカットされた円形の切り欠き41が形成される。また、切り欠き41は、全ての角部33に対して設けられる。すなわち、矩形形状のシール部30(弾性部31)には、4隅に対応して4つの切り欠き41がそれぞれ設けられる。
【0059】
ここで交差領域35に注目する。
図4には、シール部30の左上の角部33に重畳して、その角部33につながる2つの辺部32の交差領域35が図示されている。
角部33に形成される載置面34の面積は、切り欠き41を設けることで、交差領域35よりも小さくなる。これにより、例えば辺部32と同様の材料で構成された角部33において交差領域35の全面が載置面34となる構成(
図10参照)と比べて、角部33において発生する反発力を小さくすることが可能となる。
なお、
図4では、切り欠き41により、角部33だけでなく、辺部32の角部33につながる部分(辺部32の端部)もカットされる。これにより、以下で説明する角部33における盛り上がりを十分に回避することが可能となる。
【0060】
また
図4に示す例では、シール部30が4つの部材36a、36b、36c、36dを張り合わせて形成されている。このうち、図中上側及び下側に配置された部材36a及び36cは、図中右側及び左側に配置された部材36b及び36dで挟まれており、ともに辺部32を構成する。一方、部材36b及び36dの両端は、部材36a及び36cが隣接して配置されるため角部33を構成する。このように、シール部30が複数の部材36に分かれて構成される場合でも、平面形状において角部33となる部分に対して反発力抑制部40(ここでは切り欠き41)が設けられる。
また4つの部材36a、36b、36c、36dの間には一定の隙間が形成されることもあるが、このような隙間は圧縮変形した際に埋められるため、真空リークを発生させる心配はない。
なお、シール部30(弾性部31)を複数の部材36に分けて構成する場合に限定されず、例えば1つながりの部材としてシール部30が一体的に形成されてもよい。
【0061】
[シール部を用いた真空吸着]
図5は、ワークステージ20による真空吸着の動作を示す模式図である。
図5A及び
図5Bは、真空吸着を行う前の状態及び真空吸着を行っている状態を示すワークステージ20の断面図である。
図5Aに示すように、ワークWをワークステージ20に載置した状態では、基台23の凹部25は大気圧であり、シール部30(弾性部31)の辺部32や角部33はほとんど変形しておらず自然状態である。この場合、ワークWは、吸着面28(吸着板24)から浮いた状態で、シール部30の載置面34上で支持される。
【0062】
図5Bに示すように、配管Lを介して凹部25に真空を供給すると、真空吸着が行われる。真空吸着中は、ワークWをワークステージ20の表面である吸着面28に押さえつける力が働き、ワークW裏面の周辺部が、シール部30に押し付けられる。これにより、シール部30は、ワークWから圧縮される方向に力を受け圧縮変形する。このとき、ワークW裏面の周辺部の形状に合わせてシール部30が変形することで、真空リークの発生等が防止される。これにより、ワークWは吸着面28に充分な力で押しつけられ、ワークWを吸着面28(吸着エリア22)上でしっかりと吸着保持することが可能となる。
このような過程を経るため、ワークWは中心部、周辺部の順に吸着板24の表面に押さえつけられる。
【0063】
シール部30が厚み方向に圧縮変形される場合、シール部30は厚み方向と直交する横方向に膨らむことが考えられる。この場合、2つの辺部32が交わる部分、すなわちシール部30の角部33には、2つの辺部32の横方向への膨らみが集中し、逃げ場を失った膨らみにより角部33が盛り上がる可能性がある。これは、角部33において、各辺部32から角部33に集中した横方向へ変形が反発力に変換されているともいえる。この結果、ワークWの4隅では、他の場所と比べて局所的におおきな反発力が作用し、ワークWの4隅が盛り上がってしまう可能性がある。この結果、ワークWの平坦度が低下する可能性がある(
図10参照)。
【0064】
上記したように
図4に示す例では、シール部30の4隅(4つの角部33)に切り欠き41を設けて反発力を抑制している。また切り欠き41があることで、例えば隣合う辺部32からの横方向の盛り上がりを逃がす構造となっている。
これにより、ワークWは盛り上がることなく、吸着板24の表面に充分な力で押しつけられ、ワークステージ20上で高い平坦度でワークWを保持することが可能となる。この結果、露光装置100では、デフォーカスによる露光不良を適切に抑制することができ、歩留まりの悪化を十分に回避することが可能となる。
【0065】
[反発力抑制部の構成例]
図6は、反発力抑制部40の構成例を示す模式図である。
図6A~
図6Dには、角部33における載置面34の面積を交差領域35よりも小さくした構成例が模式的に図示されている。また
図6Eには、角部33の周辺における載置面34の面積を小さくした構成例が模式的に図示されている。ここでは、シール部30に含まれる複数の角部33のうち1つの角部33に設けられた反発力抑制部40を代表して図示している。
【0066】
図6Aでは、反発力抑制部40として角部33の内側に切り欠き41が設けられる。また切り欠き41の平面形状は、円形である。これは
図4に示した切り欠き41と同様の構成である。円形の切り欠き41を設けることで、例えば横方向における応力の集中を分散することが可能となり、角部33における盛り上がりを十分に抑制することが可能となる。
【0067】
図6Bでは、反発力抑制部40として角部33の内側に切り欠き41が設けられる。また切り欠き41の平面形状は、四角形である。四角形の切り欠き41は、例えばシール部30を構成する弾性部材を直線的にカットすることで容易に形成することが可能である。これにより、シール部30の製造性が向上し、製造コストを抑えることが可能である。
【0068】
図6Cでは、反発力抑制部40として角部33の外周を切除した外周切除部42が設けられる。
図6Cに示す外周切除部42では、交差領域35のうち内側の頂点と外側の頂点の間の対角線に沿って外側の頂点を含む領域が切除される。これにより、角部33における載置面34の面積は交差領域35よりも小さくなる。このように、角部33の外側を切除した場合でも、圧縮時にワークWに接する面が少なくなるため、角部33における反発力を低減することが可能となる。
【0069】
図6Dでは、反発力抑制部40として角部33(交差領域35)と重なるように開口部45が設けられる。開口部45は、外周が閉じた貫通穴である。
図6Dでは、交差領域35の内側に円形の開口部45が設けられる。これにより、角部33における載置面34の面積は交差領域35よりも小さくなる。このように、角部33の内側に貫通穴を設けた場合でも、角部33における反発力を低減することが可能となる。
【0070】
このように、
図6A、
図6B、
図6C、及び
図6Dでは、反発力抑制部40は、交差領域35と重なるように配置される。これにより、角部33における反発力を直接低減することが可能となり、ワークWの盛り上がりを十分に抑制することが可能となる。この結果、ワークWの平坦度を十分に向上することが可能となる。
【0071】
図6Eでは、反発力抑制部40として角部33につながる辺部32の内側に切り欠き41が設けられる。具体的には、角部33につながる2つの辺部32のうち交差領域35に接する部分に内側からそれぞれ切り欠き41a及び41bが形成される。このように、反発力抑制部40は、交差領域35と接するように配置されてもよい。このような場合でも、角部33に集中する横方向の膨らみが抑制され、角部33における反発力を下げることが可能となる。
【0072】
図7は、シール部30の他の構成例を示す模式図である。
上記したシール部30では、隣接する2つの辺部32を構成する部材の内、一方の部材により角部33が形成された。
図7A及び
図7Bでは、シール部30の各部(2つの辺部32及び角部33)を構成する部材の分け方が上記した例とは異なる。
【0073】
図7Aでは、2つの辺部32及び角部33が別々の部材で構成される。ここでは、角部33となる部材に隣接して、辺部32となる2つの部材が配置される。このとき各辺部32の間の角度は90度に設定される。また
図7Aでは、反発力抑制部40として、3つの部材(2つの辺部32及び角部33)に重なるように円形の切り欠き41が形成される。これは、
図6Aに示すシール部30の角部33を辺部32とは別の部材で構成した例であるともいえる。
【0074】
例えば円形の切り欠き41の中心は、交差領域35の外側の頂点(図中左上の頂点)と内側の頂点(図中右下の頂点)とを結ぶ線上に設定される。この場合、円形の切り欠き41により切除された2つの辺部32の形状は、互いに線対称な形状となる。
このように、2つの辺部32の形状が線対称となる場合、一方の辺部32の上面及び下面(または辺部32の上下や左右の配置)を反転させることで、他方の辺部32として使用することが可能となる。すなわち辺部32を構成する部材を共通化することが可能となる。また角部33はどの頂点でも用いることが可能であり、角部33を構成する部材についても共通化が可能である。これにより、角部33や辺部32を構成する部材を共通化して製造コストを抑えることが可能となる。
【0075】
図7Bでは、隣接する2つの辺部32を構成する2つの部材により角部33が形成される。辺部32となる2つの部材の平面形状は、細長い長方形の端に、長手方向に対して所定の角度で傾斜した斜辺38を設けた形状となっている。例えば
図7Bに示すように、2つの辺部32の間の角度を90度に設定する場合、各部材の端には長手方向に対して45度傾斜した斜辺38が形成される。辺部32となる2つの部材は、斜辺38により形成される鋭角の頂点が向き合うように、各斜辺38を対向させて配置される。また、2つの斜辺38を含む領域に交差領域35が形成され、辺部32となる2つの部材のうち交差領域35と重なる部分が角部33となる。
【0076】
また
図7Bでは、反発力抑制部40として、2つの辺部32及び角部33を構成する2つの部材に重なるように円形の切り欠き41が形成される。これは、
図6Aに示すシール部30において、2つの辺部32を構成する2つの部材により角部33を構成した例であるともいえる。
この場合、
図7Aと同様に、円形の切り欠き41の中心を交差領域35の外側の頂点と内側の頂点とを結ぶ線上に設定することで、2つの部材の形状は、互いに線対称な形状となる。これにより辺部32及び角部33を構成する2つの部材を共通化することや、部品点数を少なくすることが可能となる。
【0077】
図7A及び
図7Bでは、反発力抑制部40として、円形の切り欠き41を設ける例について説明したが、これに限定されない。
例えば、円形の切り欠き41に代えて、
図6Bと同様に四角形の切り欠き41が設けられてもよい。また
図6Cと同様に角部33の外周を切除した外周切除部42が設けられてもよい。また
図6Dと同様に角部33と重なるように開口部45が設けられてもよい。また
図6Eと同様に角部33につながる辺部32の内側に切り欠き41が設けられてもよい。
いずれの場合でも、辺部32の平面形状を線対称な形状とすることで、2つの部材を共通化することが可能である。
【0078】
図8は、反発力抑制部の他の構成例を示す模式図である。
図8では、反発力抑制部40として、角部33の少なくとも一部の表面を載置面34に対して低くした段差部43が用いられる。段差部43は、角部33の上側表面の全部または一部を他の部分に対してへこませた段差である。
【0079】
図8A及び
図8Bには、交差領域35の全面に形成された段差部43を示す平面図が模式的に図示されている。図中の斜線の領域が段差部43であり、段差部43は交差領域35と同じ大きさに設定される。また
図8Cには、
図8A及び
図8Bに示す段差部43を示す斜視図が模式的に図示されている。
図8Cに示すように、段差部43となった部分は、隣接する辺部32が形成する載置面34に対して、所定の深さだけ凹んだ領域となる。
【0080】
図8Aでは、2つの辺部32と角部33とが別々の部材で構成される。この場合、角部33を構成する部材の厚みは、辺部32を構成する部材の厚みよりも小さく設定される。これにより、角部33の上側表面には、辺部32の上側表面(載置面34)よりも低い段差部43が構成される。
例えば、辺部32の一部に角部33を形成する場合、辺部32の厚みを部分的に小さくする加工等が必要となる。これに対し、角部33を辺部32とは別部材で構成することで、辺部32に角部33を設けるための加工等が不要となり、角部33及び辺部32となる部材を容易に製造することが可能となる。
【0081】
図8Bでは、2つの辺部32を構成する部材のうち、一方の辺部32を構成する部材に角部33が形成される。この場合、角部33となる部分の厚みは、他の部分の厚みよりも小さく設定される。これにより、角部33となる部分には、載置面34よりも低い段差部43が構成される。
このように、辺部32と角部33とを一体的に形成してもよい。これにより、部材点数を少なくすることが可能となる。
【0082】
自然状態での段差部43の厚みは、載置面34となる位置(辺部32)の厚みよりも小さく、かつ真空吸着時に圧縮変形された状態でのシール部30の厚み(本実施形態では、吸着板24の厚み)よりも大きく設定される。この場合、段差部43では載置面34となる位置よりも厚みが小さくなっているため、反発力が小さくなる。これにより、角部33における反発力を直接低減することが可能となり、ワークWの盛り上がりを十分に抑制することが可能となる。
また圧縮変形された場合には、段差部43も多少圧縮されることになるので、ワークWに密着するため真空リークの発生を抑制することが可能である。
【0083】
図8Dには、交差領域35の一部に形成された段差部43の一例を示す平面図が模式的に図示されている。
図8Dに示す斜線の領域が段差部43である。ここでは、角部33と重なる交差領域35のうち内側の頂点と外側の頂点の間の対角線で分けられる外側の頂点を含む領域に段差部43が形成される。なお、内側の頂点を含む領域は、辺部32と同じ厚みに設定され載置面34として機能する。
なお
図8Dでは、角部33が辺部32とは別部材で構成されているが、角部33が辺部32と一体的に構成されてもよい。
【0084】
このように、交差領域35の一部だけを段差部43とする構成であっても、角部33に発生する反発力を低減することが可能となり、ワークWの盛り上がりを抑制することが可能となる。また角部33には段差部43の他に載置面34が形成される。このため角部33はワークWに確実に密着することになり、真空リークの発生を十分に抑制することが可能である。
【0085】
図9は、反発力抑制部の他の構成例を示す模式図である。
図9では、反発力抑制部40として、角部33に配置され辺部32よりも反発力が低い弾性材料で構成される低反発部44が用いられる。低反発部44は、辺部32を構成する弾性材料よりも低反発な弾性材料を用いて構成される。例えば辺部32に用いられる材料よりも気孔量を多くして反発力を低減したゴムスポンジ等が低反発部44として用いられる。
【0086】
図9Aでは、2つの辺部32と角部33とが別々の部材で構成され、各部材を個別に取り付けてシール部30が構成される。角部33を構成する部材としては、辺部32よりも低反発な部材が用いられ、角部33全体が低反発部44となる。この場合、反発力の異なる材料を加工して、角部33及び辺部32となる部材を容易に製造することが可能となる。
図9Bでは、2つの辺部32を構成する部材のうち、一方の辺部32を構成する部材と一体的に角部33が形成される。例えば、辺部32を構成する部材のうち角部33となる部分に、より低反発な部材を接着して低反発部44が形成される。この場合、取り付けが必要な部材点数を少なくすることが可能となる。
【0087】
例えば、低反発部44(角部33)の厚みは、辺部32の厚みと等しく設定される。この場合、低反発部44の上側表面は、辺部32の上側表面とともに載置面34として機能する。またワークWが載置され真空吸着が行われている状態では、低反発部44(角部33)及び辺部32は同じ変位量で圧縮変形される。この時、低反発部44(角部33)における反発力は辺部32と比べ低いため、ワークWの隅の盛り上がりを抑制することが可能となる。
【0088】
なお低反発部44の位置や形状等は限定されない。例えば角部33に加え、2つの辺部32において角部33に接する部分にも低反発部44が設けられてもよい。また例えば、角部33の少なくとも1つに低反発部44が設けられてもよい。この場合でも、角部33における反発力が抑制され、ワークWの盛り上がりを抑制することが可能となる。
【0089】
図6~
図9を参照して説明したように、本実施形態では、シール部30に形成される角部33に対して、切り欠き41、段差部43、低反発部44等の反発力抑制部40が設けられる。このようなシール部30によりワークWを真空吸着して保持する構成とすることで、真空吸着した際にワークWの4隅の盛り上がりを抑制することが可能となる。この結果、ワークWを適切に平面保持することが可能となる。
【0090】
以上、本実施形態に係るワークステージ20では、ワークWを真空吸着する吸着エリア22を囲むように弾性部31からなるシール部30が配置される。シール部30を構成する角部33には反発力抑制部40が設けられる。これにより、角部33における反発力が抑制されワークWの盛り上がりを低減することが可能となる。この結果、平坦度が高い真空吸着を実現することが可能となる。
【0091】
図10は、比較例として挙げるシール部50を示す模式図である。
図10に示すシール部50に設けられる角部33は、辺部32と同様の材質で構成され、辺部32と同様の厚みであり、各辺は辺部32と同様の幅に設定される。つまり2つの辺部32の交差領域35の全面に、辺部32と同様の材質で角部33が構成される。この場合、シール部30が厚み方向に圧縮変形されると、2つの辺部32の横方向への膨らみが角部33に集中し、角部33が盛り上がることが考えられる。
【0092】
ワークステージ20には、載置されたワークWが確実に吸着保持され、吸着保持中のワークWが平面となることが求められる。しかし、
図10に示す例では、真空吸着されたワークWの4隅が盛り上がってしまい、ワークWの平面度が低下する可能性がある。近年では、配線の微細化や実装密度の高密度化に伴い、ワークWに露光されるパターンがより細かくなってきている。このため、例えばワークWの盛り上がりが僅かである場合でも、盛り上がった部分やその周辺では、露光などの加工処理を行う際にデフォーカスが発生して露光不良となる。その結果、歩留まりが悪化するという問題があった。
【0093】
本実施形態では、シール部30において盛り上がりを発生させやすい角部33に対して反発力抑制部40が設けられる。例えば、四隅に設けた切り欠き41、段差部43、及び低反発部44等が反発力抑制部40となる。これらの反発力抑制部40により、角部33からワークWに作用する反発力が抑制される。
【0094】
このように、反発力抑制部40が設けられたシール部30を導入することで、真空吸着によりワークWを保持するワークステージ20において、ワークWを真空吸着した場合に、4隅の盛り上がりを抑制し、ワークWを平面度よく吸着保持することが可能となる。この結果、デフォーカス等による露光不良を十分に抑制し、歩留まりを向上することが可能となる。
【0095】
ワークステージ20に吸着保持されて加工処理されるワークWの1つとして、プリント基板が挙げられる。プリント基板は、ガラスエポキシ等の樹脂基板に、回路等のパターンを形成加工することにより製作される。近年、プリント基板の適用される分野が広がり、柔らかく変形しやすい基板や、複雑な形状をした多数の切り欠きや貫通孔を有する基板など、様々な種類の基板が使用されるようになってきた。また、プリント基板は年々大型化しており、基板の反りや変形が発生しやすくなっている。
【0096】
本発明のワークステージ20によれば、反りや変形が大きく生じやすいワークWであっても、ワークWの四隅の盛り上がりを抑制し、ワークWを適切に平面保持することが可能となる。また、このようなワークステージ20を使用した露光装置によれば、高精度な露光を実現することができる。また、露光不良が抑制されるため、歩留まりを向上することが可能となる。
【0097】
<第2の実施形態>
本発明に係る第2の実施形態に係るワークステージについて説明する。これ以降の説明では、上記の実施形態で説明したワークステージ20における構成及び作用と同様な部分については、その説明を省略又は簡略化する。
【0098】
図11は、第2の実施形態に係るワークステージの構成例を示す模式図である。
図11Aは、ワークステージ220を分解した状態を示す模式的な斜視図である。また
図11Bは、ワークステージ220の構成例を示す模式的な断面図である。
図11に示すように、ワークステージ220は、基台223及び吸着板224により構成される吸着部221と、シール部230とを有する。このうち、基台223は、例えば
図2等を参照して説明した基台23と同様に構成される。
【0099】
図11Aに示すように、ワークステージ220では、シール部230は、吸着板224に取り付けられる。ここでは、基台223の凹部25を完全に覆う矩形形状の吸着板224の上側に、吸着面28(吸着エリア22)を囲うようにシール部230が配置される。またシール部230の4つの角部33には、それぞれ反発力抑制部40(ここでは円形の切り欠き41)が設けられる。これにより、4隅の盛り上がりを抑制することが可能となる。
【0100】
また吸着エリア22の周囲には、シール部230の下面230aが取付けられる取付部37が設けられる。取付部37は、吸着面28よりも低い段差として構成され、シール部230の下面230aは、吸着面28よりも低い位置に取り付けられる。また、シール部30は、取付部37に下面230aが取付けられた状態で上面230bが吸着面28よりも高く突出するように構成される。このような構成により、圧縮時のシール部230の厚みがキャンセルされ、ワークWを適正に真空吸着することが可能となる。
【0101】
このように、吸着板224にシール部230を設ける構成により、対応可能なワークWのサイズが広がる。例えば吸着エリア22及びシール部230の形状は、ワークステージ220に置かれるワークWの形に合わせて構成される。これにより、例えば基台223の凹部25の平面形状よりも小さいワークW等であっても、高い平面度で適正に真空吸着することが可能となる。
【0102】
<その他の実施形態>
本発明は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態を実現することができる。
【0103】
上記の実施形態では、基台に対して吸着板をネジ止めするように構成されたワークステージについて説明した(
図2及び
図11参照)。吸着板を固定する方法は限定されず、例えば真空吸着を利用して吸着板を固定する方法が用いられてもよい。
【0104】
図12Aは、他の実施形態に係るワークステージの構成例を示す模式図である。
ワークステージ320は、基台323及び吸着板324により構成される吸着部321と、シール部330とを有する。このうち、上記したワークステージに対して、主に基台323及び吸着板324の構成が異なる。また
図12Aでは、シール部330は、吸着板324を囲むように基台323に取り付けられる。
【0105】
基台323は、第1の凹部325と、第1の凸部326と、第1の真空導入路327と、第2の凹部355と、第2の凸部356と、第2の真空導入路357とを有する。
基台323の上側表面の中央部には第1の凹部325が形成され、第1の凹部325内には吸着板324を載せる複数の第1の凸部326と第2の凸部356とが形成されている。第2の凸部356は、第1の凹部325の中央部に設けられた環状の突出部分であり、その内側には第2の凹部355が形成される。
【0106】
第1の凹部325には、複数の第1の真空導入路327が設けられている。各第1の真空導入路327は、基台323に取り付けられた第1の真空系(配管L1)に接続される。配管L1に供給された真空またはエアーは、第1の真空導入路327から第1の凹部325に導かれる。
第2の凹部355には、複数の第2の真空導入路357が設けられている。各第2の真空導入路357は、基台323に取り付けられた第2の真空系(配管L2)に接続される。配管L2に供給された真空またはエアーは、第2の真空導入路357から第2の凹部355に導かれる。
なお配管L1(第1の真空系)及び配管L2(第2の真空系)に対する真空またはエアーの導入は、独立して制御可能である。
【0107】
また基台323の上側表面は精度の良い平面に仕上げられている。ここで上側表面とは、第1の凸部326の上面、第2の凸部356の上面、及び基台323の上側の外周面(第1の凹部325の縁を囲む面)でつくる面である。即ち、第1の凸部326の上面、第2の凸部356の上面、及び基台323の外周面とは同じ高さである。
【0108】
第1の凹部325、第1の凸部326、及び第1の真空導入路327は、例えば
図2に示す凹部25、凸部26、及び真空導入路27に対応する。従って、基台323は、
図2に示す基台23に、第2の凹部355、第2の凸部356、及び第2の真空導入路357を設け、第2の真空系である配管L2を接続した構成となっているともいえる。
【0109】
吸着板324は、基台323の第1の凹部325を完全に覆う薄い板状部材である。吸着板324は、吸着面28と、複数の真空吸着孔29とを有する。
吸着面28は、吸着エリア22を形成し、真空吸着時にワークWが保持される面となる。
複数の真空吸着孔29は、吸着面28に形成された貫通孔である。各真空吸着孔29は、上側から見た平面視において、第1の凹部325と重なる領域のうち、第2の凸部356と重なる固定用領域60(図中の点線の領域)を除く領域の全面に渡って設けられる。なお、固定用領域60には、貫通孔は設けられず、第2の凸部356(第2の凹部355)を完全にふさぐ領域となる。
【0110】
ここでワークステージ320の動作について説明する。ワークステージ320では、配管L1及びL2が閉じられており、真空やエアーの供給がない状態で、基台323の上側表面に吸着板324が載置される。このとき、吸着板324は、固定用領域60と第2の凸部356とが重なるように配置される。
吸着板324が載置された状態で、配管L2に真空が供給される。この結果、第2の真空導入路357を介して第2の凹部355に真空が導入され、吸着板324が真空吸着される。これにより、基台323に対して吸着板324を固定することが可能となる。
【0111】
吸着板324が固定された状態で、ワークWが吸着板324(吸着面28)上に配置される。この時ワークWは、吸着面28から浮いた状態でシール部330の載置面34により支持される。このようにワークWが載置された状態で、配管L1に真空が供給される。この結果、第1の真空導入路327を介して第1の凹部325に真空が導入され、ワークWが真空吸着孔29を介して吸着面28に真空吸着される。これにより、吸着板324に対してワークWを固定することが可能となる。
また、ワークWに対する露光等の処理が完了した場合、配管L1にエアーが供給され、ワークWの真空吸着が解除される。
【0112】
このようにワークWの真空吸着を実行している期間や、ワークWの真空吸着が解除されている期間にも、配管L2による真空引きが行われ、吸着板324は基台323に対して継続して固定される。
また、吸着板324を交換する場合には、配管L2による真空引きを停止し、配管L2からエアー等の供給が行われる。これにより、吸着板324を容易に取り外すことが可能である。
なお、吸着板324の固定用領域60には貫通孔等は設けられていないため、ワークWが、配管L2による真空引きにより吸着されるといったことはない。すなわち、吸着板324の真空吸着とワークWの真空吸着とは完全に独立して行うことが可能である。
【0113】
図12Bは、他の実施形態に係るワークステージの構成例を示す模式図であり、
図12Aにおけるシール部330の配置を変更したものである。
図12Bに示すワークステージ420では、シール部330は、吸着面28を囲むように吸着板324に取り付けられる。このようにシール部330を吸着板324に取り付けた構成であっても、吸着板324の真空吸着とワークWの真空吸着とは完全に独立して行うことが可能である。
【0114】
またワークステージ420では、吸着板324の平面形状が、例えば上側から見た基台323の外周部の平面形状と同形同大に設定される。これにより、基台323にシール部330を配置する場合よりもより大きなワークWを真空吸着することが可能となる。
【0115】
このように、ワークステージ320及び420では、吸着板324が基台323に対して裏面から真空吸着される。これにより、ネジ止め等が邪魔にならず、吸着板324(または基台323)の外周部の端まで吸着面28として利用することが可能となる。
また、吸着板324の交換に際して、ネジ止め等の作業が不要となり、狭い領域でも容易に吸着板324の交換作業等を行うことが可能となる。
【0116】
上記では、平面形状が矩形形状のシール部について、4つの角部33の全てに反発力抑制部40が設けられる構成について説明した。必ずしも反発力抑制部40を4つの角部33の全てに設ける必要はなく、例えばワークWの材質や厚み等に応じて、4つの角部33の少なくとも1つに反発力抑制部40が設けられてもよい。このような構成であっても、反発力抑制部40が設けられた角部33では、ワークWの盛り上がりを抑制することが可能である。
【0117】
また角部33ごとに、特性や種類の異なる反発力抑制部40が設けられてもよい。例えば、反発力抑制部40として、角部33ごとに大きさや形状の異なる切り欠き41等が設けられてもよい。また例えば、切り欠き41、段差部43、低反発部44といった異なる種類の反発力抑制部40が混在して設けられてもよい。
この他、反発力抑制部40を設ける角部33の選択や、各角部33に設けられる反発力抑制部40の特性や種類等は限定されず、ワークWの種類や要求される平面度等に応じて適宜設定されてよい。
【0118】
図13は、他の実施形態に係るシール部の構成例について説明する模式図である。
上記では、主に平面形状が矩形形状となるシール部について説明した。シール部の形状は限定されない。
【0119】
図13には、矩形形状の一辺に内側に凹んだ凹状領域51(図中の点線の領域)が形成された変形多角形形状のシール部430が模式的に図示されている。ここでは、凹状領域51は、4つの角部33によって囲まれた矩形状の領域として構成される。この場合、シール部430には、凹状領域51以外に形成された角部33を含め全体で8つの角部33が形成される。
【0120】
このような場合でも、各角部33に対して反発力抑制部40(ここでは円形の切り欠き41)を設けることで、角部33における反発力が抑制され、ワークWの盛り上がりを抑制することが可能となる。これにより外周に切り欠きがある複雑な形状のワークWであっても、高い平面度で適正に真空吸着することが可能となる。
【0121】
なお凹状領域51を覆うようにワークWが配置されてもよい。この場合、凹状領域51は、ワークWを搬送する際にワークWを挟む治具等が入り込むスペースとして用いることが可能である。このように、シール部430の形状が搬送系等を導入するために変形するような場合であっても、反発力抑制部40を設けることで、変形した部分(凹状領域51)でのワークWの盛り上がりを十分に抑制することが可能となる。
【0122】
この他、シール部の形状は限定されない。本発明は、角部が形成される形状であれば、任意の形状に適用可能である。例えば角部の角度(辺部の交差角度)は90度である必要はなく、例えばひし形、平行四辺形のシール部が構成されてもよい。また例えば3角形や5角形といった多角形形状のシール部が構成されてもよい。また辺部の形状も限定されず、例えば辺部の一部が曲線で形成されていてもよい。
【0123】
図6等を参照して説明した反発力抑制部では、主に切り欠きや段差を角部に形成することで、角部における載置面(ワークに対する接触面積)を小さくする構成について説明した。これに限定されず、例えば角部の上側表面に斜面や溝を形成して角部における載置面を小さくしてもよい。また角部の載置面を残したまま、角部を構成する材料の内部に空洞や切込み等を形成して角部における反発力を小さくしてもよい。この他、角部における反発力を抑制可能な任意の構造が反発力抑制部として用いられてよい。
【0124】
上記の実施形態では、主に露光装置に用いるワークステージ(保持機構)を例にして説明した。露光装置以外であっても、基板を真空吸着保持して処理する装置であれば、本発明に係るワークステージ(保持機構)を使用することができる。例えば蒸着、エッチング、スパッタリング、研磨、切削といった種々の加工処理を行う装置において、本保持機構が利用されてよい。これにより高い平面度でワークWが保持されるため、各加工処理を高精度に行うことが可能となる。
【0125】
本開示において、説明の理解を容易とするために、「略」「ほぼ」「おおよそ」等の文言が適宜使用されている。一方で、これら「略」「ほぼ」「おおよそ」等の文言を使用する場合と使用しない場合とで、明確な差異が規定されるわけではない。
すなわち、本開示において、「中心」「中央」「均一」「等しい」「同じ」「直交」「平行」「対称」「延在」「軸方向」「円柱形状」「円筒形状」「リング形状」「円環形状」等の、形状、サイズ、位置関係、状態等を規定する概念は、「実質的に中心」「実質的に中央」「実質的に均一」「実質的に等しい」「実質的に同じ」「実質的に直交」「実質的に平行」「実質的に対称」「実質的に延在」「実質的に軸方向」「実質的に円柱形状」「実質的に円筒形状」「実質的にリング形状」「実質的に円環形状」等を含む概念とする。
例えば「完全に中心」「完全に中央」「完全に均一」「完全に等しい」「完全に同じ」「完全に直交」「完全に平行」「完全に対称」「完全に延在」「完全に軸方向」「完全に円柱形状」「完全に円筒形状」「完全にリング形状」「完全に円環形状」等を基準とした所定の範囲(例えば±10%の範囲)に含まれる状態も含まれる。
従って、「略」「ほぼ」「おおよそ」等の文言が付加されていない場合でも、いわゆる「略」「ほぼ」「おおよそ」等を付加して表現され得る概念が含まれ得る。反対に、「略」「ほぼ」「おおよそ」等を付加して表現された状態について、完全な状態が必ず排除されるというわけではない。
【0126】
本開示において、「Aより大きい」「Aより小さい」といった「より」を使った表現は、Aと同等である場合を含む概念と、Aと同等である場合を含なまい概念の両方を包括的に含む表現である。例えば「Aより大きい」は、Aと同等は含まない場合に限定されず、「A以上」も含む。また「Aより小さい」は、「A未満」に限定されず、「A以下」も含む。
本技術を実施する際には、上記で説明した効果が発揮されるように、「Aより大きい」及び「Aより小さい」に含まれる概念から、具体的な設定等を適宜採用すればよい。
【0127】
以上説明した本技術に係る特徴部分のうち、少なくとも2つの特徴部分を組み合わせることも可能である。すなわち各実施形態で説明した種々の特徴部分は、各実施形態の区別なく、任意に組み合わされてもよい。また上記で記載した種々の効果は、あくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果が発揮されてもよい。
【符号の説明】
【0128】
W…ワーク
10…光照射部
11…マスクステージ
20、220、320、420…ワークステージ
21、221、321…吸着部
22…吸着エリア
23、223、323…基台
24、224、324…吸着板
30、230、330、430…シール部
31…弾性部
32…辺部
33…角部
34…載置面
35…交差領域
40…反発力抑制部
100…露光装置