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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016346
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】コネクタ構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20240131BHJP
   H01R 13/03 20060101ALI20240131BHJP
   H01R 12/71 20110101ALI20240131BHJP
【FI】
H01R13/52 301F
H01R13/03 D
H01R12/71
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118389
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】藤本 政男
(72)【発明者】
【氏名】石井 旭
【テーマコード(参考)】
5E087
5E223
【Fターム(参考)】
5E087EE17
5E087FF02
5E087FF03
5E087GG02
5E087JJ02
5E087JJ03
5E087LL03
5E087LL14
5E087MM02
5E087MM08
5E087QQ04
5E087RR02
5E087RR12
5E223AA21
5E223AC03
5E223BA01
5E223CA24
5E223CB15
5E223CB24
5E223CD01
5E223DB01
5E223EA32
(57)【要約】      (修正有)
【課題】接続端子の固定端部のシール性能の向上を図りつつ先端部の相手側コネクタとの良好な通電性を確保し得るコネクタ構造を提供する。
【解決手段】相手側コネクタと嵌合する第1~第3コネクタ嵌合部22~24の内部にモールド固定されて、一端部25a~27aがコネクタ嵌合部の開口部側に露出した第1~第3コネクタ端子25~27を有すると共に、コネクタ嵌合部の開口部から内部に充填され、各コネクタ端子の露出した固定側端部の外面に接着されるポッティング剤35と、を有し、第1コネクタ端子の先端部の外面に銀メッキ33を施すと共に、第1~第3コネクタ端子の固定側端部の外面に、ポッティング剤の水酸基と結合し易い材料の錫メッキ34を施した。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に接続されるコネクタ構造であって、
相手側コネクタと嵌合するコネクタ嵌合部の内部にモールド固定されて、一部が前記コネクタ嵌合部の開口部側に露出した接続端子と、
前記コネクタ嵌合部の開口部から内部に充填され、前記接続端子の露出した固定側端部の外面に接着される硬化性液状樹脂材と、を備え、
前記接続端子の硬化性液状樹脂材が接着されない先端部の外面に第1表面処理層が形成されていることを特徴とするコネクタ構造。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタ構造であって、
前記硬化性液状樹脂材は、水酸基を有する成分を含み、
前記固定側端部の外面に、前記硬化性液状樹脂材の水酸基と結合し易い材料の第2表面処理層が施されていることを特徴とするコネクタ構造。
【請求項3】
請求項1に記載のコネクタ構造であって、
前記固定側端部の表面に、前記硬化性液状樹脂材に含まれる非金属原子が有する不対電子と結合し易い第2表面処理層が施されていることを特徴とするコネクタ構造。
【請求項4】
請求項1に記載のコネクタ構造であって、
前記第1コネクタ嵌合部の少なくとも一側に設けられ、相手側コネクタと嵌合する第2コネクタ嵌合部と、
前記第2コネクタ嵌合部にモールド固定されて、一部が前記第2コネクタ嵌合部の前記開口部側に露出し、かつ前記接続端子よりも電気の電流または電圧が低い第2接続端子と、
前記第2コネクタ嵌合部の開口部から内部に充填されて、前記第2接続端子の露出した固定側端部の外面に接着される硬化性液状樹脂材と、
を有することを特徴とするコネクタ構造。
【請求項5】
請求項1に記載のコネクタ構造であって、
前記第1表面処理層は、金メッキあるいは銀メッキであることを特徴とするコネクタ構造。
【請求項6】
請求項2に記載のコネクタ構造であって、
前記第2表面処理層は、錫メッキあるいはニッケルメッキであることを特徴とするコネクタ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動パワーステアリング装置などの車両に搭載される電子制御装置のコネクタ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両には、搭載される機器類同士を接続するために、複数のコネクタが取り付けられている。従来のコネクタ構造としては、本願の出願人が先に出願した以下の特許文献1に記載されているものが知られている。
【0003】
この従来のコネクタ構造は、相手側コネクタと嵌合するコネクタ嵌合部を有し、このコネクタ嵌合部は、外壁を構成する合成樹脂製の角筒状のハウジングと、該ハウジングの内部にモールド固定された接続端子と、を有している。前記ハウジングは、軸方向の一端部に開口部を有すると共に、内部の角柱状の凹部が形成されている。前記接続端子は、相手側コネクタを介して機器類に接続されており、前記ハウジングの凹部の底部側に充填されたポッティング剤によって固定側端部が被覆されている。
前記ポッティング剤は、ハウジングの開口部から侵入した水などの液体が機器側に侵入するのを抑制するシール機能を発揮している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-160739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来のコネクタ構造は、コネクタ嵌合部のハウジング内にポッティング剤を充填して接続端子の固定側端部との間のシール性を確保するようになっているものの、前記接続端子の表面処理については何ら記載されておらず、特に、ポッティング剤が被膜された固定側端部やポッティング剤が被膜されていない先端部の表面処理については何ら考慮されていない。したがって、固定側端部とポッティング剤との接着力や相手側コネクタとの通電性を十分に確保できないおそれがある。
【0006】
本発明は、上記従来のコネクタ構造の技術的課題に鑑みて案出されたもので、接続端子の固定端部のシール性能の向上を図りつつ先端部の相手側コネクタとの良好な通電性を確保し得るコネクタ構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の好ましい態様としては、回路基板に接続されるコネクタ構造であって、相手側コネクタと嵌合するコネクタ嵌合部の内部にモールド固定されて、一部が前記コネクタ嵌合部の開口部側に露出した接続端子と、前記コネクタ嵌合部の開口部から内部に充填され、前記接続端子の露出した固定側端部の外面に接着される硬化性液状樹脂材と、を備え、
前記接続端子の硬化性液状樹脂材が接着されない先端部の外面に第1表面処理層が形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の好ましい態様によれば、接続端子の固定端部のシール性能の向上を図りつつ先端部の相手側コネクタとの良好な通電性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係るコネクタ構造が適用される電動パワーステアリング装置の概略構成図である。
図2】本発明の第1実施形態に供される電子制御ユニットの分解斜視図である。
図3】本実施形態に供される電子制御ユニットをモータユニットに取り付けた状態の要部縦断面図である。
図4】本実施形態に供されるコネクタハウジングの縦断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に供されるコネクタハウジングの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るコネクタ構造を、電動パワーステアリング装置の電子制御装置に適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は本発明に係るコネクタ構造が適用される電動パワーステアリング装置の概略構成図である。
【0012】
電動パワーステアリング装置は、ステアリングホイール1から操舵トルクが入力されるインプットシャフト2と、操舵トルクに対してアシストトルクを付与する電動モータを収容するモータユニット3と、を備え、モータユニット3は、電子制御ユニット4(ECU)によって駆動されている。また、電動パワーステアリング装置は、電動モータの回転トルクを増幅する減速機5と、減速機5の回転トルクを伝達し、ステアリングホイール1からの操舵トルクと舵角を伝達するピニオンギア6と、該ピニオンギア6の操舵トルクを直線運動に変換して、タイロッド7を介して前輪8に転舵力を伝達するラックギア9と、を備えている。
【0013】
ステアリングホイール1からの操舵力は、インプットシャフト2で受けてピニオンギア6との間に配置されたトーションバーの捩れをトルクセンサ10で検出して、操舵力と操舵タイミングを電子制御ユニット4で演算した電流値で電動モータを制御して必要なアシストトルクを発生するようになっている。トルクセンサ10と電子制御ユニット4との間はワイヤハーネスWHによって接続されている。
【0014】
図2は本発明の第1実施形態に供される電子制御ユニットの分解斜視図、図3は本実施形態に供される電子制御ユニットをモータユニットに取り付けた状態の要部縦断面図、図4は本実施形態に供されるコネクタハウジングの縦断面図である。
【0015】
モータユニット3は、三相交流型ブラシレスモータである電動モータと、電動モータを収容するモータケース3bと、電動モータにより回転駆動されるシャフト3aと、シャフト3aの基端部に取り付けられて後述するホール素子31でシャフト3aの回転を検出するセンサマグネットSと、電動モータの三相の各端子と接続された第1通電端子(三相モータ端子)3eと、を備えている。前記シャフト3aは、減速機5を介して操舵トルクに対してアシストトルクを付与している。モータケース3bの電子制御ユニット4側には、外径寸法の大きな円環状の外装部3dが設けられている。
【0016】
電子制御ユニット4は、図2及び図3に示すように、モータユニット3の電動モータのシャフト3aの基端部側に配置されている。
【0017】
電子制御ユニット4は、モータケース3bの円環状の外装部3dに固定されるハウジング11と、該ハウジング11に接合されるカバー12と、ハウジング11とカバー12との間に収容されて、電動モータを駆動する駆動回路基板13及び該駆動回路基板13の駆動を制御する制御回路基板14と、図外の電源バッテリーから駆動回路基板13と制御回路基板14及び電動モータに電力を供給するコネクタハウジング15と、を有している。
【0018】
ハウジング11は、例えば、アルミニウム合金材などで上部が開口したボックス状に形成され、底壁11aと、該底壁11aの縁部に立設された側壁11bと、を有している。底壁11aの上部には、コネクタハウジング15を取り付ける第1開口部11cが形成されており、この第1開口部11cの外周部には、孔部11dが設けられている。また、ハウジング11は、第1開口部11cの外周部の四隅にコネクタハウジング15を固定するための固定用のねじが螺着する4つの雌ねじ孔11eが形成されている。
【0019】
底壁11aのモータケース3b側の下部には、外装部3dの開口部に嵌入する円筒状のジョイント部11fが形成されていると共に、四隅には固定用の4つの雌ねじ孔11gが形成されており、この各雌ねじ孔11gに螺着する固定ねじによってモータケース3bが外装部3dを介して固定されている。底壁11aは、ジョイント部11fの内に中心位置にシャフト3aの基端部に取り付けられたセンサマグネットSを収容する円形の第2開口部16が貫通形成され、この第2開口部16の下方には、電動モータ側の第1通電端子(三相モータ端子)3eが挿通される3つの第3開口部17が形成されている。また、第2開口部16の左右の斜め上方には、両回路基板13,14を接続する複数の第2通電端子18の先端部が臨む長孔状の第4開口部19が貫通形成されている。
【0020】
さらに、底壁11aのカバー12側には、図3に示すように、制御回路基板14を固定する複数の円柱状の基板固定部20が設けられている。
【0021】
カバー12は、図2及び図3に示すように、アルミニウム合金材などでハウジング11の外形に沿った長方形状に形成され、ハウジング11の開口部を閉塞している。カバー12は、ハウジング11側の外周縁部にハウジング11の側壁11b下部に形成された嵌合溝に嵌合する嵌合突部12aが外形に沿って一体に形成されている。また、カバー12は、左右の縁部に駆動回路基板13を固定する複数のねじ部が螺着する雌ねじ孔12bが形成されている。
【0022】
前記コネクタハウジング15は、合成樹脂材によって一体に形成され、図2図4に示すように、ハウジング11の第1開口部11cの外周縁に取り付けられたほぼ長方形状のハウジング本体21と、該ハウジング本体21の長手方向のほぼ中央に配置された第1コネクタ嵌合部22と、該第1コネクタ嵌合部22の一側部に配置された第2コネクタ嵌合部23と、第1コネクタ嵌合部22の他側部に配置された第3コネクタ嵌合部24と、を備えている。
【0023】
ハウジング本体21は、第1~第3コネクタ嵌合部22~24を一体に結合していると共に、前記第1開口部11cの外周縁に被嵌して閉塞しつつ図外の複数の固定用ねじによって前記ハウジング11に固定されている。
【0024】
第1コネクタ嵌合部22は、コネクタ側の電源用の接続端子である一対の第1コネクタ端子25の長手方向のほぼ中央を合成樹脂材でモールド固定している。
【0025】
第2コネクタ嵌合部23は、各種信号用の接続端子である第2コネクタ端子26(トルク信号、イグニッションSWなど)の長手方向のほぼ中央部を合成樹脂材によってモールド固定している。
【0026】
第3コネクタ嵌合部24は、CAN信号(通信)用の第3コネクタ端子27の長手方向のほぼ中央部が合成樹脂材によってモールド固定している。
【0027】
第1~第3コネクタ嵌合部22~24は、それぞれがほぼ角筒状に形成されて、図外の相手側コネクタが嵌挿される内部の嵌挿部22a、23a、24aが角柱状に形成されていると共に、軸方向の一端部に嵌挿部22a~24aに臨む開口部をそれぞれ有している。なお、第1コネクタ嵌合部22は、その横断面積が第2、第3コネクタ嵌合部23,24よりも大きく形成されている。
【0028】
電源用の一対の第1コネクタ端子25と信号用の第2コネクタ端子26及び通信用の第3コネクタ端子27は、それぞれ母材が金属材である銅材によって形成されている。第1コネクタ端子25は、通電される電流及び電圧が第2、第3コネクタ端子26,27よりも高くなっている。第1コネクタ端子25は、帯状に形成されているのに対して第2、第3コネクタ端子26,27はピン状に形成されている。
【0029】
各コネクタ端子25,26,27は、図4に示すように、各一端部25a、26a、27aが各コネクタ嵌合部22、23、24の各嵌挿部22a、23a、24a内に配置されている。一方、各コネクタ端子25~27の各他端部25b、26b、27bは、ハウジング本体21内を通って駆動回路基板13方向に延びている。
【0030】
一対の第1コネクタ端子25は、各一端部25aが電源バッテリーと接続された相手コネクタの雌端子に電気的に接続されるようになっている。一方、各他端部25bは、ハウジング本体21の内部を通って駆動回路基板13の後述する第2通電端子28に電気的に接続されている。第2、第3コネクタ端子26,27は、一端部26a、27aが図外の相手コネクタの雌端子に電気的に接続されるようになっている一方、他端部26b、27bが駆動回路基板13を介して後述する制御回路基板14の信号、通信端子にそれぞれ接続されている。
【0031】
駆動回路基板13は、コネクタハウジング15から供給される電流を三相(U相、V相、W相)交流に変換して、制御回路基板14からの制御信号に応じて前記電動モータを駆動するパワーモジュールに関する。
【0032】
駆動回路基板13は、ベースとなる金属材料からなる板状に絶縁層を介して図外の配線パターンが形成され、第1コネクタ端子25の他端部25bと電気的に接続される第2通電端子28と、三相交流の相毎に上流側と下流側が直列に電気接続された図外の駆動トランジスタ(駆動素子、スイッチング素子)と、第1通電端子3eの一端部と電気接続される三相電動モータ用の第3通電端子29と、が実装されている。
【0033】
第2通電端子28は、第1コネクタ端子25の他端部25bと対向して配置され、一方、各第3通電端子29は、第1通電端子3eの一端部と対向して配置されている。第1コネクタ端子25と第1~第3通電端子3e、28、29が電気接続されている。
【0034】
制御回路基板14は、プリント基板(ガラスエポキシ基板)または、セラミック基板により形成され、各駆動トランジスタを制御するマイクコンピュータ(CPU)30と、前記電動モータの回転を検出するホール素子31と、を有している。
【0035】
CPU30とホール素子31は、制御回路基板14の回路パターンを通じて電気接続され、該回路パターンがCPU30とホール素子31の間の信号伝達経路となっている。つまり、ホール素子31は、ホール効果を利用してセンサマグネットSの磁界を検出し、シャフト3aの回転を検出する。この検出信号は、制御回路基板14の回路パターンを通じてCPU30に入力される。
【0036】
CPU30は、コネクタハウジング15の第2,第3コネクタ端子24,26を通じて外部から入力される情報、例えば操舵トルク、車速信号などやホール素子31の検出信号に基づいて駆動トランジスタを制御する。
【0037】
そして、前記第1コネクタ端子25は、前述したように、母材として銅材が用いられており、図3及び図4に示すように、嵌挿部22a内に露出した一端部25aは、嵌挿部22aの底面(ハウジング本体21の上面)から長手方向の所定長さまでの固定側端部と、該固定側端部から嵌挿部22aの開口部方向へ延びた先端部と、を有している。第1コネクタ端子25の先端部には、図3及び図4に示すように、外面全体に第1表面処理層である銀メッキ33(網掛け部)が施されている一方、前記固定側端部には、外面全体に第2表面処理層である錫メッキ34(網掛け部)が施されている。
【0038】
前記先端部の銀メッキ33は、相手側コネクタの雌端子との良好な通電性を確保するもので、銀メッキ33に代えて金メッキとすることも可能である。また、先端部の銀メッキ33は、相手側コネクタの雌端子との接触部位のみに施されている。つまり、先端部と相手側コネクタの雌端子の金属同士が接触する部位では、湿度や温度等の環境条件で酸化することによって電気の抵抗値が増大して経時的に電圧の変化が発生するおそれがある。そこで、先端部の外面に銀メッキ処理を施すことによって酸化を抑制して電気抵抗値の増大を抑えて良好な通電性を確保するようになっている。
【0039】
前記固定側端部の錫メッキ34は、表面の酸化物が後述するポッティング剤35の水酸基と相性が良く結合し易いのでポッティング剤35との接着性が向上する。つまり、錫メッキ34は、ポッティング剤35に含まれる非金属原子が有する不対電子と結合し易いことから、ポッティング剤35との相性が良く、錫メッキ34の表面と結合し易いことから、両者間の接着力が向上する。
【0040】
錫メッキ34は、前記銀メッキ33や母材である銅材よりもポッティング剤35と結合し易い。したがって、ポッティング剤35との接着性は、銀メッキ33や銅材と比較して錫メッキ34が最も大きくなる。
【0041】
また、固定側端部の錫メッキ34は、図4中、上下方向の長さがポッティング剤35の嵌挿部22a内での充填高さと同じ長さになっており、前記銀メッキ33とは重なり合わず一定の間隔をもった位置に施されている。
【0042】
さらに、第2、第3コネクタ嵌合部23、24の各嵌挿部23a、24a内に第2、第3コネクタ端子26、27の各一端部26a、27aが露出しているが、これら第2、第3コネクタ端子26,27の各一端部26a、27aの各先端部には、銀メッキが施されておらず、各固定側端部の外面の所定範囲に錫メッキ34(網掛け部)が施されている。
【0043】
前記各コネクタ嵌合部22~24の各嵌挿部22a、23a、24aの内部には硬化性液状樹脂材であるポッティング剤35がそれぞれ充填されている。
【0044】
このポッティング剤35は、ヒドロキシ基と称される水酸基を有する成分を含んでおり、図4に示すように、前記各嵌挿部22a、23a、24a内の各底面から第1~第3コネクタ端子25,26,27の各固定側端部の長手方向の所定長さまで充填されている。つまり、前記各固定側端部の外面には、前述したように、錫メッキ34が施されていることから、各ポッティング剤35は少なくとも錫メッキ34が施された領域まで充填されている。
〔本実施形態のコネクタ構造の作用効果〕
本実施形態に係るコネクタ構造によれば、第1コネクタ端子25の先端部にのみ銀メッキ33の表面処理が施されていることから、相手側コネクタの雌端子との良好かつ安定した通電性を確保できる。
【0045】
すなわち、前述したように、第1コネクタ端子25の先端部の外面全体に銀メッキ33の表面処理が施されることによって酸化を抑制して電気抵抗値の増大を抑えることができるので、相手側コネクタの雌端子との間で安定かつ良好な通電性を確保できる。
【0046】
また、第1~第3コネクタ端子25,26,27の各固定側端部には、銀メッキなどの表面処理が施されておらず、母材である銅材の表面に錫メッキ34がそれぞれ施されており、この錫メッキの領域にポッティング剤35が充填されて、該ポッティング剤35によって被膜されている。これによって、錫メッキ34とポッティング剤35との化学反応によって両者間の結合強度が大きくなる。
【0047】
つまり、各固定側端部の外面に施された錫メッキ34と水酸基を有するポッティング剤35との化学反応によって両者の結合強度が高くなる。この結果、ポッティング剤35によって、各固定側端部の外面と各固定側端部のモールド箇所との間のシール性能が向上する。
【0048】
また、比較的電流あるいは電圧の低いセンサや通信用信号では電圧低下の影響が小さいため、第2、第3コネクタ端子26,27の各先端部には高価な銀メッキ33を施さないことによって、コストの低減化を図ることができる。
〔本発明の第2実施形態〕
図5は本発明の第2実施形態を示し、コネクタハウジング15のハウジング本体21を挟んだ第1~第3コネクタ嵌合部22~24と反対側の位置に第1~第3筒状部40、41,42がそれぞれ設けられている。この各筒状部40~42は、外形が前記各コネクタ嵌合部22~24とほぼ同じに形成されて、ハウジング本体21の下面から図中下方への突出量は各コネクタ嵌合部22~24の突出量よりも十分に短く、かつほぼ均一に設定されている。
【0049】
第1~第3コネクタ端子25,26,27は、他端部25b、26b、27bが折り曲げられることなく、各一端部25a、26a、27aから直線状に延びて、各筒状部40~42の内部を通過して下方へ延出している。
【0050】
第1コネクタ端子25の一端部25aの先端部には、外面に第1実施形態と同じく銀メッキ33の表面処理(網掛け部)が施されているが、固定側端部の外面には、錫メッキが施されていない。なお、第2、第3コネクタ端子26,27の一端部26a、27aの各先端部には、銀メッキが施されていないことは、第1実施形態と同じである。
【0051】
第1~第3コネクタ端子25,26,27は、他端部25b、26b、27bのハウジング本体21側の固定側端部には、各外面に錫メッキ34の表面処理(網掛け部)が施されている。
【0052】
そして、前記各筒状部40~42は、内部にポッティング剤35が充填されている。このポッティング剤35は、各筒状部40~42のハウジング本体21の底面側、つまり錫メッキ処理が施された固定側端部43~45の外面全体を被覆するように充填されている。
【0053】
したがって、この第2実施形態も、第1実施形態と同じく第1コネクタ端子25の先端部に銀メッキ33の表面処理が施されていることから、相手側コネクタの雌端子との良好かつ安定した通電性を確保できる。
【0054】
また、各筒状部40~42の内部にポッティング剤35が充填されて、該ポッティング剤35と各固定側端部の外面の錫メッキ34との化学反応によって両者間の結合強度が大きくなる。この結果、ポッティング剤35によって、各固定側端部の外面とモールド箇所との間のシール性能が向上する。
【0055】
本発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、水酸基を含んだポッティング剤35との相性の良好な表面処理層としては、錫メッキの他に例えば下地処理として行われるニッケルメッキ処理などを施すことも可能である。
【0056】
また、各コネクタ端子25,26,27の母材である銅材も前記ポッティング剤35と相性が良いので露出した銅材の外面にそのままポッティング剤35を充填することも可能である。
【0057】
なお、各固定側端部の各表面全体に、予めプライマリー処理やショットピーニングなどによって表面粗度を高くしてポッティング剤35との結合強度を高くすることも可能である。
【0058】
前記コネクタ構造の適用対象としては、前記本実施形態における電動パワーステアリング装置以外の電子制御装置や機器類に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0059】
4…電子制御ユニット、11…ハウジング、12…カバー、13…駆動回路基板、14…制御回路基板、15…コネクタハウジング、21…ハウジング本体、22・23・24…第1~第3コネクタ嵌合部、25・26・27…第1~第3コネクタ端子(接続端子)、25a・26a・27a…一端部、25b・26b・27b…他端部、33…銀メッキ(第1表面処理層)、34…錫メッキ(第2表面処理層)、35…ポッティング剤(硬化性液状樹脂材)、40・41・42…筒状部。
図1
図2
図3
図4
図5