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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163420
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/26 20060101AFI20241115BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
H01L21/26 G
H01L21/265 602B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078999
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】竹原 弘耕
(57)【要約】
【課題】コストの上昇を抑制しつつ、チャンバー内の部品への汚染物質の付着を防止することができる熱処理装置を提供する。
【解決手段】チャンバー内のサセプタ74よりも上方に石英のプロテクトリング30およびシャワープレート35が設けられる。ガスリング90の内壁面92aはプロテクトリング30によって覆われる。加熱処理時に半導体ウェハーWから放出された汚染物質は、プロテクトリング30、シャワープレート35およびサセプタ74に付着する。このため、ガスリング90の内壁面92aおよび上側チャンバー窓63への汚染物質の付着は防止される。汚染物質が付着したプロテクトリング30およびシャワープレート35は交換する必要が生じるが、これらは比較的安価な部品であり、かつ、容易に交換することができるため、交換に要するコストの上昇は抑制される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、
筒形状の側壁を有し、基板を収容するチャンバーと、
前記チャンバー内にて前記基板を保持する保持部と、
前記保持部に保持された前記基板に光を照射して前記基板を加熱する光照射部と、
前記側壁に取り付けられ、前記チャンバーの外部から供給された処理ガスを前記チャンバーの内部に導く環状のガスリングと、
前記保持部よりも下方の前記側壁に設けられた排気孔から前記チャンバー内の気体を排気する排気部と、
前記保持部よりも上方に設けられた筒形状の石英のプロテクト部と、
を備え、
前記ガスリングは、上部リングおよび下部リングを含み、
前記プロテクト部は、前記プロテクト部の上端から外方に向けて張り出すフランジを前記下部リングに係合させて少なくとも前記下部リングの内壁面を覆うように設置される熱処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の熱処理装置において、
前記チャンバーの上部には、前記光照射部から出射された光を前記チャンバー内に透過する上側チャンバー窓が設けられ、
前記プロテクト部の上側開口は、石英板によって覆われる熱処理装置。
【請求項3】
請求項2記載の熱処理装置において、
前記石英板には、前記処理ガスを噴出する複数の噴出孔が形設され、
前記複数の噴出孔の孔径は、前記石英板の中心から外周に向けて徐々に小さくなる熱処理装置。
【請求項4】
請求項3記載の熱処理装置において、
前記上部リングと前記下部リングとの間に形成される流路の先端が前記上側チャンバー窓と前記石英板との間の空間に前記処理ガスを供給する供給口となる熱処理装置。
【請求項5】
請求項1記載の熱処理装置において、
前記保持部が前記プロテクト部と一体に設けられる熱処理装置。
【請求項6】
請求項5記載の熱処理装置において、
前記保持部と前記プロテクト部との間に、前記ガスリングから供給された前記処理ガスを前記排気孔へと導く開口が設けられる熱処理装置。
【請求項7】
請求項1記載の熱処理装置において、
前記プロテクト部は、下に向かうほど間隔が広くなるテーパー形状を有する熱処理装置。
【請求項8】
請求項1記載の熱処理装置において、
前記プロテクト部は、下に向かうほど間隔が狭くなるテーパー形状を有する熱処理装置。
【請求項9】
請求項1記載の熱処理装置において、
前記基板は円板形状であり、
前記プロテクト部は円筒形状を有し、
前記プロテクト部の内径は前記基板の直径よりも大きい熱処理装置。
【請求項10】
請求項1記載の熱処理装置において、
前記光照射部は、前記チャンバーの上方に設けられたフラッシュランプを含む熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置に関する。処理対象となる基板には、例えば、半導体ウェハー、液晶表示装置用基板、flat panel display(FPD)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、または、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいて、極めて短時間で半導体ウェハーを加熱するフラッシュランプアニール(FLA)が注目されている。フラッシュランプアニールは、キセノンフラッシュランプ(以下、単に「フラッシュランプ」とするときにはキセノンフラッシュランプを意味する)を使用して半導体ウェハーの表面にフラッシュ光を照射することにより、半導体ウェハーの表面のみを極めて短時間(数ミリ秒以下)に昇温させる熱処理技術である。
【0003】
キセノンフラッシュランプの放射分光分布は紫外域から近赤外域であり、従来のハロゲンランプよりも波長が短く、シリコンの半導体ウェハーの基礎吸収帯とほぼ一致している。よって、キセノンフラッシュランプから半導体ウェハーにフラッシュ光を照射したときには、透過光が少なく半導体ウェハーを急速に昇温することが可能である。また、数ミリ秒以下の極めて短時間のフラッシュ光照射であれば、半導体ウェハーの表面近傍のみを選択的に昇温できることも判明している。
【0004】
このようなフラッシュランプアニールは、極短時間の加熱が必要とされる処理、例えば典型的には半導体ウェハーに注入された不純物の活性化に利用される。イオン注入法によって不純物が注入された半導体ウェハーの表面にフラッシュランプからフラッシュ光を照射すれば、当該半導体ウェハーの表面を極短時間だけ活性化温度にまで昇温することができ、不純物を深く拡散させることなく、不純物活性化のみを実行することができるのである。
【0005】
フラッシュランプアニールは、上記のような不純物の活性化のみならず、多種多様な用途への応用も試みられている。例えば、ドーパントを含んだ二酸化ケイ素の薄膜を半導体ウェハーの表面に成膜し、ハロゲンランプからの光照射によって半導体ウェハーの表面にドーパントを拡散させた後、フラッシュ光照射によってドーパントを活性化させることが行われている(いわゆる固相拡散法)。
【0006】
このような薄膜を形成した半導体ウェハーを加熱したときには、膜中の原子が薄膜の外側に拡散して放出される、いわゆる外方拡散が生じることがある。外方拡散が発生すると、放出された原子がプロセスチャンバー(以下、単に「チャンバー」とする)内の金属パーツや石英パーツに付着してそれらを汚染する可能性がある。例えば、フラッシュ光を透過する石英窓が原子付着によって汚染されると、当該石英窓の透過率が低下して半導体ウェハーへの照度が低下する。また、チャンバー内に入射したフラッシュ光の一部は金属の内壁面で反射されてから半導体ウェハーの表面に到達するのであるが、当該内壁面が汚染されると、反射率が低下してやはり半導体ウェハーへの照度が低下する。半導体ウェハーへの照度が低下すると、投入するフラッシュ光のエネルギーも減少することとなり、所望の特性が得られなくなるという問題が生じる。
【0007】
このため、特許文献1には、チャンバー内にオゾンを含む雰囲気を形成し、フラッシュランプから紫外成分を含むフラッシュ光を照射することによって付着した汚染物質を分解除去することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2021-34416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、光化学作用によるクリーニングでは汚染物質を完全には分解除去できずに汚染物質が残留することもある。また、付着する汚染物質の種類によっては分解自体が困難なこともある。このため、汚染されたパーツを交換することが最も確実かつ効果的なのであるが、石英窓のような高価なパーツを頻繁に交換するとランニングコストが著しく増えるという問題も生じる。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、コストの上昇を抑制しつつ、チャンバー内の部品への汚染物質の付着を防止することができる熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、この発明の第1の態様は、基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置において、筒形状の側壁を有し、基板を収容するチャンバーと、前記チャンバー内にて前記基板を保持する保持部と、前記保持部に保持された前記基板に光を照射して前記基板を加熱する光照射部と、前記側壁に取り付けられ、前記チャンバーの外部から供給された処理ガスを前記チャンバーの内部に導く環状のガスリングと、前記保持部よりも下方の前記側壁に設けられた排気孔から前記チャンバー内の気体を排気する排気部と、前記保持部よりも上方に設けられた筒形状の石英のプロテクト部と、を備え、前記ガスリングは、上部リングおよび下部リングを含み、前記プロテクト部は、前記プロテクト部の上端から外方に向けて張り出すフランジを前記下部リングに係合させて少なくとも前記下部リングの内壁面を覆うように設置される。
【0012】
また、第2の態様は、第1の態様に係る熱処理装置において、前記チャンバーの上部には、前記光照射部から出射された光を前記チャンバー内に透過する上側チャンバー窓が設けられ、前記プロテクト部の上側開口は、石英板によって覆われる。
【0013】
また、第3の態様は、第2の態様に係る熱処理装置において、前記石英板には、前記処理ガスを噴出する複数の噴出孔が形設され、前記複数の噴出孔の孔径は、前記石英板の中心から外周に向けて徐々に小さくなる。
【0014】
また、第4の態様は、第3の態様に係る熱処理装置において、前記上部リングと前記下部リングとの間に形成される流路の先端が前記上側チャンバー窓と前記石英板との間の空間に前記処理ガスを供給する供給口となる。
【0015】
また、第5の態様は、第1の態様に係る熱処理装置において、前記保持部が前記プロテクト部と一体に設けられる。
【0016】
また、第6の態様は、第5の態様に係る熱処理装置において、前記保持部と前記プロテクト部との間に、前記ガスリングから供給された前記処理ガスを前記排気孔へと導く開口が設けられる。
【0017】
また、第7の態様は、第1の態様に係る熱処理装置において、前記プロテクト部は、下に向かうほど間隔が広くなるテーパー形状を有する。
【0018】
また、第8の態様は、第1の態様に係る熱処理装置において、前記プロテクト部は、下に向かうほど間隔が狭くなるテーパー形状を有する。
【0019】
また、第9の態様は、第1の態様に係る熱処理装置において、前記基板は円板形状であり、前記プロテクト部は円筒形状を有し、前記プロテクト部の内径は前記基板の直径よりも大きい。
【0020】
また、第10の態様は、第1の態様に係る熱処理装置において、前記光照射部は、前記チャンバーの上方に設けられたフラッシュランプを含む。
【発明の効果】
【0021】
第1から第10の態様に係る熱処理装置によれば、プロテクト部は少なくとも下部リングの内壁面を覆うように設置されるため、加熱された基板から放出された汚染物質は安価で交換可能なプロテクト部に付着し、コストの上昇を抑制しつつ、チャンバー内の部品への汚染物質の付着を防止することができる。
【0022】
特に、第2の態様に係る熱処理装置によれば、プロテクト部の上側開口は石英板によって覆われるため、チャンバー内の部品への汚染物質の付着をより確実に防止することができる。
【0023】
特に、第3の態様に係る熱処理装置によれば、石英板に形設された複数の噴出孔の孔径は、石英板の中心から外周に向けて徐々に小さくなるため、チャンバー内の中心部にも十分が処理ガスを供給することができ、その中心部におけるガスの滞留を消滅させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る熱処理装置の構成を示す縦断面図である。
図2】保持部の全体外観を示す斜視図である。
図3】サセプタの平面図である。
図4】サセプタの断面図である。
図5】移載機構の平面図である。
図6】移載機構の側面図である。
図7】複数のハロゲンランプの配置を示す平面図である。
図8】ガスリング、プロテクトリングおよびシャワープレートの構成を図解的に示す図である。
図9】プロテクトリングの斜視図である。
図10】シャワープレートの平面図である。
図11】第2実施形態のプロテクトリングを図解的に示す図である。
図12】第2実施形態のプロテクトリングの斜視図である。
図13】第3実施形態のプロテクトリングを模式的に示す図である。
図14】第4実施形態のプロテクトリングを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下において、相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば、「一方向に」、「一方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」、「同軸」、など)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。また、等しい状態であることを示す表現(例えば、「同一」、「等しい」、「均質」、など)は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。また、形状を示す表現(例えば、「円形状」、「四角形状」、「円筒形状」、など)は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲の形状を表すものとし、例えば凹凸または面取りなどを有していてもよい。また、構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、「有する」、といった各表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。また、「A、BおよびCのうちの少なくとも一つ」という表現には、「Aのみ」、「Bのみ」、「Cのみ」、「A、BおよびCのうち任意の2つ」、「A、BおよびCの全て」が含まれる。
【0026】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る熱処理装置1の構成を示す縦断面図である。図1の熱処理装置1は、基板として円板形状の半導体ウェハーWに対してフラッシュ光照射を行うことによってその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。処理対象となる半導体ウェハーWのサイズは特に限定されるものではないが、例えばφ300mmやφ450mmである。なお、図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0027】
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュ加熱部5と、複数のハロゲンランプHLを内蔵するハロゲン加熱部4と、を備える。チャンバー6の上側にフラッシュ加熱部5が設けられるとともに、下側にハロゲン加熱部4が設けられている。また、熱処理装置1は、チャンバー6の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に保持する保持部7と、保持部7と装置外部との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う移載機構10と、プロテクトリング30と、を備える。さらに、熱処理装置1は、ハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
【0028】
チャンバー6は、筒状のチャンバー側部61の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側部61は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。チャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英により形成された円板形状部材であり、フラッシュ加熱部5から出射されたフラッシュ光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。また、チャンバー6の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英により形成された円板形状部材であり、ハロゲン加熱部4からの光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。
【0029】
また、チャンバー側部61の内側の壁面の上部にはガスリング90が装着され、下部には反射リング69が装着されている。ガスリング90および反射リング69は、ともに円環状に形成されている。チャンバー6の内側空間、すなわち上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64、チャンバー側部61、反射リング69およびガスリング90によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
【0030】
チャンバー側部61に反射リング69およびガスリング90が装着されることによって、チャンバー6の内壁面に凹部62が形成される。すなわち、チャンバー側部61の内壁面のうち反射リング69およびガスリング90が装着されていない中央部分と、反射リング69の上端面と、ガスリング90の下端面で囲まれた凹部62が形成される。凹部62は、チャンバー6の内壁面に水平方向に沿って円環状に形成され、半導体ウェハーWを保持する保持部7を囲繞する。
【0031】
また、チャンバー側部61には、チャンバー6に対して半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、ゲートバルブ185によって開閉可能とされている。搬送開口部66は凹部62の外周面に連通接続されている。このため、ゲートバルブ185が搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から凹部62を通過して熱処理空間65への半導体ウェハーWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウェハーWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖するとチャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
【0032】
さらに、チャンバー側部61には、貫通孔61aが穿設されている。チャンバー側部61の外壁面の貫通孔61aが設けられている部位には放射温度計20が取り付けられている。貫通孔61aは、後述するサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面から放射された赤外光を放射温度計20に導くための円筒状の孔である。貫通孔61aは、その貫通方向の軸がサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの主面と交わるように、水平方向に対して傾斜して設けられている。貫通孔61aの熱処理空間65に臨む側の端部には、放射温度計20が測定可能な波長領域の赤外光を透過させるフッ化バリウム材料からなる透明窓21が装着されている。
【0033】
また、チャンバー6の内壁上部に装着されたガスリング90には熱処理空間65に処理ガスを供給するガス供給口81が形設されている。ガス供給口81は、ガスリング90の内部に形成された流路を介してガス供給管83に連通接続されている。ガス供給管83は処理ガス供給源85に接続されている。また、ガス供給管83の経路途中には給気バルブ84が介挿されている。給気バルブ84が開放されると、処理ガス供給源85からガスリング90に処理ガスが送給され、ガスリング90の内部の流路を通過した処理ガスがガス供給口81から熱処理空間65に供給される。処理ガスとしては、例えば窒素(N)、ヘリウム(He)等の不活性ガス、または、水素(H)、アンモニア(NH)等の反応性ガス、或いはそれらを混合した混合ガスを用いることができる(本実施形態では窒素ガス)。
【0034】
一方、チャンバー6の側壁下部には熱処理空間65内の気体を排気するガス排気孔86が形設されている。ガス排気孔86は、凹部62よりも下側位置に形設されており、反射リング69に設けられていても良い。ガス排気孔86はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間87を介してガス排気管88に連通接続されている。ガス排気管88は排気部190に接続されている。また、ガス排気管88の経路途中には排気バルブ89が介挿されている。排気バルブ89が開放されると、熱処理空間65の気体がガス排気孔86から緩衝空間87を経てガス排気管88へと排出される。
【0035】
排気部190は真空ポンプを含む。ガス供給口81からガス供給を行うことなく、排気部190を作動させて熱処理空間65の気体を排気することにより、チャンバー6内を大気圧未満に減圧することができる。また、排気部190の真空ポンプとガス排気管88とは、例えば管径の異なる3本のバイパスラインによって接続されており、それらのいずれを開放するかによってチャンバー6からの排気流量および排気速度を変化させることができる。
【0036】
図2は、保持部7の全体外観を示す斜視図である。保持部7は、基台リング71、連結部72およびサセプタ74を備えて構成される。基台リング71、連結部72およびサセプタ74はいずれも石英にて形成されている。すなわち、保持部7の全体が石英にて形成されている。
【0037】
基台リング71は円環形状から一部が欠落した円弧形状の石英部材である。この欠落部分は、後述する移載機構10の移載アーム11と基台リング71との干渉を防ぐために設けられている。基台リング71は凹部62の底面に載置されることによって、チャンバー6の壁面に支持されることとなる(図1参照)。基台リング71の上面に、その円環形状の周方向に沿って複数の連結部72(本実施形態では4個)が立設される。連結部72も石英の部材であり、溶接によって基台リング71に固着される。
【0038】
サセプタ74は基台リング71に設けられた4個の連結部72によって支持される。図3は、サセプタ74の平面図である。また、図4は、サセプタ74の断面図である。サセプタ74は、保持プレート75、ガイドリング76および複数の基板支持ピン77を備える。保持プレート75は、石英にて形成された略円形の平板状部材である。保持プレート75の直径は半導体ウェハーWの直径よりも大きい。すなわち、保持プレート75は、半導体ウェハーWよりも大きな平面サイズを有する。
【0039】
保持プレート75の上面周縁部にガイドリング76が設置されている。ガイドリング76は、半導体ウェハーWの直径よりも大きな内径を有する円環形状の部材である。例えば、半導体ウェハーWの直径がφ300mmの場合、ガイドリング76の内径はφ320mmである。ガイドリング76の内周は、保持プレート75から上方に向けて広くなるようなテーパ面とされている。ガイドリング76は、保持プレート75と同様の石英にて形成される。ガイドリング76は、保持プレート75の上面に溶着するようにしても良いし、別途加工したピンなどによって保持プレート75に固定するようにしても良い。或いは、保持プレート75とガイドリング76とを一体の部材として加工するようにしても良い。
【0040】
保持プレート75の上面のうちガイドリング76よりも内側の領域が半導体ウェハーWを保持する平面状の保持面75aとされる。保持プレート75の保持面75aには、複数の基板支持ピン77が立設されている。本実施形態においては、保持面75aの外周円(ガイドリング76の内周円)と同心円の周上に沿って30°毎に計12個の基板支持ピン77が立設されている。12個の基板支持ピン77を配置した円の径(対向する基板支持ピン77間の距離)は半導体ウェハーWの径よりも小さく、半導体ウェハーWの径がφ300mmであればφ270mm~φ280mm(本実施形態ではφ270mm)である。それぞれの基板支持ピン77は石英にて形成されている。複数の基板支持ピン77は、保持プレート75の上面に溶接によって設けるようにしても良いし、保持プレート75と一体に加工するようにしても良い。
【0041】
図2に戻り、基台リング71に立設された4個の連結部72とサセプタ74の保持プレート75の周縁部とが溶接によって固着される。すなわち、サセプタ74と基台リング71とは連結部72によって固定的に連結されている。このような保持部7の基台リング71がチャンバー6の壁面に支持されることによって、保持部7がチャンバー6に装着される。保持部7がチャンバー6に装着された状態においては、サセプタ74の保持プレート75は水平姿勢(法線が鉛直方向と一致する姿勢)となる。すなわち、保持プレート75の保持面75aは水平面となる。
【0042】
チャンバー6に搬入された半導体ウェハーWは、チャンバー6に装着された保持部7のサセプタ74の上に水平姿勢にて載置されて保持される。このとき、半導体ウェハーWは保持プレート75上に立設された12個の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。より厳密には、12個の基板支持ピン77の上端部が半導体ウェハーWの下面に接触して当該半導体ウェハーWを支持する。12個の基板支持ピン77の高さ(基板支持ピン77の上端から保持プレート75の保持面75aまでの距離)は均一であるため、12個の基板支持ピン77によって半導体ウェハーWを水平姿勢に支持することができる。
【0043】
また、半導体ウェハーWは複数の基板支持ピン77によって保持プレート75の保持面75aから所定の間隔を隔てて支持されることとなる。基板支持ピン77の高さよりもガイドリング76の厚さの方が大きい。従って、複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの水平方向の位置ずれはガイドリング76によって防止される。
【0044】
また、図2および図3に示すように、サセプタ74の保持プレート75には、上下に貫通して開口部78が形成されている。開口部78は、放射温度計20が半導体ウェハーWの下面から放射される放射光(赤外光)を受光するために設けられている。すなわち、放射温度計20が開口部78およびチャンバー側部61の貫通孔61aに装着された透明窓21を介して半導体ウェハーWの下面から放射された光を受光して当該半導体ウェハーWの温度を測定する。さらに、サセプタ74の保持プレート75には、後述する移載機構10のリフトピン12が半導体ウェハーWの受け渡しのために貫通する4個の貫通孔79が穿設されている。
【0045】
図5は、移載機構10の平面図である。また、図6は、移載機構10の側面図である。移載機構10は、2本の移載アーム11を備える。移載アーム11は、概ね円環状の凹部62に沿うような円弧形状とされている。それぞれの移載アーム11には2本のリフトピン12が立設されている。移載アーム11およびリフトピン12は石英にて形成されている。各移載アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対の移載アーム11を保持部7に対して半導体ウェハーWの移載を行う移載動作位置(図5の実線位置)と保持部7に保持された半導体ウェハーWと平面視で重ならない退避位置(図5の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。水平移動機構13としては、個別のモータによって各移載アーム11をそれぞれ回動させるものであっても良いし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対の移載アーム11を連動させて回動させるものであっても良い。
【0046】
また、一対の移載アーム11は、昇降機構14によって水平移動機構13とともに昇降移動される。昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて上昇させると、計4本のリフトピン12がサセプタ74に穿設された貫通孔79(図2,3参照)を通過し、リフトピン12の上端がサセプタ74の上面から突き出る。一方、昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて下降させてリフトピン12を貫通孔79から抜き取り、水平移動機構13が一対の移載アーム11を開くように移動させると各移載アーム11が退避位置に移動する。一対の移載アーム11の退避位置は、保持部7の基台リング71の直上である。基台リング71は凹部62の底面に載置されているため、移載アーム11の退避位置は凹部62の内側となる。なお、移載機構10の駆動部(水平移動機構13および昇降機構14)が設けられている部位の近傍にも図示省略の排気機構が設けられており、移載機構10の駆動部周辺の雰囲気がチャンバー6の外部に排出されるように構成されている。
【0047】
図1に戻り、チャンバー6の上部には、ガスリング90、プロテクトリング30およびシャワープレート35が設けられている。図8は、ガスリング90、プロテクトリング30およびシャワープレート35の構成を図解的に示す図である。概略円筒形状のチャンバー側部61の内壁面上部に装着されるガスリング90は円環形状を有する。ガスリング90は、その中心がチャンバー側部61の中心と一致するように装着される。すなわち、ガスリング90の径方向および周方向とチャンバー側部61の径方向および周方向とは一致する。ガスリング90は、上部リング91と下部リング92とを備える。上部リング91および下部リング92はともに円環形状を有する。上部リング91と下部リング92とが重ね合わされてガスリング90が形成される。下部リング92は、チャンバー6の内部空間(熱処理空間65)に臨む内壁面92aを有する。
【0048】
円環形状の上部リング91と下部リング92とが重ね合わされた構造において、上部リング91と下部リング92との間には凹凸が組み合わされた隙間が存在する。この屈曲する流路は、気体の流れに対する抵抗部となり得るバッファおよびラビリンス構造を有している。当該流路のチャンバー6内に望む側の先端部がガス供給口81となる。また、当該流路の他方側の端部はガス供給管83に接続される。
【0049】
プロテクトリング30は、石英の円筒形状部材である。図9は、プロテクトリング30の斜視図である。図9には、円筒形状のプロテクトリング30を径方向に沿った平面で半分に切断した一方を示す。プロテクトリング30は、筒部31およびフランジ32を備える。筒部31およびフランジ32はともに石英にて形成される。
【0050】
筒部31は、上側および下側が開放された円筒形状を有する。筒部31の内径は、サセプタ74に保持される半導体ウェハーWの直径よりも大きい。筒部31の高さは、少なくとも下部リング92の内壁面92aの高さよりも大きい。
【0051】
筒部31の上端から外方に向けて張り出すようにフランジ32が設けられる。フランジ32は、円環形状の板状部材である。フランジ32の内径は筒部31の内径とほぼ同じである。フランジ32の外径は筒部31の外径よりも大きい。フランジ32は、筒部31の上端に固設されている。フランジ32と筒部31とは例えば溶接によって接合するようにしても良いし、一体に成型するようにしても良い。
【0052】
図8に戻り、プロテクトリング30のフランジ32をガスリング90の下部リング92に係合させることによって、プロテクトリング30はガスリング90に支持されてチャンバー6に装着される。具体的には、例えばフランジ32の外周には図示省略の切り欠き部が3箇所形設されており、その切り欠き部を下部リング92に設けられたピン部材に係合させる。プロテクトリング30がガスリング90に支持された状態においては、少なくとも下部リング92の内壁面92aがプロテクトリング30の筒部31によって覆われる。また、プロテクトリング30の上側にはシャワープレート35が載置される。シャワープレート35は、石英製の円板形状部材である。よって、シャワープレート35は、上側チャンバー窓63と同じく、フラッシュ加熱部5から出射されたフラッシュ光を透過する。円板形状のシャワープレート35の直径はフランジ32の外径と概ね同じである。シャワープレート35の外周にも切り欠き部が形設されており、その切り欠き部を上記のピン部材に係合させることによって、シャワープレート35はプロテクトリング30のフランジ32上に載置されてチャンバー6に装着される。シャワープレート35がプロテクトリング30上に載置されることにより、プロテクトリング30の上側開口はシャワープレート35によって覆われる。
【0053】
図10は、シャワープレート35の平面図である。シャワープレート35には、上下に貫通して複数の噴出孔36が穿設されている。複数の噴出孔36が設けられる領域の大きさは、例えば半導体ウェハーWの平面サイズと同程度である。複数の噴出孔36の孔径は、シャワープレート35の中心から外周に向けて徐々に小さくなる。すなわち、シャワープレート35の中心に設けられた噴出孔36の孔径が最大であり、例えば11mmである。逆に、シャワープレート35の最も外周側に設けられた噴出孔36の孔径が最小であり、例えば7mmである。
【0054】
チャンバー6にプロテクトリング30およびシャワープレート35が装着されると、上側チャンバー窓63とシャワープレート35との間に空間が形成される。プロテクトリング30およびシャワープレート35がチャンバー6に装着された状態においては、プロテクトリング30およびシャワープレート35は保持部7のサセプタ74よりも上方に設けられることとなる。また、図1では図示の便宜上1つしか示していなかったガス排気孔86は、チャンバー側部61の径方向両端に相対向するように2つ設けられている。2つのガス排気孔86は、保持部7のサセプタ74よりも下方に設けられる。
【0055】
処理ガス供給源85からガス供給管83を経由してガスリング90に送給された処理ガスは、ガスリング90内の流路を通過してガス供給口81から上側チャンバー窓63とシャワープレート35との間の空間に供給される。その処理ガスは、シャワープレート35に設けられた複数の噴出孔36から下方に向けて噴出される。複数の噴出孔36から噴出された処理ガスは、プロテクトリング30の筒部31の内側空間内を流下してサセプタ74に保持された半導体ウェハーWに供給される。そして、処理ガスはプロテクトリング30の下端とサセプタ74との間の空間からガス排気孔86に向けて流れ、ガス排気孔86から排出される。シャワープレート35から噴出される処理ガスの総流量は、例えば100リットル/分である。
【0056】
チャンバー6の上方に設けられたフラッシュ加熱部5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、フラッシュ加熱部5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュ加熱部5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状の石英窓である。フラッシュ加熱部5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。フラッシュランプFLはチャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65にフラッシュ光を照射する。
【0057】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。複数のフラッシュランプFLが配列される領域は半導体ウェハーWの平面サイズよりも大きい。
【0058】
キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された円筒形状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプHLの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。すなわち、フラッシュランプFLは、1秒未満の極めて短い時間で瞬間的に発光するパルス発光ランプである。なお、フラッシュランプFLの発光時間は、フラッシュランプFLに電力供給を行うランプ電源のコイル定数によって調整することができる。
【0059】
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
【0060】
チャンバー6の下方に設けられたハロゲン加熱部4は、筐体41の内側に複数本(本実施形態では40本)のハロゲンランプHLを内蔵している。ハロゲン加熱部4は、複数のハロゲンランプHLによってチャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65への光照射を行って半導体ウェハーWを加熱する。
【0061】
図7は、複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。40本のハロゲンランプHLは上下2段に分けて配置されている。保持部7に近い上段に20本のハロゲンランプHLが配設されるとともに、上段よりも保持部7から遠い下段にも20本のハロゲンランプHLが配設されている。各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
【0062】
また、図7に示すように、上段、下段ともに保持部7に保持される半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、ランプ配列の中央部よりも周縁部の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。このため、ハロゲン加熱部4からの光照射による加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部により多い光量の照射を行うことができる。
【0063】
また、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向と下段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向とが互いに直交するように計40本のハロゲンランプHLが配設されている。
【0064】
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。すなわち、ハロゲンランプHLは少なくとも1秒以上連続して発光する連続点灯ランプである。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方の半導体ウェハーWへの放射効率が優れたものとなる。
【0065】
また、ハロゲン加熱部4の筐体41内にも、2段のハロゲンランプHLの下側にリフレクタ43が設けられている(図1)。リフレクタ43は、複数のハロゲンランプHLから出射された光を熱処理空間65の側に反射する。
【0066】
制御部3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく記憶部(例えば、磁気ディスクまたはSSD)を備えている。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置1における処理が進行する。
【0067】
上記の構成以外にも熱処理装置1は、半導体ウェハーWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー6の壁体には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ハロゲン加熱部4およびフラッシュ加熱部5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。また、上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、フラッシュ加熱部5および上側チャンバー窓63を冷却する。
【0068】
次に、熱処理装置1における典型的な半導体ウェハーWの処理手順について説明する。以下に説明する熱処理装置1の処理手順は、制御部3が熱処理装置1の各動作機構を制御することにより進行する。
【0069】
まず、半導体ウェハーWの処理に先立って給気バルブ84が開放されるとともに、排気バルブ89が開放されてチャンバー6内に対する給排気が開始される。給気バルブ84が開放されると、処理ガス供給源85からガスリング90に窒素ガスが送給され、ガス供給口81から上側チャンバー窓63とシャワープレート35との間の空間に窒素ガスが供給される。その窒素ガスは、シャワープレート35に設けられた複数の噴出孔36から下方に向けて噴出される。また、排気バルブ89が開放されると、ガス排気孔86からチャンバー6内の気体が排気される。これにより、シャワープレート35から噴出された窒素ガスがプロテクトリング30の内側空間を通過して下方へと流れて熱処理空間65にダウンフローを形成する。
【0070】
続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介して処理対象となる半導体ウェハーWがチャンバー6内の熱処理空間65に搬入される。このときには、半導体ウェハーWの搬入にともなって装置外部の雰囲気を巻き込むおそれがあるが、チャンバー6には窒素ガスが供給され続けているため、搬送開口部66から窒素ガスが流出して、そのような外部雰囲気の巻き込みを最小限に抑制することができる。
【0071】
搬送ロボットによって搬入された半導体ウェハーWは、プロテクトリング30の下端とサセプタ74との間を通過し、保持部7の直上位置まで進出して停止する。そして、移載機構10の一対の移載アーム11が退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が貫通孔79を通ってサセプタ74の保持プレート75の上面から突き出て半導体ウェハーWを受け取る。このとき、リフトピン12は基板支持ピン77の上端よりも上方にまで上昇する。
【0072】
半導体ウェハーWがリフトピン12に載置された後、搬送ロボットが熱処理空間65から退出し、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖される。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、半導体ウェハーWは移載機構10から保持部7のサセプタ74に受け渡されて水平姿勢にて下方より保持される。半導体ウェハーWは、保持プレート75上に立設された複数の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。また、半導体ウェハーWは、成膜処理のなされた表面を上面として保持部7に保持される。複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの裏面(表面とは反対側の主面)と保持プレート75の保持面75aとの間には所定の間隔が形成される。サセプタ74の下方にまで下降した一対の移載アーム11は水平移動機構13によって退避位置、すなわち凹部62の内側に退避する。
【0073】
半導体ウェハーWが石英にて形成された保持部7のサセプタ74によって水平姿勢にて下方より保持された後、ハロゲン加熱部4の40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して予備加熱(アシスト加熱)が開始される。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成された下側チャンバー窓64およびサセプタ74を透過して半導体ウェハーWの下面に照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウェハーWが予備加熱されて温度が上昇する。なお、移載機構10の移載アーム11は凹部62の内側に退避しているため、ハロゲンランプHLによる加熱の障害となることは無い。
【0074】
ハロゲンランプHLによる予備加熱を行うときには、半導体ウェハーWの温度が放射温度計20によって測定されている。すなわち、サセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面から開口部78を介して放射された赤外光を透明窓21を通して放射温度計20が受光して昇温中のウェハー温度を測定する。測定された半導体ウェハーWの温度は制御部3に伝達される。制御部3は、ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度が所定の予備加熱温度T1に到達したか否かを監視しつつ、ハロゲンランプHLの出力を制御する。すなわち、制御部3は、放射温度計20による測定値に基づいて、半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1となるようにハロゲンランプHLの出力をフィードバック制御する。
【0075】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した後、制御部3は半導体ウェハーWをその予備加熱温度T1に暫時維持する。具体的には、放射温度計20によって測定される半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した時点にて制御部3がハロゲンランプHLの出力を調整し、半導体ウェハーWの温度をほぼ予備加熱温度T1に維持している。
【0076】
このようなハロゲンランプHLによる予備加熱を行うことによって、半導体ウェハーWの全体を予備加熱温度T1に均一に昇温している。ハロゲンランプHLによる予備加熱の段階においては、より放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部の温度が中央部よりも低下する傾向にあるが、ハロゲン加熱部4におけるハロゲンランプHLの配設密度は、基板Wの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域の方が高くなっている。このため、放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部に照射される光量が多くなり、予備加熱段階における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一なものとすることができる。
【0077】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達して所定時間が経過した時点にてフラッシュ加熱部5のフラッシュランプFLがサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの表面にフラッシュ光照射を行う。フラッシュランプFLから放射されたフラッシュ光は、いずれも石英にて形成されたランプ光放射窓53、上側チャンバー窓63およびシャワープレート35を順に透過して半導体ウェハーWに表面に照射され、半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。また、上側チャンバー窓63からチャンバー6内に入射したフラッシュ光の一部はガスリング90の内壁面92aで反射されてから半導体ウェハーWの表面に到達する。
【0078】
フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光(閃光)照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。すなわち、フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短く強い閃光である。そして、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射によりフラッシュ加熱される半導体ウェハーWの表面温度は、瞬間的に1000℃以上の処理温度T2まで上昇した後、急速に下降する。
【0079】
半導体ウェハーWの予備加熱およびフラッシュ加熱を実行しているときには、図8に示すように、半導体ウェハーWがサセプタ74に保持されている状態でシャワープレート35から下方に向けて窒素ガスが噴出されている。シャワープレート35から噴出された窒素ガスは、プロテクトリング30の内側を流下してサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの表面に供給される。なお、シャワープレート35とサセプタ74に保持されている半導体ウェハーWとの間隔は比較的大きいため、シャワープレート35から噴出された窒素ガスによって加熱中の半導体ウェハーWの温度が低下するおそれはない。
【0080】
フラッシュ加熱処理が終了した後、所定時間経過後にハロゲンランプHLが消灯する。これにより、半導体ウェハーWが予備加熱温度T1から急速に降温する。降温中の半導体ウェハーWの温度は放射温度計20によって測定され、その測定結果は制御部3に伝達される。制御部3は、放射温度計20の測定結果より半導体ウェハーWの温度が所定温度まで降温したか否かを監視する。そして、半導体ウェハーWの温度が所定以下にまで降温した後、移載機構10の一対の移載アーム11が再び退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12がサセプタ74の上面から突き出て熱処理後の半導体ウェハーWをサセプタ74から受け取る。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、リフトピン12上に載置された半導体ウェハーWが装置外部の搬送ロボットによりチャンバー6から搬出され、半導体ウェハーWの加熱処理が完了する。
【0081】
表面に膜が形成された半導体ウェハーWが予備加熱された後にフラッシュ加熱されると、昇温した膜からの外方拡散によってドーパント等の原子が熱処理空間65に放出されることがある。また、膜の種類によっては、昇温した膜から昇華物が発生することもある。これらの膜由来の汚染物質が上側チャンバー窓63に付着すると、上側チャンバー窓63の透過率が低下して半導体ウェハーWへのフラッシュ光の照度が低下する。また、汚染物質がガスリング90の内壁面92aに付着すると、その内壁面92aの反射率が低下して半導体ウェハーWへのフラッシュ光の照度が低下する。
【0082】
このため、第1実施形態においては、チャンバー6内の上部に、プロテクトリング30およびシャワープレート35を設けている。加熱処理時(予備加熱およびフラッシュ加熱の双方を含む)に半導体ウェハーWから放出された汚染物質の大半は、シャワープレート35から噴出されてプロテクトリング30の下端とサセプタ74との間の空間を通過してガス排気孔86に向かう窒素ガスの流れによってチャンバー6から排出される。しかし、チャンバー6内には窒素ガスの流れの渦が形成されており、その渦によって汚染物質の一部はチャンバー6内の部品に付着する。
【0083】
ガスリング90の内壁面92aはプロテクトリング30の筒部31によって覆われている。従って、窒素ガスの渦によって内壁面92aへと向かう汚染物質はプロテクトリング30に付着することとなる。これにより、内壁面92aに汚染物質が付着して汚染されることは防がれる。
【0084】
また、窒素ガスの渦によって上方へと向かう汚染物質はシャワープレート35に付着することとなる。このため、上側チャンバー窓63に汚染物質が付着して汚染されることも防がれる。なお、プロテクトリング30は、フランジ32を下部リング92に係合させることによってガスリング90に支持されている。従って、内壁面92aとプロテクトリング30の筒部31との間に生じる隙間はフランジ32によって塞がれることとなるため、汚染物質がプロテクトリング30の上方から回り込んで当該隙間に入って内壁面92aに付着することも防止される。また、半導体ウェハーWの下側にはサセプタ74が存在しているため、汚染物質が下側チャンバー窓64に付着することも防がれる。
【0085】
第1実施形態においては、チャンバー6内のサセプタ74よりも上方にプロテクトリング30およびシャワープレート35を設けているため、加熱処理時に半導体ウェハーWから放出された汚染物質がガスリング90の内壁面92aおよび上側チャンバー窓63に付着することは防止される。半導体ウェハーWから放出された汚染物質はプロテクトリング30、シャワープレート35およびサセプタ74に付着することとなる。従って、メンテナンス時等にこれらの部品を交換する必要が生じるものの、これらの部品はガスリング90や上側チャンバー窓63等に比較すると安価であり、かつ、容易に交換することができる。すなわち、プロテクトリング30、シャワープレート35およびサセプタ74の交換に要するコストは比較的低い。よって、第1実施形態のようにすれば、コストの上昇を抑制しつつ、チャンバー6内の部品への汚染物質の付着を防止することができる。
【0086】
また、シャワープレート35に設けられた複数の噴出孔36の孔径は、シャワープレート35の中心から外周に向けて徐々に小さくなる。従って、ガス供給口81から上側チャンバー窓63とシャワープレート35との間の空間に供給された処理ガスは、シャワープレート35の中心に近いほど強く噴出される。ガス排気孔86はチャンバー側部61に設けられているため、シャワープレート35が存在しない場合には、ガス供給口81から供給された処理ガスはチャンバー側部61に沿って流れてガス排気孔86から排出されることが想定される。そうすると、チャンバー6内の中心部には処理ガスが供給されず、ガスの滞留が生じるおそれがある。第1実施形態では、シャワープレート35の中心から外周に向けて噴出孔36の孔径が徐々に小さくなるため、チャンバー6内の中心部にも十分な処理ガスを供給することができ、ガスの滞留を消滅させることが可能となる。その結果、半導体ウェハーWの中心近傍から放出された汚染物質も処理ガスの流れによって排出することができ、チャンバー6内の部品への汚染物質の付着をより確実に防止することができる。
【0087】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の熱処理装置の全体構成は概ね第1実施形態と同様である(図1)。また、第2実施形態における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同じである。第2実施形態が第1実施形態と相違するのは、サセプタとプロテクトリングとを一体化している点である。
【0088】
図11は、第2実施形態のプロテクトリング130を図解的に示す図である。図12は、プロテクトリング130の斜視図である。図11において、第1実施形態(図8)と同一の要素については同一の符号を付している。第2実施形態のプロテクトリング130は、筒部131、フランジ132、天板133および結合部134を備える。筒部131、フランジ132、天板133および結合部134はいずれも石英にて形成される。
【0089】
筒部131は、第1実施形態の筒部31と同様の要素である。すなわち、筒部131は、半導体ウェハーWの直径よりも大きな内径の円筒形状部材である。また、フランジ132も第1実施形態のフランジ32と同様の要素である。すなわち、フランジ132は、筒部131の上端から外方に向けて張り出すように設けられた円環形状の板状部材である。
【0090】
プロテクトリング130の天板133は、第1実施形態のサセプタ74と同様の要素である。すなわち、天板133は、半導体ウェハーWの直径よりも大きな直径の石英の円板形状部材である。天板133には、サセプタ74と同様に、半導体ウェハーWを支持するための複数の基板支持ピン、放射温度計20が温度測定を行うための開口部、および、リフトピン12が通過するための貫通孔が設けられている。よって、第2実施形態においては、チャンバー6に搬入された半導体ウェハーWは、プロテクトリング130の天板133の上に水平姿勢にて載置されて保持される。
【0091】
結合部134は、筒部131の下端の一部から突き出るように設けられた平面視円弧状の部材である。筒部131と天板133とは結合部134によって固定的に連結されている。結合部134は筒部131の下端の一部のみに設けられているため、結合部134が設けられていない筒部131の下端と天板133と間には開口135が形成されることとなる。搬送ロボットによる天板133に対する半導体ウェハーWの受け渡しは、この開口135を通して行うこととなる。また、開口135は、プロテクトリング130の内部に供給された処理ガスの排気口としても機能する。
【0092】
第1実施形態と同様に、フランジ132をガスリング90の下部リング92に係合させることによって、第2実施形態のプロテクトリング130はガスリング90に支持されてチャンバー6に装着される。プロテクトリング130がガスリング90に支持された状態においては、少なくとも下部リング92の内壁面92aがプロテクトリング130の筒部131によって覆われる。
【0093】
また、第1実施形態と同様に、プロテクトリング130の上側にはシャワープレート35が載置される。シャワープレート35は、石英製の円板形状部材である。シャワープレート35には複数の噴出孔36が設けられている。複数の噴出孔36の孔径は、シャワープレート35の中心から外周に向けて徐々に小さくなる。シャワープレート35がプロテクトリング130上に載置されることにより、プロテクトリング130の上側開口はシャワープレート35によって覆われる。
【0094】
処理ガス供給源85からガス供給管83を経由してガスリング90に送給された処理ガスは、ガスリング90内の流路を通過してガス供給口81から上側チャンバー窓63とシャワープレート35との間の空間に供給される。その処理ガスは、シャワープレート35に設けられた複数の噴出孔36から下方に向けて噴出される。複数の噴出孔36から噴出された処理ガスは、プロテクトリング130の筒部131の内側空間内を流下して天板133に保持された半導体ウェハーWに供給される。そして、処理ガスはプロテクトリング130の開口135からガス排気孔86に向けて流れ、ガス排気孔86から排出される。なお、第2実施形態では、プロテクトリング130によって半導体ウェハーWを保持するため、第1実施形態の保持部7は設けていない。
【0095】
第2実施形態においては、搬送ロボットによってチャンバー6内に搬入された半導体ウェハーWは開口135を介してプロテクトリング130内に持ち込まれて天板133に保持される。そして、半導体ウェハーWが天板133に保持された状態にて、ハロゲンランプHLによる予備加熱およびフラッシュランプFLによるフラッシュ加熱が実行される。半導体ウェハーWの予備加熱およびフラッシュ加熱を実行しているときには、半導体ウェハーWが天板133に保持されている状態でガスリング90から供給された窒素ガスがシャワープレート35から下方に向けて噴出される。その窒素ガスは、開口135からガス排気孔86に向けて排出される。
【0096】
第2実施形態においても、チャンバー6内にプロテクトリング130およびシャワープレート35を設けているため、加熱処理時に半導体ウェハーWから放出された汚染物質がガスリング90の内壁面92aおよび上側チャンバー窓63に付着することは防止される。すなわち、ガスリング90の内壁面92aはプロテクトリング130の筒部131によって覆われているため、内壁面92aへと向かう汚染物質はプロテクトリング130に付着する。また、上方へと向かう汚染物質はシャワープレート35に付着する。従って、メンテナンス時等にはプロテクトリング130およびシャワープレート35を交換すれば足り、それに要するコストは比較的低い。よって、第2実施形態のようにしても、コストの上昇を抑制しつつ、チャンバー6内の部品への汚染物質の付着を防止することができる。もっとも、フラッシュ光照射時における半導体ウェハーWの割れ防止の観点からは、サセプタ74とプロテクトリング30と別体とした第1実施形態の方が好適である。その一方、開口135の大きさが比較的小さいため、チャンバー6内の部品へと向かう汚染物質を第1実施形態よりも少なくすることができる。
【0097】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態の熱処理装置の全体構成は概ね第1実施形態と同様である(図1)。また、第3実施形態における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同じである。第3実施形態が第1実施形態と相違するのは、プロテクトリングの形状である。
【0098】
図13は、第3実施形態のプロテクトリング230を模式的に示す図である。第3実施形態のプロテクトリング230は、筒部231およびフランジ232を備える。筒部231およびフランジ232はともに石英にて形成される。
【0099】
第3実施形態の筒部231は、上側および下側が開放された筒形状を有するものの、その外観は円錐台形状である。すなわち、筒部231を鉛直方向に沿った平面で切断した断面は、図13に示すように、下に向かうほど間隔が広くなるテーパー形状を有する。筒部231の下端の直径は半導体ウェハーWの直径よりも小さい。
【0100】
フランジ232は、第1実施形態のフランジ32と同様の要素である。すなわち、フランジ232は、筒部231の上端から外方に向けて張り出すように設けられた円環形状の板状部材である。
【0101】
第1実施形態と同様に、フランジ232をガスリング90の下部リング92に係合させることによって、第3実施形態のプロテクトリング230はガスリング90に支持されてチャンバー6に装着される。プロテクトリング230がガスリング90に支持された状態においては、少なくとも下部リング92の内壁面92aがプロテクトリング230の筒部231によって覆われる。
【0102】
また、図13では図示を省略しているが、第1実施形態と同様に、プロテクトリング230の上側にはシャワープレートが載置される。このシャワープレートは、第1および第2実施形態のシャワープレート35と同様のものである。シャワープレートがプロテクトリング230上に載置されることにより、プロテクトリング230の上側開口はシャワープレートによって覆われる。
【0103】
シャワープレートから噴出された処理ガスは、プロテクトリング230の筒部231の内側空間を流下して半導体ウェハーWに供給される。第3実施形態においては、シャワープレートから噴出された処理ガスの一部は、筒部231の内側のテーパー面に沿って流下し、半導体ウェハーWの周縁部に吹き付けられる。
【0104】
第3実施形態においても、チャンバー6内にプロテクトリング230およびシャワープレートを設けているため、加熱処理時に半導体ウェハーWから放出された汚染物質がガスリング90の内壁面92aおよび上側チャンバー窓63に付着することは防止される。メンテナンス時等にはプロテクトリング230およびシャワープレートを交換すれば足り、それに要するコストは比較的低い。よって、第1および第2実施形態と同様に、コストの上昇を抑制しつつ、チャンバー6内の部品への汚染物質の付着を防止することができる。また、第3実施形態においては、テーパー形状を有するプロテクトリング230によって、より多量の処理ガスを半導体ウェハーWの周縁部に吹き付けることができる。
【0105】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態の熱処理装置の全体構成は概ね第1実施形態と同様である(図1)。また、第4実施形態における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同じである。第4実施形態が第1実施形態と相違するのは、プロテクトリングの形状である。
【0106】
図14は、第4実施形態のプロテクトリング330を模式的に示す図である。第4実施形態のプロテクトリング330は、筒部331およびフランジ332を備える。筒部331およびフランジ332はともに石英にて形成される。
【0107】
第4実施形態の筒部331は、上側および下側が開放された筒形状を有するものの、その外観は逆円錐台形状である。すなわち、筒部331を鉛直方向に沿った平面で切断した断面は、図14に示すように、下に向かうほど間隔が狭くなるテーパー形状を有する。筒部331の下端の直径は半導体ウェハーWの直径よりも小さい。
【0108】
フランジ332は、第1実施形態のフランジ32と同様の要素である。すなわち、フランジ332は、筒部331の上端から外方に向けて張り出すように設けられた円環形状の板状部材である。
【0109】
第1実施形態と同様に、フランジ332をガスリング90の下部リング92に係合させることによって、第4実施形態のプロテクトリング330はガスリング90に支持されてチャンバー6に装着される。プロテクトリング330がガスリング90に支持された状態においては、少なくとも下部リング92の内壁面92aがプロテクトリング330の筒部331によって覆われる。
【0110】
また、図14では図示を省略しているが、第1実施形態と同様に、プロテクトリング330の上側にはシャワープレートが載置される。このシャワープレートは、第1および第2実施形態のシャワープレート35と同様のものである。シャワープレートがプロテクトリング330上に載置されることにより、プロテクトリング330の上側開口はシャワープレートによって覆われる。
【0111】
シャワープレートから噴出された処理ガスは、プロテクトリング330の筒部331の内側空間を流下して半導体ウェハーWに供給される。第4実施形態においては、シャワープレートから噴出された処理ガスの一部は、筒部331の内側のテーパー面に沿って流下し、さらに筒部331の下端と半導体ウェハーWの周縁部との間の隙間から外方へと流れる。
【0112】
第4実施形態においても、チャンバー6内にプロテクトリング330およびシャワープレートを設けているため、加熱処理時に半導体ウェハーWから放出された汚染物質がガスリング90の内壁面92aおよび上側チャンバー窓63に付着することは防止される。メンテナンス時等にはプロテクトリング330およびシャワープレートを交換すれば足り、それに要するコストは比較的低い。よって、第1および第2実施形態と同様に、コストの上昇を抑制しつつ、チャンバー6内の部品への汚染物質の付着を防止することができる。また、第4実施形態においては、筒部331の下端と半導体ウェハーWの周縁部との間の隙間を処理ガスが流れるため、当該周縁部における処理ガスの流速を高めることができる。
【0113】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記各実施形態において、プロテクトリングに載置するシャワープレート35の枚数は1枚に限定されるものではなく、複数枚のシャワープレート35を重ねて載置するようにしても良い。重ねるシャワープレート35の枚数が多くなるほど、透過率が低下するため、半導体ウェハーWの表面に照射されるフラッシュ光の照度を調整することができる。
【0114】
また、シャワープレート35は、透明な石英にて形成されることに限定されるものではなく、不透明石英にて形成されても良い。或いは、石英のシャワープレート35の表面にブラスト処理を施すようにしても良い。これらによっても、半導体ウェハーWの表面に照射されるフラッシュ光の照度を適宜に調整することができる。
【0115】
また、上記各実施形態においては、フラッシュランプハウス5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。また、ハロゲンランプハウス4に備えるハロゲンランプHLの本数も40本に限定されるものではなく、任意の数とすることができる。
【0116】
また、上記各実施形態においては、1秒以上連続して発光する連続点灯ランプとしてフィラメント方式のハロゲンランプHLを用いて半導体ウェハーWの予備加熱を行っていたが、これに限定されるものではなく、ハロゲンランプHLに代えて放電型のアークランプ(例えば、キセノンアークランプ)またはLEDランプを連続点灯ランプとして用いて予備加熱を行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0117】
1 熱処理装置
3 制御部
4 ハロゲン加熱部
5 フラッシュ加熱部
6 チャンバー
7 保持部
10 移載機構
12 リフトピン
30,130,230,330 プロテクトリング
31,131,231,331 筒部
32,132,232,332 フランジ
35 シャワープレート
36 噴出孔
61 チャンバー側部
63 上側チャンバー窓
64 下側チャンバー窓
65 熱処理空間
74 サセプタ
81 ガス供給口
86 ガス排気孔
90 ガスリング
91 上部リング
92 下部リング
92a 内壁面
133 天板
134 結合部
135 開口
190 排気部
FL フラッシュランプ
HL ハロゲンランプ
W 半導体ウェハー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14