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特開2024-163296ソフトゲルにおけるAPI安定性の向上
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163296
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ソフトゲルにおけるAPI安定性の向上
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/48 20060101AFI20241114BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20241114BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 31/09 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
A61K9/48
A61K47/10
A61K47/32
A61K31/09
A61K31/137
A61K31/167
A61K31/192
A61K31/485
A61P29/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024158269
(22)【出願日】2024-09-12
(62)【分割の表示】P 2021554781の分割
【原出願日】2020-03-11
(31)【優先権主張番号】62/816,621
(32)【優先日】2019-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501477831
【氏名又は名称】アール.ピー. シェーラー テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・キース・ダラム
(72)【発明者】
【氏名】ヒテシュ・エス・パテル
(57)【要約】
【課題】本出願は、ソフトゲル、特に、経時的な不安定性を最小限にするとともに有効医薬化合物(API)の安定性を向上させたソフトゲルに関する。
【解決手段】有効医薬成分の安定性を向上させたソフトゲル及びそれを調製する方法を提供する。いくつかの実施形態では、ソフトゲルは、充填材料組成物及びソフトゲルシェルを含む。いくつかの実施形態では、ソフトゲルの充填材料組成物は、1種又は複数種の有効医薬成分(API);2~15質量%のポビドン;30~60質量%のポリエチレングリコール;及び0.5~5質量%のプロピレングリコールを含み、この充填材料組成物は、3.75以下のpHを有する。いくつかの実施形態では、ソフトゲルシェルは、酸性成分を含むソフトゲルシェル組成物から作製される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種又は複数種の有効医薬成分(API)、
2~15質量%のポビドン、
30~60質量%のポリエチレングリコール、及び
0.5~5質量%のプロピレングリコールを含み、3.75以下のpHを有する、充填材料組成物と、
ソフトゲルシェルと
を含む、医薬用ソフトゲル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により内容全体が本明細書に組み込まれている、2019年3月11日に出願した米国仮特許出願第62/816,621号の優先権を主張するものである。
【0002】
これは、ソフトゲル、特に、経時的な不安定性を最小限にするとともに有効医薬化合物(API)の安定性を向上させたソフトゲルに関する。
【背景技術】
【0003】
ソフトゲルは、医薬化合物の一般的な剤形である。具体的には、ソフトゲルは、一般に飲み込みやすく、混入を妨げ、液剤、錠剤等の代替の剤形よりも胃の不快感が多くの場合少ない医薬品用経口剤形である。ソフトゲルは、2つの主要な構成要素であるシェル及び充填材料を含む。いくつかのソフトゲルシェルには、ゼラチン、水、乳白剤、及び可塑剤が含まれることがある。充填材料は、有効医薬成分(API)と多数の非有効成分のうちのいずれかとを含む。
【0004】
時々、ソフトゲルシェルとソフトゲルの充填材料との間で望ましくない反応が起こることがある。例えば、ソフトゲルシェルからの水が充填材料に移動して、充填材料とソフトゲルシェルの両方の物理的及び化学的性質を変化させる可能性がある。同様に、充填材料の成分がソフトゲルシェルに移動して、充填材料とソフトゲルシェルの両方の物理的及び化学的性質を変化させる可能性がある。これに加えて、賦形剤及び賦形剤の分解物が、APIと悪い形で相互作用する可能性がある。これらの反応は、移動して有害反応に関与する化学成分に応じて、APIの有効性や安定性等に悪影響を及ぼす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
充填材料組成物、ソフトゲルシェル組成物、ソフトゲル組成物、及びそれらを調製する方法を記載する。提供する組成物、並びに前記充填材料組成物、ソフトゲルシェル組成物、及びソフトゲル組成物を調製する方法は、ソフトゲルシェルとソフトゲルの充填材料との間の相互作用に関する問題に対処することによって1種又は複数種のAPIの安定性を向上させる。これらの有害反応は、ソフトゲルシェルとソフトゲルの充填材料との間に生じて、ソフトゲルの1種又は複数種の成分の安定性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
1種又は複数種のAPIは、ソフトゲルの特定の非有効成分に晒されると分解する可能性がある。例えば、フェニレフリンは、ポビドン又はPEG等、充填材料の非有効成分と反応して、フェニレフリンの分解が引き起こされることがある。いくつかの実施形態では、ポビドン又はPEG等の非有効材料の分解物がフェニレフリンと反応し、フェニレフリンの分解が引き起こされることがある。フェニレフリン等のAPIがソフトゲル内で分解すると、フェニレフリンの安定性が損なわれる。APIの不安定性は、ソフトゲルの有効期間、強度、及び/又は有効性に影響を及ぼす可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、充填材料組成物、ソフトゲルシェル組成物、ソフトゲル組成物、及びそれらを作製する方法は、ソフトゲルの1種又は複数種のAPIの安定性を向上させることに関する。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、酸性溶液を含むことができる。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、酸化防止剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、ソフトゲルシェル組成物は、酸性溶液を含むことができる。いくつかの実施形態では、充填材料のpHを1種又は複数種の分解物材料のpKa未満に制御することにより、ソフトゲルのAPI安定性を向上させることができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、1種又は複数種の有効医薬成分(API)、2~15質量%のポビドン、30~60質量%のポリエチレングリコール、及び0.5~5質量%のプロピレングリコールを含み、3.75以下のpHを有する充填材料組成物と、ソフトゲルシェルとを含む、医薬用ソフトゲルを提供する。
【0009】
ソフトゲルのいくつかの実施形態では、ソフトゲルシェルは、酸性成分を含むソフトゲルシェル組成物から作製される。
【0010】
ソフトゲルのいくつかの実施形態では、酸性成分は、塩酸を含む。
【0011】
ソフトゲルのいくつかの実施形態では、1種又は複数種のAPIは、イブプロフェン、フェニレフリン、デキストロメトルファン、アセトアミノフェン、又はグアイフェネシンを含む。
【0012】
ソフトゲルのいくつかの実施形態では、APIは、フェニレフリンを含む。
【0013】
ソフトゲルのいくつかの実施形態では、充填材料組成物は、30質量%以上の全APIを含む。
【0014】
ソフトゲルのいくつかの実施形態では、ソフトゲルは、60質量%以下の全APIを含む。
【0015】
ソフトゲルのいくつかの実施形態では、ポビドンは、ポビドンK-12及びポビドンK-30のうちの一方又は両方を含む。
【0016】
ソフトゲルのいくつかの実施形態では、ポビドンは、ポビドンK-30を含む。
【0017】
ソフトゲルのいくつかの実施形態では、ポリエチレングリコールは、PEG 400を含む。
【0018】
ソフトゲルのいくつかの実施形態では、充填材料組成物は、0.5質量%~1.0質量%の0.5Nの塩酸を含む。
【0019】
ソフトゲルのいくつかの実施形態では、ソフトゲルは、1質量%~2質量%の25%のヨウ化カリウムを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、1種又は複数種の有効医薬成分(API)、2~15質量%のポビドン、30~60質量%のポリエチレングリコール、及び0.5~5質量%のプロピレングリコールを含み、3.75以下のpHを有する、ソフトゲル用充填材料組成物を提供する。
【0021】
組成物のいくつかの実施形態では、1種又は複数種のAPIは、イブプロフェン、フェニレフリン、デキストロメトルファン、アセトアミノフェン、及びグアイフェネシンのうちの少なくとも1種を含む。
【0022】
組成物のいくつかの実施形態では、1種又は複数種のAPIは、フェニレフリンを含む。
【0023】
組成物のいくつかの実施形態では、組成物は、30質量%以上の全APIを含む。
【0024】
組成物のいくつかの実施形態では、組成物は、60質量%以下の全APIを含む。
【0025】
組成物のいくつかの実施形態では、ポビドンは、ポビドンK-12及びポビドンK-30のうちの少なくとも一方を含む。
【0026】
組成物のいくつかの実施形態では、ポビドンは、ポビドンK-30を含む。
【0027】
組成物のいくつかの実施形態では、ポリエチレングリコールは、PEG 400を含む。
【0028】
組成物のいくつかの実施形態では、3.75以下のpHは、塩酸を充填材料組成物に混合することによって達成される。
【0029】
組成物のいくつかの実施形態では、組成物は、1質量%~2質量%の25%のヨウ化カリウムを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、ソフトゲル用充填材料組成物を調製する方法であって、30~60質量%のポリエチレングリコール、0.5~5質量%のプロピレングリコール、2~15質量%のポビドン、1種又は複数種の有効医薬成分(API)、及び酸性成分を組み合わせて、充填材料組成物の3.75以下のpHを達成する工程を含む、方法を提供する。
【0031】
方法のいくつかの実施形態では、1種又は複数種のAPIは、イブプロフェン、フェニレフリン、デキストロメトルファン、アセトアミノフェン、又はグアイフェネシンを含む。
【0032】
方法のいくつかの実施形態では、APIは、フェニレフリンを含む。
【0033】
方法のいくつかの実施形態では、方法は、30質量%以上のAPIを含む。
【0034】
方法のいくつかの実施形態では、方法は、60質量%以下のAPIを含む。
【0035】
方法のいくつかの実施形態では、ポビドンは、ポビドンK-12及びポビドンK-30のうちの一方又は両方を含む。
【0036】
方法のいくつかの実施形態では、ポビドンは、ポビドンK-30を含む。
【0037】
方法のいくつかの実施形態では、ポリエチレングリコールは、PEG 400を含む。
【0038】
方法のいくつかの実施形態では、酸性成分は、0.5質量%~1.0質量%の0.5Nの塩酸を含む。
【0039】
方法のいくつかの実施形態では、方法は、1質量%~2質量%の25%のヨウ化カリウムを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、ソフトゲルを調製する方法であって、30~60質量%のポリエチレングリコール、0.5~5質量%のプロピレングリコール、2~15質量%のポビドン、1種又は複数種の有効医薬成分(API)、及び酸性成分を組み合わせて、3.75以下のpHを有する充填材料を形成する工程と、充填材料をソフトゲルシェルにカプセル封入して、ソフトゲルを形成する工程と、を含む、方法を提供する。
【0041】
方法のいくつかの実施形態では、ソフトゲルシェルは、酸性成分を含むソフトゲルシェル組成物から作製される。
【0042】
方法のいくつかの実施形態では、酸性成分は、塩酸を含む。
【0043】
方法のいくつかの実施形態では、1種又は複数種のAPIは、イブプロフェン、フェニレフリン、デキストロメトルファン、アセトアミノフェン、又はグアイフェネシンを含む。
【0044】
方法のいくつかの実施形態では、APIは、フェニレフリンを含む。
【0045】
方法のいくつかの実施形態では、方法は、30質量%以上のAPIを含む。
【0046】
方法のいくつかの実施形態では、方法は、60質量%以下のAPIを含む。
【0047】
方法のいくつかの実施形態では、ポビドンは、ポビドンK-12及びポビドンK-30のうちの一方又は両方を含む。
【0048】
方法のいくつかの実施形態では、ポビドンは、ポビドンK-30を含む。
【0049】
方法のいくつかの実施形態では、ポリエチレングリコールは、PEG 400を含む。
【0050】
方法のいくつかの実施形態では、方法は、0.5質量%~1.0質量%の0.5Nの塩酸を含む酸を添加する工程を含む。
【0051】
方法のいくつかの実施形態では、充填材料組成物を調製する工程は、1質量%~2質量%の25%のヨウ化カリウムを添加する工程を含む。
【0052】
次に、本発明を、添付の図面を参照して例としてのみ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】70℃でストレスを加えたPEアッセイの重ね合わせたクロマトグラムにおいて、いくつかの実施形態によるピークが約21.6分に現れていることを示す図である。
図2】いくつかの実施形態によるPEの存在下でのポビドンK-30の変化を示す図である。
図3】いくつかの実施形態によるPEの存在に起因するポビドンK-30のスペクトルの経時変化を示す図である。
図4】PE-ポビドンピークの形成に対する充填材料組成物におけるKIの影響を示す図である。
図5】いくつかの実施形態による全PE関連分解物の形成に対する充填材料組成物におけるKIの影響を示す図である。
図6】いくつかの実施形態によるPE-ポビドンピークの形成に対する様々な条件の影響を示す図である。
図7】いくつかの実施形態によるPE-ポビドンピークの形成に対する充填材料組成物のpHの影響を示す図である。
図8】いくつかの実施形態によるPE-ポビドンピークの形成に対する様々な濃度のHClの影響を示す図である。
図9】いくつかの実施形態による充填材料組成物におけるPEの安定性に対するHCl、KI、及び追加の酸化防止剤の影響を示す図である。
図10】いくつかの実施形態による充填材料組成物におけるPE RS-1の形成に対するHCl、KI、及び追加の酸化防止剤の影響を示す図である。
図11】いくつかの実施形態による充填材料組成物における4-アミノフェノールの形成に対するHCl、KI、及び追加の酸化防止剤の影響を示す図である。
図12】いくつかの実施形態によるHCl及びKIを含む充填材料組成物のPE安定性に対するカプセル封入の影響を示す図である。
図13】いくつかの実施形態によるPEの分解に対する充填材料組成物における水分の影響を示す図である。
図14】いくつかの実施形態によるHCl及びKIを含む及び含まないソフトゲルのPEの分解に対する空気曝露の影響を示す図である。
図15】いくつかの実施形態による25mMの緩衝化した充填材料組成物の分析を示す図である。
図16】いくつかの実施形態による50mMの緩衝化した充填材料組成物の比較を示す図である。
図17】いくつかの実施形態によるPE安定性に対するゼラチン中の様々なレベルのHClの影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
充填材料組成物、ソフトゲルシェル組成物、及びAPI安定性を向上させたソフトゲル組成物の例示的な諸実施形態、並びに充填材料、ソフトゲルシェル、及びAPI安定性を向上させたソフトゲルを作製する方法を記載する。上述のように、充填材料は、互いに、及び形成したソフトゲルのソフトゲルシェルと相互作用し、ソフトゲルシェル及び/又は充填材料のうちの1種又は複数種の成分の不安定性を引き起こす可能性がある。本明細書に記載の諸実施形態は、調製したソフトゲルにおける充填材料の1種又は複数種のAPIを安定化させることを対象とする。
【0055】
いくつかの実施形態では、フェニレフリンは、充填材料の非有効成分と直接相互作用するか、又は場合により非有効成分の分解物と相互作用する可能性がある。この相互作用により、ソフトゲル内でフェニレフリンが分解されて、ソフトゲルの有効期間の短縮、強度の低下、及び/又は有効性の低下が引き起こされる可能性がある。いくつかの実施形態では、イブプロフェン、グアイフェネシン、デキストロメトルファン、アセトアミノフェン、及び/又はベンゾナテート等の他のAPIが、充填材料の非有効成分との相互作用のために不安定になる可能性がある。いくつかの実施形態では、1種又は複数種のAPI(例えば、フェニレフリン)は、ポビドン又はPEG等の非有効成分と相互作用することによって分解する可能性がある。いくつかの実施形態では、1種又は複数種のAPI(例えば、フェニレフリン)は、ポビドン又はPEG等の1種又は複数種の非有効成分の分解物と相互作用することによって分解する可能性がある。
【0056】
したがって、本明細書で提供するいくつかの実施形態は、充填材料のpHを制御することによってソフトゲルにおけるAPI(例えば、フェニレフリン)安定性を向上させることを対象とする。特に、充填材料のpHをポビドン及び/又はPEGの分解物のpKa未満に制御することにより、フェニレフリンがポビドン及びPEGの分解物と反応するのを阻害できることが確認された。例えば、充填材料を3.75以下のpHに制御することができる。フェニレフリンとポビドン及び/又はPEGの分解物との間の反応を阻害することによって、フェニレフリンの安定性が向上する。フェニレフリンの安定性が向上すると、ソフトゲルの有効期間、強度、及び/又は有効性が向上する可能性がある。
【0057】
いくつかの実施形態では、酸性溶液を充填材料に添加することによって、充填材料のpHを制御する。いくつかの実施形態では、酸性溶液をソフトゲルシェルに添加することによって、充填材料のpHを制御する。いくつかの実施形態では、酸化防止剤を充填材料に添加することによって、非有効成分(例えば、ポビドン、PEG)の分解を最小限にする。ポビドン及びPEG等の非有効成分の分解を制御すると、API(例えば、フェニレフリン)が反応し得る分解物の量を制限することによりAPIの安定性が向上する可能性がある。
【0058】
以下は、(1)一般的なソフトゲルにおけるAPIの不安定性、(2)特にAPIとしてフェニレフリン(PE)を含む充填材料組成物、(3)ソフトゲルシェル組成物、並びに(4)充填材料組成物及びソフトゲルを調製する方法についての考察である。以下に、これらについて順に各々説明する。
【0059】
ソフトゲルにおける有効医薬成分(API)の不安定性
以下に、ソフトゲルにおけるAPIの不安定性について説明する。APIの安定性は、他の医薬品形態(例えば、錠剤、液剤等)よりもソフトゲル組成物に共通する問題である。APIの例及びソフトゲルにおけるAPIの不安定性の原因について説明する。
【0060】
様々なAPIがソフトゲルでの使用に適している。例えば、単独で又は組み合わせてソフトゲル剤形に調製される一般的なAPIとしては、イブプロフェン、フェニレフリン、グアイフェネシン、デキストロメトルファン、アセトアミノフェン、ナプロキセン、ジフェンヒドラミン、ドクセートナトリウム、ロラタジン、セチリジン、プソイドエフェドリン、ドキシラミン、クロルフェニラミン、ジクロフェナク、及びベンゾナテートが挙げられる。当業者なら、開示した諸実施形態で使用するための他の適切なAPIを容易に特定することができる。
【0061】
ソフトゲルで使用することができるAPIの一例は、フェニレフリン(PE)である。PEは、血管収縮剤及びうっ血除去剤である。最も一般には、PEは、一般的な風邪症状(即ち、鼻づまり)、副鼻腔の問題、及び痔の治療に使用することができる。ソフトゲルにおける様々なAPIの不安定性、特にPEの不安定性は、周知の課題である。
【0062】
PEの不安定性は、ソフトゲルの充填材料及び/又はソフトゲルシェル中の1種又は複数種の非有効成分(即ち、賦形剤)の分解に起因すると考えられる。分解する可能性があり、且つPE等のAPIと反応して悪影響を及ぼす可能性がある非有効成分としては、ポリエチレングリコール(PEG)及びポビドン(また、「ポリビニルピロリドン」又は「PVP」)が挙げられる。例えば、PEGは、ソフトゲルの充填材料に使用される一般的な賦形剤である。PEGが分解すると、PEG分解物がPEと相互作用して、PEの分解が引き起こされる。例えば、PEGは、アルデヒド及び/又は短鎖有機酸に分解する可能性があり、どちらもPEと容易に反応する。
【0063】
PEGは、酸素及び/又は水の存在下で、いくつかの短鎖有機酸及びアルデヒド(不純物)に容易に分解することが既知である。短鎖有機酸としては、ギ酸、酢酸、及び/又はグリコール酸を挙げることができる。アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド及び/又はアセトアルデヒドを挙げることができる。これらのPEG分解物は、PEと容易に相互作用することが既知であり、ソフトゲルの充填材料中のPEの分解を引き起こす。
【0064】
同様に、ポビドンも過酸化物及びギ酸等の短鎖酸を含む化合物に分解する可能性がある。PEGの分解物と同様に、ポビドンの分解物もPE等のAPIと反応して悪影響を及ぼす可能性がある。特に、ある種のポビドンは、他のものよりもPEと相互作用しやすい可能性がある。例えば、ポビドンK-30は、ポビドンK-12よりもPEと容易に反応する。これは、ポビドンK-12とポビドンK-30の末端基の違いが一因であると考えられる。特に、ポビドンK-12は、合成中にイソプロパノールを使用してプロピル末端基を生じ、一方、ポビドンK-30は、合成中に水を使用してヒドロキシル末端基を生じる。PEは、ポビドンK-30のヒドロキシル末端基等のヒドロキシル基と容易に反応する。したがって、PEは、ポビドンK-12よりもポビドンK-30と容易に相互作用する。以下に、ポビドンK-12、ポビドンK-30、及びPEの化学構造を示す。
【0065】
ポビドンK-12(イソプロパノールで合成されたポビドン):
【0066】
【化1】
【0067】
ポビドンK-30(水で合成されたポビドン):
【0068】
【化2】
【0069】
フェニレフリン(PE):
【0070】
【化3】
【0071】
PEは、PEG及び/又はポビドンの分解物と反応すると、ソフトゲル内で分解する。この分解は、PEの不安定性を示している。PEの不安定性は、有効期間の短縮、強度の低下、有害な可能性のある不純物の増加、及び/又はソフトゲルの有効性の低下につながる可能性がある。
【0072】
したがって、ソフトゲルにおけるPEの不安定性を低減するために、PEとPEG及び/又はポビドンとの間の相互作用を低減する方法を使用することができる。PEの不安定性を低減する従来の方法は、酸化防止剤を使用して、PEG及び/又はポビドンの分解量を低減する工程を含む。しかし、本明細書に開示する諸実施形態によるPEの安定性を向上させる方法は、PEとPEG/ポビドン分解物との相互作用を阻止する工程を含み、必ずしもPEG及び/又はポビドンの分解を阻害する工程を含むわけではない。いくつかの実施形態は、PEとPEG/ポビドン分解物との間の相互作用を最小化する工程、並びにPEG/ポビドンの分解を最小化する工程を含んでもよい。
【0073】
以下に、1種又は複数種のAPI(例えば、PE)と、PEG及び/又はポビドンの分解から形成されるもの等の分解物との間の様々な相互作用を制限することを対象とする様々な実施形態を記載する。いくつかの実施形態では、充填材料及び/又はソフトゲルシェルに酸性溶液を導入することにより、APIの安定性を向上させることができる。いくつかの実施形態は、ヨウ化カリウム(KI)等の酸化防止剤を充填材料に含ませて、APIの安定性を向上させることができる。いくつかの実施形態では、充填材料のpHをPEG及び/又はポビドン分解物のpKa未満に維持することにより、PEG及び/又はポビドン分解物とPEとの間の相互作用を阻害することができる。
【0074】
フェニレフリン(PE)の安定性が向上した充填材料組成物
以下は、APIの安定性を向上させるために開発した充填材料組成物の説明である。本明細書で提供する充填材料組成物は、投与可能な医薬組成物を形成するためにソフトゲルシェルでカプセル封入することができる。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、APIの安定性を向上させる(例えば、PEの安定性を向上させる)ために酸性溶液を含むことができる。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、APIの安定性を向上させるために1種又は複数種の非有効成分の分解を阻害する酸化防止剤を含むことができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、APAPは、充填材料組成物において不安定な形態になることがある。例えば、APAPは、溶液から沈殿する可能性がある。しかし、充填材料組成物中のポビドン(即ち、ポビドンK-12及び/又はポビドンK-30)のタイプ及び量並びに/又はプロピレングリコールの量が、APAPの沈殿に影響を及ぼす可能性があることが確認された。したがって、本明細書で提供する充填材料組成物のいくつかの実施形態は、APAPの安定性を制御するために、最適な量の特定のタイプのポビドン及び/又はプロピレングリコールを含むことができる。充填材料組成物に含めるポビドン及びプロピレングリコールの推奨量を以下に示す。
【0076】
以下の実施例1Aでは、APAPの安定性に対するポビドン及び/又はPEGの影響についてより詳細に説明する。例えば、APAPの沈殿量は、充填材料組成物中のポビドンK-30及び/又はプロピレングリコールのレベルと関連している可能性がある。いくつかの実施形態では、ポビドンK-30及びプロピレングリコールの両方のレベルを増加させることにより、APAPの沈殿を最小限にすることができる。いくつかの実施形態では、ソフトゲルシェル中の可塑剤のレベルを減少させることでも、APAPの沈殿を最小限にすることができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、賦形剤のタイプ及び/又は量が、溶液中の他のAPIの安定性にも影響を及ぼす可能性がある。例えば、イブプロフェン、フェニレフリン、グアイフェネシン、デキストロメトルファン、及びベンゾナテート等のAPIも上述のAPAPと同様の挙動を示す可能性がある。いくつかの実施形態では、PEG(即ち、PEG400、PEG600、PEG1200、PEG2400)等の他の非有効成分の種類も溶液中の1種又は複数種のAPIの安定性に同様に影響を及ぼす可能性がある。
【0078】
例えば、上述したように、ポビドンK-30は、PEと相互作用する傾向がある。ポビドンK-30(いずれのポビドンK-30分解物も含む)とPEとの間の相互作用は、PEの不安定性を引き起こす可能性がある(即ち、充填材料組成物中のPEの量が経時的に減少する場合)。
【0079】
しかし、充填材料組成物のpHを制御することにより、ポビドンK-30(及び/又はポビドンK-30分解物)とPEとの間の相互作用を最小限にし、したがって、充填材料組成物のPE安定性を向上させることができると確認された。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、充填材料組成物のpHを制御するために酸性溶液を含むことができる。いくつかの実施形態では、酸性溶液は、クエン酸、ギ酸、酢酸、及び/又は塩酸(HCl)を含むことができる。以下の実施例の項に記載するように、HClを充填材料組成物に導入するいくつかの試験を行った。酸性溶液は、HClを含む材料に限定すべきではない。当業者なら、任意の適切な酸性溶液を充填材料組成物のpHの制御に使用できることを認識されるであろう。
【0080】
いくつかの実施形態では、酸化防止剤も充填材料組成物に含ませることができる。例えば、酸化防止剤は、PEの不安定性に対応する種の形成を制御するのに役立つ可能性がある。したがって、KIは、PEとポビドン/PEG分解物との間の相互作用にほとんど影響を及ぼさないが、充填材料組成物中に存在する場合、他のPE関連物質、APAP関連物質、及び/又はデキストロメトルファン関連物質の形成を制御するのに役立つ可能性がある。例えば、充填材料組成物材料中にKIが存在すると、PE関連分解物の一例であるPE RS-3の形成の制御に有益な影響を及ぼす可能性もある。PE RS-3は、酸性条件下で増加する。したがって、酸性溶液を充填材料組成物に添加した場合、PE RS-3のレベルが増大する可能性がある。KI等の酸化防止剤を添加すると、PE RS-3のレベルを制御するのに役立つ可能性がある。また、KIの添加は、APAPからの4-アミノフェノールの形成を低減するとともに、デキストロメトルファン及びドキシラミンのN-オキシド分解物の形成を阻止するのに役立つ可能性がある。酸化防止剤の例としては、ヨウ化カリウム、没食子酸プロピル、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、及び他の適切な酸化防止剤が挙げられる。
【0081】
したがって、本明細書で提供するいくつかの実施形態は、PEと1種又は複数種の非有効成分の分解物との間の相互作用を最小限にするために酸を含むことができる。いくつかの実施形態はまた、1種又は複数種の非有効成分の分解を低減し、ひいては別の面でAPIの不安定性の一因となる可能性があるいくつかの分解物の存在を低減するために、KI等の酸化防止剤を含むことができる。
【0082】
以下に、本明細書で提供する実施形態によりソフトゲルを形成するために充填材料組成物を含み得る様々な成分及び成分の量を示す。
【0083】
本明細書で使用する場合、「有効医薬成分」又は「API」は、疾患の診断、治癒、緩和、治療、又は予防に使用することができる薬物製品を指す。いずれのAPIも本開示の目的に使用することができる。適切なAPIとしては、鎮痛剤及び抗炎症剤、制酸剤、駆虫薬、抗不整脈剤、抗菌剤、抗凝固剤、抗うつ剤、抗糖尿病剤、止瀉剤、抗てんかん剤、抗真菌剤、抗痛風剤、降圧剤、抗マラリア剤、抗片頭痛剤、抗ムスカリン剤、抗腫瘍剤及び免疫抑制剤、原虫駆除剤、抗リウマチ剤、抗甲状腺剤、抗ウイルス剤、抗不安剤、鎮静剤、催眠剤及び神経遮断剤、β遮断剤、強心剤(cardiac inotropic agent)、コルチコステロイド、咳止め剤、細胞傷害性薬物、うっ血除去剤、利尿剤、酵素、抗パーキンソン剤、胃腸薬、ヒスタミン受容体拮抗薬、脂質調節剤、局所麻酔薬、神経筋作用薬、硝酸塩及び抗狭心症剤、栄養剤、オピオイド鎮痛剤、経口ワクチン、タンパク質、ペプチド及び組換え薬物、性ホルモン及び避妊薬、殺精子剤、及び興奮剤、並びにそれらの組合せが挙げられるが、それらだけに限らない。APIは、存在する場合、臨床研究によって確立された必要な生理学的効果を示すのに必要な量で医薬組成物中に存在する。当業者なら、本開示に従って作製された剤形に含めるべきAPIの適切な量を容易に決定することができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、15~70質量%の全API、20~65質量%の全API、25~60質量%の全API、30~55質量%の全API、35~55質量%の全API、又は40~50質量%の全APIを含むことができる。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、70質量%未満の全API、65質量%未満の全API、60質量%未満の全API、55質量%未満の全API、50質量%未満の全API、45質量%未満の全API、40質量%未満の全API、35質量%未満の全API、30質量%未満の全API、25質量%未満の全API、又は20質量%未満の全APIを含むことができる。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、15質量%超の全API、20質量%超の全API、25質量%超の全API、30質量%超の全API、35質量%超の全API、40質量%超の全API、45質量%超の全API、50質量%超の全API、55質量%超の全API、60質量%超の全API、又は65質量%超の全APIを含むことができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、PEを含むことができる。例えば、充填材料組成物は、0.1~15質量%のPE、0.2~10質量%のPE、0.3~5質量%のPE、又は0.3~1質量%のPEを含むことができる。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、15質量%未満のPE、12質量%未満のPE、10質量%未満のPE、8質量%未満のPE、5質量%未満のPE、4質量%のPE、3質量%未満のPE、2質量%未満のPE、1.0質量%未満のPE、0.9質量%未満のPE、0.8質量%未満のPE、0.7質量%未満のPE、0.6質量%未満のPE、0.5質量%未満のPE、0.4質量%未満のPE、0.3質量%未満のPE、又は0.2質量%未満のPEを含むことができる。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、0.1質量%超のPE、0.2質量%超のPE、0.3質量%超のPE、0.4質量%超のPE、0.5質量%超のPE、0.6質量%超のPE、0.7質量%超のPE、0.8質量%超のPE、0.9質量%超のPE、1.0質量%超のPE、2質量%超のPE、3質量%超のPE、4質量%超のPE、5質量%超のPE、8質量%超のPE、10質量%超のPE、又は12質量%超のPEを含むことができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、APAPを含むことができる。例えば、充填材料組成物は、10~50質量%のAPAP、15~45質量%のAPAP、20~40質量%のAPAP、又は25~35質量%のAPAPを含むことができる。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、50質量%未満のAPAP、45質量%未満のAPAP、40質量%未満のAPAP、35質量%未満のAPAP、30質量%未満のAPAP、25質量%未満のAPAP、20質量%未満のAPAP、又は15質量%未満のAPAPを含むことができる。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、10質量%超のAPAP、15質量%超のAPAP、20質量%超のAPAP、25質量%超のAPAP、30質量%超のAPAP、35質量%超のAPAP、40質量%超のAPAP、又は45質量%超のAPAPを含むことができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、デキストロメトルファンを含むことができる。例えば、充填材料組成物は、0.2~12質量%のデキストロメトルファン、0.4~10質量%、0.6~5質量%、又は0.7~1.0質量%のデキストロメトルファンを含むことができる。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、12質量%未満、10質量%未満、8質量%未満、5質量%未満、4質量%未満、3質量%未満、2質量%未満、1.8質量%未満、1.6質量%未満、1.4質量%未満、1.2質量%未満、1.0質量%未満、0.8質量%未満、0.6質量%未満、又は0.4質量%未満のデキストロメトルファンを含むことができる。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、0.2質量%超、0.4質量%超、0.6質量%超、0.8質量%超、1.0質量%超、1.2質量%超、1.4質量%超、1.6質量%超、1.8質量%超、2質量%超、3質量%超、4質量%超、5質量%超、8質量%超、又は10質量%超のデキストロメトルファンを含むことができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、グアイフェネシンを含むことができる。例えば、充填材料組成物は、5~30質量%のグアイフェネシン、10~25質量%又は15~20質量%のグアイフェネシンを含むことができる。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、30質量%未満、25質量%未満、20質量%未満、15質量%未満、又は10質量%未満のグアイフェネシンを含むことができる。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、5質量%超、10質量%超、15質量%超、20質量%超、又は25質量%超のグアイフェネシンを含むことができる。
【0089】
充填材料組成物は、多数のタイプの非有効成分(即ち、賦形剤)のうちのいずれかを含むことができる。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、30~80質量%の全非有効成分、35~75質量%、40~70質量%、45~65質量%、又は50~60質量%の全非有効成分を含むことができる。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、80質量%未満、75質量%未満、70質量%未満、65質量%未満、60質量%未満、55質量%未満、50質量%未満、45質量%未満、又は40質量%未満の全非有効成分を含むことができる。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、30質量%超、35質量%超、40質量%超、45質量%超、50質量%超、55質量%超、60質量%超、65質量%超、又は70質量%超の全非有効成分を含むことができる。
【0090】
充填材料組成物のいくつかの実施形態は、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール、ポビドン、及び/又は精製水等の特定の非有効成分を含むことができる。PEGには、PEG400、PEG600、PEG1200、及び/又はPEG2400のうちのいずれかが含まれ得る。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、30~60質量%のPEG、35~55質量%又は40~50質量%のPEGを含むことができる。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、60質量%未満、55質量%未満、50質量%未満、45質量%未満、40質量%未満、又は35質量%未満のPEGを含むことができる。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、30質量%超、35質量%超、40質量%超、45質量%超、50質量%超、又は55質量%超のPEGを含むことができる。
【0091】
いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、ポビドンを含むことができる。例えば、いくつかの実施形態は、ポビドンK-12及び/又はポビドンK-30を含むことができる。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、2~30質量%のポビドン、3~25質量%、4~20質量%、又は5~15質量%のポビドンを含むことができる。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、30質量%未満、25質量%未満、20質量%未満、15質量%未満、12質量%未満、10質量%未満、8質量%未満、5質量%未満、又は4質量%未満のポビドンを含むことができる。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、2質量%超、3質量%超、4質量%超、5質量%超、8質量%超、10質量%超、12質量%超、15質量%超、20質量%超、又は25質量%超のポビドンを含むことができる。
【0092】
いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、プロピレングリコールを含むことができる。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、0.25~10.0質量%、0.5~5.0質量%又は0.75~3.0質量%のプロピレングリコールを含むことができる。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、0.25質量%超、0.5質量%超、0.75質量%超、1.0質量%超、1.25質量%超、1.5質量%超、1.75質量%超、2.0質量%超、2.5質量%超、3.0質量%超、3.5質量%超、4.0質量%超、4.5質量%超、5.0質量%超、5.5質量%超、6.0質量%超、6.5質量%超、7.0質量%超、8.0質量%超、又は9.0質量%超のプロピレングリコールを含むことができる。いくつかの実施形態では、充填組成物は、10.0質量%未満、9.0質量%未満、8.0質量%未満、7.0質量%未満、6.5質量%未満、6.0質量%未満、5.5質量%未満、5.0質量%未満、4.5質量%未満、4.0質量%未満、3.5質量%未満、3.0質量%未満、2.5質量%未満、2.0質量%未満、1.75質量%未満、1.5質量%未満、1.25質量%未満、1.0質量%未満、0.75質量%未満、又は0.50質量%未満のプロピレングリコールを含むことができる。
【0093】
いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、酸性溶液を含むことができる。例えば、酸性溶液は、クエン酸、ギ酸、酢酸、塩酸(HCl)、又は任意の他の適切な酸性材料のうちの1種又は複数種を含むことができる。いくつかの実施形態では、酸性溶液は、0.05~0.5N、0.075~0.3N又は0.10~0.20Nの濃度を有することができる。いくつかの実施形態では、濃度は、0.5N未満、0.4N未満、0.3N未満、0.25N未満、0.20N未満、0.15N未満、0.10N未満、0.08N未満、又は0.075N未満とすることができる。いくつかの実施形態では、酸性溶液は、0.05N超、0.075N超、0.08N超、0.10N超、0.125N超、0.15N超、0.175N超、0.20N超、0.25N超、0.30N超、又は0.40N超の濃度を有することができる。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、0.25~10.0質量%、0.5~8.0質量%又は1.0~5.0質量%の酸性溶液を含むことができる。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、0.25質量%超、0.50質量%超、0.75質量%超、1.0質量%超、1.5質量%超、2.0質量%超、2.5質量%超、3.0質量%超、3.5質量%超、4.0質量%超、4.5質量%超、5.0質量%超、6.0質量%超、7.0質量%超、8.0質量%超、又は9.0質量%超の酸性溶液を含むことができる。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、10.0質量%未満、9.0質量%未満、8.0質量%未満、7.0質量%未満、6.0質量%未満、5.5質量%未満、5.0質量%未満、4.5質量%未満、4.0質量%未満、3.5質量%未満、3.0質量%未満、2.5質量%未満、2.0質量%未満、1.75質量%未満、1.50質量%未満、1.25質量%未満、1.0質量%未満、0.75質量%未満、又は0.50質量%未満の酸性溶液を含むことができる。
【0094】
いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、酸化防止剤を含むことができる。酸化防止剤の例としては、ヨウ化カリウム、没食子酸プロピル、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、及び他の適切な酸化防止剤を挙げることができる。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、0.25~5.0質量%、0.5~4.0質量%又は1.0~2.0質量%の酸化防止剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、0.25質量%超、0.5質量%超、0.75質量%超、1.0質量%超、1.25質量%超、1.50質量%超、1.75質量%超、2.0質量%超、2.5質量%超、3.0質量%超、3.5質量%超、4.0質量%超、又は4.5質量%超の酸化防止剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、5.0質量%未満、4.5質量%未満、4.0質量%未満、3.5質量%未満、3.0質量%未満、2.5質量%未満、2.0質量%未満、1.75質量%未満、1.5質量%未満、1.25質量%未満、1.0質量%未満、0.75質量%未満、又は0.50質量%未満の酸化防止剤を含むことができる。
【0095】
いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、1種又は複数種の溶媒を含むことができる。例えば、溶媒は、水(例えば、精製水)でよい。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、1~10質量%の溶媒、1.5~9質量%、2~8質量%、2.5~7質量%、3~6質量%、又は3.5~5質量%の溶媒を含むことができる。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、10質量%未満、9質量%未満、8質量%未満、7質量%未満、6質量%未満、5質量%未満、4質量%未満、3質量%未満、又は2質量%未満の溶媒を含むことができる。いくつかの実施形態では、充填材料組成物は、1質量%超、2質量%超、3質量%超、4質量%超、5質量%超、6質量%超、7質量%超、8質量%超、又は9質量%超の溶媒を含むことができる。
【0096】
ソフトゲルシェル組成物
以下に、ソフトゲルのAPI安定性を向上させるために配合したソフトゲルシェルの説明を示す。ソフトゲルシェルは、多くの場合、充填材料組成物(上記で詳細に説明)を囲むゼラチンをベースとするシェルである。ソフトゲルシェルは、通常、ゼラチン、乳白剤、可塑剤、及び水を含む。いくつかの実施形態では、ソフトゲルシェルは、ソフトゲルのAPI安定性を向上させるために酸性溶液を含むことができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、充填材料(即ち、上述の組成物の実施形態のいずれかによる充填材料)がソフトゲルシェルによってカプセル封入されると、充填材料の1種又は複数種のAPIが経時的に不安定になることがある。特に、ソフトゲルシェルから充填材料への成分の移動は、充填材料のpHを変化させて、1種又は複数種のAPI(例えば、PE)の不安定性を引き起こす可能性がある。したがって、ソフトゲルのソフトゲルシェルに酸性溶液を含ませることは、ソフトゲル内の充填材料のAPI安定性を維持するのに役立つ可能性があることを発見した。酸性のソフトゲルシェルを用いると、充填材料の酸性溶液がソフトゲルのシェルに移動する可能性が低くなるであろう。したがって、ソフトゲルシェルでカプセル封入すると、充填材料の酸性環境が維持されて、APIと1種又は複数種の非有効成分の分解物との間の反応を最小限にすることができる。以下に、本明細書で提供するいくつかの実施形態によるソフトゲルシェルの成分及び成分量を示す。
【0098】
ほとんどのソフトゲルシェルはゼラチンをベースとするが、ソフトゲルシェルのいくつかの実施形態は、カラゲナン、デンプン、又は別の適切なゲル化剤等の他の材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、ソフトゲルシェルは、15質量%~70質量%、30質量%~50質量%、又は40質量%~45質量%のゲル化剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、ソフトゲルシェルは、70質量%未満、65質量%未満、60質量%未満、55質量%未満、50質量%未満、45質量%未満、40質量%未満、35質量%未満、30質量%未満、25質量%未満、又は20質量%未満のゲル化剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、ソフトゲルシェルは、15質量%超、20質量%超、25質量%超、30質量%超、35質量%超、40質量%超、45質量%超、50質量%超、55質量%超、60質量%超、又は65質量%超のゲル化剤を含むことができる。
【0099】
上述のように、ソフトゲルシェルは、シェルの外観を不透明にするために乳白剤を含むことができる。乳白剤の例としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、及び炭酸カルシウムが挙げられる。いくつかの実施形態では、ソフトゲルシェルは、0.1~5質量%、0.3~3質量%、又は0.5~1.0重量%の乳白剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、ソフトゲルシェルは、5質量%未満、4.5質量%未満、4.0質量%未満、3.5質量%未満、3.0質量%未満、2.5質量%未満、2.0質量%未満、1.5質量%未満、1.0質量%未満、0.9質量%未満、0.8質量%未満、0.7質量%未満、0.6質量%未満、0.5質量%未満、0.4質量%未満、0.3質量%未満、又は0.2質量%未満の乳白剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、ソフトゲルシェルは、0.1質量%超、0.2質量%超、0.3質量%超、0.4質量%超、0.5質量%超、0.6質量%超、0.7質量%超、0.8質量%超、0.9質量%超、1.0質量%超、1.5質量%超、2.0質量%超、2.5質量%超、3.0質量%超、3.5質量%超、4.0質量%超、又は4.5質量%超の乳白剤を含むことができる。
【0100】
ソフトゲルシェルにおける可塑剤の例としては、ソルビトール、グリセリン、及び/又は他の医薬用使用に適している可塑剤を挙げることができる。いくつかの実施形態では、ソフトゲルシェルは、10~40質量%又は20~30質量%の可塑剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、ソフトゲルシェルは40質量%未満、35質量%未満、30質量%未満、25質量%未満、20質量%未満、15質量%未満の可塑剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、ソフトゲルシェルは、10質量%超、15質量%超、20質量%超、25質量%超、30質量%超、又は35質量%超の可塑剤を含むことができる。
【0101】
いくつかの実施形態では、上述のように、ソフトゲルシェルは酸性溶液を含むことができる。例えば、酸性溶液は、クエン酸、ギ酸、酢酸、及び/又は塩酸(HCl)のうちの1種又は複数種とすることができる。いくつかの実施形態では、ソフトゲルシェルは、1質量%~20質量%、2質量%~15質量%、又は3質量%~8質量%の酸性溶液を含むことができる。いくつかの実施形態では、ソフトゲルシェルは、20質量%未満、18質量%未満、15質量%未満、12質量%未満、10質量%未満、8質量%未満、5質量%未満、4質量%未満、3質量%未満、2質量%未満の酸性溶液を含むことができる。いくつかの実施形態では、ソフトゲルシェルは、1質量%超、2質量%超、3質量%超、4質量%超、5質量%超、8質量%超、10質量%超、12質量%超、15質量%超、又は18質量%超の酸性溶液を含むことができる。
【0102】
いくつかの実施形態では、ソフトゲルシェルは、水を含むことができる。例えば、ソフトゲルシェルは、30~60質量%、35~55質量%、又は40~50質量%の水を含むことができる。いくつかの実施形態では、ソフトゲルシェルは、30質量%超、35質量%超、40質量%超、45質量%超、50質量%超、又は55質量%超の水を含むことができる。いくつかの実施形態では、ソフトゲルシェルは、60質量%未満、55質量%未満、50質量%未満、45質量%未満、40質量%未満、35質量%未満の水を含むことができる。
【0103】
ソフトゲルシェルはまた、着色剤、香味料、糖、芳香族剤、及び他の感覚剤(sensory agent)等の追加材料を含むことができる。当業者なら、本発明の諸実施形態に適する着色剤の適切なタイプを容易に決定することができる。
【0104】
充填材料組成物及びソフトゲルを調製する方法
以下に、充填材料組成物及びAPI安定性を向上させたソフトゲルを調製する方法の説明を示す。一般に、本明細書に記載の充填材料組成物及びソフトゲルは、当業者が容易に識別できるはずの技術を使用して調製することができる。
【0105】
例えば、充填材料組成物は、上記で詳細に説明した必要な成分を適切な混合容器内で混合することによって調製することができる。適切な混合容器は、OLSA 200L混合容器、OLSA 2000L混合容器、又は高剪断混合、温度制御、及び窒素ブランケット機能を有する他の適切な閉鎖系でよい。APAP等の一部のAPIは、溶液に溶解させる必要がある場合がある。すべての成分が適切に混合された後、溶液を脱気し、冷却することができる。
【0106】
ソフトゲルシェルで充填材料組成物をカプセル封入するために、カプセル封入機を使用することができる。例えば、6インチ若しくは7.24インチのカプセル封入機又は他の適切なカプセル封入装置を使用して、充填材料組成物をカプセル封入することができる。カプセル封入後、あらかじめ定義した硬度が達成されるまでソフトゲルを乾燥させることができる。
【実施例0107】
以下に、上記で大まかに説明したいくつかの実施形態について、特定の試験データを含めたさらなる詳細を示す。
【0108】
(実施例1)
物理的及び化学的安定性の特性を観察するために、充填材料組成物を調製し、試験した。具体的には、APIであるアセトアミノフェン、グアイフェネシン、デキストロメトルファン、及びフェニレフリンと、PEG、プロピレングリコール、ポビドン、及び水を含む非有効成分とを含む充填材料組成物を調製した。以下に説明するように、充填材料組成物の物理的及び化学的安定性を試験した。
【0109】
(実施例1A)
物理的安定性
充填材料組成物の物理的安定性を評価するために、記載の諸実施形態による充填材料組成物を従来のソフトゲルシェル(即ち、上述の諸実施形態による充填材料組成物の酸性pHを維持するように特別に配合していないソフトゲルシェル)にカプセル封入し、周囲条件下で観察した。試験した特定の充填材料組成物の成分をTable 1(表1)に示す。最初の実証実験では、APAPは溶液から容易に沈殿した。
【0110】
ポビドンのタイプ及び量を変化させて、APAPの沈殿への影響を試験した。充填材料組成物A(以下のTable 1(表1)による)は、ポビドンK-30の量を増やした。PEG400、プロピレングリコール、及び水の量は、ポビドンの増加を考慮して調整したが、元の充填材料組成物における量と比較的同じままであった。充填材料組成物Bは、ポビドンK-30の代わりにポビドンK-12を含んでいた。充填材料組成物Aと充填材料組成物Bの両方の成分の具体的な量を以下のTable 1(表1)に示す。
【0111】
【表1】
Table 1. 2種の充填材料組成物の例。
【0112】
Table 1(表1)の両方の充填材料組成物(即ち、充填材料組成物A及び充填材料組成物B)を調製し、従来のソフトゲルシェルにカプセル封入し、経時的に観察した。ポビドンK-12を含む充填材料組成物Aでは、配合及びカプセル封入から1週間後という早さでAPAPが溶液から沈殿しているのが観察された。しかし、ポビドンK-30を含む充填材料組成物Bでは、配合及びカプセル封入から2週間後近くまでAPAPは溶液から沈殿しなかった。同様に、APAPの物理的安定性への影響を評価するために、他の充填材料組成物を試験した。ポビドンK-30及びプロピレングリコールの量を増やし、且つソフトゲルシェル内の可塑剤の量を減らした充填材料組成物では、APAPの沈殿レベルが最も低くなることが観察された。
【0113】
(実施例1B)
化学的安定性
上述の充填材料組成物の物理的安定性に加えて、従来のソフトゲルシェルにカプセル封入した充填材料組成物を加速条件下での化学的安定性に関しても評価した。加速条件下で観察された充填材料組成物の化学的安定性は、従来のソフトゲルシェルにカプセル封入したすべての組成物に関して不適切なほど大量のPE分解を示した。例えば、いくつかの結果では、2カ月間で7~10%ものPEの損失が示された。
【0114】
更に、PEの分解が増加すると、充填材料中に未知の分解物が生じることも増えた。これらの未知の分解物の正体を判定するために、充填材料組成物材料をカプセル封入し、70℃でストレスを加え、経時的に分析した。図1に示すクロマトグラムの結果を比較して、PEの量が減少するにつれて(即ち、PEが不安定になった結果として)増大するピークの正体を判定した。
【0115】
図1は、上述のいくつかの実施形態に従って70℃でストレスを加えた充填材料組成物の4種の重複クロマトグラムを示す。詳細には、0、5、13、及び22日目にクロマトグラムを得て、充填材料組成物の影響を経時的に観察した。図に示すように、重複クロマトグラムは、時間の経過と共に徐々に増大するピーク(約21.6分)を示している。
【0116】
図1の増大ピークに照らして、充填材料成分の各々を評価すると、ピークがポビドンK-30の保持時間に相当することが明らかになった。更に、ピークのサイズが大きくなると、約276nmで紫外線(UV)極大が現れて、図1の増大ピークで表される未知の分解物がPEの分解に直接関連している可能性を示唆している(以下で更に詳細に説明する)。
【0117】
(実施例2)
PEの不安定性の原因特定
図1の増大ピークがPEの分解に関連していることを確認するために、充填材料の2個の別々の試料を調製した。どちらのサンプルも、Table 1(表1)の組成物に含まれるすべての非有効成分(即ち、PEG、プロピレングリコール、ポビドンK-30、及び水)を含んでいた。第1の試料は、PEを更に含んでいた(「PEのみ」試料)。第2の試料は、PEG、プロピレングリコール、ポビドンK-30、及び水に加えて、APAP、グアイフェネシン、及びデキストロメトルファンを更に含んでいたが、PEは含んでいなかった。各試料を70℃で試験し、15日間にわたって様々な時点でクロマトグラフィを使用して分析した(図2に示す)。
【0118】
図2は、上述の両試料の重複クロマトグラムを示す。PEのみ試料は図の左側に示し、PEを含まない、APAP、グアイフェネシン、及びデキストロメトルファン試料は図の右側に示す。クロマトグラムは、0、6、及び15日目に取得した。図2は、約21.6分のピークが、PEを含む第1の試料でのみ増大したことを実証している。対照的に、APAP、グアイフェネシン、及びデキストロメトルファンを含むがPEを含まない試料では、ピークは、ほぼ同じ高さのままである。したがって、図2のクロマトグラムから、21.6分のピークで表される未知の分解物がPEとポビドンK-30との間の相互作用から生じたことが確認される。
【0119】
前述のように、ピークのサイズが時間の経過と共に大きくなる場合、図3に示すように約276nmにUV極大も生じる。図の左側は、PEのみを含む(他のAPIを含まない)充填材料組成物におけるポビドンK-30のピークのUVスペクトルを示す。図の右側は、APAP、グアイフェネシン、及びデキストロメトルファンを含む(但し、PEは含まない)充填材料組成物におけるポビドンK-30のピークのUVスペクトルを示す。図3に示すように、PEを含む充填材料組成物のポビドンK-30のピークのUVスペクトルは、約276nmのUV極大を示すように変化した。しかし、ポビドンK-30のピークのUVスペクトルは、PEを含まない組成物では変化しなかった。したがって、このデータは、観察されたPEの分解が、ポビドンK-30とPEとの間の相互作用の結果であることを更に裏付けている。
【0120】
ポビドンK-30の代わりにポビドンK-12を含む充填材料組成物について、同様の試験(図1図3に示すもの)を行った。しかし、これらの試験ではポビドンK-12とPEとの間に相互作用は観察されず、ポビドンK-12はPEの分解に顕著に寄与していないことが示唆された。
【0121】
(実施例3)
酸化防止剤を使用して分解物の形成を制御する
PE-ポビドンピークの形成に対するイオン強度とヨウ素の存在との両方の影響を評価するために、ヨウ化カリウム(KI)を添加して、充填材料組成物試料を調製した。図4に示している結果は、KIの添加がPE-ポビドンピークの形成にほとんど影響を及ぼさなかったことを示している。
【0122】
詳細には、図4は、充填材料組成物の2種の異なる試料の結果を示す。2種の試料は、PE、デキストロメトルファン、及び13%のポビドンK-30をそれぞれ含んでいた。更に、一方の試料は5%のKIを含んでおり、一方の試料は5%の水を含んでいた。どちらの試料も70℃で15日間にわたって試験し、比較的大きなPE-ポビドンピークの形成が示された。したがって、これらの結果は、充填材料組成物へのKIの添加が、水のみを含み、KIを含まない充填材料組成物と比較して、PE-ポビドンピークの形成にほとんど影響を及ぼさなかったことを示唆している。
【0123】
充填材料組成物へのKIの添加は、PE-ポビドンピークの形成にほとんど影響を及ぼさなかったが、他の既知のPE関連物質の形成に影響を及ぼした(図5に示す)。図5は、70℃で15日間にわたって試験した充填材料組成物の2種の試料を示す。どちらの試料も、PE、デキストロメトルファン、及び13%のポビドンK-30を含んでいた。一方の試料は水のみを含んでおり、もう一方の試料はKIを含んでいた。示すように、KIを含む充填材料組成物試料は、水のみの充填材料組成物試料よりもPE分解物の形成が少ないことが示された。
【0124】
したがって、酸の存在だけがソフトゲルの充填材料組成物におけるAPIの安定性を向上させるのではなく、KI等の抗酸化剤が存在することも、別の面でAPIの不安定性の一因となる可能性があるいくつかの分解物の存在を減少させるために必要であると考えられる。
【0125】
(実施例4)
API(例えば、フェニレフリン)と非有効成分との間の相互作用を阻害する
PE(又は「PE-PVP」、「PE-ポビドン」)分解物の形成に対するpH、空気、過酸化物、水、及びポビドン濃度の影響を評価するために、様々な研究を行った。これらの試験のいくつかの結果を図6に示す。
【0126】
図6は、70℃でのポビドンK-30のピーク変化に対するpH(左上)、空気(右上)、過酸化物(左下)、及び水(右下)の影響を示すデータを示す。図6に示すように、pHは、PE-ポビドンピークの形成に最も大きな影響を及ぼす。詳細には、HCl(酸性pH)を含む充填材料組成物の試料は、水酸化ナトリウム(塩基性pH)を含む充填材料組成物と比較して、PE-ポビドンのピーク変化がほぼ400%減少した。他の変数(空気、過酸化物、及び/又は水)のいずれも、ポビドンK-30のピークにそのような劇的な影響を及ぼさなかった。
【0127】
(実施例5)
pHの影響を試験する
pHがPEの安定性に影響を及ぼすことが判明した後、様々なpH値を試験した。酢酸緩衝液を使用して、充填材料組成物を様々なpH値で調製した。試料を70℃で15日間にわたって試験し、その結果を図7に示す。
【0128】
図7は、3種の異なる充填材料組成物からのデータを示す。1種の試料はpH3.6で試験し、1種の試料はpH4.6で試験し、1種の試料はpH5.6で試験した。図に示した結果に基づくと、PE-ポビドンのピークは、充填材料組成物のpHに正比例する。特に、充填材料組成物のpHが低下するにつれて、ポビドンとPEとの間の相互作用も低下する。
【0129】
(実施例6)
酸を充填材料組成物に添加する
図7に示した試験の結果は、充填材料組成物の酸性度を低下させると、PEの分解を低下させることができることを示している。充填材料組成物の酸性度を低下させるために、様々な量の0.1NのHClを充填材料組成物に添加し、試験した。
【0130】
様々な量のHClで調製した様々な充填材料組成物試料に70℃でストレスを加え、15日間にわたって試験した。詳細には、5種の異なる試料を調製し、15日間にわたって試験した。すべての試料が、PE、デキストロメトルファン、及び13%のポビドンK-30を含んでいた。しかし、5種の試料は、様々な量のHCl:5%の1.0NのHCl、3.75%の1.0NのHCl、2.5%の1.0NのHCl、0.5%の1.0NのHCl、及び5%の水(HClなし)を含んでいた。これらの試験の結果を図8に示し、以下に説明する。
【0131】
図8に示すように、水(ほぼ中性のpH)のみを含む充填材料組成物は、ポビドンK-30のピークに対して最も高い影響を示した。対照的に、0.5%の0.1NのHClを含む充填材料組成物は、ポビドンK-30のピークへの影響がわずかに少なく、2.5%、3.75%、及び5.0%の0.1NのHClを含む充填材料組成物試料は、ポビドンK-30のピークへの影響が著しく少ないことが示された。
【0132】
(実施例7~実施例9)
酸及び酸化防止剤を含む充填材料組成物のPE安定性
すべてのPE分解物の形成を監視及び評価するために、APIであるPE及びデキストロメトルファンのみを含む充填材料組成物を使用して、充填材料組成物の添加剤を評価した。組合せで存在するすべてのAPIへの影響を監視するために、様々な酸化防止剤に加えて、様々な量のHCl及びKIをTable 1(表1)の充填材料組成物Aで試験した。また、組成物Aが(上述の通り)APAPの沈殿量が最も少なかったので、組成物Aを使用した。
【0133】
これらの実証実験は、PEの安定性がHClの存在下で最大であることを確認するものである。しかし、HClの添加に起因する組成物の高い酸性度は、4-アミノフェノールとPE-RS-1(他のPE関連分解物)の両方の形成を増加させる。したがって、上述の他のこれらの分解物レベルの制御を助けるために、抗酸化剤としてのKIの添加が必要である。他の酸化防止剤の添加は、組成物の安定性にほとんど影響を示さなかった。この研究の結果を図9図11に示し、以下に説明する。
【0134】
図9は、いくつかの実施形態による充填材料組成物中のPEの安定性に対するHCl、KI、及び追加の酸化防止剤の影響を示す。詳細には、11種の異なる試料を70℃で20日間にわたって試験した。充填材料組成物試料は、2.1%の水;2.1%のHCl(0.25N);2.1%のKI(25%);2.1%のHCl:KI(0.25N:25%);2.1%のHCl(0.125N);2.1%のKI(12.5%);2.1%のHCl:KI(0.125N:12.5%);2.0%の水及び0.16%の没食子酸プロピル(PG);2.1%の水及び0.02%のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT);2.0%の水及び0.08%のブチル化ヒドロキシアニソール(BHA);又は2.0%の水及び0.02%のBHT及び0.08%のBHA、のうちの1つを含む充填材料組成物を含んでいた。
【0135】
HClを含む試料のみが、実証実験を通じて元のPE量の少なくとも99%を維持することで適切なPE安定性を示した。対照的に、HClを含まない試料は、20日間の試験期間を通じて元のPE量の少なくとも8%を失うことで不十分なPE安定性を示した。これらの結果から、pHがより低い充填材料組成物が、ソフトゲルにおけるPEの分解を最小限に抑えることができることが確認される。
【0136】
図10は、いくつかの実施形態による充填材料組成物におけるPE RS-1の形成に対するHCl、KI、及び追加酸化防止剤の影響を示す。PE RS-1は、PEの分解物である。したがって、PE RS-1レベルの増加は、PE分解レベルの増加を示す。この研究で試験した11種の試料は、図9で試験したものと同じであった。11種の試料を70℃で20日間にわたって試験した。詳細には、充填材料組成物試料は、2.1%の水;2.1%のHCl(0.25N);2.1%のKI(25%);2.1%のHCl:KI(0.25N:25%);2.1%のHCl(0.125N);2.1%のKI(12.5%);2.1%のHCl:KI(0.125N:12.5%);2.0%の水及び0.16%の没食子酸プロピル(PG);2.1%の水及び0.02%のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT);2.0%の水及び0.08%のブチル化ヒドロキシアニソール(BHA);又は2.0%の水及び0.02%のBHT及び0.08%のBHA、のうちの1つを含む充填材料組成物を含んでいた。
【0137】
図10の結果は、HClのみを含む充填材料組成物においてPE RS-1レベルが増加することを示している。しかし、KIを含む充填材料組成物(HClの有無に関わらず)では、PE RS-1レベルは比較的低いままである。したがって、この研究から、充填材料組成物中にKIが存在することが、望ましくないPE分解物であるPE RS-1形成の制御に役立つ可能性があることが確認される。
【0138】
図11は、いくつかの実施形態による充填材料組成物における4-アミノフェノールの形成に対するHCl、KI、及び追加の酸化防止剤の影響を示す。4-アミノフェノールは、PE分解物の別の例である。11種の試料は、図9及び図10で試験したものと同じであった。詳細には、充填材料組成物試料は、2.1%の水;2.1%のHCl(0.25N);2.1%のKI(25%);2.1%のHCl:KI(0.25N:25%);2.1%のHCl(0.125N);2.1%のKI(12.5%);2.1%のHCl:KI(0.125N:12.5%);2.0%の水及び0.16%の没食子酸プロピル;2.1%の水及び0.02%のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT);2.0%の水及び0.08%のブチル化ヒドロキシアニソール(BHA);又は2.0%の水及び0.02%のBHT及び0.08%のBHA、のうちの1つを含む充填材料組成物を含んでいた。
【0139】
図11に示した結果に基づくと、4-アミノフェノールの形成は、組成物がHClを含み、KIを含まない場合に増加する。しかし、4-アミノフェノールのレベルは、より高いpHを有し、KIを含む組成物ではより低いままである。したがって、図10のPE RS-1のように、KIの存在は、PE RS-1と同様に4-アミノフェノールの形成の制御に役立つ可能性がある。
【0140】
(実施例10)
充填材料をカプセル封入する
様々な実施形態による充填材料組成物を、タイプA(ブタ皮)及びタイプB(動物の骨)のゼラチンを使用してカプセル封入した。これらのソフトゲルシェルでカプセル封入した充填材料組成物は、上述の諸実施形態に対応する。詳細には、HCl及びKIの存在下で適切なAPI安定性を示した充填材料組成物を、いくつかの実施形態で試験した。様々なソフトゲル試料を室温と加速条件下(50℃及び70℃)の両方で試験した。更に、50℃でストレスを加えたソフトゲル試料を、そのままの状態でストレスを加えた場合、及び空気に曝露させるために切り開いた状態でストレスを加えた場合の2種の異なる方法で試験した。いくつかの実施形態では、カプセル封入の前に70℃でストレスを加えた充填材料組成物も使用した。
【0141】
図12は、充填材料組成物のタイプに関係なく、70℃でストレスを加えたソフトゲルでは、PEが急速に分解することを実証している。図12は、70℃で20日間にわたって試験した充填材料組成物におけるPEの安定性に関するデータ(左側)、及び70℃で20日間にわたって試験した完成品のソフトゲルにおけるPEの安定性に関するデータ(右側)を示している。左側のグラフに示すように、3種の異なる充填材料組成物試料:2.6mMのHCl/0.26%のKIを含む試料;2.6mMのHCl(0%のKI)を含む試料;及び2.6mMのHCl/0.38%のKIを含む試料を試験した。3種の試料の各々のPE安定性は、ほぼ同じであった。このデータは、PEの安定性がpHに依存する(pHに反比例する)ことを確認した上述の試験を支持している。更に、充填材料組成物(カプセル封入されていない)のPE安定性は、KIの存在に依存しない。
【0142】
図12の右側では、4種の異なるソフトゲル試料:2.6mMのHCl/0.26%のKIを含む充填材料組成物を含む試料;2.6mMのHCl(KIなし)を含む充填材料組成物を含む試料;2.6mMのHCl/0.38%のKIを含む充填材料組成物を含む試料;及びHCLもKIも含まない充填材料組成物を含む試料を試験した。4種の試料すべてにおいてPEは著しく分解した。興味深いことに、KIを含む2種の試料は、KIを含まない2種の試料よりもPE安定性がわずかに劣っていた。
【0143】
したがって、図12の結果は、HCl及びKIを含む充填材料組成物が、上述のようにカプセル封入前では優れた安定性を示したにもかかわらず、カプセル封入後では著しいPE分解が生じたことを実証している。したがって、図12に示した結果は、充填材料組成物のカプセル封入により充填材料組成物が何らかの形で変化して、PEの不安定性/分解が生じることを示唆している。
【0144】
(実施例11~実施例13)
カプセル封入後のPE分解の原因を調査する
カプセル封入プロセスの性質及び関与する化学成分に基づいて、カプセル封入の結果としてPEの分解を引き起こす可能性のある3つの主要な要因がある-シェルから充填材料組成物への水の流入、充填材料組成物の空気曝露、及び充填材料組成物からソフトゲルシェルへの成分の移行。これらの可能性のある原因の各々を試験し、その詳細を以下に示す。
【0145】
第1の可能性のある原因、即ち、ソフトゲルシェルから充填材料組成物への水の流入は、充填材料組成物の含水量を増加させ、70℃でストレスを加えることによって調査した。図13は、PEの分解に対する充填材料組成物の水分の影響を示している。充填材料組成物の2種の異なる試料、即ち、2%の水を含む試料及び10%の水を含む試料を試験した。どちらの試料も70℃で15日間にわたって試験した。示すように、図13の結果は、2種の試料間のPE安定性にほとんど差がないことから、PE安定性が充填材料組成物の含水量に依存しないことを示唆している。
【0146】
第2の可能性のある原因、即ち、充填材料組成物の空気曝露は、そのままのソフトゲルと切り開いたソフトゲルの両方に50℃でストレスを加えることによって調査した。詳細には、図14は、HCl及びKIを含む及び含まないソフトゲルのPE分解に対する空気曝露の影響を示している。4種の異なるソフトゲル:非切開ソフトゲルからのHCl/KIを含まない充填材料組成物;切開ソフトゲルからのHCl/KIを含まない充填材料組成物;非切開ソフトゲルからのHCl及びKIを含む充填材料組成物;並びに切開ソフトゲルからのHCl及びKIを含む充填材料組成物を試験した。この調査の結果は、図14に示しており、PE安定性と空気曝露との間に明らかな相関関係がないことを示している。更に、この調査は、HCl及びKIを含むソフトゲルの分解速度が、HClもKIも含まないソフトゲルと実質上同じであることを示している。
【0147】
第3の可能性のある原因、即ち、充填材料組成物成分のソフトゲルシェルへの移動は、充填材料組成物からソフトゲルシェルへのHClの移動を具体的に検討することによって調査した。酸等の親水性成分は、ソフトゲルシェルに素早く移動できることが知られている。更に、上述の調査に基づいて、PEの分解がKIに依存しないことも知られている。HCl及びKIを含まない充填材料組成物のPEの分解速度は、カプセル封入後(完成品のソフトゲル内)のHCl及びKIを含まない充填材料組成物のPEの分解速度と比較すると、カプセル封入前と同じであることから、他のAPI及び非有効成分の移動は考慮しなかったことに注意されたい。
【0148】
したがって、充填材料組成物からソフトゲルシェルへのHClの移動とPEの分解に対するその影響との調査を、カプセル封入前の充填材料組成物のpHをカプセル封入後の充填材料組成物のpH(ソフトゲルから取り出した後)と比較することで行った。試験により、充填材料組成物のpHが約2フルユニット増大したことが示された。(より詳細には実施例を参照されたい。)更に、カプセル封入後の充填材料組成物(HCl及びKIを含む)で観察された最大の分解物は、PE-ギ酸複合体であった。しかし、結果は、充填材料組成物のpHを分解物(ギ酸)のpKa未満に維持すると、PEの安定性が向上することを示している。したがって、ギ酸のpKaが約3.75であることから、結果は、PEの安定性を向上させるためには、充填材料組成物のpHを3.75未満のレベルに制御すべきであることを示唆している。
【0149】
(実施例14及び実施例15)
充填材料組成物のpHを分解物のpKa未満に制御する
上記の結果を考慮して、充填材料組成物のpHを制御し、PEの安定性に対する様々なpHレベルの影響を試験するために、様々な試験を行った。充填材料組成物のpHを安定させるために、2.4~4.4の異なるpH値並びに25mM及び50mMの濃度の様々な緩衝液を、HClもKIも含まない充填材料組成物に添加し、試験した。図15及び図16のすべての試料を70℃で15日間にわたって試験した。
【0150】
図15は、25mMの様々なpH値で緩衝化した充填材料組成物の比較を示す。詳細には、5%の水;25mMのHCl;25mMのリン酸塩(pH2.4);25mMのクエン酸塩(pH3.0);25mMのリン酸塩(pH3.2);25mMの酢酸塩(pH3.6);及び25mMの酢酸塩(pH4.4)を含む、7種の異なる充填材料組成物試料を試験した。図に示すように、結果は著しく異なっていた。しかし、PEの安定性に関して、HClと同様の性能を示す緩衝液はなかった。
【0151】
図16は、50mMの様々なpH値で緩衝化した充填材料組成物の比較を示す。今回は、5%の水;50mMのHCl;50mMのリン酸塩(pH2.4);50mMのクエン酸塩(pH3.0);50mMのリン酸塩(pH3.2);50mMの酢酸塩(pH3.6);50mMの酢酸塩(pH4.4);及び50mMのクエン酸塩(pH4.4)を含む、8種の異なる充填材料組成物試料を試験した。上述の図15の結果と同様に、ここでの結果も様々である。しかし、図15の研究と同様に、HClはPEの安定性に最も効果があったが、50mMのクエン酸塩も適切な結果を示した。
【0152】
したがって、充填材料組成物に様々な酸性溶液を導入することにより、ソフトゲルにおけるAPIの安定性を向上させることができる。しかし、重要なのは、充填材料組成物のpHを、1種又は複数種のAPIと相互作用する可能性がある非有効成分の分解物のpKa未満に維持することである。特に、ソフトゲルの充填材料組成物にHCl及びKIを添加することにより、ソフトゲルにおけるPE等のAPIの安定性を向上させることができることが分かった。充填材料のpHをPEG及び/又はポビドン分解物のpKa未満に維持することにより、PEG及び/又はポビドン分解物とAPIとの間の相互作用を阻害して、APIの安定性を向上させることができる。
【0153】
(実施例16)
従来のソフトゲルシェルから充填材料への酸の移動
上述並びに図15及び図16に示すように、カプセル封入した試料は、ある種の状況下で充填材料からソフトゲルシェルへHClが移動したと考えられる。したがって、充填材料組成物のpHをカプセル封入の前後で比較して、このHCl移動の程度を定量化した。この実証実験の詳細を以下のTable 2(表2)に示す。HClもKIも含まない、及びHClを含む、2種の異なる充填材料組成物のpH値を示す。
【0154】
【表2】
【0155】
(実施例17)
酸性溶液を含むソフトゲルシェルから充填材料への酸の移動
充填材料組成物のpHの制御に対するpH平衡の影響を、各々が0、3.75、7.5、又は15mMのHClを含む、4種の別々の充填材料組成物で評価した。4種の試料の各々を20mL容のバイアルに分注(各バイアルに約2g)し、静置し、乾燥させた。約5gの充填材料組成物(HCLとKIの両方を含む)をバイアル内のゼラチン混合物の上に添加し、すべてのバイアルを45℃の水浴中に置いた。バイアルを所定時間に分析し、それらの結果を図17に示す。図に示すように、各試料のPE分解は、ゼラチン中の酸の量と直接相関がある。詳細には、ゼラチン混合物のゼラチン中に存在するHClが多いほど、ゼラチン混合物上の充填材料組成物のPE安定性が向上する。更に、バイアル中の充填材料組成物のpHは、ゼラチン中のHClのレベルに反比例する。
【0156】
前述の明細書本文は、説明のために具体的な実施形態を参照して記載した。しかし、上記の例示的な考察は、網羅的であること又は開示した正確な形態に本発明を限定することを意図するものではない。上記の教示を考慮して、多くの修正及び変形が可能である。技術の原理及びそれらの実際的用途を最もよく説明するために、諸実施形態を選択し、説明した。それにより、当業者は、企図する特定の使用に適するような様々な修正を加えた技術及び様々な実施形態を最もよく利用することが可能になる。
【0157】
本開示及び諸実施例を、添付の図を参照して十分に説明してきたが、様々な変更及び修正が当業者には明らかになるであろうことに留意されたい。そのような変更及び修正は、特許請求の範囲によって定義される開示及び実施例の範囲内に含まれるものと理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17