(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163302
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】恒温槽型圧電発振器
(51)【国際特許分類】
H03B 5/32 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
H03B5/32 A
H03B5/32 H
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024158584
(22)【出願日】2024-09-12
(62)【分割の表示】P 2021043781の分割
【原出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】古城 琢也
(57)【要約】
【課題】パッケージの断熱性を確保することが可能であり、パッケージの熱分布の均一化を図ることが可能な恒温槽型圧電発振器を提供することを目的とする。
【解決手段】コア部5が断熱用のパッケージ2の内部に密閉状態で封入されたOCXO1において、コア部5は、少なくとも発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52を含んだ構成になっており、さらに、パッケージ2に対してはんだ9bによって取り付けられる複数のコンデンサ9を含んでいる。コア部5は、コア基板4を介してパッケージ2の一主面に搭載され、複数のコンデンサ9は、パッケージ2における一主面とは反対側の他主面に設けられた搭載パッド9aにはんだ9bによって接合されており、搭載パッド9aは、コンデンサ9との接合部分のみがパッケージ2の他主面に現れている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部が断熱用のパッケージの内部に密閉状態で封入された恒温槽型圧電発振器であって、
前記コア部は、少なくとも発振用IC、圧電振動子、およびヒータ用ICを含んだ構成になっており、
さらに、前記パッケージに対して接合材によって取り付けられる複数の回路部品を含んでおり、
前記コア部は、コア基板を介して前記パッケージの一主面に搭載され、
前記複数の回路部品は、前記パッケージにおける前記一主面とは反対側の他主面に設けられた回路部品用搭載パッドに前記接合材によって接合されており、
前記各回路部品用搭載パッドは、前記回路部品との接合部分のみが前記パッケージの他主面に現れていることを特徴とする恒温槽型圧電発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、恒温槽型圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子等の圧電振動子は、固有の周波数温度特性に基づいて、温度に応じて振動周波数が変化する。そこで、圧電振動子の周囲の温度を一定に保つために、恒温槽内に圧電振動子を封入した恒温槽型圧電発振器(Oven-Controlled Xtal(crystal) Oscillator:以下、「OCXO」とも言う。)が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-205093号公報
【特許文献2】特開2018-14705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願出願人は、発振用IC、圧電振動子、およびヒータ用ICが積層されたコア部を、コア基板を介して断熱用のパッケージ内部に支持した恒温槽型圧電発振器の出願を既に行っている(特願2020-130421:本願出願時点で未公開)。このような恒温槽型圧電発振器では、パッケージの小型化にともなって熱容量が小さくなり、外部温度変化の影響を受けやすくなるので、パッケージの断熱性が低下し、外部応力の影響が大きくなることが懸念される。また、パッケージ全体としての熱分布が不均一になることも懸念される。
【0005】
本発明は上述したような実情を考慮してなされたもので、パッケージの断熱性を確保することが可能であり、パッケージの熱分布の均一化を図ることが可能な恒温槽型圧電発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。すなわち、本発明は、コア部が断熱用のパッケージの内部に密閉状態で封入された恒温槽型圧電発振器であって、前記コア部は、少なくとも発振用IC、圧電振動子、およびヒータ用ICを含んだ構成になっており、さらに、前記パッケージに対して接合材によって取り付けられる複数の回路部品を含んでおり、前記コア部は、コア基板を介して前記パッケージの一主面に搭載され、前記複数の回路部品は、前記パッケージにおける前記一主面とは反対側の他主面に搭載されており、前記パッケージおよび前記複数の回路部品がそれぞれ平面視矩形状であり、前記パッケージの短辺方向の中心線および長辺方向の中心線のうち少なくとも1つに対して、前記複数の回路部品が対称に配置されていることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、パッケージの断熱性を確保することができ、パッケージの熱分布の均一化を図ることができる。詳細には、発振用IC、圧電振動子、およびヒータ用ICを含むコア部を用いることで、コア部の熱容量を小さくすることができる。コア部の熱容量を小さくすると、小電力での温度制御がしやすくなり、しかも、コア部の温度追従性を向上させて、恒温槽型圧電発振器の安定性を向上させることができる。また、パッケージの熱容量を小さくした場合、外部温度変化の影響を受けやすくなるが、コア部とパッケージとの間にコア基板を介在させることで、応力と熱の逃げとを軽減できるようになっている。これに加え、複数の回路部品が、パッケージの短辺方向の中心線および長辺方向の中心線のうち少なくとも1つに対して対称に配置されているので、パッケージの特定の辺方向における熱伝達の対称性を保つことができ、熱分布の均一化を図ることができる。これにより、パッケージの特定の辺方向における熱伝達が偏りにくくなり、恒温槽型圧電発振器の温度制御や特性を安定化させることができる。また、回路部品の向きや間隔については整った状態で配置されるため、パッケージの他主面の搭載領域に対して、回路部品の搭載位置に無駄がなくなり、実装性が向上する。
【0008】
また、本発明は、コア部が断熱用のパッケージの内部に密閉状態で封入された恒温槽型圧電発振器であって、前記コア部は、少なくとも発振用IC、圧電振動子、およびヒータ用ICを含んだ構成になっており、さらに、前記パッケージに対して接合材によって取り付けられる複数の回路部品を含んでおり、前記コア部は、コア基板を介して前記パッケージの一主面に搭載され、前記複数の回路部品は、前記パッケージにおける前記一主面とは反対側の他主面に設けられた回路部品用搭載パッドに前記接合材によって接合されており、前記各回路部品用搭載パッドは、前記回路部品との接合部分のみが前記パッケージの他主面に現れていることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、上述した構成と同様、パッケージの断熱性を確保することができ、パッケージの熱分布の均一化を図ることができる。また、回路部品用搭載パッドが、回路部品との接合部分のみがパッケージの他主面に現れているので、パッケージにおいて不要に熱分布が広がる領域をなくすことができ、接合材による回路部品の接合を安定させることができ、接合不良の発生を抑制することができる。
【0010】
上記構成において、前記コア基板を前記パッケージに接合するための接合領域は、平面視において前記複数の回路部品のうちいずれかに重畳して配置されており、前記コア部は、平面視において前記複数の回路部品のうちいずれかに重畳して配置されていることが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、パッケージ全体として熱伝達がさらに偏りができにくくなり、熱分布の均一化を図ることができる。
【0012】
また、上記構成において、前記コア基板は前記パッケージの長手方向の両端部において前記パッケージに搭載される一方、前記複数の回路部品のそれぞれは前記パッケージの短辺方向の両端部において前記パッケージに搭載されていることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、コア基板の搭載方向と複数の回路部品の搭載方向とが直交するので、パッケージ全体として熱伝達がさらに偏りができにくくなり、熱分布の均一化を図ることができる。
【0014】
上記構成において、前記コア部は、前記パッケージの内部で真空封止されていることが好ましい。この構成によれば、コア部を真空封止することによって、コア部の断熱性を向上させることができる。
【0015】
また、上記構成において、前記コア基板と前記パッケージの底面の間には空間が設けられていることが好ましい。この構成によれば、コア基板を介してコア部をパッケージに接続し、かつ、コア基板の下方に空間を形成することで、コア部に対する断熱効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、発振用IC、圧電振動子、およびヒータ用ICを含むコア部を用いることで、コア部の熱容量を小さくすることができる。コア部の熱容量を小さくすると、小電力での温度制御がしやすくなり、しかも、コア部の温度追従性を向上させて、恒温槽型圧電発振器の安定性を向上させることができる。また、パッケージの熱容量を小さくした場合、外部温度変化の影響を受けやすくなるが、コア部とパッケージとの間にコア基板を介在させることで、応力と熱の逃げとを軽減できるようになっている。これに加え、複数の回路部品が、パッケージの短辺方向の中心線および長辺方向の中心線に対して対称に配置されているので、パッケージ全体としての熱分布の均一化を図ることができる。これにより、パッケージ全体として熱伝達が偏りにくくなり、恒温槽型圧電発振器の温度制御や特性を安定化させることができる。したがって、パッケージの断熱性を確保することができ、パッケージの熱分布の均一化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態にかかるOCXOの概略構成を示す断面図である。
【
図4】
図1のOCXOのコア部およびコア基板の概略構成を示す断面図である。
【
図5】
図4のコア部に含まれる水晶発振器の断面図である。
【
図6】
図4のコア部に含まれる水晶発振器の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
本実施形態にかかるOCXO1は、
図1~
図3に示すように、セラミック製等で略直方体のパッケージ(筐体)2の内部にコア部5が配置され、リッド(蓋)3によって気密封止された構造とされている。パッケージ2には、上方が開口された凹部2aが形成されており、凹部2aの内部にコア部5が気密状態で封入されている。凹部2aを囲う周壁部2bの上面には、リッド3が封止材8を介して固定されており、パッケージ2の内部が密封状態(気密状態)になっている。封止材8としては、例えばAu-Su合金や、はんだ等の金属系封止材が好適に用いられるが、低融点ガラス等の封止材を用いてもよい。また、これらに限らず、金属リングを用いたシーム封止や金属リングを用いないダイレクトシーム封止、ビーム封止などの手法による封止部材の構成を採用することも可能である(真空度を低下させない上では、シーム封止が好ましい)。パッケージ2の内部空間は、断熱性を向上させるために真空(例えば真空度が10Pa以下)封止されている。なお、
図2では、リッド3を取り外した状態のOCXO1を示し、
図3では、コンデンサ9を搭載していない状態のOCXO1を示しており、それぞれOCXO1の内部の構造を示している。
【0020】
パッケージ2の周壁部2bの内壁面には、接続端子(図示省略)の並びに沿った段差部2cが形成されている。コア部5は、対向する一対の段差部2c,2c間における凹部2aの底面に、板状のコア基板4を介して配置されている。あるいは、段差部2cは、凹部2aの底面の4方を囲むように形成されていてもよい。コア基板4は、非導電性接着剤7により凹部2aの底面に接合されており、コア基板4の下側の部分には空間2dが形成されている。非導電性接着剤7は、コア基板4の長手方向の両端部にそれぞれ設けられており、コア基板4の短手方向(
図1の紙面に直交する方向)に沿って直線状に設けられている。コア基板4のパッケージ2の長手方向の両端部が、非導電性接着剤7によってパッケージ2に接合されるようになっている。また、コア部5の各構成部材に形成された外部端子(図示省略)は、ワイヤ6a,6bを介して段差部2cの段差面上に形成された接続端子にワイヤボンディングにより接続されている。
【0021】
このように、コア基板4を介してコア部5をパッケージ2に接続し、かつ、コア基板4の下方に空間2dを形成することで、コア部5に対する断熱効果を高めることができる。また、パッケージ2に一対の段差部2cを設け、段差部2cに接続端子を設けることで、接続端子がパッケージ2の開口部に近づき、コア部5とパッケージ2とのワイヤボンディングが行いやすくなる。なお、コア基板4をパッケージ2に接合するための接合領域(非導電性接着剤7の塗布領域)A1は、平面視においてコア基板4の上面におけるコア部5の配置領域と重畳させないようにすることが好ましい。
【0022】
また、OCXO1には、ヒータ用IC52と組み合わせて使用される調整用電子部品としてコンデンサ9(
図1では3つ)が含まれる。3つのコンデンサ9の大きさ(体積、表面積)は同一になっている。コンデンサ9は、パッケージ2に対してはんだ9bによって実装されるはんだ部品(回路部品)である。はんだ部品であるコンデンサ9は、コア部5と共にパッケージ2内に配置した場合、接合材であるはんだ9bの再溶融などによってガスが発生し、パッケージ2内の真空度を低下させる恐れがある。パッケージ2内の真空度が低下すれば、OCXO1の断熱性も低下する
このため、
図1~
図3に示すOCXO1では、パッケージ2において、上方が開口された凹部2a以外に、下方が開口された凹部2eが形成されており、コンデンサ9は凹部2eに配置されている。なお、コンデンサ9は、コア部5に搭載される部品(後述する発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52)とは異なり、温度特性の低い(温度の影響を受けにくい)部品であるため、凹部2eはリッドなどによって封止する必要は無い。
【0023】
このように、はんだ部品であるコンデンサ9を、コア部5が配置される密閉空間(凹部2aによる密閉空間)とは別箇所に配置することにより、コア部5が配置される密閉空間の真空度が、はんだ9bから発生するガスによって低下することを回避できる。これにより、OCXO1の断熱性も良好に維持できる。なお、コンデンサ9等の部外(密閉空間外)に配置された回路部品の搭載領域(この例では凹部2eの一部または全部など)に対して、封止樹脂によって封止することもでき、この場合、封止樹脂で覆うことで回路部品に対する外部空間との断熱効果を高めることできる。
【0024】
また、コンデンサ9を、コア部5が配置される密閉空間外に配置することにより、この密閉空間の熱容量を小さくすることもできる。密閉空間の熱容量を小さくすることで、小電力での温度制御や、コア部5の温度追従性の向上を図ることができる。
【0025】
本実施形態では、3つのコンデンサ9は、パッケージ2における一主面とは反対側の他主面(この場合、凹部2eの底面)に搭載されている。コンデンサ9は、パッケージ2の凹部2eの底面に形成された搭載パッド9a(回路部品用搭載パッド)に、はんだ9bによって接合されている。一対の搭載パッド9a,9aは、パッケージ2の短辺方向に沿って対向して配置されており、3つのコンデンサ9それぞれのパッケージ2の短辺方向の両端部が、搭載パッド9a,9aに接合されるようになっている。上述したように、コア基板4はパッケージ2の長手方向の両端部においてパッケージ2に搭載される一方、3つのコンデンサ9のそれぞれはパッケージ2の短辺方向の両端部においてパッケージ2に搭載されている。このように、コア基板4の搭載方向とコンデンサ9の搭載方向が直交している。また、コア基板4をパッケージ2に接合するための接合領域(非導電性接着剤7の塗布領域)A1が、平面視においてパッケージ2の長手方向の両端に位置するコンデンサ9に重畳している。コア部5が、平面視においてパッケージ2の長手方向の中央に位置するコンデンサ9に重畳して配置されている。
【0026】
図3に示すように、3対の搭載パッド9a,9aが、パッケージ2の長辺方向に所定の間隔を隔てて配列されている。各搭載パッド9aは、パッケージ2の底面において島状に点在されている。各搭載パッド9aは、コンデンサ9との接合部分のみがパッケージ2の他主面に現れており、搭載パッド9aに電気的に接続される配線は、パッケージ2の内部に設けられており、パッケージ2の他主面には現れていない。具体的には、
図1に示すように、各搭載パッド9aには、パッケージ2に形成された凹部(スルーホール)2f内の配線が接続されており、この配線は、パッケージ2の積層間に形成された内部配線2gに接続されている。
【0027】
また、パッケージ2および3つのコンデンサ9はそれぞれ平面視矩形状であり、
図3に示すように、パッケージ2の短辺方向の中心線L1および長辺方向の中心線L2に対して、3つのコンデンサ9が対称に配置されている。この場合、3つのコンデンサ9の配置場所が中心線L1,L2に線対称になっていればよい。なお、パッケージ2の下面には、複数(
図3では8つ)の外部接続端子2hが形成されており、OCXO1は、外部に設けられる外部回路基板(図示省略)にはんだ等を介して電気的に接続可能になっている。
【0028】
次に、コア部5について、
図4を参照して説明する。
図4では、コア部5がコア基板4上に搭載された状態を図示している。コア部5は、OCXO1で使用される各種電子部品をパッケージングしたものであり、発振用IC51、水晶振動子(圧電振動子)50、およびヒータ用IC52が上側から順に積層された3層構造(積層構造)の構成になっている。発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52は、平面視におけるそれぞれの面積が、上方に向かって漸次小さくなっている。コア部5は、特に、温度特性の大きい水晶振動子50、発振用IC51、およびヒータ用IC52の温度調整を行うことで、OCXO1の発振周波数を安定させるように構成されている。なお、コア部5の各種電子部品は封止樹脂によって封止されていないが、封止雰囲気によっては封止樹脂による封止を行うようにしてもよい。
【0029】
水晶振動子50および発振用IC51によって、水晶発振器100が構成される。発振用IC51は、複数の金属バンプを介して水晶振動子50上に搭載されている。発振用IC51によって水晶振動子50の圧電振動を制御することにより、OCXO1の発振周波数が制御される。水晶発振器100の詳細については後述する。
【0030】
水晶振動子50および発振用IC51の互いの対向面の間には、非導電性接着剤53が介在されており、非導電性接着剤53によって水晶振動子50および発振用IC51の互いの対向面が固定されている。この場合、水晶振動子50の上面と、発振用IC51の下面とが、非導電性接着剤53を介して接合される。
【0031】
発振用IC51は、平面視における面積が水晶振動子50よりも小さくなっており、発振用IC51の全体が、平面視で水晶振動子50の範囲内に位置している。発振用IC51の下面の全体が、水晶振動子50の上面に接合されている。
【0032】
ヒータ用IC52は、例えば発熱体(熱源)と、発熱体の温度制御用の制御回路(電流制御用の回路)と、発熱体の温度を検出するための温度センサとが一体になった構成とされている。ヒータ用IC52によってコア部5の温度制御を行うことにより、コア部5の温度が略一定の温度に維持され、OCXO1の発振周波数の安定化が図られている。
【0033】
水晶振動子50およびヒータ用IC52の互いの対向面の間には、非導電性接着剤54が介在されており、非導電性接着剤54によって水晶振動子50およびヒータ用IC52の互いの対向面が固定されている。この場合、水晶振動子50の下面と、ヒータ用IC52の上面とが、非導電性接着剤54を介して接合される。
【0034】
水晶振動子50は、平面視における面積がヒータ用IC52よりも小さくなっており、水晶振動子50の全体が、平面視でヒータ用IC52の範囲内に位置している。水晶振動子50の下面の全体が、ヒータ用IC52の上面に接合されている。
【0035】
ヒータ用IC52およびコア基板4の互いの対向面の間には、非導電性接着剤55が介在されており、非導電性接着剤55によってヒータ用IC52およびコア基板4の互いの対向面が固定されている。非導電性接着剤53,54および55としては、例えばポリイミド系接着剤、エポキシ系接着剤等が用いられる。
【0036】
図4に示すコア部5において、水晶振動子50およびヒータ用IC52の上面にはワイヤボンディング用の外部端子が形成されている。水晶振動子50およびヒータ用IC52のワイヤボンディングは、コア部5をパッケージ2に搭載する前には行われず、コア部5をパッケージ2に搭載した後に行われる。すなわち、
図1に示すように、コア部5をパッケージ2に搭載した後、水晶振動子50の上面に形成された外部端子がワイヤ6aを介して段差部2cの段差面上に形成された接続端子に接続される。また、ヒータ用IC52の上面に形成された外部端子がワイヤ6bを介して段差部2cの段差面上に形成された接続端子に接続される。このように、コア部5をパッケージ2に搭載した後でワイヤボンディングを行うことによって、効率よくワイヤボンディングを行うことができ、量産性に優れたOCXO1を提供することができる。
【0037】
なお、本発明において、水晶振動子50およびヒータ用IC52は、ワイヤボンディングによってパッケージ2に直接的に電気接続される構成に限定されるものではない。すなわち、水晶振動子50およびヒータ用IC52は、コア基板4を介してパッケージ2に電気接続される構成であってもよい。この場合、コア基板4に中継配線を形成し、水晶振動子50およびヒータ用IC52とコア基板4との接続には、ワイヤボンディングやフリップチップボンディングを用いることができる。また、コア基板4とパッケージ2との接続に関しては、パッケージ2におけるコア基板4との対向面に接続端子を形成し、コア基板4およびパッケージ2の接続端子同士を導電性接着剤によって接続すればよい(
図1における非導電性接着剤7の代わりに導電性接着剤を用いる)。この場合、
図1における段差部2cは特に必要なく、省略可能である。
【0038】
ただし、
図1に示すように、非導電性接着剤7によるパッケージ2に対するコア基板4の機械的接合と、ワイヤボンディングによるコア部5とパッケージ2との電気的接合とを分離する構造は、機械的接合と電気的接合の両方において高い信頼性を得ることができるため好ましい。例えば、パッケージ2にコア基板4を接続する非導電性接着剤7は、外部応力の影響を受けても機械的接合強度が低下しにくい柔軟性のあるものを用いることができる。また、コア部5とパッケージ2とのワイヤボンディングでは、電気抵抗の低い金属ワイヤの使用により、共通インピーダンスノイズが発生しにくくなり、OCXO1のCN(キャリアノイズ)特性を向上させることができる。
【0039】
コア部5に用いられる水晶振動子50の種類は特に限定されるものではないが、デバイスを薄型化しやすい、サンドイッチ構造のデバイスを好適に使用できる。サンドイッチ構造のデバイスは、ガラスや水晶からなる第1、第2封止部材と、例えば水晶からなり両主面に励振電極が形成された振動部を有する圧電振動板とから構成され、第1封止部材と第2封止部材とが、圧電振動板を介して積層して接合され、内部に配された圧電振動板の振動部が気密封止される3枚重ね構造のデバイスである。
【0040】
このようなサンドイッチ構造の水晶振動子50と、発振用IC51とが一体的に設けられた水晶発振器100の一例について、
図5、
図6を参照して説明する。
図5は水晶発振器100の断面図(
図6のA-A断面図)であり、
図6は水晶発振器100の上面図である。なお、サンドイッチ構造の水晶振動子自体は公知であるため、水晶振動子50の内部構造についての詳細な説明は省略する。
【0041】
水晶発振器100は、
図5に示すように、水晶振動板(圧電振動板)10、第1封止部材20、第2封止部材30、および発振用IC51を備えて構成されている。この水晶発振器100では、水晶振動板10と第1封止部材20とが環状の封止接合部41によって接合され、水晶振動板10と第2封止部材30とが環状の封止接合部42によって接合されることによって、略直方体のサンドイッチ構造のパッケージが構成される。封止接合部41,42は、例えば、水晶振動板10、第1封止部材20および第2封止部材30のそれぞれの接合面に、表面がAu層とされた接合パターン(例えば、最下層側からTi層とAu層とが形成された接合パターン)を形成し、接合面同士を貼り合わせたときのAu-Au拡散接合によって接合が行われるものとすることができる。この構成によれば、水晶振動板10と各封止部材20,30との隙間寸法を0.15μm~1μm程度と非常に小さくできるため、薄型化とコア部5の熱容量の縮小化に有利な構成とすることができる。
【0042】
すなわち、水晶発振器100においては、振動部(図示省略)が形成される水晶振動板10の両主面のそれぞれに第1封止部材20および第2封止部材30が接合されることでパッケージの内部空間(キャビティ)が形成され、この内部空間に水晶振動板10の振動部が気密封止される。第1封止部材20上に搭載される発振用IC51は、水晶振動板10とともに発振回路を構成する1チップ集積回路素子である。
【0043】
図6に示すように、水晶振動子50の上面には、接続端子21や外部端子22が形成されている。接続端子21は、その一端(外周側端部)に振動部の励振電極が(水晶振動子50内の配線やスルーホールを介して)電気的に接続されており、他端(内周側端部)に発振用IC51が接続される。また、外部端子22は、その一端(外周側端部)がパッケージ2とのワイヤボンディングに用いられ、他端(内周側端部)に発振用IC51が接続される。発振用IC51は、金属バンプを用いたFCB法により、接続端子21や外部端子22に接続される。
【0044】
本実施形態に係るOCXO1は、発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52を積層配置したコア部5を用いることで、コア部5の熱容量を小さくすることができる。コア部5の熱容量を小さくすると、小電力での温度制御がしやすくなり、しかも、コア部5の温度追従性を向上させて、OCXO1の安定性を向上させることができる。また、OCXO1の熱容量を小さくした場合、外部温度変化の影響を受けやすくなるが、コア部5とパッケージ2との間にコア基板4を介在させることで、応力と熱の逃げとを軽減できるようになっている。
【0045】
また、本実施形態では、3つコンデンサ9が、パッケージ2の短辺方向の中心線L1および長辺方向の中心線L2に対して対称に配置されているので、パッケージ2全体としての熱分布の均一化を図ることができる。これにより、パッケージ2全体として熱伝達が偏りにくくなり、OCXO1の温度制御や特性を安定化させることができる。また、コンデンサ9の向きや間隔については整った状態で配置されるため、パッケージ2の他主面の搭載領域に対して、コンデンサ9の搭載位置に無駄がなくなり、実装性が向上する。
【0046】
また、本実施形態では、各搭載パッド9aは、コンデンサ9との接合部分(はんだ9bの塗布部分)のみがパッケージ2の他主面に現れている。具体的には、各搭載パッド9aに電気的に接続される配線は、パッケージ2の内部に設けられており、パッケージ2の他主面には現れていない。この構成によれば、パッケージ2において不要に熱分布が広がる領域をなくすことができ、はんだ9bによるコンデンサ9の接合を安定させることができ、接合不良(実装不良)の発生を抑制することができる。
【0047】
本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0048】
例えば、上記実施形態では、サンドイッチ構造の水晶振動子50を含む水晶発振器100を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、サンドイッチ構造以外の発振器(例えば、SMD(Surface Mount Device)型の発振器)を用いてもよい。
【0049】
また、パッケージ2の他主面に搭載されるコンデンサ9の数は特に限定されるものでは無く、コンデンサ9の数は3つ以外であってもよい。また、コンデンサ9以外の回路部品をパッケージ2の他主面に搭載してもよい。また、全ての回路部品の大きさ(体積、表面積)が同一でなくてもよい。
【0050】
上記実施形態では、3つのコンデンサ9が中心線L1,L2の両方に対して線対称に配置されていたが、中心線L1,L2のうち少なくとも1つに対して線対称になっていればよい。例えば3つのコンデンサ9がパッケージ2の短辺方向の中心線L1のみに対して線対称であってもよいし、あるいは、3つのコンデンサ9がパッケージ2の長い方向の中心線L2のみに対して線対称であってもよい。これにより、パッケージ2の特定の辺方向における熱伝達の対称性を保つことができ、熱伝達が偏りにくくなり、OCXO1の温度制御や特性を安定化させることができる。
【0051】
また、OCXO1に含まれるヒータの数は特に限定されるものでは無く、OCXO1は、ヒータ用IC52に含まれるヒータ以外に、他のヒータを有していてもよい。例えば、コア部5の上部にさらにヒータを追加した構成、パッケージ2内でコア部5以外に配置された回路部品の搭載領域にヒータを追加した構成、およびパッケージ2本体に膜状のヒータを埋め込んだ構成などが考えられる。
【0052】
また、上記実施形態では、パッケージ2は、凹部2aおよび凹部2eをそれぞれ異なる主面に形成したH型パッケージとされているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば2段重ねパッケージを使用することもできる。2段重ねパッケージのOCXO1の場合、一方のみに凹部を有するパッケージを上下方向に積層し電気的機械的に接合するとともに、上側のパッケージをリッドで気密封止する形態とすることもできる。この場合、上側のパッケージは、
図1に示すように凹部にコア部5を格納する構成とし、下側のパッケージにコンデンサ9を格納する形態とすることができる。このような2段重ねパッケージでも、はんだ部品であるコンデンサ9を、コア部5が配置される密閉空間とは別箇所に配置することができ、
図1に示すH型パッケージのOCXO1と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 OCXO(恒温槽型圧電発振器)
2 パッケージ
4 コア基板
5 コア部
7 非導電性接着剤
9 コンデンサ(回路部品)
9a 搭載パッド(回路部品用搭載パッド)
9b はんだ(接合材)
50 水晶振動子(圧電振動子)
51 発振用IC
52 ヒータ用IC
L1 パッケージの短辺方向の中心線
L2 パッケージの長辺方向の中心線