(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163419
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】接合方法および接合構造
(51)【国際特許分類】
E04B 7/04 20060101AFI20241115BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20241115BHJP
E04B 1/30 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
E04B7/04 B
E04B1/58 603
E04B1/30 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078998
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】寺井 千絵
(72)【発明者】
【氏名】河辺 美穂
(72)【発明者】
【氏名】山木戸 勇也
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA13
2E125AA62
2E125AA64
2E125AB01
2E125AE16
2E125AG04
2E125AG12
2E125BD01
2E125BE04
2E125CA01
2E125EA33
(57)【要約】
【課題】木質材と上側フランジを有する鉄骨材とを高い施工性のもとで接合することのできる接合方法および接合構造を提供する。
【解決手段】接合構造10は、板状の木質材12と上側フランジ13を有する鉄骨材11とを接合する。鉄骨材11は、上側フランジ13に貫通孔14が形成されている。接合構造10は、所定位置に配置された鉄骨材11の上側フランジ13に支持される嵩上げ材20を有する。木質材12は、嵩上げ材20に支持されるように配置される。木質材12および嵩上げ材20は、貫通孔14から挿入されたねじ部材25によって上側フランジ13にねじ止めされる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質材と上側フランジを有する鉄骨材との接合方法であって、
前記上側フランジに支持されるように前記木質材を配置する木質材配置工程と、
前記上側フランジに形成された貫通孔にウェブ側からねじ部材を挿入し、前記上側フランジに前記木質材をねじ止めするねじ止め工程と、を備える
接合方法。
【請求項2】
前記木質材配置工程の前に、前記上側フランジに対して前記木質材を傾斜させる嵩上げ材を前記上側フランジに支持させる嵩上げ材配置工程を有し、
前記木質材配置工程では、前記嵩上げ材を介して前記上側フランジに支持されるように前記木質材を配置し、
前記ねじ止め工程では、前記嵩上げ材を貫通させた前記ねじ部材で前記木質材を前記上側フランジにねじ止めする
請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記嵩上げ材は、木製部材であり、
前記ねじ止め工程では、前記木質材と前記嵩上げ材とを前記上側フランジにねじ止めする
請求項2に記載の接合方法。
【請求項4】
前記嵩上げ材は、前記鉄骨材の延在方向に延びる板状の部材である
請求項2または3に記載の接合方法。
【請求項5】
上側フランジに貫通孔を有する鉄骨材と、
前記上側フランジに支持される木質材と、
前記貫通孔を貫通し、前記上側フランジに対して前記木質材をねじ止めするねじ部材と、を備える
接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質材と上側フランジを有する鉄骨材との接合方法および接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
H型鋼などの上側フランジを有する鉄骨材とCLT(Cross Laminated Timber)板などの木質材との接合方法として、例えば特許文献1には、金属製の棒状部材を用いた接合方法が開示されている。具体的には、特許文献1では、木質材に貫通孔を形成したのち、その貫通孔が鉄骨材の上側フランジに臨むように木質材を載置する。次に、その貫通孔を通じて棒状部材を鉄骨材の上側フランジに溶着したのち、棒状部材のうちで貫通孔から突出する部分を切断する。そして、貫通孔に硬化性の樹脂を充填することにより、鉄骨材と木質材とを接合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、鉄骨材の配置に合わせて木質材に貫通孔を形成するため、貫通孔の形成位置の管理が煩雑であった。また、現場作業が多いばかりか貫通孔が鉄骨材に臨むように木質材の細かな位置調整が必要であった。これらのことから、施工性がよいとはいえなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する接合方法は、木質材と上側フランジを有する鉄骨材との接合方法であって、前記上側フランジに支持されるように前記木質材を配置する木質材配置工程と、前記上側フランジに形成された貫通孔にウェブ側からねじ部材を挿入し、前記上側フランジに前記木質材をねじ止めするねじ止め工程と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、木質材と上側フランジを有する鉄骨材とを高い施工性のもとで接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】接合構造の一実施形態の概略構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】鉄骨材に嵩上げ材が配置される様子を模式的に示す図である。
【
図3】嵩上げ材に木質材が配置される様子を模式的に示す図である。
【
図4】上側フランジに対して嵩上げ材および木質材がねじ止めされる様子を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1~
図4を参照して、接合方法および接合構造の一実施形態について説明する。
(接合構造)
図1に示すように、接合構造10は、鉄骨材11と木質材12とを備える。
【0009】
鉄骨材11は、木質材12が接合される上側フランジ13を有する。鉄骨材11は、例えば鉄骨梁材として機能するH形鋼である。鉄骨材11の延在方向は、紙面直交方向である。鉄骨材11は、木質材12との接合に利用される貫通孔14を上側フランジ13の各所に有する。貫通孔14は、上側フランジ13において、上側フランジ13とウェブ15との接続部分に対する両側に形成されている。
【0010】
木質材12は、例えば木質板材である。木質材12は、例えばCLT(Cross Laminated Timber)板である。
接合構造10は、嵩上げ材20を有する。嵩上げ材20は、木製部材である。嵩上げ材20は、上側フランジ13と木質材12との間に位置して上側フランジ13に対して木質材12に所定の傾斜角を付与する。嵩上げ材20は、上側フランジ13の上面を覆うように鉄骨材11の延在方向に延びる板状の部材である。
【0011】
接合構造10は、ねじ部材25を有する。ねじ部材25は、例えばビスである。ねじ部材25は、貫通孔14を貫通して木質材12および嵩上げ材20を上側フランジ13にねじ止めしている。ねじ部材25は、その頭部が上側フランジ13の下面に係止された状態において、その先端部が木質材12の内部に止まる長さを有している。
【0012】
(接合方法)
図2~
図4を参照して、接合構造10を具現化する接合方法について説明する。
図2に示すように、まず、鉄骨材11に貫通孔14が形成される貫通孔形成工程が工場などにおいて行われる。貫通孔14が形成された鉄骨材11は、現場へと搬入されて所定位置に配置される。
【0013】
次に、嵩上げ材20が配置される嵩上げ材配置工程が行われる。嵩上げ材配置工程では、上側フランジ13を上方から覆うように嵩上げ材20が配置される。
図3に示すように、嵩上げ材配置工程のあと、木質材配置工程が行われる。木質材配置工程では、嵩上げ材20を介して上側フランジ13に支持されるように木質材12が配置される。
【0014】
図4に示すように、木質材配置工程のあと、ねじ止め工程が行われる。ねじ止め工程では、上側フランジ13の下側から貫通孔14に挿入されるねじ部材25によって、嵩上げ材20と木質材12とが上側フランジ13にねじ止めされる。ねじ部材25は、その頭部が上側フランジ13の下面に係止されるまで嵩上げ材20および木質材12にねじ込まれる。
【0015】
本実施形態の作用および効果について説明する。
(1)木質材12に貫通孔を形成する必要がないため、貫通孔の形成位置の管理が容易である。また、上側フランジ13に貫通孔14が形成されていることにより、鉄骨材11に対する木質材12の細かな位置調整も不要である。これらのことから、現場での施工性を高くすることができる。
【0016】
(2)上側フランジ13に対する貫通孔14の形成を搬入前の鉄骨材11に行っておくことにより、現場作業の低減を図ることができる。
(3)上側フランジ13と木質材12との間に嵩上げ材20が配置されることにより、嵩上げ材20の形状によって上側フランジ13に対する木質材12の傾斜角を調整することができる。これにより、所定の傾斜角を有する屋根として木質材12を機能させることができるとともにそうした屋根として機能する木質材12を鉄骨材11に容易に接合することができる。
【0017】
(4)嵩上げ材20が木製部材であることにより、ねじ部材25によって木質材12および嵩上げ材20を上側フランジ13にねじ止めすることができる。これにより、ねじ部材25用の貫通孔を嵩上げ材20に形成する必要がないため、上側フランジ13に対する嵩上げ材20の細かな位置調整が不要となる。また、上側フランジ13に対する嵩上げ材20の固定手段を別途設ける必要がないばかりか、上側フランジ13に対してねじ部材25を用いて嵩上げ材20を仮止めしておくこともできる。すなわち、嵩上げ材20が木製部材であることにより、施工性のさらなる向上を図ることができる。
【0018】
(5)嵩上げ材20が上側フランジ13に沿って延びる板状の部材である。これにより、貫通孔14の形成部分に嵩上げ材20が選択的に配置される場合に比べて、木質材12を配置する際などに生じた嵩上げ材20の位置ずれを容易に修正することができる。また、木質材12と鉄骨材11との間における荷重伝達を分散して行うことができる。
【0019】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・嵩上げ材20は、貫通孔14の形成部分に嵩上げ材20が選択的に配置される部材であってもよい。こうした構成によれば、例えば、鉄骨材11の延在方向において木質材12が傾斜する場合に、嵩上げ材20に要求される加工精度を低減することができる。
【0020】
・嵩上げ材20は、ねじ部材25が貫通する貫通孔が形成されている構成であってもよい。こうした構成によれば、嵩上げ材20として金属やプラスチック、硬質ゴムなどを用いることもできるため、嵩上げ材20の材質についての自由度が向上する。
【0021】
また、嵩上げ材20は、あと詰めのモルタル材でもよい。このような材質を用いれば上側フランジ13の施工精度管理や木質材12の傾斜角の調整がより容易となることから、施工性のさらなる向上を図ることができる。
【0022】
・上側フランジ13に対する嵩上げ材20の仮止めは、接着剤などによる接着によって行われてもよい。
・木質材12は、嵩上げ材20を介すことなく上側フランジ13に直接配置されてもよい。
【符号の説明】
【0023】
10…接合構造、11…鉄骨材、12…木質材、13…上側フランジ、14…貫通孔、15…ウェブ、20…嵩上げ材、25…ねじ部材。