(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163338
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20241114BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20241114BHJP
C09J 133/14 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/04
C09J133/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024160036
(22)【出願日】2024-09-17
(62)【分割の表示】P 2022573480の分割
【原出願日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2021172625
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021214308
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】内田 徳之
(72)【発明者】
【氏名】緒方 雄大
(72)【発明者】
【氏名】上田 洸造
(57)【要約】
【課題】チップ部品を受け止める際にはチップ部品を良好に貼りつけさせることができ、チップ部品を再転写する際には優れた剥離性能を発揮し、チップ部品への糊残りを抑えることのできる粘着テープを提供する。
【解決手段】少なくとも一層の基材と、少なくとも一層の粘着剤層とを有する粘着テープであって、前記粘着剤層は、周波数10Hz、-20℃でのせん断貯蔵弾性率G’が1MPa以下であり、前記粘着テープは、貼付面積10mm×10mmでのSUSに対する面剥離強度が0.5MPa以下である粘着テープ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一層の基材と、少なくとも一層の粘着剤層とを有する粘着テープであって、
前記粘着剤層は、周波数10Hz、-20℃でのせん断貯蔵弾性率G’が1MPa以下であり、
前記粘着テープは、貼付面積10mm×10mmでのSUSに対する面剥離強度が0.5MPa以下である
ことを特徴とする粘着テープ。
【請求項2】
前記粘着剤層は、周波数10Hz、-20℃でのせん断貯蔵弾性率G’が0.3MPa以下であることを特徴とする請求項1記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記粘着剤層は、周波数10Hz、23℃でのせん断貯蔵弾性率G’が0.04MPa以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記粘着剤層は、厚みが40μm以上であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の粘着テープ。
【請求項5】
貼付面積10mm×10mmでのSUSに対する面剥離強度が0.01MPa以上であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の粘着テープ。
【請求項6】
貼付面積10mm×10mmでのSUSに対する面剥離強度が0.2MPa以下であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の粘着テープ。
【請求項7】
前記粘着剤層は、(メタ)アクリル系ポリマーを含有するアクリル粘着剤層であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の粘着テープ。
【請求項8】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、水酸基価が45mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項7記載の粘着テープ。
【請求項9】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度(Tg)が0℃以下である(メタ)アクリル酸エステル(a)に由来する構成単位を80重量%以上含有することを特徴とする請求項7又は8記載の粘着テープ。
【請求項10】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、炭素数12以上のアルキル基を有し、かつ、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度(Tg)が0℃以下である(メタ)アクリル酸エステル(a-1)に由来する構成単位を40重量%以上含有することを特徴とする請求項9記載の粘着テープ。
【請求項11】
前記炭素数12以上のアルキル基を有し、かつ、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度(Tg)が0℃以下である(メタ)アクリル酸エステル(a-1)は、ラウリル(メタ)アクリレートを含有することを特徴とする請求項10記載の粘着テープ。
【請求項12】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、前記ホモポリマーとしたときのガラス転移温度(Tg)が0℃以下である(メタ)アクリル酸エステル(a)に由来する構成単位を90重量%以上含有することを特徴とする請求項9記載の粘着テープ。
【請求項13】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、水酸基含有モノマーに由来する構造を含有することを特徴とする請求項7、8、9、10、11又は12記載の粘着テープ。
【請求項14】
前記粘着剤層は、光硬化型粘着剤層であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13記載の粘着テープ。
【請求項15】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、側鎖に炭素-炭素二重結合を含有することを特徴とする請求項7、8、9、10、11、12又は13記載の粘着テープ。
【請求項16】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、炭素-炭素二重結合当量が0.5meq/g以下であることを特徴とする請求項15記載の粘着テープ。
【請求項17】
部品を転写する工程において、前記部品を受け止めるために用いられることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16記載の粘着テープ。
【請求項18】
前記部品が半導体デバイスであることを特徴とする請求項17記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程において、粘着剤層上に配置された多数のチップ部品を駆動回路基板上に転写することがある。
例えば、マイクロLEDディスプレイは、画素を構成するチップの1つ1つが微細な発光ダイオード(LED、Light Emitting Diode)チップであり、このマイクロLEDチップが自発光して画像を表示する表示装置である。マイクロLEDディスプレイは、コントラストが高く、応答速度が速く、また、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等で使用されるカラーフィルターを必要としないこと等により薄型化も可能であることから、次世代の表示装置として注目されている。マイクロLEDディスプレイにおいては、多数のマイクロLEDチップが平面状に高密度で敷き詰められている。
【0003】
このようなマイクロLEDディスプレイ等の半導体デバイスの製造工程においては、例えば、粘着剤層上に多数のチップ部品が配置された転写用積層体を、駆動回路基板と対向させ、転写用積層体からチップ部品を剥離させて駆動回路基板と電気的な接続を行う(転写工程)。
【0004】
転写工程は、複数回行われることもある。即ち、最終的にチップ部品を駆動回路基板上に転写する前に、搬送したり処理を施したりするためにチップ部品を一旦キャリア材上に転写し、その後、キャリア材から別のキャリア材又は駆動回路基板上にチップ部品を再転写することが行われる。キャリア材として、例えば、特許文献1には、基材と、衝撃吸収層とを少なくとも備えた転写基板が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
キャリア材としては、一時的にチップ部品を保持する性能も必要とされることから、粘着剤層を有する粘着テープを用いることも検討されている。
しかしながら、キャリア材として従来の粘着テープを用いた場合、チップ部品を受け止める際に、チップ部品が粘着テープに貼りつかず、転写を良好に行えないことがあった。また、チップ部品を受け止めた後、別のキャリア材又は駆動回路基板上に再転写する際に、チップ部品の剥離不良が生じたり、チップ部品を剥離させることはできたとしてもチップ部品に粘着剤層の残渣が付着したりする問題もあった。
【0007】
本発明は、チップ部品を受け止める際にはチップ部品を良好に貼りつけさせることができ、チップ部品を再転写する際には優れた剥離性能を発揮し、チップ部品への糊残りを抑えることのできる粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示1は、少なくとも一層の基材と、少なくとも一層の粘着剤層とを有する粘着テープであって、前記粘着剤層は、周波数10Hz、-20℃でのせん断貯蔵弾性率G’が1MPa以下であり、前記粘着テープは、貼付面積10mm×10mmでのSUSに対する面剥離強度が0.5MPa以下である粘着テープである。
本開示2は、前記粘着剤層が、周波数10Hz、-20℃でのせん断貯蔵弾性率G’が0.3MPa以下である、本開示1の粘着テープである。
本開示3は、前記粘着剤層が、周波数10Hz、23℃でのせん断貯蔵弾性率G’が0.04MPa以下である、本開示1又は2の粘着テープである。
本開示4は、前記粘着剤層が、厚みが40μm以上である、本開示1、2又は3の粘着テープである。
本開示5は、貼付面積10mm×10mmでのSUSに対する面剥離強度が0.01MPa以上である、本開示1、2、3又は4の粘着テープである。
本開示6は、貼付面積10mm×10mmでのSUSに対する面剥離強度が0.2MPa以下である、本開示1、2、3、4又は5の粘着テープである。
本開示7は、前記粘着剤層が、(メタ)アクリル系ポリマーを含有するアクリル粘着剤層である、本開示1、2、3、4、5又は6の粘着テープである。
本開示8は、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、水酸基価が45mgKOH/g以下である、本開示7の粘着テープである。
本開示9は、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度(Tg)が0℃以下である(メタ)アクリル酸エステル(a)に由来する構成単位を80重量%以上含有する、本開示7又は8の粘着テープである。
本開示10は、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、炭素数12以上のアルキル基を有し、かつ、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度(Tg)が0℃以下である(メタ)アクリル酸エステル(a-1)に由来する構成単位を40重量%以上含有する、本開示9の粘着テープである。
本開示11は、前記炭素数12以上のアルキル基を有し、かつ、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度(Tg)が0℃以下である(メタ)アクリル酸エステル(a-1)が、ラウリル(メタ)アクリレートを含有する、本開示10の粘着テープである。
本開示12は、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、前記ホモポリマーとしたときのガラス転移温度(Tg)が0℃以下である(メタ)アクリル酸エステル(a)に由来する構成単位を90重量%以上含有する、本開示9の粘着テープである。
本開示13は、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、水酸基含有モノマーに由来する構造を含有する、本開示7、8、9、10、11又は12の粘着テープである。
本開示14は、前記粘着剤層が、光硬化型粘着剤層である、本開示1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13の粘着テープである。
本開示15は、前記(メタ)アクリル系ポリマーは、側鎖に炭素-炭素二重結合を含有する、本開示7、8、9、10、11、12又は13の粘着テープである。
本開示16は、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、炭素-炭素二重結合当量が0.5meq/g以下である、本開示15の粘着テープである。
本開示17は、部品を転写する工程において、前記部品を受け止めるために用いられる、本開示1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16の粘着テープである。
本開示18は、前記部品が半導体デバイスである、本開示17の粘着テープである。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、少なくとも一層の基材と、少なくとも一層の粘着剤層とを有する粘着テープにおいて、粘着剤層の低温でのせん断貯蔵弾性率G’と、特定の方法により測定した面剥離強度とをいずれも一定値以下に調整することで、キャリア材として有用な粘着テープが得られることを見出した。即ち、本発明者らは、このような粘着テープであれば、チップ部品を受け止める際にはチップ部品を良好に貼りつけさせることができ、チップ部品を再転写する際には優れた剥離性能を発揮し、チップ部品への糊残りを抑えることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
図1に、粘着剤層上に配置されたチップ部品を粘着テープ上に転写する工程の一例を模式的に示す断面図を示す。
図1に示す工程においては、基材5上に積層された粘着剤層4上にチップ部品1が配置されており、例えばレーザー光を照射する等の方法により、粘着剤層4からチップ部品1を剥離させる。粘着テープ8は、粘着剤層4から剥離されたチップ部品1を受け止めるとともに、その後、別のキャリア材又は駆動回路基板上にチップ部品1を再転写するためのキャリア材である。粘着テープ8は、基材3と、粘着剤層2とを有している。
なお、基材5と粘着剤層4との積層体9は、例えば、基材5が樹脂フィルム等の基材であり、粘着剤層4が粘着剤層のみからなる片面粘着テープであってもよいし、基材5がガラス基板等の支持体であり、粘着剤層4が両面粘着テープ(基材を有していてもよい)である、支持体と両面粘着テープとの積層体であってもよい。
【0011】
本発明の粘着テープは、少なくとも一層の基材と、少なくとも一層の粘着剤層とを有する粘着テープである。
上記基材を有することで、本発明の粘着テープは、適度なコシがあって、取り扱い性に優れる粘着テープとなり、チップ部品を受け止めたり再転写したりすることのできる、キャリア材として有用な粘着テープとなる。
【0012】
上記基材は特に限定されず、上記基材の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂、液晶ポリマー等が挙げられる。なかでも、耐熱性に優れることから、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましい。
【0013】
上記基材の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は4μm、好ましい上限は188μmである。上記基材の厚みが上記範囲内であることにより、適度なコシがあって、取り扱い性に優れる粘着テープとすることができる。上記基材の厚みのより好ましい下限は50μm、より好ましい上限は125μmであり、更に好ましい下限は75μm、更に好ましい上限は100μmである。
【0014】
上記粘着剤層は、周波数10Hz、-20℃でのせん断貯蔵弾性率G’の上限が1MPaである。
粘着テープによるチップ部品の受け止めは、通常、高速で行われる。このような高速で力を与えた場合のせん断貯蔵弾性率G’は、温度速度換算則にもとづくと、低温でのせん断貯蔵弾性率G’と関連性が高いことから、本発明者らは、上記粘着剤層の低温でのせん断貯蔵弾性率G’について検討した。上記周波数10Hz、-20℃でのせん断貯蔵弾性率G’が1MPa以下であれば、上記粘着剤層のチップ部品を受け止める際のクッション性が向上し、粘着テープは、チップ部品を受け止める際にチップ部品を良好に貼りつけさせることができる。上記周波数10Hz、-20℃でのせん断貯蔵弾性率G’の好ましい上限は0.8MPa、より好ましい上限は0.5MPa、更に好ましい上限は0.3MPaである。
上記周波数10Hz、-20℃でのせん断貯蔵弾性率G’の下限は特に限定されないが、チップ部品を再転写する際の剥離性能をより向上させる観点から、好ましい下限は0.05MPa、より好ましい下限は0.1MPaである。
【0015】
上記粘着剤層の常温でのせん断貯蔵弾性率G’は特に限定されないが、周波数10Hz、23℃でのせん断貯蔵弾性率G’の好ましい上限は0.1MPaである。上記周波数10Hz、23℃でのせん断貯蔵弾性率G’が0.1MPa以下であれば、粘着テープは、チップ部品を受け止める際にチップ部品をより良好に貼りつけさせることができる。上記周波数10Hz、23℃でのせん断貯蔵弾性率G’のより好ましい上限は0.04MPaである。
上記周波数10Hz、23℃でのせん断貯蔵弾性率G’の下限は特に限定されないが、チップ部品を再転写する際の剥離性能をより向上させる観点から、好ましい下限は0.01MPa、より好ましい下限は0.015MPaである。
【0016】
なお、粘着剤層の周波数10Hzにおける-20℃及び23℃でのせん断貯蔵弾性率G’は、例えば、粘弾性スペクトロメーター(アイティー計測制御社製、DVA-200)等を用い、単純昇温モードの昇温速度5℃/分、10Hzの条件で-40~140℃の動的粘弾性スペクトルを測定した時の各温度における貯蔵弾性率として得ることができる。なお、粘着剤層が硬化型粘着剤層である場合、粘着剤層のせん断貯蔵弾性率G’とは、硬化前の粘着剤層について測定したせん断貯蔵弾性率G’を意味する。
なお、上記粘着剤層の厚みが100μm未満の場合は、上記粘着剤層を重ね合わせることにより、厚みが100μm以上となるように測定用の粘着剤層を形成する。得られた測定用の粘着剤層について、上記の通りせん断貯蔵弾性率G’の測定を行う。
【0017】
上記粘着テープは、貼付面積10mm×10mmでのSUSに対する面剥離強度の上限が0.5MPaである。
上記面剥離強度が0.5MPa以下であれば、上記粘着テープの粘着力が高くなりすぎないことにより、チップ部品を再転写する際に優れた剥離性能を発揮することができ、チップ部品への糊残りを抑えることができる。上記面剥離強度の好ましい上限は0.4MPa、より好ましい上限は0.2MPaである。
上記面剥離強度の下限は特に限定されないが、チップ部品の保持性能をより向上させる観点から、好ましい下限は0.005MPa、より好ましい下限は0.01MPaである。
【0018】
図2に、粘着テープの面剥離強度の測定方法を模式的に示す図を示す。
まず、粘着テープ8を10mm×10mmに裁断する。裁断した粘着テープ8の粘着剤層を、SUS製治具12(SUS304)に貼り付け、0.3MPaで10秒圧着する。SUS製治具12に貼り付けた粘着テープ8の背面に、測定用両面粘着テープ11(積水化学工業社製、製品名#560、又はその同等品)の一方の面を貼り付ける。測定用両面粘着テープ11の他方の面を厚み5mmのガラス板10に貼り付ける。その後、粘着テープ8の粘着剤層が硬化型粘着剤層である場合には、例えば、波長365nmのUVランプを用いて、強度10mW/cm
2、照射量2500mJ/cm
2の条件でガラス板10側から紫外線を照射すること等により、粘着剤層を硬化させる。即ち、粘着剤層が硬化型粘着剤層である場合、粘着テープの面剥離強度とは、粘着剤層硬化後の粘着テープについて測定した面剥離強度を意味する。その後、引張試験機(島津製作所社製、AGS-X、又はその同等品)にガラス板10を固定する。室温23℃、相対湿度50%の環境下、引張試験機(島津製作所社製、AGS-X、又はその同等品)を用いて剥離速度200mm/minで垂直方向(図中、矢印方向)にSUS製治具12を引っ張る引張試験を行い、面剥離強度を測定する。なお、面剥離強度は、最大の剥離強度を意味する。
なお、粘着テープが両面粘着テープである場合は、面剥離強度を測定する面と反対側の面の粘着剤層をガラス板に貼り付け固定する以外は同様にして、引張試験機により面剥離強度の測定を行う。このとき、粘着テープの面剥離強度を測定する面と反対側の面の粘着剤層をガラス板に直接貼り付け固定してもよく、測定用両面粘着テープ11を介して固定してもよい。
【0019】
上記粘着剤層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は30μm、好ましい上限は200μmである。上記厚みが上記範囲内であれば、上記粘着剤層のチップ部品を受け止める際のクッション性がより向上し、粘着テープは、チップ部品を受け止める際にチップ部品をより良好に貼りつけさせることができる。上記厚みのより好ましい下限は40μm、より好ましい上限は150μmであり、更に好ましい下限は70μm、更に好ましい上限は100μmである。
【0020】
上記粘着剤層のせん断貯蔵弾性率G’及び上記粘着テープの面剥離強度を上記範囲に調整する方法は特に限定されず、例えば、上記粘着剤層に含まれるベースポリマーの組成、分子量(重量平均分子量(Mw))、水酸基価、二重結合当量等を調整する方法、上記粘着剤層の架橋度(ゲル分率)を調整する方法等が挙げられる。
【0021】
上記粘着剤層は特に限定されず、例えば、アクリル粘着剤層、ゴム系粘着剤層、ウレタン粘着剤層、シリコーン系粘着剤層等が挙げられる。なかでも、分子量、架橋度等を調整しやすく、耐熱性、耐候性、コスト等に優れる観点から、(メタ)アクリル系ポリマーを含有するアクリル粘着剤層が好ましい。
【0022】
上記(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル系モノマーに由来する構成単位を含有するポリマーである。
上記(メタ)アクリル系モノマーは特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル系モノマーは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0023】
なかでも、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度(Tg)が0℃以下である(メタ)アクリル酸エステル(a)(以下、単に「(メタ)アクリル酸エステル(a)」ともいう。)が好ましい。即ち、上記(メタ)アクリル系ポリマーは、上記(メタ)アクリル酸エステル(a)に由来する構成単位を含有することが好ましい。
上記(メタ)アクリル系ポリマーがこのような比較的柔軟な構成単位を含有することで、上記粘着剤層のせん断貯蔵弾性率G’及び上記粘着テープの面剥離強度が上記範囲に調整されやすくなり、粘着テープは、チップ部品を再転写する際の剥離性能がより高くなり、チップ部品を受け止める際にチップ部品をより良好に貼りつけさせることができる。特に、上記(メタ)アクリル系ポリマーがこのような比較的柔軟な構成単位を含有し、かつ、上記粘着剤層の架橋度(ゲル分率)が適切な範囲に調整されていることで、上記粘着剤層のせん断貯蔵弾性率G’及び上記粘着テープの面剥離強度がより好ましい範囲に調整されやすくなる。
【0024】
上記(メタ)アクリル酸エステル(a)のガラス転移温度(Tg)は0℃以下であれば特に限定されないが、チップ部品を再転写する際の剥離性能が更に高くなり、チップ部品を受け止める際にチップ部品を更に良好に貼りつけさせることができることから、好ましい下限は-80℃、好ましい上限は-5℃である。上記ガラス転移温度(Tg)のより好ましい下限は-70℃、より好ましい上限は-10℃である。
なお、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度(Tg)は、重量平均分子量(Mw)が5000~100万程度又は重合度が50~1万程度のホモポリマーについて、例えば、示差走査熱量測定(ティー・エイ・インスツルメント社製)等を用いて測定することができる。
【0025】
上記(メタ)アクリル酸エステル(a)は、炭素数12以上のアルキル基を有し、かつ、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度(Tg)が0℃以下である(メタ)アクリル酸エステル(a-1)(以下、単に「(メタ)アクリル酸エステル(a-1)」ともいう。)を含有することが好ましい。また、上記(メタ)アクリル酸エステル(a)は、炭素数7以上、12未満のアルキル基を有し、かつ、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度(Tg)が0℃以下である(メタ)アクリル酸エステル(a-2)(以下、単に「(メタ)アクリル酸エステル(a-2)」ともいう。)を含有することも好ましい。
上記(メタ)アクリル系ポリマーがこれらの比較的炭素鎖の長いアルキル基を有する構成単位を含有することで、上記粘着剤層のせん断貯蔵弾性率G’及び上記粘着テープの面剥離強度がより好ましい範囲に調整されやすくなる。
なかでも、上記粘着剤層のせん断貯蔵弾性率G’及び上記粘着テープの面剥離強度が更に好ましい範囲に調整されやすくなることから、上記(メタ)アクリル酸エステル(a)は、上記(メタ)アクリル酸エステル(a-1)及び上記(メタ)アクリル酸エステル(a-2)の両方を含有することがより好ましい。
【0026】
上記(メタ)アクリル酸エステル(a-1)は特に限定されず、上述した(メタ)アクリル系モノマーのなかでは、例えば、ラウリルアクリレート(ホモポリマーとしたときのTgが-23℃)、ラウリルメタクリレート(ホモポリマーとしたときのTgが-65℃)等が挙げられる。更に、イソミリスチルアクリレート(ホモポリマーとしたときのTgが-56℃)、イソステアリルアクリレート(ホモポリマーとしたときのTgが-18℃)等が挙げられる。なかでも、上記粘着剤層のせん断貯蔵弾性率G’及び上記粘着テープの面剥離強度がより好ましい範囲に調整されやすくなることから、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート及びイソステアリルアクリレートからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。更に、ラウリル(メタ)アクリレートがより好ましく、ラウリルアクリレートが更に好ましい。
【0027】
上記(メタ)アクリル酸エステル(a-2)は特に限定されず、例えば、ヘプチルアクリレート(ホモポリマーとしたときのTgが-68℃)、2-エチルへキシルアクリレート(ホモポリマーとしたときのTgが-70℃)、オクチルアクリレート(ホモポリマーとしたときのTgが-65℃)等が挙げられる。更に、イソノニルアクリレート(ホモポリマーとしたときのTgが-58℃)、イソデシルアクリレート(ホモポリマーとしたときのTgが-62℃)等が挙げられる。なかでも、上記粘着剤層のせん断貯蔵弾性率G’及び上記粘着テープの面剥離強度がより好ましい範囲に調整されやすくなることから、ヘプチルアクリレート及び2-エチルへキシルアクリレートからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、2-エチルへキシルアクリレートがより好ましい。
【0028】
上記(メタ)アクリル系ポリマーが上記(メタ)アクリル酸エステル(a)を含有する場合、上記(メタ)アクリル系ポリマー中、上記(メタ)アクリル酸エステル(a)に由来する構成単位の含有量は特に限定されないが、好ましい下限が40重量%である。上記構成単位の含有量が40重量%以上であれば、上記粘着剤層のせん断貯蔵弾性率G’及び上記粘着テープの面剥離強度がより好ましい範囲に調整されやすくなり、粘着テープは、チップ部品を再転写する際の剥離性能がより高くなり、チップ部品を受け止める際にチップ部品をより良好に貼りつけさせることができる。上記構成単位の含有量のより好ましい下限は45重量%、更に好ましい下限は80重量%、更により好ましい下限は90重量%である。
上記構成単位の含有量の上限は特に限定されないが、好ましい上限は98重量%、より好ましい上限は95重量%である。
【0029】
更に、上記(メタ)アクリル酸エステル(a)が上記(メタ)アクリル酸エステル(a-1)を含有する場合、上記(メタ)アクリル系ポリマー中、上記(メタ)アクリル酸エステル(a-1)に由来する構成単位の含有量は特に限定されないが、好ましい下限が40重量%である。上記構成単位の含有量が40重量%以上であれば、上記粘着剤層のせん断貯蔵弾性率G’及び上記粘着テープの面剥離強度がより好ましい範囲に調整されやすくなり、粘着テープは、チップ部品を再転写する際の剥離性能がより高くなり、チップ部品を受け止める際にチップ部品をより良好に貼りつけさせることができる。上記構成単位の含有量のより好ましい下限は45重量%である。
上記構成単位の含有量の上限は特に限定されないが、多すぎると側鎖に存在する炭素鎖の長いアルキル基(炭素数12以上のアルキル基)が低温において結晶化し、上記周波数10Hz、-20℃でのせん断貯蔵弾性率G’が高くなりすぎることから、好ましい上限は80重量%、より好ましい上限は70重量%である。
【0030】
上記(メタ)アクリル系ポリマーは、更に、架橋性官能基含有モノマーに由来する構造を含有することが好ましい。
上記(メタ)アクリル系ポリマーが上記架橋性官能基含有モノマーに由来する構造を含有することで、架橋性官能基の架橋によって上記粘着剤層の凝集力を調整することができるため、上記粘着剤層の粘着力及びせん断貯蔵弾性率G’を調整しやすくなる。これにより、上記粘着剤層のせん断貯蔵弾性率G’及び上記粘着テープの面剥離強度がより好ましい範囲に調整されやすくなり、粘着テープは、チップ部品を再転写する際の剥離性能がより高くなり、チップ部品を受け止める際にチップ部品をより良好に貼り付けさせることができる。上記架橋性官能基は架橋されていても架橋されていなくてもよいが、架橋されていることがより好ましい。ただし、架橋されていない構造のままであったとしても、官能基間の相互作用により上記粘着剤層の凝集力が高まる。
【0031】
上記架橋性官能基含有モノマーとしては、例えば、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、二重結合、三重結合、アミノ基、アミド基、ニトリル基等を含有するモノマーが挙げられる。これらの架橋性官能基含有モノマーは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、カルボキシル基含有モノマー及び水酸基含有モノマーからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。イソシアネート系架橋剤による架橋によって上記粘着剤層のせん断貯蔵弾性率G’が調整されやすいことから、水酸基含有モノマーがより好ましい。
なお、上記架橋性官能基含有モノマーは、更に、アルキル基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、カーボネート基、アミド基、ウレタン基等を含んでいてもよい。
【0032】
上記カルボキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル酸系モノマーが挙げられる。上記水酸基含有モノマーとしては、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記エポキシ基含有モノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記二重結合含有モノマーとしては、アリル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記三重結合含有モノマーとしては、プロパルギル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記アミド基含有モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。なかでも、上記粘着剤層のせん断貯蔵弾性率G’を上記範囲に調整しやすいことから、4-ヒドロキシブチルアクリレートがより好ましい。
【0033】
上記(メタ)アクリル系ポリマー中、上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構造の含有量は特に限定されないが、上記粘着剤層の粘着力及びせん断貯蔵弾性率G’を調整する観点から、上記構造の含有量の好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は30重量%である。上記構造の含有量のより好ましい下限は0.5重量%、より好ましい上限は25重量%である。
また、上記(メタ)アクリル系ポリマー中、上記水酸基含有モノマーに由来する構造の含有量は特に限定されないが、上記粘着剤層の粘着力及びせん断貯蔵弾性率G’を調整する観点から、上記構造の含有量の好ましい下限は1重量%、好ましい上限は20重量%である。上記構造の含有量のより好ましい下限は3重量%、より好ましい上限は10重量%である。
【0034】
上記(メタ)アクリル系ポリマーは、側鎖に炭素-炭素二重結合を含有していてもよい。なお、側鎖とは、ポリマーにおける最も長い鎖を主鎖としたとき、該主鎖から伸びた分岐構造部分を意味する。
上記(メタ)アクリル系ポリマーが側鎖に炭素-炭素二重結合を含有することで、上記粘着剤層を、例えば、加熱、光照射等により硬化して粘着力が大きく低下する硬化型粘着剤層とすることができる。このような場合、上記粘着剤層のせん断貯蔵弾性率G’及び上記粘着テープの面剥離強度がより好ましい範囲に調整されやすくなり、粘着テープは、チップ部品を再転写する際の剥離性能がより高くなり、チップ部品を受け止める際にチップ部品をより良好に貼り付けさせることができる。
上記硬化型粘着剤層としては、例えば、熱硬化型粘着剤層、光硬化型粘着剤層等が挙げられるが、貯蔵安定性の観点から、光硬化型粘着剤層が好ましい。
【0035】
上記(メタ)アクリル系ポリマーを得るには、上記(メタ)アクリル系モノマー、上記架橋性官能基含有モノマー等を含むモノマー混合物を、重合開始剤の存在下にてラジカル反応させ、共重合すればよい。
上記アクリル系ポリマーが側鎖に炭素-炭素二重結合を含有する場合、上記アクリル系ポリマーの側鎖に炭素-炭素二重結合を導入するには、例えば、上記架橋性官能基含有モノマーとして上記二重結合含有モノマーを共重合すればよい。また、上記架橋性官能基含有モノマーとして例えば上記カルボキシル基含有モノマー、上記水酸基含有モノマー等を共重合した後、得られたポリマーに対して、該ポリマー中のカルボキシル基、水酸基等と反応可能な官能基と、二重結合とを含有する化合物(以下、「官能基含有不飽和化合物」ともいう。)を反応させてもよい。上記官能基含有不飽和化合物は特に限定されず、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)等のイソシアネート基含有不飽和化合物等が挙げられる。
上記モノマー混合物をラジカル反応させる方法、即ち、重合方法としては、従来公知の方法が用いられ、例えば、溶液重合(沸点重合又は定温重合)、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられる。
【0036】
上記(メタ)アクリル系ポリマーの水酸基価は特に限定されないが、好ましい上限が45mgKOH/gである。上記水酸基価が45mgKOH/g以下であれば、上記粘着剤層の粘着力及びせん断貯蔵弾性率G’を調整しやすくなる。これにより、上記粘着剤層のせん断貯蔵弾性率G’及び上記粘着テープの面剥離強度がより好ましい範囲に調整されやすくなり、粘着テープは、チップ部品を再転写する際の剥離性能がより高くなり、チップ部品を受け止める際にチップ部品をより良好に貼り付けさせることができる。上記水酸基価のより好ましい上限は20mgKOH/gである。
上記水酸基価の下限は特に限定されないが、上記粘着剤層の粘着力及び上記粘着テープのせん断貯蔵弾性率G’を調整する観点から、好ましい下限は1mgKOH/gである。
なお、(メタ)アクリル系ポリマーの水酸基価とは、一定量のサンプル中の水酸基(ヒドロキシ基)の含有量を表す指標である。(メタ)アクリル系ポリマーの水酸基価は、(メタ)アクリル系ポリマー1gをアセチル化した後、中和滴定により水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070:1992に規定する電位差滴定法に基づいて測定することで算出できる。
【0037】
上記(メタ)アクリル系ポリマーの炭素-炭素二重結合当量は特に限定されないが、多すぎると上記周波数10Hz、-20℃でのせん断貯蔵弾性率G’が高くなりすぎることから、好ましい上限は0.5meq/gである。上記炭素-炭素二重結合当量が0.5meq/g以下であれば、上記粘着剤層のせん断貯蔵弾性率G’及び上記粘着テープの面剥離強度がより好ましい範囲に調整されやすくなり、粘着テープは、チップ部品を再転写する際の剥離性能がより高くなり、チップ部品を受け止める際にチップ部品をより良好に貼り付けさせることができる。上記炭素-炭素二重結合当量のより好ましい上限は0.3meq/gである。
上記炭素-炭素二重結合当量の下限は特に限定されず、0meq/gであってもよい。
なお、(メタ)アクリル系ポリマーの炭素-炭素二重結合当量とは、(メタ)アクリル系ポリマー1g当たりの二重結合を有する不飽和化合物が有する炭素-炭素二重結合のミリ当量(meq/g)であって、原料の仕込み量から算出される計算値である。具体的には、炭素-炭素二重結合の当量E(meq/g)は、(メタ)アクリル系ポリマーの質量Wa(g)、(メタ)アクリル系ポリマーに含有されている二重結合を有する不飽和化合物の物質量nb(モル)及び二重結合を有する不飽和化合物1分子中に含まれる炭素-炭素二重結合の数N(個)から、下記式により算出することができる。
E=nb×N×1000/Wa
【0038】
上記(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、好ましい上限が100万である。上記重量平均分子量(Mw)が100万以下であれば、上記せん断貯蔵弾性率G’及び面剥離強度がより好ましい範囲に調整されやすくなり、粘着テープは、チップ部品を再転写する際の剥離性能がより高くなり、チップ部品を受け止める際にチップ部品をより良好に貼りつけさせることができる。上記重量平均分子量(Mw)のより好ましい上限は95万、更に好ましい上限は90万である。
上記重量平均分子量(Mw)の下限は特に限定されないが、上記粘着剤層の粘着力、形状保持性等の観点から、好ましい下限は40万、より好ましい下限は50万である。
なお、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、例えば、GPC(Gel Permeation Chromatography:ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法により標準ポリスチレン換算にて求めることができる。より具体的には、例えば、測定機器としてWaters社製「2690 Separations Module」、カラムとして昭和電工社製「GPC KF-806L」、溶媒として酢酸エチルを用い、サンプル流量1mL/min、カラム温度40℃の条件で測定することができる。
【0039】
上記粘着剤層は、粘着付与樹脂を含有してもよい。
上記粘着付与樹脂として、例えば、ロジンエステル系樹脂、水添ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、クマロンインデン系樹脂、脂環族飽和炭化水素系樹脂、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5-C9共重合系石油樹脂等が挙げられる。これらの粘着付与樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
上記粘着付与樹脂の含有量は特に限定されないが、チップ部品を再転写する際の剥離性能をより高める観点から、上記粘着付与樹脂は含有しないことが好ましい。上記粘着付与樹脂を含有する場合は、上記粘着剤層の主成分となる樹脂(例えば、(メタ)アクリル系ポリマー)100重量部に対する好ましい上限は10重量部である。上記粘着付与樹脂の含有量が10重量部以下であると、上記粘着剤層は、チップ部品を再転写する際の剥離性能がより高くなる。
【0041】
上記粘着剤層は、架橋剤を含有することにより上記粘着剤層を構成する樹脂(例えば、上記(メタ)アクリル系ポリマー、上記粘着付与樹脂等)の主鎖間に架橋構造が形成されていることが好ましい。
上記架橋剤は特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート型架橋剤等が挙げられる。なかでも、上記(メタ)アクリル系ポリマーが上記水酸基含有モノマーに由来する構成単位を含有する場合、水酸基との架橋によって上記粘着剤層のせん断貯蔵弾性率G’が調整されやすいことから、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
上記架橋剤の含有量は、上記粘着剤層の主成分となる樹脂(例えば、上記(メタ)アクリル系ポリマー)100重量部に対して0.01~10重量部が好ましく、0.1~7重量部がより好ましい。
【0042】
上記粘着剤層は、硬化型粘着剤層である場合、更に、熱重合開始剤、光重合開始剤等の重合開始剤を含有してもよい。
上記重合開始剤の含有量は特に限定されないが、上記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して0.01重量部以上、5重量部以下が好ましく、0.1重量部以上、3重量部以下がより好ましい。
【0043】
上記粘着剤層は、更に、ヒュームドシリカ等の無機フィラーを含有してもよい。上記無機フィラーを配合することにより、上記粘着剤層の凝集力を高めることができる。
【0044】
上記粘着剤層は、更に、可塑剤、樹脂、界面活性剤、ワックス、微粒子充填剤等の公知の添加剤を含有してもよい。これらの添加剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0045】
上記粘着剤層のゲル分率は特に限定されないが、好ましい下限が50重量%、好ましい上限が95重量%である。上記ゲル分率が50重量%以上であれば、上記粘着剤層の粘着力が比較的低い範囲に調整され、上記粘着テープの面剥離強度を調整しやすくなる。その結果、粘着テープは、チップ部品を再転写する際の剥離性能がより高くなる。上記ゲル分率が95重量%以下であれば、上記粘着剤層のせん断貯蔵弾性率G’を調整しやすくなる。その結果、粘着テープは、チップ部品を受け止める際にチップ部品をより良好に貼りつけさせることができる。上記ゲル分率のより好ましい下限は80重量%、より好ましい上限は94重量%であり、更に好ましい下限は85重量%、更に好ましい上限は93重量%である。
なお、粘着剤層のゲル分率は、以下の方法により測定することができる。
粘着テープから粘着剤層(粘着剤組成物)のみを0.1g取り出し、酢酸エチル50mL中に浸漬し、振とう機で温度23度、200rpmの条件で24時間振とうする。振とう後、金属メッシュ(目開き#200メッシュ)を用いて、酢酸エチルと酢酸エチルを吸収し膨潤した粘着剤組成物を分離する。分離後の粘着剤組成物を110℃の条件下で1時間乾燥させる。乾燥後の金属メッシュを含む粘着剤組成物の重量を測定し、下記式を用いて粘着剤層のゲル分率を算出する。なお、粘着剤層が硬化型粘着剤層である場合、粘着剤層のゲル分率とは、硬化前の粘着剤層について測定したゲル分率を意味する。
ゲル分率(重量%)=100×(W1-W2)/W0
(W0:初期粘着剤組成物重量、W1:乾燥後の金属メッシュを含む粘着剤組成物重量、W2:金属メッシュの初期重量)
ただし、上記粘着剤組成物が酢酸エチルで溶けきらない場合は、酢酸エチルの代わりにトルエンやヘキサン、水等の溶媒を用いる。具体的には粘着剤組成物が、例えば、スチレン系エラストマーを含有する場合はトルエンやヘキサンを用い、ポリビニルアルコールを含有する場合は90℃の熱水を用いる。
【0046】
本発明の粘着テープは、基材の片面のみに粘着剤層を有する片面粘着テープであってもよいし、基材の両面に粘着剤層を有する両面粘着テープであってもよい。
また、支持体と本発明の粘着テープとを貼り付けることで取り扱い性が向上するため、本発明の粘着テープは、両面粘着テープであることが好ましく、基材の両面に粘着剤層を有する両面粘着テープであることがより好ましい。上記支持体は特に限定されず、例えば、ガラス、石英基板、金属板等が挙げられる。
本発明の粘着テープが基材の両面に粘着剤層を有する両面粘着テープである場合、両面の粘着剤層が上述したような粘着剤層であってもよいし、一方の面が上述したような粘着剤層であり、他方の面(支持体等と接する面)が他の粘着剤層であってもよい。上記他の粘着剤層は特に限定されず、従来公知の粘着剤層を用いることができる。
【0047】
本発明の粘着テープの用途は特に限定されないが、部品を転写する工程において、該部品を受け止めるために用いられることが好ましい。
上記部品は特に限定されないが、半導体デバイスであることが好ましい。上記半導体デバイスとして、例えば、マイクロLEDチップ、イメージセンサーの光学チップ等のチップ部品が挙げられる。なかでも、マイクロLEDチップが好ましい。
本発明の粘着テープは、
図1に示すような粘着剤層上に配置されたチップ部品を粘着テープ上に転写する工程において、チップ部品を受け止めるための粘着テープとして特に好適に用いられる。チップ部品を本発明の粘着テープ上に転写する方法は特に限定されず、例えばレーザー光を照射する等の方法を採用することができる。チップ部品を本発明の粘着テープから別のキャリア材又は駆動回路基板上に再転写する方法は特に限定されず、例えば、粘着性を有する別のキャリア材を直接ラミネートし、剥離して転写する方法や、レーザー光を照射する等の方法を用いることができる。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、チップ部品を受け止める際にはチップ部品を良好に貼りつけさせることができ、チップ部品を再転写する際には優れた剥離性能を発揮し、チップ部品への糊残りを抑えることのできる粘着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】粘着剤層上に配置されたチップ部品を粘着テープ上に転写する工程の一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】粘着テープの面剥離強度の測定方法を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0051】
(実施例1)
(1)(メタ)アクリル系ポリマーの調製
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器に酢酸エチル52重量部を入れて、窒素置換した後、反応器を加熱して還流を開始した。酢酸エチルが沸騰してから、30分後に重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.08重量部を投入した。ここに2-エチルヘキシルアクリレート94.7重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート5重量部及びアクリル酸0.3重量部を1時間30分かけて、均等かつ徐々に滴下し反応させた。滴下終了30分後にアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を添加し、更に5時間重合反応させ、反応器内に酢酸エチルを加えて希釈しながら冷却することにより、(メタ)アクリル系ポリマー(水酸基価24.2mgKOH/g、二重結合当量0meq/g)の溶液を得た。
得られた(メタ)アクリル系ポリマーについて、測定機器としてWaters社製「2690 Separations Module」、カラムとして昭和電工社製「GPC KF-806L」、溶媒として酢酸エチルを用い、サンプル流量1mL/min、カラム温度40℃の条件で重量平均分子量を測定した。重量平均分子量は80万であった。
【0052】
(2)粘着テープの製造
得られた(メタ)アクリル系ポリマーの溶液に、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤としてコロネートL-45(東ソー社製)を固形分が1.8重量部となるように加えて更に充分に撹拌し、粘着剤溶液を得た。得られた粘着剤溶液を、乾燥皮膜の厚さが40μmになるようにアプリケーターを用いて基材としての厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗工し、110℃で3分間乾燥させることで粘着テープを得た。
【0053】
(3)ゲル分率の測定
粘着テープから粘着剤層(粘着剤組成物)のみを0.1g取り出し、酢酸エチル50mL中に浸漬し、振とう機で温度23度、200rpmの条件で24時間振とうした。振とう後、金属メッシュ(目開き#200メッシュ)を用いて、酢酸エチルと酢酸エチルを吸収し膨潤した粘着剤組成物を分離した。分離後の粘着剤組成物を110℃の条件下で1時間乾燥させた。乾燥後の金属メッシュを含む粘着剤組成物の重量を測定し、下記式を用いて粘着剤層のゲル分率を算出した。なお、粘着剤層が硬化型粘着剤層である場合、粘着剤層のゲル分率とは、硬化前の粘着剤層について測定したゲル分率を意味する。
ゲル分率(重量%)=100×(W1-W2)/W0
(W0:初期粘着剤組成物重量、W1:乾燥後の金属メッシュを含む粘着剤組成物重量、W2:金属メッシュの初期重量)
【0054】
(4)せん断貯蔵弾性率G’の測定
粘着剤層について、粘弾性スペクトロメーター(アイティー計測制御社製、DVA-200)を用い、単純昇温モードの昇温速度5℃/分、10Hzの条件で-40~140℃の動的粘弾性スペクトルを測定した。周波数10Hzにおける-20℃及び23℃でのせん断貯蔵弾性率G’を求めた。なお、粘着剤層が硬化型粘着剤層である場合、粘着剤層のせん断貯蔵弾性率G’とは、硬化前の粘着剤層について測定したせん断貯蔵弾性率G’を意味する。
【0055】
(5)面剥離強度(貼付面積10mm×10mm、対SUS)の測定
図2に、粘着テープの面剥離強度の測定方法を模式的に示す図を示す。
まず、粘着テープ8を10mm×10mmに裁断した。裁断した粘着テープ8の粘着剤層を、SUS製治具12(SUS304)に貼り付け、0.3MPaで10秒圧着した。SUS製治具12に貼り付けた粘着テープ8の背面に、測定用両面粘着テープ11(積水化学工業社製、製品名#560)の一方の面を貼り付けた。測定用両面粘着テープ11の他方の面を厚み5mmのガラス板10に貼り付けた。その後、引張試験機(島津製作所社製、AGS-X)にガラス板10を固定した。なお、粘着テープ8の紫外線照射後の面剥離強度を測定する場合には、引張試験機にガラス板10を固定する前に、波長365nmのUVランプを用いて、強度10mW/cm
2、照射量2500mJ/cm
2の条件でガラス板10側から粘着テープ8の粘着剤層へ紫外線を照射することにより、粘着剤層を硬化させた。室温23℃、相対湿度50%の環境下、引張試験機(島津製作所社製、AGS-X)を用いて剥離速度200mm/minで垂直方向(図中、矢印方向)にSUS製治具12を引っ張る引張試験を行い、粘着テープの面剥離強度を測定した。なお、面剥離強度は、最大の剥離強度を意味する。
【0056】
(実施例2~9、13~16、比較例1~3、5)
(メタ)アクリル系ポリマーの組成及び重量平均分子量、架橋剤の種類及び量、粘着剤層の厚み等を表1~2に示したとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、粘着テープを得た。
架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤であるコロネートHX(東ソー社製)、エポキシ系架橋剤であるテトラッドC(三菱ガス化学社製)も用いた。
【0057】
(実施例10~12、比較例4、6、7)
(メタ)アクリル系ポリマーの組成及び重量平均分子量等を表1~2に示したとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、(メタ)アクリル系ポリマーの溶液を得た。
得られた(メタ)アクリル系ポリマーを含む溶液の樹脂固形分100重量部に対して、イソシアネート基含有不飽和化合物として、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)を、表1~2に示した量で添加し、60℃で2時間かけて付加反応させることで、側鎖に炭素-炭素二重結合を含有する(メタ)アクリル系ポリマーの溶液を得た。
その後、架橋剤の種類及び量、粘着剤層の厚み等を表1~2に示したとおりに変更し、光重合開始剤であるomnirad651(IGM Resins B.V.社製)を表1~2に示した量で添加したこと以外は実施例1と同様にして、粘着テープを得た。
【0058】
<評価>
実施例及び比較例で得られた粘着テープについて下記の評価を行った。結果を表1~2に示した。
【0059】
(1)チップ部品の転写性能(チップ部品の貼りつき)の評価
得られた粘着テープとは別に、試験用片面粘着テープを用意した。
Siチップ(500μm×500μm角、厚み50μm)が10個配列されたウエハのSiチップ側の面に、試験用片面粘着テープを貼り合わせた。その後、ウエハを剥離することで、Siチップを試験用片面粘着テープ上へ配置した。
Siチップが配置された試験用片面粘着テープと、実施例又は比較例で得られた粘着テープとを対向させ、半導体固体レーザーを用いて、出力4W、4KHzの波長365nmのレーザー光を試験用片面粘着テープの基材側から各Siチップに照射して、Siチップを剥離させ、粘着テープ上に転写した。粘着テープがSiチップを受け止めた際、Siチップが10個粘着テープに貼りついた場合を「◎」、8~9個貼りついた場合を「〇」、貼りついたSiチップが7個以下であった場合を「×」としてチップ部品の転写性能を評価した。
【0060】
(2)再転写性能、及び、再転写時の糊残り
Siチップ(500μm×500μm角、厚み50μm)が10個配列されたウエハのSiチップ側の面に、得られた粘着テープを貼り合わせた。その後、ウエハを剥離することで、Siチップを粘着テープ上へ配置した。粘着剤層が硬化型粘着剤層(光硬化型粘着剤層)である実施例10~12、比較例4、6、7では、波長365nmのUVランプを用いて、強度10mW/cm2、照射量2500mJ/cm2の条件で基材側から紫外線を照射することにより、粘着剤層を硬化させた。
Siチップが配置された粘着テープと、プロテクトテープ(6312C、積水化学工業社製)の粘着面とを対向させ、2kgローラーで300mm/minの速度で圧着することでSiチップをプロテクトテープに圧着し、その後、プロテクトテープを剥離することで粘着テープからSiチップを剥離させ、Siチップをプロテクトテープ上に転写した。粘着テープからプロテクトテープ上にSiチップを10個配置できた場合を「◎」、Siチップを8~9個配置できた場合を「〇」、配置できたSiチップが7個以下であった場合を「×」として再転写性能を評価した。
また、粘着テープから剥離したSiチップの表面を顕微鏡にて観察し、糊残りが見られなかった場合を「〇」、糊残りが見られた場合を「×」として糊残りを評価した。
【0061】
【0062】
【0063】
BA:ブチルアクリレート
HPA:へプチルアクリレート
2-EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
LA:ラウリルアクリレート
2-HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート
4-HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
AAc:アクリル酸
AAm:アクリルアミド
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、チップ部品を受け止める際にはチップ部品を良好に貼りつけさせることができ、チップ部品を再転写する際には優れた剥離性能を発揮し、チップ部品への糊残りを抑えることのできる粘着テープを提供することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 チップ部品
2 粘着剤層
3 基材
4 粘着剤層
5 基材
8 粘着テープ
9 基材と粘着剤層との積層体
10 ガラス板
11 測定用両面粘着テープ
12 SUS製治具