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特開2024-163480生物由来有機物配合ABS樹脂の製造方法
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  • 特開-生物由来有機物配合ABS樹脂の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163480
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】生物由来有機物配合ABS樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/14 20190101AFI20241115BHJP
   B29C 48/06 20190101ALI20241115BHJP
   B29C 48/80 20190101ALI20241115BHJP
   B29B 9/12 20060101ALI20241115BHJP
   B29B 9/06 20060101ALI20241115BHJP
   B29B 7/92 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
B29C48/14
B29C48/06
B29C48/80
B29B9/12
B29B9/06
B29B7/92
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079108
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】597114041
【氏名又は名称】株式会社ユニオン産業
(74)【代理人】
【識別番号】100094226
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100087066
【弁理士】
【氏名又は名称】熊谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】森川 真彦
【テーマコード(参考)】
4F201
4F207
【Fターム(参考)】
4F201AA01
4F201AA13
4F201AB11
4F201AB16
4F201AR06
4F201BA01
4F201BA02
4F201BC01
4F201BC37
4F201BD05
4F201BK13
4F201BK73
4F201BL08
4F201BL29
4F201BL43
4F207AA01
4F207AA13
4F207AB11
4F207AB16
4F207AR06
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK12
4F207KM14
(57)【要約】
【課題】ABS樹脂に竹粉などの生物由来有機物粉末とタルクなどの無機物粉末を混錬した生物由来有機物混合樹脂粉末を、押出成形機を用いてスムーズに押出成形できる生物由来有機物配合ABS樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】ABS樹脂粉末40~50重量%と、生物由来有機物粉末2~14重量%と、無機物粉末28~38重量%とを混合した混合樹脂粉末と、押出成形機10とを用意する。ABS樹脂のMVR(cm/10min)を4~6とする。シリンダ30に投入した混合樹脂粉末を、スクリュー40によって搬送する搬送方向に向けてシリンダ30の加熱温度を4段階以上に分け、1段階目の加熱温度を100℃以上とし、2段階目以降は段階的に加熱温度を上昇または保持させ、最終段の加熱温度を230℃以上とする。ダイス60から棒状に押し出されたストランド(成形品)Sは、冷却によって固化された後、ペレット状にカットされる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、ABS樹脂40~50重量%と、生物由来有機物粉末2~14重量%と、無機物粉末28~38重量%とを混合した生物由来有機物混合樹脂粉末と、
少なくとも、前記生物由来有機物混合樹脂粉末を導入するシリンダと、前記シリンダ内に回転可能に挿入されて前記生物由来有機物混合樹脂粉末を混錬しながら搬送するスクリューと、前記シリンダを前記生物由来有機物混合樹脂粉末の搬送方向に向けて段階的に加熱して前記生物由来有機物混合樹脂粉末中のABS樹脂を溶融させる複数の加熱手段と、前記シリンダの先端に接続され前記スクリューと前記加熱手段によって溶融・混錬された溶融混錬樹脂を所望の形状に成形して押し出すダイスと、を有する押出成形機と、
を用意し、
前記混合樹脂粉末を構成するABS樹脂のMVR(cm/10min)が4~6であり、
且つ前記シリンダに投入した混合樹脂粉末を、前記スクリューによって搬送する搬送方向に向けて当該シリンダの加熱温度を4段階以上に分け、1段階目の加熱温度を100℃以上とし、2段階目以降は段階的に前記加熱温度を上昇または保持させ、最終段の加熱温度を230℃以上とし、
前記シリンダ内に投入した前記混合樹脂粉末を、前記段階的な加熱と前記スクリューの回転によって溶融・混錬した後に、前記ダイスから押出成形することを特徴とする生物由来有機物配合ABS樹脂の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の生物由来有機物配合ABS樹脂の製造方法であって、
前記加熱手段による段階的な加熱は、前記搬送方向に向けて1段目から順に、110℃、220℃、230℃、230℃、235℃であることを特徴とする生物由来有機物配合ABS樹脂の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の生物由来有機物配合ABS樹脂の製造方法であって、
前記生物由来有機物粉末は竹粉末であることを特徴とする生物由来有機物配合ABS樹脂の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は3に記載の生物由来有機物配合ABS樹脂の製造方法であって、
前記無機物粉末はタルク粉末であることを特徴とする生物由来有機物配合ABS樹脂の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の生物由来有機物配合ABS樹脂の製造方法であって、
前記ダイスからは、棒状に連続して成形品が押し出され、冷却によって固化された後、ペレット状にカットされることを特徴とする生物由来有機物配合ABS樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竹粉などの生物由来の有機物を配合してなるABS樹脂の製造に用いて好適な生物由来有機物配合ABS樹脂の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
竹には抗菌作用があり、このため竹粉を配合した合成樹脂による各種成形品が利用されている。また竹による抗菌性を増大させるため、竹粉に加えて、抗菌性の高いドロマイト(石灰)の粉末やホタテ貝殻の粉末などを混合させた成形品も利用されている。
【0003】
上記成形品を構成する合成樹脂としては、従来、ポリオレフィン系合成樹脂(例えばポリプロピレン)や生分解性樹脂が用いられてきた。
【0004】
一方、合成樹脂として、ABS樹脂を用いることが望まれている。ABS樹脂は、耐熱温度が比較的高く、外部からの衝撃に強く(ゴムのような耐衝撃性を有する)、加工性が良く(射出成型や押出成形などの各種成形方法を用いることができ、切削や接着・溶着ができ、めっきや塗装などの各種表面処理も可能)、デザイン性が高い(表面の光沢性や着色性に優れている)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3158617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし押出成形機を用いて、竹粉などの生物由来有機物の粉末と無機物であるタルクの粉末などを大量にABS樹脂に混錬して溶融させた溶融物を棒状(スパゲッティー状)に押出成形し、冷却後に細かく切断してペレットを製造しようとした場合、ABS樹脂に生物由来有機物や無機物を混合しているためにABS樹脂を溶融した際の溶融物の粘度や物性が、ABS樹脂のみでペレットを成形する場合の粘度や物性に比べ大きく異なり、このため従来のABS樹脂単体の成形条件のままでの成形は困難であった。
【0007】
例えば、ABS樹脂以外に上記竹粉末やタルクの粉末を大量に添加しているため、棒状に押し出した成形物(以下「ストランド」という)がもろくて千切れ、また棒状の成形物が安定したスピードで押し出されないなど、各種の問題があった。ストランドが千切れるなどすると、修復などに時間がかかり、生産効率が悪くなる。またABS樹脂の場合、ポリオレフィン系合成樹脂に竹粉などを混錬したものを押出成形する場合に比べても、その押出成形が困難であった。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、ABS樹脂に竹粉などの生物由来有機物粉末とタルクなどの無機物粉末を混錬した生物由来有機物混合樹脂粉末を、押出成形機を用いてスムーズ且つ確実に押出成形することができる生物由来有機物配合ABS樹脂の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる生物由来有機物配合ABS樹脂の製造方法は、少なくとも、ABS樹脂40~50重量%と、生物由来有機物粉末2~14重量%と、無機物粉末28~38重量%とを混合した生物由来有機物混合樹脂粉末と、少なくとも、前記生物由来有機物混合樹脂粉末を導入するシリンダと、前記シリンダ内に回転可能に挿入されて前記生物由来有機物混合樹脂粉末を混錬しながら搬送するスクリューと、前記シリンダを前記生物由来有機物混合樹脂粉末の搬送方向に向けて段階的に加熱して前記生物由来有機物混合樹脂粉末中のABS樹脂を溶融させる複数の加熱手段と、前記シリンダの先端に接続され前記スクリューと前記加熱手段によって溶融・混錬された溶融混錬樹脂を所望の形状に成形して押し出すダイスと、を有する押出成形機と、を用意し、前記混合樹脂粉末を構成するABS樹脂のMVR(cm/10min)が4~6であり、且つ前記シリンダに投入した混合樹脂粉末を、前記スクリューによって搬送する搬送方向に向けて当該シリンダの加熱温度を4段階以上に分け、1段階目の加熱温度を100℃以上とし、2段階目以降は段階的に前記加熱温度を上昇または保持させ、最終段の加熱温度を230℃以上とし、前記シリンダ内に投入した前記混合樹脂粉末を、前記段階的な加熱と前記スクリューの回転によって溶融・混錬した後に、前記ダイスから押出成形することを特徴としている。
本発明によれば、ABS樹脂に生物由来有機物粉末と無機物粉末とを上記混合比率で混合した生物由来有機物混合樹脂粉末を、スムーズ且つ確実に押出成形することが可能になる。特に、ダイスから細棒状に押し出して成形されるストランドの場合に、当該ストランドがもろくて切れたり、安定した速度で押し出されなかったりすることを防止できる。
【0010】
また本発明は、上記特徴に加え、前記加熱手段による段階的な加熱は、前記搬送方向に向けて1段目から順に、110℃、220℃、230℃、230℃、235℃であることを特徴としている。
本発明のような加熱工程を用いれば、成形品の押出成形をスムーズ且つ確実に行うことが可能になる。
【0011】
また本発明は、上記特徴に加え、前記生物由来有機物粉末は竹粉末であることを特徴としている。
本発明によれば、生物由来有機物粉末として竹粉末を用いることで、成形品に抗菌効果やエチレンガス吸着効果を持たせることができる。
【0012】
また本発明は、上記特徴に加え、前記無機物粉末はタルク粉末であることを特徴としている。
【0013】
また本発明は、上記特徴に加え、前記ダイスからは、棒状に連続して成形品(ストランド)が押し出され、冷却によって固化された後、ペレット状にカットされることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ABS樹脂に生物由来有機物の粉末と無機物の粉末とを混錬した生物由来有機物混合樹脂粉末を、押出成形機を用いてスムーズ且つ確実に押出成形することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】竹粉末等を配合したABS樹脂のペレット製造工程の一例を示すフロー図である。
図2】押出成形機10の全体概略斜視図である。
図3】押出成形機10の要部概略断面図である。
図4】竹混合樹脂粉末を押出成形機10を用いて押出成形した際の試験内容を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は生物由来有機物粉末として竹粉末を配合したABS樹脂のペレット製造工程の一例を示すフロー図である。同図に示すように、竹粉末配合ABS樹脂のペレットを製造するには、まず、ABS樹脂のペレットと、竹の粉末と、タルクの粉末と、石灰または貝殻の粉末と、添加剤の粉末とを用意する(ステップ1-1,1-2,1-3,1-4,1-5)。
【0017】
ABS樹脂はペレット状のものを用いた。
【0018】
竹の粉末としては、竹を平均粒径200μm程度(それ以下)のパウダー状にしたものを用いた。
【0019】
タルク(Talc)は、滑石という無機の鉱物であり、滑らかな素材である。化学名は含水珪酸マグネシウム〔Mg3Si4O10(OH)2〕であり、このタルクを微粉砕したものを使用した。タルクは、無機鉱物中、最も硬度が低く(モース硬度1)、耐熱性に優れ、しかも化学的に安定した物質である。
【0020】
石灰としては、例えば苦土石灰(ドロマイト)を焼成して平均粒径200μm程度(それ以下)の粉末にしたものを用いた。焼成ドロマイトは、高い抗菌性と、焼却した際のダイオキシン類の発生を抑制する機能を有している。
【0021】
貝殻としては、例えばホタテ貝の貝殻粉を用いた。高温で焼成したホタテ貝殻を、平均粒径200μm程度(それ以下)のパウダー状の粉末にしたものを用いた。ホタテ貝殻粉は強い抗菌性を有する。なお抗菌性は弱くなるが、場合によっては焼成しないホタテ貝殻粉を用いても良い。
【0022】
各原材料の配合割合の範囲は、下記の通りである。
ABS樹脂粉末 40~50重量%
竹粉末 2~14重量%
タルク粉末 28~38重量%
石灰又は貝殻粉末 2~14重量%
添加剤 少量
【0023】
そして、この実施形態(下記する試料No.1)での各原材料の具体的配合割合は、下記の通りとした。
ABS樹脂粉末 45重量%
竹粉末 8重量%
タルク粉末 33重量%
ドロマイト粉末 8重量%
添加剤 6重量%
【0024】
次に、前記原材料を混合した竹混合樹脂粉末を下記する押出成形機10のホッパー20に投入し混錬する(ステップ2)
【0025】
次に、前記ホッパー20によって混錬した竹混合樹脂粉末を下記する押出成形機10のシリンダ30内に導入して加熱・溶融・混錬して細棒状に押し出していく(ステップ3)。
【0026】
次に、押し出した細棒状の成形品であるストランドSを下記する冷却手段70によって冷却・固化する(ステップ4)。
【0027】
次に、冷却・固化したストランドSを下記するペレタイザー80のカッターによって短く切断していくことで、ペレット状とした成形材100を得る(ステップ5)。
【0028】
図2は押出成形機10の全体概略斜視図、図3は押出成形機10の要部概略断面図である。これらの図に示すように、押出成形機10は、前記竹混合樹脂粉末を投入するホッパー20と、ホッパー20からの竹混合樹脂粉末を導入するシリンダ30と、シリンダ30内に回転可能に収納されて前記竹混合樹脂粉末を混錬しながら搬送するスクリュー40と、シリンダ30を前記竹混合樹脂粉末の搬送方向に向けて段階的に加熱して前記竹混合樹脂粉末中のABS樹脂を溶融させる複数(5個)の加熱手段50-1,2,3,4,5と、シリンダ30の先端に接続され加熱手段50-1,2,3,4,5によって溶融・混錬された溶融物を所望の形状(この例では棒状)に成形して押し出すダイス60と、ダイス60で成形されて押し出された複数本(この例では4本)のストランドSを冷却する冷却手段70と、冷却手段70で冷却されたストランドSを細かく切断してペレットにするペレタイザー80とを具備して構成されている。
【0029】
この押出成形機10は、1本のスクリュー40のみを使用する1軸押出成形機である。加熱手段50-1,2,3,4,5は、シリンダ30の外周にその長手方向に向かって直列に取り付けられている。各加熱手段50-1,2,3,4,5は、それぞれ独立して所望の設定温度でシリンダ30を加熱することができる。ダイス60は、複数の小さな円形孔に溶融した溶融物を通すことで、棒状のストランドSを連続して成形していくものである。冷却手段70は冷却用の水(図示せず)を満たした水槽によって構成され、前記ダイス60から押し出されたストランドSを当該水槽内の水に浸すことで冷却して固体化させるものである。ペレタイザー80は前記冷却されたストランドSをカットしてペレット状にする装置である。
【0030】
上記構成の押出成形機10を用いて、竹混合樹脂粉末の押出成形を行った場合、加熱手段50-1,2,3,4,5による加熱温度や、ABS樹脂の溶融時の流動性などによっては、スムーズな押出成形ができなかったり、製造したペレットに焼けが生じたり、発泡したり、もろくなったすることが確認された。
【0031】
本願発明者は、加熱手段50-1,2,3,4,5による加熱温度や、ABS樹脂の溶融時の流動性などの各種押出成形条件を試験し、最適な条件を見出した。以下説明する。
【0032】
図4は、条件を各種変えて、竹混合樹脂粉末を上記押出成形機10によって押出成形した際の結果を示す図である。
【0033】
本願発明者は、当初、竹混合樹脂粉末に含まれるABS樹脂以外の材料の配合割合が半分以上なので、溶融したABS樹脂と混錬した場合、粘度が高くなりすぎるおそれがあると考え、ABS樹脂の溶融時の粘度の低いもの(MVR=20)を用いて試験を行った。ここでMVRとはメルトボリュームレイトのことであり、熱可塑性樹脂の溶融時の流動性を表すISO(JIS)規格の数値であり、シリンダ内で溶融した樹脂を、前記規格で定められた一定の温度と荷重条件のもと、シリンダ底部に設置された規定口径のダイスから10分間あたり押し出される樹脂量を測定したものである。そして試料No.4に示すように、MVRが20のABS樹脂:45重量部と、竹粉:8重量部と、タルク:33重量部と、石灰:8重量部と、それ以外に図示しない添加剤:6重量部とを混合した竹混合樹脂粉末をホッパー20から投入し、スクリュー40を回転しながら、加熱手段50-1,2,3,4,5の温度を、順に100℃、160℃、185℃、190℃、190℃に設定して加熱・溶融・混錬し、ダイス60から棒状のストランドSを押し出した。
【0034】
このときストランドSは、表面は滑らかであったが、スムーズに押し出されず(早く出たり止まったりし)、また冷却手段70の冷却水を通すと直ぐに硬化してもろくなった。
【0035】
上記課題を解決するため、加熱温度を上げ、試料No.3に示すように、加熱手段50-1,2,3,4,5の温度を、順に100℃、170℃、195℃、200℃、205℃に設定して加熱・溶融・混錬し、ダイス60からストランドSを押し出した。
【0036】
このときストランドSは、ダイス60のノズル孔からスムーズに押し出されなかった(早く出たり止まったりした)。このため押し出されたストランドSが千切れたり、ペレタイザー80に導入されても均一なペレットが製造できなかったりした。
【0037】
スムーズな成形品の押し出しを図るため、試料No.2に示すように、ABS樹脂の配合割合を48重量部に増やし、また加熱温度を全体としてさらに上げ、加熱手段50-1,2,3,4,5の温度を、順に165℃、190℃、200℃、200℃、190℃に設定して加熱・溶融・混錬し、ダイス60からストランドSを押し出した。
【0038】
このときストランドSは、もろくは崩れず、ペレタイザー80によるカットも行えた。しかしダイス60のノズル孔からのストランドSのスムーズな押し出しは未だ良くなかった(早く出たり止まったりした)。
【0039】
上記までの試験では、竹混合樹脂粉末中のABS樹脂の配合割合を半分以下としたので、溶融時の流動性が良い樹脂(MVRが低い樹脂)を用いて試験を繰り返したが、発想を転換し、逆に溶融時の流動性が高くない樹脂を用い、その代わりにさらに加熱温度を上げた条件で試験を行うこととした。また使用材料の配合割合を、試料No.4のものと同じに戻した。
【0040】
即ち、試料No.1に示すように、ABS樹脂のMVRを5とし、一方加熱手段50-1,2,3,4,5の加熱温度をさらに上げて、順に110℃、220℃、230℃、230℃、235℃に設定して加熱・溶融・混錬し、ダイス60からストランドSを押し出した。
【0041】
このときのストランドSは丈夫で、ダイス60のノズル孔からのストランドSの押し出しも良好に行え、ペレタイザー80によるカットもスムーズに行え、均一なペレットを製造することができた。
【0042】
以上の試験結果から、竹混合樹脂粉末(ABS樹脂粉末:45重量%、竹粉末:8重量%、タルク粉末:33重量%、石灰粉末:8重量%、添加剤:6重量%)を押出成形する場合の加熱条件は、シリンダ30の加熱温度を、スクリュー40によって竹混合樹脂粉末が搬送される搬送方向に向けて5段階に分け、1段目から順に、110℃、220℃、230℃、230℃、235℃になるように、加熱手段50-1,2,3,4,5によって段階的に加熱して溶融・混錬することが好ましいことが分かった。
【0043】
上記試験では、生物由来有機物として竹を用いたが、他の各種生物由来有機物、例えば、麦のフスマ、コーヒー粕、月桃、杉やヒノキなどの木材などであっても同様の結果が得られる。
【0044】
また上記試験では石灰を用いたが、その代わりに(またはそれと共に)、貝殻粉末を用いても良い。貝殻としてはホタテ貝の貝殻などが抗菌性等を得るため特に好ましい。
【0045】
また上記試験では、生物由来有機物混合樹脂粉末の配合割合を、ABS樹脂粉末:45重量%、竹粉末:8重量%、タルク粉末:33重量%、石灰粉末:8重量%、添加剤:6重量%、としたが、この配合割合には所定の幅が考えられ、少なくとも、ABS樹脂粉末:40~50重量%、生物由来有機物粉末:2~14重量%、無機物粉末:28~38重量%であれば、上記実施形態と同様の結果が得られるものと考えられる。また石灰粉末(または貝殻粉末)の配合割合も、1~12重量%であれば、上記実施形態と同様の結果が得られるものと考えられる。
【0046】
また上記試験では、加熱手段50-1,2,3,4,5の加熱温度を1段目から順に、110℃、220℃、230℃、230℃、235℃になるように構成したが、この温度範囲には所定の幅が考えられ、1段階目の加熱温度を100℃以上とし、2段階目以降は段階的に前記加熱温度を上昇または保持させ、最終段の加熱温度を230℃以上とすれば、上記実施形態と同様の結果が得られるものと考えられる。
【0047】
また上記試験では、ABS樹脂のMVR(cm/10min)を5としたが、4~6であれば、上記実施形態と同様の結果が得られるものと考えられる。
【0048】
また上記試験では、加熱手段50-1,2,3,4,5を5段階としたが、少なくとも4段階以上であれば、上記実施形態と同様の結果が得られるものと考えられる。
【0049】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、上記実施形態で用いた押出成形機10は、ダイス60と冷却手段70を用いてストランドSを製造した後に、ペレタイザー80を設置することでペレットを製造したが、ダイスから押し出された樹脂をその場ですぐにカットする構造のカット方式を用いても良い。
【0050】
また、上記記載及び各図で示した実施形態は、その目的及び構成等に矛盾がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。また、上記記載及び各図の記載内容は、その一部であっても、それぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は上記記載及び各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0051】
10 押出成形機
20 ホッパー
30 シリンダ
40 スクリュー
50(50-1,2,3,4,5) 加熱手段
60 ダイス
70 冷却手段
80 ペレタイザー
100 成形材(ペレット)
S ストランド
図1
図2
図3
図4