(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163268
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】樹木発酵液の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20241114BHJP
A61K 8/9728 20170101ALI20241114BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20241114BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K8/9728
A61Q5/02
A61Q5/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024155408
(22)【出願日】2024-09-10
(62)【分割の表示】P 2024002934の分割
【原出願日】2024-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2023077244
(32)【優先日】2023-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】391066490
【氏名又は名称】日本ゼトック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510096094
【氏名又は名称】株式会社ファーメンステーション
(74)【代理人】
【識別番号】100148862
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179811
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 良和
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慎也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】杉本 利和
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA031
4C083AA032
4C083AA082
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB032
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC092
4C083AC102
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC232
4C083AC242
4C083AC302
4C083AC352
4C083AC392
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC532
4C083AC582
4C083AC642
4C083AC662
4C083AC692
4C083AC712
4C083AD022
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD132
4C083AD152
4C083AD282
4C083AD352
4C083AD492
4C083AD532
4C083CC01
4C083CC33
4C083CC38
4C083DD08
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD28
4C083DD30
4C083DD31
4C083EE24
4C083FF01
(57)【要約】
【課題】新規で、かつ、高い効能を有する、樹木発酵液の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係る樹木発酵液の製造方法は、化粧品原料として用いる樹木発酵液の製造方法であって、ヤマザクラ(Prunus SerrulataまたはPrunus jamasakura)の木部を粉砕し樹木粉末を得る粉砕工程と、前記樹木粉末と水と酵母とを混合し混合物を得る混合工程と、前記混合物を糖化・発酵させ発酵物を得る糖化発酵工程と、前記発酵物からエタノールを留去し濃縮物を得る濃縮工程と、前記濃縮物と有機溶剤とを混合し抽出物を得る抽出工程と、前記抽出物を濾過し、濾液として樹木発酵液を得る濾過工程とを有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧品原料として用いる樹木発酵液の製造方法であって、
ヤマザクラ(Prunus SerrulataまたはPrunus jamasakura)の木部を粉砕し樹木粉末を得る粉砕工程と、
前記樹木粉末と水と酵母とを混合し混合物を得る混合工程と、
前記混合物を糖化・発酵させ発酵物を得る糖化発酵工程と、
前記発酵物からエタノールを留去し濃縮物を得る濃縮工程と、
前記濃縮物と有機溶剤とを混合し抽出物を得る抽出工程と、
前記抽出物を濾過し、濾液として樹木発酵液を得る濾過工程と
を有する
樹木発酵液の製造方法。
【請求項2】
前記樹木粉末の平均粒径(D50)は、100μm以下である
請求項1に記載の樹木発酵液の製造方法。
【請求項3】
前記樹木粉末と水との混合比は、質量比で1:2~1:20である
請求項1に記載の樹木発酵液の製造方法。
【請求項4】
前記酵母は、Saccharomyces属である
請求項1に記載の樹木発酵液の製造方法。
【請求項5】
前記糖化発酵工程において、前記発酵物のエタノール濃度が1質量%以上となった時に発酵を終了する
請求項1に記載の樹木発酵液の製造方法。
【請求項6】
前記有機溶剤は、1,3-ブチレングリコールである
請求項1に記載の樹木発酵液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹木発酵液の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、化粧品に配合される原料の中には、商品の肌に優しいイメージを高める目的で配合される化粧品原料がある。これらの中には、植物等の天然物を素材として生み出される化粧品原料が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。特に、特許文献2に記載のサクラの葉、茎、花、種子から溶媒抽出して得られるサクラ抽出物には、白髪の予防効果があることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-235484号公報
【特許文献2】特開2012-025736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の天然物、自然物、植物を素材として生み出された化粧品原料の中でも、その組合せ方や製造方法によっては、新規な原料となることや、類似の素材由来であっても高い効能を示す原料となることがある。そして、新規な化粧品原料を配合することで、新たな効能やより高い効能を有する製品を得ることができる。
【0005】
そこで、本発明は、新規で、かつ、高い効能を有する、樹木発酵液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る樹木発酵液の製造方法は、化粧品原料として用いる樹木発酵液の製造方法であって、
ヤマザクラ(Prunus SerrulataまたはPrunus jamasakura)の木部を粉砕し樹木粉末を得る粉砕工程と、
前記樹木粉末と水と酵母とを混合し混合物を得る混合工程と、
前記混合物を糖化・発酵させ発酵物を得る糖化発酵工程と、
前記発酵物からエタノールを留去し濃縮物を得る濃縮工程と、
前記濃縮物と有機溶剤とを混合し抽出物を得る抽出工程と、
前記抽出物を濾過し、濾液として樹木発酵液を得る濾過工程と
を有する。
また、本発明に係る樹木発酵液の製造方法は、前記樹木粉末の平均粒径(D50)は、100μm以下であることが好ましい。
また、本発明に係る樹木発酵液の製造方法は、前記樹木粉末と水との混合比は、質量比で1:2~1:20であることが好ましい。
また、本発明に係る樹木発酵液の製造方法は、前記酵母は、Saccharomyces属であることが好ましい。
また、本発明に係る樹木発酵液の製造方法は、前記糖化発酵工程において、前記発酵物のエタノール濃度が1質量%以上となった時に発酵を終了することが好ましい。
また、本発明に係る樹木発酵液の製造方法は、前記有機溶剤は、1,3-ブチレングリコールであることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、新規で、かつ、高い効能を有する、樹木発酵液の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のチロシナーゼ活性促進剤、メラニン産生促進剤、白髪改善化粧料、樹木発酵液の製造方法、チロシナーゼ活性促進剤の製造方法、メラニン産生促進剤の製造方法及び白髪改善化粧料の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0009】
<樹木発酵液の製造方法>
まず、本発明のチロシナーゼ活性促進剤、メラニン産生促進剤、白髪改善化粧料の説明に先立ち、本発明の樹木発酵液の製造方法について説明する。
本発明の樹木発酵液の製造方法は、化粧品原料として用いる樹木発酵液の製造方法であって、ヤマザクラ(Prunus SerrulataまたはPrunus jamasakura)の木部を粉砕し樹木粉末を得る粉砕工程と、前記樹木粉末と水と酵母とを混合し混合物を得る混合工程と、前記混合物を糖化・発酵させ発酵物を得る糖化発酵工程と、前記発酵物からエタノールを留去し濃縮物を得る濃縮工程と、前記濃縮物と水と有機溶剤とを混合し中間抽出物を得る抽出工程と、前記中間抽出物を濾過し、濾液として樹木発酵液を得る濾過工程とを有している。
【0010】
本発明で用いるヤマザクラ(学名:Prunus SerrulataまたはPrunus jamasakura、以下単にヤマザクラという)は、バラ科サクラ属の落葉高木のサクラの一種で、日本固有種のサクラである。特に、本発明では、ヤマザクラの幹から樹皮を取り除いた木部を原材料として用いる。
【0011】
以下、各工程について詳細に説明する。
(粉砕工程)
粉砕工程では、ヤマザクラの木部を用意し、これらを粉砕することで樹木粉末を得る。
ヤマザクラの木部を粉砕する方法としては、特に限定されず、例えば、振動式ボールミル、ロッドミル、リングミル、ジェットミル、ローラーミル等を用いて粉砕することができる。また、粉砕工程は、木部を粗く粉砕し粗粉砕物を得る粗粉砕工程と、粗粉砕物をさらに細かく粉砕する微粉砕工程とを有していてもよい。
【0012】
ところで、木部等の木材中に含まれるリグニン、セルロース及びヘミセルロースは、非常に強固で化学的に安定なリグノセルロース構造を形成している。本工程では、このリグノセルロース構造を破壊して、後述する酵母や酵素等がセルロースやヘミセルロースに接触し易いサイズまで粉砕することが好ましい。これにより、より効果的に糖化・発酵を行うことができる。
【0013】
本工程において得られる樹木粉末の平均粒径(D50)は、特に限定されないが、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。これにより、後述する糖化発酵工程における糖化・発酵をより効率よく行うことができる。
【0014】
(混合工程)
混合工程では、粉砕工程で得られた樹木粉末と水と酵母とを混合し混合物を得る。なお、混合工程は、樹木粉末と水とを混合し第一混合物を得る第一混合工程と、第一混合物と酵母とを混合する第二混合工程とを有していることが好ましい。これにより、より均一な糖化・発酵を行うことができる。
【0015】
樹木粉末と水との混合比は、特に限定されないが、質量比で、1:2~1:20であることが好ましく、1:4~1:15であることがより好ましく、1:6~1:12であることがさらに好ましい。これにより、発酵をより効率よく行うことができる。
【0016】
酵母としては、特に限定されないが、例えば、Saccharomyces属のSaccharomyces cerecisiae、Saccharomyces bayanus、Saccharomyces boulardii、Saccharomyces bulderi、Saccharomyces carioanus、Saccharomyces cariocus、Saccharomyces chevalieri、Saccharomyces dairenensis、Saccharomyces ellipsoideus、Saccharomyces florentinus、Saccharomyces kluyveri、Saccharomyces martiniae、Saccharomyces norbensis、Saccharomyces paradoxus、Saccharomyces pastorianus、Saccharomyces spencerorum、Saccharomyces turicensis、Saccharomyces unisporus、Saccharomyces uvarum、Saccharomyces zonatus、Saccharomycopsiz属、Candida属のCandida kefyr、Candida bombicola、Candida utilis、Candida saitoana、Zygosaccharomyces属のZygosaccharomyces rouxii、Zygosaccharomyces microellipsoides、Kluyveromyces属、Schizosaccharomyces属のSchizosaccharomyces pombe、Torulaspora属のTorulaspora delbrueckii、Pichia属のPichia anomala、Pichia caribbica、Pseudoxyma属のPseudoxyma tsukubaensis、Endomyces属等を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、酵母として、Saccharomyces属を用いることが好ましい。これにより、後述する発酵工程において発酵をより効果的に行うことができる。
【0017】
酵母の添加量は、樹木粉末1kgに対して、0.01kg以上であることが好ましく、0.02~0.2kgであることがより好ましい。これにより、発酵をより効率よく行うことができる。
【0018】
また、酵母と一緒に、麹菌や酵素を添加してもよい。麹菌としては、黄麹菌、白麹菌、黒麹菌、紅麹菌等が挙げられる。麹菌を添加することにより、樹木粉末の糖化・発酵を促進することができる。酵素としては、メイセラーゼ(明治製菓株式会社製)、ドリセラーゼ(協和発酵株式会社製)、Amano AあるいはT(アマノエンザイム株式会社製)等が挙げられる。酵素を添加することにより、樹木粉末の糖化・発酵を促進することができる。
【0019】
(糖化発酵工程)
糖化発酵工程では、混合工程で得られた混合物を糖化・発酵させ発酵物を得る。具体的には、本工程では、樹木粉末に含まれるセルロースやヘミセルロース等を糖化・発酵させる。また、本工程では、他の糖質等の基質を添加せずに、混合物を発酵させる。
【0020】
糖化発酵工程において、発酵物のエタノール濃度が1質量%以上となった時に発酵を終了することが好ましい。糖化発酵工程における発酵は、20~37℃で行われることが好ましく、28~30℃で行われることがより好ましい。
【0021】
糖化発酵工程における発酵期間は、得られる発酵物のエタノール濃度が1質量%以上になるまで発酵を行えば特に限定されないが、24時間~10日であることが好ましく、48時間~7日であることがより好ましく、72時間~5日であることがさらに好ましい。これにより、より効率よく発酵物を得ることができる。
【0022】
(濃縮工程)
濃縮工程では、発酵物からエタノールを留去し濃縮物を得る。
本工程は、濃縮物中におけるエタノール濃度が1質量%以下となるまで、エタノールを留去する。留去する方法としては、特に限定されず、従来から用いられている方法を用いることができる。
【0023】
(抽出工程)
抽出工程では、濃縮物から有機溶剤を用いて、濃縮物中に含まれる有機溶剤に可溶な成分(ポリフェノール等の成分)を抽出し抽出物を得る。なお、抽出工程において、前述した濃縮工程で留去したエタノールの量と同じ量の水を添加することが好ましい。容量を調整することにより、抽出条件の製造ロット間を解消することができる。
【0024】
抽出に用いる有機溶剤としては、例えば、エタノール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等を挙げることができ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、1,3-ブチレングリコールを用いることが好ましい。これにより、抽出を効率よく行うことができる。なお、濃縮工程を経ずに、そのままエタノールで抽出してもよい。
【0025】
抽出温度としては、特に限定されず、室温で行うことができる。また、抽出時間としては、特に限定されないが、2時間~3日であることが好ましく、10時間~2日であることがより好ましく、15時間~1.5日であることがさらに好ましい。
【0026】
(濾過工程)
濾過工程では、抽出工程で得られた抽出物を濾過し、濾液として樹木発酵液を得る。
このようにして得られる樹木発酵液は、新規な原料であり、化粧品原料として好適に用いることができる。特に、このように糖化発酵工程を経て得られる樹木発酵液を配合することで、後述するチロシナーゼ活性促進剤、メラニン産生促進剤や白髪改善化粧料としての優れた効果を発揮するものとなる。
【0027】
<チロシナーゼ活性促進剤・チロシナーゼ活性促進剤の製造方法>
本発明のチロシナーゼ活性促進剤は、ヤマザクラの木部由来の樹木発酵液を含むことを特徴としている。チロシナーゼは、メラニンを合成する酵素である。本発明者らは、糖化発酵工程を経て得られる樹木発酵液にチロシナーゼの働きを活性化する高い効果があることを見いだし、この樹木発酵液を配合することで、優れたチロシナーゼ活性を備えたチロシナーゼ活性促進剤を発明するに至った。
【0028】
樹木発酵液は、ヤマザクラの木部を酵母によって糖化発酵させる工程を経て得られる発酵抽出液であり、樹木発酵液としては、特に、上述した樹木発酵液の製造方法により製造されたものを用いることが好ましい。
チロシナーゼ活性促進剤中における樹木発酵液の含有量は、特に限定しないが、0.0001~10質量%が好ましく、0.01~5質量%が特に好ましい。
【0029】
また、本発明のチロシナーゼ活性促進剤の製造方法は、上述した混合工程、糖化発酵工程、濃縮工程、抽出工程及び濾過工程の他に、得られた樹木発酵液を配合し、チロシナーゼ活性促進剤を得る配合工程を有している。
【0030】
<メラニン産生促進剤・メラニン産生促進剤の製造方法>
本発明のメラニン産生促進剤は、ヤマザクラの木部由来の樹木発酵液を含むことを特徴としている。メラニンは、ヒトを含む動物、植物、原生動物、また一部の菌類、真正細菌において形成される色素であり、肌や毛髪、瞳の色を構成する黒色の色素である。本発明者らは、糖化発酵工程を経て得られる樹木発酵液にメラニンの産生を促進する高い効果があることを見いだし、この樹木発酵液を配合することで、優れたメラニン産生促進効果を備えたメラニン産生促進剤を発明するに至った。
【0031】
樹木発酵液は、ヤマザクラの木部を酵母によって糖化発酵させる工程を経て得られる発酵抽出液であり、樹木発酵液としては、特に、上述した樹木発酵液の製造方法により製造されたものを用いることが好ましい。
メラニン産生促進剤中における樹木発酵液の含有量は、特に限定しないが、0.0001~10質量%が好ましく、0.01~5質量%が特に好ましい。
【0032】
また、本発明のメラニン産生促進剤の製造方法は、上述した混合工程、糖化発酵工程、濃縮工程、抽出工程及び濾過工程の他に、得られた樹木発酵液を配合し、メラニン産生促進剤を得る配合工程を有している。
【0033】
<白髪改善化粧料・白髪改善化粧料の製造方法>
本発明の白髪改善化粧料は、ヤマザクラの木部由来の樹木発酵液を含むことを特徴としている。本発明者らは、糖化発酵工程を経て得られる樹木発酵液にメラニン産生を促進する高い効果があることから、これによって、白髪を改善する(白髪を目立たなくする)優れた効果があることを見いだし、発明を完成するに至った。
【0034】
樹木発酵液は、ヤマザクラの木部を酵母によって糖化発酵させる工程を経て得られる発酵抽出液であり、樹木発酵液としては、特に、上述した樹木発酵液の製造方法により製造されたものを用いることが好ましい。
白髪改善化粧料中における樹木発酵液の含有量は、特に限定しないが、0.0001~10質量%が好ましく、0.01~5質量%が特に好ましい。
【0035】
また、本発明の白髪改善化粧料の製造方法は、上述した混合工程、糖化発酵工程、濃縮工程、抽出工程及び濾過工程の他に、得られた樹木発酵液を配合し、白髪改善化粧料を得る配合工程を有している。
【0036】
白髪改善化粧料の剤型としては、例えば、軟膏、クリーム、乳液、ローション、おしろい、エッセンス、パック、ゲル、ヘアミスト、ヘアトニック、ヘアリキッド、ヘアーリンス、ヘアーシャンプー、ヘアートリートメント、ヘアーコンディショナー、エアゾール、ムース等、毛髪あるいは頭皮に適用可能なものであれば、特に限定されない。
【0037】
以上、本発明のチロシナーゼ活性促進剤、メラニン産生促進剤、白髪改善化粧料、樹木発酵液の製造方法、チロシナーゼ活性促進剤の製造方法、メラニン産生促進剤の製造方法及び白髪改善化粧料の製造方法について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【実施例0038】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
<樹木発酵液の調製(製造)>
ヤマザクラの幹から樹皮を取り除いた木部を粉砕した樹木粉末(乾燥物)を用意した(粉砕工程)。樹木粉砕物の平均粒径(D50)は、50μm以下であった。次に、樹木粉末:1質量部と、水:10質量部と、酵母(Saccharomyces属):0.1質量部とを混合し混合物を得た(混合工程)。次に、混合物を28℃で糖化・発酵させ、発酵物のエタノール濃度が1質量%以上となった時に発酵を終了した(糖化発酵工程)。次に、発酵物からエタノールを留去し、濃縮物を得た(濃縮工程)。濃縮物中のエタノール濃度は1質量%以下であった。得られた濃縮物の濃度が50w/v%となるように1,3-ブチレングリコールを添加し、室温で1日抽出した(抽出工程)。その後、抽出工程で得られた抽出物を濾過し、濾液として樹木発酵液を得た(濾過工程)。
【0039】
<桜樹木抽出液(未発酵液)の調製>
ヤマザクラの幹から樹皮を取り除いた木部を粉砕した樹木粉末(乾燥物)を用意した。樹木粉砕物の平均粒径(D50)は、50μm以下であった。次に、樹木粉末:1質量部と、水:10質量部と混合し、得られた混合物を室温で一定時間放置した。放置後の混合物の濃度が50w/v%となるように1,3-ブチレングリコールを添加し、室温で1日抽出した。その後、得られた抽出物を濾過し、濾液として桜樹木抽出液を得た。
【0040】
<桜(葉)抽出物>
桜の葉の部位から抽出された桜(葉)抽出物として、一丸ファルコス社製:サクラエキスB(SAKURA Extract B)を用意した。
【0041】
<チロシナーゼ活性の評価(チロシナーゼ活性促進剤としての評価)>
上記のようにして得られた樹木発酵液、桜樹木抽出液及び桜(葉)抽出物を水にて20倍、100倍に希釈した溶液を各試料溶液とした。
また、マッシュルーム由来チロシナーゼを300units/mLで0.1Mリン酸緩衝液(pH6.7)に溶解したものを酵素溶液、L‐DOPAを1mMで0.1Mリン酸緩衝液(pH6.7)に溶解したものを基質溶液とした。
96ウェルプレートを用いて試料溶液25μL、酵素溶液100μLを入れ、37℃で10分間インキュベートした。そこに基質溶液125μLを加え、37℃で30分間インキュベートした後、475nmにおける吸光度を測定した。
試料溶液を添加した際の吸光度を測定し、下記計算式によりチロシナーゼ阻害活性(%)を算出した。
【0042】
(チロシナーゼ阻害活性の計算式)
チロシナーゼ阻害活性(%)=((C-B)-(S-SB))/(C-B)×100%
C :コントロール(酵素のみ添加)の吸光度
B :ブランク(添加物無し)の吸光度
S :サンプル(試料溶液+酵素)の吸光度
SB:サンプルブランク(試料溶液のみ、酵素添加なし)の吸光度
この結果を表1に示す。
【0043】
【0044】
表1の結果から、桜樹木抽出液(未発酵)、桜(葉)抽出物には、十分なチロシナーゼ活性が認められなかったが、糖化発酵工程を経た樹木発酵液にはチロシナーゼ活性の促進効果が飛躍的に向上することが認められた。したがって、樹木発酵液を含む剤型は、チロシナーゼ活性促進剤として有用であることが解る。
【0045】
<メラニン産生の評価(メラニン産生促進剤としての評価)>
マウスメラノーマ細胞(Bl6melanoma細胞)5.0×l03cells/mLを10%FBS含有ダルベッコ改変イーグル培地に分散し、12ウェルプレートに1mL播種し、37℃、5%CO2下で培養した。24時間後、樹木発酵液を濃度が0.25、0.1、0.01質量%となるように添加した。樹木発酵液無添加を対照とした。細胞播種から72時間培養後、培地を捨てPBS(-)で洗浄し、無血清DMEMで10倍希釈したalamarBlue(Cat No.DAL1025, Thermo Fisher Scientific,USA)溶液を120μL加え、CO2インキュベータ内で1時間培養した。
【0046】
培養後のalamarBlue溶液から100μLを96ウェルプレートに移し、マイクロプレートリーダーを用いて570nm(OD570)および650nm(OD650)における吸光度を測定した。
96ウェルプレートの各ウェルをPBS(-)200μLで静かに1回洗浄し、10%ジメチルスルホキシド含有する1M水酸化ナトリウム水溶液を100μL加え、85℃で10分間インキュベートした。
【0047】
培養後プレートミキサーを用いて270rpmで60秒間振とうし、マイクロプレートリーダーを用いて405nmの吸光度(OD405)を測定した。
【0048】
被験試料(各濃度の樹木発酵液)及び対照のOD570、OD600、OD405から、下記計算式に従って、被験試料のメラニン生成率(%)を算出した。
(メラニン生成率の計算式)
メラニン生成率(%)=SM/(S-SR)/CM/(C-CR)×100
CM:対照のOD405 C:対照のOD570 CR:対照のブランクOD650
SM:被験試料のOD405 S:被験試料のOD570 SR:被験試料のOD650
【0049】
【0050】
表2から解るように、本発明に係る樹木発酵液にはメラニン生成効果があることが確認された。したがって、樹木発酵液を含む剤型は、メラニン産生促進剤として有用であることが解る。
【0051】
また、以下に、本発明の白髪改善化粧料の処方例を示す。
<処方例1> ローション
グリセリン 5.00
DPG 5.00
キサンタンガム 0.05
PEG-60水添ヒマシ油 0.50
クエン酸 0.02
クエン酸Na 0.10
EDTA-2Na 0.05
エタノール 5.00
樹木発酵液 1.00
防腐剤 適 量
香料 適 量
水 残 部
合計 100
【0052】
<処方例2> 乳液
ステアリン酸ポリグリセリルー10 2.00
セスキステアリン酸ソルビタン 1.00
水添ナタネ油アルコール 1.80
シア脂 2.00
イソステアリン酸メチルヘプチル 3.00
ラウリン酸メチルヘプチル 3.00
スクワラン 5.00
キサンタンガム 0.10
グリセリン 5.00
BG 1.00
樹木発酵液 0.10
防腐剤 適 量
香料 適 量
水 残 部
合計 100
【0053】
<処方例3> クリーム
自己乳化型グリセリルモノステアレート 3.00
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 1.00
ステアリン酸 8.00
ステアリルアルコール 5.00
スクワラン 10.00
ミツロウ 2.00
グリセリン 5.00
水酸化カリウム 0.30
樹木発酵液 0.10
防腐剤 適 量
酸化防止剤 適 量
香料 適 量
水 残 部
合計 100
【0054】
<処方例4> 美容液
グリセリン 3.00
BG 3.00
カルボマー 0.50
水酸化K 0.15
ヒドロキシエチルセルロース 0.10
エタノール 5.00
樹木発酵液 0.25
防腐剤 適 量
水 残 部
合計 100
【0055】
<処方例5> ヘアリキッド
PEG-40水添ヒマシ油 2.00
エタノール 50.00
樹木発酵液 1.00
香料 適 量
水 残 部
合計 100
【0056】
<処方例6> ヘアトニック
エタノール 70.0
L-メントール 0.20
カルボマー 0.10
PEG-60水添ヒマシ油 0.50
樹木発酵液 5.00
香料 適 量
水 残 部
合計 100
【0057】
<処方例7> ヘアスプレー
(原液)
PEG-40水添ヒマシ油 1.00
エタノール 98.00
L-メントール 0.10
樹木発酵液 0.25
香料 適 量
(充填)
原液 50.0
ジメチルエーテル 45.0
LPG 5.00
合計 100
【0058】
<処方例8> ヘアオイル
水添ポリイソブテン 60.0
ミリスチン酸メチルヘプチル 36.7
シア脂 1.00
ツバキ油 1.00
アルガニアスピノサ核油 1.00
香料 0.20
樹木発酵液 0.05
合計 100
【0059】
<処方例9> ヘアワックス
セテス-2 6.00
セテス-7 2.00
セテス-30 1.00
ステアリン酸 5.00
マイクロスタリンワックス 3.00
キャンデリラロウ 3.00
ステアリルアルコール 3.00
エチルヘキサン酸セチル 10.0
BG 3.00
ジメチコン 1.00
乳酸 0.50
水酸化Na 0.50
樹木発酵液 0.05
防腐剤 適 量
水 残 部
合計 100
【0060】
<処方例10> ヘアーシャンプー
β-ラウリルアミノプロピオン酸Na 12.0
ラウリン酸アミドプロピルベタイン 15.0
POE(3)ラウリルエーテル酢酸Na 5.00
ラウリン酸ジエタノールアミド 3.50
ポリクオタニウム-22 1.50
ポリクオタニウム-10 0.30
グリセリン 1.00
ラベンダー油 0.05
ホホバ油 0.10
樹木発酵液 0.01
防腐剤 適 量
水 残 部
合計 100
【0061】
<処方例11> コンディショナー
ステアロキシプロピルトリモニウムクロリド 1.30
セタノール 0.75
ステアリルアルコール 0.75
ステアラミドプロピルジメチルアミン 0.60
ステアリン酸グリセリル 0.50
ステアリルアルコール 3.00
スクワラン 0.10
ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/
ロジン酸)ジペンタエリスリチル 0.50
カカオ脂 1.00
BG 3.00
グリセリン 5.00
クエン酸 0.063
クエン酸Na 0.10
樹木発酵液 0.05
香料 適 量
水 残 部
合計 100
【0062】
<処方例12> トリートメント
ステアラミドプロピルジメチルアミン 3.25
ステアリン酸グリセリル 0.50
ステアリルアルコール 7.00
ラウリン酸メチルヘプチル 2.00
イソステアリン酸フィトステリル 3.00
オクチルドデカノール 3.00
ワセリン 4.00
PG 5.00
グルタミン酸 1.00
ポリクオタニウム-47 1.20
樹木発酵液 0.05
防腐剤 適 量
水 適 量
合計 100