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  • 特開-半導体装置 図1
  • 特開-半導体装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163409
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20241115BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20241115BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
H01L29/78 657D
H01L29/78 653C
H01L29/78 652M
H01L29/78 652P
H01L29/78 655B
H01L29/78 655D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078956
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】ミネベアパワーデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】白石 正樹
(57)【要約】
【課題】
RC-IGBTにおけるダイオード領域のリカバリー損失を効果的に低減する。
【解決手段】
半導体装置1は、1つのチップ内にIGBT領域31とダイオード領域32とを有し、IGBT領域31のトレンチ6(第1のトレンチ)とダイオード領域32のトレンチ6(第2のトレンチ)は、ともに幅広のトレンチであるとともに、ダイオード領域32は、第1導電型のドリフト層2よりも表面側に設けられた第2導電型の第1半導体層20と、第1導電型のドリフト層2よりも裏面側に設けられた第1導電型の第2半導体層23および第2導電型のキャリア排出層26とを有し、第2半導体層23とキャリア排出層26とが交互に配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのチップ内にIGBT領域とダイオード領域とを有し、
前記IGBT領域のIGBTは、第1導電型のドリフト層と、前記ドリフト層よりも表面側に設けられた第2導電型の第1のボディ層および第2のボディ層と、前記第1のボディ層および前記第2のボディ層よりも表面側に設けられた第1導電型のエミッタ層と、前記ドリフト層よりも裏面側に設けられた第2導電型のコレクタ層と、前記第1のボディ層および前記第2のボディ層の間に設けられた第1のトレンチと、を有し、
前記第1のトレンチは、前記第1のボディ層側の側壁にゲート絶縁膜を介して設けられた第1のゲート電極と、前記第2のボディ層側の側壁にゲート絶縁膜を介して設けられた第2のゲート電極と、トレンチ内絶縁膜とを有するとともに、前記第1のゲート電極と前記第2のゲート電極とが間に前記トレンチ内絶縁膜を介して離間しており、
前記ダイオード領域のダイオードは、前記ドリフト層と、前記ドリフト層よりも表面側に設けられた第2導電型の第1の第1半導体層および第2の第1半導体層と、前記ドリフト層よりも裏面側に設けられた第1導電型の第2半導体層と、前記第1の第1半導体層および前記第2の第1半導体層の間に設けられた第2のトレンチと、を有し、
前記第2のトレンチは、前記第1の第1半導体層側の側壁にダイオード領域トレンチ絶縁膜を介して形成された第1のダイオード領域トレンチ電極と、前記第2の第1半導体層側の側壁にダイオード領域トレンチ絶縁膜を介して形成された第2のダイオード領域トレンチ電極と、前記トレンチ内絶縁膜とを有するとともに、前記第1のダイオード領域トレンチ電極と前記第2のダイオード領域トレンチ電極とが間に前記トレンチ内絶縁膜を介して離間しており、
前記ダイオード領域は、前記ドリフト層よりも裏面側に設けられた第2導電型のキャリア排出層を有するとともに、前記第2半導体層と前記キャリア排出層とが交互に配置されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の第1半導体層および前記第2の第1半導体層が、前記キャリア排出層と重なることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記第2のトレンチの幅が、前記第1の第1半導体層および前記第2の第1半導体層の幅よりも大きいことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記第1のトレンチの幅と前記第2のトレンチの幅とが異なることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記IGBT領域と前記ダイオード領域との間に境界領域を有し、
前記境界領域は、前記キャリア排出層を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記境界領域は、第3のトレンチを有し、前記キャリア排出層は、前記境界領域の全体に設けられていることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
同一チップ内にIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)とダイオードとを内蔵するRC-IGBT(RC:Reverse-Conducting、逆導通IGBT)は、IGBTとダイオードのターミネーション領域を共通化できるため、チップサイズ低減ができるメリットがある。また、IGBTとダイオードが動作するタイミングがそれぞれ異なるため、IGBT領域とダイオード領域とのうち一方で発生した損失による熱が他方に分散され、チップ全体で放熱できるため、熱抵抗が低減できるメリットもある。
【0003】
一方、IGBTとダイオードを同一チップ内に作りこむため、各々の素子の同時最適化が難しく、特にダイオード領域のライフタイム制御が困難であるという課題がある。
【0004】
ダイオード領域では、ダイオード導通時に表面のp層からホール注入されて蓄積され、ダイオードリカバリー時にリカバリー電流が発生して損失が発生する。ここで、ホールの蓄積が多いほどリカバリー電流が大きいので、リカバリー損失を低減するためには、ホール注入の低減(低注入化)が必要となる。
【0005】
RC-IGBTのダイオード領域のリカバリー損失を低減するための技術としては、例えば、特許文献1および特許文献2がある。
【0006】
特許文献1の図12には、領域A(IGBT領域)に第1の溝6(トレンチ)が複数設けられ、これらの溝は、第1の間隔で等間隔に設けられており、領域B(ダイオード領域)では、第2の溝10(トレンチ)が複数設けられ、これらの溝は、第2の間隔で等間隔に設けられており、上記第2の間隔を、上記第1の間隔よりも小さくするようにした半導体装置の構成が記載されている。特許文献1の構成によれば、領域B(ダイオード領域)により多くの溝が設けられているため、ダイオードがオンした時にダイオードのアノードとして寄与するPベース層2の面積が相対的に減少するため、Pベース層2からのホールの注入が抑制され、第1主面近傍のキャリア密度が減少し、リカバリー動作時のピーク電流を下げることが可能となり、ダイオードのリカバリー特性を改善することができるとされている。
【0007】
また、特許文献2の図10には、ダイオード領域20の裏面側に、n+型カソード層26とp+型キャリア排出層27とを有し、IGBT領域とダイオード領域20との間の境界領域50の表面側にはダイオード領域20のp型アノード層25よりもp型不純物の濃度が低いp-型アノード層55を有し、裏面側にはp型コレクタ層56を有する半導体装置の構成が記載されている。特許文献2の構成によれば、ダイオードの順方向動作時に、第1主面側のp型アノード層25から注入されたホールは、p+型キャリア排出層27を介して排出され、n-型ドリフト層1内のホール蓄積量を抑えることができ、このため、リカバリー動作時にリカバリー損失を低減することができる(段落0101参照)。また、ダイオードの順方向動作時に、境界領域50のp型不純物の濃度が低いp-型アノード層55からのホール注入が少なく、ダイオード領域20へのホールの流入も抑えられるため、リカバリー損失を低減することができる(段落0102参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008-53648号公報
【特許文献2】特開2022-15861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1では、RC-IGBTのダイオード部のPベース層2の面積を減少させることで、ホール注入を抑制するものであるが、特許文献1の手法では、トレンチ間隔を小さくすることで、Pベース層2の面積を減少させているため、トレンチの加工の限界で、Pベース層2の面積の低減には限界がある。
【0010】
また、特許文献2では、p+型キャリア排出層27を介してホールを排出することができるが、表面側の構造は、トレンチで仕切られているとはいえ、ほぼ全面にp型アノード層25が存在するため、表面側からのホール注入量が多くなるので、ホール蓄積量を抑えてリカバリー損失を低減するには限界がある。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、RC-IGBTにおけるダイオード領域のリカバリー損失を効果的に低減できる半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決するために、本発明の半導体装置は、1つのチップ内にIGBT領域とダイオード領域とを有し、前記IGBT領域のIGBTは、第1導電型のドリフト層と、前記ドリフト層よりも表面側に設けられた第2導電型の第1のボディ層および第2のボディ層と、前記第1のボディ層および前記第2のボディ層よりも表面側に設けられた第1導電型のエミッタ層と、前記ドリフト層よりも裏面側に設けられた第2導電型のコレクタ層と、前記第1のボディ層および前記第2のボディ層の間に設けられた第1のトレンチと、を有し、前記第1のトレンチは、前記第1のボディ層側の側壁にゲート絶縁膜を介して設けられた第1のゲート電極と、前記第2のボディ層側の側壁にゲート絶縁膜を介して設けられた第2のゲート電極と、トレンチ内絶縁膜とを有するとともに、前記第1のゲート電極と前記第2のゲート電極とが間に前記トレンチ内絶縁膜を介して離間しており、前記ダイオード領域のダイオードは、前記ドリフト層と、前記ドリフト層よりも表面側に設けられた第2導電型の第1の第1半導体層および第2の第1半導体層と、前記ドリフト層よりも裏面側に設けられた第1導電型の第2半導体層と、前記第1の第1半導体層および前記第2の第1半導体層の間に設けられた第2のトレンチと、を有し、前記第2のトレンチは、前記第1の第1半導体層側の側壁にダイオード領域トレンチ絶縁膜を介して形成された第1のダイオード領域トレンチ電極と、前記第2の第1半導体層側の側壁にダイオード領域トレンチ絶縁膜を介して形成された第2のダイオード領域トレンチ電極と、前記トレンチ内絶縁膜とを有するとともに、前記第1のダイオード領域トレンチ電極と前記第2のダイオード領域トレンチ電極とが間に前記トレンチ内絶縁膜を介して離間しており、前記ダイオード領域は、前記ドリフト層よりも裏面側に設けられた第2導電型のキャリア排出層を有するとともに、前記第2半導体層と前記キャリア排出層とが交互に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の半導体装置によれば、RC-IGBTにおけるダイオード領域のリカバリー損失を効果的に低減できる。
【0014】
なお、上記した以外の課題、構成及び効果については、下記する実施例の説明により、明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1の半導体装置の断面図。
図2】実施例2の半導体装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。各図、各実施例において、同一または類似の構成要素については同じ符号を付け、重複する説明は省略する。
【実施例0017】
図1は、実施例1の半導体装置の断面図である。
【0018】
本実施例では、第1導電型がn型、第2導電型がp型である場合を例に説明する。この場合、後述するダイオード領域32の第1半導体層20はアノード層となり、第2半導体層23はカソード層となる。なお、第1導電型がp型、第2導電型がn型であってもよく、この場合は、第1半導体層20はカソード層となり、第2半導体層23はアノード層となる。また、キャリアについてのホールとの記載は、電子と読み替えればよい。
【0019】
本実施例の半導体装置1は、1つのチップ内にIGBT領域31とダイオード領域32とを有するRC-IGBTである。
【0020】
IGBT領域31のIGBTは、第1導電型のドリフト層2と、ドリフト層2よりも表面側に設けられた第2導電型のボディ層3と、ボディ層3よりも表面側に設けられた第1導電型のエミッタ層4と、ドリフト層2よりも裏面側に設けられた第2導電型のコレクタ層10と、互いに隣接する2つのボディ層3の間に設けられたトレンチ6(第1のトレンチ)とを有する。
【0021】
ここで、IGBT領域31のトレンチ6(第1のトレンチ)は、幅広のトレンチとなっており、一般的なトレンチゲートに用いられる幅の狭いトレンチとは異なり、トレンチ6の内部に2つのゲート電極7を有している。具体的には、互いに隣接する2つのボディ層3のうち、一方を第1のボディ層、他方を第2のボディ層としたとき、トレンチ6は、第1のボディ層側の側壁にゲート絶縁膜8を介して設けられたゲート電極7(第1のゲート電極)と、第2のボディ層側の側壁にゲート絶縁膜8を介して設けられたゲート電極7(第2のゲート電極)と、トレンチ内絶縁膜13とを有するとともに、第1のゲート電極と第2のゲート電極とが間にトレンチ内絶縁膜13を介して離間している構成となっている。このような構造はサードゲート構造とも呼ばれ、チャネル領域の反対側を厚いトレンチ内絶縁膜13で覆うため、ゲートとコレクタの対向面積が小さくなるので帰還容量を小さくできるという利点がある。ゲート電極7には、図示しない箇所でゲート配線およびゲートパッドと接続されゲート電位Gが印加される。
【0022】
IGBT領域31のIGBTは、他に、表面側に設けられたエミッタ電極12と、層間絶縁膜15と、ボディ層3よりも高濃度の第2導電型のコンタクト層5と、トレンチ6の内部に設けられたフィールドプレート電極14と、裏面側に設けられたコレクタ電極11と、ドリフト層2とコレクタ層10との間に設けられドリフト層2よりも高濃度の第1導電型のバッファ層9とを有している。エミッタ電極12は、層間絶縁膜15に設けられたコンタクトホールとボディ層3に接して設けられたコンタクト層5を介してボディ層3に接続されている。また、エミッタ電極12は、エミッタ層4にも接続されている。さらに、エミッタ電極12は、フィールドプレート電極14にも接続され、フィールドプレート電極14にエミッタ電位Eを印加している。
【0023】
ダイオード領域32のダイオードは、IGBT領域31のIGBTと同時に形成されるため、一部が類似した構造となっている。
【0024】
ダイオード領域32のダイオードは、ドリフト層2と、ドリフト層2よりも表面側に設けられた第2導電型の第1半導体層20と、ドリフト層2よりも裏面側に設けられた第1導電型の第2半導体層23と、互いに隣接する2つの第1半導体層20の間に設けられたトレンチ6(第2のトレンチ)とを有する。
【0025】
ダイオード領域32のトレンチ6(第2のトレンチ)も、IGBT領域31のトレンチ6(第1のトレンチ)と同様に、幅広のトレンチとなっている。互いに隣接する2つの第1半導体層20の一方を第1の第1半導体層、他方を第2の第1半導体層としたとき、第2のトレンチは、第1の第1半導体層側の側壁にダイオード領域トレンチ絶縁膜22を介して形成されたダイオード領域トレンチ電極21(第1のダイオード領域トレンチ電極)と、第2の第1半導体層側の側壁にダイオード領域トレンチ絶縁膜22を介して形成されたダイオード領域トレンチ電極21(第2のダイオード領域トレンチ電極)と、トレンチ内絶縁膜13とを有するとともに、第1のダイオード領域トレンチ電極と第2のダイオード領域トレンチ電極とが間にトレンチ内絶縁膜13を介して離間している構成となっている。ダイオード領域トレンチ電極21には、図示しない箇所でエミッタ電極12と接続されエミッタ電位Eが印加される。なお、これに限られず、ダイオード領域トレンチ電極21にゲート電位Gを印加するようにしてもよい。
【0026】
ダイオード領域32のダイオードは、他に、表面側に設けられた第1電極24と、層間絶縁膜15と、第1半導体層20よりも高濃度の第2導電型のコンタクト層5と、トレンチ6の内部に設けられたフィールドプレート電極14と、裏面側に設けられた第2電極25と、ドリフト層2と第2半導体層23との間に設けられドリフト層2よりも高濃度の第1導電型のバッファ層9とを有している。第1電極24は、エミッタ電極12と一体で形成され、エミッタ電極12に接続されている。したがって、本実施例では、アノード電極である第1電極24は、アノード電位Aであるとともに、エミッタ電位Eと同じ電位となっている。また、第2電極25は、コレクタ電極11と一体で形成され、コレクタ電極11に接続されている。第1電極24は、層間絶縁膜15に設けられたコンタクトホールと第1半導体層20に接して設けられたコンタクト層5を介して第1半導体層20に接続されている。また、エミッタ電極12は、フィールドプレート電極14にも接続され、フィールドプレート電極14にアノード電位Aを印加している。
【0027】
本実施例の構造によれば、ダイオード領域32のトレンチ6(第2のトレンチ)を幅広のトレンチにしたことにより、ダイオード領域トレンチ幅WDTを大きくできるので、第1半導体層20の総面積を小さくすることができる。したがって、ダイオード導通時に表面側の第1半導体層20からキャリアであるホールが注入される量を低減(低注入化)することができ、蓄積されるホールの量が減るので、ダイオードリカバリー時に発生するリカバリー電流も低減し、リカバリー損失を低減することができる。また、幅広のトレンチであるため、第1半導体層20の総面積を小さくするために微細なトレンチを多数設ける必要がなく、トレンチの微細加工の限界の影響を受けにくい。なお、第1半導体層20の総面積をより小さくするために、第1半導体層の幅WDFSをダイオード領域トレンチ幅WDTよりも小さくすることも可能であるが、これに限られない。また、本実施例ではダイオード領域トレンチ幅WDTをIGBT領域トレンチ幅WITと同じにした例を示しているが、これに限られない。
【0028】
さらに、本実施例の半導体装置1では、ダイオード領域32は、ドリフト層2よりも裏面側に設けられた第2導電型のキャリア排出層26を有するとともに、第2半導体層23とキャリア排出層26とが交互に配置されている。これにより、ダイオード導通時に蓄積されたキャリアであるホールをキャリア排出層26から排出することができ、蓄積されるキャリアの量を低減できるので、ダイオードリカバリー時に発生するリカバリー電流も低減し、リカバリー損失をさらに低減することができる。
【0029】
このように、本実施例の半導体装置1では、ダイオード領域32のトレンチ6(第2のトレンチ)を幅広のトレンチにするとともに、裏面側にキャリア排出層26を設けることで、リカバリー損失を効果的に低減できる。
【0030】
キャリア排出層26は、第1半導体層20と重なる位置に設けられていることが望ましい。これにより、第1半導体層20と第2半導体層23とが対向しなくなるので、ダイオード導通時に第1半導体層20からキャリアであるホールが注入されにくくなり、注入されるキャリアの量を低減することができる。なお、注入されるキャリアの量をより低減するためには第1半導体層20の全体がキャリア排出層26と重なることが望ましいが、これに限られない。
【0031】
また、本実施例の半導体装置1のように、IGBT領域31とダイオード領域32との間に境界領域33を有し、境界領域33は、キャリア排出層26を有する構成とすることが望ましい。ここで、境界領域33は、境界領域33のトレンチ6(第3のトレンチ)を有し、キャリア排出層26は、境界領域33の全体に設けられていることが望ましい。
【0032】
境界領域33では、ダイオードリカバリー時にリカバリー電流が集中しやすいため、キャリア排出層26を設けることでキャリア蓄積を抑制し、リカバリー電流を低減することで、リカバリー電流が集中することで生じる破壊を抑制できるとともに、リカバリー損失を低減することができる。
【0033】
なお、境界領域33における構造は、IGBT領域31やダイオード領域32における構造と類似している。境界領域33では、エミッタ層4と第2半導体層23は形成されていない。また、境界領域33のトレンチ6(第3のトレンチ)は、境界領域トレンチ電極27と境界領域トレンチ絶縁膜28とトレンチ内絶縁膜13とフィールドプレート電極14を有しており、境界領域トレンチ電極27とフィールドプレート電極14にはエミッタ電位Eが印加されているが、これに限られない。
【0034】
本実施例において、不純物濃度は、ドリフト層2が低濃度のn-、エミッタ層4が高濃度のn+、コンタクト層5が高濃度のp+、第2半導体層23が高濃度のn+、それ以外はnまたはpである例を用いて説明しているが、これに限られず、本実施例で意図する動作が可能な範囲で適宜変更可能である。
【実施例0035】
図2は、実施例2の半導体装置の断面図である。
【0036】
実施例2は実施例1の変形例であり、第1のトレンチの幅と第2のトレンチの幅とが異なる点で実施例1と相違する。
【0037】
本実施例では、ダイオード領域トレンチ幅WDTをIGBT領域トレンチ幅WITよりも大きくした例を示しているが、これに限られない。
【0038】
本実施例によれば、ダイオード領域トレンチ幅WDTとIGBT領域トレンチ幅WITとを独立に調整することができるので、IGBT領域31の特性とダイオード領域32の特性、特にダイオード領域32のリカバリー特性を独立に調整することができる。
【0039】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は実施例に記載された構成に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で種々の変更が可能である。また、各実施例で説明した構成の一部または全部を組み合わせて適用してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 半導体装置
2 ドリフト層
3 ボディ層
4 エミッタ層
5 コンタクト層
6 トレンチ
7 ゲート電極
8 ゲート絶縁膜
9 バッファ層
10 コレクタ層
11 コレクタ電極
12 エミッタ電極
13 トレンチ内絶縁膜
14 フィールドプレート電極
15 層間絶縁膜
20 第1半導体層
21 ダイオード領域トレンチ電極
22 ダイオード領域トレンチ絶縁膜
23 第2半導体層
24 第1電極
25 第2電極
26 キャリア排出層
27 境界領域トレンチ電極
28 境界領域トレンチ絶縁膜
31 IGBT領域
32 ダイオード領域
33 境界領域
WIT IGBT領域トレンチ幅
WDT ダイオード領域トレンチ幅
WDFS 第1半導体層の幅
G ゲート電位
E エミッタ電位
A アノード電位
図1
図2