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2024-163405シート搬送装置、及びこれを備えたインクジェット記録装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163405
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】シート搬送装置、及びこれを備えたインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241115BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078950
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高山 翔太
(72)【発明者】
【氏名】松村 拓也
(72)【発明者】
【氏名】黒須 友樹
(72)【発明者】
【氏名】古賀 俊一
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EA20
2C056EB03
2C056EB12
2C056EC26
2C056FA13
2C056HA29
2C056HA33
2C056HA47
(57)【要約】
【課題】ユーザが清掃部材を用いてインクミストに起因する汚れを容易に清掃可能なシート搬送装置の提供。
【解決手段】搬送ベルト3のインクに対する接触角は、張架ローラ51、駆動ローラ52、テンションローラ53、ステアリングローラ54、プラテンユニットそれぞれのインクに対する接触角よりも小さい。これにより、記録ヘッドからシートに対しインクが吐出されることに伴い生じるインクミストがプラテンユニットに付着しても、付着したインクミストが搬送ベルト3に移動する。プリントベルトユニット2010には、清掃部材500が装着されたときに搬送ベルト3に接触する位置に、清掃部材500を保持可能な保持部400が設けられている。ユーザは保持部400に清掃部材500を挿入することで、プラテンユニットに比べて搬送ベルト3に比較的容易にアクセスできることから、従来に比べインクミストに起因する汚れを容易に清掃できる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出してシートに画像を形成するインクヘッドのインクを吐出する領域へシートを搬送するシート搬送装置であって、
回転することでシートを搬送する無端状の搬送ベルトと、
前記搬送ベルトを張架する複数の張架ローラと、
前記搬送ベルトの内側に配置され、前記複数の張架ローラのうちの2つの張架ローラにより張架された領域の前記搬送ベルトの内周面を支持する支持部材と、
前記搬送ベルトの内側に配置され、空気を吸引する吸引部と、
前記搬送ベルトの内周面を清掃するための清掃部材を保持可能な保持部と、を備え、
前記搬送ベルトの内周面のインクに対する接触角は、前記支持部材のインクに対する接触角及び前記複数の張架ローラのインクに対する接触角よりも小さい、
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記複数の張架ローラは、3つ以上であり、
前記保持部は、前記複数の張架ローラにより張架された前記搬送ベルトの複数の張架領域のうち、前記支持部材により支持された内周面を有する張架領域以外の張架領域の内周面に、前記保持部に装着された前記清掃部材が接触するように配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記保持部は、前記清掃部材をシートの搬送方向に交差する幅方向に沿ってスライド移動可能に支持し、前記搬送ベルトに対し前記清掃部材を案内するレール部を有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記レール部は、前記清掃部材が挿入されるときに前記清掃部材を前記搬送ベルトから離した状態でスライド移動可能に支持し、
前記保持部は、前記レール部により前記搬送ベルトから離れた状態で支持されていた前記清掃部材を、前記清掃部材が装着されたときに前記搬送ベルトに接触する位置に位置決めする位置決め部を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
インクを吐出してシートに画像を形成するインクヘッドのインクを吐出する領域へシートを搬送するシート搬送装置であって、
回転することでシートを搬送する無端状の搬送ベルトと、
前記搬送ベルトを張架する複数の張架ローラと、
前記搬送ベルトの内側に配置され、前記複数の張架ローラのうちの2つの張架ローラにより張架された領域の前記搬送ベルトの内周面を支持する支持部材と、
前記搬送ベルトの内側に配置され、空気を吸引する吸引部と、
前記複数の張架ローラのうちのいずれか1つの表面を清掃するための清掃部材を保持可能な保持部と、を備え、
前記清掃部材により表面が清掃される張架ローラのインクに対する接触角は、前記搬送ベルトの内周面のインクに対する接触角よりも小さく、
前記搬送ベルトの内周面のインクに対する接触角は、前記支持部材のインクに対する接触角、及び前記複数の張架ローラのうち前記清掃部材により表面が清掃される張架ローラ以外の他の張架ローラのインクに対する接触角よりも小さい、
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項6】
前記複数の張架ローラは、3つ以上であり、
前記保持部は、前記複数の張架ローラにより張架された前記搬送ベルトの複数の張架領域のうち、前記支持部材により支持された内周面を有する張架領域を形成する前記2つの張架ローラ以外の張架ローラの表面に、前記保持部に装着された前記清掃部材が接触するように配置されている、
ことを特徴とする請求項5に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記保持部は、前記清掃部材をシートの搬送方向に交差する幅方向に沿ってスライド移動可能に支持し、前記清掃部材を案内するレール部を有する、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のシート搬送装置。
【請求項8】
前記レール部は、前記清掃部材が挿入されるときに前記清掃部材により清掃する張架ローラから離した状態でスライド移動可能に支持し、
前記保持部は、前記レール部により前記張架ローラから離れた状態で支持されていた前記清掃部材を、前記清掃部材が装着されたときに前記張架ローラに接触する位置に位置決めする位置決め部を有する、
ことを特徴とする請求項7に記載のシート搬送装置。
【請求項9】
インクを吐出してシートに画像を形成するインクヘッドと、
前記インクヘッドの下方に配置され、回転することでシートを搬送する無端状の搬送ベルトと、
前記搬送ベルトの回転方向に関して、前記インクヘッドと対向する対向領域の上流側で前記搬送ベルトを張架する第一張架ローラと、前記対向領域の下流側で前記搬送ベルトを張架する第二張架ローラと、
前記搬送ベルトのうち前記第一張架ローラと前記第二張架ローラにより張架された部分であって、少なくとも前記対向領域を含む部分の下方を支持する支持部材と、
前記支持部材の下方に配置され、空気を吸引することで前記搬送ベルトの外周面にシートを吸着させる吸引部と、
前記搬送ベルトの内周面を清掃するための清掃部材を保持可能な保持部と、を備え、
前記搬送ベルトの内周面のインクに対する接触角は、前記支持部材のインクに対する接触角及び前記第一張架ローラと前記第二張架ローラそれぞれのインクに対する接触角よりも小さい、
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記第一張架ローラ及び前記第二張架ローラのいずれか1つを駆動する駆動部と、
前記駆動部の駆動負荷を検知する検知部と、
表示部と、を備え、
前記表示部は、前記検知部により検知される前記駆動部の駆動負荷が閾値以上となった場合に、前記清掃部材を用いて清掃を行う旨を表示する、
ことを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
インクを吐出してシートに画像を形成するインクヘッドと、
前記インクヘッドの下方に配置され、回転することでシートを搬送する無端状の搬送ベルトと、
前記搬送ベルトの回転方向に関して、前記インクヘッドと対向する対向領域の上流側で前記搬送ベルトを張架する第一張架ローラと、前記対向領域の下流側で前記搬送ベルトを張架する第二張架ローラと、前記第一張架ローラよりも上流側且つ前記第二張架ローラよりも下流側で前記搬送ベルトを張架する第三張架ローラと、
前記搬送ベルトのうち前記第一張架ローラと前記第二張架ローラにより張架された部分であって、少なくとも前記対向領域を含む部分の下方を支持する支持部材と、
前記支持部材の下方に配置され、空気を吸引することで前記搬送ベルトの外周面にシートを吸着させる吸引部と、
前記第三張架ローラの表面を清掃するための清掃部材を保持可能な保持部と、を備え、
前記第三張架ローラのインクに対する接触角は、前記搬送ベルトの内周面のインクに対する接触角よりも小さく、
前記搬送ベルトの内周面のインクに対する接触角は、前記支持部材のインクに対する接触角及び前記第一張架ローラと前記第二張架ローラそれぞれのインクに対する接触角よりも小さい、
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記第一張架ローラ、前記第二張架ローラ、前記第三張架ローラのいずれか1つを駆動する駆動部と、
前記駆動部の駆動負荷を検知する検知部と、
表示部と、を備え、
前記表示部は、前記検知部により検知される前記駆動部の駆動負荷が閾値以上となった場合に、前記清掃部材を用いて清掃を行う旨を表示する、
ことを特徴とする請求項11に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト上にシートを吸引して搬送するシート搬送装置、及びシート搬送装置を備えたインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転するベルトの外周面に吸引されたシートがベルトの内側に配設されたシートを支持するためのプラテンへ搬送され、ベルトを挟んでプラテンに対向配置された記録ヘッドから吐出されるインクによりシートに画像を形成するインクジェット記録装置が知れられている(特許文献1)。インクジェット記録装置において高画質な成果物を得るには、シートと記録ヘッドのノズルとのクリランスが所定距離となるようにシートを搬送する必要がある。そこで、ベルト上にシートを吸引して搬送するシート搬送装置には、ベルトと摺動する摺動面の平面度が高いプラテンが配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-43840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、インクジェット記録装置では、記録ヘッドからシートに対しインクが吐出されることに伴いインクミストが生じ得る。ほとんどのインクミストは、ベルト上にシートを吸引するための吸引ファンにより吸引され、吸引ファンに取り付けられている回収フィルタにより回収される。しかし、一部のインクミストはシート搬送装置内を浮遊して、プラテンやベルトあるいはベルトを張架する張架ローラに付着する。それらに付着したインクミストは液状であり、時間が経つにつれて固形化して汚れとなって顕在化する。このインクミストが固形化した固形物の量が増えると、シートの搬送に影響してしまい、シートに形成される画像に画像不良が生じ得る。そこで、ユーザは清掃部材を用い、シート搬送装置においてインクミストに起因して生じる汚れを清掃する必要がある。
【0005】
従来では、インクミストに起因する汚れがプラテンに比較的に多く生じていたため、ユーザは清掃部材を用いてプラテンの清掃を行っていた。しかし、プラテンはユニット化されており、単独での取り出しが難しく、さらに前方には記録ヘッドの位置決め部があり、そのままでは清掃部材を装着し難い。そのため、ユーザはベルトやプラテンユニットを取り外してから清掃部材を装着するしかなく、プラテンを清掃するのに面倒であり手間がかかっていた。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、ユーザが清掃部材を用いてインクミストに起因する汚れを容易に清掃可能なシート搬送装置、及びシート搬送装置を備えたインクジェット記録装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係るシート搬送装置は、インクを吐出してシートに画像を形成するインクヘッドのインクを吐出する領域へシートを搬送するシート搬送装置であって、回転することでシートを搬送する無端状の搬送ベルトと、前記搬送ベルトを張架する複数の張架ローラと、前記搬送ベルトの内側に配置され、前記複数の張架ローラのうちの2つの張架ローラにより張架された領域の前記搬送ベルトの内周面を支持する支持部材と、前記搬送ベルトの内側に配置され、空気を吸引する吸引部と、前記搬送ベルトの内周面を清掃するための清掃部材を保持可能な保持部と、を備え、前記搬送ベルトの内周面のインクに対する接触角は、前記支持部材のインクに対する接触角及び前記複数の張架ローラのインクに対する接触角よりも小さい、ことを特徴とする。
【0008】
本発明の一実施形態に係るシート搬送装置は、インクを吐出してシートに画像を形成するインクヘッドのインクを吐出する領域へシートを搬送するシート搬送装置であって、回転することでシートを搬送する無端状の搬送ベルトと、前記搬送ベルトを張架する複数の張架ローラと、前記搬送ベルトの内側に配置され、前記複数の張架ローラのうちの2つの張架ローラにより張架された領域の前記搬送ベルトの内周面を支持する支持部材と、前記搬送ベルトの内側に配置され、空気を吸引する吸引部と、前記複数の張架ローラのうちのいずれか1つの表面を清掃するための清掃部材を保持可能な保持部と、を備え、前記清掃部材により表面が清掃される張架ローラのインクに対する接触角は、前記搬送ベルトの内周面のインクに対する接触角よりも小さく、前記搬送ベルトの内周面のインクに対する接触角は、前記支持部材のインクに対する接触角、及び前記複数の張架ローラのうち前記清掃部材により表面が清掃される張架ローラ以外の他の張架ローラのインクに対する接触角よりも小さい、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置は、インクを吐出してシートに画像を形成するインクヘッドと、前記インクヘッドの下方に配置され、回転することでシートを搬送する無端状の搬送ベルトと、前記搬送ベルトの回転方向に関して、前記インクヘッドと対向する対向領域の上流側で前記搬送ベルトを張架する第一張架ローラと、前記対向領域の下流側で前記搬送ベルトを張架する第二張架ローラと、前記搬送ベルトのうち前記第一張架ローラと前記第二張架ローラにより張架された部分であって、少なくとも前記対向領域を含む部分の下方を支持する支持部材と、前記支持部材の下方に配置され、空気を吸引することで前記搬送ベルトの外周面にシートを吸着させる吸引部と、前記搬送ベルトの内周面を清掃するための清掃部材を保持可能な保持部と、を備え、前記搬送ベルトの内周面のインクに対する接触角は、前記支持部材のインクに対する接触角及び前記第一張架ローラと前記第二張架ローラそれぞれのインクに対する接触角よりも小さい、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置は、インクを吐出してシートに画像を形成するインクヘッドと、前記インクヘッドの下方に配置され、回転することでシートを搬送する無端状の搬送ベルトと、前記搬送ベルトの回転方向に関して、前記インクヘッドと対向する対向領域の上流側で前記搬送ベルトを張架する第一張架ローラと、前記対向領域の下流側で前記搬送ベルトを張架する第二張架ローラと、前記第一張架ローラよりも上流側且つ前記第二張架ローラよりも下流側で前記搬送ベルトを張架する第三張架ローラと、前記搬送ベルトのうち前記第一張架ローラと前記第二張架ローラにより張架された部分であって、少なくとも前記対向領域を含む部分の下方を支持する支持部材と、前記支持部材の下方に配置され、空気を吸引することで前記搬送ベルトの外周面にシートを吸着させる吸引部と、前記第三張架ローラの表面を清掃するための清掃部材を保持可能な保持部と、を備え、前記第三張架ローラのインクに対する接触角は、前記搬送ベルトの内周面のインクに対する接触角よりも小さく、前記搬送ベルトの内周面のインクに対する接触角は、前記支持部材のインクに対する接触角及び前記第一張架ローラと前記第二張架ローラそれぞれのインクに対する接触角よりも小さい、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ユーザは清掃部材を用いてインクミストに起因する汚れを容易に清掃することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】インクジェット記録装置を示す概略図。
図2】第一実施形態のプリントベルトユニットを示す概略図。
図3】警告画面の一例を示す図。
図4】保持部及び清掃部材について説明するための図であり、(a)清掃部材の挿入前、(b)清掃部材の挿入開始時、(c)清掃部材の挿入後。
図5】保持部と清掃部材を示す斜視図であり、(a)清掃部材の挿入前、(b)清掃部材の挿入途中、(c)清掃部材の挿入後、(d)固定部材による固定後。
図6】保持部と清掃部材を示す側面図であり、(a)清掃部材の挿入途中(圧力付加前)、(b)清掃部材の挿入途中(圧力付加開始時)、(c)清掃部材の挿入後。
図7】第二実施形態のプリントベルトユニットを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第一実施形態]
<インクジェット記録装置>
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。まず、本実施形態のインクジェット記録装置について、図1を用いて説明する。本実施形態のインクジェット記録装置100は、インクを用いてシートにインク像を形成する所謂枚葉式のインクジェット記録装置である。シートは、例えば普通紙や厚紙等の紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート等のプラスチックフィルム、封筒やインデックス紙等の特殊形状のシート、並びに布など、インクを受容可能な記録材であればよい。
【0014】
図1に示すように、インクジェット記録装置100は、給紙モジュール1000、プリントモジュール2000、乾燥モジュール3000、定着モジュール4000、冷却モジュール5000、反転モジュール6000、積載モジュール7000を備える。給紙モジュール1000から供給されるシートSは、各モジュール内を搬送経路に沿って搬送される際に各種処理が行われ、最終的に積載モジュール7000に排出される。
【0015】
なお、給紙モジュール1000、プリントモジュール2000、乾燥モジュール3000、定着モジュール4000、冷却モジュール5000、反転モジュール6000、積載モジュール7000はそれぞれが別々の筐体を有し、それら筐体が連結されてインクジェット記録装置100を構成してよい。あるいは、1つの筐体に給紙モジュール1000、プリントモジュール2000、乾燥モジュール3000、定着モジュール4000、冷却モジュール5000、反転モジュール6000、積載モジュール7000が配置されていてもよい。
【0016】
給紙モジュール1000は、シートSを収容する収納庫1500a、1500b、1500cを有し、収納庫1500a~1500cはシートSを収容するために装置正面側へ引き出し可能に設けられている。シートSは、各収納庫1500a~1500cにおいて分離ベルト及び搬送ローラにより1枚ずつ給送されて、プリントモジュール2000へ搬送される。なお、収納庫1500a~1500cは3つであることに限定されず、1つや2つあるいは4つ以上を有していてよい。給紙モジュール1000から搬送されたシートSは、作像前レジ補正部により傾きや位置が補正されてプリントモジュール2000へ搬送される。プリントモジュール2000の詳細な構成については、後述する(図2参照)。
【0017】
乾燥モジュール3000は、デカップリング部3200、乾燥ベルトユニット3300、温風吹付部3400を有する。乾燥モジュール3000は、後続の定着モジュール4000によるシートSへのインクの定着性を高めるために、シートSに塗布されたインクの液体分を減少させる。画像形成されたシートSは、乾燥モジュール3000内に配置されたデカップリング部3200に搬送される。デカップリング部3200では、上方から吹き付けられる風の風圧によりシートSとベルトとの間に摩擦力を生じさせ、ベルトによりシートSを搬送させている。こうして、ベルト上に載置されたシートSを摩擦力により搬送させることで、シートSがプリントベルトユニット2010とデカップリング部3200に亘って搬送される際のシートSのズレを防ぐようにしている。
【0018】
デカップリング部3200から搬送されたシートSは、乾燥ベルトユニット3300にて吸着搬送されて、ベルト上方に配置された温風吹付部3400から熱風が吹き付けられることにより、シートSに塗布されたインクが乾燥される。乾燥モジュール3000によりシートSに塗布されたインクが加熱され水分の蒸発が促進されることで、シートSにインクが飛び散って周囲に縁取りのような線ができる所謂コックリングが生じるのを抑制できる。なお、乾燥モジュール3000は加熱乾燥できる装置であればどのような装置を用いてもよいが、例えば温風乾燥機やヒータが好ましい。ヒータとしては、例えば電熱線、赤外線ヒータによる加熱が安全性やエネルギー効率の点から好ましい。
【0019】
定着モジュール4000は、定着ベルトユニット4100を有する。定着ベルトユニット4100は、乾燥モジュール3000から搬送されたシートSを、加熱した上ベルトユニットと下ベルトユニットの間を通過させることによりインクをシートSに定着させる。
【0020】
冷却モジュール5000は冷却部5100を複数有し、冷却部5100により定着モジュール4000から搬送された高温のシートSを冷却する。冷却部5100は、例えば外気をファンで冷却ボックス内に取り込んで冷却ボックス内の圧力を高め、冷却ボックスから圧力によりノズルを介して噴き出す風をシートSに当ててシートSを冷却する。冷却部5100は、シートSの搬送経路に対し両側に配置され、シートSの両面を冷却する。
【0021】
冷却モジュール5000には、搬送経路切換え部5002が設けられている。搬送経路切換え部5002は、反転モジュール6000にシートSを搬送する場合と、シートSの両面に画像形成する両面印刷のために両面搬送経路にシートSを搬送する場合とに応じて、シートSの搬送経路を切り換える。
【0022】
反転モジュール6000は、反転部6400を有する。反転部6400は搬送されるシートSの表裏を反転させて、積載モジュール7000に排出する際のシートSの表裏向きを変更する。積載モジュール7000は、トップトレイ7200と積載部7500を有し、反転モジュール6000から搬送されたシートSを積載する。
【0023】
両面印刷時、シートSは搬送経路切換え部5002により冷却モジュール5000の下方の搬送経路に搬送される。その後、シートSは定着モジュール4000、乾燥モジュール3000、プリントモジュール2000、給紙モジュール1000の両面搬送経路を通って、プリントモジュール2000へ戻される。定着モジュール4000の両面搬送部には、シートSの表裏を反転させる反転部4200が設けられている。プリントモジュール2000へ戻されたシートSは、画像形成されていない他方の面にもインクにより画像が形成され、乾燥モジュール3000、定着モジュール4000、冷却モジュール5000、反転モジュール6000を経て積載モジュール7000に排出される。
【0024】
<プリントモジュール>
次に、プリントモジュール2000について、図2を用いて説明する。プリントモジュール2000は制御部300を備えており、制御部300はプリントモジュール2000を制御してシートSに画像を形成させる。制御部101は、図示を省略したが、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有する。ROMやRAMには、画像形成処理などの各種プログラムや各種データが記憶される。また、RAMは、各種プログラムの実行に伴う演算処理結果などを一時的に記憶することもできる。
【0025】
プリントモジュール2000には、例えば液晶表示部210を有する操作部200が配設されている。操作部200は、液晶表示部210に各種プログラムや各種データあるいは各種表示等を表示可能である。また、操作部200はユーザが操作可能な例えばタッチパネルであってよく、ユーザのタッチ操作に応じて「画像形成ジョブ」などの各種プログラムの開始入力や各種データ入力などを受け付け可能である。操作部200は制御部300に接続され、制御部300は液晶表示部210に表示する表示内容の制御を行ったり、操作部200から入力されたデータを受信する制御を行ったりする。
【0026】
図2に示すように、プリントモジュール2000は、筐体2000a内にプリントベルトユニット2010と記録部2020とを収容している。シートSが搬送される搬送経路に対し、記録部2020はプリントベルトユニット2010と対向する位置に配置されている。記録部2020は記録ヘッド1Y、1M、1C、1Kを有し、搬送されるシートSに対して上方から記録ヘッド1Y、1M、1C、1KによりシートS上にインクを吐出することにより画像を形成する。
【0027】
インクヘッドとしての記録ヘッド1Y~1Kは、シートSの搬送方向(矢印X方向)に交差する幅方向に沿って配列された複数のノズルを有し、ノズルの吐出口からイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のインクが吐出される。こうした記録ヘッド1Y~1Kが、シートSの搬送方向(矢印X方向)に沿って複数並べられている。本実施形態では、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の4色に対応した計4つのライン型の記録ヘッド1Y~1Kを有している。
【0028】
なお、インクの色数及び記録ヘッドの数は、上記した4つに限定されない。また、インクジェット方式は、発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式等を採用することができる。各色のインクは、不図示のインクタンクからそれぞれインクチューブを介して記録ヘッド1Y~1Kに供給される。インクはインク全質量を基準として、例えば「0.1質量%~20.0質量%」の樹脂成分と水及び水溶性有機溶剤、色材、ワックス、添加剤等を含有するものである。
【0029】
シートSは、プリントベルトユニット2010により搬送される。シート搬送装置としてのプリントベルトユニット2010は、無端状の搬送ベルト3、搬送ベルト3を回転自在に張架する張架ローラ51、駆動ローラ52、テンションローラ53、ステアリングローラ54、プラテンユニット2、吸引ファン4を有する。
【0030】
搬送ベルト3は記録ヘッド1Y~1Kの鉛直方向下方に配置され、回転することでシートSを搬送する。本実施形態の場合、搬送ベルト3は回転方向に関して記録ヘッド1Y~1Kと対向する対向領域3aの両側が張架ローラ51と駆動ローラ52により張架されている。駆動ローラ52が駆動モータ320の駆動によって回転することで、搬送ベルト3は回転する。駆動部としての駆動モータ320には、搬送ベルト3を回転させる際に駆動ローラ52に係る駆動負荷(トルク)を検知する検知部としてのトルクセンサ310が配置されている。
【0031】
テンションローラ53は搬送ベルト3に向けてばね55によって付勢され、搬送ベルト3に所定の張力を与えている。ステアリングローラ54は、片端ないし中央近傍に回動中心を有し、搬送ベルト3に対して回動することでテンション差を発生させて、幅方向に搬送ベルト3を移動可能である。ステアリングローラ54は搬送ベルト3の幅方向の位置をコントロールすることにより、搬送ベルト3が回転中に幅方向の何れかの端部に寄ってしまう所謂ベルト寄りを補正する。
【0032】
シートSは、記録ヘッド1Y~1K(詳しくはノズルの吐出口)とのクリアランスを所定距離に確保すべく、回転する搬送ベルト3の外周面に吸着されて搬送される。そうするために、搬送ベルト3には全周に亘って空気が通過可能な微細な通気孔が多数形成されており、搬送ベルト3及び後述するプラテンユニット2の鉛直方向下方に吸引ファン4が配置されている。吸引部としての吸引ファン4は、空気を下方(矢印Z方向)に向かって吸引して搬送ベルト3の外周面にシートSを吸着させる。なお、ここでは2台の吸引ファン4自体を図示の位置に配置した場合を示したが、これに限らず、不図示であるが別の位置に配置した吸引ファンに接続されているダクトの吸引口が図示した吸引ファン4の位置に配置されてもよい。
【0033】
本実施形態の場合、搬送ベルト3は、張架ローラ51と駆動ローラ52により張架された部分であって少なくとも記録ヘッド1Y~1Kと対向する対向領域3aを含む部分の下方で、支持部材としてのプラテンユニット2により支持されている。吸引ファン4はプラテンユニット2の下方に配置され下方に向かって空気を吸引していることから、搬送ベルト3はプラテンユニット2に摺動しながら回転する。それ故、搬送ベルト3においてプラテンユニット2により支持される箇所の平面度(以下、搬送ベルト3の平面度と呼ぶ)は、プラテンユニット2における搬送ベルト3と摺動する摺動面の平面度(以下、プラテンユニット2の平面度と呼ぶ)にならう。また、例えシートSにカールなどが生じていたとしても、シートSも吸引ファン4によって下方へと吸引されて搬送されることから、搬送ベルト3の平面度ひいてはプラテンユニット2の平面度にならう。
【0034】
このように、シートSと記録ヘッド1Y~1Kとのクリアランスを所定距離に維持したままシートSを搬送させるには、プラテンユニット2の平面度を高くすればよい。そうすると、シートSと記録ヘッド1Y~1Kとのクリアランスが所定距離に維持された状態で、記録ヘッド1Y~1KからシートSにインクが吐出されることにより、シートSには高精度且つ高画質の画像が形成される。本実施形態では、削りだしで高い精度に加工されている金属の一体物により高い平面度を実現したプラテンユニット2を用いている。
【0035】
インクジェット記録装置100では、シートSが搬送ベルト3により記録ヘッド1Y~1Kの直下に搬送されると、記録ヘッド1Y~1Kが備えるノズルからシートSに対しインク液滴が吐出される。これにより、シートSに画像が形成される。ただし、インク液滴の吐出に付随して小量であるがインクミストが発生し、インクミストが空気中を浮遊する。搬送ベルト3には、シートSを吸着させるために全周にわたって微細な通気孔が多数形成されていることから、空気中を浮遊するインクミストのほとんどは通気孔を通じて吸引ファン4に吸引される。吸引ファン4に吸引されたインクミストは、例えば吸引ファン4の吸気口に取り付けられた回収フィルタ10により回収される。
【0036】
しかし、一部のインクミストは、プラテンユニット2や搬送ベルト3あるいは搬送ベルト3を張架する各ローラ(51~54)に付着する。それらに付着したインクミストは液状であり、時間が経つにつれて固形化して汚れとなって顕在化する。このインクミストが固形化した固形物の量が増えると、シートSの搬送に影響してしまい、シートSに形成される画像に画像不良が生じ得る。即ち、固形物が蓄積すると、搬送ベルト3とプラテンユニット2との摩擦力や、搬送ベルト3と各ローラ(51~54)との摩擦力が大きくなり、駆動モータ320の駆動負荷が上昇して駆動不良が生じる虞がある。そうなると、搬送ベルト3によるシートSの搬送に影響してしまい、シートSに形成される画像に画像不良が生じ得る。そこで、ユーザは後述する清掃部材500(図4(b)参照)をプリントベルトユニット2010に装着して、清掃部材500によりインクミストに起因して生じる汚れを清掃する必要がある。
【0037】
本実施形態の場合、駆動ローラ52を駆動する駆動モータ320にトルクセンサ310が配置されており、制御部300はトルクセンサ310の検知結果に基づいて駆動モータ320の駆動負荷を検知している。そして、駆動モータ320の駆動負荷が閾値以上になると、液晶表示部201は制御部300による制御に従って警告画面を表示する。図3に、液晶表示部201に表示される警告画面の一例を示す。図3に示すように、警告画面には、シートSの搬送エラーが生じる可能性があり、ユーザに対し清掃部材500を用いて清掃を行うように促す旨の警告が表示される。こうした警告画面が液晶表示部210に表示されることで、ユーザは清掃部材500を用いてプリントベルトユニット2010においてインクミストに起因して生じる汚れを清掃するタイミングを把握することができる。
【0038】
ところで、従来では、インクミストに起因する汚れがプラテンユニット2に比較的に多く生じていたので、ユーザは清掃部材500を用いてプラテンユニット2の清掃を行わななければならなかった。しかし、プラテンユニット2には搬送ベルト3が当接され、またプラテンユニット2の下方には吸引ファン4が配置されていることから、そのままではプラテンユニット2へのアクセスがしにくく清掃部材500を装着し難い。そこで、ユーザは搬送ベルト3のテンションを緩めたり、また吸引ファン等を取り外したりしてから清掃部材500を装着するしかなく、プラテンユニット2を清掃するのに面倒であり手間がかかっていた。
【0039】
上記点に鑑み、本実施形態では、搬送ベルト3にインクミストに起因する汚れを生じさせやすくした。搬送ベルト3に汚れを生じさせやすくするため、搬送ベルト3は、材質として樹脂例えばポリエチレンテレフタレート(PET)により形成されたものを用いる。これに対し、プラテンユニット2には、表面にフッ素がコーティングされたものを用いる。張架ローラ51と駆動ローラ52とステアリングローラ54は、材質として搬送ベルト3との摩擦力が大きいゴム材、例えばウレタンにより形成されたものを用いる。テンションローラ53は、材質として搬送ベルト3との摩擦力が小さい金属により形成されたものを用いる。
【0040】
本実施形態では、液体に対する接触角が「搬送ベルト3<張架ローラ51、駆動ローラ52、テンションローラ53、ステアリングローラ54」であり、且つ、「搬送ベルト3<プラテンユニット2」となるように、それぞれ上記した材質のものが用いられる。例えば、フッ素コーティングされたプラテンユニット2のインクに対する接触角を基準値「1」とした場合に、ウレタン製の張架ローラ51と駆動ローラ52とステアリングローラ54のインクに対する接触角は基準値に対し「1/1.7」倍、金属製のテンションローラ53のインクに対する接触角は「1/1.5」倍、PET製の搬送ベルト3のインクに対する接触角は基準値に対し「1/3.02」倍である。
【0041】
このように、本実施形態では、搬送ベルト3の液体に対する接触角が、張架ローラ51、駆動ローラ52、テンションローラ53、ステアリングローラ54、プラテンユニット2それぞれの液体に対する接触角よりも小さい。なお、搬送ベルト3、張架ローラ51、駆動ローラ52、テンションローラ53、ステアリングローラ54、プラテンユニット2は、液体に対する接触角が上記した関係を満たすならば、上記した材質に限られない。
【0042】
なお、液体に対する接触角の測定方法としては、例えば液滴法が挙げられる。液滴法では、液滴を試料面に接触させて着滴し、着滴後にパソコン等により取得した画像を解析し、試料面とのなす角度を接触角θとして測定する。接触角を測定する装置としては、例えば全自動接触角計「Dmo-702」(協和界面科学株式会社製)などが挙げられる。なお、測定環境については温度25℃湿度50%で行い、測定方法については、液滴を試料面に着液してから0.5秒後の角度を測定し、5点を平均した値を採用する。
【0043】
上記のように、インクミストはプラテンユニット2、搬送ベルト3、各ローラ(51~54)に付着し得るが、それぞれに付着したインクミストは固体になるまでは液体である。それぞれに付着したインクミストは、液体に対する接触角が小さい方(つまりは固体の表面自由エネルギーの大きい方)に移動する。本実施形態では、インクミストがプラテンユニット2や各ローラ(51~54)から搬送ベルト3へ移動するようにして、清掃部材500により搬送ベルト3を清掃できるようにしている。これは、プリントベルトユニット2010内において搬送ベルト3の近傍はプラテンユニット2の近傍に比べると、ユーザがアクセスしやすい箇所に清掃部材500を装着するためのスペースを確保しやすいからである。そこで、プリントベルトユニット2010には、清掃部材500が装着されたときに搬送ベルト3に接触する位置に、清掃部材500を保持可能な保持部400が設けられている。以下、清掃部材500及び保持部400について、図2を参照しながら図4(a)乃至図6(c)を用いて説明する。
【0044】
図2及び図4(a)に示すように、保持部400は搬送ベルト3の内周面を清掃するために清掃部材500を保持可能に、搬送ベルト3の回転方向においてテンションローラ53とステアリングローラ54との間に配置されている。保持部400は、シートSの搬送方向(矢印X方向)に交差する幅方向に延設されており、両端部がプリントベルトユニット2010の筐体の一部である対向配置された側板2010aに固定されている。
【0045】
図4(b)に示すように、清掃部材500は保持部400に対し幅方向へ挿入される。清掃部材500は、保持部400のレール部410にスライド移動可能に支持されている。清掃部材500は清掃土台520と不織布550とを有し、不織布550が清掃土台520に巻き回されている。不織布550は、清掃土台520に交換可能に設けられる。図4(b)では、図示の都合上、不織布550が清掃土台520から取り外されている状態を示したが、実際には不織布550が清掃土台520に巻き回された状態で、清掃部材500は保持部400に対し挿入される。なお、以下に示す図5(a)乃至図6(c)においても、清掃部材500は不織布550が清掃土台520から取り外されている状態を示す。
【0046】
図4(c)に示すように、清掃部材500は保持部400に挿入された後、清掃部材500と共に用意される固定部材600により保持部400に固定される。清掃部材500は固定部材600により保持部400に固定された状態で、不織布550の一部が搬送ベルト3の内周面に当接している。清掃部材500が固定部材600により固定されることで、不織布550が搬送ベルト3の回転に応じて移動することなく搬送ベルト3の内周面を摺擦するようにしている。
【0047】
図5(a)乃至図6(c)に示すように、保持部400は清掃部材500をシートSの搬送方向に交差する幅方向に沿ってスライド移動可能に支持し、搬送ベルト3に対し清掃部材500を案内するレール部410を有する。レール部410は幅方向に延設され、清掃部材500が挿入されるときに清掃部材500を搬送ベルト3から離した状態でスライド移動可能に支持する。レール部410は、保持部400においてシートSの搬送方向上流側と下流側にそれぞれ設けられている。
【0048】
清掃部材500は、清掃土台520の挿入方向下流端部に、鉛直方向上方に延設されている係合部510を有する。係合部510はレール部410に係合する係合突起511を有し、図5(a)に示すように、ユーザは係合突起511をレール部410に係合させた状態で清掃部材500を保持部400に挿入する。ユーザが清掃部材500を手前側から奥側へと挿入する際に、係合突起511はレール部410から外れないので、図5(b)及び図6(a)に示すように、清掃部材500はレール部410に沿って搬送ベルト3から離れた状態に維持されたまま奥まで案内される。
【0049】
保持部400には、レール部410の挿入方向下流に位置決め部420が形成されている。位置決め部420は、レール部410により搬送ベルト3から離れた状態で支持されていた清掃部材500を、清掃部材500が装着されたときに搬送ベルト3に接触する位置に位置決めするものである。図6(a)に示すように、位置決め部420は、挿入方向下流側が上流側よりも下方へ下がるように傾斜状に形成された傾斜面を有している。清掃部材500の挿入に従って、図6(b)に示すように、係合突起511は位置決め部420の径斜面に突き当たり、その後は傾斜面を摺擦しながら下方へと案内される。これにより、清掃部材500は搬送ベルト3の内周面に近づいていく。そして、最終的には図6(c)に示すように、清掃部材500は位置決め部420により搬送ベルト3に接触する位置に位置決めされる。
【0050】
そして、清掃部材500は、清掃土台520の挿入方向上流端に、鉛直方向上方に延設された固定支持板530を有する。固定支持板530には、図5(a)及び図5(b)に示すように、位置決め孔530aと固定孔530bとが上下する位置に形成されている。他方、保持部400には、レール部410の挿入方向上流端面から突出するように位置決め突起430と固定突起440とが上下する位置に形成されている。図5(c)及び図6(c)に示すように、清掃部材500が位置決め部420により搬送ベルト3に接触する位置に位置決めされた状態で、位置決め突起430が位置決め孔530aに嵌合し、固定突起440が固定孔530bに嵌合する。その後、図5(d)に示すように、ユーザは固定部材600を固定孔530bから突出した固定突起440に取り付ける。これにより、清掃部材500は、清掃土台520に巻き回されている不織布550が搬送ベルト3に対し幅方向に亘って均一な圧力で接触した状態で、保持部400に固定される。
【0051】
以上のように、本実施形態では、記録ヘッド1Y~1KからシートSに対しインクが吐出されることに伴い生じるインクミストがプラテンユニット2に付着しても、付着したインクミストが搬送ベルト3に移動する。そして、プリントベルトユニット2010には、清掃部材500が装着されたときに搬送ベルト3に接触する位置に、清掃部材500を保持可能な保持部400が設けられる。ユーザは保持部400に清掃部材500を挿入することで、プラテンユニット2に比べて搬送ベルト3に比較的容易にアクセスできることから、従来に比べインクミストに起因する汚れを容易に清掃することができる。
【0052】
なお、上述した実施形態では、保持部400がテンションローラ53とステアリングローラ54との間に配置された場合を示したが、保持部400を設ける位置はこれに限らない。保持部400は、複数のローラ(51~54)により張架された搬送ベルト3の複数の張架領域のうち、プラテンユニット2により支持された内周面を有する張架領域以外の張架領域の内周面に、保持部400に装着された清掃部材500が接触するように配置されていればよい。例えば、スペースがあるならば、保持部400は搬送ベルト3の回転方向において、駆動ローラ52とテンションローラ53との間、あるいはステアリングローラ54と張架ローラ51との間に配置されてもよい。
【0053】
[第二実施形態]
上述した実施形態では、ユーザにとって清掃部材500を装着しやすい搬送ベルト3にインクミストに起因する汚れを生じさせやすくしたが、これに限らない。例えば、搬送ベルト3を張架する各ローラ(51~54)のいずれか1つにインクミストに起因する汚れを生じさせやすくし、そのローラの表面を清掃部材500により清掃できるようにしてもよい。そこで、第二実施形態では、テンションローラ53にインクミストに起因する汚れを生じさせやすくした。図7に、第二実施形態のプリントベルトユニット2010Aを示す。
【0054】
本実施形態では、テンションローラ53に汚れを生じさせやすくするため、テンションローラ53は、材質として例えばウレタンにより形成されたものを用いる。これに対し、プラテンユニット2には、表面にフッ素がコーティングされていないものを用いる。張架ローラ51と駆動ローラ52とステアリングローラ54は、材質としてステンレスにより形成されたものを用いる。搬送ベルト3は、材質としてアルミニウムにより形成されたものを用いる。
【0055】
本実施形態では、液体に対する接触角が「テンションローラ53<搬送ベルト3<プラテンユニット2、張架ローラ51、駆動ローラ52、ステアリングローラ54」となるように、それぞれ上記した材質のものが用いられる。例えば、金属製のプラテンユニット2のインクに対する接触角を基準値「1」とした場合に、金属製の張架ローラ51、駆動ローラ52、ステアリングローラ54のインクに対する接触角は基準値と略同じ、金属製の搬送ベルト3のインクに対する接触角は「1/1.5」倍、ウレタン製のテンションローラ53のインクに対する接触角は「1/1.7」倍である。
【0056】
このように、本実施形態では、テンションローラ53の液体に対する接触角が、搬送ベルト3の液体に対する接触角よりも小さい。そして、搬送ベルト3の液体に対する接触角が、プラテンユニット2の液体に対する接触角、及びテンションローラ53以外の張架ローラ51、駆動ローラ52、ステアリングローラ54それぞれの液体に対する接触角よりも小さい。なお、搬送ベルト3、張架ローラ51、駆動ローラ52、テンションローラ53、ステアリングローラ54、プラテンユニット2は、液体に対する接触角が上記した関係を満たすならば、上記した材質に限られない。
【0057】
本実施形態では、インクミストがプラテンユニット2、張架ローラ51、駆動ローラ52、ステアリングローラ54から搬送ベルト3へ移動し、搬送ベルト3からテンションローラ53へ移動するようにして、清掃部材500によりテンションローラ53を清掃できるようにしている。
【0058】
そこで、図7に示すように、プリントベルトユニット2010には、清掃部材500が装着されたときにテンションローラ53に接触する位置に、清掃部材500を保持可能な保持部450が設けられている。保持部450は、複数のローラ(51~54)により張架された搬送ベルト3の複数の張架領域のうち、プラテンユニット2により支持された内周面を有する張架領域を形成する張架ローラ51と駆動ローラ52以外のローラ(53、54)の表面に、保持部450に装着された上記した清掃部材500が接触するように配置されていればよい。保持部450は、そうしたローラのうち交換が容易なローラに清掃部材500が接触するように配置されるのが好ましい。清掃部材500は、保持部450に対し幅方向へ挿入される。なお、保持部450の構成は上述した保持部400と同様であってよいことから、ここでは説明を省略する。
【0059】
以上のように、本実施形態では、記録ヘッド1Y~1KからシートSに対しインクが吐出されることに伴い生じるインクミストがプラテンユニット2に付着しても、付着したインクミストがテンションローラ53に移動する。そして、プリントベルトユニット2010には、清掃部材500が装着されたときにテンションローラ53に接触する位置に、清掃部材500を保持可能な保持部450が設けられる。ユーザは保持部450に清掃部材500を挿入することで、プラテンユニット2に比べてテンションローラ53に比較的容易にアクセスできることから、従来に比べインクミストに起因する汚れを容易に清掃することができる。
【符号の説明】
【0060】
1Y、1M、1C、1K…インクヘッド(記録ヘッド)、2…支持部材(プラテンユニット)、3…搬送ベルト、4…吸引部(吸引ファン)、51、52、53、54…張架ローラ(第一張架ローラ、第二張架ローラ、第三張架ローラ)、100…インクジェット記録装置、210…表示部(液晶表示部)、310…検知部(トルクセンサ)、320…駆動部(駆動モータ)、400(450)…保持部、410…レール部、420、430…位置決め部、500…清掃部材、2010(2010A)…シート搬送装置(プリントベルトユニット)、S…シート
図1
図2
図3
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図7