(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163292
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】分光モジュール
(51)【国際特許分類】
G01J 3/26 20060101AFI20241114BHJP
G01J 3/36 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G01J3/26
G01J3/36
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024158095
(22)【出願日】2024-09-12
(62)【分割の表示】P 2020192436の分割
【原出願日】2020-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】村上 和雅
(72)【発明者】
【氏名】岡田 信介
(57)【要約】
【課題】製造効率の向上を図ることができる分光モジュールを提供する。
【解決手段】分光モジュールは、第1方向に沿って配列された複数のビームスプリッタと、複数のビームスプリッタに対して第2方向における一方の側に配置され、それぞれが複数のビームスプリッタのそれぞれと向かい合う複数のバンドパスフィルタと、複数のバンドパスフィルタに対して第2方向における一方の側に配置され、それぞれが複数のバンドパスフィルタのそれぞれと向かい合い、受光に応じた電気信号を出力する複数の受光領域を有する光検出器と、を備える。光検出器は、少なくとも1つの受光領域が形成された少なくとも1つの光検出素子を含む。第2方向における複数のバンドパスフィルタと光検出素子との間の距離は、第2方向における光検出素子の厚さよりも大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って配列された複数のビームスプリッタと、
前記複数のビームスプリッタに対して前記第1方向と交差する第2方向における一方の側に配置され、それぞれが前記複数のビームスプリッタのそれぞれと向かい合う複数のバンドパスフィルタと、
前記複数のバンドパスフィルタに対して前記第2方向における前記一方の側に配置され、それぞれが前記複数のバンドパスフィルタのそれぞれと向かい合い、受光に応じた電気信号を出力する複数の受光領域を有する光検出器と、を備え、
前記光検出器は、少なくとも1つの受光領域が形成された少なくとも1つの光検出素子を含み、
前記第2方向における前記複数のバンドパスフィルタと前記光検出素子との間の距離は、前記第2方向における前記光検出素子の厚さよりも大きい、分光モジュール。
【請求項2】
前記複数のバンドパスフィルタと前記光検出素子とは、前記第2方向において空間を介して直接向かい合っている、請求項1に記載の分光モジュール。
【請求項3】
前記複数のバンドパスフィルタと前記光検出器との間に配置された遮光部を更に備え、
前記遮光部には、前記複数のバンドパスフィルタから前記複数の受光領域に至る複数の光路がそれぞれ通る複数の光通過開口が形成されている、請求項1又は2に記載の分光モジュール。
【請求項4】
前記第1方向における前記複数の光通過開口のそれぞれの幅は、前記第2方向における前記光検出素子の厚さよりも大きい、請求項3に記載の分光モジュール。
【請求項5】
前記第2方向から見た場合に、前記複数の受光領域のそれぞれは、前記複数の光通過開口のそれぞれの内側に位置している、請求項3又は4に記載の分光モジュール。
【請求項6】
前記第1方向における前記光検出素子の幅は、前記第1方向における前記複数のバンドパスフィルタのそれぞれの幅よりも小さい、請求項1~5のいずれか一項に記載の分光モジュール。
【請求項7】
前記第1方向における前記光検出素子の幅は、前記第2方向における前記複数のバンドパスフィルタのそれぞれの厚さよりも大きい、請求項1~6のいずれか一項に記載の分光モジュール。
【請求項8】
前記第1方向及び前記第2方向と交差する第3方向における前記光検出素子の幅は、前記第3方向における前記複数のバンドパスフィルタのそれぞれの幅よりも小さい、請求項1~7のいずれか一項に記載の分光モジュール。
【請求項9】
前記第1方向及び前記第2方向と交差する第3方向における前記光検出素子の幅は、前記第2方向における前記複数のバンドパスフィルタのそれぞれの厚さよりも大きい、請求項1~8のいずれか一項に記載の分光モジュール。
【請求項10】
前記光検出器は、それぞれに1つの受光領域が形成された複数の光検出素子を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の分光モジュール。
【請求項11】
前記複数のバンドパスフィルタと前記光検出器との間に配置された遮光部を更に備え、
前記遮光部には、前記複数のバンドパスフィルタから前記複数の受光領域に至る複数の光路がそれぞれ通る複数の光通過開口が形成されており、
前記第2方向から見た場合に、前記複数の光検出素子のそれぞれは、前記複数の光通過開口のそれぞれの内側に位置している、請求項10に記載の分光モジュール。
【請求項12】
前記光検出器は、前記複数の受光領域が形成された1つの光検出素子を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の分光モジュール。
【請求項13】
前記光検出器は、配線基板を更に含み、
前記光検出素子は、前記配線基板における前記複数のバンドパスフィルタ側の表面に配置されており、
前記第2方向における前記配線基板の厚さは、前記第2方向における前記光検出素子の厚さよりも大きい、請求項1~12のいずれか一項に記載の分光モジュール。
【請求項14】
前記複数のビームスプリッタ、前記複数のバンドパスフィルタ、及び前記光検出器を収容する筐体を更に備え、
前記光検出器は、配線基板と、前記光検出素子に対して電気信号を入出力するためのコネクタと、を更に含み、
前記光検出素子は、前記配線基板における前記複数のバンドパスフィルタ側の表面に配置されており、
前記コネクタは、前記配線基板における前記複数のバンドパスフィルタとは反対側の表面に配置されており、前記筐体の外側に延在している、請求項1~13のいずれか一項に記載の分光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
測定光を複数の波長帯域の光に分光して各波長帯域の光を検出する分光モジュールとして、特許文献1には、複数のビームスプリッタ及び複数のバンドパスフィルタが筐体内に配置されたデバイスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のデバイスは、筐体内において、複数のビームスプリッタが配置される側からバッフルアッセンブリに複数のバンドパスフィルタが取り付けられる構造を有している。そのため、当該デバイスの製造時において、バッフルアッセンブリに複数のバンドパスフィルタが取り付けられ且つ筐体内に複数のビームスプリッタが配置された後に、例えばバンドパスフィルタに損傷等が発見されると、当該バンドパスフィルタを交換するために筐体からビームスプリッタを取り外す必要がある。したがって、特許文献1に記載のデバイスは、製造効率の低下を招くおそれがある。
【0005】
本発明は、製造効率の向上を図ることができる分光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の分光モジュールは、第1方向に沿って配列された複数のビームスプリッタと、複数のビームスプリッタに対して第1方向と交差する第2方向における一方の側に配置され、それぞれが複数のビームスプリッタのそれぞれと向かい合う複数のバンドパスフィルタと、複数のバンドパスフィルタに対して第2方向における一方の側に配置され、それぞれが複数のバンドパスフィルタのそれぞれと向かい合う複数の受光領域を有する光検出器と、複数のビームスプリッタ及び複数のバンドパスフィルタを支持する支持体と、を備え、支持体は、第2方向における一方の側に開放されるように支持面が形成された支持部を有し、複数のバンドパスフィルタは、支持面に配置されている。
【0007】
この分光モジュールでは、支持体において、第2方向における一方の側に開放されるように支持部に形成された支持面に、複数のバンドパスフィルタが配置されている。ここで、支持体において、第2方向における一方の側は、複数のビームスプリッタが支持される側とは反対側である。そのため、分光モジュールの製造時において、支持体に複数のビームスプリッタ及び複数のバンドパスフィルタが取り付けられた後に、例えばバンドパスフィルタに損傷等が発見されても、当該バンドパスフィルタを交換するために支持体からビームスプリッタを取り外す必要がない。よって、この分光モジュールによれば、製造効率の向上を図ることができる。
【0008】
本発明の分光モジュールでは、支持体は、複数のバンドパスフィルタのそれぞれが第2方向に垂直な方向に移動することを規制する規制部を更に有してもよい。これによれば、複数のバンドパスフィルタのそれぞれの位置精度を確保することができる。
【0009】
本発明の分光モジュールでは、規制部は、複数のバンドパスフィルタのそれぞれの側面に接触するように設けられた複数の接触部分、及び側面から離間するように設けられた複数の離間部分によって、構成されていてもよい。これによれば、例えばバンドパスフィルタに損傷等が発見された場合に、当該バンドパスフィルタと離間部分との間に例えば治工具を挿し込むことで、支持体から当該バンドパスフィルタを容易に取り外すことができる。
【0010】
本発明の分光モジュールでは、支持部には、複数のビームスプリッタから複数のバンドパスフィルタに至る複数の光路が通る1つの光通過開口が形成されていてもよい。これによれば、支持部の構造の単純化を図ることができる。
【0011】
本発明の分光モジュールでは、支持面は、複数のバンドパスフィルタのそれぞれの光入射面のうちクリアアパーチャの外側の領域が支持面に接触するように支持部に形成されていてもよい。これによれば、複数のバンドパスフィルタのそれぞれの機能が十分に発揮されるため、複数の受光領域のそれぞれから出力される電気信号においてS/N比を向上させることができる。
【0012】
本発明の分光モジュールは、複数のバンドパスフィルタと光検出器との間に配置された遮光部材を更に備え、複数のバンドパスフィルタから複数の受光領域に至る複数の光路は、遮光部材によって互いに分離されていてもよい。これによれば、隣り合う受光領域間において光学的なクロストークが生じるのを抑制することができる。
【0013】
本発明の分光モジュールでは、複数のバンドパスフィルタは、支持部と遮光部材とによって挟持されていてもよい。これによれば、複数のバンドパスフィルタのそれぞれを確実に保持することができる。また、複数のバンドパスフィルタのそれぞれと遮光部材との間の隙間が小さくなるため、隣り合う受光領域間において光学的なクロストークが生じるのを確実に抑制することができる。
【0014】
本発明の分光モジュールでは、遮光部材は、弾性材料によって形成されていてもよい。これによれば、複数のバンドパスフィルタのそれぞれが破損するのを抑制しつつ、複数のバンドパスフィルタのそれぞれに遮光部材を接触させることができるため、隣り合う受光領域間において光学的なクロストークが生じるのをより確実に抑制することができる。
【0015】
本発明の分光モジュールでは、支持体には、第2方向における一方の側に開口する凹部が形成されており、第2方向における支持面と凹部の底面との距離は、複数のバンドパスフィルタのそれぞれの厚さよりも小さく、光検出器は、凹部の開口を塞ぐように支持体に取り付けられており、遮光部材は、圧縮された状態で凹部に配置されていてもよい。これによれば、複数のバンドパスフィルタのそれぞれをより確実に保持することができる。また、複数のバンドパスフィルタのそれぞれ及び光検出器に遮光部材を確実に接触させることができるため、隣り合う受光領域間において光学的なクロストークが生じるのをより確実に抑制することができる。
【0016】
本発明の分光モジュールでは、支持体は、第1係合部を更に有し、遮光部材は、第1係合部と係合した第2係合部を有してもよい。これによれば、遮光部材の機能が確実に発揮されるように、支持体に対して遮光部材を位置決めすることができる。
【0017】
本発明の分光モジュールでは、第1係合部及び第2係合部の一方は、複数の位置決め孔であり、第1係合部及び第2係合部の他方は、それぞれが複数の位置決め孔のそれぞれに嵌められた複数の位置決めピンであってもよい。これによれば、単純な構造で支持体に対して遮光部材を位置決めすることができる。
【0018】
本発明の分光モジュールでは、遮光部材は、複数のバンドパスフィルタのそれぞれの光出射面のうちクリアアパーチャの外側の領域が遮光部材に接触するように構成されていてもよい。これによれば、複数のバンドパスフィルタのそれぞれの機能が十分に発揮されるため、複数の受光領域のそれぞれから出力される電気信号においてS/N比を向上させることができる。
【0019】
本発明の分光モジュールでは、複数のバンドパスフィルタは、空間を介して互いに離間しており、複数のバンドパスフィルタのそれぞれは、光透過基板と、光透過基板の側面に設けられた遮光膜と、を有してもよい。これによれば、例えば隣り合うバンドパスフィルタ間に壁部等を設けなくても、複数のバンドパスフィルタのそれぞれにおいて光透過基板の側面から迷光が入射するのを抑制することができる。
【0020】
本発明の分光モジュールでは、複数のバンドパスフィルタのそれぞれは、光透過基板と、光透過基板の光入射面に設けられた干渉膜と、を有してもよい。これによれば、複数のバンドパスフィルタのそれぞれにおいて光透過基板内での乱反射に起因して迷光が発生するのを抑制することができる。
【0021】
本発明の分光モジュールでは、光検出器は、支持体に取り付けられた配線基板と、配線基板における複数のバンドパスフィルタ側の表面に実装され、それぞれが複数の受光領域のそれぞれを有する複数の光検出素子と、を有してもよい。1つの半導体基板に複数の受光領域が形成されたPDアレイ等では、当該1つの半導体基板内において電気的なクロストークが発生するおそれがあるが、互いに電気的に独立した複数の光検出素子を用いることにより、隣り合う受光領域間を絶縁することが可能となるため、そのような事態を確実に防止することができる。
【0022】
本発明の別の態様の分光モジュールは、第1方向に沿って配列された複数のビームスプリッタと、複数のビームスプリッタに対して第1方向と交差する第2方向における一方の側に配置され、それぞれが複数のビームスプリッタのそれぞれと向かい合う複数のバンドパスフィルタと、複数のバンドパスフィルタに対して第2方向における一方の側に配置され、それぞれが複数のバンドパスフィルタのそれぞれと向かい合う複数の受光領域を有する光検出器と、複数のビームスプリッタ及び複数のバンドパスフィルタを支持する支持体と、を備え、支持体は、第2方向における一方の側に開放されるように支持領域が形成された支持部を有し、複数のバンドパスフィルタは、支持領域に配置されている。
【0023】
この分光モジュールでは、支持体において、第2方向における一方の側に開放されるように支持部に形成された支持領域に、複数のバンドパスフィルタが配置されている。ここで、支持体において、第2方向における一方の側は、複数のビームスプリッタが支持される側とは反対側である。そのため、分光モジュールの製造時において、支持体に複数のビームスプリッタ及び複数のバンドパスフィルタが取り付けられた後に、例えばバンドパスフィルタに損傷等が発見されても、当該バンドパスフィルタを交換するために支持体からビームスプリッタを取り外す必要がない。よって、この分光モジュールによれば、製造効率の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、製造効率の向上を図ることができる分光モジュールを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】一実施形態の分光モジュールの断面図である。
【
図2】
図1に示されるII-II線に沿っての断面図である。
【
図3】
図1に示される第1支持体の一部分の平面図である。
【
図4】
図1に示される第2支持体の一部分の断面図である。
【
図5】
図4に示されるV-V線に沿っての断面図である。
【
図6】
図4に示されるVI-VI線に沿っての断面図である。
【
図7】光入射部の光軸に対する複数のビームスプリッタの配置の関係を示す図である。
【
図8】第1変形例の第2支持体の一部分の断面図である。
【
図9】第2変形例の第2支持体の一部分の断面図である。
【
図10】第3変形例の第2支持体の一部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[分光モジュールの構成]
【0027】
図1及び
図2に示されるように、分光モジュール1は、筐体2と、複数のビームスプリッタ3と、複数のバンドパスフィルタ4と、第1支持体(支持体)5と、第2支持体(支持体)6と、光検出器7と、遮光部材8と、を備えている。複数のビームスプリッタ3は、X方向(第1方向)に沿って配列されている。複数のバンドパスフィルタ4は、複数のビームスプリッタ3に対してX方向に垂直なZ方向(第1方向と交差する第2方向)における一方の側に配置されている。光検出器7は、複数のバンドパスフィルタ4に対してZ方向における一方の側に配置されている。光検出器7は、複数の受光領域7aを有している。
【0028】
各ビームスプリッタ3は、例えばハーフミラーであり、X方向に沿って入射した光のうち一部の光をZ方向における一方の側に反射し、当該入射した光のうち一部の光以外の光をX方向における一方の側に透過させる。各バンドパスフィルタ4は、Z方向において各ビームスプリッタ3と向かい合っており、各ビームスプリッタ3からZ方向に沿って入射した光のうち所定の波長帯域の光をZ方向における一方の側に透過させる。各バンドパスフィルタ4は、互いに異なる波長帯域の光を透過させる。各受光領域7aは、Z方向において各バンドパスフィルタ4と向かい合っており、各バンドパスフィルタ4からZ方向に沿って入射した光を検出する。各受光領域7aは、互いに異なる光検出チャネルを構成している。分光モジュール1では、複数のビームスプリッタ3及び複数のバンドパスフィルタ4によって測定光Lが複数の波長帯域の光に分光され、光検出器7によって各波長帯域の光が検出される。
【0029】
各ビームスプリッタ3は、例えば、ダイクロイックミラーであって、検出波長帯域の光を90%以上の反射率で反射させることで、効率的に各バンドパスフィルタ4へ導光させる。一方で、ダイクロイックミラーは、非検出波長帯域の光も10%程度の反射率で反射させて各バンドパスフィルタ4へ導光させる。ここで、仮に各バンドパスフィルタ4が存在しない場合、光検出器7における非検出波長帯域の光の検出割合はダイクロイックミラーの反射率に依存して約10%となるため、非検出波長帯域の光に対する遮光性能が十分に発揮されず、選択的な波長検出が困難となる。一方で、各バンドパスフィルタ4が存在する場合、各バンドパスフィルタ4は、非検非検出波長帯域の光の透過率を0.01%以下とする特性を有することから、光検出器7における非検出波長帯域の光の検出割合も0.01%以下となる。したがって、各バンドパスフィルタ4を有する分光モジュール1では、非検出波長帯域の光に対する遮光性能が十分に発揮され、選択的な波長検出が可能となる。なお、非検出波長帯域が0.01%以下となるようなビームスプリッタの製造は技術的に対応できる可能性はあるが、コストの面から現実的ではない。
[筐体の構成]
【0030】
図1及び
図2に示されるように、筐体2は、複数のビームスプリッタ3、複数のバンドパスフィルタ4、第1支持体5、第2支持体6、光検出器7及び遮光部材8を収容している。筐体2は、本体部20を有している。本体部20は、第1壁部21、第2壁部22、第3壁部23及び第4壁部24によって構成されている。第1壁部21及び第2壁部22は、X方向において向かい合っている。第2壁部22は、第1壁部21に対してX方向における一方の側に位置している。第3壁部23は、第1壁部21及び第2壁部22に対してX方向及びZ方向の両方向に垂直なY方向における一方の側に位置している。第4壁部24は、第1壁部21、第2壁部22及び第3壁部23に対してZ方向における他方の側(一方の側とは反対側)に位置している。
【0031】
第1壁部21には、X方向に沿って筐体2内に測定光Lを入射させる第1光入射孔2aが形成されている。第3壁部23には、X方向及びZ方向の両方向に平行な内側表面2bが形成されている。内側表面2bには、第3壁部23に形成された複数の位置決め孔2cのそれぞれが開口している。第3壁部23は、第2支持体6と一体的に形成されている。本体部20及び第2支持体6は、第3壁部23の内側表面2bを底面91とする凹部9を構成している。すなわち、筐体2は、第3壁部23の内側表面2bを底面91とする凹部9を画定している。本体部20及び第2支持体6は、例えば、金属によって一体的に形成されている。
【0032】
筐体2は、蓋部25と、シールドカバー26と、を更に有している。蓋部25は、凹部9の開口を塞ぐように本体部20及び第2支持体6に取り付けられている。シールドカバー26は、Z方向における一方の側から光検出器7を覆うように本体部20及び蓋部25に取り付けられている。
[ビームスプリッタ及び第1支持体の構成]
【0033】
図1及び
図2に示されるように、第1支持体5は、複数のビームスプリッタ3を支持している。各ビームスプリッタ3は、板状を呈しており、1mm以下の厚さを有している。各ビームスプリッタ3は、各ビームスプリッタ3の厚さ方向から見た場合に長尺状を呈しており、各ビームスプリッタ3の長手方向に垂直な方向は、Y方向に平行な方向である。各ビームスプリッタ3は、同一の形状を呈している。各ビームスプリッタ3は、例えば長方形板状を呈している。
【0034】
第1支持体5は、第1壁部51、第2壁部52、第3壁部53、第4壁部54及び第5壁部55によって構成されている。第1壁部51及び第2壁部52は、X方向において向かい合っている。第2壁部52は、第1壁部51に対してX方向における一方の側に位置している。第3壁部53及び第4壁部54は、Y方向において向かい合っている。第3壁部53は、第1壁部51及び第2壁部52に対してY方向における一方の側に位置している。第4壁部54は、第1壁部51及び第2壁部52に対してY方向における他方の側に位置している。第5壁部55は、第1壁部51、第2壁部52、第3壁部53及び第4壁部54に対してZ方向における他方の側に位置している。第1支持体5は、例えば、金属によって一体的に形成されている。
【0035】
第1壁部51には、X方向に沿って複数のビームスプリッタ3に測定光Lを入射させる第2光入射孔5aが形成されている。第3壁部53には、X方向及びZ方向の両方向に平行な外側表面5bが形成されている。外側表面5bには、複数の位置決めピン5cが設けられている。第1支持体5は、各位置決めピン5cが筐体2の各位置決め孔2cに嵌められることでX方向及びZ方向の両方向に平行な面内での(当該面に沿っての)第1支持体5の位置が規定された状態で、外側表面5bが筐体2の内側表面2bに接触するように第3壁部23に取り付けられている。
【0036】
第1支持体5は、外側表面5bが筐体2の内側表面2b(すなわち、凹部9の底面91)に接触した状態で、凹部9内に配置されている。凹部9の側面92は、複数の離間領域92aを含んでいる。各離間領域92aは、第1支持体5から離間している。本実施形態では、側面92は、本体部20の第1壁部21、第2壁部22及び第4壁部24のそれぞれの内側表面、並びに、第2支持体6における第4壁部24側の表面によって、構成されている。なお、側面92は、少なくとも1つの離間領域92aを含んでいればよい。また、離間領域92aは、側面92の全体であってもよい。
【0037】
第1支持体5には、複数の溝56が形成されている。各ビームスプリッタ3は、各溝56に配置されている。これにより、第1支持体5には、それぞれが溝56及びビームスプリッタ3からなる複数の組合せが設けられている。以下、当該複数の組合せのそれぞれを「対応する溝56及びビームスプリッタ3」という。
【0038】
図1及び
図3に示されるように、各溝56は、第5壁部55の外側表面に開口している。各溝56の延在方向は、Y方向に平行な方向である。各溝56の深さ方向は、Y方向に垂直な方向のうち、深い位置ほどX方向における一方の側に位置するように45°傾斜した方向である。各溝56は、1対の側面56a,56bと、底面56cと、を有している。1対の側面56a,56bは、各溝56の幅方向(延在方向及び深さ方向の両方向に垂直な方向)において向かい合っている。側面56aには光通過開口57aが形成されており、側面56bには光通過開口57bが形成されている。
【0039】
本実施形態では、各溝56は、延在方向における各溝56の両端部がそれぞれ第3壁部53及び第4壁部54に位置するように形成されている。光通過開口57aは、Y方向において向かい合う第3壁部53及び第4壁部54間の空間によって側面56aが切り欠かれることで側面56aに形成されており、光通過開口57bは、当該空間によって側面56bが切り欠かれることで側面56bに形成されている。また、底面56cは、Y方向において2つの領域に分離されている。
【0040】
対応する溝56及びビームスプリッタ3において、溝56は、ビームスプリッタ3の厚さの2倍以上の幅(すなわち、1対の側面56a,56b間の距離)を有している。一例として、ビームスプリッタ3の厚さは0.5mmであり、溝56の幅は2.5mm~3.0mmである。対応する溝56及びビームスプリッタ3において、ビームスプリッタ3は、1対の側面56a,56bのうちZ方向における一方の側に位置する側面56a、及び、底面56cに接触するように、溝56に配置されている。この状態で、ビームスプリッタ3は、例えば接着剤によって側面56a及び底面56cに固定されている。
【0041】
図1に示されるように、分光モジュール1では、第1光入射孔2a及び第2光入射孔5aによって光入射部10が構成されている。光入射部10は、X方向に沿って複数のビームスプリッタ3に入射する光を画定する。第2光入射孔5aは、X方向から見た場合に第1光入射孔2aを含んでいる。この場合には、第1光入射孔2aの中心線が光入射部10の光軸Aとなる。一例として、X方向から見た場合に、第1光入射孔2aは円形状を呈しており、第2光入射孔5aはZ方向を長手方向とする長円状を呈している。一例として、X方向から見た場合に、第1光入射孔2aは、第2光入射孔5aのうちZ方向における一方の側の部分と重なっている。これによれば、第1支持体5にビームスプリッタ3が配置された際に第1光入射孔2a及び第2光入射孔5aを介してビームスプリッタ3の中心を確認することができる。
[バンドパスフィルタ及び第2支持体の構成]
【0042】
図4及び
図5に示されるように、第2支持体6は、複数のバンドパスフィルタ4を支持している。各バンドパスフィルタ4は、光透過基板41と、干渉膜42と、遮光膜43と、を有している。光透過基板41は、例えば長方形板状を呈している。干渉膜42は、光透過基板41の光入射面41aに設けられている。干渉膜42は、例えば誘電体多層膜である。遮光膜43は、光透過基板41の側面41bに設けられている。遮光膜43は、例えば黒色の塗装膜である。各バンドパスフィルタ4では、干渉膜42における光透過基板41とは反対側の表面がバンドパスフィルタ4の光入射面4aであり、光透過基板41における干渉膜42とは反対側の表面がバンドパスフィルタ4の光出射面4bであり、遮光膜43の外側表面がバンドパスフィルタ4の側面4cである。なお、
図1及び
図2では、構成の簡易化が図られた状態で各バンドパスフィルタ4が図示されている。
【0043】
第2支持体6は、支持部61を有している。支持部61には、Z方向における一方の側に開放されるように支持面61aが形成されている。支持面61aがZ方向における一方の側に開放されているとは、第2支持体6のみの状態でZ方向における一方の側から支持部61を見た場合に支持面61aが露出していること(すなわち、支持面61aが視認可能であること)を意味する。複数のバンドパスフィルタ4は、X方向に沿って配列されるように、支持面61aに配置されている。支持面61aは、Z方向に垂直な面であり、各バンドパスフィルタ4の光入射面4aのうちクリアアパーチャ40の外側の領域が支持面61aに接触するように支持部61に形成されている。クリアアパーチャ40は、バンドパスフィルタ4の機能が保証された有効開口領域である。支持部61には、複数のビームスプリッタ3から複数のバンドパスフィルタ4に至る複数の光路(
図1に示される破線)が通る1つの光通過開口61bが形成されている。これにより、支持面61aは、Y方向において2つの領域に分離されている。
【0044】
第2支持体6は、規制部62を更に有している。規制部62は、支持部61に対してZ方向における一方の側に位置するように第2支持体6に設けられている。規制部62は、各バンドパスフィルタ4がZ方向に垂直な方向に移動することを規制している。規制部62は、各バンドパスフィルタ4の側面4cに接触するように設けられた複数の接触部分62a、及び各バンドパスフィルタ4の側面4cから離間するように設けられた複数の離間部分62bによって、構成されている。規制部62は、複数のバンドパスフィルタ4を完全に仕切っていない。つまり、複数のバンドパスフィルタ4は、Z方向に垂直な方向への移動が規制部62によって規制された状態で、空間を介して互いに離間している。
【0045】
図1及び
図2に示されるように、第2支持体6には、Z方向における一方の側に開口する凹部63が形成されている。凹部63の底面63aは、規制部62における支持部61とは反対側の表面である。Z方向における支持面61aと底面63aとの距離は、各バンドパスフィルタ4の厚さ(すなわち、Z方向における光入射面4aと光出射面4bとの距離)よりも小さい。これにより、各バンドパスフィルタ4における支持部61とは反対側の一部分は、底面63aから突出しており、各バンドパスフィルタ4の光出射面4bは、底面63aよりもZ方向における一方の側に位置している(
図4参照)。底面63aには、複数の位置決めピン(第1係合部)6aが設けられている。
[光検出器及び遮光部材の構成]
【0046】
図1及び
図2に示されるように、光検出器7は、配線基板71と、複数の光検出素子72と、コネクタ73と、を有している。複数の光検出素子72は、X方向に沿って配列されるように、配線基板71における複数のバンドパスフィルタ4側の表面71aに実装されている。各光検出素子72は、PDチップ等のディスクリート半導体素子であり、各受光領域7aを有している。コネクタ73は、配線基板71における表面71aとは反対側の表面71bに取り付けられている。コネクタ73は、各光検出素子72に対して電気信号等を入出力するためのポートである。コネクタ73は、シールドカバー26に形成された開口26aを介して筐体2の外側に延在している。光検出器7は、凹部63の開口を塞ぐように第2支持体6に取り付けられている。本実施形態では、配線基板71が凹部63の開口を塞ぐように第2支持体6に取り付けられており、複数の光検出素子72が凹部63内に位置している。
【0047】
遮光部材8は、複数のバンドパスフィルタ4と光検出器7との間に配置されている。遮光部材8は、弾性材料によって形成されており、圧縮された状態で第2支持体6の凹部63に配置されている。この状態で、複数のバンドパスフィルタ4は、第2支持体6の支持部61と遮光部材8とによって挟持されている。遮光部材8には、複数の光通過開口8aが形成されている。複数のバンドパスフィルタ4から複数の受光領域7aに至る複数の光路のそれぞれは、複数の光通過開口8aのそれぞれを通っている。つまり、複数のバンドパスフィルタ4から複数の受光領域7aに至る複数の光路は、遮光部材8によって互いに分離されている。本実施形態では、光検出器7の各光検出素子72が遮光部材8の各光通過開口8a内に位置している。各光通過開口8a内では、光検出素子72の端子と配線基板71の端子とがワイヤ74によって電気的に接続されており、ワイヤ74が樹脂部材75によって覆われている。
【0048】
図6に示されるように、各光通過開口8aは、各バンドパスフィルタ4の光出射面4bのうちクリアアパーチャ40の外側の領域が遮光部材8に接触するように遮光部材8に形成されている。つまり、遮光部材8は、各バンドパスフィルタ4の光出射面4bのうちクリアアパーチャ40の外側の領域が遮光部材8に接触するように構成されている。なお、
図6では、バンドパスフィルタ4が二点鎖線で図示されている。
【0049】
図2に示されるように、遮光部材8には、複数の位置決め孔(第2係合部)8bが形成されている。配線基板71には、複数の位置決め孔7bが形成されている。各位置決め孔7bは、Z方向から見た場合に各位置決め孔8bと重なっている。遮光部材8は、第2支持体6の各位置決めピン6aが各位置決め孔8bに嵌められることでZ方向に垂直な方向における各光通過開口8aの位置が規定された状態で、凹部63に配置されている。光検出器7は、遮光部材8の各位置決め孔8bを貫通した各位置決めピン6aが各位置決め孔7bに嵌められることでZ方向に垂直な方向における各受光領域7aの位置が規定された状態で、第2支持体6に取り付けられている。
[複数のビームスプリッタの配置]
【0050】
図7に示されるように、複数のビームスプリッタ3は、各ビームスプリッタ3の中心3aがX方向に平行なラインα上に位置するように配置されている。ビームスプリッタ3の中心3aは、ビームスプリッタ3の厚さ方向から見た場合におけるビームスプリッタ3の中心(重心)である。各ビームスプリッタ3は、1mm以下の同一の厚さを有しており、X方向に沿って45°の入射角で光が入射するように配置されている。光入射部10の光軸Aは、各ビームスプリッタ3の中心3aを通るラインαに対してZ方向における一方の側に位置している。なお、
図7では、光入射部10が模式的に図示されている。
【0051】
各ビームスプリッタ3では、屈折が生じるため、入射光の光軸に対して透過光の光軸が光入射部10の光軸Aから離れる側にシフトする。分光モジュール1では、各ビームスプリッタ3が同一の厚さを有しており且つX方向に沿って45°の入射角で光が入射するように各ビームスプリッタ3が配置されているため、各ビームスプリッタ3において光の屈折量が等しくなる。光の屈折量とは、ビームスプリッタ3において、入射光の光軸に対して透過光の光軸が光入射部10の光軸Aから離れる側にシフトする量を意味する。
【0052】
各ビームスプリッタ3における光の屈折量をΔZとし、ビームスプリッタ3の個数をMとすると、Z方向における「最前段のビームスプリッタ3における入射光の光軸」と「最後段のビームスプリッタ3における入射光の光軸」との距離は、ΔZ(M-1)となる。最前段のビームスプリッタ3とは、最も前段(光の進行方向における上流側)に配置されたビームスプリッタ3を意味し、最後段のビームスプリッタ3とは、最も後段(光の進行方向における下流側)に配置されたビームスプリッタ3を意味する。
【0053】
分光モジュール1では、Z方向における光軸Aとラインαとの距離がΔZ(M-1)/2となるように、光入射部10の光軸Aに対して複数のビームスプリッタ3が配置されている。これにより、中段(光の進行方向における中流側)に配置されたビームスプリッタ3において、入射光の光軸がビームスプリッタ3の中心3a又は中心3a付近を通ることになる。
【0054】
一例として、各ビームスプリッタ3の厚さが0.5mm、屈折率が1.5であり、ビームスプリッタ3への入射角が45°、ビームスプリッタ3の配置個数が10である場合には、光の屈折量ΔZの値は0.165mmとなる。したがって、Z方向における光軸Aとラインαとの距離は、ΔZ(M-1)/2=0.165×(10-1)/2=約0.74mmとなる。この場合には、最前段から5個目及び6個目のビームスプリッタ3のそれぞれにおいて、入射光の光軸が各ビームスプリッタ3の中心3a付近を通ることになる。光入射部10によって画定される測定光Lの直径(すなわち、最前段のビームスプリッタ3における入射光の直径)が4mmである場合には、長手方向における各ビームスプリッタ3の長さが10mmあれば、全てのビームスプリッタ3においてクリアアパーチャ内に入射光が収まることになる。
【0055】
分光モジュール1では、複数のビームスプリッタ3の配列ピッチが、複数の受光領域7aの配列ピッチに、各ビームスプリッタ3における光の屈折量を加えた値となっている。複数のビームスプリッタ3の配列ピッチとは、複数のビームスプリッタ3がX方向に沿って等間隔で配列された場合における「隣り合うビームスプリッタ3の中心3a間の距離」を意味する。複数の受光領域7aの配列ピッチとは、複数の受光領域7aがX方向に沿って等間隔で配列された場合における「隣り合う受光領域7aの中心間の距離」を意味する。複数のビームスプリッタ3の配列ピッチをP1とし、複数の受光領域7aの配列ピッチP2とすると、P1=P2+ΔZとなる。したがって、ビームスプリッタ3の個数をMとすると、X方向における「最前段のビームスプリッタ3」と「最後段のビームスプリッタ3」との距離は、P1(M-1)=(P2+ΔZ)(M-1)=P2(M-1)+ΔZ(M-1)となる。このように、複数のビームスプリッタ3の配列ピッチは、複数の受光領域7aの配列ピッチだけでなく、各ビームスプリッタ3における光の屈折量の影響も累積的に受ける。
【0056】
以上のことから、「複数のビームスプリッタ3の全体において、バンドパスフィルタ4から離れる側にも、複数のビームスプリッタ3が並ぶ方向における後段側にも、累積された光の屈折量の総和を十分に小さくして、モジュール全体の小型化を図る」上では、各ビームスプリッタ3は、1mm以下の厚さを有していることが好ましく、0.5mm以下の厚さを有していることがより好ましい。ただし、ビームスプリッタ3の強度を確保する上では、各ビームスプリッタ3は、0.1mm以上の厚さを有していることが好ましい。
[作用及び効果]
【0057】
分光モジュール1では、第2支持体6において、Z方向における一方の側に開放されるように支持部61に形成された支持面61aに、複数のバンドパスフィルタ4が配置されている。ここで、第2支持体6において、Z方向における一方の側は、複数のビームスプリッタ3が支持される側とは反対側である。そのため、分光モジュール1の製造時において、複数のビームスプリッタ3を支持する第1支持体5が第2支持体6に取り付けられた後に、例えばバンドパスフィルタ4に損傷等が発見されても、当該バンドパスフィルタ4を交換するために当該第1支持体5を第2支持体6から取り外す必要がない。また、複数のバンドパスフィルタ4を第2支持体6に取り付けるタイミングも、複数のビームスプリッタ3を支持する第1支持体5を第2支持体6に取り付けるタイミングに左右されない。更に、複数のバンドパスフィルタ4を第2支持体6に取り付ける際にZ方向における一方の側から各バンドパスフィルタ4を視認することができる。よって、分光モジュール1によれば、製造効率の向上を図ることができる。
【0058】
また、分光モジュール1では、各バンドパスフィルタ4がZ方向に垂直な方向に移動することを規制する規制部62が第2支持体6に設けられている。これにより、例えば接着剤等を用いなくても、各バンドパスフィルタ4の位置精度を確保することができる。また、各バンドパスフィルタ4と第2支持体6との間に接着剤等が介在しないため、第2支持体6に対する各バンドパスフィルタ4の位置精度をより高めることができる。
【0059】
また、分光モジュール1では、各バンドパスフィルタ4の側面4cに接触するように設けられた複数の接触部分62a、及び各バンドパスフィルタ4の側面4cから離間するように設けられた複数の離間部分62bによって、規制部62が構成されている。これにより、例えば分光モジュール1の製造時において、バンドパスフィルタ4に損傷等が発見された場合に、当該バンドパスフィルタ4と離間部分62bとの間に例えば治工具を挿し込むことで、第2支持体6から当該バンドパスフィルタ4を容易に取り外すことができる。
【0060】
また、分光モジュール1では、複数のビームスプリッタ3から複数のバンドパスフィルタ4に至る複数の光路が通る1つの光通過開口61bが支持部61に形成されている。これにより、支持部61の構造の単純化を図ることができる。
【0061】
また、分光モジュール1では、各バンドパスフィルタ4の光入射面4aのうちクリアアパーチャ40の外側の領域が支持面61aに接触するように、支持面61aが支持部61に形成されている。これにより、各バンドパスフィルタ4の機能が十分に発揮されるため、各受光領域7aから出力される電気信号においてS/N比を向上させることができる。つまり、分光モジュール1では、光入射面4aのうちクリアアパーチャ40の外側の領域に支持面61aが接触しているため、各バンドパスフィルタ4の有効開口面積を最大限に活用することができる。
【0062】
また、分光モジュール1では、複数のバンドパスフィルタ4と光検出器7との間に遮光部材8が配置されており、複数のバンドパスフィルタ4から複数の受光領域7aに至る複数の光路が遮光部材8によって互いに分離されている。これにより、隣り合う受光領域7a間において光学的なクロストークが生じるのを抑制することができる。
【0063】
また、分光モジュール1では、複数のバンドパスフィルタ4が支持部61と遮光部材8とによって挟持されている。これにより、例えば接着剤等を用いなくても、各バンドパスフィルタ4を確実に保持することができる。また、各バンドパスフィルタ4と遮光部材8との間の隙間が小さくなるため、隣り合う受光領域7a間において光学的なクロストークが生じるのを確実に抑制することができる。
【0064】
また、分光モジュール1では、遮光部材8が弾性材料によって形成されている。これにより、各バンドパスフィルタ4が破損するのを抑制しつつ、各バンドパスフィルタ4に遮光部材8を接触させることができるため、隣り合う受光領域7a間において光学的なクロストークが生じるのをより確実に抑制することができる。
【0065】
また、分光モジュール1では、Z方向における一方の側に開口する凹部63が第2支持体6に形成されており、Z方向における支持面61aと凹部63の底面63aとの距離が各バンドパスフィルタ4の厚さよりも小さく、光検出器7が凹部63の開口を塞ぐように第2支持体6に取り付けられており、遮光部材8が圧縮された状態で凹部63に配置されている。これにより、各バンドパスフィルタ4をより確実に保持することができる。また、各バンドパスフィルタ4及び光検出器7に遮光部材8を確実に接触させることができるため、隣り合う受光領域7a間において光学的なクロストークが生じるのをより確実に抑制することができる。特に、比較的硬質な金属からなる第2支持体6、及び弾性材料からなる遮光部材8を用いて各バンドパスフィルタ4を挟持することで、各バンドパスフィルタ4の破損を抑えつつ、各バンドパスフィルタ4を安定して保持することができる。
【0066】
また、分光モジュール1では、複数の位置決め孔8bが遮光部材8に形成されており、それぞれが複数の位置決め孔8bのそれぞれに嵌められた複数の位置決めピン6aが第2支持体6に設けられている。これにより、単純な構造で第2支持体6に対して遮光部材8を位置決めすることができ、延いては、各バンドパスフィルタ4に対して遮光部材8の各光通過開口8aを位置決めすることができる。
【0067】
また、分光モジュール1では、各バンドパスフィルタ4の光出射面4bのうちクリアアパーチャ40の外側の領域が遮光部材8に接触するように、遮光部材8が構成されている。これにより、各バンドパスフィルタ4の機能が十分に発揮されるため、各受光領域7aから出力される電気信号においてS/N比を向上させることができる。また、分光モジュール1では、光出射面4bのうちクリアアパーチャ40の外側の領域に遮光部材8が接触しているため、各バンドパスフィルタ4の有効開口面積を最大限に活用することができる。
【0068】
また、分光モジュール1では、複数のバンドパスフィルタ4が空間を介して互いに離間しており、各バンドパスフィルタ4において光透過基板41の側面41bに遮光膜43が設けられている。これにより、例えば隣り合うバンドパスフィルタ4間に壁部等を設けなくても、各バンドパスフィルタ4において光透過基板41の側面41bから迷光が入射するのを抑制することができる。更に、光透過基板41の側面41bから迷光が入射するのが抑制されるため、各バンドパスフィルタ4から光検出器7側に迷光が進入するのを抑制することができる。また、複数のバンドパスフィルタ4が空間を介して互いに離間しているため、X方向において隣り合うバンドパスフィルタ4同士を近づけることにより光路長を短くすることができ、光量のロスを低減することができる。そのため、配線基板71の回路において電気信号の増幅率を抑えることができ、S/N比の更なる向上を図ることができる。更に、X方向における筐体2の長さを縮小することができるため、分光モジュール1を小型化することができる。
【0069】
また、分光モジュール1では、各バンドパスフィルタ4において光透過基板41の光入射面41aに干渉膜42が設けられている。これにより、各バンドパスフィルタ4において光透過基板41内での乱反射に起因して迷光が発生するのを抑制することができる。更に、各バンドパスフィルタ4から光検出器7側に迷光が進入するのを抑制することができる。
【0070】
また、分光モジュール1では、配線基板71の表面71aに複数の光検出素子72が実装されることで、光検出器7が構成されている。1つの半導体基板に複数の受光領域7aが形成されたPDアレイ等では、当該1つの半導体基板内において電気的なクロストークが発生するおそれがあるが、互いに電気的に独立した複数の光検出素子72を用いることにより、隣り合う受光領域7a間を絶縁することが可能となるため、そのような事態を確実に防止することができる。
[変形例]
【0071】
本発明は、上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、第1方向(X方向)に沿って複数のビームスプリッタ3が配列されており、複数のビームスプリッタ3に対して第2方向(Z方向)における一方の側に複数のバンドパスフィルタ4等が配置されていた。つまり、上記実施形態では、第2方向(Z方向)が第1方向(X方向)に垂直な方向であったが、第2方向は第1方向と交差する方向であればよい。また、上記実施形態において「接触するように」との意味には、或る部材と或る部材とが接触していることに限定されず、或る部材と或る部材との間に接着剤等の膜が配置されていることも含まれる。
【0072】
また、筐体2は、少なくとも複数のビームスプリッタ3及び複数のバンドパスフィルタ4を収容するものであればよい。また、第1支持体5、第2支持体6及び光検出器7の少なくとも1つの一部分によって、筐体2の一部分が構成されていてもよい。また、第1支持体5及び第2支持体6は、一体的に形成されていてもよい。また、各バンドパスフィルタ4の光入射面4aは、遮光部材8が配置される凹部63の底面63aよりもZ方向における一方の側に位置していたが、底面63aと同じ位置に位置していてもよい。
【0073】
また、各ビームスプリッタ3は、互いに異なる波長帯域の光を反射し且つ反射する波長帯域の光以外の光を透過させるダイクロイックミラーであってもよい。また、各ビームスプリッタ3は、板状に限定されず、ブロック状を呈していてもよい。また、各ビームスプリッタ3は、各ビームスプリッタ3の厚さ方向から見た場合に長尺状を呈していれば、具体的形状として、多角形、楕円形状等を呈していてもよい。また、複数のビームスプリッタ3は、例えば1つの基材に少なくとも2つの誘電体多層膜が形成されることで構成されていてもよい。つまり、それぞれがビームスプリッタ3として機能する複数の部分が存在すればよく、当該複数の部分のそれぞれが配置された基材が互いに分割されている必要はない。また、複数のバンドパスフィルタ4は、例えば1つの基材に少なくとも2つの誘電体多層膜が形成されることで構成されていてもよい。つまり、それぞれがバンドパスフィルタ4として機能する複数の部分が存在すればよく、当該複数の部分のそれぞれが配置された基材が互いに分割されている必要はない。また、光検出器7は、1つの半導体基板に複数の受光領域7aが形成されたPDアレイ等であってもよい。また、光検出器7は、光電子増倍管であってもよい。
【0074】
また、第2支持体6は、上記実施形態の構成に限定されない。第2支持体6の支持部には、Z方向における一方の側に開放されるように支持領域が形成され、複数のバンドパスフィルタ4は、支持領域に配置されていればよい。そのような分光モジュール1においても、第2支持体6において、Z方向における一方の側に開放されるように支持部に形成された支持領域に、複数のバンドパスフィルタ4が配置されており、第2支持体6において、Z方向における一方の側は、複数のビームスプリッタ3が支持される側とは反対側である。そのため、分光モジュール1の製造時において、複数のビームスプリッタ3を支持する第1支持体5が第2支持体6に取り付けられた後に、例えばバンドパスフィルタ4に損傷等が発見されても、当該バンドパスフィルタ4を交換するために当該第1支持体5を第2支持体6から取り外す必要がない。また、複数のバンドパスフィルタ4を第2支持体6に取り付けるタイミングも、複数のビームスプリッタ3を支持する第1支持体5を第2支持体6に取り付けるタイミングに左右されない。更に、複数のバンドパスフィルタ4を第2支持体6に取り付ける際にZ方向における一方の側から各バンドパスフィルタ4を視認することができる。よって、上述した分光モジュール1によっても、製造効率の向上を図ることができる。
【0075】
支持領域が形成された支持部の例について以下に述べる。一例として、
図8に示される第2支持体6は、支持面である支持領域64aが形成された支持部64を有している。支持領域64aは、Z方向に平行な面であり、Z方向における一方の側に開放されるように形成されている。支持領域64aがZ方向における一方の側に開放されているとは、第2支持体6のみの状態でZ方向における一方の側から支持部64を見た場合に、支持領域64aまで何らの部材も存在しないことを意味する。複数のバンドパスフィルタ4は、X方向に沿って配列されるように、支持領域64aに配置されている。支持領域64aは、Z方向に平行な面であり、各バンドパスフィルタ4の側面4cが支持領域64aに接触するように支持部64に形成されている。
図8に示される例では、上述した製造効率の向上に加えて、Z方向に垂直な支持面が支持部64に形成されている場合と比較して、各ビームスプリッタ3及び各バンドパスフィルタ4間の光路長を短くすることができ、光量のロスを低減することができる。そのため、配線基板71の回路において電気信号の増幅率を抑えることができ、S/N比の更なる向上を図ることができる。また、
図8に示される例では、Z方向に垂直な支持面が形成されている場合と比較して、更なる製造の容易化を図ることができる。
【0076】
なお、支持部64は、
図9に示される例のように、光通過開口64bが形成された部分において、光通過開口64bの中心側に傾斜するように形成されていてもよい。また、第2支持体6は、
図10に示される例のように、Y方向に沿って線状に延在する支持領域64cが形成された支持部64を有していてもよい。支持領域64cは、支持部64において互いに異なる角度で傾斜した光通過開口64b側の表面とバンドパスフィルタ4側の表面との接続部である。複数のバンドパスフィルタ4は、X方向に沿って配列されるように、支持領域64cに配置されている。支持領域64cは、各バンドパスフィルタ4の光入射面4a及び側面4cによって形成された隅部のうちY方向に沿った部分において支持領域64cに接触するように支持部64に形成されている。
【0077】
また、上記実施形態では、筐体2が、規定部として複数の位置決め孔2cを有していたが、第2支持体6及び筐体2の少なくとも一方が、X方向及びZ方向の両方向に平行な面内での第1支持体5の位置を規定する規定部を有していればよい。第2支持体6及び筐体2が有する規定部としては、例えば、凹部9内に配置された第1支持体5に接触するように凹部9の側面92に設けられた接触領域がある。また、第1支持体5は、第1係合部を有し、筐体2は、規定部として、第1係合部と係合した第2係合部を有していてもよい。その場合、第1係合部及び第2係合部の一方は、複数の位置決め孔であり、第1係合部及び第2係合部の他方は、それぞれが複数の位置決め孔のそれぞれに嵌められた位置決めピンであってもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、第2支持体6が位置決めピン6aを有しており、遮光部材8が位置決め孔8bを有していたが、第2支持体6は、第1係合部を有し、遮光部材8は、第1係合部と係合した第2係合部を有していてもよい。その場合、第1係合部及び第2係合部の一方は、複数の位置決め孔であり、第1係合部及び第2係合部の他方は、それぞれが複数の位置決め孔のそれぞれに嵌められた位置決めピンであってもよい。
【0079】
また、ビームスプリッタ3が、板状を呈しており、1mm以下の厚さ(より好ましくは0.5mm以下の厚さ)を有している場合には、全てのビームスプリッタ3の個数をM個(Mは2以上の自然数)とすると、M個のビームスプリッタ3のうちのN個(Nは2以上且つM以下の自然数)のビームスプリッタ3のそれぞれが、板状を呈しており、1mm以下の厚さ(より好ましくは0.5mm以下の厚さ)を有していればよい。なお、全てのビームスプリッタ3が、板状を呈しており、1mm以下の厚さ(より好ましくは0.5mm以下の厚さ)を有していてもよい(M=Nの場合)。
【0080】
また、各バンドパスフィルタ4が、第2支持体6に対して接着剤で固定されてもよい。その場合、各バンドパスフィルタ4は、支持部61と遮光部材8とによって挟持されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1…分光モジュール、3…ビームスプリッタ、4…バンドパスフィルタ、4a…光入射面、4b…光出射面、4c…側面、5…第1支持体(支持体)、6…第2支持体(支持体)、6a…位置決めピン(第1係合部)、7…光検出器、7a…受光領域、8…遮光部材、8b…位置決め孔(第2係合部)、40…クリアアパーチャ、41…光透過基板、41a…光入射面、41b…側面、42…干渉膜、43…遮光膜、61,64…支持部、61a…支持面、61b…光通過開口、64a,64c…支持領域、62…規制部、62a…接触部分、62b…離間部分、63…凹部、63a…底面、71…配線基板、71a…表面、72…光検出素子。