(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163262
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】空調衣服の服本体及び空調衣服
(51)【国際特許分類】
A41D 13/002 20060101AFI20241114BHJP
A41D 1/00 20180101ALI20241114BHJP
【FI】
A41D13/002 105
A41D1/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024152779
(22)【出願日】2024-09-05
(62)【分割の表示】P 2022146647の分割
【原出願日】2017-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】592171005
【氏名又は名称】株式会社セフト研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】市ヶ谷 弘司
(57)【要約】
【課題】服地の膨らみを抑制することができる空調衣服の服本体及び空調衣服を提供する。
【解決手段】ファン4を嵌め込むファン用開口部12と、ファン4を介して取り込んだ空気を排出する空気排出部13と、ファン用開口部12と空気排出部13との間の所定の位置に設けられた、胴体BDと服地11との間隔を規制する間隔規制シート2a,2b,2cと、を備え、間隔規制シート2a,2b,2cは、少なくとも服本体1を身に着けた際に、胴体BDを中心に入れた略リング状に形成され、当該略リング状の間隔規制シート2a,2b,2cの外周の全部あるいは一部が服本体1の裏面に接続されるとともに、内周の全部あるいは一部が胴体BDに密着させるための胴体密着手段(ゴム紐22)に接続されるようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンを嵌め込むファン用開口部と、
前記ファンを介して取り込んだ空気を排出する空気排出部と、
前記ファン用開口部と前記空気排出部との間の所定の位置に設けられた、胴体と服地との間隔を規制する間隔規制体と、
を備えることを特徴とする空調衣服の服本体。
【請求項2】
前記間隔規制体は、面状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の空調衣服の服本体。
【請求項3】
前記間隔規制体は、服本体の裏面と、前記胴体に密着させるための胴体密着手段と、に接続されることを特徴とする請求項1又は2に記載の空調衣服の服本体。
【請求項4】
前記間隔規制体は、
少なくとも服本体を身に着けた際に、前記胴体を中心に入れた略リング状に形成され、
当該略リング状の当該間隔規制体の外周の全部あるいは一部が服本体の裏面に接続されるとともに、内周の全部あるいは一部が前記胴体密着手段に接続されることを特徴とする請求項3に記載の空調衣服の服本体。
【請求項5】
前記胴体密着手段は、弾性を有する紐又は帯であることを特徴とする請求項3又は4に記載の空調衣服の服本体。
【請求項6】
前記弾性を有する紐又は帯の両端は服本体の前身頃に取り付けられ、当該両端が取り付けられた部位の近傍には胴体と服地との間隔を確保する間隔確保手段を備えていることを特徴とする請求項5に記載の空調衣服の服本体。
【請求項7】
前記胴体密着手段は、弾性を有する繊維により作製された筒状体であることを特徴とする請求項3から6のいずれか一項に記載の空調衣服の服本体。
【請求項8】
前記間隔規制体は、
前記胴体密着手段の上方に配され、当該間隔規制体の外周側から内周側に向かって下るように傾斜した上部面状体と、
前記胴体密着手段の下方に配され、当該間隔規制体の外周側から内周側に向かって上るように傾斜した下部面状体と、を備え、
前記上部面状体の内周側の端部と前記下部面状体の内周側の端部とが連設されていることを特徴とする請求項3から7のいずれか一項に記載の空調衣服の服本体。
【請求項9】
前記胴体密着手段は、前記服地と前記間隔規制体との間に配されたことを特徴とする請求項8に記載の空調衣服の服本体。
【請求項10】
前記間隔規制体は、空気分配手段を更に備え、
前記空気分配手段は、空気透過性の低いシート状素材の所定位置に設けられた開口部によって空気を分配することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の空調衣服の服本体。
【請求項11】
前記開口部は、複数設けられており、
前記開口部のそれぞれの占める面積は、前記ファン用開口部の位置から遠ざかるに連れて大きくなることを特徴とする請求項10に記載の空調衣服の服本体。
【請求項12】
前記間隔規制体は、空気透過性の高いシート状素材であることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の空調衣服の服本体。
【請求項13】
前記間隔規制体は、空気分配手段を更に備え、
前記空気分配手段は、前記空気透過性の高いシート状素材の所定位置に空気透過性の低いシート状素材を設けることによって空気を分配することを特徴とする請求項12に記載の空調衣服の服本体。
【請求項14】
前記間隔規制体は、
本体部より下側に折り曲げられた折曲片を有し、
前記折曲片を取り付け代として服本体に取り付けられることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の空調衣服の服本体。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の空調衣服の服本体を備えることを特徴とする空調衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体を冷却する空調衣服の服本体及び空調衣服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、身体を冷却する空調衣服が実用化され急激に普及しつつある。
図10に示すように、従来の空調衣服201は、通気性の低い素材で縫製された服本体210と、服本体210の後側の下方に取り付けられた2つのファン240,240と、2つのファン240,240に電力を供給するための電源装置(不図示)と、電源装置と2つのファン240,240とを電気的に接続するための電源ケーブル(不図示)とを備える。
【0003】
ファン240を作動させると、大量の空気がファン240から服本体210内に取り込まれる。取り込まれた空気の圧力により服本体210の内部は陽圧になり、服地が膨らむことにより当該服地と身体又は下着との間に空気流通路が自動的に形成され、取り込まれた空気は、形成された空気流通路を身体又は下着の表面に沿って上方に流通し、例えば、襟部の周囲や袖口部から外部に排出される。ここで、襟部の周囲や袖口部は、空気排出部230としての役割を果たしている。
そして、空気は、服本体210と身体又は下着との間の空気流通路を流通する間に身体から出た汗を蒸発させ、蒸発する時の気化熱により身体が冷却される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の空調衣服では、服地が膨らみすぎると、取り込んだ外気の多くは身体から離れた部分を流通するため、身体の冷却に寄与しない無駄な空気となってしまう。また、作業用の空調衣服では、特にファンの近辺の膨らみによりファンが突出してしまうため、狭所での作業が困難である等の様々な問題を引き起こす虞がある。また、一般用の空調衣服では、服地の膨らみにより外観を損ねてしまうという問題がある。
【0006】
本発明の課題は、服地の膨らみを抑制することができる空調衣服の服本体及び空調衣服を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するため、本発明に係る空調衣服の服本体は、
ファンを嵌め込むファン用開口部と、
前記ファンを介して取り込んだ空気を排出する空気排出部と、
前記ファン用開口部と前記空気排出部との間の所定の位置に設けられた、胴体と服地との間隔を規制する間隔規制体と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、服地の膨らみを抑制することができる空調衣服の服本体及び空調衣服を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)は、第1実施形態の服本体を用いた空調衣服の概略正面図、(b)は、その概略裏面図、(c)は、(a)の矢視X方向から見た概略断面図である。
【
図2】(a)~(c)は、各シート(第1~第3シート)を略水平に配する方法を説明するための図である。
【
図3】(a)は、第2実施形態で使用されるファンを首から吊り下げた状態を示す概略正面図、(b)は、第2実施形態の服本体を着用しファン用開口部にファンを嵌め込んだ状態を示す概略正面図、(c)は、その概略裏面図である。
【
図4】第2実施形態で使用されるファンの概略側面図である。
【
図5】(a)は、服地に取り付ける前の下部シート単体の概略図、(b)は、上部シート単体の概略図である。
【
図6】間隔規制面状体(間隔規制シート)のその他の一例を示す概略図である。
【
図7】第3実施形態の空調衣服を示す図であり、(a)は、ファンを作動させたときの空調衣服の概略正面図、(b)は、その胴体部の概略縦断面図、(c)は、(b)の部分拡大図である。
【
図8】第3実施形態の空調衣服の服本体の胴体部の製造方法を説明するための図であり、(a)は、服本体を構成する服地の平面図、(b)は、服本体を構成するメッシュ生地の平面図、(c)は、服地にメッシュ生地を縫い付けた状態の平面図である。
【
図9】第3実施形態の空調衣服の服本体の胴体部を示す平面図である。
【
図10】従来の空調衣服の一例を示す概略正面図及び概略背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
以下に、図面を参照して、本願に係る発明を実施するための形態について説明する。但し、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態の空調衣服10について
図1を用いて説明する。
図1(a)は、本実施形態の服本体1を用いた空調衣服10の概略正面図、(b)は、その概略裏面図、(c)は、(a)の矢視X方向から見た概略断面図である。
図1(a),(b)に示すように、本実施形態の空調衣服10は、服本体1と、ファン4,4と、電源装置(図示省略)と、電源ケーブル(図示省略)とを備える。
【0012】
服本体1は、通気性(空気透過性)の小さな又は通気性のないシート状素材で、上半身及び腕部を覆う形状に作製されている。例えば、本実施形態では、服本体1を、裾が開放されたブルゾン型の上衣(作業服)の形状に作製している。
服本体1には、2つのファン用開口部(開口孔)12,12と、袖口や襟部、裾に形成された空気排出部13と、前身頃の開閉手段14と、服本体1の裏側(体と接する側)に設けられた3枚の間隔規制シート(間隔規制面状体)2a,2b,2cとが設けられている。
【0013】
2つのファン用開口部12はそれぞれ、服本体1の所定部位、具体的には左右の腰に対応する部位に形成されている。そして、ファン用開口部12にファン4が嵌め込まれている。すなわち、ファン用開口部12の周囲における服本体1の部位はファン取付部となっている。
【0014】
前身頃の開閉手段14は、服本体1を着用する際に、服本体1の前部を開閉するためのものである。ここでは、前身頃の開閉手段14としてファスナーを用いている。
【0015】
3枚の間隔規制シート2a,2b,2cはそれぞれ、胴体BDと服地11との間隔を規制する、すなわち、大量の空気がファン4から服本体1内に取り込まれ服本体1の内部が陽圧となった際に、服地11が膨らみ過ぎてしまうことを抑制するためのものである。3枚の間隔規制シート2a,2b,2cはそれぞれ、シート状素材で形成され、シートの一端は胴体密着手段としてのゴム紐22が配設され、他端は服地11の裏側に縫い付けられている。具体的には、
図1(a),(b)に示すように、服本体1の腰周りに設けられている縫い目15aの位置に間隔規制シート(以下、第1シートと称する)2aが設けられている。また、服本体1の腹周りに設けられている縫い目15bの位置に間隔規制シート(以下、第2シートと称する)2bが設けられている。また、服本体1の脇の下の周りに設けられている縫い目15cの位置に間隔規制シート(以下、第3シートと称する)2cが設けられている。
【0016】
次に、第1シート2aについて、
図1(c)を用いて詳述する。
図1(c)は、上述したように
図1(a)の矢視X方向から見た概略断面図、すなわち第1シート2aが配設された部位の断面を表している。ここで、一般的には、胴体BDに密着するゴム紐22の上下位置(高さ位置)は、重力の影響により、縫い目15aの位置に対し少し下方に位置することとなるが、説明を簡略化するため、縫い目15aの上下位置とゴム紐22の上下位置とは同位置(同じ高さ位置)、すなわち第1シート2aが水平に保たれているものとして以下説明を行う。
【0017】
図1(c)に示すように、第1シート2aは、通気性(空気透過性)の小さな又は通気性のないシート状素材によりリング状に形成されている。第1シート2aの内周側には、胴体密着手段としてのゴム紐22が配設され、このゴム紐22の両端部は、それぞれ間隔確保手段24を経由して服本体1の前身頃に縫い付けられている。また、第1シート2aの外周側は服地11の裏側に縫い付けられている。なお、間隔確保手段とは、服本体1の前身頃近辺の空気流通空間を確保するためのものである。
【0018】
第1シート2aは、その平面部の径方向の幅が全周に亘り3cmであり、当該平面部には複数の空気流通孔231,…が穿設されている。各空気流通孔231は、
図1(c)に示すように、背中側(ファン4の近傍)に設けられた空気流通孔231の占める面積が最も小さく、背中側から前面側にいくに連れて、すなわち、ファン4(ファン用開口部12)から遠ざかるに連れて空気流通孔231の占める面積が大きくなるように設計がなされている。このような設計がなされているのは、ファン4の近傍では、ファン4から空気を取込んだ際の陽圧度が高く、ファン4から遠ざかるに連れて当該陽圧度が低くなるからである。つまり、ファン4の近傍に設けられた空気流通孔231からは空気が流出し難くするとともに、ファン4から遠ざかるに連れて、各空気流通孔231から空気が徐々に流出し易くなるようにすることにより、第1シート2aを介して空調衣服10の裾の方へ排出される空気の量が胴周りにおいて均一となるようにすることができ、これにより、冷却効果が均一となるようにしているのである。なお、本実施形態の空調衣服10の場合、裾が開放されているので第1シート2aより下方の部位の陽圧度は低く、当該部位において空調衣服10が膨らむことはない。
ここで、第1シート2aは、胴体BDと服地11との間隔を規制する間隔規制手段として機能するとともに、第1シート2aが設けられた腰周りでの空気の流量を調整するための空気分配手段として機能したこととなる。
【0019】
次に、第2シート2bについて説明する。
図示は省略するが、第2シート2bは、通気性(空気透過性)の大きなメッシュ状のシートによりリング状に形成されており、その平面部の径方向の幅は全周に亘り3cmとなっている。また、第2シート2bは、第1シート2aと同様に、その内周側には、胴体密着手段としてのゴム紐22が配設され、このゴム紐22の両端部は、それぞれ間隔確保手段24を経由して服本体1の前身頃に縫い付けられている。また、第2シート2bの外周側は服地11の裏側に縫い付けられている。
ここで、第2シート2bは、胴体BDと服地11との間隔を規制する間隔規制手段として機能するが、第1シート2aとは異なり空気分配手段としての機能は有していない。なお、第2シート2bの所定位置に通気性(空気透過性)の小さな又は通気性のないシート状素材を貼り合わせることによって、当該第2シート2bにも空気分配手段としての機能を持たせるようにしても良い。
【0020】
次に、第3シート2cについて説明する。
図示は省略するが、第3シート2cは、第1シート2aと同様に、通気性(空気透過性)の小さな又は通気性のないシート状素材によりリング状に形成されている。また、第3シート2cの内周側には、胴体密着手段としてのゴム紐22が配設され、このゴム紐22の両端部は、それぞれ間隔確保手段24を経由して服本体1の前身頃に縫い付けられている。また、第3シート2aの外周側は服地11の裏側に縫い付けられている。
【0021】
また、第3シート2cは、第1シート2aと同様に、その平面部の径方向の幅が全周に亘り3cmであり、当該平面部には複数の空気流通孔231,…が穿設されている。第3シート2cは、空気排出部13である襟周りや袖口の空気抵抗を考慮し、第3シート2cの上方に排出される空気の量が当該第3シート2cの全周において均一となるように、各空気流通孔231の占める面積及び配置が設計されている。
ここで、第3シート2cは、胴体BDと服地11との間隔を規制する間隔規制手段として機能するとともに、第3シート2cが設けられた脇の下の周りでの空気の流量が均一となるようにしたり、当該空気の流量を調整するための空気分配手段として機能したこととなる。
【0022】
なお、間隔規制面状体(第1シート2a、第2シート2b、第3シート2c)の上側と下側との気圧差は極小さいので、第2シート2bのように、間隔規制手段として機能するだけのものは空気抵抗をできるだけ小さくする必要があり、例えばメッシュを使用する場合には開口比率が70%以上ある空気透過性の高いシート状素材が必要である。一方、第1シート2aや第3シート2cのように、空気分配手段としても機能するシート状素材は空気流通孔(開口部)231,…に空気を誘導するという目的があるため、空気透過性の低いシート状素材が必要であり、例えば通気性の良い衣服に使用されるような開口比率が20%程度の素材も使用することができる。
【0023】
次に、ファン4を作動させたときの空調衣服10について説明する。なお、ファン4の取り付け方法やファン4に電源を供給するための電源装置や電源ケーブルについては、特開2015-065998号公報に開示されているため、その説明は省略する。
ファン4を作動させ大量の外気を服内に導入すると服内は陽圧になり、本実施形態では第1シート2aと第3シート2cとの間の空間の陽圧度が高くなる。第1~第3シート2a~2cがそれぞれ設けられている箇所では、上述したように各シートの幅(径方向の幅)以上に膨らむことはない。
2つのファン4,4から下方に向かった空気の一部は第1シート2aにより分配されることにより、当該空気の一部は胴体BDの腰部の全周に亘り略均一に流れ裾から排出される。したがって、空調衣服10の裾全体が空調衣服10の下部に設けた空気排出部13として機能する。
また、2つのファン4,4から下方に向かった空気の一部とその他の方向に向かった空気は第2シート2bを経由して胴体BDを包むようにして上方に移動し、第3シート2cにより分配されることにより、当該空気は第3シート2cより上方に設けた空気排出部13、具体的には、前襟口、後襟口及び袖口から排出される。
【0024】
以上のように、本実施形態の空調衣服10によれば、第1シート2a、第2シート2b及び第3シート2cにより、服内の各部位における空気の流れる量を制御できるので、膨れ過ぎによる冷却効果の低下を防止するとともに、外観の改善を図ることができる。本実施形態の空調衣服10によれば、用途や形状に応じた空気の流れを制御することができるので、冷却効果をより高めることができるようになる。
【0025】
なお、本実施形態では、第1~第3シート2a~2cのそれぞれの幅(径方向の幅)を全周に亘り3cmとしたが、これに限られるものではなく、例えば、一定の幅でなく各シートのそれぞれの部位において目的に応じ最適な幅となるようにしても良い。また、本実施形態では、3枚のシート(間隔規制シート)を使用したが、これに限られるものではなく、1枚又は3枚以上のシートを使用するようにしても良い。
【0026】
また、
図2(a)に示すように、各シート(第1~第3シート2a~2c)が縫い付けられた服地11の位置より上方から紐等でゴム紐22を吊るすことにより、各シートを略水平に配するようにしても良い。
また、
図2(b)に示すように、第3シート2cが縫い付けられた服地11の位置より上方から紐等で第1シート2a、第2シート2b及び第3シート2cのそれぞれのゴム紐22を吊るすことにより、これらのシートを略水平に配するようにしても良い。
また、
図2(c)に示すように、各シート(第1~第3シート2a~2c)について、本体部(略水平に保たれる部分)より下側に折り曲げられた折曲片を有し、当該折曲片を取り付け代(縫い代)として服地11に取り付けられるようにすることにより、これらのシートを略水平に配するようにしても良い。
【0027】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の空調衣服110について、
図3~
図5を用いて説明する。なお、第1実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0028】
図3(a)は、本実施形態で使用されるファン4を首から吊り下げた状態を示す概略正面図であり、同図(b)は、本実施形態の服本体101を着用しファン用開口部12にファン4を嵌め込んだ状態を示す概略正面図であり、同図(c)は、その概略裏面図である。
図4は、本実施形態で使用されるファン4の概略側面図である。
【0029】
図3(a)に示すように、ファン4は単に服本体101に取り付けられるのではなく首から吊り下げられた状態で服本体101に取り付けられるようになっている。これにより、ファン4が服本体101から外れてしまった場合でも、ファン4はユーザの首に吊り下げられているので、ファン4の落下を防止することができる。
図4に示すように、ファン4は、空気取込部41の側面に溝411が形成されている。これにより、ファン4が服本体101に取り付けられた際に、ファン4の溝411が後述する服本体101のファン用開口部12に嵌め込まれるようになっている。
【0030】
図3(b)に示すように、本実施形態の服本体101は、腹部に対応する服地11にファン4を取り付けるためのファン用開口部12が形成されており、当該ファン用開口部12の縁にはゴム紐(図示省略)が配されている。このゴム紐は、ファン4にファン用開口部12を密着させるためのものである。また、本実施形態の服本体101は、上述したように、ファン4が腹部に取り付けられるため、ファスナー14は中央より向かって少し左側に設けられている。また、本実施形態の服本体101には、ファン用開口部12の上方に上部シート102aが設けられるとともに、ファン用開口部12の下方に下部シート102bが設けられている。
図3(b),(c)に示されている服本体101のファン用開口部12の上方の破線16aは、上部シート102aの縫い目を表すものであり、ファン用開口部12の下方の破線16bは、下部シート102bの縫い目を表すものである。また、本実施形態の服本体101は、
図3(c)に示すように、背中に対応する服地11に縦長のメッシュ状の空気排出部13が形成されている。なお、本実施形態の空調衣服110の裾は、第1実施形態と同様に開放されており空気排出部13として作用する。
【0031】
次に、本実施形態の空調衣服110を使用する手順について説明する。なお、ファン4に電源を供給するための電源装置及び電源ケーブルについては、その説明は省略する。
【0032】
先ず、
図3(a)に示すように、ファン4を首から吊り下げる。次に、
図3(b)に示すように、服本体101を着用しファスナー14を閉める。そして、ファン用開口部12の縁をファン4の側面に施されている溝411に嵌め込むことにより、ファン4を服本体101に取り付ける。
【0033】
次に、本実施形態の間隔規制面状体である上部シート102a及び下部シート102bについて説明する。上部シート102a及び下部シート102bはそれぞれ第1実施形態の第1シート2aや第3シート2cと同様に、空気分配手段としての機能を有しており、服本体101の形状、空気排出部13の位置やその空気抵抗等を考慮し、適正な空気流通孔が形成されている。以下、上部シート102a及び下部シート102bについて、第1実施形態の第1シート2a及び第3シート2cと異なる点を中心に説明する。
【0034】
図5(a)は、服地11に取り付ける前の下部シート102b単体の概略図であり、同図(b)は、上部シート102a単体の概略図である。なお、図中の破線211は、服地11と縫合する際の縫合線(縫合部位線)を表している。
図5(a),(b)に示すように、本実施形態では、各シート(上部シート102a及び下部シート102b)に複数の切り欠き241,…を設け、当該各シートが服地11に縫い付けられた時点で当該複数の切り欠き241,…が第1実施形態での空気流通孔231と同じ役目を果たすようにしている。したがって、各シート(上部シート102a及び下部シート102b)にそれぞれ設けられた複数の切り欠き241,…は、空気流通孔とみなすことができる。
【0035】
具体的には、下部シート102bは、
図5(a)に示すように、シート内側、すなわち体に当接する側に複数の切り欠き241,…が設けられており、当該切り欠き241が施された部位ではゴム紐22がむき出しになっている。
一方、上部シート102aは、
図5(b)に示すように、シート外側、すなわち服地11に縫い付けられる側に複数の切り欠き241,…が設けられている。つまり、上部シート102aの場合、シート外側の切り欠き241,…が設けられていない部位だけが服地11に縫い付けられることとなる。
【0036】
なお、各シート(上部シート102a及び下部シート102b)の複数の切り欠き241,…が設けられた部位では、当該複数の切り欠き241,…の幅を極端に大きくしなければ実質的には膨らみの問題が生じることはない。また、各シートは、リング状に形成されているが、必ずしもリング状に形成する必要はなく、例えば、各シートを矩形状に形成しても良い。かかる場合、各シートを服地11に取り付け服本体101を着用した状態では多少の皴の発生を伴うが、各シートの間隔規制手段としての機能に大きな問題が生じることはない。
【0037】
次に、ファン4を作動させたときの空調衣服110について説明する。
服本体101の腹部に取り付けられたファン4を作動させ、外気を服内に導入すると服内は陽圧になり、本実施形態では下部シート102bと上部シート102aとの間の空間の陽圧度が高くなる。一方、上部シート102aと下部シート102bとが取り付けられた各部位では体と服地11との間隔は適正に保たれる。また、上部シート102aと下部シート102bは、空気分配手段として機能するので、体を包むようにファン4から左右方向に向かった空気は胴体を横方向に移動し背部の空気排出部13から排出され、下方向に向かった空気は下部シート102bの複数の切り欠き241を介して裾部全体からなる空気排出部13から排出され、上方向に向かった空気は上部シート102aの複数の切り欠き241を介して前襟、後襟及び両腕部の空気排出部13から排出される。
なお、本実施形態では、ファン4を服本体101の腹部に配置する場合について説明したが、無論、ファン4を背負うようにして背中に配置しても良い。
【0038】
なお、各シート(上部シート102a及び下部シート102b)における上記空気分配手段としての機能は必須のものではなく、少なくとも間隔規制手段としての機能を有していれば良い。上述した第1実施形態における第1シート2a及び第3シート2cも同様である。
各実施形態の場合、間隔規制手段はシート状素材を用い、シートの一端は胴体密着手段としてのゴム紐が配され、他端は服地の裏側に縫い付けられている。すなわち、間隔規制手段はゴム紐が配された間隔規制シートである。
【0039】
次に、本発明を使用した理想的な空調衣服の設計・製造手順について説明する。なお、間隔規制面状体としてのシートは全て空気透過性の小さなシートに開口孔を施すことを前提とする。
1.空調衣服の使用目的に応じて服本体のデザインを決め、風量、ファンの数量や取り付け位置等を決める。
2.体の各部位に沿って流れる空気の風量や分布を決める。
3.上記1及び2の決定事項に基づき体の各部位における服地と体との間隔を決める。
4.上記1~3の決定事項に基づきシート(間隔規制面状体)の使用数量と取り付け位置を決める。
5.上記4の決定事項に基づき体の各部位における各シートの幅と開口孔を設計する。
6.上記5の決定事項に基づき縫い代(取り付け代)、ゴム紐を取り付けるゴム紐通しを考慮し各シートを切り出す。
7.パイプ状のゴム紐通しを作製する。
8.各シートの本体部より下側に折り曲げられる折曲片を縫い代(取り付け代)として服本体の内側に縫い付ける。
9.上記7で作製されたゴム紐通しにゴム紐を通し、ゴム紐の両端を間隔確保手段を介して服本体の前見頃に縫い付ける。
以上の空調衣服の設計・製造手順に従うことにより、使用目的に応じた最良の空調衣服を作製することができる。
【0040】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
例えば、間隔規制面状体としてのシートは、少なくとも服地と体との間隔を規制することができればよく、第1実施形態や第2実施形態にて例示した各シートに限られるものではない。間隔規制面状体としてのシートは、例えば、
図6(a)に示すように、複数の方形状の布地21をそれぞれ所定の間隔を空けて配し、各布地の一端が服地11の裏面に縫い付けられるとともに、他端にはゴム紐22が取り付けられるようにしても良い。また、間隔規制面状体としてのシートは、例えば、
図6(b)に示すように、複数の三角形状の布地21をそれぞれ所定の間隔を空けて配し、各布地の一辺(底辺)が服地11の裏面に縫い付けられるとともに、各布地の頂点にはゴム紐22が取り付けられるようにしても良い。また、間隔規制面状体としてのシートは、
図6(c)に示すように、例えば、
図6(a)で例示された布地21を筒状に丸めたものを所定の間隔を空けて配し、各布地の一端が服地11の裏面に縫い付けられるとともに、他端にはゴム紐22が取り付けられるようにしても良い。
【0041】
また、各実施形態では、空調衣服を上衣として説明したが、無論上下がつながっている作業服等でも良い。また、各実施形態では、空調衣服の形状を、裾が開放されたブルゾン型としたが、これに限らず、例えば、裾をすぼませた形状のブルゾンや、裾をズボンの中に入れるシャツタイプ等であっても良い。
【0042】
また、各実施形態では、各間隔規制シートを胴体の周りに略水平に配する場合について説明したが、これに限らず、当該各間隔規制シートを胴体の周りに斜めに配するようにしても良い。
【0043】
また、各実施形態において、通気性(空気透過性)の小さな又は通気性のないシート状素材は、当該機能を有していればよく、例えば、プラスチックシート等でも良い。
【0044】
また、各実施形態では、胴体密着手段としてゴム紐を用いる場合について説明したが、ゴム紐の他に、ゴム帯やその他各種の一般的な方法を用いてもよく、また、例えば、弾性を有する繊維により作製されたメッシュ状の筒状体(腹巻き状のもの)を用いてもよい。この筒状体を用いた場合、下着を胴体に密着させるので下着と胴体との間に断熱空間が発生することを防止することができ、空調衣服としての効果をより向上させることができる。
具体的には、例えば、上記実施形態1の場合、少なくとも第1シート2aのゴム紐22が配設された箇所に筒状体の下端の円周部が接続されるとともに、第3シート2cのゴム紐22が配設された箇所に筒状体の上端の円周部が接続されるようにする。
【0045】
また、各実施形態において、各間隔規制シートを服地に縫い付ける場合について説明したが、当該各間隔規制シートを服地に取り付ける方法は、縫い付ける方法に限られず、各種の一般的な方法を使用することができる。
【0046】
また、各実施形態では、ゴム紐22の両端部は間隔確保手段24を経由して服本体1,101の前身頃に縫い付けられている場合について説明したが、間隔確保手段24の目的はゴム紐22の張力によりゴム紐22を縫い付けた近傍の布地が身体に密着することを防止するためのものであるため、必ずしも間隔確保手段24はゴム紐22と接している必要はなく、ゴム紐22を縫い付けた近傍にあれば良い。
【0047】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の空調衣服310について、
図7~
図9を用いて説明する。なお、第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0048】
図7(a)は、ファンを作動させたときの空調衣服310の概略正面図、同図(b)は、その胴体部の概略縦断面図、同図(c)は、同図(b)の部分拡大図である。
図7(a)に示すように、ファン(図示省略)を作動させたときの空調衣服310の外観はダウンベスト状となっている。
【0049】
次に、本実施形態の空調衣服310の服本体301の製造方法について、
図8を用いて説明する。なお、以下に説明する服本体301の製造方法は、当該服本体301の胴体部だけに留め、裾の空気漏れ防止手段、ファン用開口部、腕部の開口孔、縫い代等の細部についての説明は省略する。また、服本体301の胴体部は、縦50cm、胴回り100cmとし、胴体密着手段としてのゴム紐22を5本使用し、空気分配手段が施されていない場合について説明する。
【0050】
図8は、服本体301の胴体部の製造方法を説明するための図であり、(a)は、服本体301を構成する服地311の平面図、(b)は、服本体301を構成するメッシュ生地321の平面図、(c)は、服地311にメッシュ生地321を縫い付けた状態の平面図である。
【0051】
1 服本体301の胴体部の服地として、両端に一対のファスナー14を取り付けた縦50cm、横100cmの服地311と、縦70cm、横94cmの目の粗いメッシュ生地321(間隔規制面状体)と、自然長60cmの細いゴム紐22を5本用意する。
2
図8(c)に示すように、服地311の左右端にそれぞれ横幅3cmの余白ができるようにメッシュ生地321の位置を合わせるとともに、服地311とメッシュ生地321とのそれぞれの上下端を揃える。そして、縦10cm間隔ごとに、メッシュ生地321に等量の弛みをもたせ、このメッシュ生地321を服地311に上下端を含め6箇所縫い付ける。つまり、服地311に対し、縦10cm間隔でメッシュ生地321が縫い付けられ、このメッシュ生地321には、縦10cm間隔ごとに4cm分の弛みが生じることとなる。以下、このメッシュ生地321が縫い付けられた服地311の縦10cmごとの帯状の部位を、下から第1弛み帯部311a、第2弛み帯部311b、…、第5弛み帯部311eと称することにする。
3
図9に示すように、第1~第5弛み帯部311a~311eのそれぞれの服地311とメッシュ生地321との間にゴム紐22を通し、各ゴム紐22の両端を、間隔確保手段24を介し一対のファスナー14の近傍に縫い付ける。
【0052】
以上のようにして作製した服本体301を用いた空調衣服310を着用して、ファンを作動させると、
図7(a)~(c)に示すように、服本体301内は陽圧となり膨らむが、ゴム紐22と接するメッシュ生地321の部位は胴体BDに密着するため、ゴム紐22と上下の縫い付け部分を頂点とした略3角形の断面を有した、ゴム紐22の上部に上部面状体321a、下部に下部面状体321bが形成される。つまり、メッシュ生地321は、各ゴム紐22の上方に配され、当該メッシュ生地321の外周側から内周側に向かって下るように傾斜した上部面状体321a(間隔規制面状体)と、ゴム紐22の下方に配され、当該メッシュ生地321の外周側から内周側に向かって上るように傾斜した下部面状体321b(間隔規制面状体)と、を備え、当該上部面状体321aの内周側の端部と当該下部面状体321bの内周側の端部とが連設されたこととなる。
【0053】
なお、本実施形態では、服本体301に目の粗いメッシュ生地321を使用したが、無論、目の細かいメッシュ生地等を組み合わせて使用することにより、空気分配手段としての機能を合わせて備えることもできる。
また、第2、第4弛み帯部311b、311dに相当する部位では、メッシュ生地321とゴム紐22とを省略し、服地311のみで構成する、或いはメッシュ生地321に弛みを持たせずゴム紐22のみを省略することも可能である。
【符号の説明】
【0054】
10、110、310 空調衣服
1、101、301 服本体
12 ファン用開口部
13 空気排出部
14 開閉手段、ファスナー
15a、15b、15c 縫い目
2a、2b、2c 間隔規制シート(第1~第3シート)
102a、102b 間隔規制シート(上部シート、下部シート)
211 縫合線
22 ゴム紐
231 空気流通孔(開口部)
24 間隔確保手段
241 切り欠き
321a 上部面状体
321b 下部面状体
4 ファン
41 空気取込部
411 溝
BD 胴体