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特開2024-163270情報処理装置、情報処理方法、及び情報処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163270
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/02 20230101AFI20241114BHJP
【FI】
G06Q30/02
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024157137
(22)【出願日】2024-09-11
(62)【分割の表示】P 2022570997の分割
【原出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】衛藤 嘉之
(72)【発明者】
【氏名】糸永 航
(72)【発明者】
【氏名】松田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】森 洋治
(57)【要約】
【課題】顧客情報の保有者とマーケティング主体とが異なる場合に、顧客のプライバシーに配慮しつつ、顧客情報を活用した事業機会の創出を支援すること。
【解決手段】マーケティング支援装置(1)は、顧客情報管理装置から取得された顧客情報に対して秘匿化を行った秘匿化データを第1のデータベースに登録する登録部(11)と、顧客情報に基づいて潜在顧客の度合いを示す評価値を算出するための算出ロジックを、所定の事業者から取得する取得部(12)と、算出ロジックを用いて秘匿化データから評価値を算出する算出部(13)と、評価値に基づく出力情報を出力する出力部(14)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客情報管理装置から取得された顧客情報に対して秘匿化を行った秘匿化データを第1のデータベースに登録する登録手段と、
前記顧客情報に基づいて潜在顧客の度合いを示す評価値を算出するための算出ロジックを、所定の事業者から取得する取得手段と、
前記算出ロジックを用いて前記秘匿化データから前記評価値を算出する算出手段と、
前記評価値に基づく出力情報を出力する出力手段と、
を備えるマーケティング支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーケティング支援装置、システム及び方法並びにプログラムに関し、特に、秘匿化された顧客情報を利用したデジタルマーケティングを支援するためのマーケティング支援装置、システム及び方法並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な業種でデジタルマーケティングにより事業機会の創出が求められている。ここで、デジタルマーケティングを行うためには、顧客情報(個人情報等)を活用してより広告効果の高い顧客へアプローチすることが有効である。一方で、法律上の制限があり、個人情報を第三者(事業者等)が自由に利用できないことが多い。
【0003】
特許文献1には、広告配信事業者に個人情報を知られることなく、利用者の属性に適した広告を配信するための広告配信システムに関する技術が開示されている。特許文献2には、個人情報を匿名化した上で各種サービス提供者による個人情報の一部を利用可能にするための情報仲介方法に関する技術が開示されている。非特許文献1には、秘密分散を利用した秘密計算に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-108934号公報
【特許文献2】特開2005-346248号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Toshinori Araki, Jun Furukawa, Yehuda Lindell, Ariel Nof and Kazuma Ohara, High-Throughput Semi-Honest Secure Three-Party Computation with an Honest Majority, Proceedings of the 2016 ACM SIGSAC, Conference on Computer and Communications Security, October 2016, Pages 805-817
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1にかかる技術は、外部から与えられた条件を満たす属性を有する個人を特定して広告配信事業者に通知するものであるが、条件を満たす度合いが不明であり、きめ細かなマーケティングを行うことができないという問題点がある。尚、特許文献2及び非特許文献1についてもこのような問題点を解決することができない。
【0007】
本開示は、このような問題点を解決するためになされたものであり、顧客情報の保有者とマーケティング主体とが異なる場合に、顧客のプライバシーに配慮しつつ、顧客情報を活用した事業機会の創出を支援するためのマーケティング支援装置、システム及び方法並びに非一時的なコンピュータ可読媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様にかかるマーケティング支援装置は、
顧客情報管理装置から取得された顧客情報に対して秘匿化を行った秘匿化データを第1のデータベースに登録する登録手段と、
前記顧客情報に基づいて潜在顧客の度合いを示す評価値を算出するための算出ロジックを、所定の事業者から取得する取得手段と、
前記算出ロジックを用いて前記秘匿化データから前記評価値を算出する算出手段と、
前記評価値に基づく出力情報を出力する出力手段と、
を備える。
【0009】
本開示の第2の態様にかかるマーケティング支援システムは、
顧客情報を管理する顧客情報管理装置と、
マーケティング支援装置と、を備え、
前記マーケティング支援装置は、
顧客情報管理装置から取得された前記顧客情報に対して秘匿化を行った秘匿化データを第1のデータベースに登録する登録手段と、
前記顧客情報に基づいて潜在顧客の度合いを示す評価値を算出するための算出ロジックを、所定の事業者から取得する取得手段と、
前記算出ロジックを用いて前記秘匿化データから前記評価値を算出する算出手段と、
前記評価値に基づく出力情報を出力する出力手段と、
を備える。
【0010】
本開示の第3の態様にかかるマーケティング支援方法は、
コンピュータが、
顧客情報管理装置から顧客情報を取得し、
前記取得された顧客情報に対して秘匿化を行った秘匿化データを第1のデータベースに登録し、
前記顧客情報に基づいて潜在顧客の度合いを示す評価値を算出するための算出ロジックを、所定の事業者から取得し、
前記算出ロジックを用いて前記秘匿化データから前記評価値を算出し、
前記評価値に基づく出力情報を出力する。
【0011】
本開示の第4の態様にかかるプログラムが格納された非一時的なコンピュータ可読媒体は、
顧客情報管理装置から顧客情報を取得する取得処理と、
前記取得された顧客情報に対して秘匿化を行った秘匿化データを第1のデータベースに登録する登録処理と、
前記顧客情報に基づいて潜在顧客の度合いを示す評価値を算出するための算出ロジックを、所定の事業者から取得する取得処理と、
前記算出ロジックを用いて前記秘匿化データから前記評価値を算出する算出処理と、
前記評価値に基づく出力情報を出力する出力処理と、
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示により顧客情報の保有者とマーケティング主体とが異なる場合に、顧客のプライバシーに配慮しつつ、顧客情報を活用した事業機会の創出を支援するためのマーケティング支援装置、システム及び方法並びに非一時的なコンピュータ可読媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態1にかかるマーケティング支援装置の構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態1にかかるマーケティング支援方法の流れを示すフローチャートである。
図3】本実施形態2にかかるマーケティング支援システムの全体構成を示すブロック図である。
図4】本実施形態2にかかる顧客情報管理装置の構成を示すブロック図である。
図5】本実施形態2にかかるマーケティング支援装置の構成を示すブロック図である。
図6】本実施形態2にかかるマーケティング支援方法の流れを示すシーケンス図である。
図7】本実施形態2にかかるマーケティング支援方法の流れを示すシーケンス図である。
図8】本実施形態3にかかるマーケティング支援システムの全体構成を示すブロック図である。
図9】本実施形態3にかかるマーケティング支援装置の構成を示すブロック図である。
図10】本実施形態3にかかる顧客金融資産情報の例を示す図である。
図11】本実施形態3にかかる企業情報の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0015】
<実施形態1>
図1は、本実施形態1にかかるマーケティング支援装置1の構成を示すブロック図である。マーケティング支援装置1は、秘匿化された顧客情報を利用したデジタルマーケティングを支援するための情報処理装置である。ここで、マーケティング支援装置1は、通信ネットワーク(不図示、以降、通信ネットワークを単にネットワークとも称する)を介して顧客情報管理装置(不図示)及び所定の事業者の端末(不図示)と接続されている。尚、ネットワークは、有線か無線であるかを問わないし、通信プロトコルの種別を問わない。顧客情報管理装置は、個人又は企業の顧客における個人情報や機微情報(センシング情報)を含む顧客情報を管理する組織(企業等)により運用される情報処理装置である。顧客情報管理装置は、データベース等の記憶装置に顧客情報を登録しているものとする。また、顧客情報管理装置は、顧客から顧客情報の秘匿化及びデジタルマーケティングへの活用の同意を得た上で、マーケティング支援装置1へ顧客情報を提供するものとする。また、事業者は、秘匿化された顧客情報を利用して事業機会を創出したいものである。
【0016】
マーケティング支援装置1は、登録部11と、取得部12と、算出部13と、出力部14とを備える。登録部11は、顧客情報管理装置から取得された顧客情報に対して秘匿化を行った秘匿化データを第1のデータベースに登録する。ここで、秘匿化とは、外部からのアクセスに対してデータ内容を保護するための所定の加工処理をいう。秘匿化には、暗号化や秘密分散によるデータの分割等が含まれる。また、秘匿化には、個人情報の匿名化を含めても良い。また、第1のデータベースは、秘匿化された秘匿化データを保存するためのデータベースシステムである。第1のデータベースは、マーケティング支援装置1が内蔵する記憶装置(不図示)により実現されてもよい。または、第1のデータベースは、マーケティング支援装置1とネットワークを介して接続された1以上のデータベースサーバにより実現されてもよい。
【0017】
取得部12は、所定の算出ロジックを、所定の事業者(の端末)から取得する。算出ロジックとは、顧客情報に基づいて潜在顧客の度合いを示す評価値を算出するための情報である。例えば、算出ロジックは、1顧客の顧客情報に含まれる複数の要素データを用いた演算式の定義情報であっても良い。また、評価値(スコア)は、数値又はレベル値である。
【0018】
算出部13は、算出ロジックを用いて秘匿化データから評価値を算出する。例えば、算出部13は、算出ロジックに定義された要素データに対応する秘匿化データを第1のデータベースから取得し、取得した秘匿化データを用いて算出ロジックに定義された演算を行うことにより評価値を求めても良い。または、算出部13は、第1のデータベースに対して、算出ロジックに定義された要素データにおける演算を指示し、演算結果を評価値として取得してもよい。また、算出部13は、第1のデータベースに対して、算出ロジックの一部の演算を指示し、第1のデータベースから取得した演算結果を用いて算出ロジックの残りの演算を行うことにより評価値を求めても良い。尚、算出部13は、顧客ごとに評価値を算出するものとする。また、算出部13は、秘匿化データから秘密計算により評価値を算出するとよい。これにより、秘匿化データを復号化せずに、算出ロジックに基づく評価値を求めることができる。尚、秘密計算には、例えば、秘密分散を利用した方式、準同型暗号を利用した方式、又は、ハードウエアを利用した方式を用いることができる。秘密分散を利用した方式は、例えば、上述した非特許文献1の方式であってもよい。ハードウエアを利用した方式は、Trusted Execution Environment等を用いたものであってもよい。
【0019】
出力部14は、評価値に基づく出力情報を出力する。ここで、出力情報は、算出された評価値及び当該評価値に対応する顧客識別情報の組とするとよい。これにより、評価値が相対的に高い顧客は、潜在顧客の可能性が高く、評価値が相対的に低い顧客は、潜在顧客の可能性が低いことを容易に把握できる。特に、事業者は、評価値の閾値との大小により潜在顧客か否かを判定できるだけでなく、評価値により潜在顧客の度合いを把握できる。
【0020】
尚、出力部14は、複数の顧客における評価値の分布情報を出力情報として出力しても良い。分布情報とは、例えば、評価値ごとの顧客の人数といった統計情報である。これにより、例えば、事業者は、具体的な顧客の機微情報が不明であっても、顧客情報管理装置が管理する顧客の傾向を把握できる。
【0021】
出力部14は、顧客情報管理装置に対して出力情報を出力するとよい。これにより、顧客情報管理装置は、顧客ごとの評価値又は分布情報を把握できる。そして、事業者からの指示に応じて評価値の条件を満たす顧客に対して、広告等を行うことができる。または、出力部14は、事業者に対して出力情報を出力してもよい。例えば出力情報が評価値及び顧客識別情報の組である場合、事業者は、評価値の条件を満たす顧客識別情報を選出し、選出した顧客識別情報に対して広告を行う依頼を顧客情報管理装置へ行うことができる。また、出力情報が評価値の分布情報である場合、事業者は、広告対象とする評価値の閾値や条件を容易に決定することができる。
【0022】
図2は、本実施形態1にかかるマーケティング支援方法の流れを示すフローチャートである。まず、登録部11は、顧客情報管理装置から顧客情報を取得する(S11)。次に、登録部11は、ステップS11で取得された顧客情報に対して秘匿化を行った秘匿化データを第1のデータベースに登録する(S12)。そして、取得部12は、顧客情報に基づいて潜在顧客の度合いを示す評価値を算出するための算出ロジックを、所定の事業者から取得する(S13)。続いて、算出部13は、ステップS13で取得した算出ロジックを用いて秘匿化データから評価値を算出する(S14)。その後、出力部14は、評価値に基づく出力情報を出力する(S15)。
【0023】
このように、本実施形態にかかるマーケティング支援装置1は、評価値に基づく出力情報を出力するため、顧客情報管理装置又は事業者は、潜在顧客の度合いを把握できる。そのため、きめ細かなマーケティングを行うことを支援できる。そして、顧客情報管理装置が管理する顧客情報自体は、事業者には開示されない。つまり、顧客情報の保有者とマーケティング主体(事業者)とが異なる場合に、顧客のプライバシーに配慮しつつ、顧客情報を活用した事業機会の創出を支援することができる。
【0024】
尚、マーケティング支援装置1は、図示しない構成としてプロセッサ、メモリ及び記憶装置を備えるものである。また、当該記憶装置には、本実施形態にかかるマーケティング支援方法の処理が実装されたコンピュータプログラムが記憶されている。そして、当該プロセッサは、記憶装置からコンピュータプログラムを前記メモリへ読み込ませ、当該コンピュータプログラムを実行する。これにより、前記プロセッサは、登録部11、取得部12、算出部13及び出力部14の機能を実現する。
【0025】
または、登録部11、取得部12、算出部13及び出力部14は、それぞれが専用のハードウェアで実現されていてもよい。また、各装置の各構成要素の一部又は全部は、汎用または専用の回路(circuitry)、プロセッサ等やこれらの組合せによって実現されもよい。これらは、単一のチップによって構成されてもよいし、バスを介して接続される複数のチップによって構成されてもよい。各装置の各構成要素の一部又は全部は、上述した回路等とプログラムとの組合せによって実現されてもよい。また、プロセッサとして、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(field-programmable gate array)、量子プロセッサ(量子コンピュータ制御チップ)等を用いることができる。
【0026】
また、マーケティング支援装置1の各構成要素の一部又は全部が複数の情報処理装置や回路等により実現される場合には、複数の情報処理装置や回路等は、集中配置されてもよいし、分散配置されてもよい。例えば、情報処理装置や回路等は、クライアントサーバシステム、クラウドコンピューティングシステム等、各々が通信ネットワークを介して接続される形態として実現されてもよい。また、マーケティング支援装置1の機能がSaaS(Software as a Service)形式で提供されてもよい。
【0027】
<実施形態2>
本実施形態2は、上述した実施形態1の具体的な実施例である。マーケティング支援システム1000は、顧客端末100、顧客情報管理装置200、事業者端末300及びマーケティング支援装置400を備える。顧客端末100、顧客情報管理装置200、事業者端末300及びマーケティング支援装置400のそれぞれは、ネットワークNを介して接続されている。ここで、ネットワークNは、有線又は無線の通信回線、例えばインターネットである。
【0028】
顧客U1は、顧客情報管理装置200を運用する顧客情報管理組織による管理対象のユーザである。顧客U1は、例えば、個人や企業の社員等である。顧客端末100は、顧客U1により操作される情報端末である。顧客端末100は、例えば、携帯電話端末、スマートフォン、タブレット端末又はパーソナルコンピュータ等である。顧客端末100は、顧客U1の操作に応じて、顧客情報の登録要求をネットワークNを介して顧客情報管理装置200へ送信する。ここで、顧客情報には、顧客のプロフィール等の個人情報や取引情報等が含まれる。また、顧客端末100は、登録した顧客情報についてデータ秘匿化及び活用についての本人同意をネットワークNを介して顧客情報管理装置200へ送信する。また、顧客端末100は、顧客情報管理装置200からネットワークNを介して広告や商品の提案を受信し、受信した広告や提案内容を画面に表示する。顧客端末100は、顧客U1の操作に応じて、提案内容に対する申込や個人情報の開示同意をネットワークNを介して顧客情報管理装置200へ送信する。顧客端末100は、必要に応じて、顧客情報管理装置200を介して事業者との間の提案内容の成約処理を行う。
【0029】
顧客情報管理装置200は、顧客U1を含む顧客の顧客情報を管理する組織により運用される情報処理装置である。顧客情報管理装置200は、複数台のサーバに冗長化されてもよく、各機能ブロックが複数台のコンピュータで実現されてもよい。
【0030】
図4は、本実施形態2にかかる顧客情報管理装置200の構成を示すブロック図である。顧客情報管理装置200は、記憶部210、メモリ220、通信部230及び制御部240を備える。記憶部210は、プログラム211、顧客情報212及びスコアリスト213を記憶する。プログラム211は、本実施形態2にかかるマーケティング支援方法のうち顧客情報管理装置200の処理が実装されたコンピュータプログラムである。
【0031】
顧客情報212は、顧客識別情報に、個人情報や機微情報が対応付けられている。顧客情報212には、顧客の連絡先(例えば、電子メールアドレス、住所、電話番号等)が含まれる。尚、顧客情報212には、顧客における金融資産に関する情報や、金融商品を含む各種取引の履歴を含んでも良い。スコアリスト213は、1以上の顧客についての顧客ID2131とスコア2132との組である。顧客ID2131は、顧客識別情報の一例である。スコア2132は、マーケティング支援装置400により後述するように算出される評価値の一例である。
【0032】
メモリ220は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性記憶装置であり、制御部240の動作時に一時的に情報を保持するための記憶領域である。通信部230は、ネットワークNとの通信インタフェースである。
【0033】
制御部240は、顧客情報管理装置200の各構成を制御するプロセッサつまり制御装置である。制御部240は、記憶部210からプログラム211をメモリ220へ読み込ませ、プログラム211を実行する。これにより、制御部240は、登録部241、スコア受付部242及び仲介部243の機能を実現する。
【0034】
登録部241は、顧客端末100から受信した顧客情報212を記憶部210に登録する。また、登録部241は、顧客端末100から受信したデータ秘匿化及び活用についての本人同意に応じて、顧客U1の顧客情報212を含めた秘匿化要求をマーケティング支援装置400に対して送信する。尚、登録部241は、顧客端末100から追加的に取引情報の履歴を受信した場合、対応する顧客情報212に取引情報の履歴を追加して、更新するものとする。
【0035】
スコア受付部242は、マーケティング支援装置400からスコアリスト213を出力情報として受信し、スコアリスト213を記憶部210に保存する。
【0036】
仲介部243は、事業者端末300から提案内容及び提案対象者のスコアの条件を受信する。そして、仲介部243は、スコアリスト213及びスコアの条件に基づき、顧客情報212から提案対象者である顧客の連絡先を特定する。仲介部243は、特定した連絡先に対して、提案内容を送信する。仲介部243は、提案内容の送信先である顧客から当該提案内容の承諾を受け付けた場合、当該承諾の旨及び当該顧客に対応する顧客情報2112を事業者端末300に対して送信する。そして、仲介部243は、事業者端末300と顧客端末100との間の成約を仲介する。仲介部243は、成約後に、事業者端末300から成約手数料の支払いを受け付ける。例えば、顧客情報管理組織が金融機関である場合、仲介部243は、事業者端末300から、事業者の口座から顧客情報管理組織の口座への成約手数料の送金依頼を受け付けて、口座間の送金処理を実行する。または、仲介部243は、事業者端末300から成約手数料の送金報告を受け付けても良い。さらに、仲介部243は、成約後の顧客U1と事業者との取引に基づく取引情報を、事業者端末300から受信してもよい。その場合、仲介部243は、顧客U1の顧客情報212に受信した取引情報を追加する。
【0037】
図3に戻り説明を続ける。事業者端末300は、顧客情報管理装置200が管理する顧客情報212について秘匿化された秘匿化データ413に基づいてデジタルマーケティングを行う事業者(の担当者)が操作する情報端末である。当該事業者は、事業機会を創出したい者といえる。事業者端末300は、携帯電話端末、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ又はコンピュータサーバ等である。事業者端末300は、マーケティング支援装置400に対して、秘匿化データ413からスコアを算出するための算出ロジックを送信する。算出ロジックは、顧客情報212の各要素データを用いた演算式を定義した情報である。つまり、スコアは算出ロジックに定義された演算式の演算結果である。尚、事業者端末300は、マーケティング支援装置400からスコアリストを取得してもよい。
【0038】
また、事業者端末300は、顧客情報管理組織が管理する顧客に対する提案内容及び提案対象者のスコアの条件を顧客情報管理装置200へ送信する。事業者端末300は、提案対象者である顧客が提案内容を承諾した場合、顧客情報管理装置200から承諾の旨及び当該顧客に対応する顧客情報を受信する。これに応じて、事業者は、承諾した顧客と成約を結ぶことができる。その際、事業者端末300は、事業者の操作に応じて、成約処理を顧客情報管理装置200を介して、顧客端末100との間で行っても良い。また、事業者端末300は、成約後に、顧客情報管理装置200に対して成約手数料の支払いを行っても良い。例えば、顧客情報管理組織が金融機関である場合、事業者端末300は、事業者の口座から顧客情報管理組織の口座への成約手数料の送金依頼を送信する。または、事業者端末300は、成約手数料の送金報告を顧客情報管理装置200に対して送信する。さらに、事業者端末300は、成約後の顧客U1と事業者との取引に基づく取引情報を、顧客情報管理装置200へ送信してもよい。
【0039】
図3に戻り説明を続ける。マーケティング支援装置400は、上述したマーケティング支援装置1の一例である。図5は、本実施形態2にかかるマーケティング支援装置400の構成を示すブロック図である。マーケティング支援装置400は、記憶部410、メモリ420、通信部430及び制御部440を備える。記憶部410は、プログラム411、算出ロジック412及び秘匿化データ413を記憶する。プログラム411は、本実施形態2にかかるマーケティング支援方法のうちマーケティング支援装置400の処理が実装されたコンピュータプログラムである。
【0040】
算出ロジック412は、事業者端末300から受信した算出ロジックである。
【0041】
秘匿化データ413は、顧客情報管理装置200から取得した顧客情報212に対して秘匿化が行われたデータである。
【0042】
メモリ420は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性記憶装置であり、制御部440の動作時に一時的に情報を保持するための記憶領域である。通信部430は、ネットワークNとの通信インタフェースである。
【0043】
制御部440は、マーケティング支援装置400の各構成を制御するプロセッサつまり制御装置である。制御部440は、記憶部410からプログラム411をメモリ420へ読み込ませ、プログラム411を実行する。これにより、制御部440は、登録部441、取得部442、算出部443及び出力部444の機能を実現する。
【0044】
登録部441は、上述した登録部11の一例である。登録部441は、顧客情報管理装置200から取得された顧客情報212に対して秘匿化を行う。例えば、登録部441は、顧客情報212に対して暗号化する。または、登録部441は、顧客情報212に対して秘密分散によるデータのデータの分割等の加工処理を行う。そして、登録部441は、秘匿化データ413を記憶部410に登録する。
【0045】
取得部442は、上述した取得部12の一例である。取得部442は、事業者端末300から算出ロジック412を取得し、算出ロジック412を記憶部410に登録する。
【0046】
算出部443は、上述した算出部13の一例である。算出部443は、算出ロジック412を用いて秘匿化データ413からスコアを算出する。算出部443は、管理者からの指示又は設定されたタイミングに応じて、顧客ごとにスコアの算出処理を行う。算出部443は、算出ロジック412に定義された要素データに対応する秘匿化データ413を記憶部410から読み出し、算出ロジック412に定義された演算式により、対象顧客のスコアを算出する。算出部443は、秘密計算によりスコアを算出してもよい。つまり、算出部443は、秘匿化データ413の復号化をせずに、スコアを算出してもよい。
【0047】
出力部444は、上述した出力部14の一例である。出力部444は、顧客ごとに算出部443により算出されたスコアと当該スコアに対応する顧客IDとの組からスコアリストを生成し、顧客情報管理装置200へ送信する。尚、出力部444は、スコアリストを事業者端末300へ送信してもよい。または、出力部444は、スコアリストを顧客情報管理装置200及び事業者端末300の両方へ送信しても良い。
【0048】
図6及び図7は、本実施形態2にかかるマーケティング支援方法の流れを示すシーケンス図である。まず、顧客端末100は、顧客U1の操作に応じて、顧客情報の登録要求をネットワークNを介して顧客情報管理装置200へ送信する(S201)。これに応じて、顧客情報管理装置200の登録部241は、顧客端末100から顧客情報212を受信し、記憶部210に顧客情報212を登録する(S202)。ここで、顧客情報212には、顧客識別情報、連絡先、その他の個人情報や機微情報が含まれる。
【0049】
続いて、顧客端末100は、顧客U1の操作に応じて、登録した顧客情報についてデータ秘匿化及び活用についての本人同意をネットワークNを介して顧客情報管理装置200へ送信する(S203)。これに応じて、登録部241は、顧客端末100から本人同意を受信する。そして、登録部241は、本人同意の受信に応じて、顧客U1の顧客情報212を含めた秘匿化要求をネットワークNを介してマーケティング支援装置400へ送信する(S204)。
【0050】
これに応じて、マーケティング支援装置400の登録部441は、顧客情報管理装置200から秘匿化要求を受信する。そして、登録部441は、受信した秘匿化要求に含まれる個人情報に対して秘匿化を行う(S205)。続いて、登録部441は、秘匿化した秘匿化データ413を記憶部410に登録する(S206)。
【0051】
また、事業者端末300は、事業者の担当者の操作に応じて、算出ロジックをネットワークNを介してマーケティング支援装置400へ送信する(S207)。尚、ステップS207は、ステップS201以前に実行されても良い。または、ステップS207は、ステップS201からS206の間に実行されてもよい。
【0052】
マーケティング支援装置400の取得部442は、ステップS207に応じて、事業者端末300から算出ロジック412を受信し、算出ロジック412を記憶部410に登録する。
【0053】
その後、算出部443は、顧客ごとにスコア算出を行う(S208)。すなわち、算出部443は、所定のタイミングで記憶部410から算出ロジック412を読み出し、秘匿化データ413内の顧客ごとに、算出ロジック412に基づくスコアを秘匿化データ413から算出する。
【0054】
そして、出力部444は、顧客ごとに算出されたスコアと当該スコアに対応する顧客IDとの組から、スコアリストを生成する(S209)。そして、出力部444は、スコアリストをネットワークNを介して顧客情報管理装置200へ送信する(S210)。
【0055】
これに応じて、顧客情報管理装置200のスコア受付部242は、マーケティング支援装置400からスコアリストを受け付ける(受信する)。そして、スコア受付部242は、受け付けたスコアリスト213を記憶部210に登録する(S211)。
【0056】
その後、事業者端末300は、顧客情報管理組織が管理する顧客に対する提案内容及び提案対象者のスコアの条件を、ネットワークNを介して顧客情報管理装置200へ送信する(S212)。提案内容は、例えば、事業者が行う事業に関する広告情報、商品やサービスの案内情報等である。提案対象者のスコアの条件は、例えば、スコアの閾値等である。これに応じて、顧客情報管理装置200の仲介部243は、事業者端末300から提案内容及びスコアの条件を受信し、記憶部210又はメモリ220に登録する。尚、ステップS212は、ステップS207と同様、ステップS201以前やステップS201からS206の間に実行されてもよい。
【0057】
ステップS211及びS212の後、仲介部243は、スコアリスト213及びスコアの条件に基づき、顧客情報212から提案対象者である顧客の連絡先を特定する(S213)。ここでは、提案対象者として顧客U1が特定され、顧客U1の電子メールアドレスが特定されたものとする。そして、仲介部243は、特定した顧客U1の顧客端末100に対して提案内容を送信する(S214)。具体的には、仲介部243は、特定した顧客U1の電子メールアドレスに対して、提案内容を含めた電子メールを送信する。そして、顧客端末100は、メールサーバ(不図示)を介して顧客情報管理装置200から提案内容を含む電子メールを受信する。顧客端末100は、受信した電子メールを画面に表示する。これにより、顧客U1は、事業者から(顧客情報管理装置200を仲介した)提案内容を確認できる。
【0058】
続いて、顧客U1は、提案内容の承諾し、申し込みを行うものとする。そこで、顧客端末100は、顧客U1の操作に応じて、提案内容に対する申込や個人情報の開示同意をネットワークNを介して顧客情報管理装置200へ送信する(S215)。これに応じて、顧客情報管理装置200の仲介部243は、顧客端末100から申込(提案内容の承諾)及び個人情報の開示同意を受信し、記憶部210から申込者(顧客U1)に対応する顧客情報212(個人情報等)を特定する(S216)。そして、仲介部243は、申込の旨及び顧客U1に対応する顧客情報2112を事業者端末300に対して送信する(S217)。これに応じて、事業者端末300は、顧客情報管理装置200から申込の旨及び顧客情報を受信し、画面に表示する。そのため、事業者は、顧客U1に対して行った提案内容について、顧客U1から申込があり、顧客U1の個人情報等を取得できる。このとき、事業者端末300は、受信した顧客情報を内部に保存しても良い。
【0059】
その後、事業者端末300は、事業者の操作に応じて、顧客U1との間の契約の成約処理を行う。ここでは、事業者端末300は、顧客U1との契約の成約の旨をネットワークNを介して顧客情報管理装置200へ送信する(S218)。そして、顧客情報管理装置200の仲介部243は、事業者端末300から受信した成約の旨をネットワークNを介して顧客端末100へ送信する(S219)。これに応じて、顧客端末100は、顧客情報管理装置200から成約の旨を受信し、画面に表示する。これにより、顧客U1は、事業者との契約の成約を確認できる。
【0060】
そして、事業者端末300は、成約後に、顧客情報管理装置200に対して成約手数料の支払いを行う(S220)。例えば、顧客情報管理組織が金融機関である場合、事業者端末300は、事業者の口座から顧客情報管理組織の口座への成約手数料の送金依頼を送信する。その場合、仲介部243は、事業者端末300から、事業者の口座から顧客情報管理組織の口座への成約手数料の送金依頼を受け付けて、口座間の送金処理を実行する。
【0061】
その後、顧客U1と事業者の間で契約内容に応じた取引が行われる(S221)。このとき、事業者端末300は、顧客U1からさらなる個人情報や取引情報を取得し、内部に保存しても良い。そして、事業者端末300は、成約先である顧客U1の取引情報について、ネットワークNを介して顧客情報管理装置200へ送信する(S222)。これに応じて、顧客情報管理装置200の仲介部243は、事業者端末300から取引情報を受信し、受信した取引情報を顧客U1の顧客情報212に追加登録する。
【0062】
尚、ステップS201の顧客情報は、顧客における取引情報の履歴であってもよい。その場合、ステップS202において、顧客情報管理装置200の登録部241は、顧客端末100から受信した取引情報に対応する顧客の顧客情報212を更新する。
【0063】
このように本実施形態により、顧客情報の保有者とマーケティング主体(事業者)とが異なる場合に、顧客のプライバシーに配慮しつつ、顧客情報を活用した事業機会の創出を支援することができる。つまり、顧客情報管理装置200が生データとして保有及び管理している顧客情報を、マーケティング支援装置400において生データから秘匿化データに加工して保存して管理している。そのため、顧客の同意の上で、顧客情報を顧客情報管理装置200の外部に適切に、かつ、セキュリティを確保した上で保存することができる。よって、情報提供者たる個人や企業が自身の個人情報や機密情報が、第三者の事業者に活用されることに対する心理的障壁を下げることができる。よって、顧客情報の提供が促進される。
【0064】
また、事業機会を創出したい事業者は、自身の事業のためにコンタクトを取りたい属性を持った顧客を高レイティングするスコアリング計算式(算出ロジック)をマーケティング支援装置400に登録する。これにより、事業者は、マーケティング支援装置400からスコアに基づく出力情報を得ることもできる。このとき、出力情報には、顧客の個人情報や機密情報が必要最小限となる。例えば、顧客識別情報とスコアの組である。また、本実施形態のように、スコアに基づく出力情報が顧客情報管理装置200へ直接出力され、事業者端末300には出力されない場合、事業者は、顧客情報や秘匿化データに接する機会がない。つまり、事業者には、顧客情報や秘匿化データが隠蔽される。
【0065】
尚、出力情報がスコアの分布情報である場合には、顧客情報自体が隠蔽される。スコアの分布情報は、例えば、70点が2人、90点が3人、95点が1人といった情報であり、個人が特定できない情報である。但し、スコアの分布情報の出力先は、事業者であることが望ましい。
【0066】
そして、事業者は、提案内容やスコアの条件を顧客情報管理装置200へ登録することで、顧客情報管理装置200を介して、高スコアの顧客に対してアプローチすることができる。つまり、具体的な顧客情報に接することなく、自身の事業における潜在顧客である確率の高い顧客を選別して、効率的に広告等を行うことができる。
【0067】
さらに、スコアリング計算式は、事業機会を創出したい事業者の事業者端末300からマーケティング支援装置400へ直接投入されるため、スコアリングノウハウが顧客情報管理組織を含めた第三者に知られることがない。また、スコアリストが顧客情報管理組織へ出力される場合、スコア結果についても事業機会を創出したい事業者が知る機会がない。さらに、高いスコアが算出された顧客候補に対して、顧客情報管理組織からコンタクトを行うことで、顧客候補からのコンタクト希望(承諾や申込を含む)があるまで事業機会の創出を望む事業者が顧客情報を入手する機会はない。
【0068】
また、上述したように、顧客情報の新規登録後に、順次、当該顧客における取引情報の履歴が追加されることで、当該顧客についてある時点で算出されたスコアが、取引情報の追加後に変更される場合もある。つまり、スコアが更新されることにより、その時々の顧客の状態に応じて最適な顧客候補を選出することができる。
【0069】
<実施形態3>
本実施形態3は、上述した実施形態2の具体例であり、不動産や金融商品の販売のためのデジタルマーケティングに適用したものである。本実施形態3における顧客情報は、顧客の金融情報及び所属先を含むものとする。また、算出ロジックは、金融情報と所属先に関する所属情報とを含むものとする。そして、算出部は、秘匿化データから、顧客情報に含まれる所属先及び前記金融情報を特定する。そして、算出部は、算出ロジックから特定した所属先に対応する所属情報を特定する。そして、算出部は、特定した金融情報と取得した所属情報とを用いて評価値を算出する。
【0070】
図8は、本実施形態3にかかるマーケティング支援システム1000aの全体構成を示すブロック図である。マーケティング支援システム1000aは、顧客端末100、顧客情報管理装置200、事業者端末310、320・・・3n0(nは2以上の自然数。)、マーケティング支援装置400a、並びに、秘密計算サーバ510、520及び530を備える。顧客端末100、顧客情報管理装置200、事業者端末310、320・・・3n0(nは2以上の自然数。)、マーケティング支援装置400a、並びに、秘密計算サーバ510、520及び530のそれぞれは、ネットワークNを介して接続されている。顧客情報管理装置200は、顧客の金融資産を含む顧客情報を管理する顧客情報管理組織が運用するコンピュータサーバである。顧客情報管理組織は、特定の顧客の複数の金融機関の口座情報を集約して管理するアグリゲーションサービスを提供する組織であってもよい。または、顧客情報管理組織は、クレジットカード会社であってもよい。または、顧客情報管理組織は、金融機関であってもよい。顧客情報管理装置200は、顧客金融資産情報212aを管理する。顧客金融資産情報212aは、顧客情報212の一例であり、顧客の金融情報及び所属先(勤務先の企業等)の情報を含む。顧客情報管理装置200のその他の構成は、実施形態2と同等であるため、図示及び詳細な説明を省略する。
【0071】
事業者端末310から3n0は、事業者端末300の一例である。事業者端末310から3n0のそれぞれは、異なる事業者に属するものとする。各事業者は、例えば、消費者金融業者、生命保険又は損害保険会社、不動産業者、不動産販売業者、又は、住宅ローン販売会社等である。事業者端末310は企業情報311を保存し、事業者端末320は企業情報321を保存し、・・・事業者端末3n0は企業情報3n1を保存している。企業情報311、321、・・・3n1のそれぞれは、第2のデータベースの一例であり、所属先に対応する所属情報である。企業情報311は、事業者端末310が属する事業者が保有する複数の企業に関する情報である。例えば、企業情報311は、複数の企業における従業員の年齢ごとの平均手取年収の情報である。また、企業情報311は、各企業について算出ロジックで用いる係数(企業係数)を含む。企業情報321から3n1は、企業情報311と同様であるが、企業情報311とは異なる企業の情報を含むものであってもよい。また、企業情報321から3n1は、企業情報311と同じ企業を含むとしても企業係数が異なっても良い。事業者端末310等のそれぞれは、自社のノウハウに基づく潜在顧客のスコアリングロジック(算出ロジック)を生成し、算出ロジックをネットワークNを介してマーケティング支援装置400aへ送信する。つまり、算出ロジックは、事業者端末310等のそれぞれで異なることが想定される。また、算出ロジックは、企業情報を含んでも良い。例えば、事業者端末310は、企業情報311の内容を含めて算出ロジックを生成してもよい。
【0072】
秘密計算サーバ510、520及び530は、第1のデータベース500を構成する。秘密計算サーバ510、520及び530のそれぞれは、データベースを含むコンピュータサーバである。秘密計算サーバ510、520及び530のそれぞれは、秘匿化データ511、521及び531のそれぞれを保存する。秘匿化データ511、521及び531のそれぞれは、顧客金融資産情報212aのうち一部を重複させて分割された各データ(分割データ)であって、各分割データに対して暗号化されたものである。または、秘匿化データ511、521及び531のそれぞれは、顧客金融資産情報212aの1つの要素データの値が複数に分割された分割データであって、各分割データに対して暗号化されたものである。そのため、秘匿化データ511が単独で流出したとしても、元の顧客金融資産情報212aに復元することができない。
【0073】
秘密計算サーバ510は、マーケティング支援装置400aから第1の分割データを含む登録要求を受信し、受信した第1の分割データを暗号化して秘匿化データ511として内部のデータベースに登録する。また、秘密計算サーバ510は、マーケティング支援装置400aから第1の分割データの一部である第1の要素データに対する取得要求を受信する。そして、秘密計算サーバ510は、秘匿化データ511のうち第1の要素データに対応する秘匿化データをマーケティング支援装置400aへ返信する。つまり、第1の要素データそのものは、返信されず、第1の要素データに対して暗号化済の秘匿化データが返信される。また、秘密計算サーバ510は、マーケティング支援装置400aから第1の要素データに対する所定の演算要求を受信する。そして、秘密計算サーバ510は、秘匿化データ511のうち第1の要素データに対応する部分を用いて、要求された演算を行い、第1の演算結果をマーケティング支援装置400aへ返信する。つまり、第1の演算結果には、第1の要素データ自体は含まれない。また、秘密計算サーバ510は、演算要求の内容に応じて、秘密計算サーバ520や530と協調して演算を行っても良い。例えば、秘密計算サーバ510は、演算に必要なデータが秘匿化データ511に不足している場合、適宜、秘密計算サーバ520や530から必要なデータを取得して、秘匿化データ521や531と511を用いた演算を行っても良い。尚、秘密計算サーバ520及び530は、秘密計算サーバ510と同等の機能を有する。
【0074】
マーケティング支援装置400aは、上述したマーケティング支援装置400の一例である。マーケティング支援装置400aは、顧客金融資産情報212aを分割し、各分割データを秘密計算サーバ510から530のそれぞれに分散して登録する。また、マーケティング支援装置400aは、算出ロジックに基づく演算を行う際、算出ロジックに定義された要素データを抽出し、各要素データに対する演算要求を、要素データに対応する秘密計算サーバ510から530へ送信する。そして、マーケティング支援装置400aは、秘密計算サーバ510から530から取得した第1から第3の演算結果を用いて算出ロジックに基づくスコアを算出する。尚、以下の説明において、マーケティング支援装置400aは、秘匿化データの一部の属性値を取得する場合がある。但し、取得された属性値は、復号化されたものではなく、暗号化済であり、秘匿化データの一部である。
【0075】
図9は、本実施形態3にかかるマーケティング支援装置400aの構成を示すブロック図である。マーケティング支援装置400aは、上述したマーケティング支援装置400と比べて、プログラム411a、算出ロジック412a、登録部441a及び秘密計算部443aが異なる。また、マーケティング支援装置400aは、上述した通り、秘匿化データを保存しない。マーケティング支援装置400aの他の構成は、マーケティング支援装置400と同等である。プログラム411aは、本実施形態3にかかるマーケティング支援方法のうちマーケティング支援装置400aの処理が実装されたコンピュータプログラムである。算出ロジック412aは、例えば、1以上の演算子と2以上の被演算子により定義された演算式の定義情報である。そして、被演算子には、顧客金融資産情報212aに含まれる個人情報、機微情報、金融情報等の属性に加えて、顧客の所属先の企業に関する企業情報(所属情報)の属性が含まれていても良い。また、算出ロジック412aは、スコア算出の対象となる顧客の条件を定義しても良い。例えば、算出ロジック412aは、顧客金融資産情報212aに含まれる属性値群の閾値を含み、属性値群が閾値以上又は未満である場合に、後続の演算式によりスコアを算出させるように定義されていてもよい。さらに、算出ロジック412aは、企業情報311等の内容が含まれていても良い。例えば、算出ロジック412aは、企業情報311に基づいて、勤務先及び年齢(の秘匿化データ)から企業係数及び企業平均手取年収を特定する処理を含む。
【0076】
登録部441aは、顧客情報管理装置200から取得された顧客金融資産情報212aに対して秘匿化を行う。具体的には、登録部441aは、顧客金融資産情報212aを分割して、第1から第3の分割データとする。一つのやり方として、登録部441aは、顧客金融資産情報212aの複数の要素データについて、一部を重複させて分割して、第1から第3の分割データとする。例えば、顧客金融資産情報212aがA,B及びCを含む場合、第1の分割データはA及びB、第2の分割データはB及びC、第3の分割データはA及びCとなる。または、別のやり方として、登録部441aは、顧客金融資産情報212aの要素データの値のそれぞれを複数に分割して、第1から第3の分割データとする。例えば、A=A1+A2+A3、B=B1+B2+B3、C=C1+C2+C3とする。その場合、第1の分割データはA1、B1及びC1、第2の分割データはA2、B2及びC2、第3の分割データはA3、B3及びC3としてもよい。そして、登録部441aは、第1の分割データを含む登録要求をネットワークNを介して秘密計算サーバ510へ送信する。また、登録部441aは、第2の分割データを含む登録要求をネットワークNを介して秘密計算サーバ520へ送信する。また、登録部441aは、第2の分割データを含む登録要求をネットワークNを介して秘密計算サーバ530へ送信する。尚、これらの処理は、秘匿化の一例である。
【0077】
取得部442は、事業者端末310から330のそれぞれから、任意のタイミングで異なる算出ロジックを受信し、算出ロジック412aとして記憶部410へ登録する。
【0078】
秘密計算部443aは、算出ロジック412aに基づいて、顧客ごとに秘匿化データ511から531からスコアを算出する。例えば、秘密計算部443aは、算出ロジック412aを構文解析して演算子と被演算子(要素データの属性)を抽出する。そして、秘密計算部443aは、被演算子が示す顧客情報の属性を特定し、特定した属性に対応する秘匿化データが保存されている1以上の秘密計算サーバを特定する。そして、秘密計算部443aは、特定した秘密計算サーバのそれぞれに対して、要素データに対する所定の演算要求を送信する。秘密計算部443aは、秘密計算サーバのそれぞれから演算要求に基づく演算結果を受信する。例えば、秘密計算部443aは、秘密計算サーバ510から530のそれぞれへ演算要求を送信し、各秘密計算サーバから第1から第3の演算結果を受信する。そして、秘密計算部443aは、第1から第3の演算結果を用いて、算出ロジック412aに基づく演算を行い、スコアを算出する。
【0079】
また、算出ロジック412aに定義された被演算子に企業情報の属性が含まれている場合、秘密計算部443aは、企業情報の属性値の取得に必要な顧客金融資産情報212aの属性値(要素データ)を特定する。そして、秘密計算部443aは、特定した属性値の取得要求を、秘密計算サーバに対して送信する。秘密計算部443aは、秘密計算サーバから属性値を取得する。尚、秘密計算部443aは、複数の秘密計算サーバから属性値の分割データを取得した場合、各分割データを合成して属性値としてもよい。そして、秘密計算部443aは、算出ロジック412aに定義された企業情報311等の内容に基づいて、属性値から企業情報を取得する。例えば、秘密計算部443aは、算出ロジック412aに含まれる企業情報311の内容から企業名や年齢を暗号化した上で、取得した(暗号化済の)属性値と突き合わせて、対応する企業情報(平均手取年収及び企業係数等)を特定する。そして、秘密計算部443aは、企業情報と、上述した第1から第3の演算結果を用いて、算出ロジック412aに基づく演算を行い、スコアを算出する。
【0080】
さらに、算出ロジック412aに定義された被演算子に顧客金融資産情報212aや企業情報311から331に存在しない特定の属性が含まれていても良い。例えば、顧客金融資産情報212aに顧客の勤務地と住所(少なくとも市区町村レベル)とが含まれており、被演算子に通勤時間が特定の属性として含まれているものとする。この場合、秘密計算部443aは、秘密計算サーバ510から530に対して、勤務地と住所の取得要求を送信する。そして、秘密計算部443aは、秘密計算サーバ510から530からの取得結果から顧客ごとの勤務地と住所の組を合成する。そして、秘密計算部443aは、復元した勤務地と住所の組から、所定の演算により顧客ごとの通勤時間を算出する。そして、秘密計算部443aは、算出した通勤時間をさらに用いて、算出ロジック412aに基づく演算を行い、スコアを算出する。
【0081】
さらに、算出ロジック412aに上述したスコア算出の対象となる顧客の条件が定義されていた場合、秘密計算部443aは、算出ロジック412aを解析して、当該条件の判定に必要な属性値(要素データ)を特定する。そして、秘密計算部443aは、特定した属性値の取得要求を、秘密計算サーバに対して送信する。秘密計算部443aは、秘密計算サーバから属性値を取得する。そして、秘密計算部443aは、取得した属性値から顧客の条件を満たすか否かを判定し、条件を満たす場合に、後続の演算式について、上述したように処理する。ここで、秘密計算部443aは、条件判定の閾値も暗号化するなどして、取得した(暗号化済の)属性値と比較して条件判定を行うものとする。
【0082】
出力部444は、顧客ごとに秘密計算部443aにより算出されたスコアと当該スコアに対応する顧客IDとの組からスコアリストを生成し、顧客情報管理装置200へ送信する。尚、出力部444は、スコアリストを算出ロジック412aの提供元である事業者端末310から330のいずれかへ送信してもよい。
【0083】
ここで、本実施形態3の具体的な適用例として、不動産又は住宅ローンの販売契約について説明する。まず、顧客U1は、住宅購入希望者となる。また、顧客情報管理組織は、住宅購入希望者の個人情報を保有する企業であり、例えば、特定の個人が所有する複数の金融機関の口座情報を集約して管理するアグリゲーションサービスの提供会社である。また、事業者は、不動産又は住宅ローンの販売を行う企業や金融機関であり、不動産や住宅ローンの顧客獲得を希望する事業者である。
【0084】
一般に、住宅購入希望者は、自身の希望や金融資産に適合する提案を求めるものの、提案内容を承諾するまで個人情報を第三者に開示したくない。また、事業者は、見込み顧客選定の生産性の向上、広告費用の有効活用を図りたい。ここで、事業者は、過去の業務を通じて、見込み顧客選別のスコアリングノウハウを蓄積しているため、顧客データを直接保有しなくても有望顧客を抽出することが可能である。但し、スコアリングノウハウは、自社固有の機密情報であるため第三者に知られたくない。また、日本国の顧客情報管理組織は、個人情報保護法に従い、顧客の個人情報(顧客情報)を目的外で第三者へ提供することはできない。一方で、顧客情報管理組織は、顧客情報の活用により新たな事業機会の創出を支援したい。そのため、顧客情報管理組織は、顧客情報を第三者へ漏洩させずに、第三者に活用させることを求めている。
【0085】
図10は、本実施形態3にかかる顧客金融資産情報212aの例を示す図である。顧客金融資産情報212aは、属性として、顧客ID、年齢、持家有無、家族構成、居住年数、住所、勤務先、勤務地、勤続年数、手取年収(万円)及び預金残高(万円)を含む。尚、年齢は生年月日でもよい。また、家族構成は、性別や親子関係等を含んでも良い。住所及び勤務地は、例えば市区町村レベルを含むものであり、少なくとも通勤時間を算出できる程度の情報であればよい。勤務先は、企業の識別情報であればよい。手取年収や預金残高は、概算値で良い。また、預金残高は、顧客が所有する複数の金融機関の口座残高の合計値等である。図10では、顧客ID「01」「02」及び「03」の3名の例を示すが、各属性値はこれらに限定されない。また、顧客金融資産情報212aは、4名以上の顧客情報を含んでよいことは勿論である。尚、顧客金融資産情報212aは、持家有の顧客について持家の不動産評価額を含んでも良い。
【0086】
図11は、本実施形態3にかかる企業情報311の例を示す図である。企業情報311は、属性として、企業名、年齢ごとの平均手取年収及び企業係数を含む。企業名は、企業の識別情報であればよい。年齢ごとの平均手取年収は、事業者が独自に蓄積したものか、外部機関から入手した情報であってもよい。企業係数は、事業者の過去の取引実績から独自に設定した値である。よって、年齢ごとの平均手取年収及び企業係数は、同一の企業であっても、企業情報311、321及び331の間で異なる場合がある。
【0087】
続いて、ある事業者Aの顧客選定基準の例を挙げる。事業者Aは、首都圏ファミリー層向けの持ち家物件や当該物件の住宅ローンの販売を事業として創出したいものとする。事業者Aの顧客対象の条件は、対象年齢は25歳以上かつ40歳以下、既婚者(家族構成2人以上)、持ち家なしとする。つまり、事業者Aは、40歳以上の顧客について、返済リスクを考慮し、顧客選定の対象外とする。また、事業者Aの顧客対象の条件は、居住年数が3年以上とする。そして、事業者Aの顧客選定基準となるスコアは、通勤時間が短いほど高く、勤続年数が長いほど高く算出されるものとする。さらに、スコアの算出には、勤務先の業績状況が考慮される。また、事業者Aは、スコアの算出において、給与情報を勤務先の収入曲線に照らして評価し、金融資産情報(預金残高)を返済安全性指標として評価する。また、事業者Aは、対象顧客が若年~中年層であるため、スコアの算出において、現状の給与及び金融資産より勤務先の期待生涯所得を重視する。ただし、事業者Aは、ローン返済安全性を考慮し、スコアの算出において、金融資産も評価対象とする。事業者Aは、勤務先(企業)の業績状況を考慮し、企業係数を設定する。
【0088】
ここで、事業者Aの算出ロジックとスコアの例について説明する。事業者Aの算出ロジックにおけるスコア算出の対象となる顧客の条件は、持家がなし、家族構成が2人以上、かつ、年齢が40歳以下である。そのため、持家があり、家族構成が1人(独身)、又は、年齢が41以上の場合、当該顧客のスコアは0と算出される。顧客の条件を満たす場合のスコア算出式は、例えば以下である。
スコア=企業係数*(手取年収/企業平均手取年収)*(40-年齢)+預金残高/1000+20*(居住年数-3)+300*家族構成+10*勤続年数+50*(60-通勤時間)
【0089】
そして、事業者Aは、スコアが5000点以上の場合、提案(アプローチ)対象とする。つまり、事業者端末310は、ステップS212における提案対象者のスコアの条件を、5000点以上とする。
【0090】
ここで、秘密計算部443aは、事業者Aのスコア算出式(算出ロジック412a)を構文解析した場合、まず、顧客の条件として、持家、家族構成及び年齢を抽出する。そして、秘密計算部443aは、秘密計算サーバ510等に対して、各顧客の持家、家族構成及び年齢の取得要求を送信する。そして、秘密計算部443aは、受信した持家、家族構成及び年齢から各顧客がスコア算出の対象か否かを判定する。つまり、秘密計算部443aは、顧客ごとに条件を満たすか否かを判定する。
【0091】
続いて、秘密計算部443aは、事業者Aのスコア算出式(算出ロジック412a)から手取年収、年齢、預金残高、居住年数、家族構成及び勤続年数を抽出する。そして、秘密計算部443aは、秘密計算サーバ510等に対して、スコア算出対象の顧客における手取年収、年齢、預金残高、居住年数、家族構成及び勤続年数の取得要求を送信する。そして、秘密計算部443aは、、秘密計算サーバ510等から手取年収、年齢、預金残高、居住年数、家族構成及び勤続年数を受信する。
【0092】
また、秘密計算部443aは、事業者Aのスコア算出式(算出ロジック412a)から企業係数及び企業平均手取年収を抽出する。そして、秘密計算部443aは、企業係数及び企業平均手取年収の取得に必要な属性値として勤務先及び年齢を特定し、秘密計算サーバ510等に対して、スコア算出対象の顧客における勤務先及び年齢の取得要求を送信する。そして、秘密計算部443aは、、秘密計算サーバ510等から勤務先及び年齢を受信する。そして、秘密計算部443aは、算出ロジック412aに含まれる企業情報311の内容から企業名や年齢を暗号化した上で、受信した(暗号化済の)勤務先(企業名)及び年齢に対応付けられた企業係数及び企業平均手取年収を特定する。
【0093】
さらに、秘密計算部443aは、事業者Aのスコア算出式(算出ロジック412a)から通勤時間を抽出する。このとき、秘密計算部443aは、秘密計算サーバ510等に対して、勤務地と住所の取得要求を送信する。そして、秘密計算部443aは、秘密計算サーバ510等から勤務地と住所の組を受信する。そして、秘密計算部443aは、勤務地と住所の組から、所定の演算により顧客ごとの通勤時間を算出する。
【0094】
尚、上記において、秘密計算部443aは、秘密計算サーバ510等から演算結果や分割データを受信した場合、各演算結果や分割データを合成して属性値とする。つまり、秘密計算部443aは、秘密計算により、秘密計算サーバ510等に秘密分散された分割データから、(暗号化済の)年齢、持家有無、家族構成、居住年数、住所、勤務先、勤務地、勤続年数、手取年収及び預金残高を秘密復元してもよい。
【0095】
その後、秘密計算部443aは、各属性値、企業係数及び企業平均手取年収、並びに、通勤時間を用いて、上記スコア算出式に基づく秘密計算により、顧客ごとにスコアを算出する。
【0096】
図10及び図11の例では、顧客ID「01」から「03」について、以下のようなスコアが算出される。尚、以下の算出例では、説明を分かり易くするために各属性の実数値(復号化済の値)を用いているが、実際は、秘密計算により暗号化された値を用いても良い。
顧客ID「01」のスコア=100*(500/450)*(40-25)+1,000,000/1,000+20(3-3)+300*3+10*3+50*(60-30)
≒5097
顧客ID「02」のスコア=80*(700/700)*(40-35)+2,000,000/1,000+20*(5-3)+300*4+10*5+50*(60-50)
=4190
顧客ID「02」のスコア=0(年齢が55歳のため)
【0097】
そのため、顧客ID「01」は、事業者Aの提案対象の顧客となり、顧客ID「02」及び「03」は、事業者Aの提案対象外の顧客となる。
【0098】
続いて、ある事業者Bの顧客選定基準の例を挙げる。事業者Bは、高年者向け物件や当該物件の住宅ローンの販売を事業として創出したいものとする。事業者Bの顧客対象の条件は、対象年齢は55歳以上かつ65歳以下、家族構成2人以下とし、持家は有無の双方で評価するものとする。つまり、事業者Bは、子育てを終えた高年齢者をターゲットとし、リハウスや郊外小型物件の紹介へつなげることを目指すものとする。また、また、事業者Bの顧客対象の条件は、居住年数が20年以上とする。そして、事業者Bは通勤時間を参考情報として評価し、勤続年数を考慮しないものとする。さらに、スコアの算出には、勤務先の業績状況が考慮される。また、事業者Aは、スコアの算出において、給与情報を勤務先の収入曲線に照らして、特に退職までの収入を評価し、金融資産情報(預金残高)を重視し、持家がある場合、不動産評価額も考慮する。また、事業者Bは、対象顧客の退職が近いことから、勤務先、勤務地、給与情報は参考程度とし、一方、金融資産を重視し、不動産保有時は優先順位を上げる。事業者Bは、勤務先(企業)の業績状況を考慮し、企業係数を設定する。
【0099】
ここで、事業者Bの算出ロジックとスコアの例について説明する。事業者Bの算出ロジックにおけるスコア算出の対象となる顧客の条件は、年齢が55歳以上かつ65歳以下、かつ、家族構成2人以下である。そのため、年齢が54歳以下や家族構成が3人以上の場合、当該顧客のスコアは0と算出される。顧客の条件を満たす場合のスコア算出式は、例えば以下である。
スコア=
企業係数*(手取年収/企業平均手取年収)*(60-年齢)+(預金残高+不動産評価額)/10000+50*(居住年数-20)+300*家族構成
【0100】
そして、事業者Bは、スコアが5000点以上の場合、提案(アプローチ)対象とする。つまり、事業者Bの事業者端末320は、ステップS212における提案対象者のスコアの条件を、5000点以上とする。
【0101】
ここで、秘密計算部443aは、事業者Bのスコア算出式(算出ロジック412a)を構文解析する。但し、その後の秘密計算部443aによるスコア算出処理を事業者Aの場合と同様である。尚、不動産評価額が顧客金融資産情報212aに含まれている場合、秘密計算部443aは、秘匿化データから不動産評価額を取得する。また、不動産評価額が顧客金融資産情報212aに含まれていない場合、秘密計算部443aは、秘匿化データから居住年数、住所等を取得し、居住年数、住所等に基づき所定の演算式により不動産評価額を算出してもよい。または、秘密計算部443aは、居住年数、住所等を含む不動産評価額の算出要求を、事業者端末310へ送信してもよい。その場合、事業者端末310は、算出要求に応じて、事業者独自の算出式により居住年数、住所等から不動産評価額を算出し、不動産評価額をマーケティング支援装置400aへ返信してもよい。
【0102】
図10及び図11の例では、顧客ID「01」から「03」について、以下のようなスコアが算出される。尚、顧客ID「03」の不動産評価額を2000万円とする。尚、以下の算出例では、説明を分かり易くするために各属性の実数値(復号化済の値)を用いているが、実際は、秘密計算により暗号化された値を用いても良い。
顧客ID「01」のスコア=0(年齢が54歳以下のため)
顧客ID「02」のスコア=0(年齢が54歳以下のため)
顧客ID「03」のスコア=70*(300/300)*(60-55)+(20,000,000+20,000,000)/10000+50*(30-20)+300*2
=5450
【0103】
そのため、顧客ID「01」及び「02」は、事業者Bの提案対象外の顧客となり、顧客ID「03」は、事業者Bの提案対象の顧客となる。
【0104】
尚、本実施形態3の他の適用例としては、例えば、住宅ローンの借り換えや金融商品の案内等が挙げられる。その場合、顧客情報管理組織は、オンラインで会計アプリケーションサービスを提供する企業であり、事業者は、銀行、証券会社、住宅ローン提供会社等となる。
【0105】
本実施形態3では、マーケティング支援装置400aが提供する顧客のスコアリングサービスを通じて、事業者は、個人情報等を保有することなく金融商品の販売機会を獲得することができる。併せて、顧客情報管理組織は、事業者への事業機会の提供を通じて、自社が保有する金融資産情報を含む顧客情報の価値を向上させることができる。
【0106】
また、本実施形態3では、実施形態2と同様に、見込み顧客層に合わせたスコアリング計算式(算出ロジック)をマーケティング支援装置400aに登録することで、提案対象の顧客を効率的にフィルタリングすることが可能となる。
【0107】
<その他の実施形態>
尚、上述の実施形態では、ハードウェアの構成として説明したが、これに限定されるものではない。本開示は、任意の処理を、CPUにコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0108】
上述の例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、DVD(Digital Versatile Disc)、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0109】
なお、本開示は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。また、本開示は、それぞれの実施形態を適宜組み合わせて実施されてもよい。
【0110】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
(付記A1)
顧客情報管理装置から取得された顧客情報に対して秘匿化を行った秘匿化データを第1のデータベースに登録する登録手段と、
前記顧客情報に基づいて潜在顧客の度合いを示す評価値を算出するための算出ロジックを、所定の事業者から取得する取得手段と、
前記算出ロジックを用いて前記秘匿化データから前記評価値を算出する算出手段と、
前記評価値に基づく出力情報を出力する出力手段と、
を備えるマーケティング支援装置。
(付記A2)
前記出力手段は、前記評価値及び当該評価値に対応する顧客識別情報の組を前記出力情報として出力する
付記A1に記載のマーケティング支援装置。
(付記A3)
前記出力手段は、複数の顧客における前記評価値の分布情報を前記出力情報として出力する
付記A1に記載のマーケティング支援装置。
(付記A4)
前記出力手段は、前記顧客情報管理装置に対して前記出力情報を出力する
付記A1乃至A3のいずれか1項に記載のマーケティング支援装置。
(付記A5)
前記出力手段は、前記事業者に対して前記出力情報を出力する
付記A1乃至A3のいずれか1項に記載のマーケティング支援装置。
(付記A6)
前記算出手段は、前記秘匿化データから秘密計算により前記評価値を算出する
付記A1乃至A5のいずれか1項に記載のマーケティング支援装置。
(付記A7)
前記顧客情報は、顧客の金融情報及び所属先を含み、
前記算出ロジックは、前記金融情報と前記所属先に関する所属情報とを含み、
前記算出手段は、
前記秘匿化データから前記顧客情報に含まれる前記所属先及び前記金融情報を特定し、
前記算出ロジック前記特定した所属先に対応する前記所属情報を取得し、
前記特定した金融情報と前記取得した所属情報とを用いて前記評価値を算出する
付記A1乃至A6のいずれか1項に記載のマーケティング支援装置。
(付記B1)
顧客情報を管理する顧客情報管理装置と、
マーケティング支援装置と、を備え、
前記マーケティング支援装置は、
顧客情報管理装置から取得された前記顧客情報に対して秘匿化を行った秘匿化データを第1のデータベースに登録する登録手段と、
前記顧客情報に基づいて潜在顧客の度合いを示す評価値を算出するための算出ロジックを、所定の事業者から取得する取得手段と、
前記算出ロジックを用いて前記秘匿化データから前記評価値を算出する算出手段と、
前記評価値に基づく出力情報を出力する出力手段と、
を備えるマーケティング支援システム。
(付記B2)
前記顧客情報管理装置は、
前記マーケティング支援装置から前記出力情報を受信し、
前記事業者から提案内容及び提案対象者の前記評価値の条件を受信し、
前記出力情報及び前記評価値の条件に基づき、前記顧客情報から提案対象者である顧客の連絡先を特定し、
前記特定した連絡先に対して、前記提案内容を送信する
付記B1に記載のマーケティング支援システム。
(付記B3)
前記顧客情報管理装置は、
前記提案内容の送信先である顧客から当該提案内容の承諾を受け付けた場合、当該承諾の旨及び当該顧客に対応する前記顧客情報を前記事業者に対して送信する
付記B2に記載のマーケティング支援システム。
(付記C1)
コンピュータが、
顧客情報管理装置から顧客情報を取得し、
前記取得された顧客情報に対して秘匿化を行った秘匿化データを第1のデータベースに登録し、
前記顧客情報に基づいて潜在顧客の度合いを示す評価値を算出するための算出ロジックを、所定の事業者から取得し、
前記算出ロジックを用いて前記秘匿化データから前記評価値を算出し、
前記評価値に基づく出力情報を出力する、
マーケティング支援方法。
(付記D1)
顧客情報管理装置から顧客情報を取得する取得処理と、
前記取得された顧客情報に対して秘匿化を行った秘匿化データを第1のデータベースに登録する登録処理と、
前記顧客情報に基づいて潜在顧客の度合いを示す評価値を算出するための算出ロジックを、所定の事業者から取得する取得処理と、
前記算出ロジックを用いて前記秘匿化データから前記評価値を算出する算出処理と、
前記評価値に基づく出力情報を出力する出力処理と、
をコンピュータに実行させるプログラムが格納された非一時的なコンピュータ可読媒体。
【0111】
以上、実施形態(及び実施例)を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態(及び実施例)に限定されものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0112】
1 マーケティング支援装置
11 登録部
12 取得部
13 算出部
14 出力部
1000 マーケティング支援システム
100 顧客端末
200 顧客情報管理装置
210 記憶部
211 プログラム
212 顧客情報
213 スコアリスト
2131 顧客ID
2132 スコア
220 メモリ
230 通信部
240 制御部
241 登録部
242 スコア受付部
243 仲介部
300 事業者端末
400 マーケティング支援装置
410 記憶部
411 プログラム
412 算出ロジック
413 秘匿化データ
420 メモリ
430 通信部
440 制御部
441 登録部
442 取得部
443 算出部
444 出力部
U1 顧客
N ネットワーク
1000a マーケティング支援システム
200a 金融機関サーバ
212a 顧客金融資産情報
310 事業者端末
311 企業情報
320 事業者端末
321 企業情報
3n0 事業者端末
3n1 企業情報
400a マーケティング支援装置
411a プログラム
412a 算出ロジック
441a 登録部
443a 秘密計算部
500 第1のデータベース
510 秘密計算サーバ
511 秘匿化データ
520 秘密計算サーバ
521 秘匿化データ
530 秘密計算サーバ
531 秘匿化データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-10-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客ごとの顧客情報を分散することにより秘匿化された複数の秘匿化データのうち、少なくとも1つの前記秘匿化データを所定の基準に基づく評価方法に従って評価し、当該評価結果を生成する生成手段を備える、
情報処理装置。
【請求項2】
前記複数の秘匿化データは、複数の保存先に分散して保存されている、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記顧客情報は、顧客に関する情報の種別を表す顧客情報属性に紐づけられた要素データを含み、
前記複数の秘匿化データは第1の秘匿化データと第2の秘匿化データとを含み、
前記第1の秘匿化データに含まれる少なくとも1つの前記要素データが紐づけられている前記顧客情報属性は、前記第2の秘匿化データに含まれる前記要素データが紐づけられている前記顧客情報属性のいずれとも異なる、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記顧客情報は、顧客に関する情報の種別を表す顧客情報属性に紐づけられた要素データを含み、
顧客ごとの前記要素データを分割した複数の分割要素データのそれぞれは、異なる前記秘匿化データに含まれる、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記要素データは、前記要素データから分割された前記分割要素データのそれぞれを足し合わせたものである、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記所定の基準は、事業者が顧客候補を選択する基準である、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記生成手段は、前記秘匿化データを秘匿化された状態で評価する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記生成手段は、前記評価方法に含まれる、前記顧客情報属性を示す評価属性を特定し、前記特定した前記評価属性に関する前記要素データを含む前記秘匿化データを保存している少なくとも1つの前記保存先を特定し、前記特定した前記保存先から前記評価に使用する受信データを取得する、
請求項3または4に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記受信データは、前記特定した前記評価属性が示す前記顧客情報属性に紐づけられた前記要素データである、
請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記生成手段は、前記特定した前記評価属性が示す前記顧客情報属性に紐づけられる情報を、前記受信データを使用して生成する、
請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項11】
コンピュータが、
顧客ごとの顧客情報を分散することにより秘匿化された複数の秘匿化データのうち、少なくとも1つの前記秘匿化データを所定の基準に基づく評価方法に従って評価し、当該評価結果を生成する、
情報処理方法。
【請求項12】
顧客ごとの顧客情報を分散することにより秘匿化された複数の秘匿化データのうち、少なくとも1つの前記秘匿化データを所定の基準に基づく評価方法に従って評価し、当該評価結果を生成する生成処理
をコンピュータに実行させる情報処理プログラム。