(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163439
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】アンテナ基板
(51)【国際特許分類】
H01Q 23/00 20060101AFI20241115BHJP
H01Q 13/08 20060101ALI20241115BHJP
H01Q 1/52 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
H01Q23/00
H01Q13/08
H01Q1/52
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079034
(22)【出願日】2023-05-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雄大
【テーマコード(参考)】
5J021
5J045
5J046
【Fターム(参考)】
5J021AA09
5J021AB06
5J021DB03
5J021JA05
5J021JA08
5J045AA05
5J045AB06
5J045DA09
5J045MA07
5J046AA03
5J046AA19
5J046AB03
5J046AB13
5J046UA03
(57)【要約】
【課題】高周波ICを実装したアンテナ基板のビルドアップ層の層数を低減しつつアンテナとグランド層との間の厚みを確保することを目的とする。
【解決手段】アンテナ基板1は、コア層10と、コア層10の一方の面10aに積層された第1ビルドアップ層20と、コア層10の他方の面10bに積層された第2ビルドアップ層30と、を備え、第1ビルドアップ層20には、アンテナ2が形成され、第2ビルドアップ層30には、高周波IC40が実装され、コア層10の内層には、厚み方向においてアンテナ2に対し離れて形成されたグランド層11Bと、厚み方向においてグランド層11Bに対しアンテナ2とは反対側に形成された電源配線層11Aと、が設けられ、コア層10は、一方の面10aから他方の面10bに厚み方向に貫通し、電源配線層11Aと高周波IC40とを電気的に接続する第1貫通ビア13Aを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導体層を有するコア層と、
前記コア層の一方の面に積層された第1ビルドアップ層と、
前記コア層の他方の面に積層された第2ビルドアップ層と、を備え、
前記第1ビルドアップ層には、アンテナが形成され、
前記第2ビルドアップ層には、前記アンテナと電気的もしくは電磁界的に接続される高周波ICが実装され、
前記コア層の内層には、
厚み方向において前記アンテナに対し離れて形成されたグランド層と、
厚み方向において前記グランド層に対し前記アンテナとは反対側に形成された電源配線層と、が設けられ、
前記コア層は、前記一方の面から前記他方の面に厚み方向に貫通し、前記電源配線層と前記高周波ICとを電気的に接続する第1貫通ビアを備える、
アンテナ基板。
【請求項2】
前記第1ビルドアップ層は、
厚み方向から視た平面視において、前記アンテナを囲う導電性の枠体を備え、
前記枠体は、厚み方向から視た平面視において前記枠体に重なる位置に配置されて前記コア層を貫通する複数の第2貫通ビアによって、前記グランド層と電気的に接続され、
厚み方向から視た平面視において、前記第1貫通ビアは、前記枠体の内側に配置されている、
請求項1に記載のアンテナ基板。
【請求項3】
前記第1ビルドアップ層は、
厚み方向から視た平面視において、前記アンテナを囲う導電性の枠体を備え、
前記枠体は、厚み方向から視た平面視において前記枠体に重なる位置に配置されて前記コア層を貫通する複数の第2貫通ビアによって、前記グランド層と電気的に接続され、
厚み方向から視た平面視において、前記第1貫通ビアは、前記枠体と重なる位置に配置されている、
請求項1に記載のアンテナ基板。
【請求項4】
前記アンテナは、
前記第1ビルドアップ層に沿う第1方向に延在する第1アンテナと、
前記第1アンテナと厚み方向で異なる位置に配置され、前記第1アンテナと交差する第2方向に延在する第2アンテナと、を備え、
前記第1貫通ビアは、厚み方向から視た平面視において、前記第1アンテナ及び前記第2アンテナと重なる位置から退いた位置、且つ、前記第1アンテナ及び前記第2アンテナの延長線上から退いた位置に配置されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載のアンテナ基板。
【請求項5】
厚み方向における前記アンテナと前記グランド層との間の実効長が、前記アンテナが受信または送信する周波数帯の中心周波数の1/10波長以上かつ1/2波長以下の範囲内である、
請求項1~3のいずれか一項に記載のアンテナ基板。
【請求項6】
厚み方向における前記アンテナと前記グランド層との間の実効長が、前記アンテナが受信または送信する周波数帯の中心周波数の1/8波長以上かつ3/8波長以下の範囲内である、
請求項1~3のいずれか一項に記載のアンテナ基板。
【請求項7】
前記アンテナは、前記第1ビルドアップ層にアレイ状に複数形成され、
厚み方向から視た平面視において、前記アンテナの各形成領域の少なくとも一つに、前記第1貫通ビアが配置されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載のアンテナ基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、コア絶縁板の一方の主面にグランド用導体を形成すると共に、該グランド用導体を含む面上にビルドアップ絶縁層とビルドアップ配線層とを交互に積層し、コア絶縁板の他方の主面にアンテナパッドを設けた、アンテナ基板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ミリ波帯などを使用して高周波通信をするアンテナ基板は、高周波IC(RFIC)を実装する場合がある。この場合、アンテナ基板のビルドアップ層には、高周波信号が通る信号線、高周波ICの電源配線、アンプの利得や移相器を制御するデジタル配線など、多数の信号線を形成する必要があり、ビルドアップ層の層数が増えてしまう。ビルドアップ層の層数が増えると、アンテナ基板の製造コストが高くなると共に、ビルドアップ層の積層に伴う寸法誤差の蓄積によってアンテナ基板の信頼性が低下する場合がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、高周波ICを実装したアンテナ基板のビルドアップ層の層数を低減しつつアンテナとグランド層との間の厚みを確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係るアンテナ基板は、複数の導体層を有するコア層と、前記コア層の一方の面に積層された第1ビルドアップ層と、前記コア層の他方の面に積層された第2ビルドアップ層と、を備え、前記第1ビルドアップ層には、アンテナが形成され、前記第2ビルドアップ層には、前記アンテナと電気的もしくは電磁界的に接続される高周波ICが実装され、前記コア層の内層には、厚み方向において前記アンテナに対し離れて形成されたグランド層と、厚み方向において前記グランド層に対し前記アンテナとは反対側に形成された電源配線層と、が設けられ、前記コア層は、前記一方の面から前記他方の面に厚み方向に貫通し、前記電源配線層と前記高周波ICとを電気的に接続する第1貫通ビアを備える。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、コア層の内層に、高周波ICに電力を供給する電源配線層を設けることで、その分、ビルドアップ層(第2ビルドアップ層)の層数を低減できる。また、コア層の内層にグランド層を設け、グランド層に対しアンテナとは反対側に電源配線層を配置することで、アンテナから電源配線層側への電磁波の漏出を抑制できる。この構造において、高周波ICと電源配線層との電気的な接続は、コア層を厚み方向に貫通する第1貫通ビアによって確保できる。このため、アンテナ基板の信頼性が向上し、製造コストを下げることができる。
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の態様のアンテナ基板において、前記第1ビルドアップ層は、厚み方向から視た平面視において、前記アンテナを囲う導電性の枠体を備え、記枠体は、厚み方向から視た平面視において前記枠体に重なる位置に配置されて前記コア層を貫通する複数の第2貫通ビアによって、前記グランド層と電気的に接続され、厚み方向から視た平面視において、前記第1貫通ビアは、前記枠体の内側に配置されていてもよい。
【0009】
本発明の第3の態様は、第1の態様のアンテナ基板において、前記第1ビルドアップ層は、厚み方向から視た平面視において、前記アンテナを囲う導電性の枠体を備え、前記枠体は、厚み方向から視た平面視において前記枠体に重なる位置に配置されて前記コア層を貫通する複数の第2貫通ビアによって、前記グランド層と電気的に接続され、厚み方向から視た平面視において、前記第1貫通ビアは、前記枠体と重なる位置に配置されていてもよい。
【0010】
本発明の第4の態様は、第1の態様から第3の態様のいずれか一つのアンテナ基板において、前記アンテナは、前記第1ビルドアップ層に沿う第1方向に延在する第1アンテナと、前記第1アンテナと厚み方向で異なる位置に配置され、前記第1アンテナと交差する第2方向に延在する第2アンテナと、を備え、前記第1貫通ビアは、厚み方向から視た平面視において、前記第1アンテナ及び前記第2アンテナと重なる位置から退いた位置、且つ、前記第1アンテナ及び前記第2アンテナの延長線上から退いた位置に配置されていてもよい。
【0011】
本発明の第5の態様は、第1の態様から第4の態様のいずれか一つのアンテナ基板において、厚み方向における前記アンテナと前記グランド層との間の実効長が、前記アンテナが受信または送信する周波数帯の中心周波数の1/10波長以上かつ1/2波長以下の範囲内であってもよい。
【0012】
本発明の第6の態様は、第1の態様から第4の態様のいずれか一つのアンテナ基板において、厚み方向における前記アンテナと前記グランド層との間の実効長が、前記アンテナが受信または送信する周波数帯の中心周波数の1/8波長以上かつ3/8波長以下の範囲内であってもよい。
【0013】
本発明の第7の態様は、第1の態様から第6の態様のいずれか一つのアンテナ基板において、前記アンテナは、前記第1ビルドアップ層にアレイ状に複数形成され、厚み方向から視た平面視において、前記アンテナの各形成領域の少なくとも一つに、前記第1貫通ビアが配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
上記本発明の一態様によれば、高周波ICを実装したアンテナ基板のビルドアップ層の層数を低減しつつアンテナとグランド層との間の厚みを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態に係るアンテナ基板の平面図である。
【
図2】一実施形態に係るアンテナ形成領域の平面図である。
【
図6】比較例に係るアンテナ基板によるアンテナ形成領域の平面図である。
【
図7】比較例に係るアンテナ形成領域のアンテナ特性を示すグラフである。
【
図8】第1実施例に係るアンテナ形成領域のアンテナ特性を示すグラフである。
【
図9】第2実施例に係るアンテナ基板によるアンテナ形成領域の平面図である。
【
図10】第2実施例に係るアンテナ形成領域のアンテナ特性を示すグラフである。
【
図11】第3実施例に係るアンテナ基板によるアンテナ形成領域の平面図である。
【
図12】第3実施例に係るアンテナ形成領域のアンテナ特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係るアンテナ基板について、図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、一実施形態に係るアンテナ基板1の平面図である。
図1に示すアンテナ基板1は、アンテナ2が形成されたアンテナ形成領域100を複数備えている。複数のアンテナ形成領域100は、二次元的に配列され、複数のアンテナ2は、アレイアンテナを形成している。アンテナ形成領域100の境界線上には、格子状に延びる導電性の枠体3が配置されている。
【0018】
図2は、一実施形態に係るアンテナ形成領域100の平面図である。
図3は、
図2に示すIII-III断面図である。
図4は、
図2に示すIV-IV断面図である。
図5は、
図2に示すV-V断面図である。
図3~
図5に示すように、アンテナ基板1は、複数の導体層11を有するコア層10と、コア層10の一方の面10aに積層された第1ビルドアップ層20と、コア層10の他方の面10bに積層された第2ビルドアップ層30と、を備えている。
【0019】
以下の説明において、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明することがある。
図3~
図5に示すように、Z軸方向は、アンテナ基板1の厚さ方向に設定されている。以下、コア層10に対し第1ビルドアップ層20側を上側あるいは+Z側と称し、コア層10に対し第2ビルドアップ層側を下側あるいは-Z側と称する。なお、+Z側が重力方向における上側でなくてもよい。
【0020】
厚み方向(Z軸方向)からアンテナ基板1を見ることを、平面視という。X軸方向は、厚み方向と直交する第1方向である。なお、X軸方向に含まれる双方向の向きを区別するため、+X側(右側)、-X側(左側)と称する場合がある。Y軸方向は、厚み方向及び第1方向と直交する第2方向である。なお、Y軸方向に含まれる双方向の向きを区別するため、+Y側(奥側)、-Y側(手前側)と称する場合がある。
図2に示すように、枠体3は、第1方向(X軸方向)及び第2方向(Y軸方向)に延びている。
【0021】
図3に示すように、第1ビルドアップ層20には、複数の導体層21が設けられている。複数の導体層21の間の各隙間には、当該各隙間を埋めるように絶縁層22が設けられている。つまり、第1ビルドアップ層20は、コア層10の一方の面10a(上面)に、絶縁層22と導体層21とを交互に積層することで形成されている。
【0022】
複数の導体層21は、アンテナ2と、枠体3と、グランドパターン4と、を形成している。第1ビルドアップ層20には、導体層21として、第1ビルドアップ層20の上面20aから下面20bに向かって順に、4つの導体層21a~21dが設けられている。なお、導体層21の層数は、一例であって、4つに限定されない。
【0023】
図2に示すように、アンテナ2は、平面視で十字に交差した第1アンテナ2A及び第2アンテナ2Bを備えている。第1アンテナ2A及び第2アンテナ2Bは、平面視において、アンテナ形成領域100の中心位置で交差している。なお、第1アンテナ2A及び第2アンテナ2Bのいずれか一方は、V偏波用のアンテナであり、他方はH偏波用のアンテナである。
【0024】
第1アンテナ2A及び第2アンテナ2Bは、導体によって形成された平板状のパターンであり、例えば高周波の無線信号(例えば28GHz帯)を送受信するように構成されている。なお、第1アンテナ2A及び第2アンテナ2Bは、高周波の無線信号を送信のみ、または受信のみするように構成されていてもよい。
【0025】
第1アンテナ2Aは、第1ビルドアップ層20の表面に沿う第1方向(X軸方向)に直線状に延在している。第1アンテナ2Aは、
図5に示すように、第1ビルドアップ層20の内層である導体層21bに形成されている。つまり、第1アンテナ2Aは、第1ビルドアップ層20に埋設されている。
【0026】
図2に示すように、第2アンテナ2Bは、第1ビルドアップ層20の表面に沿って、第1アンテナ2Aと交差する第2方向(Y軸方向)に直線状に延在している。第2アンテナ2Bは、
図3~
図5に示すように、第1ビルドアップ層20の内層である導体層21cに形成されている。つまり、第2アンテナ2Bは、第1ビルドアップ層20において、第1アンテナ2Aの下側(-Z側)に埋設されている。
【0027】
図2に示すように、アンテナ2の周囲には、4つのグランドパターン4が形成されている。4つのグランドパターン4は、平面視において、十字に交差するアンテナ2に沿って配置されている。4つのグランドパターン4の各々は、平面視でL字状に形成され、その屈曲部がアンテナ形成領域100の中心位置を向くように配置されている。
【0028】
つまり、L字状の4つのグランドパターン4の間には、十字のスリットが形成され、この十字のスリットにアンテナ2が配置されている。アンテナ2及びグランドパターン4は、コプレ-ナ線路を形成している。このため、アンテナ2に高周波信号が入力されると、アンテナ2及びグランドパターン4の間で励振が発生し、電磁波が外部に放射される。
【0029】
グランドパターン4は、
図3~
図5に示すように、第1ビルドアップ層20の内層である導体層21b~21dに形成されている。つまり、グランドパターン4は、第1ビルドアップ層20において、少なくとも第1アンテナ2A及び第2アンテナ2Bが形成された層と同じ層に埋設されている。
【0030】
各層のグランドパターン4は、
図4に示すように、複数の埋込ビア24によって厚み方向に電気的に接続されている。埋込ビア24は、
図2に示す平面視で、L字状のグランドパターン4に対し重なって配置され、L字状のグランドパターン4の一端部、屈曲部、他端部の3箇所に接続されている。
【0031】
図3~
図5に示すように、導体層21a~21dの各層は、枠体3を形成している。各層の枠体3は、複数の埋込ビア23によって厚み方向に電気的に接続されている。埋込ビア23は、
図2に示す平面視で、格子状の枠体3に対し重なって配置され、枠体3に沿って所定の間隔をあけて複数接続されている。
【0032】
図3に示すように、第2ビルドアップ層30には、複数の導体層31が設けられている。複数の導体層31の間の各隙間には、当該各隙間を埋めるように絶縁層32が設けられている。つまり、第2ビルドアップ層30は、コア層10の他方の面10b(下面)に、絶縁層32と導体層31とを交互に積層することで形成されている。
【0033】
第2ビルドアップ層30には、導体層31として、第2ビルドアップ層30の上面30aから下面30bに向かって順に、4つの導体層31a~31dが設けられている。なお、導体層31の層数は、一例であって、4つに限定されない。
【0034】
4つの導体層31a~31dは、高周波IC40の実装に必要な配線、例えば、後述する電源配線層11Aと電気的に接続される電源配線、高周波信号が通る信号線、アンプの利得や移相器を制御するデジタル配線などが形成されている。導体層31a~31dの各層は、所定部分が埋込ビア33によって厚み方向に接続されている。なお、信号線やデジタル配線の一部は、後述する導体層11hに形成されていてもよい。
【0035】
導体層31dは、第2ビルドアップ層30の下面30bに形成されている。第2ビルドアップ層30の下面30bには、高周波IC40が実装されている。高周波IC40は、導体層31dと電気的に接続される複数の端子部41~43を備えている。本実施形態において、例えば、端子部41は、電源端子であり、端子部42は、高周波信号端子であり、端子部43は、デジタル信号端子である。なお、高周波IC40は、その他の端子部を備えてもよい。
【0036】
図3に示すように、コア層10には、複数の導体層11が設けられている。複数の導体層11の間の各隙間には、当該各隙間を埋めるように絶縁層12が設けられている。このように、コア層10は多層である。なお、コア層10には、コア材にプリプレグを用いて多層基板を製造した後、一括で穴(スルーホール)をあけるものを含む。
【0037】
コア層10には、導体層11として、一方の面10aから他方の面10bに向かって順に、8つの導体層11a~11hが設けられている。なお、導体層11の層数は、一例であって、8つに限定されない。コア層10には、一方の面10aから他方の面10bに、厚み方向に貫通する複数の貫通ビア13が設けられている。
【0038】
コア層10の内層には、高周波IC40に電力を供給する電源配線層11Aと、電気的に接地されたグランド層11Bと、が設けられている。なお、コア層10の内層とは、コア層10の一方の面10a及び他方の面10bに形成された導体層11a及び導体層11hを除く、導体層11b~11gをいう。本実施形態では、導体層11eにグランド層11Bが形成され、導体層11gに電源配線層11Aが形成されている。
【0039】
図3に示すように、グランド層11Bは、厚み方向(Z軸方向)においてアンテナ2に対し離れて形成されている。厚み方向におけるアンテナ2とグランド層11Bとの間の実効長(厚みD×誘電率)は、アンテナ2が受信または送信する周波数帯の中心周波数(例えば、28GHz)の1/10波長以上かつ1/2波長以下の範囲内であるとよい。
【0040】
より好ましくは、厚み方向におけるアンテナ2とグランド層11Bとの間の実効長は、アンテナ2が受信または送信する周波数帯の中心周波数の1/8波長以上かつ3/8波長以下の範囲内であるとよい。このように、厚み方向におけるアンテナ2とグランド層11Bとの間の実効長が、アンテナ2が受信または送信する周波数帯の中心周波数の1/4波長に近づくことで、アンテナ性能が向上する。
【0041】
グランド層11Bは、厚み方向から視た平面視において、アンテナ2と重なって配置されている。グランド層11Bは、アンテナ2の下側(-Z側)の全体を覆っているが、後述するように、コア層10を貫通する第1貫通ビア13A(
図3参照)及び第4貫通ビア13D(
図5参照)が通る部分には、開口が形成されている。
【0042】
図3に示すように、電源配線層11Aは、厚み方向においてグランド層11Bに対しアンテナ2とは反対側(-Z側)に形成されている。コア層10は、一方の面10aから他方の面10bに厚み方向(Z軸方向)に貫通し、電源配線層11Aと高周波IC40とを電気的に接続する第1貫通ビア13Aを備えている。第1貫通ビア13Aは、上述したように、グランド層11Bとは電気的に接続されていない。
【0043】
第1貫通ビア13Aは、電源配線層11Aを貫通し、電源配線層11Aと電気的に接続されている。第1貫通ビア13Aは、第2ビルドアップ層30の複数の導体層31及び複数の埋込ビア33を介して、高周波IC40の電源端子である端子部41と電気的に接続されている。なお、コア層10の一方の面10a及び他方の面10bには、第1貫通ビア13Aの周囲に円形のランドが形成されている。
【0044】
また、コア層10は、第1貫通ビア13Aの他に、第2貫通ビア13B、第3貫通ビア13C、及び第4貫通ビア13Dを備えている。第3貫通ビア13C、及び第4貫通ビア13Dも同様に、コア層10の一方の面10a及び他方の面10bには、円形のランドが形成されている。なお、第2貫通ビア13Bは、枠体3と接続されており、円形のランドは形成されていない。
【0045】
第2貫通ビア13Bは、
図3~
図5に示すように、厚み方向から視た平面視において枠体3に重なる位置に配置されて、コア層10を貫通している。第2貫通ビア13Bは、グランド層11Bを貫通し、グランド層11Bと電気的に接続されている。第2貫通ビア13Bは、複数の埋込ビア23を介して、枠体3とグランド層11Bとを電気的に接続している。
【0046】
第3貫通ビア13Cは、
図4に示すように、厚み方向から視た平面視においてグランドパターン4に重なる位置に配置されて、コア層10を貫通している。第3貫通ビア13Cは、グランド層11Bを貫通し、グランド層11Bと電気的に接続されている。第3貫通ビア13Cは、複数の埋込ビア24を介して、グランドパターン4とグランド層11Bとを電気的に接続している。
【0047】
第4貫通ビア13Dは、
図5に示すように、厚み方向から視た平面視において第1アンテナ2Aに重なる位置に配置されて、コア層10を貫通している。第4貫通ビア13Dは、グランド層11Bの開口を通り、グランド層11B及び電源配線層11Aとは電気的に接続されていない。
【0048】
第4貫通ビア13Dは、第1ビルドアップ層20の複数の導体層21及び複数の埋込ビア25、さらには、第2ビルドアップ層30の複数の導体層31及び複数の埋込ビア33を介して、第1アンテナ2Aと高周波IC40の高周波信号端子である端子部42とを電気的に接続している。なお、不図示であるが、第2アンテナ2Bにおいても、第1アンテナ2Aとは別の第4貫通ビア13Dを介して、同様に高周波IC40と電気的に接続されている。
【0049】
上記構成のアンテナ基板1によれば、コア層10を貫通する第1貫通ビア13Aを備えるため、コア層10の内層に形成した電源配線層11Aと、第2ビルドアップ層30の下面30bに実装した高周波IC40とを電気的に接続することができる。しかし、第1貫通ビア13Aの一端が、一方の面10a側(アンテナ2側)に形成されてしまう。ここで、第1貫通ビア13Aを、
図2に示すように配置することで、アンテナ2への影響を小さくすることができる。
【0050】
第1貫通ビア13Aは、
図2に示すように、厚み方向から視た平面視において、枠体3の内側に配置されている。また、第1貫通ビア13Aは、厚み方向から視た平面視において、第1アンテナ2A及び第2アンテナ2Bと重なる位置から退いた位置、且つ、第1アンテナ2A及び第2アンテナ2Bの延長線上から退いた位置に配置されている。
【0051】
具体的に、第1貫通ビア13Aは、枠体3の内側のアンテナ形成領域100において、アンテナ2の右側(+X側)且つ手前側(-Y側)の領域に配置されている。具体的に、第1貫通ビア13Aは、第1アンテナ2Aに対し-Y側、且つ、第2アンテナ2Bに対し+X側に配置され、また、アンテナ形成領域100の中心に対し、グランドパターン4より離れて配置されている。
【0052】
図6は、比較例に係るアンテナ基板200によるアンテナ形成領域100の平面図である。
図7は、比較例に係るアンテナ形成領域100のアンテナ特性を示すグラフである。なお、
図7において、縦軸はSパラメータ(dB)、横軸は周波数(GHz)を示す。「S11」とは、第1アンテナ2Aの反射特性を示す。また、「S21」とは、第1アンテナ2Aと第2アンテナ2Bとのクロストーク特性を示す。また、「S22」とは、第2アンテナ2Bの反射特性を示す。後述する
図8、
図10、
図12においても同様である。
【0053】
図8は、第1実施例に係るアンテナ形成領域100のアンテナ特性を示すグラフである。
図6に示すように、比較例に係るアンテナ基板200は、第1貫通ビア13Aを備えておらず、その他の構成は第1実施例に係るアンテナ基板1(
図2参照)と同じである。
図7及び
図8に示すように、第1貫通ビア13Aを備えない場合(比較例)と、第1貫通ビア13Aを備える場合(第1実施例)とを比較すると、Sパラメータの変化は少ないことが分かる。
【0054】
図9は、第2実施例に係るアンテナ基板1Aによるアンテナ形成領域100の平面図である。
図10は、第2実施例に係るアンテナ形成領域100のアンテナ特性を示すグラフである。
図9に示すように、第2実施例に係るアンテナ基板1Aは、第1貫通ビア13Aが、厚み方向から視た平面視において、第1アンテナ2A及び第2アンテナ2Bと重なる位置から退いた位置であるが、第1アンテナ2Aの延長線上に配置されている。この場合、第1実施例と比べると、
図10に示すように、特に29.5GHz付近においてSパラメータが上昇している。よって、第1貫通ビア13Aは、第1アンテナ2Aの延長線上から退いた位置に配置することが好ましいことが分かる。第2アンテナ2Bの延長線上に配置した場合も同様である。
【0055】
図11は、第3実施例に係るアンテナ基板1Bによるアンテナ形成領域100の平面図である。
図12は、第3実施例に係るアンテナ形成領域100のアンテナ特性を示すグラフである。
図11に示すように、第3実施例に係るアンテナ基板1Bは、第1貫通ビア13Aが、厚み方向から視た平面視において、第1アンテナ2Aの延長線上に配置され、埋込ビア23の一つと入れ替わり、枠体3と重なる位置に配置されている。この場合、第2実施例と比べると、
図12に示すように、29.5GHz付近のSパラメータが下降している。よって、第1貫通ビア13Aは、第1アンテナ2A(第2アンテナ2Bも同様)の延長線上であっても、枠体3と重なる位置に配置することが好ましいことが分かる。また、第1貫通ビア13Aは、第1アンテナ2A(第2アンテナ2Bも同様)の延長線上になくても、枠体3と重なる位置に配置することが好ましい。
【0056】
以上のように、本実施形態によれば、コア層10の内層に、高周波IC40に電力を供給する電源配線層11Aを設けることで、その分、第2ビルドアップ層30の層数を低減できる。また、コア層10の内層にグランド層11Bを設け、グランド層11Bに対しアンテナ2とは反対側に電源配線層11Aを配置することで、アンテナ2から電源配線層11A側への電磁波の漏出を抑制できる。この構造において、高周波IC40と電源配線層11Aとの電気的な接続は、コア層10を厚み方向に貫通する第1貫通ビア13Aによって確保できる。
したがって、アンテナ基板1の信頼性が向上し、製造コストを下げることができる。
【0057】
このように、本実施形態に係るアンテナ基板1は、複数の導体層11を有するコア層10と、コア層10の一方の面10aに積層された第1ビルドアップ層20と、コア層10の他方の面10bに積層された第2ビルドアップ層30と、を備え、第1ビルドアップ層20には、アンテナ2が形成され、第2ビルドアップ層30には、アンテナ2と電気的もしくは電磁界的に接続される高周波IC40が実装され、コア層10の内層には、厚み方向においてアンテナ2に対し離れて形成されたグランド層11Bと、厚み方向においてグランド層11Bに対しアンテナ2とは反対側に形成された電源配線層11Aと、が設けられ、コア層10は、一方の面10aから他方の面10bに厚み方向に貫通し、電源配線層11Aと高周波IC40とを電気的に接続する第1貫通ビア13Aを備える。この構成によれば、高周波IC40を実装したアンテナ基板1のビルドアップ層の層数を低減しつつアンテナ2とグランド層11Bとの間の厚みを確保することができる。
【0058】
また、本実施形態において、第1ビルドアップ層20は、厚み方向から視た平面視において、アンテナ2を囲う導電性の枠体3を備え、枠体3は、厚み方向から視た平面視において枠体3に重なる位置に配置されてコア層10を貫通する複数の第2貫通ビア13Bによって、グランド層11Bと電気的に接続され、厚み方向から視た平面視において、第1貫通ビア13Aは、枠体3の内側に配置されている。この配置によれば、
図2及び
図8に示すように、第1貫通ビア13Aがあってもアンテナ2への影響は少なくなる。
【0059】
また、本実施形態において、第1ビルドアップ層20は、厚み方向から視た平面視において、アンテナ2を囲う導電性の枠体3を備え、枠体3は、厚み方向から視た平面視において枠体3に重なる位置に配置されてコア層10を貫通する複数の第2貫通ビア13Bによって、グランド層11Bと電気的に接続され、厚み方向から視た平面視において、第1貫通ビア13Aは、枠体3と重なる位置に配置されている。この配置によれば、
図11及び
図12に示すように、第1貫通ビア13Aがあってもアンテナ2への影響は少なく、逆に29.5GHz付近ではSパラメータが下降しており、アンテナ特性を向上させることができる。
【0060】
また、本実施形態において、アンテナ2は、第1ビルドアップ層20に沿う第1方向(X軸方向)に延在する第1アンテナ2Aと、第1アンテナ2Aと厚み方向(Z軸方向)で異なる位置に配置され、第1アンテナ2Aと交差する第2方向(Y軸方向)に延在する第2アンテナ2Bと、を備え、第1貫通ビア13Aは、厚み方向から視た平面視において、第1アンテナ2A及び第2アンテナ2Bと重なる位置から退いた位置、且つ、第1アンテナ2A及び第2アンテナ2Bの延長線上から退いた位置に配置されている。この配置によれば、
図2及び
図8と、
図9及び
図10との比較から分かるように、アンテナ2への影響は少なくなる。
【0061】
また、本実施形態において、厚み方向におけるアンテナ2とグランド層11Bとの間の実効長が、アンテナ2が受信または送信する周波数帯の中心周波数の1/10波長以上かつ1/2波長以下の範囲内である。この構成によれば、厚み方向におけるアンテナ2とグランド層11Bとの間の実効長が、アンテナ2が受信または送信する周波数帯の中心周波数の1/4波長に近づくため、アンテナ性能が向上する。
【0062】
また、本実施形態において、厚み方向におけるアンテナ2とグランド層11Bとの間の実効長が、アンテナ2が受信または送信する周波数帯の中心周波数の1/8波長以上かつ3/8波長以下の範囲内である。この構成によれば、厚み方向におけるアンテナ2とグランド層11Bとの間の実効長が、アンテナ2が受信または送信する周波数帯の中心周波数の1/4波長により近づくため、アンテナ性能がより向上する。
【0063】
また、本実施形態において、アンテナ2は、第1ビルドアップ層20にアレイ状に複数形成され、厚み方向から視た平面視において、アンテナ2の各アンテナ形成領域100の少なくとも一つに、第1貫通ビア13Aが配置されている。この構成によれば、アレイアンテナの信頼性が向上し、製造コストを下げることができる。なお、本実施形態では、全てのアンテナ形成領域100に第1貫通ビア13Aを設けたが、第1貫通ビア13Aが設けられていないアンテナ形成領域100があってもよい。
【0064】
以上、本発明の好ましい実施形態を記載し説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、及びその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、特許請求の範囲によって制限されている。
【0065】
例えば、アンテナ2は、両偏波アンテナであってもよい。
また、高周波IC40は、アンテナ2と電磁界的に接続されてもよい。
また、アンテナ基板1は、フェーズドアレイアンテナを形成してもよい。
【0066】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1…アンテナ基板、1A…アンテナ基板、1B…アンテナ基板、2…アンテナ、2A…第1アンテナ、2B…第2アンテナ、3…枠体、4…グランドパターン、10…コア層、10a…一方の面、10b…他方の面、11(11a~11h)…導体層、12…絶縁層、13…貫通ビア、13A…第1貫通ビア、13B…第2貫通ビア、13C…第3貫通ビア、13D…第4貫通ビア、20…第1ビルドアップ層、20a…上面、20b…下面、21(21a~21d)…導体層、22…絶縁層、23…埋込ビア、24…埋込ビア、25…埋込ビア、30…第2ビルドアップ層、30a…上面、30b…下面、31(31a~31d)…導体層、32…絶縁層、33…埋込ビア、40…高周波IC、41…端子部、42…端子部、43…端子部、100…アンテナ形成領域、200…アンテナ基板