(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163341
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20241114BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H01F17/00 D
H01F27/29 123
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024160074
(22)【出願日】2024-09-17
(62)【分割の表示】P 2020020114の分割
【原出願日】2020-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(72)【発明者】
【氏名】占部 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 一
(72)【発明者】
【氏名】志賀 悠人
(72)【発明者】
【氏名】飛田 和哉
(72)【発明者】
【氏名】數田 洋一
(72)【発明者】
【氏名】濱地 紀彰
(72)【発明者】
【氏名】松浦 利典
(72)【発明者】
【氏名】田久保 悠一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 麻美
(72)【発明者】
【氏名】高久 宗裕
(57)【要約】
【課題】自己共振周波数を高くしつつ、Q値の向上が図れるコイル部品を提供する。
【解決手段】積層コイル部品1では、コイル5は、一対の側面2e,2fの対向方向において一方の側面2eに最も近接しているターン6の端部6aが第一外部電極3に接続されていると共に、他方の側面2fに最も近接しているターン11の端部11aが第二外部電極4に接続されており、一対の側面2e,2fの対向方向から見て、ターン6と第二外部電極4とが対向している領域の面積、及び、ターン11と第一外部電極3とが対向している領域の面積は、ターン6及びターン11以外のターンと第一外部電極3又は第二外部電極4とが対向している領域の面積よりも大きい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向している一対の端面と、互いに対向している一対の主面と、互いに対向している一対の側面と、を有している素体と、
前記素体内に配置されていると共に、一対の前記側面の対向方向に沿ってコイル軸が延在しており、一定の幅を有している複数のターンで構成されているコイルと、
前記コイルの一端が接続されている第一外部電極、及び、前記コイルの他端が接続されている第二外部電極と、を備え、
前記第一外部電極と前記第一外部電極とは、一対の前記端面の対向方向において離間しており、
前記第一外部電極及び前記第二外部電極のそれぞれは、一方の前記主面のみに配置されている、又は、一方の前記主面といずれかの前記端面とにわたって配置されているL字状を呈しており、
前記コイルは、一対の前記側面の対向方向において一方の前記側面に最も近接している前記ターンである第一最外ターンの端部が前記第一外部電極に接続されていると共に、他方の前記側面に最も近接している前記ターンである第二最外ターンの端部が前記第二外部電極に接続されており、
一対の前記側面の対向方向から見て、前記第一最外ターンと前記第二外部電極とが対向している領域の面積、及び、前記第二最外ターンと前記第一外部電極とが対向している領域の面積は、前記第一最外ターン及び前記第二最外ターン以外の前記ターンと前記第一外部電極又は前記第二外部電極とが対向している領域の面積よりも大きく、
前記第一最外ターン、前記第二最外ターン、並びに、前記第一最外ターン及び前記第二最外ターン以外の前記ターンの幅は同等である、コイル部品。
【請求項2】
一対の前記側面の対向方向から見て、前記第一最外ターンが前記第二外部電極と対向する部分及び前記第二最外ターンが前記第一外部電極と対向する部分は、湾曲形状を呈している、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第一外部電極及び前記第二外部電極のそれぞれは、一方の前記主面のみに配置されている、請求項1又は2に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
コイル部品として、例えば、特許文献1に記載されているものが知られている。特許文献1に記載のコイル部品は、互いに対向している一対の端面と、互いに対向している一対の主面と、互いに対向している一対の側面と、を有している素体と、素体内に配置されていると共に、一対の側面の対向方向に沿ってコイル軸が延在しており、複数のターンを含んで構成されているコイルと、コイルが接続されている一対の外部電極と、を備えている。コイルは、一対の側面の対向方向において一方の側面に最も近接しているターンの端部が一方の外部電極に接続されていると共に、他方の側面に最も近接しているターンの端部が他方の外部電極に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなコイル部品では、一方の外部電極(他方の外部電極)に接続されているコイルのターンは、他方の外部電極(一方の外部電極)と対向する部分において、電位差が大きくなる。そのため、当該ターンには、他方の外部電極(一方の外部電極)と対向する部分に電界が集中する。これにより、コイル部品では、コイルのターンと外部電極との間に発生する寄生容量(浮遊容量)が大きくなるため、コイルの特性において、自己共振周波数(SRF:Self-Resonant Frequency)が低くなると共にQ(Quality factor)値も低くなる。
【0005】
本発明の一側面は、自己共振周波数を高くしつつ、Q値の向上が図れるコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るコイル部品は、互いに対向している一対の端面と、互いに対向している一対の主面と、互いに対向している一対の側面と、を有している素体と、素体内に配置されていると共に、一対の側面の対向方向に沿ってコイル軸が延在しており、一定の幅を有している複数のターンで構成されているコイルと、コイルの一端が接続されている第一外部電極、及び、コイルの他端が接続されている第二外部電極と、を備え、第一外部電極と第一外部電極とは、一対の端面の対向方向において離間しており、第一外部電極及び第二外部電極のそれぞれは、一方の主面のみに配置されている、又は、一方の主面といずれかの端面とにわたって配置されているL字状を呈しており、コイルは、一対の側面の対向方向において一方の側面に最も近接しているターンである第一最外ターンの端部が第一外部電極に接続されていると共に、他方の側面に最も近接しているターンである第二最外ターンの端部が第二外部電極に接続されており、一対の側面の対向方向から見て、第一最外ターンと第二外部電極とが対向している領域の面積、及び、第二最外ターンと第一外部電極とが対向している領域の面積は、第一最外ターン及び第二最外ターン以外のターンと第一外部電極又は第二外部電極とが対向している領域の面積よりも大きく、第一最外ターン、第二最外ターン、並びに、第一最外ターン及び第二最外ターン以外のターンの幅は同等である。
【0007】
本発明の一側面に係るコイル部品では、一対の側面の対向方向から見て、第一最外ターンと第二外部電極とが対向している領域の面積、及び、第二最外ターンと第一外部電極とが対向している領域の面積は、第一最外ターン及び第二最外ターン以外のターンと第一外部電極又は第二外部電極とが対向している領域の面積よりも大きい。これにより、コイル部品では、第一最外ターンと第二外部電極とを離間させることができると共に、第二最外ターンと第一外部電極とを離間させることができる。したがって、コイル部品では、第一最外ターンと第二外部電極との間、及び、第二最外ターンと第一外部電極との間に発生する寄生容量を小さくすることができる。その結果、コイル部品では、自己共振周波数を高くしつつ、Q値の向上が図れる。
【0008】
一実施形態においては、一対の側面の対向方向から見て、第一最外ターンが第二外部電極と対向する部分及び第二最外ターンが第一外部電極と対向する部分は、湾曲形状を呈していてもよい。この構成では、第一最外ターン及び第二最外ターンの内径を大きくしつつ、第一最外ターン及び第二最外ターンと外部電極とを離間させることができる。したがって、コイル部品では、Q値の向上を図ることができる。
【0009】
一実施形態においては、第一外部電極及び第二外部電極のそれぞれは、一方の主面のみに配置されていてもよい。この構成では、第一最外ターンと第二外部電極、及び、第二最外ターンと第一外部電極との間に形成される寄生容量を小さくすることができる。したがって、コイル部品では、自己共振周波数を高くしつつ、Q値の向上が図れる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一側面によれば、自己共振周波数を高くしつつ、Q値の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第一実施形態に係る積層コイル部品を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す積層コイル部品の内部構成を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す積層コイル部品の内部構成を示す側面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す積層コイル部品の内部構成を示す側面図である。
【
図5】
図5は、周波数とQ値との関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、比較例に係る積層コイル部品の内部構成を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、周波数とQ値との関係を示すグラフである。
【
図8】
図8は、第二実施形態に係る積層コイル部品の内部構成を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、
図8に示す積層コイル部品の内部構成を示す側面図である。
【
図11】
図11は、第3実施形態に係る積層コイル部品の内部構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
[第一実施形態]
図1に示されるように、積層コイル部品1は、直方体形状を呈している素体2と、第一外部電極3及び第二外部電極4と、を備えている。第一外部電極3及び第二外部電極4は、素体2の両端部にそれぞれ配置されている。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。
【0014】
素体2は、互いに対向している一対の端面2a,2bと、互いに対向している一対の主面2c,2dと、互いに対向している一対の側面2e,2fと、を有している。一対の主面2c,2dの対向方向、すなわち、端面2a,2bに平行な方向が、第一方向D1である。一対の側面2e,2fの対向方向が、第二方向D2である。一対の端面2a,2bの対向方向、すなわち、主面2c,2dに平行な方向が、第三方向D3である。本実施形態では、第一方向D1は、素体2の高さ方向である。第二方向D2は、素体2の幅方向であり、第一方向D1に直交している。第三方向D3は、素体2の長手方向であり、第一方向D1と第二方向D2にと直交している。
【0015】
一対の端面2a,2bは、一対の主面2c,2dの間を連結するように第一方向D1に延在している。一対の端面2a,2bは、第二方向D2、すなわち、一対の主面2c,2dの短辺方向にも延在している。一対の側面2e,2fは、一対の主面2c,2dの間を連結するように第一方向D1に延在している。一対の側面2e,2fは、第三方向D3、すなわち、一対の端面2a,2bの長辺方向にも延在している。積層コイル部品1は、電子機器(たとえば、回路基板又は電子部品)に、たとえば、はんだ実装される。積層コイル部品1では、主面(一方の主面)2dが、電子機器に対向する実装面を構成する。
【0016】
素体2は、第二方向D2に複数の誘電体層が積層されて構成されている。素体2は、積層されている複数の誘電体層を有している。素体2では、複数の誘電体層の積層方向が、第二方向D2と一致する。実際の素体2では、各誘電体層は、各誘電体層の間の境界が視認できない程度に一体化されている。各誘電体層は、ガラス成分を含む誘電体材料で形成されている。すなわち、素体2は、素体2を構成する元素の化合物として、ガラス成分を含む誘電体材料を含んでいる。ガラス成分は、たとえば、ホウケイ酸ガラスなどである。誘電体材料としては、たとえばBaTiO3系、Ba(Ti,Zr)O3系、又は(Ba,Ca)TiO3系などの誘電体セラミックである。各誘電体層は、ガラスセラミック材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成されている。なお、各誘電体層は、磁性材料により構成されていてもよい。磁性材料は、たとえば、Ni-Cu-Zn系フェライト材料、Ni-Cu-Zn-Mg系フェライト材料、又はNi-Cu系フェライト材料を含んでいる。各誘電体層を構成する磁性材料は、Fe合金を含んでいてもよい。各誘電体層は、非磁性材料から構成されていてもよい。非磁性材料は、たとえば、ガラスセラミック材料又は誘電体材料を含んでいる。
【0017】
図1に示されるように、第一外部電極3及び第二外部電極4のそれぞれは、素体2の主面2dに配置されている。第一外部電極3及び第二外部電極4のそれぞれは、素体2に埋設されている。第一外部電極3及び第二外部電極4は、第三方向D3で互いに離間している。
【0018】
第一外部電極3は、端面2a側に配置されている。第二外部電極4は、端面2b側に配置されている。第一外部電極3及び第二外部電極4のそれぞれは、第一方向D1から見て、長方形状を呈している。第一外部電極3及び第二外部電極4は、同じ大きさに形成されている。第一外部電極3及び第二外部電極4は、第二方向D2及び第三方向D3に沿って延在している。本実施形態では、第一外部電極3の表面は、主面2dと略面一である。第二外部電極4の表面は、主面2dと略面一である。
【0019】
第一外部電極3及び第二外部電極4は、導電性材料を含んでいる。導電性材料は、たとえば、Ag又はPdを含んでいる。第一外部電極3及び第二外部電極4は、導電性材料粉末を含む導電性ペーストの焼結体として構成されている。導電性材料粉末は、たとえば、Ag粉末又はPd粉末を含んでいる。第一外部電極3及び第二外部電極4の表面には、めっき層が形成されていてもよい。めっき層は、たとえば、電気めっき又は無電解めっきにより形成される。めっき層は、たとえば、Ni、Sn、又はAuを含んでいる。
【0020】
第一外部電極3及び第二外部電極4のそれぞれは、複数の電極層(図示省略)が積層されて構成されている。電極層は、第二方向D2から見て、長方形状を呈している。各電極層は、対応する誘電体層に形成されている欠損部に設けられている。電極層は、グリーンシートに形成された欠損部内に位置している導電性ペーストが焼成されることによって、形成される。グリーンシートと導電性ペーストとは同時に焼成される。したがって、グリーンシートから誘電体層が得られる際に、導電性ペーストから電極層が得られる。実際の第一外部電極では、各電極層は、各電極層の間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0021】
積層コイル部品1は、
図2、
図3及び
図4に示されるように、素体2内に配置されているコイル5を備えている。コイル5のコイル軸AXは、第二方向D2に沿って延在している。コイル5の一端は、第一外部電極3に接続されており、コイル5の他端は、第二外部電極4に接続されている。コイル5は、複数のターン6,7,8,9,10,11を含んで構成されている。ターン6,7,8,9,10,11のそれぞれは、コイル導体(コイル部)によって形成されている。
【0022】
コイル5では、側面2eと側面2fとの間において、ターン6、ターン7、ターン8、ターン9、ターン10及びターン11の順番に配置されている。ターン7、ターン8、ターン9及びターン10は、ターン6とターン11との間に配置されている。ターン6、ターン7、ターン8、ターン9、ターン10及びターン11は、一定の幅を有している。すなわち、ターン6、ターン7、ターン8、ターン9、ターン10及びターン11は、同等の幅に形成されている。
【0023】
ターン6は、第二方向D2において、側面2e(一方の側面)に最も近接している第一最外ターンである。ターン6の端部6aは、第一外部電極3に接続されている。これにより、コイル5は、第一外部電極3に接続されている。
図3に示されるように、ターン6は、第二方向D2から見て、第一方向D1において第二外部電極4と対向する部分が湾曲形状を呈している。ターン6において第二外部電極4と対向する部分は、第二方向D2から見て、コイル軸AXから外側に向かう方向に凸状に湾曲している。当該部分は、所定の曲率半径を有している。
【0024】
ターン7は、ターン6に接続されている。ターン7は、第二方向D2から見て、第二外部電極4と対向する部分が湾曲形状を呈している。ターン7の外縁は、第二方向D2から見て、ターン6の外縁よりも外側に位置している。ターン8は、ターン7に接続されている。ターン9は、ターン8に接続されている。ターン10は、ターン9に接続されている。ターン10は、第二方向D2から見て、第二外部電極4と対向する部分が湾曲形状を呈している。ターン10の外縁は、第二方向D2から見て、ターン11の外縁よりも外側に位置している。
【0025】
ターン11は、第二方向D2において、側面2f(他方の側面)に最も近接している第二最外ターンである。ターン11の端部11aは、第二外部電極4に接続されている。これにより、コイル5は、第二外部電極4に接続されている。ターン11は、第二方向D2から見て、第一外部電極3と対向する部分が湾曲形状を呈している。ターン11において第一外部電極3と対向する部分は、第二方向D2から見て、コイル軸AXから外側に向かう方向に凸状に湾曲している。
【0026】
積層コイル部品1では、第二方向D2から見て、ターン6と第二外部電極4とが対向している領域の面積、及び、ターン11と第一外部電極3とが対向している領域の面積は、ターン6及びターン11以外のターン7,8,9,10と第一外部電極3又は第二外部電極4とが対向している領域の面積よりも大きい。積層コイル部品1では、
図3に示されるように、第二方向D2から見て、ターン6と第二外部電極4とが対向している領域の面積を「A1」とし、
図4に示されるように、ターン7と第二外部電極4とが対向している領域の面積を「B1」とした場合、
A1>B1
の関係を満たす。
【0027】
同様に、積層コイル部品1では、第二方向D2から見て、ターン11と第一外部電極3とが対向している領域の面積を「A1」とし、ターン10と第一外部電極3とが対向している領域の面積を「B1」とした場合、
A1>B1
の関係を満たす。ターン8,9と第一外部電極3又は第二外部電極4とが対向している領域の面積を「B1」とした場合についても同様である。積層コイル部品1では、ターン6と第二外部電極4との第一方向D1の距離は、ターン7,8,9,10と第二外部電極4との第一方向D1の距離よりも大きい。すなわち、ターン6は、ターン7,8,9,10よりも第一方向D1において第二外部電極4から離間している。本実施形態では、ターン7と第二外部電極4との第一方向D1の距離は、ターン8,9,10と第二外部電極4との第一方向D1の距離よりも大きい。
【0028】
積層コイル部品1では、ターン11と第一外部電極3との第一方向D1の距離は、ターン7,8,9,10と第一外部電極3との第一方向D1の距離よりも大きい。すなわち、ターン11は、ターン7,8,9,10よりも第一方向D1において第一外部電極3から離間している。本実施形態では、ターン10と第一外部電極3との第一方向D1の距離は、ターン7,8,9と第一外部電極3との第一方向D1の距離よりも大きい。
【0029】
複数のターン6,7,8,9,10,11は、導電性材料を含んでいる。導電性材料は、Ag又はPdを含んでいる。複数のターン6,7,8,9,10,11は、導電性材料粉末を含む導電性ペーストの焼結体として構成されている。導電性材料粉末は、たとえば、Ag粉末又はPd粉末を含んでいる。本実施形態では、複数のターン6,7,8,9,10,11は、第一外部電極3及び第二外部電極4と同じ導電性材料を含んでいる。複数のターン6,7,8,9,10,11は、第一外部電極3及び第二外部電極4と異なる導電性材料を含んでいてもよい。
【0030】
複数のターン6,7,8,9,10,11は、対応する誘電体層に形成されている欠損部に設けられている。複数のターン6,7,8,9,10,11は、グリーンシートに形成された欠損部内に位置している導電性ペーストが焼成されることによって、形成される。上述したようにグリーンシートと導電性ペーストとは同時に焼成される。したがって、グリーンシートから誘電体層が得られる際に、導電性ペーストから複数のターン6,7,8,9,10,11が得られる。
【0031】
グリーンシートに形成される欠損部は、たとえば、以下の過程によって形成される。まず、誘電体層の構成材料及び感光性材料を含む素体ペーストを基材上に付与することにより、グリーンシートを形成する。基材は、たとえば、PETフィルムである。素体ペーストに含まれる感光性材料は、ネガ型及びポジ型のどちらであってもよく、公知のものを用いることができる。次に、欠損部に対応するマスクを用い、フォトリソグラフィ法によりグリーンシートを露光及び現像し、基材上のグリーンシートに欠損部を形成する。欠損部が形成されたグリーンシートは、素体パターンである。
【0032】
複数のターン6,7,8,9,10,11は、たとえば、以下の過程によって形成される。まず、感光性材料を含む導電性ペーストを基材上に付与することにより、導体材料層を形成する。導電性ペーストに含まれる感光性材料は、ネガ型及びポジ型のどちらであってもよく、公知のものを用いることができる。次に、欠損部に対応するマスクを用い、フォトリソグラフィ法により導体材料層を露光及び現像し、欠損部の形状に対応する導体パターンを基材上に形成する。
【0033】
積層コイル部品1は、たとえば、上述した過程に続く以下の過程によって得られる。導体パターンが、素体パターンの欠損部に組み合わされることにより、素体パターンと導体パターンとが同一層とされたシートが用意される。用意した所定枚数のシートを積層して得られた積層体を熱処理した後に、積層体から、複数のグリーンチップを得る。本過程では、たとえば、切断機で、グリーン積層体をチップ状に切断する。これにより、所定の大きさを有する複数のグリーンチップが得られる。次に、グリーンチップを焼成する。この焼成により、積層コイル部品1が得られる。積層コイル部品1では、第一外部電極3及び第二外部電極4とコイル5とが一体に形成されている。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係る積層コイル部品1では、一対の側面2e,2fの対向方向(第二方向D2)から見て、第一最外ターンであるターン6と第二外部電極4とが対向している領域の面積、及び、第二最外ターンであるターン11と第一外部電極3とが対向している領域の面積は、ターン6及びターン11以外のターン7,8,9,10と第一外部電極3又は第二外部電極4とが対向している領域の面積よりも大きい。これにより、積層コイル部品1では、ターン6と第二外部電極4とを離間させることができると共に、ターン11と第一外部電極3とを離間させることができる。したがって、積層コイル部品1では、ターン6と第二外部電極4との間、及び、ターン11と第一外部電極3との間に発生する寄生容量を小さくすることができる。その結果、積層コイル部品1では、自己共振周波数を高くしつつ、Q値の向上が図れる。
【0035】
図5では、横軸は周波数(Frequency)[GHz]、縦軸はQ値である。
図5では、積層コイル部品1の特性を実線で示し、比較例の積層コイル部品の特性を破線で示している。比較例の積層コイル部品では、一対の側面の対向方向から見て、第一最外ターンと第二外部電極とが対向している領域の面積、及び、第二最外ターンと第一外部電極とが対向している領域の面積は、第一最外ターン及び第二最外ターン以外のターンと第一外部電極又は第二外部電極とが対向している領域の面積と同じである。すなわち、比較例に係る積層コイル部品では、全てのターンが、たとえばターン8と同じ形状を呈しており、一対の側面の対向方向からみて、コイルが矩形の枠状を呈している。
【0036】
図5に示されるように、積層コイル部品1では、比較例に係る積層コイル部品に対してQ値が大幅に低下せずに、自己共振周波数が高くなっている。したがって、積層コイル部品1では、自己共振周波数を高くしつつ、Q値の向上が図れる。
【0037】
本実施形態に係る積層コイル部品1では、一対の側面2e,2fの対向方向から見て、ターン6が第二外部電極4と対向する部分及びターン11が第一外部電極3と対向する部分は、湾曲形状を呈している。この構成では、ターン6及びターン11の内径を大きくしつつ、ターン6と第二外部電極4とを離間させることができると共にターン11と第一外部電極3とを離間させることができる。したがって、積層コイル部品1では、Q値の向上を図ることができる。
【0038】
ここで、
図6に示される積層コイル部品100のように、コイル110の全てのターン111,112,113,114,115,116において、第一外部電極3又は第二外部電極4と対向する部分を湾曲形状とすることが考えられる。すなわち、積層コイル部品100では、第一外部電極3に端部111aが接続される第一最外ターンであるターン111及び第二外部電極4に端部116aが接続される第二最外ターンであるターン116だけでなく、ターン112,113,114,115についても同様に、第一外部電極3又は第二外部電極4と離間させている。これにより、積層コイル部品100では、コイル110と第一外部電極3又は第二外部電極4との間に発生する寄生容量を小さくできる。しかしながら、積層コイル部品100では、コイル110の内径が、積層コイル部品1のコイル5に比べて小さくなる。
【0039】
図7では、横軸は周波数(Frequency)[GHz]、縦軸はQ値である。
図7では、積層コイル部品1の特性を実線で示し、積層コイル部品100の特性を破線で示している。
図7に示されるように、積層コイル部品100では、積層コイル部品1よりもコイル110の内径が小さいため、Q値が小さくなっている。すなわち、積層コイル部品1では、コイル5のターン7,8,9,10によってコイル5の内径を大きくしているため、Q値を大きくすることができる。したがって、積層コイル部品1では、Q値の向上が図れる。
【0040】
本実施形態に係る積層コイル部品1では、第一外部電極3及び第二外部電極4のそれぞれは、素体2の主面2dのみに配置されている。この構成では、ターン6と第二外部電極4、及び、ターン11と第一外部電極3との間に形成される寄生容量を小さくすることができる。したがって、積層コイル部品1では、自己共振周波数を高くしつつ、Q値の向上が図れる。
【0041】
[第二実施形態]
続いて、第二実施形態について説明する。
図8に示されるように、積層コイル部品1Aは、素体2内に配置されているコイル12を備えている。コイル12のコイル軸AX1は、第二方向D2に沿って延在している。コイル12の一端は、第一外部電極3に接続されており、コイル12の他端は、第二外部電極4に接続されている。コイル12は、複数のターン13,14,15,16,17,18を含んで構成されている。ターン13,14,15,16,17,18のそれぞれは、コイル導体(コイル部)によって形成されている。
【0042】
コイル12では、側面2eと側面2fとの間において、ターン13、ターン14、ターン15、ターン16、ターン17及びターン18の順番に配置されている。ターン14、ターン15、ターン16及びターン17は、ターン13とターン18との間に配置されている。
【0043】
ターン13は、第二方向D2において、側面2eに最も近接している第一最外ターンである。ターン13の端部13aは、第一外部電極3に接続されている。これにより、コイル12は、第一外部電極3に接続されている。
図9に示されるように、ターン13は、第二方向D2から見て、第二外部電極4と対向する部分が傾斜している。ターン13において第二外部電極4と対向する部分は、第二方向D2から見て、主面2d側を下端として主面2dから端面2bに向かって上方に傾斜している。
【0044】
ターン14は、ターン13に接続されている。ターン14は、第二方向D2から見て、第二外部電極4と対向する部分が傾斜している。ターン14の外縁は、第二方向D2から見て、ターン13の外縁よりも外側に位置している。ターン15は、ターン14に接続されている。ターン16は、ターン15に接続されている。ターン17は、ターン16に接続されている。ターン17は、第二方向D2から見て、第一外部電極3と対向する部分が傾斜している。ターン17の外縁は、第二方向D2から見て、ターン18の外縁よりも外側に位置している。
【0045】
ターン18は、第二方向D2において、側面2fに最も近接している第二最外ターンである。ターン18の端部18aは、第二外部電極4に接続されている。これにより、コイル12は、第二外部電極4に接続されている。ターン18は、第二方向D2から見て、第一外部電極3と対向する部分が傾斜している。ターン18において第一外部電極3と対向する部分は、第二方向D2から見て、主面2dを下端として主面2dから端面2bに向かって上方に傾斜している。
【0046】
積層コイル部品1Aでは、第二方向D2から見て、ターン13と第二外部電極4とが対向している領域の面積、及び、ターン18と第一外部電極3とが対向している領域の面積は、ターン13及びターン18以外のターン14,15,16,17と第一外部電極3又は第二外部電極4とが対向している領域の面積よりも大きい。積層コイル部品1Aでは、
図9に示されるように、第二方向D2から見て、ターン13と第二外部電極4とが対向している領域の面積を「A2」とし、
図10に示されるように、ターン14と第二外部電極4とが対向している領域の面積を「B2」とした場合、
A2>B2
の関係を満たす。
【0047】
同様に、積層コイル部品1Aでは、第二方向D2から見て、ターン18と第一外部電極3とが対向している領域の面積を「A2」とし、ターン17と第一外部電極3とが対向している領域の面積を「B2」とした場合、
A2>B2
の関係を満たす。ターン15,16と第一外部電極3又は第二外部電極4とが対向している領域の面積を「B2」とした場合についても同様である。積層コイル部品1Aでは、ターン13と第二外部電極4との第一方向D1の距離は、ターン14,15,16,17と第二外部電極4との第一方向D1の距離よりも大きい。すなわち、ターン13は、ターン14,15,16,17よりも第一方向D1において第二外部電極4から離間している。本実施形態では、ターン14と第二外部電極4との第一方向D1の距離は、ターン15,16,17と第二外部電極4との第一方向D1の距離よりも大きい。
【0048】
積層コイル部品1Aでは、ターン18と第一外部電極3との第一方向D1の距離は、ターン14,15,16,17と第一外部電極3との第一方向D1の距離よりも大きい。すなわち、ターン18は、ターン14,15,16,17よりも第一方向D1において第一外部電極3から離間している。本実施形態では、ターン17と第一外部電極3との第一方向D1の距離は、ターン14,15,16と第一外部電極3との第一方向D1の距離よりも大きい。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係る積層コイル部品1Aでは、一対の側面2e,2fの対向方向(第二方向D2)から見て、第一最外ターンであるターン13と第二外部電極4とが対向している領域の面積、及び、第二最外ターンであるターン18と第一外部電極3とが対向している領域の面積は、ターン13及びターン18以外のターン14,15,16,17と第一外部電極3又は第二外部電極4とが対向している領域の面積よりも大きい。これにより、積層コイル部品1Aでは、ターン13と第二外部電極4とを離間させることができると共に、ターン18と第一外部電極3とを離間させることができる。したがって、積層コイル部品1Aでは、ターン13と第二外部電極4との間、及び、ターン18と第一外部電極3との間に発生する寄生容量を小さくすることができる。その結果、積層コイル部品1Aでは、自己共振周波数を高くしつつ、Q値の向上が図れる。
【0050】
[第三実施形態]
続いて、第三実施形態について説明する。
図11に示されるように、積層コイル部品1Bは、素体2内に配置されているコイル19を備えている。コイル19のコイル軸AX2は、第二方向D2に沿って延在している。コイル19の一端は、第一外部電極3に接続されており、コイル19の他端は、第二外部電極4に接続されている。コイル12は、複数のターン20,21,22,23,24,25を含んで構成されている。ターン20,21,22,23,24,25のそれぞれは、コイル導体(コイル部)によって形成されている。
【0051】
コイル19では、側面2eと側面2fとの間において、ターン20、ターン21、ターン22、ターン23、ターン24及びターン25の順番に配置されている。ターン21、ターン22、ターン23及びターン24は、ターン20とターン25との間に配置されている。
【0052】
ターン20は、第二方向D2において、側面2eに最も近接している第一最外ターンである。ターン20の端部20aは、第一外部電極3に接続されている。これにより、コイル19は、第一外部電極3に接続されている。
図12に示されるように、ターン20は、第二方向D2から見て、第二外部電極4と対向する部分が段差になっている。すなわち、ターン20は、第二方向D2から見て、第二外部電極4と対向する部分がL字形状を呈している。ターン20において第二外部電極4と対向する部分は、第二方向D2から見て、第二外部電極4と平行を成している。
【0053】
ターン21は、ターン20に接続されている。ターン21は、第二方向D2から見て、第二外部電極4と対向する部分が段差になっている。ターン21の外縁は、第二方向D2から見て、ターン20の外縁よりも外側に位置している。ターン22は、ターン21に接続されている。ターン23は、ターン22に接続されている。ターン24は、ターン23に接続されている。ターン24は、第二方向D2から見て、第一外部電極3と対向する部分が段差になっている。ターン24の外縁は、第二方向D2から見て、ターン25の外縁よりも外側に位置している。
【0054】
ターン25は、第二方向D2において、側面2fに最も近接している第二最外ターンである。ターン25の端部25aは、第二外部電極4に接続されている。これにより、コイル19は、第二外部電極4に接続されている。ターン25は、第二方向D2から見て、第二外部電極4と対向する部分が段差になっている。すなわち、ターン25は、第二方向D2から見て、第一外部電極3と対向する部分がL字形状を呈している。ターン25において第一外部電極3と対向する部分は、第二方向D2から見て、第一外部電極3と平行を成している。
【0055】
積層コイル部品1Bでは、第二方向D2から見て、ターン20と第二外部電極4とが対向している領域の面積、及び、ターン25と第一外部電極3とが対向している領域の面積は、ターン20及びターン25以外のターン21,22,23,24と第一外部電極3又は第二外部電極4とが対向している領域の面積よりも大きい。積層コイル部品1Bでは、
図12に示されるように、第二方向D2から見て、ターン20と第二外部電極4とが対向している領域の面積を「A3」とし、
図13に示されるように、ターン21と第二外部電極4とが対向している領域の面積を「B3」とした場合、
A3>B3
の関係を満たす。
【0056】
同様に、積層コイル部品1Bでは、第二方向D2から見て、ターン25と第一外部電極3とが対向している領域の面積を「A3」とし、ターン24と第一外部電極3とが対向している領域の面積を「B3」とした場合、
A3>B3
の関係を満たす。ターン22,23と第一外部電極3又は第二外部電極4とが対向している領域の面積を「B3」とした場合についても同様である。積層コイル部品1Bでは、ターン20と第二外部電極4との第一方向D1の距離は、ターン21,22,23,24と第二外部電極4との第一方向D1の距離よりも大きい。すなわち、ターン20は、ターン21,22,23,24よりも第一方向D1において第二外部電極4から離間している。本実施形態では、ターン21と第二外部電極4との第一方向D1の距離は、ターン22,23,24と第二外部電極4との第一方向D1の距離よりも大きい。
【0057】
積層コイル部品1Bでは、ターン25と第一外部電極3との第一方向D1の距離は、ターン21,22,23,24と第一外部電極3との第一方向D1の距離よりも大きい。すなわち、ターン25は、ターン21,22,23,24よりも第一方向D1において第一外部電極3から離間している。本実施形態では、ターン24と第一外部電極3との第一方向D1の距離は、ターン21,22,23と第一外部電極3との第一方向D1の距離よりも大きい。
【0058】
以上説明したように、本実施形態に係る積層コイル部品1Bでは、一対の側面2e,2fの対向方向(第二方向D2)から見て、第一最外ターンであるターン20と第二外部電極4とが対向している領域の面積、及び、第二最外ターンであるターン25と第一外部電極3とが対向している領域の面積は、ターン20及びターン25以外のターン21,22,23,24と第一外部電極3又は第二外部電極4とが対向している領域の面積よりも大きい。これにより、積層コイル部品1Bでは、ターン20と第一外部電極3とを離間させることができると共に、ターン25と第二外部電極4とを離間させることができる。したがって、積層コイル部品1Bでは、ターン20と第一外部電極3との間、及び、ターン25と第二外部電極4との間に発生する寄生容量を小さくすることができる。その結果、積層コイル部品1Bでは、自己共振周波数を高くしつつ、Q値の向上が図れる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0060】
上記実施形態では、第一外部電極3及び第二外部電極4が主面2dに配置されている形態を一例に説明した。しかし、第一外部電極は、端面2a及び主面2dにわたって配置されていてもよい。すなわち、第一外部電極は、第二方向D2から見て、L字状を呈していてもよい。第二外部電極についても同様である。
【0061】
上記実施形態では、第一外部電極3及び第二外部電極4のそれぞれが素体2に埋設されている形態を一例に説明した。しかし、第一外部電極3及び第二外部電極4のそれぞれは、素体2の主面2d上に配置されていてもよい。
【0062】
上記実施形態では、コイル5が、ターン6,7,8,9,10,11を含んでいる構成を一例に説明した。しかし、コイルを構成するターンの数は、これに限定されない。コイル12及びコイル19についても同様である。
【符号の説明】
【0063】
1,1A,1B…積層コイル部品、2…素体、2a,2b…端面、2c,2d…主面、2e,2f…側面、3…第一外部電極、4…第二外部電極、5,12,19…コイル、6,7,8,9,10,11,13,14,15,16,17,18,20,21,22,23,24,25…ターン、6a,11a,13a,18a,20a,25a…端部、AX,AX1,AX2…コイル軸。