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特開2024-163295心臓弁密封デバイス及びそのための送達デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163295
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】心臓弁密封デバイス及びそのための送達デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024158268
(22)【出願日】2024-09-12
(62)【分割の表示】P 2023101056の分割
【原出願日】2019-04-18
(31)【優先権主張番号】16/385,701
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/659,253
(32)【優先日】2018-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500218127
【氏名又は名称】エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ローレン・アール・フレシャウフ
(72)【発明者】
【氏名】セルジオ・デルガド
(57)【要約】
【課題】本発明は、天然心臓弁を密封し、そこを通る逆流を予防又は低減するのに役立つための人工デバイス及び関連方法、ならびにデバイスの埋め込み後に天然弁の弁尖の可動性及び有効弁口面積を維持しながら、天然心臓弁を密封するのに役立つためのデバイスに関する。
【解決手段】患者の天然心臓弁を修復するための弁修復装置は、クラスプの対を含み、各クラスプは、天然弁尖に取り付けられるように構成されている。クラスプの対の端部は、心臓周期の拡張期中に天然弁尖が開放するとき、互いから離れて部分的開放位置まで移動することができ、クラスプの対の端部は、心臓周期の収縮期中に天然弁尖が閉鎖するとき、互いに向かって移動することができる。
【選択図】図22
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の天然心臓弁を修復するための弁修復デバイスであって、
基部と、
前記基部によって保持されている一組のクラスプであって、前記クラスプそれぞれが天然弁尖に取り付けられている、一組の前記クラスプと、
を備えている前記弁修復デバイスにおいて、
一組の前記クラスプの開端部が、心臓周期の心室拡張期の際に前記天然弁尖が開いた場合に、互いから離隔するように移動するように構成されており、
一組の前記クラスプの前記開端部が、前記心臓周期の心室収縮期の際に前記天然弁尖が閉じた場合に、互いに向かって移動するように構成されていることを特徴とする弁修復デバイス。
【請求項2】
前記クラスプの閉端部が、前記基部に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の弁修復デバイス。
【請求項3】
前記基部が、前記心室収縮期の際に逆流を遮断するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の弁修復デバイス。
【請求項4】
一組の前記クラスプが、前記心室拡張期の際に、前記基部に対して枢動するように、且つ、互いから離隔するように前記開端部を移動させるように構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の弁修復デバイス。
【請求項5】
一組の前記クラスプが、前記心室拡張期の際に、互いから離隔するように前記開端部を屈曲及び移動させるように構成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の弁修復デバイス。
【請求項6】
前記基部が、コンパクトな位置と拡張位置との間で移動可能とされることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の弁修復デバイス。
【請求項7】
前記基部が、前記基部が前記コンパクトな位置から前記拡張位置に移動した場合に直線になる拡張可能なアームを含んでいることを特徴とする請求項6に記載の弁修復デバイス。
【請求項8】
前記クラスプの前記開端部が、前記クラスプの前記開端部が互いから離隔するように移動した場合に、互いから離隔するように傾斜していることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の弁修復デバイス。
【請求項9】
前記基部が、ディスクを備えていることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の弁修復デバイス。
【請求項10】
作動シャフトと弁修復デバイスとを備えている弁修復システムであって、
前記弁修復デバイスが、
前記作動シャフトに接続されている基部と、
前記基部によって保持されている一組のクラスプであって、前記クラスプそれぞれが天然弁尖に取り付けられている、一組の前記クラスプと、
を備えており、
一組の前記クラスプの開端部が、心臓周期の心室拡張期の際に前記天然弁尖が開いた場合に、互いから離隔するように移動するように構成されており、
一組の前記クラスプの前記開端部が、前記心臓周期の心室収縮期の際に前記天然弁尖が閉じた場合に、互いに向かって移動するように構成されていることを特徴とする弁修復システム。
【請求項11】
前記クラスプの閉端部が、前記基部に取り付けられていることを特徴とする請求項10に記載の弁修復システム。
【請求項12】
前記基部が、前記心室収縮期の際に逆流を遮断するように構成されていることを特徴とする請求項10又は11に記載の弁修復システム。
【請求項13】
一組の前記クラスプが、前記心室拡張期の際に、前記基部に対して枢動するように、且つ、互いから離隔するように前記開端部を移動させるように構成されていることを特徴とする請求項10~12のいずれか一項に記載の弁修復システム。
【請求項14】
一組の前記クラスプが、前記心室拡張期の際に、互いから離隔するように前記開端部を屈曲及び移動させるように構成されていることを特徴とする請求項10~13のいずれか一項に記載の弁修復システム。
【請求項15】
前記基部が、コンパクトな位置と拡張位置との間で移動可能とされることを特徴とする請求項10~14のいずれか一項に記載の弁修復システム。
【請求項16】
前記基部が、前記基部が前記コンパクトな位置から前記拡張位置に移動した場合に直線になる拡張可能なアームを含んでいることを特徴とする請求項15に記載の弁修復システム。
【請求項17】
前記クラスプの前記開端部が、前記クラスプの前記開端部が互いから離隔するように移動した場合に、互いから離隔するように傾斜していることを特徴とする請求項10~16のいずれか一項に記載の弁修復システム。
【請求項18】
前記基部が、ディスクを備えていることを特徴とする請求項10~17のいずれか一項に記載の弁修復システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は概して、天然心臓弁を密封し、そこを通る逆流を予防又は低減するのに役立つための人工デバイス及び関連方法、ならびにデバイスの埋め込み後に天然弁の弁尖の可動性及び有効弁口面積を維持しながら、天然心臓弁を密封するのに役立つためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
天然心臓弁(すなわち、大動脈弁、肺動脈弁、三尖弁、及び僧帽弁)は、心臓血管系を通した適切な血液供給の前方への流れを確実にする際に重要な機能を果たす。これらの心臓弁は、先天性奇形、炎症プロセス、感染状態、又は疾患によって損傷を受けるので、効果が低下する場合がある。そのような弁の損傷は、重篤な心臓血管系の障害又は死亡を引き起こす可能性がある。長年、そのような損傷を受けた弁の最終的治療は、心臓切開手術中の弁の外科的修復又は置換であった。しかしながら、心臓切開手術は、侵襲性が高く、多くの合併症を起こす傾向がある。従って、欠陥のある心臓弁を有する高齢及び虚弱患者は未治療のままである場合が多かった。さらに最近では、心臓切開手術よりも侵襲性がはるかに低い方法で人工デバイスを導入し埋め込むための経血管技術が開発されてきた。天然僧帽弁及び大動脈弁にアクセスするために使用される1つの特定の経血管的技術は、経中隔技術である。経中隔技術は、カテーテルを、右大腿静脈内に通し、下大静脈を上行し、右心房内に挿入することを含む。次いで、中隔が穿刺され、カテーテルが左心房内に送られる。
【0003】
健康な心臓は、心尖下部に向かって先細になる略円錐形状を有する。心臓は4つの心腔があり、左心房、右心房、左心室、及び右心室を含む。心臓の左側及び右側は、中隔と一般的に呼ばれる壁によって分離される。ヒト心臓の天然僧帽弁は、左心房を左心室に接続する。僧帽弁は、他の天然心臓弁とは非常に異なる解剖学的構造を有する。僧帽弁は、僧帽弁口を取り囲む天然弁組織の環状部分である輪部分と、輪から左心室内に向かって下向きに延在する弁葉又は弁尖の対とを含む。僧帽弁輪は、「D」型、楕円形、又はそうでなければ長軸及び短軸を有する完全な円ではない断面形状を形成することができる。前尖は、後尖よりも大きく、それらが一緒に閉鎖されたときに弁尖の隣接する両側の間で略「C」型の境界を形成することができる。
【0004】
適切に動作しているとき、前尖及び後尖は、一方向弁として一緒に機能して、血液が左心房から左心室にのみ流れることを可能にする。左心房は、肺静脈から酸素を含む血液を受容する。左心房の筋肉が収縮し、左心室が拡張するとき(「心室拡張期」又は「拡張期」とも呼ばれる)、左心房に集められた酸素を含む血液は、左心室内に向かって流れる。左心房の筋肉が弛緩し、左心室の筋肉が収縮するとき(「心室収縮期」又は「収縮期」とも呼ばれる)、左心室における血圧の増加は、2つの弁尖の両側を引き付けて一緒にすることで、一方向僧帽弁を閉鎖し、これにより血液は、左心房に逆流することができず、代わりに大動脈弁を通して左心室から排出される。2つの弁尖が圧力下で逸脱し、僧帽弁輪を通って左心房に向かって折り返されることを防止するために、腱索と呼ばれる複数の線維索が弁尖を左心室の乳頭筋に連結する。
【0005】
心収縮の収縮期中に、天然僧帽弁が適切に閉鎖することができず、血液が左心室から左心房内に向かって流れるとき、僧帽弁逆流が生じる。僧帽弁逆流は、最も一般的な形態の心臓弁膜症である。僧帽弁逆流は、弁尖逸脱、機能不全の乳頭筋、及び/又は左心室の拡張に起因する僧帽弁輪の伸張などの異なる原因を有する。弁尖の中央部分における僧帽弁逆流は、中央ジェット僧帽弁逆流と呼ばれ、弁尖の1つの交連により近い僧帽弁逆流(すなわち、弁尖が接触する位置)は、偏心ジェット僧帽弁逆流と呼ばれる。中央ジェット逆流は、弁尖の縁部が真ん中で接触せず、ひいては弁が閉鎖せず、逆流が存在するときに生じる。
【0006】
患者における僧帽弁逆流の治療のための一部の従来技術は、天然僧帽弁尖の縁部を互いに直接外科的に縫合することを含む。カテーテル送達されたクリップは、外科的縫合方法と同様に、弁尖の端部において弁尖の両側を一緒にクリップで留めようとする試みのために使用されてきた。しかしながら、このクリップは、約2mm以上重なり合う弁尖の中央をクリップで留めるためにのみ使用され得るため、欠点がある。代替として、僧帽弁の交連上で複数のクリップを使用する試みが行われてきたが、この場合、より多くの弁尖の重なり合いがあり得る。この技術は、より長い手術時間をもたらし、また両側で患者の弁尖を接合(join)し、血流を制限する。さらに、外科治療及びクリップ治療の両方は、患者の弁尖に対する応力を作り出すと考えられる。
【0007】
これらの技術にもかかわらず、僧帽弁の逆流のための改善されたデバイス及び方法が引き続き必要である。
【発明の概要】
【0008】
上記を考慮して、患者の天然心臓弁を修復するための弁修復装置は、クラスプの対を含み、各クラスプは、天然弁尖に取り付けられるように構成されている。クラスプの対の端部は、心臓周期の拡張期中に天然弁尖が開放するとき、互いから離れて部分的開放位置まで移動するように構成されており、かつクラスプの対の端部は、心臓周期の収縮期中に天然弁尖が閉鎖するとき、互いに向かって移動するように構成されている。
【0009】
例示的な実施形態のこれら及び他の態様は、様々な例示的な実施形態を一例として示す添付図面と併せて、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
[付記項1]
患者の天然心臓弁を修復するための弁修復装置であって、天然弁尖に取り付けられるようにそれぞれ構成されている一対のクラスプを備えている前記弁修復装置において、
一対の前記クラスプの端部が、心臓周期の拡張期の際に前記天然弁尖が開放する場合に、互いから離隔して部分的開放位置に至るまで移動するように構成されており、
一対の前記クラスプの端部が、前記心臓周期の収縮期の際に前記天然弁尖が閉鎖する場合に、互いに向かって移動するように構成されている、弁修復装置。
[付記項2]
前記クラスプが前記部分的開放位置に位置する場合に、前記クラスプの前記端部が、互いから離隔して傾斜している、付記項1に記載の弁修復装置。
[付記項3]
前記弁修復装置が、一対のパドルを備えており、
前記クラスプそれぞれが、前記パドルのうち一方のパドルに固定されている、付記項1又は2に記載の弁修復装置。
[付記項4]
パドルが、前記心臓周期の際に前記クラスプの前記端部を互いに向かうように又は互いから離隔するように移動させるために、前記心臓周期の際に互いに向かうように又は互いから離隔するように移動する、付記項1~3のいずれか一項に記載の弁修復装置。
[付記項5]
前記弁修復装置が、一対の前記クラスプに接続されている接合要素を備えており、
前記クラスプの移動によって、前記天然心臓弁が閉鎖している場合に前記天然弁尖が前記接合要素に対して接合され、前記天然心臓弁が開放している場合に前記天然弁尖が前記接合要素から分離される、付記項1~4のいずれか一項に記載の弁修復装置。
[付記項6]
前記弁修復装置が、一対の付勢部材を備えており、
前記付勢部材が、前記クラスプを互いに向かって付勢する、付記項1~5のいずれか一項に記載の弁修復装置。
[付記項7]
患者の天然弁を修復するための弁修復装置であって、
一対のパドルと、
一対のクラスプであって、一対の前記クラスプそれぞれが、内側クラスプ部材、外側クラスプ部材、及び端部を備えている、一対の前記クラスプと、
を備えている前記弁修復装置において、
前記クラスプそれぞれの前記内側クラスプ部材が、前記パドルのうち一方のパドルに接続されており、
前記クラスプそれぞれが、前記天然弁の弁尖に取り付けられるように構成されており、
前記パドルと取り付けられた前記クラスプとが、閉鎖位置と開放位置との間において移動可能とされ、
前記パドルが、部分的開放位置において前記天然弁の前記弁尖に埋め込まれるように構成されている、弁修復装置。
[付記項8]
前記パドルが、収縮期の際に前記弁尖の閉鎖によって前記クラスプに力が加えられた場合に、前記部分的開放位置に留まるように構成されている、付記項7に記載の弁修復装置。
[付記項9]
前記パドルが、拡張期の際に前記弁尖の開放によって前記クラスプに力が加えられた場合に、前記部分的開放位置に留まるように構成されている、付記項7又は8に記載の弁修復装置。
[付記項10]
前記パドルが、拡張期の際に前記弁尖の開放によって前記クラスプに力が加えられた場合に、前記部分的開放位置からさらに開放するように構成されている、付記項7に記載の弁修復装置。
[付記項11]
前記パドルが、拡張期の際に前記弁尖の開放によって前記クラスプに力が加えられた場合に、前記部分的開放位置からさらに開放するように構成されており、
前記パドルが、収縮期の際に前記弁尖の閉鎖によって前記クラスプに力が加えられた場合に、前記部分的開放位置に戻るように構成されている、付記項7に記載の弁修復装置。
[付記項12]
前記弁修復装置が、一対の前記パドルに接続されている接合要素を備えており、
前記パドル及びクラスプの移動によって、前記天然弁が閉鎖している場合に前記天然弁の前記弁尖が前記接合要素に対して接合され、前記天然弁が開放している場合に前記天然弁の前記弁尖が前記接合要素から分離される、付記項7、10、及び11のいずれか一項に記載の弁修復装置。
[付記項13]
前記弁修復装置が、一対の付勢部材を備えており、
前記付勢部材が、前記パドルを互いに向かうように付勢する、付記項7又は10~12のいずれか一項に記載の弁修復装置。
[付記項14]
患者の天然心臓弁を修復するための弁修復装置であって、一対の可撓性を有しているクラスプを備えている前記弁修復装置において、
前記クラスプそれぞれが、天然弁尖に取り付けられるように構成されており、
心臓周期の拡張期の際に前記天然弁尖が開放している場合に、一対の前記クラスプの端部が互いから離隔して部分的開放位置に至るまで移動するように、前記クラスプが屈曲するように構成されており、
前記心臓周期の収縮期の際に前記天然弁尖が閉鎖している場合に、一対の前記クラスプの端部が互いに向かって移動するように、前記クラスプが屈曲するように構成されている、弁修復装置。
[付記項15]
前記クラスプが前記部分的開放位置に位置している場合に、前記クラスプの前記端部が互いから離隔して傾斜している、付記項14に記載の弁修復装置。
[付記項16]
前記弁修復装置が、一対の前記クラスプに接続されている接合要素を備えており、
前記クラスプの移動によって、前記天然心臓弁が閉鎖している場合に前記天然弁尖が前記接合要素に対して接合され、前記天然心臓弁が開放している場合に前記天然弁尖が前記接合要素から分離される、付記項14又は15に記載の弁修復装置。
[付記項17]
前記弁修復装置が、一対の付勢部材を備えており、
前記付勢部材が、前記クラスプを互いに向かって付勢する、付記項14~16のいずれか一項に記載の弁修復装置。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の実施形態の様々な態様をさらに明確にするために、添付図面の様々な態様を参照することによって特定の実施形態のより具体的な説明がなされる。これらの図面は、本発明の典型的な実施形態のみを描写するので、本発明の範囲を制限するものとは見なされないことが理解される。さらに、図面は、幾つかの実施形態については正確な縮尺であり得るが、図面は、必ずしも全ての実施形態について正確な縮尺ではない。本発明の実施形態ならびに他の特徴及び利点は、添付図面の使用を通して追加的な特異性及び詳細を用いて記載及び説明される。
【0011】
図1】拡張期のヒト心臓の切り欠き図を示す。
図2】収縮期のヒト心臓の切り欠き図を示す。
図3】拡張期のヒト心臓の切り欠き図を示し、腱索は、僧帽弁及び三尖弁の弁尖を心室壁に付着させている状態で示される。
図4】僧帽弁の心房側から見たときに弁尖が閉鎖している健康な僧帽弁を示す。
図5】僧帽弁の心房側から見たときに弁尖間に目に見える間隙がある機能不全の僧帽弁を示す。
図6】後尖と前尖との間に幅広い間隙を有する僧帽弁を示す。
図7】三尖弁の心房側から見た三尖弁を示す。
図8】様々な展開段階における、埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態を示す。
図9】様々な展開段階における、埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態を示す。
図10】様々な展開段階における、埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態を示す。
図11】様々な展開段階における、埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態を示す。
図11A図11によって示されるデバイスに類似しているが、パドルは独立して制御可能である、埋め込み型人工デバイスの例示的実施形態を示す。
図12】様々な展開段階における、埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態を示す。
図13】様々な展開段階における、埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態を示す。
図14】様々な展開段階における、埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態を示す。
図15】天然僧帽弁内に送達され埋め込まれている、図8図14の埋め込み型人工デバイスを示す。
図16】天然僧帽弁内に送達され埋め込まれている、図8図14の埋め込み型人工デバイスを示す。
図17】天然僧帽弁内に送達され埋め込まれている、図8図14の埋め込み型人工デバイスを示す。
図18】天然僧帽弁内に送達され埋め込まれている、図8図14の埋め込み型人工デバイスを示す。
図19】天然僧帽弁内に送達され埋め込まれている、図8図14の埋め込み型人工デバイスを示す。
図20】天然僧帽弁内に送達され埋め込まれている、図8図14の埋め込み型人工デバイスを示す。
図21】埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態を示す。
図21A】埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態を示す。
図22】埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態を示す。
図23】埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態を示す。
図24】天然僧帽弁内に送達され埋め込まれている、埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態を示す。
図25】天然僧帽弁内に送達され埋め込まれている、埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態を示す。
図26】天然僧帽弁内に送達され埋め込まれている、埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態を示す。
図27】天然僧帽弁内に送達され埋め込まれている、埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態を示す。
図28】天然僧帽弁内に送達され埋め込まれている、埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態を示す。
図29】天然僧帽弁内に送達され埋め込まれている、埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態を示す。
図30】天然僧帽弁内に送達され埋め込まれている、埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態を示す。
図31】天然僧帽弁内に送達され埋め込まれている、埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態を示す。
図32】天然僧帽弁内に送達され埋め込まれている、埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態を示す。
図33】天然僧帽弁内に送達され埋め込まれている、埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態を示す。
図34】天然僧帽弁内に送達され埋め込まれている、埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態を示す。
図35】天然僧帽弁内に送達され埋め込まれている、埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態を示す。
図36】返し付きクラスプが閉鎖位置にある、部分的開放位置にある例示的な埋め込み型人工デバイスの側面図を示す。
図37】返し付きクラスプが開放位置にある、部分的開放位置にある例示的な埋め込み型人工デバイスの側面図を示す。
図38】返し付きクラスプが閉鎖位置にある、半開放位置にある例示的な埋め込み型人工デバイスの側面図を示す。
図39】閉鎖位置にある、弁尖上に埋め込まれた例示的な埋め込み型人工デバイスを示す。
図40A】開放位置にある、僧帽弁の弁尖に取り付けられた埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態を示す。
図40B】閉鎖位置にある図40Aの埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態を示す。
図41A】閉鎖位置にあるクラスプ、パドルフレーム、及び接合要素を有する埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態の側面図を示す。
図41B】断面41B-41Bに沿って取られた図41Aの例示的な実施形態の断面を示す。
図42A】開放位置にあるクラスプ、パドルフレーム、及び接合要素を有する埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態の側面図を示す。
図42B】断面42B-42Bに沿って取られた図42Aの例示的な実施形態の断面を示す。
図43A】閉鎖位置にあるクラスプ及びパドルフレームを有する埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態の側面図を示す。
図43B】断面43B-43Bに沿って取られた図43Aの例示的な実施形態の断面を示す。
図44A】開放位置にあるクラスプ及びパドルフレームを有する埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態の側面図を示す。
図44B図44Aの例示的な実施形態の断面を示す。
図45A】閉鎖位置にあるクラスプ及び接合要素を有する埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態の側面図を示す。
図45B】断面45B-45Bに沿って取られた図45Aの例示的な実施形態の断面を示す。
図46A】開放位置にあるクラスプ及び接合要素を有する埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態の側面図を示す。
図46B】断面46B-46Bに沿って取られた図46Aの例示的な実施形態の断面を示す。
図47A】閉鎖位置にあるクラスプ、接合要素、及びパドルフレームを有する僧帽弁修復装置の例示的な実施形態の各側面に沿った、僧帽弁尖の経路の概略図を示す。
図47B図47Aの例示的な実施形態の断面を示す。
図48A】クラスプ、接合要素、及びパドルフレームを有する僧帽弁修復装置の例示的な実施形態の各側面に沿った、僧帽弁尖の経路の概略図を示し、デバイスは開放位置にあり、弁尖は開放している。
図48B図48Aの例示的な実施形態の断面を示す。
図48C】クラスプ、接合要素、及びパドルフレームを有する僧帽弁修復装置の例示的な実施形態の各側面に沿った、僧帽弁尖の経路の概略図を示し、デバイスは開放位置にあり、弁尖は閉鎖している。
図48D図48Cの例示的な実施形態の断面を示す。
図49A】閉鎖位置にあるクラスプ及び接合要素を有する僧帽弁修復装置の例示的な実施形態の各側面に沿った、僧帽弁尖の経路の概略図を示す。
図49B図49Aの例示的な実施形態の断面を示す。
図50A】クラスプ及び接合要素を有する僧帽弁修復装置の例示的な実施形態の各側面に沿った、僧帽弁尖の経路の概略図を示し、デバイスは開放位置にあり、弁尖は開放している。
図50B図50Aの例示的な実施形態の断面を示す。
図50C】クラスプ及び接合要素を有する僧帽弁修復装置の例示的な実施形態の各側面に沿った、僧帽弁尖の経路の概略図を示し、デバイスは開放位置にあり、弁尖は閉鎖している。
図50D図50Cの例示的な実施形態の断面を示す。
図51A】閉鎖位置にあるクラスプ及びパドルフレームを有する僧帽弁修復装置の例示的な実施形態の各側面に沿った、僧帽弁尖の経路の概略図を示す。
図51B図51Aの例示的な実施形態の断面を示す。
図52A】クラスプ及びパドルフレームを有する僧帽弁修復装置の例示的な実施形態の各側面に沿った、僧帽弁尖の経路の概略図を示し、デバイスは開放位置にあり、弁尖は開放している。
図52B図52Aの例示的な実施形態の断面を示す。
図52C】クラスプ及びパドルフレームを有する僧帽弁修復装置の例示的な実施形態の各側面に沿った、僧帽弁尖の経路の概略図を示し、デバイスは開放位置にあり、弁尖は閉鎖している。
図52D図52Cの例示的な実施形態の断面を示す。
図53A】閉鎖位置にあるクラスプを有する僧帽弁修復装置の例示的な実施形態の各側面に沿った、僧帽弁尖の経路の概略図を示す。
図53B図53Aの例示的な実施形態の断面を示す。
図54A】クラスプを有する僧帽弁修復装置の例示的な実施形態の各側面に沿った、僧帽弁尖の経路の概略図を示し、デバイスは開放位置にあり、弁尖は開放している。
図54B図54Aの例示的な実施形態の断面を示す。
図54C】クラスプを有する僧帽弁修復装置の例示的な実施形態の各側面に沿った、僧帽弁尖の経路の概略図を示し、デバイスは開放位置にあり、弁尖は閉鎖している。
図54D図54Cの例示的な実施形態の断面を示す。
図55】閉鎖位置に返し付きクラスプ又は付勢(biasing)部材がない例示的な埋め込み型人工デバイスを示す。
図55A】閉鎖位置にあるクラスプ、カラー、及びキャップを有する例示的な埋め込み型人工デバイスを示す。
図56A】心臓の心室側から示される、僧帽弁の間隙に接合要素を有する、僧帽弁尖に取り付けられた弁修復装置の斜視図を示す。
図56B】心臓の心室側から示される、僧帽弁の間隙に接合要素を有する、僧帽弁尖に取り付けられた弁修復装置の斜視図を示す。
図57A】閉鎖位置にあるクラスプを有する埋め込み型弁修復装置の例示的な実施形態の概略図を示す。
図57B】断面57B-57Bに沿って取られた図57Aの概略図の断面を示す。
図58A】開放位置にあるクラスプを有する埋め込み型弁修復装置の例示的な実施形態の概略図を示す。
図58B】断面58B-58Bに沿って取られた図58Aの概略図の断面を示す。
図59A】開放位置にある可撓性クラスプを有する埋め込み型弁修復装置の例示的な実施形態の概略図を示す。
図59B】断面59B-59Bに沿って取られた図59Aの概略図の断面を示す。
図60A】クラスプ間の距離を拡張するための中心シャフトを有する埋め込み型弁修復装置の例示的な実施形態の概略図を示し、デバイスは拡張されておらず、閉鎖位置にあり、弁尖は閉鎖している。
図60B】断面60B-60Bに沿って取られた図60Bの概略図の断面を示す。
図61A】クラスプ間の距離を拡張するための中心シャフトを有する埋め込み型弁修復装置の例示的な実施形態の概略図を示し、デバイスは拡張されており、閉鎖位置にあり、弁尖は閉鎖している。
図61B】断面61B-61Bに沿って取られた図61Aの概略図の断面を示す。
図61C】クラスプ間の距離を拡張するための中心シャフトを有する埋め込み型弁修復装置の例示的な実施形態の概略図を示し、デバイスは拡張されており、開放位置にあり、弁尖は開放している。
図61D】断面61D-61Dに沿って取られた図61Cの概略図の断面を示す。
図62】開放位置にある弁修復装置を示す。
図63】閉鎖位置にある図62の弁修復装置を示す。
図64】閉鎖しているときの天然弁に埋め込まれた例示的な実施形態による弁修復装置を示す。
図65】天然弁が開放しているときの図64の弁修復装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明は、本発明の特定の実施形態を図示する添付図面を参照する。異なる構造及び動作を有する他の実施形態は、本発明の範囲から逸脱しない。
【0013】
本発明の例示的な実施形態は、欠陥のある心臓弁を修復するためのデバイス及び方法に関する。天然弁修復装置及び送達のためのシステムの様々な実施形態が本明細書に開示され、特に除外されない限り、これらの選択肢の任意の組み合わせがなされ得ることに留意されたい。言い換えれば、開示されたデバイス及びシステムの個々の構成要素は、相互に排他的又はそうでなければ物理的に不可能な場合を除き、組み合わされ得る。
【0014】
本明細書に記載されるように、1つ以上の構成要素が接続、接合、固定(affixed)、連結、取付、又は別の方法で相互接続されているものとして記載される場合、そのような相互接続は、構成要素間の直接的なものであってもよく、又は1つ以上の中間構成要素の使用によるものなど間接的であってもよい。また、本明細書に記載されるように、「部材」、「構成要素」、又は「部分」への言及は、単一の構造部材、構成要素、又は要素に限定されるものではなく、構成要素、部材、又は要素の集合を含むことができる。また、本明細書に記載されるように、「実質的に」及び「約」という用語は、所与の値又は状態に少なくとも近い(好ましくは、10%以内、より好ましくは1%以内、最も好ましくは0.1%以内)(又は所与の値又は状態を含む)ものとして定義される。
【0015】
図1及び図2は、拡張期及び収縮期それぞれのヒト心臓Hの切り欠き図である。右心室RV及び左心室LVは、それぞれ三尖弁TV及び僧帽弁MV、すなわち房室弁によって、右心房RA及び左心房LAから分離されている。さらに、大動脈弁AVは、左心室LVを上行大動脈AAから分離し、肺動脈弁PVは、右心室を肺動脈PAから分離する。これらの弁の各々は、流れの中で一緒になるか又は「接合(coapt)」して、一方向の流体閉塞表面を形成する、個々の弁口にわたって内向きに延在する柔軟な弁(例えば、図4及び図5に示される弁尖20,22)を有する。本出願の天然弁修復システムは、主に僧帽弁MVに関して記載されている。従って、左心房LA及び左心室LVの解剖学的構造がより詳細に説明される。本明細書に記載されるデバイスは、他の天然弁の修復でも使用され得、例えば、デバイスは、三尖弁TV、大動脈弁AV、及び肺動脈弁PVの修復で使用され得ることを理解されたい。
【0016】
左心房LAは、肺から酸素を含む血液を受容する。図1に見られる拡張期(diastolic phase)又は拡張期(diastole)中、(収縮期中に)左心房LAにすでに集まった血液は、左心室LVの拡張によって僧帽弁MVを通して左心室LVに移動する。図2に見られる収縮期(systolic phase)又は収縮期(systole)中、左心室LVは収縮して、大動脈弁AV及び上行大動脈AAを通して体内に血液を送り込む。収縮期中、僧帽弁MVの弁尖は閉鎖して、血液が左心室LVから左心房LA内に戻ることを防止し、血液は、肺静脈から左心房内に集められる。1つの例示的な実施形態では、本出願によって記載されるデバイスは、欠陥のある僧帽弁MVの機能を修復するために使用される。すなわち、デバイスは、僧帽弁の弁尖を閉鎖させて、血液が左心室LVから左心房LA内に戻ることを防止するのに役立つように構成されている。本出願に記載されるデバイスは、天然弁尖を容易に把持及び固定(secure)し、かつそれらが逆流弁口において一緒に接合するのを補助するように設計されている。
【0017】
ここで図1図7を参照すると、僧帽弁MVは、前尖20及び後尖22の2つの弁尖を含む。僧帽弁MVはまた、弁尖20、22を取り囲む可変的に高密度の線維性組織輪である輪24を含む。図3を参照すると、僧帽弁MVは、腱索10によって左心室LVの壁に係留されている。腱索10は、乳頭筋12(すなわち、腱索の基部及び左心室の壁内に位置する筋肉)を僧帽弁MVの弁尖20、22に接続する索状の腱である。乳頭筋12は、僧帽弁MVの移動を制限し、僧帽弁が戻されることを防止する働きをする。左心房LA及び左心室LVの圧力変化に応答して、僧帽弁MVが開閉する。乳頭筋は、僧帽弁MVを開閉しない。むしろ、乳頭筋は、全身を通して血液を循環させるのに必要な高圧に対して僧帽弁MVを支える。乳頭筋及び腱索は一緒に弁下組織として既知であり、これは、僧帽弁が閉鎖したときに僧帽弁MVが左心房LA内に逸脱することを防ぐように機能する。
【0018】
様々な疾患プロセスは、心臓Hの天然弁の適切な機能のうち1つ以上の機能を損なう可能性がある。これらの疾患プロセスには、変性プロセス(例えば、バーロー病、弾性線維欠損症)、炎症プロセス(例えば、リウマチ性心疾患)、及び感染プロセス(例えば、心内膜炎)が含まれる。さらに、以前の心臓発作(すなわち、冠動脈疾患に続発する心筋梗塞)又は他の心疾患(例えば、心筋症)からの左心室LV又は右心室RVの損傷は、天然弁の形状を変形させる可能性があり、これは天然弁の機能不全を引き起こす可能性がある。しかしながら、僧帽弁MVの手術などの弁手術を受けている患者の大部分は、天然弁(例えば、僧帽弁MV)の弁尖(例えば、弁尖20、22)の機能不全を引き起こす変性疾患を患い、これが逸脱及び逆流をもたらす。
【0019】
一般的に、天然弁は、(1)弁狭窄、及び(2)弁逆流の2つの異なる方法で機能不全であり得る。弁狭窄は、天然弁が完全に開放せず、それにより血流の障害を引き起こす場合に生じる。典型的には、弁狭窄は、弁の弁尖上の石灰化物質の蓄積に起因し、これは弁尖を肥厚させ、弁が完全に開放して前方への血流を可能にする能力を損なう。
【0020】
第2のタイプの弁機能不全である弁逆流は、弁の弁尖が完全に閉鎖せず、それにより血液が漏れて前の心腔に戻る(例えば、血液が左心室から左心房に漏れる)ときに生じる。天然弁が逆流性又は不全になる3つの機構があり、これらには、CarpentierのタイプI、タイプII、及びタイプIIIの機能不全が含まれる。CarpentierのタイプIの機能不全は、通常は機能している弁尖が互いから逸らされ、しっかりした密封を形成することができない(すなわち、弁尖が適切に接合しない)ような輪の拡張を伴う。タイプIの機構の機能不全に含まれるのは、心内膜炎に存在するような弁尖の穿孔である。CarpentierのタイプIIの機能不全は、接合の平面よりも上の天然弁の1つ以上の弁尖の逸脱を伴う。CarpentierのタイプIIIの機能不全は、弁尖が輪の平面よりも下で異常に拘束されるような、天然弁の1つ以上の弁尖の動きの制限を伴う。弁尖の制限は、リウマチ病(Ma)又は心室の拡張(IIIb)によって引き起こされる可能性がある。
【0021】
図4を参照すると、健康な僧帽弁MVが閉鎖位置にあるとき、前尖20及び後尖22は接合し、これは、血液が左心室LVから左心房LAへ漏れることを防止する。図5を参照すると、収縮期中、僧帽弁MVの前尖20及び/又は後尖22が左心房LA内に移されるときに、逆流が生じる。このように接合ができないと、前尖20と後尖22との間の間隙26を引き起こし、これは、血液が収縮期中に左心室LVから左心房LA内と逆流することを可能にする。上記のように、弁尖(例えば、僧帽弁MVの弁尖20、22)が機能不全である可能性があり、それにより逆流を引き起こす可能性がある幾つかの異なる方法がある。
【0022】
図6を参照すると、ある特定の状況では、患者の僧帽弁MVは、僧帽弁が閉鎖位置にあるとき(すなわち、収縮期中)、前尖20と後尖22との間に幅広い間隙26を有する可能性がある。例えば、間隙26は、約2.5mm~約17.5mm、例えば約5mm~約15mm、例えば約7.5mm~約12.5mm、例えば約10mmの幅Wを有することができる。一部の状況では、間隙26は、15mmより大きい幅Wを有することができる。上記の状況のいずれかにおいて、前尖20及び後尖22を係合して、間隙26を閉鎖させ、僧帽弁MVを通した血液の逆流を防止することが可能である弁修復装置が望ましい。
【0023】
狭窄又は逆流は、いかなる弁にも影響を及ぼす可能性があるが、狭窄は主に、大動脈弁AV又は肺動脈弁PVのいずれかに影響を及ぼすことが分かっており、逆流は主に、僧帽弁MV又は三尖弁TVのいずれかに影響を及ぼすことが分かっている。弁狭窄及び弁逆流の両方は、心臓Hの仕事量を増加させ、未治療のままである場合、心内膜炎、鬱血性心不全、永久的な心臓障害、心停止、及び最終的には死亡など、非常に重篤な状態につながる可能性がある。心臓の左側(すなわち、左心房LA、左心室LV、僧帽弁MV、及び大動脈弁AV)は主に、全身を通して血液の流れを循環させることに関与し、僧帽弁MV又は大動脈弁AVの機能不全は特に問題であり、生命を脅かす場合が多い。従って、心臓の左側にかかる圧力が実質的により高いため、僧帽弁MV又は大動脈弁AVの機能不全ははるかに問題である。
【0024】
天然心臓弁の機能不全には、修復又は置換のいずれかが行われ得る。修復は典型的には、患者の天然弁の保存及び矯正を伴う。置換は典型的には、患者の天然弁を生物学的又は機械的代替物と置き換えることを伴う。典型的には、大動脈弁AV及び肺動脈弁PVは、より狭窄になりやすい。弁尖により持続する狭窄性損傷は不可逆的であるため、狭窄性大動脈弁又は狭窄性肺動脈弁の最も従来的な治療は、弁の除去及び弁の外科的に埋め込まれた心臓弁での置換、又は弁の経カテーテル心臓弁との置き換えである。僧帽弁MV及び三尖弁TVは、より弁尖の変形を起こしやすく、これは上記のように、僧帽弁又は三尖弁が適切に閉鎖することを妨げ、心室から心房内への血液の逆流又はバックフローを可能にする(例えば、変形した僧帽弁MVは、左心室LVから左心房LAへの逆流又はバックフローを可能にする場合がある。)。心室から心房への血液の逆流又はバックフローは、弁閉鎖不全をもたらす。僧帽弁MV又は三尖弁TVの構造又は形状の変形は、修復可能である場合が多い。さらに、逆流は、腱索10が機能不全になり(例えば、腱索が伸張又は破裂し得)、これにより前尖20及び後尖22が戻されることが可能になるので、血液が左心房LA内に逆流するために生じ得る。機能不全の腱索10により生じる問題は、腱索、又は僧帽弁の構造を修復することによって修復され得る(例えば、僧帽弁の罹患部分における弁尖20、22を固定することによって)。
【0025】
僧帽弁を修復するための埋め込み型人工デバイスは、僧帽弁の構造を修復して、弁尖を共に接近させ、逆流を低減することができる。インプラントが定位置にあっても弁尖が十分な量開放することができない場合、弁にわたる圧力勾配の増加が生じる可能性がある。例えば、僧帽弁にわたる5mmHg以上の圧力勾配は、弁の狭窄の発症と相関する。従って、僧帽弁にわたる圧力勾配と弁の修復に使用される修復デバイスの剛性との間に相関があり得る。弁尖が開放しているときに有効弁口面積を維持するインプラントは、従来のインプラントよりも低い圧力勾配を維持することができる。本明細書に記載される例示的な実施形態では、インプラントは、天然弁が閉鎖しているときに逆流を低減すること、及び天然弁が開放しているときに天然弁にわたる圧力勾配に最小限の影響のみを与えることの両方を行うように構成され得る。例示的な弁修復装置はまた、4.0cm2未満などの小さい弁面積を有する弁にも有用であり得る。本明細書に記載される例示的な実施形態は、心臓が鼓動する際に開放しない、又は柔軟に開放しない弁置換デバイスと比較して、埋め込み後の弁尖可動性及び有効弁口面積(EOA)を強化することができる。
【0026】
本明細書に記載される様々な実施形態は、EOAを過剰に低減することなく弁尖を接近させ、それにより天然弁にわたる圧力勾配に最小限の影響のみを与える。1つの例示的な実施形態では、これは、開放もしくは部分的位置にクラスプ及び/もしくはパドルアームをロックすることによって、かつ/又は天然弁尖と共にパドルが移動することを可能にすることによって行われる。これらの実施形態は、二重弁口が形成されるように、組織の内部成長を可能にすることができる。これは、天然弁の制限を軽減しながら治癒反応をもたらす。
【0027】
以下により詳細に記載されるように、僧帽弁又は三尖弁にわたる圧力勾配は、本明細書に記載される人工弁修復装置を用いて許容可能なレベルで保たれ得る。幾つかの例示的な実施形態では、2018年10月10日出願の米国仮出願第62/744,031号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるデバイスは、天然弁が開放したときにデバイスのパドルが屈曲することを可能にするように可撓性であり得る。この可撓性は、デバイスが弁尖上にクラスプで留められたときに弁尖の不動化した組織の量を低減することができ、かつ圧力勾配の変化を低減することができる。
【0028】
弁尖の可動性を高めるための特定の例示的な実施形態は、可撓性が高められ、かつ/又は心臓周期中に弁尖が開閉する際に弁尖と共に移動及び/もしくは屈曲することができる、埋め込み型人工デバイスを有することができる。これは、パドルを心臓周期中に天然弁と共に開閉するように構成することによって、接合装置のプロファイルを低減することによって、パドルのプロファイルを低減することによって、かつ/又はパドルを心臓周期中に天然弁と共に柔軟に開放するのに十分可撓性にすることによって達成され得る。
【0029】
他の例示的な実施形態では、弁尖の柔軟性は、埋め込まれた後にデバイスの可撓性部分及び不動化部分の両方を有することによって改善され得る。ある特定の例示的な実施形態では、パドルは、固定(fixed)されたままであってもよく、又は立てかけられて開放したままであってもよい。これにより、弁尖の可動性を維持しながら弁尖の先端部を不動化することができる。以下により詳細に記載されるように、これらの実施形態は、逆流の低減及び/又は組織の内部成長における急性反応の改善を提供することができる。
【0030】
本明細書に開示されるデバイス及び手順は、僧帽弁の構造を修復することに言及する。しかしながら、本明細書に提供されるデバイス及び概念は、いかなる天然弁ならびに天然弁のいかなる構成要素を修復するためにも使用され得ることが理解されるべきである。ここで図7を参照すると、本明細書に提供されるデバイス及び概念のいずれも、三尖弁TVを修復するために使用され得る。例えば、本明細書に提供されるデバイス及び概念のいずれも、前尖30、中隔尖32、及び後尖34のうちいずれか2つの尖の間で使用され、右心室から右心房内への血液の逆流を防止することができる。さらに、本明細書に提供されるデバイス及び概念のいずれも、弁尖30、32、34の3つ全てに対して一緒に使用されて、右心室から右心房への血液の逆流を防止することができる。すなわち、本明細書に提供される弁修復装置は、3つの弁尖30、32、34の間で中央に位置することができる。
【0031】
例示的な埋め込み型人工デバイスは、接合要素と少なくとも1つのアンカーとを有する。アンカー領域は、デバイスの個々の構成要素が一緒に機械的に接続されている場所であってもよく、アンカーにはキャップ又は基部、ならびにパドル及びクラスプが枢動することを可能にするジョイントがあり得る。接合要素は、天然心臓弁口内に位置付けられて、空間の充填を助け、より効果的な密封を形成し、それにより上記の逆流を低減又は防止するように構成されている。接合要素は、血液に対して不浸透性であり、かつ天然弁尖が心室収縮期中に接合要素の周囲で閉鎖することを可能にして、血液が左心室又は右心室から左心房又は右心房それぞれに流入することを阻止する構造を有することができる。人工デバイスは、2つ又は3つの天然弁尖に対して密封するように構成され得、すなわち、デバイスは、天然僧帽弁(二尖弁)及び三尖弁で使用され得る。接合要素は、完全に閉鎖しない適切に機能していない天然僧帽弁又は三尖弁の間の空間を充填することができるため、接合要素は本明細書において時にスペーサとも呼ばれる。
【0032】
接合要素は、様々な形状を有することができる。幾つかの実施形態では、円形断面形状を有する細長い円筒形状を有することができる。他の実施形態では、接合要素は、楕円形断面形状、三日月形断面形状、又は様々な他の非円筒形状を有することができる。接合要素は、左心房の中又はそれに隣接して位置付けられた心房部分と、左心室の中又はそれに隣接して位置付けられた心室部分又は下部分と、天然僧帽弁尖間に延在する側面とを有することができる。三尖弁で使用するように構成された実施形態では、心房部分又は上部分は、右心房の中又はそれに隣接して位置付けられ、心室部分又は下部分は、右心室の中又はそれに隣接して位置付けられ、天然三尖弁間に延在する側面。
【0033】
アンカーは、接合要素が2つの天然弁尖間に位置付けられるように、デバイスを天然僧帽弁尖のうち一方又は両方の天然僧帽弁尖に固定するように構成され得る。三尖弁で使用するように構成された実施形態では、アンカーは、接合要素が3つの天然弁尖間に位置付けられるように、デバイスを三尖弁のうち1つ、2つ、又は3つの三尖弁に固定するように構成されている。本明細書に記載されるように、パドル(例えば、図36図38のパドル520、522を参照)は、係留パドルであり、アンカーの一部である。幾つかの実施形態では、アンカーは、接合要素の心室部分に隣接した位置で接合要素に取り付けられ得る。幾つかの実施形態では、アンカーは、シャフト又は作動ワイヤに取り付けられ得、それには接合要素も取り付けられている。幾つかの実施形態では、アンカー及び接合要素は、アンカー及びコアパーション要素の各々をシャフト又は作動ワイヤの長軸方向軸に沿って別々に移動させることによって、互いに対して独立して位置付けられ得る。幾つかの実施形態では、アンカー及び接合要素は、アンカー及びコアパーション要素をシャフト又は作動ワイヤの長軸方向軸に沿って一緒に移動させることによって、同時に位置付けられ得る。アンカーは、弁尖がアンカーによって把持されるように、埋め込まれたときに天然弁尖の後ろに位置付けられるように構成され得る。
【0034】
人工デバイスは、送達シースを介して埋め込まれるように構成され得る。接合要素及びアンカーは、半径方向に圧縮された状態に圧縮可能であり得、圧縮圧力が解放されたときに半径方向に拡張した状態に自己拡張可能であり得る。デバイスは、接合要素とアンカーとの間の間隙を作り出すために、最初に、まだ圧縮されている接合要素から半径方向に離れてアンカーが拡張されるように構成され得る。次いで、天然弁尖は、間隙内に位置付けられ得る。接合要素は、半径方向に拡張され、接合要素とアンカーとの間の間隙を閉じ、接合要素とアンカーとの間で弁尖を捕捉することができる。幾つかの実施形態では、アンカー及び接合要素は、任意に自己拡張するよう構成される。
【0035】
開示された人工デバイスは、アンカーが弁尖に接続され、天然腱索からの張力を利用して、デバイスを左心房に向かって引き付ける高い収縮期圧に抵抗するように構成され得る。拡張期中、デバイスは、アンカーによって把持される弁尖に加えられる圧縮力及び保持力に依存し得る。
【0036】
ここで図8図14を参照すると、概略的に図示される埋め込み型人工デバイス100は、様々な展開段階で示されている。デバイス100は、本出願で考察される埋め込み型人工デバイスに関する任意の他の特徴を含むことができ、デバイス100は、任意の好適な弁修復システム(例えば、本出願に開示される任意の弁修復システム)の一部として、弁組織20、22を係合するように位置付けられ得る。
【0037】
デバイス100は、送達シース又は送達手段102から展開され、接合部分104とアンカー部分106とを含む。デバイス100の接合部分104は、天然僧帽弁の弁尖間に埋め込まれるよう適合され、かつ作動ワイヤ又はシャフト112に摺動可能に取り付けられる接合要素又は接合手段110を含む。アンカー部分106は、開放状態と閉鎖状態との間で作動可能であり、例えば、パドル、把持要素などの幅広い形態をとることができる。作動ワイヤ又は作動手段112の作動は、デバイス100のアンカー部分106を開閉して、埋め込み中に僧帽弁尖を把持する。作動ワイヤ又はシャフト112は、幅広い異なる形態をとり得る。例えば、作動ワイヤ又はシャフトの回転がアンカー部分106を接合部分104に対して移動させるように、作動ワイヤ又はシャフトは、ねじ山付きであってもよい。又は、作動ワイヤ又はシャフト112を押すこと又は引くことによってアンカー部分106を接合部分104に対して移動させるように、作動ワイヤ又はシャフトは、ねじ山が付いてなくてもよい。
【0038】
デバイス100のアンカー部分106は、部分124、126、128によって、キャップ114と接合要素又は接合手段110との間に接続された外側パドル120と内側パドル122とを含む。部分124、126、128は、以下に記載される位置の全ての間で移動するように関節接合されてもよく、かつ/又は可撓性であってもよい。関節接合部分は、ジョイントであってもよく、可撓性部分は、可撓性接続部であってもよい。部分124、126、及び128による外側パドル120、内側パドル122、接合要素又は接合手段110、及びキャップ114の相互接続は、本明細書に例示される位置及び移動にデバイスを拘束することができる。
【0039】
作動ワイヤ又は作動手段112は、送達シース及び接合要素又は接合手段110を通って、アンカー部分106の遠位接続部におけるキャップ114まで延在する。作動ワイヤ又は作動手段112の延長及び格納は、接合要素又は接合手段110とキャップ114との間の間隔をそれぞれ増加及び減少させる。カラーは、接合要素又は接合手段110を送達シース又は送達手段102に取り外し可能に取り付け、これにより作動ワイヤ又は作動手段112は、作動中にカラー及び接合要素又は接合手段110を通って摺動して、アンカー部分106のパドル120、122を開閉する。
【0040】
ここで図11を参照すると、アンカー部分106は、取り付け部分又は把持部材を含む。図示される把持部材は、基部又は固定アーム132、可動アーム134、返し又は固定手段136、及びジョイント部分138を含む返し付きクラスプ130である。固定アーム132は、内側パドル122に取り付けられ、ジョイント部分138は、接合要素又は接合手段110に近接して配置される。返し付きクラスプは、平坦な表面を有し、パドルの凹部には適合しない。むしろ、返し付きクラスプの平坦部分は、内側パドル122の表面に対して配置される。ジョイント部分138は、返し付きクラスプ130の固定アーム及び可動アーム132、134の間にばね力を提供する。ジョイント部分138は、可撓性ジョイント、ばねジョイント、ピボットジョイントなどの任意の好適なジョイントであり得る。ある特定の実施形態では、ジョイント部分138は、固定アーム及び可動アーム132、134と一体的に形成された一片の可撓性材料である。固定アーム132は、内側パドル122に取り付けられ(すなわち、固定され)、可動アーム134が開放して返し付きクラスプ130を開放させ、返し又は固定手段136を露出するときに、内側パドル122に対して固定されたままである。返し付きクラスプ130は、可動アーム134に取り付けられた作動線116に張力をかけ、それにより可動アーム134をジョイント部分138上で枢動させることによって開放する。
【0041】
埋め込み中、パドル120、122は開閉されて、パドル120、122と接合要素又は接合手段110との間で天然僧帽弁尖を把持する。返し付きクラスプ130は、弁尖を返し又は固定手段136と係合させ、可動アーム及び固定アーム134、132の間で弁尖を挟持することによって、天然弁尖をさらに固定する。返し付きクラスプ130の返し又は固定手段136は、弁尖との摩擦を増加させるか、又は部分的もしくは完全に弁尖を穿刺してもよい。作動線116は、各返し付きクラスプ130が別々に開閉され得るように別々に作動され得る。別々の操作により、一度に1つの弁尖が把持されること、又はもう一方の弁尖の良好な把持を変化させることなく、不十分に把持された弁尖上のクラスプ130の再配置が可能になる。返し付きクラスプ130は、内側パドル122の位置に対して開閉され得(内側パドルが開放位置にある限り)、それにより特定の状況が必要とするような様々な位置で弁尖が把持されることを可能にする。
【0042】
返し付きクラスプ130は、送達シース又は送達手段102を通って返し付きクラスプ130まで延在する取り付けられた作動線116を引っ張ることによって別々に開放させ得る。作動線116は、例えば、線、縫合糸、ワイヤ、ロッド、カテーテルなど、幅広い形態をとることができる。閉鎖位置において、返し付きクラスプ130が把持された天然弁尖に挟持力を提供し続けるように、返し付きクラスプ130はばね式であり得る。この挟持力は、内側パドル122の位置に関係なく一定のままである。返し付きクラスプ130の返し又は固定手段136は、天然弁尖を穿孔して、天然弁尖をさらに固定することができる。
【0043】
ここで図8を参照すると、デバイス100は、送達シースからの展開のための細長い状態又は完全開放状態で示されている。完全開放位置が最小の空間を占め、最小のカテーテルが使用されること(又は最大のデバイス100が所与のカテーテルサイズに対して使用されること)を可能にするため、デバイス100は、完全開放位置で送達シースに装填される。細長い状態では、キャップ114は、アンカー部分106のパドル120、122が完全に延長されるように、接合要素又は接合手段110から離間している。幾つかの実施形態では、外側及び内側パドル120、122の内部の間に形成される角度は、約180度である。返し付きクラスプ130は、送達シース又は送達手段102を通る展開中に閉鎖状態で保持され、これにより返し又は固定手段136(図11)は、シース又は患者の心臓内の組織を捕捉も損傷もしない。
【0044】
ここで図9を参照すると、デバイス100は、図8に類似した細長いほぐし状態で示されているが、返し付きクラスプ130は、返し付きクラスプ130の固定部分と可動部分との間で約140度~約200度、約170度~約190度の範囲、又は約180度の完全開放位置にある。パドル120、122及びクラスプ130を完全に開放させることは、デバイス100の埋め込み中の患者の解剖学的構造からのほぐしの容易さを改善することが分かっている。
【0045】
ここで図10を参照すると、デバイス100は、短縮状態又は完全閉鎖状態で示されている。短縮状態のデバイス100のコンパクトなサイズにより、心臓内のより容易な操作及び配置が可能になる。デバイス100を細長い状態から短縮状態に移動させるために、作動ワイヤ又は作動手段112は格納されて、キャップ114を接合要素又は接合手段110に向かって引く。外側パドル120と内側パドル122との間のジョイント又は可撓性接続部126は、キャップ114から接合要素又は接合手段110に向かって格納されている外側パドル120に作用している圧縮力が、パドル又は把持要素120、122を半径方向外向きに移動させるように移動が拘束される。開放位置から閉鎖位置への移動中、外側パドル120は、作動ワイヤ又は作動手段112との鋭角を維持する。外側パドル120は任意に、閉鎖位置に向かって付勢され得る。同一の動きの間の内側パドル122は、それらが開放状態において接合要素又は接合手段110から離れて配向されており、かつ閉鎖状態において接合要素又は接合手段110の両側に沿って折り畳まれるため、かなり大きい角度を通して移動する。ある特定の実施形態では、内側パドル122は、外側パドル120よりも薄く、かつ/又は狭く、内側パドル122に接続されたジョイント又は可撓性部分126、128は、より薄く、かつ/又はより可撓性であり得る。例えば、この高められた可撓性により、外側パドル120をキャップ114に接続するジョイント又は可撓性部分124よりも多くの移動が可能になり得る。ある特定の他の実施形態では、外側パドル120は、内側パドル122よりも狭い。内側パドル122に接続されたジョイント又は可撓性部分126、128は、例えば、外側パドル124をキャップ114に接続するジョイント又は可撓性部分124よりもより多くの移動を可能にするように、より可撓性であり得る。さらに別の実施形態では、内側パドル122は、外側パドルと同一又は実質的に同一の幅であり得る。
【0046】
ここで図11図13を参照すると、デバイス100は、部分的開放、把持準備完了状態で示されている。完全閉鎖状態から部分的開放状態に移行するために、作動ワイヤ又は作動手段112は延長されて、キャップ114を接合要素又は接合手段110から押し離し、それにより外側パドル120を引っ張り、これが内側パドル122を引っ張り、アンカー部分106を部分的に広げさせる。作動線116はまた格納されてクラスプ130を開放させ、これにより弁尖が把持され得る。図11によって示される実施例では、内側及び外側パドル122、120の対は、単一の作動ワイヤ又は作動手段112によって、独立してではなく一致して移動する。また、クラスプ130の位置は、パドル122、120の位置に依存している。例えば、図10を参照すると、パドル122、120の閉鎖により、クラスプも閉鎖する。
【0047】
図11Aは、パドル120、122が独立して制御可能である例示的な実施形態を示す。図11Aによって示されるデバイス100Aは、デバイス100Aが2つの独立したキャップ114A、114Bに連結される2つの独立した作動ワイヤ112A、112Bを含むことを除いて、図11によって示されるデバイスと類似している。第1の内側パドル及び第1の外側パドルを完全閉鎖状態から部分的開放状態に移行させるために、作動ワイヤ又は作動手段112Aは延長されて、キャップ114Aを接合要素又は接合手段110から押し離し、それにより外側パドル120を引っ張り、これが内側パドル122を引っ張り、第1のアンカー部分106を部分的に広げさせる。第2の内側パドル及び第2の外側パドルを完全閉鎖状態から部分的開放状態に移行させるために、作動ワイヤ又は作動手段112Bは延長されて、キャップ114を接合要素又は接合手段110から押し離し、それにより外側パドル120を引っ張り、これが内側パドル122を引っ張り、第2のアンカー部分106を部分的に広げさせる。図11Aによって示される独立したパドル制御は、本出願によって開示されるデバイスのいずれにおいても実施され得る。
【0048】
ここで図12を参照すると、作動線116のうち1つの作動線が延長され、クラスプ130のうち1つのクラスプが閉鎖することを可能にする。ここで図13を参照すると、もう一方の作動線116が延長されて、もう一方のクラスプ130が閉鎖することを可能にする。作動線116のいずれか又は両方が繰り返し作動して、返し付きクラスプ130を繰り返し開閉し得る。
【0049】
ここで図14を参照すると、デバイス100は、完全閉鎖及び展開状態で示されている。展開状態は、図14によって示される位置、又は図14によって示される位置と図13によって示される位置との間のある位置であってもよい。送達シース又は送達手段102及び作動ワイヤ又は作動手段112は格納され、パドル120、122及びクラスプ130は弁尖の周囲で完全に閉鎖したままである。一旦展開されると、デバイス100が展開位置に留まるように、又は天然弁が閉鎖する度にデバイスが展開位置まで閉鎖するように、デバイス100は展開位置に向かって付勢され得るが、付勢は、天然弁が開放する度にデバイスが展開位置を越えて開放することを可能にする。これは、鋼、他の金属、プラスチック、複合材料などのばね材料、又はニチノールなどの形状記憶合金の使用を通して達成され得る。例えば、関節接合又は可撓性部分124、126、128、138、ならびに/又は内側及び外側パドル122、ならびに/又は追加の付勢構成要素(図47Aの付勢部材524を参照)は、鋼などの金属又はニチノールなどの形状記憶合金(ワイヤ、シート、管、又はレーザー焼結粉末で製造される)から形成され、外側パドル120を接合要素又は接合手段110の周囲で閉鎖する状態に向かって付勢してもよく、返し付きクラスプ130は、天然弁尖の周囲で挟持される。同様に、返し付きクラスプ130の固定アーム及び可動アーム132、134は、弁尖を挟持するように付勢される。ある特定の実施形態では、ジョイント部分124、126、128、138、ならびに/又は内側及び外側パドル122、ならびに/又は追加の付勢構成要素(図47Aの付勢部材524を参照)は、金属又はポリマー材料などの任意の他の好適に弾性な材料から形成されて、埋め込み後にデバイスを閉鎖位置で維持するか、又は天然弁が閉鎖する度にデバイスを閉鎖させるが、天然弁が開放する度にデバイスが開放するか、もしくは部分的に開放することも可能にし得る。
【0050】
ここで図15図20を参照すると、図8図14の埋め込み型デバイス100は、心臓Hの天然僧帽弁MV内に送達され埋め込まれた状態で示されている。ここで図15を参照すると、送達シースは、中隔を通して左心房LAに挿入され、デバイス100は、完全開放状態の送達シースから展開されている。次いで、作動ワイヤ又は作動手段を112が格納されて、デバイス100を図16に示される完全閉鎖状態に移動させる。図17から分かるように、デバイス100は、内室LV内に向かって僧帽弁MV内の位置内を移動し、弁尖20、22が把持され得るように部分的に開放する。ここで図18を参照すると、作動線116は延長されて、クラスプ130のうち1つのクラスプを閉鎖させ、弁尖20を捕捉する。図19は、次いで、もう一方の作動線116が延長されて、もう一方のクラスプ130を閉鎖させ、残りの弁尖22を捕捉していることを示す。最後に図20から分かるように、次いで、送達シース又は送達手段102、及び作動ワイヤ又は作動手段112、及び作動線116は格納されて、デバイス100を天然僧帽弁MV内に展開位置で残す。図20によって示される実施例では、デバイスは、展開位置で完全に閉鎖している。他の例示的な実施形態では、デバイス100は、図19及び図20によって示される位置の間の任意の位置で展開され得る。すなわち、幾つかの例示的な実施形態では、デバイスは完全に閉鎖している必要はない。
【0051】
クラスプ、パドル、接合要素、及び送達デバイス及び方法の構造、材料、及びデバイスを形成するための互いへの接続性を含む特徴は、例示的な実施形態間で異なり得、異なる実施形態の組み合わせは、本発明の範囲内の追加の実施形態を形成するように組み合わされ得る。デバイスは、2018年10月10日出願の米国仮出願第62/744,031号及び2018年1月9日出願の米国出願第15/865,890号にあるような特徴を組み込むことができ、その両方の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0052】
本明細書に記載されるデバイス100、400、400A、500、及び600は、任意の好適な弁修復システム(例えば、本出願に開示される任意の弁修復システム)の一部として弁組織20、22を係合するように位置付けられ得る。1つの例示的な実施形態では、これらのデバイス100、400、500、及び600のいずれも、天然弁の開閉と共に開閉するように構成され得る。1つの例示的な実施形態では、これらのデバイス100、400、500、及び600のいずれも、部分的開放状態で埋め込まれるように構成され得、任意に、天然弁の開閉と共にさらに開放し、かつ部分的開放の埋め込まれた位置に戻るように構成され得る。
【0053】
ここで図21図23を参照すると、埋め込み型人工デバイス400の例示的な実施形態が示されている。デバイス400は、本出願で考察される埋め込み型人工デバイスに関する任意の他の特徴を含むことができ、デバイス400は、任意の好適な弁修復システム(例えば、本出願に開示される任意の弁修復システム)の一部として、弁組織20、22を係合するように位置付けられ得る。
【0054】
ここで図21を参照すると、デバイス400は、接合部分404とアンカー部分406とを含むことができ、アンカー部分406は複数のアンカー408を含む。接合部分404は、接合部材又はスペーサ部材410を含む。アンカー部分406は、複数のパドル420(例えば、図示される実施形態においては2つ)と、複数のクラスプ430(例えば、図示される実施形態では2つ)とを含む。第1又は近位のカラー411、及び第2のカラー又はキャップ414は、互いに対して接合部分404及びアンカー部分406を移動させるために使用される。
【0055】
図23に示されるように、アンカー408の第1の接続部分425は、接合部材又はスペーサ部材410の第1の部分417に連結され、かつそれから延在することができ、アンカー408の第2の接続部分421は、第1のカラー414に連結され得る。近位カラー411は、接合部材410の第2の部分419に連結され得る。
【0056】
接合部材410及びアンカー408は、様々な方法で一緒に連結され得る。例えば、図示される実施形態に示されるように、接合部材410及びアンカー408は、単一の一体構成要素として接合部材410及びアンカー408を一体的に形成することによって一緒に連結され得る。これは、例えば、編み又は織りニチノールワイヤなどの編み又は織り材料から接合部材410及びアンカー408を形成することによって達成され得る。他の実施形態では、溶接、締結具、接着剤、ジョイント接続、縫合、摩擦嵌合、スウェージング、及び/又は他の連結手段によって、接合部材410及びアンカー408が一緒に連結され得る。
【0057】
ここで図22を参照すると、アンカー408は、ジョイント部分423によって分離された第1の部分又は外側パドル420と第2の部分又は内側パドル422とを備えることができる。このように、アンカー408は、内側パドル422が脚の上部分のようであり、外側パドル420が脚の下部分のようであり、ジョイント部分423が脚の膝部分のようであるという点で脚と同様に構成される。図示される実施例では、内側パドル部分422、外側パドル部分420、及びジョイント部分423は、金属素材などの素材の連続ストリップから形成される。
【0058】
アンカー408は、接合部材410の第1又は遠位の部分及び第2又は近位の部分417、419の間に延在する長手方向軸に沿って、キャップ414を近位カラー411に対して、ひいてはアンカー408を接合部材410に対して軸方向に移動させることによって、様々な構成間を移動するように構成され得る。例えば、アンカー408は、キャップ414を接合部材410から離れて移動させることによって、直線構成に位置付けられ得る。直線構成では、パドル部分は、デバイスの長軸方向軸の方向に整列されるか、又は直線状であり、アンカー408のジョイント部分423は、(例えば、図24に示される構成と同様に)接合部材410の長手方向軸に隣接している。直線構成から、アンカー408は、キャップ414を接合部材410に向かって移動させることによって、(例えば、図25に示される構成と同様の)完全に折り畳まれた構成に移動することができる。図22及び図23に示されるように、最初に、キャップ414が接合部材410に向かって移動するにつれて、アンカー408は、ジョイント部分423、425、421において折れ曲がり、ジョイント部分423は、接合部材410の長手方向軸に対して半径方向外向きに、かつ接合部材410の第1の部分414に向かって軸方向に移動する。キャップ414が接合部材410に向かって移動し続けると、ジョイント部分423は、図21に示されるように、接合部材410の長手方向軸に対して半径方向内向きに、かつ接合部材410の近位部分419に向かって軸方向に移動する。
【0059】
幾つかの実施形態では、アンカー408の内側パドル422と接合部材410との間の角度は、アンカー408が直線構成にあるとき(例えば、図24によって示される位置と同様であることを参照)、約180度であり得、アンカー408の内側パドル422と接合部材410との間の角度は、アンカー408が完全に折り畳まれた構成にあるとき(例えば、図26によって示される位置と同様であることを参照)、約0度であり得る。アンカー408は、アンカー408の内側パドル422と接合部材410との間の角度が約10度~約170度又は約45度~約135度であり得るように、様々な部分的に折り畳まれた構成に位置付けられ得る。
【0060】
1つの例示的な実施形態では、展開された又は埋め込まれたデバイスのアンカーは、アンカー408の内側パドル422と接合部材410との間の角度が約0~45度、例えば、約0度~約30度、約0度~約15度であり得るように位置付けられ得る。幾つかの例示的な実施形態では、展開された又は埋め込まれたデバイスのアンカーは、アンカー408の内側パドル422と接合部材410との間の角度が少なくとも5度、少なくとも10度、少なくとも15度、少なくとも20度、例えば、少なくとも25度であり得るように、部分的に開放している。
【0061】
アンカー408が直線又はほぼ直線の構成(例えば、接合部材410に対して約120度~約180度)まで延在することができるように人工デバイス400を構成することは、幾つかの利点を提供することができる。例えば、これは人工デバイス400の半径方向の波形プロファイルを低減することができる。これはまた、天然弁尖を把持するより大きい開口部を提供することによって、天然弁尖を把持することをより容易にすることもできる。さらに、比較的狭い直線構成は、人工デバイス400を送達装置内に位置付け、かつ/又は取り出すときに、人工デバイス400が天然の解剖学的構造(例えば、腱索)内で絡まる可能性を防止又は低減することができる。
【0062】
展開されたアンカー408が開放構成(例えば、接合部材410に対して約5~45度、又は少なくとも5度、少なくとも10度、少なくとも15度、少なくとも20度、例えば、少なくとも25度)であり得るように、人工デバイス400を構成することは、幾つかの利点を提供することができる。例えば、アンカーは、特に弁の弁尖間に幅広い間隙がある場合に、天然弁尖に対してより少ない応力をかけることができる。この利点は、アンカーの移動又は屈曲のいずれかによって、アンカーが天然弁と共に開閉することを可能にすることによって強化され得る。幾つかの例示的な実施形態では、デバイスは、アンカー408が完全に閉鎖した状態(例えば、接合部材410に対して約0度)で展開され、アンカーは、アンカーの移動又は屈曲のいずれかによって、天然弁と共に開閉することができる。幾つかの例示的な実施形態では、デバイスは、アンカー408が部分的に開放した状態(例えば、接合部材410に対して少なくとも5度、少なくとも10度、少なくとも15度、少なくとも20度の温度、例えば、少なくとも25度)で展開され、アンカーは、天然弁がアンカーの移動又は屈曲のいずれかによって閉鎖するときに、さらに開放し、展開(部分的開放)構成に戻ることができる。
【0063】
再び図22を参照すると、クラスプ430は、取り付け又は固定部分432とアーム又は可動部分434とを備えることができる。取り付け又は固定部分432は、縫合、接着剤、締結具、溶接、縫い合わせ、スウェージング、摩擦嵌合、及び/又は他の連結手段などの様々な方法でアンカー408の内側パドル422に連結され得る。
【0064】
可動部分434は、開放構成(例えば、図22)と閉鎖構成(図21及び図23)との間で固定部分432に対して枢動することができる。幾つかの実施形態では、クラスプ430は、閉鎖構成に向かって付勢され得る。開放構成では、固定部分432及び可動部分434は、固定部分432と可動部分434との間に天然弁尖が位置付けられ得るように、互いから離れて枢動する。閉鎖構成では、固定部分432及び可動部分434は、互いに向かって枢動し、それにより固定部分432と可動部分434との間で天然弁尖を締め付ける。
【0065】
ここで図21Aを参照すると、埋め込み型人工デバイス400Aの例示的な実施形態が示されている。デバイス400Aは、本出願で考察される埋め込み型人工デバイスに関する任意の他の特徴を含むことができ、デバイス400Aは、任意の好適な弁修復システム(例えば、本出願に開示される任意の弁修復システム)の一部として、弁組織20、22を係合するように位置付けられ得る。
【0066】
人工デバイス400Aは、接合部分404Aとアンカー部分406Aとを含むことができ、アンカー部分406Aは複数のアンカー408Aを含む。接合部分404Aは、接合部材又はスペーサ410Aを含む。アンカー部分406Aは、複数のパドル420A(例えば、図示される実施形態においては2つ)と、複数のクラスプ430A(例えば、図示される実施形態では2つ)とを含む。第1又は近位のカラー411A、及び第2のカラー又はキャップ414Aは、互いに対して接合部分404A及びアンカー部分406Aを移動させるために使用される。
【0067】
接合部材410Aは、カラー411Aに組み立てられた近位部分419Aから、アンカー408Aに接続する遠位部分417Aまで延在する。接合部材410A及びアンカー408Aは、様々な方法で一緒に連結され得る。例えば、図示される実施形態に示されるように、接合部材410A及びアンカー408Aは、単一の一体構成要素として接合部材410A及びアンカー408Aを一体的に形成することによって一緒に連結され得る。これは、例えば、編み又は織りニチノールワイヤなどの編み又は織り材料の連続ストリップ401Aから接合部材410A及びアンカー408Aを形成することによって達成され得る。
【0068】
アンカー408Aは、ヒンジ部分425Aによって接合部材410Aに、かつヒンジ部分421Aによってキャップ414Aに取り付けられる。アンカー408Aは、ジョイント部分423Aによって分離された第1の部分又は外側パドル420Aと第2の部分又は内側パドル422Aとを備えることができる。ジョイント部分423Aは、キャップ414Aにヒンジで取り付けられたパドルフレーム424Aに取り付けられる。このように、アンカー408Aは、内側パドル422Aが脚の上部分のようであり、外側パドル420Aが脚の下部分のようであり、ジョイント部分423Aが脚の膝部分のようであるという点で脚と同様に構成される。図示される実施例では、内側パドル部分422A、外側パドル部分420A、及びジョイント部分423Aは、金属素材などの素材の連続ストリップ401Aから形成される。
【0069】
アンカー408Aは、キャップ414Aと近位カラー411Aとの間に延在する長手方向軸に沿って、キャップ414Aを近位カラー411Aに対して、ひいてはアンカー408Aを接合部材410Aに対して軸方向に移動させることによって、様々な構成間を移動するように構成され得る。例えば、アンカー408は、キャップ414Aを接合部材410Aから離れて移動させることによって、直線構成(例えば、図8、9を参照)に位置付けられ得る。直線構成では、パドル部分420A、422Aは、デバイスの長軸方向軸の方向に整列されるか、又は直線状であり、アンカー408Aのジョイント部分423Aは、接合部材410Aの長手方向軸に隣接している。直線構成から、アンカー408は、キャップ414Aを接合部材410Aに向かって移動させることによって、完全に折り畳まれた構成(例えば、図10)に移動することができる。最初に、キャップ414Aが接合部材410Aに向かって移動するにつれて、アンカー408Aは、ジョイント部分421A、423A、425Aにおいて折れ曲がり、ジョイント部分423Aは、デバイス400Aの長手方向軸に対して半径方向外向きに、かつ接合部材410Aの遠位部分417Aに向かって軸方向に移動する。キャップ414Aが接合部材410Aに向かって移動し続けると、ジョイント部分423Aは、デバイス400Aの長手方向軸に対して半径方向内向きに、かつ接合部材410Aの近位部分419Aに向かって軸方向に移動する。
【0070】
幾つかの実施形態では、アンカー408Aの内側パドル422Aと接合部材410Aとの間の角度は、アンカー408Aが直線構成にあるとき、約180度であり得、アンカー408Aの内側パドル422Aと接合部材410Aとの間の角度は、アンカー408Aが完全に折り畳まれた構成にあるとき(例えば、図21Aを参照)、約0度であり得る。アンカー408Aは、アンカー408Aの内側パドル422Aと接合部材410Aとの間の角度が約10度~約170度又は約45度~約135度であり得るように、様々な部分的に折り畳まれた構成に位置付けられ得る。
【0071】
アンカー408Aが直線又はほぼ直線の構成(例えば、接合部材410Aに対して約120度~約180度)まで延在することができるように人工デバイス400Aを構成することは、幾つかの利点を提供することができる。例えば、これは人工デバイス400Aの半径方向の圧着プロファイルを低減することができる。これはまた、天然弁尖を把持するより大きい開口部を提供することによって、天然弁尖を把持することをより容易にすることもできる。さらに、比較的狭い直線構成は、人工デバイス400Aを送達装置内に位置付け、かつ/又は取り出すときに、人工デバイス400Aが天然の解剖学的構造(例えば、腱索)内で絡まる可能性を防止又は低減することができる。
【0072】
1つの例示的な実施形態では、展開された又は埋め込まれたデバイスのアンカーは、アンカー408Aの内側パドル422Aと接合部材410Aとの間の角度が約0度~約45度、例えば、約0度~約30度、約0度~約15度であり得るように位置付けられ得る。幾つかの例示的な実施形態では、展開された又は埋め込まれたデバイスのアンカーは、アンカー408Aの内側パドル422Aと接合部材410Aとの間の角度が少なくとも5度、少なくとも10度、少なくとも15度、少なくとも20度、例えば、少なくとも25度であり得るように、部分的に開放している。
【0073】
展開されたアンカー408Aが開放構成(例えば、接合部材410Aに対して約5~45度、又は少なくとも5度、少なくとも10度、少なくとも15度、少なくとも20度、例えば、少なくとも25度)であり得るように、人工デバイス400Aを構成することは、幾つかの利点を提供することができる。例えば、アンカーは、特に弁の弁尖間に幅広い間隙がある場合に、天然弁尖に対してより少ない応力をかけることができる。この利点は、アンカーの移動又は屈曲のいずれかによって、アンカーが天然弁と共に開閉することを可能にすることによって強化され得る。幾つかの例示的な実施形態では、デバイスは、アンカー408が完全に閉鎖した状態(例えば、接合部材410Aに対して約0度)で展開され、アンカーは、アンカーの移動又は屈曲のいずれかによって、天然弁と共に開閉することができる。幾つかの例示的な実施形態では、デバイスは、アンカー408が部分的に開放した状態(例えば、接合部材410に対して少なくとも5度、少なくとも10度、少なくとも15度、少なくとも20度の温度、例えば、少なくとも25度)で展開され、アンカーは、天然弁がアンカーの移動又は屈曲のいずれかによって閉鎖するときに、さらに開放し、展開(部分的開放)構成に戻ることができる。
【0074】
クラスプ430Aは、取り付け又は固定部分432Cとアーム又は可動部分434Cとを備えることができる。取り付け又は固定部分432Cは、縫合、接着剤、締結具、溶接、縫い合わせ、スウェージング、摩擦嵌合、及び/又は他の連結手段などの様々な方法でアンカー408Aの内側パドル422Aに連結され得る。クラスプ430Aは、クラスプ430と類似している。
【0075】
可動部分434Cは、開放構成(例えば、図54A)と閉鎖構成(図53A)との間で固定部分432Cに対して枢動することができる。幾つかの実施形態では、クラスプ430Aは、閉鎖構成に向かって付勢され得る。開放構成では、固定部分432C及び可動部分434Cは、固定部分432Cと可動部分434Cとの間に天然弁尖が位置付けられ得るように、互いから離れて枢動又は屈曲する。閉鎖構成では、固定部分432C及び可動部分434Cは、互いに向かって枢動又は屈曲し、それにより固定部分432Cと可動部分434Cとの間で天然弁尖を締め付ける。
【0076】
ストリップ401Aは、カラー411A、キャップ414A、パドルフレーム424A、クラスプ430Aに取り付けられて、デバイス400Aの接合部分404A及びアンカー部分406Aの両方を形成する。図示される実施形態では、接合部材410A、ヒンジ部分421A、423A、425A、外側パドル420A、及び内側パドル422Aは、連続ストリップ401Aから形成される。連続ストリップ401Aは、材料の単一層であってもよく、又は2つ以上の層を含んでもよい。ある特定の実施形態では、デバイス400Aのある部分は、材料のストリップ401Aの単一層を有し、他の部分は、材料のストリップ401Aの複数の重なり合っている又は重なる層から形成される。例えば、図21Aは、材料のストリップ401Aの複数の重なり合っている層から形成された接合部材410A及び内側パドル422Aを示す。材料の単一の連続ストリップ401Aは、デバイス400Aの様々な位置で開始及び終了することができる。材料のストリップ401Aの端部は、デバイス400Aの同一の位置又は異なる位置にあり得る。例えば、図21Aの図示される実施形態では、材料のストリップは、内側パドル422Aの位置で開始及び終了する。
【0077】
ここで図24図35を参照すると、埋め込み型デバイス500が心臓Hの天然僧帽弁MV内に送達され埋め込まれた状態で示されている。上記のように、デバイス500は、接合要素510、クラスプ530、内側パドル522、及び/又は外側パドル520の上に任意のカバー540を有する。デバイス500は、送達シース502から展開され、複数のアンカー508(図示される実施形態では2つ)を含む接合部分504とアンカー部分506とを含む。デバイスの接合部分504は、作動ワイヤ又はシャフト512に摺動可能に取り付けられる、天然僧帽弁MVの弁尖20、22の間に埋め込むための接合要素510を含む。
【0078】
デバイス500のアンカー508は、キャップ514及び接合要素510に柔軟に接続された外側パドル520と内側パドル522とを含む。作動ワイヤ512は、捕捉機構503(図30を参照)、送達シース502、及び接合要素510を通って、アンカー部分506に接続されたキャップ514まで延在する。作動ワイヤ512の延長及び格納は、接合要素510とキャップ514との間の間隔をそれぞれ増加及び減少させる。図24図35によって示される実施例では、内側及び外側パドル522、520の対は、単一の作動ワイヤ512によって、独立してではなく一致して移動する。また、クラスプ530の位置は、パドル522、520の位置に依存している。例えば、図34を参照すると、パドル522、520の閉鎖により、クラスプも閉鎖する。1つの例示的な実施形態では、デバイス500は、図11Aの実施形態と同じ方法でパドル520、522を独立して制御可能にするように作製され得る。
【0079】
捕捉機構503のフィンガーは、カラー511を送達シース502に取り外し可能に取り付ける。カラー511及び接合要素510は、アンカー部分506のアンカー508を開閉するための作動中に作動ワイヤ512に沿って摺動する。幾つかの実施形態では、作動ワイヤ512の取り外しにより、捕捉機構503のフィンガーが開放して、カラー511、ひいては接合要素510を解放するように、捕捉機構503は、作動ワイヤ512によってカラー511の周囲で閉鎖した状態で保持される。
【0080】
接合要素510及びパドル520、522は、メッシュ、織り、編み、もしくは任意の他の好適な方法で形成されるなどの金属素材であり得る可撓性材料、又はレーザー切断もしくは別の方法で切断された可撓性材料から形成され得る。可撓性材料は、布、形状固定能力を提供するためのニチノールなどのワイヤ、又は人体への埋め込みに適した任意の他の可撓性材料であってもよい。
【0081】
返し付きクラスプ530は、基部又は固定アーム532と、可動アーム534と、返し536(図30を参照)と、ジョイント部分538とを含む。固定アーム532は、内側パドル522に取り付けられ、ジョイント部分538は、接合要素510に近接して配置される。縫合(図示せず)は、固定アーム532を内側パドル522に取り付ける。固定アーム532は、ねじ又は他の締結具、圧着スリーブ、機械ラッチ又はスナップ、溶接、接着剤など、任意の好適な手段で内側パドル522に取り付けられ得る。固定アーム532は、可動アーム534が開放して返し付きクラスプ530を開放させ、返し536を露出するときに、実質的に固定されたままである。返し付きクラスプ530は、可動アーム534に取り付けられた作動線537に張力をかけ、それにより可動アーム534をジョイント部分538上で枢動又は屈曲させることによって開放する。
【0082】
埋め込み中、アンカー508は開閉されて、パドル520、522と接合要素510との間で天然僧帽弁尖を把持する。外側パドル520は、弁尖20、22をよりしっかりと把持するために、接合要素510の湾曲形状の周囲に適合する幅広い湾曲形状を有する。外側パドル520の湾曲形状及び丸みを帯びた縁部はまた、弁尖組織の引き裂きを防止する。返し付きクラスプ530は、弁尖を返し536と係合させ、可動アーム及び固定アーム534、532の間で弁尖を挟持することによって、天然弁尖をさらに固定する。返し付きクラスプ530の返し536は、弁尖との摩擦を増加させるか、又は部分的もしくは完全に弁尖を穿刺してもよい。作動線は、各返し付きクラスプ530が別々に開閉され得るように別々に作動され得る。別々の操作により、一度に1つの弁尖が把持されること、又はもう一方の弁尖の良好な把持を変化させることなく、不十分に把持された弁尖上のクラスプ530の再配置が可能になる。返し付きクラスプ530は、内側パドル522が閉鎖していないときに完全に開閉され、それにより特定の状況が必要な様々な位置で弁尖が把持されることを可能にすることができる。
【0083】
完全開放位置が最小の空間を占め、最小のカテーテルが使用されること(又は最大のデバイス500が所与のカテーテルサイズに対して使用されること)を可能にするため、デバイス500は、完全開放位置で送達シースに装填され得る。ここで図24を参照すると、送達シースは、中隔を通して左心房LAに挿入され、デバイス500は、完全開放状態で送達シース502から展開される。次に、作動ワイヤ512は格納されて、図25及び図26に示される完全閉鎖状態にデバイス500を移動させ、次いで、図27に示されるように僧帽弁MVに向かって動かされる。ここで図28を参照すると、デバイス500が僧帽弁MVと整列されたとき、作動ワイヤ512は延長されて、パドル520、522を部分的開放位置に開放させ、作動線537は格納されて、返し付きクラスプ530を開放させて、弁尖の把持の準備をする。次に、図29及び図30に示されるように、弁尖20、22が内側パドル522と接合要素510との間、かつ開放した返し付きクラスプ530の内側に適切に位置付けられるまで、部分的に開放したデバイス500は、僧帽弁MVを通して挿入される。図31は、クラスプ530の両方が閉鎖しているデバイス500を示すが、一方のクラスプ530の返し536は、弁尖22のうち1つの弁尖を逃している。図31図33から分かるように、所定の位置から外れたクラスプ530は、逃した弁尖22を適切に把持するために再び開閉される。両方の弁尖20、22が適切に把持されると、作動ワイヤ512は格納されて、図34に示される完全閉鎖位置に向かってデバイス500を移動させる。デバイス500が天然僧帽弁MVに完全に埋め込まれると、作動ワイヤ512は引き抜かれて、近位カラー511から捕捉機構503を解放する。しかしながら、他の例示的な実施形態では、デバイスは、部分的開放位置に移動し、部分的開放位置で解放される。展開されると、デバイス500は、完全閉鎖位置又は部分的開放展開位置で維持され得る。
【0084】
ここで図36図38を参照すると、埋め込み型デバイス500が様々な位置及び構成で示されている。埋め込み型デバイス500は、本出願で考察される埋め込み型人工デバイスに関する任意の他の特徴を含むことができ、デバイス500は、任意の好適な弁修復システム(例えば、本出願に開示される任意の弁修復システム)の一部として、弁組織20、22を係合するように位置付けられ得る。
【0085】
埋め込み型デバイス500は、近位又は取り付け部分505と、接合要素510と、内側アンカー部分又は内側パドル522と、外側アンカー部分又は外側パドル520と、アンカー延長部材又は付勢部材524と、遠位部分507戸を有する。内側パドル522は、接合要素510と外側パドル520との間に関節接合可能に取り付けられる。外側パドル520は、内側パドル522と遠位部分507との間に柔軟に取り付けられる。付勢部材524は、遠位部分507でキャップ514に取り付けられ、内側及び外側パドル522、520の間のジョイント部分523まで延在する。幾つかの実施形態では、付勢部材524がパドル522、520の支持を提供するように、付勢部材524は、パドル522、520を形成する材料よりも剛性かつ硬質である材料で形成される。1つの例示的な実施形態では、付勢部材524は、パドル520、522が天然弁の開閉と共に開閉することを可能にするのに十分に弾力性があるか、又はそれを可能にする弾力性部分を有する。1つの例示的な実施形態では、内側パドル522は硬質、比較的硬質、剛性であり、剛性部分を有し、かつ/又は補強部材もしくはクラスプ530の固定部分によって補強される。内側パドルの補強は、本明細書に図示及び記載される様々な異なる位置への移動を容易にする。内側パドル522、外側パドル520、接合部材は全て、本明細書に記載されるように相互接続され得、これによりデバイス500は、本明細書に図示及び記載される移動及び位置に拘束される。
【0086】
ここで図36及び図37を参照すると、デバイス500は、部分的開放位置で示されている。デバイス500は、取り付け部分505及び接合要素510を通過する作動ワイヤ又はシャフト512によって部分的開放位置に向かって移動し、遠位部分507を取り外し可能に係合することができる。作動ワイヤ512が延長するにつれて、取り付け部分505と遠位部分507との間の距離Dが増大するように、作動ワイヤ512は、取り付け部分505を通して延長される。図36及び図37によって示される実施例では、内側及び外側パドル522、520の対は、単一の作動ワイヤ512によって、独立してではなく一致して移動する。また、クラスプ530の位置は、パドル522、520の位置に依存している。1つの例示的な実施形態では、デバイス500は、図11Aの実施形態と同じ方法でパドル520、522を独立して制御可能にするように作製され得る。
【0087】
作動ワイヤ512の延長は、外側パドル520及び付勢部材524の底部分を引き下ろす。外側パドル520及び付勢部材は、内側パドル522を引き下ろし、内側パドル522は、外側パドル520及び付勢部材524に接続される。取り付け部分505及び接合要素510が定位置で保持されるため、内側パドル522は、開口部方向に枢動又は屈曲される。パドル522、520及び付勢部材524の開放により、天然弁尖20を受容及び把持することができる接合要素510と内側パドル522との間の間隙520Aが形成される。
【0088】
上記のように、デバイス500の幾つかの実施形態は、クラスプ又は把持部材530を含む。デバイス500が部分的に開放しているとき、クラスプ530は露出される。幾つかの実施形態では、閉鎖したクラスプ530(図36)は、開放し(図37)、それにより天然弁尖20、22を受容及び捕捉するための第2の開口部又は間隙530Aを作り出すことができる。クラスプ530内の間隙530Aの範囲は、内側パドル522が接合要素510から離れて広がっている範囲に限定される。
【0089】
ここで図38を参照すると、デバイス500は、横方向延長又は開放位置で示されている。デバイス500は、上記の作動ワイヤ512を延長し続け、それにより取り付け部分505と遠位部分507の間の距離Dを増大することによって、横方向延長又は開放位置まで移動する。作動ワイヤ512を延長し続けることにより、外側パドル520及び付勢部材524を引き下ろし、それにより内側パドル522を接合要素510からさらに離れて広げさせる。横方向延長又は開放位置では、内側パドル522は、デバイス500の他の位置よりも水平に延長し、接合要素510と約90度の角度を形成する。同様に、付勢部材524は、デバイス500が横方向延長又は開放位置にあるときにそれらの最大に広がった位置にある。横方向延長又は開放位置で形成された間隙520Aの増大により、接合要素510を係合する前にクラスプ530がさらに開放して(図示せず)、それにより間隙530Aのサイズを増大させることが可能になる。
【0090】
幾つかの実施形態では、内側パドル522Aは硬質、比較的硬質、剛性であり、剛性部分を有し、かつ/又は補強部材もしくはクラスプ530Cの固定部分によって補強される。内側パドルの補強は、デバイスが本明細書に図示及び記載される様々な異なる位置に移動することを可能にする。
【0091】
1つの例示的な実施形態では、本明細書に記載されるデバイス100、200、400A、500の設計を有する1つ以上のデバイスは、以下のように構成され得る。
a)閉鎖状態で埋め込まれ、天然弁が開閉すると、天然弁と共に開閉する。
b)部分的開放状態で埋め込まれ、天然弁が開閉すると、天然弁と共にさらに開放し、部分的開放の埋め込まれた状態に向かって移動する。及び/又は
c)部分的開放状態で埋め込まれ、天然弁が開閉すると、部分的開放の埋め込まれた状態のままである(すなわち、固定された状態のままである)。
【0092】
これらのデバイス構成は、天然弁が開閉すると、デバイスによって捕捉された天然弁の領域が移動することを可能にすることによって、天然弁にわたる圧力勾配を低減するか、又は開放又は部分的開放位置でデバイスによって捕捉された天然弁の領域を維持することによって、天然弁にわたる圧力勾配を低減する。
【0093】
これらの利点を達成するために、任意の数のデバイスが埋め込まれ得る。図39によって示される実施例では、例示的な実施形態による2つの埋め込み型人工デバイスは、僧帽弁MVの弁尖20、22上に位置付けられる(僧帽弁の心室側から見て)。僧帽弁上に図示されているが、デバイスは、任意の天然心臓弁上に埋め込まれ得る。しかしながら、他の例示的な実施形態では、単一のデバイスのみが埋め込まれる。図示される埋め込まれたデバイス100は、並んで位置付けられる。図39に示されるように、1つ以上のインプラント100が使用されて、弁尖の中央に位置する領域内で弁尖を一緒に接近させる又は接合することができる。図39は、部分的閉鎖位置にある弁尖を示す。
【0094】
ここで図40A及び図40Bを参照すると、2つの埋め込み型人工デバイス100(各々が接合要素110及び内側クラスプ130によって識別される)が、心房から心室に向かって見下ろした視点から、天然僧帽弁MVの弁尖20、22上に埋め込まれた状態で示されている。弁尖は、内側クラスプ130と外側クラスプ及び/又はパドル(図40A及び図40Bの視点では図示せず)との間に固定される。各デバイス上の閉鎖しているクラスプ及びパドルは、僧帽弁の開閉によって開放位置と閉鎖位置との間を枢動することができる。図40Aでは、弁尖は、デバイスによって互いに接近し、弁尖及びクラスプは、拡張期中に生じるように開放構成にある。自然に生じる弁尖の開口により、クラスプも同様に開放する。図40Aの間隙は、デバイスによって互いに弁尖の中央に接近するため、「バーベル」又は「8の字形」の外観を有する。デバイス100のいずれの側でも、弁尖が開放し、血液が左心房から左心室に流れることを可能にする。クラスプの移動は、弁尖の可動性を高めて、左心房と左心室との間の圧力勾配を低減する1つの例示的な実施形態であり、これは、埋め込み型人工デバイスの移植が天然心臓弁に埋め込まれ、天然弁尖が開放している間に閉鎖位置で維持されるときに生じ得る。図40Aにあるようなデバイスなどの埋め込み後に可能になる弁尖の可動性は、弁尖間の十分な面積の間隙、及びデバイス(複数可)の埋め込み後に5mmHg以下の心房と心室との間の圧力勾配を保持するのに十分大きい有効弁口面積を可能にする。図40Aにあるようなデバイスなどの埋め込み後に可能になる弁尖の可動性は、クラップ及び/又はパドルによって天然弁尖組織に加えられる応力を低減することを可能にする。
【0095】
ここで図40Bを参照すると、弁尖上が閉鎖している収縮期中の、僧帽弁尖20、22上に埋め込まれたデバイス100が示されている。閉鎖しているクラスプ134(この図で示されていない外側クラスプ及びパドル)は、中央接合要素110に向かって移動し、弁尖は、各弁尖の幅全体にわたって一緒に接近する。埋め込み型人工デバイスは、収縮期中に一緒に中央部分の弁尖を保持することを補助して、そうでなければ罹患した又は欠陥のある弁において生じる逆流を補正する。
【0096】
ここで図41A図42Bを参照すると、それぞれが内側クラスプ134及び外側クラスプ132を有するクラスプと、内側パドル122と、外側パドル120と、接合要素110とを有する、弁尖組織に固定された埋め込み型人工デバイス100の例示的な実施形態が示されている。図41Aは、例示的な実施形態の側断面概略図を示し、断面はデバイスの中心を通して取られている。図41Aは、閉鎖位置にある埋め込み型人工デバイスを示し、クラスプ及びパドルは、接合要素に対する弁尖の固定を保持するように位置付けられている。各弁尖20、22は、内側クラスプ134と外側クラスプ132との間に固定される。クラスプは、弁尖組織を貫通して、クラスプの間で弁尖をさらに固定する返し136を有することができる。内側及び外側クラスプ134、132は、ジョイント部分138で接合要素に枢動可能に固定され得る。接合要素は、サイズ、形状、及び材料に関して本明細書に記載される実施形態のいずれかを有してもよい。内側パドル122は各々、ジョイント部分128によって接合要素に接続され得、外側パドル120は各々、ジョイント部分124によってキャップ114に接続され得る。ジョイント部分138、128、及び124は各々、接合要素110上又はキャップ114上に位置付けられ得る。
【0097】
図41Bは、心室に向かう心房の方向から、下向きの方向に見る、断面41B-41Bに沿って取られた図41Aのデバイスの断面を示す。図41Bでは、弁尖20、22は、内側及び外側クラスプ134、132の間に固定され、返し136によって定位置にさらに固定される。クラスプ134、132及びパドル120、122は閉鎖位置にある。弁尖は閉鎖位置にあり、弁尖の縁部は一緒に、かつ弁尖の中央領域で接合され、弁尖はクラスプ間に位置付けられ、弁尖は接合装置の周囲で接合される。
【0098】
図42A及び図42Bは、2つの実施形態の代表である。すなわち、図42A及び図42Bは以下両方を示す。
a)天然弁が開閉するときに、デバイスが図41A及び図41Bによって示される閉鎖位置から、図42A及び図42Bによって示される部分的開放位置に移動する実施形態。
b)デバイスが図42A及び図42Bによって示される部分的開放位置に埋め込まれる実施形態。
【0099】
第1の実施例では、図42A及び図42Bは、天然弁尖によって図41A及び図41Bに示される位置から部分的開放位置に移動したデバイスを示す。開放位置では、内側クラスプ134、外側クラスプ132、内側パドル122、及び外側パドル120は全て、天然弁尖の開口によって、ジョイント部分124、128、138で接合要素から離れて枢動する。クラスプ及びパドルのこの位置は、拡張期中に接合装置に対してより少ない弁尖が接合されることを可能にし、それにより有効弁口面積を増加させ、心室と心房との間の血圧の勾配を低減することができる。
【0100】
図42Bは、心房から心室に向かう下向きの方向に見る、断面42B-42Bに沿って取られた図42Aの開放位置にあるデバイスの断面を示す。図42Bでは、弁尖20、22は、内側及び外側クラスプの間に固定されたままであり、返し136によってさらに固定される。弁尖は開放位置にあり、弁尖の各々の中央領域は、接合装置に接合されたままである。弁尖間の間隙26が見える。
【0101】
デバイス100は、幅広い異なる方法で閉鎖位置(例えば、図41A及び図41B)から部分的開放位置(例えば、図42A及び図42B)に移動するように構成され得る。例えば、1つの例示的な実施形態では、パドル120、122は、1つ以上のばね要素によって閉鎖位置に付勢され得るが、付勢力は、天然弁の開閉によって取り除かれ、パドル120、122を部分的に開放させるのに十分低い。別の例示的な実施形態では、パドル120、122は、任意の位置に付勢されず、閉鎖位置と部分的開放位置との間を自由に移動することができる。さらに別の例示的な実施形態では、パドル120、122は閉鎖しているが、パドルは、閉鎖位置から図42A及び図42Bによって示される部分的開放位置と同様である位置に屈曲するのに十分可撓性である。天然弁が閉鎖状態から開放状態に向かって移動するにつれて、デバイスによる天然弁尖に対する拘束を低減する任意のデバイス構成が実施され得る。
【0102】
第2の実施例では、図42Aは、デバイス100が部分的開放位置に埋め込まれる実施形態を示す。1つの例示的な実施形態では、デバイスは、内側クラスプ134、外側クラスプ132、内側パドル122、及び外側パドル120が心臓周期全体にわたって同じ位置を維持するように、いったん埋め込まれると固定されたままであるように構成されている。弁尖は心臓周期中にまだ開閉するが、デバイスのクラスプ及びパドルは、この部分的開放位置に固定されたままである。これは、心房と心室との間の低い圧力勾配を維持するために、人工インプラントデバイスの埋め込みの際に天然弁尖のさらなる柔軟性を可能にする別の例示的実施形態である。
【0103】
さらに別の例示的な実施形態では、デバイス100は、図42A及び図42Bによって示される部分的開放位置にまだ埋め込まれているが、埋め込まれたデバイスは、心臓周期中に天然弁尖が開放すると、部分的開放位置よりもさらに開放数ように構成されている。これは、心房と心室との間の低い圧力勾配を維持するために、人工インプラントデバイスの埋め込みの際に天然弁尖のさらなる柔軟性を可能にするさらに別の例示的実施形態である。
【0104】
ここで図43A図44Bを参照すると、内側クラスプ134と、外側クラスプ132と、内側パドル122と、外側パドル120とを有する、弁尖組織に固定された埋め込み型人工デバイス100の例示的な実施形態が示されている。図43Aは、例示的な実施形態の側断面概略図を示し、断面はデバイスの中心を通して取られている。この実施形態では、接合スペーサ要素はない。内側クラスプ134及び外側クラスプ132がジョイント部分138と接続され、内側パドルがジョイント部分128と接続され、かつ外側パドルがジョイント部分124と接続されているキャップ114があり得る。図43Aは、閉鎖位置にある埋め込み型人工デバイスを示し、弁尖も閉鎖位置にある。各弁尖20、22は、内側クラスプ134と外側クラスプ132との間に固定される。クラスプは、弁尖組織を貫通して、クラスプの間で弁尖をさらに固定する返し136を有することができる。内側及び外側クラスプ134、132は、ジョイント部分138で接合要素に枢動可能又は柔軟に固定され得る。内側パドル122は各々、可撓性部分又はジョイント部分128によって接合要素に接続され得、外側パドル120は各々、ジョイント部分124によってキャップ114に接続され得る。
【0105】
図43Bは、心室に向かう心房の方向から、下向きの方向に見る、断面43B-43Bに沿って取られた図43Aのデバイスの断面を示す。図44Bでは、弁尖20、22は、内側及び外側クラスプ134、132の間に固定される。クラスプ134、132及びパドル120、122は閉鎖位置にある。弁尖は閉鎖位置にあり、弁尖は一緒に接合されている。
【0106】
図44A及び図44Bは、2つの実施形態の代表である。すなわち、図44A及び図44Bは以下両方を示す。
a)天然弁が開閉するときに、デバイスが図43A及び図43Bによって示される閉鎖位置から、図44A及び図44Bによって示される部分的開放位置に移動する実施形態。
b)デバイスが図44A及び図44Bによって示される部分的開放位置に埋め込まれる実施形態。
【0107】
第1の実施例では、図44A及び図44Bは、天然弁尖によって図43A及び図44Bに示される位置から部分的開放位置に移動したデバイスを示す。開放位置では、内側クラスプ134、外側クラスプ132、内側パドル122、及び外側パドル120は全て、天然弁尖の開口によって、ジョイント部分124、128、138で枢動する。クラスプ及びパドルのこの位置は、(図43A及び図43Bに示される閉鎖したデバイスの位置と比較して)弁尖がさらに移動することを可能にし、それにより有効弁口面積を増加させ、心室と心房との間の血圧の勾配を低減することができる。
【0108】
図44Bは、心房から心室に向かう下向きの方向に見る、図44Aの開放位置にあるデバイスの断面を示す。図44Bでは、弁尖20、22は、内側及び外側クラスプの間に固定されたままである。弁尖は開放位置にあり、弁尖の各々の中央領域は、クラスプに接続されたままである。弁尖間の間隙26が見える。
【0109】
デバイス100は、幅広い異なる方法で閉鎖位置(例えば、図43A及び図43B)から部分的開放位置(例えば、図44A及び図44B)に移動するように構成され得る。例えば、1つの例示的な実施形態では、パドル120、122は、1つ以上のばね要素によって閉鎖位置に付勢され得るが、付勢力は、天然弁の開閉によって取り除かれ、パドル120、122を部分的に開放させるのに十分低い。別の例示的な実施形態では、パドル120、122は、任意の位置に付勢されず、閉鎖位置と部分的開放位置との間を自由に移動することができる。さらに別の例示的な実施形態では、パドル120、122は閉鎖しているが、パドルは、閉鎖位置から図44A及び図44Bによって示される部分的開放位置と同様である位置に屈曲するのに十分可撓性である。天然弁が閉鎖状態から開放状態に向かって移動するにつれて、デバイスによる天然弁尖に対する拘束を低減する任意のデバイス構成が実施され得る。
【0110】
第2の実施例では、図44Aは、デバイス100が部分的開放位置に埋め込まれる実施形態を示す。1つの例示的な実施形態では、デバイスは、内側クラスプ134、外側クラスプ132、内側パドル122、及び外側パドル120が心臓周期全体にわたって同じ位置を維持するように、いったん埋め込まれると固定されたままであるように構成されている。弁尖は心臓周期中にまだ開閉するが、デバイスのクラスプ及びパドルは、この部分的開放位置に固定されたままである。これは、心房と心室との間の低い圧力勾配を維持するために、人工インプラントデバイスの埋め込みの際に天然弁尖のさらなる柔軟性を可能にする別の例示的実施形態である。
【0111】
さらに別の例示的な実施形態では、デバイス100は、図44A及び図44Bによって示される部分的開放位置にまだ埋め込まれているが、埋め込まれたデバイスは、心臓周期中に天然弁尖が開放すると、図示される部分的開放位置よりもさらに開放するように構成されている。これは、心房と心室との間の低い圧力勾配を維持するために、人工インプラントデバイスの埋め込みの際に天然弁尖のさらなる柔軟性を可能にするさらに別の例示的実施形態である。
【0112】
ここで図45A図46Bを参照すると、クラスプ134、132と接合要素110とを有する、弁尖組織20、22に固定された埋め込み型人工デバイス100の例示的な実施形態が示されているが、パドルは示されていない。図45Aは、例示的な実施形態の側断面概略図を示し、断面はデバイスの中心を通して取られている。図45Aは、閉鎖位置にある埋め込み型人工デバイスを示し、クラスプは、接合要素に対する弁尖の固定を保持するように位置付けられている。各弁尖20、22は、内側クラスプ134と外側クラスプ132との間に固定される。クラスプは、弁尖組織を貫通して、クラスプの間で弁尖をさらに固定する返し136を有することができる。内側及び外側クラスプ134、132は、ジョイント部分138で接合要素に枢動可能に固定され得る。接合要素は、サイズ、形状、及び材料に関して本明細書に記載される実施形態のいずれかを有してもよい。ジョイント部分138は、接合要素110上又はキャップ114上に位置付けられ得る。
【0113】
図45Bは、心房から心室に向かう下向きの方向に見る、断面45B-45Bに沿って取られた図45Aのデバイスの断面を示す。図45Bでは、弁尖20、22は、内側及び外側クラスプ134、132の間に固定され、返し136によってさらに固定される。クラスプ134、132は閉鎖位置にある。弁尖は閉鎖位置にあり、弁尖は一緒に、かつ弁尖の中央領域で接合され、クラスプ間に位置付けられ、弁尖は接合装置の周囲で接合される。
【0114】
図46A及び図46Bは、2つの実施形態の代表である。すなわち、図46A及び図46Bは以下両方を示す。
a)天然弁が開閉するときに、デバイスが図45A及び図45Bによって示される閉鎖位置から、図46A及び図46Bによって示される部分的開放位置に移動する実施形態。
b)デバイスが図46A及び図46Bによって示される部分的開放位置に埋め込まれる実施形態。
【0115】
第1の実施例では、図46A及び図46Bは、天然弁尖によって図45A及び図45Bに示される位置から部分的開放位置に移動したデバイスを示す。開放位置では、内側クラスプ134及び外側クラスプ132は、天然弁尖の開口によってジョイント部分138で枢動する。クラスプのこの位置は、(図45A及び図45Bに示される閉鎖したデバイスの位置と比較して)弁尖がさらに移動することを可能にし、それにより有効弁口面積を増加させ、心室と心房との間の血圧の勾配を低減することができる。
【0116】
図46Bは、心房から心室に向かう下向きの方向に見る、断面46B-46Bに沿って取られた図46Aの開放位置にあるデバイスの断面を示す。図46Bでは、弁尖20、22は、内側及び外側クラスプの間に固定されたままである。弁尖は開放位置にあり、弁尖の各々の中央領域は、クラスプに接続され、接合要素110の周囲で接合されたままである。弁尖間の間隙26が見える。
【0117】
デバイス100は、幅広い異なる方法で閉鎖位置(例えば、図45A及び図45B)から部分的開放位置(例えば、図46A及び図46B)に移動するように構成され得る。例えば、1つの例示的な実施形態では、クラスプ132、134は、1つ以上のばね要素によって閉鎖位置に付勢され得るが、付勢力は、天然弁の開閉によって取り除かれ、パドル120、122を部分的に開放させるのに十分低い。別の例示的な実施形態では、クラスプ132、134は、任意の位置に付勢されず、閉鎖位置と部分的開放位置との間を自由に移動することができる。さらに別の例示的な実施形態では、クラスプ132、134は閉鎖しているが、クラスプは、閉鎖位置から図46A及び図46Bによって示される部分的開放位置と同様である位置に屈曲するのに十分可撓性である。天然弁が閉鎖状態から開放状態に向かって移動するにつれて、デバイスによる天然弁尖に対する拘束を低減する任意のデバイス構成が実施され得る。
【0118】
第2の実施例では、図46Aは、デバイス100が部分的開放位置に埋め込まれる実施形態を示す。1つの例示的な実施形態では、デバイスは、内側クラスプ134及び外側クラスプ132が心臓周期全体にわたって同じ位置を維持するように、いったん埋め込まれると固定されたままであるように構成されている。弁尖は心臓周期中にまだ開閉するが、デバイスのクラスプは、この部分的開放位置に固定されたままである。これは、心房と心室との間の低い圧力勾配を維持するために、人工インプラントデバイスの埋め込みの際に天然弁尖のさらなる柔軟性を可能にする別の例示的実施形態である。
【0119】
さらに別の例示的な実施形態では、デバイス100は、図46A及び図46Bによって示される部分的開放位置にまだ埋め込まれているが、埋め込まれたデバイスは、心臓周期中に天然弁尖が開放すると、図示される部分的開放位置よりもさらに開放するように構成されている。これは、心房と心室との間の低い圧力勾配を維持するために、人工インプラントデバイスの埋め込みの際に天然弁尖のさらなる柔軟性を可能にするさらに別の例示的実施形態である。
【0120】
ここで図47A図48Bを参照すると、別の例示的な実施形態が示されている。この実施形態では、デバイス500は、幅広い異なる形状及びサイズを有することができる。47A及び図47Bを参照すると、接合要素510は、図6によって示される僧帽弁MVの間隙26など、弁の逆流弁口内の間隙充填材として機能する。接合要素510が2つの対向する弁尖20、22の間で展開されるため、弁尖は、接合要素510の領域内で互いに対して接合しないが、代わりに接合要素510に対して接合する。これにより、弁尖20、22が接近する必要がある距離が低減される。弁尖接近距離の低減は、幾つかの利点をもたらすことができる。例えば、接合要素及び結果と得られる接近の低減は、機能的弁疾患における大きい間隙など、重度の僧帽弁の解剖学的構造の修復を容易にすることができる(例えば、図6を参照)。接合要素が、天然弁が接近する必要がある距離を低減するため、天然弁における応力が低減又は最小化され得る。弁尖20、22のより短い接近距離は、より少ない接近力を必要とすることができ、これは、弁尖のより少ない張力及び弁輪のより小さい直径低減をもたらすことができる。弁輪のより小さい低減(又は弁輪の低減がないこと)は、弁口面積のより小さい低減に寄与することができる。結果として、接合要素は、経弁勾配を低減することができる。
【0121】
ここで図47A及び図47Bを参照すると、パドルフレームと、クラスプと、付勢部材と、接合要素とを有する例示的な実施形態では、付勢部材524は、接合要素510の形状に適合する。一実施例では、接合要素510が付勢部材524より幅広い場合、対向する弁尖20、22の間の距離(間隙)は、デバイス500によって作られ得る。図47A及び図47Bに示される例示的な実施形態を参照すると、パドル522、520は、接合要素510を取り囲む。従って、弁尖20、22が接合要素510に対して接合されたとき、弁尖20、22はその全体で接合要素510を完全に取り囲むか又は「抱え」るので、接合要素510の内側面及び外側面上の小さい漏れが防止され得る。
【0122】
図47A及び図47Bを参照すると、パドルフレーム520、522の付勢部材524が接合要素510の形状に適合するため、弁尖20、22は、付勢部材524によって、接合要素510の内側面及び外側面601、603上を含んで接合要素を完全に囲むように接合され得る。接合要素510の内側面及び外側面に対する弁尖20、22のこの接合は、接合要素510の存在が、弁尖が接近する必要がある距離を最小限に抑えるという上記と矛盾するように思われる。しかしながら、接合要素510が逆流間隙に正確に配置され、逆流間隙が接合要素510の幅(内側面-外側面)よりも小さい場合、弁尖20、22が接近する必要がある距離は、それでもなお最小限に抑えられる。
【0123】
図47Aは、中心からではなく前方を向いた側面図に向かってさらに遠くに向かう断面から取られた、断面図からの接合要素510及びパドルフレーム要素(内側パドル522、外側パドル520、及び付勢部材524)の形状を示す。デバイスの中心からずれたこの断面では、弁尖20、22は、接合要素に巻き付けられていることが示されている。中央では、弁尖20、22は、デバイスの各側面で内側クラスプ134と外側クラスプ132との間に位置付けられている。この図から分かるように、接合要素510は、弁尖20、22の内側表面が接合する必要がある場所により近い領域内でより小さい寸法であり、接合要素が心房に向かって延在するにつれて寸法が大きくなる、先細り形状を有する。弁尖20、22の解剖学的構造は、弁尖の内側が自由端部分で接合し、弁尖20、22が互いから離れて後退し始めるか又は広がり始めるようなものである。弁尖20、22は、心房の方向に離れて、弁尖が取り付けられる輪に向かって広がる。図示される天然弁の形状は、先細りの接合要素の形状によって適応される。図47Aをさらに参照すると、パドル522、520を(弁輪に向かって)付勢される図示される付勢構成要素524と併せて、先細りの接合要素の形状は、弁尖の下端における接合を達成し、応力を低減し、かつ経弁勾配を最小限に抑えるのに役立つことができる。
【0124】
図47Bを参照すると、概略的な心房図は、スペーサ形状に適合するパドルフレーム(実際は真の心房図からは見えない)を示す。対向する弁尖20、22(その両端も真の心房図では見えない)は、接合要素510を完全に取り囲むか又は「抱える」ためにパドルによって接近している。
【0125】
再び図47Bを参照すると、接合要素510は、幅広い異なる形状をとることができる。1つの例示的な実施形態では、上部(及び/又は上部からの断面図)から見たとき、接合要素は、卵形状又は楕円形状を有する。卵形状又は楕円形状は、追加の付勢構成要素524が接合要素の形状に適合することを可能にすることができ、かつ/又は横方向の漏れを低減することができる。
【0126】
上記のように、接合要素510は、位置601、603で弁尖が接合要素510に接近する必要がある距離を低減することによって、対向する弁尖の張力を低減することができる。位置601、603での弁尖接近の距離の低減は、弁尖応力及び勾配の低減をもたらすことができる。さらに、上でも説明されたように、天然弁尖20、22は、横方向の漏れを防止するために、接合要素を取り囲む又は「抱える」ことができる。1つの例示的な実施形態では、接合要素の幾何学的特徴は、デバイス500のこれらの2つの特徴を保持及び増強するように設計され得る。
【0127】
1つの例示的な実施形態では、弁修復装置500及びその接合要素510は、弁尖20、22の幾何学的解剖学的構造に適合するように設計されている。弁の密封を達成するために、弁修復装置500は、接合要素510の内側位置601及び外側位置603を含んで接合要素を完全に囲むように、天然弁を接合要素に接合するように設計され得る。さらに、位置601、603で弁尖を接合要素510と接触させるために必要な力の低減は、弁尖応力及び勾配を最小限に抑えることができる。
【0128】
図48A及び図48Bは、図47A及び図47Bのデバイスを示し、パドル522、520の対は部分的開放位置にある。クラスプ532、534は、接合要素510に対してパドル520、522の対と共に、図示される部分的開放位置に移動している。図48Aでは、断面図は、中心からではなくデバイスの前方を向いた側面に向かってさらに遠くに向かって取られる。デバイスの中心からずれたこの断面では、弁尖20、22は、接合要素の周囲に位置付けられ、接合要素によって占められていない弁尖の長さに沿ったそれらの縁部に沿って接合されていることが示されている。図48Aの視点からは見えない中央では、弁尖20、22は、デバイスの各側面で内側クラスプ534と外側クラスプ532との間に位置付けられている。クラスプ及びパドルは、本明細書に記載される例示的な実施形態において、接合要素及び/又はキャップに接続され得る。クラスプ及びパドルは、図48Aに示される開放位置で接合要素から離れて枢動する。
【0129】
図48Bは、図48Aに示されるデバイスのトップダウン図を示す。概略的な心房図は、開放位置にある、パドルフレーム(実際は真の心房図からは見えない)及びクラスプ(真の心房図からは見えない)を示す。対向する弁尖20、22(その両端もまた真の心房図では見えない)は各々、内側クラスプ534と外側クラスプ532との間に保持される。この図では、弁尖が開放して、左心房から左心室へ血流を可能にする。
【0130】
接合要素510は、幅広い異なる形状をとることができる。1つの例示的な実施形態では、上部(及び/又は上部からの断面図)から見たとき、接合要素は、卵形状又は楕円形状を有する。卵形状又は楕円形状は、付勢部材524が接合要素の形状に適合することを可能にすることができ、かつ/又は横方向の漏れを低減することができる。
【0131】
図48A及び図48Bに示される開放位置は、デバイスの各側面のクラスプ534、532、パドル522、520、及び付勢部材524が心臓周期全体を通して開閉することができる実施形態を示す。この実施形態では、図48A及び図48Bは、「開放」位置にあるクラスプ、パドル、及び付勢要素を示し、これは僧帽弁尖が開放位置にあり、左心房から左心室への血流を可能にするときに生じる。
【0132】
図48A及び図48Bはまた、クラスプ及びパドルが心臓周期中に開放位置に留まる実施形態の代表でもある。この実施形態では、図48A及び図48Bは、心室拡張期中のデバイス及び僧帽弁尖を示す。この実施形態では、収縮期中などに弁尖が閉鎖したときに、クラスプ及びパドルが「開放」位置に留まることができる。図48C及び図48Dは、固定された開放クラスプ及びパドルを有する(すなわち、デバイス自体が開放位置に固定されている)実施形態を示し、弁尖は収縮期中に閉鎖している。弁尖が閉鎖したとき、内側及び外側クラスプ134、132ならびに内側及び外側パドル522、520は開放位置に留まる。図48Cに示されるように、弁尖の各々の中央領域は、内側及び外側クラスプの間に固定されたままであり、弁尖の側面は接合要素510に接近する。弁尖は閉鎖しており、弁尖のより大きい部分が、対向する弁尖縁部及び接合要素に一緒に接合される。本明細書に記載される他の例示的な実施形態と同様に、パドル及び/又はクラスプは、形状記憶材料から作製され得るか、又は開放したまま機械的にロックされ得る。
【0133】
図48Dは、図48Cに示されるデバイスのトップダウン図を表す。概略的な心房図は、開放位置にある、パドルフレーム(実際は真の心房図からは見えない)及びクラスプ(当該クラスプのうち外側クラスプは、真の心房図では見えない)を示す。対向する弁尖20、22(その両端もまた真の心房図では見えない)は各々、内側クラスプ534と外側クラスプ532との間に保持される。この図では、弁尖20、22は「閉鎖」しており、接合要素510に接近して、左心房から左心室への血流を防止する。
【0134】
さらに別の例示的な実施形態では、デバイス500は、図48A及び図48Bによって示される部分的開放位置にまだ埋め込まれているが、埋め込まれたデバイスは、心臓周期中に天然弁尖が開放すると、図示される部分的開放位置よりもさらに開放するように構成されている。これは、心房と心室との間の低い圧力勾配を維持するために、人工インプラントデバイスの埋め込みの際に天然弁尖のさらなる柔軟性を可能にするさらに別の例示的実施形態である。
【0135】
ここで図49A図50Bを参照すると、内側及び外側パドル522、520、内側及び外側クラスプ534、532、及び接合装置510を有する、埋め込み型人工デバイス500の例示的な実施形態が示されている。図49Aのデバイスの接合装置、パドル、クラスプ、及びフレームは、図47Aに関して記載される実施形態の特徴と同じ特徴を有することができるが、パドル522、520及び取り付けられたクラスプを、接合要素に向かう方向に閉鎖させるために力をかける付勢構成要素は有しない。追加の付勢構成要素を含まないこの実施形態及び他の例示的な実施形態では、パドル及び/又はクラスプは、形状記憶材料から作製され得るか、又は別の方法で、デバイス及び/もしくは接合要素の中心に向かって閉鎖位置に付勢され得る。形状記憶金属の実施形態では、パドル及び/又はクラスプは、閉鎖位置に向かって付勢され、弁尖に対する血流の力が弁尖を開放させたときに開放するように設定され得る。従って、クラスプを閉鎖させた状態で保持するためにパドル及び/又はクラスプによって(又は実施形態に応じて付勢構成要素によって)提供される力は、拡張期中の弁尖上の血液の圧力によって取り除かれて、デバイス500及び天然弁尖を開放させることができる。デバイス自体の要素によって提供されるデバイスを閉鎖させる力及び/又は血圧の力(心室の収縮期中)は、収縮期中に閉鎖しているデバイスを閉鎖させるのに十分に大きい。
【0136】
図49Aは、中心からではなく前方を向いた側面図に向かってさらに遠くに向かう断面から取られた、接合要素の形状を示す。デバイスの中心からずれたこの断面では、弁尖20、22は、接合要素に巻き付けられていることが示されている。中央では、弁尖20、22は、デバイスの各側面で内側クラスプ534と外側クラスプ532との間に位置付けられている。この図から分かるように、接合要素510は、弁尖20、22の内側表面が接合する必要がある場所により近い領域内でより小さい寸法であり、接合要素が心房に向かって延在するにつれて寸法が大きくなる、先細り形状を有する。図示される天然弁の形状は、先細りの接合要素の形状によって適応される。
【0137】
図49Bを参照すると、概略的な心房図は、パドル522、520ならびに内側及び外側クラスプ534、532(外側クラスプ532は、実際は真の心房図からは見えない)を示し、各弁尖の中央領域は、内側及び外側クラスプの間に位置付けられている。弁尖の側面は、デバイスの任意の構成要素の間で、かつ心室収縮期中などの閉鎖位置にあるときに把持又は固定されず、接合要素を取り囲むか又は「抱え」、接合要素の形状に適合することができる。
【0138】
図50A及び図50Bは、図49A及び図49Bのデバイスを示し、パドル522、520の対は部分的開放位置にある。クラスプ532、534は、接合要素510に対してパドル520、522の対と共に、図示される部分的開放位置に移動している。図50Aでは、断面は、中心からではなくデバイスの前方を向いた側面に向かってさらに遠くに向かって取られて、クラスプによって固定される弁尖の部分ではなく、デバイスの前部にある弁尖の位置を示す。デバイスの中心からずれたこの断面では、弁尖20、22は開放して、左心房から左心室への血流を可能にし、接合要素は弁の中央にある。図50Bの視点から分かるように中央では、弁尖20、22は、デバイスの各側面で内側クラスプ534と外側クラスプ532との間に位置付けられている。クラスプは、本明細書に記載される例示的な実施形態において、接合要素及び/又はキャップに接続され得る。クラスプは、図50Aに示される開放位置で、パドルによって接合要素から離れて枢動する。
【0139】
図50Bは、図50Aに示されるデバイスのトップダウン図を示す。概略的な心房図は、内側及び外側パドル522、520ならびに内側及び外側クラスプ534、532(外側クラスプ532は真の心房図からは見えないが、参照のためにこの図に含まれる)、ならびに接合要素510を示し、各弁尖の中央領域は、開放位置にある内側及び外側クラスプの間に位置付けられている。対向する弁尖20、22(その両端は真の心房図では見えない)は各々、内側クラスプ534と外側クラスプ532との間に保持される。この図では、弁尖が開放して、左心房から左心室へ血流を可能にする。
【0140】
図50A及び図50Bに示される部分的開放位置は、パドルが心臓周期全体を通して開閉することができる実施形態を示す。この実施形態では、図50A及び図50Bは、「開放」位置にあるパドルを示し、これは僧帽弁尖が開放位置にあり、左心房から左心室への血流を可能にするときに生じる。従って、1つの例示的な実施形態では、デバイス500のパドル520、522は、心臓周期中に天然弁尖の開閉と共に開閉する。
【0141】
別の例示的な実施形態では、収縮期中などに弁尖が閉鎖したときに、パドルが「開放」位置に留まることができる。図50C及び図50Dは、固定された部分的開放状態で展開されたパドルを有する実施形態を示し、弁尖は収縮期中に閉鎖している。弁尖が閉鎖したときに、パドル524、524は展開された部分的開放位置に留まる。図50Cに示されるように、弁尖の各々の中央領域は、内側及び外側クラスプの間に固定されたままであり、弁尖の側面は接合要素510に接近する。弁尖は閉鎖しており、弁尖のより大きい部分が、一緒に、かつ接合要素に接合される。
【0142】
図50Dは、図50Cに示されるデバイスのトップダウン図を表す。概略的な心房図は、図50Cの展開された部分的開放位置にあるパドルを示す。対向する弁尖20、22は各々、内側クラスプ534と外側クラスプ532との間に保持される。この図では、弁尖20、22は閉鎖しており、接合要素510に接近して、左心房から左心室への血流を防止する。従って、天然弁尖が心臓周期中に開閉し、展開されたデバイスが展開された部分的開放位置に留まる。
【0143】
さらに別の例示的な実施形態では、デバイス500は、図50A及び図50Bによって示される部分的開放位置にまだ埋め込まれているが、埋め込まれたデバイスは、心臓周期中に天然弁尖が開放すると、図示される部分的開放位置よりもさらに開放するように構成されている。これは、心房と心室との間の低い圧力勾配を維持するために、人工インプラントデバイスの埋め込みの際に天然弁尖のさらなる柔軟性を可能にするさらに別の例示的実施形態である。
【0144】
ここで図51A図52Bを参照すると、埋め込み型人工デバイス500の例示的な実施形態が示され、デバイスは、内側及び外側クラスプ534、532と、内側及び外側パドル522、520と、追加の付勢部材524とを各側に有する。図51Aのデバイスのクラスプ及びパドルは、図47Aに関して記載される実施形態の特徴と同じ特徴を有することができるが、僧帽弁が閉鎖位置にあるときに弁尖が適合するための接合要素を有しない。弁尖20、22の解剖学的構造は、弁尖の内側が接合し、弁尖20、22が互いから離れて後退し始めるか又は広がり始めるようなものである。弁尖20、22は、各弁尖が僧帽輪と接触するまで、心房の方向に離れて広がる。
【0145】
図51A及び図51Bは、僧帽弁が閉鎖している心室収縮期中の、閉鎖位置にある埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態を示す。
【0146】
図51Aは、中心からではなく前方を向いた側面図に向かってさらに遠くに向かう断面から取られた、クラスプ534、532、パドル522、520、及び付勢部材524の形状を示す。弁尖20、22は一緒に接近し、デバイス500の中心からずれているこの断面の付勢部材524の形状に適合する。中央では、弁尖20、22は、デバイスの各側面で内側クラスプ534と外側クラスプ532との間に位置付けられている。
【0147】
ここで図51Bを参照すると、概略的な心房図は、内側及び外側クラスプ534、532(外側クラスプ532は真の心房図からは見えない)ならびにパドル522、520(閉鎖したデバイス、閉鎖した弁尖構成では、外側パドルは真の心房図からは見えないこと)を示し、各弁尖の中央領域は、内側及び外側クラスプの間に固定されている。弁尖の側面は、デバイスの任意の構成要素の間で、かつ心室収縮期中などの閉鎖位置にあるときに把持又は固定されず、輪により近い弁尖の部分よりも弁尖の縁部付近で互いに、より近く一緒に接近する。付勢部材524は、図51A及び図51Bに示される閉鎖位置にクラスプを押す力を提供することができ、弁尖の中央領域を一緒に接近させることを補助する。
【0148】
ここで図52A及び図52Bを参照すると、図51A及び図51Bのデバイスは、部分的開放構成にあるものとして示されている。この例では、デバイスのパドル及び付勢構成要素は開放位置にあり、弁尖は、心室拡張期中に生じるように開放していることが示されている。図52Aは、中心からではなく前方を向いた側面図に向かってさらに遠くに向かう断面から取られた、断面図からの接合要素510及び付勢部材524。デバイスの中心からずれたこの断面では、弁尖20、22の側面領域が示されている。図52Aの視点からは見えない中央では、弁尖20、22は、デバイスの各側面で内側クラスプ534と外側クラスプ532との間に位置付けられている。クラスプ、パドル、及び付勢部材は、キャップ514又はデバイス500の他の遠位部分に接続され得る。クラスプ及びパドルは、図52Aに示される開放位置で接合要素から離れて枢動する。
【0149】
図52Bは、図52Aに示されるデバイスのトップダウン図を示す。概略的な心房図は、開放位置にある、内側及び外側パドル522、520(真の心房図からは見えない)、内側及び外側クラスプ534、532(外側クラスプは真の心房図からは見えないが、デバイスのより良い理解のためにここでは追加されている)、ならびに付勢部材524を示す。対向する弁尖20、22(その両端もまた真の心房図では見えない)は各々、内側クラスプ534と外側クラスプ532との間に保持される。図52Bでは、弁尖は心室拡張期中にあるように開放し、これにより血液が左心房から左心室に流れる。
【0150】
図52A及び図52Bに示されるデバイス500の開放位置は、クラスプ及びパドルが、天然弁尖20と共に心臓周期全体を通して開閉することができる実施形態の開放位置を示す。開放位置は、心室拡張期中に生じることができ、ここで僧帽弁尖は開放位置にあり、左心房から左心室へ血流を可能にする。図52A及び図52Bは、開放しているデバイス位置及び開放している弁尖である。閉鎖しているデバイス及び閉鎖している弁尖は、図51A及び図51Bに示されている。
【0151】
図52A及び図52Bはまた、クラスプ及びパドルが心臓周期中に維持される固定された部分的開放位置で展開される別の実施形態の代表でもある。この実施形態では、図52A及び図52Bは、心室拡張期中のデバイス及び僧帽弁尖を示し、血液は心房から心室に流れる。
【0152】
図52C及び図52Dは、例示的な実施形態による図52A及び図52Bのデバイスを示し、デバイスは、弁尖が心室収縮期中に生じるように閉鎖しているときでさえ、心臓周期全体を通して部分的開放位置に留まる。この実施形態では、弁尖が閉鎖したとき、内側及び外側クラスプ534、532ならびに内側及び外側パドル522、520は開放位置に留まる。本明細書に記載される他の実施形態に関して上で説明されたように、弁尖は、心室内の血圧から弁尖に加えられる力、及び追加の付勢部材524によって加えられる力によって閉鎖する。図52Dに示されるように、弁尖の各々の中央領域は、内側及び外側クラスプの間に固定されたままであり、弁尖の側面は互いに接近する。
【0153】
さらに別の例示的な実施形態では、デバイス500は、図52A及び図52Bによって示される部分的開放位置にまだ埋め込まれているが、埋め込まれたデバイスは、心臓周期中に天然弁尖が開放すると、図示される部分的開放位置よりもさらに開放するように構成されている。これは、心房と心室との間の低い圧力勾配を維持するために、人工インプラントデバイスの埋め込みの際に天然弁尖のさらなる柔軟性を可能にするさらに別の例示的実施形態である。
【0154】
ここで図53A図54Bを参照すると、内側及び外側クラスプ534、532と、クラスプを埋め込み型人工デバイスの中央キャップ領域に取り付けるためのクラスプの周囲のパドル522、520とを有する、埋め込み型人工デバイス500の例示的な実施形態が示されている。図53Aのデバイスのクラスプ及びパドルは、図47Aに関して記載される実施形態の特徴と同じ特徴を有することができるが、閉鎖位置にクラスプを保持するための接合要素又は追加の付勢構成要素を有しない。別の例示的な実施形態では、クラスプ及び/又はパドルは、図53A図54Bに示されるよりも幅広くてもよい。別の例示的な実施形態では、クラスプ及び/又はパドルの各々の幅は、クラスプ/パドルの各々の長さに沿って変化し得る。クラスプ及び/又はパドルの幅にこれらの変化を提供することによって、弁尖が接触するためのより大きい表面積が提供される。より幅広いクラスプ及び/又はパドル、ならびに異なる幅のクラスプ及び/又はパドルは、本明細書に記載される実施形態のいずれかにおける特徴であり得る。
【0155】
図53A及び図53Bは、僧帽弁が閉鎖している心室収縮期中の、閉鎖位置にある埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態を示す。
【0156】
図53Aは、中心からではなく前方を向いた側面図に向かってさらに遠くに向かう断面から取られた、パドル522、520の形状を示す。デバイスの中心からずれたこの断面では、弁尖20、22は、一緒に接近して示されている。中央では、弁尖20、22は、デバイスの各側面で内側クラスプ534と外側クラスプ532との間に位置付けられている。
【0157】
ここで図53Bを参照すると、概略的な心房図は、内側及び外側クラスプ534、532(外側クラスプ532は、実際は真の心房図からは見えない)を示し、各弁尖の中央領域は、内側及び外側クラスプの間に固定されている。弁尖の側面は、デバイスの任意の構成要素の間で、かつ心室収縮期中などの閉鎖位置にあるときに把持又は固定されず、輪により近い弁尖の部分よりも弁尖の縁部において互いに接近する。弁尖は、弁尖の心室表面に対して、心室内での血圧の力によって収縮期中に一緒に接近する。
【0158】
ここで図54A及び図54Bを参照すると、図53A及び図53Bのデバイスは、部分的開放構成にあるものとして示されている。図54A及び図54Bによって示される実施例では、パドルは部分的開放位置にあり、弁尖は、心室拡張期中の血流によって開放していることが示されている。図54Aでは、中心を通してではなく前方を向いた側面に向かってさらに遠くに向かったデバイスの断面図が示されている。デバイスの中心からずれたこの断面では、弁尖20、22の側面領域が示され、それらは互いから離れて位置付けられている。中央では、図54Bに示されるように、弁尖20、22は、デバイスの各側面で内側クラスプ534と外側クラスプ532との間に位置付けられている。パドルは、キャップ514又はデバイス500の他の遠位部分に接続され得る。パドル及び取り付けられたクラスプは、図54Aに示される開放位置で接合要素から離れて枢動する。
【0159】
図54Bは、図54Aに示されるデバイスのトップダウン図を示す。概略的な心房図は、開放位置にある、パドル522、520(実際は真の心房図からは見えない)ならびに内側及び外側クラスプ534、532(外側クラスプは真の心房図からは見えない)を示す。対向する弁尖20、22(その両端もまた真の心房図では見えない)は各々、内側クラスプ534と外側クラスプ532との間に保持される。図54Bでは、弁尖は心室拡張期中にあるように開放し、これにより血液が左心房から左心室に流れることができる。
【0160】
図54A及び図54Bに示されるデバイス500の開放位置は、クラスプが心臓周期全体を通して開閉することができる実施形態の開放位置を示す。この実施形態では、図54A及び図54Bは、デバイスのクラスプが開放位置にあるときを示す。開放位置は、心室拡張期中、僧帽弁尖は開放位置にあり、左心房から左心室へ血流を可能にするときに生じることができる。図54A及び図54Bは、拡張期に対応する開放しているデバイス位置及び開放している弁尖。心室収縮期に対応する閉鎖しているデバイス及び閉鎖している弁尖は、図53A及び図53Bに示されている。従って、デバイスのパドルは、心臓周期中に天然弁尖と共に開閉する。
【0161】
図54A及び図54Bはまた、クラスプ及びパドルが心臓周期中に部分的開放位置で展開され、固定されたままである実施形態の代表でもある。この実施形態では、図54A及び図54Bは、心室拡張期中のデバイス及び僧帽弁尖を示す。
【0162】
図54C及び図54Dは、心室収縮期中に生じるように弁尖が閉鎖しているときの、図54A及び図54Bのデバイスを示す。この実施形態では、弁尖が閉鎖したとき、パドルは開放位置に留まる。弁尖は、心室内の血圧から弁尖に加えられる力によって閉鎖する。弁尖の各々の中央領域は、内側及び外側クラスプの間に固定されたままであり、弁尖の側面は互いに接近する。
【0163】
ここで図55を参照すると、埋め込み型人工デバイスの別の例示的な実施形態が示されている。図55は、編み又は織りニチノールワイヤなどの編み又は織り材料の連続ストリップから形成されるデバイス500Aを示している。デバイス500Aは、上記の他のデバイスのいずれかに関する上記の方法のいずれかで、天然弁尖と共に開閉するように構成され得、部分的開放位置にパドルがある状態で展開され、パドルが心臓周期中に展開された部分的開放位置に固定されたままであるように構成され得、かつ/又は部分的開放位置にパドルがある状態で展開され、パドルが心臓周期中に部分的開放位置からさらに開放し、展開位置に戻るように構成され得る。
【0164】
図55Aを参照すると、連続ストリップ501Aは、カラー511D、キャップ514A、及びクラスプ530Cに取り付けられる。図示される実施形態では、接合要素510A、ヒンジ部分521A、523A、525A、外側パドル520A、及び内側パドル522Aは、連続ストリップ501Aから形成される。連続ストリップ501Aは、材料の単一層であってもよく、又は2つ以上の層を含んでもよい。ある特定の実施形態では、デバイス500Aのある部分は、材料のストリップ501Aの単一層を有し、他の部分は、材料のストリップ501Aの複数の重なり合っている又は重なる層から形成される。例えば、図55は、材料のストリップ501Aの複数の重なり合っている又は重なる層から形成された接合要素510A及び内側パドル522Aを示す。結果として、接合要素510A及び内側パドル522Aは、材料501Aの単一層から形成される外側パドル520Aと比べて高められた硬さを有する。材料の単一の連続ストリップ501Aは、デバイス500Aの様々な位置で開始及び終了することができる。材料のストリップ501Aの端部は、デバイス500Aの同一の位置又は異なる位置にあり得る。例えば、図55の図示される実施形態では、材料のストリップは、内側パドル522の位置で開始及び終了する。
【0165】
クラスプ530Cは、取り付け又は固定部分532Cと、アーム又は可動部分534Cと、返し536Cと、ジョイント部分538Cとを備えることができる。取り付け又は固定部分532Cは、縫合、接着剤、締結具、溶接、縫い合わせ、スウェージング、摩擦嵌合、及び/又は接合要素510Aに近接して配置されるジョイント部分538Cと連結するための他の手段などの様々な方法で、内側パドル522Aに連結され得る。
【0166】
可動部分534Cは、開放構成(例えば、図49A)と閉鎖構成(図50A)との間で固定部分532Cに対して枢動又は屈曲することができる。幾つかの実施形態では、クラスプ530Cは、閉鎖構成に向かって付勢され得る。開放構成では、固定部分532C及び可動部分534Cは、固定部分532Cと可動部分534Cとの間に天然弁尖が位置付けられ得るように、互いから離れて枢動又は屈曲する。閉鎖構成では、固定部分532C及び可動部分534Cは、互いに向かって枢動又は屈曲し、それにより固定部分532Cと可動部分534Cとの間で天然弁尖を締め付ける。固定アーム532Cは、可動アーム534Cが開放して返し付きクラスプ530Cを開放させ、返し536Cを露出するときに、実質的に固定されたままである。返し付きクラスプ530Cは、可動アーム534Cに取り付けられた作動線516Aに張力をかけ、それにより可動アーム534Cをジョイント部分538C上で枢動又は屈曲させることによって開放する。
【0167】
図55のデバイス500Aは、閉鎖位置で示されている。側面から、デバイス500Aは、デバイス500Aの遠位部分507Aに向かって丸みを帯び、かつ先細りである略逆台形の形状を有する。
【0168】
デバイス500Aの閉鎖構成において、内側パドル522Aは、外側パドル520Aと接合要素510Aとの間に配置される。幾つかの実施形態では、デバイス500Aは、開閉されて僧帽弁MVの天然弁尖20、22を把持することができるクラスプ又は把持部材530Cを含む。クラスプ530Cは、内側パドル522Aに取り付けられ、それと共に移動し、内側パドル522Aと接合要素510Aとの間に配置される。
【0169】
図55に示される実施形態は、本明細書に記載される例示的な実施形態のいずれかに従って使用され得る。すなわち、デバイスは、例えば図50Aに示されるように、弁尖の開口と共に開放することができる。デバイスはまた、例えば図50A図50Dに示されるように、心臓周期中に部分的開放位置に留まることもできる。さらに、デバイスは、パドルが部分的に開放した状態で埋め込まれ得、パドルは、心臓周期と共に展開位置とさらなる開放位置との間を行き来することができる。さらに、デバイスは、図59A及び図59Bに関して本明細書に記載されるものなどの可撓性材料から作製され得る。
【0170】
図55に示されるデバイス500Aは、閉鎖位置で示されており、可撓性領域525A及び521Aにより枢動して開放することもできる。上記の他の実施形態と同様に、僧帽弁が閉鎖しているとき、デバイス500Aは図55に示されるように閉鎖位置にある。図55のデバイスは、心室拡張期中などの弁尖が開放しているときに開放位置(図示せず)にあり得る。図55のデバイスはまた、心臓周期全体を通して開放構成に留まることができる。そのような実施形態では、本明細書に記載される他の実施形態に関して図示されるように、弁尖は収縮期中に一緒に接合する(例えば、図50C図50Dを参照)。
【0171】
ここで図56A及び図56Bを参照すると、埋め込み型人工デバイスの天然僧帽弁及び例示的な実施形態の交連内図が示されている。パドル及び接合要素の形状及びサイズは、接合により弁尖に対する応力の低減に影響を及ぼす。接合要素510に対する弁尖20、22の接合、ならびに接合要素510及び/又は外側及び内側パドル520、522(内側パドル522は見えない)によって弁尖20、22に加えられる応力の低減の両方を行うために、接合要素510は、円形又は丸みを帯びた形状を有することができる。接合要素の円形形状及び/又は各パドルの図示される完全に丸みを帯びた形状は、大きく、湾曲した係合領域607にわたって弁尖20、22に応力を分配する。例えば、図56Aでは、弁尖20が拡張期中に開こうとしている際に、パドルによる弁尖20、22への力は、パドルの丸みを帯びた全長に沿って広がる。
【0172】
ここで図56Bを参照すると、交連内図から示される、僧帽弁上に埋め込まれた埋め込み型人工デバイスの別の例示的な実施形態が示されている。図56Bの実施形態は、図56Aにおける表面積よりも小さい表面積を有する外側パドル520及び内側パドル(図56A及び図56Bの斜視図では見えない)を有することができる。例えば、パドルの高さHは、天然弁尖20、22の長さ(端部から輪まで)の75%未満、例えば、天然弁尖の長さの50%未満、天然弁尖の長さの25%未満であり得る。さらに、図56Aに示されるように、接合要素510は、パドルよりも小さくあり得る。例えば、接合要素の幅(天然弁尖にわたる)は、接合要素の幅(同様に天然弁尖にわたる)の75%未満であり得、例えば、接合要素の幅は、パドルの幅の50%未満であり得、例えば、接合要素の幅は、パドルの幅の25%未満であり得る。パドル及び接合要素のより小さいプロファイルは、心臓周期中の弁尖に対する力に影響を与える。弁尖上のパドル及び接合要素の係合領域607の低減は、特に天然弁輪に向かって、拡張期中の弁尖間のより大きい開口を可能にするので、有効弁口面積ならびに弁尖の可動性を増加させる。これは、弁輪24付近の弁尖間のより広い開口を示す矢印5601によって示されている。
【0173】
ここで図57A図58Bを参照すると、例示的な埋め込み型人工デバイスの概略図が示されている。図57A図58Bの概略図は、本明細書に記載される例示的な実施形態のいずれかに適用され得る。図57A及び図58Aは、埋め込み型人工デバイスの中心から取られた断面を示す。図57Aでは、弁尖20、22は各々、内側クラスプ134と外側クラスプ132との間の定位置で保持される。図57Aは、外側クラスプ上の返し136を示す。返しは任意であり、外側クラスプ又は内側クラスプのうち1つ以上のクラスプに位置付けられる。外側クラスプ132上の返しは、弁尖20、22の心室側に接続する。内側クラスプ134(図示せず)上の返しは、弁尖20、22の心房側に接続する。返しは、図59A図61Dに示される実施形態を含む、本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて内側クラスプ134上にあり得る。クラスプは、例えば、図11に示されるキャップ114などのキャップであり得る基部571によって一緒に保持される。
【0174】
図57Bは、下側を見る心房図からの、断面57B-57Bに沿って取られた図57Aの概略図の断面を示す。図57Bでは、弁尖は閉鎖しているので、共に接合されている。各弁尖の中央領域は、内側クラスプ134と外側クラスプ132との間で捕捉され、返し136によって定位置でさらに固定される。弁尖20、22は、基部571を取り囲み、これにより基部は、心室収縮期中に逆流血液を実質的に遮断する。
【0175】
図58Aは、埋め込み型人工デバイス100のクラスプ132、134が、天然弁尖上でのそれらの把持を維持しながら、天然弁尖の移動と共に部分的開放位置まで枢動している、図57Aの例示的な実施形態の概略図を示している。図58Aは、デバイスの中央を通した断面図から取られる。弁尖20、22は各々、内側クラスプ134と外側クラスプ132との間で捕捉及び保持され得る。
【0176】
図58Bは、下側を見る心房図からの、断面58B-58Bに沿って取られた図58Aの概略図の断面を示す。弁尖は、心室拡張期中に生じるように開放しており、弁尖は、クラスプ中に捕捉された弁尖組織の同一の幅に沿って基部571に接続される。天然弁が開放しているとき、基部571の各側の天然弁の開口を通って血液が流れる。
【0177】
ここで図59A及び図59Bを参照すると、可撓性クラスプを有する埋め込み型人工デバイスの例示的な実施形態の概略図が示されている。図59Aでは、弁尖20、22は、内側クラスプ134と外側クラスプ132との間の定位置で保持される。本明細書の他の例示的な実施形態に従って記載される返し136は任意である。クラスプは、基部571に接続される。この実施形態は、閉鎖クラスプ位置及び部分的屈曲開放クラスプ位置を有する。閉鎖クラスプ位置では、クラスプ及び弁尖は、図57A(及び図57B)の概略図にあるように位置付けられている。図59A及び図59Bは、部分的屈曲開放クラスプ位置及び開放位置の弁尖を示す。この図では、クラスプは、可撓性材料から作製され得る。例えば、形状が閉鎖構成で固定されるが、心臓周期中に閉鎖位置まで屈曲するのに十分可撓性であるニチノールが使用され得る。可撓性クラスプ(及び/又は可撓性パドル)は、ジョイントを中心として枢動するクラスプ及びパドルの代わりに使用され得る。また、ニチノール編み構造からパドル及び/もしくはクラスプを形成することによって、かつ/又はパドル及び/もしくはクラスプに開口をレーザー切断することによって、可撓性が追加され得る。
【0178】
図59Bは、断面59B-59Bに沿って取られ、かつ心房の視点から下を見た図59Aの概略図の断面を示す。この開放位置では、室内拡張期中に生じるように、弁尖が開放している。弁尖の中央領域縁部が基部571に向かって接近し、クラスプによって定位置で保持される一方で、弁尖組織の残りの部分は、心臓周期中に開閉する。ここで、開放している弁尖は、左心房から左心室への血流を可能にする。図59A及び図59Bでは、弁尖は、心室拡張期中にあるように開放している。弁尖は、開放構成において基部に接近することができ、それでもなお低い圧力勾配を維持するのに十分な有効弁口面積を可能にする。接合要素を有する実施形態では、弁尖は、接合要素に接近し得る。図59Bに示されるように、弁尖は、各弁尖の中央領域におけるクラスプ134、132の間に保持され、弁尖は、それらがクラスプによって保持されていない領域で開放している。開放している弁尖は、血液が左心房から左心室に流れることを可能にする。本明細書に記載される他の例示的な実施形態と同様に、本実施形態における有効弁口面積は、左心房と左心室との間の5mmHg以下の低い圧力勾配を維持する。ある特定の例示的な実施形態では、接合要素があり得、その場合、弁尖は、接合要素(例えば、図47A及び図47Bに示されるような)に接近し得る。さらに他の例示的な実施形態では、パドル及び/又は付勢構成要素があり得る。本明細書に記載される特徴の各組み合わせは、可撓性クラスプの実施形態で使用され得、構成要素の1つ以上は可撓性であり、クラスプを部分的開放位置及び閉鎖位置に移動させるためにジョイントに依存する代わりに、クラスプが部分的屈曲開放位置に移動することを可能にする。
【0179】
ここで図60A図61Bを参照すると、作動シャフト605がクラスプの各対の間の距離Dを調節するために使用され、クラスプの対が内側クラスプ134と外側クラスプ132とを含む、例示的な実施形態の概略図が示されている。作動シャフト605は、シャフトもしくはワイヤ、又は当該技術分野において既知の任意の他の作動手段であってもよい。作動シャフト605は、アーム606を有することができる基部571に接続される。基部は、調節可能な基部であり得、可撓性材料から作製され得る。図60Aでは、作動シャフト605はまだ作動されておらず、クラスプ及び基部アーム606は、距離Dがまだ拡張されていないコンパクトな位置にある。弁尖20、22は、内側及び外側クラスプ134、132の間の定位置でそれぞれ保持され、任意の返し136は、各内側クラスプと外側クラスプとの間の定位置で弁尖組織をさらに保持する。
【0180】
図60Bは、図60Aの断面60B-60Bから取られたトップダウン断面図を示す。シャフト605は、延長可能なアーム606を有する基部571に接続される。アーム606は、図60A及び図60Bにあるように、デバイスがコンパクトな位置にあるときに屈曲位置にあり得る。図60Bでは、弁尖は閉鎖位置にある。
【0181】
図61A及び図61Bを参照すると、例示的な実施形態の拡張位置が示されている。作動シャフト605は、クラスプの各対間の距離を拡張するように作動されている。拡張位置では、延長可能なアーム606は、図60Aのコンパクトな位置で湾曲構成から直線になる。図61Bは、断面61B-61Bに沿って取られた、図61Aに示される概略図のトップダウン断面図を示す。図61Bでは、各弁尖20、22は、内側クラスプ134と外側クラスプ132との間に保持される。弁尖の中央領域は、デバイスのアーム606に接合され、クラスプ及び任意の返し136によって定位置で保持され得る。デバイスは、弁尖が開閉するときに拡張構成に留まることができる。図61A及び図61Bでは、デバイスは、閉鎖位置の作動拡張位置にあり、これによりクラスプ及び弁尖は閉鎖している。
【0182】
図61C及び図61Dを参照すると、図61A及び図61Bによって示されるデバイスは、クラスプが離れて拡張され、クラスプが部分的に枢動(又は屈曲)して開放し、弁尖が拡張期中に生じるように開放している状態で示されている。図61Cは、半径方向外向きの方向に枢動したクラスプを示す。図61C及び図61Dに示されるように、弁尖は、内側及び外側クラスプの間の定位置で保持される。弁尖の端部は、図61Dに示されるように、各弁尖の中央領域においてデバイスの基部の周囲の定位置で保持される。この図では、弁尖の側面は開放している。このデバイスの調節機能により、拡張期中の弁尖間の開口が調節されることが可能になる。これは、異なるサイズの心臓弁及び逆流を引き起こす天然弁尖間の間隙に適応することができる。このサイズ調節は、デバイスが完全に埋め込まれた後に低い圧力配をもたらすために有効弁口面積を最適化するためにも使用され得る。
【0183】
本明細書に開示される本発明は、幅広い異なる弁修復装置に具現化され得る。ここで図62及び図63を参照すると、2018年1月9日出願の米国出願第15/868,890号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるように、内側クラスプ634と、パドル632と、カプラー610とを有する、クラスプ間の距離を調節するためにカプラーによって動作可能なデバイス600の例示的な実施形態が示されている。
【0184】
図62を参照すると、デバイスは、シャフト609と、シャフトに沿って移動するように構成されたカプラー610とを有することができる。シャフト609に沿ったカプラー610の移動が、パドルを開放位置と閉鎖位置との間で移動させるように、カプラー610は、パドル632に機械的に接続されている。このように、カプラー610は、外側クラスプ632をシャフト609に機械的に連結するための、かつシャフト609に沿って移動するときに、外側クラスプ632をそれらの開放位置と閉鎖位置との間で移動させるための手段として機能する。1つの例示的な実施形態では、カプラーは、シャフト上を上下に自由に摺動し、パドル632及びクラスプが一緒により近くに移動し(図63を参照)、心臓の鼓動と共にさらに離れて移動する(図62を参照)ことを可能にする。
【0185】
ある特定の実施形態では、パドル634は、内側クラスプが移動して、外側パドル632と内側クラスプ634との間の開口614の幅を調節するように、基部組立品604に接続されている。内側クラスプ634は、弁尖20、22への取り付けを改善するために、その上の領域上に返し付き部分636も有することができる。そのようなデバイスは、本明細書に記載される他の例示的な実施形態にあるように弁尖組織を把持するために使用され得、いったん埋め込まれると開放したままであることができるか、又はクラスプは、心臓周期と共に開閉することができる。
【0186】
ここで図63を参照すると、カプラー610は移動して、デバイスの中心に向かってクラスプをより近づけている。カプラーは、図62に示される位置で固定され得るか、又はそれは、図62の「部分的開放デバイス」位置と図63に示される「閉鎖デバイス」位置との間で移動して、本明細書に記載される他の例示的な実施形態にあるように、心臓周期と共にデバイスのクラスプを開閉することができる。
【0187】
ここで図64及び図65を参照すると、米国仮出願第62/659,253号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるように、アンカー204とスペーサ部材202とを有するデバイスの例示的な実施形態が示されている。図64及び図65の図は、デバイス200が僧帽弁の弁尖上に埋め込まれたときに、心室内から取られた底部の視点から取られている。この実施形態では、アンカー204は、図65に示されるように、天然僧帽弁が単一の弁口を有するように、室内拡張期中にスペーサ部材202に対して半径方向外向きに、部分的開放構成まで移動することができる。アンカー204は、図64に示されるように、天然弁尖608が一緒、かつ/又は人工デバイス200に対して接合して、僧帽弁逆流を防止又は低減するように、心室収縮期中にスペーサ部材202に対して半径方向内向きに、閉鎖構成まで移動することができる。アンカー204が自然な心臓周期中に開閉すると、クラスプ206は、図64及び図65に示されるように、天然弁尖20、22をアンカー204に対して保持することができる。
【0188】
このように人工デバイス200を構成することにより、天然弁尖20、22が埋め込み後に自然に移動することが可能になる。これは、例えば、心室拡張期中に順行性血流を促進しながら、それでもなお心室収縮期中に逆行性血流を低減又は防止することができる。これはまた、天然弁尖に対する天然組織損傷を低減又は防止することもできる。経時的に、内皮化は、係留パドルとスペーサ部材との間の組織ブリッジを形成することができる。
【0189】
本発明の様々な発明的態様、概念、及び特徴が、例示的な実施形態において組み合わせて具現化されるように、本明細書に記載及び図示され得るが、これらの様々な態様、概念、及び特徴は、個々に又は様々な組み合わせ及びその部分的組み合わせのいずれかで、多くの代替の実施形態において使用され得る。本明細書で明示的に除外されない限り、そのような全ての組み合わせ及び部分的組み合わせは、本出願の範囲内であることが意図されている。さらに、代替の材料、構造、構成、方法、デバイス、及び構成要素、形成、適合、及び機能するための代替物など、開示の様々な態様、概念、及び特徴に関する様々な代替の実施形態が本明細書に記載され得るが、そのような記載は、現在既知であるか後に開発されるかにかかわらず、利用可能な代替の実施形態の完全な又は包括的な列挙であることを意図していない。当業者であれば、そのような実施形態が本明細書に明示的に開示されていない場合でさえ、本発明の態様、概念、又は特徴のうち1つ以上を追加の実施形態及び使用に容易に取り入れ得る。
【0190】
さらに、本発明の一部の特徴、概念、又は態様が、本明細書において好ましい配置又は方法であると記載され得るにもかかわらず、そのような記載は、明示的にそのように記載されない限り、そのような特徴が必須又は必要であることを示唆することを意図していない。さらに、例示的又は代表的な値及び範囲は、本出願の理解を助けるために含まれ得るが、そのような値及び範囲は、限定的な意味で解釈されるべきではなく、明示的にそのように記載された場合のみ、重要な値又は範囲であることを意図している。
【0191】
さらに、様々な態様、特徴、及び概念が、本明細書において発明的なもの又は開示の一部を形成するものと明示的に特定され得るが、そのような特定は排他的であることを意図せず、むしろ、そのように明示的に特定されることなく、又は特定の開示の一部として本明細書に十分に記載される発明的態様、概念、及び特徴があり得、本発明は代わりに、添付の特許請求の範囲に記載されている。例示的な方法又はプロセスの記載は、全ての場合に必須である全てのステップの包含に限定されず、明示的にそうであると記載されない限り、ステップが必須又は必要であると解釈されるために提示される順序でもない。請求項で使用される用語は、それらの完全な通常の意味を有し、本明細書の実施形態の記載によって何ら限定されない。
【符号の説明】
【0192】
100 デバイス
102 送達シース(送達手段)
104 接合部分
106 アンカー部分
110 デバイス(接合要素、接合手段)
112 作動ワイヤ(シャフト)
114 キャップ
116 作動線
120 外側パドル(把持要素)
122 内側パドル(把持要素)
124 部分(ジョイント、可撓性部分)
126 部分(ジョイント、可撓性部分)
128 部分(ジョイント、可撓性部分)
130 返し付きクラスプ
132 基部(固定アーム)
134 可動アーム
136 返し(固定手段)
138 ジョイント部分
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【外国語明細書】