(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163442
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】情報処理装置および情報処理方法、並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 23/60 20230101AFI20241115BHJP
H04N 23/54 20230101ALI20241115BHJP
【FI】
H04N23/60 500
H04N23/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079037
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】稲本 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100168686
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 勇介
(72)【発明者】
【氏名】仁科 有貴
(72)【発明者】
【氏名】松浦 幸治
(72)【発明者】
【氏名】衣川 洋史
【テーマコード(参考)】
5C122
【Fターム(参考)】
5C122DA11
5C122DA30
5C122EA59
5C122FC06
5C122FH01
5C122FH02
5C122FH10
5C122FH11
5C122FH21
5C122HA13
5C122HA35
5C122HA86
5C122HA88
5C122HB01
5C122HB06
(57)【要約】
【課題】より性能劣化を抑制する。
【解決手段】飽和領域抽出部は、階調信号が飽和状態である画素により占められる飽和領域を抽出し、イベントデータ補正部は、その飽和領域内に存在するイベントデータに対する削除補正を行う。階調信号およびイベントデータを取得するセンサの内部に実装され、または、階調信号およびイベントデータを取得するセンサの後段に設けられる信号処理部に実装される。本技術は、例えば、EVS、または、EVSの後段に設けられるアプリケーションプロセッサに適用できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
階調信号が飽和状態である画素により占められる飽和領域を抽出する飽和領域抽出部と、
前記飽和領域内に存在するイベントデータに対する削除補正を行うイベントデータ補正部と
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記飽和領域抽出部は、前記階調信号が示すR画素、G画素、およびB画素の輝度値のうち、いずれかの輝度値が閾値以上である場合に、前記階調信号が飽和状態であると判定する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記飽和領域抽出部は、前記階調信号が示すR画素、G画素、およびB画素の輝度値の全てが閾値以上である場合に、前記階調信号が飽和状態であると判定する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記イベントデータ補正部は、前記飽和領域内に存在する全ての前記イベントデータに対する削除補正を行う
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記イベントデータ補正部は、前記飽和領域内に存在する前記イベントデータに対する確率的な削除補正を行う
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記イベントデータ補正部は、前記飽和領域の境界からの距離に応じたイベント削除率に基づいて前記イベントデータに対する削除補正を行う
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記イベントデータ補正部は、前記飽和領域における被写体の移動量に応じたイベント削除率に基づいて前記イベントデータに対する削除補正を行う
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記イベントデータは、ポジティブイベント、ネガティブイベント、または、イベント無しを示すデータにより構成され、
前記イベントデータ補正部は、削除補正の対象とされた前記ポジティブイベントおよび前記ネガティブイベントを示すデータを、前記イベント無しを示すデータに置き換える
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記イベントデータは、ポジティブイベント、ネガティブイベント、または、イベント無しを示すデータにより構成され、
前記イベントデータ補正部は、削除補正の対象とされた前記ポジティブイベントおよび前記ネガティブイベントを示すデータに対し、削除補正の対象であることを示す削除情報を付与する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記階調信号を取得するための画素と前記イベントデータを取得するための画素とが組み合わされてセンサ面に配置されたセンサから、前記階調信号および前記イベントデータが並列的に出力される
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記階調信号を取得するための画素がセンサ面に配置された第1のセンサ、および、前記イベントデータを取得するための画素がセンサ面に配置された第2のセンサそれぞれから、前記階調信号および前記イベントデータが出力される
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記階調信号を取得するための画素と前記イベントデータを取得するための画素とがスイッチングにより切り替えらえるセンサから、前記階調信号および前記イベントデータが時分割的に出力される
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記階調信号および前記イベントデータを取得するセンサの内部に実装される
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記階調信号および前記イベントデータを取得するセンサの後段に設けられる信号処理部に実装される
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項15】
情報処理装置が、
階調信号が飽和状態である画素により占められる飽和領域を抽出することと、
前記飽和領域内に存在するイベントデータに対する削除補正を行うことと
を含む情報処理方法。
【請求項16】
情報処理装置のコンピュータに、
階調信号が飽和状態である画素により占められる飽和領域を抽出することと、
前記飽和領域内に存在するイベントデータに対する削除補正を行うことと
を含む情報処理を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置および情報処理方法、並びにプログラムに関し、特に、より性能劣化を抑制することができるようにした情報処理装置および情報処理方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画素ごとの輝度変化をイベントとしてリアルタイムに検出する画像センサ(以下、EVS(Event based Vision Sensor)と称する)の開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アドレスイベントの検出と合せて階調画像を取得することができる固体撮像装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、画像の撮影に用いられる階調信号が線形応答であるのに対して、EVSで取得されるイベントデータが対数応答であることより、階調信号とイベントデータとでダイナミックレンジの差分(以下、DR(Dynamic Range)差分と称する)が発生してしまう。これにより、EVSでは、階調信号が飽和している飽和領域においても、イベントの発生が検出されることがある。
【0006】
そのため、階調信号とイベントデータとの両方を活用するアプリケーションにおいて、DR差分を考慮していない場合には、アプリケーションの性能劣化を引き起こすことが懸念される。例えば、階調信号とイベントデータとの両方を活用してブレを除去するDeblurアプリケーションでは、飽和領域においてアーチファクトが発生することなどがあった。そこで、このような性能劣化を抑制することが求められている。
【0007】
本開示は、このような状況に鑑みてなされたものであり、より性能劣化を抑制することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面の情報処理装置は、階調信号が飽和状態である画素により占められる飽和領域を抽出する飽和領域抽出部と、前記飽和領域内に存在するイベントデータに対する削除補正を行うイベントデータ補正部とを備える。
【0009】
本開示の一側面の情報処理方法またはプログラムは、階調信号が飽和状態である画素により占められる飽和領域を抽出することと、前記飽和領域内に存在するイベントデータに対する削除補正を行うこととを含む。
【0010】
本開示の一側面においては、階調信号が飽和状態である画素により占められる飽和領域が抽出され、その飽和領域内に存在するイベントデータに対する削除補正が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本技術を適用したDR差分補正処理部の一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【
図2】イベントデータに対する削除補正について説明する図である。
【
図4】ハイブリッドEVSセンサおよびアプリケーションプロセッサの構成例を示すブロック図である。
【
図5】飽和領域抽出処理の第1の処理例を説明するフローチャートである。
【
図6】飽和領域抽出処理の第2の処理例を説明するフローチャートである。
【
図7】イベントデータ補正処理の第1の処理例を説明するフローチャートである。
【
図8】階調信号の飽和領域内に存在する全てのイベントデータに対する削除補正が行われたDR差分補正後イベントデータの一例を示す図である。
【
図9】イベントデータ補正処理の第2の処理例を説明するフローチャートである。
【
図10】階調信号の飽和領域内に存在するイベントデータに対する確率的な削除補正が行われたDR差分補正後イベントデータの一例を示す図である。
【
図11】イベントデータ補正処理の第3の処理例を説明するフローチャートである。
【
図12】飽和領域を距離に変換し、その距離をイベント削除率に変換する処理について説明する図である。
【
図13】距離とイベント削除率との関係を示す図である。
【
図14】飽和領域の境界からの距離に応じたイベント削除率に基づく削除補正が行われたDR差分補正後イベントデータの一例を示す図である。
【
図15】イベントデータ補正処理の第4の処理例を説明するフローチャートである。
【
図16】飽和領域における被写体の移動量の計算について説明する図である。
【
図17】移動量とイベント削除率との関係を示す図である。
【
図18】入出力応答の確認方法について説明する図である。
【
図19】本技術を適用したコンピュータの一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【
図20】車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図21】車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本技術を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
<DR差分補正処理部の構成例>
図1は、本技術を適用したDR差分補正処理部の一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すように、DR差分補正処理部11は、飽和領域抽出部21およびイベントデータ補正部22を備えて構成され、DR差分補正処理部11には、階調信号およびイベントデータが供給される。例えば、イベントデータは、階調信号と比較してフレームレートが大幅に高いため、1フレーム分の階調信号には、複数のフレームのイベントデータが包含される。
【0015】
階調信号は、画像を撮影するためのR画素、G画素、およびB画素それぞれが受光した光の輝度値を示す信号である。イベントデータは、イベントの発生を検出するためのEVS画素ごとに、輝度値が明るくなる方に輝度変化したことを示すポジティブイベント、輝度値が暗くなる方に輝度変化したことを示すネガティブイベント、または、輝度値が輝度変化していないことを示すイベント無しを示すデータにより構成される。なお、階調信号およびイベントデータについて、センサから出力されたままでDR差分補正処理部11に入力されてよいし、センサから出力され信号処理が施された後にDR差分補正処理部11に入力されてもよい。
【0016】
上述したように、階調信号とイベントデータとでDR差分があることによって、階調信号の飽和領域内であってもイベントの発生が検出されることがある。そこで、DR差分補正処理部11は、階調信号の飽和領域内に存在するイベントデータに対するDR差分補正処理を行って、その処理後のイベントデータであるDR差分補正後イベントデータを出力する。
【0017】
飽和領域抽出部21は、DR差分補正処理部11に供給される階調信号が飽和している飽和状態であるか否かを画素ごとに判定し、飽和状態であると判定した画素が占める領域である飽和領域を抽出して、飽和領域を示す飽和領域情報をイベントデータ補正部22に供給する。例えば、飽和領域抽出部21は、R画素、G画素、およびB画素のいずれかの輝度値が閾値以上である場合に階調信号が飽和状態であると判定すること(
図5のフローチャート参照)や、R画素、G画素、およびB画素の全ての輝度値が閾値以上である場合に階調信号が飽和状態であると判定すること(
図6のフローチャート参照)などができる。
【0018】
イベントデータ補正部22は、飽和領域抽出部21から供給される飽和領域情報を参照して、DR差分補正処理部11に供給されるイベントデータのうち、階調信号の飽和領域内に存在するイベントデータに対する削除補正を行う。例えば、イベントデータ補正部22は、階調信号の飽和領域内に存在する全てのイベントデータに対する削除補正(
図7のフローチャート参照)や、階調信号の飽和領域内に存在するイベントデータに対する確率的な削除補正(
図9のフローチャート参照)、飽和領域の境界からの距離に応じたイベント削除率に基づく削除補正(
図11のフローチャート参照)、飽和領域における被写体の移動量に応じたイベント削除率に基づく削除補正(
図15のフローチャート参照)などを行うことができる。
【0019】
図2を参照して、イベントデータ補正部22によるイベントデータに対する削除補正について説明する。
【0020】
図2のAには、イベントデータ補正部22に供給されるイベントデータのデータ形式の一例が示されている。図示するように、ポジティブイベント(P)は01の2ビットで表現され、ネガティブイベント(N)は10の2ビットで表現され、イベント無しは00の2ビットで表現される。そして、
図2のAに示すようなイベントデータのうち、破線で囲われているイベントデータを削除補正の対象としたときに、イベントデータ補正部22から出力されるDR差分補正後イベントデータが
図2のBおよび
図2のCに示されている。
【0021】
図2のBには、削除補正の対象とされたポジティブイベントおよびネガティブイベントを、イベント無しに置き換えることで、イベントデータに対する削除補正を行ったDR差分補正後イベントデータのデータ形式の一例が示されている。
図2のBに示すように、DR差分補正後イベントデータでは、削除補正の対象である1つのポジティブイベントがイベント無しに置き換えられ(01→00)ており、削除補正の対象である3つのネガティブイベントがイベント無しに置き換えられ(10→00)ている。
【0022】
図2のCには、削除補正の対象であるか否かを示す1ビットの削除情報を付与することで、イベントデータに対する削除補正を行ったDR差分補正後イベントデータのデータ形式の一例が示されている。
図2のCに示すように、DR差分補正後イベントデータでは、削除補正の対象である1つのポジティブイベントに削除情報として1が付与され(01→011)ており、削除補正の対象である3つのネガティブイベントに削除情報として1が付与され(10→101)ている。また、削除補正の対象でないイベントデータには、削除情報として0が付与されており、各イベントデータが3ビット固定長ビットになるように、イベント無しは000で表現される。
【0023】
例えば、
図2のCに示すように1ビットの削除情報を付与する場合、後段の処理部(例えば、
図4のAに示すアプリケーションプロセッサ41A)などにおいて削除情報が参照されて、必要に応じてポジティブイベントまたはネガティブイベントを削除する処理が行われる。
【0024】
図3を参照して、DR差分補正処理部11に階調信号およびイベントデータを供給するセンサの構成例について説明する。
【0025】
図3のAに示すように、ハイブリッドEVSセンサ31は、赤色の光を受光するR画素、緑色の光を受光するG画素、および、青色の光を受光するB画素と、イベントの発生を検出するためのEVS画素とが組み合わされてセンサ面に配置され、階調信号およびイベントデータを並列的にDR差分補正処理部11へ出力するように構成される。
図3のAに示すハイブリッドEVSセンサ31の構成例では、4×4画素配列のうち、左上の2×2画素配列の右下にEVS画素が配置され、右下の2×2画素配列の右下にEVS画素が配置されている。
【0026】
図3のBに示すように、イメージセンサ32は、赤色の光を受光するR画素、緑色の光を受光するG画素、および、青色の光を受光するB画素それぞれの2×2画素配列がベイヤ配列となるようにセンサ面に配置され、EVSセンサ33は、イベントの発生を検出するためのEVS画素がセンサ面の全面に配置されている。このように、イメージセンサ32およびEVSセンサ33それぞれから、階調信号およびイベントデータがDR差分補正処理部11へ出力されるような構成とすることができる。
【0027】
図3のCに示すように、スイッチング方式のハイブリッドEVSセンサ34は、赤色の光を受光するR画素、緑色の光を受光するG画素、および、青色の光を受光するB画素と、イベントの発生を検出するためのEVS画素とがスイッチングにより切り替えらえて、階調信号およびイベントデータを時分割的にDR差分補正処理部11へ出力するように構成される。
図3のCに示すスイッチング方式のハイブリッドEVSセンサ34の構成例では、R画素、G画素、および、B画素それぞれの2×2画素配列がベイヤ配列となるようにセンサ面に配置された構成と、EVS画素がセンサ面の全面に配置された構成とを、スイッチングにより切り替えることができる。
【0028】
図4を参照して、ハイブリッドEVSセンサ31およびアプリケーションプロセッサ41の構成例について説明する。なお、
図4では、
図3のAに示したハイブリッドEVSセンサ31について説明するが、
図3のBに示したイメージセンサ32およびEVSセンサ33の組み合わせや、
図3のCに示したスイッチング方式のハイブリッドEVSセンサ34などについても、同様の構成とすることができる。
【0029】
図4のAには、第1の構成例であるハイブリッドEVSセンサ31Aおよびアプリケーションプロセッサ41Aのブロック図が示されている。
【0030】
図4のAに示すように、ハイブリッドEVSセンサ31Aは、R画素、G画素、および、B画素から出力される階調信号を取得する階調信号取得部51、EVS画素から出力されるイベントデータを取得するイベントデータ取得部52、並びに、DR差分補正処理部11を備えて構成される。そして、ハイブリッドEVSセンサ31Aからアプリケーションプロセッサ41Aに、階調信号およびDR差分補正後イベントデータが供給される。
【0031】
このように、ハイブリッドEVSセンサ31Aの内部にDR差分補正処理部11が実装された構成例を採用することができる。
【0032】
図4のBには、第2の構成例であるハイブリッドEVSセンサ31Bおよびアプリケーションプロセッサ41Bのブロック図が示されている。
【0033】
図4のBに示すように、ハイブリッドEVSセンサ31Bは、R画素、G画素、および、B画素から出力される階調信号を取得する階調信号取得部51、並びに、EVS画素から出力されるイベントデータを取得するイベントデータ取得部52を備えて構成され、アプリケーションプロセッサ41Bは、DR差分補正処理部11を備えて構成される。そして、ハイブリッドEVSセンサ31Bからアプリケーションプロセッサ41Bに、階調信号およびイベントデータが供給される。
【0034】
このように、ハイブリッドEVSセンサ31Bの後段に設けられるアプリケーションプロセッサ41BにDR差分補正処理部11が実装された構成例を採用することができる。
【0035】
以上のように構成されるDR差分補正処理部11は、階調信号の飽和領域内に存在するイベントデータに対する削除補正を行ったDR差分補正後イベントデータを出力することができる。これにより、階調信号の飽和領域内に存在するイベントデータの数が削減されることでDR差分による影響を低減させることができる結果、階調信号とイベントデータとの両方を活用するアプリケーションの性能劣化を抑制することができる。例えば、DR差分を考慮していないようなDeblurアプリケーションでは、階調信号の飽和領域内に存在するアーチファクトの発生を抑制することができる。
【0036】
<飽和領域抽出処理の処理例>
図5および
図6を参照して、飽和領域抽出部21において実行される飽和領域抽出処理について説明する。例えば、飽和領域抽出処理は、処理対象となる所定数の画素ごとに処理を行うことができ、
図3のAに示したようなハイブリッドEVSセンサ31では4×4画素配列を処理対象として処理を行うことができる。
【0037】
図5は、飽和領域抽出処理の第1の処理例を説明するフローチャートである。
【0038】
ステップS11において、飽和領域抽出部21は、階調信号取得部51により取得された1フレーム分の階調信号のうち、処理対象の階調信号を読み出す。
【0039】
ステップS12において、飽和領域抽出部21は、処理対象の階調信号の飽和状態を示すデータに0をセットする。
【0040】
ステップS13において、飽和領域抽出部21は、処理対象の階調信号について、R画素、G画素、およびB画素のいずれかの輝度値が閾値以上であるか否かを判定する。
【0041】
ステップS13において、飽和領域抽出部21が、処理対象の階調信号について、R画素、G画素、およびB画素のいずれかの輝度値が閾値以上であると判定した場合、処理はステップS14に進む。ステップS14において、飽和領域抽出部21は、処理対象の階調信号の飽和状態を示すデータに1をセットする。
【0042】
一方、ステップS13において、処理対象の階調信号について、R画素、G画素、およびB画素のいずれかの輝度値が閾値以上でない(全ての輝度値が閾値未満である)と判定された場合、または、ステップS14の処理後、処理はステップS15に進む。
【0043】
ステップS15において、飽和領域抽出部21は、処理対象の階調信号について飽和状態を示すデータを出力し、飽和領域抽出処理は終了される。その後、飽和領域抽出部21は、次の処理対象の階調信号を用いた飽和領域抽出処理を行い、1フレーム分の全ての処理対象について飽和領域抽出処理を行うことで、1フレーム分の飽和状態を示すデータからなる飽和領域情報を取得することができる。
【0044】
図6は、飽和領域抽出処理の第2の処理例を説明するフローチャートである。
【0045】
ステップS21およびS22において、
図5のステップS11およびS12と同様の処理が行われ、ステップS23において、飽和領域抽出部21は、処理対象の階調信号について、R画素、G画素、およびB画素の全ての輝度値が閾値以上であるか否かを判定する。
【0046】
ステップS23において、飽和領域抽出部21が、処理対象の階調信号について、R画素、G画素、およびB画素の全ての輝度値が閾値以上であると判定した場合、処理はステップS24に進む。一方、ステップS23において、飽和領域抽出部21が、処理対象の階調信号について、R画素、G画素、およびB画素の全ての輝度値が閾値以上でない(いずれか1つでも輝度値が閾値未満である)と判定した場合、処理はステップS25に進む。
【0047】
ステップS24およびS25において、
図5のステップS14およびS15と同様の処理が行われ、飽和領域抽出処理は終了される。その後、飽和領域抽出部21は、次の処理対象の階調信号を用いた飽和領域抽出処理を行い、1フレーム分の全ての処理対象について飽和領域抽出処理を行うことで、1フレーム分の飽和状態を示すデータからなる飽和領域情報を取得することができる。
【0048】
<イベントデータ補正処理の処理例>
図7乃至
図17を参照して、イベントデータ補正部22において実行されるイベントデータ補正処理について説明する。例えば、イベントデータ補正処理は、イベントデータを1つずつ処理対象として処理を行うことができる。
【0049】
図7は、イベントデータ補正処理の第1の処理例を説明するフローチャートである。
【0050】
ステップS31において、イベントデータ補正部22は、飽和領域抽出部21から飽和領域情報を読み出す。
【0051】
ステップS32において、イベントデータ補正部22は、処理対象となるイベントデータをイベントデータ取得部52から読み出す。
【0052】
ステップS33において、イベントデータ補正部22は、ステップS31で読み出した飽和領域情報を参照して、ステップS32で読み出したイベントデータは飽和領域内に存在するか否かを判定する。
【0053】
ステップS33において、イベントデータ補正部22が、イベントデータは飽和領域内に存在すると判定した場合、処理はステップS34に進む。ステップS34において、イベントデータ補正部22は、処理対象となっているイベントデータに対する削除補正を行う。
【0054】
一方、ステップS33において、イベントデータは飽和領域内に存在しないと判定された場合、または、ステップS34の処理後、処理はステップS35に進む。
【0055】
ステップS35において、イベントデータ補正部22はイベントデータを出力し、イベントデータ補正処理は終了される。このとき、ステップS34の処理が行われていた場合には、
図2のBを参照して上述したようにポジティブイベントまたはネガティブイベントがイベント無しに置き換えられたイベントデータや、
図2のCを参照して上述したように削除情報として1が付与されたイベントデータなどが出力される。一方、ステップS34の処理が行われていなかった場合には、ステップS32で読み出したイベントデータがそのまま出力される。
【0056】
その後、イベントデータ補正部22は、次のイベントデータを処理対象としたイベントデータ補正処理を行い、1フレーム分の全てのイベントデータについてイベントデータ補正処理を行うことで、1フレーム分のDR差分補正後イベントデータを取得することができる。
【0057】
このように、イベントデータ補正処理の第1の処理例では、
図8に示すように、飽和領域内に存在する全てのイベントデータに対する削除補正が行われたDR差分補正後イベントデータが出力される。
【0058】
図9は、イベントデータ補正処理の第2の処理例を説明するフローチャートである。
【0059】
ステップS41乃至S43において、
図7のステップS31乃至S33と同様の処理が行われ、ステップS43において、イベントデータ補正部22が、イベントデータは飽和領域内に存在すると判定した場合、処理はステップS44に進む。
【0060】
ステップS44において、イベントデータ補正部22は、0.0~1.0の一様乱数を生成する。
【0061】
ステップS45において、イベントデータ補正部22は、ステップS44で生成した乱数の値は閾値以上であるか否かを判定する。ここで、閾値は削除率に従って設定され、例えば、削除率50%の場合、閾値は0.5に設定される。
【0062】
ステップS45において、イベントデータ補正部22が、乱数の値は閾値以上であると判定した場合、処理はステップS46に進む。ステップS46において、イベントデータ補正部22は、処理対象となっているイベントデータに対する削除補正を行う。
【0063】
一方、ステップS43において、イベントデータは飽和領域内に存在しないと判定された場合、ステップS45において、乱数の値は閾値以上でないと判定された場合、または、ステップS46の処理後、処理はステップS47に進む。
【0064】
その後、ステップS47において、
図7のステップS35と同様の処理が行われ、イベントデータ補正処理は終了される。
【0065】
このように、イベントデータ補正処理の第2の処理例では、階調信号の飽和領域内に存在するイベントデータに対する確率的な削除補正が行われたDR差分補正後イベントデータが出力される。例えば、
図10には、階調信号の飽和領域内に存在するイベントデータに対して削除率50%で削除補正が行われたDR差分補正後イベントデータの一例が示されている。
【0066】
ここで、階調信号とイベントデータとの両方を活用するアプリケーションにおいて、階調信号の飽和領域内に存在するイベントデータの数を削減することで、ある性能については性能劣化を抑制することができる一方で、階調信号の飽和領域内に存在する全てのイベントデータに対する削除補正を行った場合、他の性能については性能劣化してしまうことがある。例えば、Deblurアプリケーションでは、階調信号の飽和領域内に存在するイベントデータの数を削減することで、飽和領域におけるアーチファクトの発生を抑制することができる一方で、階調信号の飽和領域内に存在する全てのイベントデータに対する削除補正を行った場合には、飽和領域におけるDeblur性能が劣化してしまうことがある。
【0067】
そこで、イベントデータ補正処理の第2の処理例のように、階調信号の飽和領域内に存在するイベントデータに対する確率的な削除補正を行うことによって、階調信号とイベントデータとの両方を活用するアプリケーションの性能についてトレードオフを調整することができる。
【0068】
例えば、Deblurアプリケーションでは、アーチファクトの発生を抑制することと、Deblur性能の劣化を抑制することとを、階調信号の飽和領域内に存在するイベントデータに対する削除率を制御することで調整することができる。つまり、削除率が100%である場合には、アーチファクトは発生しない一方で、Deblur性能が低くなってしまう。削除率が50%である場合には、アーチファクトは中レベルで発生するとともに、Deblur性能も中レベルとすることができる。削除率が0%である(即ち、DR差分補正処理が実施されない)場合には、アーチファクトは多く発生する一方で、Deblur性能を高くすることができる。
【0069】
このように、階調信号とイベントデータとの両方を活用するアプリケーションで求められる性能に応じて、階調信号の飽和領域内に存在するイベントデータに対する削除補正を適切に行うことが必要となる。
【0070】
図11は、イベントデータ補正処理の第3の処理例を説明するフローチャートである。
【0071】
ステップS51乃至S53において、
図7のステップS31乃至S33と同様の処理が行われ、ステップS53において、イベントデータ補正部22が、イベントデータは飽和領域内に存在すると判定した場合、処理はステップS54に進む。
【0072】
ステップS54において、イベントデータ補正部22は、ステップS51で取得した飽和領域情報を参照して飽和領域を距離に変換し、ステップS55において、イベントデータ補正部22は、その距離をイベント削除率に変換する。
【0073】
例えば、
図12に示すように、飽和領域情報では、飽和状態となっている画素に1がセットされ、飽和状態となっていない画素に0がセットされている。まず、イベントデータ補正部22は、階調信号が飽和状態である画素により占められる飽和領域にある各画素について、飽和領域の境界からの距離(境界からの画素数)を計算し、飽和領域を距離に変換する。そして、イベントデータ補正部22は、飽和領域にある各画素について、飽和領域の境界からの距離が近ければイベント削除率が低くなり、飽和領域の境界からの距離が遠ければイベント削除率が高くなるように、距離をイベント削除率に変換する。
【0074】
例えば、イベントデータ補正部22は、
図13に示すような距離とイベント削除率との関係に従って、距離をイベント削除率に変換することができる。例えば、距離がパラメータd0未満である場合、距離はイベント削除率0.0に変換され、距離がパラメータd0以上であって、かつ、パラメータd1未満である場合、距離はイベント削除率0.0~1.0の間で線形変換され、距離がパラメータd1以上である場合、距離はイベント削除率1.0に変換される。このように、パラメータd0およびd1によってイベント削除率を制御することができる。
【0075】
その後、ステップS56乃至S59において、
図9のステップS44乃至S47と同様の処理が行われ、イベントデータ補正処理は終了される。
【0076】
このように、イベントデータ補正処理の第3の処理例では、
図14に示すように、飽和領域の境界からの距離に応じたイベント削除率に基づく削除補正が行われたDR差分補正後イベントデータが出力される。
【0077】
従って、例えば、Deblurアプリケーションに用いる場合、Deblur性能に影響しやすい飽和境界近くではポジティブイベントまたはネガティブイベントを残しつつ、アーチファクトに影響しやすい飽和領域中央に近づくにつれてポジティブイベントまたはネガティブイベントを削除する割合を上げることができる。これにより、Deblurアプリケーションの性能を適切に発揮させることができる。
【0078】
図15は、イベントデータ補正処理の第4の処理例を説明するフローチャートである。
【0079】
ステップS61乃至S63において、
図7のステップS31乃至S33と同様の処理が行われ、ステップS63において、イベントデータ補正部22が、イベントデータは飽和領域内に存在すると判定した場合、処理はステップS64に進む。
【0080】
ステップS64において、イベントデータ補正部22は、ステップS61で取得した飽和領域情報を参照して飽和領域における被写体の移動量を計算し、ステップS65において、イベントデータ補正部22は、その移動量をイベント削除率に変換する。
【0081】
例えば、
図16に示すように、イベントデータ補正部22は、階調信号の露光開始タイミングに対応するイベントデータと、階調信号の露光終了タイミングに対応するイベントデータとを取り出す。そして、イベントデータ補正部22は、それぞれに対して飽和領域内に存在するイベントの重心を計算し、階調信号の露光開始から露光終了までの重心の移動量を、被写体の移動量とする。このとき、
図16に示すように、被写体が低速で移動している場合には重心の移動量は小さく、被写体が高速で移動している場合には重心の移動量は大きくなる。そして、イベントデータ補正部22は、飽和領域にある各画素について、被写体の移動量が小さければイベント削除率が高くなり、被写体の移動量が大きければイベント削除率が低くなるように、被写体の移動量をイベント削除率に変換する。
【0082】
例えば、イベントデータ補正部22は、
図17に示すような移動量とイベント削除率との関係に従って、移動量をイベント削除率に変換することができる。例えば、移動量がパラメータd0未満である場合、移動量はイベント削除率1.0に変換され、距離がパラメータd0以上であって、かつ、パラメータd1未満である場合、移動量はイベント削除率0.0~1.0の間で線形変換され、距離がパラメータd1以上である場合、移動量はイベント削除率0.0に変換される。このように、パラメータd0およびd1によってイベント削除率を制御することができる。
【0083】
その後、ステップS66乃至S69において、
図9のステップS44乃至S47と同様の処理が行われ、イベントデータ補正処理は終了される。
【0084】
このように、イベントデータ補正処理の第4の処理例では、飽和領域における被写体の移動量に応じたイベント削除率に基づく削除補正が行われたDR差分補正後イベントデータが出力される。
【0085】
例えば、Deblurアプリケーションに用いる場合、被写体が高速に移動しているときと比較して、被写体が低速に移動しているときにはアーチファクトが出やすい傾向がある。従って、被写体が低速に移動しているときにはポジティブイベントまたはネガティブイベントを削除する割合を上げることでアーチファクトを抑制し、Deblurアプリケーションの性能を適切に発揮させることができる。
【0086】
<入出力応答の確認方法>
図18を参照して、入出力応答の確認方法について説明する。
【0087】
まず、内部にテクスチャを有する光源を用意し、その光源を等速に動かしながらハイブリッドEVSセンサ31による撮影を行って、階調信号およびイベントデータを取得する。このとき、例えば、光源の照度を変化させることによって、階調信号の輝度値を変化させながらハイブリッドEVSセンサ31による複数回の撮影を行う。なお、階調信号を取得するための画素の露光時間を変化させることによって、ハイブリッドEVSセンサ31により取得される階調信号の輝度値を変化させてもよい。また、ハイブリッドEVSセンサ31は、階調信号が飽和している状態でも撮影できるように構成されている。
【0088】
そして、このように光源を撮影して得られた階調信号およびイベントデータを入力としたときの光源部(ハイブリッドEVSセンサ31により光源が写された部分)のイベント数を出力として、DR差分補正処理が実施されていないときの出力と、DR差分補正処理が実施されているときの出力とでは、
図18に示すような差が確認できる。
【0089】
図18のAには、DR差分補正処理が実施されていないときにおける光源の照度と光源部のイベント数との関係が示されている。図示するように、DR差分補正処理が実施されていない場合には、階調信号が飽和するまで光源の照度を高くしても、光源部のイベント数が削減するような変化が生じていないことが確認される。
【0090】
図18のBには、DR差分補正処理が実施されているときにおける光源の照度と光源部のイベント数との関係が示されている。図示するように、DR差分補正処理が実施されている場合には、階調信号が飽和するまで光源の照度を高くすると、光源部のイベント数が削減するような変化が生じていることが確認される。
【0091】
このように、DR差分補正処理を実施しているか否かで、入出力応答が異なることを確認することができる。
【0092】
<コンピュータの構成例>
次に、上述した一連の処理(情報処理方法)は、ハードウェアにより行うこともできるし、ソフトウェアにより行うこともできる。一連の処理をソフトウェアによって行う場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、汎用のコンピュータ等にインストールされる。
【0093】
図19は、上述した一連の処理を実行するプログラムがインストールされるコンピュータの一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【0094】
コンピュータにおいて、CPU(Central Processing Unit)101,ROM(Read Only Memory)102,RAM(Random Access Memory)103、およびEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)104は、バス105により相互に接続されている。バス105には、さらに、入出力インタフェース106が接続されており、入出力インタフェース106が外部に接続される。
【0095】
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU101が、例えば、ROM102およびEEPROM104に記憶されているプログラムを、バス105を介してRAM103にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。また、コンピュータ(CPU101)が実行するプログラムは、ROM102に予め書き込んでおく他、入出力インタフェース106を介して外部からEEPROM104にインストールしたり、更新したりすることができる。
【0096】
ここで、本明細書において、コンピュータがプログラムに従って行う処理は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に行われる必要はない。すなわち、コンピュータがプログラムに従って行う処理は、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)も含む。
【0097】
また、プログラムは、1のコンピュータ(プロセッサ)により処理されるものであっても良いし、複数のコンピュータによって分散処理されるものであっても良い。さらに、プログラムは、遠方のコンピュータに転送されて実行されるものであっても良い。
【0098】
さらに、本明細書において、システムとは、複数の構成要素(装置、モジュール(部品)等)の集合を意味し、すべての構成要素が同一筐体中にあるか否かは問わない。したがって、別個の筐体に収納され、ネットワークを介して接続されている複数の装置、及び、1つの筐体の中に複数のモジュールが収納されている1つの装置は、いずれも、システムである。
【0099】
また、例えば、1つの装置(または処理部)として説明した構成を分割し、複数の装置(または処理部)として構成するようにしてもよい。逆に、以上において複数の装置(または処理部)として説明した構成をまとめて1つの装置(または処理部)として構成されるようにしてもよい。また、各装置(または各処理部)の構成に上述した以外の構成を付加するようにしてももちろんよい。さらに、システム全体としての構成や動作が実質的に同じであれば、ある装置(または処理部)の構成の一部を他の装置(または他の処理部)の構成に含めるようにしてもよい。
【0100】
また、例えば、本技術は、1つの機能を、ネットワークを介して複数の装置で分担、共同して処理するクラウドコンピューティングの構成をとることができる。
【0101】
また、例えば、上述したプログラムは、任意の装置において実行することができる。その場合、その装置が、必要な機能(機能ブロック等)を有し、必要な情報を得ることができるようにすればよい。
【0102】
また、例えば、上述のフローチャートで説明した各ステップは、1つの装置で実行する他、複数の装置で分担して実行することができる。さらに、1つのステップに複数の処理が含まれる場合には、その1つのステップに含まれる複数の処理は、1つの装置で実行する他、複数の装置で分担して実行することができる。換言するに、1つのステップに含まれる複数の処理を、複数のステップの処理として実行することもできる。逆に、複数のステップとして説明した処理を1つのステップとしてまとめて実行することもできる。
【0103】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、プログラムを記述するステップの処理が、本明細書で説明する順序に沿って時系列に実行されるようにしても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで個別に実行されるようにしても良い。つまり、矛盾が生じない限り、各ステップの処理が上述した順序と異なる順序で実行されるようにしてもよい。さらに、このプログラムを記述するステップの処理が、他のプログラムの処理と並列に実行されるようにしても良いし、他のプログラムの処理と組み合わせて実行されるようにしても良い。
【0104】
なお、本明細書において複数説明した本技術は、矛盾が生じない限り、それぞれ独立に単体で実施することができる。もちろん、任意の複数の本技術を併用して実施することもできる。例えば、いずれかの実施の形態において説明した本技術の一部または全部を、他の実施の形態において説明した本技術の一部または全部と組み合わせて実施することもできる。また、上述した任意の本技術の一部または全部を、上述していない他の技術と併用して実施することもできる。
【0105】
本開示に係る技術は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット、建設機械、農業機械(トラクター)などのいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0106】
図20は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システム7000の概略的な構成例を示すブロック図である。車両制御システム7000は、通信ネットワーク7010を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。
図20に示した例では、車両制御システム7000は、駆動系制御ユニット7100、ボディ系制御ユニット7200、バッテリ制御ユニット7300、車外情報検出ユニット7400、車内情報検出ユニット7500、及び統合制御ユニット7600を備える。これらの複数の制御ユニットを接続する通信ネットワーク7010は、例えば、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、LAN(Local Area Network)又はFlexRay(登録商標)等の任意の規格に準拠した車載通信ネットワークであってよい。
【0107】
各制御ユニットは、各種プログラムにしたがって演算処理を行うマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータにより実行されるプログラム又は各種演算に用いられるパラメータ等を記憶する記憶部と、各種制御対象の装置を駆動する駆動回路とを備える。各制御ユニットは、通信ネットワーク7010を介して他の制御ユニットとの間で通信を行うためのネットワークI/Fを備えるとともに、車内外の装置又はセンサ等との間で、有線通信又は無線通信により通信を行うための通信I/Fを備える。
図20では、統合制御ユニット7600の機能構成として、マイクロコンピュータ7610、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660、音声画像出力部7670、車載ネットワークI/F7680及び記憶部7690が図示されている。他の制御ユニットも同様に、マイクロコンピュータ、通信I/F及び記憶部等を備える。
【0108】
駆動系制御ユニット7100は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット7100は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。駆動系制御ユニット7100は、ABS(Antilock Brake System)又はESC(Electronic Stability Control)等の制御装置としての機能を有してもよい。
【0109】
駆動系制御ユニット7100には、車両状態検出部7110が接続される。車両状態検出部7110には、例えば、車体の軸回転運動の角速度を検出するジャイロセンサ、車両の加速度を検出する加速度センサ、あるいは、アクセルペダルの操作量、ブレーキペダルの操作量、ステアリングホイールの操舵角、エンジン回転数又は車輪の回転速度等を検出するためのセンサのうちの少なくとも一つが含まれる。駆動系制御ユニット7100は、車両状態検出部7110から入力される信号を用いて演算処理を行い、内燃機関、駆動用モータ、電動パワーステアリング装置又はブレーキ装置等を制御する。
【0110】
ボディ系制御ユニット7200は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット7200は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット7200には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット7200は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0111】
バッテリ制御ユニット7300は、各種プログラムにしたがって駆動用モータの電力供給源である二次電池7310を制御する。例えば、バッテリ制御ユニット7300には、二次電池7310を備えたバッテリ装置から、バッテリ温度、バッテリ出力電圧又はバッテリの残存容量等の情報が入力される。バッテリ制御ユニット7300は、これらの信号を用いて演算処理を行い、二次電池7310の温度調節制御又はバッテリ装置に備えられた冷却装置等の制御を行う。
【0112】
車外情報検出ユニット7400は、車両制御システム7000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット7400には、撮像部7410及び車外情報検出部7420のうちの少なくとも一方が接続される。撮像部7410には、ToF(Time Of Flight)カメラ、ステレオカメラ、単眼カメラ、赤外線カメラ及びその他のカメラのうちの少なくとも一つが含まれる。車外情報検出部7420には、例えば、現在の天候又は気象を検出するための環境センサ、あるいは、車両制御システム7000を搭載した車両の周囲の他の車両、障害物又は歩行者等を検出するための周囲情報検出センサのうちの少なくとも一つが含まれる。
【0113】
環境センサは、例えば、雨天を検出する雨滴センサ、霧を検出する霧センサ、日照度合いを検出する日照センサ、及び降雪を検出する雪センサのうちの少なくとも一つであってよい。周囲情報検出センサは、超音波センサ、レーダ装置及びLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)装置のうちの少なくとも一つであってよい。これらの撮像部7410及び車外情報検出部7420は、それぞれ独立したセンサないし装置として備えられてもよいし、複数のセンサないし装置が統合された装置として備えられてもよい。
【0114】
ここで、
図21は、撮像部7410及び車外情報検出部7420の設置位置の例を示す。撮像部7910,7912,7914,7916,7918は、例えば、車両7900のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部のうちの少なくとも一つの位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部7910及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として車両7900の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部7912,7914は、主として車両7900の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部7916は、主として車両7900の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0115】
なお、
図21には、それぞれの撮像部7910,7912,7914,7916の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲aは、フロントノーズに設けられた撮像部7910の撮像範囲を示し、撮像範囲b,cは、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部7912,7914の撮像範囲を示し、撮像範囲dは、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部7916の撮像範囲を示す。例えば、撮像部7910,7912,7914,7916で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両7900を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0116】
車両7900のフロント、リア、サイド、コーナ及び車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920,7922,7924,7926,7928,7930は、例えば超音波センサ又はレーダ装置であってよい。車両7900のフロントノーズ、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920,7926,7930は、例えばLIDAR装置であってよい。これらの車外情報検出部7920~7930は、主として先行車両、歩行者又は障害物等の検出に用いられる。
【0117】
図20に戻って説明を続ける。車外情報検出ユニット7400は、撮像部7410に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像データを受信する。また、車外情報検出ユニット7400は、接続されている車外情報検出部7420から検出情報を受信する。車外情報検出部7420が超音波センサ、レーダ装置又はLIDAR装置である場合には、車外情報検出ユニット7400は、超音波又は電磁波等を発信させるとともに、受信された反射波の情報を受信する。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、降雨、霧又は路面状況等を認識する環境認識処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、車外の物体までの距離を算出してもよい。
【0118】
また、車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等を認識する画像認識処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに対して歪補正又は位置合わせ等の処理を行うとともに、異なる撮像部7410により撮像された画像データを合成して、俯瞰画像又はパノラマ画像を生成してもよい。車外情報検出ユニット7400は、異なる撮像部7410により撮像された画像データを用いて、視点変換処理を行ってもよい。
【0119】
車内情報検出ユニット7500は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット7500には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部7510が接続される。運転者状態検出部7510は、運転者を撮像するカメラ、運転者の生体情報を検出する生体センサ又は車室内の音声を集音するマイク等を含んでもよい。生体センサは、例えば、座面又はステアリングホイール等に設けられ、座席に座った搭乗者又はステアリングホイールを握る運転者の生体情報を検出する。車内情報検出ユニット7500は、運転者状態検出部7510から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。車内情報検出ユニット7500は、集音された音声信号に対してノイズキャンセリング処理等の処理を行ってもよい。
【0120】
統合制御ユニット7600は、各種プログラムにしたがって車両制御システム7000内の動作全般を制御する。統合制御ユニット7600には、入力部7800が接続されている。入力部7800は、例えば、タッチパネル、ボタン、マイクロフォン、スイッチ又はレバー等、搭乗者によって入力操作され得る装置によって実現される。統合制御ユニット7600には、マイクロフォンにより入力される音声を音声認識することにより得たデータが入力されてもよい。入力部7800は、例えば、赤外線又はその他の電波を利用したリモートコントロール装置であってもよいし、車両制御システム7000の操作に対応した携帯電話又はPDA(Personal Digital Assistant)等の外部接続機器であってもよい。入力部7800は、例えばカメラであってもよく、その場合搭乗者はジェスチャにより情報を入力することができる。あるいは、搭乗者が装着したウェアラブル装置の動きを検出することで得られたデータが入力されてもよい。さらに、入力部7800は、例えば、上記の入力部7800を用いて搭乗者等により入力された情報に基づいて入力信号を生成し、統合制御ユニット7600に出力する入力制御回路などを含んでもよい。搭乗者等は、この入力部7800を操作することにより、車両制御システム7000に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりする。
【0121】
記憶部7690は、マイクロコンピュータにより実行される各種プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、及び各種パラメータ、演算結果又はセンサ値等を記憶するRAM(Random Access Memory)を含んでいてもよい。また、記憶部7690は、HDD(Hard Disc Drive)等の磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス又は光磁気記憶デバイス等によって実現してもよい。
【0122】
汎用通信I/F7620は、外部環境7750に存在する様々な機器との間の通信を仲介する汎用的な通信I/Fである。汎用通信I/F7620は、GSM(登録商標)(Global System of Mobile communications)、WiMAX(登録商標)、LTE(登録商標)(Long Term Evolution)若しくはLTE-A(LTE-Advanced)などのセルラー通信プロトコル、又は無線LAN(Wi-Fi(登録商標)ともいう)、Bluetooth(登録商標)などのその他の無線通信プロトコルを実装してよい。汎用通信I/F7620は、例えば、基地局又はアクセスポイントを介して、外部ネットワーク(例えば、インターネット、クラウドネットワーク又は事業者固有のネットワーク)上に存在する機器(例えば、アプリケーションサーバ又は制御サーバ)へ接続してもよい。また、汎用通信I/F7620は、例えばP2P(Peer To Peer)技術を用いて、車両の近傍に存在する端末(例えば、運転者、歩行者若しくは店舗の端末、又はMTC(Machine Type Communication)端末)と接続してもよい。
【0123】
専用通信I/F7630は、車両における使用を目的として策定された通信プロトコルをサポートする通信I/Fである。専用通信I/F7630は、例えば、下位レイヤのIEEE802.11pと上位レイヤのIEEE1609との組合せであるWAVE(Wireless Access in Vehicle Environment)、DSRC(Dedicated Short Range Communications)、又はセルラー通信プロトコルといった標準プロトコルを実装してよい。専用通信I/F7630は、典型的には、車車間(Vehicle to Vehicle)通信、路車間(Vehicle to Infrastructure)通信、車両と家との間(Vehicle to Home)の通信及び歩車間(Vehicle to Pedestrian)通信のうちの1つ以上を含む概念であるV2X通信を遂行する。
【0124】
測位部7640は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からのGNSS信号(例えば、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号)を受信して測位を実行し、車両の緯度、経度及び高度を含む位置情報を生成する。なお、測位部7640は、無線アクセスポイントとの信号の交換により現在位置を特定してもよく、又は測位機能を有する携帯電話、PHS若しくはスマートフォンといった端末から位置情報を取得してもよい。
【0125】
ビーコン受信部7650は、例えば、道路上に設置された無線局等から発信される電波あるいは電磁波を受信し、現在位置、渋滞、通行止め又は所要時間等の情報を取得する。なお、ビーコン受信部7650の機能は、上述した専用通信I/F7630に含まれてもよい。
【0126】
車内機器I/F7660は、マイクロコンピュータ7610と車内に存在する様々な車内機器7760との間の接続を仲介する通信インタフェースである。車内機器I/F7660は、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)又はWUSB(Wireless USB)といった無線通信プロトコルを用いて無線接続を確立してもよい。また、車内機器I/F7660は、図示しない接続端子(及び、必要であればケーブル)を介して、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface、又はMHL(Mobile High-definition Link)等の有線接続を確立してもよい。車内機器7760は、例えば、搭乗者が有するモバイル機器若しくはウェアラブル機器、又は車両に搬入され若しくは取り付けられる情報機器のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。また、車内機器7760は、任意の目的地までの経路探索を行うナビゲーション装置を含んでいてもよい。車内機器I/F7660は、これらの車内機器7760との間で、制御信号又はデータ信号を交換する。
【0127】
車載ネットワークI/F7680は、マイクロコンピュータ7610と通信ネットワーク7010との間の通信を仲介するインタフェースである。車載ネットワークI/F7680は、通信ネットワーク7010によりサポートされる所定のプロトコルに則して、信号等を送受信する。
【0128】
統合制御ユニット7600のマイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660及び車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、各種プログラムにしたがって、車両制御システム7000を制御する。例えば、マイクロコンピュータ7610は、取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット7100に対して制御指令を出力してもよい。例えば、マイクロコンピュータ7610は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行ってもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行ってもよい。
【0129】
マイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660及び車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、車両と周辺の構造物や人物等の物体との間の3次元距離情報を生成し、車両の現在位置の周辺情報を含むローカル地図情報を作成してもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される情報に基づき、車両の衝突、歩行者等の近接又は通行止めの道路への進入等の危険を予測し、警告用信号を生成してもよい。警告用信号は、例えば、警告音を発生させたり、警告ランプを点灯させたりするための信号であってよい。
【0130】
音声画像出力部7670は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。
図20の例では、出力装置として、オーディオスピーカ7710、表示部7720及びインストルメントパネル7730が例示されている。表示部7720は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。表示部7720は、AR(Augmented Reality)表示機能を有していてもよい。出力装置は、これらの装置以外の、ヘッドホン、搭乗者が装着する眼鏡型ディスプレイ等のウェアラブルデバイス、プロジェクタ又はランプ等の他の装置であってもよい。出力装置が表示装置の場合、表示装置は、マイクロコンピュータ7610が行った各種処理により得られた結果又は他の制御ユニットから受信された情報を、テキスト、イメージ、表、グラフ等、様々な形式で視覚的に表示する。また、出力装置が音声出力装置の場合、音声出力装置は、再生された音声データ又は音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して聴覚的に出力する。
【0131】
なお、
図20に示した例において、通信ネットワーク7010を介して接続された少なくとも二つの制御ユニットが一つの制御ユニットとして一体化されてもよい。あるいは、個々の制御ユニットが、複数の制御ユニットにより構成されてもよい。さらに、車両制御システム7000が、図示されていない別の制御ユニットを備えてもよい。また、上記の説明において、いずれかの制御ユニットが担う機能の一部又は全部を、他の制御ユニットに持たせてもよい。つまり、通信ネットワーク7010を介して情報の送受信がされるようになっていれば、所定の演算処理が、いずれかの制御ユニットで行われるようになってもよい。同様に、いずれかの制御ユニットに接続されているセンサ又は装置が、他の制御ユニットに接続されるとともに、複数の制御ユニットが、通信ネットワーク7010を介して相互に検出情報を送受信してもよい。
【0132】
なお、
図1を用いて説明した本実施形態に係るDR差分補正処理部11は、
図20に示した応用例の7410及び車外情報検出部7420に適用することができ、車外情報検出ユニット7400が、DR差分補正後イベントデータに基づいて、車両の外部の情報を検出することができる。
【0133】
<構成の組み合わせ例>
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)
階調信号が飽和状態である画素により占められる飽和領域を抽出する飽和領域抽出部と、
前記飽和領域内に存在するイベントデータに対する削除補正を行うイベントデータ補正部と
を備える情報処理装置。
(2)
前記飽和領域抽出部は、前記階調信号が示すR画素、G画素、およびB画素の輝度値のうち、いずれかの輝度値が閾値以上である場合に、前記階調信号が飽和状態であると判定する
上記(1)に記載の情報処理装置。
(3)
前記飽和領域抽出部は、前記階調信号が示すR画素、G画素、およびB画素の輝度値の全てが閾値以上である場合に、前記階調信号が飽和状態であると判定する
上記(1)に記載の情報処理装置。
(4)
前記イベントデータ補正部は、前記飽和領域内に存在する全ての前記イベントデータに対する削除補正を行う
上記(1)から(3)までのいずれかに記載の情報処理装置。
(5)
前記イベントデータ補正部は、前記飽和領域内に存在する前記イベントデータに対する確率的な削除補正を行う
上記(1)から(3)までのいずれかに記載の情報処理装置。
(6)
前記イベントデータ補正部は、前記飽和領域の境界からの距離に応じたイベント削除率に基づいて前記イベントデータに対する削除補正を行う
上記(1)から(3)までのいずれかに記載の情報処理装置。
(7)
前記イベントデータ補正部は、前記飽和領域における被写体の移動量に応じたイベント削除率に基づいて前記イベントデータに対する削除補正を行う
上記(1)から(3)までのいずれかに記載の情報処理装置。
(8)
前記イベントデータは、ポジティブイベント、ネガティブイベント、または、イベント無しを示すデータにより構成され、
前記イベントデータ補正部は、削除補正の対象とされた前記ポジティブイベントおよび前記ネガティブイベントを示すデータを、前記イベント無しを示すデータに置き換える
上記(1)から(7)までのいずれかに記載の情報処理装置。
(9)
前記イベントデータは、ポジティブイベント、ネガティブイベント、または、イベント無しを示すデータにより構成され、
前記イベントデータ補正部は、削除補正の対象とされた前記ポジティブイベントおよび前記ネガティブイベントを示すデータに対し、削除補正の対象であることを示す削除情報を付与する
上記(1)から(7)までのいずれかに記載の情報処理装置。
(10)
前記階調信号を取得するための画素と前記イベントデータを取得するための画素とが組み合わされてセンサ面に配置されたセンサから、前記階調信号および前記イベントデータが並列的に出力される
上記(1)から(9)までのいずれかに記載の情報処理装置。
(11)
前記階調信号を取得するための画素がセンサ面に配置された第1のセンサ、および、前記イベントデータを取得するための画素がセンサ面に配置された第2のセンサそれぞれから、前記階調信号および前記イベントデータが出力される
上記(1)から(9)までのいずれかに記載の情報処理装置。
(12)
前記階調信号を取得するための画素と前記イベントデータを取得するための画素とがスイッチングにより切り替えらえるセンサから、前記階調信号および前記イベントデータが時分割的に出力される
上記(1)から(9)までのいずれかに記載の情報処理装置。
(13)
前記階調信号および前記イベントデータを取得するセンサの内部に実装される
上記(1)から(12)までのいずれかに記載の情報処理装置。
(14)
前記階調信号および前記イベントデータを取得するセンサの後段に設けられる信号処理部に実装される
上記(1)から(12)までのいずれかに記載の情報処理装置。
(15)
情報処理装置が、
階調信号が飽和状態である画素により占められる飽和領域を抽出することと、
前記飽和領域内に存在するイベントデータに対する削除補正を行うことと
を含む情報処理方法。
(16)
情報処理装置のコンピュータに、
階調信号が飽和状態である画素により占められる飽和領域を抽出することと、
前記飽和領域内に存在するイベントデータに対する削除補正を行うことと
を含む情報処理を実行させるためのプログラム。
【0134】
なお、本実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、他の効果があってもよい。
【符号の説明】
【0135】
11 DR差分補正処理部, 21 飽和領域抽出部, 22 イベントデータ補正部, 31 ハイブリッドEVSセンサ, 32 イメージセンサ, 33 EVSセンサ, 34 スイッチング方式のハイブリッドEVSセンサ, 41 アプリケーションプロセッサ, 51 階調信号取得部, 52 イベントデータ取得部