(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163293
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ドライバ推定装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G01C 21/36 20060101AFI20241114BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241114BHJP
B60R 25/20 20130101ALI20241114BHJP
【FI】
G01C21/36
G08G1/16 C
B60R25/20
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024158144
(22)【出願日】2024-09-12
(62)【分割の表示】P 2023073377の分割
【原出願日】2015-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】矢野 健一郎
(57)【要約】
【課題】特別な操作等を要求することなくドライバを推定することが可能なドライバ推定装置を提供する。
【解決手段】ナビゲーション装置2の制御部21は、通信部27により、車両の搭乗者が装着する腕装着型端末1から、搭乗者の腕の動きを示す加速度及び角速度の時系列計測データを含む腕動作データDaを受信する。そして、ナビゲーション装置2の制御部21は、通信部27が受信した搭乗者の腕動作データDaに基づいて、当該搭乗者が車両のドライバであるかどうかを推定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の搭乗者が装着し、前記搭乗者の腕の動きを検知する端末から、前記腕の動きに関するデータを受信する受信部と、
前記腕の動きに関するデータに基づいて、前記搭乗者が前記車両のドライバであるかどうかを推定する推定部と、
を備えることを特徴とするドライバ推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバ(運転者)を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の運転開始時にドライバ認証を行う技術が知られている。例えば、特許文献1には、タッチスクリーンなどの入力装置でドライバ名の入力を受け付けたり、指紋等の生体認証を行ったりすることで、車両の運転開始時にドライバ認証を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の運転支援装置は、ドライバ認証のために入力操作や接触動作を必要としている。これらの操作等は、ドライバにとって煩わしい場合があり、装置の普及の妨げとなる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ドライバに特別な操作等を要求することなく、ドライバの推定を実行可能なドライバ推定装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項に記載の発明は、ドライバ推定装置であって、車両の搭乗者が装着し、前記搭乗者の腕の動きを検知する端末から、前記腕の動きに関するデータを受信する受信部と、前記腕の動きに関するデータに基づいて、前記搭乗者が前記車両のドライバであるかどうかを推定する推定部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項に記載の発明は、車両の搭乗者が装着し、前記搭乗者の腕の動きを検知することで、当該搭乗者が前記車両のドライバであるかの推定を行う端末から、前記推定の結果を受信する受信部と、前記推定の結果に基づいて、前記搭乗者が前記車両のドライバであるかどうかを推定する、又は、前記推定の結果と、当該推定の結果と共に前記受信部が受信した前記腕の動きに関するデータとに基づいて、前記搭乗者が前記車両のドライバであるかどうかを推定する推定部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項に記載の発明は、車両の搭乗者が装着し、前記搭乗者の腕の動きを検知する検知部と、前記検知部が検知した前記搭乗者の腕の動きに基づいて、前記搭乗者が前記車両のドライバであるかどうかを推定する推定部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項に記載の発明は、ドライバ推定装置が実行する制御方法であって、車両の搭乗者が装着し、前記搭乗者の腕の動きを検知する端末から、前記腕の動きに関するデータを受信する受信工程と、前記腕の動きに関するデータに基づいて、前記搭乗者が前記車両のドライバであるかどうかを推定する推定工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
請求項に記載の発明は、コンピュータが実行するプログラムであって、車両の搭乗者が装着し、前記搭乗者の腕の動きを検知する端末から、前記腕の動きに関するデータを受信する受信部と、前記腕の動きに関するデータに基づいて、前記搭乗者が前記車両のドライバであるかどうかを推定する推定部として前記コンピュータを機能させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】ドライバ推定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図3】複数の腕装着型端末が車内に存在する場合のドライバ推定システムの概要図である。
【
図4】運転動作と車両の走行状態との関係を示すテーブルである。
【
図5】変形例に係るドライバ推定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の1つの好適な実施形態では、ドライバ推定装置は、車両の搭乗者が装着し、前記搭乗者の腕の動きを検知する端末から、前記腕の動きに関するデータを受信する受信部と、前記腕の動きに関するデータに基づいて、前記搭乗者が前記車両のドライバであるかどうかを推定する推定部と、を備える。
【0013】
上記ドライバ推定装置は、受信部と、推定部とを備える。受信部は、車両の搭乗者が装着し、搭乗者の腕の動きを検知する端末から、腕の動きに関するデータを受信する。推定部は、受信部が受信した腕の動きに関するデータに基づいて、搭乗者が車両のドライバであるかどうかを推定する。この態様では、ドライバ推定装置は、搭乗者が装着する端末から腕の動きに関するデータを受信し、当該データに基づき搭乗者がドライバであるか否か推定する。一般に、車両のドライバと運転をしない乗員とでは、運転操作の有無等に起因して、腕の動きに明確な差が生じる。よって、ドライバ推定装置は、この態様により、端末を装着する搭乗者がドライバであるか否かを特別な操作等を要求することなく好適に推定することができる。
【0014】
上記ドライバ推定装置の一態様では、ドライバ推定装置は、予め作成された運転時の腕の動きに関するデータである運転動作データを取得する取得部を更に備え、前記推定部は、前記運転動作データと、前記腕の動きに関するデータとに基づいて、ドライバを推定する。この態様により、ドライバ推定装置は、腕の動きに関するデータを端末から受信することで、端末を装着する搭乗者がドライバであるか否か好適に推定することができる。
【0015】
上記ドライバ推定装置の他の一態様では、前記推定部は、前記腕の動きに関するデータと、前記車両の走行状態とに基づいて、前記搭乗者が前記車両のドライバであるかどうかを推定する。一般に、車両の走行状態に応じてドライバが実行する可能性がある運転操作が限定される。従って、この態様により、ドライバ推定装置は、搭乗者がドライバであるか否かをより的確に推定することができる。
【0016】
上記ドライバ推定装置の他の一態様では、前記推定部は、前記車両が所定の時間停車した場合、前記車両のドライバの推定を行う。「所定の時間」は、例えばドライバが交代するのに必要な時間等に実験等に基づき設定される。この態様により、ドライバ推定装置は、ドライバが交代した可能性がある場合に、車両のドライバの推定を行うことで、ドライバが交代した場合であっても交代後のドライバを的確に推定することができる。
【0017】
上記ドライバ推定装置の他の一態様では、ドライバ推定装置は、前記車両のドアの開閉を検出するドア開閉検出部を更に備え、前記推定部は、前記車両のドアが閉められた場合、前記車両のドライバの推定を行う。この態様では、ドライバ推定装置は、ドアの開閉が行われた場合にはドライバが交代した可能性があることから、車両のドライバの推定を行う。これにより、ドライバが交代した場合であっても交代後のドライバを的確に推定することができる。
【0018】
本発明に係る他の実施形態では、ドライバ推定装置は、車両の搭乗者が装着し、前記搭乗者の腕の動きを検知することで、当該搭乗者が前記車両のドライバであるかの推定を行う端末から、前記推定の結果を受信する受信部と、前記推定の結果に基づいて、前記搭乗者が前記車両のドライバであるかどうかを推定する、又は、前記推定の結果と、当該推定の結果と共に前記受信部が受信した前記腕の動きに関するデータとに基づいて、前記搭乗者が前記車両のドライバであるかどうかを推定する推定部と、を備える。ドライバ推定装置は、この態様により、装着者が車両のドライバであるかの推定を行う端末から受信した推定結果から、ドライバを好適に推定することができる。また、ドライバ推定装置は、受信した推定結果の信頼性に疑義がある場合であっても、推定結果と共に受信した腕の動きに関するデータに基づいて、自ら推定処理を実行することもできる。
【0019】
本発明に係る他の実施形態では、ドライバ推定装置は、車両の搭乗者が装着し、前記搭乗者の腕の動きを検知する検知部と、前記検知部が検知した前記搭乗者の腕の動きに基づいて、前記搭乗者が前記車両のドライバであるかどうかを推定する推定部と、を備える。この態様により、ドライバ推定装置は、装着者がドライバであるか否かを、特別な操作等を要求することなく好適に推定することができる。
【0020】
本発明に係るさらに別の実施形態では、ドライバ推定装置が実行する制御方法は、車両の搭乗者が装着し、前記搭乗者の腕の動きを検知する端末から、前記腕の動きに関するデータを受信する受信工程と、前記腕の動きに関するデータに基づいて、前記搭乗者が前記車両のドライバであるかどうかを推定する推定工程と、を有する。ドライバ推定装置は、この制御方法を実行することで、端末を装着する搭乗者がドライバであるか否かを、特別な操作等を要求することなく推定することができる。
【0021】
本発明に係るさらに別の実施形態では、コンピュータが実行するプログラムは、車両の搭乗者が装着し、前記搭乗者の腕の動きを検知する端末から、前記腕の動きに関するデータを受信する受信部と、前記腕の動きに関するデータに基づいて、前記搭乗者が前記車両のドライバであるかどうかを推定する推定部として前記コンピュータを機能させる。コンピュータは、このプログラムを実行することで、端末を装着する搭乗者がドライバであるか否かを、特別な操作等を要求することなく推定することができる。好適には、上記プログラムは、記憶媒体に記憶される。
【実施例0022】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0023】
[ドライバ推定システムの構成]
図1は、本実施例に係るドライバ推定システムの概要図である。
図1に示すように、ドライバ推定システムは、運転者(ドライバ)などの車両の搭乗者が腕に装着する腕装着型端末1と、ナビゲーション装置2とを有する。腕装着型端末1とナビゲーション装置2とは、無線又は有線(
図1では無線)によるデータ通信を行う。
【0024】
腕装着型端末1は、スマートウォッチなどの腕に装着自在なウェアラブル端末であって、ナビゲーション装置2の要求に基づき、装着者の腕の動きを表すデータ(「腕動作データDa」とも呼ぶ。)をナビゲーション装置2に送信する。腕装着型端末1は、本ドライバ推定システム専用に製造された端末であってもよく、本ドライバ推定システムに準拠するためのプログラムがインストールされた汎用の端末であってもよい。
【0025】
ナビゲーション装置2は、据置型の車載機、又はPND(Portable Navigation Device)やスマートフォンなどの携帯型の端末であって、ユーザが指定した目的地までの経路案内を実行する。また、本実施例では、ナビゲーション装置2は、車両のドライバと運転をしない乗員とで腕の動きに違いが生じることに着目し、腕装着型端末1から受信した腕動作データDaに基づき、腕装着型端末1の装着者がドライバであるか否かを判定する処理(「ドライバ推定処理」とも呼ぶ。)を行う。
【0026】
次に、引き続き
図1を参照して、腕装着型端末1及びナビゲーション装置2の各構成について説明する。
【0027】
図1に示すように、腕装着型端末1は、主に、制御部11と、通信部12と、加速度センサ13と、ジャイロセンサ14と、記憶部15とを有する。通信部12は、制御部11の制御に基づき、ナビゲーション装置2とデータ通信を行う。
【0028】
加速度センサ13は、例えば3軸加速度センサであり、装着者の腕の動き、姿勢(傾き)、及び振動に応じた検出信号を生成する。ジャイロセンサ14は、装着者の腕の回転動作があった場合に、当該回転動作の角速度を示す検出信号を生成する。記憶部15は、腕装着型端末1の動作を制御するためのプログラムを保存したり、腕装着型端末1の動作に必要な情報を保持したりする。また、記憶部15は、腕装着型端末1に固有の識別情報(「端末ID」とも呼ぶ。)などを記憶する。
【0029】
腕装着型端末1の制御部11は、図示しないCPUなどを備え、腕装着型端末1内の各構成要素に対して種々の制御を行う。本実施例では、制御部11は、ナビゲーション装置2から腕動作データDaの送信要求を通信部12により受信する。この場合、制御部11は、加速度センサ13及びジャイロセンサ14が所定時間幅にわたり計測した加速度及び角速度の時系列のデータ(「時系列計測データ」とも呼ぶ。)と、記憶部15に記憶された端末IDとを、腕動作データDaとして、通信部12によりナビゲーション装置2へ送信する。
【0030】
次に、ナビゲーション装置2の構成について説明する。
図1に示すように、ナビゲーション装置2は、主に、制御部21と、測位部22と、ディスプレイなどの表示部23と、スピーカなどの音出力部24と、入力部25と、記憶部26と、通信部27とを有する。
【0031】
測位部22は、ジャイロセンサや距離センサなどの自立測位装置やGPS受信機などであり、車両の現在地や進行方向などの測位を行う。表示部23は、制御部21の制御に基づき、ルート案内のための地図などを表示する。音出力部24は、制御部21の制御に基づき、ルート案内のための音声案内や所定の警告等を出力する。入力部25は、ボタン、スイッチ、タッチパネル、音声入力装置等であり、入力された情報を制御部21へ供給する。通信部27は、制御部21の制御に基づき、腕装着型端末1に対して腕動作データDaの要求信号を送信したり、腕装着型端末1から送信された腕動作データDaを受信したりする。通信部27は、本発明における「受信部」の一例である。
【0032】
記憶部26は、ナビゲーション装置2の動作を制御するためのプログラムを保存したり、ナビゲーション装置2の動作に必要な情報を保持したりする。例えば、記憶部26は、道路種別などが登録された道路データを含む地図データを記憶する。また、記憶部26は、ドライバ特有の腕の動きを不特定の腕装着型端末1の装着者が行った場合の時系列での加速度センサ13及びジャイロセンサ14の出力データ群(「ドライバ動作データDtmp」とも呼ぶ。)を予め記憶している。なお、ドライバ特有の動きは、ハンドルを回転させる動作、シフトレバーを操作する動作、ウィンカーを操作する動作などの種々の運転動作が該当し、記憶部26は、これらの各運転動作に対応するドライバ動作データDtmpを記憶する。ドライバ動作データDtmpは、例えば、標準的な体格の人が標準的な大きさの車両で運転動作を行った際に計測された加速度及び角速度の時系列の計測データである。
【0033】
制御部21は、図示しないCPUなどを備え、ナビゲーション装置2内の各構成要素に対して種々の制御を行う。本実施例では、制御部21は、腕装着型端末1から腕動作データDaを受信した場合、腕動作データDaに含まれる加速度及び角速度の時系列計測データに基づき、腕装着型端末1の装着者がドライバであるか否かの判定を行う。そして、制御部21は、腕装着型端末1の装着者がドライバであると判定した場合、受信した腕動作データDaに含まれる端末IDを、ドライバが装着する腕装着型端末1の端末IDとして記憶部26に記憶する。その後、例えば、制御部21は、記憶部26に記憶した端末IDに対応する腕装着型端末1に対し、ドライバの運転を支援するための所定の動作の実行を指示する制御信号を送信する。制御部21は、本発明における「推定部」及びプログラムを実行する「コンピュータ」の一例である。
【0034】
[ドライバ推定処理]
次に、ナビゲーション装置2の制御部21が実行するドライバ推定処理の詳細について説明する。概略的には、制御部21は、腕動作データDaに含まれる加速度及び角速度の時系列計測データに基づき、腕装着型端末1の装着者が運転動作を行ったと判断した場合、腕装着型端末1の装着者をドライバであると推定する。
【0035】
この場合、制御部21は、公知のパターン認識技術を用いることで、予め規定された運転動作ごとのドライバ動作データDtmpと、腕装着型端末1から受信した加速度及び角速度の時系列計測データとの類否判定を行う。そして、制御部21は、当該時系列計測データが、いずれかの運転動作に対応するドライバ動作データDtmpと類似又は略一致する場合に、腕動作データDaの送信元である腕装着型端末1の装着者がドライバであると推定する。この場合、制御部21は、ドライバ動作データDtmpと、腕装着型端末1から受信した加速度及び角速度の時系列計測データとを、直接比較する代わりに、それぞれ特徴となる所定次元の特徴量を公知のパターン認識技術を用いて抽出し、抽出した特徴量を比較することで、これらの類否判定を行ってもよい。
【0036】
また、好適には、制御部21は、ドライバ推定処理で用いた加速度及び角速度の時系列計測データを記憶部26に蓄積し、蓄積した当該時系列計測データをドライバ動作データDtmpの代わりにドライバ推定処理に用いるとよい。この場合、制御部21は、ドライバ推定処理に基づき腕装着型端末1の装着者をドライバであると推定した場合、当該ドライバ推定処理で用いた加速度及び角速度の時系列計測データを記憶部26に記憶して蓄積する。そして、制御部21は、例えば所定回数以上加速度及び角速度の時系列計測データを蓄積した場合、蓄積したデータをドライバ動作データDtmpの代わりに用いることで、ドライバの推定を行う。この場合、制御部21は、運転動作ごとに、蓄積したデータが存在するか否かの判定及び蓄積回数の判定を行い、ドライバ動作データDtmpの代わりに用いるか否か判定するとよい。
【0037】
好適には、制御部21は、蓄積したデータをドライバ動作データDtmpの代わりに用いる場合、運転動作ごとに蓄積したデータを対象に、公知の学習を実行することで、運転動作ごとの加速度及び角速度の時系列変化のモデル化等を行うとよい。この場合、腕動作データDaの受信後、制御部21は、モデル化した運転動作ごとの加速度及び角速度の時系列変化と、腕動作データDaに含まれる時系列計測データとの類否判定を行うことで、腕装着型端末1の装着者がドライバであるか否か判定する。
【0038】
ここで、加速度及び角速度の時系列計測データを蓄積して活用することの効果について補足説明する。一般に、運転動作に基づく腕の挙動は、同一の運転動作であっても、運転する車両の種類(普通乗用車、大型車、バスなど)によって異なり、また、ドライバごとに個人差がある。一方、ナビゲーション装置2と車両の組み合わせ及びナビゲーション装置2とドライバの組み合わせは、概ね固定又は限定されていることが多い。以上を勘案し、制御部21は、加速度及び角速度の時系列計測データを蓄積し、ドライバ推定用のサンプル(テンプレート)として活用する。これにより、ナビゲーション装置2は、車両の種類及びドライバの運転動作の個性に応じて、ドライバ推定処理を、的確かつ比較的短時間で実行することができる。
【0039】
[処理フロー]
図2は、本実施例に係るドライバ推定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0040】
まず、ナビゲーション装置2は、ナビゲーション装置2が搭載されている車両のエンジンスイッチがオンになったことを検知したか否か判定する(ステップS101)。例えば、ナビゲーション装置2は、車両から電源が供給された場合、又は、車両の制御部(ECU:Electronic Control Unit)からエンジンスイッチがオンになった旨の情報をCAN(Controller Area Network)等により受信した場合、車両のエンジンスイッチがオンになったと判断する。
【0041】
そして、エンジンスイッチがオンになったことを検知した場合(ステップS101;Yes)、ナビゲーション装置2は、腕動作データDaの要求信号を腕装着型端末1へ送信する(ステップS102)。この場合、ナビゲーション装置2は、上述の要求信号を、ブロードキャストにより不特定送信してもよく、既に通信を確立した腕装着型端末1が存在する場合に当該腕装着型端末1に対して送信してもよい。
【0042】
腕装着型端末1は、腕動作データDaの要求信号をナビゲーション装置2から受信した場合、加速度センサ13及びジャイロセンサ14による腕動作の計測を行う(ステップS103)。そして、腕装着型端末1は、加速度センサ13及びジャイロセンサ14の時系列計測データと、腕装着型端末1の端末IDとを含む腕動作データDaを、ナビゲーション装置2へ送信する(ステップS104)。そして、ナビゲーション装置2は、腕動作データDaを受信する(ステップS105)。
【0043】
次に、ナビゲーション装置2は、受信した腕動作データDaに含まれる加速度及び角速度の時系列計測データに基づき、腕動作データDaの送信元である腕装着型端末1の装着者がドライバであると推定できるか否か判定する(ステップS106)。具体的には、ナビゲーション装置2は、運転動作ごとのドライバ動作データDtmpと、加速度及び角速度の時系列計測データとの類否判定を行うことで、いずれかの運転動作がなされたか否か判定する。この場合、ナビゲーション装置2は、以前のドライバ推定処理でドライバであると推定した際に記憶部26に記憶した加速度及び角速度の時系列計測データが蓄積されている場合には、蓄積されたデータに基づき、いずれかの運転動作がなされたか否か判定してもよい。
【0044】
そして、ナビゲーション装置2は、腕動作データDaの送信元である腕装着型端末1の装着者がドライバであると推定できた場合(ステップS106;Yes)、腕動作データDaの送信元となる腕装着型端末1の装着者はドライバであるとみなし、腕動作データDaに含まれる端末IDを記憶部26に記憶する(ステップS107)。一方、ナビゲーション装置2は、腕動作データDaの送信元である腕装着型端末1の装着者がドライバであると推定できない場合(ステップS106;No)、再びステップS102へ処理を戻し、腕動作データDaを受信し、腕動作データDaの送信元がドライバの装着端末であるか否かの判定を行う。なお、ナビゲーション装置2は、所定回数以上ステップS106で腕装着型端末1の装着者がドライバであると推定できない場合等には、腕装着型端末1の装着者は運転者でないと判断し、ステップS107を実行することなくフローチャートの処理を終了してもよい。
【0045】
なお、
図2のフローチャートでは、腕装着型端末1は、ステップS102の腕動作データDaの送信要求がある度に、ステップS103で腕動作データDaをナビゲーション装置2に送信した。これに代えて、腕装着型端末1は、ステップS102の腕動作データDaの送信要求が一度あった後には、腕動作データDaが不要であるとナビゲーション装置2から通知を受けるまで、腕動作データDaを繰り返し生成及び送信してもよい。
【0046】
[腕装着型端末が複数存在する場合]
次に、腕装着型端末1が車内に複数存在する場合(即ち複数の搭乗者が腕装着型端末1を装着していた場合)について補足説明する。
図3は、複数の腕装着型端末1(1A、1B、…)がナビゲーション装置2と共に同一の車両内に存在する場合のドライバ推定システムの概要図を示す。
【0047】
図3の場合、腕装着型端末1A及び腕装着型端末1Bは、腕動作データDaの要求信号をナビゲーション装置2から受信した場合に、端末固有の端末IDを含む腕動作データDaをナビゲーション装置2へ送信する。そして、ナビゲーション装置2は、腕装着型端末1Aから受信した腕動作データDaに基づき、腕装着型端末1Aの装着者がドライバであるか否かを判定すると共に、腕装着型端末1Bから受信した腕動作データDaに基づき、腕装着型端末1Bの装着者がドライバであるか否かを判定する。そして、ナビゲーション装置2は、腕装着型端末1A、1Bのいずれかの装着者がドライバであると判断した場合、ドライバと判断した装着者に対応する腕装着型端末1の端末IDを記憶部26に記憶する。
【0048】
このように、ナビゲーション装置2は、複数の腕装着型端末1が車内に存在する場合であっても、各腕装着型端末1の腕動作データDaに基づき、各腕装着型端末1の装着者がドライバであるか否かを判定する。これにより、ナビゲーション装置2は、複数の腕装着型端末1が車内に存在する場合であっても、的確にドライバを推定することができる。
【0049】
以上説明したように、本実施例に係るナビゲーション装置2の制御部21は、通信部27により、車両の搭乗者が装着する腕装着型端末1から、搭乗者の腕の動きを示す加速度及び角速度の時系列計測データを含む腕動作データDaを受信する。そして、ナビゲーション装置2の制御部21は、通信部27が受信した搭乗者の腕動作データDaに基づいて、当該搭乗者が車両のドライバであるかどうかを推定する。一般に、車両のドライバと運転をしない乗員とでは、運転動作の有無に起因して腕の動きに明確な差異が生じる。よって、ナビゲーション装置2は、この態様により、腕装着型端末1を装着する搭乗者がドライバであるか否かを好適に推定することができる。
【0050】
[変形例]
以下、上述の実施例に好適な変形例について説明する。以下に示す変形例は、任意に組み合わせて上述の実施例に適用してもよい。
【0051】
(変形例1)
ナビゲーション装置2は、運転動作が行われたときの車両の走行状態をさらに勘案し、ドライバ推定処理を実行してもよい。
【0052】
図4は、運転動作と車両の走行状態との関係を示すテーブルである。
図4のテーブルでは、運転動作ごとに、当該運転動作を行う場合に想定される車両の走行状態が関連付けられている。例えば、ハンドルを回転させる動作の場合には、想定される走行状態として、車両の右左折及び車線変更が関連付けられており、シフトレバーを操作する動作の場合には、想定される走行状態として、車両の前進及び後退動作が関連付けられており、ウィンカーを操作する動作には、想定される車両の走行状態として、車両の右左折及び車線変更が関連付けられている。記憶部26は、
図4に示すような運転動作と車両の走行状態との関係を示すテーブルを予め記憶しておく。
【0053】
次に、
図4のテーブルの活用方法について説明する。ナビゲーション装置2の制御部21は、実施例と同様に腕動作データDaに含まれる加速度及び角速度の時系列計測データに基づきドライバ特有のいずれかの運転動作を検知した場合、さらに加速度及び角速度計測時での車両の走行状態を認識する。次に、制御部21は、
図4のテーブルを参照し、検知した運転動作と認識した車両の走行状態との組み合わせが
図4に示すテーブルに記録されている場合に、腕装着型端末1の装着者がドライバであると推定する。言い換えると、制御部21は、加速度及び角速度の時系列計測データに基づきドライバ特有のいずれかの運転動作を検出した場合であっても、認識した車両の走行状態が検出した運転動作と
図4のテーブルにおいて関連付けられていない場合には、運転動作を誤検出したとみなす。
【0054】
ここで、
図4のテーブルを参照するための走行状態の認識方法の具体例について説明する。
【0055】
例えば、制御部21は、車両の進行方向の変更に応じた信号を出力するジャイロセンサ、車両の前後進を検知するための車速センサまたは加速度センサ、車線変更等を検知するためのカメラ等を含む測位部22の出力に基づき、車両の右左折、前後進、車線変更等の走行状態を認識する。このとき、制御部21は、運転動作を検知した時点と、当該運転動作が実際に行われた時点とのタイムラグを勘案し、所定時間分の測位部22の出力を記憶部26等のバッファに記憶しておき、運転動作を検知した時に、所定時間前の測位部22の出力に基づき、運転動作が行われたときの車両の走行状態を認識してもよい。
【0056】
他の例では、制御部21は、車両の制御部(ECU)からハンドルの操舵角の情報、シフトレバーの位置情報、ウィンカー位置の情報等を通信部27により取得することで、車両の走行状態を推定してもよい。
【0057】
なお、ドライバ推定処理に用いる運転動作と当該運転動作時の車両の走行状態との組み合わせは、
図4に示す組み合わせに限定されない。例えば、車両のエンジンがオフのときでもナビゲーション装置2が腕装着型端末1から腕動作データDaを受信してドライバ推定処理が可能な場合、ナビゲーション装置2は、車両の停止状態でエンジン始動操作を検知した場合に、腕装着型端末1の装着者がドライバであると推定してもよい。この場合、ナビゲーション装置2は、キーを挿入する動作及びエンジンスタートスイッチをひねる動作を、受信した腕動作データDaに基づき検知し、かつ、これらの動作を検知したときに車両が停止していたと測位部22の出力により判断した場合に、腕装着型端末1の装着者がドライバであると推定する。同様に、ナビゲーション装置2は、腕装着型端末1の装着者の車両への搭乗動作を検知した場合に、腕装着型端末1の装着者がドライバであると推定してもよい。この場合、ナビゲーション装置2は、ドアを開ける動作、シートに座る動作及びシートベルトを装着する動作を、受信した腕動作データDaに基づき検知した場合に、腕装着型端末1の装着者がドライバであると推定する。
【0058】
(変形例2)
ナビゲーション装置2は、腕装着型端末1がジャイロセンサ14を有していない場合、加速度センサ13の出力のみに基づき、ドライバ推定処理を実行してもよい。この場合、腕装着型端末1は、加速度センサ13の時系列計測データを腕動作データDaとしてナビゲーション装置2へ送信し、ナビゲーション装置2は、予め計測された運転動作ごとの加速度に関するドライバ動作データDtmp等と、受信した加速度センサ13の時系列計測データとに基づき、ドライバ推定処理を行う。
【0059】
(変形例3)
ナビゲーション装置2は、ドライバ推定処理を、ドライバを認証できた後であっても、ドライバが交代した可能性があると判断される所定の条件が満たされた場合に、再度実行してもよい。
【0060】
例えば、ナビゲーション装置2は、車両のドアの開閉を検知した場合、ドライバが交代した可能性があると判断する。この場合、ナビゲーション装置2は、例えば、CAN等のプロトコルにより車両の制御部(ECU)からドアの開閉に関する信号を受信することにより、車両のドアの開閉を検知する。そして、車両のドアの開閉を検知した場合、ナビゲーション装置2は、腕動作データDaの要求信号を腕装着型端末1に送信することで腕動作データDaを受信する。そして、ナビゲーション装置2は、
図2のステップS106において、ステップS107で以前に記録した端末IDと異なる端末IDの腕装着型端末1の装着者がドライバであると判断した場合、ドライバが装着する腕装着型端末1の端末IDの記録を書き換える。なお、ナビゲーション装置2は、ステップS106において、ステップS107で以前に記録した端末IDの腕装着型端末1の装着者がドライバであると推定できなかった場合、ステップS107で以前に記録した端末IDを消去してもよい。
【0061】
他の例では、ナビゲーション装置2は、地図データに登録されている駐車場(高速道路のサービスエリアやパーキングエリアも含む)に停車した後に発進したことを検知した場合、又は、駐車場以外の場所に所定時間停車した後に発進したことを検知した場合に、ドライバが交代した可能性があると判断し、ドライバ推定処理を再度実行してもよい。
【0062】
このように、本変形例によれば、ナビゲーション装置2は、エンジンスイッチがオンになった後、再びエンジンスイッチがオフになるまでの間にドライバが入れ替わった場合であっても、入れ替え後のドライバを随時認識することができる。なお、制御部21は、本発明における「ドア開閉検出部」の一例である。
【0063】
(変形例4)
ナビゲーション装置2は、車両の制御部の制御下にある図示しない通信部(「車両通信部」とも呼ぶ。)を介して腕動作データDaの受信等を行ってもよい。この場合、腕装着型端末1と車両通信部、及びナビゲーション装置2と車両通信部とは、それぞれ通信を確立し、車両通信部は、ナビゲーション装置2から受信した腕動作データDaの送信要求を腕装着型端末1に転送したり、腕装着型端末1から受信した腕動作データDaをナビゲーション装置2に転送したりする。
【0064】
(変形例5)
図3の例では、腕装着型端末1は、ナビゲーション装置2からの腕動作データDaの送信要求に基づき、ステップS104で腕動作データDaを送信した。これに代えて、腕装着型端末1は、車両の制御部との通信に基づき、又は、図示しないセンサの出力等に基づき、装着者の車両への乗車を認識した場合に、腕動作データDaを生成し、腕動作データDaをナビゲーション装置2へ送信してもよい。
【0065】
(変形例6)
車両の制御部(ECU)は、本実施例でナビゲーション装置2が実行したドライバ推定処理を、ナビゲーション装置2に代えて実行してもよい。
【0066】
この場合、車両の制御部は、例えば、変形例4で説明した車両通信部により腕動作データDa等の授受を腕装着型端末1と行うと共に、ドライバ推定処理に必要なドライバ動作データDtmp等を図示しない記憶部に記憶する。そして、車両の制御部は、
図2のステップS101~S102及びステップS105~S107の処理を実行する。この場合、車両通信部は、本発明における「受信部」の一例であり、車両の制御部は、本発明における「推定部」及びプログラムを実行する「コンピュータ」の一例である。
【0067】
(変形例7)
ドライバ推定システムは、腕装着型端末1のみから構成され、ナビゲーション装置2の処理を腕装着型端末1が実行してもよい。
【0068】
図5は、実施例のナビゲーション装置2の処理を腕装着型端末1が実行する場合のドライバ推定処理の手順を示すフローチャートの一例である。
【0069】
まず、腕装着型端末1は、装着者の乗車を検知したか否か判定する(ステップS201)。例えば、腕装着型端末1は、エンジンスイッチがオンになった旨やドアの開閉が行われた旨等の所定の情報を車両の制御部から受信した場合、又は所定のユーザ入力を検知した場合等に、装着者が乗車したと判断する。そして、腕装着型端末1は、装着者の乗車を検知した場合(ステップS201;Yes)、加速度センサ13及びジャイロセンサ14により腕動作の計測を行う(ステップS202)。そして、腕装着型端末1は、
図3のステップS106と同様に、記憶部15に記憶したドライバ動作データDtmp等を参照し、装着者がドライバと推定できるか否か判定する(ステップS203)。そして、腕装着型端末1は、装着者がドライバと推定できた場合(ステップS203;Yes)、装着者がドライバであることを前提としたモードへ移行する(ステップS204)。この場合、腕装着型端末1は、例えば、運転を支援するための案内や警告などを出力したりする。
【0070】
(変形例8)
腕装着型端末1は、ナビゲーション装置2に代えて自端末の装着者がドライバであるか否か判定し、当該装着者がドライバであると判断した場合に、自端末の端末ID等をナビゲーション装置2へ送信してもよい。
【0071】
この場合、腕装着型端末1は、変形例7と同様に、装着者がドライバであるか否か推定し、装着者がドライバであると推定した場合に、その推定結果の情報を端末IDと共にナビゲーション装置2へ送信する。ナビゲーション装置2は、腕装着型端末1から上述の推定結果の情報を受信した場合、当該情報を参照して当該腕装着型端末1の装着者がドライバであるとみなし、当該腕装着型端末1の端末IDを記憶部26に記憶する。
【0072】
この場合、好適には、腕装着型端末1は、推定結果の情報と共に、ドライバ推定処理に用いた加速度及び角速度の時系列計測データをナビゲーション装置2に送信し、ナビゲーション装置2に適宜ドライバ推定処理を実行させてもよい。この場合、例えば、ナビゲーション装置2は、受信したドライバの推定結果によってもドライバを特定できない場合に、腕装着型端末1から受信した加速度及び角速度の時系列計測データに基づき、実施例と同様にドライバ推定処理を行う。そして、ナビゲーション装置2は、腕装着型端末1の装着者がドライバであると推定できた場合に、当該腕装着型端末1の端末IDを記憶部26に記憶する。上述の「ドライバを特定できない場合」とは、例えば、複数の腕装着型端末1から受信したドライバの推定結果が各腕装着型端末1の装着者がドライバであることを示していることにより、ドライバを1人に特定できない場合などが該当する。この場合、ナビゲーション装置2は、各腕装着型端末1から受信した加速度及び角速度の時系列計測データのうちのいずれが、ドライバ動作データDtmp又は記憶部26に蓄積したドライバ認証時の計測データと最も類似しているかの類否判定を行うことで、複数のドライバの候補から1人のドライバを特定する。
【0073】
なお、変形例7、8では、腕装着型端末1は、本発明における「ドライバ推定装置」の一例であり、制御部11は、本発明における「検知部」及び「推定部」の一例である。
【0074】
(変形例9)
ナビゲーション装置2は、経路案内以外の用途の車載機(例えばドライブレコーダ等)であってもよい。