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特開2024-163326制御された配向を有するポリマーチューブ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163326
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】制御された配向を有するポリマーチューブ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/91 20130101AFI20241114BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20241114BHJP
   A61L 31/06 20060101ALI20241114BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
A61F2/91
A61M25/00 500
A61M25/00 610
A61L31/06
B29C43/34
【審査請求】有
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024159307
(22)【出願日】2024-09-13
(62)【分割の表示】P 2021518084の分割
【原出願日】2018-10-01
(31)【優先権主張番号】16/148,826
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】522169793
【氏名又は名称】ゼウス カンパニー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(72)【発明者】
【氏名】リンゼー,ジェームス,エム.
(72)【発明者】
【氏名】アノー,ブルース,エル.
(72)【発明者】
【氏名】キャンペネリ,ジョン,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】フォリー,エリザベス,エー.
(72)【発明者】
【氏名】マロ,ジャスティン,エー.
(57)【要約】
【課題】in vivoで使用するのに適した生分解性ポリマーチューブ等の配向ポリマーチューブを作製する方法を提供する。
【解決手段】結晶化可能な生分解性ポリマーの多層化されたチューブを製造する方法であって、少なくとも部分的な分子配向を示す少なくとも1つの延伸ポリマー材料を得ることと、前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料及び少なくとも1つの接着性ポリマー材料を使用して前記チューブを形成することと、を含み、該チューブは、該チューブの長さに垂直な法線を有する外表面を有し、最初の圧縮サイクルに基づいて測定される15MPaから26MPaの間の最大応力値を示し、5回目の圧縮サイクルの開始時に元の長さ軸のパーセントとして長さ方向の総変位で測定される20%未満の値のサイクル間で改善されたヒステリシス挙動を示す、方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶化可能な生分解性ポリマーの多層化されたチューブを製造する方法であって、
少なくとも部分的な分子配向を示す少なくとも1つの延伸ポリマー材料を得ることと、
なお、前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料を得ることは、少なくとも1つのポリマー材料を延伸することを含み、
前記少なくとも1つのポリマー材料は、第1の寸法を有し、
前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料は、少なくとも1つの結晶化可能な生分解性ポリマー材料を含み、
前記延伸することは、前記第1の寸法を増加させ、分子配向の制御されたレベルをもたらす;
前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料及び少なくとも1つの接着性ポリマー材料を使用して前記チューブを形成することと、
を含み、
該チューブは、該チューブの長さに垂直な法線を有する外表面を有し、
該チューブは、最初の圧縮サイクルに基づいて測定される15MPaから26MPaの間の最大応力値を示し、
なお、前記最初の圧縮サイクルは、該チューブの長さ軸がジョーの動きと垂直となるように該チューブをインストロン社の装置内に配置すること、および前記ジョーにクランプされたディスクを降下させて初期直径の50%に変形するまで毎分初期直径の50%で該チューブを圧縮すること、を含み、
該チューブは、5回目の圧縮サイクルの開始時に元の長さ軸のパーセントとして長さ方向の総変位で測定される20%未満の値のサイクル間で改善されたヒステリシス挙動を示す、なお、前記5回目の圧縮サイクルの開始時は、前記最初の圧縮サイクルがサイクル間の休止なしで4回繰り返された時点である、方法。
【請求項2】
前記延伸することは、平面延伸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つのポリマー材料の1つ以上は、ポリマーフィルム、ポリマーモノフィラメント、ポリマーテープ、及びポリマーロッドのうちの1つ以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つのポリマー材料は、第2の寸法を有し、かつ、
前記少なくとも1つのポリマー材料の延伸は、前記少なくとも1つのポリマー材料を延伸して、前記第2の寸法を増加させることを含み、その結果前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料は、二軸延伸されたポリマー材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1つの延伸ポリマー材料を得ることは、前記少なくとも1つの接着性ポリマー材料を前記少なくとも1つのポリマー材料と複合させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複合させることは、前記少なくとも1つのポリマー材料及び前記少なくとも1つの接着性ポリマー材料を層状形態で含む複合ポリマー材料を形成することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのポリマー材料の延伸の前に、又はその間に、前記少なくとも1つの接着性ポリマー材料及び前記少なくとも1つのポリマー材料を複合させる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記チューブを形成することは、前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料及び前記少なくとも1つの接着性ポリマー材料を支持体の周りに巻き付けることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記支持体は、円柱形、円形、長方形、三角形、楕円形、多角形、及び管形のうちの1つ以上を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記巻き付けは、前記チューブが前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料の複数の層及び前記少なくとも1つの接着性ポリマー材料の複数の層を含むように、前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料及び前記少なくとも1つの接着性ポリマー材料を前記支持体の周りに複数回巻き付けることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料は、複数の単位の延伸ポリマー材料を含み、
前記複数の単位の延伸ポリマー材料は、異なるポリマー材料又は同じポリマー材料を含み、かつ、
前記チューブの形成は、前記複数の単位の延伸ポリマー材料を積み重ねた様式及びずらした様式のうちの少なくとも1つで配列させることと、前記配列された複数の単位の延伸ポリマー材料をバイアス角で巻き付けることとを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記支持体はマンドレルであり、かつ前記方法は、前記マンドレルから前記チューブを取り外すことを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記支持体は、デバイスを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも部分的に前記チューブ及び前記支持体に基づいて得られる複合物を形成することを更に含み、前記得られる複合物は、医療用デバイスである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも部分的に前記チューブに基づく医療用デバイスを形成することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記医療用デバイスの形成は、前記チューブを切断してステントにすることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
治療薬、被覆、及びコーティングのうちの1つ以上を前記ステントに適用することを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記チューブの形成は、前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料に熱及び圧力のうちの少なくとも1つを加えることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記チューブの形成は、
前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料の少なくとも一部の周りに収縮チューブ又は収縮フィルムを適用して、層状構造物を得ることを含む、層状構造物を形成することと、
前記層状構造物に熱及び圧力のうちの少なくとも1つを加えることと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記チューブの形成は、
前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料の少なくとも一部を型内に挿入することと、
前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料を拡張可能な支持体上に配置することと、
前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料に熱及び圧力のうちの少なくとも1つを加えることと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つの結晶化可能な生分解性ポリマー材料の1つ以上は、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D-ラクチド)(PDLA)、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(パラ-ジオキサノン)(PDO)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(テトラメチルカーボネート)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、並びにそれらのコポリマー及び誘導体及び組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
該接着性ポリマー材料は、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(D,L-ラクチド)、ポリ((L-ラクチド)-co-ε-カプロラクトン)、ポリ(L-ラクチド-co-トリメチレンカーボネート)、ポリ(ε-カプロラクトン-co-トリメチレンカーボネート)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(L-ラクチド-co-ポリ(エチレングリコール))、並びにそれらのコポリマー及び誘導体及び組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記チューブの形成は、前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料及び少なくとも1つの接着性ポリマー材料を使用することを含み、かつ前記少なくとも1つの結晶化可能な生分解性ポリマー材料及び前記少なくとも1つの接着性ポリマー材料は、同じポリマー材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料を、それぞれ前記少なくとも1つのポリマー材料に対応する最大延伸比の少なくとも10パーセントで延伸する、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つのポリマー材料の延伸は、延伸の間に、前記少なくとも1つのポリマー材料の機械的特性、熱力学的特性、化学的特性、電気的特性、及び分解速度のうちの1つ以上を制御することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つのポリマー材料を、前記少なくとも1つのポリマー材料の当初の寸法の300パーセントから1000パーセントの間で延伸する、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
少なくとも部分的に少なくとも1つのポリマー材料の延伸に基づいて得られる、少なくとも部分的な分子配向を示す少なくとも1つの延伸ポリマー材料を含むチューブであって、前記少なくとも1つのポリマー材料は、第1の寸法を有し、前記延伸は、前記第1の寸法を増加させて分子配向の制御されたレベルをもたらし、前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料は、少なくとも1つの結晶化可能な生分解性ポリマー材料及び少なくとも1つの接着性ポリマー材料を含み、
該チューブは、該チューブの長さに垂直な法線を有する外表面を有し、
該チューブは、最初の圧縮サイクルに基づいて測定される15MPaから26MPaの間の最大応力値を示し、なお、前記最初の圧縮サイクルは、該チューブの長さ軸がジョーの動きと垂直となるように該チューブをインストロン社の装置内に配置すること、および前記ジョーにクランプされたディスクを降下させて初期直径の50%に変形するまで毎分初期直径の50%で該チューブを圧縮すること、を含み、
該チューブは、5回目の圧縮サイクルの開始時において元の長さ軸のパーセントとして長さ方向の総変位で測定される20%未満の値のサイクル間で改善されたヒステリシス挙動を示す、なお、前記5回目の圧縮サイクルの開始時は、前記最初の圧縮サイクルがサイクル間の休止なしで4回繰り返された時点である、チューブ。
【請求項28】
前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料を得ることは、前記延伸の後に前記少なくとも1つの接着性ポリマー材料を前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料と複合させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、様々な分野で利用される特定の分子配向を有するポリマーチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーチューブは、多くの用途に広く使用されている。特に、生体吸収性ポリマーチューブは、従来の金属ステントに取って代わる足場として機能する体内(例えば、血管内及び動脈内)移植用に設計され得る。幾つかの生体吸収性ポリマーチューブは、神経ガイドチューブとして及び/又は神経組織の再生のために体内でプレースホルダーとして使用される。他の生体吸収性ポリマーチューブは、体腔又は創傷から流体及び/又は気体を排出して、例えば治癒を促進するためのドレナージチューブとして設計され得る。有利には、生体吸収性ポリマーチューブは生分解性ポリマー(複数の場合もある)で作製されるため、時間の経過とともに溶解し又は身体に吸収され得ることから、使用後にチューブを外科的に取り除く必要はない。
【0003】
生分解性ポリマーチューブは、概して、1つ以上の生分解性ポリマーを含み、これには、例えば、限定されるものではないが、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D-ラクチド)(PDLA)、ポリ(D,L-ラクチド)(PDLLA)、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(パラ-ジオキサノン)(PDO)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(テトラメチルカーボネート)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、並びにそれらのコポリマー、ブレンド及び誘導体が含まれる。生体吸収性ポリマーチューブを製造するためのポリマー(単数又は複数)の選択は、得られるチューブの生体適合性/毒性特性と、得られるチューブの物理的特性/機械的特性、例えば分解速度、強度(例えば、半径方向強度)及びリコイル率との両方に影響を及ぼし得る。
【0004】
そのようなポリマーチューブ(及び、特に単層の壁厚ポリマーチューブ)を製造する1つの一般的な手段は、押出過程と同心状拡張(annular expansion)過程とを含む。このような方法を使用して、ポリマーを管形物へと押出し、得られた管形物を同心状に延伸/拡張することで、ポリマーチューブが得られる。同心状拡張によって得られるポリマーチューブ壁内の分子配向は、これが強度増加及び/又は熱収縮特性をもたらすため一般的に有利である。しかしながら、既知の押出過程及び同心状拡張過程は、ポリマーチューブの壁厚全体にわたって可能となる分子配向の程度に関して本質的に限定的である。さらに、管状構造であるため、壁厚全体に分子配向の勾配が存在する場合がある。それというのも、同心状拡張によりチューブの内径は一般にチューブの外径よりも大きな延伸/分子配向を受けるからである。したがって、ポリマーチューブ壁内の分子配向を制御する方法を提供し、このような制御された分子配向を示す壁部を有するポリマーチューブを提供することは有益であると考えられる。
【発明の概要】
【0005】
本発明は一般に、ポリマーチューブの製造方法、及びそのような方法によって製造されたポリマーチューブに関する。例えば生物医学的用途で使用されるポリマーチューブは一般に、何らかの方法で拡張/延伸して、チューブ壁内に分子配向を引き起こし、それにより強度(例えば、半径方向圧縮に対する抵抗性)の増加がもたらされる。ポリマーチューブを製造することと、その中のポリマーを分子配向して配向ポリマーチューブを得ることとを含む本明細書に開示される新規の方法では、有利には、平面延伸過程及び/又は多層同心状拡張過程が使用される。本明細書に開示されるように、ポリマーチューブ内で分子配向する過程を(そのような配向ポリマーチューブを得る典型的な押出/同心状拡張の方法に対して)変更することによって、改変された結晶化度特質と、幾つかの実施の形態では、対応する強化された強度(例えば、半径方向圧縮に対する抵抗性の強化)及び/又は制御された熱収縮特性とを示すチューブが提供され得る。
【0006】
一態様では、本開示は、配向ポリマーチューブを製造する方法であって、結晶化可能な生分解性ポリマーを含む第1の寸法を有するポリマー材料を平面延伸に供して、第1の寸法を増加させて、少なくとも部分的な分子配向を示す延伸ポリマー材料を得ることと、延伸ポリマー材料及び接着性ポリマー材料を管形物(これは、チューブ又は配向ポリマーチューブとも呼ばれ得る)へと形成することとを含む、方法を提供する。一例として、接着性ポリマー材料は、延伸ポリマー材料の隣接する層をそれ自体と又は管形物内の他の層と接着する。ポリマー材料は、幾つかの実施の形態では、ポリマーフィルムであってもよく、幾つかの実施の形態では、ポリマー形材であってもよい。
【0007】
或る特定の実施の形態では、ポリマー材料は第2の寸法を有し、平面延伸に供する工程は、ポリマー材料を延伸して、第2の寸法を増加させて、二軸配向ポリマー材料を得ることを更に含む。接着性ポリマー材料は、開示された方法の様々な段階で結晶化可能な生分解性ポリマーと会合され得る。例えば、一実施の形態では、上記の方法は、平面延伸に供する工程の前に接着性ポリマー材料を結晶化可能な生分解性ポリマーと複合させて、結晶化可能な生分解性ポリマー及び接着性ポリマー材料を層状形態で有する複合ポリマー材料であるポリマー材料を得ることを更に含む。別の実施の形態では、上記の方法は、形成工程の前に接着性ポリマー材料を延伸ポリマー材料と複合させることを更に含む。
【0008】
形成工程は、或る特定の実施の形態では、円柱形物の周りにポリマー材料及び接着性ポリマー材料を巻き付けることを含む。幾つかの実施の形態では、そのような巻き付けは、ポリマー材料及び接着性ポリマー材料を円柱形物の周りに複数回巻き付けて、延伸ポリマー材料の複数の層及び接着性ポリマー材料の複数の層を含むチューブを得ることを含む。円柱形物は多様であり得て、例えばマンドレルであり得る。上記方法は、マンドレルからチューブを取り外すことを更に含む。幾つかの実施の形態では、円柱形物はデバイスを含む。
【0009】
別の態様では、本開示は、配向ポリマーチューブを製造する方法であって、各ポリマーチューブが結晶化可能な生分解性ポリマーを含む少なくとも2つのポリマーチューブを得ることと、少なくとも2つのポリマーチューブを同心状に拡張して、少なくとも2つの配向ポリマーチューブを製造することと、少なくとも2つの配向ポリマーチューブ及び1つ以上の接着性ポリマー材料を複合させて多層管形物とすることとを含む、方法を提供する。幾つかの実施の形態では、同心状拡張工程は複合させる工程の前に行われる。幾つかの実施の形態では、複合させる工程は同心状拡張工程の前に行われ、幾つかの実施の形態では、複合させる工程は同心状拡張工程の間に行われる(すなわち、少なくとも2つの配向ポリマーチューブ及び接着性ポリマー材料は、少なくとも2つのポリマーチューブの同心状拡張の間に複合される)。
【0010】
この方法は、幾つかの実施の形態では、接着性ポリマー材料を同心状拡張工程の前に少なくとも2つのポリマーチューブの1つ以上と複合させて、結晶化可能な生分解性ポリマー及び接着性ポリマー材料を層状形態で有する複合ポリマーチューブである1つ以上のポリマーチューブを得ることを更に含み得る。この方法は、幾つかの実施の形態では、接着性ポリマー材料を(同心状拡張工程の前又は後に)少なくとも2つのポリマーチューブの1つ以上と複合させて、結晶化可能な生分解性ポリマー及び接着性ポリマー材料を層状形態で有する複合ポリマーチューブである1つ以上のポリマーチューブを得ることを更に含み得る。或る特定の実施の形態では、本明細書で以下により詳細に記載される先述の方法は、多層管形物に熱、圧力、又は熱及び圧力の両方を加えることによって、管形物を融合させる工程を更に含む。圧力は、例えば(穴あきマンドレルを通して真空を印加すること等によって)真空を引いてチューブを形成することを含む陽圧又は陰圧のいずれかであり得る。融合させる工程は、例えば管形物の周りに収縮チューブ又は収縮フィルムを適用して層状構造物を得た後に、管形物/層状構造物に熱、圧力、又は熱及び圧力の両方を加えることを含み得る。収縮チューブ又は収縮フィルムの組成は、多様であり得て、例えば、フルオロポリマー(例えば、ポリ(テトラフルオロエチレン))、ポリオレフィン(例えば、低密度ポリエチレン(LLDPE))、ポリウレタン、及び/又はシリコーンポリマー(例えば、ポリジメチルシロキサン、PDMS)及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の材料を含み得る。
【0011】
本明細書に開示された方法のいずれかの文脈では、或る特定の実施の形態での結晶化可能な生分解性ポリマーは、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D-ラクチド)(PDLA)、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(パラ-ジオキサノン)(PDO)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(テトラメチルカーボネート)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、並びにそれらのコポリマー、ブレンド及び誘導体からなる群から選択される。接着性ポリマー材料は、例えば、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(D,L-ラクチド)(PDLLA)、ポリ(L-ラクチド-co-ε-カプロラクトン)、ポリ(L-ラクチド-co-トリメチレンカーボネート)、ポリ(ε-カプロラクトン-co-トリメチレンカーボネート)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(L-ラクチド-co-ポリ(エチレングリコール))、並びにそれらのコポリマー及び誘導体及び組み合わせからなる群から選択される。これらのリストは排他的であることを意図しておらず、すなわち、所与の生産物内で結晶化可能な生分解性ポリマー及び接着性ポリマーの両方として、分子配向の点で相違し得る同じポリマー(単数又は複数)が存在し得ること(例えば、ポリマーが、結晶化可能な生分解性ポリマー成分としてより大きな分子配向を有し、接着性ポリマー成分としてより小さな分子配向を有する)に留意されたい。したがって、本開示は、或る特定の実施の形態では、結晶化可能な生分解性ポリマー及び接着性ポリマー材料が配向の異なる(例えば、異なる配向量の)同じポリマーを含む、方法及び生産物を包含する。
【0012】
さらに、本開示は、本明細書に開示される方法のいずれかに従って作製された配向ポリマーチューブを提供する。幾つかのそのような配向ポリマーチューブは主に、最少量の接着性ポリマー材料を含む結晶化可能な生分解性ポリマーを含む。幾つかの実施の形態では、そのような配向ポリマーチューブは、配向ポリマーチューブの壁部を通して実質的に一貫した結晶化可能な生分解性ポリマーの分子配向を特徴とする。
【0013】
更なる態様は、配向ポリマーチューブを製造する方法であって、配向ポリマーチューブに所望の形状及び分子配向プロファイルを決定することと、結晶化可能な生分解性ポリマーを含む1つ以上のポリマーチューブ前駆体を選択することと、1つ以上のポリマーチューブ前駆体を配置することと、1つ以上のポリマーチューブ前駆体を、所望の最終的な管形状及び分子配向プロファイルを示す配向ポリマーチューブに形成することとを含む、方法を提供する。形状及び分子配向プロファイルは、例えば(i)形成される配向ポリマーチューブの所望の機械的特性、(ii)形成される配向ポリマーチューブの所望の熱力学的特性、及び(iii)形成される配向ポリマーチューブの所望の化学的特性のうちの1つ以上に基づいて決定され得る。
【0014】
幾つかの実施の形態では、1つ以上のポリマー前駆体の少なくとも1つは、少なくとも部分的に(i)1つ以上のポリマー前駆体の組成、(ii)1つ以上のポリマー前駆体の形状、(iii)1つ以上のポリマー前駆体の機械的特性、(iv)1つ以上のポリマー前駆体の熱力学的特性、(v)1つ以上のポリマー前駆体の化学的特性、(vi)1つ以上のポリマー前駆体の分子配向の程度、(vii)1つ以上のポリマー前駆体の1つ以上の軸に関する分子配向プロファイル、(viii)1つ以上のポリマー前駆体から最終ポリマーチューブを形成する予定された方法、及びそれらの任意の組み合わせに基づいて選択される。幾つかの実施の形態では、1つ以上のポリマー前駆体は、(i)1つ以上のフィルム、(ii)1つ以上のチューブ、及び(iii)1つ以上の形材からなる群から選択される。
【0015】
特定の実施の形態では、1つ以上のポリマー前駆体は、(i)1つ以上の特定の機械的特性、(ii)1つ以上の特定の熱力学的特性、(iii)1つ以上の特定の化学的特性、及び(iv)1つ以上の特定の分解速度のうちの1つ以上を配向ポリマーチューブに与えるように特別に選択される1つ以上のフィルム又は1つ以上のチューブである。他の特定の実施の形態では、1つ以上のポリマー前駆体は、限定されるものではないが、円形、長方形、三角形、楕円形、及び管形を含む断面形状を有する1つ以上の形材である。幾つかの実施の形態では、1つ以上のポリマー前駆体は、(i)1つ以上の特定の機械的特性、(ii)1つ以上の特定の熱力学的特性、(iii)1つ以上の特定の化学的特性、及び(iv)1つ以上の特定の分解速度のうちの1つ以上を配向ポリマーチューブに与えるように特別に選択される1つ以上の形材である。有利には、これらの実施の形態の一部では、1つ以上のポリマー前駆体は、接合層を更に含む。
【0016】
1つ以上のポリマー前駆体の配置は、幾つかの実施の形態では、(i)マンドレル(又は本明細書で以下に記載される他の支持体)の周りに1つ以上のポリマー前駆体を配置すること、及び(ii)(或る特定の実施の形態では、例えばバルーンを含む拡張可能であり得る)型の内部に1つ以上のポリマー前駆体を配置することの1つ以上を含む。マンドレルの周りへの配置は、例えば、巻き付け、外装、巻回、編み組み、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される技術を使用してマンドレルの周りに配置することを含み得る。マンドレルは、幾つかの実施の形態では、デバイスを含み得る。型の内部への1つ以上のポリマー前駆体の配置は、(i)1つ以上のポリマー前駆体をマンドレル上に配置した後に、マンドレル上の1つ以上のポリマー前駆体を型内へと挿入し、マンドレルを取り外すこと、(ii)1つ以上のポリマー前駆体をマンドレル上に配置した後に、マンドレルを取り外し、1つ以上のポリマー前駆体を型内に挿入すること、又は(iii)1つ以上のポリマー前駆体を前駆体の1つ以上の製造工程の間に型の内部に配置することを含む。
【0017】
1つ以上の製造工程は、例えば、チューブ拡張、ブロー成形、射出延伸ブロー成形、ダイ引抜き、及びマンドレル引抜きからなる群から選択される。配置は、例えば各ポリマー前駆体の配置を同時に又は順次に行う2つ以上のポリマー前駆体の配置を含む。形成は、或る特定の実施の形態では、1つ以上のポリマー前駆体に熱、圧力、又は熱及び圧力の両方を加えることによって1つ以上のポリマー前駆体を融合させることを更に含み得る。このような融合は、例えば1つ以上のポリマー前駆体に熱、圧力、又は熱及び圧力の両方を加える前に1つ以上のポリマー前駆体の周りに収縮チューブ又は収縮フィルムを適用することを含み得る。このような融合は、例えば1つ以上のポリマー前駆体に型及びバルーンを使用して熱、圧力、又は熱及び圧力の両方を加えることを含み得る。幾つかのそのような実施の形態では、型は1つ以上のポリマー前駆体で裏打ちされ、バルーンの一部が最終的なポリマーチューブの一部を構成することとなる。そのような実施の形態では、形成工程は、例えば配置工程の間又は後に行われ得る。幾つかの実施の形態では、2つ以上の配置工程及び2つ以上の形成工程は、同時に又は順次に行われる。有益には、幾つかの実施の形態では、1つ以上のポリマー前駆体は、限定されるものではないが、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D-ラクチド)(PDLA)、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(パラ-ジオキサノン)(PDO)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(テトラメチルカーボネート)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、並びにそれらのコポリマー、ブレンド及び誘導体からなる群から選択される1つ以上のポリマーを含むポリマー等の生体適合性の生分解性ポリマーを含む。
【0018】
さらに、本開示は、本明細書に概説される方法のいずれかに従って作製された配向ポリマーチューブを提供する。本開示によるチューブは、例えば、配向ポリマーチューブの壁部を通して実質的に一貫している分子配向プロファイル、配向ポリマーチューブの壁部の既定の部分を通して実質的に一貫している分子配向プロファイル、配向ポリマーチューブの壁部の既定の部分を通して様々な配向レベルを特徴とする分子配向プロファイル、配向ポリマーチューブの壁部の既定の部分を通して様々な配向軸を特徴とする分子配向プロファイル、配向ポリマーチューブの内径から外径への壁部を通した分子配向勾配の増加を特徴とする分子配向プロファイル、配向ポリマーチューブの内径から外径への壁部を通した分子配向勾配の減少を特徴とする分子配向プロファイル、配向ポリマーチューブの長さを通して実質的に一貫している分子配向プロファイル、配向ポリマーチューブの長さの既定の部分を通して実質的に一貫している分子配向プロファイル、配向ポリマーチューブの長さの既定の部分を通して様々な配向レベルを特徴とする分子配向プロファイル、及び/又は配向ポリマーチューブの長さの既定の部分を通して様々な配向軸を特徴とする分子配向プロファイルを特徴とし得る。
【0019】
本開示によるチューブは、例えば、配向ポリマーチューブの壁部を通して実質的に一貫している組成プロファイル、配向ポリマーチューブの壁部の既定の部分を通して実質的に一貫している組成プロファイル、配向ポリマーチューブの壁部の既定の部分を通して様々な組成を特徴とする組成プロファイル、配向ポリマーチューブの長さを通して実質的に一貫している組成プロファイル、配向ポリマーチューブの長さの既定の部分を通して実質的に一貫している組成プロファイル、及び/又は配向ポリマーチューブの長さの既定の部分を通して様々な組成を特徴とする組成プロファイルを特徴とし得る。本開示によるチューブは、例えば、配向ポリマーチューブの壁部を通して実質的に一貫している分解速度プロファイル、ポリマーチューブの壁部の既定の部分を通して実質的に一貫している分解速度プロファイル、配向ポリマーチューブの壁部の既定の部分を通して様々な分解速度を特徴とする分解速度プロファイル、ポリマーチューブの内径から外径への壁部を通した分解速度勾配の増加を特徴とする分解速度プロファイル、配向ポリマーチューブの内径から外径への壁部を通した分解速度勾配の減少を特徴とする分解速度プロファイル、配向ポリマーチューブの長さを通して実質的に一貫している分解速度プロファイル、配向ポリマーチューブの長さの既定の部分を通して実質的に一貫している分解速度プロファイル、配向ポリマーチューブの長さの既定の部分を通して様々な分解速度を特徴とする分解速度プロファイル、及び/又は配向ポリマーチューブの長さに沿って分解速度勾配を特徴とする分解速度プロファイルを特徴とし得る。
【0020】
さらに、本開示は、配向ポリマーチューブを製造する方法であって、所望の管形状並びに所望の組成プロファイル及び所望の分子配向プロファイルのうちの少なくとも1つを決定することと、1つ以上のポリマー前駆体を選択することと、1つ以上のポリマー前駆体を配置することと、1つ以上のポリマー前駆体を、所望の管形状並びに所望の組成プロファイル及び所望の分子配向プロファイルのうちの少なくとも1つを示す配向ポリマーチューブへと形成することとを含む、方法を提供する。
【0021】
或る特定の実施の形態は以下の通りである。
【0022】
実施の形態1:配向ポリマーチューブを製造する方法であって、少なくとも部分的な分子配向を示す少なくとも1つの延伸ポリマー材料を得ることと、なお、前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料を得ることは、少なくとも1つのポリマー材料を延伸することを含み、前記少なくとも1つのポリマー材料は、第1の寸法を有し、少なくとも1つの結晶化可能な生分解性ポリマー材料を含み、かつ、前記少なくとも1つのポリマー材料は、前記第1の寸法を増加させるように延伸される;前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料を使用して配向ポリマーチューブを形成することとを含む、方法。
【0023】
実施の形態2:前記延伸は、平面延伸を含む、上記実施の形態の方法。
【0024】
実施の形態3:前記少なくとも1つのポリマー材料の1つ以上は、ポリマーフィルム、ポリマーモノフィラメント、ポリマーリボン、ポリマーテープ、及びポリマーロッドのうちの1つ以上である、任意の上記実施の形態の方法。
【0025】
実施の形態4:前記少なくとも1つのポリマー材料は、第2の寸法を有し、かつ、前記少なくとも1つのポリマー材料の延伸は、前記少なくとも1つのポリマー材料を延伸して、前記第2の寸法を増加させることを含み、前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料は、二軸延伸されたポリマー材料を含む、任意の上記実施の形態の方法。
【0026】
実施の形態5:前記形成は、前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料及び少なくとも1つの接着性ポリマー材料を使用することを含む、任意の上記実施の形態の方法。
【0027】
実施の形態6:少なくとも部分的に前記少なくとも1つの接着性ポリマー材料を前記少なくとも1つの結晶化可能な生分解性ポリマー材料と複合させることに基づき前記少なくとも1つのポリマー材料を得ることを更に含む、上記実施の形態の方法。
【0028】
実施の形態7:前記少なくとも1つのポリマー材料は、前記少なくとも1つの結晶化可能な生分解性ポリマー材料及び前記少なくとも1つの接着性ポリマー材料を層状形態で含む複合ポリマー材料である、上記実施の形態の方法。
【0029】
実施の形態8:前記少なくとも1つのポリマー材料を延伸する前に、その間に、又はその後に、前記少なくとも1つの接着性ポリマー材料及び前記少なくとも1つの結晶化可能な生分解性ポリマー材料を複合させる、実施の形態6の方法。
【0030】
実施の形態9:前記チューブの形成は、前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料及び前記少なくとも1つの接着性ポリマー材料を支持体の周りに巻き付けることを含む、実施の形態6の方法。
【0031】
実施の形態10:前記支持体は、円柱形、円形、長方形、三角形、楕円形、多角形、及び管形のうちの1つ以上を有する、上記実施の形態の方法。
【0032】
実施の形態11:前記巻き付けは、前記チューブが前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料の複数の層及び前記少なくとも1つの接着性ポリマー材料の複数の層を含むように、前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料及び前記少なくとも1つの接着性ポリマー材料を前記支持体の周りに複数回巻き付けることを含む、実施の形態9又は10の方法。
【0033】
実施の形態12:前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料は、複数の単位の延伸ポリマー材料を含み、前記複数の単位の延伸ポリマー材料は、異なるポリマー材料又は同じポリマー材料を含み、かつ、前記形成は、前記複数の単位の延伸ポリマー材料を積み重ねた様式及びずらした様式のうちの少なくとも1つで配列させることと、前記配列された複数の単位の延伸ポリマー材料をバイアス角で巻き付けることとを含む、実施の形態9~11のいずれかの方法。
【0034】
実施の形態13:前記支持体はマンドレルであり、かつ前記方法は、前記マンドレルから前記チューブを取り外すことを更に含む、実施の形態9~12のいずれかの方法。
【0035】
実施の形態14:前記支持体は、デバイスを含む、実施の形態9~12のいずれかの方法。
【0036】
実施の形態15:少なくとも部分的に前記配向ポリマーチューブ及び前記支持体に基づいて得られる複合物を形成することを更に含み、前記得られる複合物は、医療用デバイスである、実施の形態14の方法。
【0037】
実施の形態16:少なくとも部分的に前記配向ポリマーチューブに基づく医療用デバイスを形成することを更に含む、任意の上記実施の形態の方法。
【0038】
実施の形態17:前記医療用デバイスの形成は、前記チューブを切断してステントにすることを含む、上記実施の形態の方法。
【0039】
実施の形態18:治療薬、被覆、及びコーティングのうちの1つ以上を前記ステントに適用することを更に含む、上記実施の形態の方法。
【0040】
実施の形態19:前記形成は、前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料に熱及び圧力のうちの少なくとも1つを加えることを含む、任意の上記実施の形態の方法。
【0041】
実施の形態20:前記形成は、前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料の少なくとも一部の周りに収縮チューブ又は収縮フィルムを適用して、層状構造物を得ることを含む、層状構造物を形成することと、前記層状構造物に熱及び圧力のうちの少なくとも1つを加えることとを含む、任意の上記実施の形態の方法。
【0042】
実施の形態21:前記形成は、前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料の少なくとも一部を型内に挿入することと、前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料を拡張可能な支持体上に配置することと、前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料に熱及び圧力のうちの少なくとも1つを加えることとを含む、任意の上記実施の形態の方法。
【0043】
実施の形態22:前記少なくとも1つの結晶化可能な生分解性ポリマー材料の1つ以上は、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D-ラクチド)(PDLA)、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(パラ-ジオキサノン)(PDO)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(テトラメチルカーボネート)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、並びにそれらのコポリマー及び誘導体及び組み合わせからなる群から選択される、任意の上記実施の形態の方法。
【0044】
実施の形態23:前記形成は、前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料及び少なくとも1つの接着性ポリマー材料を使用することを含み、該接着性ポリマー材料は、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(D,L-ラクチド)、ポリ((L-ラクチド)-co-ε-カプロラクトン)、ポリ(L-ラクチド-co-トリメチレンカーボネート)、ポリ(ε-カプロラクトン-co-トリメチレンカーボネート)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(L-ラクチド-co-ポリ(エチレングリコール))、並びにそれらのコポリマー及び誘導体及び組み合わせからなる群から選択される、任意の上記実施の形態の方法。
【0045】
実施の形態24:前記形成は、前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料及び少なくとも1つの接着性ポリマー材料を使用することを含み、かつ前記少なくとも1つの結晶化可能な生分解性ポリマー材料及び前記少なくとも1つの接着性ポリマー材料は、同じポリマー材料を含む、実施の形態5~23のいずれかの方法。
【0046】
実施の形態25:前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料を、それぞれ前記少なくとも1つのポリマー材料に対応する最大延伸比の少なくとも10パーセントで延伸する、任意の上記実施の形態の方法。
【0047】
実施の形態26:前記少なくとも1つのポリマー材料の延伸は、延伸の間に、前記少なくとも1つのポリマー材料の機械的特性、熱力学的特性、化学的特性、電気的特性、及び分解速度のうちの1つ以上を制御することを含む、任意の上記実施の形態の方法。
【0048】
実施の形態27:前記少なくとも1つのポリマー材料を、前記少なくとも1つのポリマー材料の当初の寸法の300パーセントから1000パーセントの間で延伸する、任意の上記実施の形態の方法。
【0049】
実施の形態28:少なくとも部分的な分子配向を示す少なくとも1つの延伸ポリマー材料を得ることと、なお、前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料は、第1の寸法を有し、かつ少なくとも1つの結晶化可能な生分解性ポリマー材料を含む少なくとも1つのポリマー材料に相当し、かつ前記少なくとも1つのポリマー材料は、前記第1の寸法が増加するように延伸されている;前記少なくとも1つの延伸ポリマー材料を使用してチューブを形成することとを含む方法。
【0050】
実施の形態29:少なくとも部分的に少なくとも1つのポリマー材料の延伸に基づいて得られる、少なくとも部分的な分子配向を示す少なくとも1つの延伸ポリマー材料を含むチューブであって、前記少なくとも1つのポリマー材料は、第1の寸法を有し、かつ少なくとも1つの結晶化可能な生分解性ポリマー材料を含み、かつ前記少なくとも1つのポリマー材料は、前記第1の寸法が増加するように延伸されている、チューブ。
【0051】
実施の形態30:チューブであって、該チューブは、少なくとも1つの結晶化可能な生分解性ポリマー材料を含み、かつ該チューブの長さに垂直な法線を有する外表面を有し、かつ、該チューブは、最初の圧縮サイクルに基づいて測定される約20MPa以上の最大応力値を示し、かつ、該チューブは、最初の圧縮サイクル後に少なくとも第1の寸法の17%以下変形される、チューブ。
【0052】
実施の形態31:前記最初の圧縮サイクルは、前記チューブが間に配置されている2つの平行なプレート間の初期距離を取得することと、なお、前記2つの平行なプレートは、該2つの平行なプレートが前記チューブに実質的に負荷を与えないように前記チューブの前記外表面と接触している;1分間当たり前記2つの平行なプレートの前記初期距離の50%の速度で、前記プレートを前記初期距離の50%の距離にまで加圧することと、なお、前記プレートの加圧により、前記チューブに第1の方向に変形が引き起こされ、前記第1の方向は、前記プレートを加圧する方向である;1分間当たり前記2つの平行なプレートの前記初期距離の50%の速度で前記チューブへの前記プレートの加圧を解放することとを含む、上記実施の形態のチューブ。
【0053】
実施の形態32:前記最初の圧縮後の前記チューブに対応する工学的応力-ひずみ曲線下での総エネルギー値は、少なくとも138kgf・mm/cmである、実施の形態30又は31のチューブ。
【0054】
実施の形態33:前記チューブは、その上に適用された治療薬、被覆、及びコーティングのうちの1つ以上を有する、任意の上記実施の形態のチューブ。
【0055】
実施の形態34:チューブであって、該チューブは、少なくとも1つの結晶化可能な生分解性ポリマー材料を含み、かつ該チューブの長さに垂直な法線を有する外表面を有し、該チューブは、最初の圧縮サイクルに基づいて測定される約20MPa以上の最大応力値を示し、かつ、前記最初の圧縮後の該チューブに対応する工学的応力-ひずみ曲線下での総エネルギー値は、少なくとも138kgf・mm/cmである、チューブ。
【0056】
本開示のこれらの及び他の特徴、態様及び利点は、以下で簡潔に記載される添付の図面と併せて以下の詳細な説明を読むことで明らかとなり得る。本発明は、上述の実施の形態の2つ、3つ、4つ又はそれ以上の任意の組み合わせ、及び、本明細書中の具体的な実施の形態の記載においてかかる特徴又は要素を特定して組み合わせているかにかかわらず、本開示に記載される任意の2つ、3つ、4つ、又はそれ以上の特徴又は要素の組み合わせも含むものである。本開示は総合的に読むことが意図され、そのためその様々な態様及び実施の形態のいずれかにおいて、文脈上明示された場合を除き、開示される本発明の任意の分離可能な特徴又は要素は組み合わせることができることが意図されているとみなす。本発明の他の態様及び利点は以下により明らかとなろう。
【0057】
本発明の実施形態を理解するために、添付の図面について言及する。これらは、必ずしも正しい縮尺で描かれているものではなく、図面中、参照符号は、本発明の例示的な実施形態の構成要素を表している。図面は、単なる例示であり、本発明を限定するように解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】単層の配向ポリマーチューブを製造する典型的な押出/拡張方法の背景(従来技術)の概略図である。
図2】平面配向及び同心状配置を介した配向ポリマーチューブを製造する本明細書に開示される方法の概略図である。
図3A】ポリマーフィルムを巻き付けてポリマーチューブを形成する種々の技術の概略図である。
図3B】ポリマーフィルムを巻き付けてポリマーチューブを形成する種々の技術の概略図である。
図3C】ポリマーフィルムを巻き付けてポリマーチューブを形成する種々の技術の概略図である。
図4A】隣接するポリマーフィルムを整列させてポリマーチューブを形成する方法の概略図である。
図4B】隣接するポリマーフィルムを整列させてポリマーチューブを形成する方法の概略図である。
図5A】多層同心状配向及び同心状配置を介した配向ポリマーチューブを製造する本明細書に開示される或る特定の方法の概略図である。
図5B】多層同心状配向及び同心状配置を介した配向ポリマーチューブを製造する本明細書に開示される或る特定の方法の概略図である。
図6A】コントロールチューブと比較した、実施例3及び実施例4によるチューブについての繰り返し圧縮試験からの最大応力を示す図である。
図6B】コントロールチューブと比較した、実施例3及び実施例4によるチューブについての繰り返し圧縮試験からの正規化されたエネルギーを示す図である。
図6C】コントロールチューブと比較した、実施例3及び実施例4によるチューブについての繰り返し圧縮試験からのX切片を示す図である。
図7A】実施例1、実施例3、実施例5、及び実施例7によるチューブについての繰り返し圧縮試験からの最大応力を示す図である。
図7B】実施例1、実施例3、実施例5、及び実施例7によるチューブについての繰り返し圧縮試験からの正規化されたエネルギーを示す図である。
図7C】実施例1、実施例3、実施例5、及び実施例7によるチューブについての繰り返し圧縮試験からのX切片を示す図である。
図8A】実施例2、実施例4、実施例6、及び実施例8によるチューブについての繰り返し圧縮試験からの最大応力を示す図である。
図8B】実施例2、実施例4、実施例6、及び実施例8によるチューブについての繰り返し圧縮試験からの正規化されたエネルギーを示す図である。
図8C】実施例2、実施例4、実施例6、及び実施例8によるチューブについての繰り返し圧縮試験からのX切片を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明の実施形態の幾つかであって、全てを示すものではないが、添付の図面を参照して以下でより詳細に本発明を説明する。実際のところ、これらの発明は、多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書中に記載の実施形態に限定するように解釈されるものではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が法的適用要件を満たすために提示されるものである。全体を通じて同様の符号は同様の要素を表す。
【0060】
本開示は、ポリマーチューブ(例えば、生分解性ポリマーチューブ)を製造する方法、及び該方法によって製造されるポリマーチューブに関する。特に、本開示は、結晶化可能なポリマーを含むポリマーチューブを製造する方法であって、チューブの壁内で結晶化可能なポリマーの分子の少なくとも一部を整列/配向させる(こうして配向ポリマーチューブが得られる)分子配向工程を含む、方法に関する。様々な実施形態では、本明細書に開示される方法は、例えば円筒座標系の3つの全ての軸に関して、ポリマーチューブ壁内の結晶性分子配向に対する制御をもたらす。本明細書に開示される方法は、或る特定の実施形態では、予定された最終的な管形状及び関連する予定された分子配向プロファイルを選択することと、それに応じた、例えば所望の最終的な管形状及び分子配向プロファイルを達成するように1つ以上の前駆体を配置して形成することにより材料及び方法工程を選択することとを含む。開示された方法は、有利には、例えば、限定されるものではないが、生物医学的用途を含む幅広い用途に有用なものとするのに十分な強度/半径方向圧縮に対する抵抗性を示す配向ポリマーチューブを提供することができる。開示された方法は、有利には、従来の押出及び同心状拡張によって製造されたチューブ(例えば、配向ポリマーチューブ)に対して、より制御され改善された熱収縮特性を示す配向ポリマーチューブを提供することもできる。
【0061】
先述のように、配向ポリマーチューブを製造する従来の方法は、押出及び同心状拡張により単層のチューブを得ることを含む。そのような方法では、図1(従来技術)に概略的に示されるように、ポリマーチューブは、従来の方法によって押出された後に、同心状拡張に供される。図1に示されるように、方程式OD=2×ri1を介して内半径(ri1として示される)と関連付けられる所与の内径(ID)と、方程式OD=2×ro1によって外半径(ro1として示される)と関連付けられる所与の外径(OD)とを有する押出チューブ10が製造される。押出チューブ10は(任意に、それぞれT及びPによって示される熱及び圧力の条件下で)拡張されて、(上記の方程式に基づいてri2に関連付けられる)より大きなID及び(上記方程式に基づいてro2に関連付けられる)より大きなODを有するポリマーチューブ12が製造される。このような拡張過程では、押出チューブのIDに供される延伸の程度は、押出チューブのODに供される程度よりも大きい。このような過程でID及びODが経る拡張速度及び拡張量の差は、チューブ壁部を通じた(すなわち、IDからODへの)分子配向の程度の不均衡につながる。上記のように、典型的な同心状拡張過程は、最終的な壁厚全体にわたる配向の程度に関して限定的であることから、IDからODへと減少する配向勾配が得られる。
【0062】
本開示によれば、結晶化可能なポリマー(例えば、結晶化可能な生分解性ポリマー、結果として生分解性の配向ポリマーチューブが得られる)を含む配向ポリマーチューブを製造する様々な方法が提供される。幾つかの実施形態では、そのようなチューブは、従来の押出及び同心状拡張によって製造された配向ポリマーチューブに対して改変された分子配向特性だけでなく、対応する改変された機械的特性及び/又は熱力学的特性も示し得る。これに関して改変された分子配向特性は、配向ポリマーチューブの結晶領域における分子配向のより大きなパーセンテージ及び/又は配向ポリマーチューブの結晶領域内の分子配向の分布におけるより大きな規則性を意味し得る。例えば、幾つかの実施形態では、開示された配向ポリマーチューブの壁厚全体にわたる分子配向は、図1に示される従来の方法によって製造された配向ポリマーチューブの壁部の分子配向よりも均一である(そのような改善された機械的特性及び熱力学的特性につながる)。改変された機械的特性は、より高い強度、より高い弾性率、より高い靭性、及び/又はより大きな弾性を意味し得る。改変された熱力学的特性は、限定されるものではないが、制御された収縮活性化温度、収縮力、及び収縮比を含む改変された熱収縮特性を意味し得る。
【0063】
平面配向及び同心状配置
本明細書に示される1つの方法は、配向された前駆体として一軸配向ポリマーフィルム又は二軸配向ポリマーフィルムを使用して配向ポリマーチューブを形成することを含む(本明細書では「平面配向及び同心状配置」と呼ばれる)。これらを一軸配向フィルム又は二軸配向フィルムに延伸することによってポリマー分子を配向させると、引張強度及び靭性等の特性が改善することが知られている。例えば、"Understanding biaxially and monoaxially oriented films", Packaging World, October 20, 2013を参照されたい。
【0064】
本明細書に開示される方法の一実施形態は、図2に概略的に示されている。この方法によれば、所与の寸法x(ここではフィルム長であるとみなされる)を有する結晶化可能なポリマーを含むポリマーフィルムを平面方向に延伸して、xよりも大きい対応する寸法xを有する延伸ポリマーフィルムを得る(すなわち、延伸ポリマーフィルムは長さが増える)。延伸ポリマーフィルムは、延伸過程によりポリマーフィルムの結晶領域内に少なくとも或る程度の分子配向が与えられるので、本明細書では「配向」ポリマーフィルムと呼ばれる。
【0065】
このポリマーフィルムは、様々なサイズ及び厚さのポリマーフィルムであってもよく、(x値及びx値に関連付けられる)延伸の量は、幾つかの実施形態では(非延伸/非配向)フィルムの初期厚さに対する延伸/配向フィルムの所望の厚さ(z、図2には示していない)に基づいて決定され得る。幾つかの実施形態では(x値及びx値に関連付けられる)延伸の量は、延伸/配向フィルムの所望の機械的特性及び/又は熱力学的特性に基づいて決定され得る。図2に示される実施形態は、一軸延伸(寸法xのみの延伸/増加)をもたらすが、幾つかの実施形態では、開示された方法は、二軸延伸(寸法x及び寸法y、すなわち長さ及び幅の両方の延伸/増加)を含む。そのような実施形態では、x方向及びy方向の両方での延伸速度及び/又は延伸量は、互いに独立して改変され得る。平面延伸(一次元のみ、すなわち一軸での又は二次元、すなわち二軸での)は、有利には「k」、すなわちdx/dt(図2)によって示される延伸速度が一定であり、得られる延伸/配向ポリマーフィルムが(例えば、厚さの点で)実質的に均一であるように制御された様式で行われる。図2に示されるように、平面延伸が一軸である場合に、他の軸についての延伸速度(ここでは、y軸に沿った)dy/dtが0と等しい(すなわち、y軸に沿った延伸はない)ことが理解される。当業者は、y軸に沿った延伸がある場合に、dy/dtが非ゼロであることを認識するであろう。
【0066】
延伸に供されるポリマーフィルムは、限定されるものではないが、押出、押出コーティング、射出成形/ブロー成形、溶融キャスティング、ソルベントキャスティング、又は圧縮成形(最後の2つの方法は、押出よりも高分子量のポリマーの使用を可能にする)を含む多くの方法のいずれかによって製造され得る。幾つかの実施形態では、充填剤等の材料を延伸工程の前にポリマーフィルム中に分散させることができる。或る特定の実施形態では、以下で更に詳細に記載されるように、接合層材料は延伸前に(ポリマーフィルム及び接合層材料の両方が一緒に延伸されるように)ポリマーフィルムと会合される。本出願は、延伸されるポリマーフィルム(及び後述のように、ポリマー形材)の文脈において具体的に記載されているが、本開示はそれらに限定されることを意図しないことに留意されたい。例えば、他の実施形態では、ポリマーモノフィラメント、ポリマーリボン、ポリマーテープ、又はポリマーロッドの形のポリマー材料が使用される。当業者はこれらの用語に精通しており、例えばポリマーモノフィラメントは糸状の合成繊維(これらの繊維は様々な直径を有し得る)であり、ポリマーテープはポリマー材料の平らなストリップ(これらのテープは、様々な長さ及び幅を有し得る)であり、ポリマーロッドは三次元構造物である(しかし、直径方向で円形であることに限定されない)ことを理解するであろう。一例として、ポリマーロッドは円柱形の構造物であり得る。別の例として、ポリマーロッドは管状構造物であり得る。
【0067】
ポリマー材料を上記のように一次元又は二次元に延伸する当該技術分野で知られる多くの方法が存在する。機械方向(MD)延伸では、押出フィルムをチルロール上にキャストした後に再加熱し、ニップを通過してテンションローラー上を押出キャスティング速度を超える速度で通すことで材料が延伸される。その後の横方向(TD)延伸は、フィルムの側部をクランプで把持し、テンターフレーム内の加熱炉を通して機械方向と垂直にクランプを引っ張ることによって達成され得る。代替的に、MD延伸及びTD延伸は、Brueckner社によって製造されたLISIMライン等の同時二軸配向が可能なテンターフレームにおいて同時に達成され得る。フィルムが引き裂かれることなく所望の程度の延伸が達成されるように、ライン速度、温度、及び延伸速度が制御される。環状ダイを通してポリマー材料を押出した後に、押出物を空気で膨らませてバブルを作り出すことにより、材料をTD方向及びMD方向の両方に延伸するインフレーションフィルムラインを用いることによって、ポリマー材料の同時延伸を達成することもできる。追加のMD延伸又はTD延伸が必要とされる場合に、インフレーションフィルムラインを、第2のバブルが提供されるように変更して、MD及びTDのいずれか又は両方でより高い程度の延伸を達成することができる。Hosokawa Alpine社、GAP srl.社、又はKuhne Group社等の工業用インフレーションフィルムライン及びダブルバブルラインの数多くの製造業者が存在する。本明細書に概説される連続法に加えて、幾つかの実施形態では、全ての側部でポリマーフィルムをクランプし、これを炉内でMD及びTDの一方又は両方に順次に又は同時に延伸することによって、バッチ式延伸を達成することができる。Brueckner社によって製造されるKaro IV延伸機は、バッチ式フィルム延伸機の一例を示す。
【0068】
先述のように、ポリマーフィルムが延伸される程度は多様であり得る。幾つかの実施形態では、ポリマーフィルムは、それぞれ少なくとも1つのポリマー材料に対応する最大延伸比の少なくとも10パーセントで延伸される。本明細書で使用される「最大延伸比」は、材料の引き裂きが起こるまでの可能な最大延伸を意味することが意図される。
【0069】
管形物の形成のための前駆体としての延伸された配向ポリマーフィルムを使用して、延伸された配向ポリマーフィルムを(例えば、延伸された配向ポリマーフィルムを巻くこと又は巻き付けることによって)同心状構成で配置し、任意に更に加工して、配向ポリマーチューブ(例えば、生分解性の配向ポリマーチューブ)が得られる。本開示は、延伸された配向ポリマーフィルムを巻いて/巻き付けて管形物を得ることによって、該フィルムを同心状構成で配置することに焦点を当てているが、他の配置手段も本明細書に包含される。
【0070】
延伸された配向ポリマーフィルムを、任意に、この工程の前に、例えば以下で更に詳細に記載されるようにフィルムを個々の所望のサイズに切断することによって及び/又は接合層を該フィルムと会合させることによって更に加工することができる。限定を意図するものではないが、延伸された配向ポリマーフィルムを同心状構成で配置する1つの手段は、形成用マンドレルの周りに該フィルムを巻き付けること/巻くことを含む。形成用マンドレルの形状は特に限定されないことに留意されたい。したがって、本明細書で使用されるポリマー「チューブ」は、円筒形チューブに限定されないことが理解される。むしろ、開示された方法に従って製造されたポリマー「チューブ」は、あらゆる中空の細長い構造物であり、ここで、中空の細長い構造物の断面形状は、限定されるものではないが、円形であり得る。
【0071】
さらに、開示された方法は、フィルムをマンドレルの周りに巻き付ける/巻くことに限定されず、むしろフィルムを様々な種類の支持体の周りに巻き付けることができる。適切な支持体には、限定されるものではないが、円柱形、円形、長方形、三角形、楕円形、多角形、及び管形のうちの1つ以上を有する支持体が含まれる。幾つかの実施形態では、支持体は、デバイス又はデバイス構成要素(例えば、限定されるものではないが、ステントを含む)である。或る特定のそのような実施形態では、本明細書に開示される方法は、支持体及び配置された配向ポリマーフィルムを含む、医療用デバイスの形であり得る複合物を提供する。特に、支持体がデバイスであり、開示された方法が医療用デバイスを提供する場合に、幾つかの実施形態では、複合物は更に加工され得る。例えば、幾つかの実施形態では、治療薬、被覆、及びコーティングのうちの1つ以上が複合物に適用される。幾つかの実施形態では、複合物はステントに適切なサイズに切断される。限定されるものではないが、レーザー切断を含む様々な方法がステントを切断するために知られている。
【0072】
幾つかの実施形態では、配向ポリマーフィルムを、上記のように巻く/巻き付けることによって配置して、ポリマーフィルムの一方の端部が該フィルムの反対側の端部とほとんどないし全く重なっていない単層の配向ポリマーチューブを得ることができる(例えば、2つのフィルムの端部が交わるところに小さな継ぎ目があるにすぎない)又はフィルムを複数回巻く/巻き付けることによって多層チューブを製造することができる。より好ましくは、任意の数の層を有する多層チューブ(例えば、「層状構造」を有するチューブ)が形成され、ここで、層の数は特に限定されない。例示的なそのような多層チューブは、好ましくは、所望の数の層が得られるように(例えば、得られる多層配向ポリマーチューブの所望の壁厚が達成されるように)巻き付けられた/巻かれた単一の配向ポリマーフィルムを含む配向ポリマーフィルムを2層~20層有する。そのような実施形態では、より多数の層/巻付物により(同じ厚さを有する配向ポリマーフィルムが使用されると仮定して)より厚い壁部を有するポリマーチューブが得られることが理解される。したがって、層/巻付物の数は、得られる配向ポリマーチューブの壁厚を規定し得る。図3A図3Cに示されるように、ポリマーフィルムが延伸/配向された軸(単数又は複数)に関して、ポリマーフィルムが巻かれる/巻き付けられる軸は多様であり得る。環状の矢印は巻き付ける方向を示している。
【0073】
典型的には、(例えば1つ以上のフィルムの複数の巻付物を配置して形成することによって製造される)そのような多層ポリマーチューブの隣接する配向ポリマーフィルムの層間に十分な接着を与えるために、配向ポリマーチューブ内には、本明細書で以下に記載される接合層(例えば「接着性ポリマー材料」)が含まれる。幾つかの実施形態では、接合層材料を本明細書で上記の(非延伸/非配向)ポリマーフィルムと会合させて複合ポリマーフィルムを得て、この複合ポリマーフィルムを上記のように平面拡張に供することによって、接合層が組み込まれる。この会合は、例えば接合層材料のフィルムを(非延伸/非配向)ポリマーフィルムと整列させることによって又は(非延伸/非配向)ポリマーフィルムを接合層材料でコーティングすることによって、例えば接合層材料をポリマーフィルム上に押出コーティング若しくは溶液コーティングすることによって行われ得る。この方法により、結晶化可能なポリマーフィルム及び接合層の両方が延伸された形でもたらされる(そして、幾つかのそのような実施形態では、この方法によりポリマーフィルム内だけでなく接合層内にも分子配向がもたらされ得る)。
【0074】
別の実施形態では、接合層は、接合層材料を延伸/配向ポリマーフィルムと会合させることによって組み込まれる。このような実施形態では、結晶化可能なポリマーフィルムを延伸/配向に供した後に、結合層材料を延伸された配向ポリマーフィルムと会合させることによって、複合フィルムが得られる。この会合は、例えば接合層材料のフィルムを(延伸/配向)ポリマーフィルムと整列させることによって又は(延伸/配向)ポリマーフィルムを接合層材料でコーティングすることによって、例えば接合層材料をポリマーフィルム上に押出コーティング若しくは溶液コーティングすることによって行われ得る。この実施形態に従って得られる複合ポリマーフィルムは、延伸/配向形態の結晶化可能なポリマーフィルムを含むのに対して、接合層は非延伸/非配向形態である。これらの実施形態に対する他の変更も包含され、例えばポリマーフィルム及び接合層を独立して延伸して、延伸/配向ポリマーフィルム及び延伸された又は延伸/配向された接合層を得て、これらを複合させることで、複合ポリマーフィルムを得ることができる。
【0075】
本明細書で上記に簡潔に述べられたように、配向ポリマーフィルム(複数の場合もある)の組成及び接合層(複数の場合もある)の組成は、同じであっても又は異なっていてもよい。したがって、或る特定の実施形態では、1つ以上の配向ポリマーフィルムの組成は、1つ以上の接合層の組成と同じであるが、ポリマーの配向の程度は異なっている(例えば、配向ポリマーフィルム(複数の場合もある)は、接合層(複数の場合もある)よりも配向の程度が大きい)。
【0076】
次いで、複合ポリマーフィルムは本明細書で上述されるように配向ポリマーチューブへと形成されるため、接合層材料は配向ポリマーフィルムの各「層」(又は巻付物)と会合して、ポリマーフィルムの隣接する層が一緒に結合される。この結合には、幾つかの実施形態では、最終的なポリマーチューブに熱及び/又は圧力を加えることによるポリマーチューブの処理が必要とされ得る。幾つかの実施形態では、圧力は陰圧、すなわちポリマーチューブが周りに巻き付けられるマンドレルを通して真空を引くこと等によるチューブへの真空の印加である。幾つかの実施形態では、ポリマーチューブに収縮材料(例えば、線状低密度ポリエチレン、すなわちLLDPEを含む収縮チューブ又は収縮ラップ)を巻き付け、巻き付けられたポリマーチューブを(例えば、チューブを炉内に置くことにより)加熱することによって、熱及び(陽)圧力がもたらされる。炉温度、形成時間、及び印加される形成圧力は、ポリマーチューブの成分に依存し得て、これらの加工変量をそれぞれ制御して、最終的な配向ポリマーチューブ特性を調整することができる。幾つかの実施形態では、他の結合技術を使用して、熱/圧力法を置き換える又は補うことができる。例えば、幾つかの実施形態では、結合は1つ以上の溶剤(例えば、クロロホルム)との接触を使用することができ、幾つかの実施形態では、結合は高周波溶接の使用を含み得る。
【0077】
本明細書で上記に概説された平面配向/同心状配置の方法は、3つの別個の工程(平面配向、例えばポリマーフィルムの延伸、同心状配置、例えば配向ポリマーフィルムの同心状位置での配置、及び形成、例えば配置された配向ポリマーフィルムの配向ポリマーチューブへの形成)を含むものとして開示されるが、これらの工程の2つ又は3つ全てがほぼ同時に実施されるように開示された方法を変更することができる。例えば、幾つかの実施形態では、ポリマーフィルムを非延伸形態で提供することができ、円筒形の形成表面に対して空気圧及び/又は液圧によって延伸(及び配向)することで、配向ポリマーチューブを形成することができる。
【0078】
幾つかの実施形態では、ポリマーチューブ前駆体として延伸ポリマーフィルムを利用するのではなく、配向された複合ポリマー形材を配置し、チューブへと形成するため、これがポリマーチューブ前駆体として機能し得る。この方法は、配向された複合ポリマー形材を3つ全ての円筒軸に対して所望の配向プロファイルに従って配置することを含む。複合形材の配置には、限定されるものではないが、巻き付け、外装、巻回、又は編み組みが含まれ得る。この配置された複合形材には、接合層(複数の場合もある)が複合形材の隣接する層に付着するように圧力及び/又は温度が加えられ、それにより合着した多層配向ポリマーチューブが形成される。
【0079】
ポリマー形材は、本明細書に開示される結晶化可能なポリマーを含む(先述のポリマーフィルムではなく)賦形されたポリマー形態である。例示的なポリマー形材には、限定されるものではないが、正方形、長方形、多角形、楕円形、又は形状の1つ以上の表面上に規則的若しくは断続的な特徴を有し得る若しくは有し得ない他の幾何学形の断面形材が含まれる。複合形材は(先述の結晶化可能なポリマーを含む)接合層材料を更に含むポリマー形材である。
【0080】
或る特定の実施形態では、この節で概説される配向フィルム又は配向形材を配置して形成することによって製造されたチューブは(先述のように図1に概略的に示されるように製造された)押出され半径方向に拡張された単層のチューブのチューブ壁厚にわたる分子配向よりも一貫したチューブ壁厚にわたる分子配向の程度を示す。円筒座標系を使用し、(ごくわずかな厚さの接合層を除いて)完全に接触している2つの表面が幾何学的に連続していると仮定すると、最大密度が得られるように配置された円形の形材から形成されたこのようなチューブは、3つ全ての軸に沿って幾何学的に不連続的となる。分子配向及び負っている幾何学的連続性に関しては、そのようなチューブは、θ軸に沿って連続的であり、r軸及びz軸に沿っては不連続的であることとなる。最大密度が得られるように配置された長方形の形材から形成されたそのようなチューブは、3つ全ての軸に沿って幾何学的に不連続的となる。分子配向及び負っている幾何学的連続性に関しては、そのようなチューブは、3つ全ての軸に沿って連続的であることとなる。
【0081】
本明細書に開示される平面配向/同心状配置の方法は、従来の押出/同心状拡張と比較して多くの利点をもたらす。例えば、開示された方法によれば、各ポリマーフィルム(又は形材)は、所望の程度まで所望のように一軸延伸又は二軸延伸され得る。幾つかの実施形態では、複合構造物内の個々の層として複数のポリマーを複合させて、一緒に延伸(及び配向)することができる。幾つかの実施形態では、複数のポリマーを独立してフィルム又は形材の形で提供して、種々の程度に延伸(及び配向)した後に、これらの配向フィルム及び/又は配向形材をポリマーチューブの形成の前に又はその間に複合させることができる。
【0082】
異なるポリマーフィルム(又は形材)を複合し得る方法に変更を加えて、異なる複合構造及び異なる特性を達成することができる。例えば、幾つかの実施形態では、複数のフィルムを(例えば、形成用マンドレルでの)チューブ形成過程の間にバイアス角で積み上げて、重要な用途要件に適合させることができる。製造の間に構成要素層の様々な構成を得ることができる。例えば、個々の層を互いにずらしても又は積み重ねてもよい。この文脈において、積み重ねた構成(例えば、図4Aに示される)は、互いの頂部の直上に異なるフィルムを含み、ずらした構成(例えば、図4Bに示される)は、巻いた(又はそうでなければ管形物へと形成した)場合に最初の層(複数の場合もある)が単一の材料であり、それに複合フィルム(又は形材)の1つ以上の層が続いて、それに最後の材料の1つ以上の層が続くように食い違った異なるフィルムを含む。所与の配向ポリマーチューブには、積み重ねた一連の層及びずらした一連の層が更に設けられてもよい。
【0083】
幾つかの実施形態では、強度、靭性、薬物の封入/溶出、接着、表面官能性、分解性等のような非常に具体的な特性に関して個々のフィルム/層を選択することで、得られるポリマーチューブにそのような特性を与えることができる。本明細書で概説される製造方法の様々な段階で最終的なチューブ内に(例えば、形成工程の前又はその間に接合層(複数の場合もある)によって後に被包されるフィルムの間に)、限定されるものではないが、組紐、繊維、織物、不織布、及び/又はインサートを含む追加の構成要素を組み込むことができる。幾つかの実施形態では、本明細書に開示される方法を介して得られる配向ポリマーチューブを、後続工程で(例えば、レーザー切断、圧着、拡張等によって)更に変化させて、医療用デバイスを製造することができる。
【0084】
多層同心状配向及び同心状配置
本開示の別の態様は、多層同心状配向及び同心状配置を含む方法、並びに該方法によって製造される配向ポリマーチューブに関する。上記のように、同心状拡張過程の1つの不利点は、最終的なチューブ壁厚全体にわたる配向の程度が限定的であることから、結果としてIDからODへと減少する配向勾配がもたらされることである。この懸念は、同心状配向アプローチを使用するが、壁厚を最小限に抑えることによって対処され得る。それというのも、壁厚がゼロに近づくにつれて達成可能な配向の程度に対する限界がゼロに近づくためである。したがって、最終的な形成された配向ポリマーチューブの壁厚の形成において前駆体の壁厚が相加的になる場合に、同心状配向されたチューブ前駆体から形成された多層チューブでは、チューブ壁厚全体にわたるより高度の配向、及び最終的な形成されたポリマーチューブのIDからODへの配向勾配の低下が示される。
【0085】
この多層同心状配向及び同心状配置アプローチでは、複数のポリマーチューブ(同じ組成又は異なる組成であり得る)を作製し、同心状拡張に供することにより、図5A(工程14又は工程18)に示されるように、少なくとも幾らかの程度の分子配向を有する配向チューブ前駆体が製造される。このようなポリマーチューブは、任意の方法によって、例えば押出、押出コーティング、及び/又は射出成形を介して作製され得る。一実施形態では、個々の配向チューブ前駆体は、工程16に示されるように入れ子状に配置される。別の実施形態では、配向チューブ前駆体は、工程20に示されるように入れ子状に配置され、その後に工程22に示されるように(同時に)追加の同心状拡張に供される。そのような実施形態での配向チューブ前駆体の配置は、同心状拡張工程を介して完結される。最終的な管形状の形成(配向された多層ポリマーチューブが得られる)は、同心状拡張工程を介して又は同心状拡張工程に続いて完結され得る。
【0086】
別の実施形態では、ポリマーチューブの同心状拡張は、図5Bに示されるように一方がもう一方の内側になって順次に行われる。最初のチューブ(外側の配向チューブ前駆体を構成する)の同心状拡張に続いて、後続の各チューブの同心状拡張により、先行する配向チューブ前駆体のID内に追加の配向チューブ前駆体が配置されることから、結果として全ての配向チューブ前駆体の同心状配置がもたらされる。最終的な管形状の形成(配向された多層ポリマーチューブが得られる)は、1つ以上のチューブ前駆体の同心状拡張を介して又は1つ以上のチューブ前駆体の同心状拡張に続いて完結され得る。これらの実施形態のいずれかの同心状拡張は、チューブを同心状に拡張するあらゆる既知の方法によって実施され得る。
【0087】
複数の非延伸/非配向ポリマーチューブ前駆体又は延伸/配向チューブ前駆体をこの方法を使用して複合させることは、様々な様式で、例えばマンドレル上で配向ポリマーチューブを(任意に、熱及び/又は圧力を加えて)形成することによって又は型内で配向ポリマーチューブを(ここでも、任意に熱及び/又は圧力を加えて)形成することによって実施され得る。そのような形成用マンドレル及び型は断面が円形である必要はなく、したがって、得られる多層配向ポリマーチューブは、限定されるものではないが、断面が円形であり得る中空の細長い構造物の形であり得ることに留意されたい。
【0088】
多層同心状配向及び同心状配置の方法では、複数の個々の層が含まれるため、ここでも典型的には、隣接する層の間に接合層が組み込まれて、これらの間に十分な接着がもたらされる。これらの実施形態では、例えば、接合層材料を1つ以上のポリマーチューブ前駆体と会合させる(こうして複合ポリマーチューブ前駆体が得られる)ことによって、接合層を含むことが達成され得ることから、ポリマーチューブ前駆体を拡張/配向させて他の前駆体と複合する(又は他の前駆体と複合された後に拡張/配向される)場合に、接合層は同様にまたそのような過程に供される。したがって、幾つかの実施形態では、接合層は同様に同心状拡張/配向に供される。他の実施形態では、個々のポリマーチューブが拡張/配向された後に接合層が適用され、そのような実施形態では、接合層は同心状拡張/配向に供されない。ここでも、(複数のチューブ前駆体又は複数の個別に拡張/配向されたチューブを複合させることに起因する)隣接する層を結合することによって最終的な配向ポリマーチューブを形成するには、多層配向ポリマーチューブに熱及び/又は圧力を加えることにより最終的な配向ポリマーチューブを処理することが必要とされ得る。幾つかの実施形態では、配向ポリマーチューブに収縮チューブ又は収縮ラップを巻き付け、例えば巻き付けられた配向ポリマーチューブを炉内に置くことにより加熱することによって、熱及び圧力がもたらされる。炉温度及び適用される形成圧力をそれぞれ制御して、最終的なチューブの特性を調整することができる。
【0089】
したがって、或る特定の実施形態(例えば、図5Aの工程16及び工程22によって示される)では、少なくとも2つの配向チューブ(それぞれは1つの結晶化可能なポリマー層及び任意に1つの接合層を含み得る(こうして複合配向チューブが得られる))は、3つ全ての円筒軸に対して所望の配向プロファイルに従って配置される。この配置されたチューブには、接合層が隣接する層(すなわち、そのいずれかの側面上の配向ポリマー層)に付着するように、高められた圧力及び/又は温度が加えられ、それにより合着した多層配向ポリマーチューブが形成される。幾つかの実施形態では、延伸され配向された複合チューブは、結晶化可能なポリマーを含む外側及び/又は内側の拡張/配向チューブ(接合層を備えても又は備えていなくてもよい)に対して配置される。
【0090】
幾つかの実施形態(例えば、図5Bに示される)では、非配向複合チューブ(結晶化可能なポリマー及び接合層材料の両方を含む)を(例えば、高められた温度及び圧力の条件下で)同心状に拡張することで、少なくとも一部の結晶化可能なポリマーが配向される。この同心状拡張過程を介して、接合層材料は、幾つかの実施形態では、任意の隣接する層に接着し得る。例えば、この実施形態では、1つの隣接する層が同じ非配向複合チューブ前駆体の結晶化可能なポリマーであり、他の隣接する層が第2の結晶化可能なポリマー(複合チューブ前駆体中の結晶化可能なポリマーと同一であっても又は異なっていてもよい)の既に配向されたチューブであり得ることにより、合着した多層配向ポリマーチューブが形成される。このような実施形態では、個々の層は3つ全ての円筒軸に対して所望の配向プロファイルに従って配置される。複合チューブ前駆体はまた、結晶化可能なポリマーを含む内側のチューブ前駆体に対して配置され得る。
【0091】
ポリマーチューブを上記のように同心状に拡張する当該技術分野で知られる多くの方法が存在する。慣用のブロー成形では、押出されたポリマーチューブを型内に配置し、加熱してゴム様の状態にし、加圧して、チューブを型へと拡張させる。幾つかの方法では、押出されたポリマーチューブはまた、張力を加えることによって機械方向に延伸される。機械方向延伸は、同心状拡張の前又はその間に完結される。最終的な拡張チューブの形状は一般に、型の形状並びに温度及び圧力等のプロセスパラメーターによって決定される。最終的な拡張チューブの特性は一般に、同心状拡張比、同心状拡張速度、機械方向延伸比、機械方向延伸速度、温度、及び圧力等のプロセスパラメーターによって決定される。
【0092】
本明細書に開示される多層同心状配向及び同心状配置の方法は、従来の押出/同心状押出と比較して多くの利点をもたらす。例えば、各チューブ前駆体を、多層配向ポリマーチューブの形成の前に又はその間に、所望の程度まで所望のように一軸配向又は二軸配向することで、用途要件に適合させることができる。幾つかの実施形態では、複合構造物内の個々の層として複数のポリマーを複合させて、一緒に拡張/配向することができる。幾つかの実施形態では、複数のポリマーを独立してチューブの形で提供し、例えば種々の程度に拡張(従って配向)した後に、得られた配向チューブを多層配向ポリマーチューブの配置及び形成の間に複合させることができる。幾つかの実施形態では、強度、靭性、薬物の封入/溶出、接着、表面官能性、分解性等のような非常に具体的な特性に関して個々のチューブ及びチューブ前駆体を選択することで、得られる多層ポリマーチューブにそのような特性を与えることができる。拡張する前に1つ以上のチューブ前駆体に追加の成分、例えば充填剤を分散させることができる。本明細書で概説される製造方法の様々な段階で最終的な多層ポリマーチューブ内に(例えば、接合層(複数の場合もある)材料によって後に被包されるチュービング層の間に)、限定されるものではないが、組紐、繊維、織物、不織布、及び/又はインサートを含む追加の構成要素を組み込むことができる。幾つかの実施形態では、本明細書に開示される方法を介して得られる多層ポリマーチューブを後続工程で(すなわち、レーザー切断、圧着、拡張等によって)更に変化させて、医療用デバイスを製造することができる。
【0093】
円筒座標系を使用し、完全に接触している2つの表面が幾何学的に連続していると仮定すると、(前駆体の環状形状から形成される)そのようなチューブは、3つ全ての軸に沿って幾何学的に連続的となる。分子配向及び負っている幾何学的連続性に関しては、そのようなチューブは、z軸及びθ軸に沿って連続的であり、r軸に沿っては不連続的であることとなる。
【0094】
本明細書に開示される配向ポリマーチューブの製造方法は、一連の結晶化可能なポリマーに適用可能である。このような方法は、(限定されるものではないが)生分解性ポリマーに特に適用可能である。したがって、好ましい実施形態では、本開示により配向ポリマーチューブが作製されるポリマー(複数の場合もある)は、有利には結晶化可能な生分解性ポリマーであり、有利には、高分子配向、ひずみ誘起結晶化、及び高強度を示すことができる。
【0095】
生分解性(一般に「生体吸収性」及び/又は「生体再吸収性」とも呼ばれる)ポリマーは、或る特定の生物学的条件下で、通常の生物学的プロセスの一部として無害/安全であるとみなされる化合物にまで破壊又は分解を受けるポリマーである。有利には、曝される生物学的条件下で、生分解性ポリマーは徐々に分解及び/又は侵食され、体内で吸収又は再吸収される。典型的には、本開示の文脈で適用可能な生分解性ポリマーは、生物学的条件下で、実質的な分解前に或る期間(例えば、限定されるものではないが、約1週間まで、約1ヶ月まで、約3ヶ月まで、約6ヶ月まで、約12ヶ月まで、約18ヶ月まで、約2年まで、又はそれより長期を含む)にわたって体内に留まるのに十分に安定である。典型的には、このような生分解性ポリマーは生体適合性でもある。
【0096】
本発明の文脈で適用可能な例示的な結晶化可能なポリマーには、限定されるものではないが、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D-ラクチド)(PDLA)、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(パラ-ジオキサノン)(PDO)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(テトラメチルカーボネート)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリジオキサノン、ポリグルコネート、並びにそれらのコポリマー、ブレンド及び誘導体が含まれる。開示された方法に従って使用することができる或る特定のポリマーは、ポリ(アルファ-ヒドロキシ酸)として特徴づけられ得る。幾つかのポリマーは、改変セルロースポリマー、コラーゲン又は他の結合性タンパク質、接着性タンパク質、ヒアルロン酸、ポリ酸無水物、ポリホスホエステル、ポリ(アミノ酸)、並びにそれらのコポリマー及び誘導体である。本明細書に概説される方法に従って加工されるポリマーの分子量は多様であり得て、得られる配向ポリマーチューブの特性に影響を与え得る。ポリマーの機械的特性(例えば、強度及び弾性率)は一般に分子量の増加とともに改善し、分解時間は一般に分子量の増加とともに増える(すなわち、低分子量ポリマーでできたチューブは典型的には、より高分子量のポリマーでできた同等のチューブよりも素早く分解する)ことが一般に理解される。したがって、ポリマーの分子量は、これらの特性のバランスをとるために適宜選択され得て、特定の用途に応じて大きく変動し得る。
【0097】
上記のように、本明細書に開示される配向ポリマーチューブは通常、配向された結晶化可能ポリマーに加えて、複数の層を一緒に結合するのに十分な1つ以上の接合層材料(本明細書では「接着性」層材料とも呼ばれる)を含む。そのような複数の層は、同じ材料の複数の層を含むことができる(例えば、巻き付けによって製造される多層材料の場合)及び/又は異なる材料の層を含むことができる。有利には、幾つかの実施形態では、接合層は、配向ポリマーチューブが使用中にほとんどないし全く層間剥離を示さないように隣接する層を一緒に結合する(例えば、層間の接着により、配向ポリマーチューブが少なくとも部分的に分解し得るとしても、十分な層間剥離を示さない)。
【0098】
最終的な配向ポリマーチューブ内の接合層(複数の場合もある)の組成は多様であり得る。接合層は典型的には、2つの隣接する層を一緒に結合することができる1つ以上のポリマーを含むため、接着特性を有する様々なポリマーを使用することができる。接合層として使用される典型的な接着性ポリマーは、或る程度の流動性及び/又は粘着性を示す。接合層を含むポリマー(複数の場合もある)は、(例えば、最終生産物が体内に移植するように設計されている)幾つかの実施形態では、好ましくは、生体適合性の生分解性ポリマーである。接合層を含むポリマー(複数の場合もある)は、幾つかの実施形態では、非結晶性/実質的に非晶質のポリマー(複数の場合もある)である。本開示による接合層として働く(又は接合層に含まれる)のに適した例示的なポリマーには、限定されるものではないが、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(D,L-ラクチド)、ポリ((L-ラクチド)-co-ε-カプロラクトン)、ポリ(L-ラクチド-co-トリメチレンカーボネート)、ポリ(ε-カプロラクトン-co-トリメチレンカーボネート)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(L-ラクチド-co-ポリ(エチレングリコール))、並びにそれらのコポリマー及び誘導体及び組み合わせが含まれる。
【0099】
上述の方法によって製造されるチューブの特性は多様であり得る。例えば、様々な方法によって作製された配向ポリマーチューブの幾何学的連続性及び配向連続性を以下の表1で比較する。
【0100】
【表1】
【0101】
開示された方法に従って製造された配向ポリマーチューブの形状及びサイズは多様であり得る。本明細書で上記に述べられるように、このようなチューブは円筒形であり得るが、それには限定されない。配向ポリマーチューブの壁厚も同様に多様であり得て、例えば、ポリマーフィルム(又は形材)の厚さ(平面配向及び同心状配置の方法の場合)、チューブ/チューブ前駆体の厚さ(多層同心状配向及び同心状配置の方法の場合)、適用される伸長力の量、及び最終的な配向ポリマーチューブを製造するのに複合される層の数(例えば、巻付物の数又は多層チューブを製造するのに複合されるチューブ前駆体若しくはチューブの数)に基づいて調整され得る。本開示により提供される配向ポリマーチューブは組成が実質的に均一であり得て(例えば、主に単一の配向された結晶化可能なポリマー成分からなる)、その複数の層は比較的少量の接合層材料(隣接する配向ポリマーの層間に接着層/接合層を形成する)と一緒に結合され得る。本開示により提供される或る特定の配向ポリマーチューブは不均一であり得る。それというのも、組成が異なるフィルム/形材/チューブを複合させることができるからである(例えば、チューブは、異なる結晶化可能なポリマー及び/又は異なる接合層材料(延伸されていても又は非延伸形であってもよい)を含み得て、充填剤又は他の成分等を含み得る/排除し得る)。本明細書に概説される方法は、広範囲の配向ポリマーチューブの作製に広く適用可能である。
【0102】
幾つかの実施形態では、開示された方法に従って作製された配向ポリマーチューブを、チューブの断面全体(すなわち、チューブのIDからODまで)にわたる結晶化可能なポリマーの分子配向の程度によって特徴付けることができる。好ましくは、チューブ壁内の結晶化可能なポリマーの分子配向は、配向ポリマーチューブの断面全体にわたって実質的に不変である。例えば、分子配向は一般に同じ方向で存在し、本開示による配向ポリマーチューブのIDの近くにおいてODの近くとほぼ同じ量で存在する。そのような配向特質は、例えばX線回折を使用して評価され得る。
【0103】
特に、或る特定の実施形態における分子配向プロファイルは、配向ポリマーチューブの壁部を通して実質的に一貫している又は配向ポリマーチューブの壁部の既定の部分を通して実質的に一貫している。幾つかの実施形態では、チューブは、配向ポリマーチューブの壁部の既定の部分を通して様々な配向レベルを特徴とする分子配向プロファイル及び/又は配向ポリマーチューブの壁部の既定の部分を通して様々な配向軸を特徴とする分子配向プロファイルを有する。本明細書で提供される幾つかのチューブは、他のプロファイル、例えば、配向ポリマーチューブの内径から外径への壁部を通した分子配向勾配の増加、又は配向ポリマーチューブの内径から外径への壁部を通した分子配向勾配の減少を示す。幾つかの実施形態では、分子配向プロファイルは、配向ポリマーチューブの長さに沿って実質的に一貫している又は配向ポリマーチューブの長さの既定の部分に沿って実質的に一貫している。幾つかの実施形態では、チューブは、配向ポリマーチューブの長さに沿って様々な配向レベルを特徴とする分子配向プロファイル及び/又は配向ポリマーチューブの長さに沿って様々な配向軸を特徴とする分子配向プロファイルを有する。
【0104】
本明細書で提供される配向ポリマーチューブの組成プロファイルは、或る特定の実施形態では、配向ポリマーチューブの壁部を通して実質的に一貫している又は配向ポリマーチューブの壁部の既定の部分を通して実質的に一貫している。他の実施形態では、組成プロファイルは、配向ポリマーチューブの壁部の既定の部分を通して様々な組成を特徴とし得る。同様に、本明細書で提供される配向ポリマーチューブの組成プロファイルは、或る特定の実施形態では、配向ポリマーチューブの長さに沿って実質的に一貫している又は配向ポリマーチューブの長さに沿って実質的に一貫している。他の実施形態では、組成プロファイルは、配向ポリマーチューブの長さに沿って様々な組成を特徴とし得る。
【0105】
或る特定の実施形態では、分解速度プロファイルは、配向ポリマーチューブの形成に使用される特定の方法によって影響され得る。例えば、ポリマーチューブの内径から外径への壁部を通した分解速度勾配の増加を特徴とする分解速度プロファイル及び配向ポリマーチューブの内径から外径への壁部を通した分解速度勾配の減少を特徴とする分解速度プロファイルを含む、配向ポリマーチューブの壁部を通して実質的に一貫している分解速度プロファイルを特徴とする、ポリマーチューブの壁部の既定の部分を通して実質的に一貫している分解速度プロファイルを特徴とする、又は配向ポリマーチューブの壁部の既定の部分を通して様々な分解速度を特徴とする分解速度プロファイルを特徴とする配向ポリマーチューブが本明細書で提供される。幾つかの実施形態では、配向ポリマーチューブの長さに沿って分解速度勾配を特徴とする分解速度プロファイルを含む、配向ポリマーチューブの長さに沿って実質的に一貫している分解速度プロファイルを特徴とする、配向ポリマーチューブの長さに沿って実質的に一貫している分解速度プロファイルを特徴とする、又は配向ポリマーチューブの長さに沿って様々な分解速度を特徴とする分解速度プロファイルを特徴とする配向ポリマーチューブが本明細書で提供される。
【0106】
有利には、本開示により提供される配向ポリマーチューブは、例えばin vivoで使用するのに十分な強度を示し得る。そのようなチューブは、所望の状況で機能するのに十分な圧縮強度/半径方向圧縮に対する抵抗性を有するものとして特徴付けられ得る。例えば、幾つかの実施形態では、開示された方法により得られる配向ポリマーチューブは、例えばステントとして又はステントの構成要素として使用され得る。ステントは、例えば血管に挿入されて残される場合に大きな負荷に曝され、ステントが狭い箇所に留まり、血管の収縮を防ぐことを保証するのに十分な半径方向の力を発揮するべきである。上述の方法によって作製された配向ポリマーチューブを試験し(例えば、繰り返し圧縮を評価した)、この試験からの関連する知見を本明細書で以下に記載する。平面配向/同心状配置の方法に従って作製された或る特定の配向ポリマーチューブは(本明細書に記載される従来の押出/拡張法を介して作製された)比較材料よりも高いエネルギー吸収(壁厚に対して正規化)を示した。平面配向/同心状配置の方法に従って作製された全ての試験された配向ポリマーチューブは、各サイクル期間の開始時のX切片によって測定されるように、改善されたヒステリシス挙動を示した。
【0107】
開示された方法の様々なパラメータ(及び開示された材料の特性)が、得られる配向ポリマーチューブの物理的特性の違いをもたらし得ることから、処理の自由度を可能にすることも見出された。例えば、配向ポリマーチューブの物理的特性は、本開示に基づいて、例えば、異なる分子量及び/又は組成を有するポリマー(例えば、コポリマーを含む)を選択することによって、平面配向/同心状配置の方法においてフィルムの配向の様式を変更することによって(例えば、一軸対二軸)、ポリマーフィルム/形材を形成用マンドレルの周りに異なる角度で巻き付けることによって(例えば、軸に沿って又はバイアス角で)、マンドレルに一緒に巻き付けられた異なるポリマーフィルム/形材を使用して、そのようなポリマーフィルム/形材を異なる様式(例えば、ずらした様式対積み重ねた様式)で巻き付けることによる等で変更され得る。幾つかの実施形態では、開示された方法は、複数の単位の延伸ポリマー材料(例えば、延伸フィルム/形材等)を積み重ねた様式及びずらした様式のうちの少なくとも1つで配列させることと、配列された複数の単位の延伸ポリマー材料をバイアス角(ここで、バイアス角は多様であり得る(0゜を含む))で巻き付けることとを含む。
【0108】
本開示により提供されるチューブの最終用途は多様であり得る。本明細書で先述されるように、開示された方法によってもたらされる分子配向により、有利には、比較的高い強度(例えば、半径方向強度/圧縮強度)のチューブが得られ得ることから、これらのチューブは、そのような高い強度が重要である場合に特に有用となる。そのような用途の1つは、ステント等の医療用インプラントに関連している。開示された方法の或る特定の実施形態により得られるステントのサイズは多様であり得て、1つ以上の特定の用途に適切に設計され得る。例えば、幾つかの実施形態では、ステントの長さLは、約20mm~約200mmであり得る。例えば、幾つかの用途では、ステントは、約40mm~100mm又はその間の任意の値、例えば、少なくとも約50mm、60mm、70mm、80mm、若しくは90mmの長さLを有し得る。幾つかの用途では、ステントは、約25mm~150mm又はその間の任意の値、例えば、少なくとも約50mm、75mm、100mm、若しくは125mmの長さLを有し得る。ステントはまた、他のステント用途において、これらの例示的な値よりも長くても又は短くてもよい。同様に、幾つかの実施形態では、ステントのストラット厚は、約0.7mm~約0.4mmであり得る。例えば、幾つかの用途では、ステントは、約0.08mm~0.15mm又はその間の任意の値、例えば、少なくとも約0.09mm、0.1mm、0.12mm、0.13mm、若しくは0.14mmのストラット厚を有し得る。幾つかの用途では、ステントは、約0.15mm~0.4mm又はその間の任意の値、例えば、少なくとも約0.2mm、0.25mm、0.3mm、若しくは0.35mmのストラット厚を有し得る。ステントはまた、他のステント用途において、これらの例示的な値よりも大きい又は小さいストラット厚を有してもよい。同様に、様々な直径を有するステントを形成することができる。幾つかの実施形態では、ステントのミッドボディ直径(各端部から等距離の点でのステントの直径)は、約1.5mm~約40mmであり得て、例えば、約2.5mm~16mm又はこの範囲内の任意の距離、例えば、約3mmから14mmの間又は約5mmから約10mmの間のミッドボディ内径であり得る。
【0109】
ステントは一般に、動脈疾患の治療にしばしば使用される円筒形状のデバイスである。動脈疾患は、動脈内の脂質の沈着とそれに続いて動脈壁に沿ったプラーク形成を伴う。これらのプラーク病変は、軟質であるか又は硬質となり石灰化して、時間の経過とともに血管内の管腔空間を減少させ、狭窄として知られる過程となる場合もある。狭窄を治療するために、ステントは通常、血管の患部域の内腔の開通性を維持するのに役立つ治療部位に展開される。ステントは、血管の開通性を維持するのに適切な半径方向の支持を血管に与えるのに適切な半径方向強度を有さねばならない。
【0110】
ステントは通常、相互接続された構造要素又はストラットを含む半径方向に拡張可能な形状へとチューブをレーザー切断することによって製造される。血管形成バルーンカテーテルの場合のような従来の展開の間に、ステントストラットは高い局所的変形を受けることから、ステントを製造する材料は高い強度及び剛性を維持しながら高度に変形可能である必要がある(例えば、材料は高い靭性を示さねばならない)。多くの臨床治療用途において、ステントは、例えば重要な治癒段階で開通性を維持する又は活性剤若しくは薬物を標的部位に送達するために一時的にのみ必要とされる。
【0111】
したがって、本明細書に記載されるチューブは、様々な実施形態において、これらが高い圧縮強度/半径方向強度だけでなく生分解性/生体吸収性を示すことができるため、特にステントとして使用され得る。本明細書に開示されるように、各チューブを構成する層の組成及び物理的特性を調整することができることで、十分な圧縮強度/半径方向強度だけでなく、例えばそれらの臨床利用が完了した後に完全に吸収され得る生分解性も示すチューブを製造することが可能となる。本明細書に開示されるチューブは、例えば適切なサイズ/形状に切断することによって、この点に関して所望の目的を果たすために相応して加工/変更され得る。
【0112】
他の実施形態では、本開示により提供されるチューブは、例えば、限定されるものではないが、他のチューブ/管状構築物の周りに配置されて、例えばそのような管状構築物の構成要素の融合を補助する熱収縮チューブとして機能することを含む他の状況で使用され得る。幾つかの実施形態では、開示された方法に従って作製されるそのような熱収縮チューブは、限定されるものではないが、改善された熱収縮能力を含む強化された熱力学的特性を示す。
【0113】
本開示は、少なくとも1つの結晶化可能(例えば、結晶化可能で生分解性の)ポリマーを含む実施形態に焦点を当てているが、本明細書に記載される原理はそれに限定されないことに留意されたい。本明細書に概説される技術は、有利には、このような結晶化可能なポリマーの文脈においてその中の分子を配向させて、得られる管形物の強度を強化するのに適用されるが、これらの原理は、結晶化可能ポリマーに限定されない他の利益を同様にもたらし得る(そして、例えば、限定されるものではないが、生分解性の非晶質ポリマーを含む非晶質ポリマーに適応可能であり得る)。したがって、幾つかの実施形態では、本開示は、非晶質の生分解性ポリマーを含むポリマー材料を、本明細書に一般に開示される平面延伸及び同心状配向又は多層同心状拡張及び同心状配置に供する方法を提供する。典型的には、このような非晶質のポリマー含有生産物は、結晶化可能なポリマー含有生産物(例えば、分子配向によって強化される)に対して本明細書で先述される高い強度値を示さないため、例えば、他のチューブ(例えば、限定されるものではないが、先述の他の多層チューブを融合するための熱収縮材料として機能することを含む)の加工において、及び例えば1つ以上の追加の構成要素によって強化される様々なデバイスの構成要素として使用され得る。
【0114】
本発明の多くの変更及び他の実施形態が、上記説明に提示された教示の利益を有する、本発明が関係する技術分野の当業者には思い付くであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、変形形態及び他の実施形態が、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されていることが理解されるべきである。特定の用語が本明細書において用いられているが、それらの用語は、限定の目的で用いられているのではなく、一般的かつ説明的な意味でのみ用いられている。
【実施例0115】
実施例1
Carver社のプレス機を使用して圧縮成形して125μmの厚さにすることによって、Corbion Purac社から購入したポリラクチド樹脂であるPL32からなるプラークを作製した。次いで、PL32プラークをBrueckner社の研究室用延伸機で一軸延伸して、およそ25μmの最終厚さを得た。Carver社のプレス機を使用して圧縮成形して、およそ40μmの厚さを得ることによって、Corbion Purac社から取得したラクチド及びカプロラクトンのコポリマー樹脂であるPLC7015からなるプラークを作製した。次いで、PLC7015プラークをBrueckner社の研究室用延伸機で二軸延伸して、およそ15μmの最終厚さにした。
【0116】
2つのフィルムのそれぞれから長方形を切り出し、一方をもう一方の上に載置し、OD=2.8mmを有する金属製マンドレルの周りにPL32フィルムをマンドレルと接触させて巻き付けた。PL32フィルムの延伸方向が円周方向に揃うようにフィルムを巻き付けた。次いで、巻き付けられたマンドレルを、Sealed Air Corporation社から取得された線状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムのCortuff(商標)収縮フィルムで緊密に覆い、所定の場所にテープで留めた。引き続き、集成物を80℃に設定された熱風循環炉に30分間置いた。集成物を炉から取り出した後に、収縮フィルムを取り外し、目下融合した複合チューブをマンドレルからスライドして外した。複合チューブの最終的な平均壁厚はおよそ130μmであった。
【0117】
実施例2
Corbion Purac社から購入したポリラクチドであるPL65から作製され、およそ30μmの最終厚さまで一軸延伸された125μmのプラーク及びPLC7015から作製され、およそ15μmの最終厚さまで二軸延伸された40μmのプラークから出発して、実施例1の手順を繰り返した。圧縮形成されたチューブは、およそ140μmの壁厚を有した。
【0118】
実施例3
120℃の炉温度を使用して、実施例1の手順を繰り返した。
【0119】
実施例4
120℃の炉温度を使用して、実施例2の手順を繰り返した。
【0120】
実施例5
160℃の炉温度を使用して、実施例1の手順を繰り返した。
【0121】
実施例6
160℃の炉温度を使用して、実施例2の手順を繰り返した。
【0122】
実施例7
180℃の炉温度を使用して、実施例1の手順を繰り返した。
【0123】
実施例8
180℃の炉温度を使用して、実施例2の手順を繰り返した。
【0124】
繰り返し圧縮試験
実施例1~実施例8からの複合チューブを10ポンドのロードセルを備えたInstron社の装置で圧縮において試験した。チューブをその長さ軸がジョーの動きと垂直になるように配置した。試験の間に、ジョーにクランプされたディスクをチューブの表面上に降下させた。チューブが初期直径の50%に変形するまで毎分初期直径の50%でチューブの圧縮を行い、その後、ジョーは同じ速度で動いてその開始位置まで上がって戻った。試料を圧縮するのに必要とされる力をロードセルによって測定し、応力に変換した。サイクル間に休止をせずにチューブ毎にこの手順を5回繰り返した。報告された値は、最大応力、壁厚について正規化された5サイクルにわたってチューブによって吸収されたエネルギー、及び圧縮の程度のパーセントとしてのチューブの回復であった。この最後の量は、チューブの圧縮サイクル間のヒステリシスの指標である。
【0125】
図6A図6B図6Cは、コントロールチューブと比較した、実施例3及び実施例4のチューブについての繰り返し圧縮試験からの最大応力、正規化されたエネルギー、及びX切片を示す。Corbion Purac社製のPLLAであるPL38からなるインプットチューブを2.8mmのIDとともに100μmの壁厚の最終寸法まで押出及び拡張することによってコントロールチューブを製造した。次いで、このチューブを、実施例3及び実施例4からの複合チューブの圧縮形成時間に合わせるために120℃で30分間アニールした。図6A図6B図6Cによると、実施例4からのチューブは、全ての圧縮サイクルについて最大応力、正規化されたエネルギー、及びサイクル間のヒステリシスにおいてコントロールチューブよりも明らかに優位性を示している。実施例3からのチューブは、より低い最大応力値を示しているが、正規化されたエネルギー及びサイクル間のヒステリシスにおいて改善を示している。
【0126】
図7A図7B図7Cは、実施例1、実施例3、実施例5、及び実施例7によるチューブについての繰り返し圧縮試験からの最大応力、正規化されたエネルギー、及びX切片を示す。これらの特性に対する形成温度の影響は直ちに分かる。実施例に開示されるPL32/PLC7015複合構造物の場合に、最大応力及びエネルギーを最大化するのに最適な形成温度は160℃である。
【0127】
図8A図8B図8Cは、実施例2、実施例4、実施例6、及び実施例8によるチューブについての繰り返し圧縮試験からの最大応力、正規化されたエネルギー、及びX切片を示す。実施例に開示されるPL65/PLC7015複合構造物の場合に、最大応力及びエネルギーを最大化するのに最適な形成温度は120℃である。
【0128】
実施例9
PL32から作製され、約10μmの最終厚さまで二軸延伸された125μmのプラーク、及びPLC7015から作製され、およそ15μmの最終厚さまで二軸延伸された40μmのプラークから出発して、実施例3の手順を繰り返した。完成した複合チューブは、およそ120μmの平均壁厚を有した。
【0129】
実施例10
PL32から作製され、約10μmの最終厚さまで二軸延伸された125μmのプラーク、及びCorbion Purac社から購入したポリラクチド-co-カプロラクトンコポリマーであるPLC8516から作製され、約7μmの最終厚さまで二軸延伸された125μmのプラークから出発して、実施例3の手順を繰り返した。完成した複合チューブは、およそ50μmの平均壁厚を有した。
【0130】
実施例11
PLC8516から作製され、約25μmの最終厚さまで一軸延伸された125μmのプラーク、及びCorbion Purac社から購入したポリラクチド-co-カプロラクトンコポリマーであるPLC8516から作製され、約7μmの最終厚さまで二軸延伸された125μmのプラークを使用して、実施例4の手順を繰り返した。完成した複合チューブは、およそ95μmの平均壁厚を有した。
【0131】
実施例12
PLC8516から作製され、約7μmの最終厚さまで二軸延伸された125μmのプラーク、及びCorbion Purac社から購入したポリカプロラクトンであるPC12から作製され、約25μmの最終厚さまで二軸延伸された45μmのプラークを使用して、実施例3の手順を繰り返した。完成した複合チューブは、およそ100μmの平均壁厚を有した。
【0132】
実施例13
PLC8516から作製された125μmのプラークを約7μmの最終厚さまで二軸延伸した。このフィルムから長方形を切り出し、OD=2.8mmを有する金属製マンドレルの周りに巻き付けた。次いで、巻き付けられたマンドレルを、LLDPE収縮フィルムで緊密に覆い、所定の場所にテープで留めた。引き続き、集成物を120℃に設定された熱風循環炉に30分間置いた。集成物を炉から取り出した後に、収縮フィルムを取り外し、目下融合した複合チューブをマンドレルからスライドして外した。複合チューブの最終的な平均壁厚はおよそ90μmであった。
【0133】
実施例14
PL32からなるプラークを125μmの厚さに成形し、Brueckner社の研究室用延伸機で二軸延伸して、およそ15μmの最終厚さを得た。PLC7015からなるプラークを成形して40μmの厚さを得た後に、これを二軸延伸して、およそ15μmの最終厚さを得た。PLC8516から作製された125μmのプラークを約7μmの最終厚さまで二軸延伸した。それぞれのフィルムから長方形を切り出し、PL32/PLC7015/PLC8516の順序で積み重ね、OD=2.8mmを有する金属製マンドレルの周りに巻き付けた。PL32フィルムがマンドレルと接触していた。次いで、巻き付けられたマンドレルを、LLDPEフィルムで緊密に覆い、所定の場所にテープで留めた。引き続き、集成物を120℃に設定された熱風循環炉に30分間置いた。集成物を炉から取り出した後に、収縮フィルムを取り外し、目下融合した複合チューブをマンドレルからスライドして外した。複合チューブの最終的な平均壁厚はおよそ80μmであった。
【0134】
実施例15
PL32樹脂(PLA)から作製された30μmの壁部、2.8mmのIDの押出及び拡張されたチューブをマンドレル上にスライドさせ、実施例9からの二軸延伸されたPL32フィルム及びPLC7015フィルムをPLAチューブの周りに巻き付けた。その際、PLAチューブの外周にPLC7015フィルムが接触していた。次いで、巻き付けられたマンドレルを、LLDPEフィルムで緊密に覆い、所定の場所にテープで留めた。引き続き、集成物を120℃に設定された熱風循環炉に30分間置いた。集成物を炉から取り出した後に、収縮フィルムを取り外し、目下融合した複合チューブをマンドレルからスライドして外した。複合チューブの最終的な平均壁厚はおよそ130μmであった。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C