(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163283
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】吸着抑制方法
(51)【国際特許分類】
C11D 17/06 20060101AFI20241114BHJP
C11D 1/38 20060101ALI20241114BHJP
C11D 1/66 20060101ALI20241114BHJP
C11D 1/72 20060101ALI20241114BHJP
C11D 1/62 20060101ALI20241114BHJP
C11D 3/04 20060101ALI20241114BHJP
C11D 3/43 20060101ALI20241114BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20241114BHJP
A01N 25/34 20060101ALI20241114BHJP
A01N 25/00 20060101ALI20241114BHJP
A01N 31/02 20060101ALI20241114BHJP
A01N 33/12 20060101ALI20241114BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241114BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20241114BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20241114BHJP
A61K 8/20 20060101ALI20241114BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20241114BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C11D17/06
C11D1/38
C11D1/66
C11D1/72
C11D1/62
C11D3/04
C11D3/43
A01P3/00
A01N25/34 A
A01N25/00 101
A01N31/02
A01N33/12 101
A61Q19/00
A61K8/02
A61K8/41
A61K8/20
A61K8/19
A61K8/86
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024157850
(22)【出願日】2024-09-11
(62)【分割の表示】P 2020172925の分割
【原出願日】2020-10-14
(31)【優先権主張番号】P 2019194090
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【弁理士】
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】別所 直人
(72)【発明者】
【氏名】小島 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】石塚 仁
(57)【要約】
【課題】(a)陽イオン界面活性剤及び(c)非イオン界面活性剤を含有する水性組成物が不織布に接触した際に不織布への吸着を抑制する吸着抑制方法を提供する。
【解決手段】
水性組成物に、(b)陽イオンと陰イオンとからなる無機塩であって、陽イオンが周期表の第1族又は第2族の元素の陽イオンであり、陽イオン及び陰イオンの少なくとも一方が2価イオンである無機塩を、(a)成分の含有量と(b)成分に基づく2価イオンの含有量とのモル比(2価イオンの含有量)/((a)成分の含有量)が0.4以上40以下となるように添加する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)陽イオン界面活性剤[以下(a)成分という]及び(c)非イオン界面活性剤[以下(c)成分という]を含有する水性組成物が不織布に接触した際に(a)成分及び(c)成分の不織布への吸着を抑制する、吸着抑制方法であって、
前記水性組成物に、(b)陽イオンと陰イオンとからなる無機塩であって、陽イオンが周期表の第1族又は第2族の元素の陽イオンであり、陽イオン及び陰イオンの少なくとも一方が2価イオンである無機塩[以下(b)成分という]を、(a)成分の含有量と(b)成分に基づく2価イオンの含有量とのモル比(2価イオンの含有量)/((a)成分の含有量)が0.4以上40以下となるように、更に添加する、
吸着抑制方法。
【請求項2】
水性組成物が、(a)成分を0.05質量%以上5質量%以下含有する、請求項1記載の吸着抑制方法。
【請求項3】
水性組成物の25℃におけるpHが6以上10以下である、請求項1又は2の何れか1項に記載の吸着抑制方法。
【請求項4】
(c)成分が、水性組成物中0.1質量%以上5質量%以下のポリオキシアルキレン型非イオン界面活性剤である、請求項1~3の何れか1項に記載の吸着抑制方法。
【請求項5】
不織布が、構成繊維中、親水性繊維の割合が50質量%以上の不織布である、請求項1~4の何れか1項に記載の吸着抑制方法。
【請求項6】
不織布が、シート状の不織布である、請求項1~5の何れか1項に記載の吸着抑制方法。
【請求項7】
水性組成物が、乾燥状態の不織布に対して200質量%以上600質量%以下担持されている、請求項1~6の何れか1項に記載の吸着抑制方法。
【請求項8】
(a)成分の陽イオン界面活性剤が、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ミリスチルトリメチルアンモニウムブロミド、炭素数8以上18以下のアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ステアリルフェニルエチルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリヒドロキシメチルアンモニウムクロライド、N-ドデシルピリジニウムクロライド、及びジオクチルジメチルアンモニウムクロライドから選択される、請求項1~7の何れか1項に記載の吸着抑制方法。
【請求項9】
(b)成分が、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸マグネシウムから選ばれる無機塩である、請求項1~8の何れか1項に記載の吸着抑制方法。
【請求項10】
(c)成分が、下記一般式(c1)で表される非イオン界面活性剤である、請求項1~9の何れか1項に記載の吸着抑制方法。
R1c(CO)mO-(AO)n-R2c (c1)
〔式中、R1cは炭素数9以上18以下の脂肪族炭化水素基であり、R2cは水素原子又はメチル基である。COはカルボニル基であり、mは0又は1の数である。AO基はエチレンオキシ基を含む炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基である。nは平均付加モル数であって、1以上50以下の数である。〕
【請求項11】
(b)成分を0.1質量%以上10質量%以下添加する、請求項1~10の何れか1項に記載の吸着抑制方法。
【請求項12】
水性組成物が、(d)成分としてClogPが-2.0以上1.0未満の水酸基を有する有機溶剤を0.1質量%以上30質量%以下含有する、請求項1~11の何れか1項に記載の吸着抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陽イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤の不織布への吸着を抑制できる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
清浄用シート、除菌用シートなど、シート状の清拭材には、殺菌効果を付与する目的から陽イオン界面活性剤を含有する水性組成物を用いることが行われている。そのような水性組成物では、洗浄力や陽イオン界面活性剤の効果を高めるために、非イオン界面活性剤が併用される場合もある。
【0003】
特許文献1には、液体の保持が可能な基材シートに対して水性除菌剤が含浸された清掃用シートにおいて、前記水性除菌剤が(A)成分として第四級アンモニウム塩型界面活性剤、(B)成分として水酸化カリウム、(C)成分としてアミノカルボン酸型キレート剤、(D)成分として水を含有していて、基材シートに含浸されている水性除菌剤のpHが10.5以上、13.5以下であり、前記基材シートが、再生繊維、合成系繊維、天然繊維より選ばれた少なくとも1種を含む清掃用シートが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、セルロース系繊維を80質量%以上含む坪量20~120g/m2の基材シートに液体洗浄性組成物を含浸させてなる除菌性清掃物品であって、前記液体洗浄性組成物が、有機酸(a)0.01~0.50質量%、界面活性剤(b)0.1~1.0質量%及び2価以上の金属イオン化合物(c)0.5~5.0質量%を含有する除菌性清掃物品が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、液体の保持が可能な基材シートに対して水性除菌剤が含浸された清掃用シートにおいて、前記水性除菌剤が(A)成分として第四級アンモニウム塩型界面活性剤、(B)成分として無機電解質、有機酸、有機酸塩より選ばれた少なくとも1種、(C)成分としてアミノカルボン酸型キレート剤、(D)成分として水を含有していて、基材シートに含浸されている水性除菌剤のpHが4.8以上、8.0以下であり、前記基材シートが、再生繊維、合成系繊維、天然繊維より選ばれた少なくとも1種を含む清掃用シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-112342号公報
【特許文献2】特開2017-110323号公報
【特許文献3】特開2018-90564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この種の清拭材では、含有させた陽イオン界面活性剤が対象物に適用されて殺菌効果などを付与することが期待できる。しかし、薬液に所定量の陽イオン界面活性剤を配合しても、対象物に適用される陽イオン界面活性剤の量は低下する傾向がある。これは不織布に薬液を含浸させた直後から数日かけて、陽イオン界面活性剤の不織布への吸着が経時的に進むことが原因である。更に、陽イオン界面活性剤と併用することで、洗浄性や抗菌性向上が期待される非イオン界面活性剤を配合した薬液についても、陽イオン界面活性剤と連動するように非イオン界面活性剤の吸着が進行するという課題を生じる。
【0008】
本発明は、陽イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤の効果が清拭した対象物で十分に発揮される清拭材を提供することのできる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、不織布と、該不織布に担持された水性組成物とを含む清拭材であって、前記水性組成物が、(a)陽イオン界面活性剤[以下(a)成分という]、(b)陽イオンと陰イオンとからなる無機塩であって、陽イオンが周期表の第1族又は第2族の元素の陽イオンであり、陽イオン及び陰イオンの少なくとも一方が2価イオンである無機塩[以下(b)成分という]、(c)非イオン界面活性剤[以下(c)成分という]並びに水を含有し、前記水性組成物における(a)成分の含有量と(b)成分に基づく2価イオンの含有量とのモル比(2価イオンの含有量)/((a)成分の含有量)が0.4以上40以下である、清拭材に関する。
【0010】
また、本発明は、前記本発明の清拭材で対象物を拭き取る、清拭方法に関する。
【0011】
また、本発明は、(a)陽イオン界面活性剤[以下(a)成分という]及び(c)非イオン界面活性剤[以下(c)成分という]を含有する水性組成物が不織布に接触した際に(a)成分及び(c)成分の不織布への吸着を抑制する、吸着抑制方法であって、前記水性組成物に、(b)陽イオンと陰イオンとからなる無機塩であって、陽イオンが周期表の第1族又は第2族の元素の陽イオンであり、陽イオン及び陰イオンの少なくとも一方が2価イオンである無機塩[以下(b)成分という]を、(a)成分の含有量と(b)成分に基づく2価イオンの含有量とのモル比(2価イオンの含有量)/((a)成分の含有量)が0.4以上40以下となるように、更に添加する、吸着抑制方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、陽イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤の効果が清拭した対象物で十分に発揮される清拭材が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者らは、陽イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤を配合した水性組成物を不織布に担持させても期待される殺菌効果が得られない原因を究明した結果、陽イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤が不織布に吸着することで、対象物に接触する濃度が低下することが原因であることを明らかにした。そして陽イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤に、(b)成分である特定のイオンを含む無機塩を特定条件で用いることで、陽イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤の不織布への吸着を抑制できることを見出した。
【0014】
[清拭材]
本発明の清拭材は、不織布と、該不織布に担持された水性組成物(以下、本発明の水性組成物ともいう)とを含み、該水性組成物は、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び水を含有し、(a)成分の含有量と(b)成分に基づく2価イオンの含有量とのモル比(2価イオンの含有量)/((a)成分の含有量)が0.4以上40以下である。
【0015】
<水性組成物>
本発明の水性組成物は、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び水を含有する。
【0016】
(a)成分の陽イオン界面活性剤としては、N-アルキルピリジニウム塩型界面活性剤及び4級アンモニウム塩型界面活性剤が挙げられる。本発明では、(a)成分は、4級アンモニウム塩型界面活性剤が好ましく、下記一般式(a1)で表される化合物がより好ましく、下記一般式(a1-1)で表される化合物が更に好ましい。
【0017】
【0018】
〔式中、R1~R4は、各々独立に、炭素数1以上20以下のアルキル基を表す。ただし、R1~R4のいずれか1つの炭素数は8以上20以下である。X-は対イオンを表す。〕
【0019】
一般式(a1)において、R1~R4のうち、少なくとも2つが互いに結合して環を形成してもよい。また、これらのアルキル基はヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アリール基で置換されていてもよい。
【0020】
R1~R4におけるアルキル基は、直鎖又は分岐のアルキル基で、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、2-エチルヘキシル、デシル、ドデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、オクタデシルが挙げられる。
【0021】
アルキル基に置換してもよいアルコキシ基の炭素数は2以上18以下が好ましく、ポリアルキレンオキシ基であっても構わない。アルコキシ基は、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、2-エチルヘキシルオキシ、デシルオキシ、オクタデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ、メトキシポリエチレンオキシ、2-エチルヘキシルオキシポリエチレンオキシ、ドデシルオキシポリプロピレンオキシが挙げられる。
【0022】
アルキル基に置換してもよいアシルオキシ基の炭素数は2以上、更に8以上、そして、18以下、更に16以下が好ましい。アシルオキシ基は、例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、バレリルオキシ、ピバロイルオキシ、オクタノイルオキシ、ラウロイルオキシ、ミリストイルオキシ、パルミトイルオキシ、ステアロイルオキシが挙げられる。
【0023】
アルキル基に置換してもよいアシルアミノ基の炭素数は2以上、更に8以上、そして、18以下、更に16以下が好ましい。アシルアミノ基は、例えば、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、バレリルアミノ、ピバロイルアミノ、オクタノイルアミノ、ラウロイルアミノ、ミリストイルアミノ、パルミトイルアミノ、ステアロイルアミノが挙げられる。
【0024】
アルキル基に置換してもよいアリール基は、炭素数6以上20以下のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基が挙げられ、フェニル基が特に好ましい。
【0025】
R1~R4におけるアルキル基は、直鎖のアルキル基が好ましく、上記置換基を有する場合、アルキル基自身の炭素数は1以上4以下が好ましく、1又は2がより好ましい。
【0026】
R1~R4のうち、少なくとも2つが互いに結合して形成する環は、5又は6員環が好ましく、例えば、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、キヌクリジン、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、イミダゾールが挙げられる。
【0027】
一般式(a1)で表される化合物は、R1が炭素数8以上20以下のアルキル基、R2及びR4が炭素数1以上3以下のアルキル基、R3が炭素数1以上10以下のアルキル基である化合物が好ましい。
【0028】
X-は、無機もしくは有機のカルボン酸イオン、スルホン酸イオン、ハロゲンイオンが挙げられ、ハロゲンイオンが好ましく、塩化物イオン、臭化物イオンが好ましく、塩化物イオンがより好ましい。
【0029】
【0030】
〔式中、R11は炭素数8以上20以下のアルキル基を表し、R12及びR13は、各々独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基を表す。Lは炭素数1以上4以下のアルキレン基を表し、Arはアリール基を表す。X-は対イオンを表す。〕
【0031】
R11は、一般式(a1)におけるR1と同義であり、好ましい範囲も同じである。R12及びR13は、それぞれ、炭素数が異なること以外は、一般式(a1)におけるR2と同義であり、好ましい範囲も同じである。Lにおける炭素数1以上4以下のアルキレン基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンが挙げられ、メチレン、エチレンが好ましく、メチレンがより好ましい。
【0032】
Arにおけるアリール基の炭素数は、好ましくは6以上、そして、好ましくは10以下、より好ましくは8以下であり、更に好ましくは6である。アリール基は、例えば、フェニル、ナフチルが挙げられる。アリール基は置換基を有してもよく、置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0033】
X-は、一般式(a1)におけるX-と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0034】
一般式(a1-1)で表される化合物は、R11が炭素数8以上20以下の無置換のアルキル基、R12及びR13が炭素数1以上3以下の無置換のアルキル基、Lがメチレン基、Arが置換基を有してもよいフェニル基である化合物が好ましい。
【0035】
4級アンモニウム塩型界面活性剤は、一部のアルキル基の炭素数が異なるアルキル基である化合物の混合物でも構わない。
【0036】
(a)成分の陽イオン界面活性剤としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ミリスチルトリメチルアンモニウムブロミド、炭素数8以上18以下のアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ステアリルフェニルエチルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリヒドロキシメチルアンモニウムクロライド、N-ドデシルピリジニウムクロライド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライドなどが挙げられ、炭素数8以上18以下のアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドが好ましい。
【0037】
本発明の水性組成物は、(a)成分を、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下含有する。なお、(a)成分の質量%は、(a)成分の対アニオンを塩化物イオン(Cl-)とした場合の含有量、すなわち塩化物換算の含有量に基づく。以下、質量比についても同様である。
【0038】
本発明では(a)成分及び(c)成分に(b)成分を併用させることにより、(a)成分及び(c)成分の不織布への吸着を抑制できるため、(b)成分を併用しない場合に比べて大幅に(a)成分及び(c)成分の配合量を低減できる。
【0039】
(b)成分は、陽イオンと陰イオンとからなる無機塩であって、陽イオンが周期表の第1族又は第2族の元素の陽イオンであり、陽イオン及び陰イオンの少なくとも一方が2価イオンである無機塩である。(b)成分は、水和物であってもよい。
【0040】
(b)成分は、1価イオン及び2価イオンとからなる無機塩並びに2価イオンからなる無機塩から選ばれる無機塩が好ましく、1価イオン及び2価イオンとからなる無機塩がより好ましい。すなわち、(b)成分としては、陽イオンが1価イオンであり、陰イオンが2価イオンである無機塩、陽イオンが2価イオンであり、陰イオンが1価イオンである無機塩及び陽イオンと陰イオンの両方が2価イオンである無機塩から選ばれる無機塩が挙げられる。なお、本発明では、陽イオンと陰イオンの両方が2価イオンである無機塩については、(b)成分に基づく2価イオンの含有量は、2価陽イオンのモル量と2価陰イオンのモル量の合計を採用する。
【0041】
周期表の第1族の元素は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムが挙げられる。周期表の第1族の元素は、リチウム、ナトリウム、カリウムが好ましい。
【0042】
周期表の第2族の元素は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムが挙げられる。周期表の第2族の元素は、マグネシウム、カルシウムが好ましい。
【0043】
(b)成分は、陽イオン及び陰イオンの少なくとも一方が2価イオンである。(b)成分は、陽イオン及び陰イオンの両方が2価イオンであってもよいが、それらのイオンを含む無機塩が水溶性の高いものが好ましい。
【0044】
2価イオンのうち、2価の陰イオンとしては、硫化物イオン、炭酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、セレン酸イオン、亜セレン酸イオン、チオ硫酸イオンなどが挙げられる。
【0045】
(b)成分は、2価イオンとして、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、硫酸イオン及び亜硫酸イオンから選ばれる1種以上のイオンを含む無機塩が好ましい。
【0046】
(b)成分は、例えば、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩などの無機化合物、好ましくは塩化物、臭化物、硫酸塩などの無機化合物から選択することができる。
【0047】
(b)成分としては、具体的には、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0048】
本発明では、(b)成分は、20℃における水への溶解度が好ましくは0.1g/100mL以上、より好ましくは1g/100mL以上、更に好ましくは10g/100mL以上、より更に好ましくは20g/100mL以上の化合物が好適である。
【0049】
本発明の水性組成物は、(b)成分を、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下含有する。水性組成物中の(b)成分に基づく2価イオンの含有量は、イオンクロマトグラフ法により測定できる。また、水性組成物を調製する際の(b)成分の配合量から計算することもできる。
【0050】
本発明の水性組成物は、(a)成分及び(c)成分の不織布への吸着防止性及び殺菌性の観点から、(a)成分の含有量と(b)成分に基づく2価イオンの含有量とのモル比(2価イオンの含有量)/((a)成分の含有量)が、0.4以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.9以上、更に好ましくは2.0以上、より更に好ましくは4.0以上、そして、40以下、好ましくは20以下である。このモル比は、本発明の水性組成物を調製する際の(a)成分及び(b)成分の配合量から計算することもできる。
【0051】
なお、本発明では、本発明の水性組成物中の2価イオンのうち、(b)成分に由来する2価イオンの割合が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下であり、100質量%であってもよい。
【0052】
本発明の水性組成物は、(c)成分として非イオン界面活性剤を含有する。(c)成分は、(a)成分の不織布への吸着防止性及び殺菌性の観点から好ましい。
【0053】
(c)成分の非イオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレン型非イオン界面活性剤、更にエチレンオキシ基を含む非イオン界面活性剤が好ましい。エチレンオキシ基を含む非イオン界面活性剤としては、下記一般式(c1)で表される非イオン界面活性剤が好ましい。
R1c(CO)mO-(AO)n-R2c (c1)
〔式中、R1cは炭素数9以上18以下の脂肪族炭化水素基であり、R2cは水素原子又はメチル基である。COはカルボニル基であり、mは0又は1の数である。AO基はエチレンオキシ基を含む炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基である。nは平均付加モル数であって、1以上50以下の数である。〕
【0054】
一般式(c1)中、R1cは炭素数9以上18以下の脂肪族炭化水素基である。R1cの炭素数は、9以上、好ましくは10以上、より好ましくは11以上、そして、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは15以下、より更に好ましくは14以下である。R1cは、脂肪族炭化水素基であり、好ましくはアルキル基及びアルケニル基から選ばれる基である。
【0055】
一般式(c1)中、AO基は、エチレンオキシ基を含む炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基であり、好ましくはエチレンオキシ基を含む炭素数2以上3以下のアルキレンオキシ基であり、より好ましくはエチレンオキシ基である。AO基は、エチレンオキシ基と他のアルキレンオキシ基、例えばプロピレンオキシ基とを含むアルキレンオキシ基でも良い。他のアルキレンオキシ基は、プロピレンオキシ基が好ましい。AO基が、エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基を含む場合は、エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基は、ブロック型結合でもランダム型結合であってもよい。
【0056】
一般式(c1)中、nは、AO基の数平均付加モル数であって、1以上50以下の数である。nは、1以上、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、そして、50以下、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは20以下、より更に好ましくは10以下、より更に好ましくは8以下、より更に好ましくは7以下、より更に好ましくは6以下である。
【0057】
ポリオキシエチレン基を有さない非イオン界面活性剤の場合の具体例としては、蔗糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルグリコシド及びグリセリルモノエーテルから選ばれる1種以上が挙げられる。
【0058】
(a)成分と共存時の殺菌性及び対象表面への濡れ性の観点から、(c)成分は、HLBが12.5未満の非イオン界面活性剤が好ましい。すなわち、本件の水性組成物は、(c)成分として、HLBが12.5未満の非イオン界面活性剤を含有することが好ましい。ここで、(c)成分のHLBは、ポリオキシエチレン基を有する非イオン界面活性剤の場合には、下記一般式(I)で表されるグリフィン(Griffin)法により求められる。
HLB値=〔((c)成分のポリオキシエチレン基部分の分子量)/((c)成分の分子量)〕×20 (I)
尚、(c)成分のポリオキシエチレン基部分の分子量は、ポリオキシエチレン基の平均付加モル数の値を用いて算出するものとする。
【0059】
HLBが低い非イオン界面活性剤、例えばHLBが12.5未満の非イオン界面活性剤は、上記の通り、(a)成分と共存時の殺菌性及び対象表面への濡れ性の観点から好ましい成分であるが、陽イオン界面活性剤とともに使用すると不織布に吸着しやすい傾向を示す。本発明では、そのような非イオン界面活性剤についても不織布への吸着を抑制できることから、低HLBの非イオン界面活性剤を用いることで期待される効果が対象物で十分に発揮される。
【0060】
HLBが12.5未満の非イオン界面活性剤は、(a)成分と共存時の殺菌性及び対象表面への濡れ性の観点から、好ましくは8以上、そして、12.5未満、好ましくは12以下、より好ましくは11以下、更に好ましくは10以下である。
【0061】
HLBが12.5未満の非イオン界面活性剤は、前記一般式(c1)で表される非イオン界面活性剤であって、HLBが12.5未満である非イオン界面活性剤が好ましい。一般式(c1)中、R1c以外の他の化学構造が同じであれば、R1cの炭素数が大きくなる程HLBの値は低くなる。また、一般式(c1)中、AO基は、エチレンオキシ基を含む炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基であり、エチレンオキシ基はプロピレンオキシ基よりもHLBの値を高くさせる。また、一般式(c1)中、n以外の他の化学構造が同じであれば、nの数が大きくなる程HLBの値は高くなり、小さくなる程HLBの値は低くなる。
【0062】
本発明の水性組成物は、(c)成分を、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下含有する。
【0063】
本発明の水性組成物は、(a)成分及び(c)成分の不織布への吸着防止性及び殺菌性の観点から、(c)成分の含有量と(b)成分に基づく2価イオンの含有量とのモル比(2価イオンの含有量)/((c)成分の含有量)が、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.9以上、より更に好ましくは2.0以上、より更に好ましくは4.0以上、そして、好ましくは40以下、より好ましくは20以下である。このモル比は、本発明の水性組成物を調製する際の(b)成分及び(c)成分の配合量から計算することもできる。
【0064】
本発明では、(a)成分及び(c)成分以外の界面活性剤[以下(c’)成分という]を含有することができるが、(a)成分の効果を損なう場合がある点及び/又は清拭後の感触などの点から注意を要する。(c’)成分としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩などの陰イオン界面活性剤、カルボベタイン、スルホベタインなどの両性界面活性剤を挙げることができる。(c’)成分を用いる場合には、その含有量は、本発明の水性組成物中に0.5質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下である。
【0065】
本発明の水性組成物は、(d)成分として、有機溶剤を含有することができる。(d)成分は、ClogPが-2.0以上1.0未満の水酸基を有する有機溶剤が好ましい。本発明においてCLogPはPerkin Elmer社のChemBioDraw Ultra ver.14.0のChemPropertyを用いて算出した計算値を用いる。なお、ClogPの値が大きい程、疎水性が高いことを表す。
【0066】
(d)成分のClogPは、好ましくは-1.6以上、より好ましくは-1.3以上、そして、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.5以下である。
【0067】
(d)成分は、下記(d1)~(d3)成分から選ばれる1種以上の水酸基を有する有機溶剤が好ましい。
(d1)成分:炭素数2以上6以下の1価のアルコールであって、ClogPが-2.0以上1.0未満の水酸基を有する有機溶剤
(d2)成分:炭素数2以上12以下、且つ2価以上12価以下のアルコールであって、ClogPが-2.0以上1.0未満の水酸基を有する水酸基を有する有機溶剤
(d3)成分:炭素数1以上8以下の炭化水素基、エーテル基及び水酸基を有し、ClogPが-2.0以上1.0未満である有機溶剤(但し、炭化水素基は芳香族基を除く。)
以下に(d1)成分~(d3)成分の具体例を示す。尚( )内の数字は、Perkin Elmer社のChem Bio DrawUltra ver.14.0のChemPropertyを用いて算出した各成分の計算値(CLogP)である。
【0068】
(d1)成分としては、エタノール(-0.24)、1-プロパノール(0.29)、2-プロパノール(0.07)が挙げられる。
【0069】
(d2)成分としては、エチレングリコール(-1.4)、プロピレングリコール(-1.1)、ブチレングリコール(-0.73)、ヘキシレングリコール(-0.02)、ジエチレングリコール(-1.3)、トリエチレングリコール(-1.5)、テトラエチレングリコール(-1.66)、ジプロピレングリコール(-0.69)、トリプロピレングリコール(-0.55)、グリセリン(-1.5)が挙げられる。
【0070】
(d3)成分としては、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(-0.78)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(-0.26)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(-0.96)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(-0.39)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(0.52)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(0.67)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(-0.16)、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル(0.23)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(-0.03)、1-メトキシ-2-プロパノール(-0.30)、1-エトキシ-2-プロパノール(0.09)、1-メチルグリセリンエーテル(-1.43)、2-メチルグリセリンエーテル(-0.73)、1,3-ジメチルグリセリンエーテル(-0.67)、1-エチルグリセリンエーテル(-1.04)、1,3-ジエチルグリセリンエーテル(0.11)、トリエチルグリセリンエーテル(0.83)、1-ペンチルグリセリルエーテル(0.54)が挙げられる。
【0071】
本発明で用いる(d1)成分としては、使用感の観点から、エタノールが好ましく、(d2)成分としては、液安定性の観点から、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール及びジプロピレングリコールから選ばれる1種以上が好ましい。
【0072】
また、本発明の水性組成物は、(d)成分として、ClogPが1.0以上2.2以下の水酸基を有する有機溶剤を含有することもできる。例えば、炭素数1以上8以下の炭化水素基、エーテル基及び水酸基を有し、ClogPが1.0以上2.2以下の有機溶剤が挙げられる。具体的には、例えば、2-ペンチルグリセリルエーテル(1.25)、1-オクチルグリセリルエーテル(2.1)、2-エチルヘキシルグリセリルエーテル(2.0)、2-フェノキシエタノール(1.2)、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(1.25)、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル(1.08)、2-ベンジルオキシエタノール(1.1)、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル(1.0)が挙げられる。尚( )内の数字は、Perkin Elmer社のChemBioDraw Ultra ver.14.0のChemPropertyを用いて算出した各成分の計算値(CLogP)である。
【0073】
本発明の水性組成物は、(d)成分を、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下含有する。
【0074】
本発明の水性組成物は、更なる任意成分として、下記(e1)成分~(e3)成分を含有することができる。
(e1)成分:アミノ基及びヒドロキシル基を含む炭素数1以上8以下のヒドロキシルアミン化合物
(e2)成分:ケイ素原子を含む化合物
(e3)成分:香料化合物、酸化防止剤、防腐剤、色素又はpH調整剤(但し、前記(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分を除く)
【0075】
(e1)成分において、アミノ基は、1級アミノ基及び2級アミノ基から選ばれる1種以上のアミノ基が好ましい。(e1)成分の具体例としては、モノエタノールアミン、モノ低級アルキル(炭素数1以上3以下)アミノモノエタノールアミン、モノ低級アルキル(炭素数1以上3以下)アミノジエタノールアミン、ジ低級アルキル(炭素数1以上3以下)アミノモノエタノールアミン、トリエタノールアミン及びトリスヒドロキシメチルアミノメタンから選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。(e1)成分は、本発明の水性組成物中のpHによりアンモニウムイオンとして含有しても良い。本発明の水性組成物は、(e1)成分を、0.1質量%以上2質量%以下の範囲で含有することができる。
【0076】
(e2)成分の具体例としては、二酸化ケイ素及びシリコーン化合物から選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。シリコーン化合物としては、ジメチルポリシロキサン、炭素数2以上3以下のオキシエチレン基を含むポリエーテル変性シリコーン化合物、1級~3級アミノ基から選ばれる1種以上のアミノ基を有するシリコーン化合物が挙げられる。本発明の水性組成物は、(e2)成分を、0.01質量%以上1質量%以下の範囲で含有することができる。
【0077】
本発明の水性組成物は、水を含有する。水としては、イオン交換水、蒸留水、滅菌精製水、水道水又は次亜塩素酸ナトリウム等の次亜塩素酸塩を0.1mg/kg以上5mg/kg以下含む水を使用することができる。本発明の水性組成物は、水を、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは97質量%以下含有する。
【0078】
本発明の水性組成物において、25℃におけるpHは、(a)成分及び(c)成分の不織布への吸着防止性の観点から、好ましくは6以上、より好ましくは6.5以上、更に好ましくは7以上、そして、好ましくは10以下、より好ましくは9以下、更に好ましくは8以下である。本発明の水性組成物のpHは、ガラス電極を用いて、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0079】
本発明の水性組成物は、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び水を所定条件で配合してなる水性組成物であってよい。従って、本発明の清拭材は、不織布と、該不織布に担持された水性組成物とを含む清拭材であって、前記水性組成物が、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び水を配合してなり、(a)成分の配合量と(b)成分に基づく2価イオンの配合量とのモル比(2価イオンの配合量)/((a)成分の配合量)が0.4以上40以下である水性組成物である、清拭材であってよい。
【0080】
<不織布>
不織布は、一般に親水性繊維及び/又は疎水性繊維を含んで構成される。不織布は、シート状に加工したものが好ましく使用される。
【0081】
本発明において、親水性繊維とは、標準状態の水分率(20℃、65%RH)が5%を超える繊維を指す。なお標準状態の水分率は、JISL1013、JISL1015に規定される方法により測定される。また疎水性繊維とは、標準状態の水分率(20℃、65%RH)が5%以下の繊維を指す。
【0082】
親水性繊維としては、種子毛繊維(綿、もめん、カポックなど)、靭皮繊維(麻、亜麻、苧麻、大麻、黄麻など)、葉脈繊維(マニラ麻、サイザル麻など)、やし繊維、いぐさ、わら、獣毛繊維(羊毛、モヘア、カシミヤ、らくだ毛、アルパカ、ビキュナ、アンゴラなど)、絹繊維(家蚕絹、野蚕絹)、羽毛、セルロース系繊維(レーヨン、ポリノジック、キュプラ、アセテートなど)、親水化ポリエチレンテレフタレート繊維(親水化処理されたポリエチレンテレフタレート繊維であり、前記の標準状態の水分率が親水性繊維の範囲にある繊維)等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、拭きやすさ、液の吸液性及び液放出性の観点から、親水性繊維は、種子毛繊維、セルロース系繊維及び親水化ポリエチレンテレフタレート繊維から選ばれる1種以上が好ましく、木綿及びレーヨンから選ばれる1種以上の繊維がより好ましい。
【0083】
疎水性繊維としては、例えば、ポリアミド系繊維(ナイロンなど)、ポリエステル系繊維(ポリエステル、ポリエチレンテレフタレートなど)、ポリアクリロニトリル系繊維(アクリルなど)、ポリビニルアルコール系繊維(ビニロンなど)、ポリ塩化ビニル系繊維(ポリ塩化ビニルなど)、ポリ塩化ビニリデン系繊維(ビニリデンなど)、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリウレタン系繊維(ポリウレタンなど)、ポリ塩化ビニル/ポリビニルアルコール共重合系繊維(ポリクレラールなど)などが挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、不織布の強度、特に、上記不織布が水性組成物を含浸した際の湿潤強度及び拭きやすさの観点から、疎水性繊維は、ポリエステル系繊維及びポリオレフィン系繊維から選ばれる1種以上が好ましく、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維及びポリプロピレン繊維から選ばれる1種以上がより好ましい。
【0084】
本発明に用いる不織布としては、構成繊維中、親水性繊維の割合が50質量%以上の不織布が挙げられる。この場合、構成繊維の残余は疎水性繊維である。より具体的には、構成繊維中、親水性繊維を50質量%以上95質量%以下及び疎水性繊維を5質量%以上50質量%以下含む不織布が挙げられる。本発明に用いる不織布は、構成繊維中、親水性繊維を、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上含む。また、本発明に用いる不織布は、構成繊維中、疎水性繊維を、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上含む。なお、親水性繊維と疎水性繊維の合計の質量%は100質量%である。
【0085】
不織布が、レーヨンやコットンなどの親水性繊維と、ポリエステルやポリプロピレン、ポリエチレンなどの疎水性繊維とを含む混紡不織布であると、不織布の曲げ剛性値(B値)を高めることができ、清拭材の拭きやすさが向上する。本発明では、(b)成分の所定の無機塩を併用することで、親水性繊維と疎水性繊維を含む混紡不織布であっても、(a)成分の陽イオン界面活性剤及び(c)成分の非イオン界面活性剤の吸着を抑制でき、水性組成物に配合した陽イオン界面活性剤や非イオン界面活性剤が設定通りに放出されるため、期待される効果を得ることができる。
【0086】
本発明に用いる不織布の坪量は、好ましくは10g/m2以上、より好ましくは20g/m2以上、そして、好ましくは100g/m2以下、より好ましくは80g/m2以下、更に好ましくは60g/m2以下である。本発明の清拭材の不織布は、水性組成物を担持する前の状態でこの坪量を有することが好ましい。
【0087】
本発明に用いる不織布の曲げ剛性値(B値)は、好ましくは0.050gf・cm2/cm以上、より好ましくは0.10gf・cm2/cm以上、更に好ましくは0.15gf・cm2/cm以上、より更に好ましくは0.20gf・cm2/cm以上、そして、好ましくは3.0gf・cm2/cm以下、より好ましくは2.0gf・cm2/cm以下、更に好ましくは1.0gf・cm2/cm以下である。本発明において、不織布の曲げ剛性値は以下の方法により測定することができる。純曲げ試験機(例えば、KES-FB2(カトーテック株式会社製))を使用し、20cm×20cmの大きさに裁断した不織布を、曲率K=±2.5cm-1の範囲で等速度(変形速度0.5cm-1/sec.)の曲げ試験を行い、単位長さあたりの曲げ剛性B値(gf・cm2/cm)を算出する。曲げ試験は、縦方向と横方向で3か所ずつ実施し、縦方向と横方向のそれぞれの平均値を算出し、縦方向と横方向で、値の大きい方を曲げ剛性値(B値)とする。本発明の清拭材の不織布は、水性組成物を担持する前の状態でこの曲げ剛性値を有することが好ましい。
【0088】
本発明の清拭材は、水性組成物が、乾燥状態の不織布に対して200質量%以上担持されていることが好ましい。この質量%は、乾燥状態の不織布の質量に対する本発明の水性組成物の質量割合(担持率(質量%))であり、以下の式より算出する。
担持率(質量%)=((水性組成物を含浸させた不織布の質量)/(乾燥した不織布の質量)-1)×100
担持率は、好ましくは200質量%以上、より好ましくは250質量%以上、更に好ましくは300質量%以上、そして、好ましくは600質量%以下、より好ましくは550質量%以下、更に好ましくは500質量%以下である。
【0089】
本発明の清拭材は、物品や身体の清拭に用いることができる。物品としては、衣類、靴、帽子、ヘルメットなどの身につける物品、かばん、バッグなどの物品、マットレス、ソファー、机、椅子などの家具、寝具、その他の住居用物品など、が挙げられるが、これらに限定されるものではない。靴は、本発明の清拭材の好適な対象物のひとつである。
【0090】
本発明により、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び水を含有し、(a)成分の含有量と(b)成分に基づく2価イオンの含有量とのモル比(2価イオンの含有量)/((a)成分の含有量)が0.4以上40以下である水性組成物を、不織布に含浸させる、清拭材の製造方法が提供される。更に、本発明により、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び水を混合して水性組成物を調製し、得られた水性組成物を不織布に含浸させる、清拭材の製造方法であって、前記水性組成物を調製する際に、(a)成分と(b)成分とを、(a)成分の混合量と(b)成分に基づく2価イオンの混合量とのモル比(2価イオンの混合量)/((a)成分の混合量)が0.4以上40以下となるように混合する、清拭材の製造方法が提供される。これらの製造方法は本発明の清拭材の製造方法であってよい。これらの製造方法には、本発明の清拭材で述べた事項を適宜適用することができる。その際、各成分の組成物中の含有量は、例えば、混合成分中の混合量に置き換えて適用することができる。
【0091】
[清拭方法]
本発明は、本発明の清拭材で対象物を拭き取る、清拭方法を提供する。水性組成物、不織布の具体例及び好ましい例などは本発明の清拭材と同じである。対象物を拭き取る際に、(a)成分及び(c)成分が対象物に付着して殺菌効果などを付与することができる。また、清拭により対象物の汚れが除去されてもよい。本発明の清拭方法は、本発明の清拭材で述べた物品や身体を対象物とすることができるが、対象物は靴が好ましい。拭き取りは、通常、手作業で行われてよい。
【0092】
[吸着抑制方法]
本発明は、(a)成分及び(c)成分を含有する水性組成物が不織布に接触した際に(a)成分及び(c)成分の不織布への吸着を抑制する、吸着抑制方法であって、前記水性組成物に、(b)成分を、(a)成分の含有量と(b)成分に基づく2価イオンの含有量とのモル比(2価イオンの含有量)/((a)成分の含有量)が0.4以上40以下となるように、更に添加する、吸着抑制方法を提供する。この方法は、不織布と接触させて用いられる(a)成分及び(c)成分を含有する水性組成物に、(b)成分を、(a)成分の含有量と(b)成分に基づく2価イオンの含有量とのモル比(2価イオンの含有量)/((a)成分の含有量)が0.4以上40以下となるように、更に添加して、水性組成物が不織布に接触した際の(a)成分及び(c)成分の不織布への吸着を抑制する、吸着抑制方法であってよい。水性組成物、不織布の具体例及び好ましい例などは本発明の清拭材と同じである。
【0093】
本発明は、(a)成分及び(c)成分を含有する水性組成物に(b)成分に由来する2価イオンを所定モル比で共存させると、当該水性組成物が不織布と接触した場合に、(a)成分及び(c)成分が当該不織布に吸着されるのを抑制できることを見出したものである。(a)成分及び(c)成分の不織布への吸着を抑制することにより、例えば、不織布と水性組成物の結合物を清拭材として用いるような場合に、清拭材から対象物に転移する水性組成物中の(a)成分及び(c)成分の量が減らないため、(a)成分及び(c)成分の効果がより効率よく発揮される。
【0094】
上述した実施の形態に加え、本発明は以下の態様を開示する。
<1>
不織布と、該不織布に担持された水性組成物とを含む清拭材であって、
前記水性組成物が、(a)陽イオン界面活性剤[以下(a)成分という]、(b)陽イオンと陰イオンとからなる無機塩であって、陽イオンが周期表の第1族又は第2族の元素の陽イオンであり、陽イオン及び陰イオンの少なくとも一方が2価イオンである無機塩[以下(b)成分という]、(c)非イオン界面活性剤[以下(c)成分という]並びに水を含有し、
前記水性組成物における(a)成分の含有量と(b)成分に基づく2価イオンの含有量とのモル比(2価イオンの含有量)/((a)成分の含有量)が0.4以上40以下である、
清拭材。
【0095】
<2>
(a)成分が、N-アルキルピリジニウム塩型界面活性剤および4級アンモニウム塩型界面活性剤から選ばれる1種以上の陽イオン界面活性剤である、<1>に記載の清拭材。
【0096】
<3>
(a)成分が、4級アンモニウム塩型界面活性剤である、<1>又は<2>に記載の清拭材。
【0097】
<4>
(a)成分が、下記一般式(a1)で表される化合物である、<1>~<3>の何れかに記載の清拭材。
【0098】
【0099】
〔式中、R1~R4は、各々独立に、炭素数1以上20以下のアルキル基を表す。ただし、R1~R4のいずれか1つの炭素数は8以上20以下である。X-は対イオンを表す。〕
【0100】
<5>
一般式(a1)中、R1~R4が、それぞれ、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、及びアリール基から選ばれる基で置換されていてもよいアルキル基である、<4>に記載の清拭材。
【0101】
<6>
前記アリール基が、炭素数6以上20以下のアリール基である、更にフェニル基、及びナフチル基から選ばれるアリール基である、更にフェニル基である、<5>に記載の清拭材。
【0102】
<7>
一般式(a1)で表される化合物が、R1が炭素数8以上20以下のアルキル基、R2およびR4が炭素数1以上3以下のアルキル基、R3が炭素数1以上10以下のアルキル基の化合物である、<4>~<6>の何れかに記載の清拭材。
【0103】
<8>
一般式(a1)中、X-が、無機もしくは有機のカルボン酸イオン、スルホン酸イオン、及びハロゲンイオンから選ばれるイオンである、更にハロゲンイオンである、更に塩化物イオン、及び臭化物イオンから選ばれるイオンである、更に塩素化物イオンである<4>~<7>の何れかに記載の清拭材。
【0104】
<9>
(a)成分が、下記一般式(a1-1)で表される化合物である、<1>~<8>の何れかに記載の清拭材。
【0105】
【0106】
〔式中、R11は炭素数8以上20以下のアルキル基を表し、R12およびR13は、各々独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基を表す。Lは炭素数1以上4以下のアルキレン基を表し、Arはアリール基を表す。X-は対イオンを表す。〕
【0107】
<10>
一般式(a1-1)中、Arの炭素数が、好ましくは6以上、そして、好ましくは10以下、より好ましくは8以下である、更に好ましくは6である、<9>に記載の清拭材。
【0108】
<11>
一般式(a1-1)中、Arが、置換基を有していてもよいフェニル基、及び置換基を有していてもよいナフチル基から選ばれる基である、<9>又は<10>に記載の清拭材。
【0109】
<12>
一般式(a1-1)で表される化合物が、R11が炭素数8以上20以下の無置換のアルキル基、R12およびR13が炭素数1以上3以下の無置換のアルキル基、Lがメチレン基、Arが置換基を有してもよいフェニル基の化合物である、<9>~<11>の何れかに記載の清拭材。
【0110】
<13>
(a)成分が、アルキル基の炭素数が8以上18以下のアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドである、<1>~<12>の何れかに記載の清拭材。
【0111】
<14>
水性組成物が、(a)成分を好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下含有する、<1>~<13>の何れかに記載の清拭材。
【0112】
<15>
(b)成分における周期表の第1族の元素が、リチウム、ナトリウム、及びカリウムから選ばれる元素である、<1>~<14>の何れかに記載の清拭材。
【0113】
<16>
(b)成分における周期表の第2族の元素が、マグネシウム、及びカルシウムから選ばれる元素である、<1>~<15>の何れかに記載の清拭材。
【0114】
<17>
(b)成分における2価の陰イオンが、硫化物イオン、炭酸イオン及び硫酸イオンから選ばれるイオンである、<1>~<16>の何れかに記載の清拭材。
【0115】
<18>
(b)成分が、2価イオンとして、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、硫酸イオン及び亜硫酸イオンから選ばれる1種以上のイオンを含む無機塩である、<1>~<17>の何れかに記載の清拭材。
【0116】
<19>
(b)成分が、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸マグネシウムから選ばれる無機塩である、<1>~<18>の何れかに記載の清拭材。
【0117】
<20>
水性組成物が、(b)成分を、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下含有する、<1>~<19>の何れかに記載の清拭材。
【0118】
<21>
水性組成物における、(a)成分の含有量と(b)成分に基づく2価イオンの含有量とのモル比(2価イオンの含有量)/((a)成分の含有量)が、0.4以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.9以上、更に好ましくは2.0以上、より更に好ましくは4.0以上、そして、40以下、好ましくは20以下である、<1>~<20>の何れかに記載の清拭材。
【0119】
<22>
(c)成分が、ポリオキシアルキレン型非イオン界面活性剤である、更にエチレンオキシ基を含む非イオン界面活性剤である、<1>~<21>の何れかに記載の清拭材。
【0120】
<23>
エチレンオキシ基を含む非イオン界面活性剤が、下記一般式(c1)で表される非イオン界面活性剤である、<22>に記載の清拭材。
R1c(CO)mO-(AO)n-R2c (c1)
〔式中、R1cは炭素数9以上18以下の脂肪族炭化水素基であり、R2cは水素原子又はメチル基である。COはカルボニル基であり、mは0又は1の数である。AO基はエチレンオキシ基を含む炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基である。nは平均付加モル数であって、1以上50以下の数である。〕
【0121】
<24>
一般式(c1)中、R1cの炭素数が、9以上、好ましくは10以上、より好ましくは11以上、そして、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは15以下、より更に好ましくは14以下である、<23>に記載の清拭材。
【0122】
<25>
一般式(c1)中、R1cが、アルキル基及びアルケニル基から選ばれる基である、<23>又は<24>に記載の清拭材。
【0123】
<26>
一般式(c1)中、AO基が、エチレンオキシ基を含む炭素数2以上3以下のアルキレンオキシ基である、好ましくはエチレンオキシ基である、<23>~<25>の何れかに記載の清拭材。
【0124】
<27>
一般式(c1)中、nが、1以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上、より更に好ましくは6以上、そして、50以下、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは20以下、より更に好ましくは15以下、より更に好ましくは12以下、より更に好ましくは10以下、より更に好ましくは8以下、より更に好ましくは7以下である、<23>~<26>の何れかに記載の清拭材。
【0125】
<28>
水性組成物が、(c)成分を、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下含有する、<1>~<27>の何れかに記載の清拭材。
【0126】
<29>
水性組成物における、(c)成分の含有量と(b)成分に基づく2価イオンの含有量とのモル比(2価イオンの含有量)/((c)成分の含有量)が、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.9以上、より更に好ましくは2.0以上、より更に好ましくは4.0以上、そして、好ましくは40以下、より好ましくは20以下である、<1>~<28>の何れかに記載の清拭材。
【0127】
<30>
水性組成物が、(a)成分及び(c)成分以外の界面活性剤[以下(c’)成分という]を含有する、<1>~<29>の何れかに記載の清拭材。
【0128】
<31>
水性組成物中の(c’)成分の含有量が、0.5質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下である、<30>に記載の清拭材。
【0129】
<32>
水性組成物が、(d)有機溶剤〔以下、(d)成分という〕を含有する、<1>~<31>の何れかに記載の清拭材。
【0130】
<33>
(d)成分のClogPが、好ましくは-1.6以上、より好ましくは-1.3以上、そして、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.5以下である、<32>に記載の清拭材。
【0131】
<34>
(d)成分が、ClogPが-2.0以上1.0未満の水酸基を有する有機溶剤である、<32>又は<33>に記載の清拭材。
【0132】
<35>
(d)成分が、下記(d1)~(d3)成分から選ばれる1種以上の水酸基を有する有機溶剤である、<32>~<34>の何れかに記載の清拭材。
(d1)成分:炭素数2以上6以下の1価のアルコールであって、ClogPが-2.0以上1.0未満の水酸基を有する有機溶剤
(d2)成分:炭素数2以上12以下、且つ2価以上12価以下のアルコールであって、ClogPが-2.0以上1.0未満の水酸基を有する水酸基を有する有機溶剤
(d3)成分:炭素数1以上8以下の炭化水素基、エーテル基及び水酸基を有し、ClogPが-2.0以上1.0未満である有機溶剤(但し、炭化水素基は芳香族基を除く。)
【0133】
<36>
(d1)成分が、エタノール、1-プロパノール、及び2-プロパノールから選ばれる1種以上である、更にエタノールである、<35>に記載の清拭材。
【0134】
<37>
(d2)成分が、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール及びジプロピレングリコールから選ばれる1種以上である、<35>又は<36>に記載の清拭材。
【0135】
<38>
水性組成物が、(d)成分を、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下含有する、<1>~<37>の何れかに記載の清拭材。
【0136】
<39>
水性組成物が、水を含有する、更に水を、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは97質量%以下含有する、<1>~<38>の何れかに記載の清拭材。
【0137】
<40>
水性組成物の25℃におけるpHが、好ましくは6以上、より好ましくは6.5以上、更に好ましくは7以上、そして、好ましくは10以下、より好ましくは9以下、更に好ましくは8以下である、<1>~<39>の何れかに記載の清拭材。
【0138】
<41>
不織布が、親水性繊維及び/又は疎水性繊維を含んで構成される、<1>~<40>の何れかに記載の清拭材。
【0139】
<42>
不織布が、構成繊維中、親水性繊維の割合が50質量%以上の不織布である、<1>~<41>の何れかに記載の清拭材。
【0140】
<43>
不織布が、構成繊維中、親水性繊維を50質量%以上95質量%以下及び疎水性繊維を5質量%以上50質量%以下含む不織布である、<1>~<42>の何れかに記載の清拭材。
【0141】
<44>
不織布が、構成繊維中、親水性繊維を、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上含む、ただし、親水性繊維と疎水性繊維の合計の質量%は100質量%である、不織布である、<43>に記載の清拭材。
【0142】
<45>
不織布が、構成繊維中、疎水性繊維を、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上含む、ただし、親水性繊維と疎水性繊維の合計の質量%は100質量%である、不織布である、<43>又は<44>に記載の清拭材。
【0143】
<46>
不織布の坪量が、好ましくは10g/m2以上、より好ましくは20g/m2以上、そして、好ましくは100g/m2以下、より好ましくは80g/m2以下、更に好ましくは60g/m2以下である、<1>~<45>の何れかに記載の清拭材。
【0144】
<47>
不織布の曲げ剛性値(B値)が、好ましくは0.050gf・cm2/cm以上、より好ましくは0.10gf・cm2/cm以上、更に好ましくは0.15gf・cm2/cm以上、より更に好ましくは0.20gf・cm2/cm以上、そして、好ましくは3.0gf・cm2/cm以下、より好ましくは2.0gf・cm2/cm以下、更に好ましくは1.0gf・cm2/cm以下である、<1>~<46>の何れかに記載の清拭材。
【0145】
<48>
不織布が、シート状の不織布である、<1>~<47>の何れかに記載の清拭材。
【0146】
<49>
水性組成物が、乾燥状態の不織布に対して好ましくは200質量%以上、より好ましくは250質量%以上、更に好ましくは300質量%以上、そして、好ましくは600質量%以下、より好ましくは550質量%以下、更に好ましくは500質量%以下担持されている、<1>~<48>の何れかに記載の清拭材。
【0147】
<50>
水性組成物が、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び水を所定条件で配合してなり、(a)成分の配合量と(b)成分に基づく2価イオンの配合量とのモル比(2価イオンの配合量)/((a)の配合量)が0.4以上40以下である、<1>~<49>の何れかに記載の清拭材。
【0148】
<51>
靴用である、<1>~<50>の何れかに記載の清拭材。
【0149】
<52>
<1>~<51>の何れかに記載の清拭材で対象物を拭き取る、清拭方法。
【0150】
<53>
対象物が靴である、<52>に記載の清拭方法。
【0151】
<54>
(a)成分及び(c)成分を含有する水性組成物が不織布に接触した際に(a)成分及び(c)成分の不織布への吸着を抑制する、吸着抑制方法であって、
前記水性組成物に、(b)成分を、(a)成分の含有量と(b)成分に基づく2価イオンの含有量とのモル比(2価イオンの含有量)/((a)成分の含有量)が0.4以上40以下となるように、更に添加する、
吸着抑制方法。
【0152】
<55>
(a)成分、(b)成分、(c)成分及び水を含有し、(a)成分の含有量と(b)成分に基づく2価イオンの含有量とのモル比(2価イオンの含有量)/((a)成分の含有量)が0.4以上40以下である水性組成物を、不織布に含浸させる、清拭材の製造方法。
【0153】
<56>
(a)成分、(b)成分、(c)成分及び水を混合して水性組成物を調製し、得られた水性組成物を不織布に含浸させる清拭材の製造方法であって、前記水性組成物を調製する際に、(a)成分と(b)成分とを、(a)成分の混合量と(b)成分に基づく2価イオンの混合量とのモル比(2価イオンの混合量)/((a)成分の混合量)が0.4以上40以下となるように混合する、清拭材の製造方法。
【0154】
<57>
<1>~<51>の何れかに記載の清拭材の製造方法である、<55>又は<56>に記載の清拭材の製造方法。
【実施例0155】
表に示す水性組成物を調製し、不織布に担持させて以下の評価を行った。結果を表に示す。表中の(2価イオン)/(a)は、(a)成分の含有量と(b)成分に基づく2価イオンの含有量とのモル比(2価イオンの含有量)/((a)成分の含有量)である。なお、塩酸及び/又は水酸化ナトリウムで組成物のpHを表中の値となるように調整した。その際に用いた量を、表中、適量として示した。
【0156】
<実施例1~4及び比較例1~3>
(1)吸着防止性試験
シート状のスパンレース不織布として、レーヨン:(ポリプロピレン-ポリエチレン混合繊維)=80:20(質量比)、坪量60g/m2、150mm×100mmの混紡不織布、あるいはレーヨン:ポリエステル=60:40(質量比)、坪量35g/m2、150mm×100mmの混紡不織布に、水性組成物を担持率400質量%となるように含浸した。1週間密閉下で静置後、加圧によって搾出液を採取した。搾出液中の(a)成分の量及び(c)成分の量をそれぞれ下記の方法で測定し、含浸前の水性組成物中の(a)成分の量又は(c)成分の量と比較することにより、吸着防止性を下記の基準で評価した。1つの水性組成物について2つの不織布の評価点を求め、その平均値を表に示した。吸着防止性の点数が高いほど、(a)成分又は(c)成分の量が不織布に吸着されにくく、清拭した対象物での効果に優れると判断される。
評価基準:
5点:搾出液中の(a)成分又は(c)成分の量が、含浸前の水性組成物中の(a)成分又は(c)成分の量に対して、90%以上100%以下である。
4点:搾出液中の(a)成分又は(c)成分の量が、含浸前の水性組成物中の(a)成分又は(c)成分の量に対して、80%以上90%未満である。
3点:搾出液中の(a)成分又は(c)成分の量が、含浸前の水性組成物中の(a)成分又は(c)成分の量に対して、60%以上80%未満である。
2点:搾出液中の(a)成分又は(c)成分の量が、含浸前の水性組成物中の(a)成分又は(c)成分の量に対して、40%以上60%未満である。
1点:搾出液中の(a)成分又は(c)成分の量が、含浸前の水性組成物中の(a)成分又は(c)成分の量に対して、40%未満である。
【0157】
[(a)成分又は(c)成分の定量方法]
メタノールで希釈し、LC-MSによって定量した。
・装置:SHIMADZU LCMS-2020
・カラム:Shim-pack XR-ODS 50L×2.0(2.0mmi.d×50mm)
・溶離液 A 10mM 酢酸アンモニウム(溶媒:蒸留水)/B 10mM 酢酸アンモニウム(溶媒:メタノール)
・タイムプログラム:B50%(0-4min)-B100%(4-11min)-B50%(11-15min)
【0158】
(2)清拭による抗菌性試験
シート状のスパンレース不織布として、レーヨン:(ポリプロピレン-ポリエチレン混合繊維)=80:20(質量比)、坪量60g/m2、150mm×100mmの混紡不織布に、水性組成物を担持率400質量%となるように含浸した。これをアルミバッグ内に密閉し、30℃で1週間以上静置保存し、評価用サンプルとした。また、イオン交換水を同様に担持率400質量%となるように含浸した直後のものをネガティブコントロール用のサンプルとした。表面素材がポリウレタンである5cm×5cmの合成皮革表面に対して各サンプルを用いて1kg荷重下で10回清拭し、一晩乾燥したものを下記抗菌性試験(JIS Z 2801参照)に供した。
*抗菌性試験
供試菌としてStaphylococcus aureus NBRC12732及びStaphylococcus epidermidis ATCC12228を用いた。SCD寒天培地上で培養した供試菌を、SCD培地を1/10濃度で含有する生理食塩水中に懸濁し、1.0×106CFU/mL以上、9.0×106CFU/mL以下になるように菌液を調製した。菌液を各合成皮革表面に0.1mL添加し、4cm×4cmのストマッカーフィルムを被せ、菌液がフィルム全体に行き渡るように軽く押さえつけた。シャーレ内に入れて相対湿度90%以上、温度37±1℃で24±1時間培養した。これをフィルムごと不活化剤であるLP希釈液10mL中に投入し、よく揉んで試験菌を洗いだした。これをSCD寒天培地で混釈培養し、生菌数カウントを行い、下記式に基づき抗菌活性値を算出した。
R=log(A)-log(B)
ただし、R:抗菌活性値
A:ネガティブコントロールの生残菌数(CFU/cm2)
B:各サンプルの生残菌数(CFU/cm2)
である。
【0159】
【0160】
【0161】
表2中、(bx)成分は、(b)成分の比較化合物である。
【0162】
【0163】
【0164】
表中、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(分子量354.02)のアルキル基は、炭素数12と14を主体とする。
また、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(1)は、エマルゲン105(HLB9.7、花王株式会社)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(2)は、エマルゲン108(HLB12.1、花王株式会社)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(3)は、エマルゲン121(HLB16.6、花王株式会社)である。
また、ジメチルポリシロキサンは、DOWSIL DK Q1-1247 ANTIFORM(ダウ・東レ株式会社)である。
【0165】
<実施例5>
表5に示す水性組成物と不織布を用いて清拭材を製造し、合皮(銀面すなわち表面素材がポリウレタンであり、シボ加工されたもの)製の女性用の靴の内側及び外側に対する拭きやすさについて、評価員5名が下記基準で官能評価を行った。5名の結果の平均値を表に示した。
3点:非常に拭きやすい
2点:拭きやすい
1点:やや拭きやすい
0点:拭きにくい
【0166】