IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -変形検知センサ 図1
  • -変形検知センサ 図2
  • -変形検知センサ 図3
  • -変形検知センサ 図4
  • -変形検知センサ 図5
  • -変形検知センサ 図6
  • -変形検知センサ 図7
  • -変形検知センサ 図8
  • -変形検知センサ 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163287
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】変形検知センサ
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/16 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
G01B7/16 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024157967
(22)【出願日】2024-09-12
(62)【分割の表示】P 2024507694の分割
【原出願日】2023-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2022038838
(32)【優先日】2022-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥冨 譲仁
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、可撓性基材の変形の検知の感度を向上させることができる変形検知センサを提供することである。
【解決手段】本発明に係る変形検知センサは、上下方向に並ぶ基材上主面及び基材下主面を有し、屈曲可能な可撓性基材と、基材上主面に設けられ、第1圧電フィルムを含む第1センサと、基材下主面に設けられ、第2圧電フィルムを含む第2センサと、を備えており、第1圧電フィルムの左右方向の長さは、第1上電極の左右方向の長さと等しく、第2圧電フィルムの左右方向の長さは、第2下電極の左右方向の長さと等しく、第1センサ及び第2センサは、可撓性基材の端部から可撓性基材の2本の長辺の中点を繋いでいる折り曲げ線の方向へ離れた位置に設けられている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に並ぶ基材上主面及び基材下主面を有する可撓性基材と、
前記基材上主面に設けられ、第1圧電フィルムを含む第1センサと、
前記基材下主面に設けられ、第2圧電フィルムを含む第2センサと、
を備えており、
前記第1圧電フィルムは、第1上主面及び第1下主面を有しており、
前記第2圧電フィルムは、第2上主面及び第2下主面を有しており、
前記第1センサは、前記第1上主面に設けられている第1上電極、及び、前記第1下主面に設けられている第1下電極を含んでおり、
前記第2センサは、前記第2上主面に設けられている第2上電極、及び、前記第2下主面に設けられている第2下電極を含んでおり、
前記可撓性基材が屈曲するときに、折り曲げ線が延びる方向を前後方向と定義し、
前記上下方向及び前記前後方向に直交する方向を左右方向と定義し、
前記第1圧電フィルムの前記左右方向の長さは、前記第1上電極の前記左右方向の長さと等しく、
前記第2圧電フィルムの前記左右方向の長さは、前記第2下電極の前記左右方向の長さと等しく、
前記第1センサ及び前記第2センサは、前記可撓性基材の端部から前記可撓性基材の2本の長辺の中点を繋いでいる折り曲げ線の方向へ離れた位置に設けられており、
前記可撓性基材が上方向又は下方向に突出するように屈曲することによって、前記第1センサ及び前記第2センサが屈曲する、
変形検知センサ。
【請求項2】
前記第1上電極及び前記第2下電極は、グランド電位に接続される、
請求項1に記載の変形検知センサ。
【請求項3】
変形検知センサは、
前記第1下電極から出力される第1信号の電気的パラメータと前記第2上電極が出力する第2信号の電気的パラメータとの差を算出する演算回路を、
更に備えている、
請求項2に記載の変形検知センサ。
【請求項4】
前記上下方向に見て、前記第2センサは、前記第1センサと重なっている、
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の変形検知センサ。
【請求項5】
前記変形検知センサは、
前記基材上主面に設けられている第3センサであって、第3圧電フィルムを含んでいる第3センサと、
前記基材下主面に設けられている第4センサであって、第4圧電フィルムを含んでいる第4センサと、
を更に備えている、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の変形検知センサ。
【請求項6】
前記第1圧電フィルム及び前記第2圧電フィルムは、d14の圧電定数を有している、
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の変形検知センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性基材の変形を検知する変形検知センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の変形検知センサに関する発明としては、例えば、特許文献1に記載の曲げ変形センサが知られている。この曲げ変形センサでは、第1圧電フィルム、第2圧電フィルム及び弾性体を備えている。弾性体は、第1主面と第2主面とを有している。第1圧電フィルムは、第1主面に設けられている。第2圧電フィルムは、第2主面に設けられている。これにより、弾性体が屈曲すると、第1圧電フィルムが伸張し、第2圧電フィルムが伸縮する。そして、第1圧電フィルムが第1信号を出力し、第2圧電フィルムが第2信号を出力する。図示しない演算回路は、第1信号及び第2信号により、弾性体の曲げ変形を検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4427665号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の曲げ変形センサにおいて、曲げ変形の検知の感度をより向上させたいという要望がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、可撓性基材の変形の検知の感度を向上させることができる変形検知センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る変形検知センサは、
上下方向に並ぶ基材上主面及び基材下主面を有する可撓性基材と、
前記基材上主面に設けられ、第1圧電フィルムを含む第1センサと、
前記基材下主面に設けられ、第2圧電フィルムを含む第2センサと、
を備えており、
前記第1圧電フィルムは、第1上主面及び第1下主面を有しており、
前記第2圧電フィルムは、第2上主面及び第2下主面を有しており、
前記第1センサは、前記第1上主面に設けられている第1上電極、及び、前記第1下主面に設けられている第1下電極を含んでおり、
前記第2センサは、前記第2上主面に設けられている第2上電極、及び、前記第2下主面に設けられている第2下電極を含んでおり、
前記可撓性基材が屈曲するときに、折り曲げ線が延びる方向を前後方向と定義し、
前記上下方向及び前記前後方向に直交する方向を左右方向と定義し、
前記第1圧電フィルムの前記左右方向の長さは、前記第1上電極の前記左右方向の長さと等しく、
前記第2圧電フィルムの前記左右方向の長さは、前記第2下電極の前記左右方向の長さと等しく、
前記第1センサ及び前記第2センサは、前記可撓性基材の端部から前記可撓性基材の2本の長辺の中点を繋いでいる折り曲げ線の方向へ離れた位置に設けられており、
前記可撓性基材が上方向又は下方向に突出するように屈曲することによって、前記第1センサ及び前記第2センサが屈曲する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る変形検知センサによれば、可撓性基材の変形の検知の感度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、変形検知センサ10の正面図である。
図2図2は、変形検知センサ10の分解図である。
図3図3は、可撓性基材12が屈曲しているときの変形検知センサ10の正面図である。
図4図4は、第1信号Sig1及び第2信号Sig2の波形を示したグラフである。
図5図5は、差Δの波形を示したグラフである。
図6図6は、比較例に係る変形検知センサ1010の正面図である。
図7図7は、変形検知センサ10aの正面図である。
図8図8は、可撓性基材12が屈曲しているときの変形検知センサ10aの正面図である。
図9図9は、変形検知センサ10bの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
[変形検知センサの構造]
以下に、本発明の実施形態に係る変形検知センサ10の構造について図面を参照しながら説明する。図1は、変形検知センサ10の正面図である。図2は、変形検知センサ10の分解図である。図3は、可撓性基材12が屈曲しているときの変形検知センサ10の正面図である。
【0010】
また、本明細書において、方向を以下のように定義する。図1のように屈曲していない状態の可撓性基材12の基材上主面S1及び基材下主面S2が並ぶ方向を上下方向と定義する。可撓性基材12が屈曲するときに、折り曲げ線L(図2及び図3参照)が延びる方向を前後方向と定義する。上下方向及び前後方向に直交する方向を左右方向と定義する。なお、本明細書における方向の定義は、一例である。従って、変形検知センサ10の実使用時における方向と本明細書における方向とが一致している必要はない。また、図1において上下方向が反転してもよい。同様に、図1において左右方向が反転してもよい。図1において前後方向が反転してもよい。
【0011】
変形検知センサ10は、可撓性基材12の曲げを検知する。変形検知センサ10は、図1及び図2に示すように、可撓性基材12、第1センサ11、第2センサ21及び演算回路50を備えている。
【0012】
可撓性基材12は、可撓性を有するシートである。可撓性基材12は、上下方向に並ぶ基材上主面S1及び基材下主面S2を有している。可撓性基材12は、上下方向に見て、図2に示すように、前後方向に延びる短辺及び左右方向に延びる長辺を有する長方形状を有している。可撓性基材12は、図3に示すように、折り曲げ線Lにおいて屈曲することができる。折り曲げ線Lは、可撓性基材12の2本の長辺の中点を繋いでいる。可撓性基材12は、前後方向に見て、下方向に突出するように屈曲する。
【0013】
第1センサ11は、図1に示すように、基材上主面S1に設けられている。第1センサ11は、可撓性基材12の変形を検知する第1信号Sig1を出力する。第1センサ11は、第1圧電フィルム14、第1上電極16及び第1下電極18を含んでいる。
【0014】
第1圧電フィルム14は、可撓性を有するシートである。第1圧電フィルム14は、第1上主面S11及び第1下主面S12を有している。第1圧電フィルム14は、図2に示すように、上下方向に見て、前後方向に延びる短辺及び左右方向に延びる長辺を有する長方形状を有している。
【0015】
第1圧電フィルム14は、可撓性基材12と共に伸縮することにより電荷を発生する。第1圧電フィルム14は、例えば、キラル高分子から形成されるフィルムである。キラル高分子とは、例えば、ポリ乳酸(PLA)、特にL型ポリ乳酸(PLLA)である。キラル高分子からなるPLLAは、主鎖が螺旋構造を有する。PLLAは、一軸延伸されて分子が配向すると圧電性を有する。第1圧電フィルム14は、d14の圧電定数を有している。そして、一軸延伸されたPLLAは、第1圧電フィルム14が左右方向に伸張されること又は左右方向に圧縮されることにより、電圧を発生する。第1圧電フィルム14は、左右方向に伸張されると正の電圧を発生する。第1圧電フィルム14は、左右方向に圧縮されると負の電圧を発生する。電圧の大きさは、伸張又は圧縮による第1圧電フィルム14の変形量の微分値に依存する。
【0016】
第1圧電フィルム14の一軸延伸方向Daは、図2に示すように、前後方向及び左右方向のそれぞれに対して45度の角度を形成している。この45度は、例えば、45度±10度程度を含む角度を含む。なお、第1圧電フィルム14は、PLLAに代えて、ポーリング処理を行ったPVDF又はPZT等のようなイオンが分極した強誘電体から形成されるフィルムであってもよい。
【0017】
第1上電極16は、グランド電極である。従って、第1上電極16は、グランド電位に接続される。第1上電極16は、第1上主面S11に設けられている。第1上電極16は、第1上主面S11の全体を覆っている。従って、第1圧電フィルム14の左右方向の長さは、第1上電極16の左右方向の長さと等しい。第1圧電フィルム14の前後方向の長さは、第1上電極16の前後方向の長さと等しい。
【0018】
第1下電極18は、信号電極である。従って、第1信号Sig1は、第1下電極18から出力される。第1下電極18は、第1下主面S12に設けられている。第1下電極18は、第1下主面S12の全体を覆っている。従って、第1圧電フィルム14の左右方向の長さは、第1下電極18の左右方向の長さと等しい。第1圧電フィルム14の前後方向の長さは、第1下電極18の前後方向の長さと等しい。
【0019】
第1上電極16及び第1下電極18は、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、ZnO(酸化亜鉛)等の有機電極、蒸着、メッキによる金属皮膜、銀ペーストによる印刷電極膜である。
【0020】
第2センサ21は、基材下主面S2に設けられている。上下方向に見て、第2センサ21は、第1センサ11と重なっている。第2センサ21は、可撓性基材12の変形を検知する第2信号Sig2を出力する。第2センサ21は、第2圧電フィルム24、第2上電極26及び第2下電極28を含んでいる。
【0021】
第2圧電フィルム24は、可撓性を有するシートである。第2圧電フィルム24は、第2上主面S21及び第2下主面S22を有している。第2圧電フィルム24は、上下方向に見て、前後方向に延びる短辺及び左右方向に延びる長辺を有する長方形状を有している。第2圧電フィルム24の上下方向の厚みD2は、第1圧電フィルム14の上下方向の厚みD1より大きい。本明細書における圧電フィルムの上下方向の厚みは、例えば、圧電フィルムの全体の上下方向の厚みの平均値である。
【0022】
第2圧電フィルム24は、可撓性基材12と共に伸縮することにより分極を生じる。第2圧電フィルム24は、例えば、キラル高分子から形成されるフィルムである。キラル高分子とは、例えば、ポリ乳酸(PLA)、特にL型ポリ乳酸(PLLA)である。キラル高分子からなるPLLAは、主鎖が螺旋構造を有する。PLLAは、一軸延伸されて分子が配向すると圧電性を有する。第2圧電フィルム24は、d14の圧電定数を有している。そして、一軸延伸されたPLLAは、第2圧電フィルム24が左右方向に伸張されること又は左右方向に圧縮されることにより、電圧を発生する。第2圧電フィルム24は、左右方向に伸張されると正の電圧を発生する。第2圧電フィルム24は、左右方向に圧縮されると負の電圧を発生する。電圧の大きさは、伸張又は圧縮による第2圧電フィルム24の変形量の微分値に依存する。
【0023】
第2圧電フィルム24の一軸延伸方向Dbは、第1圧電フィルム14の一軸延伸方向Daと平行である。第2圧電フィルム24の一軸延伸方向Dbは、図1に示すように、前後方向及び左右方向のそれぞれに対して45度の角度を形成している。この45度は、例えば、45度±10度程度を含む角度を含む。なお、第2圧電フィルム24は、PLLAに代えて、ポーリング処理を行ったPVDF又はPZT等のようなイオンが分極した強誘電体から形成されるフィルムであってもよい。
【0024】
第2上電極26は、信号電極である。従って、第2信号Sig2は、第2上電極26から出力される。第2上電極26は、第2上主面S21に設けられている。第2上電極26は、第2上主面S21の全体を覆っている。従って、第2圧電フィルム24の左右方向の長さは、第2上電極26の左右方向の長さと等しい。第2圧電フィルム24の前後方向の長さは、第2上電極26の前後方向の長さと等しい。
【0025】
第2下電極28は、グランド電極である。従って、第2下電極28は、グランド電位に接続される。第2下電極28は、第2下主面S22に設けられている。第2下電極28は、第2下主面S22の全体を覆っている。従って、第2圧電フィルム24の左右方向の長さは、第2下電極28の左右方向の長さと等しい。第2圧電フィルム24の前後方向の長さは、第2下電極28の前後方向の長さと等しい。
【0026】
第2上電極26及び第2下電極28は、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、ZnO(酸化亜鉛)等の有機電極、蒸着、メッキによる金属皮膜、銀ペーストによる印刷電極膜である。
【0027】
演算回路50は、IC(Integrated Circuit)である。演算回路50は、第1下電極18から出力される第1信号Sig1の電気的パラメータと第2上電極26が出力する第2信号Sig2の電気的パラメータとの差Δを算出する。電気的パラメータは、電位である。ただし、電気的パラメータは、電位以外の値であってもよい。電位以外の値は、例えば、電荷量や電流値である。また、演算回路50は、差Δに基づいて、可撓性基材12の曲げ量を演算する。以下に、図面を参照しながら説明する。図4は、第1信号Sig1及び第2信号Sig2の波形を示したグラフである。図5は、差Δの波形を示したグラフである。図4及び図5の縦軸は、電位である。図4及び図5の横軸は、時刻である。
【0028】
図3に示すように、可撓性基材12が上方向又は下方向に突出するように屈曲することによって、第1センサ11及び第2センサ21が屈曲する。本実施形態では、可撓性基材12が下方向に突出するように屈曲することによって、第1センサ11及び第2センサ21が屈曲する。すなわち、可撓性基材12は、基材上主面S1が基材下主面S2より内側に位置するように屈曲する。このとき、第1圧電フィルム14は、圧縮される。そのため、第1信号Sig1は、基準電位に対して負の電位(以下、単に負の電位と呼ぶ)を有する。第2圧電フィルム24は、伸張される。そのため、第2信号Sig2は、基準電位に対して正の電位(以下、単に正の電位と呼ぶ)を有する。ただし、第1信号Sig1の波形と第2信号Sig2の波形は、基準電位に関して線対称である。そこで、演算回路50は、第2信号Sig2から第1信号Sig1を減算して、図5に示す差Δを演算する。これにより、演算回路50は、第1信号Sig1の電位及び第2信号Sig2の電位より大きな差Δを得ることができる。そして、演算回路50は、差Δに基づいて、可撓性基材12の曲げ量を演算する。
【0029】
[効果]
変形検知センサ10によれば、可撓性基材12の変形の検知の感度を向上させることができる。以下に、比較例に係る変形検知センサ1010を例に挙げて説明する。図6は、比較例に係る変形検知センサ1010の正面図である。比較例に係る変形検知センサ1010は、第2圧電フィルム1024の上下方向の厚みが第1圧電フィルム1014の上下方向の厚みと等しい点において変形検知センサ10と相違する。
【0030】
可撓性基材12,1012が屈曲するときには、可撓性基材12,1012において伸張及び圧縮が発生しない面が出現する。この面を中立面C1,C1001と呼ぶ。中立面C1001は、図6に示すように、第1上電極1016の上主面と第2下電極1028との中間に位置する。第2圧電フィルム1024の上下方向の厚みが第1圧電フィルム1014の上下方向の厚みと等しいので、中立面C1001は、可撓性基材1012の上下方向の中間に位置する。この場合、第2圧電フィルム1024が伸張されることにより発生する電位の大きさV1002は、第1圧電フィルム1014が圧縮されることにより発生する電位の大きさV1001と実質的に等しい。
【0031】
一方、中立面C1は、図1に示すように、第1上電極16の上主面と第2下電極28の下主面との中間に位置する。ただし、第2圧電フィルム1024の上下方向の厚みD2が第1圧電フィルム1014の上下方向の厚みD1より大きいので、中立面C1は、可撓性基材12の上下方向の中間より下に位置する。この場合、第1圧電フィルム14の圧縮量は、第1圧電フィルム1014の圧縮量より大きくなる。その結果、第1圧電フィルム14が圧縮されることにより発生する電位の大きさV1は、第1圧電フィルム1014が圧縮されることにより発生する電位の大きさV1001より大きくなる。
【0032】
ここで、第2圧電フィルム24の内の第2上主面S21から厚みD1までの領域を領域A1と呼ぶ。第2圧電フィルム24の内の領域A1を除く領域を領域A2と呼ぶ。前記の通り、中立面C1は、可撓性基材12の上下方向の中間より下に位置する。この場合、領域A1の伸張量は、第2圧電フィルム1024の伸張量より小さくなる。その結果、領域A1が伸張されることにより発生する電位の大きさVA1は、第2圧電フィルム1024が伸張されることにより発生する電位の大きさV1002より小さくなる。すなわち、第1圧電フィルム14が圧縮されることにより発生する電位の大きさV1の増加は、領域A1が伸張されることにより発生する電位の大きさVA1の減少により打ち消される。
【0033】
しかしながら、可撓性基材12が屈曲すると、領域A2が伸張する。そのため、領域A2は、大きさVA2の電位を発生する。従って、変形検知センサ10は、変形検知センサ1010において得られる差Δより大きさVA2だけ大きな差Δを得ることができる。その結果、変形検知センサ10によれば、可撓性基材12の変形の検知の感度を向上させることができる。
【0034】
変形検知センサ10によれば、以下の理由によっても、可撓性基材12の変形の検知の感度を向上させることができる。より詳細には、第1信号Sig1は、負の電位を有する。第2信号Sig2は、正の電位を有する。ただし、第1信号Sig1の波形と第2信号Sig2の波形は、基準電位に関して線対称である。そこで、演算回路50は、第2信号Sig2の電位から第1信号Sig1の電位を減算して、図5に示す差Δを演算する。これにより、演算回路50は、第1信号Sig1の電位及び第2信号Sig2の電位のそれぞれより大きな差Δを得ることができる。そして、演算回路50は、この大きな差Δに基づいて、可撓性基材12の変形量を演算できる。その結果、変形検知センサ10によれば、可撓性基材12の変形の検知の感度を向上させることができる。
【0035】
変形検知センサ10によれば、演算回路50の演算負荷が軽減される。より詳細には、演算回路50は、第2信号Sig2の電位から第1信号Sig1の電位を減算して、図5に示す差Δを演算する。この際、第2信号Sig2の基準電位から第1信号Sig1の基準電位が減算される。その結果、差Δでは、基準電位が0Vになる。
【0036】
ここで、基準電位は、時々刻々と変化する値である。演算回路50がこの変動に合わせて逐一基準電位を算出することは、計算時間が増大する。そこで、過去の一定時間において取得した第1信号Sig1及び第2信号Sig2から基準電位を算出する方法がある。しかしこの方法には、以下の問題がある。
【0037】
・算出された基準電位は、算出後に取得される第1信号Sig1及び第2信号Sig2に対しては、推定値である。
・推定した基準電位と実際の基準電位とのずれにより、可撓性基材12の変形量の演算結果にずれが生じる。
【0038】
これに対して、変形検知センサ10では、基準電位が0Vに固定される。そのため、演算回路50が基準電位を算出しなくてもよい。その結果、演算回路50の演算負荷が軽減される。
【0039】
変形検知センサ10によれば、上下方向に見て、第2センサ21は、第1センサ11と重なっている。これにより、変形検知センサ10の小型化が図られる。
【0040】
変形検知センサ10では、可撓性基材12が屈曲すると、第1信号Sig1の電位の極性と第2信号Sig2の電位の極性とが異なる。そのため、例えば、第1信号Sig1の電位の極性と第2信号Sig2の電位の極性とが同じである場合には、演算回路50は、変形検知センサ10が誤動作している、又は、可撓性基材12が意図しない変形をしていると判定できる。
【0041】
変形検知センサ10では、第1上電極16及び第2下電極28は、グランド電位に接続される。これにより、第1圧電フィルム14が第1上電極16によりシールドされるようになる。第2圧電フィルム24が第2下電極28によりシールドされるようになる。その結果、第1センサ11及び第2センサ21がノイズの影響を受けにくくなる。
【0042】
変形検知センサ10では、第1圧電フィルム14の左右方向の長さは、第1上電極16の左右方向の長さと等しい。これにより、第1圧電フィルム14が第1上電極16により、より確実にシールドされるようになる。同様に、第2圧電フィルム24の左右方向の長さは、第2下電極28の左右方向の長さと等しい。これにより、第2圧電フィルム24が第2下電極28により、より確実にシールドされるようになる。その結果、第1センサ11及び第2センサ21がノイズの影響をより受けにくくなる。
【0043】
(第1変形例)
以下に、第1変形例に係る変形検知センサ10aについて図面を参照しながら説明する。図7は、変形検知センサ10aの正面図である。図8は、可撓性基材12が屈曲しているときの変形検知センサ10aの正面図である。
【0044】
変形検知センサ10aは、第1センサ11の位置及び第2センサ21の位置において変形検知センサ10と相違する。より詳細には、第2センサ21は、上下方向に見て、第1センサ11と重なっていない。ただし、第1圧電フィルム14は、可撓性基材12が屈曲すると、圧縮される。第2圧電フィルム24は、可撓性基材12が屈曲すると、伸張される。変形検知センサ10aのその他の構造は、変形検知センサ10と同じであるので説明を省略する。変形検知センサ10aは、変形検知センサ10と同じ作用効果を奏することができる。
【0045】
(第2変形例)
以下に、第2変形例に係る変形検知センサ10bについて図面を参照しながら説明する。図9は、変形検知センサ10bの正面図である。
【0046】
変形検知センサ10bは、第3センサ31及び第4センサ41を更に備えている点において変形検知センサ10aと相違する。第3センサ31は、基材上主面S1に設けられている。第3センサ31は、可撓性基材12と共に伸縮することにより分極を生じる第3圧電フィルム34を含んでいる。ただし、第3センサ31の構造は、第1センサ11と同じであるので説明を省略する。第4センサ41は、基材下主面S2に設けられている。第4センサ41は、可撓性基材12と共に伸縮することにより分極を生じる第4圧電フィルム44を含んでいる。ただし、第4センサ41の構造は、第2センサ21と同じであるので説明を省略する。また、第4センサ41は、上下方向に見て、第3センサ31と重なっていない。変形検知センサ10bのその他の構造は、変形検知センサ10aと同じであるので説明を省略する。変形検知センサ10bは、変形検知センサ10aと同じ作用効果を奏することができる。また、変形検知センサ10bは、第3センサ31及び第4センサ41を備えているので、可撓性基材12の複数個所の変形量を検知できる。
【0047】
(その他の実施形態)
本発明に係る変形検知センサは、変形検知センサ10,10a,10bに限らず、その要旨の範囲において変更可能である。また、変形検知センサ10,10a,10bの構造を任意に組み合わせてもよい。
【0048】
なお、第1圧電フィルム14、第2圧電フィルム24、第3圧電フィルム34及び第4圧電フィルム44は、キラル高分子から形成されるフィルム以外のフィルムであってもよい。
【0049】
なお、第2圧電フィルム24の一軸延伸方向Dbは、第1圧電フィルム14の一軸延伸方向Daと平行でなくてもよい。第2圧電フィルム24の一軸延伸方向Dbは、第1圧電フィルム14の一軸延伸方向Daと直交していてもよい。この場合、第2信号Sig2の電位の極性は、第1信号Sig1の電位の極性と同じになる。従って、演算回路50は、第1信号Sig1の電位と第2信号Sig2の電位とを加算する。
【0050】
なお、第1下電極18及び第2上電極26がグランド電位に接続されてもよい。
【0051】
なお、第1圧電フィルム14の左右方向の長さは、第1上電極16の左右方向の長さと等しくなくてもよい。第2圧電フィルム24の左右方向の長さは、第2下電極28の左右方向の長さと等しくなくてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10,10a,10b:変形検知センサ
11:第1センサ
12:可撓性基材
14:第1圧電フィルム
16:第1上電極
18:第1下電極
21:第2センサ
24:第2圧電フィルム
26:第2上電極
28:第2下電極
31:第3センサ
34:第3圧電フィルム
41:第4センサ
44:第4圧電フィルム
50:演算回路
A1,A2:領域
C1:中立面
L:折り曲げ線
S1:基材上主面
S11:第1上主面
S12:第1下主面
S2:基材下主面
S21:第2上主面
S22:第2下主面
Sig1:第1信号
Sig2:第2信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9