IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -電子ペン及び電子ペン用カートリッジ 図1
  • -電子ペン及び電子ペン用カートリッジ 図2
  • -電子ペン及び電子ペン用カートリッジ 図3
  • -電子ペン及び電子ペン用カートリッジ 図4
  • -電子ペン及び電子ペン用カートリッジ 図5
  • -電子ペン及び電子ペン用カートリッジ 図6
  • -電子ペン及び電子ペン用カートリッジ 図7
  • -電子ペン及び電子ペン用カートリッジ 図8
  • -電子ペン及び電子ペン用カートリッジ 図9
  • -電子ペン及び電子ペン用カートリッジ 図10
  • -電子ペン及び電子ペン用カートリッジ 図11
  • -電子ペン及び電子ペン用カートリッジ 図12
  • -電子ペン及び電子ペン用カートリッジ 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163276
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】電子ペン及び電子ペン用カートリッジ
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20241114BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20241114BHJP
   B43K 7/00 20060101ALI20241114BHJP
   B43K 24/08 20060101ALI20241114BHJP
   B43K 24/12 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G06F3/03 400F
G06F3/044
B43K7/00
B43K24/08 110
B43K24/12
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024157376
(22)【出願日】2024-09-11
(62)【分割の表示】P 2021573075の分割
【原出願日】2021-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2020007229
(32)【優先日】2020-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】青木 信也
(72)【発明者】
【氏名】金田 剛典
(72)【発明者】
【氏名】橋本 善之
(72)【発明者】
【氏名】江口 徹
(57)【要約】
【課題】文具のボールペン替え芯と互換性が取れ、ボールペンの替え芯を装着する文具の筐体をそのままペン筐体として利用できるようにする。
【解決手段】電子ペンの筒状のペン筐体内に、少なくともペン先が、ペン筐体の軸心方向の一方の開口から突出可能に収容される静電容量方式の電子ペンカートリッジである。筒状のカートリッジ筐体内に、位置検出センサに供給する信号を生成する信号発信回路を含む電子回路と、この電子回路に電源電圧を供給する充電可能な蓄電デバイスとを設ける。カートリッジ筐体の軸心方向の、ペン先側とは反対側の後端部において、当該後端部の外側に巻回されるような状態でコイルを設ける。外部から供給される磁界に基づいてコイルに誘起される誘導電流により、蓄電デバイスが充電されるように構成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ペンのペン筐体内に、少なくともペン先が、前記ペン筐体の軸心方向の一方の開口から突出可能に収容される電子ペンカートリッジであって、
カートリッジ筐体と、
前記カートリッジ筐体内に設けられ、位置検出センサに供給する信号を生成する信号発信回路を含む電子回路と、
前記カートリッジ筐体内に設けられ、前記電子回路に電源電圧を供給する充電可能な蓄電デバイスと、
前記カートリッジ筐体の外側に巻回されるような状態で設けられるコイルと、
を備え、
外部から供給される磁界に基づいて前記コイルに誘起される誘導電流により、前記蓄電デバイスが充電されるように構成されている
ことを特徴とする電子ペンカートリッジ。
【請求項2】
前記カートリッジ筐体内には、前記蓄電デバイスを充電するための充電用回路が設けられており、前記コイルは、前記充電用回路と電気的に接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペンカートリッジ。
【請求項3】
前記カートリッジ筐体の前記コイルが巻回されている部分は絶縁体であり、樹脂である
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペンカートリッジ。
【請求項4】
前記カートリッジ筐体の前記コイルが巻回されている部分は絶縁体であり、磁性体である
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペンカートリッジ。
【請求項5】
前記カートリッジ筐体の前記コイルが巻回されている部分を除く部分は、金属で構成されており、
前記電子回路の接地端は、前記カートリッジ筐体の前記金属で構成されている部分に電気的に接続されていると共に、前記コイルの一端が前記カートリッジ筐体の前記金属で構成されている部分に電気的に接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペンカートリッジ。
【請求項6】
軸心方向の一端側が前記ペン先となる導電性の中心電極と、
少なくとも前記ペン先を除いて前記中心電極の周囲に配設され、前記中心電極とは絶縁されている周辺電極と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の電子ペンカートリッジ。
【請求項7】
前記信号発信回路から前記信号が前記中心電極に供給されるときには、前記周辺電極は接地されてシールド電極として機能するように構成されている
ことを特徴とする請求項6に記載の電子ペンカートリッジ。
【請求項8】
前記信号発信回路から前記信号が前記周辺電極に供給されることで、前記周辺電極は傾き検出用電極として機能するように構成されている
ことを特徴とする請求項6に記載の電子ペンカートリッジ。
【請求項9】
ペン先側となる軸心方向の一端側に開口が設けられているペン筐体を有し、少なくとも1本の電子ペンカートリッジが前記ペン筐体内に収納される電子ペンであって、
前記電子ペンカートリッジは、
カートリッジ筐体と、
前記カートリッジ筐体内に設けられ、位置検出センサに供給する信号を生成する信号発信回路を含む電子回路と、
前記カートリッジ筐体内に設けられ、前記電子回路に電源電圧を供給する充電可能な蓄電デバイスと、
前記カートリッジ筐体の外側に巻回されるような状態で設けられるコイルと、
を備え、
外部から供給される磁界に基づいて前記コイルに誘起される誘導電流により、前記蓄電デバイスが充電されるように構成されている
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項10】
前記電子ペンカートリッジは、
軸心方向の一端側がペン先となる導電性の中心電極と、
少なくとも前記ペン先を除いて前記中心電極の周囲に配設され、前記中心電極とは絶縁されている周辺電極と、
を備え、
前記ペン先となる前記中心電極の前記一端側が前記ペン筐体の前記開口から外部に突出する使用時には、前記周辺電極の前記ペン先側の一部も前記ペン筐体の前記開口から外部に突出する
ことを特徴とする請求項9に記載の電子ペン。
【請求項11】
前記電子ペンカートリッジの前記ペン筐体の前記開口から突出する前記一部の径は、ボールペンの替え芯のペン先部の径以下とされ、前記電子ペンカートリッジの長さは、前記ボールペンの替え芯の長さとほぼ同一とされている
ことを特徴とする請求項9に記載の電子ペン。
【請求項12】
前記ペン筐体は、前記ボールペンの替え芯を収納して、ボールペンとして機能する
ことを特徴とする請求項11に記載の電子ペン。
【請求項13】
前記ペン筐体内には、前記電子ペンカートリッジまたは前記ボールペンの替え芯についてのノック式ボールペンの機構が設けられている
ことを特徴とする請求項11または請求項12に記載の電子ペン。
【請求項14】
前記ペン筐体内には、複数本の前記電子ペンカートリッジを収納して、その内の1本の前記電子ペンカートリッジのペン先側を選択的に、前記開口から外部に突出させるようにするノック式多色ボールペンの機構が設けられている
ことを特徴とする請求項9に記載の電子ペン。
【請求項15】
前記ペン筐体は、複数個の前記電子ペンカートリッジの1本または複数本の代わりに、前記ボールペンの替え芯を収納して、ノック式多色ボールペンとしても機能する
ことを特徴とする請求項11に記載の電子ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、位置検出センサと電界結合により信号の授受を行う静電容量方式の電子ペン及び電子ペンカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブ静電容量方式の電子ペンは、一次電池又は二次電池や電気二重層コンデンサなどの充電可能な蓄電デバイスを用いた電源回路と信号発信回路とを内蔵すると共に、芯体を導体で構成し、信号発信回路からの信号を、導体の芯体から、位置検出センサに対して静電結合により送信するようにするものである(例えば特許文献1(特許第5687398号公報)参照)。
【0003】
ところで、近年の小型化の嗜好により、携帯型の電子機器も、より小型化の要求が強くなっている。そして、電子ペンは、この種の小型の電子機器に搭載される位置検出センサと共に使用されるようになっており、より細型のものが求められている。
【0004】
さらに、最近は、電子ペンは、文具の延長として捉えられ、その内部構成をモジュール化して、ボールペンの替え芯(リフィルやカートリッジ)と同様に取り扱えるようにする要望もある。以下、この明細書では、電子ペンの内部構成部品をモジュール化して一体化し、ボールペンの替え芯のように交換可能に構成したものを電子ペンカートリッジと称することとする。
【0005】
出願人は、電磁誘導方式の電子ペン用の電子ペンカートリッジについては、一次電池や二次電池を用いた電源回路を必要としないので、文具のボールペンの筐体をそのままに、ボールペンの替え芯と同様に取り扱えるようにしたものを既に提案している(例えば特許文献2(特許第5959038号公報)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5687398号公報
【特許文献2】特許第5959038号公報
【特許文献3】WO2014/097953A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、アクティブ静電容量方式の電子ペンは、上述したように、一次電池や二次電池を用いた電源回路を必要とするために、文具のボールペンの筐体をそのままに、ボールペンの替え芯と同様に取り扱えるようにした電子ペンカートリッジを提供することが困難であった。
【0008】
すなわち、アクティブ静電容量方式の電子ペンの電子ペンカートリッジに一次電池を搭載しようとしたとき、極細の電子ペンカートリッジの筐体内に収納することができる一次電池は、専用のものが必要であって、高価なものとなってしまうと共に、電池容量が十分なものをえることが困難であり、一次電池を頻繁に交換する必要が生じるという問題がある。そのため、一次電池は電子ペンの筐体側に設けて、電子ペンカートリッジに電源電圧を供給するように構成する必要があり、文具のボールペンの筐体をそのまま用いることは
困難であった。
【0009】
出願人は、アクティブ静電容量方式の電子ペンにおいて、筐体内に蓄電デバイスを設け、ペン先側に電磁誘導方式の電子ペンと同様にフェライトコアにコイルを巻回した部品を設け、充電用外部磁界により、このコイルに流れる電磁誘導電流により、蓄電デバイスを充電するように構成したものを提案している(特許文献3(WO2014/097953A1)参照)。この特許文献3のアクティブ静電容量方式の電子ペンにおいては、導電性の芯体を、フェライトコアの貫通孔を挿通させるように構成している。
【0010】
この特許文献3の技術を用いれば、蓄電デバイスは、極細の電子ペンカートリッジの筐体内に収納することができると共に、電磁誘導方式の電子ペンカートリッジと同様にして、ペン先側にコイルを巻回したフェライトコアを備える構成とすることができるので、アクティブ静電容量方式の電子ペンカートリッジを提供することができる。
【0011】
しかしながら、アクティブ静電容量方式の電子ペンとしては、芯体を中心電極として、当該中心電極の周囲を囲むように周辺電極を設け、中心電極及び周辺電極とで位置検出センサと信号の授受するタイプの双方向通信型電子ペンもある。この種の双方向通信型のアクティブ静電容量方式の電子ペンカートリッジの場合には、周辺電極とコイルを巻回したフェライトコアとの位置が重なってしまうために、文具のボールペンの替え芯と互換性をとれるような太さとすることが困難である。
【0012】
この発明は、以上の問題点を解決することができるようにした電子ペンカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、
電子ペンのペン筐体内に、少なくともペン先が、前記ペン筐体の軸心方向の一方の開口から突出可能に収容される電子ペンカートリッジであって、
カートリッジ筐体と、
前記カートリッジ筐体内に設けられ、位置検出センサに供給する信号を生成する信号発信回路を含む電子回路と、
前記カートリッジ筐体内に設けられ、前記電子回路に電源電圧を供給する充電可能な蓄電デバイスと、
前記カートリッジ筐体の外側に巻回されるような状態で設けられるコイルと、
を備え、
外部から供給される磁界に基づいて前記コイルに誘起される誘導電流により、前記蓄電デバイスが充電されるように構成されている
ことを特徴とする電子ペンカートリッジを提供する。
【0014】
上述の構成の電子ペンカートリッジにおいては、カートリッジ筐体には、小型のものとすることが比較的容易な蓄電デバイスを収納して、その蓄電デバイスを、カートリッジ筐体の外側に巻回されるような状態で設けたコイルに、外部から供給される磁界に基づいて誘起される誘導電流により充電することができる。
【0015】
この構成の電子ペンカートリッジによれば、外部磁界により充電用の誘導電流を誘起するためのコイルは、カートリッジ筐体の外側に巻回されるような状態で設けているので、電子ペンカートリッジが、芯体を中心電極として、当該中心電極の周囲を囲むように周辺電極を設け、中心電極及び周辺電極とで位置検出センサと信号の授受するタイプのものであっても、ペン先側は、ボールペンの替え芯と容易に互換性を取れるように構成することができる。
【0016】
また、電子ペンカートリッジのカートリッジ筐体には、外部磁界により充電用の誘導電流を誘起するためのコイルが設けられるが、当該コイルは、カートリッジ筐体の外側に巻回されるような状態で設けられる構成であり、当該コイルが設けられる位置は、ペン筐体内で収納に余裕のある位置であるので、ボールペンの替え芯と容易に互換性を取れるように構成することができる。
【0017】
したがって、上述の構成の電子ペンカートリッジによれば、アクティブ静電容量方式の電子ペンの電子ペンカートリッジとして、文具のボールペンの替え芯と互換性が取れ、ボールペンの筐体をそのまま、アクティブ静電容量方式の電子ペンのペン筐体として利用することができるようになるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明による電子ペンカートリッジの第1の実施形態を搭載する電子ペンの第1の実施形態の概要を示す図である。
図2】この発明による電子ペンカートリッジの第1の実施形態を説明するための図である。
図3】この発明による電子ペンカートリッジの第1の実施形態のペン先側の構成例を説明するための図である。
図4】この発明による電子ペンカートリッジの第1の実施形態のペン先側の構成部品の例を説明するための分解斜視図である。
図5】この発明による電子ペンカートリッジの第1の実施形態の電子回路の構成例を示す図である。
図6】この発明による電子ペンカートリッジの第1の実施形態を搭載する電子ペンの実施形態を充電する充電トレーの実施形態の構成例を示す図である。
図7】この発明による電子ペンカートリッジの第2の実施形態を搭載する電子ペンの第2の実施形態の概要を示す図である。
図8】この発明による電子ペンカートリッジの第2の実施形態を説明するための図である。
図9】この発明による電子ペンカートリッジの第2の実施形態のペン先側の構成例を説明するための図である。
図10】この発明による電子ペンカートリッジの第2の実施形態の電子回路の構成例を示す図である。
図11】この発明による電子ペンの第2の実施形態における、電子ペンの傾き検出を説明するための図である。
図12】この発明による電子ペンカートリッジの他の実施形態を説明するための図である。
図13】この発明による電子ペンの他の実施形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明による電子ペン及び電子ペンカートリッジの実施形態を、図を参照しながら説明する。
【0020】
[第1の実施形態]
第1の実施形態の電子ペンでは、カートリッジ式の構成とされ電子ペンカートリッジを、電子ペンの筒状の筐体内に着脱可能に収容する構成を備えている。
【0021】
図1は、この発明による電子ペンの第1の実施形態の構成例を示す図である。この第1の実施形態の電子ペン1は、筒状の筐体2(以下、ペン筐体2と称する)の中空部2a内に、電子ペンカートリッジ3が収納され、ノックカム機構部4により、電子ペンカートリッジ3のペン先側が、ペン筐体2の長手方向の一端側の開口2b側から出し入れされるノック式の構成を備える。
【0022】
図1(A)は、電子ペンカートリッジ3の全体がペン筐体2の中空部2a内に収容されている状態を示し、図1(B)は、ノックカム機構部4により電子ペンカートリッジ3のペン先側が、ペン筐体2の開口2bから突出した状態を示している。なお、図1の例では、電子ペン1のペン筐体2が透明の合成樹脂で構成されていて、その内部が透けて見える状態として示している。
【0023】
この実施形態の電子ペン1は、市販のノック式ボールペンと互換性が取れる構成とされている。
【0024】
ペン筐体2及び当該ペン筐体2内に設けられるノックカム機構部4は、周知の市販のノック式ボールペンと同一の構成とされると共に、寸法関係も同一に構成される。
【0025】
ノックカム機構部4は、図1に示すように、カム本体41と、ノック棒42と、回転子43とが組み合わされた周知の構成とされている。カム本体41は、筒状のペン筐体2の内壁面に形成されている。ノック棒42は、使用者のノック操作を受け付けることができるように、端部42aが、ペン筐体2のペン先側とは反対側の開口2cから突出するようにされている。回転子43は、電子ペンカートリッジ3のペン先側とは反対側の端部が嵌合される嵌合部43aを備える。
【0026】
以上のような構成の電子ペン1において、図1(A)の状態において、ノック棒42の端部42aが押下されると、ノックカム機構部4により、電子ペンカートリッジ3は、ペン筐体2内において図1(B)の状態にロックされ、電子ペンカートリッジ3のペン先側が、ペン筐体2の開口2bから突出する状態になる。そして、この図1(B)の状態から、ノック棒42の端部42aが再度押下されると、ノックカム機構部4によりロック状態が解除され、復帰用バネ5により、電子ペンカートリッジ3のペン筐体2内の位置は、図1(A)の状態に戻る。ノックカム機構部4の詳細な構成及びその動作は、周知であるので、ここでは、その説明を省略する。
【0027】
[電子ペンカートリッジ3の実施形態]
図2は、電子ペンカートリッジ3の構成例を、市販のノック式ボールペンの替え芯と比較して示す図である。すなわち、図2(A)は、市販のノック式ボールペンの替え芯6を示し、また、図2(B)は、この実施形態の電子ペンカートリッジ3の構成例を示しており、この実施形態では、後述するように、電子ペンカートリッジ3は、ノック式ボールペンの替え芯6と、サイズ的に同等のものとして、互換性を取れるように構成されている。
【0028】
図3は、この実施形態の電子ペンカートリッジ3のペン先側の構成例を示す図で、図3(A)は、その外観を示す図、図3(B)は、その縦断面図である。また、図4は、図3に示した、この実施形態の電子ペンカートリッジ3のペン先側の構成例を説明するための分解斜視図である。
【0029】
市販のノック式ボールペンの替え芯6は、図2(A)に示すように、ボールが先端に配設されているペン先部61と、一定の外径の筒状のインク収納部62とが、一定の外径の筒状の結合部63で結合されて一体化された周知の構成を備える。ペン先部61は筒状形状を備えると共に、その先端側がテーパー形状に形成されたもので、最大外径は、ペン筐体2の開口2bの径R0よりも小さいR1とされている。結合部63とインク収納部62とは、同じ外径R2を有し、その外径R2は、ペン先部61の最大外径R1よりは若干大きくされており、例えばR2=2.2ミリメートルとされている。なお、ペン筐体2の開口2bの径R0は、R1<R0<R2とされている。
【0030】
一方、この実施形態の電子ペンカートリッジ3の筐体30(以下、カートリッジ筐体30と称する)は、図2(B)及び図3(A),(B)に示すように、筐体筒状部31のペン先側に、絶縁物、例えば樹脂からなるフロントキャップ32が結合されて構成されている。
【0031】
筐体筒状部31は、この例では、図2(B)に示すように、導電性の材料、この例では、導電性金属からなる金属パイプ部31aに対して、ペン先側とは反対側の後端側に、絶縁物、この例では樹脂からなる樹脂パイプ部31bが結合されて構成されている。筐体筒状部31の金属パイプ部31a及び樹脂パイプ部31bの外径は、外径R2に等しくされている。筐体筒状部31の樹脂パイプ部31b側の端部が、電子ペンカートリッジ3の、電子ペン1のペン筐体2内の嵌合部43aとの嵌合部となる。
【0032】
フロントキャップ32は、この例では、図2(B)及び図3に示すように、ペン先側に向かって徐々に先細となるようにテーパー状に形成されている。すなわち、フロントキャップ32は、ペン先側に近づくにしたがって徐々に小さくなる径を有し、この実施形態では、図2(B)に示すように、当該フロントキャップ32の軸心方向の中ほどの位置からペン先側は、ペン筐体2のペン先側の開口2bの径R0以下となるように構成されている。
【0033】
カートリッジ筐体30の内部には、図3(B)に示すように、中空部30aが存在する。そして、フロントキャップ32は、図3(B)に示すように、芯体33の径よりも大きな径の開口32a(図3(B)参照)を備えており、その開口32aは、カートリッジ筐体30の中空部30aに連通している。
【0034】
この実施形態の電子ペンカートリッジ3の芯体33は、導電性の部材、この例では、導電性金属で構成されている。そして、この芯体33が、図3(B)に示すように、フロントキャップ32の開口32aから、カートリッジ筐体30内に挿入され、ペン先側とは反対側の端部が、後述する芯体保持部材7に着脱可能に装着される。
【0035】
導電性材料からなる芯体33とカートリッジ筐体30の筐体筒状部31の金属パイプ部31aとは、図3(B)に示すように、絶縁材であるフロントキャップ32により、電気的に分離(絶縁)される。
【0036】
この例の場合には、図2(A)及び図2(B)に示すように、電子ペンカートリッジ3のペン先側の寸法は、ボールペンの替え芯6のペン先側の寸法とほぼ等しくなるように構成されている。すなわち、前述したように、カートリッジ筐体30の筐体筒状部31の外径は、市販のノック式ボールペンの替え芯6のインク収納部62及び結合部63の外径R2と等しくされており、また、フロントキャップ32は、そのテーパー形状部分の軸心方向の中ほどの位置からペン先側は、ペン筐体2のペン先側の開口2bの径R0以下となるように構成されている。
【0037】
そして、図2(A)及び(B)に示すように、電子ペンカートリッジ3に対して、フロントキャップ32の開口32aから芯体33が挿入されて装着されているときに、芯体33の先端部からフロントキャップ32の外径が径R1となる位置までの長さが、市販のノック式ボールペンの替え芯6のペン先部61の軸心方向の長さL1とほぼ等しくなるように構成されている。また、図2(A)及び(B)に示すように、芯体33を装着した状態の電子ペンカートリッジ3の長さ(全長)は、ボールペンの替え芯6の全長L2と等しく選定されている。
【0038】
以上のような構成の電子ペンカートリッジ3は、その筐体筒状部31の後端側の樹脂パイプ部31bをノックカム機構部4の回転子43の嵌合部43aに嵌合させることにより、ペン筐体2内に収納することができる。
【0039】
そして、この実施形態の電子ペン1においては、使用者は、位置検出装置と共に使用するときには、ノック棒42の端部42aを押下する。すると、電子ペン1においては、図1(B)に示すように、芯体33の先端部33aと、フロントキャップ32のテーパー部のペン先側の一部が、ペン筐体2の開口2bから外部に突出する状態となる。
【0040】
すなわち、この実施形態では、電子ペン1のペン筐体2の開口2bからは、図1(B)に示すように、電子ペンカートリッジ3に装着される芯体33の先端部のみではなく、フロントキャップ32のペン先側の一部が外部に突出するように構成されている。電子ペン1の使用者は、この状態で、位置検出装置の位置検出センサ上において、指示位置の入力操作をする。
【0041】
電子ペン1の使用が終了したら、ノック棒42の端部42aを再押下することで、図1(A)に示すように、電子ペンカートリッジ3の全体はペン筐体2の中空部2a内に収容させる状態とすることができる。このときには、電子ペンカートリッジ3の全体がペン筐体2の中空部2a内に収容されて、電子ペンカートリッジ3の芯体33の先端部33aは、ペン筐体2により保護される状態となる。
【0042】
カートリッジ筐体30の中空部30a内には、図2(B)及び図3(A)において点線で示すように、芯体保持部材7、筆圧検出部8、信号発信回路を含む電子回路が搭載されるプリント基板9、電源電圧供給用の蓄電デバイスの例としてのコンデンサ10が、ペン先側から順に、軸心方向に並べられて収納されて、配設されている。プリント基板9に搭載される電子回路には、コンデンサ10への充電電流を供給するための充電用回路が含まれている。この例では、コンデンサ10は、例えば電気二重層コンデンサで構成される。
【0043】
そして、この実施形態では、カートリッジ筐体30の筐体筒状部31の後端側の樹脂パイプ部31bの外周部分には、図2(B)に示すように、外部から交流磁界が供給されたときに、誘導電流が励起されるコイル11が設けられている。この例では、コイル11は、樹脂パイプ部31bの、ペン筐体2のノックカム機構部4の回転子43の嵌合部43aに嵌合される端部部分を除く部分において、樹脂パイプ部31bに直接に巻回されて取り付けられている。なお、予めコイル11が巻回されて空芯コイルの構成とされたものを、樹脂パイプ部31bの外周部に装着し、例えば接着材により接着固定するように構成してもよい。
【0044】
この場合に、コイル11は、絶縁部材である樹脂パイプ部31bに巻回されて設けられているので、印可される磁界により樹脂パイプ部31bに渦電流が生じることがない。このため、蓄電デバイスの例としてのコンデンサ10に対して、コイル11に誘起される誘導電流により効率良く充電がなされる。
【0045】
そして、樹脂パイプ部31bに設けられたコイル11の一端11aは、プリント基板9に設けられる電子回路のアース電極に接続されると共に、他端11bは、電子回路に含まれる充電用回路に接続される。
【0046】
図2(C)は、カートリッジ筐体30の後端側の樹脂パイプ部31bの近傍の拡大断面図である。この図2(C)に示すように、コンデンサ10の一方の電極10aは、プリント基板9のアース電極に接続されている。この例では、プリント基板9のアース電極は、カートリッジ筐体30の金属パイプ部31aに電気的に接続されている。そこで、コイル11の一端11aは、図2(B)及び(C)に示すように、金属パイプ部31aに、例えばはんだ付けされて電気的に接続されている。
【0047】
そして、図2(C)に示すように、この例では、カートリッジ筐体30の樹脂パイプ部31bの嵌合部43aと嵌合される端部には、樹脂パイプ部31bの内壁面から外周面に亘って電極導体12が配設されている。この電極導体12の外周面側には、コイル11の他端11bが、例えばはんだ付けされて電気的に接続されている。また、電極導体12の内壁面側は、充電用回路の例としての整流回路13を通じてコンデンサ10の他方の電極に接続されている。そして、図2(C)に示すように、整流回路13とコンデンサ10の他方の電極10bとの接続点は、後述するように、電子回路の電圧変換回路14に電気的に接続されている。
【0048】
そして、この実施形態では、カートリッジ筐体30の中空部30a内には、図3(B)に示すように、基板載置台部301にプリント基板9が載置された基板ホルダー300が収納されている。
【0049】
基板ホルダー300は、絶縁性の樹脂により構成され、電子ペンカートリッジ3の軸心方向となる長手方向において、基板載置台部301側とは反対側に、筆圧検出部8を収納保持するための筆圧検出部保持部302を有している。基板ホルダー300は、図3(B)に示すように、カートリッジ筐体30の中空部内に収納されたときに、電子ペンカートリッジ3の軸心方向となる長手方向に、筆圧検出部保持部302と、基板載置台部301とが連続する構成とされている。筆圧検出部保持部302は、内部の中空部に筆圧検出部8の複数個の部品を収納する中空部を備える円筒形状とされる。基板載置台部301は、プリント基板9を載置して保持するボート状の形状であって、筒状体を軸芯方向に略半分切断したような形状とされている。
【0050】
基板ホルダー300は、筆圧検出部保持部302がペン先側となるように、カートリッジ筐体30内に収納される。そして、この筆圧検出部保持部302に保持されている筆圧検出部8に対して、芯体33と嵌合して当該芯体33を保持する芯体保持部材7が結合され、芯体33に印加される圧力(筆圧)が、筆圧検出部8に伝達されるように構成されている。
【0051】
基板ホルダー300の筆圧検出部保持部302の外径は、この実施形態では、フロントキャップ32の内径と等しいあるいは若干大きく選定されている。そして、図3(B)に示すように、基板ホルダー300の筆圧検出部保持部302の一部が、フロントキャップ32の一部と嵌合することで、基板ホルダー300が、カートリッジ筐体30内において軸心方向に移動しないように位置規制されている。
【0052】
芯体33を嵌合保持する芯体保持部材7は、図3(B)及び図4に示すように、導電性弾性部材71と、芯体ホルダー72と、コイルばね73と、導体端子部材74とから構成されている。芯体33は、この実施形態では、図3(B)に示すように、導電性弾性部材71を介して導電性材料からなる芯体ホルダー72に嵌合されることにより、芯体ホルダー72に対して結合保持されている。芯体保持部材7は、筆圧検出部8に対して、芯体33に印可される筆圧の伝達部材の役割もする。
【0053】
そして、芯体ホルダー72が、筆圧検出部保持部302に保持される筆圧検出部8の保持部材83に嵌合されることにより、芯体33に印加される圧力(筆圧)が筆圧検出部8に伝達されるように構成されている。この場合に、芯体ホルダー72は、当該芯体ホルダー72と基板ホルダー300との間に設けられる、導電性金属などの導電性材料からなる弾性部材の例としてのコイルばね73により、基板ホルダー300に対して常に芯体33側に付勢されるように構成されている。なお、コイルばね73は、導体端子部材74と共に、プリント基板9に配設されている電子回路の信号発信回路からの信号を芯体33に伝達するための電気的接続用部材を構成するものである。
【0054】
図4(A)は、芯体33、導電性弾性部材71、芯体ホルダー72、コイルばね73、導体端子部材74及び基板ホルダー300の筆圧検出部保持部302の部分の分解斜視図である。
【0055】
導電性弾性部材71は、例えば導電性ゴムからなり、芯体33の先端部33aとは反対側の端部が嵌合される貫通孔71aを備える円筒状形状に形成されている。この導電性弾性部材71の芯体33側は、他の部分よりも外径が小さくされて薄肉部とされると共に、スリット712が形成されて、芯体33を把持し易くする把持部711とされている。
【0056】
このように構成したことにより、芯体33は、把持部711の、スリット712が形成された2個の薄肉部である弧状部分により把持される。したがって、芯体33は導電性弾性部材71の把持部711に対して容易に挿入嵌合され、また、所定の力で引っ張ることで、芯体33を導電性弾性部材71から容易に引き抜くことができる。
【0057】
芯体ホルダー72は、導電性材料、例えばSUS(Steel Special Use Stainless)からなり、導電性弾性部材71を収納嵌合する凹穴721aを有する収納嵌合部721と、筆圧検出部8の後述する保持部材83に嵌合する棒状部722とが一体に形成されたものである。
【0058】
上述のようにして導電性弾性部材71を収納した芯体ホルダー72の棒状部722に導電性のコイルばね73が装着された後、芯体ホルダー72の棒状部722は、基板ホルダー300の筆圧検出部保持部302に保持される筆圧検出部8の保持部材83に嵌合される。
【0059】
この場合に、この実施形態の電子ペンカートリッジ3においては、プリント基板9上に構成されている電子回路の信号発信回路からの送信信号を、芯体33に供給する必要がある。この実施形態では、芯体ホルダー72と、基板ホルダー300の筆圧検出部保持部302との間に設けた、導電性の材料で構成されたコイルばね73と、基板ホルダー300の筆圧検出部保持部302に設けられた導体端子部材74(図4(B)参照)とにより電気的接続用部材を構成し、この電気的接続用部材により、プリント基板9の信号発信回路からの信号供給のための電気的接続を実現している。
【0060】
導体端子部材74は、導電性を有する材料、例えばSUSからなり、図4(A),(B)に示すように、基板ホルダー300の筆圧検出部保持部302の開口部302a側を覆い、かつ、芯体ホルダー72の棒状部722が挿通する貫通孔741aを備える当接板部741を有する。また、導体端子部材74は、基板ホルダー300の筆圧検出部保持部302の部分を跨いで、基板載置台部301の部分まで延伸する延伸部742備えている。そして、導体端子部材74が基板ホルダー300の筆圧検出部保持部302に装着された状態においては、図3(B)に示すように、導体端子部材74から延伸する延伸部742の先端の端子部742aは、基板ホルダー300の基板載置台部301に載置されているプリント基板9の裏面側の導体と当接し、例えば半田付けされる。これにより、導体端子部材74とプリント基板9に設けられている信号発信回路と電気的に接続される。
【0061】
導電性弾性部材71が嵌合された芯体ホルダー72の棒状部722が、コイルばね73を介在させた状態で、基板ホルダー300の筆圧検出部保持部302の中空部内に、導体端子部材74の当接板部741の貫通孔741aを通して挿入されて、筆圧検出部保持部302に嵌合される。コイルばね73の内径は、芯体ホルダー72の棒状部722の外形よりも大きいものとされている。
【0062】
したがって、コイルばね73は、芯体ホルダー72に弾性的に接触すると共に、導体端子部材74の当接板部741に当接して弾性的に接触する。コイルばね73は、導電性材料で構成されていると共に、導電性弾性部材71及び芯体ホルダー72は導電性を有するので、コイルばね73及び導体端子部材74を介して、芯体ホルダー72に嵌合されている導電性弾性部材71は、プリント基板9の回路部と電気的に接続される。
【0063】
そして、以上のようにカートリッジ筐体30内に収納された芯体ホルダー72に嵌合された導電性弾性部材71の貫通孔71aに対して、芯体33が、前述したようにして挿入嵌合されて、芯体33が、芯体ホルダー72に対して、導電性弾性部材71を介して保持される。この状態では、芯体33は、プリント基板9の信号発信回路と電気的に接続されることになり、信号発信回路からの信号が芯体33に供給される状態となる。
【0064】
次に、基板ホルダー300の筆圧検出部保持部302及び筆圧検出部8の構成、さらに、筆圧検出部8の保持部材83と、芯体ホルダー72との嵌合について説明する。
【0065】
筆圧検出部保持部302に筆圧検出部8が収納されて図3(B)に示すように構成されることで、筆圧検出用モジュールが構成される。そして、この筆圧検出用モジュールに、芯体ホルダー72を介して芯体33が結合されることで、芯体33の先端部33aに印加される筆圧が筆圧検出用モジュールの筆圧検出部8で検出される。この場合に、筆圧検出用モジュールは、これを構成する筆圧検出部8の部品の一部が、芯体33の先端部33aに印加される筆圧に応じて、芯体33及び芯体ホルダー72と共に軸心方向に移動することで、筆圧を検出する。
【0066】
この例の筆圧検出部8は、芯体33に印加される筆圧に応じて静電容量が変化する容量可変コンデンサを用いた場合であり、図3(B)に示すように、誘電体81と、端子部材82と、保持部材83と、導電部材84と、弾性部材85との複数個の部品からなる。
【0067】
以上のように基板ホルダー300の筆圧検出部保持部302に芯体ホルダー72が嵌合されている状態において、芯体33を、芯体ホルダー72に嵌合されている導電性弾性部材71の貫通孔71aに圧入させる。これにより、芯体33は、前述したように、導電性弾性部材71により芯体ホルダー72に対してしっかりと保持される。なお、芯体33は、芯体ホルダー72に嵌合されて保持された状態から、先端部33a側の方向に引き抜くことが可能であって、前述したように、交換が可能である。
【0068】
この電子ペンカートリッジ3において、芯体33の先端部33aに圧力が印加されると、その圧力に応じて、芯体33は、軸心方向に後端側に変位し、この変位により、筆圧検出部保持部302内の保持部材83が弾性部材85の弾性偏倚力に抗して、誘電体81側に変位する。その結果、保持部材83に嵌合されている導電部材84が、誘電体81側に変位し、導電部材84と誘電体81との間の距離、さらには、導電部材84と誘電体81との接触面積が、芯体33に印加される圧力に応じて変化する。
【0069】
これにより、第1の電極を構成する端子部材82と、第2の電極を構成する導電部材84との間で形成される容量可変コンデンサの静電容量が、芯体33に印加される圧力に応じて変化する。この容量可変コンデンサの静電容量の変化が、プリント基板9に設けられている電子回路で検出されて筆圧が検出される。
【0070】
なお、筆圧検出部8は、上述のような構成のものに限られるものではなく、例えば容量可変コンデンサをMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子からなる半導体チップで構成したもの(例えば特許文献(特開2013-161307号公報)参照)を用いてもよい。
【0071】
以上のように構成された電子ペンカートリッジ3のカートリッジ筐体30の後端側の樹脂パイプ部31bの端部が、電子ペン1のペン筐体2に設けられているノックカム機構部4の回転子43の嵌合部43aに嵌合されることで、実施形態の電子ペン1が完成となる。
【0072】
[電子ペンカートリッジ3の電子回路の構成例]
以上のように構成される、この実施形態の電子ペンカートリッジ3の電子回路の構成例を、図5に示す。図5に示すように、この例の電子回路は、カートリッジ筐体30の樹脂パイプ部31bの外周部に設けられたコイル11と、整流回路13と、コンデンサ10と、電圧変換回路14と、信号発信回路15と、導電性の芯体33とで構成されている。
【0073】
図2(C)に示したように、カートリッジ筐体30の樹脂パイプ部31bの外周部に設けられたコイル11は、整流回路13を介してコンデンサ10に接続されると共に、電圧変換回路14に接続されている。
【0074】
後述する充電用トレーに載置するなど、コイル11が交流磁界内に置かれると、当該コイル11に電磁誘導により誘導電流が誘起され、その誘導電流が整流回路13で整流される。そして、この整流回路13からの整流電流により、コンデンサ10が充電される。
【0075】
電圧変換回路14は、コンデンサ10に蓄えられた電圧を一定の電圧に変換して、信号発信回路15の電源として供給する。この電圧変換回路14は、コンデンサ10の両端の電圧よりも低くなるような降圧タイプのものでも良いし、コンデンサ10の両端の電圧よりも高くなるような昇圧タイプのものでも良い。また、コンデンサ10の両端の電圧が前記一定の電圧よりも高い場合は降圧回路として動作し、前記一定の電圧よりも低い場合は昇圧回路として動作する昇降圧タイプのものでも良い。
【0076】
信号発信回路15は、この例では、発振回路を含み、筆圧検出部8で構成される可変容量コンデンサ8Cの容量に応じて周波数が変化する信号を発生し、その発生した信号を芯体33に供給する。信号発信回路15の発振回路は、例えばコイルとコンデンサによる共振を利用したLC発振回路により構成される。
【0077】
信号発信回路15からの信号は、芯体33より、その信号に基づく電界として放射され、静電容量方式の位置検出センサで検出される。位置検出センサに接続される位置検出回路では、検出した信号が得られた位置検出センサにおける位置から、電子ペン1の電子ペンカートリッジ3の芯体33により指示された位置座標を検出する。また、位置検出回路は、検出した信号の周波数から、芯体33に印可されている筆圧を検出する。
【0078】
[電子ペン用充電トレーの構成例]
上述した実施形態の電子ペン1のペン筐体2内に収納された電子ペンカートリッジ3に内蔵される蓄電デバイスの例としてのコンデンサ10を充電するための電子ペン用充電トレーについて説明する。この例の電子ペン用充電トレーは、この実施形態の電子ペン1を載置するだけで、電子ペンカートリッジ3に内蔵される蓄電デバイスの例としてのコンデンサ10を充電することができるように構成されている。
【0079】
図6は、電子ペン用充電トレーの一実施形態を説明するための図である。すなわち、図6の例の電子ペン用充電トレー100は、電子ペン1のペン筐体2の太さよりも厚さの厚い、この例では、直方体形状のトレー筐体101を備える構成とされている。このトレー筐体101の上面101aの長辺方向の長さは、この例では、電子ペン1の軸心方向の長さよりも長いものとされていると共に、短辺方向の長さは、電子ペン1の太さよりも大きい長さとされている。
【0080】
そして、この例では、トレー筐体101の上面101aの短辺方向の中央部には、トレー筐体101の上面101aの長辺方向の全体に亘って形成される窪み101bが設けられている。この窪み101bは、電子ペン1の載置用であり、この窪み101bの幅は、電子ペン1のペン筐体2の径よりも大きい長さを備えている。
【0081】
そして、トレー筐体101の内部には、窪み101bの形成方向に沿って、この例では、窪み101bの両側に、磁界発生用コイル102及び103が配設されている。この場合に、磁界発生用コイル102及び103は、これら磁界発生用コイル102及び103に供給される交流電流により発生する磁界における磁束Ba,Bbの流れの方向が、図6に示すように、窪み101bの形成方向に沿った方向となるように配設されている。すなわち、磁界発生用コイル102及び103は、それぞれのコイル102,103の巻回中心の方向が、窪み101bの形成方向(トレー筐体101の上面101aの長辺方向)に沿った方向となるように配設されている。
【0082】
また、この例では、磁界発生用コイル102及び103により形成される磁界における磁束Ba,Bbの流れの向きが同一となって加算されるように、これら磁界発生用コイル102及び103は配設され、かつ、交流信号が供給されるように構成されている。
【0083】
さらに、窪み101bの深さは、この窪み101bに電子ペン1が置かれたときに、その電子ペンカートリッジ3のカートリッジ筐体30の後端部に設けられているコイル11に、磁界発生用コイル102及び103に供給される交流電流により発生する磁界における磁束Ba,Bbが、効率良く鎖交するような深さとされている。
【0084】
また、トレー筐体101の内部には、図6に示すように、磁界発生用コイル102及び103に、交流電流を供給する交流信号発生回路104が設けられている。なお、図6では、図示を省略するが、この電子ペン用充電トレー100は、商用交流電源のコンセントに嵌合されるACプラグが接続されていると共に、電源スイッチを備えている。そして、電源スイッチがオンとされると、交流信号発生回路104に電源電圧が供給されて、磁界発生用コイル102及び103に交流電流が流れ、磁束Ba,Bbを生成する充電用の交流磁界が発生する。
【0085】
以上のように構成されている電子ペン用充電トレー100を用いて、電子ペン1の充電を行うには、電子ペン1を電子ペン用充電トレー100の窪み101bに置き、電源スイッチをオンとする。すると、交流信号発生回路104からの交流信号が磁界発生用コイル102及び103に流れ、窪み101bに置かれている電子ペン1の電子ペンカートリッジ3に設けられているコイル11と磁束Ba,Bbが鎖交する充電用の交流磁界が発生する。
【0086】
したがって、電子ペン1の電子ペンカートリッジ3のコイル11に誘導電流が誘起され、この誘導電流により、電子ペンカートリッジ3のカートリッジ筐体30内の蓄電デバイスの例としてのコンデンサ10が充電される。この充電により、電子ペン1の電子ペンカートリッジ3は、アクティブ静電容量方式の動作が可能な状態となる。
【0087】
なお、上述の例では、電子ペン用充電トレー100には、2個の磁界発生用コイル102,103を設けるようにしたが、磁界発生用コイルは、1個でもよい。また、電子ペン1の電子ペンカートリッジ3の蓄電デバイスの充電装置としては、図6の例のようなトレーに限られるものではなく、例えば、電子ペンを挿入するペン立ての形状のようなものであってもよい。その場合には、電子ペン1をペン立てに挿入して立てたときに、電子ペンカートリッジ3のカートリッジ筐体30の樹脂パイプ部31bに設けられているコイル11と鎖交する磁束が形成されるように、磁界発生用コイルが設けられるものである。
【0088】
[第1の実施形態の電子ペン及び電子ペンカートリッジの効果]
以上説明したように、上述の第1の実施形態の電子ペンカートリッジ3は、文具のボールペンの替え芯と互換性を保持するように構成することができる。そして、上述の第1の実施形態の電子ペンカートリッジ3によれば、カートリッジ筐体30内に収納した蓄電デバイスを、カートリッジ筐体30の後端部に巻回したコイルに誘起される誘導電流により充電する構成であるので、一次電池を用いる場合のような電池の頻繁な交換は不要である。
【0089】
そして、上述の第1の実施形態の電子ペンカートリッジ3によれば、カートリッジ筐体30の後端部に巻回したコイルに外部磁界が加わるような環境に置くだけで、電子ペンカートリッジ3に内蔵の蓄電デバイスの充電が可能であり、電子ペン1のペン筐体2内に電子ペンカートリッジ3を収納した状態における充電が可能となる。また、電子ペン1のペン筐体2には、充電用端子を設けるなどという特別の構成は不要であって、文具のボールペンの筐体をそのまま利用することができるという効果を奏する。
【0090】
[第2の実施形態]
第2の実施形態のアクティブ静電容量方式の電子ペンは、電子ペンによる指示位置を検出する位置検出センサ側からの信号を受信して、その受信した信号の要求に基づいたフォーマットの信号を発信する双方向通信型の電子ペンの場合の例である。
【0091】
この種の双方向通信型電子ペンにおいては、位置検出センサからの信号を受信するための受信部の位置が重要である。静電容量方式の電子ペンの場合、位置検出センサから送信される信号は、静電容量結合により受信可能な電界によるものであり、その到達距離は非常に短い。そのため、双方向通信型電子ペンの受信部は、位置検出センサからの信号を大きい強度で受信することができるように、ペン先に近い位置に配置すべきである。
【0092】
そこで、この第2の実施形態では、電子ペンカートリッジの構成を、上述の双方向通信型電子ペン用として最適なものとなるように考慮している。すなわち、以下に説明する実施形態では、電子ペンカートリッジに、位置検出センサからの信号の受信部を設けるが、この受信部は、導電性材料で構成されている中心電極としての芯体との電気的な絶縁を考慮しつつ、この中心電極の周囲を、中心電極の先端部の近傍まで覆うように囲んで設けられた筒状の導体からなる周辺電極により構成される。
【0093】
また、最近は、電子ペンの位置検出センサ面に対する傾き角(電子ペンの軸心方向と位置検出センサ面との成す角度。以下、電子ペンの傾き角と略称する)を、位置検出装置で検出し、検出した傾き角を電子ペンの指示軌跡(筆記跡)の太さなどに反映するようにすることが提案されている。この第2の実施形態の電子ペンカートリッジにおいては、上記の周辺電極を、この電子ペンの傾き角の検出にも用いることができるように構成する。
【0094】
また、この第2の実施形態では、周辺電極を、位置検出用信号を送出する中心電極に対するシールド電極の役割をするようにも構成する。
【0095】
以下、図7図11を参照して、第2の実施形態の電子ペン及び電子ペンカートリッジの構成例について説明する。なお、以下に説明する第2の実施形態の電子ペン及び電子ペンカートリッジは、第1の実施形態と同様のノック式のボールペンの構成を備えるものであり、ペン筐体は、第1の実施形態のペン筐体2と同一のものをそのまま用いるようにしている。そして、第2の実施形態の電子ペンカートリッジは、ペン先側の構成が第1の実施形態の電子ペンカートリッジ3と異なるだけで、他の構成は、第1の実施形態の電子ペンカートリッジ3と同様である。以下の第2の実施形態の電子ペン及び電子ペンカートリッジの説明において、第1の実施形態と同一部分には、同一参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0096】
図7は、この発明の第2の実施形態の電子ペン1Aの構成例を示す図であり、第1の実施形態の電子ペン1の図1の構成例に対応するものである。また、図8(A)及び(B)は、この第2の実施形態の電子ペンカートリッジ3Aの構成例を、市販のノック式ボールペンの替え芯と比較して示す図であり、第1の実施形態の電子ペンカートリッジ3の図2(A)及び(B)の構成例に対応するものである。なお、図2(C)の電子ペンカートリッジ3の後端側の構成は、この第2の電子ペンカートリッジ3Aにおいても同様の構成を有するので、図8では、図示を省略した。また、図9は、この第2の実施形態の電子ペンカートリッジ3Aのペン先側の構成例を示す図で、図9(A)は、その外観を示す図、図9(B)は、その縦断面図である。
【0097】
この第2の実施形態の電子ペンカートリッジ3Aにおいては、図8(B)及び図9(A),(B)に示すように、筐体筒状部31Aのペン先側に、筒状結合部材35を介して、導電部材、例えば導電性金属からなる周辺電極36が結合され、この周辺電極36のペン先側にフロントキャップ37が結合されて、カートリッジ筐体30Aが構成されている。
【0098】
筐体筒状部31Aは、この例では、図8(B)に示すように、第1の実施形態の電子ペンカートリッジ3のカートリッジ筐体30の筐体筒状部31と同様に、金属パイプ部31Aaのペン先側とは反対側の後端側に樹脂パイプ部31Abが結合されて構成されている。そして、樹脂パイプ部31Abには、コイル11が巻回され、このコイル11の一端11a及び他端11bが、上述の第1の実施形態と同様にして、筐体筒状部31A内の電子回路と接続されている。
【0099】
そして、この第2の実施形態では、筐体筒状部31Aは、金属パイプ部31Aaのペン先側に、周辺電極36が、筒状結合部材35を介して結合されている。筒状結合部材35は、筐体筒状部31Aの金属パイプ部31Aaと周辺電極36との間の絶縁の役割もする。そして、電子ペンカートリッジ3Aの樹脂パイプ部31Ab側の端部が、ペン筐体2内の嵌合部43aとの嵌合部となる。
【0100】
周辺電極36は、この例では、図8及び図9に示すように、外径が一定の径R2の円筒形状部36aと、ペン先側に向かって徐々に先細となるようにテーパー状に形成されているテーパー部36bとを有する形状とされている。筐体筒状部31Aの金属パイプ部31Aaは、周辺電極36の円筒形状部36aの外径R2と等しい外径の円筒形状を有している。
【0101】
筒状結合部材35は、絶縁性材料、この例では樹脂で構成されており、図9(B)に示すような筒状体であって、軸心方向の中ほどの位置には、外周面から突出するリング状鍔部35Fが形成されている。このリング状鍔部35Fは、軸心方向に所定の幅W(図9(A)及び(B)参照)を有し、その端面は、図9(A)及び(B)に示すように、筐体筒状部31A及び周辺電極36と段差を生じることなく面一となってカートリッジ筐体30Aの一部を構成するようにされている。
【0102】
そして、この筒状結合部材35の、リング状鍔部35Fよりも軸心方向の一方側であるペン先側は、周辺電極36の円筒形状部36aと嵌合される第1の嵌合筒状部35aとされる。また、筒状結合部材35のリング状鍔部35Fよりも軸心方向に後端側は、筐体筒状部31Aの金属パイプ部31Aaと嵌合される第2の嵌合筒状部35bとされる。
【0103】
筐体筒状部31Aの金属パイプ部31Aaと周辺電極36とが筒状結合部材35に対して挿入されて嵌合され、さらに周辺電極36のペン先側にフロントキャップ37が結合された状態では、図8(B)及び図9(A)、(B)に示すように、1本の筒状体のカートリッジ筐体30Aが形成される。このとき、前述したように、筐体筒状部31Aの金属パイプ部31Aaの外周面と、周辺電極36の外周面と、筒状結合部材35のリング状鍔部35Fの端面とは面一の状態となっている。そして、導電性材料からなる筐体筒状部31Aの金属パイプ部31Aaと、周辺電極36とは、筒状結合部材35のリング状鍔部35Fの存在により接触することなく互いに電気的に分離(絶縁)されている状態となっている。
【0104】
カートリッジ筐体30Aの内部には、図9(B)に示すように、中空部30Aaが存在する。周辺電極36のペン先側に装着されるフロントキャップ37は、絶縁材からなり、その先端側に中心電極としての芯体33の径よりも大きな径の開口37a(図9(B)参照)を備えており、その開口37aは、カートリッジ筐体30Aの中空部30Aaに連通している。
【0105】
そして、この中心電極としての芯体33が、図9(B)に示すように、フロントキャップ37の開口37aから、カートリッジ筐体30A内に挿入され、ペン先側とは反対側の端部が、芯体保持部材7に着脱可能に装着される。
【0106】
導電性材料からなる芯体33と周辺電極36とは、図9(B)に示すように、絶縁材であるフロントキャップ37により、電気的に分離(絶縁)される。この第2の実施形態の電子ペンカートリッジ3Aにおいては、中心電極としての芯体33が装着されたときには、周辺電極36は、図9(B)に示すように、芯体33のペン先となる先端部33aよりも後端側を囲むように配されている。
【0107】
この第2の実施形態の場合にも、図8(A)及び(B)に示すように、電子ペンカートリッジ3Aのペン先側の寸法は、ボールペンの替え芯6のペン先側の寸法とほぼ等しくなるように構成されている。すなわち、カートリッジ筐体30Aの筐体筒状部31A及び周辺電極36の円筒形状部36aの外径は、図8(B)に示すように、市販のノック式ボールペンの替え芯6のインク収納部62及び結合部63の外径R2と等しくされている。
【0108】
そして、カートリッジ筐体30Aの周辺電極36の、ペン先側のテーパー部36bは、ペン先側に近づくにしたがって徐々に小さくなる径を有し、この実施形態では、図8(B)に示すように、当該テーパー部36bの軸心方向の中ほどの位置からペン先側は、ペン筐体2のペン先側の開口2bの径R0以下となるように構成されている。
【0109】
そして、電子ペンカートリッジ3Aに対して、フロントキャップ37の開口37aから芯体33が挿入されて装着されているときに、芯体33の先端部から周辺電極36のテーパー部36bの外径が径R1となる位置までの長さが、市販のノック式ボールペンの替え芯6のペン先部61の軸心方向の長さL1とほぼ等しくなるように構成されている。
【0110】
また、図8(A)及び(B)に示すように、芯体33を装着した状態の電子ペンカートリッジ3Aの長さ(全長)は、ボールペンの替え芯6の全長L2と等しく選定されている。
【0111】
以上のような構成の電子ペンカートリッジ3Aは、その筐体筒状部31Aをノックカム機構部4の回転子43の嵌合部43aに嵌合させることにより、ペン筐体2内に収納することができる。そして、この第2の実施形態の電子ペン1Aにおいても、使用者は、位置検出装置と共に使用するときには、ノック棒42の端部42aを押下する。すると、電子ペン1Aにおいては、図7(B)に示すように、芯体33の先端部33aと、フロントキャップ37の一部と、周辺電極36のテーパー部36bのペン先側の一部とが、ペン筐体2の開口2bから外部に突出する状態となる。
【0112】
すなわち、この第2の実施形態では、電子ペン1Aのペン筐体2の開口2bからは、図7(B)に示すように、電子ペンカートリッジ3Aに装着される芯体33の先端部のみではなく、この芯体33の周囲を囲むように構成されている周辺電極36のペン先側の一部が外部に突出するように構成されている。電子ペン1Aの使用者は、この状態で、位置検出装置の位置検出センサ上において、指示位置の入力操作をする。したがって、中心電極としての芯体33及び周辺電極36がペン筐体2の開口から外部に突出することになり、芯体33及び周辺電極36と位置検出センサとの間で強く電界結合する状態となる。
【0113】
電子ペン1Aの使用が終了したら、ノック棒42の端部42aを再押下することで、図7(A)に示すように、電子ペンカートリッジ3Aの全体はペン筐体2の中空部2a内に収容させる状態とすることができる。このときには、電子ペンカートリッジ3Aの全体がペン筐体2の中空部2a内に収容されて、電子ペンカートリッジ3Aの芯体33の先端部33aは、ペン筐体2により保護される状態となる。
【0114】
なお、カートリッジ筐体30Aの中空部30Aa内には、図8(B)及び図9(A)において点線で示すように、この第2の実施形態においても、芯体保持部材7、筆圧検出部8、電子回路が搭載されるプリント基板9、電源電圧供給用の蓄電デバイスの例としてのコンデンサ10が、ペン先側から順に、軸心方向に並べられて収納されて、配設されている。これら、芯体保持部材7、筆圧検出部8、電子回路が搭載されるプリント基板9、電源電圧供給用の蓄電デバイスの例としてのコンデンサ10についての構成は、この第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0115】
なお、周辺電極36と、プリント基板9の回路部との電気的な接続は、図9(B)に示すように、筒状結合部材35の鍔部35Fを貫通すると共に、筐体筒状部31Aの金属パイプ部31Aaとは非接触の状態で配設される接続端子導体16が用いられてなされている。接続端子導体16の一方の端部16aと、周辺電極36の内壁とが接触して両者の電気的接続がなされ、接続端子導体16の他方の端部16bは、図9(B)に示すように、プリント基板9の裏面9b側に電気的に接続される。
【0116】
[第2の実施形態の電子ペンカートリッジ3Aの電子回路構成例]
次に、この第2の実施形態の電子ペンカートリッジ3Aの電気的な構成例を、図10に示す。この例では、図10に示すように、プリント基板9に載置されているIC(Integrated Circuit)により制御回路201が構成される。そして、この制御回路201に対して、信号発信回路202と信号受信回路203とが接続されると共に、筆圧検出部8で構成される可変容量コンデンサ8Cが接続されている。可変容量コンデンサ8Cには、並列に抵抗8Rが接続されている。
【0117】
そして、信号発信回路202の信号出力端が、スイッチ回路204を通じて、芯体33に接続されている。この場合、芯体33と、スイッチ回路204との間には、導体端子部材74及び芯体ホルダー72並びに導電性弾性部材71が介在するのは前述した通りである。
【0118】
また、この例では、信号発信回路202の信号出力端は、切替スイッチ回路205の端子Sに接続されている。この切替スイッチ回路205の可動端子Mは、周辺電極36に接続されている。この場合、周辺電極36と切替スイッチ回路205との間には、接続端子導体16が介在する。
【0119】
切替スイッチ回路205の端子Rは、信号受信回路203の入力端に接続されている。また、切替スイッチ回路205の端子Gは、アース電極(グランド電極)に接続されている。
【0120】
そして、制御回路201は、スイッチ回路204に対して、当該スイッチ回路204をオンオフ制御する制御信号SW1を供給する。また、制御回路201は、切替スイッチ回路205に対して、可動端子Mを、端子S、端子R、端子Gのいずれに接続するかを切り替える切替制御信号SW2を供給する。
【0121】
図10では図示は省略するが、この第2の実施形態においても、コンデンサ10は、コイル11に誘起される誘導電流により充電される構成を備えている。そして、コンデンサ10の電圧が、電源電圧として、制御回路201、信号発信回路202、信号受信回路203、スイッチ回路204及び切替スイッチ回路205のそれぞれに対して供給されている。
【0122】
信号受信回路203は、周辺電極36により、位置検出装置の位置検出センサとの間での静電容量結合(電界結合)を介して受信した信号を受け取り、当該受信した信号に応じた復調等の処理をして、その処理結果の信号を制御回路201に送る。
【0123】
制御回路201は、信号受信回路203からの信号を解析して、相手の位置検出装置の仕様を判断すると共に、相手の位置検出装置の位置検出センサと信号のインタラクションをするタイミングを定める。そして、制御回路201は、信号発信回路202から出力する信号のフォーマットを、相手の位置検出装置の仕様に合致するものとなるように制御し、定めたタイミングで位置検出センサとのインタラクションを行う。
【0124】
信号発信回路202は、基本的には、位置検出装置での位置検出のための所定周波数の位置検出用信号(バースト信号)と、筆圧検出部8で検出した筆圧に応じた筆圧情報とを含む信号を、制御回路201の制御の下に出力する。また、信号発信回路202は、電子ペン1Aの傾き角の検出用の信号も出力する。すなわち、信号発信回路202は、制御回路201による制御の下に、位置検出のための、また、電子ペン1Aの傾き角の検出用のバースト信号を送出する。
【0125】
そして、制御回路201は、信号発信回路202から位置検出用のバースト信号を送出している期間に、筆圧検出部8で構成される可変容量コンデンサ8Cの静電容量に基づいて筆圧を検出する動作を実行する。
【0126】
この例では、制御回路201は、まず、可変容量コンデンサ8Cを満充電の状態まで充電し、その後、充電を停止させることで、可変容量コンデンサ8Cを、抵抗8Rを通じて放電する状態にする。そして、その放電開始時点から、可変容量コンデンサ8Cの両端電圧が予め定められている所定の電圧になるまでの時間を計測し、その時間から、可変容量コンデンサ8Cのその時の静電容量を検出する。可変容量コンデンサ8Cの静電容量は、その時に芯体33に印加されている筆圧に対応したものとなっているので、その検出した静電容量に基づき筆圧を検出する。
【0127】
そして、制御回路201は、検出した筆圧を、この例では複数ビットのデジタル信号に変換し、このデジタル信号に応じた筆圧情報を、信号発信回路202から出力するように、この信号発信回路202を制御する。
【0128】
この実施形態では、制御回路201は、位置検出用のバースト信号と筆圧検出情報とを位置検出装置側に送出する位置検出期間Taと、電子ペン1Aの傾き角の検出用の傾き検出期間Tbとを時分割で実行するようにする。
【0129】
位置検出期間Taにおいては、制御信号SW1により、スイッチ回路204はオンとされ、また、切替スイッチ回路205は、切替制御信号SW2により可動端子Mは端子Gに接続される。また、傾き検出期間Tbにおいては、制御信号SW1により、スイッチ回路204はオフとされ、また、切替スイッチ回路205は、切替制御信号SW2により可動端子Mは端子Sに接続される。そして、この傾き検出期間Tbにおいては、制御回路201は、信号発信回路202を、傾き検出用のバースト信号を発生させるように制御する。
【0130】
図11(A)の模式図に示すように、位置検出センサの入力面210に対して、電子ペン1Aの電子ペンカートリッジ3Aの芯体33が垂直の状態にあるときには、位置検出期間Taでは、芯体33の先端部33aと位置検出センサとの間で静電結合し、位置検出センサの入力面210において静電結合する領域OBaは、図11(B)に示すように、真円の領域となる。一方、傾き検出期間Tbでは、周辺電極36と位置検出センサとの間で静電結合し、位置検出センサの入力面210において静電結合する領域OBbは、図11(C)に示すように、リング状の領域となる。
【0131】
また、図11(D)の模式図に示すように、位置検出センサの入力面210に対して、電子ペン1Aの電子ペンカートリッジ3Aの芯体33が傾いている状態にあるときには、位置検出期間Taにおいて芯体33の先端部33aと位置検出センサの入力面210において静電結合する領域OBaは、図11(E)に示すように、ほぼ真円の領域のままとなる。一方、傾き検出期間Tbにおいて周辺電極36と位置検出センサの入力面210において静電結合する領域OBbは、図11(F)に示すように、傾き角に応じると共に傾きの方向に長く伸びた楕円形状の領域となる。
【0132】
したがって、位置検出装置では、図11(F)に示した領域OBbの楕円形状の長円方向の長さから電子ペン1Aの傾き角の大きさを検出することができ、また、図11(E)に示した電子ペン1Aの指示位置を起点とした領域OBbの楕円形状の長円方向を検出することにより、電子ペン1Aの傾きの方向を検出することができる。
【0133】
[第2の実施形態の効果]
この第2の実施形態の電子ペン1Aおいては、上述した第1の実施形態の電子ペン1の効果が得られるだけでなく、以下のような効果が得られる。
【0134】
すなわち、第2の実施形態においては、電子ペン1Aのペン筐体2の開口2bから電子ペンカートリッジ3Aのペン先側が外部に突出する電子ペン1Aの使用時には、芯体33の先端部33aのみではなく、周辺電極36のペン先側のテーパー部36bの一部もペン筐体2の開口2bから突出する。
【0135】
したがって、この第2の実施形態の電子ペン1Aは、細型化された場合であっても、位置検出センサと強く電界結合することができ、位置検出装置においては、電子ペン1Aによる指示位置の検出を感度良く検出することができるようになる。
【0136】
そして、上述した第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、電子ペンカートリッジ3Aを、市販のボールペンの替え芯と互換性を取れる構成とした。これにより、電子ペン1Aのペン筐体2に、電子ペンカートリッジ3Aの代わりに、市販のボールペンの替え芯を装着して使用することができる。
【0137】
[電子ペンカートリッジの変形例]
図12(A)は、上述した第2の実施形態の電子ペンカートリッジ3Aの第1の変形例を示すものである。この例の電子ペンカートリッジ3Bの説明においては、前述の電子ペンカートリッジ3Aと同様の構成部分については、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0138】
この例の電子ペンカートリッジ3Bにおいては、上述した第2の実施形態の電子ペンカートリッジ3Aの周辺電極36とは形状が異なる周辺電極36Bを用いる。すなわち、図12(A)に示すように、この例の電子ペンカートリッジ3Bの周辺電極36Bは、外径が軸心方向に一定である筒状形状とされ、かつ、その外径が、この例の電子ペン1Bのペン筐体2の開口2bの径(図1参照)よりも小さい径R1とされている。そして、この例においては、周辺電極36Bのペン先側に、絶縁材からなるフロントキャップ37Bが装着される。
【0139】
この例の電子ペンカートリッジ3Bのカートリッジ筐体30Bは、第2の実施形態の電子ペンカートリッジ3Aと同様に、金属パイプ部31Aaと樹脂パイプ部31Abとからなる筐体筒状部31Aを備える。そして、第2の実施形態と同様にして、樹脂パイプ部31Abの外周部にコイル11が装着され、当該コイル11の一端11a及び他端11bが、カートリッジ筐体30B内の電子回路に接続されている。
【0140】
そして、この例の電子ペンカートリッジ3Bでは、周辺電極36Bの構成が、第2の実施形態の電子ペンカートリッジ3Aの周辺電極36とは異なることから、筐体筒状部31Aの金属パイプ部31Aaに対して周辺電極36Bを結合する筒状結合部材35Bは、周辺電極36Bの構成に合わせて、当該周辺電極36Bを筐体筒状部31Aの金属パイプ部31Aaにリング状鍔部35BFを介して結合することができるように構成されている。また、フロントキャップ37Bも、周辺電極36Bの構成に合わせて変更されて構成されている。
【0141】
この例の電子ペンカートリッジ3Bのその他の構成は、上述の第2の実施形態の電子ペンカートリッジ3Aと同様の構成とされる。
【0142】
したがって、この図12(A)の例の電子ペンカートリッジ3Bを用いた電子ペンにおいても、第2の実施形態の電子ペン1Aと同様の作用効果を得ることができ、使用時には、図12(A)において点線で示すペン筐体2の開口から、芯体33と、フロントキャップ37Bと、周辺電極36Bのペン先側の一部が外部に突出する。この場合に、ペン筐体2の開口の部分では、周辺電極36Bの一定の外径の円筒状部が位置するようになるので、この周辺電極36Bの円筒状部の外径を調整することで、ペン筐体2の開口で、電子ペンカートリッジ3Bのペン先側が、がたつくことがないようにすることが容易にできる。
【0143】
次に、図12(B)の例は、上述した第2の実施形態の電子ペンカートリッジ3Aの変形例の他の例を示すものである。この例の電子ペンカートリッジ3Cは、カートリッジ筐体30Cの筐体筒状部31C及び筒状結合部材35Cの部分が、上述した第2の実施形態の電子ペンカートリッジ3Aとは異なり、その他の部分は同様の構成とされる。
【0144】
この例の電子ペンカートリッジ3Cのカートリッジ筐体30Cにおいては、上述した電子ペンカートリッジ3Aの筐体筒状部31Aの外径R2よりも大きい外径R3の筐体筒状部31Cを備える。すなわち、この例においても、筐体筒状部31Cは、金属パイプ部31Caの後端側に樹脂パイプ部31Cbが結合されて構成される。そして、上述の例と同様にして、樹脂パイプ部31Cbの外周部にコイル11Cが装着され、当該コイル11Cの一端11Ca及び他端11Cbが、カートリッジ筐体30C内の電子回路に接続されている。
【0145】
この例の電子ペンカートリッジ3Cにおいては、筐体筒状部31Cの径が、電子ペンカートリッジ3Aとは異なることを考慮して、筐体筒状部31Cに対して周辺電極36を結合する筒状結合部材35Cは、筐体筒状部31Cの構成に合わせて、周辺電極36を筐体筒状部31Cにリング状鍔部35CFを介して結合することができるように構成されている。
【0146】
この例の電子ペンカートリッジ3Cでは、筐体筒状部31Cは、上述したように、大きい外径R3を備えていて、内径の大きくなるため、大きなスペースの中空部を備える。この例の電子ペンカートリッジ3Cでは、この筐体筒状部31Cの大きな中空部のスペースを利用して、蓄電デバイスとして、前述のコンデンサ10よりも大型で、蓄電容量の大きいコンデンサ10Cを収納するように構成する。その他の構成は、上述した第2の実施形態の電子ペンカートリッジ3Aと同様に構成する。
【0147】
この例の電子ペンカートリッジ3Cを収納する電子ペンの筐体2Cは、上述の第1の実施形態及び第2の実施形態の電子ペン1及び1Aのペン筐体2の径よりも太い径とされる。文具のボールペンにおいても、この種の太い径のボールペンの替え芯を装着する筐体を用いるものが存在しており、この図12の例の電子ペンカートリッジ3Cも、文具のボールペンの筐体をそのまま用いることができるという効果を奏する。
【0148】
図12(C)に示す電子ペンカートリッジ3Dは、図12(A)の電子ペンカートリッジ3Bの変形例である。この図12(C)の例の電子ペンカートリッジ3Dの周辺電極36Dは、ペン先側がテーパー部36Dbとされている点が、図12(A)の例の電子ペンカートリッジ3Bの周辺電極36Bと異なる。すなわち、この例の電子ペンカートリッジ3Dの周辺電極36Dは、その外径が電子ペンのペン筐体2の開口2bの径R0(図1参照)よりも小さい径R1とされている円筒形状部36Daのペン先側にテーパー部36Dbが形成された形状とされている。この例では、絶縁材からなるフロントキャップ37Dが、周辺電極36Dのテーパー部36Dbの先端部に設けれられる。その他は、図12(A)の例の電子ペンカートリッジ3Bと同様に構成されている。
【0149】
なお、図12には、第2の実施形態の電子ペンカートリッジ3Aの変形例を示したが、同様の変形例を第1の実施形態の電子ペンカートリッジ3に適用することもできるものである。
【0150】
[第3の実施形態]
上述した第1の実施形態及び第2の実施形態では、電子ペンカートリッジを電子ペンのペン筐体内に1本のみを収納するようにした。一方、市販の文具としてのボールペンには、インク色の異なる替え芯を装着した多色ボールペンが存在する。この第3の実施形態は、電子ペンカートリッジを、この多色ボールペンの筐体と同様の構成のペン筐体に収納することで構成される電子ペンを提供するものである。
【0151】
すなわち、この第3の実施形態では、電子ペンのペン筐体内に1本あるいは複数本の電子ペンカートリッジを収納させる。そして、電子ペンのペン筐体内の電子ペンカートリッジを使用する場合には、その電子ペンカートリッジを選択して、その選択した電子ペンカートリッジのペン先部の先端を、ノック機構により、ペン筐体のペン先側の開口から突出させて使用するようにする。
【0152】
図13は、この第3の実施形態の電子ペン1Mの構成例を説明するための図である。この図13では、電子ペン1Mのペン筐体2Mを断面として、その内部の構成を分かりやすく示している。
【0153】
この第3の実施形態の電子ペン1Mのペン筐体2Mは、市販のノック式の多色ボールペンの筐体及びノック機構とほぼ同様の構成を備えている。この図13の例では、ペン筐体2Mは、2色ボールペンの場合の例としている。
【0154】
ペン筐体2Mは、一端側に開口2Maを有する筒状体からなる。この例では、図13に示すように、ペン筐体2Mは、その軸心方向に2分された第1の筐体部221と第2の筐体部222とが、カートリッジ保持部223の部分で結合されることで、一体的に結合されている。ペン筐体2Mの開口2Maは、第1の筐体部221のカートリッジ保持部223と結合される側とは反対側に形成されている。カートリッジ保持部223は、ペン筐体2Mの中空部内において、2本のボールペンの替え芯を挿通する貫通孔223a及び223bを備えている。
【0155】
第2の筐体部222には、2本のボールペンの用のノック操作部230と、ノック操作部240とが設けられると共に、ストッパ250が設けられている。ノック操作部230は、第2の筐体部222から外部に突出する突出部231と、第2の筐体部222の中心軸方向に突出する突部232と、ストッパ250と係合する切り欠き溝234とを備える。同様に、ノック操作部240は、第2の筐体部222から外部に突出する突出部241と、第2の筐体部222の中心軸方向に突出する突部242と、ストッパ250と係合する切り欠き溝244とを備える。ストッパ250の先端には、ノック操作部230の切り欠き溝234またはノック操作部240の切り欠き溝244と係合する凹部251が形成されている。
【0156】
ノック操作部230及びノック操作部240のペン先側の端部は、ボールペンの替え芯が嵌合される嵌合部230a及び240aとされている。そして、このノック操作部230の230a及びノック操作部240の嵌合部240aと、カートリッジ保持部223との間には、復帰用ばね235及び245が設けられている。これらの復帰用ばね235及び245は、ノック操作部230及び240を元の位置に復帰させるための弾性部材である。
【0157】
以上のような構成の多色ボールペン用のペン筐体2Mに対して、この図13の例では、ペン筐体2M内には、ボールペンの替え芯に代えて、ノック操作部230の嵌合部230aに、上述した第1の実施形態あるいは第2の実施形態のアクティブ静電容量方式の電子ペンカートリッジ3あるいは3Aと同様の構成の電子ペンカートリッジ3AESの後端部が嵌合されて収納されると共に、ノック操作部240の嵌合部240aに、電磁誘導方式の電子ペンカートリッジ3EMRの後端部が嵌合されて収納される。
【0158】
この例の電子ペンカートリッジ3AESは、多色ボールペンの替え芯と同寸法に構成されている点を除けば、第1の実施形態の電子ペンカートリッジ3,3Aと同様に構成されている。また、この例の電磁誘導方式の電子ペンカートリッジ3EMRも、多色ボールペンの替え芯と同寸法に構成されている。
【0159】
図13(B)は、この例の電磁誘導方式の電子ペンカートリッジ3EMRを説明するための図である。この例の電磁誘導方式の電子ペンカートリッジ3EMRのカートリッジ筐体30EMRは、電子ペンカートリッジ3AESの筐体筒状部31と同じ外径の樹脂製の筐体筒状部31EMRで構成されている。そして、筐体筒状部31EMRのペン先側に、コイル38が巻回された磁性体コア、この例ではフェライトコア39が結合されて装着されている。
【0160】
フェライトコア39の外径は、ペン筐体2Mの開口2Maの径よりも小さい寸法とさている。そして、この例では、フェライトコア39は、ペン先側のテーパー部39aと、一定径のコイル巻回部39bとからなり、コイル巻回部39bにコイル38が巻回されている。
【0161】
この筐体筒状部31EMRの中空部内には、図示は省略するが、電子ペンカートリッジ3,3Aと同様に、芯体保持部材と、筆圧検出部と、コイル38と並列に接続されるコンデンサが設けられるプリント基板とが設けられている。この電磁誘導方式の電子ペンカートリッジ3EMRの場合には、コイル38とコンデンサとで構成される共振回路により、位置検出センサからの信号を電磁結合により、受信すると共に、その受信した信号を、共振回路から位置検出センサに帰還することで、電子ペンによる指示位置を検出するようにするので、電源回路は不要である。
【0162】
そして、フェライトコア39には、貫通孔が軸心方向に形成されており、この貫通孔を通じて、比較的硬質で弾性を有する樹脂材料、例えばPOM(Polyoxymethylene)からなる芯体33EMRが挿通され、筐体筒状部31EMRの中空部内の芯体保持部に保持される。芯体保持部材及び筆圧検出部の構成は、上述した静電容量方式の電子ペンカートリッジ3の芯体保持部材7及び筆圧検出部8と同様に構成される。
【0163】
そして、以上のように構成されている電子ペン1Mにおいて、ノック操作部230またはノック操作部240のいずれかがスライド移動されると、当該スライド移動させられたノック操作部230または240のいずれかの切り欠き溝234または244が、ストッパ250の凹部251に嵌合して、その位置で係止する状態となる。
【0164】
この場合に、ノック操作部230が操作された場合には、静電容量方式の電子ペンカートリッジ3AESの芯体33の先端部33aと、フロントキャップ32のペン先側、あるいはフロントキャップ37及び周辺電極36のペン先側とが、ペン筐体2Mの開口2Maから突出して、電子ペン1Mは、静電容量方式の電子ペンとして動作する。これは、上述の第1の実施形態及び第2実施形態と同様である。
【0165】
また、ノック操作部240が操作された場合には、電磁誘導方式の電子ペンカートリッジ3EMRの芯体33EMR及びフェライトコア39のペン先側が、ペン筐体2Mの開口2Maから突出して、電子ペン1Mは、電磁誘導方式の電子ペンとして動作する状態となる。
【0166】
このとき、この実施形態の静電容量方式の電子ペンカートリッジ3AESは充電用のコイル11を備えるので、電磁誘導方式の電子ペンカートリッジ3EMRのコイル38との磁気的な関係を考慮する必要がある。しかし、この実施形態の静電容量方式の電子ペンカートリッジ3AESにおいては、この充電用コイル11は、電子ペンカートリッジ3AESのカートリッジ筐体30AESの後端側の樹脂パイプ部31AESbに設けられていて、電磁誘導方式の電子ペンカートリッジ3EMRのコイル38とは軸心方向において離れた遠い位置となっている。このため、電磁誘導方式の電子ペンカートリッジ3EMRのコイル38と位置検出センサとの電磁結合に対する影響はほとんどない。
【0167】
そして、ノック操作部230またはノック操作部240のいずれかをペン先側にスライド移動させる操作(ノック操作)をした後、操作しなかった方のノック操作部をペン先側にスライド移動させるように操作すると、ペン先側にスライド移動していたノック操作部は元に戻すことができる。
【0168】
以上のように、この第3の実施形態の電子ペン1Mによれば、ノック操作により、静電容量方式の電子ペンカートリッジ3AESと、電磁誘導方式の電子ペンカートリッジ3EMRとを選択的に利用できるという効果がある。そして、この第3の実施形態の電子ペン1Mも、図6に示した電子ペン用充電トレー100の窪み101bに載置すれば、静電容量方式の電子ペンカートリッジ3AESの蓄電デバイスのコンデンサの充電ができるので、便利である。
【0169】
なお、第3の実施形態の電子ペン1Mにおいて、ノック操作部240に、電磁誘導方式の電子ペンカートリッジ3EMRの代わりに、ボールペンの替え芯を嵌合させることで、文具のボールペンの機能と、静電容量方式の電子ペンの機能とを選択することができる電子ペンを提供することができる。
【0170】
なお、第3の実施形態は、2個のノック操作部を備える例であったが、ノック操作部は3個以上であってもよい。
【0171】
[その他の実施形態又は変形例]
上述の第1~第3の実施形態の電子ペンカートリッジにおいては、コイル11が設けられるカートリッジ筐体の部分は、樹脂パイプ部としたが、樹脂に限られるものではなく、絶縁物であればフェライトコアや、セラミックなどで構成してもよい。
【0172】
なお、上述の第1~第3の実施形態の電子ペンカートリッジにおいて、カートリッジ筐体30は、金属パイプ部のみで構成し、コイル11を金属パイプ部に設けるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0173】
1,1A,1M…電子ペン、2,2M…ペン筐体、3,3A,3AES…静電容量方式の電子ペンカートリッジ、11…コイル、30,30A…カートリッジ筐体、31,31A…筐体筒状部、31a1Aa…金属パイプ部、31b,31Ab…樹脂パイプ部、33…芯体、36…周辺電極、100…電子ペン用充電トレー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13