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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163467
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】光デバイス及び光受信器
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/12 20060101AFI20241115BHJP
   G02B 6/122 20060101ALI20241115BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
G02B6/12 351
G02B6/122 311
G02B6/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079086
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡 徹
【テーマコード(参考)】
2H137
2H147
【Fターム(参考)】
2H137AB05
2H137AB06
2H137BA52
2H137BA53
2H137BB12
2H137DA39
2H137HA10
2H147AB29
2H147BA05
2H147BB02
2H147EA12A
2H147EA13A
2H147EA14B
2H147EA25B
2H147GA22
(57)【要約】
【課題】広い波長帯域で安定した光減衰量を確保できる光デバイス等を提供する。
【解決手段】光デバイスは、基板上に形成されたクラッドとコアからなる光導波路を有する。前記光導波路は、入力導波路と、前記入力導波路と接続する減衰部と、前記減衰部と接続する除去部と、前記除去部と接続する出力導波路と、を有する。前記減衰部は、前記入力導波路との接続部に比較して、前記除去部との接続部における光の進行方向に垂直な断面を導波する導波モードの数が多くなる構成にする。前記除去部は、前記減衰部との接続部に比較して、前記出力導波路との接続部における光の進行方向に垂直な断面を導波する導波モードの数が少なくなる構成にする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されたクラッドとコアからなる光導波路を有し、
前記光導波路は、
入力導波路と、
前記入力導波路と接続する減衰部と、
前記減衰部と接続する除去部と、
前記除去部と接続する出力導波路と、を有し、
前記減衰部は、
前記入力導波路との接続部に比較して、前記除去部との接続部における光の進行方向に垂直な断面を導波する導波モードの数が多くなる構成にし、
前記除去部は、
前記減衰部との接続部に比較して、前記出力導波路との接続部における光の進行方向に垂直な断面を導波する導波モードの数が少なくなる構成にする
ことを特徴とする光デバイス。
【請求項2】
前記減衰部は、
前記入力導波路から前記除去部に向けてコア幅が広がる第1のテーパ導波路を有し、
前記除去部は、
前記減衰部から前記出力導波路に向けてコア幅が狭くなる第2のテーパ導波路を有することを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
前記除去部は、
前記第1のテーパ導波路と接続する直線導波路と、
前記直線導波路と接続する前記第2のテーパ導波路と、
を有することを特徴とする請求項2に記載の光デバイス。
【請求項4】
前記コアは、
シリコンを含む材料で構成し、
前記クラッドは、
SiOを含む材料で構成することを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項5】
前記出力導波路と接続する受光素子をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項6】
前記光導波路は、
前記入力導波路、前記減衰部、前記除去部及び前記出力導波路のコアの厚みが同一の導波路で構成することを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項7】
前記光導波路は、
リブ型導波路で構成することを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項8】
光を発生させる光源と、
前記光源からの光を用いて受信光を復調する光復調器と、
前記光復調器にて復調された受信光を減衰する光減衰器と、
前記光減衰器にて減衰された前記受信光を電気変換する受光素子と、
を有する光受信器であって、
前記光減衰器は、
基板上に形成されたクラッドとコアからなる光導波路を有し、
前記光導波路は、
入力導波路と、
前記入力導波路と接続する減衰部と、
前記減衰部と接続する除去部と、
前記除去部と接続する出力導波路と、を有し、
前記減衰部は、
前記入力導波路との接続部に比較して、前記除去部との接続部における光の進行方向に垂直な断面を導波する導波モードの数が多くなる構成にし、
前記除去部は、
前記減衰部との接続部に比較して、前記出力導波路との接続部における光の進行方向に垂直な断面を導波する導波モードの数が少なくなる構成にする
ことを特徴とする光受信器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイス及び光受信器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コヒーレント光通信技術を用いることで、光ファイバ通信網における高速大容量の通信を可能にしている。コヒーレント光通信技術の光受信器では、長距離の伝送で光パワーが低下した受信光と、光受信器内部で発生させる局発光とをミキシングさせた後、ミキシング後の受信光をPD(Photo Detector)で光電流に変換する。その結果、光受信器では、PD以降で発生する熱雑音の影響を低減することで高感度の受信を可能にしている。
【0003】
しかしながら、光受信器では、局発光の光パワーが大きくなるに連れて受信感度が上昇するものの、PDに大きな光パワーが入力されると、空間電荷効果(space-charge effect)によって、PDの応答速度が制限されてしまうため、高速通信が困難となる。
【0004】
空間電荷効果では、PD内に入力された光が電子・ホール対を生成した際に、これらのキャリヤによってPD内で発生させる電界が、PDへの印加バイアスを打ち消す方向に働くことで印加バイアスが小さくなり、PD内のキャリヤをPD外に運ぶ力が弱まる。その結果、PDの応答速度が低下してしまう。
【0005】
また、空間電荷効果では、PD内で生成される電子・ホール対の数が多い場合、言い換えると、入力パワーが大きい場合に顕著となる。従って、空間電荷効果は、入力パワーを小さくすることで緩和できる。
【0006】
そこで、空間電荷効果を緩和すべく、入力パワーを低減する方法として、例えば、光減衰器を用いる方法が知られている。光減衰器は、入力された光のパワーを一部減衰させることで、入力パワーに比較して出力パワーを小さくできる。
【0007】
また、コヒーレント光通信技術では、例えば、波長多重通信を行うため、光減衰器は、導波する信号光が広い波長範囲にわたって光減衰量を安定することが望ましい。
【0008】
また、コヒーレント光通信に使用する光トランシーバ内で使用する光減衰器は小型であることが好ましい。そこで、小型化を実現する光減衰器は、例えば、SOI(Silicon-On-Insulator)ウエハの基板と、基板上のSiOのBOX(Buried Oxide)層で形成される下部クラッドと、を有する。更に、光減衰器は、SOIウエハのSiをエッチングして形成された任意の形状のコアで形成する光導波路と、光導波路上にSiOを積層することで形成された上部クラッドと、を有する。このような光導波路を形成する際には、シリコンフォトニクス技術が採用されている。
【0009】
従って、小型の光トランシーバでは、例えば、光耐性のあるPDを実現する上で、基板型光導波路による光減衰器の作り込みが必要となる。そこで、このような光減衰器としては、例えば、方向性結合器(DC:Directional Coupler)が知られている(例えば、非特許文献2)。
【0010】
図12は、従来の方向性結合器100の一例を示す平面模式図、図13は、図12に示すA-A線の略断面模式図である。図12に示す方向性結合器100は、並列に配置された2本の導波路を使用して、第1の導波路101と、第1の導波路101と並列に配置された第2の導波路102とを有する。図13に示す方向性結合器100は、図示せぬSOI基板と、SOI基板上に積層されたBOX層の下部クラッド103Aと、下部クラッド103A上に形成されたSiの第1の導波路101及び第2の導波路102と、を有する。更に、方向性結合器100は、下部クラッド103A、第1の導波路101及び第2の導波路102上に積層された上部クラッド103Bを有する。
【0011】
方向性結合器100は、第1の導波路101に入力した光が進行方向に沿って隣り合う第2の導波路102に光パワーが徐々に遷移する。つまり、方向性結合器100は、所望の光パワーの遷移後に第1の導波路101と第2の導波路102との並列区間を終了するように設計することで、所望の光パワーを減衰することができる。
【0012】
方向性結合器100では、第1の導波路101と第2の導波路102との並列区間が長くなるに連れて第1の導波路101と第2の導波路102との間の光パワーの遷移が大きく、遷移した後は逆に光パワーが戻ってくる。従って、所望の光減衰量が得られるように並列区間の長さを調整する必要がある。
【0013】
しかしながら、方向性結合器100では、所定波長の光で所望の光減衰量が得られるように設計したとしても、導波路を導波する光の波長が異なる場合には光減衰量が変化してしまう。
【0014】
また、方向性結合器100では、コアから染み出すエバネッセント波が隣接する導波路に結合して光遷移を生じさせることになるが、信号光の波長が長くなるに連れてエバネッセント波の浸み出しが大きくなり、隣接する導波路への光結合が強くなる。すなわち、信号光の波長が長くなるに連れて減衰量が増加する。また、隣接する導波路への光結合が強くなると、光パワーが所望のパワーだけ遷移するのに必要な並列区間の長さを短くできる。
【0015】
図14は、方向性結合器100を導波する光の波長と光減衰量の計算結果との対応関係の一例を示す説明図である。計算結果の光減衰量は、方向性結合器100に入力した光パワーに対する、方向性結合器100から出力される光パワーの損失である。尚、光減衰量の計算に使用する方向性結合器100は、導波する信号光の波長が1.55umの場合に2.0dBの目標減衰量が得られるように設計したものとする。そして、方向性結合器100の第1の導波路101のコア幅を0.5um、コア厚を0.22um、第2の導波路102のコア幅を0.5um、コア厚を0.22um、第1の導波路101と第2の導波路102との間の間隔を0.2umとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2012-199373号公報
【特許文献2】特開2010-151973号公報
【特許文献3】特開2014-39021号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2014/0023314号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2013/0051727号明細書
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】A. Beling, X. Xie and J. C. Campbell, "High-power high-linearity photodiodes", Optica, vol. 3, no. 3, pp. 328-338, 2016.
【非特許文献2】H. Yamada, T. Chu, S. Ishida, and Y. Arakawa, “Optical directional coupler based on Si-wire waveguides,” IEEE Photon. Technol. Lett., vol. 17, no. 3, pp. 585-587, Mar. 2005.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかし、方向性結合器100は、図14に示すように、導波する信号光の波長が変わると、光減衰量が大幅に変化することになるため、波長依存性が大きいことが分かる。つまり、波長依存性が大きい場合、波長多重通信で使用する信号光の波長毎に所望の光減衰量が得られず、過剰な損失や、減衰不足が発生する。従って、波長依存性の小さい光減衰器が求められているのが実情である。
【0019】
一つの側面では、広い波長帯域で安定した光減衰量を確保できる光デバイス等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
一つの態様の光デバイスは、基板上に形成されたクラッドとコアからなる光導波路を有する。前記光導波路は、入力導波路と、前記入力導波路と接続する減衰部と、前記減衰部と接続する除去部と、前記除去部と接続する出力導波路と、を有する。前記減衰部は、前記入力導波路との接続部に比較して、前記除去部との接続部における光の進行方向に垂直な断面を導波する導波モードの数が多くなる構成にする。前記除去部は、前記減衰部との接続部に比較して、前記出力導波路との接続部における光の進行方向に垂直な断面を導波する導波モードの数が少なくなる構成にする。
【発明の効果】
【0021】
一つの側面によれば、広い波長帯域で安定した光減衰量を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本実施例の光受信器の一例を示すブロック図である。
図2図2は、実施例1の光減衰器の一例を示すブロック図である。
図3図3は、光減衰器内の減衰部に使用するテーパ導波路及び、モデル化のテーパ導波路のコアの一例を示す断面模式図である。
図4図4は、実施例2の光減衰器の一例を示す平面模式図である。
図5図5は、光減衰器の一例を示す略断面模式図である。
図6図6は、減衰部の減衰量の計算結果と第2の接続部のコア幅との対応関係の一例を示す説明図である。
図7図7は、減衰部の減衰量と、減衰部を導波する光の波長との対応関係の一例を示す説明図である。
図8図8は、減衰部の第2の接続部で生じるTE0以外の高次モードであるTE2への変換効率と、減衰部の第2の接続部のコア幅との対応関係の一例を示す説明図である。
図9図9は、光減衰器のコア幅と、コアを導波する光の各導波モードの実効屈折率の計算結果との対応関係の一例を示す説明図である。
図10図10は、第2の接続部のコア幅と、反射損失の計算結果との対応関係の一例を示す説明図である。
図11図11は、対称型のテーパ導波路及び非対称型のテーパ導波路の一例を示す説明図である。
図12図12は、従来の方向性結合器の一例を示す平面模式図である。
図13図13は、図12に示すA-A線の略断面模式図である。
図14図14は、方向性結合器を導波する光の波長と光減衰量の計算結果との対応関係の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて、本願の開示する光デバイス等の実施例を詳細に説明する。尚、本実施例により、開示技術が限定されるものではない。また、以下に示す各実施例は、矛盾を起こさない範囲で適宜組み合わせても良い。
【実施例0024】
図1は、本実施例の光受信器1の一例を示すブロック図である。図1に示す光受信器1は、光源2と、光ハイブリッド回路3と、光減衰器4と、PD(Photo Detector)5と、DSP(Digital Signal Processor)6とを有する。光源2は、局発光を発光する、例えば、LD(Laser Diode)である。光ハイブリッド回路3は、光ファイバから受光する受信光に光源2からの局発光を干渉させて各偏波の受信光を得る光復調器である。光減衰器4は、光ハイブリッド回路3からの受信光の光パワーを光減衰する。PD5は、光減衰後の受信光を受信信号に電気変換する。DSP6は、電気変換後の受信信号に対して信号処理を実行する。
【0025】
図2は、光減衰器4の一例を示すブロック図である。図2に示す光減衰器4は、減衰部4Aと、除去部4Bとを有する光デバイスである。減衰部4Aは、光の進行方向に垂直な断面を導波する信号光の導波モードの数が多くなるテーパ導波路である。除去部4Bは、減衰部4Aと接続し、減衰部4Aからの信号光の進行方向に垂直な断面を導波する信号光の導波モードの数を少なくなるテーパ導波路である。
【0026】
減衰部4Aは、入力部4A1と、出力部4A2と、入力部4A1と出力部4A2との間のテーパ導波路4A3とを有し、テーパ導波路4A3のコア幅が光の進行方向に沿って連続的に変化するテーパ導波路構造である。入力部4A1は、光ハイブリッド回路3と接続する。出力部4A2は、除去部4Bと接続する。尚、テーパ導波路構造は、コア幅が変化しない部分を含んでも良く、適宜変更可能である。減衰部4Aの出力部4A2での光の進行方向に垂直な断面を導波する導波モードの数は、入力部4A1での光の進行方向に垂直な断面を導波する導波モードの数に比較して多くなる。
【0027】
除去部4Bは、入力部4B1と、出力部4B2と、入力部4B1と出力部4B2との間の導波路4B3とを有し、光の進行方向に沿って連続的にコア幅が変化するテーパ導波路構造である。尚、テーパ導波路構造は、コア幅が変化しない部分を含んでも良く、適宜変更可能である。入力部4B1は、減衰部4Aと接続する。出力部4B2は、PD5と接続する。除去部4Bの出力部4B2での光の進行方向に垂直な断面を導波する導波モードの数は、入力部4B1での光の進行方向に垂直な断面を導波する断面における導波モードの数に比較して少なくなる。
【0028】
テーパ導波路構造では、ある断面を導波する導波モードの数がコアのサイズが大きくなるに連れて増える。つまり、減衰部4Aでは、入力部4A1の断面での信号光の導波モード数に比較して出力部4A2の断面での信号光の導波モード数を増やすべく、入力部4A1のコアサイズに比較して出力部4A2のコアサイズが大きくするテーパ構造となっている。
【0029】
また、テーパ導波路構造では、出力部4A2のコアサイズが大きくなるに連れて、入力したモードと異なるモードに光パワーが遷移する割合が増える。この割合が増加した場合、入力するモードは、光パワーが遷移する割合に応じて減衰する。つまり、減衰部4Aでは、入力部4A1に比較して出力部4A2での導波モード数が増えることから、他のモードへの遷移を効率的に行うことができる。
【0030】
更に、テーパ導波路での異なるモードへの光パワーの遷移は波長依存性が少ない。図3は、減衰部4Aに使用するテーパ導波路4A3と、モデル化のテーパ導波路4A4とのコアの一例を示す断面模式図である。テーパ導波路4A3は、図3に示すように階段状にコア幅の不連続な導波路を接続することで階段状のテーパ導波路4A4にモデル化できる。
【0031】
尚、図3に示す階段状のテーパ導波路4A4内の各段の長さを十分に小さくした場合、各段の断面を導波するモードの電界が、次の段の断面を導波するモードの電界と重なり積分することで、不連続な各段の導波路を遷移する効率を計算できる。つまり、全体の効率は、各段の断面の積分値を基にして得られる。
【0032】
この際、テーパ導波路内を導波する信号光の波長が大きくなった場合を考える。各段の断面を導波するモードの電界分布は、導波する信号光の波長が大きい場合、クラッドに染み出すように広がるが、各段の断面で同様に変化するため、不連続の各段の断面間の重なり積分の値は大きな変化は生じない。尚、導波する信号光の波長が短くなる場合でも、同様に不連続断面間の重なり積分の値は大きな変化が生じない。従って、テーパ導波路構造を採用した減衰部4Aでは、広い波長帯域で安定した光減衰量を確保できる。
【0033】
尚、減衰部4Aでは、減衰した光パワーが異なるモードに遷移することになる。しかしながら、光パワーが異なるモードに遷移したまま、導波して他のデバイスに入力されると、減衰部4Aに入力されたモードと同じモードに変換してしまうことも考えられる。その結果、元のモードと干渉すると、波長によって光パワーが変動するので不安定となってしまう。
【0034】
そこで、除去部4Bでは、減衰部4Aで生じた異なる不要のモードを除去することで、元のモードへの干渉の影響を低減している。また、除去部4Bでは、入力部4B1の断面の導波モード数に比較して出力部4B2の断面の導波モード数を少なくできる。つまり、除去部4Bでは、入力部4B1に比較して出力部4B2のコアのサイズを小さくすることで、減衰で遷移した不要モードのコアへの光閉じ込めを弱くして不要モードを除去する。
【0035】
このように光減衰器4では、減衰部4Aと除去部4Bとを有するため、広い波長帯域で安定した光減衰量を確保できる。
【実施例0036】
図4は、実施例2の光減衰器4の一例を示す平面模式図である。尚、説明の便宜上、図4に示す光減衰器4は、リブ型の光導波路51で構成するが、コア51Aのみを図示し、スラブ51Bの図示を省略する。光減衰器4は、基板上に形成されたクラッド52及びコア51Aからなるリブ型の光導波路51を有する。リブ型の光導波路51は、入力導波路11と、入力導波路11と接続される減衰部20(4A)と、減衰部20と接続する除去部30(4B)と、除去部30と接続する出力導波路12とを有する。
【0037】
入力導波路11は、光ハイブリッド回路3と接続する導波路である。減衰部20は、入力導波路11と接続すると共に、除去部30と接続するテーパ導波路である。除去部30は、減衰部20と接続すると共に、出力導波路12と接続するテーパ導波路である。出力導波路12は、PD5と接続する導波路である。
【0038】
入力導波路11、減衰部20、除去部30及び出力導波路12は、同一厚みのリブ型の光導波路51で形成する。図5は、光減衰器4の一例を示す断面模式図である。図5に示す光減衰器4は、図示せぬ基板と、基板上に積層されたSiOのBOX層の下部クラッド52Aと、下部クラッド52A上に積層されたリブ型の光導波路51と、リブ型の光導波路51上に積層された上部クラッド52Bとを有する。リブ型の光導波路51は、コア51Aと、コア51Aの両側に形成されたスラブ51Bとを有する。尚、説明の便宜上、コア51Aの幅はw、コア51Aの厚みは0.22um、スラブ51Bの厚みは0.09umとする。
【0039】
入力導波路11は、例えば、コア幅がW1の直線導波路である。減衰部20は、入力導波路11と接続する第1の接続部21Aと、除去部30と接続する第2の接続部21Bと、第1の接続部21Aと第2の接続部21Bとの間を接続する第1のテーパ導波路21Cとを有する。第1のテーパ導波路21Cは、第1の接続部21Aのコア幅をW1、第2の接続部21Bのコア幅をW2とし、第1の接続部21Aから第2の接続部21Bに向けて徐々にコア幅が大きくなるテーパ構造を有する。減衰部20の第1のテーパ導波路21Cの長さはL1とする。減衰部20は、入力導波路11と接続する第1の接続部21Aに比較して、除去部30と接続する第2の接続部21Bでの光の進行方向に垂直な断面を導波する導波モードの数が多くなる。
【0040】
除去部30は、減衰部20と接続する直線導波路31と、出力導波路12と接続するテーパ導波路32とを有する。直線導波路31は、減衰部20の第2の接続部21Bと接続する第3の接続部31Aと、テーパ導波路32と接続する第4の接続部31Bと、第3の接続部31Aと第4の接続部31Bとを接続する導波路31Cと、を有し、導波路31Cのコア幅をW2とする。直線導波路31の長さはL2とする。
【0041】
テーパ導波路32は、直線導波路31の第4の接続部31Bと接続する第5の接続部32Aと、出力導波路12と接続する第6の接続部32Bと、第5の接続部32Aと第6の接続部32Bとを接続する第2のテーパ導波路32Cとを有する。第2のテーパ導波路32Cは、第5の接続部32Aのコア幅をW2、第6の接続部32Bのコア幅をW3とし、第5の接続部32Aから第6の接続部32Bに向けて徐々にコア幅が狭くなるテーパ構造である。テーパ導波路32の長さはL3とする。そして、除去部30の長さは、L2+L3である。除去部30は、減衰部20と接続する第3の接続部31Aに比較して、出力導波路12と接続する第6の接続部32Bでの光の進行方向に垂直な断面を導波する導波モードの数が少なくなる。
【0042】
光減衰器4では、入力導波路11からTE0を入力した場合を想定する。尚、TE0は、基板に水平方向の電界が主成分の導波モード(TEモード)の内、実効屈折率が最大のものとする。減衰部20のテーパ角θと減衰部20の長さL1との関係は、L1=(W1-W2)/(2tanθ)の関係である。
【0043】
次に減衰部20の効果について説明する。図6は、減衰部20の減衰量の計算結果と第2の接続部21Bのコア幅W2との対応関係の一例を示す説明図である。尚、説明の便宜上、第1の接続部21Aのコア幅W1=1.2um、減衰部20の長さL1=7um、テーパ角θ=70度、減衰部20を導波する光の波長は1.55umとする。そして、図6は、第2の接続部21Bのコア幅W2を変化させた場合の減衰部20のTE0の減衰量をFDTD(有限差分時間領域法)で計算した結果を示している。減衰量は、入力されたTE0の光強度に対して、出力されるTE0の光強度の比をdBにして、マイナスをつけたものである。その結果、減衰部20の第2の接続部21Bのコア幅W2を変えることで、所望の減衰量を調整できることが分かる。
【0044】
急なコア幅の変化、例えば、テーパ角θが大きい場合、TE0の一部のパワーが他の導波モードや放射モードに変換するため、減衰が生じている。さらに、減衰部20は、テーパのコア幅の変化が大きくなると、第1の接続部21Aの断面のTE0の電界分布と、第2の接続部21Bの断面のTE0の電界分布とのミスマッチが大きくなるため、光損失が増加する。従って、減衰部20では、所望の減衰量を得ることができる。
【0045】
図7は、減衰部20の減衰量と、減衰部20を導波する光の波長との対応関係の一例を示す説明図である。尚、説明の便宜上、減衰部20の目標減衰量は2dB、減衰部20の第2の接続部21Bでのコア幅W2=3.2umとする。この設定環境で波長毎の減衰量を計算している。図7を参照した場合、1.52-1.58umの広い波長範囲にわたって、減衰量は1.98~2.01dBの範囲に収まるため、減衰部20の波長依存性は非常に小さいことが分かる。尚、図12に示す方向性結合器100では、1.53~1.57umの波長範囲で、減衰量は1.65~2.40dBの範囲で大きく変化してしまう。
【0046】
図8は、減衰部20の第2の接続部21Bで生じるTE0以外の高次モードであるTE2への変換効率と、減衰部20の第2の接続部21Bのコア幅W2との対応関係の一例を示す説明図である。尚、TE2は、TEモードの内、3番目に大きな実効屈折率を有する導波モードである。
【0047】
図8を参照すると、減衰部20は、第2の接続部21Bのコア幅W2が広くして減衰量が増えるに連れてTE2への変換効率が上昇していることが分かる。この現象は、TE0から失われた光パワーの一部がTE2に遷移しているためである。こういった入力で使用していない導波モードである不要モードは、光減衰器4以降で入力と同じ元のモードに再度変換されると、入力の不要モードと同じ元のモードとが干渉して、パワーが不安定となる。
【0048】
そこで、除去部30は、減衰部20で発生した不要な導波モードが導波しない導波路構造であり、これにより不要モードを除去できる。不要モードは、入力モードよりも次数の高いモードが不要モードになりえるので、除去部30の第6の接続部32Bの導波モード数では、その第3の接続部31A(減衰部20の第2の接続部21Bと同じ)の導波モード数に比較して少なくできる。
【0049】
尚、説明の便宜上、光減衰器4の目標減衰量を2dB、減衰部20の第2の接続部21Bのコア幅W2=3.2um、除去部30の直線導波路31の第3の接続部31Aのコア幅W2=3.2umとする。除去部30内のテーパ導波路32の第6の接続部32Bのコア幅W3=0.5um、直線導波路31の長さL2=1um、テーパ導波路32の長さL3=77.34um(テーパ角θとしては、例えば、1.0度に相当)とする。
【0050】
除去部30内のテーパ導波路32は、テーパ角θを緩やかにした場合、導波モードの損失が無視できる。光減衰器4の本構造では、例えば、1.52~1.58umの波長範囲において、0.01dB以下の損失であり、無視できるほど小さい。
【0051】
除去部30の不要な導波モードとしてTE2に着目して説明する。導波モード数は、コア幅が狭くなるに連れて少なくなる。図9は、光減衰器4のコア幅と、コア51Aを導波する光の各導波モードの実効屈折率の計算結果との対応関係の一例を示す説明図である。尚、スラブ51Bの厚みは0.09um、コア51Aの厚みは0.22um、コア51Aを導波する光の波長は1.55umとする。
【0052】
光減衰器4は、光進行方向に沿ってコア幅が変化することになるが、図9を参照すると、コア幅wが狭くなるに連れてコア51Aを導波する導波モード数を少なくなることが分かる。
【0053】
例えば、第2の接続部21B(第3の接続部31A)のコア幅W2=3.2umの場合、TE2は導波するが、第6の接続部32Bのコア幅W3=0.5umの場合、TE2は導波しないことが分かる。その結果、除去部30の第6の接続部32Bの断面では、TE2等の不要モードを除去できることが分かる。尚、説明の便宜上、TE2を導波しない条件を選択したが、導波モード数が減るだけでも、コア51Aの側壁荒れ等によるロスが増加するため、実質的にTE2の除去が可能となる。
【0054】
尚、本実施例の光減衰器4では、大きなテーパ角θを有しているので、光反射の影響が生じる可能性がある。そこで、光反射の反射損を計算した。反射損は、入力される光強度に対する、入力側から反対方向に出力される光強度の比を、dBにしてマイナスをつけたものである。図10は、第2の接続部21Bのコア幅と、反射損失の計算結果との対応関係の一例を示す説明図である。図10を参照すると、第2の接続部21Bのコア幅を変化させた場合でも、50dB以上の反射損となり、非常に小さい反射しか起きないことが分かる。尚、反射損が小さくなる理由は、テーパ導波路によって光減衰を起こしているためである。
【0055】
光減衰器4の減衰部20は、入力導波路11との第1の接続部21Aに比較して、除去部30との第2の接続部21Bにおける光の進行方向に垂直な断面を導波する導波モードの数が多くなる構成にした。更に、除去部30は、減衰部20との第3の接続部31Aに比較して、出力導波路12との第6の接続部32Bにおける光の進行方向に垂直な断面を導波する導波モードの数が少なくなる構成にした。その結果、減衰部20を使用して、広い波長帯域で安定した光減衰量を確保できる。更に、除去部30を使用して減衰部20で発生する不要モードを除去できる。
【0056】
減衰部20は、入力導波路11から除去部30に向けてコア幅が広がる第1のテーパ導波路21Cを有し、除去部30は、減衰部20から出力導波路12に向けてコア幅が狭くなる第2のテーパ導波路32Cを有する。その結果、減衰部20を使用して、広い波長帯域で安定した光減衰量を確保できる。更に、除去部30を使用して減衰部20で発生する不要モードを除去できる。
【0057】
除去部30は、第1のテーパ導波路21Cと接続する直線導波路31と、直線導波路31と接続する第2のテーパ導波路32Cとを有する。その結果、減衰部20の第1のテーパ導波路31を通過することで導波モードの数が増え、各モードを直線導波路31で一度安定させてから、除去部30の第2のテーパ導波路32Cに入力させることで、動作の安定化を図ることができる。また、第1のテーパ導波路21Cにおいて、放射モードへ変換した光を、当該直線導波路31において放射させることができる。その結果、当該放射モードが第2のテーパ導波路32Cにおける導波モードへの結合を低減でき、信号光との干渉などによる光信号パワーの変動を低減でき、安定化を図ることができる。尚、直線導波路31の長さは、1波長以上であることが好ましい。
【0058】
光受信器1は、光減衰器4内の出力導波路12と接続すPD5をさらに有する。その結果、空間電荷効果を緩和して高速通信を実現できる。
【0059】
光減衰器4内の入力導波路11、減衰部20、除去部30及び出力導波路12のコアの厚みが同一の導波路で構成する。その結果、光減衰器4の製造が容易となる。
【0060】
尚、本実施例の光減衰器4はリブ型の光導波路51で形成する場合を例示したが、これに限定されるものではなく、リブ型の光導波路51に代えて、矩形導波路、ハイメサ導波路、リッジ導波路にしても良く、適宜変更可能である。尚、リブ型の光導波路51の場合、スラブ部分にも光が染み出すため、コアの側壁荒れの影響を受けづらく、低損失な伝搬が可能である。また、矩形導波路は、光閉じ込めが強いことから、曲げ半径Rを小さくしても損失が小さくできる。
【0061】
尚、光減衰器4の導波路は、コア51A、クラッド52がともにSiOのあるPLCや、InP導波路、GaAs導波路でもよい。コアがSi、下部クラッド52AがSiO、上部クラッド52BがSiO、空気若しくはSiN等であるSi導波路でもよい。導波路がSi導波路の場合、比屈折率差が大きいことから、光の閉じ込めが強く、それによって小さい曲げ半径Rでも低損失な曲げ導波路が実現できる、すなわち、光デバイスの小型化が可能なため好ましい。
【0062】
図11は、対称型のテーパ導波路及び非対称型のテーパ導波路の一例を示す説明図である。実施例1の減衰部20や除去部30に使用するテーパ導波路は、光の進行方向に沿った断面に対して対称な構造を示し、光の進行方向に沿った任意の軸が対称軸となる。そして、テーパ導波路のコアは、対称軸に沿って対称である対称型のテーパ導波路である。これに対して、テーパ導波路構造は、光の進行方向に沿った断面に対して非対称な構造とし、光進行方向に沿った任意の軸が非対称となる非対称型のテーパ導波路としても良い。光受信器1は、光減衰器4内の除去部30の後段にPD5を接続する構造にしたので、空間電荷効果の影響を低減して広帯域なPD5による高速通信が可能となる。
【符号の説明】
【0063】
1 光受信器
2 光源
3 光ハイブリッド回路
4 光減衰器
4A 減衰部
4B 除去部
5 PD
11 入力導波路
12 出力導波路
20 減衰部
21C 第1のテーパ導波路
30 除去部
31 直線導波路
32C 第2のテーパ導波路
51 リブ型導波路
51A コア
52 クラッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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