(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163433
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】製氷機
(51)【国際特許分類】
F25C 1/147 20180101AFI20241115BHJP
【FI】
F25C1/147 Z
F25C1/147 B
F25C1/147 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079023
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155099
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100147625
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】荒井 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】大谷 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】水谷 保起
(72)【発明者】
【氏名】山崎 拓也
(72)【発明者】
【氏名】曽布川 武伸
(72)【発明者】
【氏名】原口 直幸
(72)【発明者】
【氏名】金沢 幸秀
(72)【発明者】
【氏名】吉川 恭司
(57)【要約】
【課題】軸線方向が鉛直方向となるように同心的に立設した内筒と外筒との間に仕切部材により周方向に延びる冷媒通路を形成するようにした製氷機において、内筒と外筒との間に仕切部材を取り付ける取付作業の作業性を良好とする。
【解決手段】製氷機10は、軸線方向が鉛直方向となるように立設する内筒21と、内筒21の外側に同心的に配設されて内筒21との間に冷媒が通過可能な冷媒空間RSを形成する外筒22と、内筒21と外筒22との間に介装されて冷媒空間RS内に周方向に延びる冷媒通路RPを形成させる仕切部材23とを備え、冷媒通路RPを通過する冷媒を気化させることで内筒21の内周面を冷却し、内筒21の内周面で製氷水を凍結させて製氷するものであり、内筒21の外周面に取り付けられた仕切部材23に対して外筒22を焼きばめした。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向が鉛直方向となるように立設する内筒と、
前記内筒の外側に同心的に配設されて前記内筒との間に冷媒が通過可能な冷媒空間を形成する外筒と、
前記内筒と前記外筒との間に介装されて前記冷媒空間内に周方向に延びる冷媒通路を形成させる仕切部材とを備え、
前記冷媒通路を通過する冷媒を気化させることで前記内筒の内周面を冷却し、前記内筒の内周面で製氷水を凍結させて製氷する製氷機であって、
前記内筒の外周面に取り付けられた前記仕切部材に対して前記外筒が焼きばめされたことを特徴とする製氷機。
【請求項2】
請求項1に記載の製氷機において、
前記仕切部材は直線状に延びる金属製部材を前記内筒の周方向に沿って曲げ加工されたものであることを特徴とする製氷機。
【請求項3】
請求項1に記載の製氷機において、
前記仕切部材は直線状に延びる金属製帯板部材を幅方向が前記内筒の径方向となる向きで前記内筒の周方向に沿って曲げ加工されたものであることを特徴とする製氷機。
【請求項4】
請求項1に記載の製氷機において、
前記内筒と前記外筒の間には前記冷媒空間の上下方向の端部を封止する封止部材が設けられており、前記封止部材は前記内筒と前記外筒との間に隙間が生じないように溶接によって固定されたことを特徴とする製氷機。
【請求項5】
請求項4に記載の製氷機において、
前記外筒の外周面には前記外筒が嵌め込まれる凹部が形成されるように成型された成型発泡断熱材よりなる断熱体を設けたことを特徴とする製氷機。
【請求項6】
請求項4に記載の製氷機において、
前記外筒の外周面にはシート状の発泡断熱材よりなる断熱体を設けたことを特徴とする製氷機。
【請求項7】
請求項4に記載の製氷機において、
前記外筒の外周面にはシート状の真空断熱材よりなる断熱体を設けたことを特徴とする製氷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸線方向が鉛直方向となるように同心的に立設した内筒と外筒との間に形成される冷媒通路内に冷媒を通過させることで内筒の内周面を冷却し、内筒の内周面に製氷水を凍結させて製氷する製氷機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、氷を製造する製氷装置の発明が開示されている。この製氷装置は、外筒内に内筒を同心的に内装して両筒間に蒸発空間を構成し、蒸発空間内に冷媒を供給して内筒の内壁を冷却するとともに、内筒の内壁に製氷水を供給して形成した氷層を回転刃により剥離してフレーク状の氷を製造するものである。内筒の外周面には螺旋状の高螺旋状フィンが設けられており、蒸発空間は上下に連続する螺旋状の冷媒通路が形成されている。また、特許文献1の他の構成として、内筒の外周面には環状の高フィン部材が上下に所定の間隔を存して配設されており、高フィン部材には冷媒を上側に通過させる切欠が形成されている。上下に配置されている高フィン部材の各切欠は、水平方向に相互にずれるように内筒の中心に対して相互に対称の位置に配置されている。内筒と外筒の間の蒸発空間は切欠が水平方向に相互にずれるように配置された高フィン部材によって、上下に連続したジグザグの冷媒通路が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の製氷装置(製氷機)においては、内筒と外筒との間に高螺旋状フィンまたは高フィン部材等の仕切部材が設けられており、内筒と外筒との間の蒸発空間は高螺旋状フィンまたは高フィン部材等の仕切部材により周方向に延びる冷媒通路が形成されている。特許文献1では内筒に高螺旋状フィンまたは高フィン部材等の仕切部材を接合させる接合手段と、外筒に高螺旋状フィンまたは高フィン部材等の仕切部材を接合させる接合手段については記載されていなく、例えば内筒または外筒にろう付けや溶接によって仕切部材を接合させたときには、接合箇所が多かったり、接合面積が大きくて、ろう付けや溶接による接合作業に手間を要する問題があった。また、内筒や外筒は強度や耐食性が必要となるのに対し、高螺旋状フィンまたは高フィン部材等の仕切部材は熱伝導性が高いのが望ましく、内筒と外筒は高螺旋状フィンまたは高フィン部材等の仕切部材と異なる金属材料を用いると、製氷機の耐久性や冷却能力を良好とすることができる。この場合に、強度や耐食性が高いステンレス等の金属材料を用いた内筒と外筒に、銅やアルミニウム等の金属材料を用いた高螺旋状フィンまたは高フィン部材等の仕切部材を溶接等によって接合させようとしても、各金属材料の融点が異なるために、仕切部材を内筒または外筒に接合させにくかった。本発明は、軸線方向が鉛直方向となるように同心的に立設した内筒と外筒との間に仕切部材により周方向に延びる冷媒通路を形成するようにした製氷機において、内筒と外筒との間に仕切部材を取り付ける取付作業の作業性を良好とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するため、軸線方向が鉛直方向となるように立設する内筒と、内筒の外側に同心的に配設されて内筒との間に冷媒が通過可能な冷媒空間を形成する外筒と、内筒と外筒との間に介装されて冷媒空間内に周方向に延びる冷媒通路を形成させる仕切部材とを備え、冷媒通路を通過する冷媒を気化させることで内筒の内周面を冷却し、内筒の内周面で製氷水を凍結させて製氷する製氷機であって、内筒の外周面に取り付けられた仕切部材に対して外筒が焼きばめされたことを特徴とする製氷機を提供するものである。
【0006】
上記のように構成した製氷機においては、内筒の外周面に取り付けられた仕切部材に対して外筒が焼きばめされているので、焼きばめされた外筒が熱収縮することで仕切部材に密着するだけでなく、仕切部材が焼きばめされて熱収縮する外筒によって内筒側に締め付けられて内筒に圧接されるようになる。仕切部材を外筒に対して溶接等によって接合させる必要がなくなり、内筒と外筒との間に仕切部材を取り付ける取付作業の作業性を良好とすることができる。さらに、内筒と外筒を強度と耐食性の高い金属部材を用いたり、仕切部材は熱伝導性の高い金属材料を用いたり、仕切部材を内筒や外筒と異なる金属材料を用いることができ、内筒、外筒及び仕切部材の各々で最適な金属材料を使用することができる。
【0007】
上記のように構成した製氷機においては、仕切部材は直線状に延びる金属製部材を内筒の周方向に沿って曲げ加工されたものであるのが好ましい。このようにしたときには、仕切部材を板金から切断したものと比べて歩留まりを向上させることができてコストを低減させることができる。また、仕切部材を内筒の外径よりも少し小さめに曲げ加工した後で、仕切部材を広げて内筒に取り付けることにより、仕切部材は元の形状に戻ろうとする弾性力によって内筒を締め付けるようになって仮固定することができ、内筒の外周面に仕切部材を取り付ける取付作業の作業性を良好とすることができる。
【0008】
上記のように構成した製氷機においては、仕切部材は直線状に延びる金属製帯板部材を幅方向が内筒の径方向となる向きで内筒の周方向に沿って曲げ加工されたものであるのが好ましい。このようにしたときには、仕切部材を板金から切断したものと比べて歩留まりを向上させることができてコストを低減させることができる。また、仕切部材を内筒の外径よりも少し小さめに曲げ加工した後で、仕切部材を広げて内筒に取り付けることにより、仕切部材は弾性によって内筒を締め付けるようになって仮固定することができ、内筒と外筒との間に仕切部材を取り付ける取付作業の作業性を良好とすることができる。さらに、金属製帯板部材を曲げ加工した仕切部材は、内筒側が厚くて外筒側が薄くなり、冷媒通路を流れる冷媒の冷熱を仕切部材から内筒に伝えやすくすることができる。
【0009】
上記のように構成した製氷機においては、内筒と外筒の間には冷媒空間の上下方向の端部を封止する封止部材が設けられており、封止部材は内筒と外筒との間に隙間が生じないように溶接によって固定されるのがこのましい。このようにしたときには、結露による水滴が封止部材と内筒または外筒の間に流入しないようになり、封止部材と内筒または外筒の間に流入する水滴が凍結したときに起因した破損のおそれがなくなる。また、水滴が流入する隙間が生じないので、外筒の外側にウレタン等による一体発泡による被覆処理が不要となってコストを低廉に抑えることができる。この場合には、外筒の外周面には外筒が嵌め込まれる凹部が形成されるように成型された成型発泡断熱材を設ける、または、外筒の外周面にはシート状の発泡断熱材を設ける、または、筒の外周面にはシート状の真空断熱材を設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の製氷機の製氷シリンダ内を断面とした概略図である。
【
図2】外周面に仕切部材が取り付けられた内筒の斜視図である。
【
図3】外筒を断面として内筒と仕切部材が見えるようにした製氷シリンダの側面図である。
【
図4】封止部材の内筒及び外筒に対する溶接位置を示す断面図であり、上側の封止部材の溶接位置を示す断面図(a)と下側の封止部材の溶接位置を示す断面図(b)である。
【
図5】内筒の外周面に取り付けられた仕切部材に対して外筒を焼きばめするときの概略図である。
【
図6】他の実施形態の仕切部材を示す平面図である。
【
図7】仕切部材を螺旋形状としたときの
図3に相当する側面図。
【
図8】2つ割りの断熱材よりなる断熱体を外筒の外側に設けた斜視図である。
【
図9】帯状のシート状の断熱材を用いた断熱体を螺旋状に巻き付けるように取り付けた製氷シリンダの斜視図である。
【
図10】シート状の断熱材を用いた断熱体を何重にも巻き付けるように取り付けた製氷シリンダの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の製氷機の一実施形態を図面を用いて説明する。
図1に示したように、本実施形態の製氷機10は、オーガ式の製氷機であり、製氷水を凍結させて氷を生成する製氷シリンダ20と、製氷シリンダ20を冷却する冷凍装置30と、製氷シリンダ20に製氷水を供給する給水装置40とを備えている。製氷シリンダ20は、内筒21と、内筒21の外側に同心的に配設されて内筒21との間に冷媒が通過可能な冷媒空間RSを形成する外筒22と、内筒21と外筒22との間に介装されて冷媒空間RSに周方向に延びる冷媒通路RPを形成させる仕切部材23とを備えている。
【0012】
図1及び
図2に示したように、内筒21は、強度や耐食性の強い金属部材の一例としてステンレス鋼板を円筒状(筒状)に加工したものであり、軸線方向が鉛直方向となるように立設している。内筒21内には製氷水が供給されるようになっており、内筒21の内周面は製氷水を凍結させて製氷する製氷面となっている。
図1に示したように、内筒21内には削氷用オーガ24が鉛直軸線回りに回転可能に設けられており、内筒21の内周面で凍結する氷は削氷用オーガ24によって削り取られながら上側に移動する。内筒21の上部には固定刃(押圧頭)25が設けられており、削氷用オーガ24によって削り取られた氷は固定刃25の圧縮通路を通過する過程で棒状の氷となって上方に押し出される。棒状の氷は削氷用オーガ24と一体的に回転するカッター26によって切断される。内筒21の下部には製氷水が導入される導入部21aが設けられており、導入部21aには後述する給水装置40が接続されている。
【0013】
図2及び
図3に示したように、内筒21の外周面には周方向に延びる複数の環状取付溝21bが形成されており、複数の環状取付溝21bは鉛直方向に等間隔となるように多段状に形成されている。各環状取付溝21bには仕切部材23が係合されており、仕切部材23は内筒21の外周面に上下に多段状に配置されている。
図3に示したように、仕切部材23は、内筒21と外筒22との間に形成される冷媒空間RSを周方向に延びる冷媒通路RPが形成されるように仕切っており、冷媒空間RS内には仕切部材23によって複数の冷媒通路RPが上下方向に多層状に形成されている。仕切部材23は鉛直方向から見た形状が開いた環状(開環形状)となる略C字形をしており、仕切部材23には内筒21の周方向の一部に冷媒を上下に通過させる冷媒通過口23aが形成されている。上下に多段状に配置されている仕切部材23の冷媒通過口23aは上下方向で隣接するものが互いに径方向の反対側となるように互い違いに配置されており、冷媒通過口23aは上下で互いに最も遠い位置に配置されている。冷媒空間RS内の冷媒は冷媒通路RPによって内筒21の周方向に流れ、冷媒通路RPによって内筒21の周方向に流れる冷媒は冷媒通過口23aから上側の冷媒通路RPに流れる。このように、冷媒は下側の冷媒通路RPから上側の冷媒通路RPを順に流れることで、内筒21の下部から上部にかけて周方向に流れながら上側に上昇する。
【0014】
図2及び
図3に示したように、仕切部材23は、直線状に延びる金属製部材を内筒21の周方向に沿って曲げ加工したものであり、この実施形態では銅合金やアルミニウム合金等の熱伝導性の高い金属製部材が用いられている。仕切部材23は内筒21の環状取付溝21bの径(大きさ)よりも少し小さな径(大きさ)で曲げ加工されており、仕切部材23を内筒21の環状取付溝21bに対して取り付けるときには、仕切部材23の径を拡げるようにして内筒21の環状取付溝21bに嵌め込むようにすると、仕切部材23は元の形状に戻ろうとする弾性力によって内筒21の環状取付溝21bに係合される。仕切部材23はこの弾性力によって環状取付溝21bから外れないように係合されている。
【0015】
図3に示したように、外筒22は、内筒21と同様に強度や耐食性の強い金属部材の一例としてステンレス鋼板を筒状に加工したものであり、内筒21の外側に同心的に配設されている。上述したように、外筒22の内側には内筒21との間に冷媒空間RSが形成されており、冷媒空間RSは仕切部材23によって周方向に延びる冷媒通路RPが上下に多層状に形成されている。外筒22の内周の径は常温状態で内筒21の外周面に取り付けられた仕切部材23の外周の径よりも僅かに小さく形成されており、外筒22は内筒21の外周面に取り付けられた仕切部材23の外周部に対して焼きばめによって固定されている。外筒22は焼きばめによって仕切部材23の外周部に対して固定されているので、焼きばめされた外筒22が熱収縮することで仕切部材23に密着するだけでなく、仕切部材23が焼きばめされて熱収縮する外筒22によって内筒21側に締め付けられて内筒21に圧接されるようになる。
図1に示したように、外筒22の下部には冷媒通路RPに冷媒を導入する冷媒導入部22aが設けられており、外筒22の上部には冷媒通路RPから冷媒を導出する冷媒導出部22bが設けられており、冷媒導入部22a及び冷媒導出部22bには後述する冷凍装置30が接続されている。
【0016】
図3に示したように、内筒21と外筒22の間には冷媒空間RSの上下方向の端部を封止する封止部材27,28が設けられており、冷媒空間RSはこれらの封止部材27,28によって上下で封止されている。上下の各封止部材27,28は金属製の環状部材を用いたものであり、内筒21と外筒22との間に嵌め込まれる嵌合部27a,28aと、嵌合部27a,28aの上側または下側に設けられたフランジ部27b,28bとを備えている。これらの封止部材27,28は嵌合部27a,28aが内筒21と外筒22の間に嵌め込まれた状態で、フランジ部27b,27bが外筒22の上端または下端に当接されている。
図4に示したように、封止部材27,28は内筒21と外筒22との間に隙間が生じないように溶接によって固定されている。
【0017】
この実施形態では、上側の封止部材27の嵌合部27aと外筒22の上端部との間が突合わせ溶接(溶接箇所を
図4のaに示した)によって固定され、封止部材27のフランジ部27bの上端部と内筒21の外周面が隅肉溶接(溶接箇所を
図4のbに示した)によって固定されている。同様に、下側の封止部材28の嵌合部28bと外筒22の下端部との間が突合わせ溶接(溶接箇所を
図4のcに示した)によって固定され、封止部材28のフランジ部28bの下端部と内筒21の外周面が隅肉溶接(溶接箇所を
図4のdに示した)に固定されている。なお、内筒21の外周面に取り付けられた仕切部材23の外周部に対して外筒22を焼きばめによって固定するときに、上下の封止部材27,28を内筒21の上部及び下部に配置した状態で外筒22を焼きばめするようにしてもよい。この場合に、封止部材27,28は内筒21及び外筒22との接触面を滑面に処理したり、封止部材27,28の内筒21及び外筒22との間に柔らかい銅系の合金等の緩衝材を介装させたりすることで、封止部材27,28と内筒21及び外筒22との間に隙間を生じさせないようにすることができる。外筒22の外周面には断熱体29が設けられており、断熱体29は外筒22の内側への外気による影響を低減させる機能を有している。
【0018】
図1に示したように、製氷機10は内筒21の内周面の製氷面を冷却するための冷凍装置30を備えており、冷凍装置30は内筒21と外筒22の間に形成される冷媒空間RS内の冷媒通路RPに冷媒を通過させるときに気化する気化熱によって内筒21を冷却するものである。外筒22の下部には冷媒通路RPに冷媒を導入する冷媒導入部22aが設けられており、外筒22の上部には冷媒通路RPから冷媒を導出する冷媒導出部22bが設けられており、冷凍装置30により循環供給される冷媒は冷媒導入部22aから冷媒通路RP内に導入され、冷媒通路RP内に導入された冷媒は冷媒導出部22bから導出される。冷凍装置30は、冷媒を圧縮する圧縮機31と、圧縮機31から圧送された冷媒を冷却して液化させる凝縮器32と、凝縮器32にて液化させた液化冷媒を膨張させて低圧の液化冷媒とする膨張手段として膨張弁33とを備え、この低圧の液化冷媒を冷媒通路RP内で気化させて冷却器(蒸発器)として機能する内筒21を冷却するようにしている。冷凍装置30は、圧縮機31、凝縮器32、膨張弁33及び冷却器となる冷媒通路RPを冷媒管によって環状に接続して冷凍回路が構成されている。
【0019】
冷凍装置30においては、膨張弁33により膨張させた液化冷媒は冷媒導入部22aから最も下側の冷媒通路RP内に導入され、冷媒通路RPに導入された冷媒は内筒21の周方向に沿って流れるとともに冷媒通過口23aを通って上側の冷媒通路RPに順に送出される。冷媒通路RPを通る液化冷媒は気化されながら冷媒通過口23aを通って上側の冷媒通路RPに順に送出され、内筒21の内周面よりなる製氷面は冷媒通路RPを通過する液化冷媒が気化することによって冷媒通路RPが形成された高さ位置で全体的に冷却される。
【0020】
図1に示したように、製氷機10は内筒21内に製氷水を供給する給水装置40を備えており、給水装置40は内筒21の下部の導入部21aに接続されている。給水装置40は、製氷水を貯える製氷水タンク41と、製氷水タンク41から導入部21aに接続される送水管42と、製氷水タンク41内に製氷水を供給する給水管43と製氷水タンク41内にて製氷水の水位を検出する水位センサ44とを備えている。製氷水タンク41は最上層の冷媒通路RPより少し高い位置、すなわち、内筒21の製氷面より少し高い位置に配置されている。製氷水タンク41の底部には送水管42が接続されており、送水管42は内筒21の下部の導入部21aに接続されている。製氷水タンク41内の製氷水は送水管42を通って内筒21内に供給され、内筒21内には製氷水タンク41と同じ水位となるように製氷水が供給される。
【0021】
製氷水タンク41の上部には水道等の給水源から水が供給される給水管43が接続されており、給水管43には給水弁43aが介装されている。給水弁43aを開放することにより、給水源の水は給水管43を通って製氷水タンク41内に供給される。製氷水タンク41には水位センサ44が設けられており、水位センサ44は製氷水タンク41内の製氷水の水位を検出している。この実施形態では、水位センサ44は、内筒21の製氷面で製氷水を凍結させるために、最上層の冷媒通路RPと同じ高さの水位を検出可能としている。給水弁43aは水位センサ44の検出水位に基づいて開閉されるように制御されており、製氷水タンク41内の製氷水の水位は上述した最上層の冷媒通路RP、すなわち、内筒21の製氷面と同じ高さ位置の水位となるように制御されている。
【0022】
この製氷機10により製氷するときには、冷凍装置30の圧縮機31の作動により液化冷媒が冷媒空間RS内の冷媒通路RP内に送出され、液化冷媒は下側の冷媒通路RPを通過しながら順に上側の冷媒通路RPに上昇していく過程で気化し、内筒21の内周面となる製氷面は液化冷媒が気化する気化熱によって冷却される。内筒21内の製氷水は内筒21の内周面で冷却されて凍結し、内筒21の内周面で凍結した氷は回転する削氷用オーガ24によって削り取られながら上昇する。削氷用オーガ24によって削り取られた氷は固定刃25の圧縮通路を通って棒状の氷となって上方に押し出され、カッター26によって適当な大きさの氷片に切断される。
【0023】
図5に示したように、この製氷機10の製氷シリンダ20を製造するときには、内筒21の外周面に形成された環状取付溝21bに仕切部材23を係合させ、必要に応じて仕切部材23を環状取付溝21bに対してスポット溶接等によって仮止めする。外筒22の外側に加熱手段として例えば誘導加熱コイルIHを配置し、外筒22は誘導加熱コイルIHに高周波電流を流すことで発熱して熱膨張する。外筒22の内径が仕切部材23の外径よりも大きくなるまで熱膨張させてから、仕切部材23が取り付けられた内筒21を外筒22の内側に配置する。熱膨張させた外筒22を放熱させて冷却すると、外筒22は熱収縮して仕切部材23の外周部に密着するようになる。また、仕切部材23は熱収縮する外筒22によって内筒21の外周面の環状取付溝21bに圧接されるようになる。外筒22を内筒21に取り付けられた仕切部材23に対して焼きばめすることにより、仕切部材23と外筒22の間と、仕切部材23と内筒21との間に隙間が生じにくくなるので、冷媒通路RPを通過する冷媒が冷媒通過口23aを経ずにショートカットして上側の冷媒通路RPに流出しにくくなる。
【0024】
内筒21の外周面に取り付けられた仕切部材23に対して外筒22を焼きばめした後で、内筒21と外筒22の間に冷媒空間RSの上下方向の端部を封止する封止部材27,28を嵌合させる。封止部材27,28のフランジ部27b,28bを外筒22の上端または下端に当接させた状態で、封止部材27,28のフランジ部27b,28bを外筒22に突合わせ溶接により固定するとともに、封止部材27,28のフランジ部27b,28bを内筒21に隅肉溶接によって固定する。なお、封止部材27,28と内筒21との間、または、封止部材27,28と外筒22との間に隙間が生じるようであれば、隙間にコーキングを埋設させたり、隙間が生じる部分をゴム等の弾性素材のバンドによって被覆させるようにすれば、隙間を生じさせないようにすることがでる。これによって、結露による水が封止部材27,28と内筒21または外筒22の間に流入しないようになり、封止部材27,28と内筒21または外筒22に流入する水滴が凍結したときに起因した破損のおそれがない。
【0025】
この製氷機10は、軸線方向が鉛直方向となるように立設する内筒21と、内筒21の外側に同心的に配設されて内筒21との間に冷媒が通過可能な冷媒空間RSを形成する外筒22と、内筒21と外筒22との間に介装されて冷媒空間RS内に周方向に延びる冷媒通路RPを形成させる仕切部材23とを備え、冷媒通路RPを通過する冷媒を気化させることで内筒21の内周面を冷却し、内筒21の内周面で製氷水を凍結させて製氷するものである。
【0026】
この製氷機10においては、内筒21に取り付けられた仕切部材23に対して外筒22が焼きばめされている。焼きばめされた外筒22が熱収縮することで仕切部材23に密着するだけでなく、仕切部材23が焼きばめされて熱収縮する外筒22によって内筒21側に締め付けられて内筒21に圧接されるようになる。これによって、仕切部材23と外筒22の間と、仕切部材23と内筒21との間に隙間が生じにくくなるので、冷媒通路RPを通過する冷媒が冷媒通過口23aを経ずにショートカットして上側の冷媒通路RPに流出しにくくなる。また、外筒22を内筒21に取り付けられた仕切部材23に対して焼きばめすることによって、仕切部材23を外筒22に対して溶接等によって接合させる必要がなくなり、内筒21と外筒22との間に仕切部材を取り付ける取付作業の作業性を良好とすることができる。さらに、内筒21と外筒22を強度と耐食性の高い金属部材を用いたり、仕切部材23は熱伝導性の高い金属材料を用いたり、仕切部材23を内筒21や外筒22と性質の異なる金属材料を用いることができ、内筒21、外筒22及び仕切部材223の各々で最適な金属材料を使用することができる。
【0027】
仕切部材23は、直線状に延びる金属製部材を内筒21の周方向に沿って曲げ加工したものであり、この実施形態の仕切部材23は、金属製帯板部材の幅方向を内筒21の径方向となる向き(金属製帯板部材の厚み方向を鉛直方向となる向き)で内筒21の周方向に沿って曲げ加工したものである。仕切部材23を直線状に延びる金属製部材を内筒21の周方向に沿って曲げ加工したものであるので、板金部材から環形状となるように抜き加工等のプレス加工によって製造したものと比べて歩留まりを向上させることができ、コストを低減させることができる。また、仕切部材23を内筒21の外径よりも少し小さめに曲げ加工した後で、仕切部材23を広げて内筒21の外周面の環状取付溝21bに取り付けることにより、仕切部材23は弾性によって内筒を締め付けるようになって仮固定することができ、内筒21に仕切部材23を取り付ける取付作業の作業性を良好とすることができる。さらに、金属製帯板部材を曲げ加工した仕切部材23は、内筒21側が厚くて外筒22側が薄くなり、冷媒通路RPを流れる冷媒の冷熱を仕切部材23から内筒21に伝えやすくすることができる。
【0028】
また、仕切部材23を内筒21の環状取付溝21bの外径よりも少し小さめに曲げ加工した後で、仕切部材23を広げて内筒21の環状取付溝21bに取り付けることにより、仕切部材23は元の形状に戻ろうとする弾性力によって内筒21を締め付けるようになって仮固定することができ、内筒21の外周面に仕切部材23を取り付ける取付作業の作業性を良好とすることができる。仕切部材23は、金属製帯板部材の幅方向を内筒21の径方向となる向き(金属製帯板部材の厚み方向を鉛直方向となる向き)で内筒21の周方向に沿って曲げ加工したものである。金属製帯板部材は、板金部材を帯板状に切断したものであってもよいし、帯板を適宜な長さで切断したものであってもよいし、丸棒部材や線材を潰して帯板状に加工したものであったり、押出加工によって帯板状に加工したものであってもよい。
【0029】
この実施形態では、仕切部材23は、鉛直方向から見た形状が開いた環状(開環形状)となる略C字形をしていて、冷媒空間RS内に周方向に延びる冷媒通路RPを形成させているが、これに限られるものでなく、
図6(a),(b)に示したように、鉛直方向から見た形状が僅かに開いた環状(開環形状)となる略C字形をし、開いた部分の近傍にて内筒21側に切欠きよりなる冷媒通過口23aを形成するようにしたものであってもよい。また、
図6(c),(d)に示したように、鉛直方向から見た形状が閉じた環状(閉環形状)の内側に切欠よりなる冷媒通過口23aを形成するようにしたものであってもよい。さらに、
図7に示したように、仕切部材23は、内筒21と外筒22との間の螺旋状に形成されるようにして、内筒21と外筒22の間の冷媒空間RSを周方向に連続して延出する螺旋状の冷媒通路RPを形成するようにしたものであってもよい。
【0030】
内筒21と外筒22の間には冷媒空間RSの上下方向の端部を封止する封止部材27,28が設けられている。封止部材27,28は内筒21と外筒22との間に隙間が生じないように溶接によって固定されている。製氷機10により製氷するときには、冷凍装置30の圧縮機31の作動によって、液化冷媒が冷媒通路RP内に送出され、下側の冷媒通路RPを通過しながら順に上側の冷媒通路RPに上昇していく過程で気化し、内筒21の内周面は液化冷媒が気化する気化熱によって冷却されている。内筒21と封止部材27,28の間、外筒22と封止部材27,28の間に隙間が生じたりすると、隙間に流入した結露による水が凍結し、内筒21と封止部材27,28の間、外筒22と封止部材27,28の間の溶接部分が破損するおそれがあったが、封止部材27,28は内筒21と外筒22との間に隙間が生じないように溶接によって固定されているので、結露による水が封止部材27,28と内筒21または外筒22の間に流入しないようになり、封止部材27,28と内筒21または外筒22に流入する水滴が凍結したときに起因した破損のおそれがなくなる。
【0031】
結露による水が封止部材27,28と内筒21または外筒22の間に流入しないようになるので、外筒22の外側にウレタン等による一体発泡による被覆処理が不要となってコストを低廉に抑えることができる。このため、外筒22の外側には様々な断熱手段を用いることが可能となる。
図8に示した実施形態では、断熱体29は、発泡ポリスチレンまたは発泡ポリエチレン等による成型品であり、製氷シリンダ20の外筒22の形状の凹部が形成された水平方向での2つ割りの成型品を用いたものである。
図9に示した実施形態では、断熱体29は、発泡ポリエチレンやエチレンプロピレンジエンゴム等の帯状のシート状の断熱材を製氷シリンダ20の外筒22を中心に螺旋状に巻き付けるようにしている。
図10に示した実施形態では、断熱体29は、シート状の真空断熱材を製氷シリンダ20の外筒22を中心に何重にも巻き付けるようにしてもよい。
図10では、シート状の真空断熱材を何重にも巻き付けているが、シート状の真空断熱材を一重以上で巻き付けたものであればよい。なお、従来と同様に、ウレタン等による一体発泡による被覆処理をしたものであってもよい。
【0032】
上述した実施形態の製氷機は、オーガ式の製氷機であるが、これに限られるものでなく、筒状の製氷シリンダ20を備えたものであればよく、スラリー式の製氷機やドラム式の製氷機であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
10…製氷機、21…内筒、22…外筒、23…仕切部材、29…断熱体、RS…冷媒空間、RP…冷媒通路。