(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163259
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241114BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B41J2/01 307
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/01 125
B41J2/01 305
B41J2/165 101
B41J2/01 103
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024152716
(22)【出願日】2024-09-04
(62)【分割の表示】P 2020100439の分割
【原出願日】2020-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 尭
(72)【発明者】
【氏名】石川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 剛
(72)【発明者】
【氏名】栗田 義之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 祐未
(57)【要約】
【課題】設置スペースの拡大や装置高さの増大等の装置大型化を回避して、加熱部を配置することが可能な技術を提供する。
【解決手段】液体を吐出する吐出口が設けられた吐出口面を有し、前記吐出口から記録媒体に液体を吐出することで記録領域において記録媒体に画像を記録する記録部と、前記記録部によって記録された記録媒体を排出する排出ローラと、前記記録領域から前記排出ローラへ搬送するための第1搬送路と、前記第1搬送路に配置され、前記記録部によって記録された記録媒体を乾燥させる乾燥部と、を備える記録装置であって、前記吐出口面は、前記記録領域に対向する第1位置にあるときに前記記録装置の設置面に平行な方向に対して傾斜している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する吐出口が設けられた吐出口面を有し、前記吐出口から記録媒体に液体を吐出することで記録領域において記録媒体に画像を記録する記録部と、
前記記録部によって記録された記録媒体を排出する排出ローラと、
前記記録領域から前記排出ローラへ搬送するための第1搬送路と、
前記第1搬送路に配置され、前記記録部によって記録された記録媒体を乾燥させる乾燥部と、を備える記録装置であって、
前記吐出口面は、前記記録領域に対向する第1位置にあるときに前記記録装置の設置面に平行な方向に対して傾斜していることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記記録部を通過した記録媒体が前記乾燥部を通過するまでの時間が、前記記録部で記録する画像の情報に基づいて設定されることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記乾燥部において、記録媒体を加熱するか否かを選択する選択手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記吐出口面に向かって移動して前記吐出口をキャップするキャップ部材を備え、
前記記録部は、前記第1位置と前記吐出口面が前記キャップ部材によってキャップされる第2位置との間を移動することを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記記録部が前記第2位置の位置する場合、前記乾燥部と前記記録部は水平方向において異なる位置にあることを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記乾燥部は、記録媒体に加熱部材を接触させる接触方式であることを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記乾燥部は、記録媒体と接触しない非接触方式であることを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項8】
前記乾燥部は、前記排出ローラより下方に位置することを特徴とする請求項1ないし7の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項9】
前記排出ローラを含む前記第1搬送路の少なくとも一部を外部に露出させる第1カバーを備えることを特徴とする請求項1ないし8の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項10】
前記乾燥部を含む前記第1搬送路の少なくとも一部を外部に露出させる第2カバーを備えることを特徴とする請求項1ないし9の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項11】
前記記録領域と前記排出ローラとの間の分岐部で前記第1搬送路から分岐し、前記記録領域と記録媒体の収容部との間において前記第1搬送路に合流する第2搬送路を備えることを特徴とする請求項1ないし10の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項12】
前記排出ローラで排出された記録媒体が積載される排出トレイをさらに備え、
前記排出トレイは、鉛直方向において前記記録部よりも上方に位置することを特徴とする請求項1ないし11の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項13】
前記記録部は、フルラインタイプの記録ヘッドであることを特徴とする請求項1ないし12の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項14】
前記排出ローラよりも上方に位置し、原稿の画像を読み取る画像読取部を備え、
前記画像読取部が読み取った画像を前記記録部で記録媒体に記録することを特徴とする請求項1ないし13の何れか1項に記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクが吐出された記録媒体を加熱することにより乾燥を促進させるための加熱部を設けたインクジェット方式の画像記録装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクを吐出するフルライン式のインクジェットヘッドを搭載したインクジェット方式の画像記録装置がある。例えば、特許文献1には、フルライン式のインクジェットヘッドが、記録位置と待機位置及びメンテナンス位置との間で移動可能に構成された画像記録装置が開示されている。該画像記録装置においては、排出トレイが、ヘッドの移動軌跡と干渉しない様にヘッドの移動軌跡よりも鉛直上方に配され、記録部から排出部に鉛直上方に記録媒体を搬送する搬送経路が形成される。搬送経路と排出部の更に上方には、自動給紙される原稿の読み取りを行うADF(オートドキュメントフィーダ)と、ユーザによって原稿台に置かれた原稿の読み取り(スキャン)を行うFBS(フラットベッドスキャナ)と、を備えたスキャナ部が設置される。また、特許文献2には、記録部より搬送方向下流にインクの付着により半乾きとなった記録媒体を乾燥させる乾燥部を設けるインクジェット記録装置が開示されている。乾燥部で記録媒体を乾燥させることで、記録媒体の物性変化やカール、コックリングといった変形を抑制し、排出した際の整列性を向上させる、あるいは後処理を容易に行えるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-130936号
【特許文献2】米国特許出願公開第2018/0272752号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された構成に対して加熱部を追加する場合、レイアウトによっては水平方向に搬送経路を長くしなければならなくなり、製品サイズが大きくなる、特に装置の設置スペースが拡大してしまうという課題があった。また、ヘッドの移動軌跡と干渉しない様にヘッドの移動軌跡よりも鉛直上方に設置しようとすると、その更に上方に配されるスキャナ部の位置を高くしなければならなくなり、原稿面に紙を出し入れする際のユーザビリティが悪くなるといった課題がある。一方、特許文献2には、加熱部の配置についての記載はなく、設置サイズを小さくするため、あるいは原稿面を低く維持するための具体的な加熱部の構成、配置について何ら開示されていない。
【0005】
本発明は、設置スペースの拡大や装置高さの増大等の装置大型化を回避して、加熱部を配置することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の記録装置は、
液体を吐出する吐出口が設けられた吐出口面を有し、前記吐出口から記録媒体に液体を吐出することで記録領域において記録媒体に画像を記録する記録部と、
前記記録部によって記録された記録媒体を排出する排出ローラと、
前記記録領域から前記排出ローラへ搬送するための第1搬送路と、
前記第1搬送路に配置され、前記記録部によって記録された記録媒体を乾燥させる乾燥部と、を備える記録装置であって、
前記吐出口面は、前記記録領域に対向する第1位置にあるときに前記記録装置の設置面
に平行な方向に対して傾斜していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、設置スペースの拡大や装置高さの増大等の装置大型化を回避して、加熱部を配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1のインクジェット記録装置の内部構成図(待機状態)である。
【
図3】記録装置における制御構成を示すブロック図である。
【
図4】実施例1のインクジェット記録装置の内部構成図(記録状態)である。
【
図5】実施例1のインクジェット記録装置の内部構成図(メンテナンス状態)である。
【
図7】実施例1のインクジェット記録装置の内部構成図(外装扉を開いた状態)である。
【
図8】比較例のインクジェット記録装置の内部構成例図である。
【
図9】実施例1の記録ユニットと加熱ユニットの位置関係の図である。
【
図10】実施例2のインクジェット記録装置の内部構成図(記録状態)である。
【
図11】実施例3のインクジェット記録装置の内部構成図(記録状態)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施例に限定する趣旨のものではない。
【0010】
<実施例1>
図1は、本発明の実施例1のインクジェット記録装置1(以下、記録装置1)の内部構成図である。以降、図においてx方向は水平方向、y方向(紙面垂直方向)は後述する記録ユニット8において吐出口が配列する方向、z方向は鉛直方向をそれぞれ示す。
【0011】
記録装置1は、画像記録部(画像記録装置)としてのプリント部2と、画像読取部(画像読取装置)としてのスキャナ部3を備える複合機(画像形成装置)である。記録装置1は、記録動作と読取動作に関する様々な処理を、プリント部2とスキャナ部3で個別にあるいは連動して実行することができる。スキャナ部3は、ADF(オートドキュメントフィーダ)とFBS(フラットベッドスキャナ)を備えており、ADFで自動給紙される原稿の読み取りと、ユーザによってFBSの原稿台に置かれた原稿の読み取り(スキャン)を行うことができる。
図1は、記録装置1が記録動作も読取動作も行っていない待機状態にあるときを示す。
【0012】
プリント部2において、筐体4の鉛直方向下方の底部には、記録媒体(カットシート)Sを収容するための第1カセット5Aと第2カセット5Bが着脱可能に設置されている。第1カセット5AにはA4サイズまでの比較的小さな記録媒体が、第2カセット5BにはA3サイズまでの比較的大きな記録媒体が、平積みに収容されている。第1カセット5A近傍には、収容されている記録媒体Sを1枚ずつ分離して給送するための第1給送ユニット6Aが設けられている。同様に、第2カセット5B近傍には、第2給送ユニット6Bが設けられている。記録動作が行われる際にはいずれか一方のカセットから選択的に記録媒体Sが給送される。
【0013】
本実施例の記録ユニット8は、フルラインタイプのカラーインクジェット記録ヘッドと、それが搭載されたキャリッジ部品を含み、記録ヘッドとともに本体に対して相対移動可能に構成されたユニットのことである。記録ヘッドには、記録データに従ってインクを吐出する吐出口が、
図1におけるy方向に沿って記録媒体Sの幅に相当する分だけ複数配列されている。記録ユニット8が待機位置にあるとき、記録ユニット8の吐出口面8aは、
図1のように鉛直下方を向き、キャップユニット10によってキャップされている。記録動作を行う際は、後述するプリントコントローラ202によって、吐出口面8aがプラテン9と対向するように記録ユニット8の向きが変更される。
【0014】
プラテン9は、y方向に延在する平板によって構成され、記録ユニット8によって記録動作が行われる記録媒体Sを背面から支持する。以下、記録ユニット8に対しプラテン9が対向する搬送路の領域を記録領域P(第1搬送路における記録部)とする。記録ユニット8の待機位置から記録位置への移動については、後に詳しく説明する。
【0015】
また、本実施例でいう記録ユニット8には、待機位置から記録位置へと吐出口面8aとともにプリント部2に対して相対移動する全ての部品が含まれる。
【0016】
搬送ローラ7、排出ローラ12、ピンチローラ7a、拍車7b、フラッパ11は、記録媒体Sを所定の方向に導くための搬送機構である。搬送ローラ7は、記録領域Pの上流側および下流側に配され、不図示の搬送モータによって駆動される駆動ローラである。ピンチローラ7aは、搬送ローラ7と共に記録媒体Sをニップして回転する従動ローラである。排出ローラ12は、プリント部2において筐体4の鉛直方向上方に位置し、搬送ローラ7の下流側に配され、不図示の搬送モータによって駆動される駆動ローラであり、第1搬送路20における排出部(排紙部)を形成する。拍車7bは、記録領域Pの下流側における搬送ローラ7または排出ローラ12に対向して配されるものであり、搬送ローラ7あるいは排出ローラ12の駆動によって従動し、搬送ローラ7及び排出ローラ12と共に記録媒体Sを挟持して搬送する。フラッパ11は、両面記録動作の際、第1面の記録後に後述の第2搬送路21に記録媒体Sを案内するための部材であり、不図示のアクチュエータにより駆動される。排出トレイ13は、プリント部2において筐体4の鉛直方向最上方に位置し、記録動作が完了し排出ローラ12によって排出された記録媒体Sを積載保持するためのトレイである。
【0017】
上述の搬送機構により記録媒体Sをカセットから排出トレイ13まで搬送する搬送路は、第1給送路18、第2給送路19、第1搬送路20および第2搬送路21に分類される。第1給送路18は、第1給送ユニット6Aから記録領域Pの上流までの搬送路である。第2給送路19は、第2給送ユニット6Bから記録領域Pの上流までの搬送路である。第1搬送路20は、記録領域Pの下流から記録領域Pに対して鉛直上方に位置する排出トレイ13に向けて形成される搬送路である。
【0018】
加熱ユニット22は、第1搬送路20内の鉛直上方に記録媒体Sを搬送する第1区間24に配されて、第1搬送路20における加熱部を形成する。加熱ユニット22は、記録動作によって記録媒体Sに付着したインクの水分による記録媒体Sの変形を抑制すべく、記録動作が完了した記録媒体Sに対して熱を加えることで、乾燥を促進させるものである。これにより、搬送路における記録媒体Sの詰まりが防止され、排出トレイ13における整列性が向上される。また、加熱ユニット22は、後述する記録ユニット8の記録位置からメンテナンス位置までの移動軌跡が占める高さ内に配される。こうすることで、第1搬送路20において、記録領域Pから加熱ユニット22までの搬送路長L1が、加熱ユニット22から排出ローラ12までの搬送路長L2に対して、L1<L2となるように構成される。本実施例における記録装置1は、記録媒体Sを加熱乾燥させる搬送経路を主として使用することを想定して構成されているため、L1<L2とすることで記録のスループット
を向上することができる。加熱ユニット22については後に詳細を説明する。
【0019】
本実施例における第2搬送路21は、第1搬送路20における加熱部と排出部との間のフラッパ11が配された分岐部により分岐し、記録領域Pの上流側の合流部で第1搬送路20に合流するように形成された搬送路である。第2搬送路21は、第1搬送路20内の加熱ユニット22を有する第1区間24と並行する第2区間25を含んでいる。本実施例において、第2搬送路21は、両面記録の際に第2面を記録するために第1面記録後の記録媒体Sを反転させて記録部に戻す反転搬送路として用いられる。
【0020】
インクタンクユニット14は、記録ユニット8へ供給される4色のインクをそれぞれ貯留する。インク供給ユニット15は、インクタンクユニット14と記録ユニット8を接続する流路の途中に設けられ、インクタンクユニット14から記録ユニット8へインクを供給する。
【0021】
メンテナンスユニット16は、キャップユニット10とワイピングユニット17を備え、所定のタイミングでこれらを作動させて、記録ユニット8に対するメンテナンス動作を行う。メンテナンス動作については後に詳しく説明する。
【0022】
スキャナ部3は、被読取媒体Cを読取るための原稿面23を有している。スキャナ部3は、図示しないヒンジによって原稿面23が露出するように開閉可能で、原稿面23を露出させることで、ユーザが被読取媒体Cを原稿面23にセットすることができるようになる。この原稿面23の高さは、ユーザの被読取媒体Cの出し入れがしやすいという操作性の観点から、適切な高さの範囲が限定されている。
【0023】
図2は、本実施例の加熱ユニット22の詳細断面図を示す。加熱ユニット22は、発熱体51と加圧ローラ56とを含み、これらは最大サイズの記録媒体Sの幅をカバーするようにy方向に延設されている。発熱体51は、発熱素子54を支持する支持部材53を含む。発熱素子54は例えばセラミックヒータであり、y方向に延設されている。発熱素子54の温度は、サーミスタに代表される温度センサ55により検知され、検知結果に基づき発熱素子54の駆動が制御される。支持部材53は、さらにフィルム52を支持する。フィルム52は、円筒形状に構成され、Y方向に延設されている。フィルム52は、支持部材53の周りを回転自在に支持部材53に支持され、かつ、加圧ローラ56と発熱素子54との間に介在している。フィルム52は、例えば、膜厚が10μm以上100μm以下の単層フィルム或いは複合層フィルムである。単層フィルムの場合、その材料は、例えば、PTFE、PFA、FEPである。複合層フィルムの場合、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK、PES、PPS等の層に、PTFE、PFA、FEP等を被覆するか、或いは、コーティングを施した層構造のフィルムである。
【0024】
なお、発熱体51は、上述の構成に限られない。例えば、中空の金属の芯軸内部にハロゲンヒータなどの発熱素子を備え、芯軸の周囲をシリコンゴム等の弾性体で被覆した構造のものであってもよい。
【0025】
加圧ローラ56は、芯金56aの周面をシリコンゴム等の弾性体56bで被覆して構成される。加圧ローラ56は、フィルム52を介して、所定の押圧力をもって発熱体51に圧接され、加圧ローラ56と発熱体51とによってローラ56とフィルム52との間にニップ部が形成される。加圧ローラ56はモータを駆動源として回転され、フィルム52はローラ56に連れ回る。このような構成により、記録媒体Sはニップ部において搬送されつつ、発熱体51によって加熱された加熱部材としてのフィルム52と接触することで加熱され、記録媒体Sの乾燥を促進することができる。
【0026】
なお、加熱乾燥部としての加熱ユニット22は、本実施例に示した接触加熱方式に限定されない。例えば、温風を記録媒体Sに吹き付けたり(温風方式)、記録媒体Sの近傍に赤外線ヒータを設けることで、記録媒体Sと接触せずに乾燥を促進するもの(非接触加熱方式)であってもよい。
【0027】
図3は、記録装置1における制御構成を示すブロック図である。制御構成は、主にプリント部2を統括するプリントエンジンユニット200と、スキャナ部3を統括するスキャナエンジンユニット300と、記録装置1全体を統括するコントローラユニット100によって構成されている。プリントコントローラ202は、コントローラユニット100のメインコントローラ101の指示に従ってプリントエンジンユニット200の各種機構を制御する。スキャナエンジンユニット300の各種機構は、コントローラユニット100のメインコントローラ101によって制御される。以下に制御構成の詳細について説明する。
【0028】
コントローラユニット100において、CPUにより構成されるメインコントローラ101は、ROM107に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM106をワークエリアとしながら記録装置1全体を制御する。例えば、ホストI/F102またはワイヤレスI/F103を介してホスト装置400から印刷ジョブが入力されると、メインコントローラ101の指示に従って、画像処理部108が受信した画像データに対して所定の画像処理を施す。そして、メインコントローラ101はプリントエンジンI/F105を介して、画像処理を施した画像データをプリントエンジンユニット200へ送信する。
【0029】
なお、記録装置1は無線通信や有線通信を介してホスト装置400から画像データを取得しても良いし、記録装置1に接続された外部記憶装置(USBメモリ等)から画像データを取得しても良い。無線通信や有線通信に利用される通信方式は限定されない。例えば、無線通信に利用される通信方式として、Wi-Fi(Wireless Fidelity)(登録商標)やBluetooth(登録商標)が適用可能である。また、有線通信に利用される通信方式としては、USB(Universal Serial Bus)等が適用可能である。また、例えばホスト装置400から読取コマンドが入力されると、メインコントローラ101は、スキャナエンジンI/F109を介してこのコマンドをスキャナ部3に送信する。
【0030】
操作パネル104は、ユーザが記録装置1に対して入出力を行うための機構である。ユーザは、操作パネル104を介してコピーやスキャン等の動作を指示したり、印刷モードを設定したり、記録装置1の情報を認識したりすることができる。
【0031】
プリントエンジンユニット200において、CPUにより構成されるプリントコントローラ202は、ROM203に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM204をワークエリアとしながら、プリント部2が備える各種機構を制御する。コントローラI/F201を介して各種コマンドや画像データが受信されると、プリントコントローラ202は、これを一旦RAM204に保存する。記録ユニット8が記録動作に利用できるように、プリントコントローラ202は画像処理コントローラ205に、保存した画像データを記録データへ変換させる。
【0032】
記録データが生成されると、プリントコントローラ202は、ヘッドI/F206を介して記録ユニット8に記録データに基づく記録動作を実行させる。この際、プリントコントローラ202は、搬送制御部207を介して
図1に示す給送ユニット6A、6B、搬送ローラ7、排出ローラ12、フラッパ11を駆動して、記録媒体Sを搬送する。プリントコントローラ202の指示に従って、記録媒体Sの搬送動作に連動して記録ユニット8に
よる記録動作が実行され、印刷処理が行われる。
【0033】
加熱ユニット制御部211は、記録媒体Sの乾燥加熱を行う場合において加熱ユニット22の発熱素子54の加熱や加圧ローラ56の駆動制御を行うものである。記録媒体Sの乾燥加熱を行う場合は、例えば、記録媒体Sが加熱ユニット22に到達する前に、予め発熱素子54の加熱や、加圧ローラ56の駆動を行う。記録媒体Sに対し加熱をするか否かは、操作パネル104上でのユーザ操作や記録媒体の種類に応じて選択可能である。すなわち、加熱乾燥の実施有無は、例えば、第1面、第2面における記録動作の有無や、記録媒体Sの種類、記録媒体Sへのインク吐出量に応じて選択される。加熱乾燥に適さない記録媒体Sとしては、例えばOHPフィルムのような感熱シートや、表面にコート層のある光沢紙、糊付きの封筒などが考えられる。なお、記録媒体Sの加熱乾燥有無はこれに限らず操作パネル104によってユーザが任意に選択することも可能である。
【0034】
ヘッドキャリッジ制御部208は、記録装置1のメンテナンス状態や記録状態といった動作状態に応じて記録ユニット8の向きや位置を変更する。インク供給制御部209は、記録ユニット8へ供給されるインクの圧力が適切な範囲に収まるように、インク供給ユニット15を制御する。メンテナンス制御部210は、記録ユニット8に対するメンテナンス動作を行う際に、メンテナンスユニット16におけるキャップユニット10やワイピングユニット17の動作を制御する。
【0035】
スキャナエンジンユニット300においては、メインコントローラ101が、ROM107に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM106をワークエリアとしながら、スキャナコントローラ302のハードウェアリソースを制御する。これにより、スキャナ部3が備える各種機構は制御される。例えば、コントローラI/F301を介してメインコントローラ101がスキャナコントローラ302内のハードウェアリソースを制御することにより、ユーザがADFに搭載した原稿を、搬送制御部304を介して搬送し、センサ305によって読み取る。そして、スキャナコントローラ302は読み取った画像データをRAM303に保存する。なお、プリントコントローラ202は、上述のように取得された画像データを記録データに変換することで、記録ユニット8に、スキャナコントローラ302で読み取った画像データに基づく記録動作を実行させることが可能である。
【0036】
(記録ユニット8の姿勢変化)
図4は、記録装置1が記録状態にあるときを示す。
図1に示した待機状態と比較すると、キャップユニット10が記録ユニット8の吐出口面8aから離間し、吐出口面8aがプラテン9と対向している。本実施例において、プラテン9の平面は水平方向に対して約45度傾いており、記録位置における記録ユニット8の吐出口面8aも、プラテン9との距離が所定値に維持されるように水平方向に対して約45度傾いている。
【0037】
記録ユニット8を、
図1に、示す待機位置から
図4に示す記録位置に移動させる際、プリントコントローラ202は、メンテナンス制御部210を用いて、キャップユニット10を
図4に示す退避位置まで降下させる。これにより、記録ユニット8の吐出口面8aは、キャップ部材10aと離間する。その後、プリントコントローラ202は、ヘッドキャリッジ制御部208を用いて記録ユニット8の鉛直方向の高さを調整しながら45度回転させ、吐出口面8aをプラテン9と対向させる。記録動作が完了し、記録ユニット8が記録位置から待機位置に移動する際は、プリントコントローラ202によって上記と逆の工程が行われる。
【0038】
記録ユニット8の位置(姿勢)を、待機状態、メンテナンス状態、あるいは記録状態に変化させる駆動機構としては、特定のものに限定されるものではなく、従来既知の構成を
適宜用いることができる。例えば、記録装置1の筐体4に、記録ユニット8の長手両端の被ガイド部を係止し案内するガイド溝を設け、該ガイド溝により画定される案内軌跡に沿って記録ユニット8を移動させる構成である。記録ユニット8を移動させる駆動力は、例えば、装置本体側に回転可能に設けたカム形状の作用部を、記録ユニット8の被作用部に当接させ、動力源としてモータが上記作用部を回転駆動する構成により提供することができる。モータによる作用部の回転により、作用部による被作用部の押し込み量が変化することで、記録ユニット8をガイド溝に沿って移動させることができる。また、記録位置と待機位置との間の記録ユニット8の角度変化(姿勢変化)は、被ガイド部がガイド溝の案内方向に対して角度を変化させながら案内されるように構成することで実現することができる。あるいは、案内経路の終端において被ガイド部がガイド溝内で回転するような回転力を記録ユニット8に付与することで実現することができる。例えば、被ガイド部とガイド溝との係合形状を工夫したり、あるいは、回転の起点を作る突当部を配置し、案内の途中で該突当部が記録ユニット8に突き当たることで、そのような回転動作が実現可能である。
【0039】
(記録媒体の搬送経路)
次に、プリント部2における記録媒体Sの搬送経路について説明する。記録コマンドが入力されると、プリントコントローラ202は、まず、メンテナンス制御部210およびヘッドキャリッジ制御部208を用いて、記録ユニット8を
図4に示す記録位置に移動する。また、プリントコントローラ202は、加熱ユニット制御部211を用いて加熱ユニット22における発熱体51の加熱および加圧ローラ56の駆動を行い、記録媒体の加熱を行える状態とする。その後、プリントコントローラ202は、搬送制御部207を用い、記録コマンドに従って第1給送ユニット6Aおよび第2給送ユニット6Bのいずれかを駆動し、記録媒体Sを給送する。
【0040】
第1給送ユニット6Aを動作させた場合は、第1カセット5A内の1番上に積載された記録媒体Sが、第1給送ユニット6Aによって2枚目以降の記録媒体から分離される。そして、搬送ローラ7とピンチローラ7aにニップされながら、記録領域Pに向けて第1給送路18を搬送される。第2給送ユニット6Bを動作させた場合は、第2カセット5B内の1番上に積載された記録媒体Sが、第2給送ユニット6Bによって2枚目以降の記録媒体から分離される。そして、搬送ローラ7とピンチローラ7aにニップされながら、記録領域Pに向けて第2給送路19を搬送される。
【0041】
記録領域Pでは、記録ユニット8の吐出口面8aに設けられた複数の吐出口から記録媒体Sに向けてインクが吐出される。インクが付与される領域の記録媒体Sは、プラテン9によってその背面が支持されており、吐出口面8aと記録媒体Sの距離が一定に保たれている。インクが付与された後の記録媒体Sは、搬送ローラ7と拍車7bによって第1搬送路20を案内され、第1搬送路20内の第1区間24を通って鉛直方向上方へ搬送され、加熱ユニット22へ突入する。インクが付与された記録媒体Sは、加熱ユニット22を通過することで乾燥が促進された状態となる。
【0042】
このとき、記録媒体Sにインクが付与されてから加熱ユニット22に突入する間の時間が短いと、記録媒体Sの内部にインクが浸透しきらず表面に液体インクが残った状態で加熱ユニット22によってニップされることになる。そうすると、加熱ユニット22のフィルム52にインクが転写して付着してしまうことがある。フィルム52に付着したインクは、記録媒体Sに再転写することで画像汚れの原因となる。逆に、記録媒体Sにインクが付与されてから加熱ユニット22に突入する間の時間が長いと、記録媒体Sにインクが浸透しすぎてしまい、浸透した部分だけ膨潤するため記録媒体Sのインクを付与した側が波打つような変形が起きる。このような変形が発生した状態のまま、加熱ユニット22でニップされると記録媒体Sにしわや折れが発生する原因となる。こうした問題を避けるため
、プリントコントローラ202は、画像処理部205で記録コマンドにより指示された画像を判定し、搬送制御部207を用いて記録領域Pから加熱ユニット22を通過するまでの搬送時間を適切に制御する。例えば、記録媒体Sやインクの種類、記録媒体Sに記録される画像の情報(インクの付着量)などの情報に基づいて、搬送時間の好ましい所定の範囲を確定し、搬送時間がその時間の範囲内に収まるように制御する。
【0043】
記録媒体Sは、加熱ユニット22を通過した後、先端が右に傾いているフラッパ11の左側を通り、排出ローラ12と拍車7bによって排出トレイ13に排出される。排出された記録媒体Sは、記録ユニット8によって画像が記録された面を下にした状態で、排出トレイ13上に保持される。この場合も、記録媒体Sが加熱ユニット22を通過してから排出トレイ13に排出されるまでの時間が短いと、種々の不具合の発生が懸念される。例えば、記録媒体Sのインクが乾燥しきれずに先行して排出トレイ13に排出され積載されていた記録媒体の裏面にインクが転写して付着したり、記録媒体同士の摩擦係数が増え、排紙整列性が悪化したりすることがある。そのため、プリントコントローラ202は、画像処理部205で記録コマンドにより指示された画像を判定し、搬送制御部207を用いて、加熱ユニット22を通過してから排出トレイ13に排出されるまでの搬送時間を適切に制御する。
【0044】
両面記録を行う場合を説明する。記録ユニット8による第1面への記録動作が完了し、記録媒体Sの後端がフラッパ11を通過すると、プリントコントローラ202は、搬送ローラ7、排出ローラ12を逆回転させて記録媒体Sを記録装置1の内部へ搬送する。この際、フラッパ11は、不図示のアクチュエータによってその先端が左側に傾くように制御される。このフラッパ11の切換えと搬送ローラ7等の逆回転動作とを含むスイッチバック動作により、記録媒体Sは、先端(第1面の記録動作における後端)がフラッパ11の右側を通過することになり、第2搬送路21へ案内され、再び記録領域Pの上流に搬送される。これにより記録媒体Sは被記録面が第1面から第2面に反転した状態となり、記録ユニット8の吐出口面8aに、記録媒体Sの第2面が対向する。その後の搬送経路は、上述の第1面記録の場合と同様である。この際、フラッパ11は、不図示のアクチュエータにより先端が右側に傾いた位置に移動するように制御される。なお、各搬送路に配置された複数の搬送ローラ7において、正逆回転可能に構成するローラは、上記スイッチバック動作に関わるローラのみとしてもよい。
【0045】
(メンテナンス)
次に、記録ユニット8に対するメンテナンス動作について説明する。
図1でも説明したように、本実施例のメンテナンスユニット16は、キャップユニット10とワイピングユニット17とを備え、所定のタイミングにこれらを作動させてメンテナンス動作を行う。
【0046】
図5は、記録装置1がメンテナンス状態のときの図である。記録ユニット8を
図1に示す待機位置から
図5に示すメンテナンス位置に移動する際、プリントコントローラ202は、記録ユニット8を鉛直方向において上方に移動させるとともにキャップユニット10を鉛直方向下方に移動させる。そして、プリントコントローラ202は、ワイピングユニット17を退避位置から
図5における右方向に移動させる。その後、プリントコントローラ202は、記録ユニット8を鉛直方向下方に移動させメンテナンス動作が可能なメンテナンス位置に移動させる。
【0047】
一方、記録ユニット8を
図1に示す記録位置から
図5に示すメンテナンス位置に移動する際、プリントコントローラ202は、記録ユニット8を45度回転させつつ鉛直方向上方に移動させる。そして、プリントコントローラ202は、ワイピングユニット17を退避位置から右方向に移動させる。その後プリントコントローラ202は、記録ユニット8を鉛直方向下方に移動させて、メンテナンスユニット16によるメンテナンス動作が可能
なメンテナンス位置に移動させる。
【0048】
図6(a)は、メンテナンスユニット16が待機ポジションにある状態を示す斜視図であり、
図6(b)は、メンテナンスユニット16がメンテナンスポジションにある状態を示す斜視図である。
図6(a)は
図1に対応し、
図6(b)は
図5に対応している。記録ユニット8が待機位置にあるとき、メンテナンスユニット16は、
図6(a)に示す待機ポジションにあり、キャップユニット10は、鉛直方向上方に移動しており、ワイピングユニット17は、メンテナンスユニット16の内部に収納されている。キャップユニット10は、y方向に延在する箱形のキャップ部材10aを有し、これを記録ユニット8の吐出口面8aに密着させることにより、吐出口からのインクの蒸発を抑制することができる。また、キャップユニット10は、キャップ部材10aに予備吐出等で吐出されたインクを回収し、回収したインクを不図示の吸引ポンプに吸引させる機能も備えている。
【0049】
一方、
図6(b)に示すメンテナンスポジションにおいて、キャップユニット10は、鉛直方向下方に移動しており、ワイピングユニット17が、メンテナンスユニット16から引き出されている。ワイピングユニット17は、ブレードワイパユニット171とバキュームワイパユニット172の2つのワイパユニットを備えている。
【0050】
ブレードワイパユニット171には、吐出口面8aをx方向に沿ってワイピングするためのブレードワイパ171aが吐出口の配列領域に相当する長さだけy方向に配されている。ブレードワイパユニット171を用いてワイピング動作を行う際、ワイピングユニット17は、記録ユニット8がブレードワイパ171aに当接可能な高さに位置決めされた状態で、ブレードワイパユニット171をx方向に移動する。この移動により、吐出口面8aに付着するインクなどはブレードワイパ171aに拭き取られる。
【0051】
ブレードワイパ171aが収納される際のメンテナンスユニット16の入り口には、ブレードワイパ171aに付着したインクを除去するとともにブレードワイパ171aにウェット液を付与するためのウェットワイパクリーナ16aが配されている。ブレードワイパ171aは、メンテナンスユニット16に収納される度にウェットワイパクリーナ16aによって付着物が除去されウェット液が塗布される。そして、次に吐出口面8aをワイピングしたときにウェット液を吐出口面8aに転写し、吐出口面8aとブレードワイパ171a間の滑り性を向上させている。
【0052】
一方、バキュームワイパユニット172は、y方向に延在する開口部を有する平板172aと、開口部内をy方向に移動可能なキャリッジ172bと、キャリッジ172bに搭載されたバキュームワイパ172cとを有する。バキュームワイパ172cは、キャリッジ172bの移動に伴って吐出口面8aをy方向にワイピング可能に配されている。バキュームワイパ172cの先端には、不図示の吸引ポンプに接続された吸引口が形成されている。このため、吸引ポンプを作動させながらキャリッジ172bをy方向に移動すると、記録ユニット8の吐出口面8aに付着したインク等は、バキュームワイパ172cによって拭き寄せられながら吸引口に吸い込まれる。この際、平板172aと開口部の両端に設けられた位置決めピン172dは、バキュームワイパ172cに対する吐出口面8aの位置合わせに利用される。
【0053】
図7は、ジャム処理および搬送路をメンテナンスする際にカバー扉4a、4bを開いた状態の記録装置1を示す斜視図である。筐体4は、外装の一部に開閉部としてのカバー扉4a、4bを備える。カバー扉4aは、主に排出部周辺を外部に露出させるように、設置面Gに垂直な鉛直方向に延びる回転軸周りに回動して開閉するように構成されている。カバー扉4bは、主に第2搬送路21の裏側を外部に露出させるように、設置面Gに平行な回転軸周りに回動して開閉するように構成されている。記録動作中に、例えば、記録領域
Pでの印字中、記録後に第1搬送路20を搬送中(加熱ユニット22の上流下流を問わない)、第2搬送路21を搬送中のいずれかにおいて、記録媒体Sが詰まってしまった場合には、記録媒体Sを取り除く必要がある。この場合、記録動作を中断させて、当該搬送路を外部に露出させるためにカバー扉4a、4bを開き、第1搬送路20と第2搬送路21の両方を開放させる。そしてユーザが記録媒体Sの詰まっている箇所にアクセスして当該記録媒体Sを取り除きカバー扉4a、4bを閉めて記録動作を再開させる。このとき、本実施例のように、第1搬送20、第2搬送路21、記録領域P、排出ローラ12等が、
図1等におけるプリンタ部2の右側に偏在している場合、右側面のカバー扉4a、4bを開くだけで、略すべての搬送路を露出させることができる。したがって、搬送路に詰まった記録媒体Sの除去を、1回のカバー扉4a、4bの開閉動作で行うことが可能となりユーザの動作が少なくて済む。
【0054】
また、記録ユニット8の吐出口面8aより吐出されたインクのうち、記録媒体Sに付着せずに、ミスト状のインク滴(以下、ミスト)となって記録領域P内に浮遊するインクが生じてしまうことがある。ここで生じたミストは、記録媒体Sの搬送によって生じた気流により、記録領域Pから加熱ユニット22までの間の第1搬送路20内に付着する。加熱ユニット22では、記録媒体Sがその幅方向全面にてニップされているため、記録媒体Sに遮られることで、加熱ユニット22より下流にはミストは浮遊移動しない。すなわち、加熱ユニット22により搬送方向に沿ったミストの移動が抑制される。ミストの付着が堆積していくと記録媒体Sに再転写して画像品位が低下するなどの問題が発生する可能性がある。そのため、定期的に、あるいは画像品位が低下したと感じた時点において、ユーザがカバー扉を開き、記録領域Pから加熱ユニット22までの間の第1搬送路20を外部に露出させ、所定のメンテナンス作業を行う必要がある。例えば、付着したミストを、固く絞った布巾や、専用のメンテナンス布で取り除くといった作業である。その際、本実施例の様に、記録領域Pから加熱ユニット22までの搬送路長L1が短い構成であれば、ユーザがメンテナンスする搬送路長も短くて済む。
【0055】
(比較例)
図8は、本発明の実施例1の比較例に係る記録装置1aの内部構成図であり、実施例1に係る記録装置1とは、加熱ユニット22を配した位置が異なっている。
【0056】
記録ユニット8は、記録位置、待機位置、メンテナンス位置との間で相互に移動するため、その移動軌跡と干渉する位置には他の部品を配することができない。そのため、加熱ユニット22の有無にかかわらずに、第1搬送路20、排出ローラ12、排出トレイ13の配置には、装置構成のレイアウト上の制約により、低く配置するには限界がある。
図8に示したように、第1搬送路20において鉛直上方に延びる経路から、排出部に向かって水平方向に屈曲(湾曲)する屈曲部(湾曲部)よりも下流に加熱ユニット22を配する場合について検討する。この場合、排出ローラ12の位置は変わらないため、加熱ユニット22は、排出ローラ12と鉛直方向に略同高さに位置し、その加熱ユニット22を鉛直上方向を迂回する様に第2搬送路21を配する必要がある。このとき、比較例の記録装置1aにおけるプリント部2の筐体4の高さは、実施例1の記録装置1と比較して、第2搬送路21を設ける分鉛直方向に高くなってしまい、スキャナ部3の位置も必然的に高くなる。そのため、スキャナ部3の被読取媒体である原稿をセットする原稿面23の高さも大きくなり、ユーザの操作性が低下する。さらに、実施例1(
図1)と比較すると、加熱ユニット22が追加された分だけ排出ローラ12の位置を、左側(
図8中の-x方向)に移動させる必要がある。これに伴い排出トレイ13も左側に移動し、プリント部2の筐体4から排出トレイ13の一部が突出することになり、その分設置スペースが大きくなる。
【0057】
また、
図8に示す比較例の記録装置1aの加熱ユニット22は、記録ユニット8の記録位置からメンテナンス位置までの移動軌跡が占める高さ外に配される。したがって、比較
例の記録装置1aでは、第1搬送路20において記録領域Pから加熱ユニット22までの搬送路長L1と、乾燥ユニット22から排出ローラ12までの搬送路長L2との関係が、L1>L2となる。
【0058】
(本実施例の特徴)
図9は、本実施例の記録ユニット8の移動軌跡と加熱ユニット22の位置関係を示した図である。
図9において破線で囲まれた領域が、記録ユニット8が待機位置/記録位置/メンテナンス位置の間で移動する際に通過する移動軌跡である。この移動軌跡と、第1搬送路20内の第1区間24(および第1区間24内に配された加熱ユニット22)、第2搬送路21内の第2区間25が同じ高さで鉛直方向に並行している。つまり、記録ユニット8の移動軌跡が占める高さ内に第1区間24と第2区間25が配されている。本構成によれば、加熱ユニット22を有する第1搬送路20と、加熱ユニット22が配された第1区間24とその一部が並行する第2搬送路21と、で構成された搬送路を有するうえで、第1区間24が鉛直方向を向いている。これにより、比較例のように加熱ユニット22の有無によって排出ローラ12および排出トレイ13のX方向位置を変えなくてよいため、設置スペースが広くなることがない。また、鉛直方向において、比較例のように排出ローラ12よりも高い位置に加熱ユニット22の一部や搬送路が位置することはないので、プリント部2の高さが高くなることがない。
【0059】
さらに、本実施例によれば、第1搬送路20の第1区間24内の記録ユニット8の記録位置からメンテナンス位置までの移動軌跡が占める高さ内に加熱ユニット22が配される。これにより、記録領域Pから加熱ユニット22までの搬送路長L1を、加熱ユニット22から排出ローラ12までの搬送路長L2よりも短く構成することができる。これによって、メンテナンス時にユーザがカバー扉を開き搬送路に付着したミストを除去する搬送路が短くて済み、メンテナンス作業を容易に行うことが可能となる。また、記録領域Pから加熱ユニット22までの搬送路長L1が短いことで、記録画像により記録領域Pから加熱ユニット22までの間の搬送時間を制御する際に、より短い時間まで制御可能となり、制御内容の選択肢の幅が広がる。
【0060】
また、本実施例では、加熱ユニット22は、加熱部材としてのフィルム52と、加圧部材としての加圧ローラ56とが、記録装置1の設置面Gに略平行な方向(略水平方向)に並んだ配置構成となっている。フィルム52は、記録媒体Sの被記録面を加熱するため、記録媒体Sの搬送経路に対して記録ユニット8と同じ側、すなわち、
図1等において図中左側に配置され、加圧ローラ56は図中右側に配置される。そして、加熱ユニット22の構成部材のうちフィルム52の少なくとも一部が、
図1等の図示構成において鉛直方向に見たときに、記録ユニット8の移動軌跡の範囲と重なるように配置されている。すなわち、記録装置1の設置面G(水平面)に沿った方向に必要となる設置スペースに関して、加熱ユニット22の構成部材のうちフィルム52と、記録ユニット8との間で、互いに重なる領域を有している。この重なる領域の分だけ、記録装置1の設置スペースについて、更なる省スペース化を図ることができる。
【0061】
特に、本実施例の上記構成は、記録ユニット8が角度を変える姿勢変化を行う構成において、その移動軌跡におけるデッドスペースとなる領域の一部を、加熱ユニット22の設置スペースに利用したレイアウト構成と言うことができる。このようなデッドスペースを活用する配置構成とすることで、装置サイズの設置面Gに対する大きさ及び設置面Gから垂直な高さ方向の大きさを効果的に抑制することができる。
【0062】
なお、本実施例に関する上記説明は、記録装置1の設置面Gが水平面であることを前提として、各構成部材の高さの関係を規定した説明としているが、該設置面は水平面に限定されない。すなわち、設置面Gが水平面に対して多少の角度を有するような場合であって
も、本記録装置1は十分に使用可能である。したがって、設定面Gが水平面に対して多少の角度を持っているような場合には、各構成部材の高さ関係を規定する設置面に略垂直な方向も、上記説明における鉛直方向に対して所定の方向に角度を有する方向となることは言うまでもない。
【0063】
<実施例2>
図10は、本発明の実施例2に係る記録装置1bの内部構成図である。実施例2において実施例1と共通する構成については同じ符号を付し説明を省略する。実施例2においてここで特に説明しない事項は実施例1と同様である。
【0064】
実施例1の記録装置1では、第2搬送路21が両面記録時の帰送搬送路として設けられているが、搬送路の構成はこれに限らない。例えば、
図10に示す実施例2の記録装置1bのように、第2搬送路21は、記録領域Pと乾燥ユニット22の間において第1搬送路20から分岐して、乾燥ユニット22と排出ローラ12の間において第1搬送路20に合流する経路であってもよい。この場合、第2搬送路21は、記録後の記録媒体Sが乾燥ユニット22を通過せずに排出トレイ13に排出できる迂回路として機能する。このように構成することで、感熱紙や熱に弱いコート材を塗布した光沢紙等の熱を加えることが許されないような記録媒体にも記録をすることが可能となる。また、両面記録時の帰送搬送路と乾燥ユニット22を迂回する迂回路の両方が存在してもよい。つまり第2搬送路21は複数あってもよい。
【0065】
<実施例3>
図11は、本発明の実施例3に係る記録装置1cの内部構成図である。実施例3において実施例1、2と共通する構成については同じ符号を付し説明を省略する。実施例3においてここで特に説明しない事項は実施例1、2と同様である。
【0066】
実施例1の記録装置1では、第1カセット5Aと第2カセット5Bの2つの記録媒体収容部を備えていたが、装置構成はこれに限らない。例えば、
図11に示す実施例3の記録装置1cのように、カセットが1つのみであってもよい。逆に、第3カセット、第4カセットとカセットがより多くあってもよい。また、構成の一部としてカセットを含まない記録装置であってもよい。この場合、着脱可能に構成されたカセットユニットを後付けで構成するか、ユーザが記録媒体Sを使用分のみセットする手差しトレイ24から給送する構成であってもよい。
【0067】
実施例1の記録装置1においては、記録ユニット8が記録位置において傾斜した姿勢をとるように構成されており、待機位置、メンテナンス位置への移動に回転を伴いながら移動するが、記録ユニット8の構成についても、これに限らない。例えば、
図11に示す実施例3の記録装置1cのように、記録ユニット8の記録位置での姿勢は水平で、待機位置、メンテナンス位置への移動は、単に鉛直方向への移動だけであってもよい。すなわち、記録ユニット8の姿勢変化の移動は、鉛直方向の上下移動のみとなる。また、実施例1の記録装置1では、記録ユニット8の移動は、待機位置やメンテナンス位置への移動を示したが、これに限らない。例えば、記録媒体Sの厚さによって、プラテン9と記録ユニット8の吐出口面8aの離間距離を変化させるような移動が可能な構成であってもよい。さらに、記録ユニット8は移動しない構成として、プラテン9やメンテナンスユニット16が移動する構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…インクジェット記録装置、2…プリント部、7…搬送ローラ、8…記録ユニット、11…フラッパ、12…排出ローラ、13…排出トレイ、20…第1搬送路、21…第2搬送路、22…加熱ユニット、24…第1区間、25…第2区間