IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヒラノ技研工業株式会社の特許一覧

特開2024-163481テンター装置及びそれを用いた熱処理装置
<>
  • 特開-テンター装置及びそれを用いた熱処理装置 図1
  • 特開-テンター装置及びそれを用いた熱処理装置 図2
  • 特開-テンター装置及びそれを用いた熱処理装置 図3
  • 特開-テンター装置及びそれを用いた熱処理装置 図4
  • 特開-テンター装置及びそれを用いた熱処理装置 図5
  • 特開-テンター装置及びそれを用いた熱処理装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163481
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】テンター装置及びそれを用いた熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 55/20 20060101AFI20241115BHJP
   B29C 55/12 20060101ALI20241115BHJP
   B29C 55/08 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
B29C55/20
B29C55/12
B29C55/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079110
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】390002015
【氏名又は名称】ヒラノ技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北本 直也
【テーマコード(参考)】
4F210
【Fターム(参考)】
4F210AJ08
4F210QA02
4F210QC03
4F210QC05
4F210QD25
4F210QD32
4F210QL04
4F210QL06
4F210QL16
4F210QL17
(57)【要約】
【課題】スプロケットとテンターレールの間でテンターチェーンがスムーズに乗り移ることのできるテンター装置を提供する。
【解決手段】前後のスプロケット16、18に架け渡されたテンターチェーン12と、前後のスプロケット16、18の間に配されたテンターレールとが、ウエブの走行場所を挟んで左右に設けられ、テンターレールとして、テンターチェーン12が後方へ走行する往路となるテンターレール24aと、テンターチェーン12が前方へ走行する復路となるテンターレール24bとが設けられ、左右のテンターチェーン12の間にウエブを保持し後方へ走行させるテンター装置10において、前方のスプロケット16と往路のテンターレール24aとの間に、テンターチェーン12が後方へ走行する往路の一部となる補助レール60aが設けられたことを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方であるウエブの搬入側と後方である前記ウエブの搬出側にそれぞれ配されたスプロケットと、前後の前記スプロケットに架け渡されたテンターチェーンと、前後の前記スプロケットの間に配され前記テンターチェーンが走行するテンターレールとが、前記ウエブの走行場所を挟んで左右それぞれに設けられ、
前記テンターレールとして、前記テンターチェーンが後方へ走行するための往路を構成するテンターレールと、前記テンターチェーンが前方へ走行するための復路を構成するテンターレールとが設けられ、
左右一対の前記テンターチェーンの間に前記ウエブを保持し後方へ走行させるテンター装置において、
搬入側の前記スプロケットと、往路の前記テンターレールとの間に、前記テンターチェーンが後方へ走行する往路の一部となる補助レールが設けられ、
搬入側の前記スプロケットと前記補助レールとが、前後方向に移動可能なスライド部に設けられたことを特徴とする、テンター装置。
【請求項2】
復路の前記テンターレールと、搬入側の前記スプロケットとの間に、前記テンターチェーンが前方へ走行する復路の一部となる補助レールが設けられた、請求項1に記載のテンター装置。
【請求項3】
前記補助レールを上下動させる昇降手段が前記スライド部に設けられた、請求項1に記載のテンター装置。
【請求項4】
往路の一部となる前記補助レールを上下動させる昇降手段と、復路の一部となる前記補助レールを上下動させる昇降手段とがそれぞれ前記スライド部に設けられ、2つの前記補助レールが独立して上下動可能な、請求項2に記載のテンター装置。
【請求項5】
前記テンターチェーンに所定間隔で設けられたピン支持板と、前記ピン支持板に上向きで設けられたピンと、前記テンターチェーンが後方へ走行する往路において前記ウエブの左右両耳部を上から押圧して前記ピンに刺すピンニング装置とを備え、
前記ピンニング装置が、前記補助レールより後方に位置する前記テンターレールを支持する部分に設けられた、請求項1~4のいずれか1項に記載のテンター装置。
【請求項6】
請求項1に記載の前記テンター装置と、内部が加熱される熱処理室とが設けられ、
往路及び復路の前記テンターレールが前記熱処理室の内部から外部へ延長され、
前記スプロケット及び前記補助レールが前記熱処理室の外部に設けられた、熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム、布帛、紙などのウエブをピンやクリップ等で把持して移動させるテンター装置及びそれを用いた熱処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ウエブを延伸させるためにテンター装置が使用されている。テンター装置には、左右一対のテンターチェーンが設けられている。それぞれのテンターチェーンは、ウエブ搬送方向である前後方向の両側に設けられたスプロケットに架け渡されている。前後のスプロケットの間には、テンターチェーンが走行するためのテンターレールが設けられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
テンターチェーンは、加熱や経年変化により延びる場合がある。そのような場合には、前方のスプロケットが前後方向に移動することにより、テンターチェーンの張力が維持される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-264647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、スプロケットとテンターレールの高さが一致しない場合がある。そのような場合は、スプロケットとテンターレールとの間でのテンターチェーンの乗り移りがうまく行かずに、テンターチェーンが落下したり、スプロケット等の上にテンターチェーンが乗り上げたりするおそれがある。
【0006】
また、上記のようにスプロケットが前後方向に移動すると、スプロケットとテンターレールの間隔が広がる。すると、スプロケットとテンターレールの間でテンターチェーンが垂れるため、スプロケットとテンターレールとの間でのテンターチェーンの乗り移りがうまく行かなくなるおそれがある。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑み、スプロケットとテンターレールとの間でテンターチェーンがスムーズに乗り移ることのできるテンター装置と、それを用いた熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
【0009】
[1]前方であるウエブの搬入側と後方である前記ウエブの搬出側にそれぞれ配されたスプロケットと、前後の前記スプロケットに架け渡されたテンターチェーンと、前後の前記スプロケットの間に配され前記テンターチェーンが走行するテンターレールとが、前記ウエブの走行場所を挟んで左右それぞれに設けられ、前記テンターレールとして、前記テンターチェーンが後方へ走行するための往路を構成するテンターレールと、前記テンターチェーンが前方へ走行するための復路を構成するテンターレールとが設けられ、左右一対の前記テンターチェーンの間に前記ウエブを保持し後方へ走行させるテンター装置において、搬入側の前記スプロケットと、往路の前記テンターレールとの間に、前記テンターチェーンが後方へ走行する往路の一部となる補助レールが設けられ、搬入側の前記スプロケットと前記補助レールとが、前後方向に移動可能なスライド部に設けられたことを特徴とする、テンター装置。
【0010】
[2]復路の前記テンターレールと、搬入側の前記スプロケットとの間に、前記テンターチェーンが前方へ走行する復路の一部となる補助レールが設けられた、[1]に記載のテンター装置。
【0011】
[3]前記補助レールを上下動させる昇降手段が設けられた、[1]に記載のテンター装置。
【0012】
[4]往路の一部となる前記補助レールを上下動させる昇降手段と、復路の一部となる前記補助レールを上下動させる昇降手段とがそれぞれ設けられ、2つの前記補助レールが独立して上下動可能な、[2]に記載のテンター装置。
【0013】
[5]前記テンターチェーンに所定間隔で設けられたピン支持板と、前記ピン支持板に上向きで設けられたピンと、前記テンターチェーンが後方へ走行する往路において前記ウエブの左右両耳部を上から押圧して前記ピンに刺すピンニング装置とを備え、前記ピンニング装置が、前記補助レールより後方に設けられた、[1]~[4]のいずれかに記載のテンター装置。
【0014】
[6][1]に記載の前記テンター装置と、内部が加熱される熱処理室とが設けられ、往路及び復路の前記テンターレールが前記熱処理室の内部から外部へ延長され、前記スプロケット及び前記補助レールが前記熱処理室の外部に設けられた、熱処理装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、スプロケットとテンターレールとの間でテンターチェーンがスムーズに乗り移ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態の熱処理装置の平面図。
図2】テンター装置の搬入側部分の平面図。
図3】テンター装置の搬入側部分の側面図(図2の下から上を見た図)。
図4】左側のテンターレール及び支持板の幅方向断面を後方から見た図。
図5】左側のブラケット及び補助レールを後方から見た図。
図6】スプロケットを後方からから見た図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について図1図6に基づき説明する。
【0018】
図1に示すテンター装置10は、フィルム、布帛、紙等のウエブWを搬送して熱処理室30を通過させる装置である。ここで、フィルムとは、液晶表示装置に用いられる光学系フィルム、二次電池に用いられる二次電池系フィルム、太陽電池に用いられる太陽電池系フィルム等のことである。
【0019】
以下の説明において、前後とは、ウエブWが前から後ろへ向かって搬送させるものとしたときの表現である。また、左右とは、ウエブWの搬入側(前側)から搬出側(後側)を見たときの表現である。
【0020】
(1)テンター装置の構造
図1に示すように、テンター装置10は、左右一対のテンターチェーン12、14を有している。左テンターチェーン12は、左他動スプロケット16と左駆動スプロケット18に掛け渡された無端状のチェーンであり、右テンターチェーン14は、右他動スプロケット20と右駆動スプロケット22との間に掛け渡された無端状のチェーンである。左他動スプロケット16と右他動スプロケット20は、ウエブWの搬入側に配され、左駆動スプロケット18と右駆動スプロケット22は、ウエブWの搬出側に配されている。
【0021】
このテンター装置10はピンテンター装置である。左右一対のテンターチェーン12、14には、それぞれ、複数のピン支持板58が所定間隔で取り付けられている。図3及び図6に示すように、それぞれのピン支持板58には複数のピン56が上向きで設けられている。これらのピン56は、ウエブWの左右両側部(両耳部)を刺して固定するための固定部材である。駆動スプロケット18、22が回転し、左右一対のテンターチェーン12、14が周回することにより、これらのピン56も周回する。図1に、スプロケット16、18、20、22の回転方向及びテンターチェーン12、14の周回方向を矢印で示す。
【0022】
左他動スプロケット16と左駆動スプロケット18との間に、2本のテンターレール24a、24bが平行に設けられている。テンター装置10の幅方向(左右方向)内側のテンターレール24aは、左テンターチェーン12が後方へ走行するときに載るレールであり、左テンターチェーン12の往路を構成するレールである。テンター装置10の幅方向(左右方向)外側のテンターレール24bは、左テンターチェーン12が前方へ走行するときに載るレールであり、左テンターチェーン12の復路を構成するレールである。
【0023】
また、右他動スプロケット20と右駆動スプロケット22との間にも、2本のテンターレール26a、26bが平行に設けられている。テンター装置10の幅方向(左右方向)内側のテンターレール26aは、右テンターチェーン14が後方へ走行するときに載るレールであり、右テンターチェーン14の往路を構成するレールである。テンター装置10の幅方向(左右方向)外側のテンターレール26bは、右テンターチェーン14が前方へ走行するときに載るレールであり、右テンターチェーン14の復路を構成するレールである。
【0024】
左側のテンターレール24a、24bを図2図4に拡大して示す。それぞれのテンターレール24a、24bは、支持板64に固定されている。図4に示すように、左側の往路を構成するテンターレール24aは、水平な底面24aaと、底面24aaの左右両側において底面24aaから上へ立ち上がった側壁24abとからなる。左テンターチェーン12は、左右の側壁24abの間で底面24aaに載った状態で移動する。左側の復路を構成するテンターレール24bもこれと同じ構造である。図示省略するが、右側のテンターレール26a、26bも同様に、底面及び側壁からなり、支持板に固定されている。
【0025】
支持板64は、水平な床などに載置されたテンター台28(図3参照)より上に設けられた板部材である。図2図4及び図6にはテンター装置10における左側の支持板64のみが描かれているが、テンター装置10の右側にも同様に支持板64が設けられている。図3及び図6に示すように、支持板64の下面には車輪付きのキャスター62が設けられている。このキャスター62により、支持板64を左右方向に移動させて左右の支持板64の間隔を変化させ、支持板64の上にある左右のテンターチェーン12、14の間隔を調整することができる。
【0026】
左他動スプロケット16と、それより後方の左側のテンターレール24a、24bとの間には、それぞれ補助レール60a、60bが設けられている。これらの補助レール60a、60bは、左他動スプロケット16及びテンターレール24a、24bからそれぞれ離隔されている。これらの補助レール60a、60bは、左他動スプロケット16とテンターレール24a、24bとの間で左テンターチェーン12が載るレールである。
【0027】
詳細には、一方の補助レール60aは、左テンターチェーン12の往路を構成するテンターレール24aと、左他動スプロケット16との間に配置された補助レールであり、左テンターチェーン12の往路の一部となる補助レール(往路側の補助レール)である。往路側の補助レール60aには、テンターレール24aと左他動スプロケット16との間で張られた左テンターチェーン12が載る。そして、補助レール60aの平面から見た向きは、ほぼ前後方向であり、左他動スプロケット16の接線方向に飛び出した左テンターチェーン12の方向と同じ向きに設けられている。
【0028】
もう一方の補助レール60bは、左テンターチェーン12の復路を構成するテンターレール24bと、左他動スプロケット16との間に配置された補助レールであり、左テンターチェーン12の復路の一部となる補助レール(復路側の補助レール)である。復路側の補助レール60bには、テンターレール24bと左他動スプロケット16との間で張られた左テンターチェーン12が載る。
【0029】
図5に示すように、往路側の補助レール60aは、水平な底面60aaと、底面60aaの左右両側において底面60aaから上へ立ち上がった側壁60abとからなる。左テンターチェーン12は、左右の側壁60abの間で底面60aaに載った状態で移動する。復路側の補助レール60bもこれと同じ構造である。
【0030】
図示省略するが、テンター装置10の右側においても、右他動スプロケット20とテンターレール26a、26bとの間にそれぞれ補助レールが設けられている。
【0031】
図3及び図5に示すように、左他動スプロケット16は左スライド部32の上に回転自在に設けられている。同じ左スライド部32に補助レール60a、60bも設けられている。この左スライド部32は、左油圧シリンダ34によって前方(搬入側)に押圧されている。これにより、左テンターチェーン12に一定の張力が生じている。例えば、左テンターチェーン12が加熱されて延びた場合には、左スライド部32は、左油圧シリンダ34に押されて前方へ移動し、左テンターチェーン12の張力が所定値となった所で停止する。
【0032】
これと同様に、テンター装置10における右側においても、右他動スプロケット20及び補助レールがスライド部に設けられ、そのスライド部が油圧シリンダによって前方に押圧されている。これにより、右テンターチェーン14に一定の張力が生じている。例えば、右テンターチェーン14が加熱されて延びた場合には、スライド部は、油圧シリンダに押されて前方へ移動し、右テンターチェーン14の張力が所定値となった所で停止する。
【0033】
一方、搬出側にある左駆動スプロケット18と右駆動スプロケット22は、前後方向に移動しないように設けられている。
【0034】
左右一対のテンターチェーン12、14の間隔は、搬入側から搬出側に向かって拡がっている。この拡がりによってウエブWが幅方向に延伸される。ただし、図1では簡単に説明するために左右一対のテンターチェーン12、14は平行に描かれている。
【0035】
(2)熱処理装置の構造
熱処理装置は、上記の構造のテンター装置10に加えて、熱処理室30を備えている。
【0036】
熱処理室30は、ウエブWを加熱処理するためのものであり、テンター装置10の前後方向の中央部分に設けられている。熱処理室30内部には、ウエブWに対し熱風を噴射するノズル(不図示)が配されている。噴射される熱風により、熱処理室30の内部が例えば150℃~190℃に加熱される。
【0037】
テンターレール24a、24b、26a、26bは、熱処理室30の内部を前後方向に延びている。さらに、テンターレール24a、24b、26a、26bは、熱処理室30の前端にある搬入口30a及び後端にある搬出口30bをそれぞれ通過して、熱処理室30の内部から外部へ延びている。スプロケット16、18、20、22及び補助レール60a、60bは熱処理室30の外にある。
【0038】
熱処理装置の搬入側の場所には、テンター装置10の一部として、公知のピンニング装置70が設けられている。ピンニング装置70は、外周面に不図示のブラシ毛が植毛されたブラシロール72と、ブラシロール72の回転軸74とを備える装置である。ブラシロール72が回転しながらウエブWの両耳部を上から押圧しピン56に刺して固定する。ピンニング装置70は、補助レール60a、60bより後方直後(さらに言えばテンターレール24a、24b、26a、26bの前端より後方の位置)かつ熱処理室30より前方に配置されている。
【0039】
また、熱処理装置にはコンピュータからなる制御装置(不図示)が設けられている。制御装置は、左駆動スプロケット18と右駆動スプロケット22を同期させて回転させるモータや、ピンニング装置70等を制御する。
【0040】
(3)補助レール周辺の構造
左右一対のテンターチェーン12、14を走行させるための構造は左右対称であるため、ここでは左側の構造について説明する。
【0041】
図2に、搬入側部分の左側の平面図を示す。少なくとも2本のテンターレール24a、24bの前端より前方の場所において、支持板64にスリット40が形成されている。スリット40は、支持板64の左右方向中央において前後方向に延びている。図6に示すように、このスリット40の内側に左スライド部32が設けられている。左スライド部32は、ブッシュ36を介してスリット40の縁に取り付けられている。この構造のため、左スライド部32は、支持板64に形成されたスリット40に沿って前後方向に移動できる。
【0042】
図3及び図6に示すように、左スライド部32の上には上下方向に延びる固定軸42が固定されている。その固定軸42にベアリング44の内輪が嵌め込まれ、ベアリング44の外輪に左他動スプロケット16が設けられている。この構造により左他動スプロケット16が回転自在となっている。
【0043】
図3に示すように、左スライド部32の上の、左他動スプロケット16より後方には、上下方向に延びるブラケット保持部材46が設けられている。図5に示すように、このブラケット保持部材46の上部から左右両側へ、それぞれ水平に板部材48が突出している。これらの板部材48にはそれぞれ上下方向に貫通する孔が設けられており、それらの孔にそれぞれボルト50の胴部が通されている。これらのボルト50の頭部には、それぞれ、補助レール60a、60bを上下動させる昇降手段としてのハンドル52が設けられている。
【0044】
図5に示すように、ブラケット保持部材46の左右両側にはそれぞれL字型のブラケット54が設けられている。左右のブラケット54の上端にはそれぞれ水平な板部66が設けられている。それらの板部66にはそれぞれ上下方向に貫通するねじ孔が設けられており、それぞれのねじ孔にボルト50のねじ部が噛み合っている。また、それぞれのブラケット54の左右方向の端部に補助レール60a、60bが設けられている。
【0045】
この構造のため、作業者がハンドル52を回すと、ボルト50のねじ部が回ってブラケット54が上下動し、ブラケット54に設けられた補助レール60a、60bも上下動する。左右2つのハンドル52は独立して回すことができ、2つの補助レール60a、60bを独立して上下動させることができる。
【0046】
また、ブラケット保持部材46の上端と、左他動スプロケット16が取り付けられた固定軸42の上端とは、図2及び図3に示す板状の連結部材68で連結されている。
【0047】
また、搬入側において、2本のテンターレール24a、24bの間に上記の左油圧シリンダ34が固定されている。左油圧シリンダ34のロッド38は前方へ進出可能である。そのロッド38に、左スライド部32上のブラケット保持部材46が取り付けられている。そのため、ロッド38が進退することにより、左スライド部32が前後方向へ移動し、左スライド部32上の左他動スプロケット16と補助レール60a、60bとが一体となって前後方向へ移動することができる。
【0048】
補助レール60a、60b周辺の以上の構造物は、テンター装置10の一部である。
【0049】
テンター装置10における右側においても、左側と同じ構造にて補助レール等が設けられている。
【0050】
(4)テンター装置の動作
ウエブWの熱処理を開始する前に、作業者が、テンター装置10の左側において、ハンドル52を回して往路側の補助レール60aの高さを調整する。
【0051】
往路を構成するテンターレール24aと、他動スプロケット16との高さが同じ場合(すなわち、テンターレール24aに載ったテンターチェーン12と、他動スプロケット16に噛み合ったテンターチェーン12との高さが同じになる場合)、作業者は、補助レール60aの高さをテンターレール24aの高さと一致させることが好ましい。
【0052】
また、往路を構成するテンターレール24aと、他動スプロケット16との高さが異なる場合(すなわち、テンターレール24aに載ったテンターチェーン12と、他動スプロケット16に噛み合ったテンターチェーン12との高さが異なる場合)、作業者は、補助レール60aの高さを、テンターレール24aと他動スプロケット16の間の高さとすることが好ましい。
【0053】
ただし、補助レール60aの高さはこれらに限定されず、例えば、補助レール60aをテンターレール24a及び他動スプロケット16より若干高くしても良い。
【0054】
作業者は、復路側の補助レール60bの高さも、往路側の補助レール60aと同様に調整する。
【0055】
また、作業者は、テンター装置10の右側においても、左側と同様に往路側及び復路側の補助レールの高さを調整する。
【0056】
補助レール60a、60bの高さ調整後に、ウエブWの熱処理が開始される。
【0057】
ウエブWの熱処理中、テンターチェーン12、14が周回し、ウエブWが熱処理室30へ向かって搬送される。
【0058】
搬入側において、周回するテンターチェーン12、14は、補助レール60a、60b上を通過する。詳細には、周回するテンターチェーン12、14は、その往路において、他動スプロケット16、20から離れて補助レール60aに乗り移り、さらに補助レール60aからテンターレール24a、26aに乗り移る。また、周回するテンターチェーン12、14は、その復路において、テンターレール24b、26bから補助レール60bに乗り移り、さらに補助レール60bから離れて他動スプロケット16、20に巻き付く。
【0059】
往路の熱処理室30より手前においては、ピンニング装置70によって、テンターチェーン12、14に設けられた複数のピン56に、ウエブWの両耳部が固定される。この固定のための押圧は、テンターレール24a、24b、26a、26bの前端から熱処理室30の搬入口30aまでの間の位置で行われる。これにより、左右のテンターチェーン12、14間でウエブWが拡げられた状態で保持される。
【0060】
2つの駆動スプロケット18、22が定速で回転し、それに伴い左右のテンターチェーン12、14が定速で周回する。そのため、左右のテンターチェーン12、14間でピン56に固定されたウエブWが、定速で後方へ搬送され、熱処理室30に搬入され、熱処理され、その後に熱処理室30から搬出される。
【0061】
なお、テンター装置10の運転中(すなわちテンターチェーン12、14の周回中)でも、作業者はハンドル52を回して補助レール60a、60bの高さを調整することができる。
【0062】
(5)効果
以上のように、本実施形態では、他動スプロケット16、20と、テンターチェーン12、14の往路を構成するテンターレール24a、26aとの間に、往路側の補助レール60aが設けられている。そのため、他動スプロケット16、20とテンターレール24a、26aの高さが異なる場合でも、補助レール60aがテンターチェーン12、14を案内できる。また、テンターチェーン12、14が加熱や経年変化により伸びた場合でも、補助レール60aがテンターチェーン12、14を垂れないように支持できる。そのため、これらの場合でも、他動スプロケット16、20からテンターレール24a、26aへテンターチェーン12、14がスムーズに乗り移ることができる。
【0063】
特に、他動スプロケット16、20の外周の接線方向から離れたテンターチェーン12、14は、常にその接線方向の延長にある補助レール60aに一旦支持され、その後にテンターレール24a、26aに乗り移るため、テンターチェーン12、14が他動スプロケット16、20から外れにくい。その上、テンターチェーン12、14が安定してテンターレール24a、26aに乗り移った直後に、ピンニング装置70のブラシロール72でウエブWをピン支持板58に押圧してピン56に突き刺すため、安定してピンニングができる。
【0064】
また、他動スプロケット16、20と補助レール60aとが、前後方向に移動可能なスライド部32に設けられている。そのため、他動スプロケット16、20が移動するときに補助レール60aも一緒に移動することになり、両者が離れ過ぎないようにすることができる。そのため、他動スプロケット16、20から補助レール60aへテンターチェーン12、14がスムーズに乗り移ることができる。
【0065】
また、テンターチェーン12、14の復路を構成するテンターレール24b、26bと、他動スプロケット16、20との間に、復路側の補助レール60bが設けられている。そのため、復路を構成するテンターレール24b、26bと、他動スプロケット16、20との間でも、テンターチェーン12、14がスムーズに乗り移ることができる。
【0066】
また、往路側の補助レール60aを上下動させるハンドル52が設けられているため、テンターレール24a、26aと他動スプロケット16、20との間でテンターチェーン12、14がスムーズに乗り移ることができるように、補助レール60aの高さを調整することができる。ここで、ハンドル52は操作が容易であるため、テンター装置10の運転前だけでなく、テンター装置10の運転中であっても、作業者はハンドル52を回すことができ、補助レール60aの高さを調整することができる。
【0067】
また、往路側の補助レール60aを上下動させるハンドル52に加えて、復路側の補助レール60bを上下動させるハンドル52も設けられ、これらの補助レール60a、60bを独立して上下動させることができるため、2つの補助レール60a、60bをそれぞれ最適な高さにすることができる。例えば、往路のテンターレール24aと復路のテンターレール26aの一方だけ摩耗して低くなった場合や、他動スプロケット16、20が傾いた場合等は、往路と復路で補助レール60a、60bの最適な高さが異なるが、そのような場合にも対応できる。
【0068】
(6)変更例
上記実施形態に対して様々な変更を行うことができる。
【0069】
例えば、ウエブWの左右両側部を固定するための固定部材として、ピン56の代わりにクリップが用いられても良い。
【0070】
また、ウエブWの搬入側に加えて、搬出側においても、テンターレール24a、24b、26a、26と、駆動スプロケット18、22との間に上記実施形態と同様の補助レールが設けられても良い。
【0071】
また、上記実施形態における油圧シリンダ34の代わりに、テンターチェーン12、14に一定の張力をかけるために他動スプロケット16、20を前後方向に移動させる他のスプロケット移動手段、例えばエアシリンダが使用されても良い。
【符号の説明】
【0072】
W…ウエブ、10…テンター装置、12…左テンターチェーン、14…右テンターチェーン、16…左他動スプロケット、18…左駆動スプロケット、20…右他動スプロケット、22…右駆動スプロケット、24a…テンターレール、24aa…底面、24ab…側壁、24b…テンターレール、26a…テンターレール、26b…テンターレール、28…テンター台、30…熱処理室、30a…搬入口、30b…搬出口、32…左スライド部、34…左油圧シリンダ、36…ブッシュ、38…ロッド、40…スリット、42…固定軸、44…ベアリング、46…ブラケット保持部材、48…板部材、50…ボルト、52…ハンドル、54…ブラケット、56…ピン、58…ピン支持板、60a…補助レール、60aa…底面、60ab…側壁、60b…補助レール、62…キャスター、64…支持板、66…板部、68…連結部材、70…ピンニング装置、72…ブラシロール、74…回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6