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特開2024-163410縮毛矯正のための毛髪用組成物又はキット、及び縮毛矯正方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163410
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】縮毛矯正のための毛髪用組成物又はキット、及び縮毛矯正方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/44 20060101AFI20241115BHJP
   A61Q 5/04 20060101ALI20241115BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
A61K8/44
A61Q5/04
A61K8/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078960
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(72)【発明者】
【氏名】岡本 喜日出
(72)【発明者】
【氏名】辻 祐介
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA082
4C083AB102
4C083AB282
4C083AB412
4C083AC012
4C083AC072
4C083AC092
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC232
4C083AC531
4C083AC532
4C083AC542
4C083AC581
4C083AC582
4C083AC682
4C083AC692
4C083AC771
4C083AC791
4C083AC901
4C083AC902
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD492
4C083BB05
4C083BB45
4C083CC34
4C083DD06
4C083EE25
(57)【要約】
【課題】
本発明の目的は、毛先のまとまりを向上させた縮毛矯正のための毛髪用組成物及び当該毛髪用組成物を用いた縮毛矯正方法の提供、並びに、毛先のまとまりを向上させた縮毛矯正のための毛髪用組成物を備えた縮毛矯正用のキット及び当該キットを用いた縮毛矯正方法の提供。
【解決手段】
システイン又はその塩、及びチオグリセリンから選ばれる1種又は2種以上、並びに
キレート剤が配合されており、pHが酸性である、縮毛矯正のための毛髪用組成物及び当該毛髪用組成物を用いた縮毛矯正方法。また、前記毛髪用組成物を備えた縮毛矯正用のキット及び当該キットを用いた縮毛矯正方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システイン又はその塩、及びチオグリセリンから選ばれる1種又は2種以上、並びに
キレート剤が配合されており、
pHが酸性である、縮毛矯正のための毛髪用組成物。
【請求項2】
リン酸系アニオン界面活性剤が配合された、請求項1に記載の毛髪用組成物。
【請求項3】
前記キレート剤として、エチレンジアミン四酢酸又はその塩、ジエチレントリアミン五酢酸又はその塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸又はその塩、及びヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩から選ばれる1種又は2種以上が配合された、請求項1又は請求項2に記載の毛髪用組成物。
【請求項4】
ジチオジグリコール酸又はその塩が配合されていないか、又は、ジチオジグリコール酸又はその塩の配合量が1質量%未満である、請求項1又は請求項2に記載の毛髪用組成物。
【請求項5】
システイン又はその塩、及びチオグリセリンから選ばれる1種又は2種以上の合計配合量が1質量%以上である、請求項1又は請求項2に記載の毛髪用組成物。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の毛髪用組成物を用いた縮毛矯正方法。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の毛髪用組成物と、
酸化剤が配合された酸化用組成物と、
を備えた、縮毛矯正のためのキット。
【請求項8】
請求項7に記載のキットを用いた縮毛矯正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縮毛矯正のための毛髪用組成物又はキット、及び縮毛矯正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
縮毛矯正は、くせ毛やウェーブ毛などの毛髪に対して、該毛髪を直線状の形状に近づけるために行われている。縮毛矯正は、通常、還元剤を配合した縮毛矯正用第1剤を毛髪に塗布した後、該第1剤を洗い流し、酸化剤を配合した縮毛矯正用第2剤を塗布する毛髪処理により行われることが多い。この毛髪処理では、上記第1剤の還元作用により毛髪のジスルフィド結合が切断され、上記第2剤の酸化作用により毛髪のジスルフィド結合を形成させる原理を利用しており、第1剤の塗布後又は第2剤の塗布前に毛髪を直線状の形状に近づける操作が行われる。
【0003】
縮毛矯正の例としては、特許文献1には、毛髪還元性メルカプト化合物、アルカリ剤、特定の構造を持つ疎水性スルホン酸又はその塩、芳香族アルコールなどを所定量で含有し、pHが8~10である縮毛矯正処理用還元性組成物により、縮毛矯正効果とその持続性、剤の伸び、馴染みといった塗布性に優れるなどの技術が開示されている。特許文献1の実施例では上記縮毛矯正処理用還元性組成物とともに、酸化剤が配合された酸化性組成物が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-182651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示されるように、縮毛矯正に用いられる毛髪用組成物は、還元剤が配合されているとともに、アルカリ剤を配合して、組成物のpHをアルカリ性としたものが多い。これは、還元剤を配合したアルカリ性の毛髪用組成物により、毛髪を膨潤させて毛髪内部に還元剤を浸透させやすくして、縮毛矯正効果をより高めるためである。しかし、その反面、還元剤が配合された毛髪用組成物のpHをアルカリ性とすることで毛髪損傷が生じやすくなる。
【0006】
一方で、還元剤が配合された毛髪用組成物を酸性にすることで毛髪損傷を生じにくくして縮毛矯正を行う試みも存在する。縮毛矯正において、還元剤を配合した毛髪用組成物を酸性とすれば、アルカリ性とするよりも毛髪損傷が生じにくい傾向となる。
【0007】
しかし、還元剤を配合した酸性の毛髪用組成物を用いた縮毛矯正では、毛髪損傷が生じにくい傾向となるものの、さらに縮毛矯正後の毛髪状態を向上させることが求められている。特に、比較的損傷が生じやすい毛髪の毛先部分において、毛先のまとまりが不十分となる場合があり、その改善が求められている。
【0008】
上記事情から、pHを酸性とした縮毛矯正のための毛髪用組成物において、毛先のまとまりを向上させる要望が存在する。
【0009】
本発明の目的は、毛先のまとまりを向上させた縮毛矯正のための毛髪用組成物及び当該毛髪用組成物を用いた縮毛矯正方法の提供である。
また、本発明の別の目的は、毛先のまとまりを向上させた縮毛矯正のための毛髪用組成物を備えた縮毛矯正用のキット及び当該キットを用いた縮毛矯正方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、縮毛矯正のための毛髪用組成物において、pHを酸性とし、還元剤としてシステイン又はその塩、及びチオグリセリンから選ばれる1種又は2種以上を配合させつつ、さらにキレート剤を配合させることで、縮毛矯正後の毛髪が、毛先のまとまりに優れるという知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、以下の発明を含む。
【0012】
[1]の毛髪用組成物は、システイン又はその塩、及びチオグリセリンから選ばれる1種又は2種以上、並びにキレート剤が配合されており、pHが酸性である、縮毛矯正のための毛髪用組成物である。
【0013】
[2]の毛髪用組成物は、[1]の毛髪用組成物であって、リン酸系アニオン界面活性剤が配合されたものである。
【0014】
[3]の毛髪用組成物は、[1]又は[2]の毛髪用組成物から選ばれるいずれか1つの毛髪用組成物であって、キレート剤として、エチレンジアミン四酢酸又はその塩、ジエチレントリアミン五酢酸又はその塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸又はその塩、及びヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩から選ばれる1種又は2種以上が配合されたものである。
【0015】
[4]の毛髪用組成物は、[1]~[3]の毛髪用組成物から選ばれるいずれか1つの毛髪用組成物であって、ジチオジグリコール酸又はその塩が配合されていないか、又は、ジチオジグリコール酸又はその塩の配合量が1質量%未満である。
【0016】
[5]の毛髪用組成物は、[1]~[4]の毛髪用組成物から選ばれるいずれか1つの毛髪用組成物であって、システイン又はその塩、及びチオグリセリンから選ばれる1種又は2種以上の合計配合量が1質量%以上である。
【0017】
[6]の縮毛矯正方法は、[1]~[5]の毛髪用組成物から選ばれるいずれか1つの毛髪用組成物を用いた縮毛矯正方法である。
【0018】
[7]の縮毛矯正のためのキットは、[1]~[5]の毛髪用組成物から選ばれるいずれか1つの毛髪用組成物と、酸化剤が配合された酸化用組成物と、を備えた縮毛矯正のためのキットである。
【0019】
[8]の縮毛矯正方法は、[7]の縮毛矯正のためのキットを用いた縮毛矯正方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、毛先のまとまりを向上させた縮毛矯正のための毛髪用組成物が提供できる。
本発明は、前記毛髪用組成物を用いた縮毛矯正方法が提供できる。
本発明は、毛先のまとまりを向上させた縮毛矯正のための毛髪用組成物を備えた縮毛矯正用のキットが提供できる。
本発明は前記キットを用いた縮毛矯正方法が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という)に基づき、本発明を以下に説明する。
【0022】
<毛髪用組成物>
本実施形態の毛髪用組成物は、システイン又はその塩、及びチオグリセリンから選ばれる1種又は2種以上、並びにキレート剤が配合されており、pHが酸性である、縮毛矯正のための毛髪用組成物である。
本実施形態の毛髪用組成物によれば、縮毛矯正後の毛髪において、毛先のまとまりに優れる。
【0023】
本実施形態の毛髪用組成物における「縮毛矯正」とは、本実施形態の毛髪用組成物に配合されたシステイン又はその塩、及びチオグリセリンから選ばれる1種又は2種以上の還元作用により、毛髪のジスルフィド結合を切断して、毛髪の形状を直線状に近づけるものである。そのため、上記縮毛矯正は、還元剤による還元作用を伴わず、整髪剤などを用いて毛髪を一時的に直線状の形状に整髪する毛髪処理とは異なる。
【0024】
〔システイン又はその塩、及びチオグリセリンから選ばれる1種又は2種以上〕
本実施形態の毛髪用組成物は、システイン又はその塩、及びチオグリセリンから選ばれる1種又は2種以上が配合されたものである。そのため、本実施形態の毛髪用組成物は、システイン又はその塩、及びチオグリセリンから選ばれる1種又は2種以上として、システインのみ、システインの塩のみ、チオグリセリンのみのいずれかが配合されたものであってもよく、システイン、システインの塩、及びチオグリセリンから選ばれる2種が配合されたものであってもよく、システイン、システインの塩、及びチオグリセリンの3種が配合されたものであっても良い。
【0025】
(システイン又はその塩)
前記システインとしては、例えば、L-システイン、DL-システインが挙げられる。
前記システインの塩としては、例えば、L-システイン塩酸塩、L-システイン塩酸塩一水和物、DL-システイン塩酸塩が挙げられる。
【0026】
(チオグリセリン)
前記チオグリセリン(別名:1-チオグリセロール)は、グリセリンの1位のヒドロキシル基がチオール基に置換されたものである。
【0027】
(システイン又はその塩、及びチオグリセリンから選ばれる1種又は2種以上の合計配合量)
本実施形態の毛髪用組成物に配合されるシステイン又はその塩、及びチオグリセリンから選ばれる1種又は2種以上の合計配合量(本実施形態の毛髪用組成物におけるシステイン又はその塩の配合量と、チオグリセリンの配合量との合計配合量を指す)は、適宜設定することができる。
【0028】
本実施形態の毛髪用組成物に配合されるシステイン又はその塩、及びチオグリセリンから選ばれる1種又は2種以上の合計配合量は、例えば、0.5質量%以上であるが、縮毛矯正効果(縮毛矯正において、毛髪をより直線状の形状に近づける効果を指す。以下、同様の意味で用いる。)を高める観点から、1質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましく、2質量%以上がさらに好ましい。
【0029】
本実施形態の毛髪用組成物に配合されるシステイン又はその塩、及びチオグリセリンから選ばれる1種又は2種以上の合計配合量は、例えば、10質量%以下であるが、毛髪損傷が生じるおそれを低減する観点から、7質量%以下が好ましい。
【0030】
本実施形態の毛髪用組成物に配合されるシステイン又はその塩、及びチオグリセリンから選ばれる1種又は2種以上の合計配合量の範囲は、例えば、0.5質量%以上10質量%以下であるが、システイン又はその塩、及びチオグリセリンから選ばれる1種又は2種以上の合計配合量の上限及び下限の好ましい範囲として上述した観点と同様の観点から、1質量%以上7質量%以下が好ましく、1.5質量%以上7質量%以下がより好ましく、2質量%以上7質量%以下がさらに好ましい。
【0031】
(システイン又はその塩の配合量)
本実施形態の毛髪用組成物に配合されるシステイン又はその塩の配合量としては、例えば、0.01質量%以上であるが、縮毛矯正効果をより高める観点から、1質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましく、2質量%以上がさらに好ましい。
【0032】
本実施形態の毛髪用組成物に配合されるシステイン又はその塩の配合量としては、例えば、8質量%以下であるが、毛髪損傷が生じるおそれを低減する観点から、7質量%以下が好ましい。
【0033】
本実施形態の毛髪用組成物に配合されるシステイン又はその塩の配合量の範囲は、例えば、0.01質量%以上8質量%以下であるが、システイン又はその塩の配合量の上限及び下限の好ましい範囲として上述した観点と同様の観点から、1質量%以上7質量%以下が好ましく、1.5質量%以上7質量%以下がより好ましく、2質量%以上7質量%以下がさらに好ましい。
【0034】
(チオグリセリンの配合量)
本実施形態の毛髪用組成物に配合されるチオグリセリンの配合量としては、例えば、0.5質量%以上であるが、縮毛矯正効果をより高める観点から、1質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましく、2質量%以上がさらに好ましい。
【0035】
本実施形態の毛髪用組成物に配合されるチオグリセリンの配合量としては、例えば、8質量%以下であるが、毛髪損傷が生じるおそれを低減する観点から、7質量%以下が好ましい。
【0036】
本実施形態の毛髪用組成物に配合されるチオグリセリンの配合量の範囲は、例えば、0.5質量%以上8質量%以下であるが、チオグリセリンの配合量の上限及び下限の好ましい範囲として上述した観点と同様の観点から、1質量%以上7質量%以下が好ましく、1.5質量%以上7質量%以下がより好ましく、2質量%以上7質量%以下がさらに好ましい。
【0037】
〔キレート剤〕
本実施形態の毛髪用組成物は、1種又は2種以上のキレート剤が配合されたものである。
前記キレート剤としては、毛髪用組成物に配合可能な公知のキレート剤から選ばれてよく、例えば、エチレンジアミン四酢酸又はその塩、ジエチレントリアミン五酢酸又はその塩、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸又はその塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩、フィチン酸又はその塩、エチレンジアミンジコハク酸又はその塩、ヒドロキシイミノジコハク酸又はその塩、グルコン酸又はその塩、メタリン酸又はその塩が挙げられる。
【0038】
本実施形態の毛髪用組成物は、キレート剤として、エチレンジアミン四酢酸又はその塩、ジエチレントリアミン五酢酸又はその塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸又はその塩、及びヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩から選ばれる1種又は2種以上が配合されたものであれば、毛先のまとまりにより優れるため好ましい。
【0039】
(エチレンジアミン四酢酸又はその塩)
前記エチレンジアミン四酢酸又はその塩としては、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸の塩(例えば、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩(エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウムなど)、エチレンジアミン四酢酸のカリウム塩(エチレンジアミン四酢酸二カリウム、エチレンジアミン四酢酸三カリウム、エチレンジアミン四酢酸四カリウムなど))が挙げられる。
【0040】
(ジエチレントリアミン五酢酸又はその塩)
前記ジエチレントリアミン五酢酸又はその塩としては、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸の塩(例えば、ジエチレントリアミン五酢酸のナトリウム塩(ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウムなど)、ジエチレントリアミン五酢酸のカリウム塩(ジエチレントリアミン五酢酸五カリウムなど))が挙げられる。
【0041】
(エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸又はその塩)
前記エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸又はその塩としては、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸の塩(例えば、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸のナトリウム塩(エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸三ナトリウムなど)、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸のカリウム塩(エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸三カリウムなど))が挙げられる。
【0042】
(ヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩)
前記ヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩としては、ヒドロキシエタンジホスホン酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸の塩(例えば、ヒドロキシエタンジホスホン酸のナトリウム塩(ヒドロキシエタンジホスホン酸三ナトリウム、ヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウムなど)、ヒドロキシエタンジホスホン酸のカリウム塩(ヒドロキシエタンジホスホン酸三カリウム、ヒドロキシエタンジホスホン酸四カリウムなど))が挙げられる。
【0043】
(フィチン酸又はその塩)
前記フィチン酸又はその塩としては、フィチン酸、フィチン酸の塩(例えば、フィチン酸のナトリウム塩、フィチン酸のカリウム塩)が挙げられる。
【0044】
(エチレンジアミンジコハク酸又はその塩)
前記エチレンジアミンジコハク酸又はその塩としては、エチレンジアミンジコハク酸、エチレンジアミンジコハク酸塩(例えば、エチレンジアミンジコハク酸のナトリウム塩(エチレンジアミンジコハク酸三ナトリウムなど)、エチレンジアミンジコハク酸のカリウム塩(エチレンジアミンジコハク酸三カリウムなど))が挙げられる。
【0045】
(ヒドロキシイミノジコハク酸又はその塩)
前記ヒドロキシイミノジコハク酸又はその塩としては、ヒドロキシイミノジコハク酸、ヒドロキシイミノジコハク酸の塩(例えば、ヒドロキシイミノジコハク酸のナトリウム塩(ヒドロキシイミノジコハク酸四ナトリウムなど)、ヒドロキシイミノジコハク酸のカリウム塩)が挙げられる。
【0046】
(グルコン酸又はその塩)
前記グルコン酸又はその塩としては、グルコン酸、グルコン酸の塩(例えば、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸亜鉛、グルコン酸銅、グルコン酸マグネシウム)が挙げられる。
【0047】
(メタリン酸又はその塩)
前記メタリン酸又はその塩としては、メタリン酸、メタリン酸の塩(例えば、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム)が挙げられる。
【0048】
本実施形態の毛髪用組成物に配合されるキレート剤の配合量は、適宜設定すればよい。
【0049】
本実施形態の毛髪用組成物に配合されるキレート剤の配合量は、例えば、0.01質量%以上であるが、毛先のまとまりをより高める観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。
【0050】
本実施形態の毛髪用組成物に配合されるキレート剤の配合量は、例えば、10質量%以下であるが、毛髪のべたつきが生じるおそれを低減する観点から、8質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。
【0051】
本実施形態の毛髪用組成物に配合されるキレート剤の配合量の範囲は、例えば、0.01質量%以上10質量%以下であるが、キレート剤の配合量の上限及び下限の好ましい範囲として上述した観点と同様の観点から、0.05質量%以上8質量%以下が好ましく、0.1質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上3質量%以下がさらに好ましい。
【0052】
(任意成分)
本実施形態の毛髪用組成物は、上述したシステイン又はその塩、チオグリセリン、及びキレート剤以外の成分(「任意成分」という)が配合されたものとしてよい。任意成分は、本実施形態の毛髪用組成物の剤型などに応じて、種類、配合量を適宜設定することができる。任意成分としては、例えば、水、還元剤(システイン又はその塩、チオグリセリンを除く)、ジチオジグリコール酸又はその塩、アニオン界面活性剤(リン酸系アニオン界面活性剤を含む)、酸、アルカリ、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤、アルコール(高級アルコールを含む)、糖類、油脂、エーテル油、エステル油、脂肪酸、炭化水素、ロウ、シリコーン、合成高分子化合物、半合成高分子化合物、天然高分子化合物、蛋白、加水分解タンパク質、アミノ酸、動植物抽出物、微生物由来物、無機化合物、香料、防腐剤、紫外線吸収剤、色素が挙げられる。
【0053】
〔水〕
本実施形態の毛髪用組成物は、水が配合されたものである。水は、システイン又はその塩、及びチオグリセリンから選ばれる1種又は2種以上、並びにキレート剤の溶媒として用いることができる。
【0054】
本実施形態の毛髪用組成物に配合される水の配合量は、適宜設定すればよい。
【0055】
本実施形態の毛髪用組成物に配合される水の配合量は、例えば、40質量%以上である。
【0056】
本実施形態の毛髪用組成物に配合される水の配合量は、例えば、90質量%以下である。
【0057】
本実施形態の毛髪用組成物に配合される水の配合量の範囲は、例えば、40質量%以上90質量%以下である。
【0058】
(システイン又はその塩、及びチオグリセリン以外の還元剤)
本実施形態の毛髪用組成物は、システイン又はその塩、及びチオグリセリン以外の還元剤(以下、「その他の還元剤」という)が1種又は2種以上配合されたものであってもよい。その他の還元剤としては、例えば、チオグリコール酸、チオグリコール酸の塩(例えば、チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸モノエタノールアミン)、システアミン、システアミンの塩(例えば、システアミン塩酸塩、チオグリコール酸システアミン)、チオグリコール酸グリセリル、チオ乳酸、チオ乳酸の塩(例えば、チオ乳酸アンモニウム、チオ乳酸モノエタノールアミン)、チオ尿素、ブチロラクトンチオール、亜硫酸、亜硫酸の塩(例えば、亜硫酸ナトリウム)が挙げられる。
【0059】
本実施形態の毛髪用組成物にその他の還元剤が配合される場合、その配合量は、適宜設定すればよい。
【0060】
本実施形態の毛髪用組成物に配合されるその他の還元剤の配合量は、例えば、0.1質量%以上である。
【0061】
本実施形態の毛髪用組成物に配合されるその他の還元剤の配合量は、例えば、15質量%以下である。
【0062】
本実施形態の毛髪用組成物に配合されるその他の還元剤の配合量の範囲は、例えば、0.1質量%以上15質量%以下である。
【0063】
(ジチオジグリコール酸又はその塩)
本実施形態の毛髪用組成物は、ジチオジグリコール酸又はその塩が配合されていないものであってもよく、配合されたものであってもよい。
前記ジチオジグリコール酸又はその塩としては、例えば、ジチオジグリコール酸、ジチオジグリコール酸ジアンモニウムが挙げられる。
【0064】
本実施形態の毛髪用組成物にジチオジグリコール酸又はその塩が配合された場合は、毛髪用組成物におけるジチオジグリコール酸又はその塩の配合量としては、縮毛矯正効果をより高める観点から、1質量%未満が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下がさらに好ましく、0.1質量%以下がさらにより好ましい。また、本実施形態の毛髪用組成物にジチオジグリコール酸又はその塩が配合された場合、毛髪用組成物におけるジチオジグリコール酸又はその塩の配合量としては、例えば、0.01質量%以上である。
【0065】
本実施形態の毛髪用組成物は、縮毛矯正効果をより高める観点から、ジチオジグリコール酸又はその塩が配合されていないか、又は、ジチオジグリコール酸又はその塩の配合量が1質量%未満(より好ましくは、0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下、さらにより好ましくは0.1質量%以下)であると好ましい。
【0066】
(リン酸系アニオン界面活性剤)
本実施形態の毛髪用組成物は、縮毛矯正効果をより高める観点から、リン酸系アニオン界面活性剤が配合されたものが好ましい。なお、リン酸系アニオン界面活性剤は、炭化水素基(例えば、炭素数8以上24以下)とリン酸基とを有するアニオン界面活性剤を用いることができる。
【0067】
前記リン酸系アニオン界面活性剤としては、例えば、炭素数8以上24以下の炭化水素基(当該炭化水素基は、飽和または不飽和であってもよく、直鎖状または分岐鎖状であってもよい)を有するリン酸系アニオン界面活性剤を用いても良い。
【0068】
炭素数8以上24以下の炭化水素基を有するリン酸系アニオン界面活性剤としては、例えば、リン酸アルキル又はその塩(例えば、ラウリルリン酸、ラウリルリン酸ナトリウム、ラウリルリン酸2Na、ラウリルリン酸カリウム、セチルリン酸カリウム)、リン酸ジアルキル(例えば、リン酸ジセチル)、リン酸ジアルキレン(例えば、ジオレイルリン酸)、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸又はその塩(例えば、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸(例えば、セテス-10リン酸、セテス-20リン酸)、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸又はその塩(例えば、ステアレス-10リン酸)、ポリオキシエチレンアルキレンエーテルリン酸又はその塩(例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸(例えば、オレス-3リン酸、オレス-5リン酸、オレス-10リン酸))、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルリン酸又はその塩(例えば、PPG-5セテス-10リン酸)が挙げられる。
本実施形態の毛髪用組成物は、炭素数8以上24以下の炭化水素基を有するリン酸系アニオン界面活性剤として、縮毛矯正効果をより高める観点から、リン酸ジアルキルとポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸若しくはその塩とが両方配合されたものであると好ましい。
【0069】
本実施形態の毛髪用組成物に配合されるリン酸系アニオン界面活性剤の配合量は、適宜設定すればよい。
【0070】
本実施形態の毛髪用組成物に配合されるリン酸系アニオン界面活性剤の配合量は、例えば、0.1質量%以上である。
【0071】
本実施形態の毛髪用組成物に配合されるリン酸系アニオン界面活性剤の配合量は、例えば、10質量%以下である。
【0072】
本実施形態の毛髪用組成物に配合されるリン酸系アニオン界面活性剤の配合量の範囲は、例えば、0.1質量%以上10質量%以下である。
【0073】
(酸)
本実施形態の毛髪用組成物は、pHを酸性に調整するために、1種又は2種以上の酸が配合されたものであってもよい。
【0074】
本実施形態の毛髪用組成物に配合される酸は、毛髪用組成物に配合可能な公知の酸を用いることができる。前記酸としては、無機酸(例えば、塩酸、リン酸)、有機酸(例えば、乳酸、グルタミン酸、レブリン酸、リンゴ酸、クエン酸)が挙げられる。前記有機酸としては、炭素数1以上8以下のものを用いることができる。
【0075】
本実施形態の毛髪用組成物に配合される酸の配合量は、適宜設定すればよい。
【0076】
本実施形態の毛髪用組成物に配合される酸の配合量は、例えば、0.01質量%以上である。また、本実施形態の毛髪用組成物に配合される酸の配合量は、例えば、3質量%以下である。
【0077】
本実施形態の毛髪用組成物に配合される酸の配合量の範囲は、0.01質量%以上3質量%以下である。
【0078】
(アルカリ)
本実施形態の毛髪用組成物は、pHが酸性の範囲内において、所望するpHの値に調整するために、1種又は2種以上のアルカリが配合されたものであってもよい。
【0079】
本実施形態の毛髪用組成物に配合されるアルカリは、毛髪用組成物に配合可能な公知のアルカリを用いることができる。アルカリとしては、有機アルカリ又は無機アルカリを用いることができる。前記有機アルカリとしては、例えば、アンモニア、アルカノールアミン類(トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールなど)、有機アミン類(2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、グアニジンなど)、炭酸塩(炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなど)、塩基性アミノ酸又はその塩(アルギニン、リジンなど)が挙げられる。前記無機アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。
【0080】
本実施形態の毛髪用組成物に配合されるアルカリの配合量は、適宜設定すればよい。
【0081】
本実施形態の毛髪用組成物に配合されるアルカリの配合量は、例えば、0.01質量%以上である。また、本実施形態の毛髪用組成物に配合されるアルカリの配合量は、例えば、3質量%以下である。
【0082】
本実施形態の毛髪用組成物に配合されるアルカリの配合量の範囲は、0.01質量%以上3質量%以下である。
【0083】
(カチオン界面活性剤)
本実施形態の毛髪用組成物は、例えば、1種又は2種以上のカチオン界面活性剤が配合されたものであってもよい。前記カチオン界面活性剤は、例えば、炭素数8以上24以下の炭化水素基を有するカチオン界面活性剤を用いることができる。前記カチオン界面活性剤としては、例えば、長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩(塩化ステアリルトリメチルアンモニウムなど)、ジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩、トリ長鎖アルキルモノメチルアンモニウム塩、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩、モノアルキルエーテル型4級アンモニウム塩などが挙げられる。本実施形態の毛髪用組成物におけるカチオン界面活性剤の配合量は、適宜設定されるものであるが、例えば、0.1質量%以上10質量%以下である。
【0084】
(ノニオン界面活性剤)
本実施形態の毛髪用組成物は、例えば、1種又は2種以上のノニオン界面活性剤が配合されたものであってもよい。前記ノニオン界面活性剤は、例えば、炭素数8以上24以下の炭化水素基を有するノニオン界面活性剤を用いることができる。前記ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンセチルエーテル(2E.O.)、ポリオキシエチレンセチルエーテル(30E.O.)、ポリオキシエチレンセチルエーテル(150E.O.)など)、ポリオキシエチレンアルキレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキレンエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキレンエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、植物油から得られたモノグリセリド及びジグリセリドのポリエチレングリコール誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が挙げられる。本実施形態の毛髪用組成物におけるノニオン界面活性剤の配合量は、適宜設定されるものであるが、例えば、0.1質量%以上10質量%以下である。
【0085】
(高級アルコール)
本実施形態の毛髪用組成物は、例えば、1種又は2種以上の高級アルコールが配合されたものであってもよい。本実施形態の毛髪用組成物において、高級アルコールと界面活性剤(例えば、リン酸系アニオン界面活性剤)と水とが配合されたものとすれば、毛髪用組成物を乳化物(例えば、クリーム状の剤型)とすることができる。
【0086】
前記高級アルコールとしては、例えば、炭素数12以上24以下の1価アルコールを用いることができる。前記高級アルコールとしては、例えば、飽和又は不飽和の直鎖状の高級アルコール(ミリスチルアルコール、セタノール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなど)、分岐鎖状の高級アルコール(イソセチルアルコール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコールなど)が挙げられる。本実施形態の毛髪用組成物における高級アルコールの配合量は、例えば、0.01質量%以上であり、15質量%以下である。
【0087】
〔pH〕
本実施形態の毛髪用組成物のpHは、酸性である。前記pHの値は、25℃とした本実施形態の毛髪用組成物を、公知のpHメーターで測定した値を採用する。
【0088】
本実施形態の毛髪用組成物におけるpHの上限は、例えば、7未満であるが、毛髪損傷が生じるおそれを低減する観点から、6.8以下が好ましく、6.5以下がより好ましい。
【0089】
本実施形態の毛髪用組成物におけるpHの下限は、例えば、1以上であるが、毛髪損傷が生じるおそれを低減する観点から、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上がさらに好ましい。
【0090】
本実施形態の毛髪用組成物におけるpHの範囲としては、例えば、1以上7未満であるが、pHの上限及び下限の好ましい範囲として上述した観点と同様の観点から、2以上6.8以下が好ましく、3以上6.5以下がより好ましく、4以下6.5以下がさらに好ましい。
【0091】
〔粘度〕
本実施形態の毛髪用組成物の粘度は、毛髪用組成物の剤型に応じて適宜設定すればよい。毛髪用組成物の粘度は、特に限定されないが、B型粘度計を使用して、適宜のローターを用いて25℃で計測した60秒後の粘度が、例えば、10mPa・s以上50000mPa・s以下である。
なお、本実施形態の毛髪用組成物を液状とした場合、その粘度としては、例えば、100mPa・s以下である。
【0092】
〔剤型〕
本実施形態の毛髪用組成物の剤型は、特に制限はなく、液状、クリーム状、ゲル状などの各種の剤型とすることができる。
なお、本実施形態の毛髪用組成物の剤型は、毛髪に対して均一に塗布しやすい観点からクリーム状が好ましい。
【0093】
〔製品形態〕
本実施形態の毛髪用組成物の製品形態は、例えば、縮毛矯正用第1剤が挙げられる。この縮毛矯正用第1剤は、化粧品の製品形態としてもよく、医薬部外品の製品形態としてもよい。
【0094】
〔製造方法〕
本実施形態の毛髪用組成物の製造方法は、毛髪用組成物の公知の製造方法を採用することができる。前記製造方法の一例としては、システイン又はその塩、及びチオグリセリンから選ばれる1種又は2種以上と、キレート剤と、水とをそれぞれ適宜の配合量となるように混合し、必要により酸又はアルカリを用いてpHを酸性に調整して製造する方法である。
【0095】
〔使用方法〕
本実施形態の毛髪用組成物は、縮毛矯正のための毛髪用組成物であり、公知の縮毛矯正方法に準じて用いられるものである。以下、本実施形態の毛髪用組成物を用いた縮毛矯正方法の例を挙げる。
【0096】
(縮毛矯正方法)
本実施形態の毛髪用組成物を用いた縮毛矯正方法は、例えば、本実施形態の毛髪用組成物を毛髪に用いて毛髪を還元する還元工程と、還元工程後の毛髪と70℃以上の発熱体とを接触させる加熱工程と、該加熱工程後の毛髪に、酸化剤が配合された酸化用組成物を毛髪に用いて毛髪を酸化させる酸化工程により、毛髪の形状を直線状に近づける縮毛矯正方法である。なお、上記縮毛矯正方法から、上記加熱工程及び上記酸化工程のいずれか一方の工程又は両方の工程を省略することができるが、縮毛矯正の程度をより高める観点から、上記加熱工程及び上記酸化工程を省略しない方が好ましい。
【0097】
〈還元工程〉
上記還元工程は、本実施形態の毛髪用組成物を毛髪に塗布して、室温又は室温を超え60℃以下の温度で静置する工程である。毛髪への塗布後の静置時間は、適宜設定すればよいが、長時間であるほどに毛髪が軟化し易い傾向があり、例えば、10分以上20分以下である。
【0098】
〈加熱工程〉
上記加熱工程は、上記還元工程後の毛髪から毛髪用組成物を洗い流した後、毛髪を乾燥させて、70℃以上の発熱体と毛髪とを接触させて毛髪を加熱する工程である。この加熱工程は、毛髪を伸ばしてその形状を直線状に近づけるための公知のヘアアイロンを使用して行うと良い。
【0099】
毛髪形状を直線状に近づけるためのヘアアイロンは、ハッコー社製「ADST Premium DS」、小泉成器社製「VSI-1009/PJ」などの市販品を用いることができる。このヘアアイロンは、対向する一対の金属製板状体が発熱体として備わっている。そして、ヘアアイロンを使用する際には、公知の通り、乾燥又はほぼ乾燥させた毛髪を対向する発熱体間に挟み、その後に、毛髪を挟んだ状態を維持しながらヘアアイロンを移動させ、一対の金属製板状体との間に挟まっている毛髪を滑らせる。
【0100】
上記ヘアアイロンの発熱体の設定温度は、70℃以上であり、縮毛矯正効果をより高める観点から、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、140℃以上がさらに好ましく、160℃以上がさらにより好ましい。一方、上記発熱体の設定温度は、毛髪損傷が生じるおそれを低減する観点から、230℃以下が好ましく、210℃以下がより好ましく、200℃以下がさらに好ましく、190℃以下がさらにより好ましい。
【0101】
〈酸化工程〉
上記酸化工程では、酸化剤が配合された酸化用組成物を毛髪に塗布し、静置する。このときの静置時間は、適宜設定すればよいが、例えば、3分以上15分以下である。静置後の毛髪は、酸化剤が配合された酸化用組成物を洗い流した後、乾燥させると良い。なお、以下の記載において、「酸化剤が配合された酸化用組成物」を、本実施形態に係る酸化用組成物という。
【0102】
〈酸化用組成物〉
本実施形態に係る酸化用組成物は、毛髪用組成物に配合可能な公知の酸化剤が配合されたものである。
【0103】
(酸化剤)
本実施形態に係る酸化用組成物に配合される酸化剤としては、例えば、臭素酸塩(例えば、臭素酸カリウム、臭素酸ナトリウム)、過酸化水素、過ホウ酸塩(例えば、過ホウ酸ナトリウム)が挙げられる。
【0104】
本実施形態に係る酸化用組成物に配合される酸化剤の配合量は、適宜設定すればよい。
【0105】
本実施形態に係る酸化用組成物に配合される酸化剤の配合量は、例えば、0.1質量%以上であるが、縮毛矯正の持続性を高める観点から、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がより好ましい。
【0106】
本実施形態に係る酸化用組成物に配合される酸化剤の配合量は、例えば、15質量%以下であるが、毛髪損傷が生じるおそれを低減する観点から、13質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0107】
本実施形態に係る酸化用組成物に配合される酸化剤の配合量の範囲は、例えば、0.1質量%以上15質量%以下であるが、酸化剤の配合量の上限及び下限の好ましい範囲として上述した観点と同様の観点から、0.5質量%以上13質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下がより好ましい
【0108】
(酸化用組成物の任意成分)
本実施形態に係る酸化用組成物は、酸化剤以外の成分が配合されたものであっても良い。酸化剤以外の成分としては、例えば、炭化水素、油脂、ロウ、エステル油、高級アルコール、多価アルコール、糖、脂肪酸、加水分解蛋白、アミノ酸、界面活性剤、水溶性高分子、シリコーン、植物由来物、防腐剤、キレート剤、酸、アルカリ、植物由来物、安定剤、香料、紫外線吸収剤、水である。
【0109】
(水)
本実施形態に係る酸化用組成物は、水が配合されたものとしてよく、その配合量は、適宜設定すればよい。
【0110】
本実施形態に係る酸化用組成物に配合される水の配合量は、例えば、40質量%以上である。また、本実施形態に係る酸化用組成物に配合される水の配合量は、例えば、95質量%以下である。
【0111】
本実施形態に係る酸化用組成物に配合される水の配合量の範囲は、例えば、40質量%以上95質量%以下である。
【0112】
(pH)
本実施形態に係る酸化用組成物のpHは、適宜設定することができる。前記pHの値は、25℃とした本実施形態に係る酸化用組成物を、公知のpHメーターで測定した値を採用する。
【0113】
(粘度)
本実施形態に係る酸化用組成物の粘度は、酸化用組成物の剤型に応じて適宜設定すればよい。酸化用組成物の粘度は、特に限定されないが、B型粘度計を用いて適宜選定したローターを使用して25℃で計測した60秒後の値が、例えば、10mPa・s以上50000mPa・s以下である。
【0114】
(剤型)
本実施形態に係る酸化用組成物の剤型は、適宜選択すると良く、例えば、液状、クリーム状、ワックス状、ゲル状、フォーム状(泡状)が挙げられる。
なお、本実施形態に係る酸化用組成物の剤型は、毛髪に対して均一に塗布しやすい観点からクリーム状が好ましい。
【0115】
(製品形態)
本実施形態に係る酸化用組成物の製品形態は、例えば、縮毛矯正用第2剤が挙げられる。この縮毛矯正用第2剤は、化粧品の製品形態としてもよく、医薬部外品の製品形態としてもよい。
【0116】
(製造方法)
本実施形態に係る酸化用組成物の製造方法は、公知の製造方法を採用することができる。前記製造方法の一例としては、酸化剤と水を配合した酸化用組成物を得る場合に、酸化剤と水とを混合して製造する方法である。
【0117】
〈対象毛髪〉
本実施形態の毛髪用組成物を用いた縮毛矯正方法は、くせ毛、縮毛、ウェーブ毛、カール毛など直線状の形状を比較的有さない毛髪を対象毛髪とすることができる。上記直線状の形状を比較的有さない毛髪は、酸化染毛剤、脱色剤、パーマネントウェーブ、縮毛矯正剤などの化学処理履歴のない毛髪であってもよく、酸化染毛剤、脱色剤、パーマネントウェーブ、縮毛矯正剤などの化学処理履歴がある毛髪であってもよい。
なお、本実施形態の毛髪用組成物は、酸化剤を用いた化学処理履歴のある損傷毛髪(ブリーチ毛など)に用いても、毛先のまとまりを向上させることができる。
【0118】
<縮毛矯正方法(1)>
本実施形態の縮毛矯正方法(1)は、上述した本実施形態の毛髪用組成物を用いた縮毛矯正方法である。
【0119】
本実施形態の縮毛矯正方法(1)は、本実施形態の毛髪用組成物の使用方法において上述した縮毛矯正方法に準じて行うことができる。
【0120】
本実施形態の縮毛矯正方法(1)の一例としては、上述した本実施形態の毛髪用組成物を毛髪に用いて毛髪を還元する還元工程と、還元工程後の毛髪と70℃以上の発熱体とを接触させる加熱工程と、該加熱工程後の毛髪に、酸化剤が配合された酸化用組成物を毛髪に用いて毛髪を酸化させる酸化工程により、毛髪の形状を直線状に近づける方法である。なお、加熱工程における発熱体、酸化工程における酸化剤が配合された酸化用組成物について、本実施形態の毛髪用組成物における縮毛矯正方法において上述した発熱体、酸化剤が配合された酸化用組成物と同様のものを用いることができる。
【0121】
<縮毛矯正のためのキット>
本実施形態の縮毛矯正のためのキット(以下、「本実施形態のキット」ということがある)は、上述した本実施形態の毛髪用組成物と、酸化剤が配合された酸化用組成物と、を備えた、縮毛矯正のためのキットである。前記酸化剤が配合された酸化用組成物は、本実施形態の毛髪用組成物において上述した酸化剤が配合された酸化用組成物と同様のものを用いることができる。
【0122】
本実施形態のキットの使用方法は、本実施形態の毛髪用組成物の使用方法において上述した縮毛矯正方法に準じて行うことができる。
【0123】
本実施形態のキットの使用方法の一例としては、上述した本実施形態の毛髪用組成物を毛髪に用いて毛髪を還元する還元工程と、還元工程後の毛髪と70℃以上の発熱体とを接触させる加熱工程と、該加熱工程後の毛髪に、酸化剤が配合された酸化用組成物を毛髪に用いて毛髪を酸化させる酸化工程により、毛髪の形状を直線状に近づける方法である。なお、前記加熱工程における発熱体は、本実施形態の毛髪用組成物における縮毛矯正方法において上述した発熱体と同様のものを用いることができる。
【0124】
本実施形態のキットの製造方法は、上述した本実施形態の毛髪用組成物の製造方法と、上述した酸化剤が配合された酸化用組成物の製造方法と同様にして、それぞれの各組成物を製造し、それらを備えたキットとすればよい。
【0125】
<縮毛矯正方法(2)>
本実施形態の縮毛矯正方法(2)は、上述した本実施形態のキットを用いた縮毛矯正方法である。
【0126】
本実施形態の縮毛矯正方法(2)は、本実施形態の毛髪用組成物の使用方法において上述した縮毛矯正方法に準じて行うことができる。なお、本実施形態の縮毛矯正方法(2)と、上述した本実施形態の縮毛矯正方法(1)との違いは、該縮毛矯正方法(1)は、酸化剤が配合された酸化用組成物を用いた酸化工程が任意であるのに対して、本実施形態の縮毛矯正方法(2)は、酸化剤が配合された酸化用組成物を用いた酸化工程を必須に行うものである。
【0127】
本実施形態の縮毛矯正方法(2)の一例としては、キットにおける毛髪用組成物(上述した本実施形態の毛髪用組成物)を毛髪に用いて毛髪を還元する還元工程と、還元工程後の毛髪と70℃以上の発熱体とを接触させる加熱工程と、該加熱工程後の毛髪に、キットにおける酸化剤が配合された酸化用組成物を毛髪に用いて毛髪を酸化させる酸化工程により、毛髪の形状を直線状に近づける方法である。なお、加熱工程における発熱体、酸化工程における酸化剤が配合された酸化用組成物について、本実施形態の毛髪用組成物における縮毛矯正方法において上述した発熱体、酸化剤が配合された酸化用組成物と同様のものを用いることができる。
【実施例0128】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0129】
〔実施例1~11、比較例1~5〕
実施例1~11、比較例1~5の毛髪用組成物を用いて、縮毛矯正処理を行い、毛先のまとまりを評価した。また、毛先のまとまりの評価と併せて、しっとり感、柔らかさの各項目についても評価を行った。
【0130】
(毛髪用組成物の製造)
実施例1~11、比較例1~5の毛髪用組成物は、表1~表8の組成となるように、L-システイン、チオグリセリン、チオグリコール酸アンモニウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸三ナトリウム、ヒドロキシエタンジホスホン酸、フィチン酸、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸(20E.O.)、リン酸ジセチル、ポリオキシエチレンセチルエーテル(2E.O.)、ポリオキシエチレンセチルエーテル(30E.O.)、ポリオキシエチレンセチルエーテル(150E.O.)、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、リン酸、モノエタノールアミン、イソプロパノール、1,3-ブチレングリコール、香料、精製水から選ばれる各種成分を常法により混合して製造した。ここで、E.O.は酸化エチレン(エチレンオキサイド)の略であり、E.O.の前の数字は、酸化エチレンの平均付加モル数である。
なお、製造した実施例1~11、比較例1~5の各毛髪用組成物は、いずれもクリーム状であった。
【0131】
下記表1~表8に示す成分欄の表記において、数値は質量%を示し、「-」はその成分が未配合であることを示し、「pH4.5となる量」とは、毛髪用組成物のpH(25℃)が4.5になる量でリン酸が配合されたことを示し、「計100となる量」とは毛髪用組成物の全量が100質量%となる水の量を示す。
【0132】
(縮毛矯正処理)
日本人女性の毛髪を用いて、2gの毛束(長さ40cm)を複数本作成した。続いて、各毛束をブリーチ処理(ミルボン社製の「オルディーブ アディクシー ハイブリーチ」を1質量部とミルボン社製の「オルディーブ アディクシー オキシダン 6.0」を2質量部で混合したものを、毛束1つに対して20g塗布し、室温で1時間静置)し、流水ですすいだ後に、ミルボン社製の「グランドリンケージ ウィローリュクス シャンプー」で毛束を洗浄し、タオルドライを行った。
次に、タオルドライした各毛束に対して、上記で製造した実施例1~11、比較例1~5のいずれかの毛髪用組成物を10gの量で塗布し、15分間室温で静置した。
15分経過後、各毛束について、流水で約40秒間すすいだ後、ドライヤーで乾燥させた。
乾燥させた各毛束に対して、設定温度を180℃にしたアイロン(株式会社ハッコー製「ADST Premium DS プロ用ストレートヘアアイロン ADST Premium DS(FDS-25)」)を用いて、毛束の毛髪が直線状の形状となるように、各毛束に熱処理(毛束をアイロンに挟みながら約10秒間かけて毛束の根元から毛先までアイロンを滑らせる処理)を行った。
つづいて、熱処理後の各毛束に対して臭素酸ナトリウム、水などが配合されたミルボン社製のネオリシオ ブライトリッチ 2ndを8g塗布し、10分間室温で静置した。
10分経過後、各毛束について、流水で約40秒間すすいだ後、ドライヤーで乾燥させた。
【0133】
(評価方法)
上記の縮毛矯正処理後の各毛束を用いて、下記に示す評価基準に基づいて、日常的に毛髪用組成物の評価を行うパネラー5名の合議により、毛先のまとまり、しっとり感、柔らかさを評価した。
【0134】
(毛先のまとまりの評価基準)
〇 :評価の基準とした毛束に比べて、毛先のまとまりに優れる(毛束の根元から毛先方向に向かって指を通した時に、評価の基準とした毛束に比べて、毛束の毛先部分(毛先から根元方向までの約5cmの部分、以下同様)が滑りやすく、毛先がまとまりやすい)。
同等:毛先のまとまりが評価の基準とした毛束と同等である(毛束の根元から毛先方向に向かって指を通した時に、毛束の毛先部分が滑りやすく、毛先のまとまりやすさが評価の基準とした毛束と同程度)。
× :評価の基準とした毛束に比べて、毛先のまとまりに劣る(毛束の根元から毛先方向に向かって指を通した時に、評価の基準とした毛束に比べて、毛束の毛先部分が滑りにくく、毛先がまとまりにくい)。
【0135】
(しっとり感の評価基準)
〇 :評価の基準とした毛束に比べて、しっとりとした手触りに優れる(毛束の根元から毛先方向に向かって指を通した時に、評価の基準とした毛束に比べて、毛束が保湿感のある均一な手触りに優れる)。
同等:毛束がしっとりとした手触りが評価の基準とした毛束と同等である(毛束の根元から毛先方向に向かって指を通した時に、毛束の保湿感のある手触りが評価の基準とした毛束と同程度)。
× :評価の基準とした毛束に比べて、毛束がしっとりとした手触りに劣る(毛束の根元から毛先方向に向かって指を通した時に、評価の基準とした毛束に比べて、毛束が保湿感のある均一な手触りに劣る)。
【0136】
(柔らかさの評価基準)
〇 :評価の基準とした毛束に比べて、毛束が柔らかい手触りに優れる(毛束を手で触った時に、評価の基準とした毛束に比べて、毛束全体が柔らかい手触り)。
同等:毛束の柔らかい手触りが評価の基準とした毛束と同等である(毛束を手で触った時に、毛束全体の柔らかい手触りが評価の基準とした毛束と同等)。
× :評価の基準とした毛束に比べて、毛束が柔らかい手触りに劣る(毛束を手で触った時に、評価の基準とした毛束に比べて、毛束全体が硬い手触り)。
【0137】
(評価結果)
下記表1~表8に、実施例1~11、比較例1~5の毛髪用組成物を用いた際の評価結果を示す。
【0138】
(実施例1~3、比較例1の評価結果)
表1に実施例1~3、比較例1の毛髪用組成物の評価結果を示す。評価の基準は、比較例1の毛髪用組成物を用いて縮毛矯正処理を行った毛束である。
【0139】
【表1】
【0140】
表1に示す結果から、L-システインが配合された実施例1~3の毛髪用組成物(pH4.5)は、チオグリコール酸アンモニウムが配合された比較例1の毛髪用組成物(pH4.5)よりも、毛先のまとまりに優れていた。したがって、pHが酸性の条件において、還元剤としてシステインが配合されると、チオグリコール酸アンモニウムを配合した場合よりも、毛先のまとまりに優れることが分かる。なお、実施例1~3の毛髪用組成物は、比較例1の毛髪用組成物よりも、しっとり感及び柔らかさに優れていた。
【0141】
(実施例2、比較例2の評価結果)
表2に実施例2、比較例2の毛髪用組成物の評価結果を示す。評価の基準は、比較例2の毛髪用組成物を用いて縮毛矯正処理を行った毛束である。
【0142】
【表2】
【0143】
表2に示す結果から、L-システインが配合され、pH4.5である実施例2の毛髪用組成物は、L-システインが配合され、pH8である比較例2の毛髪用組成物よりも、毛先のまとまりに優れていた。したがって、還元剤としてシステインが配合された毛髪用組成物において、pHを酸性とすることで、pHをアルカリ性とするよりも、毛先のまとまりに優れることが分かる。なお、実施例2の毛髪用組成物は、比較例2の毛髪用組成物よりも、しっとり感及び柔らかさに優れていた。
【0144】
(実施例2、実施例4~7、比較例3の評価結果)
表3に実施例2、実施例4~7、比較例3の毛髪用組成物の評価結果を示す。評価の基準は、比較例1の毛髪用組成物を用いて縮毛矯正処理を行った毛束である。
【0145】
【表3】
【0146】
表3に示す結果から、キレート剤が配合された実施例2、4~7の毛髪用組成物は、キレート剤が配合されていない比較例3の毛髪用組成物よりも、毛先のまとまりに優れていた。したがって、システインが配合され、pHを酸性とした毛髪用組成物において、キレート剤を配合することで、毛先のまとまりに優れることが分かる。なお、実施例2、4~7の毛髪用組成物は、比較例3の毛髪用組成物よりも、しっとり感及び柔らかさに優れていた。
【0147】
また、表3に示す結果から、キレート剤として、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸三ナトリウム、ヒドロキシエタンジホスホン酸が配合された実施例2、4~6の毛髪用組成物は、フィチン酸が配合された実施例7の毛髪用組成物よりも、毛先のまとまりにより優れていた。したがって、キレート剤の中でも、エチレンジアミン四酢酸又はその塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸又はその塩、及びヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩が配合されると、毛先のまとまりにより優れることが分かる。
【0148】
(実施例8、9の評価結果)
表4に実施例8、9の毛髪用組成物の評価結果を示す。評価の基準としては、実施例9の毛髪用組成物を用いて縮毛矯正処理を行った毛束とした。
【0149】
【表4】
【0150】
表4に示す結果から、リン酸系アニオン界面活性剤であるポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸(20E.O.)、リン酸ジセチルが配合された実施例8の毛髪用組成物は、カチオン界面活性剤である塩化ステアリルトリメチルアンモニウムが配合された実施例9の毛髪用組成物に比べて、毛先のまとまりにより優れていた。したがって、L-システインが配合され、pHが酸性である毛髪用組成物において、リン酸系アニオン界面活性剤を配合することで、毛先のまとまりにより優れることが分かる。
【0151】
なお、実施例9の毛髪用組成物を用いて縮毛矯正処理を行った毛束は、比較例1~3の毛髪用組成物のいずれかを用いて縮毛矯正処理を行った毛束に比べて、毛先のまとまり及びしっとり感に優れていた。なお、実施例9の毛髪用組成物を用いて縮毛矯正処理を行った毛束は、比較例1、2の毛髪用組成物のいずれかを用いて縮毛矯正処理を行った毛束に比べて、柔らかさが優れていたが、比較例3の毛髪用組成物を用いて縮毛矯正処理を行った毛束に比べると、柔らかさは同等であった。
したがって、実施例9の毛髪用組成物は、比較例1~3の毛髪用組成物に比べて、毛先のまとまりに優れていた。
【0152】
(実施例2、10の評価結果)
表5に実施例2、10の毛髪用組成物の評価結果を示す。評価の基準としては、実施例10の毛髪用組成物を用いて縮毛矯正処理を行った毛束である。
【0153】
【表5】
【0154】
表5に示す結果から、リン酸系アニオン界面活性剤であるポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸(20E.O.)、リン酸ジセチルが配合された実施例10に対して、さらにカチオン界面活性剤である塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、ノニオン界面活性剤であるポリオキシエチレンセチルエーテル(2E.O.)、ポリオキシエチレンセチルエーテル(30E.O.)、ポリオキシエチレンセチルエーテル(150E.O.)が配合された実施例2の毛髪用組成物は、実施例10の毛髪用組成物と毛先のまとまりが同等であった。したがって、L-システインが配合され、pHが酸性である毛髪用組成物において、リン酸系アニオン界面活性剤を配合しつつ、さらにカチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤を配合しても、毛先のまとまりの評価に影響しないことが分かる。
【0155】
(実施例11、比較例1の評価結果)
表6に実施例11、比較例1の毛髪用組成物の評価結果を示す。評価の基準としては、比較例1の毛髪用組成物を用いて縮毛矯正処理を行った毛束である。
【0156】
【表6】
【0157】
表6に示す結果から、チオグリセリンが配合された実施例11の毛髪用組成物は、チオグリコール酸アンモニウムが配合された比較例1の毛髪用組成物よりも、毛先のまとまりに優れていた。したがって、pHが酸性の条件において、還元剤としてチオグリセリンが配合されると、チオグリコール酸アンモニウムを配合した場合よりも、毛先のまとまりに優れることが分かる。なお、実施例11の毛髪用組成物は、比較例1の毛髪用組成物よりも、しっとり感及び柔らかさに優れていた。
【0158】
(実施例11、比較例4の評価結果)
表7に実施例11、比較例4の毛髪用組成物の評価結果を示す。評価の基準としては、比較例4の毛髪用組成物を用いて縮毛矯正処理を行った毛束である。
【0159】
【表7】
【0160】
表7に示す結果から、チオグリセリンが配合され、pH4.5である実施例11の毛髪用組成物は、チオグリセリンが配合され、pH8である比較例4の毛髪用組成物よりも、毛先のまとまりに優れていた。したがって、還元剤としてチオグリセリンが配合された毛髪用組成物において、pHを酸性とすることで、pHをアルカリ性とするよりも、毛先のまとまりに優れることが分かる。なお、実施例11の毛髪用組成物は、比較例4の毛髪用組成物よりも、しっとり感及び柔らかさに優れていた。
【0161】
(実施例11、比較例5の評価結果)
表8に実施例11、比較例5の毛髪用組成物の評価結果を示す。評価の基準としては、比較例5の毛髪用組成物を用いて縮毛矯正処理を行った毛束である。
【0162】
【表8】
【0163】
表8に示す結果から、キレート剤が配合された実施例11の毛髪用組成物は、キレート剤が配合されていない比較例5の毛髪用組成物よりも、毛先のまとまりに優れていた。したがって、チオグリセリンが配合され、pHを酸性とした毛髪用組成物において、キレート剤を配合することで、毛先のまとまりに優れることが分かる。なお、実施例11の毛髪用組成物は、比較例5の毛髪用組成物よりも、しっとり感及び柔らかさに優れていた。
【0164】
〔処方例〕
以下の表9~表18に、処方例1-1~処方例1-61の組成物、及び処方例2-1~処方例2-2の組成物を示す。下記表9~表18に示す成分欄の表記において、数値は質量%を示し、「-」はその成分が未配合であることを示し、「pH3となる量」、「pH4となる量」、「pH4.5となる量」、「pH5となる量」、「pH6となる量」、「pH6.5となる量」とは、それぞれ毛髪用組成物のpH(25℃)がその値になる量でリン酸が配合されることを示し、「計100となる量」とは毛髪用組成物の全量が100質量%となる水の量を示す。
【0165】
なお、処方例1-1~処方例1-61の組成物は、常法により、L-システイン、チオグリセリン、チオ乳酸、チオグリコール酸、N-アセチル-L-システイン、システアミン、ブチロラクトンチオール、チオグリコール酸グリセリル、チオグリコール酸システアミン、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、リン酸ジセチル、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸(20E.O.)、ポリオキシエチレンセチルエーテル(2E.O.)、ポリオキシエチレンセチルエーテル(30E.O.)、ポリオキシエチレンセチルエーテル(150E.O.)、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、パラフィン、ミツロウ、ラノリン脂肪酸コレステリル、高重合メチルポリシロキサン、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、ヒドロキシエチルウレア、レブリン酸、リン酸、モノエタノールアミン、イソプロパノール、1,3-ブチレングリコール、香料、精製水から選ばれる各種成分を混合して製造できる。ここで、E.O.は酸化エチレン(エチレンオキサイド)の略であり、E.O.の前の数字は、酸化エチレンの平均付加モル数である。
【0166】
また、処方例2-1~処方例2-2の組成物は、常法により、過酸化水素、臭素酸ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸、フェノキシエタノール、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、ヒドロキシエタンジホスホン酸、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、精製水から選ばれる各種成分を混合して製造できる。
【0167】
処方例1-1~処方例1-61の組成物は、縮毛矯正用第1剤として使用でき、処方例2-1~処方例2-2の組成物は、縮毛矯正用第2剤として使用できる。縮毛矯正処理を行う場合は、処方例1-1~処方例1-61から選ばれるいずれか1つを縮毛矯正用第1剤とし、処方例2-1又は処方例2-2を縮毛矯正用第2剤として用いることができる。
【0168】
【表9】
【0169】
【表10】
【0170】
【表11】
【0171】
【表12】
【0172】
【表13】
【0173】
【表14】
【0174】
【表15】
【0175】
【表16】
【0176】
【表17】
【0177】
【表18】